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Title:
COMPOUND, PHOTOCHROMIC MATERIAL, ELECTRONIC MATERIAL, COMPOUND PRODUCING PROCESS, PROCESS FOR PRODUCING DIMETHYL 2,3-BIS(N,N-BIS(P-ANISYL)4-AMINOPHENYLETHYNYL)FUMARATE AND PROCESS FOR PRODUCING DIMETHYL 2,3-BIS(N,N-BIS(P-ANISYL)4-AMINOPHENYLETHYNYL)MALEATE
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/098792
Kind Code:
A1
Abstract:
A novel high-performance material. In one aspect, there is provided a process for producing dimethyl 2,3-bis(N,N-bis(p-anisyl)4-aminophenylethynyl)fumarate, characterized in that dimethyl 2,3-bis(N,N-bis(p-anisyl)4-aminophenylethynyl)maleate is irradiated with light. In another aspect, there is provided a process for producing dimethyl 2,3-bis(N,N-bis(p-anisyl)4-aminophenylethynyl)maleate, characterized in that dimethyl 2,3-bis(N,N-bis(p-anisyl)4-aminophenylethynyl)fumarate is irradiated with light. Accordingly, a high-performance material can be obtained through simple procedure.

Inventors:
NISHIHARA HIROSHI (JP)
SAKAMOTO RYOTA (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/063917
Publication Date:
August 13, 2009
Filing Date:
August 01, 2008
Export Citation:
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Assignee:
UNIV TOKYO (JP)
NISHIHARA HIROSHI (JP)
SAKAMOTO RYOTA (JP)
International Classes:
C07C227/16; C07C229/44; C07F17/02; C09K9/02; H01L51/50
Other References:
HILGER A. ET AL.: "Electronic Characteristics of Arylated Tetraethynylethenes: A Cooperative Computational and Electrochemical Investigation", JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY, vol. 119, no. 9, 1997, pages 2069 - 2078
SPREITER R. ET AL.: "One- and Two- Dimensionally Conjugated Tetraethynylethenes: Structure versus Second-Order Optical Polarizabilities", JOURNAL OF PHYSICAL CHEMISTRY B, vol. 102, no. 1, 1998, pages 29 - 32
PAHADI N.K. ET AL.: "Palladium-Catalyzed Dimerization of Conjugated Diynes: Synthesis of (E)-1, 2-Divinyldiethynylethenes Having Donor and Acceptor Chromophores at the Terminus of Alkyne", JOURNAL OF ORGANIC CHEMISTRY, vol. 71, no. 3, 2006, pages 1152 - 1155
Attorney, Agent or Firm:
TATEISHI, Takuya (Property Firm5-23-12 Hon-cho,Koganei-cit, Tokyo 04, JP)
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Claims:
下記一般式(1)又は下記一般式(2)で示されることを特徴とする化合物。
[式中、R 1 、R 2 は、出現毎に同一であるか異なり、エチニル基、ブタ-1,3-ジイニル基、ヘキサ-1,3,5-トリイニル基、若しくは、1,3,5,7-テトライニル基(ここで、末端水素原子はカルボキシ基、シアノ基、スルホ基、若しくは、ホスホン基で置換されていてもよい)、又は、1以上40以下のC原子を有する、直鎖の、分岐の若しくは環状のアルキル基、アルキルエステル基、アルコキシメチル基、アルキルシロキシメチル基、アルキルエチニル基、4-アルキル-ブタ-1,3-ジイニル基、6-アルキル-ヘキサ-1,3,5-トリイニル基、若しくは、8-アルキル-オクタ-1,3,5,7-テトライニル基(ここで、アルキル基は1以上のフッ素、カルボキシ基、シアノ基、スルホ基、若しくは、ホスホン基で置換されていてもよい)、又は、6以上40以下のC原子を有する、アリール基、アリールエステル基、アリールシロキシメチル基、アリールオキシメチル基、アリールエチニル基、4-アリール-ブタ-1,3-ジイニル基、6-アリール-ヘキサ-1,3,5-トリイニル基、若しくは、8-アリール-オクタ-1,3,5,7-テトライニル基(ここで、アリール基は1以上のフッ素、カルボキシ基、シアノ基、スルホ基、若しくは、ホスホン基で置換されていてもよい)、又は、2以上40以下のC原子を有する、ヘテロアリール基、ヘテロアリールエステル基、ヘテロアリールシロキシメチル基、ヘテロアリールオキシメチル基、ヘテロアリールエチニル基、4-ヘテロアリール-ブタ-1,3-ジイニル基、6-ヘテロアリール-ヘキサ-1,3,5-トリイニル基、若しくは、8-ヘテロアリール-オクタ-1,3,5,7-テトライニル基(ここで、ヘテロアリール基は1以上のフッ素、カルボキシ基、シアノ基、スルホ基、若しくは、ホスホン基で置換されていてもよい)、又は、アセトキシメチル基、フルオロアセトキシメチル基、ヒドロキシルメチル基、カルボキシ基、シアノ基、スルホ基、若しくは、ホスホン基を表す。
R 3 、R 4 は、出現毎に同一であるか異なり、フェロセニル基、N,N-ジアリール-4-アミノフェニル基、N,N-ジアリール-3-アミノフェニル基、N,N-ジアリール-2-アミノフェニル基、4-(カルバゾル-9-イル)フェニル基、3-(カルバゾル-9-イル)フェニル基、2-(カルバゾル-9-イル)フェニル基、又は、これらの誘導体を表す。
m、nは1以上の整数値であり、同一であっても異なってもよい。]
前記R 3 、前記R 4 は、出現毎に同一であるか異なり、下記一般式(3)で示される基であることを特徴とする請求項1記載の化合物。
[式中、Ar 1 、Ar 2 は、出現毎に同一であるか異なり、6以上40以下のC原子を有するアリール基、若しくは2以上40以下のC原子を有するヘテロアリール基、又は、1以上のR 5 基により置換されている、6以上40以下のC原子を有するアリール基若しくは2以上40以下のC原子を有するヘテロアリール基を表す。
R 5 は、出現毎に同一であるか異なり、H、F、Cl、Br、I、CN、NO 2 、OH、Si(R 6 ) 3 、N(R 6 ) 2 、B(R 6 ) 2 、1以上40以下のC原子を有する、直鎖の、分岐の若しくは環状のアルキル基、アルコキシ基若しくはチオアルコキシ基(ここで、1以上の非隣接のC原子は、-CR 6 =CR 6 -、-C≡C-、NR 6 -、-O-、-S-、-CO-O-、または-O-CO-O-により置き換えられてもよく、さらに、1以上のH原子は、フッ素により置き換えられてもよい)、又は、6以上40以下のC原子を有するアリール基、2以上40以下のC原子を有するヘテロアリール基、6以上40以下のC原子を有するアリールオキシ基、若しくは2以上40以下のC原子を有するヘテロアリールオキシ基(これらは1以上のH、F、Cl、Br、I、CN、NO 2 、OH、Si(R 6 ) 3 、N(R 6 ) 2 、B(R 6 ) 2 、1以上40以下のC原子を有する、直鎖の、分岐の若しくは環状のアルキル基、アルコキシ基若しくはチオアルコキシ基(ここで、1以上の非隣接のC原子は、-CR 6 =CR 6 -、-C≡C-、NR 6 -、-O-、-S-、-CO-O-、または-O-CO-O-により置き換えられてもよく、さらに、1以上のH原子は、フッ素により置き換えられてもよい)により置換されていてもよい)を表す。2つ以上のR 5 基は、互いに、脂肪族若しくは芳香族の単環又は多環の環系を形成していてもよい。
