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Title:
PROCESS FOR PRODUCING PRECIPITATION-HARDENED COPPER ALLOY STRIP
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/098810
Kind Code:
A1
Abstract:
A process for producing a copper alloy strip having an excellent balance among all of tensile strength, elongation, and electrical conductivity. The process comprises: a step in which a copper-nickel-phosphorus type copper alloy is hot-rolled and then subjected to aging precipitation to obtain a copper alloy strip which has undergone the aging precipitation; a step in which the copper alloy strip which has undergone the aging precipitation is subjected to intermediate cold rolling at a reduction ratio of 50-90% and then subjected to an intermediate recovery heat treatment to obtain a copper alloy strip which has undergone the recovery heat treatment; and a step in which the copper alloy strip which has undergone the recovery heat treatment is subjected to final cold rolling at a reduction ratio of 20-95% and then subjected to a final recovery heat treatment to obtain a copper alloy strip based on a recovery phenomenon. In this process, by regulating the combination of cold rolling and recovery heat treatment conditions, a precipitation-hardened copper alloy strip having properties in target ranges can be produced.

Inventors:
YAMAGUCHI HIROSHI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/070747
Publication Date:
August 13, 2009
Filing Date:
November 14, 2008
Export Citation:
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Assignee:
MITSUI MINING & SMELTING CO (JP)
YAMAGUCHI HIROSHI (JP)
International Classes:
C22F1/08; B21B3/00; C22C9/06; H01B13/00; C22F1/00
Foreign References:
JP2007107087A2007-04-26
JP2000239812A2000-09-05
JPS60114557A1985-06-21
Attorney, Agent or Firm:
YOSHIMURA, Katsuhiro (Omiya F Bldg.5-4, Sakuragicho 2-chome,Omiya-k, Saitama-shi Saitama 54, JP)
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Claims:
ニッケルを0.50wt%~1.50wt%、リンを0.05wt%~0.20wt%、スズを0.00wt%~0.04wt%、亜鉛を0.00wt%~0.50wt%含む銅合金条の製造方法であって、以下の工程A~工程Cを含む、回復現象を利用して強化することを特徴とする析出硬化型銅合金条の製造方法。
工程A: 銅合金インゴットに熱間圧延を施し、その後時効析出処理して時効析出処理済み銅合金条を得る工程。
工程B: 工程Aで得られた時効析出処理済み銅合金条に、加工率50%~90%で施す中間冷間圧延とその後施す中間回復熱処理とを1単位として含む中間加工を施し、回復熱処理済み銅合金条を得る工程。
工程C: 工程Bで得られた回復熱処理済み銅合金条に、加工率20%~95%で最終冷間圧延を施し、その後最終回復熱処理を施して回復現象を利用して強化した析出硬化型銅合金条を得る工程。
前記工程Bは、前記1単位の中間加工を複数回繰り返すものである請求項1に記載の析出硬化型銅合金条の製造方法。
前記工程Bは、前記1単位の中間加工の少なくとも1回は、当該中間回復熱処理前の銅合金条のビッカース硬度を基準として、当該中間回復熱処理後の銅合金条のビッカース硬度の低下率を4%~15%とするものである請求項1又は請求項2に記載の析出硬化型銅合金条の製造方法。
前記工程Bは、中間加工前の時効析出処理済み銅合金条に、加工率50%~90%で冷間圧延を施し、その後、部分的に再結晶組織が現れる二次時効析出処理を行って、二次時効析出処理済み銅合金条とする工程を含むものである請求項1又は請求項2のいずれかに記載の析出硬化型銅合金条の製造方法。
前記工程Cの最終回復熱処理は、当該最終回復熱処理前の銅合金条に対する当該最終回復熱処理後の銅合金条のビッカース硬度の低下率を4%未満とするものである請求項1~請求項4のいずれかに記載の析出硬化型銅合金条の製造方法。
前記工程Cの最終回復熱処理は、当該最終回復熱処理前の銅合金条のビッカース硬度を基準として、当該最終回復熱処理後の銅合金条のビッカース硬度の低下率を4%~15%とするものである請求項1~請求項5のいずれかに記載の析出硬化型銅合金条の製造方法。
引張強さ500N/mm 2 以上、伸び率5%以上、導電率50%IACS以上の物性を備え、曲げ加工性及び耐応力緩和性が良好な銅合金条を製造するものである請求項1~請求項6のいずれかに記載の析出硬化型銅合金条の製造方法。
請求項1、請求項2、請求項4~請求項6のいずれかに記載の析出硬化型銅合金条の製造方法において、
 ニッケルを0.50wt%~1.50wt%、リンを0.05wt%~0.20wt%、スズを0.00wt%~0.04wt%、亜鉛を0.00wt%~0.50wt%含み、Ni(wt%)/P(wt%)比率の値が6~10の銅合金インゴットを用いることで、
 引張強さ500N/mm 2 以上、伸び率5%以上、導電率65%IACS以上の物性を備える曲げ加工性及び耐応力緩和性が良好な銅合金条を製造することを特徴とする析出硬化型銅合金条の製造方法。
Description:
析出硬化型銅合金条の製造方法

 本件発明は、析出硬化型銅合金条の製造 法に関する。

 従来から、銅合金系の材料は機械強度に れ、導電率も比較的良好であって安価であ ことから、端子やコネクタなどの通電部材 、機構部品には、銅合金条が多用されてき 。そして、近年の自動車の軽量化や電気電 部品の軽薄短小化に伴い、端子などの通電 材の小型化が図られてきた。その結果、当 通電部材を形成するための材料には、従来 銅合金条では実現困難なレベルの機械強度 必要とされる用途への対応が要求される。 のような用途に対しては、必要な機械強度 確保するために、析出硬化型の銅合金条が いられることが多い。そして、機械強度だ ではなく、良好な曲げ加工性や良好な導電 を備える銅合金条に対する要求も高まって る。即ち、機械強度、曲げ加工性と導電率 バランスが良好な銅合金条を製造する方法 求められている。

