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Patent Searching and Data


Title:
THERAPEUTIC AGENT FOR MENIERE’S DISEASE
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/084533
Kind Code:
A1
Abstract:
The invention provides an agent for treating Meniere’s disease which contains a sugar or a sugar alcohol as an active ingredient and contains a polysaccharide in an amount of 5 to 50% by weight of the sugar or sugar alcohol, assures an effect of reducing endolymphatic hydrops by eliminating a cathartic action derived from the sugar or sugar alcohol, and further has a potentiated effect. The treatment agent can be provided in the form of a gel, a powder, a granule or the like.

Inventors:
TAKEDA SETSUKO (JP)
Application Number:
PCT/JP2007/050172
Publication Date:
July 17, 2008
Filing Date:
January 10, 2007
Export Citation:
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Assignee:
KOWA PHARMACEUTICAL CO LTD (JP)
TAKEDA SETSUKO (JP)
International Classes:
A61K9/06; A61K31/702; A61K9/14; A61K9/16; A61K31/715; A61K31/717; A61K31/723; A61K31/729; A61K31/731; A61K31/732; A61K31/734; A61P27/16; A61K31/047
Domestic Patent References:
WO2006001344A12006-01-05
Foreign References:
JP2007001964A2007-01-11
JPH11180863A1999-07-06
JP2001226293A2001-08-21
JPH04346937A1992-12-02
JPH11180803A1999-07-06
Other References:
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ICHIRO KIRIKAE, OTORHINOLARYNGOLOGY, pages 174
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TAKEDA, T. ET AL.: "The effects of V2 antagonist (OPC-31260) on endolymphatic hydrops", HEAR. RES., vol. 183, 2003, pages 9 - 18
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KIRK-OTHMER: "Encyclopedia of Chemical Technology", vol. 4, 1992, pages: 912
"Encyclopedia CHEMICA", vol. 4, 5, 6, 1984, pages: 807
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TAKEDA T, HEAR RES., vol. 183, 2003, pages 9 - 18
See also references of EP 2127658A4
Attorney, Agent or Firm:
TANAKA, Mitsuo et al. (IMP Building3-7, Shiromi 1-chome,Chuo-ku, Osaka-shi, Osaka, JP)
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Claims:
 (a)単糖類及び少糖類並びにそれらの糖アルコール類から選択された少なくとも1種と、(b)多糖類から選択された少なくとも1種を含有し、(a)成分100重量部に対して(b)成分約2~50重量部が存在する、メニエール病治療薬。
 (a)成分100重量部に対して(b)成分約10~40重量部が存在する、請求項1に記載のメニエール病治療薬。
 (a)成分がグリセロール、エリスリトール、キシリトール、キシロース、ソルビトール、イソソルビトール及びマンニトールよりなる群から選ばれる、請求項1または2に記載のメニエール病治療薬。
 (a)成分がエリスリトール、キシリトールまたはイソソルビトールである、請求項3に記載のメニエール病治療薬。
 (a)成分がイソソルビトールである、請求項4に記載のメニエール病治療薬。
 (b)成分がペクチン、キサンタンガム、グァーガム、アラビアガム、ローカストビーンガム、タラガム、アルジネートナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、寒天及びカラギーナンよりなる群から選ばれる、請求項1~5のいずれかに記載のメニエール病治療薬。
 (b)成分がペクチン、キサンタンガム、アルジネートナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び寒天よりなる群から選ばれる、請求項6に記載のメニエール病治療薬。
 (b)成分がペクチン及び/又はキサンタンガムである、請求項7に記載のメニエール病治療薬。
 ゲル製剤の形状である、請求項1~8のいずれかに記載のメニエール病治療薬。
 水分量が(a)成分と(b)成分の総量に対して約10~55重量%である、請求項9に記載のメニエール病治療薬。
 粉末製剤の形状である、請求項1~8のいずれかに記載のメニエール病治療薬。
 顆粒製剤の形状である、請求項1~8のいずれかに記載のメニエール病治療薬。
 (a)単糖類及び少糖類並びにそれらの糖アルコール類から選択された少なくとも1種の100重量部と(b)多糖類から選択された少なくとも1種の約2~50重量部に対して、(a)成分と(b)成分の総量100重量部に対して約10~55重量部の割合で水を加えて練和する工程を含む、ゲル形態のメニエール病処置剤の製造方法。
 (a)単糖類及び少糖類並びにそれらの糖アルコール類から選択された少なくとも1種の100重量部と(b)多糖類から選択された少なくとも1種の約2~50重量部に対して、(a)成分と(b)成分の総量100重量部に対して約10~55重量部の割合で水を加えて練和する工程と、ここに得られたゲルを乾燥、粉砕する工程を含む、粉末形態のメニエール病処置剤の製造方法。
 (a)単糖類及び少糖類並びにそれらの糖アルコール類から選択された少なくとも1種の100重量部と(b)多糖類から選択された少なくとも1種の約2~50重量部に対して、(a)成分と(b)成分の総量100重量部に対して約10~55重量部の割合で水を加えて練和する工程と、ここに得られたゲルを乾燥、粉砕する工程と、ここに得られた粉末を顆粒化する工程含む、顆粒形態のメニエール病処置剤の製造方法。
 メニエール病処置剤の製造における、(a)単糖類及び少糖類並びにそれらの糖アルコール類から選択された少なくとも1種と(b)多糖類から選択された少なくとも1種の、(a)成分100重量部に対して(b)成分約2~50重量部の割合における使用。
 メニエール病患者に対して治療上有効量の請求項1~12のいずれか1項に記載のメニエール病治療薬を投与することを含む、メニエール病の処置方法。
Description:
メニエール病治療薬

 本発明はメニエール病治療薬、特に糖又 糖アルコールを有効成分とし、副作用とし の瀉下作用を解消させたメニエール病治療 に関する。

 メニエール病の病因は未だ不明の部分が いが、その病態が内リンパ水腫であること メニエール病患者の剖検例の組織学的検討 結果から、広く知られている。この内リン 水腫は、内リンパ液の産生過剰や吸収障害 ど、内耳の水代謝の異常によって内リンパ が貯留することで形成され、耳鳴、難聴、 まい、耳閉感等のメニエール病の特徴的な 状を引き起こすと考えられている。したが て、この内リンパ水腫を減荷することがメ エール病治療につながると理解されてよい

 糖及び糖アルコールの多くは、投与後浸 圧作用を発現することから、浸透圧利尿剤 浸透圧下剤として用いられてきた。浸透圧 果による脱水作用を有する薬剤として、瀉 作用を有するソルビトール、マンニトール 、利尿作用を有するマンニトール、グリセ ール等がある。病態が内リンパ水腫である ニエール病の治療においても、この脱水作 により水腫軽減が可能であると考えられる すなわち、これらの薬剤は、経口投与後に 外リンパ液の浸透圧勾配を生じることから 内リンパ腔の容積が減少し、内リンパ腔虚 効果、または内リンパ水腫減荷効果が生じ ものと考えられたのである。

 実際、浸透圧利尿剤である糖や糖アルコ ルの一部はメニエール病の診断に用いられ おり(切替一郎、耳鼻咽喉科学、P174、L34-P175 ,L2、非特許文献1)、その検査中に、検査薬で る浸透圧利尿剤により、聴力改善効果が認 られることから、(小松崎篤編、Client 21、P3 68、右L23-24、非特許文献2)、治療効果も期待 れて、様々な試みがなされてきた。

 予想に反して、これらの試みはことごと 失敗に終わったが、その理由は未解明のま 残された。Angelborg C. et alのP201,Table1にあ ように、聴力改善が半数以上の症例に認め れたのは唯一グリセロールだけ(非特許文献3 )で、そのグリセロールも2.8g/kgをモルモット 経口投与したところ、投与後2時間で正常耳 において虚脱が認められたが、6時間目には に軽度の水腫形成が観察された(非特許文献4 )。すなわち、組織学的なリバウンド現象が 察された。メニエール病診断のため行われ グリセロールテストにおいては、投与後約2 間後に一時的に聴力の改善が見られた後、6 時間後には逆に聴力が悪化する、いわゆる「 リバウンド現象」が知られている(非特許文 5)が、このことが組織学的に裏付けられた。 現在このリバウンド現象のため本邦ではグリ セロールは治療薬としては用いられていない 。

 1990年代以降、水チャネルの存在が各臓器 において次々と確認された。腎臓と比較的よ く似た組織構造を有する内耳においても、内 耳液の産生、吸収の機序解明に関する研究が 進み、内耳にもアクアポリン(水チャネルタ パク質)の存在が確認された(非特許文献6)。 年、内耳の水代謝を司るものの1つとして、 アルギニンバゾプレシンーアクアポリン2(argi nine vasopressin-aquaporin 2)システムが注目され いる(非特許文献7)。

 ところが、バソプレシンII型受容体拮抗 であるOPC31260を全身投与したところ、期待さ れたほどの内リンパ水腫減荷効果は認められ ず、逆に正常耳に内リンパ水腫を形成する結 果となった(非特許文献8)。これは強力な利尿 作用により脱水状態に陥った(すなわち、血 中の抗利尿ホルモン(antidiuretic hormone、以下A DH))であるアルギニンバソプレッシン(arginine  vasopressin、以下AVP)が上昇した)ためであるこ が判った。このように、現在まで、多くの 行錯誤がなされているにもかかわらず、臨 応用されるだけの成果を得るには到ってい い。

 臨床的にはメニエール病患者では、急性期 AVPの上昇が報告されている(非特許文献9)。 の結果は、メニエール病はストレス時に発 しやすいとされる疫学的事実によく符合す 。また、プライエル反射正常のモルモット 皮下にミニポンプでAVP1mu/kg/分を連続投与し たところ、明らかな内リンパ水腫が形成され た(非特許文献10)。下記表1に示すとおり、AVP 与量に比例して血漿AVPが上昇し、組織学的 は内リンパ腔の面積が増加した(内リンパ水 腫の形成)。AVP1mu/kg連続投与の場合、血清AVP 正常人の血漿AVPの数倍(メニエール病の急性 の血清AVPとほぼ同値)に上昇し、極めて危険 な状態になった(非特許文献10)。メニエール 治療にあたっては、ストレスや脱水などに りAVPが上昇しないよう、特に留意しなくて ならないところである。
(発明者ら、Hearing Res. 2000.非特許論文10から)
AVPの投与速度:mU/kg/min
血漿AVPの単位:pg/ml
 正常人の血漿AVP濃度の上限は3.5pg/mlである

