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Patent Searching and Data


Title:
WET PAPER CARRIER BELT
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/111338
Kind Code:
A1
Abstract:
Wet paper carrier belt (1) having wet paper side layer (31) in which a resin and hydrophilic fiber material (30) are contained and machine side layer (32). Base fabric (33) provided in the interior of the belt consists of a laminate of first woven fabric (34) disposed on the wet paper (W) side and second woven fabric (35) disposed on a press roll (10) side. At least a portion of the hydrophilic fiber material (30) is exposed on the surface (37) of the wet paper side layer (31). The basic weight of the first woven fabric (34) is greater than that of the second woven fabric (35). Accordingly, an improvement can be made to the first function of conveying wet paper (W) with the same stuck to the wet paper carrier belt (1) and the second function of at delivery of the wet paper (W) to the subsequent step, smoothly detaching the wet paper (W). Further, any warpage of both end portions (E) of the belt (1) in run can be inhibited.

Inventors:
SAWADA TAKESHI (JP)
INOUE KENJI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/051586
Publication Date:
September 18, 2008
Filing Date:
January 31, 2008
Export Citation:
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Assignee:
ICHIKAWA CO LTD (JP)
SAWADA TAKESHI (JP)
INOUE KENJI (JP)
International Classes:
D21F3/00; D03D1/00; D03D11/00; D03D15/00; D21F7/08
Foreign References:
JP2005146448A2005-06-09
JP2004277971A2004-10-07
JPH04185788A1992-07-02
JPH02277847A1990-11-14
JP2000110090A2000-04-18
US20020137416A12002-09-26
EP0480868A11992-04-15
JP2004277971A2004-10-07
JP2000110090A2000-04-18
Other References:
See also references of EP 2128332A4
Attorney, Agent or Firm:
MIYAJI, Atsuto (107-1 Sageto, Abiko-Sh, Chiba 38, JP)
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Claims:
 樹脂と親水性の繊維体(30)とを含んで湿紙(W)側に配置される湿紙側層(31)と、プレスロール(10)側に配置される機械側層(32)とを有するとともに内部に基布(33,33a,33b)が設けられ、クローズドドロー抄紙機(2)に使用されて前記湿紙(W)を搬送するための湿紙搬送用ベルト(1,1a,1b)であって、
 前記基布(33,33a,33b)は、前記湿紙(W)側に配置される第1の製織布(34)と、前記プレスロール(10)側に配置される第2の製織布(35)とを積層して構成され、
 前記親水性繊維体(30)の少なくとも一部が前記湿紙側層(31)の表面(37)に露出しており、前記第1の製織布(34)の坪量を前記第2の製織布(35)の坪量より大きくしたことを特徴とする湿紙搬送用ベルト。
 請求項1に記載の湿紙搬送用ベルト(1,1a,1b)であって、
 前記第1の製織布(34)および前記第2の製織布(35)のいずれか一方または両方の製織布の緯糸(36)は、吸水率の小さい材質の糸である。
 請求項2に記載の湿紙搬送用ベルト(1,1a,1b)であって、
 前記製織布(34,35)の前記緯糸(36)は、ポリエステル,芳香族ポリアミド,芳香族ポリエステルおよびポリエーテルケトンからなる群から選択された材質の糸である。
 請求項1,2または3に記載の湿紙搬送用ベルト(1)であって、前記第1の製織布(34)は二重織りで、前記第2の製織布(35)は平織りである。
 請求項1,2または3に記載の湿紙搬送用ベルト(1a)であって、前記第1の製織布(34)は三重織りで、前記第2の製織布(35)は二重織りである。
 請求項1,2または3に記載の湿紙搬送用ベルト(1b)であって、前記第1の製織布(34)は三重織りで、前記第2の製織布(35)は平織りである。
 請求項1,2または3に記載の湿紙搬送用ベルト(1,1a,1b)であって、
 前記湿紙(W)をこのベルト(1,1a,1b)に貼り付けて搬送する第1の機能と、次工程との間で前記湿紙(W)を受渡す際にこの湿紙(W)をスムーズに離脱させる第2の機能とを向上させるために、前記ベルト(1,1a,1b)の前記湿紙側層(31)に前記親水性繊維体(30)をニードルパンチで形成している。
 請求項1,2または3に記載の湿紙搬送用ベルト(1,1a,1b)であって、
 前記湿紙側層(31)の前記樹脂は高分子弾性体(39)であり、この高分子弾性体(39)は、ウレタン,エポキシおよびアクリルからなる群から選択された熱硬化性樹脂、または、ポリアミド,ポリアリレートおよびポリエステルからなる群から選択された熱可塑性樹脂であり、
 前記湿紙側層(31)は、前記高分子弾性体(39)を含む樹脂層になっている。
 請求項1,2または3に記載の湿紙搬送用ベルト(1,1a,1b)であって、
 前記基布(33,33a,33b)自体の重心(G)の上下方向に関する位置が、前記第1の製織布(34)側に移動して前記湿紙(W)側に近付いている。
 請求項9に記載の湿紙搬送用ベルト(1,1a,1b)であって、
 前記基布(33,33a,33b)の前記重心(G)の位置から前記第1の製織布(34)の上面までの寸法(L1)が、前記重心(G)の位置から前記第2の製織布(35)の下面までの寸法(L2)より小さくなっている。
 請求項9に記載の湿紙搬送用ベルト(1,1a,1b)であって、
 このベルト(1,1a,1b)が走行すると、このベルト(1,1a,1b)の両端部(E)が前記湿紙(W)から離れる方向に反る本来の性質と、張力により前記ベルト(1,1a,1b)の前記両端部(E)が前記湿紙(W)側に近づく方向に反る作用とが、互いに打ち消し合う。
 請求項1,2または3に記載の湿紙搬送用ベルト(1,1a,1b)であって、
 前記湿紙側層(31)を構成する湿紙側バット層(38)と、前記機械側層(32)を構成する機械側バット層(40)は、ステープルファイバーにより構成されており、
 前記湿紙側バット層(38)の前記ステープルファイバーとして親水性繊維体(30)が使用されており、
 前記機械側バット層(40)の前記ステープルファイバーとして、前記親水性繊維体(30)よりも公定水分率の低い繊維が使用されている。
 請求項7に記載の湿紙搬送用ベルト(1,1a,1b)であって、
 このベルト(1,1a,1b)に前記湿紙(W)を貼り付けて搬送する前記第1の機能を十分に発揮するために、前記湿紙側層(31)の前記親水性繊維体(30)は、ナイロン,ビニロン,アセテート,レーヨン,ポリノジック,キュプラ,綿,麻,絹および羊毛からなる親水性繊維の群から選択される。
 請求項13に記載の湿紙搬送用ベルト(1,1a,1b)であって、
 前記親水性繊維体(30)における繊維の表面には、マーセライズ加工,樹脂加工,電離放射線照射によるスパッタリング,およびグロー放電加工からなる群から選択された一つの親水処理が施されている。
 請求項14に記載の湿紙搬送用ベルト(1,1a,1b)であって、
 前記親水性繊維体(30)における前記繊維の表面に前記親水処理を行う場合に、この親水処理を施されたモノフィラメントまたは紡績糸の水分が30~50%になるように調湿した条件下で、水との接触角を30度以下にしている。
 請求項12に記載の湿紙搬送用ベルト(1,1a,1b)であって、
 前記機械側バット層(40)は、前記プレスロール(10)に接触するのでナイロン繊維を主成分としており、
 前記機械側バット層(40)に使用される繊維体(41)は、前記湿紙側バット層(38)の前記親水性繊維体(30)より親水性の低い繊維で、且つこの親水性繊維体(30)に対する公定水分率の差が4%以上になる繊維で構成されている。
 請求項16に記載の湿紙搬送用ベルト(1,1a,1b)であって、
 前記機械側バット層(40)の前記繊維体(41)は、ビニリデン,ポリ塩化ビニル,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリエステル,芳香族ポリアミド,ポリウレタンおよびアクリルからなる繊維群の中から選択される。
 請求項12に記載の湿紙搬送用ベルト(1,1a,1b)であって、
 前記湿紙側層(31)を構成する前記湿紙側バット層(38)の坪量は、50~600g/m 2 の範囲で、前記機械側層(32)を構成する前記機械側バット層(40)の坪量は、0~600g/m 2 の範囲で、それぞれ適宜設定されている。
Description:
湿紙搬送用ベルト