 このように課題に対し、例えば、特許文 1には、通電部材に適した銅合金として、銅 -ニッケル-リン系の合金が開示されている。 許文献1では、銅-ニッケル-リン系合金に鉄 クロム、マンガン、コバルトのうち1種又は 2種以上を添加することで、耐マイグレーシ ン性に優れ、高強度で高導電性に優れると う特性を損なうことなく、溶接性、熱間圧 性、及び半田めっきやスズめっきの耐熱剥 性を改善した通電材料が開示されている。 の銅-ニッケル-リン系合金は、析出硬化型合 金として析出硬化能に優れ、30%IACS~50%IACSとい う導電率が得られるとしている。そして、実 施例によれば、銅合金のインゴットを鋳造し 、面削後熱間圧延を行い、その後は冷間圧延 と焼鈍酸洗とを繰り返し、450℃で10時間の最 焼鈍後酸洗いし、加工率20%で冷間圧延を行 ている。

 特許文献2には、ニッケルとリンとを必須 添加成分とした銅合金であって、70%IACS以上 高い導電性レベルを有しながら、強度、曲 加工性、プレス打ち抜き性、耐応力緩和特 及びその異方性を同時に改善した銅合金材 が開示されている。特許文献2では、時効析 処理を兼ねた仕上げ前の焼鈍で一部のみ再 晶させる方法が採られている。また、特許 献2では、時効析出処理が中間加工で1回、 復熱処理も原則最終焼鈍のみの1回である。 に、特許文献2の銅合金は、圧延方向と板厚 方向に平行な断面における結晶粒について、 平均アスペクト比(長径/短径)Aが10以上、アス ペクト比の最大値Amaxと最小値Aminの比Amax/Amin 1.0~3.0を満たす板材が製造できるとしている 。

 また、特許文献3には、強度、導電性、曲 げ加工性、耐応力緩和特性を同時に改善した 、薄肉通電部材やバスバーに好適な銅合金が 開示されている。特許文献3では、ニッケル- ズ-リン系銅合金を対象として、転位密度の 少ない溶体化処理・時効析出処理で析出物を 均一に生成させ、時効析出処理後に再結晶温 度以上にあげないことで、整合性の高い析出 物が、微細、且つ、均一に分散した組織状態 が保たれ、加工硬化と相まってさらなる強度 向上が得られるとしている。

特開平4-231433号公報

特開2006-299409号公報

特開2002-291356号公報

 しかし、特許文献1~特許文献3に開示されて る方法を用いても、機械強度、曲げ加工性 導電性の全てにおいて高いレベルの特性を える銅合金条を得ることは困難である。ま 、特許文献1に開示の方法は、最終冷間圧延 の加工率が20%程度と低いため、得られた銅合 金条の強度は500N/mm 2 に達せず、低レベルの機械強度を備える析出 硬化型銅合金条しか得ることができない。

 そして、特許文献2に開示の方法は、時効析 出処理を兼ねた仕上げ前の焼鈍で、一部のみ 再結晶化させている。しかし、時効析出処理 は中間加工で1回のみ実施し、回復熱処理は 則最終焼鈍のみとする製造方法である。従 て、ここで開示されている仕上げ前焼鈍前 の冷間圧延における加工率は比較的低く、 上げ前の熱処理で初めて時効析出処理を施 ことになる。その結果、強度は高くても500N/ mm 2 程度であり、不十分な機械強度を備える析出 硬化型銅合金条しか得ることができない。

 また、特許文献3に開示の方法は、ニッケ ル-スズ-リン系銅合金を、溶体化処理・時効 出処理で析出物を均一に生成させ、時効析 処理後の温度を再結晶温度以上に上げない 法を採用している。ところが、得られた銅 金条には、3μm~30μmの再結晶組織の形成を確 認できるような製造条件に設定することが前 提となっている。即ち、特許文献3の方法を いると、得られる銅合金条が備える再結晶 は比較的大きいため硬度の低下を招く。そ で、この硬度の低下を補うためにスズ添加 を増量しているが、それでも強度の向上レ ルは不十分である。更に、特許文献3に開示 方法を採用すると、得られる銅合金条の組 では、スズの添加量が増すことによって導 率が低くなり、市場要求である30%IACSを僅か にクリアしたレベルの銅合金条を得るのが通 常である。また、溶体化処理を行う工程を採 用しているため、設備コストとランニングコ ストの負担が大きい製造方法である。

 本件発明は、このような従来技術の問題 鑑みてなされたものであり、機械強度、曲 加工性と導電性とのトータルバランスに優 た銅合金条の製造方法を提供することを目 とする。

 そこで発明者等は、銅-ニッケル-リン系 金について、以下に述べる回復現象を利用 た製造方法を採用することで、上記課題を 成できることに想到した。

 本件発明に係る析出硬化型銅合金条の製 方法は、ニッケルを0.50wt%~1.50wt%、リンを0.05 wt%~0.20wt%、スズを0.00wt%~0.04wt%、亜鉛を0.00wt%~0. 50wt%含む銅合金条の製造方法であって、以下 工程A~工程Cを含み、回復現象を利用して強 することを特徴としている。

工程A: 銅合金インゴットに熱間圧延を施し その後時効析出処理して時効析出処理済み 合金条を得る工程。
工程B: 工程Aで得られた時効析出処理済み銅 金条に、加工率50%~90%で施す中間冷間圧延と その後施す中間回復熱処理とを1単位として む中間加工を施し、回復熱処理済み銅合金 を得る工程。
工程C: 工程Bで得られた回復熱処理済み銅合 条に、加工率20%~95%で最終冷間圧延を施し、 その後最終回復熱処理を施して回復現象を利 用して強化した析出硬化型銅合金条を得る工 程。

 本件発明に係る析出硬化型銅合金条の製 方法においては、前記工程Bは、前記1単位 中間加工を複数回繰り返すものであること 好ましい。

 本件発明に係る析出硬化型銅合金条の製 方法において、前記工程Bは、前記1単位の 間加工の少なくとも1回は、当該中間回復熱 理前の銅合金条のビッカース硬度を基準と て、当該中間回復熱処理後の銅合金条のビ カース硬度の低下率を4%~15%とするものであ ことも好ましい。

