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Patent Searching and Data


Title:
SPUTTERING TARGET FOR MAGNETIC RECORDING FILM AND METHOD FOR MANUFACTURING SUCH SPUTTERING TARGET
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/054369
Kind Code:
A9
Abstract:
Provided is a sputtering target for a magnetic recording film, by which film formation efficiency and film characteristics can be improved by suppressing growth of crystal grains, reducing magnetic permeability and increasing density. A method for manufacturing such sputtering target is also provided. The sputtering target is composed of a matrix phase, which includes Co and Pt, and a metal oxide phase. The sputtering target has a magnetic permeability of 6-15 and a relative density of 90% or more.

Inventors:
KATO KAZUTERU (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/069021
Publication Date:
February 04, 2010
Filing Date:
October 21, 2008
Export Citation:
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Assignee:
MITSUI MINING & SMELTING CO (JP)
KATO KAZUTERU (JP)
International Classes:
C23C14/34; B22F1/00; B22F3/00; B22F3/10; B22F3/14; C22C1/04; C22C1/05; C22C19/07; C22C32/00; C23C14/06
Attorney, Agent or Firm:
SUZUKI, Shunichiro (JP)
Shunichiro Suzuki (JP)
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Claims:
 CoおよびPtを含むマトリックス相と、金属酸化物相とからなるスパッタリングターゲットであって、透磁率が6~15、相対密度が90%以上であることを特徴とする磁気記録膜用スパッタリングターゲット。
 前記スパッタリングターゲットの表面を走査型分析電子顕微鏡で観察した際における、前記マトリックス相が形成する粒子の平均粒径、および前記金属酸化物相が形成する粒子の平均粒径がともに0.05μm以上7.0μm未満であり、
かつ前記マトリックス相が形成する粒子の平均粒径が、前記金属酸化物相が形成する粒子の平均粒径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録膜用スパッタリングターゲット。
 X線回折分析において、式(I)で表されるX線回折ピーク強度比が0.7~1.0であることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気記録膜用スパッタリングターゲット。
 前記金属酸化物相が、Si、Ti、Taより選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の磁気記録膜用スパッタリングターゲット。
 前記マトリックス相がさらにCrを含むことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の磁気記録膜用スパッタリングターゲット。
 焼結温度800~1050℃で焼結することにより得られることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の磁気記録膜用スパッタリングターゲット。
 通電焼結法により焼結して得られることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の磁気記録膜用スパッタリングターゲット。
 CoおよびPtを含むマトリックス相と、金属酸化物相とからなり、透磁率が6~15、相対密度が90%以上である磁気記録膜用スパッタリングターゲットの製造方法であって、
 CoおよびPtを含む金属と金属酸化物とを粉末にし、該粉末を焼結温度800~1050℃で焼結した後、300~1000℃/hrの速度で降温する工程を含むことを特徴とする磁気記録膜用スパッタリングターゲットの製造方法。
 前記スパッタリングターゲットの表面を走査型分析電子顕微鏡で観察した際における、前記マトリックス相が形成する粒子の平均粒径、および前記金属酸化物相が形成する粒子の平均粒径がともに0.05μm以上7.0μm未満であり、
かつ前記マトリックス相が形成する粒子の平均粒径が、前記金属酸化物相が形成する粒子の平均粒径よりも大きい磁気記録膜用スパッタリングターゲットを得ることを特徴とする請求項8に記載の磁気記録膜用スパッタリングターゲットの製造方法。
 X線回折分析において、式(I)で表されるX線回折ピーク強度比が0.7~1.0である磁気記録膜用スパッタリングターゲットを得ることを特徴とする請求項8または9に記載の磁気記録膜用スパッタリングターゲットの製造方法。
 前記金属酸化物相が、Si、Ti、Taより選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物を含む磁気記録膜用スパッタリングターゲットを得ることを特徴とする請求項8~10のいずれかに記載の磁気記録膜用スパッタリングターゲットの製造方法。
 前記マトリックス相がさらにCrを含む磁気記録膜用スパッタリングターゲットを得ることを特徴とする請求項8~11のいずれかに記載の磁気記録膜用スパッタリングターゲットの製造方法。
 通電焼結法により焼結することを特徴とする請求項8~12のいずれかに記載の磁気記録膜用スパッタリングターゲットの製造方法。
 
