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Patent Searching and Data


Title:
SPARK PLUG AND PROCESS FOR PRODUCING THE SPARK PLUG
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/081562
Kind Code:
A1
Abstract:
This invention provides a spark plug comprising a ground electrode with a firing part, to which a noble metal chip is joined, having high durability, and a process for producing the spark plug. The spark plug comprises a center electrode, an insulator, a main metal fitting, and a ground electrode. The ground electrode comprises an electrode base material one end of which is joined to the end of the main metal fitting. A noble metal chip is joined to the other end of the main metal fitting. Due to work hardening, the noble metal chip has an average hardness of not less than (Hv) 260 and not more than (Hv) 650. The electrode base material is formed of an Ni alloy comprising not less than 15% by mass and not more than 30% by mass of Cr and not less than 1.5% by mass and not more than 4% by mass of Al. In the weld between the noble metal chip and the electrode base material, the total mass of Ni, Cr, Al, Si, and Fe is not less than 5% by mass and not more than 35% by mass of the total mass of the weld. The average hardness of each of the noble metal chip, the weld, and the electrode base material increases in this order. The average hardness of the weld is not less than (Hv) 255 and not more than (Hv) 400.

Inventors:
TANAKA TOMOO (JP)
MIYASHITA NAOMICHI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/003875
Publication Date:
July 02, 2009
Filing Date:
December 19, 2008
Export Citation:
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Assignee:
NGK SPARK PLUG CO (JP)
TANAKA TOMOO (JP)
MIYASHITA NAOMICHI (JP)
International Classes:
H01T13/39; B23K26/21; C22C5/04; C22C19/05; H01T21/02
Foreign References:
JP2003197347A2003-07-11
JP2007227189A2007-09-06
JP2005108795A2005-04-21
JP2005203121A2005-07-28
JP2003197346A2003-07-11
JPH05166577A1993-07-02
JP2001273966A2001-10-05
Attorney, Agent or Firm:
FUKUMURA, Naoki (Yoyogi Palace 21-10, Yoyogi 2-chome, Shibuya-k, Tokyo 53, JP)
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Claims:
 中心電極と、
前記中心電極の外周に設けられた絶縁体と、
前記絶縁体を保持する主体金具と、
電極母材の一端が前記主体金具の端部に接合され、他端に貴金属チップが接合され、前記貴金属チップの先端面と前記中心電極の先端面又は側面とが火花放電間隙を介して対向するように配置された接地電極と、を備えるスパークプラグであって、
 前記貴金属チップは、加工硬化により、平均硬度がHv260以上Hv650以下であり、
 前記電極母材は、Crが15質量%以上30質量%以下、Alが1.5質量%以上4質量%以下含有されて成るNi合金により形成されて成り、
 前記貴金属チップと前記電極母材との間に設けられている溶接部は、NiとCrとAlとSiとFeとの合計質量が前記溶接部の全質量に対して5質量%以上35質量%以下であり、
 前記貴金属チップの平均硬度が前記溶接部の平均硬度より大きく、更に、前記溶接部の平均硬度が前記電極母材の平均硬度より大きく、
 かつ、前記溶接部の平均硬度がHv255以上Hv400以下であること
を特徴とするスパークプラグ。
 前記溶接部は、CrとAlとSiとFeとの合計質量が前記溶接部の全質量に対して3質量%以上9.5質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のスパークプラグ。
 前記溶接部は、CrとAlとSiとの合計質量が前記溶接部の全質量に対して2質量%以上4質量%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスパークプラグ。
 前記溶接部は、前記貴金属チップと前記電極母材とをレーザ溶接によって接合されて成り、前記レーザ溶接は、3m秒以下のレーザパルスを複数回照射することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のスパークプラグ。
 中心電極と、
 前記中心電極の外周に設けられた絶縁体と、
 前記絶縁体を保持する主体金具と、
 Crが15質量%以上30質量%以下、Alが1.5質量%以上4質量%以下含有されて成るNi合金により形成されて成る電極母材の一端が前記主体金具の端部に接合され、他端に加工硬化により平均硬度がHv260以上Hv650以下である貴金属チップが接合され、前記貴金属チップの先端面と前記中心電極の先端面又は側面とが火花放電間隙を介して対向するように配置された接地電極と、
 を備えるスパークプラグの製造方法であって、
 前記電極母材における前記主体金具に接合された端部とは反対側の端部に、貴金属チップを3m秒以下のレーザパルスを複数回照射するレーザ溶接により接合することを特徴とするスパークプラグの製造方法
 Crが15質量%以上30質量%以下、Alが1.5質量%以上4質量%以下含有されて成るNi合金により形成されて成る電極母材の端部を主体金具の端部に接合する工程と、
 主体金具に中心電極と絶縁体とを組み付ける工程と、
 電極母材における前記主体金具に接合される端部とは反対側の端部に、加工硬化により平均硬度がHv260以上Hv650以下である貴金属チップを、3m秒以下のレーザパルスを複数回照射するレーザ溶接により接合する工程と、
を有することを特徴とするスパークプラグの製造方法。
Description:
スパークプラグ及びその製造方

 この発明は、スパークプラグ及びその製 方法に関し、更に詳しくは、接地電極の発 面に貴金属チップが設けられて成るスパー プラグ及びその製造方法に関する。

 近年、自動車エンジンなどの内燃機関に 用されるスパークプラグは、耐火花消耗性 上のため中心電極の先端部における発火面 または接地電極の前記中心電極に対向した 火面に、耐火花消耗性に優れる白金(Pt)、パ ラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)などから構成さ る貴金属チップ、またはこれらを主体とす 合金からなる貴金属チップを溶接したスパ クプラグが使用されている。一方、中心電 及び接地電極における前記貴金属チップが 合されている電極母材は、Ni合金のような 伝導性が良好な金属が使用されている。

 この電極母材と貴金属チップとは、十分 耐熱性を確保しているにもかかわらず、高 酸化及び高温熱サイクルを受けることによ 、電極母材と貴金属チップとの接合部にク ックが発生してしまい、このクラックが進 して貴金属チップが剥離又は脱落に至ると うことがあった。また、近年の燃料のリー 化及び高圧縮化に伴い、貴金属チップは小 化が求められると共に電極の温度が上昇す 傾向にある。その結果、電極母材と貴金属 ップとの接合部に益々負荷がかかり、貴金 チップが電極母材から剥離又は脱落し易い 況となっている。そこで、電極母材と貴金 チップとを強固に接合するためのさまざま 試みがなされている。

