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Title:
MASS SPECTROMETRY AND MASS SPECTROMETRY SYSTEM
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/075011
Kind Code:
A1
Abstract:
Measurement is performed in a no-passing mode in which orbiting on orbit is not allowed to obtain a flight time spectrum in which passing of ions with different mass does not occur (S1, S2). From information including flight time etc. of peak appearing in the flight time spectrum (S3), the orbit count and flight time in an orbiting mode are predicted, and on the basis of the prediction, a segment is set which has a duration taking into account widening of duration of the peak on the flight time spectrum in the orbiting mode. The orbit count in one segment is the same whereby it is possible to determine the orbit count and mass of each peak uniquely when a plurality of segments are not overlapped. Therefore, determination is performed for overlap of segment set on the flight time spectrum in the orbiting mode in which a prescribed condition is supposed to find a condition that does not generate overlap for fixing segment (S4 to S6). Accordingly, switching timing of an emitting switch that emits ions from orbit is determined, and measurement of the orbiting mode is executed on the basis of the timing (S7).

Inventors:
NISHIGUCHI MASARU (JP)
KAJIHARA SHIGEKI (JP)
Application Number:
PCT/JP2007/001390
Publication Date:
June 18, 2009
Filing Date:
December 13, 2007
Export Citation:
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Assignee:
SHIMADZU CORP (JP)
NISHIGUCHI MASARU (JP)
KAJIHARA SHIGEKI (JP)
International Classes:
G01N27/62; H01J49/40
Foreign References:
JP2005322429A2005-11-17
JP2006278145A2006-10-12
JP2006202582A2006-08-03
JP2006012747A2006-01-12
Other References:
YAMAGUCHI S.: "Taju Shukai Hiko Jikangata Shitsuryo Bunsekiho ni Okeru Ion Shukaisu Sanshutsuho", J MASS SPECTROM.SOC. JPN., vol. 53, no. 6, 2005, pages 329 - 333
MIYAMURA T. ET AL.: "Multi-turn Hiko Jikangata Shitsuryo Bunsekikei ni Okeru Atarashii Calibration no Hoho II", DAI 53 KAI SHITSURYO BUNSEKI SOGO KENTOKAI KOEN YOSHISHU, 2005, pages 128 - 129
Attorney, Agent or Firm:
KOBAYASI, Ryohei (7th Floor Hougen-Sizyokarasuma Building,37, Motoakuozi-tyo, Higasinotouin Sizyo-sagaru,Simogyo-ku, Kyoto-si, Kyoto, JP)
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Claims:
 試料由来のイオンを周回軌道に沿って繰り返し飛行させ、所定の時点以降にイオンを周回軌道から離脱させて検出器により検出する多重周回飛行時間型のイオン光学系を利用した質量分析方法であって、
 a)前記周回軌道上でイオンを周回させない又は周回させる場合でもイオンの追いつき・追い越しが起こらないことが保証される周回数でイオンを飛行させる非追い越しモードで目的試料の質量分析を実行して飛行時間スペクトルを取得する非追い越しモード実行ステップと、
 b)前記非追い越しモードでの飛行時間スペクトルに現れるピークの情報を収集するピーク情報収集ステップと、
 c)収集されたピーク情報に基づいて、前記周期軌道に沿ってイオンを周回させる周回モードで目的試料の質量分析を実行した際に観測されるピークに対応した周回数及び飛行時間を予測し、その予測に基づく飛行時間スペクトル上で少なくとも着目するイオンに対応するピークが分離可能であるように前記周回軌道からイオンの離脱を開始させるタイミングを決定するタイミング決定ステップと、
 を含むことを特徴とする質量分析方法。
 請求項1に記載の質量分析方法であって、
 d)前記タイミング決定ステップにおいて決定されたイオンの離脱開始のタイミングで以て前記周回モードでの目的試料の質量分析を実行する周回モード実行ステップと、
 e)それにより得られる飛行時間スペクトル上に現れるピークの実際の飛行時間と前記タイミング決定ステップにおいて予測された周回数とに基づいて該ピークに対応するイオンの質量を同定する質量同定ステップと、
 をさらに含むことを特徴とする質量分析方法。
 請求項1又は2に記載の質量分析方法であって、前記タイミング決定ステップは、前記予測に基づく飛行時間スペクトルの飛行時間軸上で質量と周回数とを一意的に決定可能な複数の領域を設定し、該複数の領域がオーバーラップしないという条件の下で、又は該複数の領域の一部がオーバーラップした場合であってもそのオーバーラップした範囲にはピークが存在しないという条件の下で、前記タイミングを決定することを特徴とする質量分析方法。
 請求項1又は2に記載の質量分析方法であって、前記ピーク情報収集ステップでは、前記非追い越しモードでの飛行時間スペクトルに現れるピークから所定の条件に基づいてピークを選別し、前記タイミング決定ステップでは、その選別されたピークに対応するイオンを前記着目するイオンとすることを特徴とする質量分析方法。
 試料由来のイオンを周回軌道に沿って繰り返し飛行させ、所定の時点以降にイオンを周回軌道から離脱させて検出器により検出する多重周回飛行時間型のイオン光学系を利用した質量分析システムであって、
 a)前記周回軌道上でイオンを周回させない又は周回させる場合でもイオンの追いつき・追い越しが起こらないことが保証される周回数でイオンを飛行させる非追い越しモードで目的試料の質量分析を実行して飛行時間スペクトルを取得する非周回モード実行制御手段と、
 b)前記非追い越しモードでの飛行時間スペクトルに現れるピークの情報を収集するピーク情報収集手段と、
 c)収集されたピーク情報に基づいて、前記周期軌道に沿ってイオンを周回させる周回モードで目的試料の質量分析を実行した際に観測されるピークに対応した周回数及び飛行時間を予測し、その予測に基づく飛行時間スペクトル上で少なくとも着目するイオンに対応するピークが分離可能であるように前記周回軌道からイオンの離脱を開始させるタイミングを決定するタイミング決定手段と、
 を備えることを特徴とする質量分析システム。
 請求項5に記載の質量分析システムであって、
 d)前記タイミング決定手段において決定されたイオンの離脱開始のタイミングで以て前記周回モードでの目的試料の質量分析を実行する周回モード実行制御手段と、
 e)それにより得られる飛行時間スペクトル上に現れるピークの実際の飛行時間と前記タイミング決定手段において予測された周回数とに基づいて該ピークに対応するイオンの質量を同定する質量同定処理手段と、
 をさらに備えることを特徴とする質量分析システム。
 請求項5又は6に記載の質量分析システムであって、前記タイミング決定手段は、前記予測に基づく飛行時間スペクトルの飛行時間軸上で質量と周回数とを一意的に決定可能な複数の領域を設定し、該複数の領域がオーバーラップしないという条件の下で、又は該複数の領域の一部がオーバーラップした場合であってもそのオーバーラップした範囲にはピークが存在しないという条件の下で、前記タイミングを決定することを特徴とする質量分析システム。
 請求項5又は6に記載の質量分析システムであって、前記ピーク情報収集手段では、前記非追い越しモードでの飛行時間スペクトルに現れるピークから所定の条件に基づいてピークを選別し、前記タイミング決定手段では、その選別されたピークに対応するイオンを前記着目するイオンとすることを特徴とする質量分析システム。
 請求項5又は6に記載の質量分析システムであって、前記イオン光学系は、前記周回軌道上からイオンを離脱させるためにイオンの進行方向を切り替える出射スイッチを含むことを特徴とする質量分析システム。
Description:
質量分析方法及び質量分析シス ム

