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Title:
VANADIUM OXIDE THIN FILM PATTERN AND METHOD OF FABRICATING THE SAME
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/035007
Kind Code:
A1
Abstract:
A vanadium oxide thin film pattern, which is fabricated by preparing an APTS-SAM or the like on the surface of a substrate by using APTS (3-aminopropyltriethoxysilane, H2NC3H5Si(OCH3)3), etc., irradiating the APTS-SAM with vacuum ultraviolet light through a photomask, thus modifying amino-terminated silane into a silanol group in the exposed area, and then depositing vanadium oxide in a liquid phase with the use of this patterned self-assembled monolayer having the amino-terminated silane surface area and the silanol group surface area as a template for patterning vanadium oxide; a method of fabricating the same; and a vanadium oxide type device.

Inventors:
MASUDA YOSHITAKE (JP)
KOUMOTO KUNIHITO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/066352
Publication Date:
March 19, 2009
Filing Date:
September 10, 2008
Export Citation:
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Assignee:
NAT INST OF ADVANCED IND SCIEN (JP)
MASUDA YOSHITAKE (JP)
KOUMOTO KUNIHITO (JP)
International Classes:
C01G31/02; C03C17/42; C23C26/00
Foreign References:
JPS59121121A1984-07-13
JPS51111484A1976-10-01
Other References:
KAZUTAKA ONO ET AL.: "Suiyoeki process ni yoru sanka vanadium hakumaku no sakusei t o hyoka", 2005 NEN THE CERAMIC SOCIETY OF JAPAN NENKAI KOEN YOKOSHU, 22 March 2005 (2005-03-22), pages 60
KAZUTAKA ONO ET AL.: "Jiko soshikimaku template-jo eno sanka vanadium hakumaku sakusei", DAI 18 KAI FALL MEETING OF THE CERAMIC SOCIETY OF JAPAN DAI 1 KAI ASIA-OCEANIA CERAMIC RENMEI KOKUSAI KAIGI KOEN YOKOSHU, 27 September 2005 (2005-09-27), pages 223
JUNQIAO WU ET AL.: "Strain-induced self organization of metal-insulator domains in single-crystalline VO2 nonobeams", NANO LETTERS, vol. 6, no. 10, 2006, pages 2313 - 2317
JING-JONG SHYUE ET AL.: "Deposition of vanadium(V) oxide thin films on nitrogen-containing self-assembled monolayers", CHEMISTRY OF MATERIALS, vol. 17, no. 4, 22 February 2005 (2005-02-22), pages 787 - 794
Attorney, Agent or Firm:
SUDO, Masahiko (6-1 Nihonbashi-Muromachi 1-chome, Chuo-k, Tokyo 22, JP)
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Claims:
 基板上にバナジウム含有固体を析出する溶液反応系で析出させたバナジウム酸化物薄膜であって、該バナジウム酸化物が基板のアミノ基終端シラン領域に形成されていることを特徴とするバナジウム酸化物薄膜。
 バナジウム酸化物薄膜が、基板のアミノ基終端シラン領域に選択的に形成されており、バナジウム酸化物薄膜パターンとなっている、請求項1に記載のバナジウム酸化物薄膜。
 基板が、ガラス、シリコン、金属、セラミックス、又はポリマーの基板である、請求項1又は2に記載のバナジウム酸化物薄膜。
 基板が、平板状、粒子、繊維、又は複雑形状の形態を有している、請求項1から3のいずれかに記載のバナジウム酸化物薄膜。
 基板が、該基板上に、アミノ基とシラノール基とシラノール基でパターン化された自己組織化単分子膜を形成させた基板である、請求項2に記載のバナジウム酸化物薄膜。
 基板上に形成させたバナジウム酸化物薄膜を製造する方法であって、1)基板上にアミノ基終端シラン表面とシラノール基表面を有するパターン化自己組織化単分子膜を作製し、2)該パターン化自己組織化単分子膜をバナジウム含有固体を析出する溶液反応系に浸漬し、バナジウム酸化物を液相で析出させる、ことを特徴とするバナジウム酸化物薄膜の製造方法。
 反応系の温度、原料濃度、添加剤及び/又はpHを調整することによりバナジウム酸化物を液相で析出させる、請求項6に記載のバナジウム酸化物薄膜の製造方法。
 上記自己組織化単分子膜の代わりに、pH5において正のゼータ電位を有する基板表面を用いる、請求項6に記載のバナジウム酸化物薄膜の製造方法。
 溶液反応系として、水溶液反応、排水溶液反応又は水熱反応の反応系を用いる、請求項6に記載のバナジウム酸化物薄膜の製造方法。
 請求項1から5のいずれかに記載のバナジウム酸化物薄膜乃至バナジウム酸化物薄膜パターンを構成要素として含むことを特徴とするバナジウム酸化物系デバイス。
Description:
バナジウム酸化物薄膜パターン びその作製方法