 特許文献1では、貴金属チップと中心電極 又は接地電極との間に形成される溶融固着層 の寸法等を規定することにより、溶融固着層 における接合強度に優れた、高性能、長寿命 の内燃機関用のスパークプラグを提供するこ とを試みている。

 特許文献2では、貴金属チップと接地電極 とが溶け込みあった溶融部の形状及び貴金属 チップの寸法及びその成分等を規定すること により、着火性を確保しつつ、接地電極と貴 金属チップとの接合性を向上させたスパーク プラグを提供することを試みている。

 特許文献3では、貴金属チップとチップ被 固着面形成部位とにまたがる形で形成された 全周レーザー溶接部の寸法を規定することに より、発火部の耐久性を向上させたスパーク プラグを提供することを試みている。

 ところで、接地電極は中心電極より燃焼 内に突出した状態で設置されており、接地 極の方が中心電極よりも温度が高くなるの 、温度差の激しい過酷な環境に置かれてい 。したがって、接地電極における貴金属チ プの剥離又は脱落を防止することが、より まれている。

特許第3121309号公報

特許第3702838号公報

特開2002-237370号公報

 この発明の課題は、貴金属チップが接合さ て成る接地電極の発火部が高い耐久性を有 るスパークプラグ及びその製造方法を提供 ることであり、特に接地電極の電極母材と 金属チップとの接合性が良好なスパークプ グ及びその製造方法を提供することにある

 前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、
 中心電極と、
前記中心電極の外周に設けられた絶縁体と、
前記絶縁体を保持する主体金具と、
電極母材の一端が前記主体金具の端部に接合 され、他端に貴金属チップが接合され、前記 貴金属チップの先端面と前記中心電極の先端 面又は側面とが火花放電間隙を介して対向す るように配置された接地電極と、を備えるス パークプラグであって、
 前記貴金属チップは、加工硬化により、平 硬度がHv260以上Hv650以下であり、
 前記電極母材は、Crが15質量%以上30質量%以 、Alが1.5質量%以上4質量%以下含有されて成る Ni合金により形成されて成り、
 前記貴金属チップと前記電極母材との間に けられている溶接部は、NiとCrとAlとSiとFeと の合計質量が前記溶接部の全質量に対して5 量%以上35質量%以下であり、
 前記貴金属チップの平均硬度が前記溶接部 平均硬度より大きく、更に、前記溶接部の 均硬度が前記電極母材の平均硬度より大き 、
 かつ、前記溶接部の平均硬度がHv255以上Hv400 以下である
ことを特徴とするスパークプラグであり、
請求項2は、
 前記溶接部は、CrとAlとSiとFeとの合計質量 前記溶接部の全質量に対して3質量%以上9.5質 量%以下であることを特徴とする請求項1に記 のスパークプラグあり、
請求項3は、
 前記溶接部は、CrとAlとSiとの合計質量が前 溶接部の全質量に対して2質量%以上4質量%以 下であることを特徴とする請求項1又は2に記 のスパークプラグであり、
請求項4は、
 前記溶接部は、前記貴金属チップと前記電 母材とをレーザ溶接によって接合されて成 、前記レーザ溶接は、3m秒以下のレーザパ スを複数回照射することを特徴とする請求 1~3のいずれか一項に記載のスパークプラグ あり、
請求項5は、
 中心電極と、
 前記中心電極の外周に設けられた絶縁体と
 前記絶縁体を保持する主体金具と、
 Crが15質量%以上30質量%以下、Alが1.5質量%以 4質量%以下含有されて成るNi合金により形成 れて成る電極母材の一端が前記主体金具の 部に接合され、他端に加工硬化により平均 度がHv260以上Hv650以下である貴金属チップが 接合され、前記貴金属チップの先端面と前記 中心電極の先端面又は側面とが火花放電間隙 を介して対向するように配置された接地電極 と、
 を備えるスパークプラグの製造方法であっ 、
 前記電極母材における前記主体金具に接合 れた端部とは反対側の端部に、貴金属チッ を3m秒以下のレーザパルスを複数回照射す レーザ溶接により接合することを特徴とす スパークプラグの製造方法であり、
請求項6は、
 Crが15質量%以上30質量%以下、Alが1.5質量%以 4質量%以下含有されて成るNi合金により形成 れて成る電極母材の端部を主体金具の端部 接合する工程と、
 主体金具に中心電極と絶縁体とを組み付け 工程と、
 電極母材における前記主体金具に接合され 端部とは反対側の端部に、加工硬化により 均硬度がHv260以上Hv650以下である貴金属チッ プを、3m秒以下のレーザパルスを複数回照射 るレーザ溶接により接合する工程と、
を有することを特徴とするスパークプラグの 製造方法である。

 本発明に係るスパークプラグの接地電極 電極母材は、Crが15質量%以上30質量%以下、Al が1.5質量%以上4質量%以下含有されて成るNi合 により形成されて成るので、電極母材が酸 されるのを防止することができる。したが て、電極母材が酸化されることにより電極 材の厚みが減少し、その結果、電極母材表 から突出した状態で接合されている貴金属 ップの突出量が相対的に大きくなることを 止することができる。したがって、熱サイ ル及び発火時の衝撃により、貴金属チップ 電極母材から剥離又は脱落してしまうのを 止することができる。

 また、本発明に係るスパークプラグの貴 属チップと前記電極母材との間に設けられ いる溶接部は、NiとCrとAlとSiとFeとの合計質 量が溶接部の全質量に対して5質量%以上35質 %以下であるので、貴金属チップと溶接部と 界面に内部酸化層が生成されるのを抑制す ことができる。その結果、内燃機関内にお る熱サイクルの影響により内部酸化層に生 るクラックの生成を抑制することができる また、溶接部の平均硬度がHv255以上Hv400以下 であるので、内燃機関内における熱サイクル の影響により、貴金属チップと電極母材との 間に熱膨張の差による歪が生じたとしても、 溶接部にクラックが生成することを抑制する ことができる。

 さらに、貴金属チップは、加工硬化によ 、平均硬度がHv260以上Hv650以下であるので、 熱サイクルの影響により貴金属チップの側面 に生じる引張り応力による、貴金属チップの 割れを防止することができる。

