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Title:
PHASE TRANSFER CATALYST AND PROCESS FOR PRODUCING POLY(FULLERENE HYDROXIDE)
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/096763
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a phase transfer catalyst which enables to synthesize a poly(fullerene hydroxide) having a pale color, excellent antioxidant ability and a high water-solubility, has no nitrogenated functional group other than a hydroxy group and having no impurity such as a sodium salt remaining therein, from a raw material fullerene directly, without passing through a water-insoluble fullerene hydroxide or a hydrogenated fullerene, in an one-step reaction with high efficiency. Also disclosed is a process for producing a poly(fullerene hydroxide). Specifically disclosed is a phase transfer catalyst for use in a two-liquid-phase catalytic reaction between a solution of a raw material fullerene in an organic solvent and an aqueous hydrogen peroxide for the production of a poly(fullerene hydroxide), which comprises a quaternary ammonium salt represented by the general formula: (R)4NX [wherein R's independently represent a hydrocarbon group; and X represents an anion].

Inventors:
KOKUBO KEN (JP)
SHIRAKAWA SHOGO (JP)
OSHIMA TAKUMI (JP)
MATSUBAYASHI KENJI (JP)
AOSHIMA HISAE (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/051875
Publication Date:
August 14, 2008
Filing Date:
February 05, 2008
Export Citation:
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Assignee:
UNIV OSAKA (JP)
VITAMIN C60 BIORES CORP (JP)
KOKUBO KEN (JP)
SHIRAKAWA SHOGO (JP)
OSHIMA TAKUMI (JP)
MATSUBAYASHI KENJI (JP)
AOSHIMA HISAE (JP)
International Classes:
B01J31/02; C07C37/60; C07C39/12; C07B61/00
Foreign References:
JP2004168752A2004-06-17
JPH0748302A1995-02-21
JP2006247521A2006-09-21
Attorney, Agent or Firm:
NISHIZAWA, Toshio (3-14 Kudan-kita 4-chome,Chiyoda-k, Tokyo 73, JP)
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Claims:
 ポリ水酸化フラーレンを製造する際の、原料フラーレン有機溶媒溶液と過酸化水素水との二液相の接触反応における相間移動触媒であって、一般式(R) 4 NX(Rはそれぞれ、同一あるいは別異の炭化水素基であり、Xはアニオンである)で表される第4級アンモニウム塩であることを特徴とする相間移動触媒。
 一般式(R) 4 NXにおけるRは、それぞれ、同一あるいは別異の炭素数2~10の直鎖アルキル基であることを特徴とする請求項1記載の相間移動触媒。
 一般式(R) 4 NXにおけるXのアニオンは、OHまたはハロゲンまたは擬ハロゲンであることを特徴とする請求項1または2記載の相間移動触媒。
 一般式n-Bu 4 NOHの水酸化テトラn-ブチルアンモニウムであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の相間移動触媒。
 一般式n-Bu 4 NBrの臭化テトラn-ブチルアンモニウムであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の相間移動触媒。
 ポリ水酸化フラーレンの製造方法であって、原料フラーレン有機溶媒溶液と過酸化水素水との二液相を接触反応させる際に、相間移動触媒として、一般式(R) 4 NX(Rはそれぞれ、同一あるいは別異の炭化水素基、Xはアニオンである)で表される第4級アンモニウム塩を添加することを特徴とするポリ水酸化フラーレンの製造方法。
 一般式(R) 4 NXにおけるRは、それぞれ、同一あるいは別異の炭素数2~10の直鎖アルキル基であることを特徴とする請求項6記載のポリ水酸化フラーレンの製造方法。
 一般式(R) 4 NXにおけるXのアニオンは、OHまたはハロゲンまたは擬ハロゲンであることを特徴とする請求項6または7記載のポリ水酸化フラーレンの製造方法。
 相間移動触媒として、一般式n-Bu 4 NOHの水酸化テトラn-ブチルアンモニウムを添加することを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載のポリ水酸化フラーレンの製造方法。
 相間移動触媒として、一般式n-Bu 4 NBrの臭化テトラn-ブチルアンモニウムを添加することを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載のポリ水酸化フラーレンの製造方法。
 モル当量比(相間移動触媒/原料フラーレン)を3.0以上とすることを特徴とする請求項6から10のいずれかに記載のポリ水酸化フラーレンの製造方法。
 モル当量比(相間移動触媒/原料フラーレン)を6.0以上とすることを特徴とする請求項11記載のポリ水酸化フラーレンの製造方法。
 18℃以上かつ過酸化水素水の沸点未満で接触反応を行うことを特徴とする請求項6から12のいずれかに記載のポリ水酸化フラーレンの製造方法。
 60℃以上かつ80℃以下で接触反応を行うことを特徴とする請求項13記載のポリ水酸化フラーレンの製造方法。
Description:
相間移動触媒およびポリ水酸化 ラーレンの製造方法

