Login| Sign Up| Help| Contact|

Patent Searching and Data


Title:
CELL ISOLATION METHOD
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/139572
Kind Code:
A1
Abstract:
The invention is directed to a method for isolating a desired cell by selecting and applying a medium and other culture conditions to a sample which has the possibility of containing various types of cells and adding a cell volumizer simultaneously, before or after the application of the conditions. By the method, it becomes possible to conveniently and efficiently obtain an unknown useful microorganism with weak competitiveness which lives in the natural environment.

Inventors:
TSUJI TAKASHI (JP)
WADA HIDENORI (JP)
Application Number:
PCT/JP2007/059532
Publication Date:
November 20, 2008
Filing Date:
May 08, 2007
Export Citation:
Click for automatic bibliography generation   Help
Assignee:
YANAGITA TOMOTAKA (JP)
YAMASHITA KOJI (JP)
KAGEYAMA KOTARO (JP)
TSUJI TAKASHI (JP)
WADA HIDENORI (JP)
International Classes:
C12N1/02; C12N5/04
Foreign References:
JP2000079000A2000-03-21
Other References:
KOGURE K. ET AL.: "A tentative direct microscopic method for counting living marine bacteria", CAN. J. MICROBIOL., vol. 25, no. 3, 1979, pages 415 - 420, XP009070718
KOCH, R.: "Die Aetiologie der Tuberculose", BERL KLIN WOCHENSCHR, vol. 19, pages 221 - 230
MICROBES AND ENVIRONMENTS, vol. 12, no. 2, 1998, pages 41 - 56
See also references of EP 2189520A4
Attorney, Agent or Firm:
ITOH, Atsushi (1-1 Shinkawa 2-chome,Chuo-k, Tokyo 33, JP)
Download PDF:
Claims:
多種の細胞を含有する可能性のある試料に対して培地その他の培養条件を選択適用し、同適用と同時又はその前後に細胞肥大剤を加え、培養して目的とする細胞を単離する方法。
前記培養条件を多種及び/又は反復的に選択適用する、請求項1記載の方法。
前記細胞肥大剤を多種及び/又は反復的に加える、請求項1又は2記載の方法。
相互に連結又は凝集した複数の細胞を切り離して一個の細胞を分離する工程を含む、請求項1~3のいずれか一項記載の方法。
前記培養後の細胞を顕微鏡で観察し、先端内径が10~100μmのキャピラリーで一個の細胞を吸引するか、その他の保持器で一個の細胞を保持する工程を含む、請求項1~4のいずれか一項記載の方法。
Description:
細胞単離法

 本発明は、自然環境中に生息する多種・ 様な未知の有用微生物を自然環境から簡便 つ効率的に単離して取得する方法に関する 術である。特に、本発明は、自然環境中に 息する競争力の弱くまた発見が困難な未知 有用微生物を取得し、或いは微生物分布を ること等を目的とする方法に関する技術で る。

 自然環境中には多種・多様な微生物が生 し、その中には人類にとって有用な物質を ったり有害な物質を分解したりして大きな 益をもたらすものも多い。

 例えば、それらの一つが脱窒菌等の土壌微 物である。近年、窒素肥料の大量使用や輸 食料・飼料の増大等により、硝酸態窒素に る水系汚染、温室効果ガスであるN 2 O(亜酸化窒素)の発生等の環境問題が深刻にな っているが、この解決には脱窒菌が大きな役 割を期待されている。すなわち、水田土壌に は窒素肥料や生活廃水に由来するアンモニア (NH 4 + )が存在し、一部はイネにより吸収されるが 残りは硝化菌の働きでまず硝酸イオン(NO 3 - )になり、最終的には脱窒菌により窒素酸化 でなく無害な窒素ガス(N 2 )に変換されて大気中に戻される。したがっ 、硝化菌や脱窒菌の連携した作用のおかげ 水田土壌は畑土壌や草地土壌に比べて硝酸 溶脱やN 2 O等窒素酸化物の発生の少ない優良農地にな ている。しかし現在、人工の培養条件下で 窒能を示す微生物(脱窒菌)は多種知られてい るが、水田土壌で実際に機能している脱窒菌 の種類に関する信頼できる同定結果は非常に 少ない。

