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Patent Searching and Data


Title:
PHOTOCATALYST COMPOSITION, METHOD FOR PRODUCING SAME, AND DEODORIZING AGENT
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2022/168519
Kind Code:
A1
Abstract:
Provided is an inexpensive photocatalyst composition which can be used for the decomposition or sterilization of an organic substance, which is not limited in terms of uses, which allows impacts on the human body and the environment to be suppressed, and which exhibits excellent photocatalytic activity in a wide range of wavelengths including that of visible light. This photocatalyst composition exhibits catalytic activity with visible light and contains a glass material, an iron-supplying raw material, and a reducing organic substance that has the effect of reducing trivalent iron to bivalent iron. The reducing organic substance contains a polyphenol and/or ascorbic acid, and the iron-supplying raw material contains a bivalent iron compound and/or a trivalent iron compound.

Inventors:
MORIKAWA CLAUDIO KENDI (JP)
Application Number:
PCT/JP2022/000093
Publication Date:
August 11, 2022
Filing Date:
January 17, 2022
Export Citation:
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Assignee:
NAT AGRICULTURE & FOOD RES ORG (JP)
International Classes:
B01J35/02; A61L9/00; A61L9/18; B01J37/04; B01J37/08; B01J37/16; A23L3/26; A23L11/00
Foreign References:
CN110204031A2019-09-06
JP6340657B22018-06-13
JP2015218081A2015-12-07
Other References:
KISHIRO HISATOMI; AHMED SALAH ABDELKAREEM ALI: "Correlation between the local structure of iron ions and the photo-Fenton effect in glass-ceramics made from household waste incineration slag", HIKARI ALLIANCE, vol. 31, no. 5, 1 May 2020 (2020-05-01), JP , pages 1 - 6, XP009538756, ISSN: 0917-026X
Attorney, Agent or Firm:
CREO LAW & INTELLECTUAL PROPERTY (JP)
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Claims:
請 求の範 囲

[請求項 1 ] 可視光で触媒活性を示す光触媒組成物であって、 三価鉄を二価鉄に還元する作用を有する還元性有機物、 鉄供給原料 、 及び、 ガラス材料を含有し、 前記還元性有機物が、 ポリフェノール類及びアスコルビン酸の少な くとも何れかを含有し、 前記鉄供給原料が、 二価鉄化合物及び三価鉄化合物の少なくとも何 れかを含有する、 光触媒組成物。

[請求項 2] 前記ガラス材料が、 イネ科植物、 シダ植物、 及び藻類から選ばれる 植物体、 並びに前記植物体の加工品の何れかからなるケイ素供給原料 を含有する、 請求項 1 に記載の光触媒組成物。

[請求項 3] 前記還元性有機物と前記ケイ素供給原料との混合比率は、 前記還元 性有機物の乾燥重量 100重量部に対して、 前記ケイ素供給原料を、 ケ イ素元素の重量換算で 5重量部以上、 99重量部以下である、 請求項 2 に記載の光触媒組成物。

[請求項 4] 前記還元性有機物と前記鉄供給原料との混合比率は、 前記還元性有 機物の乾燥重量 100重量部に対して、 前記鉄供給原料を、 鉄元素の重 量換算で 0. 1重量部以上、 10重量部以下である、 請求項 1〜 3の何れ かー項に記載の光触媒組成物。

[請求項 5] 前記ポリフェノール類が、 クロロゲン酸、 カフェイン酸、 タンニン 酸、 及びカテキンから選ばれる 1以上の化合物、 及び前記化合物を分 子内に 1以上有する化合物の何れかである、 請求項 1〜 4の何れかー 項に記載の光触媒組成物。

[請求項 6] 前記還元性有機物の供給原料が、 コーヒー豆焙煎物、 茶葉、 果実搾 汁液、 及び植物乾留液の何れかである、 請求項 1〜 4の何れかー項に 記載の光触媒組成物。

[請求項 7] 請求項 1〜 6の何れか一項に記載の可視光で触媒活性を示す光触媒 組成物を含有する、 消臭剤。 [請求項 8] 請求項 1〜 6の何れか一項に記載の可視光で触媒活性を示す光触媒 組成物の製造方法であ って、 三価鉄を二価鉄に還元する作用を有する前記還元性有機物、 前記鉄 供給原料、 及び、 前記ガラス材料を、 還元雰囲気下、 加熱温度 9 0 0 °C以上、 加熱時間 12分以上で加熱処理する工程を含む、 光触媒組成物 の製造方法。

[請求項 9] 前記加熱温度が、 1 2 0 0 °C以上、 1 3 0 0 °C以下であり、 前記加 熱時間が、 12分以上、 12時間以下である、 請求項 8に記載の光触媒組 成物の製造方法。

Description:
明 細 書 発明 の名称 : 光触媒組成物及 びその製 造方法、 並びに消臭剤 技術分 野

[0001 I 本開示は、 可視光に対して光触媒活性を示す光触媒組成 物及びその製造方 法、 並びに消臭剤に関するものである。 背景技 術

[0002] 近年、 世界中でウィルス (新型コロナウィルス、 鳥インフルエンザウィル ス、 豚熱ウィルス等) や病原性大腸菌 (0-157等) のような有害微生物が引き 起こす汚染が社会問題になっている。 このような有害微生物に対する殺菌技 術の一っとして、 光触媒が注目されている。 光触媒は光を当てるだけで有機 系の有害物質の分解や殺菌などに利用できる ことから、 手軽で汎用性が高い 技術として社会的ニーズが高まっている。

[0003] 光触媒活性を示すものとして酸化チタンの他 、 タングステン、 インジウム

、 バナジウム、 銀、 モリブデン、 亜鉛、 ガリウムリン、 ガリウム、 ヒ素など の金属化合物が知られている。 しかしながら、 これらの金属化合物のほとん どのものは、 非常に高価で毒性が強いため、 実用化が進んでおらず、 現段階 で光触媒として実用化されているのは酸化チ タンだけである。 さらに、 これ らの金属化合物は、 いずれも 400nm以下の紫外波長でのみ光触媒活性を示す 質であるため、 蛍光灯などの可視光しか使用できない居住空 間での殺菌・分 解などへの利用には適しておらず、 利用場面が限られている。

[0004] また、 可視光での光触媒活性を実現するために不純 物を混入させる技術 ( ドーピング) が試みられているが、 加工技術が難しく製品が非常に高価にな るとともに、 可視光に対する +分な光触媒活性が得られず、 実用化に至って いるものは存在しない状況である。

[0005] 一方、 ポリフェノール鉄錯体を中心とした光触媒の 開発も行われている ( 例えば、 特許文献 1参照) 。 この特許文献 1 に記載の光触媒は、 可視光を含 む幅広い波長の光を吸収して活性を示すこと から、 利用場面の拡大が可能と なる。 また、 レアメタルを使用せず、 植物体又はその加工品を原料として用 いるため、 人体や環境への影響が少なく、 光触媒を安価に提供可能である。 また、 光触媒の耐久性の向上や安定した光触媒活性 を可能とすべく、 鉄成分 を含有する光触媒ガラスの発明も開示されて いる (特許文献 2、 3参照) 。

[0006I 以上の状況から、 利用場面の限定を受けず、 人体や環境への影響が抑制で き、 可視光で優れた光触媒活性を示す安価な光触 媒の開発が期待されていた

〇 先行技 術文献 特許文 献

[0007] 特許文献 1 :特許第 6 3 4 0 6 5 7号公報 特許文献 2:特開 2 0 1 1 - 2 4 1 1 3 8号公報 特許文献 3:特開 2 0 1 5 - 1 6 7 8 7 1号公報 発明 の概要 発明 が解決 しようと する課題

[0008] 本発明は、 上記課題を解決し、 有機物分解又は殺菌に利用可能であって、 利用場面の限定を受けず、 人体や環境への影響が抑制でき、 可視光を含む幅 広い波長の光に対する優れた光触媒活性を示 す光触媒組成物を、 安価に提供 することを目的とする。 課題 を解決す るため の手段

[0009] 本発明者らは鋭意研究を重ねたところ、 ポリフェノール類と鉄供給源とを

、 水存在下で混合して得られたポリフェノール 鉄錯体が、 紫外線だけでなく 可視光や赤外線に対して光触媒活性を発揮す ることを見出した。 また、 発明 者らはポリフェノール鉄錯体中の炭素と二価 鉄を結合させることでポリフエ ノール鉄錯体の安定性を高め、 安定な光触媒を得られると考え、 様々な条件 で反応を検討した結果、 ポリフェノール類と鉄供給源とを用いてガラ スを製 造したところ優れた光触媒活性を維持するこ とができ、 光触媒としての安定 性を高められることを見出した。 [0010I 本開示はこれらの知見に基づいてなされたも のである。 即ち、 本開示に係る光触媒組成物は、 可視光で触媒活性を示す光触媒組成 物であって、 三価鉄を二価鉄に還元する作用を有する還元 性有機物、 鉄供給 原料、 及び、 ガラス材料を含有し、 前記還元性有機物が、 ポリフェノール類 及びアスコルビン酸の少なくとも何れかを含 有し、 前記鉄供給原料が、 二価 鉄化合物及び三価鉄化合物の少なくとも何れ かを含有する。 また、 本開示に係る消臭剤は、 上述のような可視光で触媒活性を示す光触 媒組成物を含有する。 また、 本開示に係る光触媒組成物の製造方法は、 上述のような可視光で触 媒活性を示す光触媒組成物の製造方法であっ て、 三価鉄を二価鉄に還元する 作用を有する前記還元性有機物、 前記鉄供給原料、 及び、 前記ガラス材料を 、 還元雰囲気下、 加熱温度 9〇〇 0 C以上、 加熱時間 12分以上で加熱処理する 工程を含む。 発明 の効果

[001 1 ] 本開示の光触媒組成物は、 紫外線だけでなく可視光や赤外線を照射した 場 合にも活性を発揮する性質を有するたため、 通常の室内空間等での利用が可 能となる。 また、 原料である鉄還元性有機物としてポリフェノ ール類やアス コルビン酸を用いるものであるため、 本開示の光触媒は、 人体や環境に対す る影響を抑制できる。 これにより本開示の光触媒組成物は、 従来技術の酸化 チタンでは利用が困難であった様々な用途で の使用が可能となる。

[0012] したがって、 有機物分解又は殺菌に利用可能であって、 利用場面の限定を 受けず、 人体や環境への影響が抑制でき、 可視光を含む幅広い波長に対する 優れた光触媒活性を示す光触媒組成物を、 安価に提供できる。 図面 の簡単な 説明

[0013] [図 1]本実施の形態の光触媒組成物の製造工程 一例を示すフローチャートで ある。

[図 2]実施例 1の光触媒組成物を説明するための写真像図 あり、 ( a ) は粉 砕前の実施例 1の光触媒組成物 (板ガラス) の写真像図を示し、 ( b ) は粉 砕後の実施例 1の光触媒組成物 (粉末ガラス) の写真像図を示し、 (C) は (b) の粉砕後の実施例 1の光触媒組成物をジピリジルで染色した状 の写 真像図を示す。

[図 3]実験例で用いる白色 LED光のスペクトル分布である。

[図 4]白色 LED光を照射したときの光触媒組成物による有 害物質の分解効果を 説明するための図であり、 (a) は分解効果の立証実験の結果を表すグラフ を示し、 (b) は酸化チタンを用いた対照区の溶液の写真像 図を示し、 (c ) は実施例 1の光触媒組成物の白色 LED光照射区の溶液の写真像図を示す。

