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Patent Searching and Data


Title:
GENE THAT IMPARTS OXYGEN RESISTANCE AND APPLICATION THEREOF
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/150856
Kind Code:
A1
Abstract:
Provided are a gene used to impart oxygen resistance to microbes and an application method thereof. The gene that imparts oxygen resistance codes for proteins is selected from (a)-(c): (a) a protein comprising an amino acid sequence with 2 or 6 units, (b) a protein that imparts oxygen resistance and comprises an amino acid sequence obtained by one or a plurality of the amino acids in the amino acid sequence of (a) being deleted, substituted or added, and (c) a protein that imparts oxygen resistance and comprises an amino acid sequence having a degree of similarity of 85% or greater with the amino acid sequence of (a).

Inventors:
SERATA MASAKI (JP)
SAKO TOMOYUKI (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/002685
Publication Date:
December 17, 2009
Filing Date:
June 12, 2009
Export Citation:
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Assignee:
YAKULT HONSHA KK (JP)
SERATA MASAKI (JP)
SAKO TOMOYUKI (JP)
International Classes:
C12N15/00; A23L33/00; C12M1/00; C12N1/21; C12N15/09
Domestic Patent References:
WO2002080755A22002-10-17
Foreign References:
JP2001327292A2001-11-27
JP2001032792A2001-02-06
Other References:
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MASAKI SERATA ET AL.: "Lactobacillus casei YIT9029 (Shirota-kabu) ni Okeru, Sanso - Kasanka Suiso Stress Oto no Kaiseki", JAPAN SOCIETY FOR BIOSCIENCE, BIOTECHNOLOGY, AND AGROCHEMISTRY TAIKAI KOEN YOSHISHU, vol. 2008, March 2008 (2008-03-01), pages 85, XP008146675
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KARIN VIDO ET AL., J. BACTERIOL., vol. 187, 2005, pages 601 - 610
LIPMAN, D. J.; PEARSON, W. R.: "Rapid and sensitive protein similarity searches", SCIENCE, vol. 227, 1985, pages 1435 - 1441
SAMBROOK ET AL.: "Molecular Cloning - a Laboratory manual", 1989
See also references of EP 2287299A4
Attorney, Agent or Firm:
THE PATENT CORPORATE BODY ARUGA PATENT OFFICE (JP)
Patent business corporation Alga patent firm (JP)
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Claims:
 以下の(a)~(c)から選ばれるタンパク質をコードする酸素耐性付与遺伝子。
 (a)配列番号2又は6に示すアミノ酸配列からなるタンパク質
 (b)(a)のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、且つ酸素耐性付与能を有するタンパク質
 (c)(a)のアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つ酸素耐性付与能を有するタンパク質
 以下の(d)~(f)から選ばれるポリヌクレオチドからなる酸素耐性付与遺伝子。
 (d)配列番号1又は5に示す塩基配列からなるポリヌクレオチド
 (e)(d)の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジエントな条件下でハイブリダイズし、且つ酸素耐性付与能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
 (f)(d)の塩基配列と75%以上の同一性を有する塩基配列からなり、且つ酸素耐性付与能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
 請求項1又は2記載の遺伝子を微生物に導入するか又は微生物が有する当該遺伝子を改変することを特徴とする微生物の酸素耐性能の付与又は増強方法。
 遺伝子の改変が、請求項1又は2記載の遺伝子の発現増強である請求項3記載の方法。
 請求項1又は2記載の遺伝子が導入又は改変されてなる微生物。
 微生物がグラム陽性細菌である請求項5記載の微生物。
 グラム陽性細菌がラクトバチルス属細菌である請求項6記載の微生物。
 ラクトバチルス属細菌がラクトバチルス・カゼイ又はラクトバチルス・ラムノーサスである請求項7記載の微生物。
 請求項5~8のいずれか1項記載の微生物を含有する飲食品。
 請求項5~8のいずれか1項記載の微生物を含有する医薬品。
 請求項1又は2記載の遺伝子の有無及び/又はその発現量を測定することを特徴とする酸素耐性能を有する微生物のスクリーニング方法。
 請求項2記載のポリヌクレオチド又はその一部を含む組換えベクター。
 請求項12記載の組換えベクターを含む宿主微生物。
 請求項2記載のポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズする核酸断片。
 請求項2記載のポリヌクレオチド又はその一部を含むDNAアレイ又はDNAチップ。
Description:
酸素耐性付与遺伝子及びその利

 本発明は、微生物に酸素耐性能を付与す 遺伝子及びその利用法に関する。

 多くの好気性微生物は酸素代謝を司る呼 鎖を有し、酸素存在下でエネルギーを獲得 、良好な生育が可能である。また、酸素の 部はその代謝の過程で、スーパーオキシド ニオンや過酸化水素を発生するが、それら 消去するスーパーオキシドジスムターゼや カタラーゼ、ペルオキシダーゼ等によって それらを無毒化しその毒性を回避する機構 有している。

 嫌気性微生物の中でも有用菌として知られ いる乳酸菌は通性嫌気性菌に属し、呼吸鎖 カタラーゼを持たないとされているが、多 の乳酸菌は酸素存在下でも生育が可能で、 素耐性を有している。以前より、乳酸菌の 素耐性機構についていくつかの研究がなさ ており、その中で、酸素を代謝する酵素と て、NADHオキシダーゼやピルビン酸オキシダ ーゼ等が知られている。NADHオキシダーゼは 水生成型と過酸化水素生成型の2つの型が報 されており、水生成型は酸素を4電子還元し 水へと無毒化する。一方、過酸化水素生成型 は2電子還元で過酸化水素を発生するが、ス レプトコッカス・ミュータンス等の乳酸菌 はこの過酸化水素をAlkylhydroperoxide reductaseに よって水へと変換し、2成分性のペルオキシ ーゼとして機能していることが報告されて る。
 また、酸素から発生するスーパーオキシド ニオンや過酸化水素を消去する、スーパー キシドジスムターゼや、カタラーゼ、NADHペ ルオキシダーゼ等を持つものも報告されてい る。