 また、貴金属チップ、溶接部、電極母材 順に平均硬度が大きいので、これによって 貴金属チップの割れを防止することができ 。また、貴金属チップと溶接部との界面の 部酸化層に生じるクラックの進展を抑制す ことができる。

 したがって、本発明によると、貴金属チ プが電極母材から剥離又は脱落してしまう を防止することができる。その結果、電極 材と貴金属チップとの接合性が良好であり 高い耐久性を有するスパークプラグを提供 ることができる。

 本発明に係るスパークプラグの製造方法 よれば、前述した効果を奏するスパークプ グを容易に製造することができる。

 本発明に係るスパークプラグの一実施例 あるスパークプラグを図1に示す。図1(a)は 本実施形態のスパークプラグの一部断面全 説明図であり、図1(b)は、本実施形態のスパ クプラグの主要部分を示す断面説明図であ 。尚、図1(a)では、紙面下方を軸線の先端方 向、紙面上方を軸線の後端方向として、図1(b )では、紙面上方を軸線の先端方向、紙面下 を軸線の後端方向として説明する。このス ークプラグ1は、図1(a)、(b)に示すように、略 棒状の中心電極2と、前記中心電極2の外周に けられた略円筒状の絶縁体3と、前記絶縁体 3を保持する円筒状の主体金具4と、電極母材1 0の一端が前記主体金具4の端部に接合され、 端に貴金属チップ5が接合され、前記貴金属 チップ5の先端面と前記中心電極2の先端面と 火花放電間隙Gを介して対向するように配置 された接地電極6とを備えている。

 主体金具4は、円筒形状を有しており、絶縁 体3を内装することにより絶縁体3を保持する うに形成されている。スパークプラグ1の先 端部における主体金具4の外周面にはネジ部40 が形成されており、このネジ部40を利用して 示しない内燃機関のシリンダヘッドに取り けられる。
 主体金具4は、導電性の鉄鋼材料、例えば、 低炭素鋼により形成されることができる。

 絶縁体3は、主体金具4の内周面に滑石(タル )やパッキン等を介して保持されており、絶 縁体3の軸線方向に沿って中心電極2を保持す 軸孔を有する。絶縁体3の先端部は、主体金 具4の先端面から突出した状態で主体金具4に 定されている。
 絶縁体3は、熱を伝えにくい材料で形成され ていれば良く、そのような材料として例えば 、アルミナを主体とするセラミック焼結体が 挙げられる。

 中心電極2は、外材7と、外材7の内部の軸 部に同心的に埋め込まれるように形成され 成る内材8と、外材7の先端面に接合されて る貴金属チップ9とにより形成されている。 心電極2は、円柱体であり、先端部が絶縁体 3の先端面から突出した状態で絶縁体3の軸孔 固定されており、主体金具4に対して絶縁保 持されている。中心電極2の先端部は、先端 行くに従って径小となる円錐台形部を有し 外材7により形成されて成る円錐台形部の先 面に、円柱状の貴金属チップ9が、適宜の溶 接手法例えばレーザ溶接又は電気抵抗溶接に より溶融固着されている。この貴金属チップ 9は、円錐台形部の直径より小さい直径を有 る。中心電極2における貴金属チップ9は、通 常、円柱形状を有し、その直径は0.3~1.5mm、高 さは0.4~2.5mmであるのが好ましい。

 外材7は、例えば、Ni合金などの耐熱性及 耐食性に優れた金属材料により形成されて る。内材8は、例えば、銅(Cu)又は銀(Ag)など 熱伝導性に優れた金属材料により形成され 成る。

 接地電極6は、例えば、角柱体に形成され て成り、一端が前記主体金具4の端部に接合 れ、途中で略L字に曲げられている電極母材1 0と、前記電極母材10の他端の側面に接合され ている円柱状の貴金属チップ5とにより形成 れ、前記貴金属チップ5の先端面と前記中心 極2の先端面とが、火花放電間隙Gを介して 対向するように、接地電極6の形状及び構造 設計される。図1(a)、(b)にはその接地電極の 一例が示される。

 この火花放電間隙Gは、中心電極2におけ 貴金属チップ9の先端面と接地電極6における 貴金属チップ5の先端面との間の間隙であり この火花放電間隙Gは、通常、0.3~1.5mmに設定 れる。また、中心電極2における貴金属チッ プ9がない場合には、火花放電間隙Gは、中心 極2の先端面と接地電極6における貴金属チ プ5の先端面との間の間隙であり、この火花 電間隙Gは、通常、0.3~1.5mmに設定される。

 電極母材10は、Niを主成分としてCrとAlとSiと Feとを含有するNi合金により形成されて成り Crが15質量%以上30質量%以下、かつ、Alが1.5質 %以上4質量%以下含有されて成り、好ましく 、Crが20質量%以上25質量%以下、かつ、Alが2 量%以上3質量%未満含有されて成る。電極母 10を形成しているNi合金は、Crが15質量%以上 有されることにより、酸化雰囲気においてCr 2 O 3 保護皮膜(単に保護皮膜と称することもある )が生成し、耐酸化性を向上させることがで る。このCr 2 O 3 保護皮膜は、電極母材10の表面及び溶接部11 表面に形成される。なお、前記表面とは、 極母材10と溶接部11との接触面ではなく、酸 雰囲気に曝される外側表面のことである。 た、電極母材10を形成しているNi合金は、Al 1.5質量%以上含有されることにより、Cr 2 O 3 保護皮膜の密着性を向上させると共に、Cr 2 O 3 保護皮膜直下にAl 2 O 3 が生成されるので、耐酸化性を向上させるこ とができる。一方、電極母材10を形成してい Ni合金が、Crが15質量%未満又はAlが1.5質量%未 満含有されている場合には、電極母材10の表 が酸化され易くなってしまう。また、電極 材10を形成しているNi合金が、Crが30質量%を えて含有されている場合には、Ni-Cr金属間 合物が生成されることにより、内部酸化が 進されてしまい、Alが4質量%を超えて含有さ ている場合には、Cr 2 O 3 保護皮膜より優先的にAl 2 O 3 が電極母材の表面に点在してしまうことによ り、均一なCr 2 O 3 保護皮膜を電極母材の表面に生成させること ができないので、酸化が促進されてしまう。 このように、電極母材10を形成しているNi合 におけるCrとAlとの含有量が前記範囲外であ 場合には、電極母材10が酸化され易くなっ しまうので、電極母材の体積が減少する、 なわち貴金属チップ周辺における電極母材 厚みが減少してしまうことがある。