 
Description:
磁気記録膜用スパッタリングタ ゲットおよびその製造方法

 本発明は、磁気記録膜を形成する際に用 られるスパッタリングターゲット、および の製造方法に関する。より詳しくは、低透 率かつ高密度である磁気記録膜用スパッタ ングターゲットおよびその製造方法に関す 。

 外部記録装置として採用されるハードデ スク装置には、高性能なコンピュータおよ デジタル家電等に対応し得る高密度記録性 要求される。近年、このような高密度記録 を充足する垂直磁気記録方式が注目されて り、該方式に用いられる垂直磁化膜として 、Co系合金磁性膜が多く採用されている。 れら磁性膜においては、各相の結晶粒子の きさおよびバラツキを抑制して、各粒子間 磁気的相互作用を低減すれば、媒体ノイズ 低減し、記録密度を向上させることが可能 なること等が知られている。

 こうしたCo系合金磁性膜は、現在スパッ リングターゲットをスパッタリングするこ により得られる。この方法に関して、得ら る膜の高密度記録化、高保磁力化等を実現 るため、用いるスパッタリングターゲット 品質向上を目指すべく様々な研究開発が行 れている。

 たとえば、特許文献1にはCo系合金からな スパッタリングターゲットが開示されてい 。該ターゲットは、Co系合金磁性膜の保磁 の向上およびノイズの低減を実現するため 合金相とセラミックス相を均質に分散させ ものである。該ターゲットは、ある程度微 な混合相を有しており、高い相対密度を示 ているが、このターゲットを製造する際に ける焼結温度が1000~1300℃と比較的高温であ ため、結晶粒の成長が充分には抑制されて らず、透磁率についてもさらに改善する必 があった。

 また、特許文献2には、少なくともCoを含 する金属相と、セラミックス相とを有する パッタリングターゲットが開示されている 該ターゲットは相対密度99%以上と高密度で あるが、酸化物相の長軸粒径は10μm以下に まっている。これは焼結温度が1150~1250℃と 然として高温であることに起因するものと えられる。このターゲットにおいても、結 粒の成長が充分に抑制されているとはいえ かった。

 一方、特許文献3には、保磁力および媒体ノ イズを低減するための、Coを含む合金相とセ ミックス相からなる高密度面内磁気記録媒 用スパッタリングターゲットが開示されて る。該ターゲットは、合金相とセラミック 相とが微細かつ均質に分散したものであり パーティクルを低減し得るものではあるが 該ターゲットの密度については具体的に検 されておらず、また透磁率についても改善 余地があった。

特開平10-88333号公報

特開2006-45587号公報

特開2006-313584号公報

 このように、上記いずれのスパッタリン ターゲットも、結晶粒子の粒成長の抑制、 透磁率、および高密度という品質をすべて 足し得る程度に充足するものではなかった

 本発明は、これらの品質をバランスよく 持できるスパッタリングターゲット、すな ち結晶粒の成長を抑制し、低透磁率かつ高 度とすることにより、成膜効率化および膜 性の向上が実現できる磁気記録膜用スパッ リングターゲット、およびその製造方法を 供することを目的としている。

 本発明の磁気記録膜用スパッタリングタ ゲットは、CoおよびPtを含むマトリックス相 と、金属酸化物相とからなるスパッタリング ターゲットであって、透磁率が6~15、相対密 が90%以上であることを特徴としている。

 また、前記スパッタリングターゲットの 面を走査型分析電子顕微鏡で観察した際に ける、前記マトリックス相が形成する粒子 平均粒径、および前記金属酸化物相が形成 る粒子の平均粒径がともに0.05μm以上7.0μm未 満であり、かつ前記マトリックス相が形成す る粒子の平均粒径が、前記金属酸化物相が形 成する粒子の平均粒径よりも大きいものであ ってもよい。

 さらに、X線回折分析において、式(I)で表 されるX線回折ピーク強度比が0.7~1.0であるの 望ましい。

 また、前記金属酸化物相が、Si、Ti、Taよ 選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物を含 むものでもよく、前記マトリックス相がさら にCrを含んでいてもよい。

 さらに、本発明の磁気記録膜用スパッタ ングターゲットは、焼結温度800~1050℃で焼 することにより得られるのが好ましく、通 焼結法により焼結して得られるのが好まし 。