 本発明は、相間移動触媒およびポリ水酸 フラーレンの製造方法に関するものである

 フラーレン類は、活性酸素の消去能を有 ることが知られており、化粧品や医薬品へ 応用展開が期待されるところであるが、フ ーレン類は水に対して不溶性ないし難溶性 あることが大きな問題となる。また、フラ レン類を包接化合物とすることにより水溶 性を高めることも検討されてきているが、 ラーレン類の有する濃茶色の色調が化粧品 への応用において問題になる。

 このような問題の解決策としては、多置 のポリ水酸化フラーレンとその誘導体につ てはその合成法とともにすでに報告されて るが(特許文献1、2、非特許文献1-3)、いずれ の場合にも、水溶性が低く、かつ多段反応で あって、発煙硫酸のような扱いにくい試薬を 用いることや、ナトリウム等の金属塩が残存 してしまう等の問題点があった。

 本発明者らは、このような状況において 淡色であり、優れた抗酸化能を有し、高い 溶性を有し、かつナトリウム塩などの不純 が残留していない水酸化フラーレンとその 造方法を提案している(特許文献3)。しかし この製造方法では、不溶性の水酸化フラー ンや水素化フラーレンを経由しての多段反 であるという制約があり、実用的にはコス が高くなることが考えられ、改善された水 性ではあっても更なる向上を望まれていた

 このため、優れた抗酸化能を有するととも 、さらに高い水溶性を有し、簡便に効率的 低いコストで大量合成することのできる水 化フラーレンとその製造方法も提案してい (特許文献4)。しかしながら、この製造方法 おいても、水酸基以外の他の含窒素官能基 同時に導入されてしまうため、ポリ水酸化 ラーレンの使用が制限される可能性がある

特開平7-48302号公報

特開2004-168752号公報

国際公開WO2006/028297号パンフレット

特開2007-176899号公報 J. Org. Chem., 1994, 59, 3960 Tetrahedron, 1996, 52, 4963 Synthetic Communications, 2005, 35, 1803

 本発明は、以上の通りの事情に鑑みてな れたものであり、淡色であり、優れた抗酸 能を有し、高い水溶性を有することに加え 、水酸基以外の他の含窒素官能基を有さず ナトリウム塩などの不純物が残留していな ポリ水酸化フラーレンを、不溶性の水酸化 ラーレンや水素化フラーレンを経由せずに 原料フラーレンから直接、一段階反応で効 的に合成することを可能とする相間移動触 およびポリ水酸化フラーレンの製造方法を 供することを課題としている。

 本発明は、本発明者によるこれまでの提案 の技術的制約の認識を踏まえて、これを克 するために、
(1)ポリ水酸化フラーレンを製造する際には、 原料フラーレン有機溶媒溶液と過酸化水素水 との二液相の接触反応とすること、
(2)そして(1)の際に、一般式(R) 4 NX(Rはそれぞれ、同一あるいは別異の炭化水 基であり、Xはアニオンである)で表される第 4級アンモニウム塩の相間移動触媒を添加す こと、
を特徴とするものである。

