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Patent Searching and Data


Title:
PERMANENT MAGNET ROTARY ELECTRIC MACHINE AND PERMANENT MAGNET MOTOR DRIVE SYSTEM
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/117497
Kind Code:
A1
Abstract:
A permanent magnet rotary electric machine which can perform high output variable speed operation over a wide range from low speed to high speed while enhancing efficiency and reliability over a wide operation range. The permanent magnet rotary electric machine is characterized in that one magnetic pole (7) is formed by burying two kinds of permanent magnets (3, 4) of different profile or magnetic characteristics in a rotor core (2), permanent magnets arranged in the magnetic pole are composed of a permanent magnet (3) having a small product of coercive force and thickness in the magnetization direction, and a permanent magnet (4) having a large product of coercive force and thickness in the magnetization direction, total amount of interlinkage flux is varied by magnetizing the permanent magnet having a small product of coercive force and thickness in the magnetization direction irreversibly with a magnetic field formed by the current of the armature winding (21) in a short time, and a positive d-axis current can be fed at the time of larger torque.

Inventors:
SAKAI KAZUTO
YUUKI KAZUAKI
Application Number:
PCT/JP2007/073647
Publication Date:
October 02, 2008
Filing Date:
December 07, 2007
Export Citation:
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Assignee:
TOSHIBA KK (JP)
SAKAI KAZUTO
YUUKI KAZUAKI
International Classes:
H02K1/27; H02K21/14; H02P21/00; H02P21/02; H02P21/13; H02P21/22; H02P23/02; H02P23/16; H02P23/28; H02P27/04; H02P27/08
Foreign References:
JP2006280195A2006-10-12
JPS6087686A1985-05-17
JP2004128101A2004-04-22
JPH07336919A1995-12-22
JPH11136912A1999-05-21
US6800977B12004-10-05
JP2006280195A2006-10-12
Other References:
"Schachung des Erregerfelds bei einer dauermagneterregten Synchronmaschine", ETZ ARCHIV, vol. 7, no. 3, 1985, pages 79 - 84
TAKEDA YOJI ET AL.: "Design and Control of Interior Permanent Magnet Synchronous Motor", OHM-SHA PUBLISHING
WESCHTA: "Schachung des Erregerfel-ds bei einer dauermagneterregten Synchronmaschine", ETZ ARCHIV, vol. 7, no. 3, 1985, pages 79 - 84
Attorney, Agent or Firm:
MIYOSHI, Hidekazu et al. (2-8 Toranomon 1-chom, Minato-ku Tokyo 01, JP)
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Claims:
 永久磁石を用いた永久磁石電動機と、前記永久磁石電動機を駆動するインバータと、前記永久磁石の磁束を制御するための磁化電流を流す磁化手段とを備え、
 永久磁石電動機は、形状又は磁気特性の異なる2種類以上の永久磁石を用いて1つの磁極を形成し、複数の前記磁極で回転子を構成しており、
 前記磁化手段は、前記永久磁石電動機の電機子巻線のd軸電流を短時間流して発生させる磁界により各磁極で少なくとも1種類の永久磁石を磁化させて永久磁石の磁束量を不可逆的に変化させ、さらに電機子巻線電流の電流位相を変化させることにより磁化電流を流すことを特徴とする永久磁石電動機ドライブシステム。
 請求項1に記載の永久磁石電動機ドライブシステムにおいて、前記磁化手段は、前記永久磁石電動機の電機子巻線のd軸電流を短時間流して発生させる磁界により各磁極で少なくとも1種類の永久磁石を磁化させて永久磁石の磁束量を不可逆的に変化させ、トルク発生時に電機子巻線に正のd軸電流を流すことを特徴とする永久磁石電動機ドライブシステム。
 請求項1又は2に記載の永久磁石電動機ドライブシステムにおいて、前記磁化手段は、前記電機子巻線のd軸電流を短時間流して発生させる磁界により各磁極で少なくとも1種類の永久磁石を磁化させて永久磁石の極性を反転させることを特徴とする永久磁石電動機ドライブシステム。
 請求項1または2に記載の永久磁石電動機ドライブシステムにおいて、前記磁化手段は、前記電機子巻線のd軸電流を短時間流して発生させる磁界により各磁極で少なくとも1種類の永久磁石を磁化させて永久磁石の磁束量を不可逆的に変化させ、全ての永久磁石による電機子巻線の鎖交磁束量をほぼ0にすることを特徴とする永久磁石電動機ドライブシステム。
 請求項1または2に記載の永久磁石電動機ドライブシステムにおいて、前記磁化手段は、前記電機子巻線のd軸電流を短時間流して発生させる磁界により前記永久磁石の一部を磁化させるか、又は永久磁石の極性を反転させて、永久磁石の鎖交磁束量の増減を制御することを特徴とする永久磁石電動機ドライブシステム。
 請求項1または2に記載の永久磁石電動機ドライブシステムにおいて、前記磁化手段は、保磁力と磁化方向厚の積が他の永久磁石と比較して小さい永久磁石の磁束量を、前記電機子巻線のd軸電流を短時間流して発生させる磁界で不可逆的に変化させるか、又は前記永久磁石の極性を反転させることを特徴とする永久磁石電動機ドライブシステム。
 請求項1または2に記載の永久磁石電動機ドライブシステムにおいて、前記磁化手段は、電機子巻線のd軸電流を短時間流して発生させる磁界で永久磁石を磁化させて永久磁石の磁束量を不可逆的に変化させるか、前記磁界で永久磁石の極性を反転させ、さらにq軸電流によりトルクを制御することを特徴とする永久磁石電動機ドライブシステム。
 請求項1または2に記載の永久磁石電動機ドライブシステムにおいて、前記磁化手段は、前記永久磁石電動機の最大トルク近傍又は定格トルク近傍で運転する場合は、前記磁極の永久磁石の鎖交磁束が加え合わせになるように保磁力と磁化方向厚みの積が他よりも小さな永久磁石を磁化させ、トルクの小さな軽負荷時や中速回転域と高速回転域で運転する場合は、前記保磁力と磁化方向厚みの積が他よりも小さな永久磁石は、電流による磁界で磁化させて鎖交磁束を不可逆的に減少させるか又は前記磁界で前記永久磁石の極性を反転させることを特徴とする永久磁石電動機ドライブシステム。
 請求項1または2に記載の永久磁石電動機ドライブシステムにおいて、前記磁化手段は、電機子巻線のd軸電流を短時間流して発生させる磁界により各磁極で少なくとも1種類の永久磁石を磁化させて永久磁石の磁束量を不可逆的に変化させ、さらにトルクの小さな軽負荷時や中速回転域と高速回転域では、前述の永久磁石の磁束の不可逆変化動作に加えて電機子巻線に負のd軸電流を流すことを特徴とする永久磁石電動機ドライブシステム。
 形状又は磁気特性の異なる2種類以上の永久磁石を用いて1つの磁極を形成し、複数の前記磁極で回転子を構成し、該回転子の外周にエアギャップを介して電機子を配置した永久磁石式回転電機であって、
 前記磁極を構成する永久磁石は、保磁力と磁化方向厚みの積が他の永久磁石と異なる永久磁石を含んでいることを特徴とする永久磁石式回転電機。
 請求項10に記載の永久磁石式回転電機において、永久磁石の磁束が変化するか又は永久磁石の極性が反転する永久磁石は、他の永久磁石からバイアス的な磁界が作用する位置に配置されていることを特徴とする永久磁石式回転電機。
 請求項10又は11に記載の永久磁石式回転電機において、各磁極の中で保磁力と磁化方向厚みの積が小さな永久磁石について、前記永久磁石の保磁力と磁化方向厚みの積が、保磁力と磁化方向厚みの積が大きな永久磁石の無負荷時の動作点における磁界の強さと磁化方向厚の積にほぼ等しいか、又はそれ以上としたことを特徴とする永久磁石式回転電機。
 請求項10または11に記載の永久磁石式回転電機において、2種類の永久磁石の磁化方向が異なることを特徴とする永久磁石式回転電機。
 請求項10または11に記載の永久磁石式回転電機において、各磁極を構成する永久磁石の中で保磁力と磁化方向厚の積が小さな永久磁石において、前記永久磁石の磁化方向とq軸のなす角度が、他の保磁力と磁化方向厚の積が大きな永久磁石の磁化方向とq軸のなす角度よりも大きくなる位置に配置されていることを特徴とする永久磁石式回転電機。
 請求項10または11に記載の永久磁石式回転電機において、各磁極を構成する永久磁石の中で保磁力と磁化方向厚の積が大きな永久磁石は、永久磁石の磁化方向がほぼd軸方向か、又はほぼ半径方向になる位置に配置されることを特徴とする永久磁石式回転電機。
 請求項10または11に記載の永久磁石式回転電機において、磁極を構成する永久磁石の中で保磁力と磁化方向厚の積が小さな永久磁石は磁化方向がq軸とほぼ直角の方向になるか、又はほぼ周方向になる位置に配置されていることを特徴とする永久磁石式回転電機。
 請求項10または11に記載の永久磁石式回転電機において、磁極のエアギャップに対向する面に鉄心部を設け、保磁力と磁化方向厚の積が大きな永久磁石と、保磁力と磁化方向厚の積が小さな永久磁石とが、前記磁極の鉄心部を囲むように配置された回転子断面形状としたことを特徴とする永久磁石式回転電機。
 請求項10または11に記載の永久磁石式回転電機において、保磁力と磁化方向厚の積が大きな永久磁石に磁気回路で直列に配置された磁路の一部は永久磁石の磁束でほぼ磁気飽和するような断面積にしたことを特徴とする永久磁石式回転電機。
 請求項10または11に記載の永久磁石式回転電機において、保磁力と磁化方向厚の積が小さな永久磁石として、20℃において600kA/m以下の保磁力を有する永久磁石としたことを特徴とする永久磁石式回転電機。
 請求項10または11に記載の永久磁石式回転電機において、保磁力と磁化方向厚の積が小さな永久磁石はアルニコ磁石又はFrCrCo磁石とし、保磁力と磁化方向厚の積が大きな永久磁石は希土類永久磁石としたことを特徴とする永久磁石式回転電機。
 請求項10または11に記載の永久磁石式回転電機において、保磁力と磁化方向厚の積が小さな永久磁石は、Dy元素、Tb元素をほとんど含まない希土類永久磁石としたことを特徴とする永久磁石式回転電機。
 請求項10または11に記載の永久磁石式回転電機において、回転子鉄心は回転子の磁極中心軸となるd軸方向の磁気抵抗を小さくし、磁極間の中心軸になるq軸方向の磁気抵抗を大きくする形状にしたことを特徴とする永久磁石式回転電機。
 請求項10または11に記載の永久磁石式回転電機において、前記保磁力と磁化方向厚みの積が大きな永久磁石は、電機子巻線によるq軸磁束を妨げるように配置したことを特徴とする永久磁石式回転電機。
 請求項10または11に記載の永久磁石式回転電機において、q軸近傍のエアギャップ側回転子外径はd軸近傍のエアギャップ側回転子外径よりも短い形状としたことを特徴とする永久磁石式回転電機。
Description:
永久磁石式回転電機及び永久磁 電動機ドライブシステム