 本発明の磁気記録膜用スパッタリングター ットの製造方法は、CoおよびPtを含むマトリ ックス相と、金属酸化物相とからなり、透磁 率が6~15、相対密度が90%以上である磁気記録 用スパッタリングターゲットの製造方法で って、
 CoおよびPtを含む金属と金属酸化物とを粉末 にし、該粉末を焼結温度800~1050℃で焼結した 、300~1000℃/hrの速度で降温する工程を含む とを特徴としている。

 本発明の磁気記録膜用スパッタリングタ ゲットは、高密度であり、かつ結晶粒子の 成長を充分に抑制したスパッタリングター ットであるので、パーティクルおよびアー ングの発生を低減することができる。また 低透磁率であるので、スパッタ速度を向上 せることができ、該スパッタリングターゲ トをスパッタリングして磁気記録膜を形成 る際、高速成膜化を実現することが可能と る。

 さらに本発明の製造方法によれば、上記 パッタリングターゲットを容易かつ高速に ることができ、製造工程の効率化を図るこ ができる。

実施例3で得られたスパッタリングター ゲットの切断面のSEM像である。 実施例7で得られたスパッタリングター ゲットの切断面のSEM像である。 比較例3で得られたスパッタリングター ゲットの切断面のSEM像である。 比較例4で得られたスパッタリングター ゲットの切断面のSEM像である。

 次に本発明の磁気記録膜用スパッタリン ターゲット、およびその製造方法について 体的に説明する。

 <磁気記録膜用スパッタリングターゲット >
 本発明の磁気記録膜用スパッタリングター ット(以下、「本発明のスパッタリングター ゲット」ともいう)は、CoおよびPtを含むマト ックス相と、金属酸化物相とからなるスパ タリングターゲットであって、透磁率が6~15 、相対密度が90%以上であることを特徴として いる。

 前記マトリックス相はCoおよびPtとからな り、通常、該ターゲット100モル%中、Coを1~80 ル%、好ましくは1~75モル%、より好ましくは1~ 70モル%の量で、Ptを1~20モル%、好ましくは1~15 ル%、より好ましくは5~15モル%の量で含まれ 。なお、前記金属として、さらにCrを1~20モ %、好ましくは1~15モル%、より好ましくは5~15 モル%の量で含有してもよい。

 また、前記金属酸化物相は金属元素の酸 物からなり、通常、該ターゲット100モル%中 、0.01~20モル%、好ましくは0.01~15モル%、より ましくは0.01~10モル%の量で含まれる。

 金属酸化物としては、具体的には、SiO、SiO 2 、TiO 2 、Ta 2 O 5 、Al 2 O 3 、MgO、CaO、Cr 2 O 3 、ZrO 2 、B 2 O 3 、Sm 2 O 3 、HfO 2 、Gd 2 O 3 が挙げられ、なかでもSi、Ti、Taより選ばれる 少なくとも1種の元素の酸化物であるのが好 しい。残部には、本発明の効果を損なわな 範囲で他の元素を含有してもよい。例えば タンタル、ニオブ、銅、ネオジムなどが挙 られる。

 なお、金属酸化物相には、上記金属酸化物 ほか、マトリックス相を構成する金属が大 中で、あるいは焼結時に酸化されることに り生成された酸化物も微量に含まれる場合 ある。たとえば、金属としてCrを含む場合 その一部がCr 2 O 3 となって金属酸化物相に存在し得る。

 前記マトリックス相に含まれるCoは磁性 態または非磁性状態のどちらをもとり得る 質を有するが、該金属相が均質に分散する とでこのCoが非磁性状態を呈しやすくなるた め、ターゲットにおける重要な物性の一つで もある透磁率を低下させることが可能となる 。本発明のスパッタリングターゲットの透磁 率は、通常6~15、好ましくは6~12、より好まし は6~9である。このように低い透磁率を有す ターゲットであると、漏磁束が高くなるた 、スパッタリング速度を向上させることが き、高速成膜化が容易となる。また、ター ット自体の寿命を伸ばし、ターゲット1枚あ たりの量産性を向上させることもできる。