 元来、糖又は糖アルコールは、浸透圧下 として用いられてきたことからも推測され ように、一度に大量を経口投与すると消化 官において浸透圧勾配を生じ、下痢など胃 症状を発現する。なかには一般的な胃腸薬 効果を示さない重篤な下痢を生じることも 々ある。重篤な下痢の場合には脱水症状が 発し、抗利尿ホルモンのAVPが10~15倍にも上 することが報告されている(非特許文献11)。 記の通り、AVP上昇は内リンパ水腫を形成す ことから、糖又は糖アルコールの止瀉に成 しなければ、その内リンパ水腫減荷効果は 痢に続発する脱水により相殺されると考え れる。したがって、糖又は糖アルコールを ニエール病治療に用いる場合には、下痢な の消化器症状を発現させないように、細心 注意が必要である。

 特許文献1には、4単糖であるエリスリト ル単味を有効成分とするメニエール病治療 が記載されている。エリスリトールは風味 点で優れたものであるが、エリスリトール 低カロリー甘味料として添加したスポーツ 料を短時間に大量に摂取したことで一過性 激しい下痢が発現したことが報告されてい ことから、止瀉を図らなくてはメニエール の治療効果は到底期待できないと思われる

 現在、メニエール病治療薬として臨床応用 れている糖アルコールは、イソソルビド(1,2 :3,6-ジアンヒドロ-D-ソルビトール)で、臨床に おいても比較的瀉下作用の弱いものではある が、独特の苦みがあり、その苦味が口腔内に 長時間残存すること、さらに1回服用量が30ml 上で、1日3回服用する必要があり、服用量 大量であることから、服用に困難を感じる 者が多く、服用を中断する例もある。さら 、剤型が液体で、衛生上の問題から500ml入り のボトルを携行する必要があるため不便があ った。
 また、3単糖であるグリセロールが経口投与 後約2時間で効果が発現するのに対し、6単糖 あるイソソルビドは作用発現まで約6時間を 要する(非特許文献12)。

特開平11-180863 切替一郎、耳鼻咽喉科学 小松崎篤編、Client 21、 Angelborg, C. et al.: Hyperosmotic solutions and  hearing in Meniere’s disease. Am. J. Otol. 3: 20 0-2 (1982) Takeda, T. et al.: The rebound phenomenon of g lycerol-induced changes in the endolymphatic space. Ac ta Otolaryngol. 119: 341-4 (1999) Matsubara, H. et al.: Rebound phenomenon in gly cerol test. Acta Otolaryngol. Suppl. 419: 115-22 (198 4) Sawada, S. et al.: Aquaporin-1 (AQP1) is expres sed in the stria vascularis of rat cochlea. Hear. R es. 181:15-9 (2003) Sawada, S. et al.: Aquaporin-2 regulation by va sopressin in the rat inner ear. Neuroreport. 13: 112 7-9 (2002) Takeda, T.:The effects of V2 antagonist (OPC-312 60) on endolymphatic hydrops. Hear. Res. 183: 9-18 ( 2003) Takeda, T. et al.: Antidiuretic hormone (ADH) a nd endolymphatic hydrops. Acta Otolaryngol. Suppl. 519 : 219-22 (1995) Takeda, T. et al.: Endolymphatic hydrops induced  by chronic administration of vasopressin. Hear. Res.  140:1-6 (2000) Safwate A. et al.: Renin-aldosterone system and arginine vasopressin in diarrhoeic calves. Br. Vet.  J. 147:533-7 (1991) Kakigi, A. et al.:Time course of dehydratic eff ects of isosorbide on experimentally induced endolymph atic hydrops in guinea pigs. ORL J. Otorhinolaryngol.  Relat. Spec. 66:291-296 (2004)

 上記のとおり、糖又は糖アルコールを有 成分とする従来のメニエール病治療薬は、 荷効果発現までに長時間を要するものやリ ウンド現象が生じるものであった。また、 療には、大量(1回量20~30g)を1日に3回、2週間 度にわたって経口投与するため、程度の差 あれ、特有の瀉下作用がみられ、下痢も一 性にとどまらない。そのため、脱水が続発 やすく、結果として血漿AVP上昇は必定で、 実な治療効果を期待するには止瀉作用を有 る薬物を添加するなどして、血漿AVP上昇を えなくてはならない。ところが、糖又は糖 ルコールによる下痢症状は、便秘などの本 下剤を投与する状態でないにもかかわらず 継続的に且つ大量の糖又は糖アルコールを 取せざるを得ない状況が存在するために、 剤となる糖類投与を継続しつつ、一方で止 をはからなくてはいけないという特殊な状 のもとで生じるものであるから、通常用い れる止瀉薬や整腸剤での改善は期待しにく 。

 大量投与に伴う副作用としては、下痢のほ 、腹部の膨満感、ゴロゴロ感などの消化器 状が知られている。作用機序によって限定 れるものではないが、これらは投与した糖 が小腸から未消化のまま大腸に送られて、 腸の微生物の働きで発酵し、酪酸やプロピ ン酸などの短鎖脂肪酸が生成し、当該短鎖 肪酸が腸粘膜を刺激して蠕動運動を亢進す ために生じる。また同時に生成する二酸化 素、水素、メタンなどは腸内ガスの発生が くなるため生じるものであり、糖質自体に るものであるから、上記と同様、通常の整 剤では解決することは出来ない。
 さらに、大量投与であるために、服用の容 さ及び携行の便が求められている。

 そこで、本発明が解決しようとする課題 、糖又は糖アルコールを有効成分としなが 瀉下作用などの消化器症状を示すことがな かまたは緩和されたメニエール病治療薬、 してさらに、服用と携行が容易なメニエー 病治療薬、とりわけさらに、速やかに効果 発揮し得るメニエール病治療薬を提供する とにある。

 本発明者は、上記課題を解決するため鋭 研究の結果、単糖類、少糖類又はそれらの アルコール類に、一定範囲量の多糖類を配 することによって、瀉下作用などの消化器 状を消失させ得ることを見出した。また、 ル、粉体または顆粒状に製剤化することに り、容量、重量ともに顕著に、例えば約2分 の1に減量可能であることを見出した。本発 はこれら知見に基づいて完成されたもので る。

 すなわち、本発明は、(a)単糖類及び少糖 並びにそれらの糖アルコール類から選択さ た少なくとも1種と、(b)多糖類から選択され た少なくとも1種を含有し、(a)成分100重量部 対して(b)成分約2~50重量部が存在する、メニ ール病治療薬を提供するものである。

 また、別の態様において本発明は、ゲル 剤の形状である、(a)単糖類及び少糖類並び それらの糖アルコール類から選択された少 くとも1種と(b)多糖類から選択された少なく とも1種を含有し、(a)成分100重量部に対して(b )成分約2~50重量部が存在する、メニエール病 療剤を提供する。

 さらに別の態様において本発明は、(a)単 類及び少糖類並びにそれらの糖アルコール から選択された少なくとも1種の100重量部と (b)多糖類から選択された少なくとも1種の約2~ 50重量部に対して、(a)成分と(b)成分の総量100 量部に対し約10~55重量部の割合で水を加え 練和する工程を含む、ゲル製剤の製造方法 提供する。

 さらに別の態様において本発明は、メニ ール病の処置用薬剤の製造における、(a)単 類及び少糖類並びにそれらの糖アルコール から選択された少なくとも1種と(b)多糖類か ら選択された少なくとも1種の特定割合にお る使用、すなわち(a)成分100重量部に対して(b )成分約2~50重量部の割合における使用を提供 る。

 さらに別の態様において本発明は、メニ ール病患者に対して治療上有効量の上記の 療薬を投与することを含む、メニエール病 処置方法を提供する。

 本発明のメニエール病治療薬は、単糖類 少糖類又は/及びそれらの糖アルコール類( 下、「糖又は/及び糖アルコール類」という )に多糖類を一定範囲量で配合することによ り、糖又は/及び糖アルコール類に起因する 痢などの消化器症状を主訴とする副作用を 減ないし消失させることができ、メニエー 病治療の目標である内リンパ水腫の減荷を 効にかつ的確に達成することができる。ま 、リバウンド現象を軽減ないし防止するこ ができ、さらに、糖又は/及び糖アルコール のみを投与したときと比較して効果発現ま の時間を短縮することができる。

 別の態様において、該配合物はゲル剤と ることによって容量を圧縮することが可能 あるため、保存・携行・服用が容易であり さらに、ゲル剤を乾燥後、粉砕、造粒など よって粉末剤、顆粒剤などの任意の製剤と れば、保存・携行・服用が一層簡便となる 粉末剤又は顆粒剤等の乾燥製剤は、服用時 少量の水を加えれば、直ちに服用のしやす ゲル剤(ゼリー状)とすることができる。

エリスリトール投与による減荷の経時 変化について、実施例2:第1グループの術側 膜伸展率(IR-L)と面積増加率(IR-S)との関連を 散布図と回帰直線により示した図である。 多糖類(ペクチン)の添加量による差異 ついて、実施例2:第2グループの2-1:ペクチン 添加量の違いにより、術側の減荷効果にど ような差が出るかをみるための、膜伸展率 面積増加率の関連を、散布図と回帰直線に り示す図である。 多糖類(ペクチン0.5g/kg)添加後の経時的 化について、実施例2:第2グループの2-2:第8 (ペクチン0.5g/kg添加、3時間後)の術側で認め れた減荷効果の経時的変化を、散布図と回 直線により示す図である。 キシリトール単味で投与した群と多糖 としてキサンタンガムを添加した群との膜 化と面積変化を示した図である。 イソソルビトール単味で投与した群と 糖類としてアルジネートナトリウムを添加 た群との膜変化と面積変化を示した図であ 。 イソソルビトール単味で投与した群と 糖類として寒天を添加した群との膜変化と 積変化を示した図である。 グリセロール単味で投与した群と多糖 としてカルボキシメチルセルロースナトリ ムを添加した群との膜変化と面積変化を示 た図である。 キシロース単味で投与した群と多糖類 してキサンタンガムを添加した群との膜変 と面積変化を示した図である。 実施例2:本開発品と従来品の術側にお る減荷効果の差を見るため、膜の伸展率と 積変化率の関連を示した図である。 [比較例6]:エリスリトールにポリビニ ピロリドン(増粘剤)を添加した群とエリスリ トール単味の群の術側の膜変化と面積変化と の関連を示した図である。 参考例:ペクチンのみを投与した群の 変化と面積変化を対照群(蒸留水)と比較した 図である。