[図 5]紫外線を照射したときの光触媒組成物に る有害物質の分解効果を説明 するための写真像図であり、 (a) は対照区の溶液の写真像図を示し、 (b ) は実施例 1の光触媒組成物を用いた紫外線照射区の溶 の写真像図を示し 、 (c) は酸化チタンを用いた酸化チタン区の溶液の 写真像図を示す。

[図 6]紫外線を照射したときの光触媒組成物に る有害物質の分解効果を説明 するための写真像図であり、 (a) は対照区 (光触媒なし) の溶液の写真像 図を示し、 ( b ) は酸化チタンを用いた酸化チタン区の溶液の 写真像図を示 し、 (〇) は実施例 1の光触媒組成物を用いた近赤外線照射区の 液の写真 像図を示す。

[図 7]実施例 1の光触媒組成物による大腸菌の殺菌効果を 明するための写真 像図であり、 (a) は対照区である 「光照射のみ処理区」 の写真像図を示し 、 (b) は対照区である光触媒組成物を用いた 「暗条件区」 の写真像図を示 し、 (〇) は光触媒組成物を用いた 「白色 LED光照射区」 の写真像図を示す。

[図 8]実施例 1の光触媒組成物による大腸菌の殺菌効果を 明するため図であ り、 (a) は対照区である光触媒組成物を用いた 「暗条件区」 での大腸菌の 生死の判定結果を示し、 (b) は光触媒組成物を用いた 「白色 LED光照射区」 での大腸菌の生死の判定結果をホす。

[図 9]実施例 1の光触媒組成物による青枯病菌の殺菌効果 説明するため図で あり、 (a) は対照区である光触媒組成物を用いた 「暗条件区」 での青枯病 菌の生死の判定結果を示し、 (b) は光触媒組成物を用いた 「白色 LED光照射 区」 での青枯病菌の生死の判定結果を示す。

[図 10]実施例 1の光触媒組成物のルミノール反応によるラ カル種の同定実 験の結果を示す図である。

[図 11]実施例 1の光触媒組成物の MPEC試薬を用いたスーパーオキシドラジカ ルの同定実験の結果を示す図である。

[図 12]実施例 1の光触媒組成物への紫外線 LED光照射による ESRスペクトルの 測定結果を示す図である。

[図 13]実施例 1の光触媒組成物への白色 LED光照射 (可視光照射) による ESR 解析結果を示す図である。

[図 14]実施例 2の光触媒組成物による切花 (ツバキ) の鮮度保持効果を説明 するための写真像図であり、 (a) は白色 LED光を照射している様子を示す写 真像図を示し、 (b) は実験開始から 10日後の光照射区の写真像図を示し、

(〇 ) は実験開始から 10日後の対照区の写真像図を示す。

[図 15]実施例 2の光触媒組成物による他の異なる切花 (サポナリア・バッカ リア) の鮮度保持効果を説明するための写真像図で あり、 (a) は実験開始 時の白色 LED光照射区と、 対照区の写真像図であり、 (b) は、 実験開始から 3日後の白色 LED光照射区と、 対照区の写真像図である。

[図 16]実施例 2の光触媒組成物による種子の殺菌効果を説 するための写真 像図であり、 (a) は実験開始から 7日後の対照区の写真像図を示し、 (b) は実験開始から 7日後の光照射区の写真像図を示す。

[図 17]実施例 2の光触媒組成物による種子の殺菌効果 (雑菌の殺菌効果) を 説明するための写真像図であり、 (a) は対照区のヒョコ豆の雑菌の繁殖状 態の写真像図を示し、 (b) は紫外線 LED光照射区のヒョコ豆の雑菌の繁殖状 態の写真像図を示す。

[図 18]実施例 5及び 6における珪藻からのシリカの抽出工程を示 図である

[図 19]実施例 5の光触媒組成物による有害物質の分解効果 説明するための 図であり、 (a) は分解効果の立証実験の結果を表すグラフを 示し、 (b) は実験開始から 4時間後の LED光照射区と、 対照区の溶液の写真像図を示す。 [図 20]実施例 6の光触媒組成物による有害物質の分解効果 説明するための 図であり、 ( a ) は分解効果の立証実験の結果を表すグラフを 示し、 ( b ) は実験開始から 4時間後の LED光照射区と、 対照区の溶液の写真像図を示す。 発明 を実施す るため の形態

[0014] 以下、 本開示の実施の形態について詳細に説明する 。

(光触媒組成物) 本実施の形態に係る光触媒組成物は、 可視光で触媒活性を示す光触媒組成 物であって、 三価鉄を二価鉄に還元する作用を有する還元 性有機物、 鉄供給 原料、 及び、 ガラス材料を含有してなる。 本実施の形態の光触媒組成物は、 好ましくは光触媒ガラス又は光触媒ガラスセ ラミックスである。 また、 鉄供 給原料が、 二価鉄化合物及び三価鉄化合物の少なくとも 何れかを含有し、 還 元性有機物が、 ポリフェノール類及びアスコルビン酸の少な くとも何れかで ある。

[0015] [還元性有機物] 本実施の形態の光触媒組成物は、 炭素を供給する原料として、 「三価鉄を 二価鉄に還元する作用を有する還元性有機物 」 を用いる。 以下、 この 「三価 鉄を二価鉄に還元する作用を有する還元性有 機物」 を、 「鉄還元能を有する 還元性有機物」 、 又は単に 「還元性有機物」 ということがある。

[0016] 当該還元性有機物として具体的には、 アスコルビン酸、 ポリフェノール類 等が挙げられる。 また、 これらの化合物以外にも、 植物体又はその加工品に は鉄還元能を有する還元性有機物が多く含ま れる場合があり、 還元性有機物 として好適に用いることができる。

[0017] ここで、 「アスコルビン酸」 としては、 アスコルビン酸の f ree ac i dだけで なく、 アスコルビン酸化合物 (アスコルビン酸カリウム、 アスコルビン酸ナ トリウムなど) を用いることもできる。

[0018] 「ポリフェノール類」 は、 複数のヒドロキシ基を有するフェノール性分 子 の総称である。 「ポリフェノール類」 は、 ほとんどの植物に含有される化合 物であり、 フラボノイ ドやフェノール酸など様々の種類が知られて いる。 ポリフェノール類の具体的な化合物の例とし ては、 カテキン (エピカテキ ン、 エピガロカテキン、 エピカテキンガレート、 エピガロカテキンガレート など) 、 タンニン酸、 タンニン、 クロロゲン酸、 カフェイン酸、 ネオクロロ ゲン酸、 シアニジン、 プロアントシア二ジン、 テアルビジン、 ルチン、 フラ ボノイ ド (ケルシトリン、 アントシアニン、 フラバノン、 フラバノール、 フ ラボノール、 イソフラボンなど) 、 フラボン、 カルコン類 (ナリンゲニンカ ルコンなど) 、 キサントフィル、 カルノシン酸、 エリオシトリン、 ノビレチ ン、 タンジェレチン、 マグノロール、 ホノキオール、 エラグ酸、 リグナン、 クルクミン、 クマリン、 カテコール、 プロシアニジン、 テアフラビン、 □ズ マリン酸、 キサントン、 ケルセチン、 レスベラトロール、 没食子酸、 フロロ タンニン、 などが挙げられる。 また、 分子内にこれらの化合物を 1以上有する 化合物 (例えば、 これらの化合物を含む形で結合し高分子化し た複合体) も 挙げられる。

[0019I また、 ある果実から抽出したポリフェノール組成物 については、 その果実 の名称を付したポリフェノールとして呼ぶこ ともある。 例えば、 ブドウの果 実から抽出したポリフェノール組成物はブド ウポリフェノールと呼ばれる。 また、 本実施の形態では、 還元性有機物の原料として上記のような化合 物の 精製品を用いた場合、 光触媒の活性が高くなり好適である。

[0020] •還元性有機物の供給原料 本実施の形態では、 還元性有機物の供給原料として、 ポリフェノール類及 びアスコルビン酸の少なくとも何れかを含有 する植物体又はその加工品を用 いることができる。 ここで植物体としては、 果実、 種子、 茎葉、 芽、 花、 根 、 及び地下茎から選ばれる 1以上に由来するものが挙げられる。

[0021 I アスコルビン酸を多く含む植物体原料として は、 例えば、 トマト、 ピーマ ン、 唐辛子、 冬瓜、 ニガウリ、 ズッキーニ、 キュウリ、 さやえんどう、 かぼ ちや、 なす、 グリンピース、 そらまめ、 えだまめ、 オクラ、 アセロラ、 柑橘 類 (レモン、 ライム、 オレンジ、 グレープフルーツ、 ネーブル、 ゆず、 きん かん、 かぼす、 夏みかん、 はっさく、 いよかん、 ライ厶、 温州ミカン、 シー クワーサー、 マンドリンなど) 、 柿 (カキノキ) 、 キウィフルーツ、 パパイ ア、 ブラックベリー、 ブルーベリー、 クランベリー、 ラズベリー、 ビルベリ ー、 ハックルベリー、 イチゴ、 メロン、 リンゴ、 なし、 西洋なし、 いちじく 、 桃、 スモモ、 グアバ、 ブドウ、 プルーン、 あけび、 ドリアン、 パイナップ ル、 マンゴー、 バナナ、 サクランボ (桜桃) 、 ザクロ、 スイカ、 グミ、 ビワ 、 カシス、 栗、 ライチ、 ぎんなん、 オリーブ、 アボガド、 茶、 レタス、 キャ ベツ、 ケール、 カラシナ、 水菜、 コマツナ、 大根、 かぶ、 菜の花、 白菜、 チ ンゲンサイ、 高菜、 野沢菜、 モロヘイヤ、 ねぎ、 野蒜、 ニンニク、 わけぎ、 ニラ、 タマネギ、 エシャロッ ト、 しそ、 あしたば、 ツルムラサキ、 クレソン 、 アスパラガス、 バジル、 セリ、 セロリ、 パセリ、 ホウレン草、 シュンギク 、 たけのこ、 ブロッコリー、 カリフラワー、 サツマイモ、 ジャガイモ、 やま のいも、 れんこん、 かぶ、 大根、 芽キャベツ、 海藻 (海苔、 ワカメ、 昆布、 アオサなど) などが挙げられる。