 本発明のスパッタリングターゲットの相 密度は、焼結後の該スパッタリングターゲ トについてアルキメデス法に基づき測定し 値であり、通常90%以上、好ましくは95%以上 より好ましくは97%以上であり、上限値につ ては特に限定されないが、通常100%以下であ る。上記相対密度の値を有するターゲット、 いわゆる高密度のターゲットとすることによ り、該ターゲットをスパッタリングした際に おける熱衝撃や温度差などに起因するターゲ ットの割れを防止するとともに、ターゲット 厚を無駄なく有効に活用することができる。 また、パーティクルおよびアーキングの発生 を有効に低減することもできるとともに、ス パッタリング速度を向上させる効果をもたら す。したがって、連続生産における欠損を抑 制し、ターゲット単位面積あたりの成膜数を 向上させ、かつ高速成膜化を実現することが 可能となる。

 なお、アルキメデス法とは、ターゲット焼 体の空中重量を、体積(=ターゲット焼結体 水中重量/計測温度における水比重)で除し、 下記式で表される理論密度ρ(g/cm 3 )に対する百分率で定義される相対密度(%)を める方法である;

 (式(X)中、C1~Ciはそれぞれターゲット焼結体 構成物質の含有量(重量%)を示し、ρ~ρiはC1~C iに対応する各構成物質の密度(g/cm 3 )を示す。)。

 また、このような高密度のスパッタリン ターゲットは、成膜された膜の抵抗率を低 させることができるので、本発明のスパッ リングターゲットをスパッタリングするこ により、安定した膜特性を有する磁気記録 を形成することが可能となる。

 このような成分からなるスパッタリング ーゲットにおいては、マトリックス相およ 金属酸化物相の双方ともに粒子を形成して る。たとえば図1に示されるように、ターゲ ット表面を走査型分析電子顕微鏡(SEM)で観察 ると、上記金属酸化物相からなる粒子は黒 で表示され、それ以外の粒子がマトリック 相である。本発明のスパッタリングターゲ トはこれらマトリックス相および金属酸化 相が形成する粒子の平均粒径が、通常0.05~7. 0μm未満、好ましくは0.05~6.0μm、より好ましく は0.5~6.0μmである。なお、平均粒径とは、ス ッタリングターゲットの切断面を走査型分 電子顕微鏡(SEM)で観察し、SEM像1000倍視野に 角線を引き、この線上に存在するマトリッ ス相および金属酸化物相が形成する粒子そ ぞれについて最大粒径および最小粒径を測 し、これらを平均した値を意味する。

 また、マトリックス相が形成する粒子の 均粒径は、金属酸化物相が形成する粒子の 均粒径よりも常に大きい値を示す。

 マトリックス相および金属酸化物相が形 する微細な粒子の平均粒径が上記範囲内で り、かつマトリックス相が形成する粒子の 均粒径が、前記金属酸化物相が形成する粒 の平均粒径よりも大きい値を示した状態で ると、これらの粒子が充分に分散され、か 該粒子の粒成長が効果的に低減された状態 すなわちマトリックス相と金属酸化物相と 均質に分散している状態を維持することが き、該ターゲットをスパッタリングして成 する際、特に固溶した金属酸化物相が塊状 なって膜に付着することにより生じるパー ィクルを有効に低減することができるとと に、アーキングの発生をも抑制することが きる。また、得られる膜の均質性および緻 性も向上させることができる。

 本発明の磁気記録膜用スパッタリングタ ゲットは、X線回折分析において、式(I)で表 されるX線回折ピーク強度比が通常0.7~1.0、好 しくは0.8~1.0である。

 なお、本明細書においてCo-fcc[002]面のX線 折ピークとは、X線源にCuを用いた場合に、2 θ=51°付近に現れるピークを意味する。また Co-hcp[103]面のX線回折ピークとは、X線源にCu 用いた場合に、2θ=82°付近に現れるピークを 意味する。さらに、X線回折ピーク強度とは 単純にこれらピーク高さと半値幅を乗じた (ピーク高さ×半値幅)を意味する。

