Login| Sign Up| Help| Contact|

Patent Searching and Data


Title:
ELECTROCHEMICAL ELEMENT AND METHOD FOR PRODUCTION THEREOF
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/143005
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is an electrochemical element which comprises a positive electrode, a negative electrode, a non-aqueous electrolyte solution and a separator. The separator comprises a first porous layer mainly composed of a thermoplastic resin and a second porous layer mainly composed of an insulating particle having a heat resistance temperature of 150°C or higher. The first porous layer is arranged so as to face toward the negative electrode.

Inventors:
KATAYAMA HIDEAKI
ABE TOSHIHIRO
MATSUMOTO NOBUAKI
Application Number:
PCT/JP2008/058542
Publication Date:
November 27, 2008
Filing Date:
May 08, 2008
Export Citation:
Click for automatic bibliography generation   Help
Assignee:
HITACHI MAXELL (JP)
KATAYAMA HIDEAKI
ABE TOSHIHIRO
MATSUMOTO NOBUAKI
International Classes:
H01G9/00; H01G11/52; H01M6/16; H01M10/052; H01M10/0587; H01M10/36; H01M50/414; H01M50/417; H01M50/434; H01M50/449; H01M50/489; H01M50/491
Domestic Patent References:
WO2006137540A12006-12-28
Foreign References:
JP2006289657A2006-10-26
JP2000100408A2000-04-07
JP2007026676A2007-02-01
Attorney, Agent or Firm:
IKEUCHI SATO & PARTNER PATENT ATTORNEYS (OAP TOWER8-30, Tenmabashi 1-chome,Kita-ku, Osaka-sh, Osaka 26, JP)
Download PDF:
Claims:
 正極、負極、非水電解液およびセパレータを含む電気化学素子であって、
 前記セパレータは、熱可塑性樹脂を主体として含む第1多孔質層と、耐熱温度が150℃以上の絶縁性粒子を主体として含む第2多孔質層とを備え、
 前記第1多孔質層が、前記負極に面するよう配置されていることを特徴とする電気化学素子。
 前記熱可塑性樹脂の融点が、80~140℃である請求項1に記載の電気化学素子。
 前記熱可塑性樹脂の140℃における溶融粘度が、1000mPa・s以上である請求項1に記載の電気化学素子。
 前記熱可塑性樹脂の140℃における溶融粘度が、1000000mPa・s以下である請求項1に記載の電気化学素子。
 前記第1多孔質層および前記第2多孔質層の少なくとも一方は、板状粒子を含む請求項1に記載の電気化学素子。
 前記第2多孔質層に含まれる絶縁性粒子の一部または全部が、板状粒子である請求項1に記載の電気化学素子。
 前記第1多孔質層および前記第2多孔質層の少なくとも一方は、一次粒子が凝集して形成された二次粒子を含む請求項1に記載の電気化学素子。
 前記第2多孔質層に含まれる絶縁性粒子の一部または全部が、一次粒子が凝集して形成された二次粒子である請求項1に記載の電気化学素子。
 前記絶縁性粒子が、アルミナ、シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウムおよびベーマイトよりなる群から選択される少なくとも1種の無機酸化物の粒子である請求項1に記載の電気化学素子。
 前記絶縁性粒子の数平均粒子径が、0.01~15μmである請求項1に記載の電気化学素子。
 前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレンおよび共重合ポリオレフィンよりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂である請求項1に記載の電気化学素子。
 前記第1多孔質層および前記第2多孔質層の少なくとも一方が、有機バインダーを含む請求項1に記載の電気化学素子。
 前記第1多孔質層および前記第2多孔質層の少なくとも一方が、耐熱温度が150℃以上の多孔質基体を含む請求項1に記載の電気化学素子。
 前記第1多孔質層および前記第2多孔質層は、耐熱温度が150℃以上の多孔質基体を共有して含む請求項1に記載の電気化学素子。
 前記多孔質基体は、耐熱温度が150℃以上の繊維状物で形成されている請求項13に記載の電気化学素子。
 前記繊維状物は、セルロースおよびその変成体、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、アラミド、ポリアミドイミド、ポリイミドおよび無機酸化物よりなる群から選択される少なくとも1種の材料で形成されている請求項15に記載の電気化学素子。
 前記多孔質基体は、織布または不織布からなる請求項13に記載の電気化学素子。
 前記第1多孔質層の厚み:Xと前記第2多孔質層の厚み:Yとの比率:X/Yが、10以下である請求項1に記載の電気化学素子。
 前記第2多孔質層の厚みが、10μm以下である請求項1に記載の電気化学素子。
 前記第1多孔質層および前記第2多孔質層の少なくとも一方が、電極と一体化されている請求項1に記載の電気化学素子。
 前記第1多孔質層および前記第2多孔質層は、電気化学素子内で重ね合わされて前記セパレータを形成している請求項1に記載の電気化学素子。
 内部に存在するガスの圧力が上昇した場合に、前記ガスを外部に排出する機構を備えた請求項1に記載の電気化学素子。
 前記負極は、負極活物質含有層を含み、前記第1多孔質層は、前記負極活物質含有層と接する請求項1に記載の電気化学素子。
 正極、負極およびセパレータを含む渦巻状の電極体を備える電気化学素子の製造方法であって、
 前記セパレータは、両面の摩擦係数が異なっており、
 前記セパレータの摩擦係数の低い面側を巻回軸側に配置して、前記セパレータを前記巻回軸に巻き付ける工程と、
 前記セパレータと共に前記正極および前記負極を巻回する工程とを含むことを特徴とする電気化学素子の製造方法。
 正極、負極およびセパレータを含む渦巻状の電極体を備える電気化学素子の製造方法であって、
 前記セパレータは、一方の側に、熱可塑性樹脂を主体として含む第1多孔質層を備え、もう一方の側に、耐熱温度が150℃以上の絶縁性セラミックス粒子を主体として含む第2多孔質層を備え、
 前記第1多孔質層を巻回軸側に配置して、前記セパレータを前記巻回軸に巻き付ける工程と、
 前記セパレータと共に前記正極および前記負極を巻回する工程とを含むことを特徴とする電気化学素子の製造方法。
 前記第1多孔質層と前記巻回軸との間の静止摩擦係数が、0.5以下である請求項25に記載の電気化学素子の製造方法。
 前記第1多孔質層と前記巻回軸との間の静止摩擦係数が、0.05以上である請求項25に記載の電気化学素子の製造方法。
 前記セパレータの前記第1多孔質層の側に、前記負極を配置する請求項25に記載の電気化学素子の製造方法。
Description:
電気化学素子およびその製造方

 本発明は、安価で高温時の寸法安定性に れた電気化学素子用セパレータを用いた、 温環境下においても安全な電気化学素子と その製造方法に関するものである。

 リチウム二次電池やスーパーキャパシタ 代表される非水電解液を用いた電気化学素 は、エネルギー密度が高いという特徴から 携帯電話やノート型パーソナルコンピュー ーなどの携帯機器の電源として広く用いら ている。携帯機器の高性能化に伴って電気 学素子の高容量化が更に進む傾向にあり、 全性、信頼性の確保が重要となっている。

 現行のリチウム二次電池では、正極と負 の間に介在させるセパレータとして、例え 厚みが20~30μm程度のポリオレフィン系の微 孔フィルムが使用されている。また、電池 熱暴走(異常発熱)温度以下でセパレータの構 成樹脂を溶融させて空孔を閉塞させ、これに より電池の内部抵抗を上昇させて短絡の際な どに電池の安全性を向上させる、所謂シャッ トダウンを生じさせるために、セパレータの 素材としては、融点の低いポリエチレン(PE) 一般に用いられている。

 ところで、こうしたセパレータとしては 例えば、多孔化と強度向上のために一軸延 あるいは二軸延伸したフィルムが用いられ いる。このようなセパレータには、電池の 造時に一定の強度が要求されるため、前記 伸によりその強度を確保している。しかし このような延伸フィルムでは、構成樹脂の 晶化度が増大しており、シャットダウン温 が、電池の熱暴走温度に近づいているため 電池の安全性確保の点からは、セパレータ 構成を検討する必要が生じている。

 また、ポリオレフィン系の多孔質フィル セパレータには、充電での異常などにより 池の温度がシャットダウン温度に達すると 電流を直ちに減少させて電池の温度上昇を 止することが求められる。しかし、前記延 によってフィルムにはひずみが生じており これが高温に曝されると、残留応力によっ 収縮が起こるという問題がある。収縮温度 、融点、すなわちシャットダウン温度と非 に近いところに存在する。このため、空孔 十分に閉塞せず電流を直ちに減少できなか た場合には、電池の温度は容易にセパレー の収縮温度にまで上昇し、セパレータの収 による内部短絡の危険性が生じる。

 このようなセパレータの熱収縮に伴う電池 安全性や、各種原因による内部短絡に対す 信頼性を高めるため、シャットダウン機能 確保するための樹脂を主体として含む第1セ パレータ層と、耐熱性の樹脂や無機酸化物な どにより構成される第2セパレータ層とを有 る多孔質の電気化学素子用セパレータが提 されている(特許文献1~5)。

国際公開第2000/079618号公報

特開2001-266949号公報

国際公開第2004/021469号公報

国際公開第2007/066768号公報

特開2007-280911号公報

 これら特許文献1~5に開示のセパレータに いては、前記第2セパレータ層がセパレータ 本来の機能、主に正極と負極との直接の接触 による短絡を防止する機能を有するため、前 記第1セパレータ層に相当するポリエチレン の多孔質フィルムセパレータのみを用いた チウム二次電池に比べ、より安全性の高い 池を構成することができる。

 しかしながら、本発明者らがさらに検討 た結果、セパレータのシャットダウンが生 ても、電池の発熱反応が生じる場合がある とが明らかとなった。このため、シャット ウン後の電池の安全性をより一層高めるた には、電池全体の構成を最適化する必要が ることがわかった。

 また、前記樹脂を主体として含む層と、 機酸化物などのフィラーを主体として含む とを備えたセパレータのように、両面の摩 係数が異なるセパレータを用いる場合に、 極および負極と共に渦巻状に巻回しようと ると、セパレータの配置の仕方によっては 下の問題が生じることもわかった。

 すなわち、正極、負極、およびセパレー を、巻回軸を中心として渦巻状に巻回して 極体を製造する場合、前記フィラーを主体 する層を巻回軸の側に向けて配置すると、 回軸とセパレータとの摩擦が大きくなるた 、形成された電極体を巻回軸から抜き取り くくなり、電極の巻きずれによる製造不良 生じやすくなることがわかった。

 本発明は上記事情に鑑みてなされたもの あり、その目的は、高温での安全性に優れ 電気化学素子を提供することにある。また 本発明の別の目的は、生産性に優れた電気 学素子の製造方法を提供することにある。

 本発明の電気化学素子は、正極、負極、 水電解液およびセパレータを含む電気化学 子であって、前記セパレータは、熱可塑性 脂を主体として含む第1多孔質層と、耐熱温 度が150℃以上の絶縁性粒子を主体として含む 第2多孔質層とを備え、前記第1多孔質層が、 記負極に面するよう配置されていることを 徴とする。

 また、本発明の第1の電気化学素子の製造 方法は、正極、負極およびセパレータを含む 渦巻状の電極体を備える電気化学素子の製造 方法であって、前記セパレータは、両面の摩 擦係数が異なっており、前記セパレータの摩 擦係数の低い面側を巻回軸側に配置して、前 記セパレータを前記巻回軸に巻き付ける工程 と、前記セパレータと共に前記正極および前 記負極を巻回する工程とを含むことを特徴と する。

 また、本発明の第2の電気化学素子の製造 方法は、正極、負極およびセパレータを含む 渦巻状の電極体を備える電気化学素子の製造 方法であって、前記セパレータは、一方の側 に、熱可塑性樹脂を主体として含む第1多孔 層を備え、もう一方の側に、耐熱温度が150 以上の絶縁性セラミックス粒子を主体とし 含む第2多孔質層を備え、前記第1多孔質層を 巻回軸側に配置して、前記セパレータを前記 巻回軸に巻き付ける工程と、前記セパレータ と共に前記正極および前記負極を巻回する工 程とを含むことを特徴とする。

 本発明によれば、短絡や過充電などによ 電池の温度が異常に上昇したときの安全性 優れた電気化学素子を提供することができ 。また、本発明の別の観点によれば、渦巻 電極体の製造不良を低減し、電気化学素子 生産性を向上させることができる。

図1は、本発明の電気化学素子の製造方 法に使用できる製造装置の一例を示す概念図 である。 図2は、本発明の電気化学素子の製造方 法における工程の途中段階での、巻回軸近傍 の様子を示す断面図である。 図3A、B、Cは、本発明の電気化学素子の 製造方法に使用できる巻回軸の例を示す模式 図である。 図4Aは、本発明の電気化学素子の一例 示す平面図であり、図4Bは、図4Aの断面図で る。 図5は、図4A、Bの電気化学素子の斜視図 である。