 乳酸菌ラクトバチルス・プランタルムWCFS1 おいては、チオレドキシンレダクターゼ遺 子の発現を強めることによって、過酸化水 等の酸化ストレスに対してより抵抗になる とから、チオレドキシンレダクターゼが酸 ストレス抵抗性に重要な働きをすることが 案されている(非特許文献1)。
 また、嫌気性グラム陰性細菌バクテロイデ ・フラジリスにおいては、チオレドキシン- チオレドキシンレダクターゼ系がチオール/ イサルファイドの酸化還元反応を司る唯一 システムであると考えられており、チオレ キシンレダクターゼの欠損により、菌は嫌 的環境下にあってもシステインやジチオス イトールなどの還元剤の添加なくしては生 できないことが報告されている(非特許文献2 )。
 また、大腸菌においては、細胞内を還元状 へ保つために必須なグルタチオン-グルタチ オンレダクターゼ系や、チオレドキシン-チ レドキシンレダクターゼ系が存在しており それらに関わる遺伝子破壊株は過酸化水素 の酸化ストレスに感受性になることが報告 れている。

 一方、乳酸菌ラクトコッカス・ラクチス おいてはチオレドキシンレダクターゼを破 することで、好気条件下では生育が阻害さ ることが報告されているが(非特許文献3)、 気条件下での生育阻害は、ジチオスレイト ルの添加で回復すること、また24時間培養 ると野生株と同程度の菌体量になることか 、酸素耐性との関係は不明である。

 また、ストレプトコッカス・ミュータン ではNADHオキシダーゼ、Alkylhydroperoxidereductase (ahpC)をダブルノックアウトした変異株が酸素 耐性を有することから、さらに別の鉄結合性 を有するタンパク質である遺伝子が酸素耐性 に関わる遺伝子であると報告されている(特 文献1)。しかし、これらの遺伝子はすべての 微生物が有する遺伝子ではなく、未だ酸素耐 性機構は不明な点が多い。またここに挙げた 様に、酸素耐性に関わる遺伝子は複数あり、 1つの遺伝子のみで酸素耐性能を発揮するも ではないことから、簡便に実用に供するこ は困難であった。

 ラクトバチルス・カゼイ YIT 9029(FERM BP-1 366)及びラクトバチルス・ラムノーサス ATCC  53103は好気条件下で良好な生育が可能であり ヒトに対して種々の生理効果を発揮する乳 菌であることが知られているが、酸素耐性 関与する遺伝子は同定されていなかった。

特開2001-32792号公報

L. Mariela Serrano et al. Microbial Cell Factor ies 6:29(2007) Edson R. Rocha et al. J. Bacteriol. 189:8015-80 23(2007) Karin Vido et al. J. Bacteriol. 187:601-610(2005 )

 本発明は、微生物に酸素耐性能を付与す 遺伝子及びその利用法を提供することに関 る。

 本発明者らは、ラクトバチルス・カゼイ YIT 9029及びラクトバチルス・ラムノーサス  ATCC 53103のゲノム情報を検討し、遺伝子破壊 を作製した結果、酸素耐性の発揮に必須な 伝子があり、該遺伝子を利用することによ 、微生物における酸素耐性能を付与または 強できることを見出した。

 すなわち、本発明は以下の発明に係るもの ある。
1)以下の(a)~(c)から選ばれるタンパク質をコー ドする酸素耐性付与遺伝子。
 (a)配列番号2又は6に示すアミノ酸配列から るタンパク質
 (b)(a)のアミノ酸配列において1若しくは数個 のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加された アミノ酸配列からなり、且つ酸素耐性付与能 を有するタンパク質
 (c)(a)のアミノ酸配列と85%以上の同一性を有 るアミノ酸配列からなり、且つ酸素耐性付 能を有するタンパク質
2)以下の(d)~(f)から選ばれるポリヌクレオチド からなる酸素耐性付与遺伝子。
 (d)配列番号1又は5に示す塩基配列からなる リヌクレオチド
 (e)(d)の塩基配列と相補的な塩基配列からな ポリヌクレオチドとストリンジエントな条 下でハイブリダイズし、且つ酸素耐性付与 を有するタンパク質をコードするポリヌク オチド
 (f)(d)の塩基配列と75%以上の同一性を有する 基配列からなり、且つ酸素耐性付与能を有 るタンパク質をコードするポリヌクレオチ
3)上記遺伝子を微生物に導入するか又は微生 が有する当該遺伝子を改変することを特徴 する微生物の酸素耐性能の付与又は増強方 。
4)上記遺伝子が導入又は改変されてなる微生 。
5)上記微生物を含有する飲食品。
6)上記微生物を含有する医薬品。
7)上記遺伝子の有無及び/又はその発現量を測 定することを特徴とする酸素耐性能を有する 微生物のスクリーニング方法。
8)上記ポリヌクレオチド又はその一部を含む 換えベクター。
9)上記組換えベクターを含む宿主微生物。
10)上記ポリヌクレオチドに特異的にハイブリ ダイズする核酸断片。
11)上記ポリヌクレオチド又はその一部を含む DNAアレイ又はDNAチップ。

 本発明の遺伝子又はポリヌクレオチドを利 することにより、微生物における酸素耐性 を付与又は増強させたり、酸素耐性能を有 る微生物をスクリーニングすることができ 。
 また、本発明の遺伝子が導入又は改変され 微生物を用いることにより、所望の酸素耐 能を有する飲食品、医薬品の製造が可能と る。また、酸素存在下で生菌数を高く維持 ることが可能になることから、製品製造時 嫌気装置、製品の嫌気保存容器が不要とな 、コストを抑えた製造が可能となる。また 一般に生菌数が高くなるほど、微生物の生 効果は増大することから、微生物が有する 理効果を効果的に発揮させることが可能と る。

pYSSE3の図である。 fnr 遺伝子破壊株、既知酸素耐性遺伝子破壊株の 嫌気培養条件下での生育を示す図である。 fnr 遺伝子破壊株、既知酸素耐性遺伝子破壊株の 好気静置培養条件下での生育を示す図である 。 fnr 遺伝子破壊株、既知酸素耐性遺伝子破壊株の 好気振とう培養条件下での生育を示す図であ る。