 本発明のようなCoおよびPtを含むマトリッ クス相に存在する結晶は、fcc構造(立方最密 填構造)、またはhcp構造(六方最密充填構造) 形成するが、これらの結晶構造は互いに相 移し得る。マトリックス相に存在する結晶 fcc構造を形成している場合には、2θ=51°付近 にCo-fcc[002]面のX線回折ピークが発現し、同結 晶がhcp構造を形成している場合には、2θ=82° 近にCo-hcp[103]面のX線回折ピークが発現する したがって、式(I)で表されるX線回折ピーク 強度比の値が上記範囲内であると、マトリッ クス相においてhcp構造よりもfcc構造が多く形 成されていることとなる。このように、本発 明のスパッタリングターゲットのマトリック ス相において、fcc構造を形成する結晶が多く 存在することが、得られるターゲットの透磁 率を低下させる一因になっているものと推定 される。

 本発明のスパッタリングターゲットの焼 温度は、後述するように該ターゲットの組 にも影響され得るが、通常800~1050℃、好ま くは900~1050℃、より好ましくは950~1050℃であ 。焼結温度が上記範囲内であると、比較的 温で焼結できるとともに、得られるターゲ トの密度が必要以上に低下するおそれがな 。このような低温で焼結することで、上記 トリックス相および金属酸化物が形成する 細な粒子の粒成長を有効に抑制したスパッ リングターゲットを得ることが可能となる

 さらに、上記焼結温度で焼結したターゲ トは、通常300~1000℃/hr、好ましくは500~1000℃ /hr、より好ましくは700~1000℃/hrの速度で、上 焼結温度から200℃まで降温するのが望まし 。降温速度が上記範囲内であると、急激に 温することが可能となり、上記マトリック 相および金属酸化物が形成する微細な粒子 粒成長を有効に抑制することができる。

 こうしたCoおよびPtを含むマトリックス相 に存在する結晶が形成するfcc構造は、同結晶 が形成するhcp構造よりも高温域で安定に存在 し得るが、上記のように急激に降温すること で、一度fcc構造を形成した結晶を封じ込め、 hcp構造へ相転移するのを抑制し、fcc構造を有 する結晶粒子を有効に保持することができる ものと推定される。このため、本発明のスパ ッタリングターゲットのマトリックス相に存 在する結晶の多くがfcc構造を有し、上述のよ うなX線回折ピーク強度比を示すものと考え れる。

 焼結方法としては、上記焼結温度条件、 温速度条件を充足する焼結方法であれば特 制限されないが、通電焼結法が好ましい。 の方法であると、低温焼結が可能であると もに高速降温の制御が容易である。

 通電焼結法とは、加圧加電下において大 流を印加することにより焼結をする方法で り、放電プラズマ焼結法、放電焼結法、ま はプラズマ活性化焼結法をも含むものであ 。この方法は、原料粉末の間隙に生じる放 現象を利用して、放電プラズマ等による粒 表面における活性化作用および電場により じる電解拡散効果やジュール熱による熱拡 効果、加圧による塑性変形圧力などが焼結 駆動力となって焼結が促進される。該方法 用いると、上記焼結温度程度の低温度域で っても成形体を充分に焼結することができ また高速降温を容易に実現することができ 。

 <磁気記録膜>
 本発明のスパッタリングターゲットは、磁 記録膜、特に垂直磁化膜の形成に好適に用 られる。垂直磁化膜とは、その磁化容易軸 非磁性基板に対して主に垂直方向に向け、 録密度の向上を図る垂直磁気記録方式によ 記録膜である。本発明のスパッタリングタ ゲットをスパッタリングすることにより、 品質な磁気記録膜を高速成膜することが可 となる。

 成膜の際に採用されるスパッタリング方 としては、通常、DCマグネトロンスパッタ ング方式またはRFマグネトロンスパッタリン グ方式が好適である。膜厚は特に限定される ものではないが、通常5~100nmであり、5~20nmが 適である。

 こうして得られる磁気記録膜は、Coおよ Ptを、目標とする組成比の約95%以上の組成比 で含有することが可能である。また、該磁気 記録膜は、マトリックス相が形成する粒子の 平均粒径が、前記金属酸化物相が形成する粒 子の平均粒径よりも大きいという関係を保持 しつつ、マトリックス相および金属酸化物相 が形成する粒子の大きさを低減した本発明の スパッタリングターゲットから得られること から、均質性および緻密性が高い。さらに、 この磁気記録膜は保磁力だけでなく、垂直磁 気異方性および垂直抗磁力のような磁気特性 にも優れることから、特に垂直磁化膜として 好適に用いることができる。