 本発明のメニエール病治療薬は、必須成分 して、(a)単糖類及び少糖類並びにそれらの アルコール類から選択された少なくとも1種 と、(b)多糖類から選択された少なくとも1種 一定の割合で含有する点に特徴を有する。
 本明細書において、用語「単糖類」、「少 類」、「多糖類」及び「糖アルコール類」 、それぞれ当該技術分野において通常理解 れるとおりの意義を有する[例えばKirk-Othmer: Encyclopedia of Chemical Technology, 4th Ed., Vol. 4,  page 912 (1992年);共立出版「化学大辞典」縮 版、4巻807頁、5巻662頁、762頁、6巻306頁、308 、369頁(1984年)参照]。例えば、「単糖類」、 「少糖類」及び「多糖類」は、それぞれ加水 分解によってさらに分解されることのない分 子としての炭水化物、加水分解によって一定 少数個(例えば2~10個)の単糖分子を与える炭水 化物、及び加水分解によって不定多数個(例 ば少なくとも35個)の単糖分子を与える炭水 物を示すものと理解されて良い。少糖類は 好ましくは二糖類である。また、「糖アル ール類」は、糖類のアルデヒド基及びケト 基を還元してそれぞれ第1アルコール基及び 2アルコール基としたものに相当する多価ア ルコールを指すものと理解されて良い。

 本発明において、(a)成分として使用され 単糖類及び少糖類並びにそれらの糖アルコ ル類のなかで好ましいものは、例えばグリ ロール、エリスリトール、キシリトール、 シロース、ソルビトール、イソソルビトー 、マルチトール、ラクチトール、マンニト ルなどが挙げられ、特に好ましいものとし エリスリトール、キシリトール及びイソソ ビトールを挙げることができる。また、(b) 分として使用される多糖類のなかで好まし ものは、例えば、ペクチン、キサンタンガ 、グァーガム、アラビアガム、ローカスト ーンガム、タラガム、アルジネートナトリ ム、カルボキシメチルセルロースナトリウ 、ヒドロキシプロピルセルロース、寒天、 ラギーナンなどが挙げられ、特に好ましい のとしてペクチン、キサンタンガム、アル ネートナトリウム及びカルボキシメチルセ ロースナトリウムが挙げられる。いずれの 合も1種類またはそれ以上が使用されてよい 。

 (a)成分としての単糖類、少糖類又は/及びそ れらの糖アルコール類に対する(b)成分として の多糖類の割合(重量比)は、約100:2~50、好ま くは約100:5~50、特に好ましくは約100:10~40であ る。この範囲を外れると多糖類による瀉下効 果が十分に達成され難い。
 (a)成分と(b)成分の混合物の総量に対して、 10~55重量%、好ましくは約15~50%の精製水を加 て、常温又は必要に応じて加熱下に練和す と、練和物はゲル化しゼリー状になる。精 水の量が約10重量%より少ないと粘度が上が すぎ、また、約55重量%を超えると希薄にな すぎて良質なゲルが得られないため好まし ない。

 このゲル剤を乾燥、粉砕すれば粉末剤が得 れる。また、上記練和物を押し出し造粒等 方法で造粒し、乾燥後製粒することによっ 顆粒剤が得られる。
 乾燥、粉砕、及び造粒は、慣用の方法が何 も適用できる。
 製剤化に際し、必要に応じて、有効成分に えて、医薬上許容し得る担体、賦形剤、希 剤、結合剤、防腐剤、安定剤、香味・着色 などを配合することができる。

 そのほかに、本発明の目的を損なわない り、糖または糖アルコール類以外の他の薬 成分、例えば乾燥水酸化アルミニウムゲル 天然ケイ酸アルミニウムもしくは沈降炭酸 ルシウムのような制酸作用および/または整 腸作用を有する薬物、交感神経β作動薬、血 拡張薬もしくは脳循環改善薬のような内耳 環改善作用を有する薬物、利尿剤のような 路水腫の軽減を図る薬物、鎮静剤もしくは 律神経調節剤のような鎮静ないし制吐を図 薬物等の1種以上を適宜配合することも可能 である。

 糖または糖アルコール類の治療上有効量 、処置すべき疾患の病態ならびに対象の年 、性別および一般的な健康状態等の様々な 因に依存して変化し得るが、例えば成人1日 あたり約0.5~3.0g/kg、好ましくは約0.8~1.5g/kgで り、これを1ないし数回、例えば3回に分けて 投与する。

 本発明のメニエール病治療薬は、糖また 糖アルコール類と多糖類とを練和して得た ル剤をそのまま服用してもよく、また、ゲ 剤から定法で製剤化して得られる粉末剤又 顆粒剤を服用してもよい。

 ゲル剤から得られる粉末剤又は顆粒剤は、 または糖アルコール類原末に比較して容量 顕著に、例えば約50%、好ましくは例えば約6 0%以上減少するため、保存、携帯に有利であ 、患者にとって服用の負担が軽減される。
 また、粉末剤又は顆粒剤に用時に約10~55重 %の水を加えれば、再ゲル化して一塊のゼリ 状となるため、服用がさらに容易となる。

 本発明によるゲル剤は、糖または糖アル ール類原末の飽和水溶液に対しその容量が 3分の1に激減するため、従来の液状製剤と 較しても服用上格段に有利である。

 以下に、実施例及び比較例を示して本発 を詳しく説明するが、本発明はこれらによ て限定されるものではない。実験計画をた るに当たり、実験動物及び排出された便の 察、視診及び触診によって十分に判断可能 あること、そして動物愛護が叫ばれる社会 事情にも配慮し、大量の動物を開腹(と殺) ることは避けるよう工夫した。なお、反復 与による影響を回避するため、糖または糖 ルコール類を投与した動物は、一度のみの 用にとどめた。

 以下の実施例および比較例の表中における 号は、次の意味を有する:
Ery:エルスリトール
IB:イソソルビトール
P:ペクチン
XG:キサンタンガム
Al:アルジネートナトリウムグリセロール
Gly:グリセロール
CMC:カルボキシメチルセルロースナトリウム
PVP:ポリビニルピロリドン
GG:グァーガム
AG:アラビアガム

 また、便の状態(すなわち、固さや形状およ び腸内の便の間隔)の判定基準は表2に記載の おりである:

 蒸留水を投与した群の便の固さ及び性状を 正常便」、評価点3として、形状は正常であ るが、指で押さえると比較的容易に変形する ものを、「やや軟便」、評価点2、形状が既 変形しているものを「軟便」、評価点1,形の ないものを「泥状便」、評価点0とした。飼 の性状から水様便はなく、泥状便がヒトの 様便と泥状便に相当する。
 なお、開腹して詳細な検討を行った結果、 腸部分にわずか2~3cmでも便が形成されてい 場合、体外に排出された便は軟便程度の固 を有しているため、止瀉に成功したと判定 ることになってしまうが、実際には腸管内 、形のない泥状便で満たされている例もあ 。泥状便は大量の水分を含んでいるため、 部の圧が高くなり、膨満感を引き起こす。 た、便が腸管内で形成された動物では、腸 を開いた際、間隔が大きく空いた部分にガ の発生が穿刺などにより確認できた例もあ 。ガスの発生が想定できる例も多々あり、 満感を相乗的に増悪させるものであろうと われ、不快な症状があったと推定される。 たがって、便の固さだけではなく、便の大 さや表面の滑らかさ、便の量などにも注意 て評価する。

 糖または糖アルコール類による下痢とそ 解決方法を調べた。糖または糖アルコール のうち、4単糖であるエリスリトール、5単 であるキシリトール、キシロース、6単糖で るイソソルビトールなどに多糖類を添加す などして、モルモットに経口投与し、投与 6時間目まで便を観察した。

 対象と方法)体重280~320g、正常な便をしてい モルモットを、4グループに分け、第1-aグル ープにはキシリトールのみ[比較例1]、キシリ トールとキサンタンガムまたはペクチン、第 1-bグループにはキシロースのみ[比較例2]、キ シロースとキサンタンガム又はペクチン、第 1-cグループにはエリスリトールのみ[比較例3] 、エリスリトールとペクチン、エリスリトー ルとキサンタンガム、エリスリトールとペク チンと天然ケイ酸アルミニウムゲルや炭酸カ ルシウムを加えたものを、それぞれ経口投与 した。第1-dグループにはイソソルビトールの み[比較例4]、イソソルビトールとキサンタン ガムまたはペクチンを加えたものを経口投与 した。
 投与する糖または糖アルコール類と多糖類 量は表3、表4、表5に示すとおりである。投 薬剤は蒸留水に溶解させ、いずれの場合も 溶液の1回の投与量は8ml/kgとなるようにした 。

 便の観察は投与後6時間行い、もっとも症 状が重篤になった時点の便の固さと形状をそ の動物の糖または糖アルコールによる症状と して判定し、その結果を表3、表4、表5に記し た。

A1:天然ケイ酸アルミニウム 0.17g/kg
A2:天然ケイ酸アルミニウム 0.35g/kg
A3:天然ケイ酸アルミニウム 0.7g/kg
C1:炭酸カルシウム  50mg/kg
C2:炭酸カルシウム 100mg/kg

 実施例1の結果は以下のとおりである。
 1-a)キシリトール投与の場合
 投与前、正常な便をしているモルモット45 を、5匹ずつ9群に分け、表3に示すようにキ リトール等の水溶液を経口投与した。

 ア)キシリトールのみを投与した場合の投与 量による影響[比較例1]
 キシリトール1.4g/kgでは下痢は起きなかった が、2.1g/kg投与群では3時間後には手指で押さ ると便が容易に変形する程度の軟便の動物 1匹いた。2.8g/kgでは投与後1時間では異常は められなかったが、投与後2時間ですべての 動物に程度の差はあったが、明らかな下痢症 状があらわれた。投与後3~4時間で症状が重篤 になり、半数を超える動物が泥状便となった が、6時間後にはほぼ正常な便に戻った。