 なお、本発明者の発明に係わる特許文献3 の発明では、(1)のように原料フラーレン有機 溶媒溶液と過酸化水素水との二液相の接触反 応ではなく、過酸化水素水中に不溶性の水酸 化フラーレンや水素化フラーレンを懸濁させ ている。そもそも、特許文献3の発明の反応 件(反応温度60℃)においては、不溶性の水酸 フラーレンや水素化フラーレンを経由しな れば、原料フラーレン有機溶媒溶液と過酸 水素水との二液相の接触反応では、ポリ水 化フラーレンは製造されない(後述の比較例 2)。

 そこで、本発明者らは、鋭意検討を重ねた 果、(1)の際に、相間移動触媒として、一般 (R) 4 NX(Rはそれぞれ、同一あるいは別異の炭化水 基であり、Xはアニオンである)で表される第 4級アンモニウム塩を添加することによって 不溶性の水酸化フラーレンや水素化フラー ンを経由せずに、原料フラーレンから直接 一段階反応でポリ水酸化フラーレンを得る とができることを見出し、本発明に至った のである。

 すなわち本発明は、第1には、ポリ水酸化フ ラーレンを製造する際の、原料フラーレン有 機溶媒溶液と過酸化水素水との二液相の接触 反応における相間移動触媒であって、一般式 (R) 4 NX(Rはそれぞれ、同一あるいは別異の炭化水 基であり、Xはアニオンである)で表される第 4級アンモニウム塩であることを特徴とする 間移動触媒を提供する。

 また、第2には、一般式(R) 4 NXにおけるRは、それぞれ、同一あるいは別異 の炭素数2~10の直鎖アルキル基であることを 第3には、一般式(R) 4 NXにおけるXのアニオンは、OHまたはハロゲン たは擬ハロゲンであることを、第4には、一 般式n-Bu 4 NOHの水酸化テトラn-ブチルアンモニウムであ ことを、第5には、一般式n-Bu 4 NBrの臭化テトラn-ブチルアンモニウムである と特徴とする前記相間移動触媒を提供する

 加えて、第6には、ポリ水酸化フラーレンの 製造方法であって、原料フラーレン有機溶媒 溶液と過酸化水素水との二液相を接触反応さ せる際に、相間移動触媒として、一般式(R) 4 NX(Rはそれぞれ、同一あるいは別異の炭化水 基であり、Xはアニオンである)で表される第 4級アンモニウム塩を添加することを特徴と るポリ水酸化フラーレンの製造方法も提供 る。

 また、第7には、一般式(R) 4 NXにおけるRは、それぞれ、同一あるいは別異 の炭素数2~10の直鎖アルキル基であることを 第8には、一般式(R) 4 NXにおけるXのアニオンは、OHまたはハロゲン たは擬ハロゲンであることを、第9には、相 間移動触媒として、一般式n-Bu 4 NOHの水酸化テトラn-ブチルアンモニウムを添 することを、第10には、相間移動触媒とし 、一般式n-Bu 4 NBrの臭化テトラn-ブチルアンモニウムを添加 ることを特徴とする前記ポリ水酸化フラー ンの製造方法を提供する。

 また、第11には、モル当量比(相間移動触 /原料フラーレン)を3.0以上とすることを、 らに、第12には、モル当量比(相間移動触媒/ 料フラーレン)を6.0以上とすることを特徴と する前記ポリ水酸化フラーレンの製造方法を 提供する。

 また、第13には、18℃以上かつ過酸化水素 水の沸点未満で接触反応を行うことを、さら に、第14には、60℃以上かつ80℃以下で接触反 応を行うことを特徴とする前記ポリ水酸化フ ラーレンの製造方法を提供する。