 本明細書において、アミノ酸配列および 基配列の同一性(相同性)は、遺伝情報処理 フトウェアGENETYX(ゼネティックス社製)を用 たLipman-Person法(Lipman, D. J. and Pearson, W. R. 1985. Rapid and sensitive protein similarity searches . Science227:1435-1441)によるホモロジー解析(Searc h homology)プログラムを用いることが出来る。 具体的には、例えばラクトバチルス・カゼイ  YIT 9029及びラクトバチルス・ラムノーサス ATCC 53103の遺伝子を既知の遺伝子と相同性比 較して解析することにより算出したものであ り、パラメーターとしては、Unit Size to compa re=2, Pick up Location=5とし、結果を%表示させ 行う。

 また、遺伝子とは、2本鎖DNAのみならず、 それを構成するセンス鎖およびアンチセンス 鎖といった各1本鎖DNAを包含する趣旨であり またその長さに何ら制限されるものではな 。また、ポリヌクレオチドとしては、RNA、DN Aを例示でき、DNAは、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA 包含する。

 本発明の酸素耐性付与遺伝子は、ラクトバ ルス・カゼイ YIT 9029及びラクトバチルス ラムノーサス ATCC 53103から見出され、 fnr と命名された遺伝子(ラクトバチルス・カゼ fnr 、ラクトバチルス・ラムノーサス fnr ( fnr-r とも称する))、並びに当該遺伝子から演繹さ る遺伝子であり、酸素耐性付与能を有する ンパク質をコードするものである。

 本発明の酸素耐性付与遺伝子は、具体的に 、以下の(a)~(c)から選ばれるタンパク質をコ ードする遺伝子である。
 (a)配列番号2又は6に示すアミノ酸配列から るタンパク質
 (b)(a)のアミノ酸配列において1若しくは数個 のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加された アミノ酸配列からなり、且つ酸素耐性付与能 を有するタンパク質
 (c)(a)のアミノ酸配列と85%以上の同一性を有 るアミノ酸配列からなり、且つ酸素耐性付 能を有するタンパク質

 ここで、配列番号2に示すアミノ酸配列から なるタンパク質はラクトバチルス・カゼイ Y IT 9029由来のタンパク質であり、配列番号6に 示すアミノ酸配列からなるタンパク質はラク トバチルス・ラムノーサス ATCC 53103由来の ンパク質である。
 配列番号2又は6に示すアミノ酸配列におい 、1若しくは2以上のアミノ酸が欠失、置換若 しくは付加されたアミノ酸配列には、1若し は数個、好ましくは1~10個のアミノ酸が欠失 置換若しくは付加されたアミノ酸配列が含 れ、付加には、両末端への1~数個のアミノ の付加が含まれる。

 アミノ酸の欠失、置換、付加は、例えば、 列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパ ク質が1塩基置換等の天然に生じる変異や、 位特異的変異導入法や突然変異処理等によ て遺伝子に人為的に導入される変異等によ 生じ得るものが包含される。斯かるアミノ の欠失、置換もしくは付加を人為的に行う 合の手法としては、例えば、配列番号2で示 れるアミノ酸配列をコードする塩基配列か なるポリヌクレオチドに対して慣用の部位 異的変異導入を施し、その後このポリヌク オチドを常法により発現させる手法が挙げ れる。
 また、アミノ酸の置換としては、例えば、 水性、電荷、pK、立体構造上における特徴 の類似した性質を有するアミノ酸への置換 挙げることができる。

 また、(a)のアミノ酸配列と85%以上の同一性 有するアミノ酸配列としては、配列番号2又 は6に示すアミノ酸配列において相当する配 を適切にアライメントした時、当該アミノ 配列と85%以上、好ましくは90%以上、より好 しくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配 を意味する。
 尚、配列番号2に示すアミノ酸配列からなる タンパク質と配列番号6に示すアミノ酸配列 らなるタンパク質とのアミノ酸配列の同一 は89.0%である。

 「酸素耐性付与」とは、微生物に酸素耐性 付与すること、すなわち、微生物が酸素存 下でも生育可能ならしめること、及び/又は 生育した微生物を酸素存在下においても死滅 しないことを意味し、酸素の消去能を有する こと、酸素から発生する活性酸素の消去能を 有すること、酸化状態となった細胞内を還元 状態へと変換すること、酸素や活性酸素によ り酸化されたDNA、タンパク質、脂質等を還元 することができることも包含される。
 具体的には、大気中において寒天平板培地 で培養した時にコロニー形成を可能ならし ること、液体培地では振とうして溶存酸素 飽和に保った状態や、大気中の酸素が自然 溶け込んだ状態で生育可能ならしめること 言う。

 配列番号2又は6に示すアミノ酸配列から るタンパク質と既知のタンパク質との相同 (同一性)を以下に示す。尚、同一性検索は、 遺伝情報処理ソフトウェアGENETYXを使用し、 塩基配列によって規定されるタンパク質の ミノ酸配列と、公開されている主に乳酸菌 ゲノムやDNA断片の塩基配列により規定され タンパク質のアミノ酸配列との比較を行な ことにより、同一性を有する遺伝子を検索 た。同一性の指標としては、該アミノ酸配 全体あるいは一部でもより長い領域での同 性が50%以上を目安に行なった。

 配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる タンパク質(FNR)は、そのアミノ酸配列におい 、ラクトバチルス・カゼイ ATCC 334株由来 チオレドキシンレダクターゼとアノテーシ ンされている trxB にコードされるタンパク質と99.4%の同一性を し、配列番号6に示されるアミノ酸配列から なるタンパク質(FNR-R)は、同タンパク質と89.3% の同一性を有する。

 本発明の酸素耐性付与遺伝子は、好適には 以下の(d)~(f)から選ばれるポリヌクレオチド からなる遺伝子が挙げられる。
 (d)配列番号1又は5に示す塩基配列からなる リヌクレオチド
 (e)(d)の塩基配列と相補的な塩基配列からな ポリヌクレオチドとストリンジエントな条 下でハイブリダイズし、且つ酸素耐性付与 を有するタンパク質をコードするポリヌク オチド
 (f)(d)の塩基配列と75%以上の同一性を有する 基配列からなり、且つ酸素耐性付与能を有 るタンパク質をコードするポリヌクレオチ