 本件発明に係る析出硬化型銅合金条の製 方法において、前記工程Bは、中間加工前の 時効析出処理済み銅合金条に、加工率50%~90% 冷間圧延を施し、その後、部分的に再結晶 織が現れる二次時効析出処理を行って、二 時効析出処理済み銅合金条とする工程を含 ことが好ましい。

 本件発明に係る析出硬化型銅合金条の製 方法においては、前記工程Cの最終回復熱処 理は、当該最終回復熱処理前の銅合金条のビ ッカース硬度を基準として、当該最終回復熱 処理後の銅合金条のビッカース硬度の低下率 を4%未満とするものであることも好ましい。

 本件発明に係る析出硬化型銅合金条の製 方法においては、前記工程Cの最終回復熱処 理は、当該最終回復熱処理前の銅合金条に対 する当該最終回復熱処理後の銅合金条のビッ カース硬度の低下率を4%~15%とするものである ことも好ましい。

 本件発明に係る析出硬化型銅合金条の製造 法においては、引張強さ500N/mm 2 以上、伸び率5%以上、導電率50%IACS以上の物性 を備え、曲げ加工性及び耐応力緩和性が良好 な銅合金条を製造するものであることも好ま しい。

 更に、本件発明に係る析出硬化型銅合金条 製造方法において、上記いずれかに記載の 出硬化型銅合金条の製造方法を用いて、ニ ケルを0.50wt%~1.50wt%、リンを0.05wt%~0.20wt%、ス を0.00wt%~0.04wt%、亜鉛を0.00wt%~0.50wt%含み、Ni(w t%)/P(wt%)の値が6~10の銅合金インゴットを用い ことで、引張強さ500N/mm 2 以上、伸び率5%以上、導電率65%IACS以上の物性 を備える曲げ加工性及び耐応力緩和性が良好 な銅合金条を製造することも好ましい。

 本件発明に係る析出硬化型銅合金条の製 方法は、銅-ニッケル-リン系銅合金インゴ トに熱間圧延を施し、その後時効析出処理 て時効析出処理済み銅合金条を得る工程、 効析出処理済み銅合金条に加工率50%~90%で中 冷間圧延とその後施す中間回復熱処理とを す中間加工を施して回復熱処理済み銅合金 を得る工程、当該回復熱処理済み銅合金条 加工率20%~95%で最終冷間圧延を施し、その後 最終回復熱処理を施す工程を含む。本件発明 に係る析出硬化型銅合金条の製造方法を用い れば、時効析出処理で形成される析出粒子の 存在下で、冷間圧延で機械強度を強化した後 に回復現象を利用しているため、機械強度、 曲げ加工性、導電性のトータルバランスに優 れた銅合金条を製造することができる。

 以下、本件発明に係る析出硬化型銅合金 の製造方法の形態について説明するが、そ 前に、一般的な析出硬化型銅合金の製造方 について述べておく。

 一般的な析出硬化型銅合金条の製造工程 は、熱間圧延後、最終厚みの1段階前又は2 階前までは冷間圧延と再結晶焼鈍とを施し その後溶体化処理を施す。溶体化処理後は 冷間圧延を施した後、又は冷間圧延を施さ にそのまま時効析出処理を施す。そして、 終冷間圧延は比較的低い加工率で施し、歪 取り焼鈍を施して製品を仕上げている。こ ような工程では、比較的高い機械強度を溶 化処理と時効析出処理とで達成している。 かし、更に機械強度を高めるために最終の 間圧延の加工率を高めると、伸び率が低下 、曲げ加工性が劣る銅合金条になる。そし 、一般的な製造工程を経て得られた銅合金 の結晶組織は、溶体化処理で形成された再 晶粒が、冷間圧延により多少扁平化した形 で観察される。即ち、通常の製品である銅 金条の結晶粒は、溶体化処理で形成され、 晶を多く含むものであって、結晶粒子径も 十μmであることが通常である。

 上記一般的な析出硬化型銅合金条の製造 法に対し、本件発明に係る析出硬化型銅合 条の製造方法は、ニッケルを0.50wt%~1.50wt%、 ンを0.05wt%~0.20wt%、スズを0.00wt%~0.04wt%、亜鉛 0.00wt%~0.50wt%含む銅合金条を強化する。

 上記組成とすれば、時効析出処理を行う とによってニッケル-リン化合物が析出し、 機械強度の強化に寄与すると同時に再結晶が 起こるのを抑制できる。また、このときニッ ケル-リンの固溶量が減少するので導電率が 上する。しかし、含有量が1.5wt%を超えるニ ケルをリンと同時添加すると熱間加工性が 下し、熱間圧延時にワレを生じる場合が多 なるため好ましくない。一方、ニッケル含 量が0.5wt%未満では十分な強度を得ることが 難になるため好ましくない。同様に、リン 有量が0.05%未満では、十分な強度を得ること が困難になるため好ましくない。一方、リン 含有量が0.20%を超えると、導電率が低下する 向が現れるため好ましくない。スズは、強 向上に効果があるので任意に添加しても良 が、スズ含有量が0.04%を超えると導電率が 下する傾向が現れるため好ましくない。亜 は、はんだやスズめっきを施した後加熱状 に置かれた皮膜の層剥離を防止する特性を するため、必要な場合に任意に添加しても い。しかし、亜鉛を0.5%を超えて添加しても 剥離の防止効果は飽和している。一方、導 率が低下する傾向が現れるため好ましくな 。

 更に、本件発明に係る析出硬化型銅合金 の製造方法は、ニッケルを0.50wt%~1.50wt%、リ を0.05wt%~0.20wt%、スズを0.00wt%~0.04wt%、亜鉛を0 .00wt%~0.50wt%含む組成において、Ni(wt%)/P(wt%)の が6~10とした銅合金条を選択することが適し いる。ここで、Ni(wt%)/P(wt%)の値が6未満であ と、導電率が低下するため好ましくない。 方、Ni(wt%)/P(wt%)の値が10を超えると、銅合金 条の強度及び導電率共に、低くなる傾向があ る。