 本発明は、永久磁石式回転電機及び永久 石電動機ドライブシステムに関する。

 一般に、永久磁石式回転電機は大きく分 て2種類のタイプがある。回転子鉄心の外周 に永久磁石を貼り付けた表面磁石型永久磁石 式回転電機と、永久磁石を回転子鉄心の中に 埋め込んだ埋め込み型永久磁石式回転電機で ある。可変速駆動用電動機としては、埋め込 み型永久磁石式回転電機が適している。

 図20を用いて、従来の埋め込み型永久磁 式回転電機の構成を説明する。回転子1の回 子鉄心2の外周部に長方形の空洞を等配で極 数の数だけ設けている。図20は4極の回転子1 あり、4個の空洞を設けてそれぞれに永久磁 4を挿入している。永久磁石4は回転子1の半 方向、又は、永久磁石4の断面の長方形にお けるエアギャップ面に対向する辺(図20では長 辺)に直角方向に磁化される。永久磁石4は負 電流により減磁しないように保磁力の高いN dFeB永久磁石等が主に適用されている。回転 鉄心2は空洞を打抜いた電磁鋼板を積層して 成している。このような回転子1は、固定子 20の内部に収容されている。この固定子20は 電機子巻線21を固定子鉄心22の内側に形成さ たスロットに収容することで構成されてい 。そして固定子20の内周面と回転子1の外周 とは、エアギャップ23を介して対向させて る。

 このような永久磁石式回転電機の公知例 しては、「埋込磁石同期電動機の設計と制 」、武田洋次他、オーム社(非特許文献1)、 開平07-336919号公報(特許文献1)が知られてい 。また、可変速特性に優れて高出力の回転 機としては、永久磁石式リラクタンス型電 機がある。その公知例としては、特開平11-2 7913号公報(特許文献2)、特開平11-136912号公報( 許文献3)が知られている。さらに、アルニ 磁石の埋め込み永久磁石電動機でアルニコ 石の磁力を変化させる回転電機として、米 特許第6800977号公報(特許文献4)及びWeschta, “ Schachung des Erregerfelds bei einer dauermagneterregte n Synchronmaschine”, ETZ Archiv Vol.7,No3, pp79-84 ( 1985年)(非特許文献2)に記載されたものが知ら ている。

 非特許文献2の回転電機の場合、アルニコ 磁石を用いた永久磁石電動機で、アルニコ磁 石の磁束量を変化させるようにしているが、 この構成ではアルニコ磁石を減磁できるが、 磁化させて元の磁化状態に戻すことが困難で ある。特許文献4に記載された回転電機は、 束集中型の埋め込み永久磁石電動機であり 永久磁石にはアルニコ磁石を用いている。 の回転電機は、非特許文献2に記載された回 電機の変形例であり、非特許文献2の回転電 機と同様に磁界をかけてアルニコ磁石の磁束 量を変化させる。しかし、特許文献4の回転 機の場合、単なるアルニコ磁石の電動機な で十分な出力が得られない。また、トルク 生時に負荷電流によるアルニコ磁石の減磁 あり、負荷電流による減磁によりトルクが 下する問題がある。そこで、エネルギー積 小さなアルニコ磁石で十分なトルクを得よ とすると、アルニコ磁石の磁化方向厚みが くなる。永久磁石が厚くなると、そのアル コ磁石を磁化するために必要な電流は大幅 増加するので永久磁石の磁化が困難となり 永久磁石の磁束量を変化させることはでき くなる。

 永久磁石式回転電機では、永久磁石の鎖 磁束が常に一定で発生しているので、永久 石による誘導電圧は回転速度に比例して高 なる。そのため、低速から高速まで可変速 転する場合、高速回転では永久磁石による 導電圧(逆起電圧)が極めて高くなる。永久 石による誘導電圧がインバータの電子部品 印加されてその耐電圧以上になると、電子 品が絶縁破壊する。そのため、永久磁石の 束量が耐電圧以下になるように削減された 計を行うことが考えられるが、その場合に 永久磁石式回転電機の低速域での出力及び 率が低下する。

 低速から高速まで定出力に近い可変速運 を行う場合、永久磁石の鎖交磁束は一定で るので、高速回転域では回転電機の電圧が 源電圧上限に達して出力に必要な電流が流 なくなる。その結果、高速回転域では出力 大幅に低下し、さらには高速回転まで広範 に可変速運転できなくなる。

 最近では、可変速範囲を拡大する方法と て、非特許文献1に記載されているような弱 め磁束制御が適用され始めている。電機子巻 線の総鎖交磁束量はd軸電流による磁束と永 磁石による磁束とから成る。弱め磁束制御 は、負のd軸電流による磁束を発生させるこ によってこの負のd軸電流による磁束で全鎖 交磁束量を減少させる。また、弱め磁束制御 においても高保磁力の永久磁石は磁気特性(B- H特性)の動作点が可逆の範囲で変化するよう する。このため、永久磁石は弱め磁束制御 減磁界により不可逆的に減磁しないように 保磁力のNdFeB磁石を適用する。

 弱め磁束制御を適用した運転では、負のd 軸電流による磁束で鎖交磁束が減少するので 、鎖交磁束の減少分が電圧上限値に対する電 圧の余裕分を作る。そして、トルク成分とな る電流を増加できるので高速域での出力が増 加する。また、電圧余裕分だけ回転速度を上 昇させることができ、可変速運転の範囲が拡 大される。

 しかし、出力には寄与しない負のd軸電流 を常時流し続けるため銅損が増加して効率は 悪化する。さらに、負のd軸電流による減磁 は高調波磁束を生じ、高調波磁束等で生じ 電圧の増加は弱め磁束制御による電圧低減 限界を作る。これらより、埋め込み型永久 石式回転電機に弱め磁束制御を適用しても 底速度の3倍以上の可変速運転は困難である さらに、前述の高調波磁束により鉄損が増 し、中・高速域で大幅に効率が低下する問 がある。また、高調波磁束による電磁力で 動を発生することもある問題もある。

 ハイブリッド自動車用駆動電動機に埋め み型永久磁石電動機を適用した場合、エン ンのみで駆動される状態では電動機は連れ される。中・高速回転では電動機の永久磁 による誘導電圧が上昇するので、電源電圧 内に抑制するため、弱め磁束制御で負のd軸 電流を流し続ける。この状態では、電動機は 損失のみを発生するので総合運転効率が悪化 する。

 電車用駆動電動機に埋め込み型永久磁石 動機を適用した場合、電車は惰行運転する 態があり、上と同様に永久磁石による誘導 圧を電源電圧以下にするために弱め磁束制 で負のd軸電流を流し続ける。その場合、電 動機は損失のみを発生するので総合運転効率 が悪化する。

 このような問題点を解決する技術が、特開2 006-280195号公報(特許文献5)に記載されている この特許文献5には、高出力で低速から高速 での広範囲での可変速運転を可能とし、効 向上、信頼性向上を実現する永久磁石式回 電機に関連し、巻線を設けた固定子と、固 子巻線の電流で作る磁界により不可逆的に 束密度が変化する程度の低保磁力の永久磁 と低保磁力の2倍以上の保磁力を有する高保 磁力の永久磁石を配置した回転子から構成さ れ、電源電圧の最大電圧以上となる高速回転 域では低保磁力の永久磁石と高保磁力の永久 磁石による全鎖交磁束が減じるように電流に よる磁界で低保磁力の永久磁石を磁化させて 全鎖交磁束量を調整する技術が記載されてい る。

特開平07-336919号公報

特開平11-27913号公報

特開平11-136912号公報

米国特許6800977号公報

特開2006-280195号公報 「埋込磁石同期電動機の設計と制御」、 武田洋次他、オーム社 Weschta, “Schachung des Erregerfelds bei einer dauermagneterregten Synchronmaschine”, ETZ Archiv Vol .7,No3, pp79-84 (1985年)

 本発明は、従来の低保磁力永久磁石と高 磁力永久磁石とを磁極に配置した永久磁石 回転電機において、さらに、q軸電流を流し てトルクを発生させるときに正のd軸電流を すことでいっそう広範囲の可変速運転と高 力が可能な永久磁石電動機ドライブシステ を提供することを目的とし、併せて、当該 久磁石電動機ドライブシステムに適用する に最適な構造の永久磁石式回転電機を提供 ることを目的とする。