 本発明は、バナジウム酸化物薄膜乃至バ ジウム酸化物薄膜パターン及びそれらの作 方法に関するものであり、更に詳しくは、 発明は、自己組織化単分子膜をテンプレー とし、アミノ基終端シラン領域上に形成さ たバナジウム酸化物薄膜乃至バナジウム酸 物薄膜パターン、その作製方法及びそのデ イス製品に関するものである。

 本発明のバナジウム酸化物薄膜乃至バナ ウム酸化物薄膜パターンは、基板との界面 おいて、APTS-SAMのアミノ基又はアミノ基由 のN原子を有することを特徴としている。本 明は、例えば、熱応答性遮熱ガラス(スマー トウィンドウ)、温度センサー等として好適 利用できるバナジウム酸化物薄膜乃至バナ ウム酸化物薄膜パターン及びその製品を提 するものである。

 バナジウム酸化物(VOx)は、触媒[非特許文 1]、スイッチングデバイス向け素子[非特許 献2]、帯電防止コーティング[非特許文献3] 温度センサー[非特許文献4]、リチウムイオ 電池の陰極[非特許文献5-6]、エレクトロクロ ミックディスプレーデバイスの対極[非特許 献7]などとして、高い注目を集めている。

 特に、バナジウム酸化物は、遷移温度(転 移温度、Tt)において、低温の単斜晶から高温 の正方晶への半導体-金属相転移により、光 特性及び電気特性が劇的に変化する特性を している[非特許文献8-9]。

 バナジウム酸化物(VO 2 )は、遷移温度が室温に近い68℃付近であるこ とから、熱応答性遮熱ガラス(スマートウィ ドウ)[非特許文献10-12]、温度センサー[非特 文献4]、非冷却赤外線ボロメーター(非冷却 外線検知器)[非特許文献13]、ホログラフィッ クストレージシステム(感光効率の高い材料 用いたデータ記録媒体)[非特許文献14]、オプ ティカルファイバースイッチングデバイス( 学繊維スイッチングデバイス)[非特許文献15] 、超高速スイッチングデバイス[非特許文献16 ]、フォトニッククリスタル[非特許文献17]な への有力材料として期待されている。

 そのため、マグネトロンスパッタリング[ 非特許文献8,18-19]、電子線蒸着[非特許文献20- 21]、化学気相堆積法[非特許文献22-25]、ゾル ル法[非特許文献2-3,7]、パルスレーザー堆積 [非特許文献26]など、様々な手法によるバナ ジウム酸化物及び関連物質の合成が報告され ている。

 また、具体例として、バナジウム酸化物( VOx)は、触媒、スイッチングデバイス向け素 、帯電防止コーティング、温度センサー、 チウムイオン電池の陰極、エレクトロクロ ックディスプレーデバイスの対極などとし 高い注目を集めている。特に、バナジウム 化物は、遷移温度(転移温度、Tt)において、 温の単斜晶から高温の正方晶への半導体-金 属相転移により、光学特性及び電気特性が劇 的に変化する特性を有している。

 このように、バナジウム酸化物(VO 2 )は、遷移温度が室温に近い68℃付近であるこ とから、熱応答性遮熱ガラス(スマートウィ ドウ)、温度センサー、非冷却赤外線ボロメ ター(非冷却赤外線検知器)、ホログラフィ クストレージシステム(感光効率の高い材料 用いたデータ記録媒体)、オプティカルファ イバースイッチングデバイス(光学繊維スイ チングデバイス)、超高速スイッチングデバ ス、フォトニッククリスタルなどへの有力 料として期待されている。そのため、マグ トロンスパッタリング、電子線蒸着、化学 相堆積法、ゾルゲル法、パルスレーザー堆 法など、様々な手法によるバナジウム酸化 及び関連物質の合成が報告されている。