 上記第1、第6の発明によれば、淡色であ 、優れた抗酸化能を有し、高い水溶性を有 ることに加えて、水酸基以外の他の含窒素 能基を有さず、ナトリウム塩などの不純物 残留していないポリ水酸化フラーレンを、 溶性の水酸化フラーレンや水素化フラーレ を経由せずに、原料フラーレンから直接、 段階反応で効率的に合成することができる

 そして、上記第2~5、7~14の発明によれば、 さらに効率的にポリ水酸化フラーレンを合成 することができる。

実施例1のポリ水酸化フラーレン(1)の赤 外吸収(FT-IR)スペクトル図である。 実施例1のポリ水酸化フラーレン(2)の赤 外吸収(FT-IR)スペクトル図である。 C 60 (OH) 12 ・5H 2 Oの赤外吸収(FT-IR)スペクトル図である。 C 60 (OH) 36 ・9H 2 Oの赤外吸収(FT-IR)スペクトル図である。 実施例1のポリ水酸化フラーレン(2)の熱 重量分析(TGA)測定チャート図である。 実施例4のポリ水酸化フラーレン(3)の赤 外吸収(FT-IR)スペクトル図である。 実施例5のポリ水酸化フラーレン(4)の赤 外吸収(FT-IR)スペクトル図である。 実施例1のポリ水酸化フラーレン(2)およ びその他の抗酸化剤存在下での吸光度460nmに けるβ-カロテン退色の経時変化のグラフで る。

 以下、本発明の実施の形態について説明 る。

 本発明は、ポリ水酸化フラーレンを製造 る際の、原料フラーレン有機溶媒溶液と過 化水素水との二液相の接触反応において、 間移動触媒を添加する。

 ここで、本発明の相間移動触媒は、一般式( R) 4 NX(Rはそれぞれ、同一あるいは別異の炭化水 基であり、Xはアニオンである)で表される第 4級アンモニウム塩である。

 一般式(R) 4 NXにおけるRおよびXは、有機相にも水相にも 溶であれば、その種類は特に制限されない 一般式(R) 4 NXにおけるRは、脂肪族炭化水素基、脂環式炭 化水素基、芳香族炭化水素基あるいはこれら に官能基を有していてもよいし、飽和炭化水 素基、不飽和炭化水素基であってもよく、原 料フラーレンと過酸化水素水との反応性を妨 げない限り特に制限されない。

 一般式(R) 4 NXにおけるXについても、ハロゲン、擬ハロゲ ン各種、OH等、特に制限されない。

 中でも、一般式(R) 4 NXにおけるRは、それぞれ、同一あるいは別異 の炭素数2~10の直鎖アルキル基である相間移 触媒であることが好ましい。炭素数2より小 い場合には、水への溶解度が高くなりすぎ しまい、炭素数10より大きい場合には、有 相への溶解度が高くなりすぎてしまうばか かコストがかかってしまう。

 また、全て同一の直鎖アルキル基とすれ 、低コストとすることができて好ましい。

 また、Xを、ハロゲンであれば、Cl、Br、I等 することが好ましく、擬ハロゲンであれば OTs(トシラート)、OTf(トリフラート)、BF 4 、ClO 4 、PF 6 等とすることが好ましい。

 これらの中でも、一般式n-Bu 4 NOH(水酸化テトラn-ブチルアンモニウム)や、 般式n-Bu 4 NBr(臭化テトラn-ブチルアンモニウム)である とがさらに好ましく、これらの相間移動触 とすることで、さらに効率的に反応を進行 せることができる。特にn-Bu 4 NOH(水酸化テトラn-ブチルアンモニウム)は、 の効果が優れているので好適に用いること できる。