R 6 は、出現毎に同一であるか異なり、H、1以上20以下のC原子を有する、脂肪族又は芳香族炭化水素基を表す。]
前記R 3 、前記R 4 は、出現毎に同一であるか異なり、下記一般式(4)で示される基であることを特徴とする請求項1記載の化合物。
[式中、x、yは0以上4以下の整数値。
R 5a 、R 5b は、出現毎に同一であるか異なり、H、F、Cl、Br, I, CN、NO 2 、OH、Si(R 6 ) 3 、N(R 6 ) 2 、B(R 6 ) 2 、1以上40以下のC原子を有する、直鎖の、分岐の若しくは環状のアルキル基、アルコキシ基若しくはチオアルコキシ基(ここで、1以上の非隣接のC原子は、-CR 6 =CR 6 -、-C≡C-、NR 6 -、-O-、-S-、-CO-O-、または-O-CO-O-により置き換えられてもよく、さらに、1以上のH原子は、フッ素により置き換えられてもよい)、6以上40以下のC原子を有するアリール基、2以上40以下のC原子を有するヘテロアリール基、6以上40以下のC原子を有するアリールオキシ基、若しくは2以上40以下のC原子を有するヘテロアリールオキシ基(これらは1以上のH、F、Cl、Br、I、CN、NO 2 、OH、Si(R 6 ) 3 、N(R 6 ) 2 、B(R 6 ) 2 、1以上40以下のC原子を有する、直鎖の、分岐の若しくは環状のアルキル基、アルコキシ基若しくはチオアルコキシ基(ここで、1以上の非隣接のC原子は、-CR 6 =CR 6 -、-C≡C-、NR 6 -、-O-、-S-、-CO-O-、または-O-CO-O-により置き換えられてもよく、さらに、1以上のH原子は、フッ素により置き換えられてもよい)により置換されていてもよい)を表す。2つ以上のR 5a 基同士、R 5b 基同士、若しくは、R 5a 基とR 5b 基との間に、脂肪族若しくは芳香族の単環又は多環の環系を形成していてもよい。
R 6 は、出現毎に同一であるか異なり、H、1以上20以下のC原子を有する、脂肪族または芳香族炭化水素基を表す。]
下記式(5)又は下記式(6)で示されることを特徴とする化合物。
請求項1記載の化合物を材料とすることを特徴とするフォトクロミック材料。
請求項1記載の化合物を材料とすることを特徴とする電子材料。
下記一般式(1)で示される化合物に電磁波を照射することによって下記一般式(2)で示される化合物を製造することを特徴とする化合物製造方法。
[式中、R 1 、R 2 は、出現毎に同一であるか異なり、エチニル基、ブタ-1,3-ジイニル基、ヘキサ-1,3,5-トリイニル基、若しくは、1,3,5,7-テトライニル基(ここで、末端水素原子はカルボキシ基、シアノ基、スルホ基、若しくは、ホスホン基で置換されていてもよい)、又は、1以上40以下のC原子を有する、直鎖の、分岐の若しくは環状のアルキル基、アルキルエステル基、アルコキシメチル基、アルキルシロキシメチル基、アルキルエチニル基、4-アルキル-ブタ-1,3-ジイニル基、6-アルキル-ヘキサ-1,3,5-トリイニル基、若しくは、8-アルキル-オクタ-1,3,5,7-テトライニル基(ここで、アルキル基は1以上のフッ素、カルボキシ基、シアノ基、スルホ基、若しくは、ホスホン基で置換されていてもよい)、又は、6以上40以下のC原子を有する、アリール基、アリールエステル基、アリールシロキシメチル基、アリールオキシメチル基、アリールエチニル基、4-アリール-ブタ-1,3-ジイニル基、6-アリール-ヘキサ-1,3,5-トリイニル基、若しくは、8-アリール-オクタ-1,3,5,7-テトライニル基(ここで、アリール基は1以上のフッ素、カルボキシ基、シアノ基、スルホ基、若しくは、ホスホン基で置換されていてもよい)、又は、2以上40以下のC原子を有する、ヘテロアリール基、ヘテロアリールエステル基、ヘテロアリールシロキシメチル基、ヘテロアリールオキシメチル基、ヘテロアリールエチニル基、4-ヘテロアリール-ブタ-1,3-ジイニル基、6-ヘテロアリール-ヘキサ-1,3,5-トリイニル基、若しくは、8-ヘテロアリール-オクタ-1,3,5,7-テトライニル基(ここで、ヘテロアリール基は1以上のフッ素、カルボキシ基、シアノ基、スルホ基、若しくは、ホスホン基で置換されていてもよい)、又は、アセトキシメチル基、フルオロアセトキシメチル基、ヒドロキシルメチル基、カルボキシ基、シアノ基、スルホ基、若しくは、ホスホン基を表す。
R 3 、R 4 は、出現毎に同一であるか異なり、フェロセニル基、N,N-ジアリール-4-アミノフェニル基、N,N-ジアリール-3-アミノフェニル基、N,N-ジアリール-2-アミノフェニル基、4-(カルバゾル-9-イル)フェニル基、3-(カルバゾル-9-イル)フェニル基、2-(カルバゾル-9-イル)フェニル基、又は、これらの誘導体を表す。
m、nは1以上の整数値であり、同一であっても異なってもよい。]
下記一般式(2)で示される化合物に電磁波を照射することによって下記一般式(1)で示される化合物を製造することを特徴とする化合物製造方法。
[式中、R 1 、R 2 は、出現毎に同一であるか異なり、エチニル基、ブタ-1,3-ジイニル基、ヘキサ-1,3,5-トリイニル基、若しくは、1,3,5,7-テトライニル基(ここで、末端水素原子はカルボキシ基、シアノ基、スルホ基、若しくは、ホスホン基で置換されていてもよい)、又は、1以上40以下のC原子を有する、直鎖の、分岐の若しくは環状のアルキル基、アルキルエステル基、アルコキシメチル基、アルキルシロキシメチル基、アルキルエチニル基、4-アルキル-ブタ-1,3-ジイニル基、6-アルキル-ヘキサ-1,3,5-トリイニル基、若しくは、8-アルキル-オクタ-1,3,5,7-テトライニル基(ここで、アルキル基は1以上のフッ素、カルボキシ基、シアノ基、スルホ基、若しくは、ホスホン基で置換されていてもよい)、又は、6以上40以下のC原子を有する、アリール基、アリールエステル基、アリールシロキシメチル基、アリールオキシメチル基、アリールエチニル基、4-アリール-ブタ-1,3-ジイニル基、6-アリール-ヘキサ-1,3,5-トリイニル基、若しくは、8-アリール-オクタ-1,3,5,7-テトライニル基(ここで、アリール基は1以上のフッ素、カルボキシ基、シアノ基、スルホ基、若しくは、ホスホン基で置換されていてもよい)、又は、2以上40以下のC原子を有する、ヘテロアリール基、ヘテロアリールエステル基、ヘテロアリールシロキシメチル基、ヘテロアリールオキシメチル基、ヘテロアリールエチニル基、4-ヘテロアリール-ブタ-1,3-ジイニル基、6-ヘテロアリール-ヘキサ-1,3,5-トリイニル基、若しくは、8-ヘテロアリール-オクタ-1,3,5,7-テトライニル基(ここで、ヘテロアリール基は1以上のフッ素、カルボキシ基、シアノ基、スルホ基、若しくは、ホスホン基で置換されていてもよい)、又は、アセトキシメチル基、フルオロアセトキシメチル基、ヒドロキシルメチル基、カルボキシ基、シアノ基、スルホ基、若しくは、ホスホン基を表す。
R 3 、R 4 は、出現毎に同一であるか異なり、フェロセニル基、N,N-ジアリール-4-アミノフェニル基、N,N-ジアリール-3-アミノフェニル基、N,N-ジアリール-2-アミノフェニル基、4-(カルバゾル-9-イル)フェニル基、3-(カルバゾル-9-イル)フェニル基、2-(カルバゾル-9-イル)フェニル基、又は、これらの誘導体を表す。
m、nは1以上の整数値であり、同一であっても異なってもよい。]
2,3-ジブロモフマル酸ジメチルとN,N-ビス(p-アニシル)-4-エチニルベンゼンアミンとを反応させることを特徴とする2,3-ビス(N,N-ビス(p-アニシル)4-アミノフェニルエチニル)フマル酸ジメチル製造方法。
2,3-ビス(N,N-ビス(p-アニシル)4-アミノフェニルエチニル)マレイン酸ジメチルに光を照射することを特徴とする2,3-ビス(N,N-ビス(p-アニシル)4-アミノフェニルエチニル)フマル酸ジメチル製造方法。
2,3-ビス(N,N-ビス(p-アニシル)4-アミノフェニルエチニル)フマル酸ジメチルに光を照射することを特徴とする2,3-ビス(N,N-ビス(p-アニシル)4-アミノフェニルエチニル)マレイン酸ジメチル製造方法。
Description:
化合物、フォトクロミック材料 電子材料、化合物製造方法、2,3-ビス(N,N-ビ (p-アニシル)4-アミノフェニルエチニル)フマ ル酸ジメチル製造方法、2,3-ビス(N,N-ビス(p-ア ニシル)4-アミノフェニルエチニル)マレイン ジメチル製造方法