 本発明は、クローズドドロー抄紙機に使 されて湿紙を高速で搬送するための湿紙搬 用ベルトに関する。

 紙の原料から水分を除去する抄紙機は、ワ ヤーパートとプレスパートとドライヤーパ トとを備えている。これらワイヤーパート, プレスパートおよびドライヤーパートは、湿 紙の搬送方向に沿ってこの順番に配置されて いる。
 抄紙機には、オープンドローにて湿紙の受 しを行うタイプのものがある。このオープ ドロー抄紙機はベルトで湿紙を支持してい い。その結果、湿紙の受渡し部分で紙切れ どが発生しやすいので、抄紙機の高速化が 難であった。
 このため、近年は、クローズドドローにて 紙の受渡しを行うタイプが主流になってい 。このクローズドドロー抄紙機では、湿紙 送用ベルトに湿紙を載置した状態で搬送し 湿紙の受渡しを行う。その結果、抄紙機の 速化や作業の安定化が可能になる。
 このようなクローズドドロー抄紙機におい 、湿紙は、ワイヤーパート,プレスパートお よびドライヤーパートの順に次々と受け渡さ れながら搬送される。プレスパートでは、湿 紙は、湿紙搬送用ベルトで搬送されるととも にプレス装置で水分を搾り出され(搾水され) その後、ドライヤーパートで乾燥される。

 本出願人は、特開2004-277971号公報で、湿紙 貼り付けて搬送する第1の機能と、次工程に 紙を渡す際に湿紙をスムーズに離脱させる 2の機能とを兼ね備えた湿紙搬送用ベルトを 提案している。この湿紙搬送用ベルトにおい て、湿紙側層は高分子弾性部と繊維体とから なり、この繊維体は、親水性で一部が表面に 露出している。
 湿紙側層の表面から露出した親水性の繊維 が、湿紙からの水を保持するので、湿紙搬 用ベルトに湿紙を貼り付けて搬送する第1の 機能が発揮される。また、繊維体の一部が湿 紙側層の表面から露出しているので、次工程 に湿紙を渡す際にこの湿紙をスムーズに離脱 させる第2の機能が発揮される。

 通常、湿紙搬送用ベルトの幅寸法は、プレ 部やガイドローラなどの幅寸法とほぼ同一 なるように構成されている。しかし、この ルトが、抄紙機を走行してプレス部やガイ ローラなどを周回するときに、プレス部と イドローラとの間やガイドローラとガイド ーラとの間で、このベルトの両端部(ベルト の走行方向に対する、ベルトの左右両端部) よびその近傍にいわゆる「反り」が発生す ことがある。
 このベルトの反りは「バイメタル現象」と 言われており、ベルトの両端部およびその 傍が下方に曲がったり上方に曲がったりす 。湿紙搬送用ベルトにこの反りが起きると 抄紙機における湿紙搬送用ベルトの高速走 が困難になってしまう。
 そこで、本出願人は、特開2000-110090号公報 、抄紙用ベルトにおいて、このベルト端縁 のカール(反り)を減少させる提案を行なって いる。

特開2004-277971号公報

特開2000-110090号公報

 特開2004-277971号公報に記載の湿紙搬送用ベ トは、前記二つの機能を両立させているが 走行中の湿紙搬送用ベルトの両端部および の近傍の反りを抑制するための対策は採ら ていなかった。
 また、湿紙に含まれている水分の一部が、 紙側層の親水性の繊維体(たとえば、レーヨ ン繊維)に吸収されると、この繊維体が膨張 るので、湿紙搬送用ベルトの寸法が不安定 なる。特に、近年は、湿紙搬送用ベルトの 行速度が高速化しているので、親水性繊維 が吸水することによるベルト幅寸法の伸張 抑制する必要があった。

 他方、特開2000-110090号公報に記載の抄紙用 ルトでは、この抄紙用ベルトは樹脂層の方 にカールする傾向があるから、抄紙用ベル を構成する樹脂層の幅方向両端部を中央部 りも薄く形成することにより、抄紙用ベル 端部の反りが起こり難くなるように構成し いる。
 しかしながら、特開2000-110090号公報には、 紙用ベルトにおいて前記二つの機能を両立 せるための構成、およびベルト基布の重心 置を湿紙側に近付けるという技術的思想に いては、いずれも開示されていなかった。