 本発明の1つの特徴は、永久磁石を用いた 永久磁石電動機と、前記永久磁石電動機を駆 動するインバータと、前記永久磁石の磁束を 制御するための磁化電流を流す磁化手段とを 備え、永久磁石電動機は、形状又は磁気特性 の異なる2種類以上の永久磁石を用いて1つの 極を形成し、複数の前記磁極で回転子を構 しており、前記磁化手段は、前記永久磁石 動機の電機子巻線のd軸電流を短時間流して 発生させる磁界により各磁極で少なくとも1 類の永久磁石を磁化させて永久磁石の磁束 を不可逆的に変化させ、さらに電機子巻線 流の電流位相を変化させることにより磁化 流を流す永久磁石電動機ドライブシステム ある。

 上記発明の永久磁石電動機ドライブシス ムにおいて、前記磁化手段は、前記永久磁 電動機の電機子巻線のd軸電流を短時間流し て発生させる磁界により各磁極で少なくとも 1種類の永久磁石を磁化させて永久磁石の磁 量を不可逆的に変化させ、トルク発生時に 機子巻線に正のd軸電流を流すものとするこ ができる。

 本発明の別の特徴は、形状又は磁気特性 異なる2種類以上の永久磁石を用いて1つの 極を形成し、複数の前記磁極で回転子を構 し、該回転子の外周にエアギャップを介し 電機子を配置した永久磁石式回転電機であ て、前記磁極を構成する永久磁石は、保磁 と磁化方向厚みの積が他の永久磁石と異な 永久磁石を含んでいる永久磁石式回転電機 ある。

 本発明の永久磁石電動機ドライブシステ によれば、低速から高速までの広範囲で可 速運転が可能であり、そのうえ、低速回転 の高トルク化と中・高速回転域での高出力 、効率の向上、信頼性の向上、製造性の向 、材料の削減、希少材料の削減が図れる。

 また、本発明の永久磁石式回転電機によ ば、上記永久磁石電動機ドライブシステム 最適な永久磁石式回転電機を提供すること できる。

図1は、本発明の第1の実施の形態の永 磁石式回転電機の断面図。 図2は、上記実施の形態において、回転 子の永久磁石に採用した低保磁力の永久磁石 と高保磁力の永久磁石の磁気特性のグラフ。 図3は、上記実施の形態の回転子におい て、短時間通電のd軸電流で永久磁石を不可 的に磁化して増磁状態にしたときの永久磁 の磁束(鎖交磁束が最大)の説明図。 図4は、上記実施の形態の回転子におい て、短時間通電のd軸電流による減磁磁界の 束の説明図。 図5は、上記実施の形態の回転子におい て、短時間通電のd軸電流による減磁磁界が 用した後(d軸電流による磁界が消滅後)の永 磁石の磁束(鎖交磁束が最小)の説明図。 図6は、上記実施の形態の回転子におい て、正のd軸電流による磁界と負荷電流(q軸電 流)による磁界の説明図。 図7は、本発明の第1の実施の形態の永 磁石電動機ドライブシステムのブロック図 図8は、可変磁束永久磁石電動機の簡易 モデル図。 図9は、上記実施の形態の永久磁石式回 転電機のBH特性図。 図10は、上記実施の形態の永久磁石電 機ドライブシステムにおける磁化要求生成 の内部構成を示すブロック図。 図11は、上記実施の形態の永久磁石電 機ドライブシステムにおける可変磁束制御 の内部構成を示すブロック図。 図12は、上記実施の形態の永久磁石電 機ドライブシステムによる電動機制御のタ ミングチャート。 図13は、本発明の第3の実施の形態の永 久磁石式回転電機における回転子の断面と磁 束の説明図。 図14は、本発明の第4の実施の形態の永 久磁石式回転電機において、回転子に採用し た保磁力と磁化方向厚みの積が小となる永久 磁石に適用する低保磁力のNdFeB磁石と、一般 なNdFeB磁石との磁気特性図。 図15は、本発明の第5の実施の形態の永 久磁石式回転電機における回転子の断面とq 磁束の説明図。 図16は、本発明の第6の実施の形態にお ける永久磁石式回転電機における回転子の断 面図。 図17は、本発明の第7の実施の形態の永 久磁石電動機ドライブシステムのブロック図 。 図18は、上記実施の形態の永久磁石電 機ドライブシステムにおける可変磁束制御 の内部構成を示すブロック図。 図19は、上記実施の形態の永久磁石電 機ドライブシステムによる電動機制御のタ ミングチャート。 図20は、従来の埋め込み型永久磁石電 機の断面図。

 以下、本発明の実施の形態を図に基づい 詳説する。尚、以下の各実施の形態では、4 極の永久磁石式回転電機を例示しているが、 他の極数でも同様に適用できる。

 (第1の実施の形態)
 [永久磁石式回転電機]図1~図6を用いて、本 明の第1の実施の形態の永久磁石式回転電機 ついて説明する。図1は本実施の形態の永久 磁石式回転電機の構造を示していて、固定子 20の内部に回転子1をエアギャップ23を介して 向するように収容した構造である。尚、固 子20は、従来例と同様であり、図20と同様の ものである。

 図1に示すように、本実施の形態の永久磁 石式回転電機における回転子1は、回転子鉄 2、保磁力と磁化方向厚みの積が小となる永 磁石3、保磁力と磁化方向厚の積が大となる 永久磁石4から構成される。回転子鉄心2は珪 鋼板を積層して構成し、保磁力と磁化方向 みの積が小となる永久磁石3はアルニコ磁石 とし、回転子鉄心2の径方向断面に4個埋め込 れている。この保磁力と磁化方向厚みの積 小となる永久磁石3にはFeCrCo磁石を適用して もよい。保磁力と磁化方向厚の積が大となる 永久磁石4は、NdFeB磁石とし、回転子鉄心2の 方向断面に4個埋め込まれている。

 アルニコ磁石で成る永久磁石3は回転子1 ほぼ径方向に沿って配置され、その断面は 形状である。また、永久磁石3の磁化方向は ぼ周方向であり、磁化方向の平均厚みは(仕 様によるが)本実施の形態では6mmである。NdFeB 磁石で成る永久磁石4はほぼ周方向に配置さ 、その断面は長方形状である。また、永久 石4の磁化方向はほぼ径方向であり、磁化方 の厚みは本実施の形態では2mmである。

 図2に本実施の形態に適用する永久磁石3 のアルニコ磁石(AlNiCo)、FeCrCo磁石、永久磁石 4用のNdFeB磁石の磁気特性を示す。アルニコ磁 石の保磁力(磁束密度が0になる磁界)は60~120kA/ mであり、NdFeB磁石の950kA/mの1/15~1/8になる。ま た、FeCrCo磁石の保磁力は約60kA/mであり、NdFeB 石の950kA/mの1/15になる。アルニコ磁石とFeCrC o磁石は、NdFeB磁石と比較してかなり低保磁力 である。

 本実施の形態の回転電機における永久磁 の磁化について述べる。d軸磁気回路上では 、NdFeB永久磁石4に関しては、d軸電流による 束が2個のNdFeB永久磁石4(隣合う互いに異極の 2個のNdFeB永久磁石4)を通るので、d軸電流によ る磁界は1極当たり1個のNdFeB永久磁石4に作用 る。一方、アルニコ永久磁石3に関しては、 d軸電流による磁束は磁極間にある1個のアル コ永久磁石3を通るので、d軸電流による磁 は1極当たりNdFeB永久磁石4の1/2個分に作用す 。すなわち1極分の磁気回路上で特性を評価 するにはアルニコ永久磁石3の磁石の厚みを1/ 2として評価すればよい。

 本実施の形態では、保磁力と磁化方向厚み 積が小となる永久磁石3には、保磁力が120kA/ mのアルニコ磁石を適用している。本実施の 態では、1極当りのアルニコ磁石の保磁力と 化方向厚みの積は120kA/m×(6×10 -3 /2)m=360Aとなる。保磁力と磁化方向厚の積が大 となる永久磁石4には、保磁力が1000kA/mのNdFeB 石を適用している。本実施の形態では、1極 当りのNdFeB磁石の保磁力と磁化方向厚みの積 1000kA/m×(2×10 -3 )m=2000Aとなる。本実施の形態においては、NdFe B永久磁石4の保磁力と磁化方向厚みの積は、 ルニコ永久磁石3の5.6倍も大となるようにし てある。

 図1に示すように、低保磁力のアルニコ永 久磁石3は回転子鉄心2の中に埋め込まれ、ア ニコ永久磁石3の両端部には空洞5が設けら る。アルニコ永久磁石3は磁極間の中心軸に るq軸と一致する回転子1の半径方向に沿っ 配置される。また、アルニコ永久磁石3の磁 容易方向はほぼ周方向であり、半径に対し 直角方向(図1ではアルニコ永久磁石3の台形 面を2等分し回転中心を通る線に直角)方向 する。

 高保磁力のNdFeB永久磁石4も回転子鉄心2内 に埋め込まれ、NdFeB永久磁石4の両端部には空 洞5が設けられている。NdFeB永久磁石4は、2個 アルニコ永久磁石3により回転子1の内周側 挟まれるように回転子1のほぼ周方向に配置 れている。NdFeB永久磁石4の磁化容易方向は 転子1の周方向に対してほぼ直角(図1ではNdFe B永久磁石4の長方形断面の長辺に対して直角) 方向である。

 そして、回転子鉄心2の磁極鉄心部7は、2 のアルニコ永久磁石3と1個のNdFeB永久磁石4 で取り囲まれるようにして形成される。図1 図3~図6に示すように、回転子鉄心2の磁極鉄 心部7の中心軸方向がd軸、磁極間の中心軸方 がq軸となる。したがって、アルニコ永久磁 石3は磁極間の中心軸となるq軸方向に配置さ 、アルニコ永久磁石3の磁化方向はq軸に対 て90°、又は90°方向となる。隣合うアルニコ 永久磁石3において、互いに向かい合う磁極 は同極にしてある。