 図2(a)、(b)は、内燃機関内において熱サイ クルを受ける前後における貴金属チップと電 極母材との接合状態を示す半断面拡大説明図 である。図2(a)に示される熱サイクルを受け 前の電極母材210aと図2(b)に示される熱サイク ルを受けた後の電極母材210bとでは、熱サイ ルを受けた後の電極母材210bの方が、その厚 が厚みBだけ薄くなっている。この電極母材 210a、210bの厚みの減少は、電極母材210a、210b 酸化されたことによるものである。円柱形 を有する貴金属チップ25a、25bは、電極母材21 0a、210bの表面から突出した状態で接合されて いる。図2(a)、(b)に示すように、熱サイクル 受ける前後において電極母材210bの厚みが、 みBだけ減少すると、貴金属チップ25bの突出 量は厚みBの分だけ大きくなる。そうすると 外力が貴金属チップ25bに作用した場合の弱 、例えばクラックが溶接部211bに存在すると 熱サイクル及び発火時の衝撃により、貴金 チップ25bが折れ易くなり、電極母材210bから 脱落し易くなってしまう。さらに、電極母材 210a、210bを形成しているNi合金のCrの量が30質 %を超え、かつ、Alの量が4質量%を超えると Ni合金が固溶硬化し、伸線及び曲げ加工が困 難となるので、L字曲線を有する電極母材210a 210bとする場合には好ましくない。なお、電 極母材210a、210bを形成しているNi合金に含ま ているSiは、不可避不純物として含有される 場合もある。

 内燃機関内において熱サイクルを受ける 後における電極母材の厚みの減少量は、熱 イクルを受ける前の電極母材の厚みと熱サ クルを受けた後の電極母材の厚みとを測定 、この測定値から熱サイクルを受ける前後 おける電極母材の厚みの差Bを算出すること により求めることができる。

 電極母材10の平均硬度は、Hv150以上Hv220以 であるのが好ましく、Hv160以上Hv220以下であ るのが特に好ましい。電極母材10の平均硬度 前記範囲内にあると、エンジン内加熱下及 振動による電極母材10自身の折損を防ぐこ ができること、また、剛性が高いというこ から振動も抑えられ貴金属チップ35と溶接部 311との界面の内部酸化層312に生じるクラック の進展を抑制することができる。さらに、電 極母材の硬度が前記範囲内にあると、L字型 いは緩やかに半円状に極性された湾曲型の 極母材は曲成部における折損事故が容易に こらなくなるという特有の効果も奏される

 電極母材の平均硬度は、次のように測定 て求めることができる。電極母材の長手方 に沿う中心軸線に直交する平面で電極母材 切断することにより現われる電極母材の断 における任意の面積の断面中で任意の数の 定点を選択してその測定点で硬度を測定し 得られる任意の数の測定値を平均すること より、平均硬度が求められる。もっとも、 極母材の硬度、溶接部の硬度及び中心電極 平均硬度を効率良く測定するのであれば、 金属チップが溶接されている電極母材の端 において、貴金属チップの中心軸線を含む 面が現われるように溶接部を介して貴金属 ップを有する電極母材を切断することによ 現われる電極母材の切断面において、任意 数の硬度測定点を選択し、この硬度測定点 マイクロビッカース硬度計により0.5N荷重の 条件でJIS Z 2244に準拠して電極母材の硬度を 測定する。そして任意の数の硬度測定値を平 均することにより、電極母材の平均硬度が求 められる。なお、硬度測定点の数としては4~1 6を挙げることができるが、通常は縦3列及び 3列に等間隔に並んだ9点を好適例として挙 ることができる。

 図1(a)、(b)に示されるように、接地電極6 おける貴金属チップ5は、通常、円柱形状を し、直径が0.5~2.0mm、高さが0.4~1.5mmであるの 好ましい。貴金属チップ5の大きさが前記範 囲内であると、着火性、放熱性、及び接合性 等の観点で好ましく、耐久性に優れたスパー クプラグ1とすることができる。

 中心電極2に接合されて成る貴金属チップ 9と電極母材10に接合されて成る貴金属チップ 5としては、Pt、Pt合金、Ir、Ir合金などの貴金 属により形成され、例えば、Ptを主成分とし  Ir、Rh、Nb、W、Pd、Re、Ru、Osのうちの少な とも一つが添加されて成るPt合金チップ、及 びIrを主成分としてPt、Rh、Nb、W、Pd、Re、Ru、 Osのうちの少なくとも一つが添加されて成るI r合金チップを挙げることができる。Pt及びIr 主成分とした場合に、それ以外に添加され 成分は、5~50質量%の範囲内で添加されるの 好ましい。

 電極母材10に接合されて成る貴金属チッ 5は、中心電極2に接合されて成る貴金属チッ プ9よりも温度差の激しい苛酷な環境に置か ているので、後述するようにその特性を規 することにより耐久性を向上させる必要が る。

 電極母材10に接合されて成る貴金属チッ 5は、その平均硬度が260以上650以下であり、 に260以上550以下であるのが好ましい。貴金 チップ5を電極母材10に溶接する際には、貴 属チップに通常外的負荷が加えられる。こ 外的負荷としては、ハンドリング時に生じ 応力、溶接時の熱衝撃、及びスパークプラ 1作製工程時において治具との接触あるいは 落下等といった不慮の衝撃等が挙げられる。 貴金属チップの平均硬度が260以下であると、 ハンドリング時に生じる応力及び不慮の衝突 等の機械的応力により、貴金属チップ5が変 してしまうおそれがある。貴金属チップの 均硬度が650以上であると、前記機械的応力 より欠けが生じるおそれがあり、さらに溶 時の熱衝撃により割れを生じるおそれがあ 。