[0022I また、 ポリフェノール類を多く含む植物体原料とし ては、 例えば、 ハーブ 類 (ラベンダー、 ミント、 コリアンダー、 クミン、 セージ、 レモングラス、 ヨモギ、 コンフリー、 シソ、 レモンバー厶、 オレガノ、 キヤツ トニップ、 コ モンタイム、 ディル、 ダークオパール、 バジル、 ヒソツプ、 ペパーミント、 ラムズイヤーなど) 、 ドクダミ、 マリゴールド、 ブドウ、 コーヒー (コーヒ ーノキ) 、 茶 (チャノキ) 、 カカオ、 アカシア、 スギ、 マッ、 サトウキビ、 マンゴー、 バナナ、 パパイア、 アボカド、 リンゴ、 サクランボ (桜桃) 、 グ アバ、 オリーブ、 イモ類 (サツマイモ、 紫イモ (紫色素を多く含有するサッ マイモ) 、 ジャガイモ、 ヤマイモ、 タロイモ (サトイモ、 エビイモなど) 、 コンニャクイモなど) 、 柿 (カキノキ) 、 クワ、 ブルーベリー、 ポプラ、 イ チョウ、 キク、 ヒマワリ、 竹、 柑橘類 (レモン、 ライム、 オレンジ、 グレー プフルーツ、 ネーブル、 ゆず、 きんかん、 かぼす、 夏みかん、 はっさく、 い よかん、 ライム、 温州ミカン、 シークワーサー、 マンダリンなど) 、 イチゴ 、 ブラックベリー、 クランベリー、 ラズベリー、 ビルベリー、 ハックルベリ ー、 ウメ、 桃、 スモモ、 ナシ、 西洋ナシ、 ビワ、 キウィフルーツ、 マンゴス チン、 シシトウ、 プルーン、 メロン、 ドラゴンフルーツ、 クコ、 カシス、 カ シュー、 ガマズミ、 ザクロ、 アサイー、 アロニア、 ナス、 トマト、 大豆、 黒 大豆、 小豆、 サヤインゲン、 落花生、 黒胡麻、 蕎麦、 ダッタンソバ、 ゴマ、 紫キャベツ、 ウルシ、 ヌルデ、 シュンギク、 ブロッコリー、 ホウレンソウ、 コマツナ、 ミツバ、 オクラ、 蕊、 タマネギ、 モロヘイヤ、 シュンギク、 ニン ニク、 紫タマネギ、 アスパラガス、 パセリ、 ユーカリ、 ウド、 ギムネマ・シ ルベスタ、 センナ、 タンポポ、 スギナ、 シダ (ワラビ、 ゼンマイなど) 、 ナ ラ、 クヌギ、 カエデ、 セコイヤ、 メタセコイヤ、 ヒノキ、 アカメガシワ、 タ カノツメ、 アマチャ、 アケビ、 ヤマウコギ、 リョウブ、 タムシバ、 コブシ、 サルナシ、 シロモジ、 クロモジ、 コシアブラ、 クサギ、 ホオノキ、 マタタビ

、 バナバ、 ルイボス、 ラフマ、 クズ、 メグスリノキ、 ウリン、 メルバオ、 ア ォギリ、 スオウ、 ブラジルボク、 メリンジョ、 サクラ、 モクレン、 イエルバ

•マテ、 メヒルギ、 オヒルギ、 ヤエヤマヒルギ、 ハマザクロ、 ニッパヤシ、 ヒルギダマシ、 ヒルギモドキ、 サキシマスオウノキ、 ゴボウ、 ウコン、 レン コン、 海藻 (海苔、 ワカメ、 昆布、 アオサ、 アラメ、 サガラメなど) などが 挙げられる。

[0023] これらの中でも、 ブドウ、 コーヒー (コーヒーノキ) 、 茶 (チャノキ) 、 カカオ、 アカシア、 スギ、 マッ、 ゆず、 レモン、 ハーブ類 (ラベンダー、 ミ ント、 コリアンダー、 クミン、 セージ、 シソ、 レモングラス、 ヨモギ、 コン フリー、 レモンバーム、 オレガノ、 キヤツ トニップ、 コモンタイム、 ディル

、 ダークオパール、 バジル、 ヒソツプ、 ペパーミント、 ラムズイヤーなど)

、 ドクダミ、 マリゴールド、 サトウキビ、 マンゴー、 バナナ、 パパイア、 ア ボカド、 リンゴ、 サクランボ (桜桃) 、 グアバ、 オリーブ、 イモ類 (サツマ イモ、 紫イモ (紫色素を多く含有するサツマイモ) 、 ジャガイモ、 ヤマイモ

、 タロイモ (サトイモ、 エビイモなど) 、 コンニャクイモなど) 、 柿 (カキ ノキ) 、 クワ、 ブルーベリー、 ポプラ、 イチョウ、 キク、 ヒマワリ、 竹が好 適に用いられる。 [0024I 「加工品」 としては、 ポリフェノール類やアスコルビン酸を含有す る植物 体の乾燥物、 搾汁液、 抽出物、 抽出液などが挙げられる。 また、 搾汁液や抽 出液を、 さらに乾燥物としたものであってもよい。

[0025] 「乾燥物」 としては、 破砕、 粉砕、 粉末化などの処理を行ったものが望ま しい。 また、 鉄との反応効率の観点を考慮すると、 粒子径の小さい粉末にし たものが好適である。

「抽出物」 及び 「抽出液」 の抽出溶媒としては、 アスコルビン酸であれば 、 水が好適であり、 ポリフェノール類であれば、 水、 熱水、 アルコール (特 にエタノール) 、 含水アルコール (特に含水エタノール) が好適である。

[0026] 還元性有機物の供給原料としては、 植物体又はその加工品を水若しくは熱 水で抽出し、 その後に残った残渣についても好適に用いる ことができる。 ま た、 植物体又はその加工品を還元状態で熱分解し て得られる乾留液 (植物乾 留液) も、 好適に用いることができる。

[0027] •原料コストが有利な植物体由来原料 本実施の形態では、 還元性有機物の供給原料として果実搾汁液、 茎葉搾汁 液、 植物乾留液、 コーヒー豆焙煎物、 茶葉を原料として用いることにより、 さらに低コストで光触媒を製造することが可 能となり、 経済的に有利な効果 を期待することができる。

[0028] (a)果実搾汁液 還元性有機物の供給原料としては、 「果実搾汁液」 を用いることが好適で ある。 果実搾汁に用いる果実の種類としては、 上述した果実を好適に用いる ことができる。 特に、 総ポリフェノール量の多いものがカ価の点で 好適であ る。 また、 原料コストの観点を踏まえると、 ブドウ、 バナナ、 リンゴ、 カキ 、 トマト、 柑橘類などの搾汁液を用いることが好適であ る。

[0029] (b)茎葉搾汁液 還元性有機物の供給原料としては、 「茎葉搾汁液」 を用いることが好適で ある。 茎葉搾汁に用いる植物の種類としては、 上述した植物体茎葉を好適に 用いることができる。 特に、 総ポリフェノール量の多いものがカ価の点で 好 適である。 また、 原料コストの観点を踏まえると、 スギナ、 ヒノキ、 マッ、 スギなどの搾汁液を用いることが好適である 。

[0030] (c)植物乾留液 当該還元性有機物の供給原料としては、 「植物乾留液」 を用いることが好 適である。 当該原料には、 ポリフェノール類が多く含まれることに加え て、 フェノール類、 有機酸、 カルボニル類、 アルコール類、 アミン類、 塩基性成 分、 その他中性成分などの多くの還元性有機物の 分子が含まれると推測され る。

[0031 ] ここで植物乾留液とは、 還元状態の植物体を熱分解することによって 得ら れる乾留液 (粘りけのある褐色を呈する液体) を指す。 外見は赤褐色〜暗褐 色を呈する。 原液のまま用いることもできるが、 濃縮液、 希釈液、 これらの 乾燥物として用いることも可能である。 植物乾留液として具体的には、 木酢 液、 竹酢液、 籾酢液などを挙げることができる。 原料コストの観点からもこ れらを好適に用いることができる。

[0032] (d)コーヒー豆焙煎物 還元性有機物の供給原料としては、 「コーヒー豆焙煎物」 に由来する原料 を用いることが好適である。 この原料には、 ポリフェノール類が非常に多く 含まれる。 本実施の形態では、 コーヒー豆焙煎物をそのままの状態で又は粉 砕状態にして用いることができる。 また、 粉砕物を水又は熱水で抽出した成 分 (いわゆる淹れたコーヒーの成分) を用いることができる。 また、 水又は 熱水で抽出した後の残渣 (いわゆるコーヒー粕) を用いることができる。 特 には、 原料コストの観点を踏まえると、 コーヒー成分抽出後に大量に廃棄さ れる 「コーヒー粕」 を用いることが最も好適である。

[0033] ここで、 コーヒー豆焙煎物とは、 通常の方法に従ってコーヒー豆を焙煎し たものであれば如何なるものも含まれる。 いわゆる挽いた (粉砕した) コー ヒー豆の状態もここに含まれる。 また、 コーヒー豆を粉砕したものを焙煎し たものであってもよい。 ここでコーヒー豆としては、 コーヒーノキである Cof fea arab i ca (アラビカ種) 、 C. canephora (ロブスタ種) 、 C. L i ber i ca (リ ベリカ種) の種子であれば如何なるものを用いることが できる。 なお、 生の コーヒー豆であってもよいが、 通常用いられるように乾燥保存されたものが 好適である。 原料コストの観点を踏まえると、 工業的には、 規格外のコーヒ ー豆を用いることが好ましい。 ここで焙煎としては、 通常行われる如何なる 方法を挙げることができ、 例えば、 直火焙煎、 熱風焙煎、 遠赤外線焙煎、 マ イクロ波焙煎、 加熱水蒸気焙煎、 低温焙煎などを挙げることができる。

[0034I また、 粉砕とは、 例えば、 コーヒーミル、 グラインダー、 石臼などによっ て通常のコーヒー豆が挽かれた状態のことで あり、 粗挽きから粉末化状態の ものまで幅広く含むものである。 鉄との反応効率の観点を考慮すると、 表面 積の大きい状態にした方が好適であるので、 破砕、 粉砕、 粉末化等すること が好適である。

[0035] (d)茶葉 還元性有機物の供給原料としては、 「茶葉」 に由来する原料を用いること が好適である。 この原料には、 ポリフェノール類が非常に多く含まれる。 本 実施の形態では、 茶葉をそのままの状態で又は粉砕状態にして 用いることが できる。 また、 粉砕物を水又は熱水で抽出した成分 (いわゆる淹れた茶の成 分) を用いることができる。 また、 水又は熱水で抽出した後の残渣 (いわゆ る茶殻) を用いることができる。 特に、 原料コストの観点を踏まえると、 茶 成分抽出後に大量に廃棄される 「茶殻」 を用いることが最も好適である。

[0036] ここで、 茶葉とは、 チャノキである Came l l i a s i nens i sの茎葉を摘んだもの であれば如何なるものも用いることができる 。 また摘み方は如何なる方法で もよいが、 コストの観点を踏まえると、 特に機械摘みが好適である。 なお、 摘んだ茶葉は細胞の内容物が混ざり合って酸 化発酵が起こるが、 本発明では 如何なる発酵段階の茶葉であっても用いるこ とができる。 例えば、 加熱して 酸化発酵を抑えた緑茶 (煎茶、 番茶、 茎茶、 ほうじ茶など) 、 ある程度発酵 させた青茶 (ウーロン茶など) 、 完全に発酵させた紅茶、 ;酸化発酵後にさ らに麹菌発酵させた黒茶 (プーアル茶など) 、 などを用いることができる。 好ましくは、 緑茶、 紅茶、 ウーロン茶を挙げることができる。 なお、 原料コ ストの観点を踏まえると、 工業的には、 規格外の茶葉を用いることが好まし い。 また、 鉄との反応効率の観点を考慮すると、 表面積の大きい状態にした 方が好適であるので、 破砕、 粉砕、 粉末化等して用いることが好適である。