本発明は、化合物、特にフォトクロミック 材料に関する。

有機EL(Organic Electro-Luminescence)は、薄型ディ スプレイ、照明などへ応用が期待される技術 である。現在、携帯電話などの携帯機器にも その技術は使われており、今後は薄型テレビ (液晶やプラズマディスプレイなど)に代わる 候補のディスプレイへの応用が特に期待さ ている。有機ELの市場規模は数千億円から1 円を超えることが予想され、日本、韓国、 イツの化学企業、電気家電企業、印刷企業 中心に積極的に実用化に向けた開発が活発 進められている。

トリアリールアミン系分子は、高特性の正 孔輸送材料であり、有機EL用ホール輸送層と て最もよく用いられている物質群である。

この分子を用いてさらに高機能の光・電子 材料を合成する試みはいくつか行われている 。例えば、アリーレンビニレン系パイ共役高 分子に組み込んで、有機TFT(Thin Film Transistor( 薄膜トランジスタ))用高移動度材料が合成さ 、電子アクセプターであるフラーレンと組 合わせて光電変換材料が合成されている。

しかし、それ以外の機能や物性をもつトリ アリールアミン系材料は稀であり、この分子 の特徴を生かした新たな高性能光・電子材料 の開発が期待されている。

本発明は、上述の背景技術に鑑みてなされ たものであり、新たな高性能材料を提供する ことを目的とする。

この発明によれば、上述の目的を達成する ために、特許請求の範囲に記載のとおりの構 成を採用している。以下、この発明を詳細に 説明する。

本発明の第1の側面は、
下記一般式(1)又は下記一般式(2)で示されるこ とを特徴とする化合物
[式中、R 1 、R 2 は、出現毎に同一であるか異なり、エチニル 基、ブタ-1,3-ジイニル基、ヘキサ-1,3,5-トリイ ニル基、若しくは、1,3,5,7-テトライニル基(こ こで、末端水素原子はカルボキシ基、シアノ 基、スルホ基、若しくは、ホスホン基で置換 されていてもよい)、又は、1以上40以下のC原 を有する、直鎖の、分岐の若しくは環状の ルキル基、アルキルエステル基、アルコキ メチル基、アルキルシロキシメチル基、ア キルエチニル基、4-アルキル-ブタ-1,3-ジイ ル基、6-アルキル-ヘキサ-1,3,5-トリイニル基 若しくは、8-アルキル-オクタ-1,3,5,7-テトラ ニル基(ここで、アルキル基は1以上のフッ 、カルボキシ基、シアノ基、スルホ基、若 くは、ホスホン基で置換されていてもよい) 又は、6以上40以下のC原子を有する、アリー ル基、アリールエステル基、アリールシロキ シメチル基、アリールオキシメチル基、アリ ールエチニル基、4-アリール-ブタ-1,3-ジイニ 基、6-アリール-ヘキサ-1,3,5-トリイニル基、 若しくは、8-アリール-オクタ-1,3,5,7-テトライ ニル基(ここで、アリール基は1以上のフッ素 カルボキシ基、シアノ基、スルホ基、若し は、ホスホン基で置換されていてもよい)、 又は、2以上40以下のC原子を有する、ヘテロ リール基、ヘテロアリールエステル基、ヘ ロアリールシロキシメチル基、ヘテロアリ ルオキシメチル基、ヘテロアリールエチニ 基、4-ヘテロアリール-ブタ-1,3-ジイニル基、 6-ヘテロアリール-ヘキサ-1,3,5-トリイニル基 若しくは、8-ヘテロアリール-オクタ-1,3,5,7- トライニル基(ここで、ヘテロアリール基は1 以上のフッ素、カルボキシ基、シアノ基、ス ルホ基、若しくは、ホスホン基で置換されて いてもよい)、又は、アセトキシメチル基、 ルオロアセトキシメチル基、ヒドロキシル チル基、カルボキシ基、シアノ基、スルホ 、若しくは、ホスホン基を表す。
R 3 、R 4 は、出現毎に同一であるか異なり、フェロセ ニル基、N,N-ジアリール-4-アミノフェニル基 N,N-ジアリール-3-アミノフェニル基、N,N-ジア リール-2-アミノフェニル基、4-(カルバゾル-9- イル)フェニル基、3-(カルバゾル-9-イル)フェ ル基、2-(カルバゾル-9-イル)フェニル基、又 は、これらの誘導体を表す。
m、nは1以上の整数値であり、同一であっても 異なってもよい。]
にある。