 最近、低耐熱性ポリマーや透明導電膜上へ デバイス構築の観点から、水溶液プロセス 注目されている。水溶液プロセスは、低消 エネルギー、低CO 2 排出、焼結のための有機バインダーの不使用 、環境調和型プロセスの点においても、大き な利点を有している。また、マイクロデバイ ス作製のためには、薄膜の微細加工が強く求 められている。

 しかし、バナジウム酸化物の高い特性は 薄膜のマイクロパターン形成時のエッチン により、大きく劣化してしまう。そのため エッチングプロセスを経ない薄膜のマイク パターニング技術が必要とされている。

 このように、バナジウム酸化物に関する従 技術における問題点(課題)として、低耐熱 基材へのコーティングができない、大面積 が困難、複雑形状基材へのコーティングが 難、設備投資・製造コストが高い、などの 題点があった。また、マイクロデバイス作 のためには、薄膜の微細加工が強く求めら ている。しかし、バナジウム酸化物の高い 性は、薄膜のマイクロパターン形成時のエ チングにより、大きく劣化してしまう。そ ため、エッチングプロセスを経ない薄膜の イクロパターニング技術の開発が必要とさ ていた。更に、低消費エネルギー、低CO 2 排出、焼結のための有機バインダーの不使用 、環境調和型プロセスへの移行の要請が増し ている。

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 このような状況の中で、本発明者らは、 記従来技術に鑑みて、エッチングプロセス 経ないバナジウム酸化物薄膜のマイクロパ ーニング技術を開発することを目標として 意研究を積み重ねた結果、自己組織化単分 膜を用いることにより、基板上へバナジウ 酸化物膜乃至そのパターン化形成が可能で ることを見出し、本発明を完成するに至っ 。本発明は、上記従来の事情に鑑みてなさ たものであり、バナジウム酸化物薄膜乃至 ナジウム酸化物薄膜パターンを提供し、か 、これらの作製方法を提供することを目的 するものである。

 上記課題を解決するための本発明は、以下 技術的手段から構成される。
(1)基板上にバナジウム含有固体を析出する溶 液反応系で析出させたバナジウム酸化物薄膜 であって、該バナジウム酸化物が基板のアミ ノ基終端シラン領域に形成されていることを 特徴とするバナジウム酸化物薄膜。
(2)バナジウム酸化物薄膜が、基板のアミノ基 終端シラン領域に選択的に形成されており、 バナジウム酸化物薄膜パターンとなっている 、前記(1)に記載のバナジウム酸化物薄膜。
(3)基板が、ガラス、シリコン、金属、セラミ ックス、又はポリマーの基板である、前記(1) 又は(2)に記載のバナジウム酸化物薄膜。
(4)基板が、平板状、粒子、繊維、又は複雑形 状の形態を有している、前記(1)から(3)のいず れかに記載のバナジウム酸化物薄膜。
(5)基板が、該基板上に、アミノ基とシラノー ル基とシラノール基でパターン化された自己 組織化単分子膜を形成させた基板である、前 記(2)に記載のバナジウム酸化物薄膜。
(6)基板上に形成させたバナジウム酸化物薄膜 を製造する方法であって、1)基板上にアミノ 終端シラン表面とシラノール基表面を有す パターン化自己組織化単分子膜を作製し、2 )該パターン化自己組織化単分子膜をバナジ ム含有固体を析出する溶液反応系に浸漬し バナジウム酸化物を液相で析出させる、こ を特徴とするバナジウム酸化物薄膜の製造 法。
(7)反応系の温度、原料濃度、添加剤及び/又 pHを調整することによりバナジウム酸化物を 液相で析出させる、前記(6)に記載のバナジウ ム酸化物薄膜の製造方法。
(8)上記自己組織化単分子膜の代わりに、pH5に おいて正のゼータ電位を有する基板表面を用 いる、前記(6)に記載のバナジウム酸化物薄膜 の製造方法。
(9)溶液反応系として、水溶液反応、排水溶液 反応又は水熱反応の反応系を用いる、前記(6) に記載のバナジウム酸化物薄膜の製造方法。
(10)前記(1)から(5)のいずれかに記載のバナジ ム酸化物薄乃至バナジウム酸化物薄膜パタ ン膜を構成要素として含むことを特徴とす バナジウム酸化物系デバイス。