 (実施形態1)
 先ず、本発明の電気化学素子について説明 る。本発明の電気化学素子に用いられるセ レータは、熱可塑性樹脂を主体として含む 1多孔質層と、耐熱温度が150℃以上の絶縁性 粒子を主体として含む第2多孔質層とを備え いる。以下、上記第1多孔質層を多孔質層(I) 、上記第2多孔質層を多孔質層(II)と表記す 。

 前記セパレータの多孔質層(I)は、主にシ ットダウン機能を確保するためのものであ 。本発明の電気化学素子の温度が、多孔質 (I)の主体となる成分である熱可塑性樹脂[以 下、樹脂(A)と表記する。]の融点以上に達し ときには、多孔質層(I)の樹脂(A)が溶融して パレータの空孔を塞ぎ、電気化学反応の進 を抑制するシャットダウンを生じる。

 また、前記セパレータの多孔質層(II)は、 電気化学素子の内部温度が上昇した場合であ っても、正極と負極との直接の接触による短 絡を防止する機能を備えたものであり、耐熱 温度が150℃以上の絶縁性粒子(以下、フィラ と表記する。)によって、その機能を確保し いる。電気化学素子が通常使用される温度 では、セパレータを介して正極と負極とを し付けて電極体を構成する場合などにおい 、多孔質層(II)により、正極活物質がセパレ ータを突き抜けて負極と接触することによる 短絡の発生を防止することができる。また、 電気化学素子が高温となった場合には、多孔 質層(I)の収縮を抑制し、あるいは、たとえ多 孔質層(I)が収縮しても、高温での形状安定性 の高い多孔質層(II)により、正負極の直接の 触による短絡を防止することができる。特 、多孔質層(I)と多孔質層(II)とが一体化され いる場合は、この耐熱性の多孔質層(II)が、 セパレータの形状を維持するための基体とし て作用し、多孔質層(I)の熱収縮、すなわちセ パレータ全体の熱収縮を抑制することができ る。

 後述する多孔質基体を除き、本明細書で う「耐熱温度が150℃以上」とは、少なくと 150℃において軟化などの変形が見られない とを意味している。

 前記本発明の電気化学素子に用いられる パレータにおいて、熱可塑性樹脂を主体と て含む多孔質層(I)は、多孔質層(I)内の固形 比率で、熱可塑性樹脂である樹脂(A)を50体 %以上含むように構成される。また、耐熱温 が150℃以上のフィラーを主体として含む多 質層(II)は、多孔質層(II)内の固形分比率で 耐熱温度が150℃以上のフィラーを50体積%以 含むように構成される。ただし、後述する 孔質基体を有する場合には、多孔質基体の 積を含めずに前記体積比率を計算する。

 前記セパレータでは、多孔質層(I)および 孔質層(II)の少なくとも一方が、板状粒子を 含有していることが好ましい。多孔質層(I)お よび多孔質層(II)の少なくとも一方が板状粒 を含有することで、セパレータ内での細孔 曲路率が大きくなり、細孔の経路長が長く る。そのため、前記セパレータを用いた電 化学素子では、デンドライトが生成しやす 条件下でも、デンドライトによる負極と正 との短絡が生じにくく、デンドライトショ トに対する信頼性を高めることができる。 孔質層(II)が板状粒子を含有する場合は、こ 板状粒子が「耐熱温度が150℃以上のフィラ 」を兼ねることができ、多孔質層(II)に含ま れるフィラーの一部または全部を板状粒子で 構成することができる。

 また、前記セパレータでは、多孔質層(I) よび多孔質層(II)の少なくとも一方が、一次 粒子が凝集した二次粒子構造のフィラーを含 有している構成とすることもできる。二次粒 子構造のフィラーを含有することで、前記板 状粒子を含有する場合と同様に、セパレータ 内での細孔の曲路率が大きくなり、細孔の経 路長が長くなる。多孔質層(II)が二次粒子構 のフィラーを含有する場合は、この二次粒 構造のフィラーが「耐熱温度が150℃以上の ィラー」を兼ねることができ、多孔質層(II) 含まれるフィラーの一部または全部を二次 子で構成することができる。また、多孔質 (I)および多孔質層(II)の少なくとも一方に、 板状粒子と二次粒子の両者を含有させてもよ い。

 多孔質層(I)の樹脂(A)としては、電気絶縁 を有しており、電気化学素子に用いる電解 に対して安定であり、更に、電池の作動電 範囲において酸化還元されにくい電気化学 に安定な熱可塑性樹脂が好ましい。具体的 は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP) 共重合ポリオレフィン、またはポリオレフ ン誘導体(塩素化ポリエチレンなど)、ポリオ レフィンワックス、石油ワックス、カルナバ ワックスなどが挙げられる。前記共重合ポリ オレフィンとしては、エチレン-プロピレン 重合体や、エチレン-ビニルモノマー共重合 、より具体的には、エチレン-酢酸ビニル共 重合体(EVA)、またはエチレン-メチルアクリレ ート共重合体やエチレン-エチルアクリレー 共重合体などの、エチレン-アクリル酸共重 体が例示できる。前記共重合ポリオレフィ におけるエチレン由来の構造単位は、85モ %以上であることが望ましい。また、ポリエ レンテレフタレートや共重合ポリエステル どのポリエステル、ポリシクロオレフィン どを用いることもできる。樹脂(A)には、前 例示の樹脂を1種単独で用いてもよく、2種 上を用いても構わない。

 樹脂(A)としては、前記例示の材料の中で 、PE、PPおよび共重合ポリオレフィンが好適 に用いられる。また、樹脂(A)は、必要に応じ て、樹脂に添加される各種添加剤(例えば、 化防止剤など)を含有していても構わない。

 前記セパレータは、80℃以上、より好ま くは100℃以上で、140℃以下、より好ましく 130℃以下において、その孔が閉塞する性質( なわちシャットダウン機能)を有しているこ とが好ましい。そのため、多孔質層(I)の樹脂 (A)としては、80℃以上、より好ましくは100℃ 上で、140℃以下、より好ましくは130℃以下 融点を有する熱可塑性樹脂であることが望 しい。樹脂(A)の融点は、例えば、日本工業 格(JIS)K 7121の規定に準じて、示差走査熱量 (DSC)を用いて測定される融解温度により求 ることができる。

 樹脂(A)の形態については特に制限はなく 微粒子状の他、例えば、後述する多孔質基 を構成する繊維状物を芯材として、その表 に付着させたり、その表面を被覆させたり て、多孔質層(I)に含有させてもよい。また 多孔質層(II)に用いられる「耐熱温度が150℃ 以上のフィラー」などをコアとし、樹脂(A)を シェルとするコアシェル構造の形態で、多孔 質層(I)に含有させてもよい。中でも、樹脂(A) は、微粒子状のものを用いることが好ましい 。

 また、多孔質層(I)を、樹脂(A)を主体とす 微多孔フィルムで構成してもよい。このよ な微多孔フィルムとしては、リチウム二次 池などで使用されているポリオレフィン製 微多孔フィルム、例えば、PE、エチレン-プ ピレン共重合体などの共重合ポリオレフィ などで構成され、一軸または二軸延伸によ 微細な空孔が形成されたフィルムなどを用 ることができる。PEとPPなど、異なる熱可塑 性樹脂を2~5層積層した積層多孔質膜であって もよい。

 樹脂(A)が微粒子状である場合には、乾燥 におけるこれらの粒径がセパレータの厚み り小さければよいが、セパレータの厚みの1 /100~1/3の平均粒径を有することが好ましい。 体的には、樹脂(A)の平均粒径が0.1~20μmであ ことが好ましい。樹脂(A)の粒径が小さすぎ 場合は、粒子同士の隙間が小さくなりすぎ イオンの伝導パスが長くなりすぎて電気化 素子の特性が低下することがある。また、 径が大きすぎると、多孔質層(I)の厚みが大 くなり、電気化学素子のエネルギー密度の 下を招く。

 PEのように融点が80℃以上140℃以下の熱可 塑性樹脂と、PPなどのように、融点が140℃を える熱可塑性樹脂とを併用して多孔質層(I) 構成する場合では、多孔質層(I)(樹脂多孔質 膜)を構成する樹脂(A)中、融点が80℃以上140℃ 以下の樹脂(例えばPE)が、30質量%以上である とが好ましく、50質量%以上であることがよ 好ましい。このような多孔質層(I)としては PEと、PPなどのPEよりも高融点の樹脂とを混 して構成された樹脂多孔質膜や、PE層と、PP などのPEよりも高融点の樹脂で構成された とを積層して構成された樹脂多孔質膜など 例示することができる。

 また、多孔質層(I)の樹脂(A)は、140℃にお る溶融粘度(以下、単に「溶融粘度」という 。)が、1000mPa・s以上であることが望ましく、 5000mPa・s以上であることがより望ましい。

 電気化学素子の電極は、通常、活物質な を含有する多孔質の活物質含有層を有して り、この活物質含有層がセパレータと接触 ている場合、溶融した樹脂(A)の一部が、活 質含有層に吸収されることがある。活物質 有層での吸収量が多くなると、セパレータ 空孔を埋めるための樹脂(A)の量が少なくな て、シャットダウンが発現し難くなる場合 ある。しかし、シャットダウン機能を確保 るための樹脂(A)の溶融粘度が高ければ、活 質含有層に吸収される樹脂(A)の量を低減す ことができ、溶融した樹脂(A)が効率よくセ レータの空孔を閉塞するため、シャットダ ンが良好に発現する。これにより、電気化 素子の高温での安全性を高めることができ 。

 また、前記溶融粘度の樹脂(A)を使用する とで、電気化学素子内で溶融した樹脂(A)が セパレータの空孔を塞ぐのに効率よく利用 れることから、セパレータに使用する樹脂( A)の量を低減することも可能である。そのた 、セパレータ全体を薄くできるため、電池 どの電気化学素子のエネルギー密度を高め ことも可能である。

 一方、樹脂(A)の溶融粘度が高すぎると、 脂(A)がセパレータの空孔を埋める作用が弱 なって、シャットダウン特性が発現し難く ることがある。そのため、樹脂(A)の溶融粘 は、1000000mPa・s以下であることが好ましく 100000mPa・s以下であることがより好ましい。

 前記溶融粘度を有する熱溶融性樹脂とし 、例えば、PEであれば、分子量が2000~100000程 度のものが使用できる。

 前記樹脂(A)の溶融粘度は、例えば、キャピ グラフ(東洋精機社製)を使用し、長さ(L):10mm 、直径(D):1.0mmのノズルを用いて、せん断速度 を100s -1 として測定した値を用いることができる。

 多孔質層(I)における樹脂(A)の含有量は、 ャットダウンの効果をより得やすくするた に、多孔質層(I)の全構成成分中、50体積%以 であることが好ましく、70体積%以上である とがより好ましく、80体積%以上であること 更に好ましく、多孔質層(I)の全体が微多孔 ィルムである場合のように100体積%であって もよい。また、セパレータの全構成成分中に おける樹脂(A)の体積は、10体積%以上であるこ とが好ましく、20体積%以上であることがより 好ましく、一方、セパレータの高温時におけ る形状安定性確保の点から、80体積%以下であ ることが好ましく、40体積%以下であることが より好ましい。また、樹脂(A)の体積は、シャ ットダウンの効果をより得やすくするために 、多孔質層(II)内の空孔の体積の50%以上とな ことが好ましい。

 多孔質層(II)のフィラーは、耐熱温度が150 ℃以上で、電解液に対して安定であり、更に 、電気化学素子の作動電圧範囲において酸化 還元されにくい電気化学的に安定なものであ れば、有機粒子でも無機粒子でもよいが、分 散などの点から微粒子であることが好ましく 、安定性などの点から無機微粒子がより好ま しく用いられる。

 前記無機粒子の構成材料の具体例としては 例えば、酸化鉄、シリカ(SiO 2 )、アルミナ(Al 2 O 3 )、酸化チタン(TiO 2 )、チタン酸バリウム(BaTiO 3 )、酸化ジルコニウム(ZrO 2 )などの無機酸化物;窒化アルミニウム、窒化 イ素などの無機窒化物;フッ化カルシウム、 フッ化バリウム、硫酸バリウムなどの難溶性 のイオン結合性化合物;シリコン、ダイヤモ ドなどの共有結合性化合物;モンモリロナイ などの粘土;などが挙げられる。ここで、前 記無機酸化物は、ベーマイト、ゼオライト、 アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル 、オリビン、マイカなどの鉱物資源由来物質 またはこれらの人造物などであってもよい。 また、前記無機酸化物は、金属、SnO 2 、スズ-インジウム酸化物(ITO)などの導電性酸 化物;カーボンブラック、グラファイトなど 炭素質材料;などで例示される導電性材料の 面を、電気絶縁性を有する材料(例えば、前 記無機酸化物など)で被覆することにより電 絶縁性を持たせた粒子であってもよい。前 無機酸化物の中でも、Al 2 O 3 、SiO 2 、TiO 2 、ZrO 2 、ベーマイトが特に好ましく用いられる。