 このように、自然環境中の有用微生物を 得することは、環境上もまた産業上も有用 ある。しかしながら、有用微生物を単離し 培養することの困難さ故、これら有用微生 の大部分はまだ利用されていないのが実情 ある。

 例えば、自然環境から有用微生物を得る為 、従来より希釈平板法が最も広く使われて る(非特許文献1参照)。この方法は、自然環 中に生息する微生物を無菌水等に分散し、 能な限り一個の細胞ずつバラバラにし、次 これを寒天平板上に均一に塗布して増殖さ る。そして、一個の細胞から多数の細胞を 殖させて、利用可能なコロニーを形成させ という手法である。
Koch, R. (1882). Die Aetiologie derTuberculose.  Berl Klin Wochenschr 19, 221-230.

 しかしながら、当該希釈平板法では、実 には一個の細胞には分散されず数個~100個の 細胞が一つの塊を形成することが多く、その 結果、一つのコロニー中には数十種類以上の 細胞が混在することになる。コロニーが増殖 するに伴い、その中で次第に競争に弱い微生 物は死減して競争に強いもののみが生き残る ことになる。その結果、ある一定の培地では 、たとえ多数のコロニーが出現したとしても 、同じ種類のものが多くなり、得られる微生 物の種類数は非常に限定されたものとなる。 すなわち、有用であるが競争に弱い微生物は 得難いという欠点があった。

 そこで、本発明は、自然環境中に生息す 競争力の弱い未知の有用微生物を簡便かつ 率的に単離して取得する手段を提供するこ を目的とする。

 本発明者は、上記課題を解決するために 意研究した結果、新規な細胞単離手法とし 、培養条件と細胞肥大剤とを組み合わせた 離法(細胞肥大法)を開発し、以下の本発明(1 )~(5)を完成させたものである。

 本発明(1)は、多種の細胞を含有する可能 のある試料に対して培地その他の培養条件 選択適用し、同適用と同時又はその前後に 胞肥大剤を加え、培養して目的とする細胞 単離する方法である。

 本発明(2)は、前記培養条件を多種及び/又 は反復的に選択適用する、前記発明(1)の方法 である。

 本発明(3)は、前記細胞肥大剤を多種及び/ 又は反復的に加える、前記発明(1)又は(2)の方 法である。

 本発明(4)は、相互に連結又は凝集した複 の細胞を切り離して一個の細胞を分離する 程を含む、前記発明(1)~(3)のいずれか一つの 方法である。

 本発明(5)は、前記培養後の細胞を顕微鏡 観察し、先端内径が10~100μmのキャピラリー 一個の細胞を吸引するか、その他の保持器 一個の細胞を保持する工程を含む、前記発 (1)~(4)のいずれか一つの方法である。

 ここで、本特許請求の範囲及び本明細書 おける各用語の定義を説明する。「細胞」 は、生物体を構成する形態上・機能上の構 単位であり、真核細胞、原核細胞及び古細 (アルケア)のいずれをも含む。また、微生 、動物細胞、植物細胞のいずれをも包含す 概念である。「試料」は、多種の細胞を含 する可能性があるものである限り限定され 、例えば、土壌、砂、底泥、動物組織及び 織内物質、植物組織、浮遊粉塵、河川水、 水、食品、化粧品、飼料、等を挙げること できる。「培養条件」とは、細胞の外的条 を制御して人工的に生活・発育・増殖させ 操作若しくは手法に関する条件である限り に限定されず、例えば、培地等の栄養条件 pH条件、温度条件、光条件を挙げることがで きる。「選択適用」とは、取得を希望する細 胞を想定して、培養条件を適宜選択して適用 することを意味する。「細胞肥大剤」とは、 細胞分裂させずに細胞を肥大させる機能を有 する薬剤である限り特に限定されず、例えば 、抗生物質等の細胞分裂阻害剤を挙げること ができる。培養条件に関する「多種及び/又 反復的に」とは、(1)複数種の培養条件を一 適用、(2)一種の培養条件を複数回に亘って 用、(3)複数種の培養条件を複数回に亘って 用{一回につき一種の培養条件を複数回に亘 て適用すること(各回の培養条件は相違)も む}、を意味する。細胞肥大剤に関する「多 及び/又は反復的に」とは、(1)複数種の細胞 肥大剤を一回使用、(2)一種の細胞肥大剤を複 数回に亘って使用、(3)複数種の細胞肥大剤を 複数回に亘って使用{一回につき一種の細胞 大剤を複数回に亘って使用すること(各回の 胞肥大剤は相違)も含む}、を意味する。「 互に連結・・した複数の細胞」とは、細胞 又は細胞膜が相互に連結又は付着している 胞群を指し、「相互に・・凝集した複数の 胞」とは、複雑な形で絡み合った細胞叢を す。「培地に適合」とは、当該培地から盛 に栄養を吸収して細胞が増殖することを指 。