 次に、本発明について更に詳細に説明する
 本発明は、基板上にバナジウム含有固体を 出する溶液反応系で析出させたバナジウム 化物薄膜であって、基板のアミノ基終端シ ン領域に形成されていることを特徴とする のである。また、本発明は、上記バナジウ 酸化物薄膜において、バナジウム酸化物薄 が、基板のアミノ基終端シラン領域に選択 に形成されており、バナジウム酸化物薄膜 ターンとなっていること、基板が、該基板 に、アミノ基とシラノール基とシラノール でパターン化された自己組織化単分子膜を 成させた基板であること、を好ましい実施 態様としている。

 また、本発明は、基板上に形成させたバ ジウム酸化物薄膜を製造する方法であって 基板上にアミノ基終端シラン表面とシラノ ル基表面を有するパターン化自己組織化単 子膜を作製し、該パターン化自己組織化単 子膜をバナジウム含有固体を析出する溶液 応系に浸漬し、バナジウム酸化物を液相で 出させる、ことを特徴とするものである。 発明では、反応系の温度、原料濃度、添加 及び/又はpHを調整することによりバナジウ 酸化物を液相で析出させること、を好まし 実施の態様としている。

 更に、本発明は、バナジウム酸化物系デ イスであって、上記のバナジウム酸化物薄 乃至バナジウム酸化物薄膜パターンを構成 素として含むことを特徴とするものである 本発明では、自己組織化単分子膜を用いる とにより、ガラス等の基板上へのバナジウ 酸化物膜のパターン化形成を実現した。

 本発明では、エッチングプロセスを用い ことなく、薄膜パターンを形成している。 のため、エッチングに伴う特性劣化も回避 ることができる。また、原料を全て薄膜形 に使用することができる。作製したバナジ ム酸化物膜は、可視光領域及び近赤外光領 において、昇温に伴う透過率の減少(サーモ クロミック特性)を有している。

 また、水溶液プロセスを用いて薄膜のパ ーン化形成を実現しているため、PETやポリ ミドなどの上への薄膜形成も可能であり、 えば、ポリマーウィンドウにサーモクロミ ク特性を持たせて、スマートウィンドウと て使用することも可能である。また、ポリ ー基板の使用により、デバイスの低コスト ・軽量化・フレキシブル化(曲げ性の付与) 可能である。

 本発明は、自己組織化単分子膜を用いて バナジウム酸化物薄膜パターンを合成する とを最も主要な特徴としている。自己組織 単分子膜には、pH5において正のゼータ電位 有するAPTS-SAM自己組織化単分子膜を用いる とができる。また、自己組織化単分子膜の わりに、pH5において正のゼータ電位を有す 基板表面を用いることができる。

 自己組織化単分子膜には、APTS(3-Aminopropylt riethoxysilane、アミノプロピルトリエトキシシ ン)以外に、例えば、アミノブチルトリエト キシシラン(4-Aminobutyltriethoxysilane)、アミノエ ルアミノプロピルトリメトキシシラン(N-(2-A minoetyl)-3-aminopropyltrimethoxysilane)、アミノエチ アミノプロピルメチルジメトキシシラン(N-(2 -Aminoetyl)-3-aminopropylmetyldimethoxysilane)等のアミ 基を末端に有する分子を用いることができ 。

 アミノ基とシラノール基でパターン化さ た自己組織化単分子膜の代わりに、pH5にお て正のゼータ電位を有する領域及び負のゼ タ電位を有する領域にパターン化された基 を用いることができる。アミノ基とシラノ ル基でパターン化された自己組織化単分子 の代わりに、親水性と疎水性表面や、平滑 面と凹凸表面などの、2種類の異なる表面の 組み合わせを用いることができる。

 本発明では、好適には、VOSO 4 ・H 2 Oを含む水溶液を用いることができるが、該VO SO 4 ・H 2 Oを含む水溶液の代わりに、他のバナジウム 有溶液を用いることができる。pH調整には、 好適には、NaOHを用いることができるが、NaOH 代わりに、他のpH調整溶液等を用いること できる。また、NaOHを使用せずに、パターン することができる。

 本発明では、バナジウム含有固体が析出 る水溶液を用いることが好適であるが、バ ジウム含有固体が析出する反応系であれば 有機溶液等の、非水溶液反応系や、水熱反 等も用いることができる。