 また、前記有機粒子(有機粉末)としては 架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリス レン、架橋ポリジビニルベンゼン、スチレ -ジビニルベンゼン共重合体架橋物、ポリイ ド、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ベン グアナミン-ホルムアルデヒド縮合物などの 各種架橋高分子微粒子や、ポリプロピレン(PP )、ポリスルフォン、ポリアクリロニトリル アラミド、ポリアセタール、熱可塑性ポリ ミドなどの耐熱性高分子微粒子などが例示 きる。また、これらの有機粒子を構成する 機樹脂(高分子)は、前記例示の樹脂材料の混 合物、変性体、誘導体、共重合体(ランダム 重合体、交互共重合体、ブロック共重合体 グラフト共重合体)、架橋体(前記耐熱性高分 子の場合)であってもよい。

 フィラーの形状は限定されず、例えば、球 に近い形状を有していてもよく、板状の形 を有していてもよいが、短絡防止の点から 、板状、または、一次粒子の凝集した二次 子構造であることが好ましい。板状粒子や 次粒子の代表的なものとしては、板状のAl 2 O 3 や板状のベーマイト、二次粒子状のAl 2 O 3 や二次粒子状のベーマイトなどが挙げられる 。多孔質層(I)と多孔質層(II)とが一体化され 構成のセパレータでは、前記フィラーとし 、板状粒子、または、二次粒子構造を有す 粒子を含有させることにより、多孔質層(II) よるセパレータの形状を維持する作用が大 くなり、セパレータの熱収縮を抑制する効 を高めることができる。特に、板状粒子を む場合により高い効果が期待できる。

 前記フィラーの粒径は、数平均粒子径で 0.01μm以上が好ましく、より好ましくは0.1μm 以上であり、一方、15μm以下が好ましく、よ 好ましくは5μm以下である。

 本発明において、樹脂やフィラーなどの 子の平均粒径は、例えば、レーザー散乱粒 分布計(例えば、HORIBA社製「LA-920」)を用い 測定する粒子を膨潤させたり溶解したりし い媒体(例えば、水)に、粒子を分散させて測 定することができる。

 多孔質層(II)における耐熱温度が150℃以上 のフィラーの量は、多孔質層(II)の構成成分 全体積中、50体積%以上であることが好まし 、70体積%以上であることがより好ましく、80 体積%以上であることがさらに好ましく、90体 積%以上であることが最も好ましい。多孔質 (II)には、フィラー同士を結着したり、必要 応じて多孔質層(I)と多孔質層(II)とを結着し たりするための有機バインダーを含有させる ことができ、また、後述する繊維状物や前記 の樹脂(A)、その他の添加粒子などを含有させ ることもできる。多孔質層(II)中のフィラー 含有量を高くすることで、電気化学素子が 温となった際の正極と負極との直接の接触 よる短絡の発生をより良好に抑制すること できる。また、多孔質層(I)と多孔質層(II)と 一体化された構成のセパレータの場合には セパレータ全体の熱収縮を良好に抑制する とができる。多孔質層(II)に有機バインダー を含有させる場合、結着性を高めるために、 多孔質層(II)の構成成分の全体積中、その割 を1体積%以上とするのが好ましい。

 前記セパレータの全構成成分中のフィラ の含有量は、内部短絡防止の効果を向上さ るためには、20体積%以上とすることが好ま く、50体積%以上とすることがより好ましい また、樹脂(A)によるシャットダウン機能を 保するためには、セパレータの全構成成分 におけるフィラーの含有量は、80体積%以下 抑制することが好ましい。

 前記板状粒子の形態としては、アスペク 比(板状粒子中の最大長さと板状粒子の厚み との比)が、5以上であることが好ましく、よ 好ましくは10以上であって、100以下である とが好ましく、より好ましくは50以下である 。また、板状粒子の平板面の長軸方向長さと 短軸方向長さの比(長軸方向長さ/短軸方向長 )の平均値は、3以下、より好ましくは2以下 、1に近い値であることが望ましい。前記ア スペクト比などは、例えば、走査型電子顕微 鏡(SEM)により撮影した画像を画像解析するこ により求めることができる。

 板状粒子は、セパレータ中で、その平板 がセパレータの表面に対して略平行となる う配向されていることが好ましく、より具 的には、セパレータの表面近傍における板 粒子について、その平板面とセパレータの 面との平均角度が30°以下であることが好ま しく、平均角度が0°に近いほどよい。ここで いう「表面近傍」とは、セパレータの表面か ら全体厚みに対しておよそ10%の範囲を指す。 板状粒子の配向性を高めることにより、多孔 質層(II)の形状維持作用が大きくなり、また 電極表面に析出するリチウムデンドライト 電極表面の活物質の突起により内部短絡が じるのをより効果的に防ぐことができる。

 また、フィラーとして用いられる前記二次 子は、その比表面積が、好ましくは3m 2 /g以上、より好ましくは10m 2 /g以上であって、好ましくは50m 2 /g以下、より好ましくは30m 2 /g以下である。また、前記二次粒子は、その さ密度が、好ましくは0.1g/cm 3 以上、より好ましくは0.15g/cm 3 以上であって、好ましくは0.5g/cm 3 以下、より好ましくは0.3g/cm 3 以下である。

 また、板状粒子や二次粒子の平均粒径と ては、セパレータの厚みより小さければよ 、一方、セパレータの厚みの1/100以上とす のが好ましい。また、二次粒子の場合には 二次粒子を構成する一次粒子の平均粒径は 二次粒子の1/5以下であることが好ましく、 た、二次粒子の1/100以上であることが好まし い。

 板状粒子や二次粒子としては、具体例とし 先に例示した無機粒子(代表的には、板状の Al 2 O 3 や板状のベーマイトなど)の他に、耐熱温度 150℃以上の樹脂材料で構成された有機粒子 用いることもできる。板状粒子や二次粒子 構成材料は、2種以上を併用することもでき 。

 多孔質層(I)および多孔質層(II)の少なくと も一方に板状粒子や二次粒子を含有させるこ とによる効果をより有効に発揮させるために は、板状粒子や二次粒子の含有量は、セパレ ータの構成成分の全体積中、25体積%以上であ ることが好ましく、40体積%以上であることが より好ましく、70体積%以上であることが更に 好ましい。ただし、セパレータの構成成分の 体積には、後述する多孔質基体の体積は含め ない。

 板状粒子や二次粒子は、多孔質層(II)に含 有させることがより好ましく、多孔質層(II) 用いられる「耐熱温度が150℃以上のフィラ 」を、板状粒子または二次粒子とすること 更に好ましい。

 前記セパレータの多孔質層(I)および多孔 層(II)には、セパレータの形状安定性の確保 や、多孔質層(II)と多孔質層(I)との一体化な のため、有機バインダーを含有させること できる。有機バインダーとしては、EVA(酢酸 ニル由来の構造単位が20~35モル%のもの)、エ チレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)など のエチレン-アクリル酸共重合体、フッ素系 ム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキ シメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチル ルロース(HEC)、ポリビニルアルコール(PVA)、 ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロ ドン(PVP)、架橋アクリル樹脂、ポリウレタ 、エポキシ樹脂などが挙げられるが、150℃ 上の耐熱温度を有する耐熱性のバインダー 好ましく用いられる。有機バインダーは、 記例示のものを1種単独で用いてもよく、2種 以上を併用してもよい。

 前記例示の有機バインダーの中でも、EVA エチレン-アクリル酸共重合体、フッ素系ゴ ム、SBRなどの柔軟性の高いバインダーが好ま しい。このような柔軟性の高い有機バインダ ーの具体例としては、三井デュポンポリケミ カル社の「エバフレックスシリーズ(EVA)」、 本ユニカー社のEVA、三井デュポンポリケミ ル社の「エバフレックス-EEAシリーズ(エチ ン-アクリル酸共重合体)」、日本ユニカー社 のEEA、ダイキン工業社の「ダイエルラテック スシリーズ(フッ素ゴム)」、JSR社の「TRD-2001(S BR)」、日本ゼオン社の「EM-400B(SBR)」などがあ る。

 前記の有機バインダーを多孔質層(II)に使 用する場合には、後述する多孔質層(II)形成 組成物の溶媒に溶解させるか、または分散 せたエマルジョンの形態で用いればよい。

 また、セパレータの形状安定性や柔軟性 確保するために、多孔質層(I)あるいは多孔 層(II)において、繊維状物を前記フィラーや 樹脂(A)と混在させてもよい。繊維状物として は、耐熱温度が150℃以上であって、電気絶縁 性を有しており、電気化学的に安定で、更に 後述する電解液や、セパレータ製造の際に使 用する溶媒に安定であれば、特に材質に制限 はない。本明細書でいう「繊維状物」とは、 アスペクト比[長尺方向の長さ/長尺方向に直 する方向の幅(直径)]が4以上のものを意味し ており、アスペクト比は10以上であることが ましい。

 前記繊維状物の具体的な構成材料として 、例えば、セルロースおよびその変成体[カ ルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシ ロピルセルロース(HPC)など]、ポリオレフィ [ポリプロピレン(PP)、プロピレンの共重合 など]、ポリエステル[ポリエチレンテレフタ レート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN) ポリブチレンテレフタレート(PBT)など]、ポ アクリロニトリル(PAN)、アラミド、ポリアミ ドイミド、ポリイミドなどの樹脂;ガラス、 ルミナ、ジルコニア、シリカなどの無機酸 物;などを挙げることができ、これらの構成 料を2種以上併用して繊維状物を構成しても よい。また、繊維状物は、必要に応じて、各 種添加剤(例えば、樹脂製繊維状物である場 には酸化防止剤など)を含有していても構わ い。

 また、前記セパレータでは、独立膜とし 用いた場合の取り扱い性を向上するために 多孔質層(I)あるいは多孔質層(II)に耐熱温度 が150℃以上の多孔質基体を用いることができ る。また、多孔質層(I)および多孔質層(II)は 一つの多孔質基体を共有して備えることも きる。多孔質基体は、耐熱温度が150℃以上 繊維状物で形成してもよく、より具体的に 織布、不織布(紙を含む。)などのシート状物 を多孔質基体として用いてもよい。この場合 は、フィラーや樹脂(A)は、多孔質基体の空隙 内に含有させることが好ましく、フィラーや 樹脂(A)を結着するために、前記の有機バイン ダーを用いることもできる。

 前記多孔質基体の「耐熱性」は、軟化な による実質的な寸法変化が生じないことを 味し、対象物の長さの変化、すなわち、多 質基体においては、室温での長さに対する 縮の割合(収縮率)が5%以下を維持することの できる上限温度(耐熱温度)が、セパレータの ャットダウン温度よりも十分に高いか否か 耐熱性を評価する。シャットダウン後の電 化学素子の安全性を高めるために、多孔質 体は、シャットダウン温度よりも20℃以上 い耐熱温度を有することが望ましく、より 体的には、多孔質基体の耐熱温度は、150℃ 上であることが好ましく、180℃以上である とがより好ましい。

 前記繊維状物(多孔質基体を構成する繊維 状物、その他の繊維状物を含む。)の繊維径 、多孔質層(I)および多孔質層(II)の厚み以下 あればよいが、例えば、0.01~5μmであること 好ましい。繊維状物の繊維径が大きすぎる 、繊維状物同士の絡み合いが不足するため 例えばシート状物を形成して多孔質基体を 成する場合に、その強度が小さくなって取 扱いが困難となることがある。また、繊維 物の繊維径が小さすぎると、セパレータの 孔が小さくなりすぎてイオン透過性が低下 る傾向にあり、電気化学素子の負荷特性を 下させてしまうことがある。

 多孔質層(II)に繊維状物を使用する場合に は、その含有量は、例えば、多孔質層(II)の 構成成分中、好ましくは10体積%以上、より ましくは20体積%以上であって、好ましくは90 体積%以下、より好ましくは80体積%以下であ 。多孔質層(II)中での繊維状物の存在状態は 例えば、長軸(長尺方向の軸)の、セパレー の表面に対する角度が平均で30°以下である とが好ましく、20°以下であることがより好 ましい。

