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Title:
PROCESS FOR PRODUCING POLYTETRAFLUOROETHYLENE FIBER AND POLYTETRAFLUOROETHYLENE FIBER
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/156059
Kind Code:
A1
Abstract:
A process for polytetrafluoroethylene (PTFE) fiber production by which a PTFE fiber, in particular, a long PTFE fiber, can be produced without using a matrix material as in the emulsion spinning process. It is superior in productivity to conventional production processes including the slit-yarn process, and can give a fiber having improved mechanical properties and an improved degree of freedom in diameter. The process comprises drawing a stringy PTFE-containing solid (first solid) at a temperature not lower than the melting point of the PTFE to thereby reduce the diameter of the first solid. The first solid can be obtained, for example, from a stringy PTFE-containing solid (second solid) containing water and a surfactant by reducing the amount of the water contained in the second solid.

Inventors:
KITAGAWA DAISUKE (JP)
WANO TAKASHI (JP)
YAMANE HIDEKI (JP)
TAKAGI YOSHIHITO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/060994
Publication Date:
December 24, 2008
Filing Date:
June 16, 2008
Export Citation:
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Assignee:
NITTO DENKO CORP (JP)
NAT UNIV CORP KYOTO INST TECH (JP)
KITAGAWA DAISUKE (JP)
WANO TAKASHI (JP)
YAMANE HIDEKI (JP)
TAKAGI YOSHIHITO (JP)
International Classes:
D01F6/12; D02G3/02; D02J1/22
Domestic Patent References:
WO2006120967A12006-11-16
WO2006120967A12006-11-16
Foreign References:
JP2005248377A2005-09-15
JPH08199421A1996-08-06
US6133165A2000-10-17
US7108912B22006-09-19
JP2003020515A2003-01-24
Other References:
See also references of EP 2159306A4
"Fiber Handbook", vol. 16, 15 December 2004, MARUZEN CO., LTD., pages: 81 - 83
STARKWEATHER HW JR.; ZOLLER P; JONES GA; VEGA AJ ET AL., JOURNAL OF POLYMER SCIENCE, POLYMER PHYSICS EDITION, vol. 20, 1982, pages 751
Attorney, Agent or Firm:
KAMADA, Koichi (TOMOE MARION BLDG.4-3-1, Nishitenma,Kita-ku, Osaka-shi, Osaka, JP)
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Claims:
 紐状のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)含有固形物(第1の固形物)を、PTFEの融点以上の温度において引き抜き加工することにより、前記第1の固形物を細径化するポリテトラフルオロエチレン繊維の製造方法。
 前記第1の固形物を、330℃以上で引き抜き加工する請求項1に記載のポリテトラフルオロエチレン繊維の製造方法。
 前記第1の固形物を、第1のダイを通して前記引き抜き加工する請求項1に記載のポリテトラフルオロエチレン繊維の製造方法。
 前記第1のダイは、前記第1の固形物が通る空間として、当該固形物が引き抜かれる方向に垂直な断面の面積が、前記第1のダイにおける一方の開口部から他方の開口部に向かうに従って連続的に小さくなっている部分を有する請求項3に記載のポリテトラフルオロエチレン繊維の製造方法。
 前記第1の固形物は、水および界面活性剤を内包するPTFE含有固形物(第2の固形物)から、当該固形物に含まれる水の量を低減させて得た固形物である請求項1に記載のポリテトラフルオロエチレン繊維の製造方法。
 前記第2の固形物が、PTFE粒子と、界面活性剤と、分散媒である水とを含むPTFE粒子の分散液に、前記粒子が互いに接近または接触する力を加えることにより得た固形物である請求項5に記載のポリテトラフルオロエチレン繊維の製造方法。
 前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤であり、
 前記第2の固形物が、PTFE粒子と、前記非イオン性界面活性剤と、分散媒である水とを含むPTFE粒子の分散液に機械的な力を加えて前記粒子同士を衝突させ、衝突の際に生じる熱により前記分散液の温度を上昇させるとともに、前記分散液の温度にして(T-30)℃以上の温度域において前記粒子同士を結着させて得た固形物である請求項5に記載のポリテトラフルオロエチレン繊維の製造方法。
 ただし、T(℃)は、前記非イオン性界面活性剤の曇点である。
 前記第1の固形物は、水および界面活性剤を内包する紐状のPTFE含有固形物(第2の固形物)を、第2のダイを通して引き抜き加工することにより細径化した後に、当該固形物に含まれる水の量を低減させて得た固形物である請求項1に記載のポリテトラフルオロエチレン繊維の製造方法。
 前記第2の固形物を、水中において前記第2のダイを通して引き抜き加工する請求項8に記載のポリテトラフルオロエチレン繊維の製造方法。
 前記第2の固形物が、PTFE粒子と、界面活性剤と、分散媒である水とを含むPTFE粒子の分散液に、前記粒子が互いに接近または接触する力を加えることにより得た固形物である請求項8に記載のポリテトラフルオロエチレン繊維の製造方法。
 前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤であり、
 前記第2の固形物が、PTFE粒子と、前記非イオン性界面活性剤と、分散媒である水とを含むPTFE粒子の分散液に機械的な力を加えて前記粒子同士を衝突させ、衝突の際に生じる熱により前記分散液の温度を上昇させるとともに、前記分散液の温度にして(T-30)℃以上の温度域において前記粒子同士を結着させて得た固形物である請求項8に記載のポリテトラフルオロエチレン繊維の製造方法。
 ただし、T(℃)は、前記非イオン性界面活性剤の曇点である。
 前記第1の固形物は、当該固形物の中心部分にPTFE粒子を含み、
 前記融点以上の引き抜き加工により、前記粒子同士を融着させるとともに前記第1の固形物を細径化して、繊維軸方向に伸長した前記粒子の融着体を含む繊維とする請求項1に記載のポリテトラフルオロエチレン繊維の製造方法。
 紐状のPTFE含有固形物を、PTFEの融点以上の温度において引き抜き加工し、細径化して得たポリテトラフルオロエチレン繊維。
 繊維軸方向に伸長した2以上のPTFEの融着体からなる請求項13に記載のポリテトラフルオロエチレン繊維。
 前記融着体の平均径が、0.1~5μmの範囲である請求項14に記載のポリテトラフルオロエチレン繊維。
 広角X線回折測定により求めた繊維軸方向の結晶配向度が0.92以上である請求項13に記載のポリテトラフルオロエチレン繊維。
 引張試験により求めた引張弾性率が10GPa以上である請求項13に記載のポリテトラフルオロエチレン繊維。
 PTFEからなり、広角X線回折測定により求めた繊維軸方向の結晶配向度が0.92以上であるポリテトラフルオロエチレン繊維。
 繊維軸方向に伸長したPTFEの融着体からなるポリテトラフルオロエチレン繊維。
Description:
ポリテトラフルオロエチレン繊 の製造方法およびポリテトラフルオロエチ ン繊維

 本発明は、ポリテトラフルオロエチレン( PTFE)繊維の製造方法と、PTFE繊維とに関する。

 PTFEは、耐熱性、耐光性、耐薬品性、電気 絶縁性、摺動性などの各種の特性に優れてお り、機械、化学、電気分野を中心に幅広い分 野で用いられている。PTFEを含む物品(PTFE物品 )の1つにPTFE繊維があり、PTFE繊維は、PTFEが有 る上記各種の特性に基づき、様々な分野へ 応用が期待される。

 繊維の製造方法としては、溶融紡糸法およ 湿式紡糸法が一般的である。しかし、PTFEの 溶融粘度は380℃において10 10 ~10 11 Pa・s(10 11 ~10 12 P)程度と極めて高く、溶融紡糸法によりPTFE繊 維を製造することはできない。また、PTFEは 特殊な溶媒を除き、ほとんどの溶媒に溶解 ないため、適切な溶媒に溶解させて得たPTFE 液を貧溶媒の浴中に押し出して凝固させる 単純な湿式紡糸法を採用することも困難で る。

 従来、PTFE繊維の製造方法としては、エマ ルジョン紡糸法およびスリットヤーン法が知 られている。

 エマルジョン紡糸法にはエマルジョン直 紡糸法とマトリックス紡糸法とがあるが、 接紡糸法では塩酸浴あるいは塩化水素雰囲 中にPTFEの水性エマルジョンを押し出す必要 があることから、より生産性に優れるマトリ ックス紡糸法(例えば、特開平10-273818号公報 開示)が主に用いられている。マトリックス 糸法では、PTFE粒子の分散液に、ビスコース あるいはセルロースなどのマトリックス材を 加えて紡糸原液とし、当該原液を凝固浴中に 押し出して湿式紡糸させる。その後、紡糸に より形成した繊維をPTFEの融点以上の温度で 処理(焼成)することで、繊維中のマトリック ス材を燃焼、飛散させるとともに、マトリッ クス材中に分散していたPTFE粒子を溶融かつ いに融着させて、PTFE繊維を形成できる。し し、この方法により製造したPTFE繊維には、 通常、マトリックス材の焼成物(炭化物)が残 しており、この残留によってPTFEが本来有す る物理的、化学的特性が影響を受けることが ある。例えば、マトリックス紡糸法により形 成されたPTFE繊維の色調は茶色~濃褐色であり その用途は制限される。また、本来、マト ックス材およびその焼成物はPTFE繊維に不要 な成分であり、マトリックス材を用いないPTF E繊維の製造方法が望まれる。

 スリットヤーン法(例えば、米国特許第613 3165号明細書、米国特許第7108912号明細書に開 )では、(1)PTFEのファインパウダーに成形助 を加えて形成したPTFEペーストを押出成形し シート状の成形体とし、(2)形成した成形体 ら成形助剤を除去した後に、当該成形体を 伸して多孔質のPTFE膜とし、(3)得られた多孔 質膜を機械的に加工して短冊状あるいはテー プ状とし、(4)加工後の多孔質膜をさらに再延 伸することでPTFE繊維を形成できる。一度、 ート状あるいはフィルム状に押出成形する は、上記ペーストの粘度の高さから、直接 繊維状に成形することが困難なためである しかし、この方法では、機械的な加工の方 にもよるが、均一な繊維径を有する繊維の 造が困難であったり、長繊維(フィラメント) の製造が困難であったりする。また、原料で あるファインパウダーから連続的に繊維を製 造することが難しく、生産性に優れる製造方 法であるとはいえない。

 その他のPTFE繊維の製造方法として、例えば 、特開2003-20515号公報には、PTFE微粒子の水性 濁液を5~10kgf/cm 2 程度にまで加圧し、内径200~400μmのキャピラ 状のダイスから噴出させることでPTFE微粒子 繊維化して、さらに乾燥、焼成する方法が 示されている。しかし、この方法では、強 、弾性率などの機械的特性に優れるPTFE繊維 を製造できないと考えられ、また、おそらく 懸濁液に印加する圧力を確保することを目的 として、懸濁液を噴出させるキャピラリの径 が200~400μmの範囲に限定されているため、製 できるPTFE繊維の径が20μm以下と、その自由 が低い。

 なお、国際公開第WO2006/120967号には、PTFE 子の分散液に、PTFE粒子が互いに接近または 触する力を加えることにより、水と界面活 剤とを内包するPTFE粒子の凝集物を得る方法 が開示されており、この凝集物を乾燥および /または焼成することにより、例えば、紐状 PTFE成形体が得られることが示されている。