 本発明によれば、細胞肥大剤の存在下で 種の細胞(例えば微生物)を所定培地で培養 るので、所定の培養条件に適合した細胞は 殖し、細胞肥大剤に適合した細胞は細胞分 をすることなくサイズは大きくなる。これ 対し、前者に適合しない細胞は増殖せず、 者に適合しない細胞は相対的に小さいまま ある。このため、例えば、培養後に顕微鏡 観察し、サイズの大きい微生物を取得する とにより、当該培養条件及び当該細胞肥大 に適合する細胞を容易かつ効率的に取得す ことが可能となる。更に、本発明によれば 所定の培養条件及び細胞肥大剤との組み合 せにより、希釈平板法等の従来法で得たも と比較し、確実に一種類の細胞(例えば微生 )を容易かつ効率的に取得することが可能で ある。したがって、例えば、本発明で取得し た細胞(例えば微生物)を培養した場合、完全 一種類であるが故に細胞(例えば微生物)の 間の競争が無く、競争に弱い種類の細胞(例 ば微生物)も良く生育する。このように、希 望する性質を有する新規細胞を取得したい場 合、当該性質を反映した培養条件や細胞肥大 剤を適宜選択することにより、当該希望する 性質を有する新規な細胞(例えば有用微生物) 発見できる可能性が非常に高まるという効 を奏する。

 以下、細胞として微生物を例にとり、本 明の最良形態を詳述する。尚、本発明の技 的範囲は本最良形態には何ら限定されず、 えば微生物以外の他の細胞(例えば動物細胞 や植物細胞)に本発明に係る単離方法を適用 た場合でも、本発明の技術的範囲に属する とはいうまでもない。

 本法は、多種の微生物を含有する可能性 ある試料に対して培地その他の培養条件を 択適用し、同適用と同時又はその前後に細 肥大剤を加え、培養して目的とする微生物 単離する方法である。即ち、本法は、取得 希望する目的微生物との関係で、細胞肥大 及び培養条件を決定することにより、確実 当該目的微生物を容易かつ効率的に取得す ことができる点を本質とする。

 本法を詳述すると、まず目的とする性質 持つ微生物を育成(生育)しやすい培地を作 。次に有用な微生物が生息している可能性 ある試料(例えば土壌)を入手し、微生物の肥 大作用を示す細胞肥大剤(例えば、細胞分裂 止める抗生物質等の細胞分裂阻害剤)と共に の試料の少量を培地に入れて培養を開始す 。一週間程度の後、細胞分裂阻害剤のため この培地で生息可能な微生物は肥大して大 くなる。一方、この培地で育成不能な微生 の細胞は小さいままである。顕微鏡下で、 きい細胞の微生物のみをマイクロ・マニピ レーションにより可能な限り1個の細胞を1 の試験管に入れて培養し、増殖させると、 的とする性質を持つ微生物株を得ることが 来る。