本構成によれば、電磁波による異性化が可 能な高性能材料が得られる。

なお、ここで、アリール基は、例えば、フ ェロセニル基、N,N-ジアリール-4-アミノフェ ル基、N,N-ジアリール-3-アミノフェニル基、N ,N-ジアリール-2-アミノフェニル基、4-(カルバ ゾル-9-イル)フェニル基、3-(カルバゾル-9-イ )フェニル基、2-(カルバゾル-9-イル)フェニル 基、又は、これらの誘導体でもよい。

本発明の第2の側面は、
前記R 3 、前記R 4 は、出現毎に同一であるか異なり、下記一般 式(3)で示される基であることを特徴とする請 求項1記載の化合物
[式中、Ar 1 、Ar 2 は、出現毎に同一であるか異なり、6以上40以 下のC原子を有するアリール基、若しくは2以 40以下のC原子を有するヘテロアリール基、 は、1以上のR 5 基により置換されている、6以上40以下のC原 を有するアリール基若しくは2以上40以下のC 子を有するヘテロアリール基を表す。
R 5 は、出現毎に同一であるか異なり、H、F、Cl Br、I、CN、NO 2 、OH、Si(R 6 ) 3 、N(R 6 ) 2 、B(R 6 ) 2 、1以上40以下のC原子を有する、直鎖の、分 の若しくは環状のアルキル基、アルコキシ 若しくはチオアルコキシ基(ここで、1以上の 非隣接のC原子は、-CR 6 =CR 6 -、-C≡C-、NR 6 -、-O-、-S-、-CO-O-、または-O-CO-O-により置き換 えられてもよく、さらに、1以上のH原子は、 ッ素により置き換えられてもよい)、又は、 6以上40以下のC原子を有するアリール基、2以 40以下のC原子を有するヘテロアリール基、6 以上40以下のC原子を有するアリールオキシ基 、若しくは2以上40以下のC原子を有するヘテ アリールオキシ基(これらは1以上のH、F、Cl Br、I、CN、NO 2 、OH、Si(R 6 ) 3 、N(R 6 ) 2 、B(R 6 ) 2 、1以上40以下のC原子を有する、直鎖の、分 の若しくは環状のアルキル基、アルコキシ 若しくはチオアルコキシ基(ここで、1以上の 非隣接のC原子は、-CR 6 =CR 6 -、-C≡C-、NR 6 -、-O-、-S-、-CO-O-、または-O-CO-O-により置き換 えられてもよく、さらに、1以上のH原子は、 ッ素により置き換えられてもよい)により置 換されていてもよい)を表す。2つ以上のR 5 基は、互いに、脂肪族若しくは芳香族の単環 又は多環の環系を形成していてもよい。
R 6 は、出現毎に同一であるか異なり、H、1以上2 0以下のC原子を有する、脂肪族又は芳香族炭 水素基を表す。]
にある。

本構成によれば、電磁波による異性化が可 能な高性能材料が得られる。

本発明の第3の側面は、
前記R 3 、前記R 4 は、出現毎に同一であるか異なり、下記一般 式(4)で示される基であることを特徴とする請 求項1記載の化合物
[式中、x、yは0以上4以下の整数値。
R 5a 、R 5b は、出現毎に同一であるか異なり、H、F、Cl Br, I, CN、NO 2 、OH、Si(R 6 ) 3 、N(R 6 ) 2 、B(R 6 ) 2 、1以上40以下のC原子を有する、直鎖の、分 の若しくは環状のアルキル基、アルコキシ 若しくはチオアルコキシ基(ここで、1以上の 非隣接のC原子は、-CR 6 =CR 6 -、-C≡C-、NR 6 -、-O-、-S-、-CO-O-、または-O-CO-O-により置き換 えられてもよく、さらに、1以上のH原子は、 ッ素により置き換えられてもよい)、6以上40 以下のC原子を有するアリール基、2以上40以 のC原子を有するヘテロアリール基、6以上40 下のC原子を有するアリールオキシ基、若し くは2以上40以下のC原子を有するヘテロアリ ルオキシ基(これらは1以上のH、F、Cl、Br、I CN、NO 2 、OH、Si(R 6 ) 3 、N(R 6 ) 2 、B(R 6 ) 2 、1以上40以下のC原子を有する、直鎖の、分 の若しくは環状のアルキル基、アルコキシ 若しくはチオアルコキシ基(ここで、1以上の 非隣接のC原子は、-CR 6 =CR 6 -、-C≡C-、NR 6 -、-O-、-S-、-CO-O-、または-O-CO-O-により置き換 えられてもよく、さらに、1以上のH原子は、 ッ素により置き換えられてもよい)により置 換されていてもよい)を表す。2つ以上のR 5a 基同士、R 5b 基同士、若しくは、R 5a 基とR 5b 基との間に、脂肪族若しくは芳香族の単環又 は多環の環系を形成していてもよい。
R 6 は、出現毎に同一であるか異なり、H、1以上2 0以下のC原子を有する、脂肪族または芳香族 化水素基を表す。]
にある。