 このように従来のPTFE繊維の製造方法では 、マトリックス材など、PTFE繊維として本来 要な成分が必要であったり、製造できる繊 が短繊維(ステープル)に限られたり、生産性 の向上に限界があったり、あるいは得られる 繊維の機械的特性ならびに径の自由度が低か ったりする。

 本発明は、これら従来の製造方法とは異 り、マトリックス材を用いることなくPTFE繊 維、特にPTFEの長繊維、を製造できるととも 、これら従来の製造方法よりも生産性に優 、得られる繊維の機械的特性ならびに径の 由度を向上できるPTFE繊維の製造方法を提供 ることを目的とする。

 また本発明は、上記従来のPTFE繊維とは全 く異なる構成を有する、従来にないPTFE繊維 提供することを別の目的とする。

 本発明のPTFE繊維の製造方法は、紐状のPTF E含有固形物(第1の固形物)をPTFEの融点以上の 度において引き抜き加工することにより、 記第1の固形物を細径化する方法である。

 本発明のPTFE繊維は、紐状のPTFE含有固形 を、PTFEの融点以上の温度において引き抜き 工し、細径化して得た繊維である。

 本発明によれば、エマルジョン紡糸法に いて必要であったマトリックス材を用いる となくPTFE繊維を得ることができ、例えば、 PTFE本来の特性および色調を有するPTFE繊維を 造できる。例えば、色調に関しては、白色 繊維の製造が可能であり、場合によっては 施例に後述するように、より透明なPTFE繊維 の製造も可能となる。

 本発明によれば、スリットヤーン法にお て必要であった、原料であるPTFE粒子の押出 成形工程、および押出成形によって得られた シート状の成形体を機械的に加工する工程を 実施することなくPTFE繊維を製造できるため PTFE繊維を従来よりも生産性よく製造でき、P TFEの短繊維に限られず、長繊維の製造も可能 となる。また、引き抜き加工に用いる部材の 形状を選択することで、例えば、略円形ある いは略楕円形の断面形状を有するPTFE繊維を 造でき、得られるPTFE繊維の形状の自由度を 上できる。本発明によれば、特開2003-20515号 公報に開示の方法よりも、得られるPTFE繊維 機械的特性、ならびに径の自由度を向上で る。

図1は、本発明のPTFE繊維の製造方法の 例を説明するための模式図である。 図2は、本発明のPTFE繊維の製造方法の の一例を説明するための模式図である。 図3は、本発明のPTFE繊維の製造方法に いることができるPTFE含有固形物を形成でき チャンバーの一例を示す模式図である。 図4は、本発明のPTFE繊維の製造方法に いることができるPTFE含有固形物を形成でき チャンバーの別の一例を示す模式図である 図5は、本発明のPTFE繊維の製造方法に いることができるPTFE含有固形物を形成でき チャンバーのまた別の一例を示す模式図で る。 図6は、本発明のPTFE繊維の製造方法に いることができるPTFE含有固形物を形成でき チャンバーのさらにまた別の一例を示す模 図である。 図7は、形成例においてPTFE含有固形物( 2の固形物)の形成に用いた第2の管体と、当 第2の管体によるPTFE含有固形物の形成方法 説明するための模式図である。 図8は、形成例においてPTFE含有固形物( 2の固形物)の形成に用いた第2の管体と、当 第2の管体によるPTFE含有固形物の形成方法 説明するための模式図である。 図9は、形成例においてPTFE含有固形物( 2の固形物)の形成に用いた第2の管体と、当 第2の管体によるPTFE含有固形物の形成方法 説明するための模式図である。 図10は、実施例1で作製したPTFE含有固 物(第2の固形物)の断面における表面近傍の 査型電子顕微鏡(SEM)像を示す図である。 図11は、実施例1で作製したPTFE含有固 物(第2の固形物)の断面における中心付近のSE M像を示す図である。 図12は、実施例1、2に用いた第1のダイ 模式的に示す断面図である。 図13Aは、実施例1において、第1のダイ による引き抜き加工(引き抜き温度350℃)によ 形成したPTFE繊維の断面のSEM像を示す図であ る。 図13Bは、実施例1において、第1のダイ による引き抜き加工(引き抜き温度350℃)によ 形成したPTFE繊維の断面のSEM像を示す図であ る。 図14Aは、実施例1において、第1のダイ による引き抜き加工(引き抜き温度380℃)によ 形成したPTFE繊維の断面のSEM像を示す図であ る。 図14Bは、実施例1において、第1のダイ による引き抜き加工(引き抜き温度380℃)によ 形成したPTFE繊維の断面のSEM像を示す図であ る 図15は、実施例2で評価した、引き抜き 温度を変化させた場合における、得られた繊 維の引張強度および結晶化度の変化を示す図 である。 図16は、実施例2で評価した、引き抜き 温度を変化させた場合における、得られた繊 維の弾性率および結晶化度の変化を示す図で ある。 図17は、実施例2で評価した、引き抜き 温度を変化させた場合における、得られた繊 維の破断伸びおよび結晶化度の変化を示す図 である。 図18は、実施例2で評価した、引き抜き 温度を変化させた場合における、得られた繊 維の引張強度の変化と、当該加工時の伸長倍 率の変化とを示す図である。 図19は、実施例2で評価した、引き抜き 温度を変化させた場合における、得られた繊 維の弾性率の変化と、当該加工時の伸長倍率 の変化とを示す図である。 図20は、実施例2において、第1のダイ よる引き抜き加工(引き抜き温度250℃)により 形成した繊維のWAXDプロファイルを示す図で る。 図21は、実施例2において、第1のダイ よる引き抜き加工(引き抜き温度320℃)により 形成した繊維のWAXDプロファイルを示す図で る。 図22は、実施例2において、第1のダイ よる引き抜き加工(引き抜き温度330℃)により 形成した繊維のWAXDプロファイルを示す図で る。 図23は、実施例2において、第1のダイ よる引き抜き加工(引き抜き温度340℃)により 形成した繊維のWAXDプロファイルを示す図で る。 図24は、実施例2において、第1のダイ よる引き抜き加工(引き抜き温度350℃)により 形成した繊維のWAXDプロファイルを示す図で る。 図25は、実施例2において、第1のダイ よる引き抜き加工(引き抜き温度360℃)により 形成した繊維のWAXDプロファイルを示す図で る。 図26は、実施例2において、第1のダイ よる引き抜き加工(引き抜き温度370℃)により 形成した繊維のWAXDプロファイルを示す図で る。 図27は、実施例2において、第1のダイ よる引き抜き加工(引き抜き温度380℃)により 形成した繊維のWAXDプロファイルを示す図で る。 図28は、マトリックス紡糸法により製 されたPTFE繊維のWAXDプロファイルを示す図 ある。 図29は、スリットヤーン法により製造 れたPTFE繊維のWAXDプロファイルを示す図で る。 図30は、実施例2において測定した、引 き抜き温度と引き抜き張力との関係を示す図 である。 図31は、実施例3に用いた第1のダイを 式的に示す断面図である。 図32は、実施例3で評価した、引き抜き 温度を変化させた場合における、得られた繊 維の径および伸長倍率と、引き抜き速度との 関係を示す図である。 図33は、実施例3で評価した、引き抜き 温度を変化させた場合における、得られた繊 維の弾性率および引張強度と、引き抜き速度 および伸長倍率との関係を示す図である。 図34は、実施例3で評価した、引き抜き 温度を変化させた場合における、得られた繊 維の結晶配向度と、引き抜き速度および伸長 倍率との関係を示す図である。 図35は、実施例3で評価した、引き抜き 温度を変化させた場合における、得られた繊 維の複屈折と、引き抜き速度および伸長倍率 との関係を示す図である。 図36は、実施例3で評価した、引き抜き 温度および速度を変化させた場合における、 得られた繊維のDSC曲線を示す図である。 図37は、実施例3で評価した、引き抜き 温度を変化させた場合における、得られた繊 維の結晶化度と、引き抜き速度および伸長倍 率との関係を示す図である。 図38は、実施例3で評価した、引き抜き 温度および速度を変化させた場合における、 得られた繊維の貯蔵弾性率(E’)のプロファイ ルを示す図である。 図39は、図38に示す貯蔵弾性率プロフ イルにおけるγ分散に対応する領域の損失正 接(tanδ)を示す図である。 図40は、実施例3において、第1のダイ よる引き抜き加工により形成したPTFE繊維のW AXDプロファイルを示す図である。 図41は、実施例3において、第1のダイ よる引き抜き加工により形成したPTFE繊維のW AXDプロファイルを示す図である。 図42は、実施例3において、第1のダイ よる引き抜き加工により形成したPTFE繊維の 面のSEM像を示す図である。 図43は、実施例3において、第1のダイ よる引き抜き加工により形成したPTFE繊維の 面のSEM像を示す図である。 図44は、実施例3において、第1のダイ よる引き抜き加工により形成したPTFE繊維の 面のSEM像を示す図である。 図45は、実施例3において、第1のダイ よる引き抜き加工により形成したPTFE繊維の 面のSEM像を示す図である。

 本発明の製造方法の一例を、図1を用いて 説明する。図1に示す方法では、紐状のPTFE含 固形物(第1の固形物)1を、PTFEの融点(以下、 に「融点」ともいう)以上の温度(約327℃以 )において、ダイ(第1のダイ)2を通して引き抜 き加工することにより、固形物1を細径化し いる。

 この方法では、PTFE短繊維だけではなくPTF E長繊維の製造も可能である。また、マトリ クス材を用いていないため、白色の繊維を 造でき、場合によっては、より透明な(半透 な)PTFE繊維の製造も可能である。また、こ 方法では、融点以上の温度における引き抜 加工によって、固形物1の機械的特性を向上 きる、即ち、機械的特性を向上させたPTFE繊 維を製造できる。

 本発明の製造方法により、このような繊 の製造が可能である理由は、得られた繊維 構造を検証中であることもあって未だ明確 はないが、融点以上の温度における引き抜 加工により、固形物1に含まれるPTFEが溶融 るとともに、当該固形物を縮径化する力が えられることで、繊維軸方向に伸長するPTFE 融着体が形成されることが理由の一つであ と考えられる。例えば、後述の方法1、2に りPTFE粒子の分散液から固形物1を形成した場 合、当該固形物は、場合によってはPTFE粒子 その中心部分に含む。このようなPTFE粒子を む固形物を上記引き抜き加工すると、PTFE粒 子同士が融着するとともに当該固形物が細径 化することで、繊維軸方向に伸長したPTFE粒 の融着体が形成されると考えられる。

 このような融着体は、従来のPTFE繊維の製 造方法では形成されない。例えばスリットヤ ーン法では、押出成形したPTFEシートを延伸 機械加工した後、さらに再延伸することに り繊維としているため、当該繊維は無数の 細なフィブリルを含み、フィブリル間には 細な空隙が存在する。これに対して上記融 体は、後述の実施例にも示すように、典型 には上記フィブリルよりも径が大きい。ま 、繊維内に存在する空隙に関しても、スリ トヤーン法により形成した繊維に比べて、 のサイズが大きく、かつ、その数も大幅に ないと考えられる。これらの理由から、本 明の製造方法では、機械的特性に優れるPTFE 維が得られる他、空隙による光の乱反射が 減されることにより、半透明のPTFE繊維の製 造が可能になる。

 また、本発明の製造方法では、固形物1を 細径化する程度、ならびに固形物1の細径化 形状を、固形物1を細径化する部材、例えば 1のダイ2、の形状を選択することによって 御できるため、得られる繊維の径および断 形状の自由度を高くできる。