 本発明は、このような課題を解決するた になされたもので、湿紙を湿紙搬送用ベル に貼り付けて搬送する第1の機能と、次工程 との間で湿紙を受渡す際に湿紙をスムーズに 離脱させる第2の機能とを向上させることが き、且つ、走行中の湿紙搬送用ベルトの両 部およびその近傍の反りを抑制することが きる湿紙搬送用ベルトを提供することを目 とする。

 湿紙搬送用ベルトの湿紙側層は、高分子弾 体など樹脂を含む樹脂層になっている。そ ため、特開2000-110090号公報にも記載されて るように、本来、湿紙搬送用ベルトが走行 ているか否かにかかわらず、ベルト両端部 湿紙側(シュー側)から離れる方向に反る性質 (傾向)がある。
 ところで、走行中の湿紙搬送用ベルトには このベルトを走行方向に引っ張るための張 がかかっている。この張力の大部分は、ベ トの強度を確保するための基布にかかって る。基布にかかる張力の中心は、基布の重 位置に概略一致することになる。
 そこで、本発明者は、走行中の湿紙搬送用 ルトの基布にかかる張力と、この張力が作 する基布の重心位置との関係により、湿紙 送用ベルトの走行中に、ベルト両端部およ その近傍に反りが発生する場合がある点に 目した。
 すなわち、本発明者の実験では、ベルトの 布自体の重心の上下方向に関する位置を湿 側に近付けた(すなわち、プレスロール側か ら離した)構成の湿紙搬送用ベルトを使用し 。すると、走行中の湿紙搬送用ベルトの基 にかかる張力の中心は湿紙側に偏るので、 紙搬送用ベルトの両端部およびその近傍が 紙側に反ることが分かった。
 したがって、湿紙搬送用ベルトが走行する 、その両端部が湿紙から離れる方向に反る 来の性質と、湿紙搬送用ベルトの両端部お びその近傍が湿紙側に反る作用とが打ち消 合う(すなわち、相殺される)ことになる。 の結果、走行中の湿紙搬送用ベルトの両端 およびその近傍の反りが抑制される。
 特に、複数枚の製織布を重ね合わせて構成 れるラミネート構造の基布において、湿紙 に配置される上布には坪量の大きい製織布 用い、プレスロール側に配置される下布に 坪量の小さい製織布を用いる。
 そして、これら上布と下布を積層して基布 形成すると、基布自体の重心は上布内に位 する(すなわち、湿紙側に近付く)ことにな 。したがって、この基布を有する湿紙搬送 ベルトは、走行する際にベルト両端部およ その近傍の反りがなくなる。

 上述の目的を達成するため、本発明にかか 湿紙搬送用ベルトは、樹脂と親水性の繊維 とを含んで湿紙側に配置される湿紙側層と プレスロール側に配置される機械側層とを するとともに内部に基布が設けられ、クロ ズドドロー抄紙機に使用されて前記湿紙を 送するためのベルトである。
 前記基布は、前記湿紙側に配置される第1の 製織布と、前記プレスロール側に配置される 第2の製織布とを積層して構成されている。 記親水性繊維体の少なくとも一部は、前記 紙側層の表面に露出している。そして、前 第1の製織布の坪量を前記第2の製織布の坪量 より大きくしている。
 好ましくは、前記第1の製織布および前記第 2の製織布のいずれか一方または両方の製織 の緯糸は、吸水率の小さい材質の糸である 本発明で使用する製織布の緯糸は、ポリエ テル,芳香族ポリアミド,芳香族ポリエステル およびポリエーテルケトンからなる群から選 択された材質の糸であるのが好ましい。
 好ましい一例として、前記第1の製織布は二 重織りで、前記第2の製織布は平織りである 他の例として、前記第1の製織布は三重織り 、前記第2の製織布は二重織りであってもよ い。さらに他の例として、前記第1の製織布 三重織りで、前記第2の製織布は平織りであ てもよい。

 好ましくは、前記湿紙をこの湿紙搬送用ベ トに貼り付けて搬送する第1の機能と、次工 程との間で前記湿紙を受渡す際にこの湿紙を スムーズに離脱させる第2の機能とを向上さ るために、前記湿紙搬送用ベルトの前記湿 側層に前記親水性繊維体をニードルパンチ 形成している。
 好ましくは、前記湿紙側層の前記樹脂は高 子弾性体であり、この高分子弾性体は、ウ タン,エポキシおよびアクリルからなる群か ら選択された熱硬化性樹脂、または、ポリア ミド,ポリアリレートおよびポリエステルか なる群から選択された熱可塑性樹脂であり 前記湿紙側層は、前記高分子弾性体を含む 脂層になっている。
 好ましくは、前記基布自体の重心の上下方 に関する位置が、前記第1の製織布側に移動 して前記湿紙側に近付いている。前記基布の 前記重心の位置から前記第1の製織布の上面 での寸法が、前記重心の位置から前記第2の 織布の下面までの寸法より小さくなってい 。
 好ましくは、湿紙搬送用ベルトが走行する 、このベルトの両端部が前記湿紙から離れ 方向に反る本来の性質と、張力により前記 ルトの前記両端部が前記湿紙側に近づく方 に反る作用とが、互いに打ち消し合う。
 たとえば、前記湿紙側層を構成する湿紙側 ット層と、前記機械側層を構成する機械側 ット層は、ステープルファイバーにより構 されており、前記湿紙側バット層の前記ス ープルファイバーとして親水性繊維体が使 されており、前記機械側バット層の前記ス ープルファイバーとして、前記親水性繊維 よりも公定水分率の低い繊維が使用されて る。
 好ましくは、湿紙搬送用ベルトに前記湿紙 貼り付けて搬送する前記第1の機能を十分に 発揮するために、前記湿紙側層の前記親水性 繊維体は、ナイロン,ビニロン,アセテート,レ ーヨン,ポリノジック,キュプラ,綿,麻,絹およ 羊毛からなる親水性繊維の群から選択され 。
 前記親水性繊維体における繊維の表面には マーセライズ加工,樹脂加工,電離放射線照 によるスパッタリング,およびグロー放電加 からなる群から選択された一つの親水処理 施されているのが好ましい。
 好ましくは、前記親水性繊維体における前 繊維の表面に前記親水処理を行う場合に、 の親水処理を施されたモノフィラメントま は紡績糸の水分が30~50%になるように調湿し 条件下で、水との接触角を30度以下にして る。
 たとえば、前記機械側バット層は、前記プ スロールに接触するのでナイロン繊維を主 分としており、前記機械側バット層に使用 れる繊維体は、前記湿紙側バット層の前記 水性繊維体より親水性の低い繊維で、且つ の親水性繊維体に対する公定水分率の差が4 %以上になる繊維で構成されている。
 好ましくは、前記機械側バット層の前記繊 体は、ビニリデン,ポリ塩化ビニル,ポリエ レン,ポリプロピレン,ポリエステル,芳香族 リアミド,ポリウレタンおよびアクリルから る繊維群の中から選択される。
 好ましくは、前記湿紙側層を構成する前記 紙側バット層の坪量は、50~600g/m 2 の範囲で、前記機械側層を構成する前記機械 側バット層(40)の坪量は、0~600g/m 2 の範囲で、それぞれ適宜設定されている。