 ここで、細胞肥大剤は、取得を希望する 生物との関係で当該細胞を肥大させる作用 有する限り特に限定されず、例えば、細胞 裂を止める抗生物質等の細胞分裂阻害剤を げることができる。また、細胞肥大剤は、 得を希望する微生物との関係では、濃度が い場合には当該微生物の殺菌剤として機能 、濃度が低くなると当該微生物の分裂機能 損なわせる細胞肥大剤として機能する(後者 が本発明にいう「細胞肥大剤」)。尚、当該 胞肥大剤を用いると、例えば、通常の大き の3~4倍程度の長さ又は大きさになる。そし 、細胞肥大剤が存在しない別環境に配され と、細胞肥大剤の影響が無くなり、通常通 の細胞機能を発揮する(可逆的)。具体的には 、既知化合物(抗生物質、農薬等)が使用可能 あり、ナリジクス酸、ピペミド酸、ピロミ 酸、Novobiocin、Moxifloxacin、シプロフロキサシ ン(ciprofloxacin)、ベノミル、チオファネートメ チル、チアベンダゾール、フベリダゾール、 カルベンダゾール、グリセオフルビン、ペン シクロンが例示される。例えば、ナリジクス 酸は、グラム陰性菌、ピペミド酸とピロミド 酸とNovobiocinはグラム陽性菌に有効である。 た、Moxifloxacinは桿菌に有効である。また、 数の菌種に関して共通の性質を有すること 判明している場合には、複数の細胞肥大剤 組み合わせて使用してもよい。例えば、実 例においては脱窒能を持つ菌(グラム陽性・ 性菌どちらにも存在)の取得を目的とし、こ れら両方をカバーするために3種の抗生物質 組み合わせて使用している。

 次に、使用する培地は、取得を希望する 生物に適合した培地を選択することが重要 ある。例えば、光合成を行う菌と行わない を取得する場合には、グルコース等のエネ ギー源のない培地(即ち無機的な栄養素のみ の培地)では光合成を行う菌のみが生育し、 ルコースのようなエネルギー源を含む培地 は光合成を行わない菌が生育する。尚、当 者であれば、どのような微生物の取得を希 するときにどのような培地を選択すればよ かは容易に判断可能である。参考までに、 得を希望する微生物と使用される培地との 例を表1に示す。

 

 ここで、細胞肥大剤の存在下での培養後 一個の肥大した微生物を分離取得する前に 当該培養後の微生物を予備分別処理に付し もよい。当該操作により、一個の肥大微生 を分離取得する効率を大きく向上させるこ が可能となる。また、当該予備分別処理の で、一個の微生物を分離取得することがで る場合もある。ここで、予備分別処理は、 に限定されず、例えば、濾過処理等のサイ に基づく分別処理、遠心分離等の重さに基 く分別処理の他、フローサイトメトリー処 を挙げることができる。

 そして、当該培養の結果、肥大した一個 微生物を分離取得するに際しては、把持や 引といった物理力で一個の微生物を保持可 な保持器を使用することが好適である。当 保持器の好適例としては、キャピラリーで 個の微生物を吸引可能なマイクロ・マニピ レーターを挙げることができる。ここで、 該キャピラリーは、ガラス製、鋼鉄製等で ることが好適であり、かつ、内径が10~100μm あり、30~80μmであることが好適である。こ で、「内径」とは、先端内径を意味し、顕 鏡で確認可能である。ここで、図1は、マイ ロ・マニピュレーター1を使用して肥大した 一個の微生物を保持する様子を示した図であ る。図に示すように、マイクロ・マニピュレ ーター1のキャピラリーホルダー1aは、本体部 に固定されており(図示せず)、油圧でXYZ方向 ミクロン単位で移動可能に構成されている また、当該キャピラリーホルダー1aは、注 筒1bと連結している。そして、当該注射筒1b 操作により、キャピラリーホルダー1a内は 圧・加圧状態となり、これにより当該ホル ー内部に微生物が吸引・放出される。具体 な微生物取得法を説明すると、図に示すよ に、培養後の試料をスライドグラス2上に載 た後、顕微鏡3で覗きながら試料中の肥大し た微生物を探す。この際、これまでの生きた 微生物のみを染色しての微生物一個取得法と 比較すると、微生物自体が巨大であるので発 見することが容易である。そして、このよう な肥大した微生物を発見した後は、顕微鏡を 覗きながらキャピラリーホルダー1aをXYZ方向 適宜操作し、キャピラリーホルダー1aの先 部分にあるキャピラリー1cを当該肥大した微 生物に接触させ、注射筒1bを図中の矢印方向 操作すると、当該微生物がキャピラリー1c に吸引される。