 また、NdFeB永久磁石4は磁極鉄心部7の中心 軸となるd軸に対して直角方向に配置され、 の磁化方向はd軸に対して0°、又は180°の方 となる。隣合うNdFeB永久磁石4において、互 に磁極の向きは逆極性にしてある。

 [永久磁石電動機ドライブシステム]
 図7は、本発明の第1の実施の形態の永久磁 式回転電機を電動機として回転駆動するた の永久磁石電動機ドライブシステム100の制 ブロック図である。同図を説明する前に、 久磁石同期電動機(PM電動機)としての可変磁 電動機について説明する。可変磁束電動機1 01のイメージを図8に示す。ステータ側は従来 の電動機と同様である。ロータ151側には永久 磁石として、磁性体の磁束密度が固定の固定 磁石FMGと、磁性体の磁束密度が可変の可変磁 石VMGとがある。従来のPM電動機は、前者の固 磁石FMGのみであるのに対して、本可変磁束 動機1の特徴は、可変磁石VMGが備わっている ことにある。

 ここで固定磁石や可変磁石について、説 を加える。永久磁石とは、外部から電流な を流さない状態において磁化した状態を維 するものであって、いかなる条件において その磁束密度が厳密に変化しないというわ ではない。従来のPM電動機であっても、イ バータなどにより過大な電流を流すことで 磁したり、あるいは逆に着磁したりする。 って、永久磁石とは、その磁束量が一定不 なものではなく、通常の定格運転中に近い 態ではインバータ等から供給される電流に って磁束密度が概ね変化しないもののこと 指す。一方、前述の磁束密度が可変である 久磁石、つまり、可変磁石とは、上記のよ な運転条件においてもインバータ等で流し る電流によって磁束密度が変化するものを す。

 このような可変磁石VMGは、磁性体の材質 構造に依存してある程度の範囲で設計が可 である。例えば、最近のPM電動機は、残留 束密度Brの高いネオジム(NdFeB)磁石を用いる とが多い。この磁石の場合、残留磁束密度Br が1.2T程度と高いため、大きなトルクを小さ 装置サイズにて出力可能であり、電動機の 出力小型化が求められるハイブリッド車(HEV) や電車には好適である。従来のPM電動機の場 、通常の電流によって減磁しないことが要 であるが、このネオジム磁石(NdFeB)は約1000kA /mの非常に高い保磁力Hcを有しているので、PM 電動機用に最適な磁性体である。PM電動機用 は、残留磁束密度が大きく保磁力の大きい 石が選定されるためである。

 ここで、残留磁束密度が高く、保磁力Hc 小さいアルニコAlNiCo(Hc=60~120kA/m)やFeCrCo磁石(H c=約60kA/m)といった磁性体を可変磁石とする。 通常の電流量(インバータによって従来のPM電 動機を駆動する際に流す程度の電流量という 意味)によって、ネオジム磁石の磁束密度(磁 量)はほぼ一定であり、アルニコAlNiCo磁石な どの可変磁石VMGの磁束密度(磁束量)は可変と る。厳密に言えば、固定磁石FMGとしている オジム磁石も可逆領域で利用しているため 微小な範囲で磁束密度が変動するが、イン ータ電流がなくなれば当初の値に戻る。他 、可変磁石VMGは不可逆領域まで利用するた 、インバータ電流がなくなっても当初の値 ならない。図8において、可変磁石VMGである アルニコ磁石の磁束量も、d軸方向の量が変 するだけで、Q軸方向はほぼ0である。

 図9は、固定磁石FMGと可変磁石VMGのBH特性( 磁束密度-磁化特性)を例示している。また、 10は、図9の第2象限のみを定量的に正しい関 係にて示したものである。ネオジム磁石とア ルニコ磁石の場合、それらの残留磁束密度Br1 ,Br2には有意差はないが、保磁力Hc1,Hc2につい は、ネオジム磁石(NdFeB)のHc2に対し、アルニ コ磁石(AlNiCo)のHc1は1/15~1/8、FeCrCo磁石のHc1は1/ 15になる。

 従来の永久磁石電動機ドライブシステム おいて、インバータの出力電流による磁化 域は、ネオジム磁石(NdFeB)の保磁力より十分 に小さく、その磁化特性の可逆範囲で利用さ れている。しかしながら、可変磁石は、保磁 力が上述のように小さいため、インバータの 出力電流の範囲において、不可逆領域(電流 0にしても、電流印加前の磁束密度Bに戻らな い)での利用が可能で、磁束密度(磁束量)を可 変にすることができる。

 可変磁束電動機1の動特性の等価簡易モデル を、(1)式に示す。同モデルは、d軸を磁石磁 方向、Q軸をd軸に直行する方向として与えた dq軸回転座標系上のモデルである。

 ここに、R1は巻線抵抗、Ldはd軸インダク ンス、LqはQ軸インダクタンス、φfixは固定磁 石の磁束量、φvarは可変磁石の磁束量、ω1は ンバータ周波数である。

 図7は、第1の実施の形態の永久磁石電動 ドライブシステム100の主回路100A及び制御回 100Bを示している。主回路100Aは、直流電源10 3、直流電力を交流電力に変換するインバー 104、このインバータ104の交流電力にて駆動 れる可変磁束永久磁石電動機101にて構成さ ている。そして、主回路100Aには、電動機電 を検出するための交流電流検出器102、電動 速度を検出するための速度検出器118が設置 れている。

 次に、制御回路100Bについて説明する。こ こでの入力は、運転指令Run*とトルク指令Tm* ある。運転指令生成部116は、運転指令Run*と 護判定部117で判断された保護信号PROTとを入 力とし、運転状態フラグRunを生成出力する。 基本的には、運転指令が入った場合(Run*=1)に 運転状態フラグRunを運転状態(Run=1)にし、運 転指令が停止を指示した場合(Run*=0)には、運 状態フラグRunを停止状態(Run=0)にする。さら に、保護検知の場合(PROT=1)には、運転指令Run* =1であっても、運転状態は停止状態Run=0にす 。

 ゲート指令生成部115は、運転状態フラグR unを入力し、インバータ104に内在するスイッ ング素子へのゲート指令Gstを生成出力する このゲート指令生成部115では、運転状態フ グRunが停止(Run=0)から運転(Run=1)に変わる場 、即時にゲートスタート(Gst=1)とし、運転状 フラグRunが運転(Run=1)から停止(Run=0)に変わ 場合、所定時間が経過した後に、ゲートオ (Gst=0)にするように作用する。

 磁束指令演算部112は、運転状態フラグRunと ンバータ周波数ω1、すなわち、ロータ回転 波数ωRを入力として、磁束指令φ*を、例え 次の(2)式のように生成して出力する。すな ち、運転停止(Run=0)の場合には、磁束指令φ* を最小φminにして、運転状態(Run=1)であって、 かつ、回転周波数ωRが所定値より低い場合に は、磁束指令φ*を最大φmaxとし、また、速度 所定値より高い場合、磁束指令φ*を最小φmi nとする。

 ここに、φminは可変磁束電動機101として り得る最小磁束量(>0)、φmaxは可変磁束電 機101として取り得る最大磁束量、ωAは所定 回転周波数である。尚、磁束量のφmin,φmaxの 設定については、後で可変磁束制御部13のと ろで説明する。

 電流基準演算部111では、トルク指令Tm*と磁 指令φ*とを入力として、d軸電流基準IdRとQ 電流基準IqRを次式(3),(4)のように演算する。

 同(3),(4)式は、電動機のリラクタンストル クを用いないことを想定し、電動機極数も0 した演算式である。d軸インダクタンスLdとQ インダクタンスLqの差異δLがある突極形電 機であっても、差異のない非突極形の電動 であってもよい。

 しかしながら、効率の最適化や所定電流で 最大出力を考える場合、リラクタンストル を考慮することが有効である。この場合、 えば、次式のように演算する。

 ここに、Kはd軸電流とQ軸電流との比率で り、前述の効率最適化や最大出力等、用途 よって変わる値である。最適化を図るため は関数形をとり、その引数としてトルク、 度等を用いる。また、簡易な近似やテーブ 化して用いることもできる。また、(5)式の 束指令φ*は、後述する磁束推定値φhを用い も、動作は可能である。

 磁化要求生成部129の詳細な構成を図10に す。この図10のブロックは、制御マイコンに よって所定時間ごとに制御がなされる。磁束 指令φ*は、前回値の保持部131に入力され、そ の値が保持される。前回値の保持部131の出力 は、前回に記憶した磁束指令φ*であり、今回 の磁束指令値φ*と共に、変化判定部130に入力 される。変化判定部130では、入力2つの変化 あった場合には1を、変化がない場合には0を 出力する。すなわち、磁束指令φ*が変化した 場合にのみ1が立つ。上記同様な回路を、磁 指令φ*に代わり、運転状態フラグRunについ も有し、前回値の保持部133に入力され、そ 値が保持される。前回値の保持部133の出力 、前回に記憶した運転状態フラグRunであり 今回の運転状態フラグRunと共に変化判定部13 4に入力される。2つの変化判定部130,134の出力 が論理和演算部(OR)132に入力され、それらの 理和が磁化要求フラグFCreqとして出力される 。

 磁化要求生成部129の出力である磁化要求 ラグFCreqは、磁束指令φ*が変化した場合、 るいは、運転状態フラグRunが変化した場合 磁化要求(FCreq=1)となり、それ以外では要求 し(FCreq=0)となる。尚、運転状態フラグRunが 化する状態とは、インバータが始動すると 、停止するとき、保護で停止するときなど ある。また、ここでは磁束指令φ*を用いて るが、後述する可変磁束制御部113の磁化電 指令Im*(磁化電流テーブル127の出力)の変化で 磁化要求FCreqを生成してもよい。