 上述の構成を有する本発明にかかる湿紙 送用ベルトは、湿紙を湿紙搬送用ベルトに り付けて搬送する第1の機能と、次工程との 間で湿紙を受渡す際に湿紙をスムーズに離脱 させる第2の機能とを向上させることができ 且つ、走行中の湿紙搬送用ベルトの両端部 よびその近傍の反りを抑制することができ 。

図1ないし図8は本発明を説明するため 図である。図1は、本発明の湿紙搬送用ベル を使用したクローズドドロー抄紙機の概略 成図である。 クローズドドロー抄紙機の一部を示す 略斜視図である。 クローズドドロー抄紙機のシュープレ 機構の概略断面図である。 本発明の第1の実施形態にかかる湿紙搬 送用ベルトの断面図である。 本発明の第2の実施形態にかかる湿紙搬 送用ベルトの断面図である。 本発明の第3の実施形態にかかる湿紙搬 送用ベルトの断面図である。 湿紙搬送用ベルトの平面図である。 湿紙搬送用ベルトの性能を評価するた の実験装置の概略構成図である。

 以下、本発明にかかる湿紙搬送用ベルトに いて説明する。
 図1ないし図8は本発明を説明するための図 ある。図1は、本発明の湿紙搬送用ベルトを 用したクローズドドロー抄紙機の概略構成 、図2は、このクローズドドロー抄紙機の一 部を示す概略斜視図、図3は、このクローズ ドロー抄紙機のシュープレス機構の概略断 図である。
 図1ないし図3に示すように、紙の原料から 分を除去するクローズドドロー抄紙機(以下 抄紙機と記載)2は、ワイヤーパート(図示せ )と、プレスパート3と、ドライヤーパート4 を備えている。これらワイヤーパート,プレ スパート3およびドライヤーパート4は、この 程順で湿紙Wの搬送方向(矢印B方向)に沿って 配置されている。
 湿紙Wは、ワイヤーパート,プレスパート3お びドライヤーパート4に次々と渡されながら 搬送される。湿紙Wは、プレスパート3で搾水 れた後、最終的にはドライヤーパート4で乾 燥される。湿紙搬送用ベルト1(以下、ベルト1 と記載)は、抄紙機2のプレスパート3に設けら れて、湿紙Wを矢印B方向に搬送するのに使用 れる。
 湿紙Wは、プレスフェルト5,6,ベルト1,ドライ ヤーファブリック7にそれぞれ支持されて、 印B方向に搬送される。これらプレスフェル 5,6,ベルト1,ドライヤーファブリック7は、そ れぞれ無端状に構成された帯状体であり、ガ イドローラ8で支持されている。

 シュー9は、プレスロール10に対応した凹状 なっている。シュー9は、シュープレス用ベ ルト11を介してプレスロール10とともに、プ ス部12を構成している。
 シュープレス機構13は、プレスロール10と、 プレスロール10の上方(または、下方)に設け れたシュー9とを有している。シュープレス ベルト11が、プレスロール10とシュー9との に配置されて回転走行する。複数のシュー レス機構13を、湿紙Wの搬送方向(矢印B方向) 沿って直列に並べて配置することにより、 紙機2のプレスパート3が構成される。
 湿紙Wは、ワイヤーパート(図示せず)からプ スパート3に渡された後、プレスフェルト5 らプレスフェルト6に渡される。そして、湿 Wは、プレスフェルト6によりシュープレス 構13のプレス部12に搬送される。
 プレス部12において、湿紙Wは、プレスフェ ト6とベルト1とで挟持された状態で、シュ プレス用ベルト11を介したシュー9と、プレ ロール10とにより加圧される。その結果、湿 紙W中の水分が搾水される。
 プレスフェルト6は透水性が高く、ベルト1 透水性が低く構成されている。したがって プレス部12において、湿紙W中の水分はプレ フェルト6に移行する。湿紙Wは、こうしてプ レスパート3で搾水されるとともに表面が平 化される。

 プレス部12を脱出した直後においては、急 に圧力から開放されるので、湿紙W,プレスフ ェルト6およびベルト1の各体積が膨張する。 の膨張と、湿紙Wを構成するパルプ繊維の毛 細管現象とにより、プレスフェルト6内の一 の水分が湿紙Wに移行するいわゆる「再湿現 」が生じる。
 しかし、ベルト1は透水性が低いので、その 内部に水分を保持することは少ない。したが って、ベルト1から湿紙Wに水分が移行する再 現象はほとんど発生せず、ベルト1は湿紙W 平滑性の向上に寄与している。
 プレス部12を通過した湿紙Wは、ベルト1によ り矢印Bに示す方向に搬送される。そして、 紙Wは、サクションロール14に吸引され、ド イヤーファブリック7によりドライヤーパー 4に搬送されて乾燥される。
 ベルト1には、プレス部12を脱出した直後の 紙Wを、積極的にベルト表面に貼り付ける第 1の機能が要求される。また、ベルト1には、 工程(ここでは、ドライヤーパート4)との間 湿紙Wを受け渡す際に、湿紙Wをベルト1から ムーズに離脱(紙離れ)させる第2の機能も要 される。