 尚、前述のように、微生物自体が肥大して るので発見は容易ではあるが、生きている 生物のみが染まる染色剤を組み合わせて使 すると、更に発見することが容易となる。 該染色剤は、生きている微生物のみが染ま 染色剤である限り特に限定されず、通常の 色剤や蛍光染色剤が使用可能である。ここ 、土壌のような固体中の微生物を得るため は、蛍光染色剤を用いることが特に好適で る。ここで、染色剤の好適例としては、エ テラーゼ基質蛍光染色剤{CFDA-AM(5-carboxyfluores cein diacetate, acetoxymethyl ester)}を挙げること できる。その他、使用可能な蛍光染色剤の を表2に挙げる(Microbes and Environments vol.12, N o.2 41-56, 1997より抜粋)。
 

 また、液体中の微生物を得るに際しては 蛍光染色剤で無く通常の染色剤でも可能で る。染色に用いられる色素(染色剤、染色薬 )としては、特に限定されず、よく知られて るものとしては、例えば、ビスマルクブラ ン、カーミン、クマシーブルー、クリスタ バイオレット、エオシン、フクシン、ヘマ キシリン、ヨウ素、マラカイトグリーン、 チルグリーン、メチレンブルー、ニュート ルレッド、ナイルブルー、ナイルレッド、 ーダミン、サフラニン、アリザリンレッドS アルシアンブルー等を挙げることができる これらは、それぞれ細胞や組織の異なった 分に反応・集中し、それらの性質の違いは 定の部位を明らかにする事に役立つ。

 加えて、採取した試料にもよるが、その まの状態では微生物同士が相互に連結して たり凝集している場合がある(土壌試料では 経験上90%程度はこの状態)。この場合、これ 微生物叢から一個の微生物を切り離したり る必要がある。当該切り離しに際しては、 イフ及び/又は針を用いると効率が良いこと 見出した。

 そして、マイクロ・マニピュレーターで 個の微生物を取得した後は、所定の培地に 種し、所定期間(例えば1~5週間)培養して増 させる。このように、完全に一種類である 故に、細胞(例えば微生物)の種間の競争が無 く、競争に弱い種類の細胞(例えば微生物)を 殖させることが可能になる。

 次に、図2を参照しながら、本法における 目的微生物の取得プロセスパターン例を挙げ ることとする。尚、ここでは、理解の容易上 、試料中に存在する微生物が「菌A」~「菌D」 の4種類であり、使用される培地が「培地イ 及び「培地ロ」の2種類であり、使用される 胞肥大剤が「細胞肥大剤α」及び「細胞肥 剤β」の2種類である、簡単なモデルを例に り説明する。また、図中、培地に関する「 」は、対象となる菌の生育に適した培地で ることを意味し、培地に関する「×」は、対 象となる菌の生育に不適な培地であることを 意味し、細胞肥大剤に関する「○」は、使用 濃度においては対象となる菌に対して細胞肥 大作用を示す薬剤であることを意味し、細胞 肥大剤に関する「×」は、使用濃度において 対象となる菌に対して毒(殺菌剤)となる薬 である(この場合は死滅又は弱体化)か、或い は対象となる菌に対して作用しない薬剤であ る(この場合は通常通り細胞分裂)ことを意味 る。

 まず、図2中の例1は、使用する細胞肥大 の種類を固定した状況で、複数種類の培地 連続的に適用することにより、最終的に菌C 単離する例である。ここで、まず第一回培 においては、菌A~菌Cに対して細胞肥大作用 示す細胞肥大剤αの存在下、菌A~菌Cの選択 地イが使用されている。この場合、菌A~菌C 、当該培地の栄養で増殖・肥大する。他方 菌Dは、培地が不適合で栄養不足のため、増 することなく死滅又は弱体化する。特に、 胞肥大剤αが毒として作用する場合には、 Dは死滅する。このように、第一回培養にお ては、菌A~菌Cが選択される。次に、第二回 養においては、菌A~菌Cに対して細胞肥大作 を示す細胞肥大剤αの存在下、菌C~菌Dの選 培地ロが使用されている。この場合、菌C~菌 Dは、当該培地の栄養で増殖し得るが、これ の内、菌Cは細胞肥大剤αに適合しているの 肥大する一方、菌Dは細胞肥大剤αに適合し いないので増殖するものの細胞は相対的に さいままである(加えて、菌Dは、第一回培養 において不適応培地に適用されていたので、 休眠等して生存している菌が仮に存在してい たとしても、当該菌数は減少しているか弱体 化している)。このように、第二回培養にお ては、菌Cが選択される結果、菌Cのみを単離 することが可能となる。