 可変磁束制御部113の詳細な構成を図11に す。可変磁束制御部113は、磁束指令演算部11 2の出力である磁束指令φ*を入力し、d軸電流 準IdRを補正するd軸磁化電流差分量δIdm*を出 力する。この磁化電流差分量δIdm*の生成は、 以下の演算処理による。

 可変磁石VMGを磁化するためには、図9の可 変磁石のBH特性に則り、所定の磁化電流指令I m*を求めればよい。特に、磁化電流指令Im*の きさは、図9中のH1sat以上、すなわち、可変 石の磁化飽和領域となるように設定する。

 磁化飽和領域まで磁化電流を流すため、磁 指令演算部112で設定すべき磁束量φminやφmax は、可変磁石の磁束(磁束密度)がプラスない はマイナスの最大(飽和)値に固定磁石分を 算した値として設定する。可変磁石VMGの磁 量の正の最大値をφvarmax(負の最大値の絶対 は正の最大値と等しいとする)、固定磁石FMG 磁束量をφfixとすれば、次式である。

 磁束指令φ*を入力とし、対応する磁化電 を記憶した磁化電流テーブル127によって、 束指令φ*を得るための磁化電流指令Im*を出 する。

 基本的に、磁石の磁化方向をd軸としている ので、磁化電流指令Im*は、d軸電流指令Id*に えるようにする。本実施の形態では、電流 準演算部111からの出力であるd軸電流基準IdR d軸磁化電流指令差分δIdm*で補正し、d軸電 指令Id*とする構成にしているので、減算器12 6によってd軸磁化電流指令δIdm*を次式によっ 求める。

 尚、磁束切り替えの際には、d軸電流指令 Id*に磁化電流Im*を直接与えるような構成とす ることも可能である。

 一方、磁化要求フラグFCreqは、磁束を切 替えたい要求の際に、少なくとも一瞬切り え要求(FCreq=1)が立つ。磁束を確実に可変と るために、磁化要求フラグFCreqを最小オンパ ルス器128へと入力する。この出力である磁化 完了フラグ(=1:磁化中、=0:磁化完了)は、一旦 ン(=1)が入力された場合、所定の時間の間は オフ(=0)にならない機能を有する。所定時間 越えて入力がオン(=1)である場合には、それ オフとなると同時に出力もオフとなる。

 切り替え器123には、磁化完了フラグが入 され、磁化中(磁化完了フラグ=1)の場合には 減算器126の出力を、磁化完了(磁化完了フラ =0)の場合には0を出力する。

 電圧指令演算部110は、以上により生成さ たdq軸電流指令Id*,Iq*に基づき、当該指令に 致する電流が流れるように電流制御器を含 dq軸電圧指令Vd*,Vq*を生成する。

 そして電圧指令演算部110のdq軸電圧指令Vd *,Vq*を、座標変換部105にて3相電圧指令Vu*,Vv*,V w*に変換し、この3相電圧指令によってPWM回路 106がPWMにてゲート信号を生成し、インバータ 104をPWM制御する。尚、座標変換部107は電流検 出器102の交流検出電流Iu,Iwを2軸dq軸変換してd q軸電流検出値Id,Iqに変換して電圧指令演算部 110に入力する。また、擬似微分器108は速度検 出器118の信号からインバータ周波数ω1を求め る。尚、電圧指令演算部110、座標変換部105,10 7、PWM回路106には、従来同様の公知技術が採 されている。

 図12には、各信号の動作のタイミングチ ートの一例が示してある。ここでは保護信 は立っていない状況(PROT=0)だが、運転状態フ ラグRunの変化及び磁束指令φ*の変化にて磁化 要求フラグが立ち、それを所定時間幅確保す る磁化完了フラグが立ち、この磁化完了フラ グの期間だけ、磁化電流指令Im*が値を持つ。

 次に、このように構成された本実施の形態 永久磁石式回転電機、そしてそのドライブ ステムの作用を説明する。1極当りの磁化に 要する起磁力は磁化に要する磁界と1極当り 永久磁石の厚みの積で概算する。アルニコ 石の永久磁石3は250kA/mの磁界で100%近くまで 磁できる。着磁磁界と1極当りの磁石の厚み 積は、250kA/m×(6×10 -3 /2)m=750Aとなる。

 一方、NdFeB磁石の永久磁石4は1500~2500kA/mの磁 界で100%近くまで着磁できる。着磁磁界と1極 りの磁石の厚みの積は、1500~2500kA/m×(2×10 -3 )m=3000~5000Aとなる。つまり、アルニコ永久磁 3はNdFeB永久磁石4の約1/4~1/6の磁界で着磁でき る。また、アルニコ永久磁石3を着磁する程 の磁界であれば、NdFeB永久磁石4は可逆減磁 態であり、着磁後でもNdFeB永久磁石4は着磁 の状態の磁束を維持できる。

 本実施の形態では、固定子20の電機子巻 21に通電時間が極短時間(0.1ms~10ms程度)となる パルス的な電流を流して磁界を形成し、アル ニコ永久磁石3に磁界を作用させる。但し、 転電機の巻線インダクタンスの大きさや電 波形により通電時間は変わる。永久磁石を 化するための磁界を形成するパルス電流は 定子20の電機子巻線21のd軸電流成分とする。 着磁磁界を250kA/mとすると、理想的にはアル コ永久磁石3には十分な着磁磁界が作用し、N dFeB永久磁石4には着磁による不可逆減磁はな 。

 図3はアルニコ磁石とNdFeB磁石の磁束が磁 及びエアギャップ面で加え合せになるよう 着磁磁界を作用させたときの各永久磁石の 束を示している。図3では永久磁石3,4による 鎖交磁束は増加して増磁状態となる。着磁磁 界は固定子20の電機子巻線21に極短時間のパ ス的な電流を流して形成する。このとき通 する電流はd軸電流成分である。パルス電流 すぐに0になり、着磁磁界はなくなるが、ア ルニコ永久磁石3は不可逆的に変化して着磁 向に磁束B3を発生する。B4はNdFeB永久磁石4に る磁束である。尚、図3、図4、図5での磁束 布は1極のみを示している。

 図4では鎖交磁束を減少させるときの作用 を示す。電機子巻線21に負のd軸電流を通電し て形成する磁界Bdは図3と逆方向の磁束を発生 する。電機子巻線21の負のd軸電流により作ら れる磁界Bdは、回転子1の磁極中心からアルニ コ永久磁石3とNdFeB永久磁石4とに対して磁化 向とほぼ逆方向に作用している。各永久磁 3,4には図3の磁化方向とは逆方向の磁界B3i,B4i が作用する。アルニコ永久磁石3は保磁力と 化方向厚の積を小さくしているため、この 磁界によりアルニコ永久磁石3の磁束は不可 的に減少する。一方、NdFeB永久磁石4は保磁 と磁化方向厚の積が大きいため逆磁界を受 ても磁気特性は可逆範囲であり、負のd軸電 流による着磁磁界Bdが消えた後の磁化状態に 変化がなく磁束量も変わらない。したがっ 、アルニコ永久磁石3のみが減磁することに なり、鎖交磁束量を減少できる。

 本実施の形態ではさらに大きな電流を通 させて強い逆磁界によりアルニコ永久磁石3 の極性を反転させる。アルニコ永久磁石3の 性を反転させることにより、鎖交磁束を大 に減少でき、特に鎖交磁束を0にできる特徴 ある。

 一般にアルニコ磁石の着磁磁界と1極当り の永久磁石の厚みの積はNdFeB磁石の約1/4~1/6な ので、アルニコ永久磁石3のみ磁化できる磁 を作用させる。負のd軸電流による磁化(着磁 )された後の状態を図5に示す。NdFeB永久磁石4 磁束B4と逆方向に発生するアルニコ永久磁 3の磁束B3は相殺されて、各永久磁石3,4の磁 量B3,B4が同じ場合ではエアギャップ23の磁束 ほぼ0にできる。このとき、NdFeB永久磁石4の 磁束B4は相殺されるとともにアルニコ永久磁 3との磁気回路を構成できるので多くの磁束 は回転子1内に分布する。このような作用に り、エアギャップ磁束密度の磁束分布は一 に0に分布させることができる。

 前述の鎖交磁束が0の状態から鎖交磁束を 増加する場合は、鎖交磁束0では逆の極性と っているアルニコ永久磁石3において、d軸電 流による磁界によりアルニコ永久磁石3の磁 B3を減少させる。このときアルニコ永久磁石 3は逆極性になっているので、アルニコ永久 石3に作用させる磁界は図3に示すアルニコ永 久磁石3の元の磁化方向と同方向となる。す わち、図4に示すd軸電流による磁界Bdとは逆 向になる。さらに鎖交磁束を増加させて元 最大鎖交磁束の状態に戻すときには、アル コ永久磁石3は再度極性を反転して(元の極 に戻って)図3の状態に戻る。したがって、本 実施の形態の永久磁石式回転電機の場合、ア ルニコ永久磁石3は磁気特性上(磁束密度と磁 に関する特性であるB-H曲線)を第1象限から 4象限までの全範囲で動作させることができ ことになる。