 また、本発明の製造方法では、引き抜き 工する固形物1を後述の方法により得ること で、当該方法における出発物質であるPTFE粒 の分散液から連続的にPTFE繊維を製造するこ も可能であり、従来よりも生産性に優れるP TFE繊維の製造方法とすることができる。

 引き抜き加工の温度(引き抜き温度)は、PT FEの融点以上である限り特に限定されないが 例えば、330℃以上であればよく、340℃以上 350℃以上、360℃以上、380℃以上になるほど より好ましい。より機械的特性に優れるPTFE 繊維を製造できる。

 引き抜き温度の上限は特に限定されず、P TFEの分解温度未満であればよく、例えば、490 ℃以下であればよい。

 引き抜き温度は、例えば、第1のダイ2な 、第1の固形物を細径化する部材の温度、お び/または、第1の固形物の温度であればよ 、当該温度は、例えば、加工雰囲気の温度 よび/または上記部材の温度の調整により制 できる。

 後述する方法(方法1、2)により第1の固形 を形成した場合、第1の固形物は界面活性剤 含む。このとき、引き抜き温度を、第1の固 形物が含む界面活性剤の分解温度以上とする ことにより、第1の固形物を細径化しながら 当該固形物に含まれる界面活性剤の量を低 させることも可能である。

 PTFEの融点以上の温度において第1の固形 を引き抜き加工する方法は特に限定されな 。例えば、図1に示すようなダイを用いるこ なく、第1の固形物を、スリットまたはオリ フィスのような当該固形物の径よりも小さい 空隙を通して引き抜くことにより、引き抜き 加工を行ってもよい。ただし、図1に示すよ に、ダイを通して第1の固形物を引き抜く方 が、安定したPTFE繊維の製造を実現できる観 点から好ましい。

 図1に示す第1のダイ2は、引き抜き加工の に固形物1にせん断応力を加えるとともに、 紐状の固形物1を縮径化する形状を有する。 体的には、ダイ2は、その内部の空間(固形物 1が通る空間)として、固形物1が引き抜かれる 方向に垂直な断面の形状が円形であり、当該 断面の面積が、固形物1の流入口11から吐出口 12に向かうに従って連続的に小さくなってい 部分を有する。より具体的には、ダイ2の内 部の空間の形状は、流入口1側を底面とする 錐台であり、この円錐台の上面に吐出口12が 形成されている。

 第1のダイ2の形状は、固形物1を引き抜き 工できる限り特に限定されないが、ダイ2が 、その内部の空間(固形物1が通る空間)として 、固形物1が引き抜かれる方向に垂直な断面 面積がダイ2における一方の開口部(流入口11) から他方の開口部(吐出口12)に向かうに従っ 連続的に小さくなっている部分を有するこ が好ましい。この場合、固形物1の細径化を りスムーズに行うことができる。特に、図1 に示すダイ2のように、その内部の空間全体 して、上記部分を有することが好ましい。

 また、第1のダイ2が、固形物1が通る空間 して、固形物1が引き抜かれる方向に垂直な 断面の形状が、円形または楕円形であること が好ましく、円形であることがより好ましい 。この場合、固形物1の細径化をよりスムー に行うことができ、また、略円形または略 円形の断面形状を有するPTFE繊維を製造でき 。

 上記断面の形状が円形であり、かつ、上 断面の面積が連続的かつ一律に小さくなっ いる部分を第1のダイ2が有する場合、ダイ2 おける当該部分は円錐台となる。このとき 円錐台の中心軸に対して母線が成す角度(い わゆる「ダイス角α」)は特に限定されない。

 上記引き抜き加工による第1の固形物の細 径化の程度は特に限定されないが、例えば、 固形物1を、その平均径が1mm以下となるよう 細径化してもよく、750μm以下、500μm以下、40 0μm以下、さらには200μm以下となるように細 化してもよい。細径化の程度を大きくする めに、例えば、第1のダイ2における吐出口12 径を小さくしてもよい。また、引き抜き温 を高くすることによっても、第1の固形物の 細径化の程度を大きくすることができる。

 本発明の製造方法では、第1の固形物を、 融点以上の温度において2回以上引き抜き加 することで、段階的に細径化してもよい。 1の固形物を、1回の上記引き抜き加工のみに より、所望の径を有する繊維にしようとする と、引き抜き加工時における固形物の細径化 の程度が過度に大きくなって、安定した引き 抜き加工が困難になることがある。2回以上 上記引き抜き加工により、各々の引き抜き 工時における第1の固形物の細径化の程度を 整でき、より安定して第1の固形物の引き抜 き加工を行うことができる。

 2回以上の上記引き抜き加工を行うために は、例えば、第1の固形物を、2以上の第1のダ イを通せばよく、各ダイにおける細径化の程 度、各ダイにおける引き抜き温度、ならびに 、第1の固形物を通す第1のダイの数などは、 1の固形物の変形性、ダイを通す前の第1の 形物の径、あるいは、得たい繊維の径など 応じて適宜調整すればよい。

 第1の固形物を2以上の第1のダイを通して き抜き加工する場合、ダイとダイとの間に ローラーなどにより構成される固形物の送 出し機構を設け、当該機構により、直前の イから固形物を引き抜きながら、次のダイ と固形物を送りだしてもよい。この場合、 り安定したPTFE繊維の製造が可能となる。

 本発明の製造方法では、第1の固形物を、 融点以上の温度において連続的に引き抜き加 工してもよく(例えば図1に示す例では、固形 1を、融点以上の温度において連続的に第1 ダイ2を通してもよく)、この場合、PTFEの長 維(フィラメント)を製造できる。また、PTFE 短繊維(ステープル)を製造することもでき、 例えば、上記のようにして形成した長繊維を 、カッターなどを用いて切断することで、PTF E短繊維を効率よく製造できる。また、この 法では、繊維径の揃った短繊維を効率よく 造できる。

 本発明の製造方法では、融点以上の温度 おいて第1の固形物を引き抜き加工した後、 当該引き抜き加工後の固形物(繊維)は、自然 冷など、任意の方法により冷却すればよい 、例えば、当該固形物(繊維)を徐冷させる とで、固形物(繊維)の結晶構造、例えば結晶 化度、を変化させてもよい。

 第1の固形物の構成は、PTFEを含有する限 特に限定されないが、例えば、水および界 活性剤を内包するPTFE含有固形物(第2の固形 )から、当該固形物に含まれる水の量を低減 せて得た固形物であってもよい。水および 面活性剤を内包する第2の固形物は、例えば 、後述する方法1または方法2により形成でき 。

 また、第1の固形物は、水および界面活性 剤を内包する第2の固形物を、ダイ(第2のダイ )を通して引き抜き加工することにより細径 した後に、当該固形物に含まれる水の量を 減させて得た固形物であってもよい。

 第1の固形物は、スリットヤーン法におい て形成される短冊状あるいはテープ状のPTFE であってもよい。なお、短冊状あるいはテ プ状のPTFE膜を引き抜き加工するためには、 実上、その幅に対する制限があると考えら る(厚さに対して幅を過度に大きくすること ができない)ため、引き抜き加工が可能な短 状あるいはテープ状のPTFE膜は、本発明の製 方法にいう「紐状のPTFE含有固形物」である といえる。

 図2に、第1の固形物1として、水および界 活性剤を内包する第2の固形物3を第2のダイ4 を通して引き抜き加工した後に、当該固形物 に含まれる水の量を低減させて得た固形物を 用いた、本発明の製造方法の一例を示す。

 図2に示す方法では、最初に、水および界 面活性剤を内包する紐状のPTFE含有固形物(第2 の固形物)3を、ダイ(第2のダイ)4を通して引き 抜き加工することにより、固形物3を細径化 ている。

 図2に示すダイ4は、引き抜き加工の際に 形物3にせん断応力を加えるとともに、紐状 固形物3を縮径化する形状を有する。具体的 には、ダイ4は、その内部の空間(固形物3が通 る空間)として、固形物3が引き抜かれる方向 垂直な断面が円形であり、当該断面の面積 、固形物3の流入口13から吐出口14に向かう 従って連続的に小さくなっている部分を有 る。より具体的には、ダイ4の内部の空間の 状は、流入口13側を底面とする円錐台であ 、この円錐台の上面に吐出口14が形成されて いる。

 この引き抜き加工は、上述した融点以上 温度における引き抜き加工とは異なり、よ 低い温度域、例えば100℃以下、において行 れる。このような温度域において、固形物3 の引き抜き加工が可能であるのは、固形物3 、内包する水および界面活性剤により変形 を有するためである。

 なお、固形物3を後述する方法1、2により 成した場合などには、当該固形物3は、PTFE 子が結着した構造を有するとともに、この 造により高い自己形状保持性を有する。こ とき、PTFE粒子が結着した構造が固形物3の全 体に形成されている必要はなく、その一部の みに形成されていてもよい。場合によっては 、紐状の固形物3におけるその外周面近傍の 分(スキン層)に上記構造が形成されており、 その中心部分には、PTFE粒子が水および界面 性剤とともに含まれる。

 固形物3は、水中において、第2のダイ4を して引き抜き加工してもよい。

 上述したように、固形物3は、水および界 面活性剤を内包することにより変形性を有す るが、水中ではこの変形性を向上できる。こ のため、固形物3を水中で引き抜き加工する とで、例えば、ダイ4における固形物3の細径 化の程度を大きくしたり、固形物3の引き抜 速度を大きくしたりできる。即ち、PTFE繊維 生産性を向上できる。

 水中で引き抜き加工する場合、固形物3を 、50℃以上の温水中においてダイ4を通しても よい。即ち、50℃以上の温水中において固形 3を引き抜き加工してもよく、このとき、固 形物3の変形性をより向上でき、PTFE繊維の生 性がさらに向上する。温水の温度は、70℃ 上が好ましい。温水の温度の上限は特に限 されないが、大気圧雰囲気下で引き抜き加 をする場合、通常、水の沸点の100℃である

 なお、固形物3を水中で引き抜き加工しな い場合、例えば、空気中で引き抜き加工する 場合においても、水中で引き抜き加工する場 合と同様に、固形物3の温度および/またはダ 4の温度が50℃以上の状態で引き抜き加工し もよい。固形物3の変形性を向上でき、PTFE 維の生産性を向上できる。ただし、この方 では、水中で引き抜き加工する場合に比べ 、固形物3に含まれる水の量が低減しやすい 即ち、固形物3の変形性が低下しやすい、こ とに留意する必要がある。

 第2のダイ4の形状は固形物3を細径化でき 限り特に限定されないが、ダイ4が、その内 部の空間(固形物3が通る空間)として、固形物 3が引き抜かれる方向に垂直な断面の面積が イ4における一方の開口部(流入口13)から他方 の開口部(吐出口14)に向かうに従って連続的 小さくなっている部分を有することが好ま い。この場合、固形物3の細径化をよりスム ズに行うことができる。特に、図2に示すダ イ4のように、その内部の空間全体として、 記部分を有することが好ましい。

 また、上記断面の形状は、円形または楕 形であることが好ましく、円形であること より好ましい。この場合、固形物3の細径化 をよりスムーズに行うことができる。なお、 上記断面の形状が円形であり、上記断面の面 積が連続的かつ一律に小さくなっている場合 、第2のダイ4における上記部分は円錐台とな 。