 イ)キシリトールにキサンタンガムを添加
 キシリトール2.8g/kgに、各々キサンタンガム を0.12g/kg、0.2g/kg、0.3g/kg添加し経口投与した ころ、2時間目まではほとんど異常な便は認 られなかったが、3~4時間後に症状が出現し 。その時点の便の評価を表3に示した。便は キサンタンガムの量が増加するにつれ正常な 便をするものが多くなり、0.3g/kgでは観察時 中に軟便は認められなかった。

 ウ)キシリトールにペクチンを添加
 キシリトール2.8g/kgに、各々ペクチンを0.25g/ kg、0.35g/kg添加し経口投与すると、0.2g/kgでは 便は2時間目から軟化傾向を示しはじめ、3~4 時間目にピークになった。0.3g/kgで軟便は認 られなかった。

 1-b)キシロース投与の場合
 正常な便をしているモルモット16匹を表3に すように3群に分けた。キシロース2.8g/kgの を投与した5匹のうち4匹は泥状便ないし軟便 、キシロースにキサンタンガム0.2g/kgまたは クチン0.3g/kgを添加した群では、やや軟らか 便の1匹を除いて正常便で、軟便は見られず 、便の固さには比較例2と比べ有意差が認め れた(いずれもP<0.01、Mann-Whitney 検定)。下 が続く間、腹部には軽度ないし中等度の膨 が触れ、ガスの移動をわずかであるが触れ 。

 1-c)エリスリトール投与の場合
 投与前、正常な便をしているモルモット75 を、5匹ずつ15群に分け、表4に示すようにエ スリトール溶液及び添加物を経口投与した

 ア)エリスリトールのみ2.8g/kgを投与した場 [比較例2]
 3時間後には全動物が泥状便となり、6時間 にも3匹は泥状便が続いていた。

 イ)エリスリトールにペクチンを添加
 エリスリトール2.8g/kgにペクチンを各々0.1g/k g、0.3g/kg、0.5g/kg、1.0g/kg、1.5g/kg添加し、経口 与した。0.5g添加すると便は過半数が正常に なり、1.5g/kg添加すると、便は正常よりむし やや固くなることが判った。

 ウ)エリスリトールにペクチン、天然ケイ酸 アルミニウム、炭酸カルシウムを添加
 表4に示すようにエリスリトール2.8g/kgに、 クチン0.5g/kgさらに天然ケイ酸アルミニウム( アドソルビン)0.17g/kgを加えた場合、ペクチン 0.5g/kgさらに天然ケイ酸アルミニウム0.17g/kgと 炭酸カルシウム50mg/kgを加えた場合のいずれ 殆どの動物が正常な便であった。
 結果は、エリスリトール単味の場合と有意 はなく、従来の整腸剤を添加することによ 好ましい相乗効果は認められなかった(Mann-W hitney検定)

 エ)エリスリトールにキサンタンガムを添加
 エリスリトール2.8g/kgにキサンタンガムを各 々0.05g/kg添加しても止瀉効果は認められなか たが、0.1g/kg添加すると軟便は見られなくな り、0.15g/kgで、5匹中4匹が正常便になった(い れも、P<0.01、Mann-Whitney検定)。

 オ)エリスリトールに天然ケイ酸アルミニウ ム、炭酸カルシウムを添加
 表4に示すようにエリスリトール2.8g/kgに従 の整腸剤である天然ケイ酸アルミニウム(ア ソルビン)0.17g/kg、2倍量の0.35g/kg、4倍量の0.7 g/kg、さらに/または炭酸カルシウム50mg/kg、2 量の100mg/kgを添加した場合、止瀉効果は認め られなかった(Mann-Whitney検定)。

 1-d)イソソルビトール投与の場合
 投与前、正常な便をしているモルモット61 を、表5に示すように12群に分け、イソソル トールのみ、又はキシリトールなどを添加 た水溶液を経口投与した。

 ア)イソソルビトールのみを投与した場合の 投与量による影響(比較例4)
 イソソルビトール1.4g/kgでは1匹のみがやや 便になった。2.1g/kg投与群では3時間後には手 指で押さえると便が容易に変形する程度の軟 便の動物が2匹、やや軟便の動物が2匹となっ 。2.8g/kgでは投与後1時間では異常は認めら なかったが、投与後2時間で大部分の動物に 痢症状が現れ始め、投与後3~4時間で症状が 篤になったが、6時間後にはほぼ正常な便に 戻った。

 イ)イソソルビトールにキサンタンガムを添 加
 イソソルビトール2.8g/kgに、各々キサンタン ガムを0.05g/kg(1.8重量%)、0.15g/kg(5.4重量%)添加 経口投与したところ、2時間目まではほとん 異常な便は認められなかったが、3~4時間後 下痢症状が出現した。その時点の便の評価 表5に示した。便はキサンタンガムの量が増 加するにつれ正常な便をするものが多くなり 、0.15g/kgでは観察時間中に軟便は認められな った。

 ウ)イソソルビトールにペクチンを添加
 イソソルビトール2.8g/kgに、各々ペクチンを 0.15g/kg、0.3g/kg添加し経口投与した場合には、 殆ど下痢症状は発現しなかった。0.15g/kgでは 軟便は認められず、0.3g/kgでは経過観察中、 全動物が正常便であった。

1-e)マルチトール投与の場合
 正常な便をしているモルモット38匹を、表6 示すように9群に分け、マルチトールのみ、 又はキサンタンガムもしくはグァーガム添加 した水溶液を経口投与した

ア)マルチトールのみを投与した場合
 二糖類のマルチトール2.8g/kgでは全ての動物 で泥状便となった。
 下痢の経過は、単糖類又はそのアルコール (投与後3時間目で下痢のピークに達する)と 較すると、下痢の発症はいくらか遅く、3時 間目に、便が軟化し始め、4時間ですべての 物の便が軟化し、うち5匹が泥状便となった 5時間目には全6匹が泥状便となり、12時間目 まで続いた。18時間目を過ぎるころから少し つ回復傾向が認められ、24時間後には半数 正常な便に戻った。
 5時間目を過ぎる頃から時間の経過とともに 、腹部に圧を加えると動物は苦しむ様子が認 められ、放屁があった。腹部は外部から視診 でも膨満している様子が確認できた。

イ)マルチトールにキサンタンガムを添加し 場合
 マルチトール2.8g/kgに、各々キサンタンガム を0.07g/kg、0.14g/kg、0.28g/kg、0.56g/kg、1.12g/kg添 し経口投与した。
 キサンタンガムを0.07g/kg投与した群では多 類による止瀉効果は殆ど認められなかった 0.14g/kg投与した群では、3時間目から便が軟 し始め、症状は増悪して5時間目には2匹が泥 状便、残りの2匹が軟便となった。この状態 12時間後にも続いており、18時間後にはいく か回復傾向が認められ、24時間後には全動 が正常便に復した。キサンタンガムの下痢 止効果は認められなかった(有意差なし、Mann -Whitney 検定)。
 キサンタンガムを0.28g/kg投与した群では、0. 14g/kg投与した群と同じく、3時間目から便が 化するものが認められ、6時間後には正常な をするものはなかった。うち、軟便は1匹で あった、12時間後には正常な便をするものが 数になり、24時間後には全動物が正常に復 た。キサンタンガムによる下痢防止効果は 十分なものであった。

 両群とも腹部の視診により腹部の膨満、触 ではガスの発生が認められ、動物は苦しむ 子が見られた。
 キサンタンガムを0.56g/kg(20重量%)、1.12g/kg(40 量%)投与した両群では、6時間後半数の動物 やや軟便となり、その後18時間目まで同様 状態が続いたが、24時間後には全動物が便の 固さは正常に復した。キサンタンガムによる 下痢防止効果が認められた(両群ともP<0.05 Mann-Whitney 検定)が、便の量は5時間目から極 に減少し、9~15時間の間は通常の3分の1以下 減少した。

ウ)マルチトールにグァーガム(GG)を添加した 合
 マルチトール2.8g/kgに、GGを0.28g/kg、0.56g/kg、 1.12g/kg添加し、経口投与した。
 GGを0.28g/kg(10重量%)投与した群では、2時間目 から便が軟化するものが認められ、4時間後 は軟便の1匹を除き泥状便となった。5時間目 には全動物が泥状便となり、12時間目まで続 た。18時間目も、4匹が軟便であったが、24 間目には正常に復した。XGと比較し、下痢防 止効果は劣っていた。腹部の視診により腹部 の膨満、触診ではガスの発生、移動が認めら れた。

 GGを0.56g/kg(20重量%)投与した群では、3時間 目から便が軟化するものが認められ、5~6時間 後には正常便は1匹、やや軟便、軟便が1匹と って、下痢はピークに達した。便の大きさ 形は正常便の1匹を除いて小さく、不整で、 量は約2分の1に減った。腹部の視診により腹 の膨満、触診ではガスの発生、移動が認め れた。XGを同量添加した場合と比較し、下 防止効果は劣っていたが、便の量はXGよりも いくらか多く、通常の約2分の1程度の減少で 腹部の膨満も軽かった。

 GGを1.12g/kg(40重量%)投与した群では、3時間 目から便が少なくなり、形も小さく、不整に なった。5時間後には便がやや軟化した。半 の動物がやや軟便となり、その後18時間目ま で同様の状態が続いたが、24時間後には全動 が便の固さは正常に復した。XGによる下痢 止効果が認められた(両群ともP<0.05、Mann-Wh itney 検定)。消化器症状はGG添加量の増加に 例して重篤なものとなった。触診でガスの 生、軽く圧をかけることで腸管内でのガス 移動が音と共に手指に触れ、腹部に強く圧 かけると、動物は激しく鳴き、苦しそうな 子を示した。XGを同量添加した場合と比較し 、下痢防止効果は劣っていたが、便の量は通 常の約2分の1程度で、XGと比べ多かった。腹 の膨満は同程度であったが、触診による苦 みは軽かった。

 二糖類のマルチトールが単糖類と大きく なる点は下痢の発現が単糖類と比して遅く 約4~5時間目以降であり、ピークは約12時間 くことと、その間、腸内異常発酵が重篤で ることである。比較的大量のキサンタンガ またはグァーガムを添加すると、止瀉を図 ことはできたが、腸内異常発酵が生じるな 、経過が単糖類とは異なる。便の固さの経 的変化(4匹の平均値)を表7に示す。