 本発明の電気化学素子における短絡防止 果をより高め、セパレータの強度を確保し 取り扱い性を良好にする観点から、セパレ タの厚みは、3μm以上であることが好ましく 、6μm以上であることがより好ましく、10μm以 上であることが最も好ましい。一方、本発明 の電気化学素子のエネルギー密度をより高め る観点からは、セパレータの厚みは、50μm以 であることが好ましく、30μm以下であるこ がより好ましく、20μm以下であることが最も 好ましい。

 また、前記セパレータを構成する多孔質 (I)の厚みをX(μm)、多孔質層(II)の厚みをY(μm) としたとき、XとYとの比率X/Yは、10以下であ ことが好ましく、5以下であることがより好 しく、また、1/8以上であることが好ましく 1/5以上であることがより好ましい。本発明 電気化学素子に用いるセパレータでは、多 質層(I)の厚み比率を大きくし多孔質層(II)を 薄くしても、良好なシャットダウン機能を確 保しつつ、セパレータの熱収縮による短絡の 発生を抑制することができる。セパレータに 多孔質層(I)が複数存在する場合には、厚みX その総厚みであり、多孔質層(II)が複数存在 る場合には、厚みYはその総厚みである。

 具体的な値としては、Xは、1μm以上であ ことが好ましく、3μm以上であることがより ましく、5μm以上であることが最も好ましく 、また、30μm以下であることが好ましく、15μ m以下であることがより好ましく、10μm以下で あることが最も好ましい。また、Yは、1μm以 であることが好ましく、2μm以上であること がより好ましく、4μm以上であることが最も ましく、また、30μm以下であることが好まし く、20μm以下であることがより好ましく、10μ m以下であることがさらに好ましく、6μm以下 あることが最も好ましい。

 また、前記セパレータの空孔率としては 電解液の保液量を確保してイオン透過性を 好にするために、乾燥した状態で、15%以上 あることが好ましく、20%以上であることが り好ましく、30%以上であることが最も好ま い。一方、セパレータ強度の確保と内部短 の防止の観点から、前記セパレータの空孔 は、乾燥した状態で、70%以下であることが ましく、60%以下であることがより好ましい セパレータの空孔率:P(%)は、セパレータの み、単位面積あたりの質量、構成成分の密 から、下記式(1)を用いて各成分iについての 和を求めることにより計算できる。

   P=100-(σa i i )×(m/t)        (1)
 ここで、前記式中、a i :質量%で表した成分iの比率、ρ i :成分iの密度(g/cm 3 )、m:セパレータの単位面積あたりの質量(g/cm 2 )、t:セパレータの厚み(cm)である。

 また、前記式(1)において、mを多孔質層(I)の 単位面積あたりの質量(g/cm 2 )とし、tを多孔質層(I)の厚み(cm)とすることで 、前記式(1)を用いて多孔質層(I)の空孔率:P(%) 求めることができる。この方法により求め れる多孔質層(I)の空孔率は、10%以上である とが好ましく、30%以上であることがより好 しく、70%以下であることが好ましく、50%以 であることがより好ましい。

 更に、前記式(1)において、mを多孔質層(II) 単位面積あたりの質量(g/cm 2 )とし、tを多孔質層(II)の厚み(cm)とすること 、前記式(1)を用いて多孔質層(II)の空孔率:P(% )を求めることもできる。この方法により求 られる多孔質層(II)の空孔率は、10%以上であ ことが好ましく、20%以上であることがより ましく、60%以下であることが好ましく、50% 下であることがより好ましい。

 また、前記セパレータは、JIS P 8117に準拠 た方法で行われ、0.879g/mm 2 の圧力下で100mLの空気が膜を透過する秒数と て示されるガーレー値が、10~300secであるこ が望ましい。ガーレー値(透気度)が大きす ると、イオン透過性が小さくなり、他方、 さすぎると、セパレータの強度が小さくな ことがある。更に、セパレータの強度とし は、直径1mmのニードルを用いた突き刺し強 で50g以上であることが望ましい。かかる突 刺し強度が小さすぎると、リチウムのデン ライト結晶が発生した場合に、セパレータ 突き破れによる短絡が発生する場合がある

 前記セパレータの平均細孔径は、好まし は0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上で って、好ましくは1μm以下、より好ましくは0 .5μm以下である。また、多孔質層(I)の平均細 径は、0.01~0.5μmであることが好ましく、多 質層(II)の平均細孔径は、0.05~1μmであること 好ましい。平均細孔径は、水銀ポロシメー ーなどを用いて測定することができる。

 前記セパレータのシャットダウン特性は 例えば、本発明の電気化学素子の内部抵抗 温度変化により求めることができる。具体 には、電気化学素子を恒温槽中に設置し、 度を室温から毎分1℃の割合で上昇させ、電 気化学素子の内部抵抗が上昇する温度で評価 することが可能である。この場合、150℃に昇 温した後における電気化学素子の内部抵抗は 、昇温前の5倍以上であることが好ましく、10 倍以上であることが更に好ましい。

 また、前記セパレータは、150℃での熱収 率を5%以下とすることが好ましく、1%以下と することがより好ましい。このような特性の セパレータであれば、電気化学素子の内部が 150℃程度になっても、セパレータの収縮が殆 ど生じないため、正負極の接触による短絡を より確実に防止することができ、高温での電 気化学素子の安全性をより高めることができ る。ここでいう熱収縮率は、多孔質層(I)と多 孔質層(II)が一体化している場合は、その一 化したセパレータ全体の収縮率を指し、多 質層(I)と多孔質層(II)が独立している場合に 、それぞれの収縮率の小さい方の値を指す また、後述するように、多孔質層(I)および/ または多孔質層(II)は、電極と一体化する構 とすることもできるが、その場合は、電極 一体化した状態で測定した熱収縮率を指す

 前記の「150℃の熱収縮率」とは、セパレ タまたは多孔質層(I)および多孔質層(II)(電 と一体化した場合には電極と一体化した状 で)を恒温槽に入れ、温度を150℃まで上昇さ て3時間放置した後に取り出して、恒温槽に 入れる前のセパレータまたは多孔質層(I)およ び多孔質層(II)の寸法と比較することで求め れる寸法の減少割合を百分率で表したもの ある。

 本発明の電気化学素子に用いるセパレー の製造方法としては、例えば、下記の(a)~(f) の方法を採用できる。セパレータの製造方法 (a)は、多孔質基体に、樹脂(A)を含有する多孔 質層(I)形成用組成物(スラリーなどの液状組 物など)、またはフィラーを含有する多孔質 (II)形成用組成物(スラリーなどの液状組成 など)を塗布した後、所定の温度で乾燥し、 の後他方の組成物を更に塗布してから所定 温度で乾燥する製造方法である。この場合 多孔質基体としては、具体的には、前記例 の各構成材料からなる繊維状物の少なくと 1種で構成される織布や、これら繊維状物同 士が絡み合った構造を有する不織布などの多 孔質シートなどを用いることができる。より 具体的には、紙、PP不織布、ポリエステル不 布(PET不織布、PEN不織布、PBT不織布など)、PA N不織布などの不織布が例示できる。

 前記多孔質層(I)形成用組成物は、樹脂(A) 他、必要に応じて、フィラー、有機バイン ーなどを含有し、これらを溶媒(分散媒を含 む、以下同じ。)に分散させたものである。 記有機バインダーについては溶媒に溶解さ ることもできる。多孔質層(I)形成用組成物 用いられる溶媒は、樹脂(A)やフィラーなど 均一に分散でき、また、有機バインダーを 一に溶解または分散できるものであればよ が、例えば、トルエンなどの芳香族炭化水 、テトラヒドロフランなどのフラン類、メ ルエチルケトン、メチルイソブチルケトン どのケトン類など、一般に有機溶媒が好適 用いられる。これらの溶媒に、界面張力を 御する目的で、アルコール(エチレングリコ ル、プロピレングリコールなど)、または、 モノメチルアセテートなどの各種プロピレン オキサイド系グリコールエーテルなどを適宜 添加してもよい。また、有機バインダーが水 溶性である場合、エマルジョンとして使用す る場合などでは、水を溶媒としてもよく、こ の際にもアルコール類(メチルアルコール、 チルアルコール、イソプロピルアルコール エチレングリコールなど)を適宜加えて界面 力を制御することもできる。

 前記多孔質層(II)形成用組成物は、フィラ ーの他、必要に応じて樹脂(A)、有機バインダ ーなどを含有し、これらを溶媒に分散させた ものである。溶媒には、多孔質層(I)形成用組 成物に用いるものとして例示した各種溶媒と 同じものを用いることができ、また、適宜界 面張力を制御する成分として多孔質層(I)形成 用組成物に関して例示した前記の各種成分を 加えてもよい。

 多孔質層(I)形成用組成物および多孔質層( II)形成用組成物は、樹脂(A)、フィラーおよび 有機バインダーを含む固形分含量を、例えば 10~80質量%とすることが好ましい。

 前記多孔質基体の空孔の開口径が比較的 きい場合、例えば、5μm以上の場合には、こ れが電気化学素子の短絡の要因となりやすい 。よって、この場合には、樹脂(A)やフィラー 、板状粒子、二次粒子などの全部または一部 が、多孔質基体の空隙内に存在する構造とす ることが好ましい。多孔質基体の空隙内に樹 脂(A)やフィラー、板状粒子、二次粒子などを 存在させるには、例えば、これらを含有する 多孔質層形成用組成物を多孔質基体に塗布し た後に一定のギャップを通し、余分の組成物 を除去した後、乾燥するなどの工程を用いれ ばよい。

 前記セパレータに含有させる板状粒子の 向性を高めてその機能をより有効に作用さ るためには、板状粒子を含有する多孔質層 成用組成物を多孔質基体に塗布して含浸さ た後、前記組成物にシェアや磁場をかける いった方法を用いればよい。例えば、前述 ように、板状粒子を含有する多孔質層形成 組成物を多孔質基体に塗布した後、一定の ャップを通すことで、前記組成物にシェア かけることができる。

 また、樹脂(A)やフィラー、板状粒子、二 粒子など、それぞれの構成物の持つ作用を り有効に発揮させるために、前記構成物を 在させて、セパレータの膜面と平行または 平行に、前記構成物が層状に集まった形態 してもよい。このような形態とするには、 えば、ダイコーターやリバースロールコー ーのヘッドやロールを2つ用いて、多孔質基 体の裏表両方向から別々の組成物、例えば、 多孔質層(I)形成用組成物と多孔質層(II)形成 組成物を別々に塗布し、乾燥する方法が採 できる。

 セパレータの製造方法(b)は、多孔質基体 多孔質層(I)形成用組成物または多孔質層(II) 形成用組成物の一方を塗布し、塗布した組成 物が乾燥する前に他方の組成物を更に塗布し 、乾燥させる方法である。

 セパレータの製造方法(c)は、多孔質層(I) 成用組成物を多孔質基体に塗布し、乾燥し 、樹脂(A)を主体して含む多孔質層(I)を形成 、別の多孔質基体に多孔質層(II)形成用組成 物を塗布し、乾燥して、フィラーを主体とし て含む多孔質層(II)を形成し、これら2つの多 質層を重ね合わせて1つのセパレータとする 方法である。この場合、多孔質層(I)と多孔質 層(II)とは一体化されていてもよいし、それ れ独立した構成であって、電気化学素子の み立てにより、電気化学素子内で重ね合わ れた状態で一体のセパレータとして機能す ものであってもよい。

 セパレータの製造方法(d)は、多孔質層(I) 成用組成物および多孔質層(II)形成用組成物 に、更に必要に応じて繊維状物を含有させ、 これをフィルムや金属箔などの基板上に塗布 し、所定の温度で乾燥した後に、該基板から 剥離する方法である。製造方法(d)でも、製造 方法(c)と同様に、樹脂(A)を主体として含む多 孔質層(I)とフィラーを主体として含む多孔質 層(II)とは、それぞれ独立した構成としても いし、一体化された構成としてもよい。多 質層(I)と多孔質層(II)とが一体化された構成 する場合は、製造方法(a)と同様に一方の多 質層を形成して乾燥した後に他方の多孔質 を形成してもよいし、一方の多孔質層形成 組成物を塗布し、塗布した組成物が乾燥す 前に他方の多孔質層形成用組成物を塗布し もよいし、両者の多孔質層形成用組成物を 時に塗布する、いわゆる同時重層塗布方式 用いてもよい。

 セパレータの製造方法(e)は、多孔質基体 、フィラーを含有する多孔質層(II)形成用組 成物を塗布した後、所定の温度で乾燥し、こ れを、多孔質層(I)となる樹脂(A)を主体とする 微多孔フィルムと重ね合わせて1つのセパレ タとする方法である。この場合も、多孔質 (I)と多孔質層(II)とは一体化されていてもよ し、それぞれ独立した構成であって、電気 学素子の組み立てにより、電気化学素子内 重ね合わされた状態で一体のセパレータと て機能するものであってもよい。