 ダイ4における固形物3の細径化の程度、即 、ダイ4を通る前後における固形物3の断面減 少率({1-(d2/d1) 2 }×100(%))は特に限定されない。固形物3の変形 、ダイ4を通る前の固形物3の径d1、あるいは 、得たい繊維の径などによっても異なるが、 例えば、上記断面減少率は70%以下であり、好 ましくは10~50%程度である。この減少率が過度 に大きい場合、固形物3の細径化が困難にな ことがある。当該減少率は、例えば、ダイ4 流入口13の径と吐出口14の径とを調節するこ とにより制御できる。

 上述したように、ダイ4が、固形物3が通 空間として、固形物3が引き抜かれる方向に 直な断面が円形であり、当該断面の面積が イ4における一方の開口部から他方の開口部 に向かうに従って連続的かつ一律に小さくな っている部分を有する場合、当該部分は円錐 台となるが、この円錐台の中心軸に対して母 線が成す角度(いわゆる「ダイス角α」)は特 限定されず、通常、2~20°程度であり、固形 3へ加えるせん断応力の大きさと固形物3の細 径化の程度のバランスを図るためには、1~10° 程度が好ましい。この好ましいダイス角αの 囲では、固形物3の引き抜き抵抗をより低減 できる。

 第2の固形物の第2のダイを通した引き抜 加工は、2以上の第2のダイを用いて、段階的 に行ってもよい。

 紐状の第2の固形物を、1つのダイのみに り所望の径に細径化しようとすると、当該 イにおける固形物の細径化の程度が過度に きくなって、安定した引き抜き加工が困難 なることがある。第2の固形物を2以上の第2 ダイを通して引き抜き加工することで、各 のダイにおける固形物の細径化の程度を調 でき、より安定して第2の固形物の引き抜き 工を行うことができる。

 2以上の第2のダイを通して第2の固形物を き抜き加工する場合、各ダイにおける細径 の程度、および、固形物を通すダイの数な は、固形物の変形性、ダイを通る前の固形 の径、あるいは、得たい繊維の径などに応 て適宜調整すればよい。

 第2の固形物を2以上の第2のダイを通して き抜き加工する場合、ダイとダイとの間に ローラーなどにより構成される固形物の送 出し機構を設け、当該機構により、直前の イから固形物を引き抜きながら、次のダイ 固形物を送り出してもよい。この場合、よ 安定したPTFE繊維の製造が可能となる。

 図2に示す方法では、次に、ダイ4を通し 引き抜き加工された固形物3に含まれる水の を乾燥機構5により低減させている。

 固形物3に含まれる水の量を低減させる方 法は特に限定されない。例えば、ヒーターな どの加熱装置、あるいは、固形物3を風乾さ るための送風装置などを備えた乾燥機構に り、細径化した固形物3に含まれる水の量を 減させてもよい。また例えば、自然乾燥に り、細径化した固形物3に含まれる水の量を 低減させてもよい。ヒーターなどの加熱装置 を用いる場合、当該装置による固形物3の加 温度を、界面活性剤の分解温度にまで上昇 せることで、固形物3に含まれる界面活性剤 量の低減も可能である。また、細径化した 形物3を、界面活性剤を溶解する溶媒に浸漬 させて、当該溶媒中に界面活性剤を拡散させ ることにより、固形物3に含まれる界面活性 の量を低減させてもよい。

 固形物3に含まれる水の量を低減させる上 記方法は、第2のダイを通して引き抜き加工 ることなく第2の固形物に含まれる水の量を 減させる場合にも適用できる。

 図2に示す方法では、次に、含まれる水の 量を低減させた固形物3、即ち第1の固形物1、 を、PTFEの融点以上の温度において第1のダイ2 を通して引き抜き加工し、PTFE繊維としてい 。

 換言すれば、図2に示す方法では、水およ び界面活性剤を内包する第2の固形物3を、第2 のダイ4を通して引き抜き加工することによ 細径化し、細径化した当該固形物に含まれ 水の量を低減させた後、さらに、PTFEの融点 上の温度において引き抜き加工することに り、PTFE繊維を形成している。

 第2のダイ4による固形物3の引き抜き加工 および、第1のダイ2による固形物1の引き抜 加工は、個別に行っても連続的に行っても い。双方の引き抜き加工を連続的に行うこ により、PTFE長繊維の製造が効率的となる。

 水および界面活性剤を内包するPTFE含有固 形物(第2の固形物)は、例えば、PTFE粒子と、 面活性剤と、分散媒である水とを含むPTFE粒 の分散液に、当該粒子が互いに接近または 触する力を加えることにより形成できる(方 法1)。なお、方法1は、国際公開第WO2006/120967 に開示されている方法である。

 また例えば、第2の固形物が内包する界面 活性剤が非イオン性界面活性剤である場合、 第2の固形物は、PTFE粒子と、非イオン性界面 性剤と、分散媒である水とを含むPTFE粒子の 分散液に機械的な力を加えて当該粒子同士を 衝突させ、衝突の際に生じる熱により分散液 の温度を上昇させるとともに、分散液の温度 にして(T-30)℃以上の温度域においてPTFE粒子 士を結着させて形成できる。ここで、T(℃) 、非イオン性界面活性剤の曇点である(方法2 )。

 第2の固形物は、上記例示するその形成方 法から明らかであるように、PTFE粒子が結着 て形成された凝集物であるともいえる。

 方法1、2により形成された第2の固形物は 自己形状保持性および変形性を有し、基本 に、乾燥または焼成されるまでは任意の形 に変形可能である。この固形物は、破壊す ことなく変形可能な範囲が大きいという点 も特徴を有する。

 方法1、2により形成された第2の固形物は 水中で分散しない程度にPTFE粒子が結着して なり、水により希釈されることがない。この ため、第2の固形物は、水中において第2のダ を通して引き抜き加工することができる。

 方法1、2により形成された第2の固形物は 含まれる水の量の減少による再粒子化が起 ない程度にPTFE粒子が結着してなり、例えば 、形成した固形物を乾燥させたとしても粒子 には戻らない。このため、第2の固形物は、 まれる水の量を減少させた後、第1のダイを して引き抜き加工できる。

 方法1、2により、このような固形物が得 れる理由は明確ではないが、おそらく、分 液中の界面活性剤の作用により、PTFE粒子同 が互いに結着してなるPTFE相と水相とが混在 する構造が形成されるためではないかと考え られる。

 特に、方法2では、機械的な力の分散液へ の印加によりPTFE粒子同士の衝突が起きると もに、分散液の温度が特定の温度域に入る とで分散液に含まれる界面活性剤の特性が 化して、PTFE相がある程度連続して形成され 機構が考えられる。また、このようなPTFE相 の形成には、PTFEが、他のフッ化熱可塑性樹 とは異なり、その融点以下の温度域におい も互いに結着可能であることも寄与してい と考えられる。

 方法2の出発物質であるPTFE粒子の分散液 非イオン性界面活性剤を含む。非イオン性 面活性剤は、通常、曇点T(℃)を有する。曇 において非イオン性界面活性剤の特性は大 く変化し、例えば、曇点以上の温度域にお て、その界面活性剤としての機能が失われ 。また、曇点において非イオン性界面活性 を含む水性溶液の特性も大きく変化し、例 ば、曇点においてPTFE相と水相とに分離する などの変化を示す。

 方法2では、分散液の温度にして(T-30)℃以 上の温度域においてPTFE粒子同士を結着させ が、分散液の温度にして、(T-10)℃以上の温 域、(T-5)℃以上の温度域、あるいは、(T-3)℃ 上の温度域、においてPTFE粒子同士を結着さ せてもよい。上記の順に、得られた第2の固 物の機械的特性(例えば、引張強度)を向上で き、当該固形物から形成したPTFE繊維の機械 特性を向上できる。

 方法2では、分散液の温度にして、T℃以 の温度域においてPTFE粒子同士を結着させて よい。

 方法2では、PTFE粒子同士を衝突させ、衝 の際に生じる熱により分散液の温度を上昇 せるとともに、分散液の温度を特定の温度 にすることで上記固形物を得ているが、分 液の温度を上記特定の温度域とするために 粒子の衝突以外の熱源、例えば、加熱装置 どの何らかの熱源を利用してもよい。

 方法1、2において、分散液に機械的な力を える方法は特に限定されず、例えば、以下 示す方法を用いればよい。
 A.分散液をチャンバーに供給し、当該チャ バー内において上記力を加える方法。
 B.分散液をターゲットに噴射することによ 、上記力を加える方法。
 C.分散液を、分散液の流路に配置された、 散液の流れを妨げるバリアに接触させるこ で、上記力を加える方法。

 方法Aでは、分散液の供給に伴ってチャン バー内に生じる圧力により、PTFE粒子同士を り確実に衝突させることができる他、粒子 士の衝突により生じた熱エネルギーを、分 液の温度を上昇させるためにより効率よく 用できる。また、方法Aでは、後述するよう 、チャンバー内で形成された固形物を排出 る管体(第1の管体)を接続でき、紐状の第2の 固形物の形成がより容易となる。

 方法Aでは、チャンバーに供給した分散液 を、チャンバー内で噴射したり(方法A1)、チ ンバー内に設けられた狭窄部を通過させた (方法A2)すればよい。

 方法A1では、分散液を、例えば、チャン ーの内壁またはチャンバー内の物体に向け 噴射すればよい。分散液を当該内壁または 体に衝突させることにより、粒子が有する 動エネルギーを熱エネルギーに転換させて 分散液の温度を上昇できる。

 方法A1では、チャンバーの構造や形状、 散液の噴射条件などによっては、分散液と ャンバー内で形成された固形物とを衝突さ ることも可能である。この場合、PTFE粒子が いに結着してなるPTFE相をより確実に形成で きるとともに、分散液の温度をより確実に上 昇できる。

 分散液の噴射は、噴射口を有するノズル ら行えばよく、ノズルの構造や形状、例え 、噴射口の形状は、自由に設定できる。方 Bにおいても同様に、噴射口を有するノズル から分散液を噴射すればよい。なお、方法B おけるターゲットは自由に設定できるが、 射した分散液の飛散を抑制し、噴射する分 液の量に対して得られる固形物の量の割合 多くするためには、ターゲットが配置され 空間の密閉度が高い方が好ましい。

 分散液を噴射する圧力は、分散液におけ PTFE粒子の含有率、界面活性剤の含有率、チ ャンバーの形状や内容積などにより自由に設 定すればよいが、当該圧力が過小である場合 、第2の固形物を得ることが困難となること ある。

 方法A2では、分散液を通過させる狭窄部 形状は特に限定されず、例えば、スリット であればよい。

 分散液を2以上の供給路を経由させてチャ ンバーに供給し、当該2以上の供給路から供 される分散液をチャンバー内で互いに衝突 せてもよい(方法A3)。

 分散液をチャンバー内で互いに衝突させ ためには、例えば、分散液を、上記2以上の 供給路における各々の末端に配置されたノズ ルから噴射すればよい。このとき、少なくと も2つのノズルを、各々の噴射方向が交わる うにチャンバー内に配置することにより、 り効率よく、分散液を互いに衝突させるこ ができる。

 方法Cでは、分散液を、例えば、上記バリ アを有する管体(第2の管体)に供給して上記力 を加えればよい。分散液が、その流路(第2の 体)に配置されたバリアを通過する際に、分 散液の流れが乱されたり、部分的に分散液が 滞留したりして、分散液中に圧力の不均衡が 発生し、PTFE粒子同士が互いに衝突する力が 散液に加えられるとともに分散液の温度を 昇できる。