 本発明は質量分析方法及び質量分析シス ムに関し、さらに詳しくは、イオンを閉軌 中を繰り返し飛行させるイオン光学系を備 る多重周回飛行時間型の質量分析方法及び 量分析システムに関する。

 一般に、飛行時間型質量分析計では、一 のエネルギーを与えることで加速したイオ はそれぞれ質量に応じた飛行速度をもつ、 いう原理に基づき、そうしたイオンが一定 離を飛行するのに要する飛行時間を計測し 該飛行時間を質量に換算することにより質 分析を行う。したがって、質量分解能を向 させるためには、飛行距離をできるだけ長 することが有効である。こうした目的を達 するために、イオンを例えば、略円形状、 楕円形状、略8の字形状など様々な態様の閉 軌道に沿って多重周回させて飛行距離を延ば すことにより、高質量分解能を達成した多重 周回飛行時間型質量分析装置が開発されてい る(例えば特許文献1-3、非特許文献1など参照) 。

 また、同様の目的で、上記のような周回 道ではなく反射電場によりイオンを複数回 射させる往復軌道とすることで飛行距離を ばすようにした、多重反射飛行時間型質量 析計も開発されている。多重周回飛行時間 と多重反射飛行時間型とではイオン光学系 異なるものの、高質量分解能化の基本的な 理はほぼ同じである。そこで、本明細書で 、「多重周回飛行時間型」は「多重反射飛 時間型」を含むものとする。

 多重周回飛行時間型質量分析計は、イオ が多重周回を行う周回部、該周回部にイオ を導入するための入射部、及び周回部から オンを取り出すための出射部、を含んで構 される。入射部及び出射部は、パルス的に 動されてイオンの飛行経路の切り替えを行 、つまりイオンを偏向させる又はイオンの 向を解除するスイッチとなるイオン光学要 を有する。ここでは、これらをそれぞれ入 スイッチ及び出射スイッチと呼ぶ。入射ス ッチ、出射スイッチは多くの場合、イオン 進行方向を変える偏向電極により実現され 。入射スイッチにより周回部に導入するイ ンの質量範囲を制御することができ、出射 イッチによりイオンの周回数などを制御す ことができる。

 上述のように、多重周回飛行時間型質量 析計は高質量分解能を達成することができ ものの、イオンの飛行経路が閉軌道である とを原因とする欠点が存在する。その欠点 は、閉軌道に沿ってイオンを周回させる際 周回数が増加するに伴い、質量が小さく速 が大きなイオンは質量が大きく速度の小さ イオンを閉軌道上で追い越してしまうこと ある。このような異なる質量のイオンの追 越しが生じると、測定により得られた飛行 間スペクトル上では、観測されるピーク毎 そのピークに対応するイオンの周回数が異 る、即ち、飛行距離が異なる、ということ 起こり得る。こうした場合には、イオンの 量と飛行距離とを一意的に決定することが きないため、飛行時間スペクトルを直接的 マススペクトルに変換することができなく る。

 上記欠点のため、従来の多重周回飛行時 型質量分析計は、イオン源で生成されたイ ンのうち追い越しの起こらない質量範囲の を観測する質量ズーム機能を実現するため 使用されるのが一般的である。これは、観 対象の質量範囲を比較的狭い範囲に制限し うえで、高質量分解能での測定を実行する いう機能である。

 非特許文献1によれば、上記のように閉軌 道を周回させた際に追い越しの起こらない質 量範囲は周回数に反比例することが知られて おり、測定の質量分解能と質量範囲も結果と して反比例の関係となる。例えばイオンを100 周程度周回させた場合、追い越しの起こらな い質量範囲はイオンを周回させない場合の数 %程度にまで狭まる。そのため、高質量分解 が要求される試料について広い質量範囲の ススペクトルを得るためには、質量範囲を らしながら複数回の質量分析を実行してそ ぞれ質量範囲の相違するマススペクトルを 得し、最終的にそれらマススペクトルを合 して広い質量範囲のマススペクトルを作成 る、という手順をとらざるを得ない。この め、測定に時間を要し、スループットの低 が大きな問題となる。