 次に、ベルト1について説明する。
 図4は、本発明の第1の実施形態にかかるベ ト1の断面図である。図5は、本発明の第2の 施形態にかかる湿紙搬送用ベルト1a(以下、 ルト1aと記載)の断面図で、図4相当図である 図6は、本発明の第3の実施形態にかかる湿 搬送用ベルト1b(以下、ベルト1bと記載)の断 図で、図4相当図である。図7は、ベルト1,1a,1 bの平面図である。
 図1ないし図7において、ベルト1,1a,1bは、所 のベルト幅方向(CMD方向)の寸法Dを有し、上 に湿紙Wが載置された状態で経方向(MD方向) 走行するようになっている。そのために、 ルト1,1a,1bには、このベルトを走行方向(MD方 )に引っ張るための張力が常にかかっている 。
 ベルト1,1a,1bは、樹脂と親水性の繊維体30と 含んで湿紙W側に配置される湿紙側層31と、 レスロール10側に配置される機械側層32とを 有している。ベルト1,1a,1bの内部には、基布33 ,33a,33bが設けられている。基布33,33a.33bの両側 に、湿紙側層31と機械側層32がそれぞれ配置 れて、ベルト1,1a,1bは、全体として層状をな ている。
 なお、親水性繊維体30における「親水性」 は、水分を引き寄せる性質および/または水 を保持する性質を指している。本発明では 「親水性」の特性を、JIS L0105(繊維製品の 理試験法通則)に記載された「公定水分率」 表す。

 湿紙W側に配置される上布である第1の製織 34と、プレスロール10側に配置される下布で る第2の製織布35とを積層することにより、 ミネート構造の基布33,33a,33bが構成されてい る。また、親水性繊維体30の少なくとも一部 、湿紙側層31の表面37に露出している。
 ここで、「露出」とは、親水性繊維体30が 紙側層31の表面37に表れている状態をさすも であり、親水性繊維体30が湿紙側層31の表面 37から外方に突出しているか否かを問わない 図7は、湿紙側層31の表面37に、親水性繊維 30が露出した状態の一例を示したものである が、この状態に限定されない。
 ベルト1,1a,1bは、湿紙Wをベルト1,1a,1bに貼り けて搬送する第1の機能と、次工程との間で 湿紙Wを受渡す際に湿紙Wをスムーズに離脱さ る第2の機能とを向上させるために、ベルト 1,1a,1bの湿紙側層31に親水性繊維体30をニード パンチで形成している。

 ラミネート構造の基布33,33a,33bでは、湿紙W に配置される第1の製織布34の坪量を、プレ ロール10側に配置される第2の製織布35の坪量 より大きくしている。
 第1の製織布34と第2の製織布35を積層して、 布33,33a,33bが形成される。すると、ベルト1,1 a,1bにおける基布33,33a,33b自体の重心Gの上下方 向に関する位置が、第1の製織布34側に移動し て湿紙W側に近付くことになる。
 たとえば、ベルト1,1a,1bにおけるそれぞれの 基布33,33a,33bの重心Gの位置から第1の製織布34 上面までの寸法L1が、重心Gの位置から第2の 製織布35の下面までの寸法L2より小さくなっ いる。

 ベルト1,1a,1bの走行中には、このベルト1,1a,1 bを走行方向(MD方向)に引っ張るための張力が かっている。この張力の大部分は、ベルト1 ,1a,1bの強度を確保するための基布33,33a,33bに かることになる。
 ところが、基布33,33a,33bにかかる張力は、基 布の中心位置より湿紙W側に偏っている。そ ため、ベルト1,1a,1bには、その両端部(ベルト の走行方向(MD方向)に対する、ベルトの左右 端部)Eおよびその近傍を湿紙Wに近づけよう する力が加わる。
 他方、ベルト1,1a,1bの湿紙側層31は、高分子 性体39など樹脂を含む樹脂層になっている そのため、ベルト1,1a,1bには、このベルトが 行しているか否かにかかわらず、ベルト両 部Eが湿紙Wから離れる方向に反る本来の性 がある。
 したがって、ベルト1,1a,1bが走行すると、ベ ルト1,1a,1bの両端部Eが湿紙Wから離れる方向に 反る本来の性質と、張力によりベルト1,1a,1b 両端部Eおよびその近傍が湿紙W側に近づく方 向に反る作用とが、互いに打ち消し合う(す わち、相殺される)ことになる。その結果、 行中のベルト1,1a,1bの両端部Eおよびその近 の反りが抑制される。
 なお、図2のハッチ部は、従来の湿紙搬送用 ベルトでは走行中にベルト両端部およびその 近傍に反りが発生していた範囲を示している 。本発明の走行中のベルト1,1a,1bでは、図示 るハッチ部(ベルト両端部およびその近傍)に 反りは発生していない。

 ところで、ベルト1,1a,1bは、親水性繊維体 30の吸水作用によりベルト幅寸法Dが伸張する 傾向がある。そこで、第1の製織布34および第 2の製織布35のいずれか一方または両方の製織 布の緯糸36を、吸収率の小さい材質の糸にし いる。その結果、ベルト1,1a,1bにおけるベル ト幅寸法Dの伸張を抑制することができる。

 湿紙側層31の湿紙側バット層38は、親水性繊 維体30により構成されているので、湿紙側バ ト層38は吸水性が高くなっている。そして 湿紙側バット層38には高分子弾性体39が含浸 れており、親水性繊維体30の一部が、湿紙 層31の表面37に露出している。
 高分子弾性体39としては、ウレタン,エポキ ,アクリルなどの熱硬化性樹脂、または、ポ リアミド,ポリアリレート,ポリエステルなど 熱可塑性樹脂を適宜使用することができる このように、湿紙側層31は、高分子弾性体39 を含む樹脂層になっている。
 ベルト1,1a,1bは、その通気性がゼロであるの が好ましいが、抄紙機2によっては、ベルト1, 1a,1bに多少の通気性がある方がよい場合もあ 。この場合には、高分子弾性体39の含浸量 少なくしたり、湿紙側層31の表面37を研磨し り、連続気泡入りの高分子弾性体を使用す ば、所望の通気性が発揮される。

 湿紙側層31を構成する湿紙側バット層38と、 機械側層32を構成する機械側バット層40は、 テープルファイバーにより構成されている 湿紙側バット層38には、そのステープルファ イバーとして親水性繊維体30が使用されてい 。機械側バット層40のステープルファイバ として、親水性繊維体30よりも公定水分率の 低い繊維が使用されている。
 湿紙側バット層38は、ニードルパンチング より基布33,33a,33bの湿紙側に絡合一体化され いる。機械側バット層40は、基布33,33a,33bの 械側(プレスロール10側)に絡合一体化されて いる。なお、湿紙側バット層38を一体化させ 手段と、機械側バット層40を一体化させる 段としては、ニードルパンチングの他に、 着剤や静電気植毛などを用いて行うことも きる。