 ここで、配列番号1に示す塩基配列からなる ポリヌクレオチドはラクトバチルス・カゼイ  YIT 9029由来のDNA(ラクトバチルス・カゼイ  fnr 遺伝子)であり、配列番号5に示す塩基配列か なるポリヌクレオチドはラクトバチルス・ ムノーサス ATCC 53103由来のDNA(ラクトバチ ス・ラムノーサス  fnr 遺伝子( fnr-r 遺伝子))であり、共に当該微生物に酸素耐性 付与し、酸素存在下での生育を可能とする

 本発明において、「ストリンジエントな 件下」とは、例えばMolecular cloning-a Laborator y manual 2nd edition(Sambrookら、1989)に記載の条 等が挙げられる。例えば、6XSSC(1XSSCの組成:0. 15M 塩化ナトリウム、0.015M クエン酸ナトリ ム、pH7.0)、0.5% SDS、5Xデンハート及び100mg/mL シン精子DNAを含む溶液に当該塩基配列と相 的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと もに65℃で8~16時間恒温し、ハイブリダイズ せる条件が挙げられる。

 また、(d)の塩基配列と75%以上の同一性を有 る塩基配列としては、配列番号1又は5に示 塩基配列において相当する配列を適切にア イメントした時、当該塩基配列と75%以上、 ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の 一性を有する塩基配列を意味する。
 尚、配列番号1に示す塩基配列からなるポリ ヌクレオチドと配列番号5に示す塩基配列か なるポリヌクレオチドとの塩基配列の同一 は75.3%である。

 本発明の遺伝子は、配列番号1又は5の塩基 列を参考にプライマーを作製し、ラクトバ ルス・カゼイ YIT 9029又はラクトバチルス・ ラムノーサス ATCC 53103のDNAをテンプレート する常法のPCR法で容易に得ることができる
 すなわち、例えば、いずれかの遺伝子のN末 端開始コドンを含む配列からなるオリゴヌク レオチドA、及び該遺伝子の終始コドンを含 配列と相補的な配列からなるオリゴヌクレ チドBを化学合成し、これらのオリゴヌクレ チドAとBを1セットにし、ラクトバチルス・ ゼイ YIT 9029のDNAをテンプレートとしてPCR 応を行なうことにより得ることができる。 た、こうして得られる遺伝子断片を効率よ プラスミドベクター等にクローニングを行 うために、オリゴヌクレオチドプライマー 5'末端側に制限酵素切断のための配列を付加 して用いることもできる。ここで、プライマ ーとしては、本発明の遺伝子の塩基配列に関 する情報をもとにして化学合成されたヌクレ オチド等が一般的に使用できるが、既に取得 された本発明遺伝子やその断片も良好に利用 できる。当該ヌクレオチドとしては、配列番 号1又は5に対応する部分ヌクレオチド配列で って、10~50個の連続した塩基、好ましくは15 ~35個の連続した塩基等が挙げられる。
 また、PCRの条件は、例えば2000塩基対の長さ のDNA断片を得る場合には、94℃2分、(95℃10秒 52℃10秒、72℃2分)x30サイクル、72℃7分が挙 られる。

 また、その当該塩基配列に従い、DNA合成 により人工的に合成して得ることもできる

 本発明の遺伝子は、酸素耐性付与に関与す 遺伝子であることから、これを微生物に導 する、或いは微生物が有する当該遺伝子を 変することにより、当該微生物において、 素耐性能を付与又は増強することができる
 本発明の遺伝子の導入は、当該遺伝子を、 来有しない微生物に導入することにより行 ことができる。遺伝子を導入する方法とし はDNAの取り込み能を利用したコンピテンス 、プロトプラストを利用したプロトプラス PEG法及び高電圧パルスを利用したエレクト ポレーション法等を利用すればよく、特に レクトロポレーション法が好ましい。また 遺伝子を微生物染色体に組み込む場合には 相同組換えを利用した方法、部位特異的に み込む方法を用いることができる。

 本発明の遺伝子の改変には、発現増強が挙 られる。
 遺伝子の発現を増強するには、本発明の遺 子を運ぶ組換えプラスミドを対象とする微 物に導入すること、該遺伝子を染色体の別 場所に部位特異的組換えによって組み込む とによって微生物内での該遺伝子のコピー を増加させること、該遺伝子の発現を制御 る制御領域を改変したり、制御遺伝子を改 することによって発現を増加させる方法等 よって行えばよいが、特に該遺伝子のコピ 数を増加させる方法が好ましい。具体的に 、1個の微生物細胞あたり複数個のコピー数 を持つプラスミドに、対象とする遺伝子をそ の遺伝子の本来のプロモーター配列とリボソ ーム結合部位を含めてクローニングするか、 別の遺伝子から分離した、あるいは化学合成 によって作成したプロモーターとリボソーム 結合部位の下流に該遺伝子のポリペプチドを コードする領域だけをつなげてクローニング した組換えプラスミドを作成し、微生物細胞 内にエレクトロポレーション法などによって 導入することによって、微生物細胞内での該 遺伝子のコピー数を上げることができる。

 また、当該遺伝子を元来有する微生物に対 ては、当該遺伝子を発現阻害若しくは発現 制することにより、当該微生物の酸素耐性 を低下させることも可能である。
 遺伝子の発現を阻害するには、本発明の遺 子を破壊、欠損すればよく、この方法とし は、全く別のDNA断片を遺伝子の内部に挿入 る挿入失活法や段階的な相同組換えによっ 標的遺伝子の一部又は全部を欠失する段階 二重交叉法を用いればよく、特に段階的二 交叉法が好ましい。
 具体的には、標的遺伝子の一部又は全部を 失する場合には、欠失領域をはさむ両側の 域を染色体DNAから分離するか、あるいはPCR によって増幅して分離し、例えばpYSSE3のよ な大腸菌では増殖するが対象とする微生物 では複製が出来ないプラスミドベクターに れら両DNA断片を本来の向きと同じ向きに並 だ状態でクローニングする。次に、得られ 組換えプラスミドDNAを、欠失を起こさせよ とする微生物にエレクトロポレーション法 を用いて導入し、生じる抗生物質耐性のク ーンから、PCR法等によって目的の欠失領域 上流又は下流のクローニングした領域との 同領域で組換えを起こしてプラスミドが染 体上に挿入したクローンを選択する。こう て得たクローンを、抗生物質を含まない培 で継代培養を繰り返すことによって、プラ ミドが再び近接して存在する相同領域間の 換えによって染色体から離脱し、菌の増殖 伴って消失することによって、抗生物質耐 をなくしたクローンを選択する。こうして たクローンからPCR法等によって標的遺伝子 域を欠失したクローンを分離することがで る。