 セパレータの製造方法(f)は、多孔質層(II) 形成用組成物に、更に必要に応じて繊維状物 を含有させ、これをフィルムや金属箔などの 基板上に塗布し、所定の温度で乾燥した後に 、該基板から剥離し、これを、多孔質層(I)と するための樹脂(A)を主体とする微多孔フィル ムと重ね合わせて1つのセパレータとする方 である。製造方法(f)でも、製造方法(e)など 同様に、樹脂(A)を主体とする微多孔フィル からなる多孔質層(I)とフィラーを主体とし 含む多孔質層(II)とは、それぞれ独立した構 としてもよいし、一体化された構成として よい。多孔質層(I)と多孔質層(II)とを一体化 するには、別途形成した多孔質層(II)と多孔 層(I)とをロールプレスなどにより貼り合わ る方法の他、基板の代わりに多孔質層(I)の 面に多孔質層(II)形成用組成物を塗布し、乾 して、多孔質層(I)の表面に直接多孔質層(II) を形成する方法を採用することもできる。例 えば、樹脂(A)を主体とする微多孔フィルムの 表面に多孔質層(II)形成用組成物を塗布し、 燥する方法であってもよい。

 また、製造方法(d)や製造方法(f)によって 電気化学素子を構成する正極および負極の なくとも一方の電極の表面に、多孔質層(I) よび多孔質層(II)の少なくとも一方[製造方 (f)を採用する場合には、多孔質層(II)]を形成 して、多孔質層(I)および多孔質層(II)の少な とも一方[製造方法(f)を採用する場合には、 孔質層(II)]を電極と一体化した構造として よい。

 前記セパレータは、前記に示した各構造 限定されるものではない。例えば、製造方 (c)と製造方法(d)を組み合わせて形成される 様、すなわち多孔質層(I)または多孔質層(II) のいずれか一方に多孔質基体を用い、他方に 多孔質基体を用いない構成とすることもでき る。

 また、樹脂(A)を主体として含む多孔質層( I)と、フィラーを主体として含む多孔質層(II) とは、それぞれ1層ずつである必要はなく、 数の層がセパレータ中にあってもよい。例 ば、多孔質層(II)の両面に多孔質層(I)を形成 た構成としてもよい。ただし、層数を増や ことでセパレータの厚みが増加して、内部 抗の増加やエネルギー密度の低下を招くお れがあるので、層数を多くしすぎるのは好 しくなく、多孔質層の層数は5層以下である ことが好ましく、より好ましくは2層の構成 ある。

 また、前記セパレータにおいて、樹脂(A) 、粒子状で個々に独立して存在していても く、互いに、または繊維状物などに、一部 融着されていても構わない。

 多孔質層(I)と多孔質層(II)とは、一体化し て独立膜としてセパレータを構成する以外に 、前記のように、それぞれ独立した構成要素 とし、電気化学素子が組み立てられた段階で 、電気化学素子内で重ね合わされた状態とな り、正極と負極の間に介在するセパレータと して機能するようにすることもできる。ただ し、初めから一体化していない場合は、巻回 時に多孔質層(I)と多孔質層(II)との巻きずれ 生じるおそれもあるので、多孔質層(I)と多 質層(II)とが一体化されて構成される独立膜 セパレータとして用いるのが好ましい。

 また、多孔質層(I)と多孔質層(II)とは接し ている必要はなく、それらの間に別の層、例 えば、多孔質基体を構成する繊維状物の層な どが介在していてもよい。

 多孔質層(I)が多孔質層(II)の一方に配置さ れた構成のセパレータ、すなわち、例えば、 多孔質層(II)の片面に多孔質層(I)が形成され 構成のセパレータや、独立膜である多孔質 (I)と独立膜である多孔質層(II)とを重ね合わ て構成したセパレータなどの場合、多孔質 (I)を、正極側に配置することも負極側に配 することもできるが、本発明の電気化学素 では、シャットダウン機能をより有効に作 させ安全性を高めるために、多孔質層(I)が 極に面するように配置されている。多孔質 (I)を負極側に配置した場合、多孔質層(I)を 極側に配置した場合に比べて、シャットダ ン後に樹脂(A)が活物質含有層中に吸収され くく、溶融した樹脂(A)が効率よくセパレー の空孔を閉塞することができる。従って、 パレータが負極の活物質含有層と接する場 は、セパレータの負極側表面に多孔質層(I) 存在するよう電気化学素子を組み立てるこ が望まれる。

 また、多孔質層(II)に用いるフィラーが、 耐酸化性に優れた材料(例えば、無機酸化物) ある場合、多孔質層(II)を正極側に向けるこ とによって、正極によるセパレータの酸化を 抑制することが可能となり、高温時の保存特 性や充放電サイクル特性に優れた電気化学素 子とすることができる。従って、セパレータ が正極の活物質含有層と接する場合は、セパ レータの正極側表面に多孔質層(II)が存在す よう電気化学素子を組み立てることが望ま る。

 以下、本発明の電気化学素子の一例とし 、リチウム二次電池について詳述する。リ ウム二次電池の形態としては、スチール缶 アルミニウム缶などを外装缶として使用し 筒形(角筒形や円筒形など)などが挙げられ 。また、金属を蒸着したラミネートフィル を外装体としたソフトパッケージ電池とす こともできる。

 正極としては、従来のリチウム二次電池に いられている正極、すなわち、Liイオンを 蔵放出可能な活物質を含有する正極であれ 特に制限はない。例えば、正極活物質とし 、Li 1+x MO 2 (-0.1<x<0.1、M:Co、Ni、Mn、Al、Mgなど)で表さ れる層状構造のリチウム含有遷移金属酸化物 、LiMn 2 O 4 やその元素の一部を他元素で置換したスピネ ル構造のリチウムマンガン酸化物、LiMPO 4 (M:Co、Ni、Mn、Feなど)で表されるオリビン型化 合物などを用いることが可能である。前記層 状構造のリチウム含有遷移金属酸化物の具体 例としては、LiCoO 2 やLiNiO 2 などのほか、少なくともCoおよびNiを含有す LiNi 1-x-y Co x Al y O 2 (0.1≦x≦0.3、0.01≦y≦0.2)、LiNi 1-x-y Co x Mn y O 2 (0.1≦x≦0.4、0.1≦y≦0.5)などを例示すること でき、より具体的には、LiNi 1/3 Co 1/3 Mn 1/3 O 2 、LiNi 5/12 Co 1/6 Mn 5/12 O 2 、LiNi 3/5 Co 1/5 Mn 1/5 O 2 などの組成を示すことができる。

 導電助剤としては、カーボンブラックな の炭素材料が用いられ、バインダーとして 、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などフッ素樹 が用いられ、これらの材料と正極活物質と 混合された正極合剤を用いて、正極活物質 有層が、例えば集電体上に形成される。

 また、正極の集電体としては、アルミニ ムなどの金属の箔、パンチングメタル、網 エキスパンドメタルなどを用い得るが、通 、厚みが10~30μmのアルミニウム箔が好適に いられる。

 正極側のリード部は、通常、正極作製時 、集電体の一部に正極活物質含有層を形成 ずに集電体の露出部を残し、そこをリード とすることによって設けられる。ただし、 ード部は必ずしも当初から集電体と一体化 れたものであることは要求されず、集電体 アルミニウム製の箔などを後から接続する とによって設けてもよい。

 負極としては、従来のリチウム二次電池 用いられている負極、すなわち、Liイオン 吸蔵放出可能な活物質を含有する負極であ ば特に制限はない。例えば、負極活物質と て、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガ ス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、 ソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維 どの、リチウムを吸蔵、放出可能な炭素系 料の1種または2種以上の混合物が用いられる 。また、Si、Sn、Ge、Bi、Sb、Inなどの元素およ びその合金、リチウム含有窒化物、またはリ チウム酸化物などのリチウム金属に近い低電 圧で充放電できる化合物、もしくはリチウム 金属やリチウム/アルミニウム合金も負極活 質として用いることができる。これらの負 活物質に導電助剤(カーボンブラックなどの 素材料など)やPVDFなどのバインダーなどを 宜添加した負極合剤を、集電体を芯材とし 成形体(負極活物質含有層)に仕上げたもの、 または、前記の各種合金やリチウム金属の箔 を単独、もしくは集電体上に積層したものな どが負極として用いられる。

 負極に集電体を用いる場合には、集電体 しては、銅製やニッケル製の箔、パンチン メタル、網、エキスパンドメタルなどを用 得るが、通常、銅箔が用いられる。この負 集電体は、高エネルギー密度の電池を得る めに負極全体の厚みを薄くする場合、厚み 上限は30μmであることが好ましく、下限は5 mであることが望ましい。また、負極側のリ ド部は、正極側のリード部と同様にして形 すればよい。

 電極は、前記の正極と前記の負極とを、 述のセパレータを介して積層した積層体や 更にこれを巻回した電極巻回体の形態で用 ることができる。

 電解液としては、リチウム塩を有機溶媒に 解した非水溶液が用いられる。リチウム塩 しては、溶媒中で解離してLi + イオンを生成し、電池として使用される電圧 範囲で分解などの副反応を起こしにくいもの であれば特に制限は無い。例えば、LiClO 4 、LiPF 6 、LiBF 4 、LiAsF 6  、LiSbF 6  などの無機リチウム塩、LiCF 3 SO 3 、LiCF 3 CO 2 、Li 2 C 2 F 4 (SO 3 ) 2 、LiN(CF 3 SO 2 ) 2 、LiC(CF 3 SO 2 ) 3 、LiC n F 2n+1 SO 3 (2≦n≦5)、LiN(RfOSO 2 ) 2 〔ここでRfはフルオロアルキル基〕などの有 リチウム塩などを用いることができる。

 電解液に用いる有機溶媒としては、前記 リチウム塩を溶解し、電池として使用され 電圧範囲で分解などの副反応を起こさない のであれば特に限定されない。例えば、エ レンカーボネート、プロピレンカーボネー 、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボ ートなどの環状カーボネート;ジメチルカー ボネート、ジエチルカーボネート、メチルエ チルカーボネートなどの鎖状カーボネート; ロピオン酸メチルなどの鎖状エステル;γ-ブ ロラクトンなどの環状エステル;ジメトキシ エタン、ジエチルエーテル、1,3-ジオキソラ 、ジグライム、トリグライム、テトラグラ ムなどの鎖状エーテル;ジオキサン、テトラ ドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン どの環状エーテル;アセトニトリル、プロピ ニトリル、メトキシプロピオニトリルなど ニトリル類;エチレングリコールサルファイ トなどの亜硫酸エステル類;などが挙げられ これらは2種以上混合して用いることもでき 。より良好な特性の電池とするためには、 チレンカーボネートと鎖状カーボネートの 合溶媒など、高い導電率を得ることができ 組み合わせで用いることが望ましい。また これらの電解液に安全性や充放電サイクル 、高温貯蔵性といった特性を向上させる目 で、ビニレンカーボネート類、1,3-プロパン サルトン、ジフェニルジスルフィド、シクロ ヘキシルベンゼン、ビフェニル、フルオロベ ンゼン、t-ブチルベンゼンなどの添加剤を適 加えることもできる。

 前記リチウム塩の電解液中の濃度として 、0.5~1.5mol/Lとすることが好ましく、0.9~1.25mo l/Lとすることがより好ましい。

 前記のような正極活物質含有層を有する 極や、負極活物質含有層を有する負極は、 えば、正極合剤をN-メチル-2-ピロリドン(NMP) などの溶媒に分散させてなる正極活物質含有 層形成用組成物(スラリーなど)や、負極合剤 NMPなどの溶媒に分散させてなる負極活物質 形成用組成物(スラリーなど)を集電体上に 布し、乾燥することにより作製される。こ 場合、例えば、正極活物質含有層形成用組 物を集電体上に塗布し、該組成物が乾燥す 前に、更に多孔質層(I)形成用組成物および/ たは多孔質層(II)形成用組成物を塗布して作 製した、正極と多孔質層(I)および/または多 質層(II)との一体化物や、負極活物質含有層 成用組成物を集電体上に塗布し、該組成物 乾燥する前に、更に多孔質層(I)形成用組成 および/または多孔質層(II)形成用組成物を 布して作製した、負極と多孔質層(I)および/ たは多孔質層(II)との一体化物を用いて、リ チウム二次電池(電気化学素子)を構成するこ もできる。