 貴金属チップの平均硬度は、次のようにし 測定することができる。貴金属チップの長 方向に沿う中心軸線を含む平面が断面に成 ように貴金属チップを切断することにより われる貴金属チップの断面における任意の 積の断面中で任意の数の測定点を選択して の測定点で硬度を測定し、得られる任意の の測定値を平均することにより、平均硬度 求められる。もっとも、電極母材の硬度、 接部の硬度及び中心電極の平均硬度を効率 く測定するのであれば、貴金属チップが溶 されている電極母材の端部において、貴金 チップの中心軸線を含む断面が現われるよ に溶接部を介して電極母材に接合された貴 属チップを切断することにより現われる貴 属チップの切断面において、任意の数の硬 測定点を選択し、この硬度測定点でマイク ビッカース硬度計により0.5N荷重の条件でJIS  Z 2244に準拠して貴金属チップの硬度を測定 する。そして任意の数の硬度測定値を平均す ることにより、貴金属チップの平均硬度が求 められる。なお、硬度測定点の数としては4~1 6を挙げることができるが、通常は縦3列及び 3列に等間隔に並んだ9点を好適例として挙 ることができる。
 なお、電極母材に貴金属チップが未だ接合 れていない場合には、貴金属チップの中心 線を含む断面が現われるように貴金属チッ を切断し、切断により現われる貴金属チッ の断面について硬度測定をしてもよい。

 貴金属チップの作製法を下記する。貴金 チップは、貴金属材料のインゴットを熱間 は冷間による鍛造、圧延、スウェージャ、 ち抜き、及び伸線等の加工により作製する 貴金属チップが、この加工により生じる加 歪により硬度が高くなることを、加工硬化 いう。貴金属チップは、焼結法により作製 れるよりもアーク溶解炉等を使用する溶解 によりインゴットを作製し、次いで前記加 方法により加工硬化を伴って作製されるの 好ましい。焼結法は、所望の組成を有する 金属粉末を成形し、所望の形状を有する貴 属チップを焼き固める方法である。この焼 法により貴金属チップを作製した場合には 組成を均一化することが難しく、また脆く 金属チップの欠けが生じやすくなることか 、耐久性に劣るという不都合が生じる。一 、貴金属チップが溶解法と前記加工方法と より作製され、加工硬化により前記範囲内 平均硬度を有する場合には、貴金属チップ その内部に歪を有することになる。エンジ を稼働することにより貴金属チップが高温 に曝されると、この歪が除かれて、この貴 属材料が再結晶化して組織が微細化する。 の組織の微細化は、熱サイクルによる結晶 界の脱落を抑制することができるので、貴 属チップの熱サイクル環境下における耐久 を向上させることができる。

 貴金属チップは、熱間又は冷間による鍛 、圧延、及びスウェージャのいずれか1つを 経た後に打ち抜きまたは伸線され、加工硬化 するのが好ましい。伸線された線材の加工組 織は、伸線方向すなわち長手方向に繊維状と なるので、この線材を所望の長さに切断して 、この切断面を電極母材10の側面と接触させ 溶接するように形成されるのが好ましい。 れは次の理由による。貴金属チップと電極 材とを溶接すると、一般に熱残留応力が生 る。本実施例においては、貴金属チップの 膨張係数が電極母材の熱膨張係数よりも低 ことから、主に貴金属チップの側面に引張 応力が生じ、その結果、貴金属チップに割 が生じ易くなる。しかし、伸線により得ら た伸線方向の繊維状の組織が、電極母材の 触面に対して垂直になるように貴金属チッ が溶接されると、この引張り応力により生 る、貴金属チップの割れを防止することが きる。一般的に厚い(長い)貴金属チップほ 伸線による加工をするのが好ましい。また 伸線による加工は、長さ及び径方向共に寸 精度に優れているので好ましい。一方、厚 が薄いものは切り出しの際に砥石の抵抗に り変形する可能性が高い為、打ち抜きによ 作製が好ましい。打ち抜きは、前記加工法 うち鍛造、圧延などによりシート状に作製 たものを金型で打ち抜く手法である。貴金 電極が薄い場合は、前記熱残留応力は溶接 に水平な方向の引っ張り応力となる。この ち抜きにより得られた貴金属チップは溶接 に対し水平な加工組織を有するので、この 留応力による貴金属チップの割れを防止す ことができる。

 貴金属チップ5は、レーザ溶接又は電気抵 抗溶接により電極母材10に溶融固着されるの 、貴金属チップ5と電極母材10との境界には 貴金属チップ5と電極母材10とが溶融して形 されて成る溶接部11が設けられている。

 溶接部11は電極母材10と貴金属チップ5とに 記溶接を行うことにより形成される。した って、溶接部11は、電極母材を形成する物質 と貴金属チップを形成する物質とに由来する 物質で、形成される。
 このようにして形成される溶接部11の組成 、NiとCrとAlとSiとFeとの合計質量が溶接部の 質量に対して5質量%以上35質量%以下であり 好ましくは、10質量%以上32質量%以下である
 また、溶接部11の組成は、CrとAlとSiとFeとの 合計質量が溶接部の全質量に対して3質量%以 9.5質量%以下であるのが好ましく、5質量%以 8質量%以下であるのがより好ましい。
 さらに、溶接部11の組成は、CrとAlとSiとの 計質量が溶接部の全質量に対して2質量%以上 4質量%以下であるのが好ましく、3.5質量%以上 3.8質量%以下であるのがより好ましい。
 溶接部11の組成が前記範囲内にある場合に 、図3に示すように、貴金属チップ35と溶接 311との界面に内部酸化層312が生成されるの 抑制することができるので、内燃機関内に ける熱サイクルの影響により内部酸化層312 生じるクラックの生成を抑制することがで る。したがって、クラックの生成により貴 属チップ35が電極母材310から剥離又は脱落す るのを防止することができる。その結果、電 極母材と貴金属チップとの接合性が良好なス パークプラグを提供することができる。

 貴金属チップ35と溶接部311との界面に内 酸化層312が生成される原因の一つとして、 金属中の酸素拡散速度は非常に速いのに対 、Ni中の酸素拡散速度は貴金属に比べて2桁 度遅いことが挙げられる。貴金属中の酸素 散速度は非常に速いので、貴金属チップ35側 から酸素が内部、つまり溶接部311及び電極母 材310側へと拡散進入していく。溶接部311は貴 金属及びNi合金に含まれる元素を含んでいる で、溶接部311の酸素拡散速度は貴金属チッ 35に比べて遅い。したがって、貴金属チッ 35側から拡散浸入してきた酸素の拡散速度は 、溶接部311で低下し、貴金属チップ35と溶接 311との界面で酸素が濃化する。溶接部311に まれるCr、Al、Si、及びFeは、Niより酸化し易 いので、Cr、Al、Si、及びFeが、濃化した酸素 より酸化されることにより内部酸化層312が 成される。