[0037I 上記の還元性有機物の供給原料は、 1種のみを用いることもできるし、 2 種以上を混合して用いることもできる。

[0038] また、 炭素を供給する原料として、 還元性ガスを用いることができる。 こ の還元性ガスとしては、 例えば、 一酸化炭素 (Co) 、 炭化水素ガス (水素 (H 2) 、 メタン (CHQ 、 プロパン (C3HQ 、 ブタン (C 4 H 10 ) など) 、 などが挙げ られる。 また、 このような還元性ガスを用いることで、 後述の光触媒組成物 の製造方法において、 適切な還元雰囲気下での光触媒組成物の製造 が可能と なる。

[0039] [鉄供給原料] 本実施の形態の光触媒組成物は、 鉄元素を供給する原料として、 二価鉄の 供給原料及び三価鉄の供給原料の少なくとも 何れかを含有する。 また、 鉄元 素を供給する原料として、 金属鉄の供給原料を用いることもできる。 また、 複数のものを混合して用いることもできる。

[0040] ここで、 「二価鉄化合物 (二価鉄の供給原料) 」 としては、 塩化鉄 (IDs 硝酸鉄 (II)、 硫酸鉄 (IDs 水酸化鉄 (II)、 酸化鉄 (II)、 酢酸鉄 (II)、 乳酸鉄 (

II)、 クエン酸鉄 (II)ナトリウム、 グルコン酸鉄 (II)など水溶性の鉄化合物、 ; 炭酸鉄 (II)、 フマル酸鉄 (II)などの不溶性の二価鉄化合物が挙げられ 。

[0041 ] 「三価鉄の供給原料」 としては、 塩化鉄 (Ill)s 硫酸鉄 (Ill)s クエン酸鉄 (

III)、 クエン酸鉄 (III)アンモニウム、 EDTA鉄 (III)などの水溶性の三価鉄化 合物 ;酸化鉄 (Ill)s 硝酸鉄 (Ill)s 水酸化鉄 (Ill)s ピロリン酸鉄 (III)など の不溶性の三価鉄化合物が挙げられる。

[0042] また、 これらの三価鉄化合物を多く含む天然原料と しては、 赤玉土、 鹿沼 土、 ローム (アロフェン質の鉄分を多く含む土壌) 、 ラテライト (酸化鉄 (II

I)を多く含む土壌) 、 ゲータイト (非結晶質の鉱物を含む土壌) などの土壌 、 ;黄鉄鉱、 白鉄鉱、 菱鉄鉱、 磁鉄鉱、 針鉄鉱など天然の鉄鉱石、 ; これら の鉄鉱石が砂塵化した砂鉄、 ;ヘム鉄、 貝殻などの生体由来の物質 ;などが 挙げられる。

[0043I また、 「金属鉄の供給原料」 としては、 製錬鉄や合金などの鉄材が挙げら れる。 その他にも、 「金属鉄の供給原料」 として、 金靑び (サビ) も用いるこ とができる。

[0044] さらには、 「鉄供給原料」 として、 鉄還元能を有する還元性有機物又はそ の供給原料と、 鉄供給原料を、 水存在下にて混合し、 得られた反応生成物を 用いることもできる。 より具体的には、 例えば、 「鉄供給原料」 として、 ポ リフェノール類又はその供給原料と、 鉄供給原料とを水の存在下で混合し、 得られたポリフェノール鉄錯体 (二価鉄イオン ( F e 2+) がポリフェノール類 と錯体構造を形成してなるもの) が好適に挙げられる。

[0045] なお、 上記の鉄供給原料は、 水不溶性のものであっても、 上記還元性有機 物のキレート能によって水溶化するため、 鉄供給原料として直接用いること が可能である。 また、 上記鉄化合物が水に溶解した二価鉄イオン及 び/又は 三価鉄イオンを含む水溶液を用いることもで きる。

[0046] 上記鉄供給原料のうち、 光触媒組成物を効率よく製造するためには、 水溶 性の二価鉄化合物又は三価鉄化合物を用いる ことが好適である。 特に、 安価 な塩化鉄、 硫酸鉄などを用いることが好適である。 また、 原料コスト及び安 定供給の観点を踏まえて製造するためには、 天然物である土壌 (特に赤玉土 、 鹿沼土、 ロームなど) 、 金属鉄を鉄供給原料として用いることが好適 であ る。

[0047] [ガラス材料] 本実施の形態の光触媒組成物は、 ガラス材料として、 ケイ素を供給する原 料 (ケイ素供給原料) を含有する。 この他にも、 ガラス材料として、 ガラス やセラミックスの製造に通常用いられる、 公知のガラス材料を用いることが できる。 例えば、 ガラス材料として、 珪酸塩ガラス (ソーダ石灰ガラス、 ホ ウケイ酸ガラス、 石英ガラス、 鉛ガラスなど) の製造に通常用いられる材料 を用いることができる。 [0048I 「ケイ素供給原料」 としては、 イネ科植物、 シダ植物、 及び藻類から選ば れる植物体、 並びにこのような植物体の加工品が挙げられ る。 イネ科植物と しては、 イネ、 トウグサ、 サトウキビ、 イグサ、 タケ、 コムギ、 オオムギ、 トウモロコシ、 エンバク、 シバ、 ソルガム、 ライムギ、 アワ、 エレファント グラス、 ススキ、 ササなどが挙げられる。 シダ植物としては、 トクサ、 スギ ナなどが挙げられる。 藻類としては、 珪藻 (特にキートセロス) などが挙げ られる。

[0049I この中でも、 イネ、 サトウキビを用いることが好適であり、 さらに農産業 で副産物として多く発生する籾殻、 イネ葉、 サトウキビ葉を用いることが最 も好適である。 このような副産物を利用することで、 低コストで光触媒を製 造することが可能で、 経済的に有利な効果を期待することができる 。

[0050I 「加工品」 としては、 ケイ素を含有する上記した植物体の乾燥物、 搾汁液 、 抽出物、 抽出液、 搾汁液や抽出液の乾燥物などが挙げられる。 乾燥物、 搾 汁液、 抽出物、 抽出液は、 前述の還元性有機物におけるこれらと同様の 処理 によって得ることができる。

[0051 ] また、 上記植物体又は加工品以外にも、 「ケイ素供給原料」 として、 ケイ 酸塩、 ケイ素、 二酸化ケイ素 (シリカ) 、 塩化ケイ素、 珪砂、 ガラス (リサ イクルガラス) などを用いることができる。 また、 これらのケイ素供給原料 を複数組み合わせて用いることも好適である 。

[0052] ケイ素供給原料以外のガラス材料としては、 例えば、 ホウ素、 酸化ホウ素 、 ホウ酸ナトリウム (特に四ホウ酸ナトリウム) 、 ソーダ灰、 無水炭酸ナト リウム、 石灰石、 炭酸カルシウム、 炭酸カリウム、 などが挙げられるが、 こ れらに限定されない。 また、 これらのガラス材料に、 安定剤、 装飾性等を高 めるための色材などを添加することもできる 。

[0053] 上記原料の好ましい混合比率について説明す る。 還元性有機物と鉄供給原 料の混合比率としては、 還元性有機物、 又は還元性有機物の供給原料の乾燥 重量 100重量部に対して、 鉄供給原料を鉄元素の重量換算で 0. 1重量部以上、 好ましくは 0. 5重量部以上、 より好ましくは 1重量部以上、 さらに好ましくは 2 重量部以上、 特に好ましくは 3重量部以上、 一層好ましくは 4重量部以上を含 有するように配合すればよい。 鉄元素の割合が少なすぎる場合 (鉄元素に対 して還元性有機物の混合割合が多すぎる場合 ) には、 過剰に存在する還元性 有機物がラジカル消去物質 (スカベンジャー) として機能するため、 光触媒 活性を阻害する可能性がある〇

[0054J また、 鉄元素量の上限としては、 鉄元素の重量換算で 10重量部以下、 好ま しくは 8重量部以下、 より好ましくは 6重量部以下を挙げることができる。 鉄 元素の割合が多すぎる場合 (鉄元素に対して還元性有機物の混合割合が な すぎる場合) には、 鉄イオンを二価の状態で維持できなくなり光 触媒活性が 低下し、 好ましくない。

[0055] 一方、 還元性有機物とケイ素供給原料の混合比率と しては、 還元性有機物

、 又は還元性有機物の供給原料 (乾燥重量) と、 鉄供給原料との合計 100重量 部に対して、 ケイ素供給原料を元素の重量換算で 5重量部以上、 好ましくは 10 重量部以上、 より好ましくは 50重量部以上、 さらに好ましくは 60重量部以上 、 特に好ましくは 90重量部以上を含有するように配合すればよ 。 ケイ素元 素の割合が少なすぎる場合 (ケイ素元素に対して還元性有機物の混合割 が 多すぎる場合) には、 ガラスセラミックスが形成されないため好ま しくない

[0056] また、 ケイ素元素量の上限としては、 ケイ素元素の重量換算で 99重量部以 下、 好ましくは 60重量部以下、 より好ましくは 30重量部以下を挙げることが できる。 ケイ素元素の割合が多すぎる場合 (ケイ素元素に対して還元性有機 物の混合割合が少なすぎる場合) には、 ガラスセラミックスが形成されない ため好ましくない。 なお、 還元性有機物、 又は還元性有機物の供給原料 (乾燥重量) と、 鉄供 給原料との合計 100重量部に対して、 ケイ素供給原料 (乾燥重量) を、 好まし くは 100重量部以上、 より好ましくは 200重量部以上、 さらに好ましくは 300重 量部程度を含有するように配合すればよい。

[0057] なお、 還元性有機物供給原料やケイ素供給原料とし て、 植物体の抽出物又 は抽出液を用いる場合には、 抽出原料として用いた当該植物体の乾燥重量 を 「還元性有機物の供給原料の乾燥重量」 とみなして、 混合比率を算出すれば よい。 例えば、 還元性有機物の供給原料として乾燥茶葉を用 い、 この茶葉を 熱水抽出して得られた抽出液と、 鉄供給原料と、 を反応させたとする。 この 場合、 当該乾燥茶葉の重量を 「還元性有機物の供給原料の乾燥重量」 として 用いて、 鉄供給原料との混合比率を算出する。

[0058I ところで、 発明者らは、 前述したように光触媒として、 還元性有機物と、 鉄供給原料を、 水存在下にて混合し、 得られた反応生成物、 より具体的には 、 ポリフェノール類と、 鉄供給原料とを水の存在下で混合し、 得られたポリ フェノール鉄錯体を開発している。 このポリフェノール鉄錯体は、 可視光に 対する光触媒効果を示すものの、 その安定性 (持続性) が問題であった。 こ の問題を解決するに際して、 発明者らは、 ポリフェノール鉄錯体中の炭素が 光から電子を受け取って二価鉄に引き渡すこ とで二価鉄がその状態で安定し ていると考えた。 そこで、 ポリフェノール鉄錯体の安定性を高めるには 炭素 と二価鉄を結合させれば安定な光触媒を得る ことができると考えた。 しかし 、 二価鉄と炭素を結合することが困難であり、 様々の条件で反応を検討した 結果、 ポリフェノール類と鉄供給源とを用いてガラ スを製造したところ、 炭 素と鉄を結合させることができた。 さらに、 ガラス材料に含まれるケイ素に よって、 光触媒としての安定性が高くなることを見出 した。 以下、 本実施の 形態の光触媒組成物の製造方法について説明 する。