 これに対して、従来の永久磁石式回転電 における永久磁石は第2象限のみで動作させ ている。また、従来の永久磁石式回転電機は 、鎖交磁束を低下させるために電機子巻線21 負のd軸電流による磁束を発生させて回転子 1の永久磁石4の磁束を相殺させている。しか 、埋め込み磁石電動機では基本波鎖交磁束 50%程度までしか低減できなく、また高調波 束はかなり増加し、高調波電圧と高調波鉄 が生じて問題となる。したがって、鎖交磁 を0にすることは極めて困難であり、仮に基 本波を0にできても高調波磁束は逆にかなり きな値になる。これに対して、本実施の形 の永久磁石式回転電機では、回転子1におい 永久磁石3,4のみの磁束で一様に減少できる で高調波磁束は少なく、損失の増加はない

 次に、アルニコ永久磁石3とNdFeB永久磁石4の 相互的な磁気の影響について述べる。図5の 磁状態ではNdFeB永久磁石4の磁界はアルニコ 久磁石3にバイアス的な磁界として作用し、 のd軸電流による磁界とNdFeB永久磁石4による 磁界がアルニコ永久磁石3に作用して磁化し くなる。また、アルニコ永久磁石3の保磁力 磁化方向厚の積がNdFeB永久磁石4の無負荷時 動作点における磁界の強さと磁化方向厚の に等しいか、それ以上にすることにより鎖 磁束の増磁状態においてNdFeB永久磁石4の磁 に打ち勝ち、磁束量を発生する
 以上より、本実施の形態の回転電機では、d 軸電流によりアルニコ永久磁石3の鎖交磁束 を最大から0まで大きく変化させることがで 、また磁化方向も正逆方向の両方向にでき 。NdFeB永久磁石4の鎖交磁束B4を正方向とす と、アルニコ永久磁石3の鎖交磁束B3を正方 の最大値から0、さらには逆方向の最大値ま 広範囲に調整することができる。

 したがって、本実施の形態の永久磁石式 転電機では、アルニコ永久磁石3をd軸電流 磁化させることによりアルニコ永久磁石3とN dFeB永久磁石4とを合わせた全鎖交磁束量を広 囲に調整することができる。低速域では、 ルニコ永久磁石3はNdFeB永久磁石4の鎖交磁束 と同方向(前述の図3で示した増磁状態)で最大 値になるようにd軸電流で磁化する。このと 、永久磁石によるトルクは最大になるので 回転電機のトルク及び出力は最大にするこ ができる。また、中・高速域では、図4のd軸 電流による磁界Bdでアルニコ永久磁石3の磁束 量を不可逆的に低下させ、全鎖交磁束量を下 げる。これにより回転電機の電圧は下がるの で、電源電圧の上限値に対して余裕ができ、 回転速度(周波数)をさらに高くすることが可 となる。最高速度を著しく高くするとき(可 変速範囲をさらに拡大、例えば基底速度の3 以上の可変速運転の範囲)はアルニコ永久磁 3はNdFeB永久磁石4の鎖交磁束と逆方向になる ように磁化させる(アルニコ永久磁石3の磁束B 3の向きは図5の状態で磁化は最大とする)。永 久磁石3,4の全鎖交磁束は、NdFeB永久磁石4とア ルニコ永久磁石3との鎖交磁束の差となり、 も小さくできる。回転電機の電圧も最小と るので回転速度(周波数)を最高値まで上げる ことができる。

 これらにより、本実施の形態の永久磁石 回転電機及びそれを回転駆動する永久磁石 動機ドライブシステムによれば、高出力で 速回転から高速回転まで広範囲の可変速運 が実現できる。また、本実施の形態の永久 石式回転電機によれば、鎖交磁束を変化さ るときの着磁電流を極短時間だけ流すので 失を著しく低減でき、広い運転範囲で高効 となる。

 次に、本実施の形態の永久磁石式回転電 及び永久磁石電動機ドライブシステムにお て、トルク発生時の負荷電流(q軸電流)によ 永久磁石3,4の減磁について述べる。本実施 形態の永久磁石式回転電機がトルクを発生 るときは、固定子20の電機子巻線21にq軸電 を流すことにより、q軸電流と永久磁石3,4の 束との磁気作用でトルクを発生させる。こ ときq軸電流による磁界が発生する。そこで 、本実施の形態の永久磁石式回転電機では、 アルニコ永久磁石3は、その磁化方向がq軸方 と直角方向となるようにq軸近傍に配置する 。これよりアルニコ永久磁石3の磁化方向とq 電流による磁界とが理想的には直交する方 になり、q軸電流による磁界の影響を大きく 受けることがなくなる。

 しかし、最大トルク状態や小型・高出力 のため電機子巻線のアンペアターンを大き した回転電機では、負荷電流であるq軸電流 で生じる磁界はかなり大きくなる。保磁力と 厚みの積が小さな永久磁石を回転子に設けた 場合、この過大なq軸電流による磁界はq軸に る永久磁石を不可逆減磁させる。すなわち q軸電流でトルク発生時に永久磁石が減磁し てトルクが低下する。

 そこで、本実施の形態の永久磁石式回転 機では、大きなトルクを発生するときは、 のd軸電流をq軸電流に重畳させて流す。図6 トルク発生時に正のd軸電流を重畳させたと きの磁界の作用を模式的に示す。図6におい 、B3iは正のd軸電流による磁界を示し、B5iは 荷電流(q軸電流)により磁界を示し、B6は保 力と磁化方向厚みの積が小となる永久磁石3 磁化方向を示している。トルクが大きな範 では各磁極にある2種類の永久磁石3,4は加え 合せの方向とするので、この状態では正のd 電流は永久磁石3の磁化方向と同方向になる したがって、図6に示すように永久磁石3内 もq軸電流による減磁界を相殺するように正 d軸電流が作る磁界B3iが作用する。このため 、本実施の形態を適用すれば、保磁力と厚み の積が小さな永久磁石3を用いても、大きな ルクを発生する状態においても前述の永久 石3の不可逆減磁を抑制でき、負荷電流の磁 B5iによるトルクの低下を抑制でき、大トル を発生することが可能となる。

 次に、永久磁石3,4の両端部に形成した空 5の作用について述べる。この空洞5は、永 磁石3,4による遠心力が回転子鉄心2に作用し 時の回転子鉄心2への応力集中と減磁界を緩 和する。図1に示したような空洞5を設けるこ により、回転子鉄心2は曲率のついた形状に でき、応力が緩和される。また、電流による 磁界が永久磁石3,4の角部に集中して減磁界が 作用し、角部が不可逆減磁する場合がある。 ところが本実施の形態では、永久磁石3,4の各 端部に空洞5を設けているため、永久磁石端 での電流による減磁界が緩和される。

 次に、本実施の形態における回転子1の構 造的強度について述べる。本実施の形態にお ける回転子1では、回転子鉄心2内にアルニコ 久磁石3とNdFeB永久磁石4とを埋め込み、回転 子鉄心2で永久磁石3,4を固定している。さら 高速回転時の遠心力に十分に耐え得るよう するため、磁極鉄心部7の中央にボルト穴6を 設けて、ボルトで回転子鉄心2を締め付けて 転子端版とシャフトに固定できるようにし いる。

 これにより、本実施の形態の永久磁石式 転電機及び永久磁石電動機ドライブシステ によれば、次の効果が得られる。NdFeB永久 石4の鎖交磁束を正方向とすると、アルニコ 久磁石3の鎖交磁束を正方向の最大値から0 で変化させ、さらには極性を反転して逆方 の最大値まで広範囲に調整することができ 。このようにアルニコ永久磁石3は磁気特性 で第1象限から第4象限までの全範囲で動作 せることになる。これらより、本実施の形 では、アルニコ永久磁石3をd軸電流で磁化さ せることによりアルニコ永久磁石3とNdFeB永久 磁石4とを合わせた全鎖交磁束量を広範囲に 整することができる。さらに、永久磁石の 鎖交磁束量の調整は回転電機の電圧を広範 に調整することを可能とし、また、着磁は 短時間のパルス的な電流で行うので常時弱 磁束電流を流し続ける必要がなく、損失を 幅に低減できる。また、従来のように弱め 束制御を行う必要がないので、高調波磁束 よる高調波鉄損も発生しない。

 以上より、本実施の形態の永久磁石式回 電機及び永久磁石電動機ドライブシステム 、高出力で低速から高速までの広範囲の可 速運転が可能であり、広い運転範囲におい 高効率なものになる。また、永久磁石によ 誘導電圧に関しては、アルニコ永久磁石3を d軸電流で着磁して永久磁石3,4の全鎖交磁束 を小さくできるので、永久磁石の誘導電圧 よるインバータ電子部品の破損がなくなり 信頼性が向上する。また、回転電機が無負 で連れ回される状態では、アルニコ永久磁 3を負のd軸電流で着磁することで永久磁石3,4 の全鎖交磁束量を小さくでき、これより、誘 導電圧は著しく低くなり、誘導電圧を下げる ための弱め磁束電流を常時通電する必要がほ とんどなくなり、総合効率が向上する。特に 惰行運転時間が長くなる通勤電車に本実施の 形態の永久磁石式回転電機を搭載して駆動す ると、総合運転効率は大幅に向上する。

 また、本実施の形態の永久磁石式回転電 及び永久磁石電動機ドライブシステムでは 保磁力と磁化方向厚の積が大となる永久磁 4はNdFeB磁石とし、保磁力と磁化方向厚の積 小となる永久磁石3はアルニコ磁石で構成し 、最高回転速度時において、NdFeB永久磁石4が 発生する逆起電圧が回転電機の電源であるイ ンバータ電子部品の耐電圧以下にする構成と している。これにより、次のような効果があ る。すなわち、永久磁石による逆起電圧は回 転速度に比例して高くなる。この逆起電圧は d軸電流を常時流し続けることによりインバ タ電子部品の耐電圧や電源電圧以下に押さ 込まれている。しかし、制御不能時にはこ 逆起電圧が過大になりインバータの電子部 等を絶縁破壊する。そのため、従来の永久 石式回転電機では設計時に耐電圧により永 磁石の逆起電圧が制限され、永久磁石の磁 量が削減され、電動機の低速域での出力及 効率が低下していた。ところが、本実施の 態の場合、高速回転時になると短時間のd軸 流により減磁方向の磁界を発生させて永久 石を不可逆的に磁化させて永久磁石3,4の鎖 磁束を低減させるので、高速回転時におい 制御不能になっても、過大な逆起電圧が発 することはない。