 本件発明に係る析出硬化型銅合金の製造 法においては、上記添加成分の他に、クロ 、ホウ素、チタン、マンガン、マグネシウ から選択される1種以上を、合計3%以下の範 でさらに添加することもできる。これらの 分の添加は、機械強度の向上に効果を発揮 る。しかし、これらの元素の1種以上を添加 する場合は、その作用を十分に発揮させるた めには総量が0.01%以上となるように添加する 一方、総添加量が3%を超えると熱間加工性 冷間加工性が低下する場合があるため好ま くない。上記に示した以外のその他の元素 不純物として0.05%未満に管理するのが好まし い。ただし、硫黄は脆性を備える銅合金条と なることを避けるため、50ppm以下に管理する が好ましい。

 そして、上記組成を備える銅合金に対し 、以下に示す工程を含む加工を施すことに り、回復現象を利用して強化した析出硬化 銅合金条を製造することができる。以下、 程別に説明する。

<工程A>
 工程Aは、銅合金インゴットを熱間圧延し、 その後時効析出処理して時効析出処理済み銅 合金条を得る工程である。工程Aでは、熱間 延直後に時効析出処理を行う。即ち、時効 出処理を熱間圧延直後に行うことにより、 ッケル-リン化合物が析出物として均質に析 し、析出硬化現象を発揮する。そして、そ 後の加工工程で銅合金条の硬化を図ること 容易になる。また、析出粒子は結晶粒界の 動を抑制するので、後述する工程Bにおいて 、再結晶粒の発生を抑制し、微細な回復組織 の生成に寄与する。更に、工程Aで熱間圧延 施せば、これ以降最終製品までの冷間圧延 おいて、累積加工率を高く取ることができ 。冷間圧延の累積加工率が大きいことは、 間加工が回復熱処理を含むことで若干の目 りは出るが、加工硬化量を増大させると同 に冷間圧延の際に生じるセル、更には回復 際に生じるサブグレインを微細に、且つ、 に発生させることができる。本件発明に係 製造方法によれば、通常の再結晶をまった 又は一部しか起こさせないため、サブグレ ンを微細化し、且つ、均質化した状態に保 ことができ、曲げ加工性や伸び性も良好に 持することができる。

 銅合金インゴットの熱間圧延では、まず インゴットを700℃~1000℃に加熱して、圧延 る。熱間圧延前のインゴットの加熱は、ニ ケル、リンを固溶させる効果もあるので、80 0℃~950℃とすることがより好ましい。ところ 、熱間圧延後にニッケル、リンを固溶させ ために溶体化処理し、その後時効析出処理 行う製造方法を採用すると、特殊な設備を 置するための設備投資が必要になる。また 溶体化処理を施すことによるエネルギーコ トの増加が明らかであり、経済性に問題が るため好ましくない。なお、熱間圧延後に 効析出処理を施す製造方法を採用すると、 間圧延中に不可避的に粗大析出物が少量発 することがある。しかし、本件発明に係る 出硬化型銅合金条が備える組成であれば、 該粗大析出物は発生してもごく僅かであり 機械的特性に影響が生じるレベルではない 即ち、本件発明に係る工程Aでは、コストの かかる溶体化処理を行わなくても、時効析出 処理を施すだけで、溶体化処理・時効析出処 理と同等の効果を得ている。

<工程B>
 工程Bは、工程Aで得られた時効析出処理済 銅合金条を、加工率50%~90%で施す中間冷間圧 とその後施す中間回復熱処理とを1単位とし て含む中間加工を施し、回復熱処理済み銅合 金条を得る工程である。このように、工程B は中間回復熱処理と中間冷間圧延とを組み わせて行う。ここで施す冷間圧延は、強加 であるため、銅合金条に冷間圧延を施せば サブグレインが細かく密に発生し、銅合金 は硬くなる。ここで加工硬化した銅合金条 、基本的には加熱すれば、回復過程、再結 過程、結晶粒が成長する過程の3つの過程を て、巨晶を備える銅合金条とすることがで る。そして、一般的な工程では、再結晶焼 を行う。しかし、再結晶過程や結晶粒の成 過程に至るまでの加熱を行うと結晶粒が粗 化し、硬度が低下する。即ち、再結晶焼鈍 銅合金条の機械的強度を低下させる方向に くため、再結晶焼鈍上がりの銅合金条に冷 圧延を施すと、本件発明が目的とする、析 硬化型銅合金の機械強度強化の達成が困難 なる。

 そこで、本件発明に係る製造方法では、 常の再結晶を起こさない、回復過程の熱処 を行う。回復過程の熱処理を行えば、冷間 延時のエッジ割れを回避できる。ここで、 工率50%~90%で中間冷間圧延とその後施す中間 回復熱処理とで1単位の中間加工としたのは 加工率50%~90%で冷間圧延を施しても、回復熱 理を施すことにより、次にまた同レベルの 工率で冷間圧延を施すことができ、繰り返 操作が可能になるからである。

 本件発明に係る析出硬化型銅合金条の製 方法においては、前記工程Bは、1単位の中 加工の少なくとも1回は、当該中間回復熱処 前の銅合金条のビッカース硬度を基準とし 、当該中間回復熱処理後の銅合金条のビッ ース硬度の低下率を4%~15%とする。当該中間 復熱処理前の銅合金条のビッカース硬度を 準として、当該中間回復熱処理後の銅合金 のビッカース硬度の低下率を4%~15%とすれば 再結晶は出現しないため、引張強さと伸び とがバランスよく確保できる。なお、微細 回復組織を好ましい状態で出現させるには 中間回復熱処理前の中間冷間圧延の加工率 、サブグレインを細かく密に分布させるた には50%以上の設定とすることが好ましく、6 0%以上の設定とすることがより好ましく、80% 超える設定とすることが更に好ましい。し し、90%を超える加工率で施すと、回復熱処 を施してあっても曲げ加工性の確保が難し なる傾向が現れるため好ましくない。この 間回復熱処理後の銅合金条に発生した微細 回復組織は、その後の冷間圧延によっても 滅しにくく、回復熱処理における成長も少 い。