 本発明における原料フラーレンは、フラー ン核が、C 60 、C 70 、あるいはより高次のもの、またはナノチュ ーブフラーレン、そして、これらの混合物を はじめとして各種のものであってよい。例え ば、本発明の原料フラーレンのフラーレン核 には、メチレン鎖等のアルキレン鎖を介して 複数のフラーレンが結合したものや、アルキ レン鎖が、フラーレン骨格の異なる位置の炭 素原子に結合するもの等であってもよい。ま た、置換基を有していてもよく、水素化フラ ーレン、酸化(エポキシ)フラーレン、メタノ 橋フラーレン、アルキル置換フラーレン、 リール置換フラーレン等であってもよい。 して、フラーレン修飾化合物またはその塩 びそこから選択される少なくとも一種であ てもよい。

 原料フラーレンを溶解させる有機溶媒は、 然に水への溶解度が低く、かつフラーレン 溶解度が高いものであれば特に制限されず ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレ 等が例示され、有機溶媒の量については、 料フラーレンがほぼ完全に溶解する量まで 目安とすることができ、例えばC 60 をトルエン中に溶解するのであれば、0.2~3.2mg /mLとすればよく、特に1.5~2.5mg/mLとすることが 好ましい。

 これらの原料フラーレンあるいは原料フラ レン有機溶媒に対しての過酸化水素水は、 えば、濃度30%のものとすれば、原料フラー ンに対して10~1000倍程度の重量比、そして原 料フラーレン有機溶媒に対して0.02~2倍程度の 体積比とすることができる。例えば、原料フ ラーレンに対して50倍重量比の条件では、モ 当量比(H 2 O 2 /C 60 )が300程度になる。このような当量比を考慮 て使用量を定めることができる。

 なお、過酸化水素水としては市販品で3%~5 0%濃度のものがあるが、実際的には30%以上の のを用いることが好ましい。

 反応温度としては、通常は-40℃~過酸化水 素水の沸点の範囲が考慮されるが、好ましく は18℃(室温)以上かつ過酸化水素水の沸点未 、さらに好ましくは60℃以上80℃以下の範囲 ある。18℃以上とすることによって、反応 が向上する他、使用できる溶媒も多く好ま く、60℃以上とすることによってさらに反応 性が向上する。ただし、過酸化水素水の沸点 未満とすることは当然のことであるが、80℃ りも高温とすることは、反応性の向上に大 く寄与しないばかりか、コストがかかって まう。

 反応時間については、特に制限されない 、本発明においては、その他の反応条件を 当に設定すれば、3~16時間程度あれば十分に 反応が進行するため、16時間以上の反応を試 ても、収率は特に向上せずかえってコスト かかってしまうため好ましくない。

 そして、反応後の分離、精製に際しては 過酸化水素水に可溶なものと、そうでない のとの溶媒の組み合わせ使用が有効でもあ 。ただし、水層と有機層に分離しないよう 組み合わせることが望ましい。一般的には アルコール、THF、アセトン、アセトニトリ 等の水可溶性溶媒と、その他の溶媒との組 合わせが考慮される。例えば、エタノール 2-プロパノール、ブタノール、ジエチルエ テル等とヘキサン、ヘプタン、シクロヘキ ン等との組み合わせである。これらの溶媒 、過酸化水素水に対して各々3~20倍程度が適 であるが、好ましくは5~10倍である。溶媒量 が過少である場合、沈殿する反応生成物中に 過酸化水素水が残留し、過剰反応や、乾燥の 妨げになるという不都合が生じる。

 以上により、通常はポリ水酸化フラーレ の水和物が生成されるが、減圧下で150℃程 までの範囲において加温、加熱することに り無水物とすることができる。

 そこで以下に実施例を説明する。もちろ 以下の例によって発明が限定されることは い。

 まず、以下の手順に従って、ポリ水酸化フ ーレンを合成した。
<実施例1>
 C 60 (>96%、市販品)0.100gをトルエン(50mL)に溶解さ せ、30%過酸化水素水5mLと、相間移動触媒とし て水酸化テトラn-ブチルアンモニウム(Tetra-n-b utyl ammonium hydroxide、以下TBAH)(40%in water、500μ L、モル当量比(TBAH/C 60 )6.15)を加え、60℃で16時間攪拌した。無色に ったトルエン層を除去し、ヘキサン、ジエ ルエーテル、2-プロパノールをそれぞれ5:5:7 割合で混合した溶液85mLに超音波照射しなが ら水層を滴下し、淡黄色固体を析出させた。 生じた沈殿を遠心分離により沈降させた後、 デカンテーションにより上澄み液を除いた。 この固体を60mLのジエチルエーテルを用いて 浄し、再沈降させた後上澄み液を除き、18時 間真空乾燥することで反応生成物のポリ水酸 化フラーレン(1)を淡黄色粉末として0.199g得た (収率89%)。