本構成によれば、電磁波による異性化が可 能な高性能材料が得られる。

本発明の第4の側面は、
下記式(5)又は下記式(6)で示されることを特徴 とする化合物。
にある。

本構成によれば、電磁波による異性化が可 能な高性能材料が得られる。

本発明の第5の側面は、
請求項1記載の化合物を材料とすることを特 とするフォトクロミック材料
にある。

本発明の第6の側面は、
請求項1記載の化合物を材料とすることを特 とする電子材料
にある。

本発明の第7の側面は、
下記一般式(1)で示される化合物に電磁波を照 射することによって下記一般式(2)で示される 化合物を製造することを特徴とする化合物製 造方法。
[式中、R 1 、R 2 は、出現毎に同一であるか異なり、エチニル 基、ブタ-1,3-ジイニル基、ヘキサ-1,3,5-トリイ ニル基、若しくは、1,3,5,7-テトライニル基(こ こで、末端水素原子はカルボキシ基、シアノ 基、スルホ基、若しくは、ホスホン基で置換 されていてもよい)、又は、1以上40以下のC原 を有する、直鎖の、分岐の若しくは環状の ルキル基、アルキルエステル基、アルコキ メチル基、アルキルシロキシメチル基、ア キルエチニル基、4-アルキル-ブタ-1,3-ジイ ル基、6-アルキル-ヘキサ-1,3,5-トリイニル基 若しくは、8-アルキル-オクタ-1,3,5,7-テトラ ニル基(ここで、アルキル基は1以上のフッ 、カルボキシ基、シアノ基、スルホ基、若 くは、ホスホン基で置換されていてもよい) 又は、6以上40以下のC原子を有する、アリー ル基、アリールエステル基、アリールシロキ シメチル基、アリールオキシメチル基、アリ ールエチニル基、4-アリール-ブタ-1,3-ジイニ 基、6-アリール-ヘキサ-1,3,5-トリイニル基、 若しくは、8-アリール-オクタ-1,3,5,7-テトライ ニル基(ここで、アリール基は1以上のフッ素 カルボキシ基、シアノ基、スルホ基、若し は、ホスホン基で置換されていてもよい)、 又は、2以上40以下のC原子を有する、ヘテロ リール基、ヘテロアリールエステル基、ヘ ロアリールシロキシメチル基、ヘテロアリ ルオキシメチル基、ヘテロアリールエチニ 基、4-ヘテロアリール-ブタ-1,3-ジイニル基、 6-ヘテロアリール-ヘキサ-1,3,5-トリイニル基 若しくは、8-ヘテロアリール-オクタ-1,3,5,7- トライニル基(ここで、ヘテロアリール基は1 以上のフッ素、カルボキシ基、シアノ基、ス ルホ基、若しくは、ホスホン基で置換されて いてもよい)、又は、アセトキシメチル基、 ルオロアセトキシメチル基、ヒドロキシル チル基、カルボキシ基、シアノ基、スルホ 、若しくは、ホスホン基を表す。
R 3 、R 4 は、出現毎に同一であるか異なり、フェロセ ニル基、N,N-ジアリール-4-アミノフェニル基 N,N-ジアリール-3-アミノフェニル基、N,N-ジア リール-2-アミノフェニル基、4-(カルバゾル-9- イル)フェニル基、3-(カルバゾル-9-イル)フェ ル基、2-(カルバゾル-9-イル)フェニル基、又 は、これらの誘導体を表す。
m、nは1以上の整数値であり、同一であっても 異なってもよい。]
にある。

本構成によれば、高性能材料がシンプルな 手法で得られる。

なお、ここで、アリール基は、例えば、フ ェロセニル基、N,N-ジアリール-4-アミノフェ ル基、N,N-ジアリール-3-アミノフェニル基、N ,N-ジアリール-2-アミノフェニル基、4-(カルバ ゾル-9-イル)フェニル基、3-(カルバゾル-9-イ )フェニル基、2-(カルバゾル-9-イル)フェニル 基、又は、これらの誘導体でもよい。

本発明の第8の側面は、
下記一般式(2)で示される化合物に電磁波を照 射することによって下記一般式(1)で示される 化合物を製造することを特徴とする化合物製 造方法。
[式中、R 1 、R 2 は、出現毎に同一であるか異なり、エチニル 基、ブタ-1,3-ジイニル基、ヘキサ-1,3,5-トリイ ニル基、若しくは、1,3,5,7-テトライニル基(こ こで、末端水素原子はカルボキシ基、シアノ 基、スルホ基、若しくは、ホスホン基で置換 されていてもよい)、又は、1以上40以下のC原 を有する、直鎖の、分岐の若しくは環状の ルキル基、アルキルエステル基、アルコキ メチル基、アルキルシロキシメチル基、ア キルエチニル基、4-アルキル-ブタ-1,3-ジイ ル基、6-アルキル-ヘキサ-1,3,5-トリイニル基 若しくは、8-アルキル-オクタ-1,3,5,7-テトラ ニル基(ここで、アルキル基は1以上のフッ 、カルボキシ基、シアノ基、スルホ基、若 くは、ホスホン基で置換されていてもよい) 又は、6以上40以下のC原子を有する、アリー ル基、アリールエステル基、アリールシロキ シメチル基、アリールオキシメチル基、アリ ールエチニル基、4-アリール-ブタ-1,3-ジイニ 基、6-アリール-ヘキサ-1,3,5-トリイニル基、 若しくは、8-アリール-オクタ-1,3,5,7-テトライ ニル基(ここで、アリール基は1以上のフッ素 カルボキシ基、シアノ基、スルホ基、若し は、ホスホン基で置換されていてもよい)、 又は、2以上40以下のC原子を有する、ヘテロ リール基、ヘテロアリールエステル基、ヘ ロアリールシロキシメチル基、ヘテロアリ ルオキシメチル基、ヘテロアリールエチニ 基、4-ヘテロアリール-ブタ-1,3-ジイニル基、 6-ヘテロアリール-ヘキサ-1,3,5-トリイニル基 若しくは、8-ヘテロアリール-オクタ-1,3,5,7- トライニル基(ここで、ヘテロアリール基は1 以上のフッ素、カルボキシ基、シアノ基、ス ルホ基、若しくは、ホスホン基で置換されて いてもよい)、又は、アセトキシメチル基、 ルオロアセトキシメチル基、ヒドロキシル チル基、カルボキシ基、シアノ基、スルホ 、若しくは、ホスホン基を表す。
R 3 、R 4 は、出現毎に同一であるか異なり、フェロセ ニル基、N,N-ジアリール-4-アミノフェニル基 N,N-ジアリール-3-アミノフェニル基、N,N-ジア リール-2-アミノフェニル基、4-(カルバゾル-9- イル)フェニル基、3-(カルバゾル-9-イル)フェ ル基、2-(カルバゾル-9-イル)フェニル基、又 は、これらの誘導体を表す。
m、nは1以上の整数値であり、同一であっても 異なってもよい。]
にある。

本構成によれば、高性能材料がシンプルな 手法で得られる。

なお、ここで、アリール基は、例えば、フ ェロセニル基、N,N-ジアリール-4-アミノフェ ル基、N,N-ジアリール-3-アミノフェニル基、N ,N-ジアリール-2-アミノフェニル基、4-(カルバ ゾル-9-イル)フェニル基、3-(カルバゾル-9-イ )フェニル基、2-(カルバゾル-9-イル)フェニル 基、又は、これらの誘導体でもよい。

本発明の第9の側面は、
2,3-ジブロモフマル酸ジメチルとN,N-ビス(p-ア シル)-4-エチニルベンゼンアミンとを反応さ せることを特徴とする2,3-ビス(N,N-ビス(p-アニ シル)4-アミノフェニルエチニル)フマル酸ジ チル製造方法。
にある。

本構成によれば、高性能材料がシンプルな 手法で得られる。

本発明の第10の側面は、
2,3-ビス(N,N-ビス(p-アニシル)4-アミノフェニル エチニル)マレイン酸ジメチルに光を照射す ことを特徴とする2,3-ビス(N,N-ビス(p-アニシ )4-アミノフェニルエチニル)フマル酸ジメチ 製造方法
にある。