 バリアは、例えば、第2の管体の内部に流 路を狭めるように配置された板状部材であっ てよい。また、バリアは、第2の管体を屈曲 せ、またはその内径を部分的に細くするこ によっても形成できる。即ち、バリアは、 2の管体の屈曲部または狭窄部であってもよ 、この場合、方法Cは、分散液を屈曲部また は狭窄部を有する第2の管体に供給し、当該 曲部または狭窄部において上記力を加える 法である、ともいえる。

 分散液を上記第2の管体に供給する場合、 分散液をノズルから噴射して供給してもよく 、この場合、PTFE粒子同士が衝突する力を分 液に効率よく加えることができる。噴射に いるノズルは方法A1と同様であればよく、当 該ノズルから分散液を噴射する圧力は、分散 液におけるPTFE粒子の含有率、界面活性剤の 有率、第2の管体の形状などにより自由に設 すればよい。

 方法Cでは、第2の管体の構造や形状、分 液の供給条件などによっては、分散液と、 2の管体内で形成された固形物とを衝突させ ことも可能である。

 第2の管体の形状、内径、長さ、ならびに 、屈曲部および狭窄部の形状などは特に限定 されない。

 第2の管体を用いる場合、紐状の第2の固 物の形成がより容易となる。

 方法A1~A3、方法Bおよび方法Cは、PTFE粒子 分散液に上記力を加える方法の一例であり 方法1、2は、上記各例に示す方法を用いる場 合に限定されない。

 形状や内容積を含め、分散液に上記力を えるためのチャンバーの構成は特に限定さ ないが、市販の装置(例えば、スギノマシン 製アルティマイザー)を応用してもよい。ア ティマイザーは、本来、顔料、フィラー、 媒などの各種材料の粉砕、微粒化を行う微 化分散装置であり、水および界面活性剤を 包するPTFE含有固形物を得るための応用は、 発明者が見出したものである。

 チャンバーの一例を図3に示す。図3に示 チャンバー21は、その内部空間22の形状が、 面付近の周縁部が切り取られた略円錐状で り、当該周縁部に、分散液を噴射する一対 ノズル23a、23bが、その噴射口が内部空間22 面するように配置されている。ノズル23a、23 bは、各々の噴射方向24a、24bが互いに交わる 置関係にある。ノズル23a、23bには、チャン ー21の構造体25の内部に形成された供給路26a 26bを経由して、供給口27から分散液を供給 きる。略円錐状である内部空間22の頂点付近 には、チャンバー21内(内部空間22内)で形成さ れた固形物を排出する排出口28が形成されて る。排出口28の形状は特に限定されず、例 ば、円形状であればよく、この場合、チャ バー21から、断面が円形である紐状の第2の 形物を排出できる。

 図3に示すチャンバー21では、加圧した分 液を供給口27および供給路26a、26bを介して ズル23a、23bに供給することにより、分散液 内部空間22内に噴射し、互いに衝突させるこ とができる(方法A3を実現できる)。また、同 の構造を有するチャンバー21を用い、配置す るノズルを1つにしたり、あるいは、ノズル23 a、23bの噴射方向24a、24bを制御することによ 、分散液を内部空間22内に噴射し、チャンバ ー21の内壁(内部空間22の壁面)に衝突させるこ とができる(方法A1を実現できる)。

 チャンバー21は密閉可能な構造であるこ が好ましく、チャンバー21を必要に応じて密 閉することにより、より効率的に分散液に力 を加えることができる。チャンバー21には、 要に応じて、内部空間22内の圧力を調整す ための圧力調整口が設けられていてもよく 圧力調整口には、例えば、圧力調整弁が配 されていればよい。以降の図4~図6に示すチ ンバー21においても同様である。

 加圧した分散液をノズル23a、23bに供給す 方法は特に限定されず、例えば、高圧ポン によって加圧した分散液を供給口27から供 すればよい。図4に示すようなチャンバー21 用い、分散液とポンプにより加圧した水(加 水)とを、ノズル23a、23bの直前に設けられた 混合弁29へ、互いに異なる供給路を経由して 給し、混合弁29で両者を混合した後に、ノ ル23a、23bに供給してもよい。図4に示すチャ バー21では、加圧水は供給口27および供給路 26a、26bを介して、分散液は供給口37a、37b、お よび、供給路36a、36bを介して、それぞれ混合 弁29に供給される。

 チャンバーの別の一例を図5に示す。図5 示すチャンバー21では、その内部空間22の一 の端部に、自在に回転可能な球体30が配置 れており、他方の端部に、分散液を噴射す ノズル23が、その噴射口が内部空間22に面す ように配置されている。ノズル23と球体30と は、ノズル23の噴射方向24が球体30と交わる位 置関係にある。ノズル23には、チャンバー21 構造体25の内部に形成された供給路26を経由 て、供給口27から分散液を供給できる。内 空間22におけるノズル23と球体30との間の壁 には、チャンバー21内(内部空間22内)で形成 れた固形物を排出する排出口28が形成されて いる。

 図5に示すチャンバー21では、加圧した分 液を供給口27および供給路26を介してノズル 23に供給することにより、分散液を内部空間2 2内に噴射して、チャンバー21内に配置された 部材である(チャンバー21内の物体である)球 30に衝突させることができる(方法A1を実現で きる)。このとき、ノズル23の噴射方向24が球 30の中心から外れるようにノズル23および球 体30を配置することにより、分散液の噴射に って球体30を回転させることができ、分散 の衝突によるチャンバー21内部の摩耗を抑制 できる。

 球体30には、分散液の衝突によって変形 ない材料を用いることが好ましく、例えば セラミック、金属(高い硬度を有する合金類 好ましい)、ダイヤモンドなどからなる球体 30とすればよい。

 チャンバーの別の一例を図6に示す。図6 示すチャンバー21では、円筒状の外周体31の 部に、一対の中子32a、32bが収容されている 中子32a、32bは、各々、円柱体の一方の端面 円錐台が接合された形状を有しており、各 の中子における円錐台の上面33a、33bが、一 の間隔dを置いて互いに対向するように配置 されている。外周体31および中子32a、32bの中 軸は、ほぼ同一である。外周体31の一端に 、分散液を供給する供給口27が形成されてお り、供給口27に近い中子32aの外径は、外周体3 1の内径よりも小さく、供給口27から遠い中子 32bの外径は、外周体31の内径と同一である。 た、中子32bには、その上面33bにおける中央 から中子32bの内部を通り、チャンバー21の 部へ通じる排出路34が形成されている。中子 32aは、支持部材(図示せず)を介して、外周体3 1により支持されている。

 中子32a、bの位置を調整し、間隔dの値を 切に制御することにより、上面33a、33b間の 隙35をスリット状の狭窄部とすることができ 、加圧した分散液を供給口27からチャンバー2 1に供給することにより、分散液を、チャン ー内に配置された狭窄部(空隙35)を通過させ ことができる(方法A2を実現できる)。分散液 は空隙35を通過した後に排出路34に流入し、 ャンバー21の排出口28から、第2の固形物とし て排出される。

 供給する分散液の圧力(供給圧)は、チャ バーの形状や内容積、間隔dの大きさ、供給 る分散液の量などにより自由に設定すれば いが、供給圧が過小である場合、第2の固形 物を得ることが困難となることがある。

 図3~図6に示す各チャンバー21において、 出口28に管体(第1の管体)を接続し、当該接続 された管体から、管体の内壁全体と接触させ ながら第2の固形物を排出することが好まし 。排出口28から排出された第2の固形物が第1 管体を通過する際に、PTFE粒子同士を結着さ せる力をさらに加えることができ、より自己 形状保持性に優れ、強度などの機械的特性が 向上した固形物を得ることができる。また、 第1の管体の接続により、紐状の第2の固形物 形成がより容易となる他、PTFE粒子同士が結 着したスキン層を外周面近傍に有する紐状の 第2の固形物を形成できる。なお、管体の内 全体と接触させながら第2の固形物を排出す ためには、排出口28の形状や径、管体の形 や内径、長さなどを選択すればよい。

 接続する第1の管体の形状、内径、長さな どは特に限定されず、チャンバー21の形状や 容積、チャンバー21に供給する分散液の量 どに応じて、自由に設定できる。基本的に 管体が長いほど、得られる固形物の自己形 保持性や機械的特性が向上する傾向を示す め、管体の最小内径よりも、管体の長さが きいことが好ましい。一例として、分散液 処理速度が0.1~0.5L/min程度の場合、チャンバ 21に接続する管体の内径は1mm~10mm程度の範囲 管体の長さは1mm~5000mm程度の範囲であっても よい。なお、図6に示すチャンバー21では、排 出路34の形状によっては、排出路34が上記管 の役割を担うこともできる。

 より効率よく固形物に力を加えるために 、第1の管体の最小内径が、排出口28の径以 であることが好ましい。また、排出口28か 離れるに従い、内径が次第に変化する(即ち 内面がテーパー状の)管体であってもよく、 この場合、内径が、排出口28から離れるに従 次第に小さくなることが好ましい。

 方法1、2では、得られる第2の固形物の形 の自由度を高くでき、例えば、1mmを超え5cm 下程度の平均径を有する紐状の固形物を形 できる。

 方法1または2により、紐状の固形物を形 する場合、その平均径は、例えば、排出口28 の径、排出口28に接続される上記第1の管体の (最小)内径、あるいは、第2の管体の(最小)内 などを選択することにより、調整できる。

 方法1、2では、分散液に連続的に上記力 加えることにより、連続的に第2の固形物を ることができる。即ち、第2の固形物を、バ ッチ生産法ではなく、連続生産法により形成 できる。このためには、例えば、分散液を、 図3~図6に示すチャンバー21に連続的に供給し チャンバー21から固形物を連続的に排出す ばよい。また例えば、分散液を方法Cで用い 第2の管体に連続的に供給し、第2の管体か 第2の固形物を連続的に排出すればよい。

 本発明の製造方法では、このように連続 に形成した第2の固形物から、当該固形物に 含まれる水の量を連続的に低減させた後、融 点以上の温度において連続的に引き抜き加工 することにより、出発物質であるPTFE分散液 らPTFE繊維を連続的に製造できる。第2の固形 物に含まれる水の量を低減させる前に、第2 固形物を第2のダイを通して連続的に引き抜 加工した場合においても、同様に、出発物 であるPTFE分散液からPTFE繊維を連続的に製 できる。

 なお、方法1、2では、チャンバーまたは 体を、供給口および排出口以外には物質が 入りする開口がない構造とすれば、チャン ーまたは管体に供給される分散液の質量と チャンバーまたは管体から排出される第2の 形物との質量とを、実質的に同一とするこ ができる。このような連続製造の初期段階 は、おそらくは分散液に十分な力が加わら いために、チャンバーなどから液体が排出 れることがある。しかし、初期段階を脱し 分散液に十分な力が加わる安定した状態が 度達成されれば、その後、分散液はその全 が第2の固形物へと変化する。これ以降、排 出された第2の固形物からの蒸発により失わ る微量の水などを除けば、供給される分散 と形成された第2の固形物とは同じ質量とな 。このように、方法1、2では、固形分を含 液相の原料(分散液)の実質的に全てを固相一 相の固形物(第2の固形物)へと変化させること ができる。このため、方法1、2により第2の固 形物を形成することで、効率に優れるPTFE繊 の製造方法とすることができる。