 なお、本件発明に係る析出硬化型銅合金条 製造方法においては、導電率を特に高くし い場合は、前記工程Bで、中間加工前の時効 析出処理済み銅合金条に、加工率50%~90%で冷 圧延を施し、その後、部分的に再結晶組織 現れる二次時効析出処理を行って、二次時 析出処理済み銅合金条とする工程を採用し も良い。この二次時効析出処理は、回復組 と部分的な再結晶組織との混合組織となる が好ましく、混合組織が出来ていることの 替え指標として、ビッカース硬度を使用す ことが可能である。このとき、ビッカース 度が110~150となるようにすれば、良好な混合 織を備えていると言える。上記二次時効析 処理を過剰に行うと、完全な再結晶が起こ 、結果として得られる銅合金条の強度が500N /mm 2 を下回るようになる。

<工程C>
 工程Cは、工程Bで得られた回復熱処理済み 合金条を加工率20%~95%で最終冷間圧延し、そ 後、最終回復熱処理を行って回復現象を利 して強化した銅合金条を得る工程である。 程Cでは、最終冷間圧延と最終回復熱処理と を施す。前記中間回復熱処理済み銅合金条に 施す最終冷間圧延の加工率は、その前の中間 回復熱処理による強度低下を補う意味でも20% 以上が好ましい。そして、加工率を高く取る ほど冷間圧延後の銅合金条の強度レベルが上 がる。しかし、最終冷間圧延の加工率が95%を 超えると、回復熱処理の温度をどのように設 定しても銅合金の曲げ加工性の確保が難しく なるため好ましくない。そして、工程Cの最 冷間圧延の加工率は、最終的に得る銅合金 の特性として、強度を優先するか、加工性 導電率を優先するかによって異なる。最終 間圧延の加工率は、中間回復熱処理済み銅 金条の特性にもよるが、強度を優先するの あれば40%~95%、加工性や導電率を優先するの あれば、その前の熱処理で再結晶組織を発 させない場合は20%~50%程度、一部再結晶させ る場合は40%~85%とするのが望ましい。そして 最終回復熱処理は通常は低温焼鈍ないし歪 り焼鈍と称されているものに近く、強度の 下を押さえた上で、応力緩和特性の向上と ね限界値の向上を図ることを目的としてい 。そして、最終回復熱処理における銅合金 のビッカース硬度の変化は、最終回復熱処 前に比べ3%の上昇から3%の減少の範囲となる うにする。ただし、当該ビッカース硬度の 下率が4%~15%となる回復熱処理を採用して、 出硬化型銅合金条の曲げ加工性の確保を優 することもできる。なお、用途に応じて、 力緩和率の向上、ばね限界値の向上が不要 ある場合には、低温焼鈍を省いても良い。 えば、連続焼鈍が困難な厚い板厚の場合は まきぐせをつけずに低温焼鈍することが困 であるため、低温焼鈍を省くことがある。

 以上、本件発明に係る析出硬化型銅合金 の製造方法について述べてきたが、以下に 足を加える。銅合金原料の溶解は定法で行 ことができ、必要により酸化防止処理を施 ても良い。インゴットの鋳造は金型鋳造、 続又は半連続鋳造法を用いることができる 熱間圧延は固溶促進の効果も狙うため、イ ゴットを800℃~950℃に加熱して行う。時効析 出処理は、400℃~550℃で1時間~10時間の条件で うことができる。回復熱処理は連続焼鈍設 を用いて炉内温度を300℃~600℃として通板時 間3分以内で行うのが好ましいが、バッチ炉 用いて、指定したビッカース硬度の低下範 に適合する条件で実施しても良い。

 実施例及び比較例で作成した銅合金条の 性は、引張強さ及び伸び率、0.2%耐力、曲げ 加工性及び導電率を取り上げて評価した。そ して、実施例では耐応力緩和性についても評 価した。各評価項目の測定方法を以下に述べ る。

一般物性: 引張強さ及び伸び率はJIS Z 2241 に準拠し、万能試験機を用いて測定した。0.2 %耐力は、引張強さと伸び率とを測定する際 得られるS-S曲線から求めた。ビッカース硬 はJIS Z 2244に準拠して測定した。導電率は 日本ホッキング社製デジタル導電率計(オー シグマ3000)で測定した。

曲げ加工性: 銅合金条の曲げ加工性は、日 本伸銅協会の技術標準JCBA-T307に準拠し、W曲 試験で評価した。具体的には、曲げ軸を圧 方向に垂直方向に取ったGood Way、曲げ軸を 延方向に平行方向に取ったBad Wayの両方向に W曲げ試験を行い、クラックを生じない最小 げ半径Rを求め、試験片の厚みtを用いて曲げ 加工性の指標であるR/tを算出した。そして、 曲げ加工性の良否の判定基準は、R/tの値が一 般の部品加工に耐えうる1.0以下を「良好」と し、微細な加工にも耐えうる0.5以下を「優れ ている」とした。

耐応力緩和性: 銅合金条の耐応力緩和性は 、日本伸銅協会の技術標準JCBA-T309に準拠して 測定した。具体的には、試験片が備える0.2% 力の80%相当の曲げ応力を負荷し、150℃×1000 間後の応力緩和率で評価した。使用環境の しい自動車用端子用途で要求されている耐 力緩和性は、この評価方法で得られる応力 和率で30%未満であるが、実用上35%程度まで 容されるのが通例である。

 以下、本件発明の実施例と比較例とを比 し、本件発明をより詳細に説明する。後に す表1には本件発明に係る製造条件に関する 組成、加工工程を、表2には得られた析出硬 型銅合金条の諸特性を示している。