 多重周回飛行時間型質量分析計において 測対象の質量範囲を広げるために、特許文 4では、周回部からの出射時刻の異なる複数 の飛行時間スペクトルの多重相関関数を計算 することにより、複数の飛行時間スペクトル から単一周回数の飛行時間スペクトルを再構 成する方法が提案されている。しかしながら 、この方法では、組み合わせる飛行時間スペ クトルの数が少ないと本来存在しない偽のピ ークを人工的に生成してしまうおそれがある ため、少なくとも3回以上の質量分析を実行 て周回部からの出射時刻の異なる飛行時間 ペクトルを取得することが望ましい。した って、この方法でも測定に時間を要するこ は避けられない。また、一般に多重相関関 の計算は複雑でかなりの時間が掛かるため その点でも効率的な方法であるとは言えな 。

特開平11-135060号公報

特開平11-135061号公報

特開平11-195398号公報

特開2005-79049号公報 豊田(M.Toyoda)ほか3名、「マルチターン・ イムオブフライト・マス・スペクトロメー ーズ・ウィズ・エレクトロスタティック・ クターズ(Multi-turn time-of-flight mass spectromete rs with electrostatic sectors)」、ジャーナル・オ ブ・マス・スペクトロメトリー(J.Mass Spectrom. )、38, pp.1125-1142、2003年

 本発明は上記課題に鑑みて成されたもの あり、その目的とするところは、閉軌道に 入するイオンの質量範囲を制限することな 、つまり広い質量範囲に亘るイオンを測定 象としながら、高い質量分解能を達成する めにイオンの周回数をできるだけ多くする とができる多重周回飛行時間型の質量分析 法及び質量分析システムを提供することで る。

 上記課題を解決するために成された第1発明 は、試料由来のイオンを周回軌道に沿って繰 り返し飛行させ、所定の時点以降にイオンを 周回軌道から離脱させて検出器により検出す る多重周回飛行時間型のイオン光学系を利用 した質量分析方法であって、
 a)前記周回軌道上でイオンを周回させない は周回させる場合でもイオンの追いつき・ い越しが起こらないことが保証される周回 でイオンを飛行させる非追い越しモードで 的試料の質量分析を実行して飛行時間スペ トルを取得する非追い越しモード実行ステ プと、
 b)前記非追い越しモードでの飛行時間スペ トルに現れるピークの情報を収集するピー 情報収集ステップと、
 c)収集されたピーク情報に基づいて、前記 期軌道に沿ってイオンを周回させる周回モ ドで目的試料の質量分析を実行した際に観 されるピークに対応した周回数及び飛行時 を予測し、その予測に基づく飛行時間スペ トル上で少なくとも着目するイオンに対応 るピークが分離可能であるように前記周回 道からイオンの離脱を開始させるタイミン を決定するタイミング決定ステップと、
 を含むことを特徴としている。

 また上記課題を解決するために成された第2 発明は、上記第1発明に係る質量分析方法を 現するための質量分析システムであり、試 由来のイオンを周回軌道に沿って繰り返し 行させ、所定の時点以降にイオンを周回軌 から離脱させて検出器により検出する多重 回飛行時間型のイオン光学系を利用した質 分析システムであって、
 a)前記周回軌道上でイオンを周回させない は周回させる場合でもイオンの追いつき・ い越しが起こらないことが保証される周回 でイオンを飛行させる非追い越しモードで 的試料の質量分析を実行して飛行時間スペ トルを取得する非追い越しモード実行制御 段と、
 b)前記非追い越しモードでの飛行時間スペ トルに現れるピークの情報を収集するピー 情報収集手段と、
 c)収集されたピーク情報に基づいて、前記 期軌道に沿ってイオンを周回させる周回モ ドで目的試料の質量分析を実行した際に観 されるピークに対応した周回数及び飛行時 を予測し、その予測に基づく飛行時間スペ トル上で少なくとも着目するイオンに対応 るピークが分離可能であるように前記周回 道からイオンの離脱を開始させるタイミン を決定するタイミング決定手段と、
 を備えることを特徴としている。

 ここで、「周回軌道」とは、例えば円軌 、楕円軌道などのようにイオンが1周する間 の経路にオーバーラップが生じない狭義の周 回軌道のみならず、例えば直線又は曲線など の線状の軌道に沿ってイオンが往復する往復 軌道も含む広義の周回軌道のことを言う。往 復軌道の場合、1周回とは1往復を意味するこ は明らかである。

 第1発明及び第2発明におけるイオン光学 は、通常、周回軌道を形成するための電場 は磁場のほか、外部で生成されたイオンを 回軌道に乗せるための入射部、及び周回軌 からイオンを離脱させるための出射部を含 。但し、周回軌道上でイオンを生成する構 とすることも可能であり、その場合には入 部は存在しない。なお、出射部としては、 回軌道上からイオンを離脱させるためにイ ンの進行方向を切り替える出射スイッチを いることができる。

 この多重周回飛行時間型のイオン光学系 利用した測定のモードとして、大別して、 オンを入射部から周回軌道に導入して該周 軌道の一部を通過させ、周回を行わずに出 部から検出器へと導入する、又は周回軌道 沿って周回させる場合でも異なる質量を持 イオンの追いつきや追い越しが起こらない とが確実である少数の周回数の範囲でイオ を飛行させる非追い越しモードと,周回軌道 に沿ってイオンを多重周回させる周回モード と、がある。非追い越しモードで目的試料の 質量分析を行う場合、その飛行経路上で質量 が相違するイオンの追いつきや追い越しは起 こり得ず、速度の速いイオンから、つまりは 質量の小さなイオンから順に検出器に到達す る。したがって、その結果得られる飛行時間 スペクトルでは、観測された全てのピークに ついて質量の同定が可能である。