 また、電機子巻線21等の電気的な短絡が じた場合は、短絡電流によりアルニコ永久 石3は減磁するか極性が反転するので、永久 石3,4による鎖交磁束はNdFeB永久磁石4にみか 性反転時には0にできる。したがって、短絡 電流は瞬時に回転電機自身で小さくできる。 これより、短絡電流によるブレーキ力や短絡 電流による加熱を防ぐことができる。

 以上より、本実施の形態の永久磁石式回 電機及び永久磁石電動機ドライブシステム 、低速回転時で高トルク(高出力)を発生し また高出力で低速から高速までの広範囲の 変速運転が可能であり、広い運転範囲にお て高効率運転が可能である。さらに高速回 時の逆起電圧を抑制でき、インバータを含 たドライブシステムの信頼性を高めること できる。

 (第2の実施の形態)本発明の第2の実施の形 態の永久磁石式回転電機及び永久磁石電動機 ドライブシステムについて説明する。本実施 の形態は、図1に示した永久磁石式回転電機10 1に対して図7に示した永久磁石電動機ドライ システムにより短時間のd軸電流によるパル ス的な磁界でアルニコ永久磁石3を不可逆的 磁化して鎖交磁束量を変化させることを特 とする。

 このように、中速度回転域や高速度回転 で、さらに負のd軸電流による磁束を常時発 生させることにより、負のd軸電流による磁 と永久磁石3,4による磁束からなる鎖交磁束 、前述の負のd軸電流による磁束で調整する とができる。すなわち、中・高速度域では 短時間のd軸電流によるパルス的な磁界でア ルニコ永久磁石3の磁化状態を不可逆的に変 させることによって鎖交磁束量を大きく変 させ、常時通電させる負のd軸電流により鎖 磁束量を微調整する。このとき、常時通電 る負のd軸電流が微調整する鎖交磁束量は僅 かなので、常時流し続ける負のd軸電流は僅 となり、大きな損失は発生しない。

 これらより、本実施の形態の永久磁石式 転電機によれば、電圧の基になる鎖交磁束 を広範囲で変化させるとともに微調整する とができ、しかも高効率で可変できる。

 (第3の実施の形態)本発明の第3の実施の形 態の永久磁石式回転電機について、図13を用 て説明する。本実施の形態の永久磁石式回 電機における固定子20の構造は、図1に示し 第1の実施の形態のものや図20に示した従来 のものと同様である。

 図13に示したように、本実施の形態にお る回転子1では、アルニコ永久磁石3はq軸で 方向に回転子鉄心2内に配置し、NdFeB永久磁 4は周方向に接するようにd軸に直角に回転子 鉄心2内に配置している。回転子1は回転子鉄 2の内周側で鉄のシャフト9に嵌め込む構成 ある。シャフト9は4面をカットした形状とし 、回転子鉄心2とシャフト9との間には空気層8 を形成している。またシャフト9は非磁性材 することができる。

 永久磁石を磁化させるための電機子巻線2 1の電流による磁界は、アルニコ永久磁石3とN dFeB永久磁石4に作用し、図13の矢印B13,B14のよ に電流による磁束が流れる。前述の空気層8 があるので電流による磁束はシャフト9には らずにNdFeB永久磁石4,4間の内周側の狭い鉄心 部分を通ろうとする。しかし、この狭い鉄心 部分は容易に磁気飽和するため、電機子電流 による磁界で生じるNdFeB永久磁石4を通る磁束 を少なくすることができる。

 このように磁化させたいアルニコ永久磁 3の電流による磁束は増加し、同時にNdFeB永 磁石4を通る電流による磁束は少なくなるこ とにより、回転子磁極鉄心部7及び固定子鉄 22の磁気飽和も緩和される。したがって、ア ルニコ永久磁石3を磁化させるためのd軸電流 少なくすることができる。ここで、シャフ 9を非磁性材にすると、シャフト9に漏れる 束も減少してNdFeB永久磁石4を通る磁束はさ に減少し、回転子磁極鉄心部7及び固定子鉄 22の磁気飽和もいっそう緩和される。

 (第4の実施の形態)本発明の第4の実施の形 態について説明する。本実施の形態は、第1~3 の実施の形態の永久磁石式回転電機において 、回転子1における保磁力と磁化方向厚の積 小となる永久磁石3として、Dy(ジスプロシウ )元素又はTb(テルビウム)元素が少ないNdFeB磁 石で構成したことを特徴とする。Dy元素とTb 素はNdFeB磁石の高温時の耐減磁特性を向上さ せるために添加される。永久磁石は高温環境 下で減磁界を受けると永久磁石が不可逆減磁 するため、前述の添加物を用いて不可逆減磁 を抑制する。

 本実施の形態で採用した永久磁石3用の低 保磁力のNdFeB磁石の特性を図14に示す。一般 なNdFeB磁石の保磁力は950kA/mであるのに対し 、本実施の形態に適用するNdFeB磁石の保磁力 は400kA/mである。

 本実施の形態では、永久磁石3の磁束を不 可逆的に可変とするため温度による不可逆減 磁を含めて制御することがきできる。また、 Dy元素又はTb元素が少くなれば保磁力は減少 、少ないd軸電流でNdFeB磁石の磁化ができる うになる。

 また、本実施の形態のNdFeB磁石の保磁力 小さくなるが、残留磁束密度は高くなる。 14の磁気特性に示すような低保磁力のNdFeB磁 は20℃において保磁力が約400kA/m、残留磁束 度1.45Tである。本実施の形態の低保磁力のNd FeB磁石では保磁力と磁化方向厚みの小さな永 久磁石が得られるとともに、エアギャップ磁 束密度を高くできる。

 これより、本実施の形態の永久磁石式回 電機によれば、永久磁石3に低保磁力で高残 留磁束密度のNdFeB磁石を適用することができ ようになり、NdFeB磁石によるエアギャップ 束密度は高くなり、高出力が得られる。ま 、埋蔵量の少ないDy元素やTb元素をほとんど 加しないNdFeB磁石を採用しているので、将 的にも安定して製造できる。

 (第5の実施の形態)本発明の第5の実施の形 態の永久磁石式回転電機について、図15を用 て説明する。本実施の形態において、固定 20の構造は、図1に示した第1の実施の形態の ものや図20に示した従来例のものと同様であ 。

 図15に示したように、本実施の形態では 回転子1において、その外周側に凸になるよ に逆U字形状のNdFeB永久磁石4を回転子鉄心2 に埋め込み、逆U字の中心軸がd軸と一致する 位置としている。q軸上にはアルニコ永久磁 3を径方向に回転子鉄心2内に配置している。 d軸を中心軸として逆U字形状にNdFeB永久磁石4 回転子鉄心2内に配置したことにより、q軸 向の磁気抵抗が大きくなる。すなわち、逆U 形状のNdFeB永久磁石4は電機子電流によるq軸 磁束を妨げることになり、q軸インダクタン を小さくすることができる。さらにq軸イン クタンスをd軸インダクタンスよりも小さく すれば、正のd軸電流を流したときに正のリ クタンストルクを発生させることができる

 これにより、本実施の形態によれば、大 ルク時に正のd軸電流を与えることにより、 保磁力と厚みの積の小さなアルニコ永久磁石 3の負荷電流による減磁を抑制し、永久磁石 鎖交磁束と電流により生じる磁石トルクに ラクタンストルクが重畳するので高トルク 発生することができる。

 また、本実施の形態によれば、2個のアル ニコ永久磁石3に挟まれた領域にNdFeB永久磁石 4を配置することで磁極の面積を広くするこ ができる。さらに、NbFeB永久磁石4を逆U字状 したことによってq軸磁束の磁路を妨げるよ うにこの逆U字形状のNdFeB永久磁石4を配置す ことで、q軸インダクタンスを低減でき、こ より力率も向上できる。

 (第6の実施の形態)本発明の第6の実施の形 態について、図16を用いて説明する。本実施 形態において、固定子20の構造は、図1に示 た第1の実施の形態のものや図20に示した従 例のものと同様である。

 図16に示したように、本実施の形態にお る回転子1は、磁極間の中心軸になるq軸と一 致する回転子1の半径方向にアルニコ永久磁 3を回転子鉄心2内に配置している。そして、 アルニコ永久磁石3の端部の鉄心を除いたq軸 傍のエアギャップ23側の回転子鉄心を回転 鉄心2の最外周より窪ませて窪み形状にして る。

 次に、本実施の形態の永久磁石式回転電 の作用について述べる。d軸方向の電流の磁 束(d軸磁束)はアルニコ永久磁石3とNdFeB永久磁 石4とを横断することになり、永久磁石の透 率は空気の透磁率とほぼ等しいのでd軸イン クタンスは小さくなる。一方、q軸方向の磁 束は回転子鉄心2の磁極鉄心部7をアルニコ永 磁石3とNdFeB永久磁石4との長手方向に沿うよ うに流れる。回転子鉄心2の磁極鉄心部7の透 率は永久磁石の約1000~10000倍あるので、q軸 向の回転子鉄心2に窪み形状10を形成せず回 子鉄心2の外径を周方向で均一にしていれば q軸インダクタンスは大きくなる。そして、 電流と磁束との磁気的作用でトルクを発生さ せるためにq軸電流を流すが、q軸インダクタ スは大きいのでq軸電流で生じる電圧は大き くなる。すなわち、q軸インダクタンスが大 くなることによって力率が悪くなる。また 正のd軸電流を流すと負のリラクタンストル が発生し、永久磁石の鎖交磁束と電流によ 磁石トルクとリラクタンストルクの和であ 総トルクが低下する。