 本発明に係るスパークプラグにおける溶 部は、NiとCrとAlとSiとFeとの合計質量が前記 範囲内にあると、貴金属チップと溶接部との 界面において酸素が濃化するのを抑制するこ とができ、さらに、CrとAlとSiとFeとの合計質 が前記範囲内にあると、これらの元素が酸 されることにより生成される内部酸化層の 成を抑制することができる。

 溶接部の組成は次のようにして決定する とができる。すなわち、溶接部における任 の複数箇所を選択し、EPMAを利用して、WDS(Wa velength Dispersive X-ray Spectrometer)分析を行うこ とにより、各々の箇所の質量組成を測定する 。次に、測定した複数箇所の値の平均値を算 出して、この平均値を溶接部の組成とする。

 溶接部の平均硬度は、Hv255以上Hv400以下で あり、好ましくは、Hv280以上Hv350以下である 溶接部の平均硬度がHv400を超える場合には、 溶接部が脆性を有するようになるので、熱疲 労によりクラックが生成し易くなってしまう 。溶接部の平均硬度がHv255未満である場合に 、内燃機関内における熱サイクルの影響に り、貴金属チップと電極母材との間に熱膨 率の差による歪が生じた場合に、溶接部に ける平均硬度が小さいので、クラックが生 し易くなってしまう。しかし、溶接部の平 硬度が前記範囲内にあると、溶接部にクラ クが生成しにくくなるので、貴金属チップ 電極母材から剥離又は脱落してしまうのを 止することができる。その結果、電極母材 貴金属チップとの接合性が良好なスパーク ラグを提供することができる。

 クラックの生成は、溶接部を金属顕微鏡 察することにより確認することができる。

 溶接部の平均硬度は、次のように測定す ことができる。貴金属チップが溶接されて る電極母材の端部において、貴金属チップ 中心軸線を含む断面が現われるように溶接 を介して貴金属チップを接合した電極母材 切断することにより現われる溶接部の切断 において、任意の数の硬度測定点を選択し この硬度測定点でマイクロビッカース硬度 により0.5N荷重の条件でJIS Z 2244に準拠して 溶接部の硬度を測定する。そして任意の数の 硬度測定値を平均することにより、溶接部の 平均硬度が求められる。なお、硬度測定点の 数としては10~40を挙げることができるが、通 は30箇所を好適例として挙げることができ 。なお、溶接部における測定点の数が電極 材における測定点の数或いは貴金属チップ おける測定点の数よりも多くするのは、溶 部では熱による硬度の変化又はバラツキが るからである。

 貴金属チップと電極母材との接合は、レ ザ溶接又は電気抵抗溶接等の適宜の溶接手 により貴金属チップを電極母材に溶融固着 ることができる。特に、電極母材表面の、 えば表面粗さや酸化物の影響を受けずに信 性の高い溶接強度が得られる点からレーザ 接が好ましい。レーザを用いて貴金属チッ と電極母材とを接合する場合には、貴金属 ップを電極母材の所定位置に設置し、貴金 チップの斜め上方から貴金属チップと電極 材との接触部分を部分的に又は全周に渡っ レーザビームを照射する。一回のレーザ照 による溶融部が重なり合うように、ほぼ等 隔となるように、全周に渡ってレーザビー を照射すると、貴金属チップと電極母材と 接合が強固になるので、好ましい。

 レーザ照射は、レーザエネルギーが2~8J/ ルス、一回のレーザ照射時間すなわちパル 幅が3m秒以下、特に2m秒以下のレーザ光を使 するのが好ましい。レーザエネルギー及び ルス幅が前記範囲内にあると、溶接部の平 硬度を前記範囲内に調整することができる

 溶接部における組成の調整は、貴金属チ プの外周面においてレーザが照射される軸 向高さを一定にすることにより、貴金属チ プを形成している貴金属の溶解量を一定に 、電極母材を形成しているNi合金の溶解量 増減させることにより行うことができる。 4(a)は、電極母材を形成しているNi合金の溶 量が少ない場合における貴金属チップと電 母材の半断面説明図であり、図4(b)は、電極 材を形成しているNi合金の溶解量が多い場 における貴金属チップと電極母材の半断面 明図である。図4(a)、(b)に示されるように、 金属チップ45a、45bと電極母材410a、410bとの 触面413a、413bから貴金属チップ45a、45bと溶接 部411a、411bとの境界面の内最も貴金属チップ りの位置414a、414bまでの距離Hを一定にする 電極母材410aを形成しているNi合金の溶解量 少なくする場合には、図4(a)に示されるよう に、貴金属チップ45aと電極母材410aとの接触 413aから、溶接部411aと電極母材410aとの境界 の内最も電極母材410a寄りの位置415aまでの距 離haを小さくする。電極母材410bを形成してい るNi合金の溶解量を多くする場合には、図4(b) に示されるように、貴金属チップ45bと電極母 材410bとの接触面413bから、溶接部411bと電極母 材410bとの境界面の内最も電極母材410b寄りの 置415bまでの距離hbを大きくする。なお、前 距離ha、hbは、レーザ照射径及びレーザ照射 エネルギーを調整することにより増減させる ことができる。

 溶接部は、貴金属チップと電極母材とが 望の強度で接合されるように形成されてい ば良く、円柱状の貴金属チップを接地電極 設置した場合における、貴金属チップと接 電極との円形状接触面の環状部分に溶接部 形成されても良いし、この環状部分のうち 一部に形成されていても良い。また、図3に 示すように、貴金属チップ35と電極母材310と 接触面313全面又は一部に形成されていても い。貴金属チップ35と電極母材310との接触 313全面に溶接部311が形成されていると、貴 属チップ35と電極母材310との接合を強固にす ることができるので、好ましい。

 また、貴金属チップ35と電極母材310との 触面313から貴金属チップ35と溶接部311との界 面のうち最も貴金属チップ35寄りの位置314ま の距離Hは0.3~0.7mmであるのが好ましい。前記 範囲内にあると、貴金属チップ35と電極母材3 10との接合を強固にすることができると共に 所望の着火性を保持することができる。