 また、反応液の温度も、原料濃度、添加 、pH等に合わせて、水溶液の凝固点以上か 沸点以下(およそ0-99℃)の範囲で適宜調整す ことができる。

 基板としては、ガラスが好適に用いられ が、ガラス以外に、シリコン基板、金属、 ラミックス、ポリマー等の種々の基板を用 ることができる。また、平板状基板以外に 粒子基材、繊維基材、複雑形状基材等も適 用いることができる。

 本発明では、自己組織化単分子膜を用いる とにより、酸化バナジウム結晶薄膜の液相 ターニングを実現した。この手法では、ま 、APTS-SAMをガラス基板上に形成し、フォト スクを介して真空紫外光を照射することで 露光領域をアミノ基終端シランからシラノ ル基表面へと変性する。その後、パターン SAM基板を、VOSO 4 ・H 2 O及びNaOHの溶解した水溶液に浸漬させる。

 水溶液中で生成したバナジウム酸化物粒 は、pH5の初期の水溶液中では、負のゼータ 位を有する。これらの粒子を、pH5にて正の ータ電位を有するアミノ基終端シラン表面 、静電相互作用を用いて付着させる。更に 付着粒子が、水溶液中において成長するこ により、アミノ基終端シラン表面にバナジ ム酸化物の薄膜を形成させる。

 本発明では、結晶粒子の領域選択的付着及 結晶成長の制御により、バナジウム酸化物 膜の液相パターニングが実現されている。 成した薄膜は、透明な黄緑色を呈しており XRDパターンは、H 7.24 V 6 O 13 に帰属される。また、薄膜の近赤外領域の透 過率は、室温25℃から70℃へ昇温することに り、約10%(相対比15%)減少する。これは、VO 2 等に見られるサーモクロミック特性であり、 遮熱ガラスや温度センサーへの応用可能性を 示している。

 本発明の応用分野として、例えば、スマ トウィンドウ、温度センサー、リチウムイ ン電池の陰極、触媒、スイッチングデバイ 向け素子、帯電防止コーティング、エレク ロクロミックディスプレーデバイスの対極 冷却赤外線ボロメーター(非冷却赤外線検知 器)、ホログラフィックストレージシステム( 光効率の高い材料を用いたデータ記録媒体) 、オプティカルファイバースイッチングデバ イス(光学繊維スイッチングデバイス)、超高 スイッチングデバイス、フォトニッククリ タル等が例示される。

 本発明により、次のような効果が奏される
(1)エッチング工程を経ることなく、バナジウ ム酸化物薄膜パターンを合成することができ る。
(2)また、エッチングダメージによるバナジウ ム酸化物の特性劣化を抑えることができる。
(3)エッチングによるバナジウムの廃棄を回避 することができる。
(4)また、未反応のバナジウムイオンは溶液中 に残存するため、新しい基材を浸漬すること により、連続して成膜することが可能である 。
(5)したがって、原料バナジウムをすべてバナ ジウム酸化物形成に使用することができる。
(6)更に、液相からの析出反応を用いているた め、複雑形状基材や粒子や繊維へのバナジウ ム酸化物コーティングも容易に行うことがで きる。

 次に、実施例に基づいて本発明を具体的 説明するが、本発明は、以下の実施例によ て何ら限定されるものではない。

 本実施例では、自己組織化単分子膜を用い 、ガラス基板上に、バナジウム酸化物薄膜 ターンを作製した。
(1)自己組織化単分子膜の作製
 本実施例では、自己組織化単分子膜を用い バナジウム酸化物薄膜の作製を試みた。ガ ス(Glass)基板(HIOKI #1737, Corning Co.)を、アセ ン、エタノール、イオン交換水の順にて、 れぞれ5分間ずつ超音波洗浄した。

 その後、UVオゾンクリーナー(184.9nm及び253 .7nm)(low-pressure mercury lamp 200W,PL21-200,SEN Lights  Co.)を用いて、真空紫外光を10分間照射する とにより、ガラス基板表面の吸着有機物を 去した。

 次に、ガラス基板表面をAPTS-SAMで修飾した(S urface modification with APTS-SAM)。APTS(3-Aminopropyltr iethoxysilane,H 2 NC 3 H 5 Si(OCH 3 ) 3 )を、無水トルエンに1vol%溶解させ、これに、 グローブボックス(Glove box,VAC Co.)内の窒素雰 囲気下において、ガラス基板を2時間浸漬し ガラス表面に、APTS-SAMを作製した(図1)。