 <磁気記録膜用スパッタリングターゲット の製造方法>
 本発明の磁気記録膜用スパッタリングター ットの製造方法は、CoおよびPtを含むマトリ ックス相と、金属酸化物相とからなり、透磁 率が6~15、相対密度が90%以上である磁気記録 用スパッタリングターゲットの製造方法で って、CoおよびPtを含む金属と、金属酸化物 からなる粉末を成形し、次いで焼結温度800~ 1050℃で焼結した後、300~1000℃/hrの速度で降温 する工程を含むことを特徴としている。

 本発明のスパッタリングターゲットを得 には、CoおよびPtを含む金属と、金属酸化物 とからなる粉末を用いる。該粉末は、以下の 方法により、粉末(A)から得られる粉末(B)を用 いる。

 粉末(A)は、Coと金属酸化物とをメカニカ アロイングすることにより得る。金属とし Crを含有させる場合には、まずCoとCrとの合 をアトマイズするのが好ましい。この場合 原料として用いる合金は、Cr濃度が、通常5~9 5原子%、好ましくは10~70原子%である。この合 をアトマイズすることにより、粉末を得る

 アトマイズ法としては、特に限定されず、 アトマイズ法、ガスアトマイズ法、真空ア マイズ法、遠心アトマイズ法等のいずれで ってもよいが、ガスアトマイズ法が好まし 。出湯温度は、通常1420~1800℃、好ましくは1 420~1600℃である。ガスアトマイズ法を用いる 合、通常N 2 ガスまたはArガスを噴射するが、Arガスを噴 すると、酸化を抑制することができるとと に球状の粉末が得られるので好ましい。上 合金をアトマイズすることで、平均粒径が10 ~600μm、好ましくは10~200μm、より好ましくは10 ~80μmのアトマイズ粉が得られる。

 そして、Coを含む金属またはCoとCrとの合金 あるいはこれらのアトマイズ粉と金属酸化 とをメカニカルアロイングして粉末(A)を得 。用いる金属酸化物は金属元素の酸化物か なり、具体的には、SiO、SiO 2 、TiO 2 、Ta 2 O 5 、Al 2 O 3 、MgO、CaO、Cr 2 O 3 、ZrO 2 、B 2 O 3 、Sm 2 O 3 、HfO 2 、Gd 2 O 3 が挙げられ、なかでもSi、Ti、Taより選ばれる 少なくとも1種の元素の酸化物であるのが好 しい。残部には、本発明の効果を損なわな 範囲で他の元素を含有してもよい。例えば タンタル、ニオブ、銅、ネオジムなどが挙 られる。メカニカルアロイングは、通常ボ ルミルにて行う。

 この粉末(A)の粉砕率は、通常30~95%、好ま くは50~95%、より好ましくは80~90%である。粉 率が上記範囲であると、粉末(A)を充分に微 化してターゲット内におけるマトリックス と金属酸化物相とを均質に分散させること できるとともに、粉砕率の上昇に伴い増加 る傾向にあるジルコニウムまたは炭素など 不純物の混入を適度に抑制することができ 。

 さらに、金属としてCrを含有させる場合 上記のような粉末(A)を得る代わりに、Cr含有 粉末を直接用いて、次工程以降の処理を行っ てもよい。また、該Cr含有粉末は、CoとCrのほ か、金属酸化物等を含有しているのが好まし い。

 次に、前記粉末(A)とPtとを混合し、粉末(B )を得る。Ptは、単体粉末を用いるのが好まし い。混合方法は、特に限定されないが、ブレ ンダーミル混合が好適である。

 なお、次工程である焼結工程に移行する に粉末(B)を整粒してもよい。整粒には、振 ふるいを用いる。整粒することにより、粉 (B)の均質性をさらに高めることができる。

 得られた粉末(B)を焼結することにより、 発明のスパッタリングターゲットを得る。 結温度は、通常800~1050℃、好ましくは900~1050 ℃、より好ましくは950~1050℃である。焼結時 圧力は、通常10~100MPa、好ましくは20~80MPa、 り好ましくは30~60MPaである。焼結雰囲気は、 通常、非酸素雰囲気であるのが望ましく、な かでもAr雰囲気であるのが好ましい。