[0059] (光触媒組成物の製造方法) 本実施の形態の光触媒組成物の製造方法では 、 三価鉄を二価鉄に還元する 作用を有する還元性有機物、 鉄供給原料、 及び、 ガラス材料を混合した混合 物を、 還元雰囲気下、 加熱温度 9 0 0 °C以上、 加熱時間 12分以上で加熱処理 する工程 (加熱工程) を含む。 この加熱工程 (より詳細には、 還元焼成工程

) で光触媒組成物を製造することで、 原料を適切に溶融して、 ガラスとして の品質を向上できるとともに、 炭素と二価鉄の結合性を高めることができ、 安定した光触媒活性を有する光触媒組成物が 得られる。 [0060I 加熱温度としては、 9 0 O °C以上であればよいが、 1 2 0 O °C以上、 1 3 。 0 °C以下とすることがより好適である。 また、 加熱時間としては、 12分以 上であればよく、 12分以上、 12時間以下がより好適であり、 12分以上、 3時間 以下がさらに好適である。 なお、 溶融状態や作業効率などを考慮して、 加熱 温度を 20分 (0. 33時間) 程度とすればよい。 このような温度や時間で加熱エ 程を行うことで、 原料をより適切に溶融し、 結晶化も促進されて、 ガラスと しての品質により優れるとともに、 炭素と二価鉄の結合性もより咼まり、 よ り安定した光触媒活性を有する光触媒組成物 が得られる。

[0061 ] また、 加熱工程は、 還元雰囲気下で行うことで、 還元性有機物の三価鉄を 二価鉄に還元する作用を高めることができる 。 なお、 加熱によって還元性有 機物が炭素化し、 二酸化炭素を発生し、 還元雰囲気下での加熱工程が可能と なるが、 加熱工程において、 前述したような還元性ガスを供給することで 、 還元作用をより適切なものとすることができ る。

[0062] また、 上記加熱工程の他にも、 混合工程、 冷却工程、 粉砕工程、 などを含 む。 混合工程は、 所定の混合比率の還元性有機物、 鉄供給原料、 ケイ素供給 原料を含むガラス材料を、 るつぼなどの容器に投入して混合する工程で ある 。 冷却工程は、 上記加熱工程で得られた溶融物を適宜冷却し てガラス化する 工程である。 この冷却工程により、 溶融物がガラス化し、 ガラス又はガラス セラミックスからなる光触媒組成物が生成さ れる。 この冷却工程により、 板 状、 塊状のガラス又はガラスセラミックス (以下、 「板ガラス」 、 「ガラス 塊」 という。 ) が得られる。 この板ガラスやガラス塊をそのまま光触媒組 成 物としたり、 適宜の大きさに分割して光触媒組成物とした りすることができ る。 このような光触媒組成物では、 その内部及び表面に、 光触媒活性を有す る炭素と二価鉄の結合物 (反応生成物) が散在し、 光触媒組成物の表面の反 応生成物によって光触媒反応が発生する。 また、 光触媒組成物の表面が削れ た場合でも、 新たに露出した表面に存在する反応生成物に よって光触媒反応 が発生することから、 優れた光触媒活性を維持できる。

[0063] また、 板ガラスやガラス塊を、 粉砕工程によって粉砕し、 得られた粉砕物 を光触媒組成物とすることもできる。 この粉砕工程では、 板ガラスやガラス 塊を、 ハンマーや乳鉢等を用いて手作業で、 又は粉砕機、 ビーズミル等の装 置を用いて粉砕し、 粉砕物を得る工程である。 粉砕物の形態としては、 例え ば、 ビーズ状、 顆粒状、 粉末状などが挙げられる。 このように粉砕した光触 媒組成物では、 表面積が増大することで、 分解対象の有機物や殺菌対象の微 生物などとの接触性が高まり、 光触媒活性をより向上させることができる。

[0064I 図 1は、 本実施の形態の光触媒組成物の製造工程の好 ましい一例を示すフ ローチャートである。 この図 1に示すように、 本実施の形態の光触媒組成物 は、 混合工程、 加熱工程、 冷却工程、 粉砕工程を含むが、 これら以外にも、 ガラス製造に必要な工程を含んでもよい。

[0065] 本実施の形態の光触媒組成物の形態は、 板ガラス、 ガラス塊、 又はビーズ 状、 顆粒状、 粉末状の粉砕物の何れの形態としてもよく、 用途や使用形態に よって適宜の形態とすることができる。 また、 複数の形態の光触媒組成物を 、 組み合わせて使用することもできる。

[0066] 本実施の形態の光触媒組成物の形状としては 、 例えば板ガラスの場合は、 四角形が好ましいが、 三角形、 五角形以上の多角形、 円形、 長円形などが挙 げられ、 星形、 ハート形など、 装飾性や嗜好性を高めた形状が挙げられる。 この場合、 サイズ (外径) としては、 1 mm以上 50mm以下が好ましい。 また、 ガ ラス塊、 粉砕物の場合は、 球状、 長球状、 円柱状、 角柱状、 円錐体状、 角錐 体状などが挙げられるが、 不定形状であってもよい。 この場合、 サイズとし ては、 1 mm以上 50mm以下が好ましい。 粉体の場合は、 形状は特に限定されず、 サイズ (粒径) としては、 平均粒子径 0. 1 Mm以上 5mm以下が好ましい。 ここで 、 「平均粒子径」 とは、 レーザー回折 •散乱法によって求めた粒度分布にお ける積算値 5〇%での粒径をいう。

[0067] 上記製造方法で製造された本実施の形態の光 触媒組成物は、 優れた光触媒 活性を有し、 かつこの優れた光触媒活性を長期に維持可能 な優れた安定性を 有する。 この光触媒組成物では、 還元性有機物由来の炭素が鉄イオンを二価 の状態 (Fe2 +の状態) にして、 錯体を形成しているものと推測される。 また、 ケイ素供給原料のケイ素によって、 炭素と鉄との結合性が高まり、 光触媒と しての安定性が高くなると推測される。

[0068I 本実施の形態の光触媒組成物は、 太陽光や、 200~ 1400nmという幅広い波長 域の光、 すなわち紫外線だけでなく可視光や赤外線を 照射した場合にも、 こ れらの光を吸収して優れた光触媒活性を発揮 する性質を有する。

[0069] ここで、 「紫外線」 とは、 380nm以下の波長域の光を指す。 また、 「可視光 J とは、 ヒトの目で見える波長域である波長 380~750nmの光を指す。 具体的 には、 「可視光」 には 380nm~450nm (紫色光) 、 450nm~495nm (青色光) 、 4 95nm~570nm (緑色光) 、 570nm~590nm (黄色光) 、 590nm~620nm (橙色光) 、 620nm~750nm (赤色光) の波長域の光が含まれる。 また、 「赤外線」 とは 、 750nm以上の波長域の光を指す。

[0070] 中でも、 この光触媒組成物は、 紫外線を照射した時に極めて強い光触媒活 性 (殺菌作用) を示す。 特に近紫外線である 200nm~380nmの波長の光におい てのその活性の強さは、 酸化チタンよりも遥かに大きな光触媒活性を 示す。

[0071 ] また、 本実施の形態の光触媒組成物は、 酸化チタンでは活性を示さない波 長域である可視光及び赤外線を照射した時に も強い光触媒活性を示す。 この 光触媒組成物は、 可視光では特に波長の短い紫色光〜青色光 (380~495nm) の波長域で強い活性を示す。 この光触媒組成物は、 赤外線では近赤外線であ る 750~ 1400nm (特に 900~ 1300nm付近、 さらに特には 1 100~ 1300nm付近) の 波長域で強い活性を示す。

[0072] 本実施の形態の光触媒組成物に照射する光と しては、 可視光、 紫外線、 赤 外線などが含まれる自然光 (太陽光) 、 所定の波長の光を照射する照明光な どが挙げられる。 例えば、 太陽光下では光触媒組成物の光触媒活性が他 覚、 数秒で有機物分解や殺菌が可能となる。 また、 照明光としては、 白色 LED光源 からの白色 LED光が好ましく、 室内での使用に好適であるとともに、 室内のよ うに自然光が弱い環境で用いることで、 光触媒組成物の光触媒活性を高め、 有機物分解効果や殺菌効果をより高めること ができる。

[0073] 本実施の形態の光触媒組成物は、 照射された光エネルギーを吸収し、 近傍 の有機物質等を分解する活性を示す。 当該活性は、 光エネルギーによって励 起した光触媒が発生させるラジカルによって 奏される現象と推測される。

[0074I 本実施の形態の光触媒組成物は、 光を連続的に照射した場合、 照射してい る間は光触媒活性を連続して発揮する性質を 有する。 また、 この光触媒組成 物は、 光照射を一度中断した場合においても、 再度の照射によって光触媒活 性が発揮される。 即ち、 この光触媒組成物は、 光触媒として繰り返して使用 することが可能な資材である。 これは、 当該反応生成物 (当該還元性有機物の Fe2 +錯体) の分子内の共鳴構 造が光エネルギーを Fe2 +に伝達して効率よくラジカルを発生させる ともに、 自らの分子はラジカルによる攻撃を受けても 共鳴構造によりスカベンジする 安定した構造体であるためと推測される。 また、 ケイ素供給原料のケイ素に よって、 炭素と鉄との結合性が高まり、 光触媒としての安定性が高くなった からだと推測される。

[0075I 本実施の形態の光触媒組成物は、 チタンなどを使用せず、 人体や環境に対 する影響が抑制されるため、 医薬、 食品、 公衆衛生、 農業等、 工業等、 様々 な用途に用いることができる。 すなわち、 還元性有機物として、 アスコルビ ン酸やポリフェノール類を用いており、 これらは食品由来の供給原料に由来 する物質であるので、 特に食品分野での使用が期待される。 特にアスコルビ ン酸は無色透明のため好適である。 また、 還元性有機物供給原料として、 植 物乾留液を用いた場合、 当該成分はやや匂いを有する物質を含む。 しかし、 当該原料は非常に安価であるため、 農業、 医薬、 公衆衛生等の分野での使用 が期待される。

[0076I また、 本実施の形態の光触媒組成物では、 ガラス材料が、 イネ科植物、 シ ダ植物、 及び藻類から選ばれる植物体、 並びに植物体の加工品の何れかから なるケイ素供給原料を含有する。 このことからも、 本実施の形態の光触媒組 成物が、 医薬、 食品、 公衆衛生、 農業等、 工業等、 様々な用途に用いること ができるとともに、 ケイ素によって炭素と二価鉄の結合性を高め 、 安定した 光触媒組成物を提供できる。 また、 ケイ素供給原料として、 ケイ酸を多く含 むイネ科植物、 シダ植物、 藻類などを用いることから、 これらの新たな可能 性を探る研究にもつながることが期待される 。 また、 植物資源を活用するこ とで、 人体や環境への影響を抑制し、 原料が安価であり、 廃棄物を低減する ことができ、 付加価値の高い光触媒組成物を提供できる。

[0077I 本実施形態の光触媒組成物は、 紫外線だけでなく可視光や赤外線を照射し た場合にも活性を発揮する性質を有する。 これにより本実施形態の光触媒組 成物は、 従来技術の酸化チタンでは利用が困難であっ た様々な用途での使用 が期待される。 例えば、 通常の室内空間や室内に配置した液体中 (花瓶、 水 槽などの容器に入れた水など) での利用が可能となる。