本構成によれば、高性能材料がシンプルな 手法で得られる。

本発明の第11の側面は、
2,3-ビス(N,N-ビス(p-アニシル)4-アミノフェニル エチニル)フマル酸ジメチルに光を照射する とを特徴とする2,3-ビス(N,N-ビス(p-アニシル)4 -アミノフェニルエチニル)マレイン酸ジメチ 製造方法
にある。

本構成によれば、高性能材料がシンプルな 手法で得られる。

本発明によれば、電磁波による異性化が可 能な高性能材料などが得られる。

本発明のさらに他の目的、特徴又は利点は 、後述する本発明の実施の形態や添付する図 面に基づく詳細な説明によって明らかになる であろう。

(a)化合物(E)-1; (b) 化合物(Z)-1のサイク リックボルタモグラムを示す図である。 (a)(E)-2,(Z)-2のサイクリックボルタモグ ム、(b)(E)-2のボルタモグラムに対するシミ レーションを示す図である。 化合物(E)-1,(Z)-1の紫外可視スペクトル 示す図である。 化合物(E)-1のORTEP図である。 化合物(E)-1,(Z)-1,(E)-2,(Z)-2のC=O伸縮振動 来のIRスペクトルを示す図である。 化合物(E)-1に対する可視光照射に伴う(a)紫外 視スペクトル変化(トルエン溶液)、(b) 1 H-NMRスペクトル変化(トルエン-d 8 溶液)を示す図である。 (a),(b)化合物(E)-1に対する可視光(405nm) 射時に伴う紫外可視スペクトルの経時変化; (c)量子収率の算出のプロットと用いたパラ ータを示す図である。 可視光(546 nm,578 nm)照射に伴う(a) CH 2 Cl 2 中における(E)-2の紫外可視スペクトル変化、( b)CD 2 Cl 2 中における (E)-2の1H-NMRスペクトル変化と(Z)-2 の 1 H-NMRスペクトルを示す図である。 (E)-1における可視光によるトリアリー アミン間の電子カップリングの可逆的なス ッチを示す図である。 (E)-2における可視光によるフェロセン の電子カップリングのスイッチを示す図で る。 化合物(E)-1の吸収スペクトルと蛍光ス クトルを示す図である。 化合物(Z)-1の吸収スペクトルと蛍光ス クトルを示す図である。 各化合物の電子スペクトルと(E)-1のCT吸 収帯の主要な遷移を示す図である。

以下、本発明の実施の形態について図面を 参照しながら詳細に説明する。

[本発明に至る経緯]

本発明者らは、機能性有機分子であるフォ トクロミック化合物と遷移金属錯体・有機金 属とをπ共役で連結した複合系の創成と多重 性の発現について誠意研究を進めてきた。 えば、3-フェロセニルアゾベンゼンは可視 にフェロセンからアゾベンゼンへの電荷移 (CT(Charge Transfer))遷移の励起(緑色光)によるtr ans→cis異性化、およびCT遷移がフェロセンの 化によって消失することを利用した単一光 よるcis-transスイッチなどについて研究して た。

J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 8800-8801 Angew. Chem., Int. Ed. 2006, 45, 4793-4795

そこで、本発明者らは、電荷移動(CT)遷移 その励起による可視光異性化の発現に関す 知見を深めるとともに、フォトクロミック 合物による遷移金属錯体・有機金属の物性 御(ここでは混合原子価状態における電子カ プリング強度のスイッチ)を可視光異性化の 発現と同時に誘起し複合系の高機能化を達成 する目的で、Z-E光異性化能を有するエチニル エテンにフェロセンをπ共役で連結した、下 の化合物(E)-2,(E)-10などについて光・電気化 物性の評価を行った。それだけに留まらず フェロセンとほぼ等価なレドックス挙動を すトリアリールアミン誘導体で置換した(E)- 1などについてもさらに追究を行った。これ のことによって、特異な所見を得るに至っ 。

[物性]

以下、下記の化合物の物性について説明する 。これらの化合物は、いずれも可視光異性化 とそれに伴う電子カップリングのスイッチと が実現することが判明した。
(E)-1:2,3-ビス(N,N-ビス(p-アニシル)4-アミノフェ ニルエチニル)フマル酸ジメチル
(Z)-1:2,3-ビス(N,N-ビス(p-アニシル)4-アミノフェ ニルエチニル)マレイン酸ジメチル

図1Aは、(a)化合物(E)-1; (b) 化合物(Z)-1のサイ リックボルタモグラム、およびそのシミュ ーションを示す図である。測定条件は1.0 mM , ジクロロメタン-0.1 M n-テトラブチルアン ニウムテトラフルオロボレート中、挿引速 100mVs -1 、作用電極として3mmφグラッシーカーボンを いた。(b)には算出されたトリアリールアミ 部位の1電子酸化還元に関する標準電極電位 も記載した。シミュレーションにはDigisim 3.0 3b(BAS Inc.) を用いた。図から、化合物が、1 子ごとに、2段階で酸化されていること、ホ ル輸送能力を有すること、酸化状態が安定 あることがわかる。

図1Bは、(a)(E)-2,(Z)-2のサイクリックボルタモ ラム(測定条件:1.2mM, ジクロロメタン-0.1M n- トラブチルアンモニウムテトラフルオロボ ート、挿引速度100mVs -1 、作用電極3mmφGC)、(b)(E)-2のボルタモグラム 対するシミュレーションと得られたフェロ ン部位の1電子酸化還元に関する標準電極電 を示す図である。

異性化に伴う電子カップリング強度のスイッ チについて考察する。図に示すように、サイ クリックボルタンメトリーおよびボルタモグ ラムのシミュレーションを行い、2つのフェ セン部位の式量電位差δE 0’ は(E)-2,(Z)-2でそれぞれ70mV,48mVと算出された。F eイオン間の空間的な距離はZ体のほうがはる に小さい(結晶中では(E)-2:11.73オングストロ ム,(Z)-2:6.17オングストローム)にもかかわら E体がより大きなδE 0’ を示したことは、電子カップリングの発現に 関しthrough-space的な静電反発に比べエチニル テンπ共役鎖を介したthrough-bond相互作用の寄 与が支配的であることを意味している。また 化合物1においてもE,Z体における電子カップ ング相互作用に同様の差異が観測された。 合物1,2ともにZ体におけるメチルエステル基 士の立体障害によるπ共役系の歪みが結晶 造、電子スペクトルから示唆されており、 れがZ体における電子カップリング強度の低 の主因であると考えられる。

図2は、化合物(E)-1,(Z)-1の紫外可視スペクト ルを示す図である。測定の際には、トルエン 溶液を使用した。

E体の可視領域の吸収(400~600nm)は1種類の電 移動(CT)遷移に起因している。Z体においては 対称性の低下に伴いE体でも観測された遷移 許容度が低下する一方、E体において禁制で ったもう1つのCT遷移が許容となる。これに い、可視領域の吸収の長波長側ではモル吸 係数が減少する一方で短波長側のそれは増 している。この事象はZ-E異性体間の可逆な スイッチ挙動において重要である。