 遺伝子の発現を抑制するには、本発明の 伝子のmRNAの5’末端領域と相補的な短いRNA 合成することによる、いわゆるRNA干渉によ 方法や、該遺伝子の発現を制御する領域又 制御遺伝子を破壊若しくは欠損等して改変 る方法を用いることができ、特に該遺伝子 発現を制御する領域の改変が好ましい。具 的には、遺伝子の転写を制御するプロモー ーの配列を改変することによって、該遺伝 のmRNAへの転写量を多くしたり、少なくした することができる。

 ここで、遺伝子導入又は改変の対象とな 微生物は、特に限定されるものではなく、 ラム陽性細菌、グラム陰性細菌、酵母等を いることができるが、グラム陽性細菌を好 に利用することができ、特に生体への安全 が確認されているラクトバチルス属細菌、 フィドバクテリウム属細菌等の利用が好ま い。ラクトバチルス属細菌の中でも、ラク バチルス・カゼイ、ラクトバチルス・パラ ゼイ、ラクトバチルス・ゼアエ、ラクトバ ルス・ラムノーサス等のラクトバチルス・ ゼイグループに属する細菌の利用が好まし 、特にラクトバチルス・カゼイ、ラクトバ ルス・ラムノーサスを好適に利用すること できる。また、酸素耐性付与遺伝子を元来 する微生物としては、ラクトバチルス・カ イ YIT 9018(FERM BP-665)やラクトバチルス・カ ゼイ YIT 9029や、ラクトバチルス・カゼイ AT CC 334、ラクトバチルス・ラムノーサス ATCC  53103が挙げられる。

 ビフィドバクテリウム属細菌は偏性嫌気 菌であり、酸素や低pH、高酸度に弱く、製 時の増殖や保存時の生残性等、取扱いに困 な点が多い。ビフィドバクテリウム属細菌 ヒトにとって有用な生理効果を示すことか 、育種改良により酸素耐性を有する変異株 取得したり、酸素不透過性容器を使用する の工夫をして、飲食品や医薬品への応用が んでいるが、培養が困難であったり、保存 に生菌数が低下するといった様々な問題が る。ビフィドバクテリウム属細菌は、本願 明の酸素耐性付与遺伝子を有さないことが らかになっているので、本願発明の遺伝子 入又は改変の対象となる微生物として好適 利用することができる。

 斯くして得られる遺伝子導入又は改変さ た微生物は、酸素耐性能が付与又は増強さ ているため、当該微生物が元来有する種々 生理効果を効果的に発揮する飲食品や医薬 として利用することができる。

 遺伝子導入又は改変された本発明の微生 を飲食品や医薬品とする場合、菌体は、生 又は加熱菌体(死菌体)のいずれでもよく、 凍結乾燥したものであってもよく、あるい これら微生物を含む培養物、菌体処理物と て利用することもできるが、生菌の状態で 用することが好ましい。

 医薬品として使用する場合は、本発明の 生物を固体又は液体の医薬用無毒性担体と 合して、慣用の医薬品製剤の形態で投与す ことができる。このような製剤としては、 えば、錠剤、顆粒剤、散在、カプセル剤等 固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤、 結乾燥製剤等が挙げられる。これらの製剤 製剤上の常套手段により調製することがで る。上記の医薬用無毒性担体としては、例 ば、グルコース、乳糖、ショ糖、澱粉、マ ニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリ 、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエ ルデンプン、エチレングリコール、ポリオ シエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ア ノ酸、ゼラチン、アルブミン、水、生理食 水等が挙げられる。また、必要に応じて、 定化剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張化 、賦形剤等の慣用の添加剤を適宜添加する ともできる。

 また、遺伝子導入又は改変された本発明 微生物は、上記のような製剤とするだけで く、飲食品に配合して使用することもでき 。飲食品に配合する場合は、そのまま、ま は種々の栄養成分と共に含有せしめればよ 。この飲食品は、微生物の酸素耐性能が付 又は増強されているため、当該微生物が元 有する種々の生理作用を効果的に発揮する 健用食品又は食品素材として利用できる。 体的に本発明の方法により得られた微生物 飲食品に配合する場合は、飲食品として使 可能な添加剤を適宜使用し、慣用の手段を いて食用に適した形態、すなわち、顆粒状 粒状、錠剤、カプセル、ペースト等に成形 てもよく、また種々の食品、例えば、ハム ソーセージ等の食肉加工食品、かまぼこ、 くわ等の水産加工食品、パン、菓子、バタ 、粉乳に添加して使用したり、水、果汁、 乳、清涼飲料、茶飲料等の飲料に添加して 用してもよい。なお、飲食品には、動物の 料も含まれる。

 さらに飲食品としては、本発明の微生物 利用した発酵乳、乳酸菌飲料、発酵豆乳、 酵果汁、発酵植物液等の発酵飲食品の例が げられる。これら発酵飲食品の製造は常法 従えばよい。例えば発酵乳を製造する場合 、まず、殺菌した乳培地に本発明の微生物 単独又は他の微生物と同時に接種培養し、 れを均質化処理して発酵乳ベースを得る。 いで、別途調製したシロップ溶液を添加混 し、ホモゲナイザー等で均質化し、更にフ ーバーを添加して最終製品に仕上げればよ 。このようにして得られる発酵乳は、シロ プ(甘味料)を含有しないプレーンタイプ、 フトタイプ、フルーツフレーバータイプ、 形状、液状等のいずれの形態の製品とする ともできる。