 また、その他の糖または糖アルコール類と 糖類の組合せによる瀉下作用も検討した。
〔マンニトールとカルボキシメチルセルロー スナトリウム〕
 正常な便をしているモルモット8匹を2群に け、次に示すように薬物投与を行い、その 6時間、便を観察した。結果を表8に示す。

 マンニトールによる下痢は、約7.1重量%の CMCの添加により、有意に軽回した(P<0.05、Ma nn-Whitney検定)。視診触診により、腹部の膨満 認められず、消化器症状は軽かったものと 定された。

〔ソルビトールとヒドロキシプロピルセルロ ース〕
 正常な便をしているモルモット8匹を2群に け、次に示すように薬物投与を行い、その 6時間、便を観察し、その結果を表9に示した 。
CMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム) 0.05g/kg添加しHPCを懸濁させた。

 ソルビトールによる下痢は約5.4重量%のヒ ドロキシプロピルセルロース(約0.18重量%のカ ルボキシメチルセルロースナトリウムで懸濁 )を添加することで、有意に軽回した(P<0.05 Mann-Whitney検定)。視診触診により、腹部の膨 満は認められず、消化器症状は軽かったもの と推定された。

〔ソルビトールとグァーガム(Sigma社)〕
 正常な便をしているモルモット10匹を2群に け、次に示すように薬物投与を行い、その 6時間、便を観察し、その結果を表10に示し 。

 グァーガムを10重量%添加して、2匹が正常 便、2匹がやや軟便となり、ソルビトールに る下痢を止瀉することにほぼ成功した(P<0. 05、Mann-Whitney検定)。しかし、投与後3~4時間目 で、便の量は3分の1程度に減り、視診、触診 より腹部に軽度の膨満感が認められ、手指 より腹部を圧迫すると、ガスの発生と移動 触れた。下腹部を圧迫すると、形が不整で 通常の2分の1以下の小さい便が少しずつ排 された。

〔エリスリトールとアラビアガム(Sigma社)〕
正常な便をしているモルモット10匹を2群に分 け、次に示すように薬物投与を行い、その後 6時間、便を観察し、その結果を表11に示し、 E3H群と比較検討した。

 アラビアガムを20重量%添加しても、エリ リトールによる下痢を止瀉することは出来 かった(有意差なし)。投与後40重量%添加す と、下痢はいくらか軽回した(P<0.01、Mann-Wh itney検定)が、さらなる確実な止瀉が望まれる ところである。両群とも、3~4時間目で、便の 量は3分の1程度に減り、視診、触診により腹 の膨満感が認められ、手指により腹部を圧 すると、ガスの発生と移動が触れたが、泥 便がわずかに排泄されるだけで、不快な状 が推測された。

〔エリスリトールとグァーガム(Sigma社)〕
 正常な便をしているモルモット15匹を2群に け、次に示すように薬物投与を行い、その 6時間、便を観察し、その結果を表12に示し E3H群と比較検討した。

 グァーガムを20重量%添加して、2匹が正常 便、2匹がやや軟便でほぼ止瀉に成功した(P< ;0.001、Mann-Whitney検定)。しかし、投与後3~4時 目で、便の量は3分の1程度に減り、視診、触 診により腹部の膨満感が認められ、手指によ り腹部を圧迫すると、ガスの発生と移動が触 れた。下腹部を圧迫すると、形が不整で、通 常の2分の1以下の小さい便が少しずつ排泄さ るだけで、不快な状態が推測された。

 以上の結果から、糖または糖アルコール の経口投与により下痢症状が生じること、 の下痢は投与後3~4時間でピークに達するが 6時間目にはいくらか回復傾向を示すこと、 多糖類を添加することで、糖または糖アルコ ール類の瀉下作用が軽減され、添加量に比例 して止瀉効果が高まることが判った。制酸作 用、整腸作用を有する薬物を加えることで作 用はより確実になる傾向も認められはしたが 、明らかな相乗効果はなく、逆に阻害効果も 認められなかった。これは他の多糖類、例え ばアルギン酸ナトリウム等でも同様のことが 観察された。

 糖または糖アルコール類の内リンパ水腫 荷効果を評価するため、以下のとおり、3系 列の試験を行った。まず、モルモットの左側 のみに内リンパ嚢閉鎖術を施行し、「実験的 内リンパ水腫モデル動物」を作成した。内リ ンパ嚢の閉鎖は内リンパ嚢の骨外部分を双極 性電気凝固器(bipolar electrocoagulator)で焼却す ことで行った。内リンパ液の吸収に重要な 割を演じる内リンパ嚢を焼灼することで内 ンパ液の吸収障害がもたらされ、実験的内 ンパ水腫が形成される。この水腫は進行的 形成され、その大きさは約2週間ないし1ヶ月 後にはほぼ一定となって、数ヶ月間持続する 。術式の詳細は既報(非特許文献8)と同様であ る。

 1ヶ月後、第2-1グループ(第1-6群)60匹、第2 2グループ(第7-10群)40匹、第2-3グループ(第11- 20群)66匹の3グループに分け、第2-1グループに は、糖または糖アルコール類のみを投与[比 例5]、第2-2グループには、糖または糖アルコ ール類に多糖類を添加した薬剤を経口投与し た。第2-3グループには、糖または糖アルコー ル類、多糖類の組合わせをかえて経口投与し た。動物は設定した時間経過後、灌流固定し 、胃腸症状と主に術側(左側)の蝸牛の組織学 変化、特に内リンパ水腫減荷効果を観察、 討した。

 胃腸症状は灌流固定の際、大腸、結腸、 腸の状態、便の形成状況については、1)便 固さと形、2)形のある便の形成された長さと 便の間隔と配列状態の2点について特に観察 、表2の基準により判定した。直腸、結腸内 正常便の形成された長さは肛門を起点に計 し、便の間隔が一定かどうかもあわせて観 した。

 灌流固定後、側頭骨を摘出し、トリクロロ 酸で脱灰、アルコール類で脱水、パラフィ ・セロイジンの2重包埋を行った。薄切によ り得た蝸牛軸切片をヘマトキシリン・エオジ ン染色し、光学顕微鏡で主に術側(左側)を中 に蝸牛組織の観察、ライスネル膜の長さと リンパ腔の面積の変化を観察、計測を行っ 。
 回転毎にライスネル膜の伸展と内リンパ腔 容積変化を計測し、その結果を下記の計算 により積分して、蝸牛毎に膜の伸展率、内 ンパ嚢の面積増加率を求めた。術側の左側 は内リンパ腔の容積変化から、内リンパ水 減荷効果を評価した。
 組織作成法、計測法、評価法の詳細は既報( 非特許文献8)と同様である。

ライスネル膜の伸展率(IR-L)=100×σ(Lx-L*x)/σL* x (x: 第1,第2,第3,第4回転)

内リンパ腔(scala media)の断面積の増加率(IR- S)=100×σ(Sx-S*x)/σS*x (x: 第1,第2,第3,第4回転)

 (1)第2-1グループ:エリスリトールのみを投与 した場合[比較例4]
 モルモット60匹を各群10匹ずつ6群に分け、 群に次に示すように薬物の投与を行った。 リスリトール水溶液は1回投与量が8ml/kgとな ように調整した。

 A)胃腸症状についての検討
 結果を表14に示す。
Ery:エリスリトール2.8g/kg
 便の固さは灌流時に判定したものである

 ア)便の固さの判定
 対照群はすべて正常便であった。E1H,E2H群は 直腸付近では正常な便が形成されていたが、 次第に軟便に移行していた。E3H,E6H群はすべ 泥状便であった。E6H群の5匹中1匹は泥状便に わずかな軽回が認められたが、形は形成され ていなかった。E12H群では全動物でほぼ正常 固さの便が形成されていた。

 イ)形のある便の形成された長さと便の間隔 と配列状態
 対照群では55.0±8.8cmで、便の大きさは一定 、その間隔も一定であったが、E1H群では一 軟便で、大きさは不整、間隔もバラバラに っているなど不定になっており、便の形成 れた長さは22.8±6.9cmであった。E2H-E6H群では 部軟便に近い部分もあったが、腸内はほぼ 状便で満たされており、便の形成は0cmであ た。投与後12時間のE12H群では、ほぼ一定の をした便が66.0±12.1cm形成されていた。便の 隔は対照群では通常約0.7~1cmでほぼ一定であ ところ、E12H群の一部の動物では8~10cmの箇所 もあり、不定で、便の間隔が開いた箇所には 穿刺によりガスの発生が確認された。

 以上から、エリスリトール投与による下 は2~3時間で重篤なものとなり、6時間後も継 続しているが、12時間後にはおおよそ正常に することが判った。

 B)内リンパ水腫減荷効果
 術側における膜の伸展と面積の増加の関連
 術側における膜の伸展率(IR-L)、面積増加率( IR-S)の平均±標準偏差を表15に示す。なお、対 照群は閉鎖術を施行していない右側(対照側) も計測して、閉鎖術を施行していない、す わち無処置のライスネル膜の伸展率、内リ パ腔の面積増加率を表14に加えて示した。

 対照群の対照側では水腫の形成は認めら ない。術側においては、閉鎖術による実験 水腫の形成程度は数%から百数十%とバラツ が大きく、膜の伸展率、面積増加率の平均± 標準偏差を比較することではエリスリトール の効果、その経時変化などを検討することに は困難がある。

 図1はエリスリトール投与による減荷の経 時的変化について、横軸に膜の伸展率(IR-L)、 縦軸に面積増加率(IR-S)をとり、動物群毎に術 側の2変数の散布図と回帰直線を示したもの ある。○:IR-S(蒸留水) vs IR-L(蒸留水)、□:IR- S(1時間) vs IR-L(1時間)、(左半分が白、右半分 が黒の丸):IR-S(2時間) vs IR-L(2時間)、●:IR-S(3 間) vs IR-L(3時間)、×:IR-S(6時間) vs IR-L(6時 )、■:IR-S(12時間) vs IR-L(12時間)。各群の回 直線は殆ど差がないことから、エリスリト ルのみでは減荷効果は認められないことが かる。内リンパ水腫が生ずると、内リンパ の体積が増加し、ライスネル膜が伸展する 図1から、蒸留水を投与した対照群術側では 、この両者の間に統計学的に1次相関が存在 ると推計される。回帰直線は、IR-S(蒸留水)=4 .011+1.212*IR-L(蒸留水);R2=0.987、IR-S(1時間)=5.409+1. 1*IR-L(1時間);R2=0.903、IR-S(2時間)=1.125+0.992*IR-L(2 間);R2=0.98、IR-S(3時間)=2.407+1.309*IR-L(3時間);R2= 0.974、IR-S(6時間)=7.36+1.147*IR-L(6時間);R2=0.895、IR -S(12時間)=8.089+1.152*IR-L(12時間);R2=0.918である。 薬剤投与により水腫の減荷が起こると、膜が 伸展しているにもかかわらず、内リンパ腔の 面積増加が少なくなり、回帰直線が下方に移 動することになる。