図3は、化合物(E)-1のORTEP図である。ここで 水素原子は省略した。

図4は、化合物(E)-1,(Z)-1,(E)-2,(Z)-2のC=O伸縮振 動由来のIRスペクトルを示す図である。(Z)-1 外はE, Zの絶対配座を単結晶X線構造解析に り決定している。Z体では分子の対称性の低 に伴いシグナルが分裂していることがわか 。

図5Aは、化合物(E)-1に対する可視光照射に伴 (a)紫外可視スペクトル変化(トルエン溶液)、 (b)  1 H-NMRスペクトル変化(トルエン-d 8 溶液)を示す図である。図において、パーセ トは各光照射の定常状態におけるZ体の比率 表す。また、*は重溶媒由来のシグナルを表 す。

ここで、(E)-1の異性化挙動について言及する 図のようにトルエン中、CT吸収帯の励起に ってZ体への異性化を示した。また 1 H-NMRスペクトル変化から光定常状態(PS)におけ るZ体比(578nm照射時)はほぼ100%に達することも 分かった。さらに、405nmの可視光照射によっ PSにおけるZ体比が75%まで可逆的に減少し、Z -E光スイッチ能を示す分子であることを見出 た。量子収率についてはφ E→Z =6.1×10 -2 、φ Z→E =1.4×10 -2 (405 nm照射時)という高い値を示した。図5Bは (a),(b)化合物(E)-1に対する可視光(405nm)照射時 に伴う紫外可視スペクトルの経時変化(トル ン中); (c)量子収率の算出のプロットと用い パラメータを示す図である。ここで数学的 理はZimmerman, G.; Chow, L.-Y.; Paik, U.-J. J. Am . Chem. Soc. 1958, 80, 3528-3531記載の方法を使 した。

図5Cは、可視光(546 nm,578 nm)照射に伴う(a) CH 2 Cl 2 中における(E)-2の紫外可視スペクトル変化、( b)CD 2 Cl 2 中における (E)-2の 1 H-NMRスペクトル変化と(Z)-2の 1 H-NMRスペクトルを示す図である。

(E)-2に546nm,578nmの可視光によるCT吸収帯の励起 を行ったところ、紫外可視スペクトル上で1 所の等吸収点とともにπ-π * 、CT吸収帯の段階的な減少を示し(図5C(a))、 1 H-NMRスペクトル上ではZ体の生成とそれに伴う E体の減少が観測された(図5C(b))。光定常CT状 (PS)におけるZ体の存在比は 1 H-NMRスペクトルの積分比から89%、また量子収 (トルエン中、546nm)は紫外可視スペクトルの 経時変化からφ E→Z =8.6×10 -6 Z→E =2.5×10 -6 と算出された。これらの値は化合物1のそれ と比べはるかに小さい。

化合物2は、Z体においてフェロセン同士の間 回転立体障害が存在する。エチニル基を延 することでこの立体障害を回避した(E)-10もC T吸収帯の励起(578nm)によりPSにおいて79%がZ体 と変換されたが、量子収率はφ E→Z =6.2×10 -5 E→Z =3.4×10 -5 であった。若干の改善をもたらしたものの、 フェロセン同士の立体障害は低い量子収率の 本質的な原因ではないことが分かった。

図5Dは化合物1におけるトリアリールアミン 間の、図5Eは、化合物2におけるフェロセン間 の、それぞれ可視光照射による電子カップリ ングのスイッチを示す概念図である。(E)-1、( E)-2は、可視光の刺激によってそれぞれフェ セン間、トリアリールアミン間などの電子 ップリング強度をスイッチした初の系であ 。特に(E)-1は可逆的なスイッチが可能である 点で優れている。

図6は、化合物(E)-1の吸収スペクトルと蛍光 スペクトルを示す図である。測定は、トルエ ン中で、室温で行った。

図7は、化合物(Z)-1の吸収スペクトルと蛍光 スペクトルを示す図である。測定は、トルエ ン中で、室温で行った。

なお、(E)体、(Z)体ともに固体状態でも365nm 紫外光などを照射すると赤く発光すること 確認されている。また、(E)体のほうが(Z)体 りも強く発光することも判明している。

図8は、(E)-1, (E)-2, (E)-5, (E)-10(ジクロロメタ 中)と(E)-1の可視領域(400-600 nm)の吸収帯にお ける主要な遷移を示す図である。フェロセン もしくはトリアリールアミン部位を有する化 合物のみが可視部に吸収帯を示した。TDDFT計 から、これら可視領域の吸収帯はフェロセ d x2-y2 軌道もしくはトリアリールアミンn軌道とエ ニルエテンπ軌道が共役した占有軌道(HOMO)か らエチニルエテンπ * 軌道(LUMO)へのCT遷移であると帰属された。

異性化量子収率について考察する。フェロセ ンとトリアリールアミンはともに同程度のド ナー性を有する化合物であるが、重原子効果 と低いエネルギーを有する配位子場(LF)励起 態の有無に差異が存在する。この差異を考 すると、(E)-1では最低一重項励起状態である 1 CTから異性化と蛍光輻射が効率よく進行する 方、(E)-2では 1 CTから 3 CTもしくは 3 π-π * への項間交差を経て 3 LFへの内部転換が優先して起こるため異性化 阻害されているものと考えられる。なお(E)- 2において 1 CT、 3 CT 3 および 3 π-π * のうちどの励起状態が異性化に直接関与する かは現在検討中である。

図によると、化合物が、フォトクロミック 特性を有すること、つまり、光スイッチ、光 メモリ材料としての可能性を持つことを示し ている。また、これらの化合物は、発光する ことから、フォトクロミック特性と発光材料 としての特性を持つ稀有なものであることが わかる。また、光照射による異性化を繰り返 した後でも光によってほとんど分解せず、安 定であるという優れた特性を持つことも判明 した。

また、下記のN-アリールカルバゾールを有す 化合物も、有機半導体・発光材料としての 用が期待される分子であることが知られて る。N-アリールカルバゾールの導入につい も、以下に示す、トリアリールアミンを有 る誘導体の場合と同様に実現できる。

[化合物の合成など]

<2,3-ビス(N,N-ビス(p-アニシル)4-アミノフェ ルエチニル)フマル酸ジメチル>
窒素雰囲気下2,3-ジブロモフマル酸ジメチル(4 00 mg, 1.3 mmol)、ヨウ化銅(I)(27 mg, 0.14 mmol) ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II )ジクロリド(100 mg, 0.14 mmol)、N,N-ビス(p-アニ シル)-4-エチニルベンゼンアミン(940 mg, 2.8 m mol)、脱水トリエチルアミン(40 mL)の混合物を 100℃で2時間加熱攪拌した。冷却後ジクロロ タンを加え、セライト綿栓ろ過で不溶成分 除去した。(セライトは登録商標である。)溶 媒を減圧下で留去したのち、残渣をアルミナ カラムクロマトグラフィー(活性度II-III, ヘ サン / ジクロロメタン = 1 / 1)で精製す ことで2,3-ビス(N,N-ビス(p-アニシル)4-アミノ ェニルエチニル)フマル酸ジメチルの深赤色 体770 mgを得た(収率73%)。得られた固体を暗 にてジクロロメタン-ヘキサンより再結晶す ることで深赤色結晶を得た。 1 H-NMR (Toluene-d8): δ 7.42 (d, (9.2), 4H), 6.96-6.93  (m, 8H), 6.83 (d, (9.1), 4H), 6.64 (d, (9.6), 8H) , 3.48 (s, 6H), 3.30 (s, 12H). Anal. Calcd for C 50 H 42 O 8 N 2 : C, 75.17; H, 5.30; N, 3.51. Found: C, 74.94; H, 5.37; N, 3.22.