 さらに残留している触媒を除くために、 の固体を3mLの水に溶解させ、重さ約1gのフ リジール(60~100mesh、市販品)を長さ約6cmに充 したカラムクロマトグラフィーに通した後 0.45μmのメンブレンフィルター(市販品)をさ に通して完全にフロリジールも除去した。 れを再び水の体積に対して5:5:7の比でヘキサ ン、ジエチルエーテル、2-プロパノールを加 て淡黄色固体を析出させた。18時間真空乾 することで精製した生成物であるポリ水酸 フラーレン(2)を淡黄色粉末として0.149g得た( 率67%)。

 図1および図2は、それぞれ、実施例1のポ 水酸化フラーレン(1)、(2)の赤外吸収(FT-IR)ス ペクトル図である。

 図1、2は、水酸基のO-H伸縮に基づく3400cm -1 付近の大きなブロードな吸収とともに、C-Cお よびC-O伸縮に基づく1620、1380、1080cm -1 付近にブロードな吸収を示した。これらの吸 収のパターンは、図3に示すL. Y. Chiangらが報 告している水酸基数が12のポリ水酸化フラー ン(非特許文献1記載の方法により合成)や、 4に示す水酸基数が36のポリ水酸化フラーレ (特許文献3記載の方法により合成)のIRスペ トルとよく似ており、それぞれの吸収の相 強度比が若干異なることから水酸基の数が なるポリ水酸化フラーレンであることが示 された。また、図1では2900cm -1 付近に脂肪族C-H伸縮に基づく特徴的な吸収が 見られることから、相間移動触媒として用い たTBAHが微量残留していることがわかった。 かし、精製後のスペクトルである図2では、 の吸収が消失していることから触媒がほぼ 全に除去されたことが示唆された。

 図5は、実施例1のポリ水酸化フラーレン(2 )の熱重量分析計(TGA)測定チャート図である。

 ポリ水酸化フラーレン(2)を熱重量分析計( TGA)を用い、窒素雰囲気下、昇温速度5℃/minで 熱分析を行った。図5から、室温~120℃付近ま に極大点(72.1℃)を有しながら約9.4wt%の重量 少がみられた。一般に、極性官能基を多数 するような化合物では150℃程度まで加熱し いと解離しない二次結合水が存在可能であ ことから、強固に吸着している水分が9wt%程 度存在すると見積もることができた。

 また、ポリ水酸化フラーレン(1)の元素分析 行ったところ、実験値はC:48.24%、H:3.91%、N:0. 72%であった。微量ながら窒素が検出されたこ とは、FT-IRの結果を支持し、相間移動触媒と て用いたTBAHが微量残留していることと一致 した。一方、精製後のポリ水酸化フラーレン (2)の元素分析を行ったところ、実験値はC:44.6 9%、H:3.56%であり、窒素残留成分は除去されて いた。この実験値は、上述した含水量を考慮 すると、C 60 (OH) 44 ・8H 2 Oなる組成を有するものとしてよく一致した すなわち、上記組成の元素分析理論値はC:44. 68%、
H:3.75%であり、含水量は8.9wt%と計算された。

 また、ポリ水酸化フラーレン(2)の水への溶 度を調べたところ、64.9mg/mL(6.5wt%)であり、 れまでに報告されている包接化合物による 溶化に比べてはるかに高い溶解性を有し、 たC 60 (OH) 36 ・9H 2 O(特許文献3、溶解度17.5mg/mL)やC 60 (OH) 40 ・9H 2 O(特許文献3、溶解度58.9mg/mL)よりも高い溶解 を有することが分かった。