[0078] (有機物分解剤、 殺菌剤、 消臭剤) 本実施の形態の光触媒組成物は、 優れた光触媒活性を有し、 安定性に優れ ているため、 有機物分解剤、 殺菌剤、 消臭剤として好適に用いることができ る。 以下、 各々について説明する。

[0079] (有機物分解剤) 本実施の形態の有機物分解剤は、 上述した可視光で触媒活性を示す光触媒 組成物を含有する。 このため、 本実施の形態の有機物分解剤は、 可視光を含 む幅広い波長の光に対する優れた光触媒活性 を有し、 しかも安定性に優れる ものとなり、 様々な有機物質の分解に用いることができる 。 特に、 この光触 媒組成物は、 有機系の汚染物質や有害物質の分解に好適に 用いることができ るため、 環境浄化のー工程において有用である。

[0080] ここで、 汚染物質や有害物質としては、 水質汚染、 土壌汚濁、 大気汚染を 引き起こす物質をいう。 例えば、 生活排水、 し尿水、 工場排水、 汚染された 河川や湖沼水、 ゴミ廃棄場の土壌、 産業廃棄物、 農地、 工場跡地などに含ま れる人体や環境に影響を与える有機系物質な どが挙げられる。

[0081 ] 分解対象となる具体的な有機物質としては、 例えば、 洗剤、 飲食品残渣、 し尿、 糞便、 農薬、 悪臭物質、 廃油、 ダイオキシン、 PCB、 DNA、 RNA、 タンパ ク質など有機性廃棄物などが挙げられる。

[0082] 本実施の形態の有機物分解剤は、 分解効果が極めて強力であるため、 難分 解性の有機物 (例えば塩基性フクシン) について効率良く分解することがで きる。 例えば、 100W/m 2 の光を照射する場合であれば、 1日あたり少なくとも 2. 5mg/L以上、 多い場合には 35mg/L以上の有機物分解が可能である。

[0083] (殺菌剤) 本実施の形態の殺菌剤は、 上述した可視光で触媒活性を示す光触媒組成 物 を含有する。 このため、 本実施の形態の殺菌剤は、 可視光を含む幅広い波長 の光に対する優れた光触媒活性を有し、 しかも安定性に優れたものとなり、 様々なものの殺菌に用いることができる。 この殺菌対象として、 具体的には 、 医療器具、 病室の壁、 患者の患部、 衣服、 寝具など、 食品の製造機器のラ イン、 食材、 まな板、 包丁等の台所用品、 食器、 便座、 手すり、 農機具、 養 液栽培の装置や養液などが挙げられる。 本実施の形態の殺菌剤では、 通常の 酸化チタンを用いた殺菌方法と違って可視光 や赤外線の照射使用が可能であ るため、 使用用途や使用場面が大幅に向上したものと なる。 また、 本実施の 形態の殺菌剤は、 バクテリアだけでなく、 真核微生物、 藻類、 古細菌、 ウィ ルス、 ウィロイドなどの殺菌が可能である。

[0084I 本実施の形態の殺菌剤は、 殺菌効果が極めて強力であるため、 例えば表面 殺菌の場合、 太陽光照射を数分程度、 好ましくは 10分以上、 より好ましくは 2 0分以上の処理によって、 +分な殺菌効果が得られる。 また、 LEDや蛍光灯等 の比較的弱い光を照射する場合であっても、 1時間以上、 好ましくは 6時間以 上、 より好ましくは 12時間以上の処理によって +分な殺菌効果が得られる。

[0085] (消臭剤) また、 本実施の形態の消臭剤は、 上述した可視光で触媒活性を示す光触媒 組成物を含有する。 上述したように、 本実施の形態の光触媒組成物は、 優れ た有機物分解効果及び殺菌効果が得られるた め、 有機物の臭いや、 微生物の 有機物の分解による臭いの発生を抑制するこ とができる。

[0086] このため、 本実施の形態の消臭剤は、 様々な臭いの消臭に用いることがで きる。 特に、 上記有機物分解剤の説明で挙げたような有機 物が発生する臭い に対する優れた消臭作用を発揮できる。 また、 上記殺菌剤の説明で挙げたよ うな微生物などによる有機物の分解による臭 いの発生を良好に抑制できる。 [0087I 以上のように、 本実施の形態の光触媒組成物を、 有機物分解剤、 殺菌剤、 又は消臭剤として使用する場合、 その形態としては、 例えば、 板ガラス、 ガ ラス塊が挙げられ、 さらに、 ビーズ状、 顆粒状、 粉末状の粉砕物が挙げられ る。 このような形態の有機物分解剤、 殺菌剤、 又は消臭剤を、 そのまま、 又 は容器などに収納して、 分解対象、 殺菌対象、 又は消臭対象の気体中、 液体 中に配置し、 光を照射することで、 有機物分解作用、 殺菌作用、 消臭作用が 発揮される。 また、 ビーズ状、 顆粒状、 又は粉末状の粉砕物の形態である光 触媒組成物を含むコーティング剤としても利 用できる。

(水素製造方法における使用) 本実施の形態の光触媒組成物は、 優れた光触媒活性を有し、 安定性に優れ ているため、 水素製造方法において好適に用いることがで きる。 前記光触媒 組成物の強力な光触媒活性により、 水を酸素と水素に酸化分解することがで きる。 すなわち、 本開示によれば、 前記光触媒組成物を用いて、 水を酸化分 解して水素を発生させる工程を含む、 水素製造方法が提供される。 本実施の 形態の光触媒組成物を、 水素製造方法において使用する場合、 その形態とし ては、 例えば、 板ガラス、 ガラス塊が挙げられ、 さらに、 ビーズ状、 顆粒状 、 粉末状の粉砕物が挙げられる。 このような形態の光触媒組成物を、 そのま ま、 又は容器などに収納して、 水中に配置し、 光を照射することで、 水素を 発生させることができる。 実施例 1

[0088I 以下、 実施例を挙げて本開示を具体的に説明するが 、 本開示が以下の実施 例に限定されるものではない。

[0089] (実施例 1 ) 実施例 1の光触媒組成物の製造例

[原料] [表 1 ]

[0090] [製造工程] 上記表 1の原料をるつぼに投入し、 還高圧バーナーを用いて 1 2〇〇 0 C-

1 3〇 O °Cで、 還元雰囲気下、 原料が溶解するまで加熱し、 板ガラスからな る光触媒組成物を製造した。 加熱時間は 2 0分間程度とした。 茶葉 (還元性 有機物供給原料) は、 茶殻粕 (茶葉の熱湯抽出残渣) を用い、 鉄塩 (鉄供給 原料) は、 三価鉄化合物である塩化鉄 (III) (FeC L 3) を用いた。 茶葉と鉄塩と の混合比率は、 茶葉 100重量部 (乾燥重量換算) に対して、 鉄元素換算で鉄塩

4重量部とした。 ケイ素供給原料として籾殻を用いた。 茶葉 +鉄と籾殻との混 合比率は、 茶葉 +鉄塩 100重量部 (乾燥重量換算) に対して、 籾殻 100重量部 (ケイ素元素換算で 30重量部以上) とした。

[0091 I 上記工程によって得られた溶融物を、 放冷によって冷却して、 板状の光触 媒組成物 (板ガラス) を製造した。 次いで、 この板ガラスからなる光触媒組 成物を粉砕して、 実施例 1の粉末状の光触媒組成物 (粉末ガラス) を製造し た。 図 2 ( a ) に、 粉砕前の光触媒組成物 (板ガラス) の写真像図を、 図 2 ( b ) に、 粉砕後の実施例 1の光触媒組成物 (粉末ガラス) の写真像図を示 す。

[0092] (実施例 2 ) 上記実施例 1で説明したような原料の混合比率と、 製造方法により、 ガラ スビーズを作成し、 実施例 2のビーズ状の光触媒組成物とした。

[0093] なお、 ケイ素供給原料として籾殻を使用した場合の 光触媒組成物の原料の 混合比率 (各原料の配合量) は、 下記表 2のような範囲内とすればよいが、 上記実施例 1、 実施例 2のような混合比率とすることが最も好まし 、 ガラ スとしての品質に優れ、 光触媒活性に優れる光触媒組成物を得ること ができ る。

[表 2]

[0094] (実施例 3 ) ケイ素供給原料としてサトウキビの葉灰を用 いて、 実施例 3の光触媒組成 物を製造した。 その原料を以下表 3に示す。 実施例 3の光触媒組成の製造エ 程は、 実施例 1における製造工程と同様である。

[原料] [表 3]

[0095] (実施例 4 ) 還元性有機物供給原料としてアスコルビン酸 を用いて、 実施例 4の光触媒 組成物を製造した。 その原料を、 以下表 4に示す。 なお、 アスコルビン酸と 鉄塩とは、 1 : 1の比率 (アスコルビン酸 1 g +鉄塩 1 g) で混合した。 実施例 4 の光触媒組成の製造工程は、 実施例 1における製造工程と同様である。

[原料]

[表 4]

[0096] 上記実施例 1の粉末状の光触媒組成物、 実施例 2のビーズ状の光触媒組成 物を用いて、 以下に示すような各種性能の検証実験、 成分分析を行った。 ま た、 各実験で用いた白色 LED光源の光スペクトル分布を、 図 3に示す。 この図 3 によれば、 白色 LED光には、 380~750nmの可視光が含まれていることがわか る。

[0097] [成分組成の分析] 下記表 5に示す分析法により、 実施例 1の光触媒組成物の成分組成を分析 した。 同様に、 参考例 1 と参考例 2の光触媒について、 成分分析を行った。 分析結果を下記表 5に示す。 下記表 5の数値は、 光触媒組成物又はポリフエ ノール鉄錯体における各成分の含有量 (重量%) を示す。

[0098I 参考例 1の光触媒として、 茶殻粕と塩化鉄 (III) (混合比率は実施例 1 と同 様) を含む水溶液を調製し、 室温で数分静置し、 茶殻粕由来のポリフエノー ル鉄錯体を得た。 また、 参考例 2の光触媒として、 コーヒー粕と塩化鉄 (III) (混合比率は実施例 1 と同様) を含む水溶液を調製し、 室温で数分静置し、 コーヒー粕由来のポリフェノール鉄錯体を得 た。

[0099] [表 5] 分析法 :

ICP発光分光分析法、 ジピリジル反応分析法、 酸素循環燃焼法、 X線光電分 光法 (XPS : X-ray Photoe Lect ron Spect roscopy又は ESCA : E Lect ron Spect ro scopy for Chem i ca l Ana Lys i s)

[0100] [実験例 1 :鉄還元能の検証実験] 実施例 1の粉末状の光触媒組成物について、 ジピリジル反応分析法により 、 鉄還元能の検証実験を行った。 具体的には、 光触媒組成物に、 ジピリジル と酢酸を、 ジピリジル 2g/L、 酢酸 100g/Lとなるように添加混合して、 呈色反 応の有無を調べた。

[0101 ] ここで、 ジピリジルは、 三価の鉄とは反応せず無色のままであるが、 二価 鉄と反応したときに赤色に呈色する物質であ る。 二価鉄の検出に用いられる 〇 この結果、 実施例 1の粉末状の光触媒組成物を含有する溶液は 赤色を呈 した。 すなわち、 光触媒組成物の原料として添加された三価鉄 が、 還元雰囲 気下での加熱 (還元焼成) によって二価鉄に還元されたことが示された 。 ま た、 ここで還元された二価鉄は、 二価鉄の状態で安定的に維持されることが 示された。 図 2 ( c ) に、 実施例 1の粉末状の光触媒組成物がジピリジルで 染色され、 赤色を呈した状態の写真像図を示す。