 本発明の方法により得られた微生物は、 い酸素耐性能を有することから、飲食品中 の菌の生残性が高いため、保存中の生菌数 低下や死滅速度の増加が抑制され、製品規 の維持が容易となり、ラクトバチルス属細 等の微生物が有する整腸作用等の一般的な 理効果を効果的に発揮させることができる また、抗がん作用、ヘリコバクター・ピロ の除菌作用等の特異的な生理効果を元来有 るラクトバチルス属細菌やビフィドバクテ ウム属細菌に対して、本発明の方法により 素耐性能を付与又は増強することで、該菌 を様々な飲食品に利用することが可能にな と共に、該菌株の生残性が改善することで 菌株が有する生理効果を増強させることが 能となる。

 また、ビフィドバクテリウム属細菌を利 した飲食品において、保存時の生残性を高 る目的で、ガラスやアルミコーティング紙 の酸素不透過性の包剤で構成された容器が に用いられてきたが、本発明の方法により られた酸素耐性能を有するビフィドバクテ ウム属細菌は、高い生残性を有し、厳密な 気状態を必要としないため、酸素透過性の い樹脂(ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ エチレンテレフタレート等)も容器素材とし 使用できる。これらの樹脂を用いた容器は 酸素不透過性の包剤で構成された容器と比 して、コストが低く、成型の自由度が高い いうメリットを有する。

 本発明の遺伝子は、酸素耐性能を有する微 物のスクリーニングのために使用すること できる。
 すなわち、本発明の遺伝子の有無及び/又は その発現量を測定することにより、酸素耐性 能を有する微生物をスクリーニングすること ができる。
 ここで、遺伝子の有無及び/又はその発現量 の測定は、本発明の遺伝子や遺伝子由来のmRN Aを検出し得るプローブやプライマーを用い 、微生物における標的とする遺伝子の有無 コピー数や発現量をサザーンハイブリダイ ーション法やDNAマイクロアレイやRT-PCR法に り行うことができる。そして、標的遺伝子 その発現の有無により、目的の微生物を選 すればよい。

 (d)~(f)で示されるポリヌクレオチド又はそ の一部(断片)を含む本発明の組換えベクター 、大腸菌及び対象とする微生物において該 クターの導入を選択できるような遺伝子マ カーを有している任意のベクター(例えば、 pHY400、pSA1、pYSSE3等)を用いてインビトロライ ーション法等の公知の方法により得ること できる。

 また、上記の組換えベクターを含む宿主 生物は、公知の方法、すなわち、当該組換 ベクターを宿主微生物に導入する場合はエ クトロポレーション法等の方法により、微 物染色体に組み込む場合は該微生物と相同 DNA領域を持つ組換えベクターをエレクトロ レーション法等により導入した後に相同組 えにより染色体に組み込まれたものをPCR法 によって確認する等の方法を用いることに り得ることができる。

 また、(d)~(f)で示されるポリヌクレオチド 又はその一部(断片)を含む本発明のDNAアレイ はDNAチップは、フォトリソグラフィー法等 公知の方法により作製することができる。 のDNAアレイ又はDNAチップを用いることによ 、本発明の遺伝子を発現する微生物をスク ーニングすることができる。

 尚、上述した微生物の遺伝子導入又は改変 微生物のスクリーニングを効率よく行うた には、本発明のポリヌクレオチド又はその 部を含む組換えベクター、本発明のポリヌ レオチドの一部断片からなるPCR及びRT-PCR用 ライマー、本発明のポリヌクレオチド又は の一部を増幅することができるPCR及びRT-PCR プライマー、本発明のポリヌクレオチドに 異的にハイブリダイズするポリヌクレオチ 又はその一部からなるハイブリダイゼーシ ン用の核酸断片を用いることが好ましい。
 ここで、使用されるプライマー等の核酸断 としては、本発明の遺伝子の塩基配列に関 る情報をもとにして化学合成されたヌクレ チド等が一般的に使用できるが、当該ヌク オチドとしては、配列番号1又は5に示す塩 配列に対応する部分ヌクレオチド配列であ て、10~50個の連続した塩基、好ましくは15~35 の連続した塩基が好ましい。
 以下、実施例によって本発明の内容をさら 詳細に説明する。

実施例1 ラクトバチルス・カゼイ YIT 9029の 伝子解析(遺伝子の抽出):
 ラクトバチルス・カゼイ YIT 9029のチオレ キシンレダクターゼとホモロジーの高い遺 子を、既知の微生物由来チオレドキシンレ クターゼ遺伝子との相同性等をもとに染色 上から検索した。すなわち、ゼネティック 社製 遺伝情報処理ソフトウェアGENETYXを用 たLipman-Person法(Lipman, D. J. and Pearson, W. R. 1985. Rapid and sensitive protein similarity searches . Science 227:1435-1441)により、個々の上記遺伝 にコードされるタンパク質のアミノ酸配列 相手として、ラクトバチルス・カゼイ YIT  9029のゲノム配列から予想されるタンパク質 コードすると思われるオープンリーディン フレーム(ORF)の全てに対してホモロジー解析 した。その結果、ゲノム上にチオレドキシン レダクターゼとホモロジーの高い2つのORFを 出した。これらのうちの一つが配列番号1記 の遺伝子であり、配列番号1記載の遺伝子は 、ラクトバチルス・カゼイ YIT 9029のもうひ つのチオレドキシンレダクターゼと相同性 ある遺伝子(遺伝子A)と29.0%の相同性を示し 。しかし、配列番号1記載の遺伝子は、チオ ドキシンレダクターゼの活性中心であるCXXC モチーフを持たないことから、チオレドキシ ンレダクターゼ活性を有さず、その機能はこ れまでに報告されていない未知の遺伝子であ ることが分かった。一方、遺伝子AはCXXCモチ フを有することから、チオレドキシンレダ ターゼと推定された。