 実施例1では、ニッケルを1.00wt%、リンを0. 11wt%、スズを0.03wt%、亜鉛を0.15wt%含む銅合金 成とした。当該試料を作成するにあたり、 ず、上記成分調整に必要な材料を高周波溶 炉に投入し、木炭カバーをして溶解して溶 とし、この溶湯を金型に流し込んで鋳造し 厚さ30mmのインゴット5kgを作成した。そして このインゴットを900℃に加熱し、熱間圧延 施して厚さ13mmの銅合金板を得た。その後、 当該銅合金板を460℃で時効析出処理を2時間 い、時効析出処理済み銅合金板を得た。こ 時効析出処理済み銅合金板を表面研磨後、 間圧延を施して厚さ1.80mmの銅合金板を得た その後、当該銅合金板を460℃で加熱して、 復熱処理を行った。このときの回復熱処理 よるビッカース硬度の低下率は、当該銅合 板の回復熱処理前のビッカース硬度を基準 して4%とした。そして再度、当該銅合金板に 加工率82%で冷間圧延を施して厚さ0.33mmの銅合 金板とし、460℃で回復熱処理を行った。この ときの回復熱処理によるビッカース硬度の低 下率は、当該銅合金板の回復熱処理前のビッ カース硬度を基準として11%とした。そして、 この回復熱処理済み銅合金板を、加工率39%で 最終冷間圧延して厚さ0.20mmの銅合金板とし、 385℃で最終回復熱処理を行い、試料A-1を得た 。この最終回復熱処理によるビッカース硬度 の低下率は、当該銅合金板の回復熱処理前の ビッカース硬度を基準として1%とした。

 上記試料A-1の評価結果は、表2に示すように 、引張強さが618N/mm 2 、伸び率が9.3%、ビッカース硬度が197、0.2%耐 が606N/mm 2 、応力緩和率が24%、導電率が55.5%IACSであった 。そして、曲げ加工性の評価では、W曲げ試 でクラックを生じない最小曲げ半径Rは、Good  Wayで0.05mm以下、Bad Wayで0.1mmであった。従っ て、曲げ加工性の指標であるR/tは、Good Wayで 0.25以下、Bad Wayでは0.50である。

 また、試料A-1については、透過型電子顕 鏡(Transmission Electron Microscope:以下TEMと称す 。)を用い、倍率(×20000)で結晶組織を確認し た。試料A-1(0.2mmの最終回復処理品)のTEM観察 を図1に示す。図1ではサブグレインと析出粒 子が観察される。またA-1についてEBSPで倍率( 1500)でOIM(Orientation Imaging Microscopy)マップを 察した。結果を図2に示す。この図2から分か るように、微細な回復組織が観察される。

 実施例2では、ニッケルを0.91wt%、リンを0. 093wt%含む銅合金組成とした。当該試料を作成 するにあたり、まず、上記成分調整に必要な 材料を高周波溶解炉に投入し、木炭カバーを して溶解して溶湯とし、この溶湯を金型に流 し込んで鋳造し、厚さ30mmのインゴット5kgを 成した。そして、このインゴットを900℃に 熱し、熱間圧延を施して厚さ13mmの銅合金板 得た。その後、当該銅合金板を460℃で時効 出処理を7時間行い、時効析出処理済み銅合 金板を得た。この時効析出処理済み銅合金板 を表面研磨後、冷間圧延を施して厚さ1.80mmの 銅合金板を得た。その後、当該銅合金板を460 ℃で加熱し、回復熱処理を行った。このとき の回復熱処理によるビッカース硬度の低下率 は、当該銅合金板の回復熱処理前のビッカー ス硬度を基準として2%とした。そして、当該 合金板に、再度、加工率82%で冷間圧延を施 て厚さ0.33mmの銅合金板とし、460℃で回復熱 理を行った。このとき、回復熱処理後のビ カース硬度の低下率は、当該銅合金板の回 熱処理前のビッカース硬度を基準として10% あった。更に、この回復熱処理済み銅合金 を、加工率39%で最終冷間圧延して、厚さ0.20 mmの銅合金板とし、380℃の最終回復熱処理を って試料A-2を得た。このとき、最終回復熱 理によるビッカース硬度の低下率は、当該 合金板の回復熱処理前のビッカース硬度を 準として2%とした。

 上記試料A-2の評価結果は、表2に示すように 、引張強さが599N/mm 2 、伸び率が5.4%、ビッカース硬度が187、0.2%耐 が585N/mm 2 、応力緩和率が25%、導電率が58.7%IACSであった 。そして、曲げ加工性の評価では、W曲げ試 でクラックを生じない最小曲げ半径Rは、Good  Wayで0.05mm以下、Bad Wayで0.1mmであった。従っ て、曲げ加工性の指標であるR/tは、Good Wayで 0.25以下、Bad Wayでは0.50である。

 実施例3では、ニッケルを0.91wt%、リンを0. 098wt%、スズを0.04wt%、亜鉛を0.11wt%含む銅合金 成とした。当該試料を作成するにあたり、 ず、上記成分調整に必要な材料をガス炉に 入して溶解して溶湯とし、この溶湯を縦型 連続鋳造機を用いて厚さ160mmのインゴット35 00kgを作成した。そして、このインゴットを86 0℃に加熱し、熱間圧延を施して厚さ13mmの銅 金条を得た。その後、当該銅合金条を460℃ 時効析出処理を4時間行い、時効析出処理済 み銅合金条を得た。この時効析出処理済み銅 合金条の両面を各0.5mmずつ面削し、冷間圧延 施して厚さ1.80mmの銅合金条を得た。その後 当該銅合金条から採取した銅合金板を460℃ 加熱し、回復熱処理を行った。このときの 復熱処理によるビッカース硬度の低下率は 当該銅合金板の回復熱処理前のビッカース 度を基準として4%とした。更に、当該銅合 板に加工率88%で最終冷間圧延を施して厚さ0. 21mmの銅合金板とし、460℃で最終回復熱処理 行って試料A-3を得た。この最終回復熱処理 よるビッカース硬度の低下率は、当該銅合 板の回復熱処理前のビッカース硬度を基準 して0.5%とした。

 上記試料A-3の評価結果は、表2に示すように 、引張強さが634N/mm 2 、伸び率が8.6%、ビッカース硬度が205、0.2%耐 が617N/mm 2 、応力緩和率が18%、導電率が55.4%IACSであった 。そして、曲げ加工性の評価では、W曲げ試 でクラックを生じない最小曲げ半径Rは、Good  Wayで0.05mm、Bad Wayで0.2mmであった。従って、 曲げ加工性の指標であるR/tは、Good Wayで0.24 Bad Wayでは0.95である。