 ここで、例1においては、菌Cを確実に取 するため、各培養工程において細胞肥大剤 使用している。しかしながら、最終工程(例1 では第二回培養)で細胞肥大剤を使用する限 は、理論上、その途中の培養工程の一部又 すべてにおいて細胞肥大剤を使用しなくと よい。例えば、例1の変更例として、例1の第 一培養工程において、細胞肥大剤αを使用し い例を示す。このように、理論的には、第 培養工程で培地イにより菌A~菌Cが選択され が、菌Dは休眠又は死滅する。またこれらの 菌には肥大剤を適用しない。第二培養工程で は、培地ロにより菌Cと菌Dが生育できるが、 Dは既に死滅しているので菌Cのみが選択さ 、最終的に肥大剤αにより菌Cのみが肥大す 。

 次に、例2は、使用する培地を固定した状 況で、複数種類の細胞肥大剤を連続的に適用 することにより、最終的に菌Cを単離する例 ある。ここで、まず第一回培養においては 菌A~菌Cに適合した培地イの存在下、菌A~菌C 対して肥大作用を示す細胞肥大剤αが使用さ れている。この場合、菌A~菌Cは、当該培地の 栄養で肥大する。他方、菌Dは、培地が不適 で栄養不足のため、肥大することなく死滅 は弱体化する。特に、細胞肥大剤αが毒とし て作用する場合には、菌Dは死滅する。次に 第二回培養においては、菌A~菌Cに適合した 地イの存在下、菌C~菌Dに対して肥大作用を す細胞肥大剤βが使用されている。この場合 、菌A~菌Cは、当該培地の栄養で増殖し得るが 、これらの内、菌Aと菌Bは、(1)当該細胞肥大 βが毒として作用する菌については、死滅 は弱体化し、(2)当該細胞肥大剤βが毒として 作用しない菌については、肥大することなく 細胞分裂を行う(即ち、相対的に小さいまま) そのため、残る菌Cのみが、当該培地で更に 肥大する結果、菌Cのみを単離することが可 となる。

 次に、例3は、使用する培地と細胞肥大剤 とを絞込み、より少ない回数(本例では一回) 菌Cを単離する例である。ここで、培地とし ては、菌A~菌Cの選択培地イを採用する。他方 、細胞肥大剤としては、菌C~菌Dに対して肥大 作用を示す細胞肥大剤βを採用する。このよ に、まず、選択培地イを採用した場合、菌A ~菌Cは、当該培地の栄養で増殖し得る。他方 菌Dは、培地が不適合で栄養不足のため、増 殖することなく死滅又は弱体化する。更に、 細胞肥大剤βを採用した場合、菌C~菌Dは肥大 能であるが、前述のように、菌Dは、培地が 不適合で栄養不足のために増殖することなく 死滅又は弱体化しているので、菌Cのみが、 該培地で肥大する。その結果、菌Cのみを単 することが可能となる。

 次に、本法を用いての応用例を説明する まず、本法は、バイオレメディエーション 有用である。バイオレメディエーションと 、微生物等の働きを利用して汚染物質を分 ・無害化することによって、土壌・地下水 の環境汚染の浄化・修復を図る技術である この汚染物質の分解・無害化に係る微生物 発見を効率的に行うことができる。更に、 れら方法は、新薬を生み出す素となる微生 の発見にも有用である。特に、放線菌は医 品の素として重要な多くの有用物質を作る とが知られている。したがって、新種の放 菌を探すことは重要である。そこで、放線 のみを生育させる培地に放線菌が含まれて る土壌等を入れて、分裂阻害剤を入れて微 物を生育させると放線菌のみが肥大する。 こから一個の放線菌の細胞を本法で得て培 すると、未知のものも含めて高い効率で多 の放線菌を入手することができる。