[0102] [実験例 2 :白色 LED光照射による光触媒組成物の有害物質の分 解効果] 実施例 1の光触媒組成物の有害物質の光触媒反応に る分解効果を検証す るために、 可視光である白色 LED光を用いて、 メチレンブルーの分解実験を行 った。

•実験方法 : 粉末状の実施例 1の光触媒組成物 10mgを 10m lのメチレンブルー液 (5000ppm のメチレンブルー液を水で 1000倍に薄めて 5ppmにしたもの) に投入し、 連続 的に白色 LED光 ( 3万ルクス) を照射し、 メチレンブルーの分解速度を計測し た。 この際、 メチレンブルー液 10“Lを、 一定時間ごとに追加して投入し、 分 解を繰り返し行わせた。 また、 対照区として酸化チタンを用いて、 同様の実 験を行った。

[0103] •実験結果 : 図 4 ( a ) に実験結果をグラフで示した。 この図 4 ( a ) のグラフ中の矢 印は、 メチレンブルー液を 10 ML追加して投入したことを示す。 また、 図 4 ( b ) に、 実験終了後の対照区の溶液の写真像図を示し 、 図 4 ( c ) に、 実験 終了後の実施例 1の光触媒組成物の光照射区の溶液の写真像 を示した。

[0104] 図 4 ( a ) に示すように、 酸化チタンを用いた対照区では、 メチレンブル 一は分解せず、 メチレンブルーの追加によって濃度が高くな った。 また、 図 4 ( b ) の写真像図に示されるように、 対照区の溶液はメチレンブルーの色 (青色) のままであった。 これは、 酸化チタンは白色 LEDの光 (可視光) では 、 光触媒反応を示さないためである。

[0105] これに対して、 実施例 1の光触媒組成物を用いた光照射区では、 図 4 ( a

) に示すようにメチレンブルーを追加しても、 白色 LEDの連続照射によってメ チレンブルーは分解し、 濃度は減少した。 また、 図 4 ( c ) の写真像図に示 されるように、 光触媒組成物を用いた光照射区では、 溶液の色が透明となり 、 メチレンブルーが分解されたことがわかる。 したがって、 実施例 1の光触 媒組成物は、 白色 LEDの光 (可視光) に対して、 強い光触媒反応を示し、 メチ レンブルーのような有害物質の分解効果に優 れることがわかった。

[0106] [実験例 3 :紫外線照射による光触媒組成物の有害物質 分解効果] 実施例 1の光触媒組成物の光触媒反応による有害物 の分解効果を検証す るために、 紫外線を用いて、 メチレンブルーの分解実験を行った。

•実験方法 : 光源として紫外線 LED光源 (図 5参照)を用いて、 上記実験例 2と同様に、 メ チレンブルーの分解実験を行った (紫外線照射区) 〇 また、 光触媒を添加し ない対照区と、 酸化チタンを用いた酸化チタン区でも同様の 実験を行った。 実験に際して、 光触媒組成物の鉄と、 酸化チタンの濃度が同じになるように 調整し、 各々をメチレンブルー液に添加した。 次いで、 24時間、 連続的に紫 外線を照射し、 メチレンブルーの分解を観察した。

[0107] •実験結果 : 図 5に、 実験結果の写真像図を示す。 この図 5中、 ( a ) は対照区 (光触 媒なし) の溶液の写真像図であり、 ( b ) は実施例 1の光触媒組成物を用い た紫外線照射区の溶液の写真像図であり、 ( c ) は酸化チタンを用いた酸化 チタン区の溶液の写真像図である。 これらの図に示すように、 ( a ) の対照 区では、 溶液が青いままでメチレンブルーが分解され なかった。 これに対し て、 ( b ) の実施例 1の光触媒組成物を用いた紫外線照射区及び ( c ) の酸 化チタン区では、 メチレンブルーの分解が認められた。 したがって、 実施例 1 の光触媒組成物は、 紫外線に対して、 強い光触媒反応を示し、 メチレンブ ルーのような有害物質の分解効果に優れるこ とがわかった。

[0108] [実験例 4 :近赤外線照射による光触媒組成物の有害物 の分解効果] 実施例 1の光触媒組成物の光触媒反応による有害物 の分解効果を検証す るために、 近赤外線を用いて、 メチレンブルーの分解実験を行った。

•実験方法 : 光源として近赤外線 LED光源を用いて、 上記実験例 2、 3と同様に、 メチレ ンブルーの分解実験を行った (近赤外線照射区) 〇 また、 光触媒を添加しな い対照区と、 酸化チタンを用いた酸化チタンでも同様の実 験を行った。 実験 に際して、 光触媒組成物の鉄と、 酸化チタンの濃度が同じになるように調整 し、 各々をメチレンブルー液に添加した。 次いで、 5日間、 連続的に近赤外線 (1200nm) を照射し、 メチレンブルーの分解を観察した。

[0109] •実験結果 : 図 6に、 実験結果の写真像図を示す。 この図 6中、 ( a ) は対照区の溶液 の写真像図であり、 ( b ) は酸化チタンを用いた対照区の溶液の写真像 図で あり、 ( c ) は実施例 1の光触媒組成物を用いた近赤外線照射区の 液の写 真像図である。 図 6に示されるように、 ( a ) の対照区および ( b ) の酸化 チタン区では、 溶液が青いままでメチレンブルーが分解され なかった。 これ に対して、 ( c ) の実施例 1の光触媒組成物を用いた近赤外線照射区で 、 メチレンブルーの分解が認められた。 したがって、 実施例 1の光触媒組成物 は、 近赤外線に対して、 強い光触媒反応を示し、 メチレンブルーのような有 害物質の分解効果に優れることがわかった。

[01 10] 以上、 実験例 2〜実験例 4の実験結果から、 実施例 1の光触媒組成物は、 紫外線、 可視光、 赤外線を含む幅広い波長域の光に対して、 優れた光触媒活 性を発揮する性質を有することが確認された 。 これに対して、 酸化チタンを 用いた場合は、 可視光や近赤外線に対して、 光触媒活性が発揮されないこと が確認された。 また、 実施例 3、 実施例 4の光触媒組成物についても、 同様 の実験を行ったところ、 紫外線、 可視光、 赤外線を含む幅広い波長域の光に 対して、 優れた光触媒活性を発揮することが確認され た。

[01 1 1 ] [実験例 5 :微生物の殺菌効果] 実施例 1の光触媒組成物の光触媒反応による微生物 殺菌効果を検証する ために病原菌の殺菌実験を行った。 供試微生物 (病原菌) として、 カット野 菜汚染の原因である大腸菌 0-157 (Escher i ch i a co L i ) と、 植物病原菌である 青枯病菌 (Ra Lston i a〇 Lanacearum) を用いた。 [0112] •実験方法 : ンチューブに入れ、 白色 LED (3万ルクス) を 30分間連続照射した (光照射区 ) 〇 対照区として、 光触媒組成物を添加せず、 白色 LED光照射の処理のみを行 った 「光照射のみ区」 と、 光触媒組成物を添加したが、 白色 LED光照射を行わ ずに暗条件下に置いた 「暗条件区」 を設けた。 また、 フローサイトメトリー により、 各処理区における各病原菌の生死の判定測定 を行った。

[0113] •実験結果 : 図 7に、 大腸菌に対する処理後の各処理区の写真像図 を示す。 図 7 (a) は対照区である 「光照射のみ処理区」 を示し、 図 7 (b) は対照区である光 触媒組成物を用いた 「暗条件区」 を示し、 図 7 (c) は光触媒組成物を用い た 「光照射区」 を示す。

[0114] 図 8に、 フローサイトメトリーによる大腸菌の生死の 判定結果を示す。 図 8 (a) は対照区である光触媒組成物を用いた 「暗条件区」 での大腸菌の生 死の判定結果を示し、 図 8 (b) は光触媒組成物を用いた 「光照射区」 での 大腸菌の生死の判定結果を示す。 図 9に、 フローサイトメトリーによる青枯 病菌の生死の判定結果を示す。 図 9 (a) は対照区である光触媒組成物を用 いた 「暗条件区」 での青枯病菌の生死の判定結果を示し、 図 9 (b) は光触 媒組成物を用いた 「光照射区」 での青枯病菌の生死の判定結果を示す。

[0115] 図 8、 図 9の各図からわかるように、 「光照射のみ処理区」 と 「暗条件区 」 では、 大腸菌の生存が確認されたのに対し、 実施例 1の光触媒組成物を用 いて白色 LED光照射を行った 「光照射区」 では、 大腸菌が完全に死滅したこと が確認された。 また、 図 9の各図からわかるように、 実施例 1の光触媒組成 物を用いて白色 LED光照射を行った 「光照射区」 では、 青枯病菌に対する高い 殺菌効果が確認された。

[0116] [実験例 6 :光触媒組成物のルミノール反応によるラジ ル種の同定実験

] 実施例 1の光触媒組成物について、 ルミノールを用いた発光法によるラジ カル種の同定実験 ( •〇2とも〇2の検出) を行った。

■実験方法 ルミノールと ・〇2が反応することで生じる 425nmの発光を利用し、 この発光 をフォトンカウンティング法で検出した。 この手法により、 •〇2の存在を明ら かにすることができる。

[01 17] •実験結果 図 1 〇に、 同定実験の結果を示す。 この図 1 〇に示されるように、 実施例

1 の光触媒組成物に高いルミノール反応が認め られた。 ルミノールは •〇2のほ かに過酸化水素とも反応する性質を持ってい ることから、 反応中に過酸化水 素が発生したことが明らかになった。 この反応液に、 ラジカル消去剤を添加 することで、 フォトン数 (光子数) が減少することが明らかになった。

[01 18] [実験例 7 : MPEC試薬を用いたスーパーオキシドラジカル ( •〇厂) の同定実 験] 実施例 1の光触媒組成物について、 MPEC試薬を用いたスーパーオキシドラ ジカル ( •〇厂) の同定実験を行った。

■実験方法

MPEC試薬はスーパーオキシド (・〇2-) と特異的に反応する発光試薬である 〇 この反応を利用して、 MPECとスーパーオキシド (・〇2-) との反応で発生す る光の量を測定し、 スーパーオキシド (・〇2「) の存在の有無を確認した。

[01 19] •実験結果 図 1 1に、 同定実験の結果を示す。 この図 1 1に示すように、 実施例 1の 光触媒組成物に白色 LED光を照射することで、 スーパーオキシド (・〇2-) の発 生が認められた。 この反応液に、 スーパーオキシドラジカル消去剤を添加す ることで、 フォトン数 (光子数) が減少することが明らになった。

[0120] [実験例 8 :スピントラップを用いた ESR法によるヒドロキシルラジカルの 同定実験] 実施例 1の光触媒組成物について、 スピントラップを用いた ESR法によるヒ ドロキシルラジカルの同定実験を行った。 •実験方法 : 蒸留水 960 uLをエッペンチューブに入れ、 実施例 1の光触媒組成物を 20mg 添加した。 さらに、 180mMスピントラップ剤 DMPOを 40 /£し添加し、 紫外線 LED光 (UV光) 照射により ESR装置 (E Lect ron Sp i n Resonance ;電子スピン共鳴装 置) で 30秒、 60秒、 30分に ESRスペクトルの測定を行った。 さらに、 光触媒組 成物と白色 LED光 (可視光) との反応を、 ESR解析した。