 親水性繊維体30は、公定水分率が4%以上のも のが好ましく用いられる。具体的には、親水 性繊維体30は、ナイロン(公定水分率4.5%),ビニ ロン(同5.0%),アセテート(同6.5%),レーヨン(同11. 0%),ポリノジック(同11.0%),キュプラ(同11.0%),綿( 同8.5%),麻(同12.0%),絹(同12.0%),羊毛(同15.0%)など らなる親水性繊維の群から選択される。こ で、かっこ内の数値は公定水分率である。
 公定水分率が4.0%未満の繊維を用いた場合に は、湿紙Wからの水分が十分に保持されなく るので、ベルト1,1a,1bに湿紙Wを貼り付けて搬 送する第1の機能を十分に発揮することがで ない。

 後述する実施例,比較例では、湿紙側バット 層38と機械側バット層40に、レーヨン繊維ま はナイロン繊維を使用した場合を示してい 。
 親水性繊維体30として、繊維の表面に化学 な親水処理を施したものを使用することも きる。具体的には、マーセライズ加工,樹脂 工,電離放射線照射によるスパッタリング, ロー放電加工などを行なったものがある。
 なお、親水処理を行う場合に、この親水処 を施されたモノフィラメントまたは紡績糸 水分が30~50%になるように調湿した条件下で 水との接触角が30度以下であると、良好な 果を得ることができる。また、前記モノフ ラメントまたは紡績糸の水分のパーセンテ ジは、(水/全体重量)×100の式で算出される。

 湿紙側バット層38に高分子弾性体39を含浸し て硬化させた後、湿紙側バット層38の表面を ンドペーパーや砥石などで研磨する。この 磨の際に、親水性繊維体30の繊維がフィブ ル化(細片化)されるのを防止するためには、 親水性繊維体30は、0.8g/dtex以上の強度がある が望ましい。
 その結果、湿紙側層31の表面37に、親水性繊 維体30の少なくとも一部が露出することにな 。したがって、ベルト1,1a,1bは、次工程に湿 紙Wを渡す際に、湿紙Wをスムーズに離脱させ 第2の機能を発揮する。

 機械側バット層40に使用される繊維体41は、 湿紙側バット層38の親水性繊維体30より親水 の低いもの、すなわち公定水分率の低い繊 で構成されている。具体的には、親水性繊 体30に対する公定水分率の差が4%以上になる 維を選択するとよい。
 これとは別に、繊維体41としては、公定水 率の低いビニリデン(公定水分率0%),ポリ塩化 ビニル(同0%),ポリエチレン(同0%),ポリプロピ ン(同0%),ポリエステル(同0.4%),芳香族ポリア ド(同0.4%),ポリウレタン(同1.0%),アクリル(同2. 0%)などからなる繊維群の中から選択してもよ い。
 機械側バット層40はプレスロール10に接触す るので、耐摩耗性に優れているナイロン繊維 を主成分とし、他の繊維と混合したものを、 機械側バット層40に使用することができる。

 湿紙側層31を構成する湿紙側バット層38の坪 量は、50~600g/m 2 の範囲で、機械側層32を構成する機械側バッ 層40の坪量は、0~600g/m 2 の範囲で、それぞれ適宜設定するのが好まし い。
 基布33,33a,33bは、第1の製織布34と第2の製織 35とを積層して構成されている。第1の製織 34と第2の製織布35は、MD方向の経糸42と、CMD 向の緯糸36とを織成することにより得られた 製織布である。

 第1製織布34と第2の製織布35のいずれか一方 たは両方の製織布の緯糸36は、吸水率の小 いポリエステル,芳香族ポリアミド,芳香族ポ リエステルおよびポリエーテルケトンからな る群から選択された材質の糸である。
 このようにすれば、湿紙側バット層38を構 する親水性繊維体30の吸水作用によるベルト 幅寸法Dの伸張を、抑制することができる。

 第1の製織34と第2の製織布35は、それぞれ以 に示すような平織り,二重織りおよび三重織 りのうちいずれかの組織を有している。また 、第1の製織布34の坪量を、第2の製織布35の坪 量より大きくしている。
 ベルト1,1a,1bを製造する際には、ニードル機 械が使用される。この場合、第1の製織布34と 第2の製織布35とを積層して、基布33,33a,33bを 成する。次いで、湿紙側バット層38をニード ルパンチする際には、積層構造の基布33,33a,33 bをニードル機械のガイドロールに沿って走 させながらニードルパンチする。このとき 基布の下布(第2の製織布35)がガイドロールに 接するので、下布の寸法の伸びに合わせて、 基布の上布(第1の製織布34)が伸張する必要が る。

 しかも、上布(第1の製織布34)の坪量が、下 (第2の製織布35)の坪量より大きいので、坪量 の小さい下布が上布より伸張しやすくなる。 その結果、湿紙側バット層38をニードルパン する際に下布に弛みが生じてしまい、この みがニードル機械のガイドロールと接触す と、このガイドロールの押圧力で下布に皴 生じる恐れがある。
 そこで、本発明では、まず、ニードル機械 上布(第1の製織布34)を掛け入れた後、この 布の上に下布(第2の製織布35)を積層して基布 33,33a,33bを形成し、下布(第2の製織布35)の上に 機械側バット層40をニードルパンチする。
 次いで、この積層基布33,33a,33bの表裏を反転 してから、上布(第1の製織布34)の上部に湿紙 バット層38をニードルパンチする。
 このようにすれば、坪量の小さい下布の皴 発生を抑制することができる。また、上布 下布(第1の製織布34と第2の製織布35)の各経 向の寸法を互いに一致させることができる
 本発明では、このようないわゆる「たけあ せ」ができるので、第1の製織布34と第2の製 織布35の経方向の位置ずれのない良好な構成 基布33,33a,33bを得ることができる。