 また、ポリ水酸化フラーレン(2)の転化率 、高速液体クロマトグラフィー(High performan ce liquid chromatography、HPLC)によって算出した

 次いで、実施例2~5、比較例1~4として、実 例1と比較して以下のとおりの変更を行った 。以下合成の手順については、変更点のみを 記載し、その他の点は実施例1と同様である なお、実施例1におけるポリ水酸化フラーレ (1)のような精製前の生成物を、粗生成物と ている。

<実施例2>
 TBAHの添加量を半分(C 60 に対するモル当量比3.08)に変更して、上記の 応を行った。転化率は93%、粗生成物収量0.15 5g(69%)、精製後の収量0.065g(29%)であった。

<実施例3>
 反応温度を18℃(室温)に変更して、上記の反 応を行った。転化率は83%、粗生成物収量0.072g (32%)、精製後の収量0.034g(15%)であった。

<実施例4>
 相間移動触媒として、TBAHに代えて、臭化テ トラn-ブチルアンモニウム(Tetra-n-butyl ammonium bromide、以下TBAB)を用いて、上記の反応を行 た。淡黄色粉末として、精製後の生成物(ポ 水酸化フラーレン(3))を得た。図6は、実施 4のポリ水酸化フラーレン(3)の赤外吸収(FT-IR) スペクトル図である。ポリ水酸化フラーレン (3)の赤外吸収(FT-IR)スペクトルは、図2の水酸 フラーレン(2)のスペクトルとよく類似して た。転化率は25%、粗生成物収量0.089g、精製 の収量0.033gであった。

<実施例5>
 原料フラーレンとして、C 60 に代えて、C 60 約75%、C 70 約20%、残りが高次フラーレンである混合フラ ーレン(以下、Mixed Fullerene)(市販品)を用いて 上記の反応を行った。淡黄色粉末として、 製後の生成物(ポリ水酸化フラーレン(4))を た。なお、Mixed FullereneがすべてC 60 であるとして、モル当量比(TBAH/C 60 )を6.15とした。図7は、実施例5のポリ水酸化 ラーレン(4)の赤外吸収(FT-IR)スペクトル図で る。ポリ水酸化フラーレン(4)の赤外吸収(FT- IR)スペクトルは、図2のポリ水酸化フラーレ (2)のスペクトルとよく類似していた。粗生 物収量0.168g、精製後の収量0.098gであった。

<比較例1>
 過酸化水素水の代わりに精製水を用いて、 記の反応を行った。反応は、16時間後でも く進行しなかった。

<比較例2>
 相間移動触媒を添加せずに、上記の反応を った。反応は、16時間後でも全く進行しな った。

<比較例3>
 TBAHに代えて、ドデシルベンゼンスルホン酸 ナトリウム(Sodium dodecylbenzene sulfonate、以下DB S)を用いて、上記の反応を行った。反応は、1 6時間後でも全く進行しなかった。

<比較例4>
 TBAHに代えて、クラウンエーテル(1, 4, 7, 10 , 13, 16 - hexaoxacyclooctadecane、以下18-crown-6)を 用いて、上記の反応を行った。反応は、16時 後でも全く進行しなかった。

 以上の実施例1~5、比較例1~4の合成条件お び転化率/%、粗生成物の収率/%(収量/mg)を、 1にまとめた。

 次いで、ポリ水酸化フラーレン(2)の抗酸 能を評価するため、既存のβ-カロテン退色 (H. Takada et al., Biosci. Biotechnol. Biochem. 200 6, 70, 3088)を用いて、%AOA(Antioxidant Activity)を 定し、他の抗酸化剤との比較を行った。