 図1において、対照群の回帰直線とE1H群(1時 後)ないしE12H群(12時間後)の計5群の回帰直線 を比較すると各群間に有意差はなかった(ANCOV A検定)。このことから、糖または糖アルコー 類投与により期待された減荷効果は、単味 投与した場合には認められないことがわか た。その理由としては、瀉下効果による脱 により、血漿AVP(=血漿ADH:抗利尿ホルモン)が 上昇したことが考えられる(Safwate A et al: Br  Vet J 147:533-7,(1991))。
 糖または糖アルコール類の内リンパ水腫減 作用を確実なものとするには、糖または糖 ルコール類の瀉下作用を阻止する方法を考 しなくてはならないことが判った。

 (2)第2-2グループ:エリスリトールにペクチン を添加し投与した場合
 左側内リンパ嚢の閉鎖術施行1ヶ月後、モル モット40匹を各群10匹ずつ4群に分け、各群に に示すように薬物投与を行い、一定時間経 後に灌流固定した。
 なお、薬剤の1回投与量は第7群から10群まで は8ml/kgとした。
 灌流固定の際、大腸、結腸、直腸の状態、 に便の形成状況を観察した。灌流固定後の 灰、脱水、包埋、染色、光学顕微鏡での観 、計測は第2-1グループと同様に行った。

 A)胃腸症状についての検討
 便の固さ、間隔の判定と便の形成された長 は上記の2グループに分けて観察した。
[2-2-a:ペクチンの添加量による投与後3時間後 効果の違いを観察する]
 結果は表17に示す。

 第4群のE3H群(ペクチンを添加せずエリスリ ールのみ投与)は10匹すべてが泥状便であっ が、第7群(E+P0.1g群:ペクチン0.1g/kg添加)では10 匹中、泥状便の動物が5匹、軟便の動物が3匹 、肛門から2~3cm程度の便の形がみられた。 りの2匹はやや軟便で、23cm、42cmの便が形成 れていたが、その間隔は不定で、間隔が10cm 上開いているところもあった。10匹の平均 7.3±13.3cmであった。
 第8群(E+P3H群:ペクチン0.5g/kg添加)では3匹が 状便、他の7匹のうち軟便、やや軟便が各1匹 、3匹は正常な固さで止瀉効果が認められた(P <0.01、Mann-Whitney検定)。しかし、これら7匹 便の間隔はいずれも一定ではなかった。形 された便の長さの平均(10匹)は19.2±21.7であっ た。

 参考)下痢に続発する全身状態への影響の検 討
 対象と方法)体重280~320mgのモルモットで、正 常な便をしている12匹を、3グループに分け、 第1グループには生理食塩水のみ、第2グルー にはエリスリトール+ペクチン0.1g/kg、第3グ ープにはエリスリトール+ペクチン0.5g/kgを 与した。投与後、3時間でギロチンを用いて 頭、採血し、明細書中の非特許文献8に記載 された方法で、血中AVPを測定した。

 投与薬剤と検査結果を表18に示す。エリス トール投与量はいずれも2.8g/kgで、水溶液の1 回の投与量は8ml/kgとなるように調整した。
Ery:エリスリトール2.8g/kg
*:軟便の血漿AVPは3.2,8.3、泥状便では25.5,22.1で あった。単位:pg/ml
**:軟便の血漿AVPは10.9,正常便の血漿AVPは3.1,2.8 ,4.0であった。
 下痢の重篤度に血漿AVPの値が比例すること 分かった。

 多糖類を糖または糖アルコールに対し約3.6 量%配合(ペクチン0.1g/kg)した場合は、重度の 下痢症状が発現し(表17)、血漿AVPが高値をと が、一方、本発明の配合量では、4匹中3匹の 便は正常で、血漿AVPも低下する(表18)。
 表1に示したとおり、血漿AVPの値と内リンパ 水腫の増加率は比例する。ペクチン0.1g/kg(約3 .6重量%)を配合した場合には血漿AVPが高値を り、水腫減荷効果は認められず、ペクチン0. 5g/kgでは血漿AVPが低く、著明な減荷効果が認 られた。この結果は、非特許文献10と一致 ている。
 多糖類の添加量が少ない場合には下痢が生 、脱水が続発する。懸濁化剤や増粘剤に使 れる程度の低濃度の添加では、血漿AVPの上 を招き、メニエール病の病態(発作期のAVPと 同値の危険な状態)である内リンパ水腫を形 する結果となった。

[2-2-b:ペクチン0.5g/kg添加し、投与後の経時的 化を観察する]
 結果は表19に示す。
 便の固さは灌流時に判定したものである

 2-2-aの第8群(E+P3H群:3時間後灌流)では泥状 は3匹、正常便4匹であった。投与後6時間で 流した第9群(E+P6H群)では、1匹が泥状便、2匹 が軟便で、1匹がやや軟便で、他の6匹は正常 固さであった。エリスリトールのみの第5群 (E6H群)では7匹が泥状便であることから、止瀉 効果が確認された(P<0.01、Mann-Whitney検定)。 隔は依然として不定で、形成された便の長 は30.8±23.6cm(10匹の平均)であった。直腸付近 では泥状便、軟便の動物も、結腸付近ではほ ぼ正常な便が形成されつつあったことから、 下痢は一過性のものであると考えられた。

 第10群(E+P12H::12時間後灌流)では全動物が正 便で、便の間隔は一定であった。便の配列 規則的で、エリスリトールのみの第6群(E12H )では10匹中9匹が不定であったことからする 、著明な改善が見られた(P<0.001、Mann-Whitne y検定)。腸内異常発酵などの不快な消化器症 が軽減した経過が推測された。
 形成された便の長さの平均は45.4±11.5cmであ た。

 B)内リンパ水腫減荷効果
 ペクチンの添加量の差による内リンパ水腫 荷効果の違い、さらに減荷効果の経時変化 検討する場合に、術側においては、各群の の伸展率、面積変化率の平均と標準偏差を 較検討しても、効果を明確に判定すること 困難である。そこで第1群での観察と同様に 、図2及び3の直線の傾きとY切片を比較するこ とにより、検討した。

 [2-2-a:ペクチンの添加量による投与後3時間 の効果の違いを観察する]
 表20に各群の膜の伸展率と面積増加率の平 と標準偏差、図2に散布図と回帰直線を示す

 図2は第1群で見たとおり、E3H群(エリスリ ールのみ)では対照群(蒸留水)と有意差がな 。第7群(ペクチン0.1g/kg添加)も、対照群、E3H 群と有意差がないが、第8群(ペクチン0.5g/kg) 有意差がある(P<0.001)ことから、第8群では らかな減荷効果が認められる。○:IR-S(蒸留 ) vs IR-L(蒸留水)、●:IR-S(E3時間) vs IR-L(E3 間)、(左半分が白、右半分が黒の丸):IR-S(E+P0. 1g) vs IR-S(E+P0.1g)、■:IR-S(E+P0.5g) vs IR-L(E+P0.5g ) 。IR-S(蒸留水)=4.011+1.212*IR-L(蒸留水);R2=0.987 IR-S(エリスリトール3時間)=2.407+1.309*IR-L(エリ リトール3時間);R2=0.974、IR-S(エリスリトール +ペクチン0.1g)=8.683+1.074*IR-L(エリスリトール+ クチン0.1g);R2=0.704、IR-S(エリスリトール+ペク チン0.5g)=-15.925+0.79*IR-L(エリスリトール+ペク ン0.5g);R2=0.771。

 第7群(ペクチン0.1g/kg添加、約3.6重量%添加 )と、対照群(蒸留水)、E3H群(エリスリトール み投与)との間に有意差は認められない(ANCOVA 検定)。一方、ペクチンを0.5g/kg添加した第8群 は対照群、E3H群と比べ有意に下方に移動して いる(各々P<0.01,P<0.05、ANCOVA検定 )。この とから懸濁化剤や乳化剤の安定化剤として 常使用される添加量(1%以下)では減荷効果は 望むべくもなく、ペクチンを0.5g(17.9重量%)添 することによってはじめて明らかな減荷効 が現れることが判った。

 なお、表20の第7群は膜の伸展率、面積増 率ともに他の群と比べ大きな値をとる。こ は閉鎖術により、動物の個体差に起因して 度の水腫形成が生じたためである。図2に示 すとおり、対照群と比べて有意差もないこと から、薬剤の投与により水腫が増悪したもの ではないといえる。

 [2-2-b:ペクチン0.5g/kg添加し、投与後の経時 変化を観察する]
 表21に各群の伸展率と面積増加率の平均と 準偏差、図3に散布図と回帰直線を示す。

 図3は、第9群(6時間後)は対照群と有意差 ある(P<0.001)ことから、依然として減荷効 が認められるが、第8群(3時間後)と比較し、 荷効果は有意に減弱している(P<0.05)。第10 群(12時間後)では減荷効果はさらに有意に減 し、対照群(蒸留水)との間には有意差はない 。これらのことから時間が経過するにつれ、 減荷効果が減少し、12時間後には減荷効果が 失したと考えられる。○:IR-S(蒸留水) vs IR- L(蒸留水)、■:IR-S(E+P3時間) vs IR-L(E+P3時間)、 ×:IR-S(E+P6時間) vs IR-L(E+P6時間)、(左半分が白 、右半分が黒の丸):IR-S(E+P12時間) vs IR-L(E+P12 間)。IR-S(蒸留水)=4.011+1.212*IR-L(蒸留水);R2=0.98 7、IR-S(エリスリトール+ペクチン3時間)=-15.925+ 0.79*IR-L(エリスリトール+ペクチン3時間);R2=0.77 1、IR-S(エリスリトール+ペクチン6時間)=-16.508+ 1.314*IR-L(エリスリトール+ペクチン6時間);R2=0.7 84、IR-S(エリスリトール+ペクチン12時間)=-4.58+ 1.314*IR-L(エリスリトール+ペクチン12時間);R2=0. 913。