 分散液におけるPTFE粒子の含有率は特に限 定されないが、自己形状保持性と変形性との バランスに優れる第2の固形物を形成するた には、例えば、その下限が40質量%以上であ ばよく、40質量%を超えることが好ましく、45 質量%を超えることがより好ましく、50質量% 上、55質量%以上の順にさらに好ましい。ま 、分散液におけるPTFE粒子の含有率の上限は 分散液としての安定性および上記と同様の 由から、例えば、70質量%以下であればよく 65質量%以下がより好ましい。

 分散液に力を加える方法、条件などにも るが、基本的に、分散液におけるPTFE粒子の 含有率が大きくなるに従い、形成される第2 固形物の自己形状保持性が向上し、PTFE粒子 含有率が小さくなるに従い、形成される第2 の固形物の変形性が向上する傾向を示す。

 PTFE粒子の平均粒径は、通常、0.1μm~40μmの 範囲であり、0.2μm~1μmの範囲が好ましい。

 分散液における界面活性剤の含有率は特 限定されないが、自己形状保持性と変形性 のバランスに優れる第2の固形物を得るため には、0.01質量%~15質量%の範囲が好ましく、0.1 質量%~10質量%の範囲、1質量%~9質量%の範囲、1. 5質量%~9質量%の範囲、および、2質量%~7質量% 範囲の順に、より好ましい。界面活性剤の 有率が好ましい範囲にあれば、PTFE相と水相 の分離を抑制しながら第2の固形物を得るこ とが容易になる。

 方法1では、界面活性剤の種類は特に限定 されない。また、方法2では、界面活性剤の 類は非イオン性である限り特に限定されず 例えば、方法1、2ともに、界面活性剤として 、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポ リオキシエチレン誘導体、グリセリン脂肪酸 エステルなどを用いればよい。

 方法1、2のそれぞれにおいて、100℃からPT FEの融点程度の温度範囲において分解する界 活性剤を用いることが好ましい。この場合 融点以上の引き抜き加工を行う際に、形成 るPTFE繊維に残留する界面活性剤の量を低減 できる。

 分散液として、市販されているPTFEディス パージョンを用いてもよい。市販のPTFEディ パージョンとしては、例えば、旭硝子社製( :旭硝子フロロポリマーズ社製)AD938、AD911、A D912、AD1、AD639、AD936などのADシリーズ、ダイ ン工業社製D1、D2、D3などのDシリーズを用い ばよい。これら市販のPTFEディスパージョン は、通常、非イオン性界面活性剤を含んでい る。

 分散液は、PTFE粒子、水および界面活性剤 以外の物質を含んでいてもよい。

 本発明のPTFE繊維は、紐状のPTFE含有固形 (第1の固形物)をPTFEの融点以上の温度におい 引き抜き加工することにより、細径化して た繊維である。

 本発明のPTFE繊維は、例えば、上述した本 発明の製造方法により得ることができる。

 本発明のPTFE繊維は、典型的には、繊維軸 方向に伸長したPTFEの融着体からなる。例え 、後述の実施例において示す本発明の繊維 、繊維軸方向に伸長する、互いにほぼ平行 て配列した2以上の上記融着体を有し、融着 同士は、その側面において互いに融着して る。この融着体の平均径は、およそ0.1~5μm 度と、従来のPTFE繊維において観察されるフ ブリル(一般に、0.02~0.1μm程度の平均径を有 る)よりも大きい。

 本発明のPTFE繊維では、融点以上の温度に おける引き抜き加工により、PTFE分子鎖の高 配向が実現されると考えられ、例えば、広 X線回折(WAXD)測定により求めた、繊維軸方向 結晶配向度は0.92以上であり、場合によって は、0.93を超え、さらには0.99以上、0.995以上 することができる。

 本発明のPTFE繊維では、上記融着体により 高い機械的特性が実現されると考えられ、例 えば、引張試験により求めた引張弾性率が10G Pa以上であり、場合によっては、20GPa以上、 らには30GPa以上、40GPa以上とすることができ 。

 上記とは別の側面から見た本発明のPTFE繊 維は、マトリクス材およびその焼成物を含ま ないためにPTFEからなり、WAXD測定により求め 、繊維軸方向の配向度が0.92以上であるPTFE 維である。

 また別の側面から見た本発明のPTFE繊維は 、繊維軸方向に伸長したPTFEの融着体からな 繊維である。

 以下、実施例により、本発明をより詳細 説明する。本発明は、以下に示す実施例に 定されない。

 最初に、PTFE含有固形物(第2の固形物)の形 成方法の例を、形成例として示す。

 (形成例1)
 形成例1では、分散液に、市販のPTFEディス ージョンである旭硝子社製AD938(PTFE粒子の含 率60質量%、PTFE粒子の平均粒径0.3μm、界面活 性剤の含有率3質量%)を用い、図3に示すチャ バー21を用いて紐状の第2の固形物を形成し 。AD938に含まれる界面活性剤の種類は、非イ オン性界面活性剤であり、その曇点は約60℃ ある。

 チャンバー21の内部空間2の容積(チャンバー 21の内容積)は200cm 3 とし、チャンバー内に、円形の噴射口(0.25mmφ )を有する一対のノズル23a、23bを配置した。 ズルの先端における噴射口が形成された部 には、ダイヤモンドを用い、各々のノズル 噴射方向24a、24bが交わるようにノズル23a、23 bを配置した。排出口28(円形、径10mm)には、断 面の形状が円形である内径1.6mm、長さ1000mmの 体(第1の管体)を接続した。

 このようなチャンバー21に上記分散液(液 25℃)を供給し、ノズル23a、23bから分散液を 射させた。分散液の供給量を約0.5L/分、分 液の噴射圧を200MPaとした。チャンバー21、お よび、分散液に対する加熱は特に行わなかっ た。

 噴射開始から十数秒後、管体の先端から 紐状(円柱状)のPTFE含有固形物(直径2mm)が排 され、排出された固形物は、水と界面活性 とを内包し、支持体による支持なしに自ら 形状を保持可能であった。

 管体の先端から排出された固形物の温度 測定したところ、噴射開始から40秒程度経 した後に約70℃で安定した。チャンバー21内 おける固形物が形成された分散液の温度は の温度以上であると考えられ、即ち、この 験では、分散液の温度にして70℃以上の温 域においてPTFE粒子同士の結着が行われたと えられる。

 同様の実験を、ノズルの噴射口の径を0.05 mmφ~0.5mmφの範囲、分散液の噴射圧を30MPa~300MPa の範囲、分散液の供給量を0.3L/分~10L/分の範 で、それぞれ変化させて行ったところ、上 と同様に、紐状の第2の固形物を形成できた

 (形成例2)
 形成例2では、分散液に旭硝子社製AD938を用 、図7に示す管体(第2の管体)41を用いて紐状 第2の固形物を形成した。管体41は、分散液 流れを妨げるバリアとして、L字状の屈曲部 43と内径が変化した狭窄部49とを有する。狭 部49よりも上流側の管体41の内径は10mm、狭窄 部49よりも下流側の管体41の内径は2mmとした 狭窄部49の位置は、管体41の一方の端部(出口 側の端部)42から200mmとし、屈曲部43の位置は 管体41の他方の端部(入口側の端部)44から170mm とした。

 このような管体41と、分散液の供給路46の 末端に配置されたノズル45(円形の噴射口(0.15m mφ)を有する)とを、ノズル45が管体41の中心軸 上に位置し、管体41の他方の端部44とノズル45 との距離が5mmとなるように互いに配置した後 (図7参照)、ノズル45から分散液を管体41の内 に噴射させた。ノズル45への分散液の供給量 を約0.5L/min、分散液の液温を25℃とし、分散 の噴射圧を200MPaとした。管体41および分散液 に対する加熱は特に行わなかった。

 噴射開始から数秒後、管体41の端部42から 、紐状のPTFE含有固形物(直径2mm)が排出され、 排出された固形物は、水と界面活性剤とを内 包し、支持体による支持なしに自らの形状を 保持可能であった。

 管体の端部から排出された固形物の温度 測定したところ、噴射開始から40秒程度経 した後に約70℃で安定した。

 同様の実験を、分散液の噴射圧を200MPa~240 MPaの範囲で変化させて行ったところ、上記と 同様に、紐状の第2の固形物を形成できた。

 同様の実験を、分散液におけるPTFE粒子の 含有率を変化させて行ったところ、当該含有 率を54質量%および48質量%とした場合において も、上記と同様に、紐状の第2の固形物を形 できた。

 同様の実験を、図8に示す管体(第2の管体) 51、および、図9に示す管体(第2の管体)61を用 て行った場合においても、上記と同様に、 状の第2の固形物を形成できた。

 なお、管体51は、分散液の流れを妨げる リアとして、その一方の端部42の近傍にT字 の屈曲部47を有する。管体51の内径は10mm、長 さ(一方の端部42から他方の端部44までの長さ) は200mmとし、屈曲部47の位置は管体51の一方の 端部42から30mmとした。

 管体51を用いた場合、端部42からは紐状の PTFE含有固形物が排出されたが、端部42ととも に「T字」の開放端部を構成する端部48からは 、紐状のPTFE含有固形物は排出されなかった 上記実験を複数回行ったところ、それぞれ 場合において、端部42または端部48のいずれ 一方の端部のみから紐状のPTFE含有固形物が 排出された。

 管体61は、分散液の流れを妨げるバリア して、その長さ方向の中央部に、内径が変 した狭窄部49を有する。管体61の長さは400mm し、一方の端部42から長さ200mmの範囲の内径 2mm、他方の端部から長さ200nmの範囲の内径 10mmとした。即ち、管体61では、狭窄部49にお いて、その内径が10mmから2mmへと変化するこ になる。

 (実施例1)
 最初に、形成例1と同様にして紐状の第2の 形物を形成した。ただし、チャンバー21の内 容積を30cm 3 とし、その排出口28には、断面の形状が円形 ある内径1.6mm、長さ200mmの第1の管体を接続 て、直径2mmの紐状(円柱状)の第2の固形物を 成した。

 次に、このように形成した紐状の固形物 、90℃の温水中において、吐出口の径が異 る5つの第2のダイにより引き抜き加工したと ころ、1つめのダイにより直径1.67mmへ、2つめ ダイにより直径1.4mmへ、3つめのダイにより 径1.2mmへ、4つめのダイにより直径1.0mmへ、5 めのダイにより直径750μmへ、と当該固形物 段階的に細径化できた。なお、5つの上記ダ イは吐出口の径が大きい順に並べ、紐状の固 形物は、この順に上記ダイを通して引き抜き 加工した。

 上記各ダイには、ポリプロピレンからな ピペットチップ(Quality Scientific Plastics社製 111-Q 1000μL用)を用い、第2の固形物は、各々 のチップの先端に設けられた開口部から引き 抜いた。各々のチップにおける開口部近傍の 内部空間の形状、即ち、固形物が接触する空 間の形状、は、ほぼ円錐状であり、その円錐 の中心軸と円錐面の母線との成す角度である ダイス角αは約7°であった。各ダイの吐出口 径と、当該吐出口から引き抜かれた固形物 径とは、ほぼ同じであった。開口部は、上 ピペットの先端を切断することにより形成 、その径は、切断する位置を変化させるこ により調整した。第2の固形物の引き抜き速 度は、17.3m/分とした。