(2)自己組織化単分子膜のパターン化
 APTS-SAMに、フォトマスク(Test-chart-No.1-N type,q uartz substrate,1.524mm thickness,Toppan Printing Co.,Lt d.)を介して、真空紫外線照射(UV irradiation)を い、露光領域を、アミノ基終端シランから ラノール基へと変性した(図1)。

 この、アミノ基終端シラン表面とシラノ ル基表面を有するパターン化自己組織化単 子膜(Patterned APTS-SAM)を、バナジウム酸化物 パターニングのためのテンプレートとした アミノ基終端シラン表面は、約48°の水に対 する接触角を示すのに対し、露光によりシラ ノール基へと変性した表面は、接触角5°以下 の親水性を示した。この接触角の変化は、真 空紫外光照射により、APTS-SAMが親水性のシラ ール基へと変性されたことを示している。

(3)バナジウム酸化物の析出
 VOSO 4 ・H 2 Oを、濃度0.02Mとなるように、25℃の水に溶解 た。水溶液中において、バナジウムは、バ ジルイオンと呼ばれるVO 2+ のイオンで存在する。オイルバスを用いて、 水溶液を70℃に加熱し、NaOHを添加して、pHを5 に調整した。

 水溶液上部に、縦向きでパターン化自己 織化単分子膜を浸漬し、70℃にて6時間保持 てバナジウム酸化物の析出(Liquid Phare Crysta l Deposition)を行い、バナジウム酸化物の液相 ターニング(Liquid Phase Patterning of Vanadium O xide)を試みた(図1)。

(1)評価方法
 本実施例では、上記実施例1の方法を適用し て、水溶液中において生成した粒子、APTS自 組織化単分子膜及び真空紫外光露光を行っ APTS自己組織化単分子膜のゼータ電位を、レ ザーゼータ電位計(ELS-7300K,Otsuka Electronics Co .,Ltd.)にて測定した。

 薄膜のマイクロパターンは、光学顕微鏡( BX51WI Microscope,Olympus Optical Co.,Ltd.)及び電子 微鏡(FE-SEM;JSM-6335F,JEOL Ltd.)にて観察した。

 結晶構造は、X線回折装置(CuKα線、XRD;RAD-1 C,Rigaku)を用いて評価した。25℃及び70℃での 膜の透過率は、紫外・可視・近赤外分光器(U V/VIS/NIR spectrophotometer,V-570,JASCO.)を用いて測定 した。

 その際、サンプルは、アルミニウム製の ンプルホルダーに固定し、サンプルホルダ に固定した電気ヒーターを用いて、70℃に 熱した。薄膜の温度は、熱電対を用いて測 した。

(2)結果
 上記バナジウム酸化物の液相パターニング より、水溶液中で生成した微小粒子の、pH5 のゼータ電位は、負であった。APTS自己組織 化単分子膜は、アミノ基のプロトン化(-NH 2  to -NH 3 + )により、pH5においては、正のゼータ電位を し、シラノール基は、脱プロトン化(-Si-OH to  -Si-O - )により、負のゼータ電位を示した。

 負のゼータ電位を有する粒子と、正のゼ タ電位を有するアミノ基との間の静電相互 用を用いることにより、初期に形成した微 粒子を、アミノ基領域に、領域選択的に付 させることを試みた。マイクロサイズでの 相パターニングに先立ち、6時間の浸漬によ り、広いAPTS自己組織化単分子膜領域への薄 形成を行った(図1)。左上部領域は、薄膜の 成していないガラス表面であり、無色透明 ある。

 一方、APTS自己組織化単分子膜上に形成し た薄膜領域は、透明な黄緑色を呈していた( 1)。6時間の浸漬後、パターン化APTS自己組織 単分子膜を光学顕微鏡にて観察したところ アミノ基終端シラン領域にのみ、領域選択 に、薄膜が形成していた。図2に、バナジウ ム酸化物薄膜パターンの光学顕微鏡写真を示 す。この析出薄膜により、幅40μmの平行線が2 0μmの間隔を開けて形成されており、それら 、250μm以上の長さを有していた(図2)。

(1)薄膜表面の形態
 本実施例では、上記実施例1で作製した薄膜 の表面の詳細な形態を、走査型電子顕微鏡を 用いて観察した。白金コーティング前のサン プルは、アミノ基領域に対して、シラノール 基領域が強く白色を呈しており、これは、電 子線照射により、シラノール基領域のガラス 表面が強く帯電したためと考えられる。この ことは、ガラスとバナジウム酸化物の表面状 態の違いを示している。