 そこで、第1発明に係る質量分析方法を実 現する第2発明に係る質量分析システムでは まず非追い越しモード実行制御手段が、例 ば上記のような入射部、出射部、及び周回 道を形成する電場を形成する電極などに印 する電圧などを適宜に制御することにより 非追い越しモードの飛行時間スペクトルを 得する。次に、ピーク情報収集手段は、飛 時間スペクトルに現れているピークについ 、少なくともその飛行時間をピーク情報と て収集する。

 このとき、飛行時間スペクトルに現れる てのピークについてピーク情報を収集する ではなく、所定の条件に基づいてピークを 別するようにしてもよい。ここで、所定の 件とは、例えばピーク強度に閾値を設定し ピーク強度が閾値以上のピークを選別する 等とすることができる。こうしたピークの 別は、強度が小さいノイズピークを除去し り、或いはユーザが着目しない又は着目し いであろうと推測されるイオンのピークを 去したりするのに有用である。

 それから、タイミング決定手段は、前述 ように収集されたピーク情報に基づき、周 モードで目的試料の質量分析を実行した際 観測されるピークに対応した周回数及び飛 時間を予測し、その予測に基づく飛行時間 ペクトル上で少なくとも着目するイオンに 応するピークが分離可能であるように、つ り異なる周回数だけ周回した異なる質量を するイオンが混在して検出器に到達しない うに、周回軌道からイオンの離脱を開始さ るタイミングを決定する。

 具体的には、例えばまず、上述のような 測に基づく飛行時間スペクトルの飛行時間 上で質量と周回数とを一意的に決定可能な 数の領域を設定する。つまり各領域に含ま るピークは同一周回数だけ周回したイオン あることが保証され、それ故に飛行時間か 質量が一意的に決定可能である。こうして 定される複数の領域がオーバーラップして しかもそのオーバーラップした範囲にピー が存在すると、そのピークに対応したイオ の周回数は判断できず、質量も確定できな 。したがって、複数の領域がオーバーラッ しない、又は該複数の領域の一部がオーバ ラップした場合であってもそのオーバーラ プした範囲にはピークが存在しないという 件を満たすように、イオンが周回軌道から 脱するタイミングを決定すればよい。

 但し、周回数が少ないと質量分解能は低 から、要求される質量分解能が決まってい 場合には、その要求値に応じて周回数の下 がおのずから決まる。したがって、タイミ グ決定手段は、設定された質量分解能に応 て例えば質量が最小であるイオンの周回数 おおよそ決め、或いは質量が最小であるイ ンの周回数の下限値を決めた上で、上述の うな条件を満たすようにタイミングを決定 るとよい。

 また、第2発明に係る質量分析システムでは 、
 d)前記タイミング決定手段において決定さ たイオンの離脱開始のタイミングで以て前 周回モードでの目的試料の質量分析を実行 る周回モード実行制御手段と、
 e)それにより得られる飛行時間スペクトル に現れるピークの実際の飛行時間と前記タ ミング決定手段において予測された周回数 に基づいて該ピークに対応するイオンの質 を同定する質量同定処理手段と、
 をさらに含む構成とすることができる。

 こうして実際に得られる周回モードの飛 時間スペクトル上では、非追い越しモード ときに比べて質量分解能が向上することに り、非追い越しモードでは単一であったピ クが明確に分離されて複数のピークとして れたり、或いは誤差要因などによって予測 れた飛行時間から若干すれた位置にピーク 現れたりすることがある。その場合でも、 なる質量を持つイオンが混在したピークは れず、各ピークに対応するピークの周回数 確定する。したがって、予測された周回数 用いて、各ピークの実際の飛行時間から質 を求める、つまり同定することができる。

 第1発明に係る質量分析方法及び第2発明 係る質量分析システムによれば、多くの場 、非追い越しモードでの1回の測定と周回モ ドでの1回の測定とを行うことにより、周回 モードで得られる飛行時間スペクトルに現れ る各ピークに対応したイオンの質量を同定す ることができる。周回モードの質量分析の際 には異なる質量のイオンの追い越しが起こっ ても構わないので、結果的に、従来に比べて 遙かに広い質量範囲のイオンの質量を高い質 量分解能で同定することが可能となる。質量 範囲を制限した測定を複数回行う必要もない ので測定に要する時間を短縮でき、スループ ットを向上させることができる。また、多重 相関関数の計算のような複雑な計算も不要で ある。

本発明の一実施例による多重周回飛行 間型質量分析装置のイオン光学系の概略図 図1のイオン光学系を用いた多重周回飛 行時間型質量分析装置の全体構成図。 本発明の一実施例による質量分析手順 示すフローチャート。 非追い越し(非周回)モードで得られる 行時間スペクトルの一例(シミュレーション 果)。 周回モードで得られる飛行時間スペク ルの一例(シミュレーション結果)。 図4及び図5のシミュレーションにより られる各セグメントの質量及び周回数等の 細な情報を示す図。 周回モードで観測されたピークの質量 正の計算結果及び乱数により生成された元 ータを示す図。

符号の説明

1…イオン源
2…周回軌道
2’…往復軌道
2a、2b…扇形電極
3…入射スイッチ
4…出射スイッチ
5…イオン検出器
10…制御部
11…周回用電圧発生部
12…入出射用電圧発生部
13…データ処理部
14…入力部

 まず、一般的な多重周回飛行時間型質量 析装置の構成について説明する。図1(a)は一 般的な多重周回飛行時間型質量分析装置のイ オン光学系の概略図、図2はこのイオン光学 を用いた多重周回飛行時間型質量分析装置 全体構成図である。