[0121 ] •実験結果 : 図 1 2にスピントラップを用いた ESR法によるヒドロキシルラジカルの同定 実験の結果として、 紫外線 LED光照射による ESRスペクトルの測定結果を示す 〇 図 1 3に白色 LED光照射 (可視光照射) による ESR解析結果を示す。 図 1 3 中の 「 Referenced (対照区) は光触媒組成物を無添加で測定した場合の ESR 解析結果である。 図 1 2に示されるように、 30秒と 60秒間の紫外線照射では ラジカル類の発生は認められなかった。 これに対して、 30分間の紫外線照射 ではヒドロキシルラジカル ( - 0H) の発生が認められた。 また、 図 1 3に示 されるように、 光触媒組成物と可視光の反応を ESR解析したところ、 ヒドロキ シルラジカル ( • 0H) の検出が確認された。

[0122I また、 紫外線 LED光 (UV光) との反応により、 ヒドロキシルラジカルのほか に、 メチルラジカル ( • CH3) や炭素を中心としたラジカル類も発生してい る ことが ESR解析で明らかとなった。 下記表 6に、 光触媒組成物と、 ポリフェノ ール鉄錯体と、 酸化チタンにおけるラジカル類の発生の有無 を示す。 また、 対照区として、 参考例 1の茶殻粕由来のポリフェノール鉄錯体と、 従来例と しての酸化チタンについても、 同様の実験を行った。 表 6中、 〇はラジカル が発生したことを示し、 ◎はラジカルが多く発生したことを示し、 Xはラジ カルの発生がないことを示す。

[0123] [表 6] 各触媒 の光照射によって検出された ラジカルの種類

[0124] [実験例 9 :切花 (ツバキ) の鮮度保持効果] 実施例 2の光触媒組成物による切花の鮮度保持効果 立証実験を行った。

•供試花 :ツバキ

•実験方法 : 蒸留水 100m Iと実施例 2のビーズ状の光触媒組成物 4gを 200m Iビーカーに入 れ、 ツバキの花を浮かせた。 これに白色 LED光を連続照射し (図 1 4の (a) の写真像図参照) 、 1 〇日後の状態を観察した。 なお、 白色 LED光は、 8 : 00 ~18 : 00の間で照射し、 18 : 00 -翌朝 8 : 00の間は消灯した。 対照区として、 光照射しない暗条件区を用いた。

[0125] •実験結果 : 図 1 4に、 実験開始から 1 〇日後の光照射区と、 対照区の写真像図を示す 。 この図 1 4中、 (b) は 1 0日後の光照射区の写真像図であり、 (c) は 1 〇日後の対照区の写真像図である。 図 1 4の (c) に示されるように、 対 照区 (暗条件区) ではツバキの花が腐敗し、 蒸留水が黄色くなった。 これに 対して、 図 1 4の (b) に示されるように、 実施例 2の光触媒組成物を用い て白色 LED光を照射した光照射区では、 ツバキの腐敗は認められず、 蒸留水が 透明のままだった。 このことから、 実施例 2の光触媒組成物は、 切花の鮮度 保持に利用できることが確認された。

[0126] [実験例 8 :切花 (サポナリア・バッカリア) の鮮度保持効果] 実施例 2の光触媒組成物による他の異なる切花の鮮 保持効果の立証実験 を行った。

•供試花 :サポナリア・バッカリア

•実験方法 : 蒸留水 50m Iと実施例 2のビーズ状の光触媒組成物 4gを 100m Iプラントボック スに入れ、 供試花としてサポナリア・バッカリアの切り 花を活けた。 これに 白色 LED光を連続照射し、 3日後の状態を観察した。 なお、 白色 LED光は、 8 : 00- 18 : 00の間で照射し、 18 : 00 -翌朝 8 : 00の間は消灯した。 対照区として 、 光照射しない暗条件区を用いた。

[0127] •実験結果 : 図 1 5 ( a ) に、 実験開始時の白色 LED光照射区と、 対照区の写真像図を示 す。 図 1 5 ( b ) に、 実験開始から 3日後の白色 LED光照射区と、 対照区の写 真像図を示す。 これらの写真像図にも示されるように、 試験開始から 3日後 の対照区 (暗条件区) の蒸留水は微生物の増殖によって白く濁った 。 これに 対し、 実施例 2の光触媒組成物を用いて白色 LED光を照射した光照射区では、 試験開始から 3日後でも蒸留水の腐敗は認められず、 蒸留水が透明のまま保 持された。 この実験結果からも、 実施例 2の光触媒組成物は、 切花の鮮度保 持に利用できることが確認された。

[0128] [実験例 9 :光触媒組成物の紫外線照射による種子の殺 効果] 実施例 2の光触媒組成物の紫外線照射による種子の 菌効果の立証実験を 行った。

•供試種子 : ヒョコ豆

•実験方法 : 蒸留水 50m lを含んだ 100m l透明容器に、 実施例 2のビーズ状の光触媒組成物

4gとヒョコ豆 50gを入れ、 紫外線 LED光源を用いて紫外線 LED光を連続照射し、 7日後の状態を観察した。 なお、 紫外線 LED光は、 8 : 00-18 : 00の間で照射し s 18 : 00 -翌朝 8 : 00の間は消灯した。 対照区として蒸留水のみを用いた。 実 験中の設定温度は 23°Cであった。 また実験後の紫外線 LED光照射区と対照区のヒョコ豆の雑菌の繁殖 状態を観 察した。

[0129] •実験結果 : 図 1 6 (a) に、 実験開始から 7日後の対照区の写真像図を示す。 図 1 6 (b) に、 実験開始から 7日後の紫外線 LED光照射区の写真像図を示す。 図 1

6 (b) 中の矢印は、 実施例 2のビーズ状の光触媒組成物を指し示してい 〇 また、 図 1 7 (a) に、 対照区のヒョコ豆の雑菌の繁殖状態の写真像 図を 示し、 図 1 7 (b) に、 紫外線 LED光照射区のヒョコ豆の雑菌の繁殖状態の写 真像図を示す。 図 1 7中の写真における白色呈示部分は、 雑菌が存在する部 分を示し、 無色の部分は雑菌が存在しない部分を示す。

[0130] 図 1 6 (a) 、 図 1 7 (a) に示されるように、 対照区の蒸留水に沢山の 菌が増殖し、 白く濁った。 これに対し、 図 1 6 (b) 、 図 1 7 (b) に示さ れるように、 実施例 2の光触媒組成物を用いた紫外線 LED光照射区では雑菌の 増殖が認められず、 実験後も蒸留水が透明のまま保持された。 このことから 、 実施例 2の光触媒組成物は、 微生物の殺菌に利用できることが確認された

[0131] (実施例 5) ケイ素供給原料として珪藻 (キートセロス・グラシリス) 由来のシリカを 用いて、 実施例 5の光触媒組成物を製造した。 その原料を以下表 7に示す。 実施例 5の光触媒組成物の製造工程は、 実施例 1における製造工程と同様で ある。

[原料] [表 7]

[0132] [珪藻からのシリカの抽出工程] 図 1 8に、 珪藻からのシリカの抽出工程を示す。 珪藻 (キートセロス・グ ラシリス) はヤンマー (株) から購入した。 1 X 1 〇 8 ce L L/m Lの藻類液 500m l をアルミナ製の容器に入れ、 120°Cで 24時間加熱乾燥させた後、 大気中にて 30 0°Cで 2時間、 600°Cで 5時間、 300°Cで 2時間の条件で焼結処理することで、 10g の珪藻由来シリカを得た。

[0133] (実施例 6 ) 還元性有機物供給原料としてアスコルビン酸 を用いて、 実施例 5の光触媒 組成物を製造した。 その原料を、 以下表 8に示す。 なお、 アスコルビン酸と 鉄塩とは、 1 : 1の比率 (アスコルビン酸 1 g +鉄塩 1 g) で混合した。 実施例 6 の光触媒組成物の製造工程は、 実施例 1における製造工程と同様である。

[原料]

[表 8]

[0134] [実験例 1 〇 :可視光照射による光触媒組成物の有害物質 分解効果] 実施例 5及び 6の光触媒組成物の有害物質の光触媒反応に る分解効果を 検証するために、 可視光である紫色光〜青色光 (380~495nm) LEDを用いて、 メチレンブルーの分解実験を行った。

•実験方法 : 粉末状の実施例 5又は 6の光触媒組成物 50mgを 10mlのメチレンブルー液 (5 000ppmのメチレンブルー液を水で 1000倍に薄めて 5ppmにしたもの) に投入し 、 連続的に LED光 (1万ルクス) を 4時間照射し、 メチレンブルーの分解速度 を計測した。 また、 対照区として光照射しない暗条件区を用いた 。

[0135] •実験結果 : 図 1 9及び図 20に、 実施例 5及び 6の各光触媒組成物の実験結果を示し た。 図 1 9 (a) 及び図 20 (a) に、 各光触媒組成物の実験結果をグラフ で示した。 また、 図 1 9 (b) 及び図 20 (b) に、 実験終了後 (実験開始 から 4時間後) の各光触媒組成物の LED照射区及び対照区の溶液の写真像図を ホした。

[0136] 図 1 9 (a) 及び図 20 (a) に示すように、 暗条件を用いた対照区では 、 メチレンブルーは分解しなかった。 また、 図 1 9 (b) 及び図 20 (b) の写真像図に示されるように、 対照区の溶液はメチレンブルーの色 (青色) のままであった。

[0137] これに対して、 各光触媒組成物を用いた光照射区では、 図 1 9 (a) 及び 図 20 (a) に示すように、 紫色〜青色 LED光の連続照射によってメチレンブ ルーは分解し、 濃度は減少した。 また、 図 1 9 (b) 及び図 20 (b) の写 真像図に示されるように、 各光触媒組成物を用いた光照射区では、 溶液の色 が透明となり、 メチレンブルーが分解されたことがわかる。

[0138] したがって、 実施例 5及び 6の光触媒組成物は、 紫色〜青色 LEDの光 (可視 光) に対して、 強い光触媒反応を示し、 メチレンブルーのような有害物質の 分解効果に優れることがわかった。 実施例 5及び 6の光触媒組成物は大量生産が可能な藻類を 料にされてい る。 これらの藻類は多くの二酸化炭素 (C〇 2) を吸収することが知られてい る。 したがって、 これに加えて藻類の機能・有効成分を様々な 産業応用に向 けたビジネスの可能性に期待できる。 藻類を活用した新産業が期待できる。 藻類は、 光合成を通じてカーボンニュートラル実現や 、 SDGs r GOAL 13:気候 変動に具体的な対策を」 の貢献に期待されている。 産業上 の利用 可能性

[0139I 本開示の光触媒は、 食品、 医療、 公衆衛生、 農業、 環境浄化などの幅広い 分野での殺菌や有機物分解に幅広く利用され ることが期待される。 関連 出願の相 互参照

[0140] 本出願は、 2 0 2 1年 2月 4日に日本国特許庁に出願された特願 2 0 2 1

- 0 1 6 9 4 4に基づいて優先権を主張し、 その全ての開示は完全に本明細 書で参照により組み込まれる。