 Tween40のクロロホルム溶液(0.2g/mL)22μL、β-カ テンのクロロホルム溶液(1.0mg/mL)11μL、およ リノール酸のクロロホルム溶液(0.1g/mL)4.4μL それぞれ紫外可視吸収(UV-Vis)スペクトル用 セプタム付石英セル(1cm×1cm)に入れ、減圧下 クロロホルムを除去した。そこに約0.02M、pH 7.0のリン酸緩衝溶液を2.4mL、後述する抗酸化 の水溶液0.1mLを加え、均一になるまで素早 攪拌した後、温度制御装置付の紫外可視分 光度計を用いて50℃にて攪拌しながら、波長 460nmの吸光度(Abs 460 )をモニターしながら経時変化を測定した。

 抗酸化剤は、上記実施例1にて合成されたポ リ水酸化フラーレン(2)、フラーレンを含有す る市販の抗酸化剤(ビタミンC60バイオリサー 株式会社製、商品名RadicalSponge、以下RadicalSpo nge)、ビタミンE(α-Tocopherol)、およびビタミンC (L-Ascorbic acid)を用いた。また、抗酸化剤を添 加しないControlとして、抗酸化剤の水溶液の わりに超純水を用いた。表2には、上記の各 酸化剤の濃度とともに各抗酸化剤のk obs (後述)ならびに%AOA(後述)を併せて示す。なお RadicalSpongeの主成分は、Mixed Fullerene、polyviny lpyroridone、1, 3-butylene glycolである。

 図8は、実施例1のポリ水酸化フラーレン(2 )およびその他の抗酸化剤存在下での吸光度46 0nmにおけるβ-カロテン退色の経時変化のグラ フである。

 抗酸化剤を添加しないControlやビタミンCを いた場合は、半減期約900秒でAbs 460 が減少していることから、リノール酸の自動 酸化により発生する過酸化物ラジカルにより 、β-カロテンの分解が速やかに進行している ことがわかった。それに対して、ポリ水酸化 フラーレン(2)(C 60 (OH) 44 ・8H 2 O)、RadicalSponge、ならびにビタミンEを添加し 系では、その分解が顕著に抑制されている とがわかった。

 このAbs 460 の0秒後の値A 0 をt秒後の値A t で除し、これの対数をとった値Ln(A 0 /A t )を時間(sec)に対してプロットしたところ、良 好な直線関係が得られたことから、擬一次条 件にて反応が進行しているものとみなして、 見かけの擬一次速度定数k obs をその直線の傾きから求めた。さらに、以下 の式に基づいて、抗酸化能%AOA(Antioxidant Activi ty)を各抗酸化剤について求めた(H. Takada et a l., Biosci. Biotechnol. Biochem. 2006, 70, 3088)。
[数1]
%AOA=[k obs (control)-k obs (antioxidant)]/k obs (control)×100
 表2より、ポリ水酸化フラーレン(2)(C 60 (OH) 44 ・8H 2 O)は、市販の抗酸化剤であるRadicalSpongeと同程 度の%AOAを、より低い重量濃度(167ppm)で与えた ことから、高い抗酸化能を有することが示さ れた。

 以上のことより、本発明の相間移動触媒 よって、あるいは、本発明のポリ水酸化フ ーレンの製造方法によって、特許文献3のよ うに不溶性の水酸化フラーレンや水素化フラ ーレンを経由せずに、原料フラーレンから直 接、一段階反応でポリ水酸化フラーレンを得 ることができ、特許文献3の反応条件(本願比 例2)では全く進行しなかった反応が進行し 特に実施例1においては、16時間という短時 で100%進行し、本発明の有効性が示された。

 また、本発明の相間移動触媒またはポリ 酸化フラーレンの製造方法を用いて得られ ポリ水酸化フラーレンは、淡色であり、優 た抗酸化能を有し、高い水溶性を有し、ナ リウム塩などの不純物が残留していないも であり、さらに、含窒素官能基がポリ水酸 フラーレンに導入されていないものであっ 。