 イオン源1では試料分子がイオン化され、 生成された各種イオンは所定のエネルギーを 付与されて飛行を開始する。なお、イオン源 1は例えば三次元四重極型イオントラップな のように、外部で生成された各種イオンを 時的に保持し、それらイオンに所定のタイ ングで一斉にエネルギーを付与して飛行を 始させるものでもよい。

 イオン源1を出発点として飛行を開始した イオンは入射スイッチ3により形成される偏 電場を介し周回軌道2に導入される。この周 軌道2は、例えば図2に示すような複数の扇 電極2a、2bによりそれぞれ生成される扇形電 の作用で形成される。なお、図2に示した扇 形電極は一部であり、実際にはより多数の扇 形電場が必要である。図では周回軌道2を略 形状としているが、周回軌道2の形状はこれ 限らず、略楕円形状、8の字形状など、様々 な形状の周回軌道2が実現可能である。

 イオンは周回軌道2を半周だけ飛行した後 に又は複数回周回した後に出射スイッチ4に り形成される偏向電場を介して周回軌道2か 離脱され、外側に設けられたイオン検出器5 に到達して検出される。イオン検出器5の検 信号はデータ処理部13に入力され、ここで各 イオンの飛行時間から質量への換算、マスス ペクトルの作成、さらには定性分析、定量分 析などが実行される。

 周回用電圧発生部11は、上述した扇形電 2a、2bにそれぞれ所定の直流電圧を印加する とで、扇形電場を形成させるものである。 た、入出射用電圧発生部12は、入射スイッ 3及び出射スイッチ4にそれぞれ所定のタイミ ングで、周回軌道2への入射用の偏向電圧及 周回軌道2からの出射用の偏向電圧を印加す ものである。制御部10はこれら電圧発生部11 、12、イオン源1、データ処理部13などを制御 ることで、後述する質量分析を達成する。 力部14はユーザが分析のための各種パラメ タを入力するためのものである。

 図1において、ι、ι’、ι''はそれぞれ、 オン源1から周回軌道2への入射点P1まで(以 、「入射部」という)の距離、周回軌道2のう ち半周だけを飛行する非追い越し(非周回)モ ドでの経路の距離、及び周回軌道2からの出 射点P2からイオン検出器5まで(以下、「出射 」という)の距離、である。非追い越しモー での飛行距離は、L0=ι+ι’+ι''、で与えられ る。また、周回軌道2の1周の長さをLとする。 当然のことながら、装置によってイオン光学 系は異なり、例えばι=0となる場合(周回軌道2 上にイオン源1が存在する場合)等、図1に示し た構成は様々に変形が可能である。

 図1(b)は、イオン源1から出発したイオン 入射スイッチ3を通して直線状の往復軌道2’ に導入し、往復軌道2’に沿って複数回往復 せた後に、出射スイッチ4を通して離脱させ イオン検出器5で検出するイオン光学系の構 成を示す。こうした往復軌道2’は両側にそ ぞれ反射電極を設けることで形成すること できる。この往復軌道2’も上述したような 回軌道2と同じく閉軌道であるから、広い意 味で周回軌道に含めて考えることができ、本 発明に係る質量分析方法が適用できることは 明らかである。

 図1に示したイオン光学系の構成において 、イオンの質量と飛行時間との関係について 説明する。いまイオン源1でのイオンの加速 圧をV、素電荷をe、イオンの質量をm、イオ の価数を1とする。なお、イオンが多価イオ であって価数が1以外のzである場合には、 量mをm/zに置き換えればよい。

 上記条件の下で、非追い越しモードの測定 よるイオンの質量mと飛行時間t0との関係は
である。一方、周期軌道2に沿って1周回以上 オンが飛行する周回モードの測定において 質量mであるイオンが周回軌道2をn周回した にイオン検出器5に到達して検出されるとす ると、そのイオンの飛行時間tは、
となる。さらに、(1)式及び(2)式より、周回モ ードにおける飛行時間tと非追い越しモード 飛行時間t0との関係として、
が得られる。

 周回モードの飛行時間スペクトルにおけ イオンの追い越しの問題は、(2)式に明瞭に れている。即ち、(2)式において、観測量で る飛行時間tに対し、周回数nと質量mという2 つの未知変数が存在する。仮に周回数nが未 であった場合でも、周回数nが全ての質量に し一定の値となることが保証されるならば 例えば質量が既知である標準試料の測定に り周回数nを求め、これを用いて未知の飛行 時間tから質量mをそれぞれ決定することは可 である。しかしながら、前述のように、周 モードでは質量の異なるイオンの追い越し 起こる可能性があり、飛行時間スペクトル 現れるピークの質量毎に周回数が異なると う事態が起こる。この場合、観測された飛 時間tに対し、(2)式の未知変数である質量m 周回数nとの両方を一意的に決定することは 可能である。このため、従来は、前述した うに、追い越しの起こらない質量範囲に観 する範囲を限定するという手法が一般的で った。

 上述のように測定対象の質量範囲を制限 なければならない理由は、追い越しが起こ た場合に、(2)式において質量と周回数とを 意的に決定できないためである。これに対 、本発明に係る質量分析方法では、非追い しモードでの追いつきや追い越しのない飛 時間スペクトルを利用し、周回モードでの い越しの起こった飛行時間スペクトルを、 測される全ての又は特定の着目するイオン ケットに対して質量と周回数とを一意的に 定可能な領域に分割する。なお、ここで「 オンパケット」とは、同一質量のイオンが えば加速エネルギーのばらつき等の要因の めに、時間方向に有限な広がりを持ちつつ むイオンの集合体のことをいう。