 実施例4では、実施例3で製造した、厚さ1. 8mmの冷間圧延上がりの銅合金条から試験用の 銅合金板をサンプリングして出発材料とした 。この銅合金板には、更に460℃で2時間の二 時効析出処理を行った。そして、この二次 効析出処理済み銅合金板に加工率80%で冷間 延を施して厚さ0.36mmの銅合金板とし、460℃ 回復熱処理を行った。このときの回復熱処 によるビッカース硬度の低下率は、当該銅 金板の回復熱処理前のビッカース硬度を基 として6%とした。更に、この回復熱処理済み 銅合金板を、加工率44%で最終冷間圧延して、 厚さ0.20mmの銅合金板とし、440℃の最終回復熱 処理を行って試料A-4を得た。この最終回復熱 処理によるビッカース硬度の低下率は、当該 銅合金板の回復熱処理前のビッカース硬度を 基準として4%とした。

 上記試料A-4の評価結果は、表2に示すように 、引張強さが550N/mm 2 、伸び率が8.6%、ビッカース硬度が159、0.2%耐 が524N/mm 2 、応力緩和率が24%、導電率が66.8%IACSであった 。そして、曲げ加工性の評価では、W曲げ試 でクラックを生じない最小曲げ半径Rは、Good  Wayで0.05mm、Bad Wayで0.1mmであった。従って、 曲げ加工性の指標であるR/tは、Good Wayで0.25 Bad Wayでは0.50である。

 この実施例5では、ニッケルを0.79wt%、リ を0.11wt%、スズを0.03wt%、亜鉛を0.14wt%含む銅 金のインゴットを、実施例1と同様にして得 。このインゴットを860℃に加熱し、熱間圧 を施し、厚さ12mmの銅合金板を得た。その後 、当該銅合金板を430℃での時効析出処理を3 間行った。更に当該試料を研磨後、加工率78 %の冷間圧延を加えた。冷間圧延後の試料の 度は、ビッカース硬度が177であった。そし 、この試料に、更に430℃で3時間の時効析出 理を加えた。この時効処理後の試料のビッ ース硬度は126であり、結晶組織に再結晶粒 散在することを確認した。更に、この時効 理後の試料を、加工率62%の冷間圧延を加え 更に380℃の温度で回復熱処理を施した。こ 回復熱処理によって、ビッカース硬度が1% 加した。このようにして得られた最終段階 試料の厚さは1.0mmである。

<実施例同士の対比>
 ここで、表2のデータを参照しつつ、実施例 同士を対比する。

試料A-1と試料A-2との対比: 試料A-1と試料A-2 とは、合金組成と時効析出処理時間が異なる 。そして、機械強度は試料A-1が試料A-2を上回 っている。しかし、試料A-2は試料A-1よりも高 い導電率を示している。

 このように、試料A-2の導電率が高いのは 時効析出処理時間が長いためと考えられる また、A-1の引張強さが大きいのは、適量の ズを含んでいる効果であると考えられる。

 更に、上記試料A-1の物性が得られた背景 理解を容易にするために、中間冷間圧延か 最終回復熱処理までの引張強さ、伸び率、 ッカース硬度、0.2%耐力、導電率についての 特性推移を、表3に示す。回復熱処理によっ 、引張強さが低下し、伸び率が上昇し、導 率が上昇している。そして、最終回復熱処 後の引張強さは、中間回復熱処理後の引張 さよりも大きい。この物性の推移から、回 現象を利用すれば、析出硬化型銅合金条の 械強度を強化できることが明白である。

試料A-3とその他実施例試料との対比: 試料 A-3の引張強さは実施例の試料中最も大きい。 これは、最終冷間圧延の加工率を高く取って いるためである。

試料A-4及び試料A-5とその他実施例試料との 対比: 試料A-4及び試料A-5は、導電率が特に高 いが引張強さが小さい。これは時効処理を2 実施しているためである。ここで、試料A-5 導電率が最も高くなるのは、Ni(wt%)/P(wt%)の値 が適正であるが故と考える。即ち、試料A-5の Ni(wt%)/P(wt%)の値は7.2であるのに対し、試料A-1~ 試料A-4のNi(wt%)/P(wt%)の値は9.1~9.8である。

 更に、応力緩和率も試料A-1が24%、試料A-2 25%、試料A-3が18%、試料A-4が24%、試料A-5が31% 、良好な特性を示している。このように、 件発明に係る製造方法を用いて得られる銅 金条は、析出粒子が均一に分散しているた 、応力緩和率は35%以下となるのが通常であ 。なお、曲げ加工性についても、BadWay曲げ R/tで、試料A-1が0.50、試料A-2が0.50、試料A-3 0.95、試料A-1が0.50であり、ビッカース硬度205 を備える試料A-3及び試料厚さの厚い試料A-5が 若干劣るものの、総じて良好である。

比較例

[比較例1]
 比較例1で作成する試料B-1は、ニッケルを1.9 0wt%、リンを0.098wt%、スズを0.04wt%、亜鉛を0.11w t%含む銅合金組成とした。当該試料を作成す にあたり、まず、上記成分調整に必要な材 を高周波溶解炉に投入し、木炭カバーをし 溶解して溶湯とし、この溶湯を金型に流し んで鋳造し、厚さ30mmのインゴット5kgを作成 した。しかし、その後、このインゴットを900 ℃に加熱し、熱間圧延により厚みを13mmにす 際に、ワレが発生したため、その後の試験 中止した。

[比較例2]
 比較例2では、実施例3で作成した熱間圧延 がりの銅合金板を出発材料として用いた。 の後、当該銅合金板に、冷間圧延を施して さ1.80mmの銅合金板を得た。この銅合金板を46 0℃で加熱し、回復熱処理を行った。このと の回復熱処理によるビッカース硬度の低下 は、当該銅合金板の回復熱処理前のビッカ ス硬度を基準として4%とした。更に、この回 復熱処理済みの銅合金板を厚さ0.60mmまで加工 率67%で冷間圧延後、850℃で溶体化処理を施し 、460℃で時効析出処理を4時間行った。更に の後、この時効析出処理済み銅合金板を、 さ0.45mmまで加工率25%で冷間圧延を施し、380 で回復熱処理を施して試料B-2を得た。なお このときの回復熱処理による回復熱処理前 のビッカース硬度の低下率がほぼ-1%となる うに設定した温度である。