 焼結開始時から最高焼結温度に到達する では、通常250~6000℃/h、好ましくは1000~6000℃ /hの速度で、通常10min~4hかけて昇温する。

 最高焼結温度保持時間(焼結時間)は、通 3min~5h程度である。最高焼結温度保持時間が 記範囲内であると、マトリックス相および 属酸化物が形成する微細な粒子の粒成長を 効に抑制することができるとともに、得ら るターゲットの相対密度を向上させること できる。

 さらに、上記焼結温度から200~400℃まで、 通常300~1000℃/hr、好ましくは500~1000℃/hr、よ 好ましくは700~1000℃/hrの速度で、通常1~3hか て降温する。

 本発明のスパッタリングターゲットの製 方法は、焼結温度を上記範囲内とし、かつ 温速度を上記範囲内とすること、すなわち 較的低温下で焼結し、かつ高速で降温する とに特徴を有している。そのため、マトリ クス相および金属酸化物相が形成する粒子 粒成長を有効に抑制することができるとと に、マトリックス相に存在する結晶が形成 るfcc構造を有効に保持することができるの 、得られるターゲットの品質を向上させる とが可能となる。したがって、本発明の製 方法によれば、透磁率が6~15、相対密度が90% 以上のスパッタリングターゲットを容易に得 ることができる。

 特に、好適な焼結温度および最高焼結温度 持時間は、ターゲットの組成により変動し る。具体的には、たとえば、スパッタリン ターゲットの組成がCo66モル%、Pt15モル%、Cr1 0モル%、TiO 2 9モル%からなる場合、焼結温度は800~950℃程度 、最高焼結温度保持時間(焼結時間)は3min~5hで あるのが好ましい。

 また、スパッタリングターゲットの組成がC o68モル%、Pt12モル%、Cr8モル%、SiO 2 12モル%からなる場合、焼結温度は900~1050℃程 、最高焼結温度保持時間(焼結時間)は5min~2h あるのが好ましい。

 さらに、スパッタリングターゲットの組成 Co64モル%、Pt16モル%、Cr16モル%、Ta 2 O 5 5モル%からなる場合、焼結温度は980~1050℃程 、最高焼結温度保持時間(焼結時間)は5min~2h あるのが好ましい。

 上記のような焼結条件を充足すれば、用 る焼結方法に特に制限はないが、通電焼結 によるのが好ましい。たとえば、この通電 結法を用いた場合、所定の形状の治具に原 粉末を充填した後、焼結温度800~1050℃の場 、圧力20~50Pa、焼結時間3min~5hの条件を採用す ることができる。したがって、従来多く採用 されているホットプレス(HP)法を用いて低温 で焼結すると、マトリックス相および金属 化物相が形成する粒子の粒成長はある程度 制できるものの、高密度のターゲットが得 れにくい傾向にあるが、通電焼結法を用い ば、種々の焼結温度条件を制御しやすいた 、低温域で焼結しても上記粒子の粒成長が 制されるとともに、高密度化されたターゲ トが容易に得られる。

 以下、本発明を実施例に基づき具体的に 明するが、本発明はこれらによって限定さ るものではない。なお、各評価は以下の手 に従って行った。

 《相対密度》
 相対密度は、アルキメデス法に基づき測定 た。具体的には、スパッタリングターゲッ 焼結体の空中重量を、体積(=スパッタリン ターゲット焼結体の水中重量/計測温度にお る水比重)で除し、上記式(X)に基づく理論密 度ρ(g/cm 3 )に対する百分率の値を相対密度(単位:%)とし 。

 《透磁率》
 透磁率は、BHトレーサ(東英工業(株)製、出 磁場1kOe)を用いて測定した。

 《マトリックス相および金属酸化物相から る粒子の平均粒径》
 ターゲット切断面を走査型分析電子顕微鏡( 日本電子データム(株)製)で観察し、SEM像(加 電圧20kV)1200μm×1600μm中に存在するマトリッ ス相および金属酸化物相からなる粒子を、 像上に対角線引いた線分上に存在する全て 粒子について、最大粒径および最小粒径を 定し、これを平均した値をマトリックス相 よび金属酸化物相それぞれの平均粒径とし 。

 《X線回折ピーク強度比》
 X線回折分析装置(型式:MXP3、(株)マックサイ ンス製)を用い、以下の測定条件に従って、 得られたスパッタリングターゲットにおける Co-fcc[002]面のX線回折ピーク強度およびCo-hcp[10 3]面のX線回折ピーク強度を測定し、上記式(I) に基づきX線回折ピーク強度比を算出した。