 (実施形態2)
 次に、本発明の電気化学素子の製造方法に いて、実施形態1とは異なる観点から説明す る。前記正極および前記負極は、セパレータ を介して積層されて電極体を構成し、そのま まの形状で電気化学素子の組み立てに用いら れる。あるいは、セパレータが巻回軸に巻き 付けられ、前記正極および前記負極とともに 巻回され、渦巻状の電極体とされて電気化学 素子の組み立てに用いられる。ところが、多 孔質層(I)で構成され、もう一方が多孔質層(II )で構成されたセパレータのように、両面の 擦係数が異なるセパレータを用いる場合、 巻状の電極体の製造において以下の問題が じやすくなる。すなわち、セパレータの摩 係数の高い側が巻回軸に面するようセパレ タを配置して巻回を行うと、セパレータと 回軸との大きな摩擦のため、形成された渦 状の電極体を巻回軸から抜き取る際に、引 抜きが困難になったり、電極の巻きずれを じたりすることがある。

 そのため、本発明では、正極、負極、お び、両面の摩擦係数が異なるセパレータを 層し、巻回軸を用いて渦巻状に巻回して電 体を製造する場合に、セパレータの摩擦係 の低い面側を巻回軸側に配置して、セパレ タを巻回軸に巻きつける方法が好ましく用 られる。

 すなわち、本発明の第1の電気化学素子の 製造方法は、正極、負極およびセパレータを 巻回軸により渦巻状に巻回し、正極、負極お よびセパレータを含む渦巻状の電極体を製造 する方法であって、前記セパレータは、両面 の摩擦係数が異なっており、前記セパレータ の摩擦係数の低い面側を巻回軸側に配置して 、前記セパレータを前記巻回軸に巻き付ける 工程と、前記セパレータと共に前記正極およ び前記負極を巻回する工程とを有することを 特徴とする。

 本発明の電気化学素子に用いるセパレー のように、熱可塑性樹脂を主体として含む 孔質層(I)と、耐熱温度が150℃以上のフィラ を主体として含む多孔質層(II)とを有する場 合、多孔質層(II)と巻回軸との間の静止摩擦 数の方が、多孔質層(I)と巻回軸との間の静 摩擦係数よりも大きくなりやすい。巻回軸 材質などにより変化するが、多孔質層(II)と 回軸との間の静止摩擦係数は、例えば、0.5 りも大きな値となり、一方、多孔質層(I)と 回軸との間の静止摩擦係数は、例えば、多 質層(I)が微多孔フィルムの場合、0.5以下と る。従って、セパレータの一方の面に多孔 層(I)が形成され、もう一方の面に多孔質層( II)が形成されている場合は、多孔質層(I)の側 を巻回軸側に配置して巻回軸に巻き付け、巻 回を行えばよい。

 また、多孔質層(II)を巻回軸側に配置して 巻回を行う場合は、多孔質層(II)にセラミッ スのように硬い無機微粒子が含まれていれ 、電極の巻きずれ以外に、巻回軸が無機微 子により研磨され短期間で磨り減るおそれ 生じる。このため、セパレータの表面の摩 係数の問題とは別に、多孔質層(II)にセラミ クスなどの無機微粒子が含まれている場合 、多孔質層(II)が巻回軸とは反対側に向くよ うセパレータを配置して、巻回を行うのが望 ましい。この観点から、本発明の第2の電気 学素子の製造方法は、正極、負極およびセ レータを巻回軸により渦巻状に巻回し、正 、負極およびセパレータを含む渦巻状の電 体を製造する方法であって、前記セパレー は、一方の側に、熱可塑性樹脂を主体とし 含む多孔質層(I)を備え、もう一方の側に、 熱温度が150℃以上の絶縁性セラミックス粒 を主体として含む多孔質層(II)を備え、前記 孔質層(I)を巻回軸側に配置して、前記セパ ータを前記巻回軸に巻き付ける工程と、前 セパレータと共に前記正極および前記負極 巻回する工程とを有することを特徴とする

 多孔質層(I)と巻回軸との間の静止摩擦係 が低いほど、渦巻状の電極体の巻回軸から 抜き取りが容易となるため、前記静止摩擦 数は0.5以下であることが好ましく、0.4以下 あることがより好ましい。一方、前記静止 擦係数が小さすぎると、セパレータが滑っ 巻回位置がずれる場合があるので、前記静 摩擦係数は、0.05以上であることが好ましく 、0.1以上であることがより好ましく、0.2以上 であることが特に好ましい。本明細書でいう 静止摩擦係数は、JIS K 7125の規定に準拠した 方法で測定した値である。

 次に、本発明の電気化学素子の製造方法 詳細を、図面を用いて説明する。図1は、巻 回電極体の製造装置の一例を示す概念図であ り、製造装置の側面を示しており、断面図で はないものの、各構成要素の理解を容易にす るために一部の構成要素(負極1)には斜線を付 している。

 本発明の製造方法では、セパレータ3を、 負極1および正極2と重ね合わせ、これらを巻 軸4を中心に巻回することで巻回電極体を製 造する。先ず巻き始めの段階では、2枚のセ レータ3、3を重ね合わせ、巻回軸4に密着さ ながら巻き込む形で巻回する(第1工程)。次 、巻回軸4側のセパレータ3の内側に負極1を き込み、更に2枚のセパレータ3、3の間に正 2を巻き込みつつ、巻回して巻回電極体とす (第2工程)。第2工程では、巻回軸4側のセパ ータ3の内側に正極2を巻き込み、2枚のセパ ータ3、3の間に負極1を巻き込みつつ、巻回 て巻回電極体としてもよい。その後、巻回 極体を巻回軸4から抜き取る。

 図2は、巻回電極体の製造において第1工 を終え、第2工程を開始した状態における巻 軸4付近を拡大して示す断面図である。図2 は、第1工程の後、2枚のセパレータ3、3の間 正極2を巻き込んだ状態を示しているが、負 極1については図示していない。図2において 3aはセパレータ3における摩擦係数の低い面 あり、3bはセパレータ3における摩擦係数の い面である。このように、セパレータ3、3 は両面で異なる摩擦係数を有するものを使 し、摩擦係数の低い面3a、3aが巻回軸4側を向 くように配置する。これにより、巻回電極体 の形成後に巻回軸4を抜く際に、セパレータ 巻回軸4への絡み付きが抑制され、より生産 の良好な巻回電極体の製造が可能となる。

 前述した、多孔質層(I)を負極側に配置し 構成の電気化学素子を製造するためには、 記の第2工程において、セパレータの摩擦係 数の低い面側、すなわち多孔質層(I)の側に負 極を巻き込むよう巻回を行えばよい。また、 セパレータの摩擦係数の高い面側、すなわち 多孔質層(II)の側に正極を巻き込むよう巻回 行えば、多孔質層(II)を正極側に配置した構 の電気化学素子を製造することができる。

 本発明の製造方法は、前記本発明に用い れるセパレータ以外にも適用可能であり、 面の摩擦係数の異なる熱可塑性樹脂の積層 よりなるセパレータなどであってもよい。

 図2の例では、巻回軸4は、2本の半円状の で構成され、平面部が互いに対抗するよう 配置されており、その平面部の間にセパレ タ3、3が挟みこまれている。巻回軸4の形状 関しては、図2に示す例に限定されることな く、従来の形状の巻回軸を用いることができ る。図3A、B、Cに、巻回軸4の具体例を模式的 示すが、例えば、図3Aに示すように、巻回 4の先端が2本のピンに割れて形成された形状 のもの;図3Bに示すように、断面が半円状の軸 2本を互いに平面部が対抗するように配置し また、電極、セパレータ面の短軸方向に対 、それぞれの軸が反対側から突き出した形 のもの;図3Cに示すように、角形の電気化学 子(角形電池など)用の巻回電極体を製造する のに好適な、2本の平板状の軸を互いに対抗 るように配置した形状のもの;などの各種の 回軸を用いることができる。

 巻回軸の材質についても特に制限はなく 従来の電気化学素子用の巻回電極体の巻回 使用されている巻回軸で採用されている材 を用いることができ、具体的には、ステン ス鋼(SUS303、SUS304、SUS305、SUS316、SUS317、SUS403 、SUS420など)などが例示できる。また、表面 窒化物などのセラミックスで被覆し耐久性 高めることもできる。

 前記電極体は、前記電解液と共に外装体 に封入され、例えばリチウム二次電池が構 される。電池の形態としては、従来のリチ ム二次電池と同様に、筒形(円筒形や角筒形 )の外装缶を使用した筒形電池や、扁平形(平 視で円形や角形の扁平形)の外装缶を使用し た扁平形電池、金属を蒸着したラミネートフ ィルムを外装体としたソフトパッケージ電池 などとすることができる。また、外装缶には 、スチール製やアルミニウム製のものが使用 できる。金属缶を外装缶とする電池では、一 定の圧力で亀裂が生じる金属製の開裂ベント 、一定の圧力で破れる樹脂製のベント、一定 の圧力で蓋が開くゴム製のベントなど、電池 内部のガス圧力が上昇した際に、前記ガスを 外部に排出する機構を備えることが望ましく 、中でも金属製の開裂ベントを備えるのが望 ましい。

 一方、ソフトパッケージ電池では、封止 分が樹脂の熱融着により封止されているた 、そもそも温度と内圧が上昇した場合に、 うした高温、高圧に耐えられる構造とする とが難しく、特別な機構を設けなくても温 が上昇した場合に電池内部のガスを外部に 出する構成とすることが可能である。すな ち、ソフトパッケージ電池においては、外 体の封止部(熱融着部)が、前記の電池内部 ガスを外部に排出する機構として作用する また、ソフトパッケージ電池の場合、封止 分の幅を特定の場所だけ狭くするなどの方 によっても、温度が上昇した場合に電池内 のガスを外部に排出する構成とすることが きる。すなわち、前記特定の場所が、前記 電池内部のガスを外部に排出する機構とし 作用する。

 温度上昇により電池の内圧が上昇した際 、電池内部のガスを外部に排出して電池の 圧を下げる機構を有するリチウム二次電池 は、この機構が作動した場合、内部の非水 解液が揮発して、電極が直接空気に曝され 状態となるおそれがある。電池が充電状態 ある場合に、前記のような状態となり、負 と空気(酸素や水分)が接触すると、負極に 蔵されたリチウムイオンや負極表面上に析 したリチウムと空気とが反応して発熱し、 パレータのシャットダウンが生じても電池 温度が上昇し、更に、正極活物質の熱暴走 応を引き起こす場合もある。

 しかし、セパレータの多孔質層(I)が負極 に配置されていれば、溶融した多孔質層(I) 樹脂(A)は、セパレータの空孔を閉塞するだ でなく、負極の表面に膜を形成して負極と 気の反応を抑制することが可能となる。特 、多孔質層(I)が負極の活物質含有層と接す 場合は、負極活物質含有層の表面に前記樹 (A)の膜が形成されるので、前記反応抑制の 果が高いと思われる。従って、電池内部の ス圧力が上昇した際に、前記ガスを外部に 出する機構を備えるリチウム二次電池では 多孔質層(I)を負極側に配置することによる 全性向上の効果はより高くなると思われる

 本発明の製造方法により製造される電気 学素子の種類は、特に限定されるものでは く、非水電解液を用いるリチウム二次電池 他、リチウム一次電池やキャパシタなど、 来の電気化学素子に適用することができ、 温での安全性が要求される用途に特に好ま く適用できる。すなわち、本発明の電気化 素子は、前記本発明のセパレータを備えて れば、その他の構成・構造については特に 限はなく、従来の非水電解液を有する各種 気化学素子(リチウム二次電池、リチウム一 次電池、キャパシタなど)が備えている各種 成・構造を採用することができる。

 以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述 る。各実施例で示す多孔質層(I)および多孔 層(II)における各成分の体積含有率は、多孔 質基体(不織布)を使用している場合には、こ 多孔質基体を除く全構成成分中の体積含有 である。体積含有率は、SBRの比重を0.97g/cm 3 、ベーマイトの比重を3.0g/cm 3 、PEの比重を1.0g/cm 3 、アルミナの比重を4.0g/cm 3 として計算を行った。

 また、以下の実施例で示す、セパレータ 巻回軸との間の静止摩擦係数の測定は、巻 軸の構成材料であるSUS304を用い、JIS K 7125 準拠した方法で行った。また、樹脂(A)の融 (融解温度)は、JIS K 7121の規定に準じて、DS Cを用いて測定した値である。

 <負極の作製1(製造例1)>
 負極活物質である黒鉛:95質量部と、バイン ーであるPVDF:5質量部とを、N-メチル-2-ピロ ドン(NMP)を溶剤として均一になるように混合 して、負極合剤含有ペーストを調製した。こ の負極合剤含有ペーストを、銅箔からなる厚 さ10μmの集電体の両面に、活物質塗布長が表 320mm、裏面260mmになるように間欠塗布し、乾 燥した後、カレンダー処理を行って、全厚が 142μmになるように負極合剤層の厚みを調整し 、幅45mmになるように切断して、長さ330mm、幅 45mmの負極を作製した。更に、この負極の銅 の露出部にタブを溶接してリード部を形成 た。