 前述したように貴金属チップ5の平均硬度 は、260以上650以下であり、溶接部11の平均硬 はHv255以上Hv400以下であり、電極母材10の平 硬度は、Hv150~220であるのが好ましい。さら 、前記平均硬度の範囲内で、貴金属チップ5 の平均硬度が溶接部11の平均硬度より大きく かつ溶接部11の平均硬度が電極母材10の平均 硬度より大きい。貴金属チップ5、溶接部11、 電極母材10の順に平均硬度が大きくなってい と、貴金属チップの割れの防止や貴金属チ プ35と溶接部311との界面の内部酸化層312に じるクラックの進展を抑制することができ 。

 前記スパークプラグ1は例えば次のようにし て製造される。すなわち、前記組成を有する Ni合金を所定の形状に加工して電極母材10を 製する。次いで、所定の形状に塑性加工等 よって形成した主体金具4の端部に、電極母 10の一端部をレーザ溶接又は電気抵抗溶接 よって接合する。
 前記工程と前後して、Ni合金等の電極材料 所定の形状に加工して中心電極2を作製し、 定の形状及び寸法を有する絶縁体3に公知の 手法により組み付ける。なお、この中心電極 2の端面には貴金属チップ9をレーザ溶接によ 溶融固着させてもよい。

 次いで、中心電極2が組み付けられた絶縁体 3を電極母材10が接合された主体金具4に組み ける。
 次いで、前記加工硬化により製造された貴 属チップ5を、前記電極母材10における主体 具4に接合されている端部とは反対側の端部 に、レーザ溶接により溶融固着させ、電極母 材10を略L字型になるように曲げて、前記貴金 属チップ5と前記中心電極2の先端面又は側面 が火花放電間隙を介して対向するように調 する。
 なお、電極母材10は、主体金具4に接合され 前に略L字型に曲げられてもよい。また、貴 金属チップ5は、主体金具4に接合された電極 材10が略L字型になるように曲げられた後に 電極母材10の端部に接合されてもよい。

 この発明に係るスパークプラグは、前記 た実施例に限定されることはなく、本願発 の目的を達成することができる範囲におい 、種々の変更が可能である。例えば、図1(b) に示されるスパークプラグ1の接地電極6は、 体金具4の端部に接合されているが、主体金 具の外周面に接合されていてもよい。

 また、中心電極2に接合されて成る貴金属 チップ9は、要求される性能により必要とさ ないこともあるが、貴金属チップ9が中心電 2に接合される場合には、前述した電極母材 10と貴金属チップ5とを接合する場合と同様に して、接合させることができる。

 本発明に係るスパークプラグの他の実施 であるスパークプラグを図5(a)、(b)に示す。 図5(a)は、他の実施形態のスパークプラグの 部断面全体説明図であり、図5(b)は、他の実 形態のスパークプラグの主要部分を示す断 説明図である。このスパークプラグ51は、 5(a)、(b)に示すように、中心電極52と、前記 心電極52の外周に設けられた絶縁体53と、前 絶縁体53を保持する主体金具54と、一端が前 記主体金具54の端部に接合され、他端に貴金 チップ55が接合され、前記貴金属チップ55の 先端面と前記中心電極52の側面とが火花放電 隙G2を介して対向するように配置された接 電極56とを備えている。

 このスパークプラグ51は、接地電極56の主 体金具54に接合されている面とは反対側の端 に接合されて成る貴金属チップ55が、中心 極52の貴金属チップ59の側面と対向するよう 配置されていることの他は、図1(a)、(b)に示 されるスパークプラグ1と同様に形成される とができる。

 接地電極は、図5(a)、(b)に示すように、1 であっても良いし、図6に示されるように、2 つの接地電極66,66が対向するように主体金具6 4の端部に接合されていても良い。さらに、 示はしていないが、3つ以上の接地電極が主 金具の端部に接合され、接地電極の主体金 に接合されている面とは反対側の端面に接 されて成る貴金属チップが、中心電極の貴 属チップの側面と対向するように配置され いても良い。

 本発明に係るスパークプラグは、自動車 エンジンの点火栓として使用されるもので り、エンジンの燃焼室を区画形成するエン ンヘッド(図示せず)に設けられたネジ穴に 入されて固定されて使用される。

<スパークプラグの作製>
 図1(a)、(b)に示されるのと同様の形状を有す るスパークプラグ1を次のようにして作製し 。まず、後述する組成を有するNi合金を角柱 状に加工して電極母材10を作製した。次いで 主体金具4の端部に電極母材10の一端部を接 し、これに中心電極2と絶縁体3とを組み付 た。これと前後して、Pt-20質量%Rhのインゴッ トを作製し、熱間による鍛造を経て伸線加工 をし、伸線方向が円柱の高さとなるように切 断することにより、直径0.7mm、高さ1.0mmの円 形状を有する貴金属チップ5を作製した。次 で、前記電極母材10における主体金具4に接 されている端部とは反対側の端部側面に前 貴金属チップ5を固定し、電極母材10と貴金 チップ5とにレーザビームを照射して溶接固 着させて、電極母材10を略L字型になるように 曲げて、前記貴金属チップ5と前記中心電極2 先端面とが火花放電間隙を介して対向する うに調整した。。なお、レーザビームのレ ザエネルギーは4J/パルス、1回のレーザ照射 時間すなわちパルス幅を2m秒として、全周に って等間隔に8箇所レーザ照射を行った。こ こで、電極母材は、貴金属チップの中心軸に 沿って切断した場合の断面形状が1.3mm(貴金属 チップの中心軸方向の幅)×2.7mm(貴金属チップ の中心軸に直交する方向の幅)の四角形であ 、Ni合金の組成は、Ni:残部、Cr:15~17質量%、Si: 0.1~0.3質量%、Al:1.5~3.0質量%、Fe:0~9.0質量%のも を用いた。

 溶接部における組成の調整は、図4(a)、(b) に示すように、貴金属チップの外周面におい てレーザが照射される軸方向高さを一定とす ることにより貴金属チップを形成している貴 金属の溶解量を一定にし、電極母材を形成し ているNi合金の溶解量を増減させることによ 行った。なお、Ni合金の溶解量は、レーザ 射径を調整することにより管理した。

(冷熱サイクル試験)
 作製したスパークプラグ試験体を、2000ccの ンジンに装着し、5000rpmで1分間保持後、ア ドリング1分間保持という運転条件を100時間 り返すことにより冷熱サイクル試験を行っ 。

(評価方法)
 冷熱サイクル試験後のスパークプラグ1は、 接地電極の長手方向に対し垂直に貴金属チッ プの半断面が観察できるように切り出して、 鏡面研磨を行った。以下の評価項目について 行った測定結果を表1に示す。