 図3においては、2-2-aに示したとおり、第8 群(3時間後)は対照群(蒸留水)、E3H群(エリスリ トールのみ)と比べ有意に減荷が生じている さらに第9群(6時間後)も対照群、E3H群と比較 、有意に減荷されている(P<0.001)。また、 9群は第8群と比較すると有意に上方に移動 ている(P<0.05)。第10群(12時間後)E3H群、E6H群 と比較し有意差が認められた(各々P<0.001,P&l t;0.01)が、対照群、E3H群とは有意差は認めら なかった。以上から、投与後3時間で減荷効 が最大になり、6時間後にも減荷効果は認め られるが、3時間後と比べると効果は減弱し 12時間後には減荷効果は消失していることが 判った。

 (3)第2-3グループ
 糖または糖アルコール類と多糖類の組み合 せをかえて、止瀉作用を観察し、表2の基準 に基づいて評価した。動物は左側内リンパ嚢 の閉鎖術施行1ヶ月後で、灌流は経口投与後 糖または糖アルコール類の瀉下作用が最大 なる3時間目に行い、側頭骨を取り出して、 記(非特許文献8)と同様の方法で標本を作製 内耳の観察と内リンパ水腫減荷効果を計測 評価した。

 2-3-a)キシリトールにキサンタンガムを添加 投与した場合
 モルモット12匹を6匹ずつ2群に分け、次に示 すように薬物投与を行い、3時間経過後に灌 固定した。
 これらの結果のうち、止瀉効果の評価結果 表23に示す。
 キサンタンガム添加(7.1重量%)により、止瀉 果が認められた(P<0.05、Mann-Whitney検定)

 組織学的検討結果を表24、図4に示す。
 図4より、多糖類として、キサンタンガムを 添加した群では、キシリトール単味の群と比 較し、明らかな内リンパ水腫減荷効果が認め られた(P<0.01、ANCOVA検定)。

 図4中、○:IR-S(キシリトール単味) vs IR-L( キシリトール単味)、●:IR-S(キシリトール+キ ンタンガム) vs IR-L(キシリトール+キサンタ ンガム)である。回帰直線はそれぞれ、キシ トール単味面積=2.371+1.208*キシリトール単味 ;R2=0.991、キシリトール+キサンタンガム面積 =-7.154+0.882*(キシリトール+キサンタンガム)膜; R2=0.82である。

 2-3-b)イソソルビトールにアルジネートナト ウムを添加した場合
 モルモット15匹を2群に分け、次に示すよう 薬物投与を行い、3時間経過後に灌流固定し た。
 これらの結果のうち、止瀉効果の結果を表2 6に示す。
 アルジネートナトリウム添加(10.7重量%)によ り、止瀉効果が認められた(P<0.05、Mann-Whitne y検定)。

 組織学的検討結果を表27、図5に示す。
 多糖類としてアルジネートナトリウムを添 した第2群では明らかな内リンパ水腫減荷効 果が認められた(p<0.01)。

 図5中、○:IR-S(イソソルビトール単味) vs IR-L(イソソルビトール単味)、●:IR-S(イソソ ビトール+アルジネートナトリウム) vs IR-L( ソソルビトール+アルジネートナトリウム) ある。回帰直線はそれぞれ、イソソルビト ル単味面積=7.143+1.003*イソソルビトール単味 ;R2=0.985、(イソソルビトール+アルジネート トリウム)面積=2.691+0.704*(イソソルビトール+ ルジネートナトリウム)膜;R2=0.977である。

 2-3-c)イソソルビトールに寒天を添加し投与 た場合
 モルモット15匹を2群に分け、次に示すよう 薬物投与を行い、3時間経過後に灌流固定し た。
 これらの結果のうち、止瀉効果の結果を表2 9に示す。
 寒天を添加(10.7重量%)することにより、止瀉 効果が認められた(P<0.05、Mann-Whitney検定)

 組織学的検討結果を表30、図6に示す。
 多糖類として、寒天を添加した第2群では明 らかな内リンパ水腫減荷効果が認められた(P& lt;0.01)。

 図6中、○:IR-S(イソソルビトール単味) vs IR-L(イソソルビトール単味)、●:IR-S(イソソ ビトール+寒天) vs IR-L(イソソルビトール+寒 天)である。回帰直線はそれぞれ、イソソル トール単味面積=6.542+1.011*イソソルビトール 味膜;R2=0.987、(イソソルビトール+寒天)面積= -0.574+0.865*(イソソルビトール+寒天)膜;R2=0.984 ある。

 2-3-d)グリセロールにカルボキシメチルセル ースナトリウムを添加し投与した場合
 モルモット12匹を2群に分け、次に示すよう 薬物投与を行い、3時間経過後に灌流固定し た。
 これらの結果のうち、止瀉効果の結果を表3 2に示す。
 カルボキシメチルセルロースナトリウムを 加(10重量%)により、止瀉効果が認められた(P <0.01、Mann-Whitney検定)

 組織学的検討結果を表33、図7に示す。
 多糖類としてカルボキシメチルセルロース トリウムを投与した群では、グリセロール 味の群と比較し、有意差が認められた(P<0 .01)。

 図7中、○:IR-S(グリセロール単味) vs IR-L( グリセロール単味)、●:IR-S(グリセロール+カ ボキシメチルセルロースナトリウム) vs IR- L(グリセロール+カルボキシメチルセルロース ナトリウム)である。回帰直線はそれぞれ、 リセロール単味面積=-2.455+0.887*グリセロール 単味膜;R2=0.982、(グリセロール+カルボキシメ ルセルロースナトリウム)面積=4.806+1.316*(グ セロール+カルボキシメチルセルロースナト リウム)膜;R2=0.995である。

 2-3-e)キシロースにキサンタンガムを添加し 与した場合
 モルモット12匹を2群に分け、次に示すよう 薬物投与を行い、3時間間経過後に灌流固定 した。

 これらの結果のうち、止瀉効果の結果を表3 5に示す。
 キサンタンガムを添加(7.1重量%)により、止 効果が認められた(P<0.01、Mann-Whitney検定)

 組織学的検討結果を表36、図8に示す。
 多糖類として、キサンタンガムを投与した では、キシロース単味の群と比較し、著明 減荷効果が認められた(P<0.001)。

 図8中、○:IR-S(キシロース単味) vs IR-L(キ シロース単味)、●:IR-S(キシロース+キサンタ ガム) vs IR-L(キシロース+キサンタンガム) ある。回帰直線はそれぞれ、キシロース単 面積=1.197+1.364*キシロース単味膜;R2=0.933、(キ シロース+キサンタンガム)面積=-17.886+0.945*(キ シロース+キサンタンガム)膜;R2=0.93である。

 第2-3グループのいずれも、糖または糖ア コールに多糖類を添加することで、内リン 水腫が減荷され、本発明の目的は達成され 。

 現在我が国で臨床に用いられているイソソ ビトール(興和創薬(株)製:一般名イソソルビ ド、イソソルビトール含有率70%)溶液との比
 内リンパ嚢閉鎖術を施行し、1ヶ月後、正常 な便をしているモルモット40匹を表36に示す うに10匹ずつ4群に分け、第20群、第21群には ソソルビド製剤(以下イソソルビトール従来 品)を投与し、第22群、第23群には、アルジネ トナトリウム0.11g/kg、無機塩0.09g/kgを添加し て調整したゲル製剤(イソソルビトール2.8g/kg) の投与を行なった。消化器症状と、内リンパ 減荷効果の観察は、イソソルビトール従来品 の減荷効果が最大となる投与後6時間後(非特 文献12)まで継続して行い、投与後3時間と6 間に灌流固定し、組織を採取、観察した。
 いずれの群も、1回の投与量は4ml/kgとなるよ うに調製した。閉鎖術、組織作成などの手順 、及び計測は、非特許論文(Takeda T:Hear Res. 1 83: 9-18, (2003))と同様の方法で行った。

A)胃腸症状についての検討
 便の固さ、形状の観察結果を表38に示す。
対照群:実施例2-1グループの第1群
IB:イソソルビトール2.8g/kg
Al:アルジネートナトリウム0.11g/kg

 イソソルビトール従来品投与群では2時間 後に便が軟化し始め、3時間後(第20群)に下痢 状は最悪となり、正常便は10匹中2匹、やや 便が3匹、軟便3匹、泥状便2匹となった。6時 間後(第21群)には、正常便の動物は4匹、やや 便が3匹、軟便2匹、泥状便1匹となり、下痢 状は投与後3時間と比較するといくらか改善 していたが、第20群、第21群間に有意差は認 られなかった。形成された便の長さは6時間 60.2±15.8であるが、10匹中8匹は便の間隔はバ ラバラで、約20~40cmの間隔が開いている箇所 散見され、腸管内にはガスが発生していた とから、かなりの胃腸症状が現れていたも と推測される。6時間後の便の固さと間隔を 照群と比較すると、便の固さ、便の間隔の 察結果ともに、有意差が認められ(各々、P&l t;0.01,P<0.05、Mann-Whitney 検定)、瀉下作用が やかながらも出現していたことが分かる。 の事実は、イソソルビトール従来品投与後 患者が時折訴える下痢、膨満感、ゴロゴロ などの消化器症状と符合する。

 それに対し、イソソルビトール+アルジネ ートナトリウム投与群は3時間後(第22群)の便 固さは、やや軟便がわずかに2匹で、他の8 は正常便で、便の間隔も不整、バラバラな のはイソソルビトール従来品と比べ少なか た事から、イソソルビトール従来品(第20群) 比べ、止瀉作用が有意に優れ(P<0.05)、消 器症状も軽かったことが推測される(P<0.01 Mann-Whitney 検定)。6時間後(第23群)には全て 動物が正常な固さの便で、その間隔は6匹が 定であり、消化器症状はイソソルビトール 来品(第21群)と比べ有意に軽かったことが分 かった(便の固さ、間隔、各々P<0.01、P<0.0 1、Mann-Whitney 検定)。

B)内リンパ水腫減荷効果
 術側における膜の伸展と面積の増加の関連
 回転毎にライスネル膜の伸展と内リンパ腔 容積変化を計測し、その結果を表39、図9に す。
IB:イソソルビトール2.8g/kg      〔単位:cm