 <正極の作製1(製造例2)>
 正極活物質であるLiCoO 2 :85質量部、導電助剤であるアセチレンブラッ ク:10質量部、およびバインダーであるPVDF:5質 量部を、NMPを溶剤として均一になるように混 合して、正極合剤含有ペーストを調製した。 この正極合剤含有ペーストを、アルミニウム 箔からなる厚さ15μmの集電体の両面に、活物 塗布長が表面320mm、裏面260mmになるように間 欠塗布し、乾燥した後、カレンダー処理を行 って、全厚が150μmになるように正極合剤層の 厚みを調整し、幅43mmになるように切断して 長さ330mm、幅43mmの正極を作製した。更に、 の正極のアルミニウム箔の露出部にタブを 接してリード部を形成した。

 (実施例1)
 フィラーであるアルミナ(平均粒径0.3μm):1000 g、水:800g、イソプロピルアルコール(IPA):200g およびバインダーであるポリビニルブチラ ルの水/IPA溶液(固形分比率15%):375gを容器に入 れ、スリーワンモーターで1時間撹拌して分 させ、均一なスラリーとした(スラリー1)。 のスラリー1中に、厚みが12μmで目付け重量 8g/m 2 のPET製不織布を通し、引き上げ塗布によりス ラリー1を塗布した後、所定の間隔を有する ャップの間を通し、その後乾燥して、厚み 20μmの多孔質膜[多孔質層(II)]を得た。得られ た多孔質膜の片面に、PE粉末の水分散体(平均 粒径1μm、固形分濃度40%)をブレードコーター より塗布して乾燥し、厚み5μmになるように PE微粒子層[多孔質層(I)]を形成し、両面の摩 係数が異なるセパレータを作製した。

 次に、図1に示す構成の製造装置を使用し 、図3Bに示した構造のステンレス鋼(SUS304)製 巻回軸を用いて、製造例1で作製した負極、 造例2で作製した正極、および本実施例のセ パレータを用いて巻回電極体を作製した。セ パレータは、摩擦係数の低い面[多孔質層(I)] 巻回軸側に向くように配置した。そして、 回電極体を100個作製し、巻回軸から正常に き取りができなかった電極体の割合を求め 不良率として評価した。

 (実施例2)
 前記実施例1で作製したスラリー1を、厚み16 μmのPE製微多孔フィルム[多孔質層(I)]の片面 ブレードコーターを用いて塗布し、乾燥し 厚みが5μmとなるように無機フィラー層[多孔 質層(II)]を形成し、両面の摩擦係数が異なる パレータを作製した。このセパレータを用 た以外は、実施例1と同様にして巻回電極体 を100個作製し、電極体の抜き取りにおける不 良率を測定した。

 (比較例1)
 セパレータの摩擦係数の高い面[多孔質層(II )]を巻回軸側に向けて配置した以外は、実施 1と同様にして巻回電極体を100個作製し、電 極体の抜き取りにおける不良率を測定した。

 (比較例2)
 セパレータの摩擦係数の高い面[多孔質層(II )]を巻回軸側に向けて配置した以外は、実施 2と同様にして巻回電極体を100個作製し、電 極体の抜き取りにおける不良率を測定した。

 実施例1~2および比較例1~2における電極体 抜き取りの不良率を表1に示す。また、これ らの実施例および比較例おいて、巻回軸と接 するセパレータの面の種類と、セパレータと 巻回軸の構成素材であるSUS304との間の静止摩 擦係数とを表1に併記する。

 表1に示すように、両面の摩擦係数の異な るセパレータを使用し、そのうち摩擦係数の 低い面を巻回軸側に向けて巻回電極体の作製 を行った実施例1~2では、全ての電極体を巻回 軸から正常に抜き取ることができ、また巻き ずれを生じることもなく生産性よく電極体を 作製できた。従って、本発明の製造方法によ れば、電気化学素子の生産性を向上できるこ とがわかる。

 (実施例3)
 製造例1で作製した負極の両面に、PE微粒子 水分散体(平均粒径1μm、固形分濃度40%、融 125℃、樹脂の溶融粘度1300mPa・s)[液状組成物( 1-A)]をブレードコーターにより塗布して乾燥 、厚みが7μmになるように、樹脂(A)であるPE 主体とする多孔質層(I)を形成した。負極上 形成した多孔質層(I)は、樹脂(A)であるPE微 子のみにより構成されており、多孔質層(I) おける樹脂(A)の体積含有率は100%であった。

 次に、フィラーとして板状ベーマイト(平 均粒径1μm、アスペクト比10)1000gを水1000gに分 させ、更に有機バインダーであるSBRラテッ ス120gを加え、均一に分散させて液状組成物 (2-A)を調製した。液状組成物(2-A)に厚み15μmの PP製メルトブロー不織布を通し、引き上げ塗 によりスラリーを塗布した後、乾燥するこ により、不織布の空隙内にフィラー粒子を 体とする層を有する厚み20μmの多孔質膜[多 質層(II)]を得た。算出した多孔質層(II)中の 状ベーマイトの体積含有率は、87%であった

 製造例2で作製した正極と、前記多孔質層(I) を有する負極と、多孔質層(II)となる前記多 質膜とを渦巻状に巻回して電極体を作製し 。この略円筒状の電極体を、扁平状になる う押しつぶし、アルミニウムラミネート製 外装体の中に入れ、更に以下の電解液を注 し、その後封止を行ってリチウム二次電池 した。電解液は、エチレンカーボネートと チルメチルカーボネートとを体積比1:2で混 した溶媒に、LiPF 6 を1.2mol/Lの濃度で溶解させた非水電解液を用 た。本実施例においては、前記負極上に形 された多孔質層(I)と、不織布を基材とした 孔質層(II)(多孔質膜)の両者が、電池内で重 られた状態で1つのセパレータとして機能し ており、本実施例および後述する各実施例で は、多孔質層(I)と多孔質層(II)とを合わせた 体をセパレータと呼ぶ。

 (実施例4)
 PE微粒子の水分散液(平均粒径1μm、固形分濃 度40%、融点125℃、樹脂の溶融粘度1300mPa・s)200 0gとエタノール800gとを容器に入れ、ディスパ ーで、2800rpmの条件で1時間攪拌して分散させ 更にフィラー粒子として板状アルミナ(Al 2 O 3 )微粒子(平均粒径2μm、アスペクト比50)4400gを えて3時間撹拌し、均一なスラリーである液 状組成物(2-B)を得た。液状組成物(2-B)と実施 1で使用した液状組成物(1-A)とを、互いに対 する位置にダイを2つ備えたダイコーターを いて、厚み18μmのPET製湿式不織布に同時に 布し、乾燥して、樹脂(A)であるPEを主体とし て含む多孔質層(I)と、フィラーである板状ア ルミナ微粒子を主体として含む多孔質層(II) を有するセパレータを得た。多孔質層(I)お び多孔質層(II)の厚みは、それぞれおよそ10μ mであった。また、多孔質層(I)中の樹脂(A)で るPEの体積含有率は100%であり、算出した多 質層(II)中の板状アルミナ微粒子の体積含有 は、58%であった。

 製造例1で作製した負極と、前記のセパレ ータと、製造例2で作製した正極とを、セパ ータの多孔質層(I)が負極側となるように重 合わせ、渦巻状に巻回して電極体を作製し 。上記の巻回においては、セパレータの巻 軸との接触面が多孔質層(I)となるようセパ ータを配置した。以下、実施例3と同様にし 、リチウム二次電池を作製した。

 (実施例5)
 実施例4で使用した液状組成物(2-B)を用いて 実施例4で用いたものと同じPET製不織布を多 孔質基体として、実施例3と同様に引き上げ 布により厚さ20μmの多孔質層(II)を作製した また、溶融粘度が10000mPa・sのPE微粒子を用い た以外は、液状組成物(1-A)と同じ構成の液状 成物(1-B)を作製し、前記多孔質層(II)の片面 ブレードコーターを用いて塗布し、乾燥す ことにより、厚さが7μmの多孔質層(I)を形成 してセパレータを得た。このセパレータを用 いた以外は実施例4と同様にして、リチウム 次電池を作製した。多孔質層(I)中の樹脂(A) あるPEの体積含有率は100%であり、算出した 孔質層(II)中の板状アルミナ微粒子の体積含 率は、58%であった。

 (比較例3)
 電極巻回体の作製に際し、多孔質層(I)が正 側となるよう、セパレータの配置を変えた 外は、実施例5と同様にしてリチウム二次電 池を作製した。

 (実施例6)
 板状アルミナに代えて二次粒子構造のベー イト(二次粒子の平均粒径0.6μm、比表面積15m 2 /g)を用いた以外は、実施例4と同様にして液 組成物(2-C)を調製した。この液状組成物(2-C) 、液状組成物(2-B)に代えて用いた以外は、 施例5と同様にしてセパレータを作製した。 のセパレータを用いた以外は、実施例5と同 様にしてリチウム二次電池を作製した。

 (比較例4)
 液状組成物(1-B)に代えて、カルナバワック の水分散体(平均粒径0.4μm、固形分濃度30質 %、融点80℃、溶融粘度25mPa・s)を用いた以外 、実施例5と同様にしてセパレータを作製し た。このセパレータを用いた以外は、比較例 3と同様にしてリチウム二次電池を作製した

 (比較例5)
 PE製微多孔フィルム(厚み20μm)を用い、製造 1で作製した負極と製造例2で作製した正極 を、前記PE製微多孔フィルムを介在させつつ 重ね合わせ、渦巻状に巻回して電極体を作製 した。この電極体を用いた以外は、実施例3 同様にしてリチウム二次電池を作製した。

 実施例3~6および比較例3~5で作製したセパ ータの構成を表2に示す。表2において、樹 割合は、多孔質層(II)の空孔の体積に対する 多孔質層(I)に含まれる樹脂(A)の体積の割合 示しており、樹脂(A)の体積が前記空孔の体 と等しい場合を100%としている。また、空孔 率は、前記式(1)により求めた値である。

 実施例3~6および比較例3~5の各リチウム二 電池について、次の評価を行った。先ず、 施例3~6および比較例3~5のリチウム二次電池 用いられているセパレータのシャットダウ 温度を、次の方法により求めた。各電池を 温槽に入れ、30℃から150℃まで毎分1℃の割 で温度上昇させて加熱した。加熱中、電池 内部抵抗の変化を測定し、抵抗値が30℃で 値の5倍以上に上昇したときの温度を、シャ トダウン温度とした。また、150℃に達した 態でさらに30分間温度を維持し、電池の表 温度および電池電圧を測定し、異常の発生 有無を調べた。

 次に、前記測定に用いた電池以外の電池 用い、次の釘刺し試験を行った。実施例3~6 よび比較例3~5の電池を、0.5Cの定電流で4.2V で充電し、更に4.2Vの定電圧で、電流が0.05C 低下するまで充電を行った。充電後、直径5m mの釘を40mm/秒の速度で電池に刺し、電池の温 度上昇を調べた。各々3個の電池で試験を行 、それぞれの電池の最高到達温度の平均値 、釘刺し試験での電池の温度として求めた 前記の各評価の結果を表3に示す。

 表3に示すように、実施例3~6および比較例 3~5のリチウム二次電池では、電池の高温での 安全性を確保するのに適切な温度範囲でシャ ットダウンを生じた。また、多孔質層(I)を負 極側に配置した実施例3~6の電池では、電池を 150℃で30分保持しても、電池の表面温度の上 あるいは電池の電圧の低下といった異常は られなかった。更に、実施例3~6の電池では 多孔質層(I)を正極側に配置した比較例3およ び4に比べて、釘刺し試験での電池の温度上 が抑制され、シャットダウン機能がより有 に作用していた。

 また、比較例4に比べて、多孔質層(I)の樹 脂(A)の140℃における溶融粘度を高くした比較 例3の方が、シャットダウン機能がより有効 作用しており、樹脂(A)の溶融粘度を高める とが高温での安全性向上に有効であること わかる。

 また、比較例5の電池では、150℃で30分保 することで電圧が低下した。これは、セパ ータが収縮し、正極と負極の一部に短絡が じたためと推測される。

 <負極の作製2(製造例3)>
 負極合剤含有ペーストを、塗布長が表面500m m、裏面440mmになるように間欠塗布した以外は 、製造例1と同様にして、長さ510mm、幅45mmの 極を作製した。更に、この負極の銅箔の露 部にタブを溶接してリード部を形成した。