  X線源:Cu
  パワー:40kV、30mA
  測定法:2θ/θ、連続スキャン
  スキャンスピード:4.0deg/min
 《パーティクル数》
 得られたスパッタリングターゲットを用い スパッタリング処理を施した。基板として ラスを用い、これをスパッタリング装置(型 式:MSL-464、トッキ(株)製)に設置し、以下の条 下で上記スパッタリングターゲットをスパ タリングし、φ2.5インチのスパッタリング ーゲット中に発生したパーティクルの数を 定した。

   プロセスガス:Ar
   プロセス圧力:10mTorr
   投入電力:3.1W/cm 2
   スパッタ時間:15sec
 [実施例1]
 CoCrの合金2kgを超小型ガスアトマイズ装置( 新技研社製)を用いて、出湯温度1650℃(放射 度計で測定)下、50kg/cm 2 のArガスを噴射してガスアトマイズすること より粉末を得た。得られた粉末は平均粒径1 50μm以下の球状粉末であった。

 次いで、得られた粉末と、TiO 2 粉末(平均粒径約0.5μm)とを用い、ボールミル てメカニカルアロイングを施し、粉末(A)を た。

 得られた粉末(A)に、さらにPt粉末(平均粒径 0.5μm)およびCo粉末と同様の粉末をそれぞれ 入して、Co 66 Cr 10 Pt 15 (TiO 2 ) 9 の組成比となるように混合し、粉末(B)を得た 。混合にはボールミルを用いた。

 得られた粉末(B)は、さらに振動ふるいを いて整粒した。

 次いで、粉末(B)を成形型に入れ、通電焼 装置を用い、以下の条件下で焼結した。

  [焼結条件]
  結雰囲気:Ar雰囲気
  昇温速度:800℃/hr、昇温時間:1h
  焼結温度:800℃
  最高焼結温度保持時間:10min
  圧力:50MPa
  降温速度:400℃/hr(最高焼結温度から200℃ま で)、降温時間:1.5h 得られた焼結体を切削加 することにより、φ4インチのスパッタリン ターゲットを得た。この焼結体を用いた各 定結果を表1に示す。

 [実施例2~4、参考例1~2]
 実施例1と同様の粉末を用い、表1に示す組 比となるように混合して粉末(B)を得、表1に す焼結条件に従った以外は実施例1と同様に して、φ4インチのスパッタリングターゲット を得た。これらの焼結体を用いた各測定結果 を表1に示す。

 [比較例1]
 実施例1と同様の粉末を用い、表1に示す組 比となるように混合して粉末(B)を得た後、 ットプレス装置を用い、以下の条件下で焼 した以外は実施例1と同様にして、φ4インチ スパッタリングターゲットを得た。この焼 体を用いた各測定結果を表1に示す。

   焼結雰囲気:Ar雰囲気
   昇温速度:450℃/hr、昇温時間:2h
   焼結温度:900℃
   最高焼結温度保持時間:1h
   圧力:30MPa
   降温速度:150℃/hr(最高焼結温度から300℃ で)、降温時間:4h
 [比較例2~4]
 比較例1と同様の粉末を用い、表1に示す組 比となるように混合して粉末(B)を得、表1に す焼結条件に従った以外は比較例1と同様に して、φ4インチのスパッタリングターゲット を得た。これらの焼結体を用いた各測定結果 を表1に示す。

 [実施例5~7、参考例3~4]
 TiO 2 粉末の代わりにSiO 2 粉末(平均粒径約0.5μm)を用い、表1に示す組成 比となるように混合して粉末(B)を得、表1に す焼結条件に従った以外は実施例1と同様に て、φ4インチのスパッタリングターゲット 得た。これらの焼結体を用いた各測定結果 表1に示す。

 [実施例8~9]
 TiO 2 粉末の代わりにTa 2 O 5 粉末(平均粒径約0.5μm)を用い、表1に示す組成 比となるように混合して粉末(B)を得、表1に す焼結条件に従った以外は実施例1と同様に て、φ4インチのスパッタリングターゲット 得た。これらの焼結体を用いた各測定結果 表1に示す。