 基布において、第1の製織布34の坪量を、第2 の製織布35の坪量より大きく構成するための つのケース(基布33の場合)としては、上布( 1の製織布34)は二重織りで、下布(第2の製織 35)は平織りの場合がある(図4)。
 別のケース(基布33aの場合)として、上布(第1 の製織布34)は三重織りで、下布(第2の製織布3 5)は二重織りの場合がある(図5)。
 さらに別のケース(基布33bの場合)として、 布(第1の製織布34)は三重織りで、下布(第2の 織布35)は平織りの場合がある(図6)。

 下記に示す具体的な実施例1~3および比較例1 ~6について、実験装置20で実験した。図8は、 紙搬送用ベルトの性能を評価するための実 装置20の概略構成図である。
 実験装置20は、プレス部PPを形成する一対の プレスロールPR,PRと、プレスロールPR,PRに挟 されるプレスフェルトPFと、ベルト1,1a,1bと より構成されている。
 プレスフェルトPFとベルト1,1a,1bは、複数の イドローラGRにより、一定の張力を保ちつ 支持されている。プレスフェルトPFとベルト 1,1a,1bは、プレスロールPRの回転動作に従って 連れ回りする。ドライヤーファブリックDFは プレスフェルトPF,ベルト1,1a,1bと同様に、無 端状に構成され、ガイドローラに支持されな がら走行する。

 実験装置20において、湿紙Wは、プレス部PP りも上流側に位置するベルト1,1a,1b上に載置 れる。湿紙Wは、ベルト1,1a,1bにより搬送さ て、プレス部PPを通過した後、サクションロ ールSRまで到達する。すると、湿紙Wは、サク ションロールSRの吸引によりドライヤーファ リックDFに渡される。
 なお、実験装置20における、ベルト1,1a,1bのM D方向の走行速度としては、クローズドドロ 抄紙機の高速化に合わせて、2,000m/minで走行 るように調整してある。
 また、実験装置20において、ベルト1,1a,1bのC MD方向の幅寸法Dは、プレス部PPおよびガイド ーラGRの幅寸法よりも長くなるように構成 れている。実験装置20のプレス部PPの上流側 ら、ベルト1,1a,1bの両端部Eおよびその近傍 反りの有無や状態を観察することができる

基布33,33a,33bの内容:
(A)組織と坪量
 1.平織り・・・坪量 100~400(g/m 2 )
 2.二重織り・・坪量 400~700(g/m 2 )
 3.三重織り・・坪量 500~900(g/m 2 )
(B)糸材(経糸42と緯糸36)
 1.モノフィラメントやマルチフィラメント
 2.モノフィラメントの撚糸
 3.マルチフィラメントの撚糸
 4.モノフィラメントとマルチフィラメント 一緒に撚った混撚糸
(C)糸(経糸42と緯糸36)の材質
 1.ナイロン
 2.ポリエステル(特に、ポリエチレンテレフ ラート(PET))
 3.芳香族ポリアミド
 4.芳香族ポリエステル
 5.ポリエーテルケトン
(D)基布の積層構成(上布/下布)
 1.二重織り/平織り・・・(図4参照)
 2.三重織り/二重織り・・(図5参照)
 3.三重織り/平織り・・・(図6参照)
・これら基布は、上布の方が下布より坪量が 大きくなっている。

 (実施例1)
1.基布33:
・上布(第1の製織布34)は、経二重織り組織(経 糸42はナイロンのモノフィラメント撚糸、緯 36はナイロンのモノフィラメント撚糸)で坪 400g/m 2
・下布(第2の製織布35)は、1/1平織り組織(経糸 42はナイロンのマルチフィラメント撚糸、緯 36はPETの単糸)で坪量200g/m 2
2.バット層:
 湿紙側バット層38には、親水性繊維体30であ るレーヨン繊維をニードルパンチで坪量600/m 2 で形成した。機械側バット層40には、ナイロ 繊維をニードルパンチで坪量250/m 2 で形成した。
3.高分子弾性体39の含浸:
 上述のようにして形成したニードルパンチ のフェルトの湿紙側バット層に、ウレタン 脂を含浸量500g/m 2 で含浸した。
4.実験装置20による実験:
・実験開始直後の湿紙搬送用ベルトの寸法( 行方向および幅方向)を100とし、実験100時間 のベルト寸法を計測して、ベルト寸法の変 を評価した。
・実験後の寸法変化:走行方向(1.2%伸張)、幅 向(1.0%伸張)
・ベルト両端部Eおよびその近傍の反りの有 :反りはなかった。

 (実施例2)
1.基布33a:
・上布(第1の製織布34)は、経三重織り組織(経 糸はナイロンのモノフィラメント撚糸、緯糸 はPETの単糸)で坪量600g/m 2
・下布(第2の製織布35)は、経二重織り組織(経 糸はナイロンのモノフィラメント撚糸、緯糸 はナイロンの単糸)で坪量400g/m 2
2.バット層:実施例1と同じ。
3.高分子弾性体39の含浸:実施例1と同じ。
4.実験装置20による実験:
・実験後の寸法変化:走行方向(1.2%伸張)、幅 向(0.6%伸張)
・ベルト両端部Eおよびその近傍の反りの有 :反りはなかった。

 (実施例3)
1.基布33b:
・上布(第1の製織布34)は、経三重織り組織(経 糸はナイロンのモノフィラメント撚糸、緯糸 はPETの単糸)で坪量600g/m 2
・下布(第2の製織布35)は、1/1平織り組織(経糸 はナイロンのマルチフィラメント撚糸、緯糸 はPETの単糸)で坪量200g/m 2
2.バット層:実施例1と同じ。
3.高分子弾性体39の含浸:実施例1と同じ。
4.実験装置20による実験:
・実験後の寸法変化:走行方向(1.2%伸張)、幅 向(0.4%伸張)
・ベルト両端部Eおよびその近傍の反りの有 :反りはなかった。

 (比較例1)
1.基布:
・上布(湿紙側の製織布)は、経二重織り組織( 経糸はナイロンのモノフィラメント撚糸、緯 糸はナイロンのモノフィラメント撚糸)で坪 400g/m 2
・下布(プレスロール側の製織布)は、1/1平織 組織(経糸はナイロンのマルチフィラメント 撚糸、緯糸はナイロンの単糸)で坪量200g/m 2
2.バット層:実施例1と同じ。
3.高分子弾性体の含浸:実施例1と同じ。
4.実験装置20による実験:
・実験後の寸法変化:走行方向(1.2%伸張)、幅 向(2.0%伸張)
・ベルト両端部Eおよびその近傍の反りの有 :反りはなかった。