 即ち、非追い越しモードでの飛行時間と 回モードでの飛行時間との関係について、( 3)式より、周回モードにおける飛行時間tは、 周回数nに対し,切片t0、傾きαt0の直線上に観 されることが分かる。周回数は自然数値し とり得ないことから、非追い越しモードでt 0の飛行時間に観測されたイオンパケットは 周回モードの観測においては、そこからαt0 隔の飛行時間しか採り得ないことが理解さ る。この性質から、最初に非追い越しモー で追い越しがなく、且つ全ての(実際的には 或る程度の広い)質量範囲に亘る飛行時間ス クトルを観測することにより、測定対象で る目的試料に含まれる全てのイオンパケッ について周回モードでの飛行時間を予測す ことが可能である。非追い越しモードにお る飛行時間スペクトルではイオンパケット 或る時間幅を持つピークとして観測される したがって、周回モードにおいて予測され 飛行時間についても、非追い越しモードで 測されたピーク幅に依存した或る幅を持つ 域が対応することになる。以下の説明では 非追い越しモードにおける飛行時間スペク ル上のピークから予測される周回モードで 飛行時間領域を「セグメント」と呼ぶ。

 或るイオンパケットについて、非追い越 モードで飛行時間t0の位置に観測されるピ クに対し、イオンパケットの飛行時間のば つきがδtであったとする。ここで飛行時間 ばらつきは当然、ピーク幅に比例した値で り、直接にピーク全幅としてもよく、或い ピーク幅を適当な数で除し、ピーク全幅よ も小さい値に調整することもできる。以下 非追い越しモードにて観測されるピークに し定義した飛行時間のばらつきを「初期時 幅」と呼ぶ。

 周回モードで上記イオンパケットをn周回さ せた場合、初期時間幅δtに対応する周回モー ドでのセグメントの幅δtnは、(3)式より、
となることが分かる。非追い越しモードの測 定では、質量分解能の不足により一つのピー クとして観測されたイオンパケット群が、周 回モードにおいて十分な質量分解能での測定 を行った結果、複数のピークとして観測され ることがあり得る(後述の図5のセグメントSG8 照)。但し、その場合でも、非追い越しモー ドでのイオンパケット群の飛行時間差が初期 時間幅よりも小さければ、それら複数のピー クは(4)式で与えられる幅をもつ同一のセグメ ント内に収まる筈であるから、全てのピーク の質量と周回数とを一意的に決定することが 可能である。

 このように、非追い越しモードにおける 行時間スペクトルから周回モードで観測さ るセグメントを予測するに際し、周回モー で観測されるセグメントが互いにオーバー ップしないこと、又は、仮にオーバーラッ が起こった場合でも少なくともそのオーバ ラップした範囲内にピークが観測されない と、が必要である。何故なら、セグメント オーバーラップが起こった領域にピークが 測されるという事態は、そのピークに対し は非追い越しモードから予測される質量と 回数との組合せが複数存在し、それらを一 的に決定できない状態を意味するからであ 。セグメントのオーバーラップは、出射ス ッチ4のタイミングを調整することにより比 較的容易に回避することができる。換言すれ ば、セグメントのオーバーラップを回避する ための条件を探索することは、出射スイッチ 4の適切なタイミングを決めることにほかな ない。以下に、セグメントのオーバーラッ を回避するための最も単純な方法の一例を 明する。

 まず、非追い越しモードにおける飛行時 スペクトルより、観測された全ての(又は特 定の着目する)ピークに対してピーク位置t0i 及び初期時間幅δt0i、を求める。ここではN のピークが観測されたものとする。ピーク 置はピークトップ又はピーク重心といった ークの位置を代表する値であればよい。前 のとおり初期時間幅は調整の自由度をもっ おり、初期時間幅が小さいほど周回モード おけるセグメントの幅も小さくなるため、 グメントのオーバーラップを回避するのも 易となる。

 いま飛行時間が最も短い、つまり質量が も小さいイオンパケット#1をn1周回させるも のとする。出射スイッチ4は、イオンパケッ #1がちょうどn1周する直前に、周回軌道2側か ら出射イオン光学系側へと切り替えられる。 この操作により、周回モードの飛行時間スペ クトルにおいても、最も飛行時間の短いピー クはイオンパケット#1であることが保証され 。イオンパケット#1に対して周回数を設定 ることにより、出射スイッチ4の切替えのタ ミングが決定されると、これに続く他の全 のイオンパケットに対して次のように周回 が予測される。

 出射スイッチ4を切り替える時刻Tsについて イオンパケット#1が出射スイッチ4を通過す d秒前に該出射スイッチ4を切り替えたとす と、
である。これに対し、他のイオンパケット#i 周回数niは、
を満たす整数値であることが分かる。(6)式よ り全てのイオンパケットに対して、設定され た出射スイッチ4の切替時刻Tsに基づいて周回 数niを予測することができる。さらに(3)式よ 、予測された周回数niから観測される飛行 間tiが予測できる。このようにして、非追い 越しモードで観測された全ての又は特定のピ ークに対し、周回モードでの周回数と飛行時 間とを予測することができる。

 次いで、複数のセグメントのオーバーラッ を回避するための判定を行う。まず、上述 ように周回数が予測された時点で、初期時 幅δt0iに対するセグメント時間幅δtiが(4)式 り計算される。予測した飛行時間tiとセグ ント時間幅δtiとに対し、非追い越しモード 観測した全てのピークの組合せについて、 に示す2つの判定式(a)、(b)のいずれかの真偽 を判定する。
  (a) |ti-tj|>δti/2
  (b) |ti-tj|>(δti+δtj)/2