1.組成
 スパークプラグ1の溶接部11の組成は、溶接 11における任意の10箇所を選択し、EPMAを利 して、WDS分析を行うことにより、各々の箇 の組成を測定した。次に、測定した10箇所の 値の平均値を算出して、この平均値をスパー クプラグ1の溶接部11の組成とした。なお、分 析は、ビーム径が50~100μm、測定域が溶接部11 に収まるように行った。

2.硬度
 スパークプラグ1の溶接部11の平均硬度は、 ず、図7(a)に示されるように、溶接部11を介 て貴金属チップ5を接合する電極母材10の前 貴金属チップ5の中心軸線P1を有する平面で 極母材10、溶接部11及び貴金属チップ5を切 することにより現われる断面(図7(b)を参照) おいて、図7(b)に示されるように、任意の30 所を選択し、マイクロビッカース硬度計に り、0.5N荷重の条件でJIS Z 2244に準拠して、 々の箇所のマイクロビッカース硬さを測定 た。次に、測定した30箇所の値の平均値を 出して、この平均値をスパークプラグ試験 の溶接部の平均硬度とした。
 貴金属チップ5の平均硬度は、図7(b)に示さ るように、切断した貴金属チップ5の断面に いて、測定領域に溶接部11が入らないよう 注意して、R×L1で示される領域中で縦3列及 横3列に等間隔に並んだ9点を選択し、マイク ロビッカース硬度計により0.5N荷重の条件でJI S Z 2244に準拠して測定した。次に、測定し 9箇所の値の平均値を算出して、この平均値 貴金属チップ5の平均硬度とした。
 電極母材10の平均硬度は、図7(b)に示される うに、切断した電極母材10の断面において 測定領域に溶接部11が入らないように注意し て、R×L2で示される領域中で縦3列及び横3列 等間隔に並んだ9点を選択し、マイクロビッ ース硬度計により0.5N荷重の条件でJIS Z 2244 に準拠して測定した。次に、測定した9箇所 値の平均値を算出して、この平均値を電極 材10の平均硬度とした。なお、電極母材の平 均硬度は、図7(a)で示されるP2で示される曲成 部分における切断面(図7(c)を参照)における測 定値であっても良い。

3.クラック進展率
 クラック進展率は、まず、図3に示すように 、金属顕微鏡観察により、貴金属チップ35と 接部311との界面の長さLとクラックの長さ(M びN)を測定した。次に、貴金属35と溶接部311 との界面の長さLに対するクラックの長さ(M+N) の割合を算出して、この値をクラック進展率 とした。なお、貴金属35と溶接部311との界面 長さを測定する際、例えば硝酸10%溶液でエ チングすることにより、界面が明確になり 定し易くなる。

 冷熱サイクル試験後のスパークプラグ1は いずれも、溶接部11と貴金属チップ5との界面 にクラックが存在していた。

<接地電極の作製>
 CrとAlの量を変化させたNi合金をアーク溶解 にて作製し、この作製したNi合金を線引き 工し、断面形状が1.3×2.7mmの四角形を有する 極母材10を作製した。前述のスパークプラ 1を作製した場合と同様にしてレーザ照射に って、直径0.7mm、高さ1.0mm、Pt-20質量%Rh合金 より形成された貴金属チップ5を前記電極母 材10に接合させ、貴金属チップ5を接合させた 接地電極6を作製した。

(熱サイクル試験)
 作製した接地電極6を、大気中において1200 で30分間保持後、室温で30分間保持すること 100回繰り返すことにより熱サイクル試験を った。

(評価方法)
1.酸化減肉量
 熱サイクル試験後の接地電極6を貴金属チッ プ5の半断面観察ができるように切り出した 熱サイクル試験後の電極母材10の厚さは、金 属顕微鏡により、上述の判断面観察ができる ように切り出した接地電極6から測定した。 2(a)、(b)に示すように、熱サイクル試験前の 極母材の厚さ(1.3mm)と熱サイクル試験後の電 極母材の厚さとの差Bを算出し、この算出値 酸化減肉量とした。この結果を表2に示す。

図1(a)は、本発明に係るスパークプラグ の一実施例であるスパークプラグの一部断面 全体説明図である。図1(b)は、本発明に係る パークプラグの一実施例であるスパークプ グの主要部分を示す断面説明図である。 図2(a)は、熱サイクル試験前における貴 金属チップと電極母材の半断面拡大説明図で ある。図2(b)は、熱サイクル試験後における 金属チップと電極母材の半断面拡大説明図 ある。 図3は、貴金属チップと電極母材との接 合部における断面拡大説明図である。 図4(a)は、電極母材を形成しているNi合 の溶解量が少ない場合における貴金属チッ と電極母材の半断面説明図である。図4(b)は 、電極母材を形成しているNi合金の溶解量が い場合における貴金属チップと電極母材の 断面説明図である。 図5(a)は、本発明に係るスパークプラグ の他の実施例であるスパークプラグの一部断 面全体説明図である。図5(b)は、本発明に係 スパークプラグの他の実施例であるスパー プラグの主要部分を示す断面説明図である 図6は、本発明に係るスパークプラグの 他の実施例であるスパークプラグの主要部分 を示す断面説明図である。 図7(a)は電極母材、溶接部及び貴金属チ ップの硬度測定位置を示す断面説明図であり 、図7(b)は図7(a)におけるP1で切断して現われ 切断面における硬度測定点を示す説明図で り、図7(c)は図7(a)におけるP2で切断して現わ る切断面における硬度測定点を示す説明図 ある。

符号の説明

 1、51、61 スパークプラグ
 2、52、62 中心電極
 3、53、63 絶縁体
 4、54、64 主体金具
 40 ネジ部
 5、9、25a、25b、35、45a、45b、55、59、65、69  金属チップ
 6、56、66 接地電極
 7、57、67 外材
 8、58、68 内材
 10、210a、210b、310、410a、410b、510、610 電極 材
 11、211a、211b、311、411a、411b、511、611 溶接
 216a、216b 外側面
 12、312 内部酸化層
 313、413a、413b 接触面
 314、414a、414b 貴金属チップと溶接部との境 界面の最も貴金属チップ寄りの位置
 415a、415b 溶接部と電極母材との境界面の最 も電極母材寄りの位置
 G 火花放電間隙