 (比較例2)
1.基布:
・上布(湿紙側の製織布)は、経三重織り組織( 経糸はナイロンのモノフィラメント撚糸、緯 糸はナイロンのモノフィラメント撚糸)で坪 600g/m 2
・下布は使用しない。
2.バット層:実施例1と同じ。
3.高分子弾性体の含浸:実施例1と同じ。
4.実験装置20による実験:
・実験後の寸法変化:走行方向(1.2%伸張)、幅 向(2.5%伸張)
・ベルト両端部Eおよびその近傍の反りの有 :反りはなかった。

 (比較例3)
1.基布:
・上布(湿紙側の製織布)は、経二重織り組織( 経糸はナイロンのモノフィラメント撚糸、緯 糸はナイロンのモノフィラメント撚糸)で坪 400g/m 2
・下布(プレスロール側の製織布)は、1/1平織 組織(経糸はナイロンのマルチフィラメント 撚糸、緯糸はナイロンの単糸)で坪量200g/m 2
2.バット層:
 湿紙側バット層には、ナイロン繊維をニー ルパンチで坪量600/m 2 で形成した。ロール側バット層には、ナイロ ン繊維をニードルパンチで坪量250/m 2 で形成した。
3.高分子弾性体の含浸:実施例1と同じ。
4.実験装置20による実験:
・実験後の寸法変化:走行方向(1.0%伸張)、幅 向(0.5%伸張)
・ベルト両端部Eおよびその近傍の反りの有 :反りはなかった。

 (比較例4)
1.基布:
・上布(湿紙側の製織布)は、1/1平織り組織(経 糸はナイロンのマルチフィラメント撚糸、緯 糸はPETの単糸)で坪量200g/m 2
・下布(プレスロール側の製織布)は、経二重 り組織(経糸はナイロンのモノフィラメント 撚糸、緯糸はナイロンのモノフィラメント撚 糸)で坪量400g/m 2
2.バット層:実施例1と同じ。
3.高分子弾性体の含浸:実施例1と同じ。
4.実験装置20による実験:
・実験後の寸法変化:走行方向(1.2%伸張)、幅 向(1.0%伸張)
・ベルト両端部Eおよびその近傍の反りの有 :反りの発生を確認した。

 (比較例5)
1.基布:
・上布(湿紙側の製織布)は、経二重織り組織( 経糸はナイロンのモノフィラメント撚糸、緯 糸はナイロンの単糸)で坪量400g/m 2
・下布(プレスロール側の製織布)は、経三重 り組織(経糸はナイロンのモノフィラメント 撚糸、緯糸はPETの単糸)で坪量600g/m 2
2.バット層:実施例1と同じ。
3.高分子弾性体の含浸:実施例1と同じ。
4.実験装置20による実験:
・実験後の寸法変化:走行方向(1.2%伸張)、幅 向(0.6%伸張)
・ベルト両端部Eおよびその近傍の反りの有 :反りの発生を確認した。

 (比較例6)
1.基布:
・上布(湿紙側の製織布)は、1/1平織り組織(経 糸はナイロンのマルチフィラメント撚糸、緯 糸はPETの単糸)で坪量200g/m 2
・下布(プレスロール側の製織布)は、経三重 り組織(経糸はナイロンのモノフィラメント 撚糸、緯糸はPETの単糸)で坪量600g/m 2
2.バット層:実施例1と同じ。
3.高分子弾性体の含浸:実施例1と同じ。
4.実験装置20による実験:
・実験後の寸法変化:走行方向(1.2%伸張)、幅 向(0.4%伸張)
・ベルト両端部Eおよびその近傍の反りの有 :反りが顕著で、ベルトを走行速度2,000m/minで 走行するように調整することができなかった 。

 実験装置20を使用した実験によれば、比 例1~3にかかる湿紙搬送用ベルトと比べて、 施例1~3にかかる基布33,33a,33bを使用したベル 1,1a,1bは、湿紙側バット層に親水性繊維体で あるレーヨン繊維を設けても、この親水性繊 維体の吸水作用によるベルト幅寸法Dの伸張 抑制することができる。

 すなわち、比較例1~3にかかる湿紙搬送用ベ トにおけるベルト幅寸法Dの伸張が0.5~2.5%で るのに対して、実施例1~3にかかるベルト1,1a ,1bのベルト幅寸法Dの伸張は、0.4~1.0%であり抑 制されていることが分かる。
 なお、比較例3にかかる湿紙搬送用ベルトは 、幅方向の寸法安定性は良いが、湿紙搬送用 ベルトとしての機能が不十分であることが本 実験から判明した。すなわち、湿紙Wを湿紙 送用ベルトに貼り付けて搬送する第1の機能 、次工程との間で湿紙を受け渡す際に湿紙 スムーズに離脱させる第2の機能とが不十分 であった。
 これに対して、実施例1~3にかかるベルト1,1a ,1bは、上述の第1の機能と第2の機能を良好に 揮することが本実験から判明した。

 比較例4~6にかかる湿紙搬送用ベルトは、上 (湿紙側の製織布)より下布(プレスロール側 製織布)の方が坪量が大きいので、ベルト両 端部Eおよびその近傍に反りが発生している
 これに対して、実施例1~3にかかるベルト1,1a ,1bは、上布(第1の製織布34)の方が下布(第2の 織布35)より坪量が大きいので、走行中のベ ト1,1a,1bの両端部Eおよびその近傍の反りを抑 制できることが、本実験から判明した。
 すなわち、実施例1~3にかかる基布33,33a,33bを 使用したベルト1,1a,1bは、比較例4~6にかかる 紙搬送用ベルトと比べて、走行中にベルト 端部Eおよびその近傍の反りを顕著に改善で ることが判明した。その結果、ベルト1,1a,1b は、高速走行が可能で且つ走行安定性がよく なる。

 以上、本発明の実施形態(実施例を含む。以 下同じ)を説明したが、本発明は、上述の実 形態に限定されるものではなく、本発明の 旨の範囲で種々の変形,付加などが可能であ 。
 なお、各図中同一符号は同一または相当部 を示す。

 本発明の湿紙搬送用ベルトは、クローズ ドロー抄紙機を構成するプレスパートで湿 を搬送するベルトに適用可能である。