 引き抜き加工前の固形物の断面(伸長方向 に垂直な断面)における表面(外周面)近傍の走 査型電子顕微鏡(SEM)像を図10に、当該断面に ける中心付近のSEM像を図11に示す。図10に示 ように、この固形物の外周面近傍の部分で 、PTFE粒子が互いに結着した構造を有するス キン層が形成されていた。一方、図11に示す うに、その中心付近では、PTFE粒子が比較的 元の形状(分散液中における形状)を保ってい 。各々のSEM像は、固形物を乾燥後、凍結破 させた状態で撮影したが、固形物が水を含 でいる状態では、図11に示す粒子間には水 よび界面活性剤が安定して含まれていると えられ、このような構造が、第2の固形物の 形性の発現に寄与していると考えられる。

 温水中における引き抜き加工後の固形物 断面をSEMにより観察したところ、その中心 近に、PTFE粒子が多数確認できた。

 次に、引き抜き加工により細径化した後 固形物を自然乾燥させた後(即ち、固形物に 含まれる水の量を低減させることにより第1 固形物とした後)、得られた第1の固形物を、 図12に示す断面形状を有する金属製の第1のダ イ2を用いて、引き抜き温度350℃で引き抜き 工したところ、当該固形物の直径を210μmへ さらに細径化でき、一本の繊維の全体にわ ってほぼ均一な直径(繊維径)を有する、半透 明の繊維を得ることができた。また、その断 面形状は、表面に僅かな凹凸が見られたもの の、ほぼ円形であった。

 なお、図12に示すダイ2におけるその内部 面(第1の固形物が接触する面)の一部は、固 物の伸長方向を中心軸とし、固形物が引き かれる方向を頂点とする円錐の円錐面であ 、当該円錐の中心軸と円錐面の母線とが成 角度であるダイス角αは約30°であった。ま 、引き抜き加工は、ダイ2の温度を350℃とし 、引き抜き速度を0.8m/分として行った。ダイ2 における繊維の吐出口12の径は500μmとした。

 第1のダイ2による引き抜き加工(引き抜き 度350℃)により得られた繊維の断面(伸長方 に平行な断面)のSEM像を図13A、図13Bに示す。 13Aおよび図13Bは、互いに倍率が異なるが、 じ断面に対するSEM像である。

 図13A、図13Bに示すように、融点以上の温 における引き抜き加工により、繊維軸方向 伸長する複数のPTFE融着体を有するPTFE繊維 形成できた。図13A、図13Bに示す例におけるPT FE融着体の平均径を画像処理により求めたと ろ、当該平均径は、およそ0.5~3μmの範囲に った。なお、この引き抜き加工前における 形物の中心部分にはPTFE粒子が多数存在して たことから、この融着体は、融点以上の引 抜き加工により、PTFE粒子同士が融着して形 成されたと考えられる。

 これとは別に、引き抜き温度を380℃とし 以外は上記と同様に、第1の固形物を引き抜 き加工したところ、当該固形物の直径を120μm へとさらに細径化でき、一本の繊維の全体に わたってほぼ均一な直径(繊維径)を有し、引 抜き温度が350℃の場合よりも透明感が増し 半透明の繊維を得ることができた。また、 の断面形状は、350℃の場合と同様に、ほぼ 形であった。

 この引き抜き加工(引き抜き温度380℃)に り得られた繊維の断面(伸長方向に平行な断 )のSEM像を図14A、図14Bに示す。図14Aおよび図 14Bは、互いに倍率が異なるが、同じ断面に対 するSEM像である。

 図14A、図14Bに示すように、380℃における き抜き加工により、引き抜き温度が350℃の 合と同様に、繊維軸方向に伸長する複数のP TFE融着体を有するPTFE繊維を形成できた。ま 、当該繊維において、隣り合う融着体同士 、引き抜き温度が350℃の場合よりも、より 着して融着しており、融着体間に存在する 隙も、引き抜き温度が350℃の場合に比べて その数が少なく、また一つ一つの空隙の大 さが小さかった。このような空隙の状態の 化により、引き抜き温度が350℃の場合に比 て、より透明な繊維が得られたと考えられ 。また、このような空隙の状態の変化は、 り高い温度における引き抜き加工によって PTFEの融着がさらに促進されたことが理由で ないかと考えられる。

 次に、上記のようにして得た繊維の比重 、空気中およびPTFEへの濡れ性が良好である ブタノール中における当該繊維の重量から、 温度25℃にて求めたところ、約2.22であった。 これとは別に、比較のため、マトリックス紡 糸法により製造された市販のPTFE繊維である 商品名トヨフロン(東レ社製)、および、スリ ットヤーン法により製造されたPTFE繊維であ 、ゴア社製のバグフィルター(PRISTYNE6230)から 採取した繊維の比重を、上記と同様に測定し たところ、トヨフロンについて約1.90、バグ ィルターから採取した繊維について約2.06で った。この結果から、融点以上の引き抜き 工により得た本発明の繊維は、従来のPTFE繊 維に比べて「密」な構造を有しているのでは ないかと思われる。

 なお、PTFE繊維の比重を、ブタノールの代 わりに水を用いて評価しようとしたが、PTFE の水の濡れ性の低さから、繊維の表面に多 の気泡が付着したため、水を用いた比重の 定は困難であった。

 (実施例2)
 最初に、実施例1と同様にして、紐状の第2 固形物(直径2mm)を形成し、当該固形物を90℃ 温水中で引き抜き加工した後に自然乾燥さ て、紐状の第1の固形物(直径750μm)を得た。

 次に、得られた第1の固形物を、250℃、320 ℃、330℃、340℃、350℃、360℃、370℃および380 ℃の各引き抜き温度において、図12に示す断 形状を有する金属製の第1のダイ2を用いて き抜き加工し、PTFE繊維を得た。引き抜き温 250℃および320℃における引き抜き加工は、 較のために行ったものである。全ての引き き温度において、得られた繊維は、一本の 維の全体にわたってほぼ均一な直径を有し おり、その断面形状は、表面に僅かな凹凸 見られたものの、ほぼ円形であった。

 上記のように形成した各繊維について、 の繊維径、色調、引張強度、弾性率、破断 び、結晶化度、および繊維軸方向の結晶配 度を評価した。各評価項目の評価方法を以 に示す。

 [繊維径]
 繊維径は、マイクロメーターにより評価し 。

 [色調]
 繊維の色調は、目視により評価した。

 [引張強度、弾性率、破断伸び]
 評価対象物である繊維に対して引張試験を 施して、当該繊維のS-S曲線(ストレス-スト イン曲線)を測定することにより評価した。 張試験は、引張試験機(米倉製作所社製、CAT Y500BH)を用い、引張速度を50mm/分、チャック間 距離を20mm、測定雰囲気を22℃として行った。 当該試験において、繊維を引っ張る方向は、 その伸長方向とした。

 [結晶配向度]
 評価対象物である繊維に対して広角X線回折 (WAXD)測定を実施し、得られたX線回折像(WAXDプ ロファイル)から、当該繊維の繊維軸方向の 晶配向度を求めた。WAXD測定は、広角X線回折 装置(リガク社製)を用い、CuKα線(波長:0.1542nm) を上記繊維に照射して、その回折像を平板フ ィルムに撮影して行った。X線の照射方向は 上記繊維の繊維軸に対して垂直な方向とし X線の照射時間は1.5時間とした。WAXD測定は、 PTFEが六方晶系となって、1つの結晶面から配 度を求めることができる温度(19℃)以上の22 で行った。得られたWAXDプロファイルからの 結晶配向度の評価は、繊維便覧第3版(社団法 繊維学会編、丸善株式会社発行、発行日平 16年12月15日)の第81~83ページの記載に従った なお、配向度は(100)面の配向性から求めた

 [結晶化度]
 評価対象物である繊維に対して示差走査熱 (DSC)測定を実施し、得られたDSC曲線から、 該繊維の結晶化度を求めた。DSC測定は、示 走査熱量計(ブルカー・エイエックス社製DSC3 100SA)により行い、測定の標準試料にはアルミ ナを用い、測定条件は、昇温速度を10℃/分、 窒素流量を50mL/分とした。各繊維の結晶化度( Xc)は、測定によって得られたDSC曲線から繊維 の融解エンタルピー(δH f )を求め、式Xc=(δH f /δH f 100% )×100(%)により求めた。ここで、δH f 100% は、PTFEの完全結晶の融解エンタルピーであ 。ここでは、「Starkweather HW Jr., Zoller P, Jo nes GA, Vega AJら、Journal of Polymer Science、Poly mer Physics Edition、1982年、Vol.20、pp751」の記載 に基づき、δH f 100% =92.9J/gとした。

 評価結果を以下の表1ならびに図15~17に示 。

 表1に示すように、引き抜き温度が高くな ると、得られた繊維の繊維径は小さくなる傾 向を示し、特に、引き抜き温度が340℃以上で は、引き抜き温度が330℃以下の場合に比べて 、得られた繊維の繊維径が大幅に小さくなっ た。また、繊維の色調は、引き抜き温度が340 ℃以上において、白色から次第に半透明とな る傾向を示した。

 また、表1、図15~17に示すように、引き抜 温度がPTFEの融点以上となると、得られた繊 維の引張強度、弾性率および結晶配向度が増 大し、破断伸びおよび結晶化度が低下する傾 向を示した。

 より具体的には、繊維の引張強度および 性率は、引き抜き温度が330℃以上、特に340 以上になると、大きく増大した。結晶化度 、それよりも低い温度域である引き抜き温 が320℃の時点で、引き抜き温度が250℃のと に比べて減少を始めた。一方、繊維の破断 びは、引張強度などに比べると、引き抜き 度がPTFEの融点以上であるか否かに影響を受 けず、250℃以上の引き抜き温度の温度域にお いて、当該温度の上昇に伴い全体的に低下す る傾向を示した。結晶配向度は、引き抜き温 度が370℃以上になると、顕著に増加した。

 図18に、引き抜き温度に対する、引張強 、ならびに、引き抜き加工時の第1の固形物 伸長倍率を、図19に、引き抜き温度に対す 、弾性率、ならびに、引き抜き加工時の第1 固形物の伸長倍率を、それぞれ示す。第1の 固形物の伸長倍率は、引き抜き加工前の時点 における固形物の直径(750μm)と、引き抜き加 によって得られた繊維の繊維径とから求め 。

 図18、19に示すように、PTFEの融点未満の 度における引き抜き加工では、得られた繊 の伸長倍率ならびに引張強度および弾性率 ほとんど変化しなかったが、330℃以上、特 340℃以上の引き抜き温度において、伸長倍 、引張強度および弾性率ともに、大きく上 する傾向を示した。

 これとは別に、マトリックス紡糸法およ スリットヤーン法により製造されたPTFE繊維 である上記トヨフロンおよびバグフィルター より採取した繊維の結晶配向度を、上記と同 様に測定したところ、それぞれ、0.93および0. 87であった。また、これらの繊維の引張強度 弾性率および破断伸びを別途評価したとこ 、トヨフロンについて、それぞれ、220MPa、2 .5GPa、および21.5%であり、バグフィルターよ 採取した繊維について、それぞれ、1080MPa、8 .8GPa、および24.8%であった。