 上記判定式から明らかなように、セグメ トのオーバーラップの判定としては、判定 (b)のほうが厳しく、判定式(b)は全てのセグ ントが完全に分離された状態を保証する。 方、判定式(a)はセグメントのオーバーラッ が生じる可能性は残るものの、セグメント オーバーラップする範囲内にはピークが存 しないことを保証する。全てのピークの組 せに対し、選択した判定式が真であれば、 回モードの飛行時間スペクトルにおいて、 量と周回数とを一意的に決定可能なセグメ トを設定することができる。これに対し、 定式が偽となるピークの組合せが一つでも れば、その周回数では全てのピークの質量 一意的に決定することはできない。そこで 最初に戻り、イオンパケット#1の周回数を1 け増加させる又は減少させるなどして周回 を変化させ、上記と同様の手順でセグメン のオーバーラップ判定を行う。

 こうした試行を繰り返し、セグメントの ーバーラップが回避される周回数を検索す 。注意すべきなのは、(4)式に示されるよう 、周回数を増やすほどセグメント時間幅は きくなり、セグメントがオーバーラップす 確率は大きくなることである。その結果、 えば判定式をより緩やかな(a)に選択し直し り、或いは、初期時間幅を調整することに りセグメント時間幅を狭めたりする必要が じることがある。そうした対応を採っても 切なセグメントを設定できない場合には、 目するピークの本数を減らす等の対応も必 である。

 以上のようにして、非追い越しモードで 得される追い越しのない飛行時間スペクト を利用することで、周回モードにおける追 越しのある飛行時間スペクトルを、質量と 回数とを一意的に決定可能なセグメントに 割することが可能となる。周回モードでの 行時間スペクトルにおいて各セグメントに まれるピークは1本であっても複数本であっ ても周回数は同一であることが保証され、そ のピークの飛行時間から一意的に質量が定ま る。また、これにより出射スイッチ4の切替 のタイミングが決定される。したがって、 御部10は、こうして決まったタイミングに基 づいて出射スイッチ4を切り替えるべく入出 用電圧発生部12を制御しつつ周回モードの測 定を実行し、データ処理部13はそれにより得 れる検出信号に基づいて飛行時間スペクト を作成する。こうして取得された飛行時間 ペクトルにおいて各ピークの実測の飛行時 と上述のような予測に基づく周回数とから 質量を高い分解能で算出することができる

 図3は、上記説明した本発明における質量分 析方法の手順の一例をまとめたフローチャー トである。
 まず、目的試料に対し非追い越しモードで 測定を実行し、飛行時間とイオン強度との 係を示す飛行時間スペクトルを取得する(ス テップS1、S2)。次に、データ処理部13におい 以下のような処理を実行する。上記飛行時 スペクトルに対しピーク検出を行い、各ピ クの飛行時間及び強度を求める。一般的な 々なノイズピークなどが含まれるから、ノ ズピークを除去して着目するピークのみを 出するために、ここでは強度が所定の閾値 上のものの中から強度が高い順番に所定本 (例えば15など)のピークを選別し、その選別 たピークについての飛行時間などのピーク 報を収集する(ステップS3)。なお、こうした ピークの選別は必ずしも行う必要はなく、ま たピーク選別を行う場合でもその選別条件は 任意に決めることができる。

 次いで、選別された各ピークについて上 のように初期時間幅などを設定した上で所 の条件を仮定(例えば最小質量のイオンの周 回数を仮定)して、周回モードにおける周回 と飛行時間とを予測し、これに基づき、そ 周回モードで観測される飛行時間スペクト 上でのセグメントを設定する(ステップS4)。 れから、そうして設定された複数のセグメ トがオーバーラップしない(又はオーバーラ ップしてもその範囲にピークが存在しない) 否かを判定する(ステップS5)。セグメントが ーバーラップする等、ピークの周回数と質 とが一意的に決まらない場合には、ステッ S4へ戻り、先に仮定した周回モードの条件 変更して再びセグメントの設定をやり直し その変更後のセグメントについてオーバー ップの判定を行う。

 そうして、周回数と質量とが一意的に決 るようなセグメントが求まったならば、セ メントを確定し、各セグメントに対応した 回数などの情報を記憶する。また、これに り、出射スイッチ4の切替えのタイミングも 決定するから、この情報を制御部10に与える( ステップS6)。その後、制御部10の制御の下、 的試料に対し周回モードでの測定を実行し データ処理部13では周回モードにおける飛 時間スペクトルを作成する(ステップS7、S8) そして、この飛行時間スペクトルに現れる ークの位置から正確な飛行時間を求め、こ 飛行時間と記憶したおいた各セグメントの 回数情報とから各ピークの質量を計算する( テップS9)。こうして、周回モードの測定で い越しが起こり、飛行時間スペクトル上で 回数が異なるような各ピークに対応するイ ンの質量も高い分解能で求めることができ 。

 上述した本発明に係る質量分析方法で用 た手法の有効性を検証するために行ったシ ュレーションについて、次に説明する。

 装置の構成は図1(a)に示した構成とし、ι= ι’=ι''=0.5[m]、L=1.0[m]、とした。イオンの加 電圧は10kVであるとした。また、信号観測の ンプリングレートは1GS/秒とし、測定対象の イオンについては、存在するイオンパケット の数、それぞれのイオンの質量及び強度を、 乱数で生成した。ここで、生成する質量範囲 について、イオン光学系の構造に起因する制 約があることを説明しておく。

 即ち、イオン源1から発したイオンを周回軌 道2に乗せるための入射スイッチ3は、イオン 周回軌道2へ導入する間は電圧が印加されて イオンの軌道を偏向させるが、イオンが周回 軌道2を周回する間は電圧をゼロとし偏向電 の発生を停止しなければならない。したが て、イオンを周回軌道2に導入できる時間幅 、イオンがイオン源1から放出された時点か ら、周回軌道2に最初に導入された最も軽く 度の速いイオンパケットが周回軌道2を1周回 して再び入射スイッチ3に到達する時点まで 所要時間で決定される。それ故に、観測す 最小の質量をmmin、最大の質量をmmaxとすると 、周回軌道2に導入可能な質量範囲は(7)式で えられる。