実施例2 ラクトバチルス・カゼイ YIT 9029の 伝子破壊株の分離
 配列番号1記載の遺伝子( fnr )を欠損する変異株の作成は次のように行っ 。
 配列番号1内部の配列から選択した配列の5 末端側に制限酵素 BamH I切断部位を含む配列を付加したオリゴヌク オチド5'-cgggatccagatggctttttcacatt-3'(配列番号3)、 及び配列番号1と相補的な配列から選択した 列の5’末端側に制限酵素 Pst I切断部位を含む配列を付加したオリゴヌク オチド5'-aaactgcagccaccagtataccattacg-3'(配列番号4) プライマーとし、KOD Plus DNAポリメラーゼ(T OYOBO社製、製品番号KOD-201)を用いて本酵素に 付の方法に従って、ラクトバチラス・カゼ  YIT 9029のDNAをテンプレートとしてPCR反応を 行った。こうして増幅されるDNA断片は fnr 遺伝子のアミノ末端とカルボキシル末端の両 側を欠いた部分配列である。生成物を等量の トリス-イーディーティーエー(10mM Tris(pH8.0)-1 mM EDTA, TEと呼ぶ)飽和フェノール-クロロホル ム-イソアミルアルコール(25:24:1)と混合し、 く攪拌した後、15,000 x g 5分の遠心を行っ 、2層に分離した。上層の水層を回収し、そ 10分の1量の3M酢酸ナトリウム溶液(pH5.2)と3倍 量の99.5%エタノールを加え、-20℃に30分間以 置いた後に、4℃で15,000 x g 15分間の遠心を 行った。上清を捨て、沈殿物に70%エタノール を加えて洗浄し、15,000 x g 5分間の遠心をし た後エタノールを捨て、沈殿物を真空乾燥し た。

 この沈殿物を100μlのKバッファー(タカラバ オ社製)反応液中で制限酵素 BamH  Iと Pst  I(タカラバイオ社製)で切断(37℃で20時間)し 後、前述のTE飽和フェノール-クロロホルム- イソアミルアルコール処理(溶媒混合から水 回収まで)を2回繰り返し、回収した水層に10 の1量の3M酢酸ナトリウム溶液(pH5.2)と3倍量 99.5%エタノールを加え、-20℃に30分間以上置 た後に、4℃で15,000 x g 15分間の遠心を行 た。上清を捨て、沈殿物に70%エタノールを えて洗浄し、15,000 x g 5分間の遠心をした エタノールを捨て、沈殿物を真空乾燥した

 プラスミドベクターとして、プラスミドpUC1 9に由来する大腸菌用複製領域と、大腸菌と クトバチルスの両方で機能するプラスミドpA Mβ1に由来するエリスロマイシン耐性遺伝子 持つpYSSE3(図1)を用いた。pYSSE3 DNAを100μlのK ッファー(タカラバイオ社製)反応液中で制限 酵素 BamH  Iと Pst  I(タカラバイオ社製)で切断(37℃で20時間)し 後、10倍濃度のCIPバッファー(TOYOBO社製)20μl 水を加えて容量を200μlとし、カーフインテ ティンフォスファターゼ(TOYOBO社製)3μlを加 て37℃で2時間インキュベートした。その後 前述のTE飽和フェノール-クロロホルム-イソ アミルアルコール処理とエタノール沈澱処理 を行い、沈殿物を真空乾燥した。

 上記 fnr 内部配列からなるDNA断片と制限酵素切断した プラスミドベクターをそれぞれおよそ0.01~0.1 gずつ混合し、これに等容量のDNAライゲーシ ンキットVer.2.1(タカラバイオ社製)I液を加え て16℃で30分間インキュベートした後、氷中 置いた。

 次に、溶解後氷中に置いたJM109コンピテ トセル(TOYOBO社製)100μlに上記反応液5μlを加 、軽く混合して氷中で30分間インキュベート した後、42℃に30秒間さらしヒートショック 与え、再び氷中に戻した。この菌液にSOC培 (TOYOBO社製)を1mL加え37℃で1時間培養した後に エリスロマイシン(注射用エリスロマイシン ダイナボット社製)を500μg/mLの濃度で加えたL B寒天培地(1L中に10g バクトトリプトン、5g  クトイーストエキストラクト、5g 塩化ナト ウム、15g 寒天を含む)に塗布して、37℃で ンキュベートした。

 生成したエリスロマイシン耐性のコロニ を500μg/mLのエリスロマイシンを添加したLB 地で生育し、ウィザードプラスSVミニプレッ プDNAピューリフィケーションシステム(プロ ガ社製)を用いて組換えプラスミドDNAを抽出 た。

 ラクトバチルス・カゼイ YIT 9029へのDNA 入には、該微生物をMRS培地(ディフコ社製)に 生育し、対数増殖期にある培養液を5,000 x g 4℃で5分間遠心して集菌し、菌体を氷冷した 20mM HEPES(pH7.0)と10%グリセロールでそれぞれ1 ずつ洗浄し、洗浄菌体を(初めの培養液のク ット値)x2μlの10%グリセロールに懸濁した。 懸濁液40μlと組換えプラスミドDNA溶液2μlを 合し、2mm幅のエレクトロポレーション用キ ベットに入れ、ジーンパルサーII(バイオラ ド社製)を用いて、1.5kV, 200ω、キャパシタ ス25μFでエレクトロポレーションを行った。 この液にMRS培地1mLを加え、37℃で1時間培養後 、エリスロマイシンを20μg/mLの濃度で加えたM RS寒天培地に塗布し、アネロパック・ケンキ( 三菱ガス化学社製)を用いて嫌気状態にし、37 ℃で2日又は3日間インキュベートした。

 生育したエリスロマイシン耐性コロニーの 部をとり、50μlのTEに懸濁後、94℃で2.5分間 理し、その一部をテンプレートとして用い ラクトバチルス・カゼイ YIT 9029染色体の fnr 遺伝子下流の配列から選ばれたプライマーと 、プラスミドベクターにあって、クローニン グした fnr 遺伝子内部断片の近傍にある配列から選ばれ たプライマーを用いて、PCR解析を行うことに より、導入したプラスミドがラクトバチルス ・カゼイ YIT 9029染色体の fnr 遺伝子内部の組換えプラスミド上の fnr 遺伝子断片と相同な領域に組み込まれて、 fnr 遺伝子が分断(破壊)されていることを確認し 。こうして得たクローンをδ fnr とした。