 上記試料B-2の評価結果は、表2に示すように 、引張強さが441N/mm 2 、伸び率が3.0%、ビッカース硬度が152、0.2%耐 が426N/mm 2 、導電率が61.8%IACSであった。そして、曲げ加 工性の評価では、W曲げ試験でクラックを生 ない最小曲げ半径Rは、Good Wayで0.30mm、Bad Wa yで0.20mmであった。従って、曲げ加工性の指 であるR/tは、Good Wayで0.67、Bad Wayでは0.44で る。

[比較例3]
 比較例3では、比較例2と同様、実施例3で作 した熱間圧延上がりの厚さ13mmの銅合金板を 出発材料として用いた。そして、この銅合金 板を厚さ2.50mmまで冷間圧延後、790℃で溶体化 処理を施し、430℃で時効析出処理を16時間行 た。更にその後、この時効析出処理済み銅 金板を、厚さ0.75mmまで加工率70%で冷間圧延 施し、460℃で回復熱処理を行った。このと 、回復熱処理後のビッカース硬度の低下率 、当該銅合金板の回復熱処理前のビッカー 硬度を基準として3%であった。更に、当該 復熱処理済み銅合金板を、厚さ0.40mmまで加 率47%で冷間圧延を施し、460℃で回復熱処理 行った。このとき、回復熱処理後のビッカ ス硬度の低下率は、当該銅合金板の回復熱 理前のビッカース硬度を基準として2%であっ た。更に、この回復熱処理済み銅合金板を、 厚さ0.20mmまで加工率50%で冷間圧延を施し、385 ℃で加熱し、回復熱処理を施して試料B-3を得 た。なお、このときの回復熱処理による当該 回復熱処理前後のビッカース硬度の低下率が ほぼ-3%になるように設定した温度である。

 上記試料B-3の評価結果は、表2に示すように 、引張強さが612N/mm 2 、伸び率が4.4%、ビッカース硬度が198、0.2%耐 が601N/mm 2 、導電率が58.6%IACSであった。そして、曲げ加 工性の評価では、W曲げ試験でクラックを生 ない最小曲げ半径Rは、Good Wayで0.05mm以下、B ad Wayでは0.20mmを超えた。従って、曲げ加工 の指標であるR/tは、Good Wayで0.25以下、Bad Wa yでは1.00超である。

<実施例と比較例との対比>
 試料B-1は、熱間圧延を施した時にワレが生 、特性データが得られなかった。このワレ 、ニッケル含有量が多くなると、ニッケル リンを含む低融点化合物が生成されること 起因するものと考えられる。

 以下、表2を参照しつつ対比を行う。

 試料B-2と実施例の試料との対比: 試料B-2 、2回目の冷間圧延以降は通常の時効析出合 金の製造工程に添って製造したものであるが 、これでも通常の溶体化・時効析出処理以降 の最終冷間圧延における加工率を若干高めに とっている。試料B-2の導電率は高めではある が、引張強さが小さく、また、伸び率も低い 。しかし、試料B-2の曲げ加工性はR/tが0.67で り、機械強度が小さいにもかかわらず優れ 曲げ加工性は得られておらず、良好な機械 度と曲げ加工性とのバランスを備えている 合金条であるとは言えない。

 試料B-3と実施例の試料との対比: 試料B-3 、中間と最終の回復熱処理を合計で3回行っ ているが、回復熱処理によるビッカース硬度 の低下率はいずれも4%未満であり、回復熱処 前の冷間圧延における加工率も全て低めと ている。このため、試料B-3は実施例の試料 比べて、伸び率及び曲げ加工性に満足でき 効果が得られていないと考えられる。また 試料B-3の曲げ加工性は、R/tが1.0を超えてお 、実施例の試料と比べると明らかに劣って る。

 通常の溶体化・時効析出処理を施した場 の物性変化について、参考のため表4に示す 。表4から明らかなように、溶体化・時効析 処理以降の引張強さは、満足できる値を示 ていない。この結果から、本件発明に係る 出硬化型銅合金条と同様の合金組成を備え 銅合金条に対して、時効析出現象を通常の 程通り利用しても、機械強度を強化すると う目的を達成するために必要十分な特性を ることは困難であることが分かる。

 本件発明に係る析出硬化型銅合金条の製 方法は、銅-ニッケル-リン系銅合金インゴ トに熱間圧延を施し、その後時効析出処理 て時効析出処理済み銅合金条を得る工程、 効析出処理済み銅合金条に加工率50%~90%で中 冷間圧延とその後施す中間回復熱処理とを す中間加工を施して回復熱処理済み銅合金 を得る工程、当該回復熱処理済み銅合金条 加工率20%~95%で最終冷間圧延を施し、その後 最終回復熱処理を施す工程を含む。従って、 本件発明に係る析出硬化型銅合金条の製造方 法を用いれば、時効析出処理で形成される析 出粒子の存在の下で、冷間圧延で機械強度を 強化した後に回復現象を利用しているため、 機械強度、曲げ加工性、導電性のトータルバ ランスに優れた銅合金条を製造することがで きる。また、中間加工に時効析出処理を付加 することにより、更に導電率を向上させるこ とも可能である。

 よって、本件発明に係る製造方法を採用 れば、引張強さ、伸び率、導電性、また、 げ加工性等のトータルバランスが要求され 、自動車のコネクタ-端子、電気電子部品の 端子、リレー、スイッチ、ソケット等の通電 部材に適用した銅合金条を、高品質で、大幅 なコスト上昇を伴わずに提供することが可能 となる。

本件発明に係る試料A-1表面の、TEM観察 真(×20000)である。 本件発明に係る試料A-1表面の、EBSP観察 写真(×1500)である。