 図9中、○:第1群(蒸留水)のIR-S vs IR-L、×: 第2群(イソソルビトール従来品3時間後)のIR-S vs IR-L、(×いりの□):第3群(イソソルビトー 従来品6時間後)のIR-S vs IR-L、(左半分が白、 右半分が黒の丸):第4群(イソソルビトール+ア ジネートナトリウム3時間後)のIR-S vs IR-L、 ▲:第3群(イソソルビトール+アルジネートナ リウム6時間後)のIR-S vs IR- L、●イソソル トール単味のIR-S vs IR-Lである。回帰直線は それぞれ、蒸留水面積=2.537+1.23*蒸留水膜;R2=0. 984、(イソソルビトール+アルジネートナトリ ム3時間)面積=2.387+0.633*(イソソルビトール+ ルジネートナトリウム3時間)膜;R2=0.651、(イ ソルビトール+アルジネートナトリウム6時間 )面積=2.62+0.69*(イソソルビトール+アルジネー ナトリウム6時間)膜;R2=0.881、(イソソルビト ル従来品3時間)面積=8.033+0.911*(イソソルビト ール従来品3時間)膜;R2=0.947、(イソソルビトー ル従来品6時間)面積=-0.797+0.855*(イソソルビト ル従来品6時間)膜;R2=0.907、イソソルビトー 単味面積=6.542+1.011*イソソルビトール単味膜; R2=0.987である。

 図9において、第20群(イソソルビトール従 来品3時間後)、第21群(イソソルビトール従来 6時間後)の回帰直線は、蒸留水を投与した 照群(第1群)の回帰直線と比較すると、下方 移動し、有意差が存在した(各々P<0.01、P< ;0.001、ANCOVA検定)。

 第22群(〈イソソルビトール+アルジネート ナトリウム〉群3時間後)、第5群(〈イソソル トール+アルジネートナトリウム〉群6時間後 )の回帰直線は、さらに下方に移動し、対照 と比較すると有意差が存在した(各々P<0.001 、P<0.001、ANCOVA検定)ことから、減荷効果が り大きいものであると分かった。〈イソソ ビトール+アルジネートナトリウム〉群と従 来品の効果を比較すると、投与後3時間(第22 )の減荷効果はイソソルビトール従来品(第20 )と比較して、有意に大きく(P<0.01、ANCOVA 定)、一方、投与後6時間が経過した第23群で 、イソソルビトール従来品(第21群)と比較す ると有意差が存在しなかった(ANCOVA検定)。

 これらの事実から、〈イソソルビトール+ア ルジネートナトリウム〉群の減荷効果は、投 与後3時間で確実に出現し(P<0.001)、6時間が 過しても効果は持続していた(P<0.001)。従 品と比較しても投与後3時間での効果が従来 品より有意に大きく(P<0.01)、作用の発現が 速であることが分かった。
 6時間後では有意差はないが、従来品と比べ 回帰直線は下方に移動しており、便の性状と 消化管内のガスの発生状況から、瀉下作用を 含め、胃腸症状の改善に成功したことが明ら かであるので、より少ない量で消化器官に負 担をかけることなく、十分な治療効果が期待 できることが予想される。

 多糖類を添加する事で糖または糖アルコ ル類を摂取することによって生じる下痢は 止できることが判ったが、この効果は糖ま は糖アルコール類と多糖類との組み合わせ 特徴的なものかどうかを検討するため、多 類と同じく乳化剤、懸濁化剤、増粘剤など して用いられるポリビニルピロリドン〔比 例6〕、ゼリー〔比較例7〕を多糖類に換え 、下痢防止効果を検討した。

 [比較例6]
〔エリスリトールとポリビニルピロリドン〕
 体重280-350gで、正常な便をしているモルモ トの左側のみに内リンパ嚢閉鎖術を施行し 「実験的内リンパ水腫モデル動物」を作成 た。術式の詳細は非特許文献8と同様である
 1ヶ月後、エリスリトール2.8g/kgにポリビニ ピロリドン0.5g/kg(約7.1重量%)を添加し経口投 し、6時間、便の性状を観察し、3時間後灌 固定して、以後同様に組織観察を行い、減 効果を判定した(表40)。結果を図10に示し、 施例2の第4群(エリスリトール2.8g/kg単味、投 後3時間で灌流)と比較した。

 図10は横軸に膜の伸展率、縦軸に面積増 率をとり、動物群毎に術側の2変数の散布図 回帰直線を示したものである。図10中、□:I R-S(エリスリトール単味3時間) vs IR-L(エリス トール単味3時間)、●:IR-S(増粘剤添加3時間)  vs IR-L(増粘剤添加3時間)である。回帰直線 それぞれ、(エリスリトール単味3時間)面積=2 .407+1.309*(エリスリトール単味3時間)膜;R2=0.974 (増粘剤添加3時間)面積=-7.511+1.659*(増粘剤添 3時間)膜;R2=0.916である。

 第4群とのあいだには有意差は認められず、 増粘剤を添加しても減荷作用は認められない ことが判った。
エリスリトール*:実施例2の第4群

 投与後2時間目には、5匹中3匹が泥状便とな 、3時間後には5匹全部が泥状便となった。 痢の程度はエリスリトール単味の場合以上 激しかった。
 図10は横軸に膜の伸展率、縦軸に面積増加 をとり、動物群毎に術側の2変数の散布図と 帰直線を示したものである。第4群とのあい だには有意差は認められず、単なる増粘剤を 添加しても減荷作用は認められないことが判 った。

 [比較例7]
〔エリスリトール、イソソルビトールとゼリ ー〕
 同じく、280-350gのモルモット10匹に、表41に すように糖または糖アルコール類としてエ スリトール又はイソソルビトールに増粘剤 してゼリーを添加し、経口投与して、便の 状を観察し、3時間後灌流固定、消化管内の 観察を行い、判定した。
エリスリトール*:実施例2の第4群
イソソルビトール*:実施例1-d、比較例4より

 エリスリトールにゼリーを添加した群では 投与後2時間目で一部の動物で軟便となり、 3時間目ですべての動物が泥状便となった。 れはエリスリトール単味と同等の激しい下 症状であった。
 イソソルビトールにゼリーを添加した群で 時間経過とともに次第に便が軟らかくなり 3時間目で約半数の動物が泥状便又は軟便と なった。この下痢は、イソソルビトール単味 の場合とほぼ同様の程度で、有意差はなく、 どちらの組み合わせにおいても、ゼリーの下 痢の防止効果は全く認められなかった。
 糖または糖アルコール類の消化器症状を改 ・防止するためには多糖類の添加が必要で ることが判った

 [参考例]
 多糖類自体に内リンパ水腫減荷効果がある どうかを組織学的に検討した。まず、5匹の モルモットの左側のみに内リンパ嚢閉鎖術を 施行し、1ヶ月後、正常な便をしていること 確認した上で多糖類であるペクチンを0.5g/kg 口投与し、3時間後灌流固定した。閉鎖術、 組織作成などの手順、及び便と組織の観察、 計測は上記と同様に行った。
 ペクチンの消化器への影響と内リンパ減荷 果

 その結果、便は5匹すべてが正常でその間隔 は一定であった。また、膜の伸展率と面積の 増加率を、実施例2と同様に散布図及び回帰 線を描き(図11)、対照群の回帰直線と比較す と、2つの直線はほぼ重なり合う結果となり 、有意差は認められなかった。このことから 多糖類自体には内リンパ水腫減荷効果は認め られない事が判った。
 図11中、○:IR-S(対照群) vs IR-L、■:IR-S(ペク チンのみ) vs IR-L(ペクチンのみ)である。回 直線はそれぞれ、IR-S(対照群)=4.011+1.212*IR-L( 照群)列1;R2=0.987、IR-S(ペクチンのみ)=3.018+1.244 *IR-L(ペクチンのみ);R2=0.979である。

 [投与薬剤の容量の減少について]
 エリスリトールを成人(体重60kg)に投与する 合、1回量は10-80g、好ましくは20-60gになると 考えられる。エリスリトール21gを粉末剤とし て投与すると、その容量は約53mlとなる。ま 、飽和水溶液として投与するなら、65mlの蒸 水を要し、その容量は78ml、重量は86gとなる 。1日3回服用するため、これを携行すること メニエール病の患者にとって大変面倒なこ であるのに対し、本発明のゲル剤は、次の おり、容量、重量ともに顕著に軽減される

 処方例1
 エリスリトール  21g
 ペクチン     3.75g
 蒸留水      11.25ml

 このゲル剤の容量は20.25ml、重量は36gとな る。このゲル剤を乾燥、粉砕すると、容量は 33mlとなり、増加するが、携帯には便利にな 。この乾燥粉砕した粉末剤粒子の大きさは 44の通り。また、服用する際に再度10mlの水 加え混和すると、ゲル剤が得られ、その容 は23mlとなった。

 処方例2
 エリスリトール  21g
 キザンタンガム  0.25g
 蒸留水      3.75ml

 このゲル剤の容量は20.25ml、重量は26.1gとな 。このゲル剤を乾燥、粉砕すると、容量は3 1.5mlとなる。この乾燥粉末剤粒子の大きさは 44の通り。また、再度3mlの水を加え混和し 得られたゲル剤の容量は24mlとなった。

 処方例1及び2のいずれもゲル剤に剤型を変 ることで、エリスリトールを飽和水溶液に た場合の容量の約4分の1、重量は3分の1に激 し、携行と服用が容易になった。
 現在我が国において一般に用いられている ソソルビド製剤は、容量30ml、重量40.5g(イソ ソルビトール含有量21g)であるのに対し、本 明のゲル剤は、容量、重量とも約3分の2とす ることができる。
 また、イソソルビド製剤の利用において患 が最も不便を感じているのは、独特の苦味 並んで、500ml(約700g)のボトル入りの液体で 運搬の困難さ、保存の煩雑さであるが、本 明のゲル剤は乾燥粉砕して粉末剤とし、ま 造粒も容易なことから、粉末剤、顆粒剤の で必要な服用回数分だけ携行できるため便 である。また、粉末剤、顆粒剤に蒸留水を えることで瞬間的にゲル剤になり、服用時 患者が希望により水を加えゲル剤にするこ で、さらに服用が便利なものとなった。