 水田土壌中の脱窒菌は、過剰施肥による地 水の硝酸態窒素汚染を抑えたり、温室効果 非常に高いN 2 O窒素酸化物の発生を抑えたりすると考えら ている。今まで実験室レベルでは脱窒作用 示す菌の種類は多数存在することが知られ いるが、水田土壌中で実際に脱窒作用を示 ていることが判明した菌の種類は、非常に なかった。これは、従来の方法では競争に い菌しか培養できなかったためと、実際の 田土壌中で脱窒作用を示している菌を同定 きなかったからである。
 我々は0033に示すような方法で、水田土壌の 微生物叢から従来脱窒作用があると考えられ ていなかった菌に脱窒作用があることを発見 した。今後、本技術を用いれば、水田土壌か らさらに多くの新しい脱窒作用のある菌(脱 菌)を発見できるであろう。

 活発に脱窒が起こる水田土壌の室内モデル して、10mLのバイアルびんに10mL弱の土壌(東 大学田無農場水田土壌)、脱窒菌の選択的基 質(コハク酸ナトリウム約5g/L)と硝酸ナトリウ ム(約5g/L)を入れ、気相をアルゴン-アセチレ で完全にガス置換し、30度Cで嫌気的に培養 た。24時間培養後、再び基質(コハク酸ナト ウム)、硝酸ナトリウムをいずれも最終濃度 約5g/Lとなるように添加すると同時に、3種 細胞肥大剤{ナリジクス酸(80μg/g土壌)、ピペ ド酸(40μg/g土壌)、ピロミド酸(40μg/g土壌)}を 添加し、更に30度Cで嫌気的に24時間培養した この培養物に蛍光染色剤{CFDA-AM(最終濃度50μ M)}を添加し、蛍光顕微鏡(青色励起。青色光 あてる)で確認した{図3(b)}。併せて、比較例 して、細胞肥大剤を添加せずに、蛍光染色 を添加し、顕微鏡で確認した{図3(a)}。その 果、図3(a)では試料中に円形又は楕円形の微 生物細胞のみが見られたが、図3(b)では細長 て大きい細胞も見られるようになった{矢印 表記}。
 細胞肥大剤、蛍光染色剤を加えた試料から 蛍光顕微鏡下で肥大細胞をマイクロ・マニ ュレーターにより、130株(「株」は遺伝的に 均一な微生物集団)を分離した。これをLB液体 培地で1週間培養したところ、82株が生育・増 殖した。増殖が見られたものを、Giltay液体培 地で1週間培養し、ガス発生と培地の変色に り脱窒作用の有無を検定し、50株に脱窒作用 があると判定した。脱窒作用が認められた50 中の8株について増殖し、これについて、細 菌の16SrDNA塩基配列に基づいて系統解析を行 た。

 系統解析の結果、次の5種類の細菌であるこ とが判明した。 Stenotrophomonas  sp.(2株)、 Ochrobactrum anthropi (1株)、  Burkholderia cepacia. (2株)、  Pseudomonas putida. (2株)、 Pseudomonas  sp.(1株)。このうち前2種、即ち Stenotrophomonas  sp.、 Ochrobactrum anthropi. は従来脱窒作用を持たないと思われていたが 、脱窒作用を持つことが新たに分かった。 Burkholderia cepacia. 以下の3種については、従来、実験室で培養 た株に脱窒作用は認められていたが、本発 の方法の適用により具体的な水田土壌の試 から容易にその脱窒作用が確認できた。

 上記実施例を一例として、本技術は微生 を用いる、土壌のバイオレメディエーショ 、石油のバイオ脱硫、医薬品製造など広い 野の産業に応用可能で、有用微生物の単離 培養、利用に極めて有用な手段を提供する とができる。

図1は、マイクロ・マニピュレーターを 使用して肥大した一個の微生物を保持する様 子を示した図である。 図2は、本法における目的微生物の取得 プロセスパターン例である。ここでは菌Cを る為に、培地の種類と細胞肥大剤の種類を れぞれ変えて組み合わせた3つの例を提示し いる 図3は、実施例における、土壌中の微生 物に対する細胞肥大剤の効果を示した図(写 )である{図3(a)は添加前、図3(b)は添加後}。

符号の説明

1:マイクロ・マニピュレーター
1a:キャピラリーホルダー
1b:注射筒
1c:キャピラリー
2:スライドグラス
3:顕微鏡の対物レンズ