実施例3 ラクトバチルス・ラムノーサス ATCC  53103の遺伝子解析(遺伝子の抽出)
 ラクトバチルス・ラムノーサス ATCC 53103に ついて、ラクトバチルス・カゼイ YIT 9029の オレドキシンレダクターゼ遺伝子(遺伝子A) ホモロジーを有する遺伝子を実施例1と同様 に検索したところ、これと99.5%相同なチオレ キシンレダクターゼと推定される遺伝子と これと29.3%相同な遺伝子を見出した。後者 遺伝子は上記 fnr と塩基配列で75.3%、アミノ酸配列で89.0%の相 性を有する遺伝子であった。この遺伝子は クトバチルス・カゼイ YIT 9029の fnr 遺伝子オルソログであり、 fnr と同様にチオレドキシンレダクターゼに特有 のCXXCモチーフを持たず、該活性を持たない 考えられる機能未知の遺伝子であった。

実施例4 ラクトバチルス・ラムノーサス ATCC  53103の遺伝子破壊株の分離
 実施例3で得られた機能未知の遺伝子である 配列番号5記載の遺伝子( fnr-r ;ラクトバチルス・ラムノーサス由来の fnr 遺伝子)を欠損する変異株の作成は、プライ ーとして、配列番号5内部の配列から選択し 配列の5’末端側に制限酵素 BamH I切断部位を含む配列を付加したオリゴヌク オチド5'-TATGGATCCACACTAAAACGGTCAT-3'(配列番号7)、 び配列番号5と相補的な配列から選択した配 列の5’末端側に制限酵素 Pst I切断部位を含む配列を付加したオリゴヌク オチド 5'-ATTCTGCAGTCGGTGCCTCACC-3'(配列番号8)を いた以外は実施例2と同様にして行った。導 したプラスミドがラクトバチルス・ラムノ サス ATCC 53103染色体の fnr-r 遺伝子内部の組換えプラスミド上の fnr-r 遺伝子断片と相同な領域に組み込まれて、 fnr-r 遺伝子が分断(破壊)されていることを確認し 。こうして得たクローンをδ fnr-r とした。

実施例5 ラクトバチルス・カゼイ YIT 9029遺 子破壊株の好気条件、嫌気条件における生
  fnr 遺伝子の機能を調べるために、実施例2で取 した fnr 遺伝子破壊株と、酸素耐性に関与すると予想 される遺伝子(NADHオキシダーゼ( nox2 )、NADHペルオキシダーゼ( npr )、チオレドキシン( trxA1 )、Alkylhydroperoxide reductase( ahpC ))の破壊株(δ nox2 、δ npr 、δ trxA1 、δ ahpC )について、嫌気(溶存酸素濃度小)、好気静置 (溶存酸素濃度中)、好気振とう(溶存酸素濃度 大)でMRS培地で培養した時の増殖を測定し、 生株のラクトバチルス・カゼイ YIT 9029の増 殖能と比較した。酸素耐性に関与すると予想 される遺伝子の破壊株は実施例2に示した方 と同様の方法により、取得した。
  fnr 遺伝子破壊株は嫌気MRS培地で、それ以外の菌 株は好気MRS培地で一晩前培養を行った。野性 株以外の遺伝子破壊株の培養液にはエリスロ マイシンを20μg/mlの濃度になるよう添加した 前培養液を本培養のMRS培地にそれぞれ1%接 した。嫌気培養は、窒素循環した培地を試 管に注入し、気相を窒素ガスで置換して、 チル栓で蓋をし、37℃で静置培養した。好気 静置培養は、培地を試験管に注入し、シリコ 栓で蓋をし、37℃で静置培養した。好気振と 培養は、培地を試験管に注入し、シリコ栓 蓋をし、試験管を斜めにして160rpmで振とう ながら37℃で培養した。それぞれクレット (KLETT MFG製)を用いて2時間置きに濁度を測定 た。
 その結果、嫌気条件下では、 fnr 遺伝子破壊株を含めすべての変異株で野生株 と同程度に良好な生育を示した。好気静置培 養では、野生株とδ nox2 、δ npr 、δ trxA1 、δ ahpC は良好な生育を示したが、δ fnr は著しい生育阻害が見られた。好気振とう培 養では野生株とδ nox2 、δ ahpC は良好な生育を示したが、δ npr 、δ trxA1 は僅かな生育阻害が見られ、δ fnr は著しい生育阻害が見られた。 fnr 遺伝子破壊株は中程度に酸素が存在する場合 においても、著しい生育阻害が見られたこと から、 fnr 遺伝子は酸素耐性付与遺伝子であることが明 らかになり、従来より酸素耐性に関与するこ とが公知である遺伝子と比較しても酸素耐性 への寄与度が非常に大きく、 fnr 遺伝子がなければ好気条件下での生育ができ ないことが分かった。
 なお、前培養液を取得する際、 fnr 遺伝子破壊株を嫌気MRS培地で培養した理由は 、好気MRS培地では fnr 遺伝子破壊株が生育しなかったためであり、 この事実も、 fnr 遺伝子は酸素存在下での生育に必須の遺伝子 であることを示している。

実施例6 ラクトバチルス・ラムノーサス ATCC  53103の fnr-r 遺伝子破壊株の好気条件、嫌気条件における 生育
 実施例4で作成した fnr-r 遺伝子破壊株(δ fnr-r )を、エリスロマイシンを20μg/mlの濃度になる ように添加したMRS寒天平板培地に、白金耳で 画線し、好気条件はそのまま静置で、嫌気条 件はアネロパック・ケンキ(三菱ガス化学社 )を用いて嫌気状態にし、37℃で3日間インキ ベートした。その結果、嫌気条件下ではMRS 天平板培地上で生育したが、好気条件下で まったく生育が観察されなかった。以上か 、ラクトバチルス・ラムノーサス ATCC 53103 においてもラクトバチルス・カゼイ fnr 遺伝子のオルソログ fnr-r 遺伝子は好気条件下での生育に必須であり、 酸素耐性遺伝子であることが明らかとなった 。




 
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