 <正極の作製2(製造例4)>
 正極合剤含有ペーストを、塗布長が表面500m m、裏面425mmになるように間欠塗布した以外は 、製造例2と同様にして、長さ520mm、幅43mmの 極を作製した。更に、この正極のアルミニ ム箔の露出部にタブを溶接してリード部を 成した。

 (実施例7)
 有機バインダーであるSBRのエマルジョン(固 形分比率40質量%):100gと、水:4000gとを容器に入 れ、均一に分散するまで室温で攪拌した。こ の分散液に板状ベーマイト粉末(平均粒径1μm アスペクト比10):4000gを4回に分けて加え、デ ィスパーにより2800rpmで5時間攪拌して均一な ラリーを調製した。次に、多孔質層(I)とな 厚み16μmのポリエチレン製微多孔フィルム( 孔率40%、平均孔径0.02μm、融点135℃)の片面 、マイクログラビアコーターを用いて前記 スラリーを塗布し、乾燥することにより多 質層(II)を形成し、厚みが22μmのセパレータ 得た。このセパレータの多孔質層(II)におけ 前記フィラーの体積含有率は97体積%であり 多孔質層(II)の空孔率は48%であった。

 製造例3で作製した負極と、本実施例のセ パレータと、製造例4で作製した正極とを、 パレータの多孔質層(I)が負極側となるよう 重ね合わせ、渦巻状に巻回して電極体を作 した。得られた略円筒状の電極体を、扁平 になるよう押しつぶし、厚み6mm、高さ50mm、 34mmのアルミニウム製外装缶に挿入し、更に 前述の実施例3で用いたものと同様の電解液 注入し、その後封止を行って、図4A、Bに示 構造で、図5に示す外観のリチウム二次電池 作製した。この電池は、上部に内圧が上昇 た場合に圧力を下げるための開裂ベントを えている。

 ここで、図4A、Bおよび図5に示す電池につ いて説明すると、負極1と正極2は前記のよう セパレータ3を介して渦巻状に巻回され、更 に扁平状になるように加圧されて電極体6と り、角筒形の外装缶20に電解液と共に収容さ れている。ただし、図4Bでは、煩雑化を避け ため、負極1や正極2の集電体である金属箔 電解液などは図示しておらず、電極体6の中 部およびセパレータ3は断面にしていない。

 外装缶20はアルミニウム合金製で、電池 外装体を構成するものであり、この外装缶20 は正極端子を兼ねている。そして、外装缶20 底部にはポリエチレンシートからなる絶縁 5が配置され、負極1、正極2およびセパレー 3からなる電極体6からは、負極1および正極2 のそれぞれ一端に接続された負極リード体8 正極リード体7が引き出されている。また、 装缶20の開口部を封口するアルミニウム合 製の封口用の蓋板9には、ポリプロピレン製 絶縁パッキング10を介してステンレス鋼製 端子11が取り付けられ、この端子11には絶縁 12を介してステンレス鋼製のリード板13が取 り付けられている。

 この蓋板9は外装缶20の開口部に挿入され 両者の接合部を溶接することによって、外 缶20の開口部が封口され、電池内部が密閉 れている。また、蓋板9には非水電解液注入 14が設けられており、この非水電解液注入 14には、封止部材が挿入された状態で、例え ばレーザー溶接などにより溶接封止されて、 電池の密閉性が確保されている。図4A、Bおよ び図5に示した電池では、便宜上、非水電解 注入口14は、非水電解液注入口自体と封止部 材とを含めて表示している。更に、蓋板9に 、電池の温度上昇などにより内圧が上昇し 際に、内部のガスを外部に排出する機構と て、開裂ベント15が設けられている。

 この実施例7の電池では、正極リード体7 蓋板9に直接溶接することによって外装缶20 蓋板9とが正極端子として機能し、負極リー 体8をリード板13に溶接し、そのリード板13 介して負極リード体8と端子11とを導通させ ことによって端子11が負極端子として機能す るようになっているが、外装缶20の材質など よっては、その正負が逆になる場合もある

 図5は、図4A、Bに示す電池の外観を模式的 に示す斜視図であり、この図5は前記電池が 形電池であることを示すことを目的として 示されたものであって、この図5では電池を 略的に示している。

 (実施例8)
 多孔質層(II)の板状ベーマイト粉末を、一次 粒子が凝集して構成された二次粒子構造のベ ーマイト(平均粒径0.6μm)に代えた以外は、実 例7と同様にしてリチウム二次電池を作製し た。このリチウム二次電池に用いたセパレー タの総厚みは22μmで、多孔質層(II)における前 記フィラーの体積含有率は97体積%であり、多 孔質層(II)の空孔率は44%であった。

 (実施例9)
 多孔質層(II)の板状ベーマイト粉末を、粒状 のアルミナ(平均粒径0.4μm)に代えた以外は、 施例7と同様にしてリチウム二次電池を作製 した。このリチウム二次電池に用いたセパレ ータの総厚みは20μmで、セパレータの多孔質 (II)における前記フィラーの体積含有率は96 積%であり、多孔質層(II)の空孔率は55%であ た。

 (実施例10)
 多孔質層(I)を構成する微多孔フィルムを、P P/PE/PPの三層構造の微多孔フィルム(厚み16μm 空孔率43%、平均孔径0.008μm、PEの融点135℃、P Eの体積含有率33体積%)に代えた以外は、実施 7と同様にしてリチウム二次電池を作製した 。このリチウム二次電池に用いたセパレータ の総厚みは22μmで、セパレータの多孔質層(II) における前記フィラーの体積含有率は97体積% であり、多孔質層(II)の空孔率は48%であった

 (実施例11)
 製造例4で作製した正極の表面に、実施例7 調製したものと同じ多孔質層(II)形成用のス リーを、マイクログラビアコーターを用い 塗布し、乾燥して、正極の両面に多孔質層( II)を形成した。多孔質層(II)の厚みは片面あ り5μmで、多孔質層(II)における前記フィラー の体積含有率は97体積%であり、多孔質層(II) 空孔率は48%であった。

 前記多孔質層(II)が表面に形成された正極 と、実施例7で用いたのと同じPE製微多孔フィ ルムと、製造例3で作製した負極とを重ね合 せて巻回した以外は、実施例7と同様にして チウム二次電池を作製した。本実施例の電 では、多孔質層(I)は負極合剤層と接してい 。また、多孔質層(I)を構成するPE製微多孔 ィルムと多孔質層(II)とは一体化されておら 、電池内で重ねられた状態で1つのセパレー タとして機能する。

 (実施例12)
 PET製不織布(厚み12μm、目付け重量8g/m 2 )を基材とし、実施例7で調製したものと同じ 孔質層(II)形成用スラリーの中に前記PET製不 織布を通して引き上げ塗布を行い、乾燥する ことで、厚みが20μmの多孔質層(II)を作製した 。多孔質層(II)における前記フィラーの体積 有率は97体積%であり、多孔質層(II)の空孔率 33%であった。

 製造例4で作製した正極と、前記多孔質層 (II)と、実施例7で用いたものと同じPE製微多 フィルムと、製造例3で作製した負極とを重 合わせて巻回した以外は、実施例7と同様に してリチウム二次電池を作製した。本実施例 の電池では、多孔質層(I)は負極合剤層と接し ている。また、多孔質層(I)を構成するPE製微 孔フィルムと多孔質層(II)とは一体化されて おらず、電池内で重ねられた状態で1つのセ レータとして機能する。

 (実施例13)
 実施例12と同様にして、多孔質層(II)形成用 ラリーにPET製不織布を通して引き上げ塗布 行い、スラリーが完全に乾燥する前に、実 例12で使用したものと同じPE製微多孔フィル ムを重ね合わせて乾燥することにより、多孔 質層(I)と多孔質層(II)とが一体化されたセパ ータを作製した。このセパレータの総厚み 33μmで、多孔質層(II)における前記フィラー 体積含有率は97体積%であり、多孔質層(II)の 孔率は33%であった。このセパレータを用い 以外は、実施例7と同様にしてリチウム二次 電池を作製した。

 (比較例6)
 電極体の作製の際に、セパレータの多孔質 (I)を正極側に配置した以外は、実施例7と同 様にしてリチウム二次電池を作製した。

 実施例7~13および比較例6のリチウム二次 池の作製に使用したセパレータについて、15 0℃の恒温槽内に3時間放置して熱収縮率を測 した。

 熱収縮率の測定は、次のようにして行っ 。4cm×4cmに切り出したセパレータの試験片 、クリップで固定した2枚の厚さ5mmのガラス で挟みこみ、150℃の恒温槽内に3時間放置し た後に取り出し、各試験片の長さを測定し、 試験前の長さと比較して長さの減少割合を熱 収縮率とした。また、実施例11のセパレータ ついては、正極と多孔質層(II)が一体化した ものを用いて測定し、セパレータの熱収縮率 とした。更に、実施例12のセパレータについ は、より熱収縮の少ない多孔質層(II)の熱収 縮率をセパレータの熱収縮率とした。各セパ レータの熱収縮率の測定結果を表4に示す。

 表4に示す通り、実施例7~13および比較例6 リチウム二次電池に使用したセパレータの1 50℃での熱収縮率は、いずれも1%以下であっ 。

 次に、実施例7~13および比較例6の各リチ ム二次電池について、以下の条件で充電を い、充電容量および放電容量をそれぞれ求 、充電容量に対する放電容量の割合を充電 率として評価した。充電は、0.2Cの電流値で 池電圧が4.2Vになるまで定電流充電を行い、 次いで、4.2Vでの定電圧充電を行う定電流-定 圧充電とした。充電終了までの総充電時間 15時間とした。

 充電後の電池を、0.2Cの放電電流で、電池 電圧が3.0Vになるまで放電を行ったところ、 施例7~13の電池、比較例6の電池ともに、充電 効率がほぼ100%となり、充電時のリチウムデ ドライトの生成が抑制され、電池として良 に作動することが確認できた。

 また、実施例7~13および比較例6の各リチ ム二次電池について、下記のシャットダウ 温度測定、高温貯蔵試験および外部短絡試 を行った。その結果を表5に示す。

 <シャットダウン温度測定>
 放電状態の各電池を恒温槽に入れ、30℃か 150℃まで毎分5℃の割合で温度上昇させて加 し、電池の内部抵抗の温度変化を求めた。 して、抵抗値が30℃での値の5倍以上に上昇 たときの温度を、シャットダウン温度とし 。

 <高温貯蔵試験>
 前記のシャットダウン温度を測定したもの は別の電池について、以下の条件で、定電 -定電圧充電を行った。定電流充電は、0.2C 電流値で電池電圧が4.25Vになるまで行い、定 電圧充電は、4.25Vで行い、充電終了までの総 電時間を15時間とした。前記条件で充電し 各電池を、30℃から150℃まで、毎分5℃の割 で昇温し、その後引き続き150℃で3時間放置 、電池の表面温度および電池電圧を測定し 異常の発生の有無を調べた。

 <外部短絡試験>
 前記のシャットダウン温度測定および高温 蔵試験を行ったものとは別の電池について 100mωの抵抗を介して正負極を短絡させる外 短絡試験を行った。短絡後の電池表面の温 を測定し、最高到達温度を外部短絡試験で 電池の温度として求めた。

 表5に示すように、実施例7~13および比較 6のリチウム二次電池では、電池の高温での 全性を確保するのに適切な温度範囲でシャ トダウンを生じた。また、実施例7~13の電池 では、150℃で3時間の高温貯蔵試験において 電池の表面温度の上昇あるいは電池の電圧 低下といった異常は見られなかった。

 これに対し、比較例6の電池では、高温貯 蔵試験の開始から90分後に電池の表面温度の 昇が確認された。この電池の試験中の様子 詳細に観察すると、試験開始から約75分で 開裂ベントが開いて内圧が低下し、一旦電 表面の温度が低下するが、その後電池温度 上昇することがわかった。比較例6の電池で 、セパレータの多孔質層(I)が正極側に配置 れているため、樹脂(A)が負極合剤層の表面 覆うことができず、開裂ベントの作動後に 池内に流入する空気と、負極活物質(黒鉛) 吸蔵されたリチウムイオンとの反応を防止 ることができないため、電池温度が上昇し ものと推察される。

 本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で 上記以外の形態としても実施が可能である 本出願に開示された実施形態は一例であっ 、これらに限定はされない。本発明の範囲 、上述の明細書の記載よりも、添付されて る請求の範囲の記載を優先して解釈され、 求の範囲と均等の範囲内での全ての変更は 請求の範囲に含まれるものである。

 以上述べたように、本発明によれば、高 での安全性に優れた電気化学素子を提供す ことができる。また、本発明の電気化学素 の製造方法を用いることにより、電気化学 子の生産性を向上させることができる。