 この性質は、非追い越しモードにおける 行時間スペクトルと周回モードにおける飛 時間スペクトルとを組み合わせる場合に注 すべき点である。非追い越しモードにおい 観測される飛行時間スペクトルには当然、 記のような質量範囲の制約はない。そのた 、分析担当者がこの点に留意した測定を行 ないと、非追い越しモードでの質量範囲と 回モードでの質量範囲とが異なり、ピーク 同定が原理的に不可能となる場合も起こり る。現実的な対処としては、本来切り替え べき必要のない入射スイッチ3を非追い越し モードにおいても周回モードと同様に動作さ せることにより、それぞれのモードでの質量 範囲を同等にすることできる。

 このシミュレーションでは、乱数により 成する最小の質量を決定した後に、(7)式を たす質量範囲で他の質量を生成するように た。イオンパケットの数は最大で20とした 、そのうち5つには質量分解能10000が必要な 量差をもたせるように質量を生成した。そ ら5つの質量についてもその最小値を乱数に り生成している。なお、この装置条件にお ては、質量分解能10000が要求される5つのイ ンパケットは非追い越しモードでは分離で ない。それぞれのイオンパケットの信号強 は0.1から1の範囲で生成した。また、イオン 光学系の特性として、観測信号のピーク形状 はガウス型、半値幅はおよそ10[ns]であり、観 測信号の周回による減衰はないものとみなし た。

 上述のような条件の下での非追い越しモ ドでの測定のシミュレーション結果として られる飛行時間スペクトルを図4に示す。図 4に明らかなように、この非追い越しモード 飛行時間スペクトルでは、15本のピーク(1-15 番号を付したピーク)が観測されている。こ の時点では、分析担当者には目的試料由来の 全てのイオンパケットが分離されているか否 かは不明である。次に、周回モードの測定に 移る。

 ここでは、質量分解能に余裕をみて、最 質量のイオンパケット#1を100周程度させた 定を行うこととした。100周ではなく100周程 とした理由は、前述のようにセグメントの ーバーラップが起きないように、出射スイ チ4のタイミングを調整することを想定して るためである。セグメントのオーバーラッ の判定には判定式(a)を用いた。非周期モー での初期時間幅はピーク全幅の1/10の時間幅 としている。

 上述のようなセグメントのオーバーラッ を回避する処理を行うことで決定された出 タイミングで出射スイッチ4を動作させた周 回モードの測定により得られる飛行時間スペ クトルを図5に示す。最小質量のイオンパケ トの周回数が100周であるという初期設定に し、セグメントオーバーラップ判定の結果 実際には104周での測定が行われている。こ は、100-103周回では判定式(a)を満たすような グメントが設定できなかったことを意味し いる。

 図5には、飛行時間スペクトルとともに、 算出された15個のセグメントSG1-SG15も示して る。セグメントの番号は、図4に示した非追 越しモードでの飛行時間スペクトル上での ーク番号に対応している。図5に示した周回 モードでの飛行時間スペクトルにおいては、 セグメントSG4、SG6以外のセグメントにはオー バーラップはなく、またオーバーラップが生 じているセグメントSG4、SG6においても、オー バーラップ範囲内にはピークが現れていない ことが確認できる。これはセグメントのオー バーラップ判定に(a)の判定式を用いた結果で あり、例えば(b)の判定式を用いた場合にはこ のセグメントSG4、SG6のオーバーラップも認め られない。

 図5の結果に対する各セグメントの質量及 び周回数等の詳細なデータを図6に示す。図6 おいて、rangeは各セグメントの周回モード おける飛行時間範囲、linearは非追い越しモ ドにおける飛行時間範囲、lapは周回数であ 。この結果に示されるように、各セグメン 内では質量massと周回数lapとは一意的に決定 れ、ピーク位置(飛行時間)から質量への換 も可能である。質量換算としては単純に、 グメント毎にピークに対し飛行時間と周回 とから質量を求めればよい。

 また、例えばセグメントSG8には5本のピー クが観測されている。これより、非追い越し モードにおいて1本のピークとして観測され ピークPK8は、実は5つの質量のイオンパケッ が混在していたものであることが分かる。 の周回モードの測定により、総数にして19 のピークが観測されている。この全てのピ クの質量換算を行ったときの計算結果と、 数により生成された元データの質量値とを 7に示す。結果として、生成された全てのイ ンパケットを同定することに成功している とが確認できる。また、注目すべきは、質 の計算値と元データの値とが一致している とである。これは、本発明に係る質量分析 法における質量同定が、質量精度に対する 理的な優位性を持つことを示している。し がって、本発明に係る質量分析方法を採用 た場合、質量精度は、イオン光学系の加工 組立精度、電源の安定性、或いはイオン光 特性によるピーク形状の変化、といった実 の摂動にのみ依存する。

 なお、上記説明における非追い越しモー は、周回軌道を半周のみする、いわば非周 モードであるが、実際には、非追い越しモ ドは、異なる質量のイオン同士の追いつき 追い越しが起こらないことが保証されるよ な、比較的少ない周回数だけイオンが周回 行する動作モードであってもよいことは明 かである。即ち、質量の小さな順にイオン 出器にイオンが到達することが保証されれ よい。例えばイオンの質量の上限と下限と 分かっていれば、非追い越しモードで採用 能な周回数を計算することができる。

 また、上記実施の形態は本発明の一例で り、本発明の趣旨の範囲で適宜変形、修正 追加を行っても本願請求の範囲に包含され ことは明らかである。