 帯電防止のため、パターン化薄膜に、3nm 白金コーティングを施し、再び観察した。 3に、バナジウム酸化物薄膜パターンの電子 顕微鏡写真(a)を示す。図3の(b-d)は、バナジウ ム酸化物薄膜表面の拡大写真を示す。シラノ ール基領域に対して、アミノ基領域は僅かに 白色を示しており、これは、アミノ基領域へ の薄膜形成によるものと考えられる(図3a)。

 高倍率での観察により、薄膜中に、幅100- 200nm、長さ約1000nmの針状析出物が観察された( 図3b)。また、薄膜表面は、面内直径2-10nmのナ ノサイズの突起物で覆われていた(図3c)。

(2)結晶構造
 図4に、バナジウム酸化物薄膜のXRDパターン を示す。APTS自己組織化単分子膜上に形成し 薄膜のXRD測定からは、複数の回折線が観察 れ、それらは、H 7.24 V 6 O 13 (JCPDS No.37-0172)の(001),(200),(002),(110),(003),(31-1) び(60-1)に帰属された。このH 7.24 V 6 O 13 は、VO 2 と同様に、単斜晶の結晶構造を有する。

(3)バナジウム酸化物薄膜のサーモクロミック 特性
 バナジウム酸化物薄膜の可視光・近赤外光 過スペクトルを測定した。図5に、25℃及び7 0℃におけるバナジウム酸化物薄膜の可視光 近赤外光透過スペクトルを示す。APTS自己組 化単分子膜上に形成されたバナジウム酸化 薄膜は、25℃において、波長400nmにて約20%、 波長700nmにて約46%の可視光透過率を示した。

 これらは、70℃への昇温により、波長400nm にて約18%、波長700nmにて約40%へと減少した。 た、25℃における近赤外領域の透過率は、 長1000nmにて約51%、波長2500nmにて約62%であり これらは、70℃への昇温により、波長1000nmに て約44%、波長2500nmにて約53%へと、およそ10%( 対比では、15%)減少した。

 70℃への昇温における透過率の減少は、サ モクロミック特性によるものと考えられる この透過率変化は、半導体-金属転移、すな ち、VO 2 に見られるように、単斜晶から正方晶への結 晶構造変化に起因するものと考えられる。

 可視光及び近赤外光領域の透過率は、25℃ の降温により、再び初期の透過率へと上昇 、サーモクロミック特性の可逆性を示した 図6に、バナジウム酸化物薄膜のバンドギャ プを評価した結果を示す。直接遷移であるV O 2 と同様に、形成した薄膜の直接遷移を仮定し 、バンドギャップを見積もったところ、約3.7 eVであった。このバンドギャップは、薄膜が 明な半導体であることを示唆している。こ ことは、薄膜の各種評価及びサーモクロミ ク特性と矛盾しない。

 自己組織化単分子膜を用いることにより、 ナジウム酸化物薄膜の液相パターニングを 現した。水溶液中において、アミノ基領域 バナジウム酸化物の結晶化が進行し、薄膜 形成した。この薄膜は、透明な黄緑色を呈 、表面は2-10nmのナノサイズの突起物で覆わ ていた。XRDにより、薄膜は、H 7.24 V 6 O 13 に帰属された。

 近赤外光領域での薄膜の透過率は、25℃ ら70℃への昇温により、およそ10%減少した。 このサーモクロミック特性は、可逆変化であ り、スマートウィンドウや温度センサーへの 可能性を示している。本発明により、次世代 デバイス技術に対する、自己組織化プロセス 及び水溶液プロセスの高いポテンシャルが示 された。

自己組織化単分子膜を用いたバナジウ 酸化物薄膜の液相パターニングの模式図を す。 バナジウム酸化物薄膜パターンの光学 微鏡写真を示す。 バナジウム酸化物薄膜パターンの電子 微鏡写真(a)を示す。(b-d)は、バナジウム酸 物薄膜表面の拡大写真である。 バナジウム酸化物薄膜のXRDパターンを す。 25℃及び70℃におけるバナジウム酸化物 薄膜の可視光・近赤外光透過スペクトルを示 す。 バナジウム酸化物薄膜のバンドギャッ の評価結果を示す。