 これに対して本実施の形態では、アルニ 永久磁石3のあるq軸近傍のエアギャップ側 転子鉄心は回転子鉄心2の最外周より窪んだ み形状10としているので、窪み形状10の鉄心 部分を通る磁束は減少する。すなわち、窪み 形状10の鉄心部分はq軸方向にあるのでq軸イ ダクタンスを小さくすることができ、これ より、力率を向上できる。また、窪み形状10 を設けたことによってq軸インダクタンスが 少するので、正のd軸電流を流したときに生 る負のリラクタンストルクを減少すること できる。さらに窪み形状10を大きくしてq軸 ンダクタンスをd軸インダクタンスよりも小 さくすれば、正のd軸電流を流すと正のリラ タンストルクが発生して、磁石トルクとリ クタンストルクの和である総トルクを増加 きる。さらに、窪み形状10の鉄心部分により アルニコ永久磁石3の端部近傍では等価的に アギャップ長が長くなるので、アルニコ永 磁石3の端部近傍の平均的な磁界は低くなり これより、トルクを発生するために必要なq 軸電流によるアルニコ永久磁石3への減磁界 影響を小さくできる。

 また、本実施の形態では、アルニコ永久 石3の端部と回転子1の磁極鉄心部7の中央ま の間において、d軸中心となる回転子1の磁 鉄心部7の中央部が回転子1の最外周部分とな り、磁極鉄心部7の中央部からアルニコ永久 石3の端部の外周側鉄心部分に至るにつれて 回転子1の軸中心からの回転子鉄心外周まで の距離が短くなる形状とする(アルニコ磁石3 端部の外周側鉄心部の外径をd軸中心の鉄心 外径よりも小さくする)ことができる。回転 1をこのような形状にすれば、上と同様にq軸 インダクタンスを小さくできて力率が向上し 、正のd軸電流を流したときの総トルクも増 させることができ、さらに、回転子1の全周 渡って滑らかに外周の窪みが大きくなるの 磁束の高調波成分を低減でき、トルクリプ 、コギングトルクも低減できる。

 また、本実施の形態において、窪み形状1 0を設ける代わりに、q軸近傍の回転子外周部 に空洞を設ける構成にしてもq軸インダクタ ンスを小さくでき、同様な作用、効果が得ら れる。

 尚、上記各実施の形態では4極の回転電機 を示したが、8極等の多極の永久磁石式回転 機にも本発明の技術思想を適用できる。そ てその場合には、極数に応じて永久磁石の 置位置、形状が幾分変ることは勿論であり 作用、効果は同様に得られる。

 また、磁極を形成する永久磁石において 保磁力と磁化方向の厚みの積をもって永久 石を区別する定義をしている。したがって 磁極は同じ種類の永久磁石で形成し、磁化 向厚みを異なるように形成しても同様な作 、効果が得られる。

 (第7の実施の形態)本発明の第7の実施の形 態としての永久磁石電動機ドライブシステム 200について、図17~図19を用いて説明する。本 施の形態の永久磁石電動機ドライブシステ は、上記第1の実施の形態のドライブシステ ムに代えて、第1の実施の形態の永久磁石式 転電機乃至第6の実施の形態の永久磁石式回 電機の駆動制御に適用できる。尚、図17に いて、図7に示した第1の実施の形態のドライ ブシステムと共通の要素には同一の符号を付 して示してある。

 本実施の形態の可変磁束永久磁石電動機 ライブシステム200は、図1に示した第1の実 の形態に対して、電圧指令演算部110の出力 る電圧指令Vd*,Vq*と座標変換部107の出力するd q軸電流Id,Iqとロータ回転角周波数ω1を用いて 磁束φhを推定し、可変磁束制御部113に出力す る磁束推定部109を追加的に備え、また可変磁 束制御部113が図18の構成を備えたことを特徴 する。

 磁束推定部109は、dq軸電圧指令Vd*,Vq*とdq軸 流Id,Iq、ロータ回転角周波数ω1(インバータ 波数)に基づき、次式によってd軸磁束量を推 定する。

 磁束推定値φhは、磁束指令演算部112から 磁束指令φ*と共に可変磁束制御部113に入力 れる。

 本実施の形態における可変磁束制御部113 詳細な構成を図18に示す。減算器119にて磁 指令φ*と磁束推定値φhとの偏差が演算され 同偏差はPI制御器120に入力される。また、磁 束指令φ*は磁化電流基準演算部121に入力され る。磁化電流基準演算部121は、磁束指令φ*に 応じた磁束に磁化されるように、磁化電流指 令Im*をテーブルを利用して算定し、あるいは 関数式に当てはめて算定する。この特性は、 前述のBH特性に基づき算定する。加算器122に いて、磁化電流基準演算部121の出力とPI制 部120の出力とを加算する。

 この加算器122が磁化電流指令Im*になる。 化するためには、この磁化電流指令Im*をd軸 電流指令Id*として与える。よって、本実施の 形態の構成上、Id*がIm*と一致するように、減 算器126にて磁化電流指令Im*からd軸電流基準Id Rを減算し、d軸磁化電流指令差分値δIdm*を算 する。これにより、図17における加算器114 てd軸電流基準IdRと加算されるため、d軸電流 指令Id*が磁化電流Im*と一致する。

 可変磁束制御部113における切り替え器123 は、後述の磁化完了フラグに基づき、2つの 入力を選択して、磁化電流指令Idm*として選 して出力する。磁化完了フラグ=0(磁化完了) 場合、d軸磁化電流指令差分δIdm*=0とする。 た、磁化完了フラグ=1(磁化中)である場合、 加算器122の出力をδIdm*として出力する。

 減算器119の出力である磁束指令φ*と磁束 定値φhとの偏差は、磁化完了判定部124へと 力される。この磁化完了判定部124では、例 ば磁束偏差の絶対値が所定値αより小さい 合には1を出力し、αより大きい場合には0を 力する。フリップフロップ(RS-FF)125は、セッ トSへの入力に磁化要求フラグFCreqを、リセッ トR側に磁化完了判定部124の出力を入力する このRS-FF125の出力が磁化完了フラグであり、 PI制御部120と切り替え器123とに入力される。 の磁化完了フラグが0であれば磁化完了、1 あれば磁化中であることを示す。

 また、磁束推定部109の出力である磁束推定 φhは電流基準演算部111にも入力される。電 基準演算部111では、第1の実施の形態での演 算式での磁束指令φ*に代え、磁束推定値φhに よってdq軸電流基準IdR,IqRを次式にて求める。

 以上の構成により、本実施の形態は、次 ような作用効果を奏する。磁化要求があっ 場合、磁化要求フラグ=1が少なくとも一瞬 つ。RS-FF125がセットされることで、磁化完了 フラグ=1、すなわち磁化中になる。切り替え 123がPI制御器120及び磁化電流基準演算部121 らの出力を磁化電流指令Im*として出力する うになる。この磁化電流基準演算部121は、 束指令φ*に磁化されるように、事前に把握 ているBH特性に基づく磁化電流をフィードフ ォワード的に与えることになる。これにより 、指令値の近傍まで瞬時に磁化することがで き、磁化に要する時間が低減されるため、不 要なトルクの発生や損失の発生を抑えること ができる。尚、BH特性は、予め実験的に求め ものを用いることもできる。

 しかしながら、前述のように、厳密に磁 を所定値に一致させることは困難である。 こで、本実施の形態では、図19に示すよう 、可変磁束制御部113におけるPI制御器120の作 用により磁束の偏差が0に近づくように磁化 流Im*を補正していく。これにより、最終的 は磁束指令φ*と磁束推定値φh(すなわち、推 誤差がなければ実磁束)とが一致することに なる。このため、磁化処理における磁束量の 繰り返しの精度が向上し、トルク精度が向上 できる。

 また、本実施の形態では、図19に示すよ に、可変磁束制御部113における磁化完了判 部124で、磁束偏差の絶対値が所定値α以内と なったことで事実上磁束は一致し磁化が完了 したとして出力を1にし、RS-FF125はこのリセッ ト要求を受けて、出力である磁化完了フラグ を0にする。よって、確実に磁束推定値がそ 指令である磁束指令φ*に一致したことをも て磁化処理を完了することができる。これ より、本実施の形態によれば、磁化処理に ける磁束量の繰り返し精度が向上し、トル 精度の向上が期待できる。

 また、本実施の形態によれば、dq軸電流 準IdR,IqRの生成に電圧電流より推定された磁 推定値φhを用いるため、仮に磁化処理によ て磁束量にばらつきが生じても実態に応じ dq軸電流指令が補正される。そしてこの指 に応じてdq軸電流が流れるため、可変磁束量 のばらつきがトルクに与える影響を低減する ことが可能であり、トルク精度が向上する。

 尚、本実施の形態では、磁束推定値に基 き構成しているが、磁束推定器には、LdやLq などのモータインダクタンスが含まれる。こ れらの値は磁気飽和によって変動するが、特 に可変磁束モータでは磁気飽和が可変磁束量 によって大きく変動する。よって、可変磁束 の推定値を入力として、モータインダクタン スを出力する関数あるいはテーブルを備える ことは、磁束推定精度、ひいてはトルク精度 の向上に有益である。

 また、上述のようにテーブル化しても、 ンダクタンスの特性を精度良く把握するこ が困難な場合もある。その場合、磁束を推 する代わり、ホール素子などによって構成 れる磁束検出器を備え、検出された実磁束 rを上記の磁束推定値φhの代わりに用いるこ で、より一層の磁束推定精度の向上、ひい はトルク精度の向上が図れる。