 上記それぞれの引き抜き温度において引 抜き加工して得た繊維、および、上記従来 製造方法による繊維のWAXDプロファイルを、 図20~29に示す。

 なお、表1に示すように、引き抜き温度370 ℃で得た繊維と、引き抜き温度380℃で得た繊 維とでは、結晶配向度こそ0.99と同一である 、図27、28に示すように、両者のWAXDプロファ イルは異なる。このため、両者には、結晶配 向度の数値に表れないような構造の違いがあ るのではないかと推定される。

 上記評価とは別に、評価対象物である上 各繊維に対して小角X線散乱(SAXS)測定を行っ たところ、引き抜き温度を融点未満としたと きと、当該温度を融点以上としたときとの間 で異なるプロファイル(散乱像)が得られた。 た、引き抜き温度を融点以上としたときの ロファイルと、上記従来の製造方法によるP TFE繊維に対する測定で得られたプロファイル とは異なっていた。詳細の解析は今後の検討 が待たれるが、SAXS測定では、WAXD測定よりも きな構造、例えば、繊維中に存在する空隙 程度、などを評価できると考えられ、融点 上の温度における引き抜き加工によって得 本発明の繊維の構造を、より明確に特定で る可能性がある。

 図30に、引き抜き温度の変化に対する、 1の固形物を引き抜くために必要な張力(引き 抜き張力)の変化を示す。引き抜き速度は、 て同一である。

 図30に示すように、引き抜き温度が上昇 るに伴い、引き抜き張力が増加する傾向を した。詳細の解析は今後の検討が待たれる 、引き抜き温度を上昇させることで、第1の 形物(および得られたPTFE繊維)をその長軸方 (繊維軸方向)に引き伸ばすことができる可 性がある。

 (実施例3)
 最初に、実施例1と同様にして紐状の第2の 形物(直径2mm)を形成した。ただし、旭硝子社 製AD938に、非イオン性界面活性剤(ポリオキシ エチレンアルキルエーテル:花王社製エマル ン1108)を濃度1重量%となるように加えた分散 を用い、チャンバー21への分散液の噴射圧 150MPaとした。

 次に、実施例1と同様に、得られた紐状の 固形物を、吐出口の径が異なる5つの第2のダ (実施例1と同様のピペットチップからなる) より90℃の温水中において引き抜き加工し 。ただし、それぞれのダイの吐出口の径は 1.6mm、1.4mm、1.3mm、1.1mm、1.0mmおよび0.9mmとし 引き抜き速度は4.7m/分とした。

 次に、温水中における引き抜き加工後の 形物を自然乾燥させて、紐状の第1の固形物 (直径700μm)とし、得られた第1の固形物を、330 ℃、350℃、380℃および400℃の各引き抜き温度 において、図31に示す断面形状を有する金属 の第1のダイ2を用いて引き抜き加工し、PTFE 維を得た。得られた繊維は、一本の繊維の 体にわたってほぼ均一な直径を有しており その断面形状は、表面に僅かな凹凸が見ら たものの、ほぼ円形であった。

 なお、図31に示すダイ2におけるその内部 面の一部は、図12に示すダイ2と同様に、固 物の伸長方向を中心軸とし、固形物が引き かれる方向を頂点とする円錐の円錐面であ 。また、このダイ2において、上記円錐の中 心軸と円錐面の母線とが成す角度であるダイ ス角αは約8°である。ダイ2における繊維の吐 出口12の径は250μmとした。

 ダイ2を用いた第1の固形物の引き抜き加 は、引き抜き速度を0.8m/分から、引き抜き加 工可能な最大速度にまで変化させて行った。

 上記のように形成した各繊維について、 の繊維径、力学的性質(引張強度および引張 弾性率)、繊維軸方向の結晶配向度、複屈折 熱的性質、および動的粘弾性を評価した。 評価項目の評価方法を以下に示す。

 [繊維径、結晶配向度]
 実施例2と同様に評価した。

 [引張強度、引張弾性率]
 引張試験機としてオリエンテック社製STA-115 0を用い、引張速度を100mm/分、チャック間距 を50mmとした以外は、実施例1と同様に評価し た。

 [複屈折]
 各繊維の複屈折δnは、偏光顕微鏡(ニコン社 製OPTIPHOTO2-POL)により評価した。具体的には、 波長λ=589nmの単色光を用いて、上記繊維をク スニコル下で観察し、そのレターデーショ Rをベレック式コンペンセータにより求めて 、式δn=R/d(dは繊維径)からδnを算出した

 [熱的性質、結晶化度]
 各繊維の熱的性質は、示差走査熱量計(DSC)( ルカー・エイエックス社製DSC3100SA)により評 価した。なお、標準試料にはアルミナを用い 、昇温速度を10℃/分、窒素流量を50mL/分とし 。

 また、DSCによる評価結果から、実施例2と 同様に、繊維の結晶化度を求めた。

 [動的粘弾性]
 各繊維の動的粘弾性は、動的粘弾性測定装 (レオロジー社製MR-300)により評価した。な 、駆動周波数を10Hz、昇温速度を5℃/分とし -150~400℃の温度範囲で測定した。

 評価結果を、図32~39に示す。

 [引き抜き速度と、繊維径および伸長倍率と の関係]
 実施例3で実施した330℃以上の各引き抜き温 度において、第1の固形物の安定した引き抜 加工が、即ち、安定したPTFE繊維の形成が、 能であった。図32に示すように、引き抜き 度を高くするほど、引き抜き速度を大きく ることができた。また、引き抜き速度の増 に伴い、得られる繊維の径が小さくなると もに、引き抜き加工時の伸長倍率が増大し 。伸長倍率は、実施例2と同様に、引き抜き 工前の時点における第1の固形物の直径(700μ m)と、引き抜き加工によって得られた繊維の 維径とから求めた。

 得られた繊維の色調は、引き抜き温度を3 30℃とした場合、引き抜き速度が0.8m/分のと に透明であったが、この引き抜き温度では 引き抜き速度の増加に伴い、半透明から白 へと変化した。その他の引き抜き温度の場 、引き抜き速度によらず、得られた繊維は 明であった。

 [引き抜き速度および伸長倍率と、引張強度 および弾性率との関係]
 図33に示すように、引き抜き速度が大きく るほど、また、引き抜き温度が高くなるほ 、得られた繊維の引張強度および弾性率が 大した。引き抜き温度を400℃としたときに 、得られた繊維の弾性率は最大で約48GPa、引 張強度は最大で約620MPaとなった。

 また、伸長倍率が大きくなるほど、得ら た繊維の引張強度および弾性率が増大した 、伸長倍率と弾性率との関係は、引き抜き 度に依存することなく、全ての引き抜き温 において、ほぼ同様であった。これに対し 、伸長倍率と引張強度との関係は、引き抜 温度に対する依存性を示し、同じ伸長倍率 は、引き抜き温度が高くなるに従って、得 れた繊維の引張強度が大きくなった。

 [引き抜き速度および伸長倍率と、結晶配向 度との関係]
 図34に示すように、引き抜き温度が高くな に従って、得られた繊維の結晶配向度が増 する傾向を示し、380℃以上の引き抜き温度 おいて0.995以上となった。また、380℃以上の 引き抜き温度では、引き抜き速度が大きくな るに従って、得られた繊維の結晶配向度が増 大する傾向を示した。伸長倍率と結晶配向度 との関係は、引き抜き速度と結晶配向度との 関係と、ほぼ同様であった。

 なお、上記のように形成した各繊維のWAXD プロファイルを、図40、41に示す。

 [引き抜き速度および伸長倍率と、複屈折δn との関係]
 複屈折δnは、PTFE繊維における結晶相および 非晶相の光学的異方性を、各々の相の体積分 率に応じて平均化した値であるともいえ、形 態複屈折による影響を受けるという問題があ るが、δnによって、非晶相の配向状態を観察 できると考えられる。

 図35に示すように、引き抜き温度が高く るに従って、得られた繊維の複屈折が増大 る傾向を示した。図34に示す結晶配向度の結 果と併せて考えると、引き抜き温度が高くな ることにより、結晶相だけではなく、非晶相 の配向度が増すのではないかと考えられる。 なお、引き抜き速度と複屈折率との関係は、 伸長倍率と複屈折率との関係と、ほぼ同様で あった。

 [熱的性質]
 図36に示すように、引き抜き加工により、 解ピーク温度(DSC曲線における350℃近傍の吸 ピークの温度。引き抜き加工前において345 )が低温にシフトすることがわかった。また 、引き抜き温度が380℃以上の場合に、DSC曲線 において、370℃~380℃の温度領域にもう一つ たな吸熱ピーク(高温側ピーク)が測定された 。高温側ピークの出現は、引き抜き温度を高 くした場合に、互いに形態学的に異なる2種 の結晶が形成され、得られた繊維の結晶状 が準安定的となっていることを示唆してい 。

 このことは、図37に示す、引き抜き速度 よび伸長倍率に対する結晶化度の変化、具 的には、引き抜き速度および伸長倍率が増 するに伴って結晶化度が大きくなる傾向、 よっても示唆されている。

 なお、図36において、単位「m/min」によっ て示される数値は、「引き抜き速度(m/分)」 示し、吸熱ピーク温度に併記された、括弧 の数値は、得られた繊維の結晶化度(%)を示 。

 [動的粘弾性]
 動的粘弾性測定では、温度上昇に伴う力学 緩和現象に基づき、得られた繊維における 子の凝集状態が予想できる。PTFEでは、その 対数減衰率の値に対して、αピーク、βピー およびγピークが存在することが知られてお り、貯蔵弾性率のプロファイルにおいて、当 該ピークに対応する階段状の部分を、それぞ れα分散、β分散およびγ分散という。α分散 よびγ分散は、高分子中の無定型部分の運 に基づくと考えられ、高分子の結晶化度の 加に伴って減少する傾向を示す。β分散は、 高分子中の結晶部分の分子運動に基づくと考 えられ、高分子の結晶化度の増加に伴って増 大する傾向を示す。

 図38に、各引き抜き温度および速度にお て引き抜き加工して得た繊維の貯蔵弾性率(E ’)を示し、図39に、図38に示した貯蔵弾性率 ロファイルにおけるγ分散に対応する領域 損失正接(tanδ)を示す。

 図38、39に示すように、得られた繊維の貯 蔵弾性率(E’)の値は、引き抜き温度が高くな るに従って大きくなり、上述した弾性率と同 様の傾向を示した。また、γ分散は、引き抜 速度の増加に伴って減少し、熱的性質の評 から求めた結晶化度の変化と同様の傾向を した。

 図42、43に、実施例3において得られた繊 の表面をSEMにより評価した例を示す。また 図44、45に、実施例3において得られた繊維の 断面をSEMにより評価した例を示す。

 図42、43に示すように、繊維軸方向に伸長 する微細な凹凸が見られるものの、ほぼ滑ら かな表面を有するPTFE繊維を形成できた。ま 、図44、45に示すように、繊維軸方向に伸長 る複数のPTFE融着体を有するPTFE繊維を形成 きた。

 本発明は、その意図および本質的な特徴 ら逸脱しない限り、他の実施形態に適用し る。この明細書に開示されている実施形態 、あらゆる点で説明的なものであってこれ 限定されない。本発明の範囲は、上記説明 はなく添付したクレームによって示されて り、クレームと均等な意味および範囲にあ すべての変更はそれに含まれる。

 本発明によれば、PTFE繊維を、エマルジョ ン紡糸法のようにマトリックス材を用いるこ となく製造できるとともに、スリットヤーン 法を含む従来の製造方法よりも、生産性よく 製造できる。