<2,3-ビス(N,N-ビス(p-アニシル)4-アミノフェ ルエチニル)マレイン酸ジメチル>
2,3-ビス(N,N-ビス(p-アニシル)4-アミノフェニル エチニル)フマル酸ジメチル(200 mg, 0.25 mmol) トルエン(120 mL)に溶解し、高圧水銀灯の546- nm, 578-nmの輝線を24時間照射した。トルエン 減圧下で留去後、残渣をアルミナカラムク マトグラフィー(活性度II-III, ヘキサン /  クロロメタン = 1 / 1)で精製することで2,3- ビス(N,N-ビス(p-アニシル)4-アミノフェニルエ ニル)マレイン酸ジメチルの赤色粉末を185 m g得た(収率92%)。 1 H-NMR (Toluene-d8): δ 7.40 (d, (9.2), 4H), 6.90 (d,  (9.5), 8H), 6.79 (d, (9.2), 4H), 6.61 (d, (9.6),  8H), 3.47 (s, 6H), 3.30 (s, 12H). Anal. Calcd for  C 50 H 42 O 8 N 2 : C, 75.17; H, 5.30; N, 3.51. Found: C, 75.03; H, 5.55; N, 3.35.

<(E)-2>
窒素雰囲気下、2,3-ジブロモフマル酸ジメチ (1.0 g, 3.3 mmol)、 ヨウ化銅(I)(18 mg)、 ビス (トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジク ロリド(20 mg)、エチニルフェロセン (1.5 g, 7 .3 mmol)に脱水トリエチルアミン (60 mL) を加 えた。茶褐色懸濁液を100℃で加熱するとすぐ さま赤色懸濁液へと変化した。さらに2時間 熱還流後、冷却した後にジクロロメタンを え、得られた赤色懸濁液をセライト綿栓ろ し不溶物を除いた。 減圧下で溶媒を留去し 、残渣をアルミナカラムクロマトグラフィー (活性度II-III, ヘキサン / ジクロロメタン =  1 / 2)で分離精製することで(E)-2の赤色固体 1.8 gを得た(収率98%)。赤色固体をヘキサンー クロロメタンから再結晶することで深赤色 晶を得た。 1 H-NMR (CD 2 Cl 2 ) :δ4.51 (dd, (2.0, 2.0), 4H), 4.35 (dd, (1.8, 1.8 ), 4H), 4.27 (s, 10H), 3.91 (s, 6H). Anal. Calcd f or C 30 H 24 O 4 Fe 2 : C, 64.32; H, 4.32. Found: C, 64.04; H, 4.38.

<(Z)-2>
(Z)-2は(E)-2の副生成物として得られた。5.0 g (E)-2から98 mgの(Z)-2が(活性度II-III, ヘキサン  / ジクロロメタン = 1 / 2)によって赤色固 体として分離精製された。さらにジクロロメ タンーヘキサンから再結晶することで赤色結 晶を得た。 1 H-NMR (CD 2 Cl 2 ) :δ 4.60 (dd, (1.8, 1.8), 4H), 4.38 (dd, (1.8, 1 .8), 4H), 4.27 (s, 10H), 3.84 (s, 6H). Anal. Calcd for C 30 H 24 O 4 Fe 2 : C, 64.32; H, 4.32. Found: C, 64.15; H, 4.43.

<(E)-3>
窒素雰囲気下(E)-2(343 mg, 0.61 mmol)をTHF (40 mL ) に溶解させ、得られた深赤色溶液を-78℃に 冷却した。ここに水素化ジイソブチルアルミ ニウムの1Mトルエン溶液 (3.1 mL, 3.1 mmol) を 滴下し、室温まで昇温したところオレンジ色 溶液へと変化した。 そのまま4時間攪拌を続 けたのち、メタノールを加えて反応を終結さ せたところ白沈が生じた。セライト綿栓ろ過 を行い白沈を除き、ろ液を減圧下で溶媒を留 去することでオレンジ色のペースト状の(E)-3 238 mg得られた (収率77%) 。これ以上の精製 は困難であったため、次の反応にそのまま用 いた。

<(E)-4>
窒素雰囲気下、(E)-3 (238 mg, 0.47 mmol), N,N-ジ メチル-4-アミノピリジン (230 mg, 1.9 mmol), 1 -エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル) カル ジイミド塩酸塩 (470 mg, 2.5 mmol) を脱水ジ ロロメタン (30 mL) に溶解した。オレンジ の溶液にさらに脱水トリエチルアミン (0.32  mL, 4.4 mmol) および酢酸 (0.13 mL. 2.0 mmol)  を加えた。17時間攪拌したのち、水を加えて 応を終結させた。水、飽和食塩水で洗浄し のち有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、硫 ナトリウムをろ別後減圧下溶媒を留去した 残渣をアルミナカラムクロマトグラフィー( 活性度II-III, ヘキサン / ジクロロメタン = 1 / 3)で分離精製することで(E)-4のオレンジ 固体を56 mg 得た(収率20%)。さらにジクロロ メタンーヘキサンより再結晶することでオレ ンジ色針状結晶を得た。 1 H-NMR (CD 2 Cl 2 ) : δ4.96 (s, 4H), 4.47 (dd, (1.8, 1.8), 4H), 4.2 9 (dd, (1.8, 1.8), 4H), 4.23 (s, 10H), 2.15 (s, 6H ). Anal. Calcd for C 32 H 28 O 4 Fe 2 : C, 65.34; H, 4.80. Found: C, 65.09; H, 4.82. 

<(E)-5>
窒素雰囲気下、2,3-ジブロモフマル酸ジメチ  (1.3 g,  3.9 mmol)、ヨウ化銅(I)(20 mg), ビス (トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジク ロリド(13 mg)、 p-トリルアセチレン (1.0 mL, 7.9 mmol) に脱水トリエチルアミン (35 mL)  加えた。無色懸濁液を100℃で加熱するとす さま黄褐色懸濁液へと変化した。さらに4時 加熱還流後、冷却した後にジクロロメタン 加え、得られた黄褐色懸濁液をセライト綿 ろ過し不溶物を除いた。 減圧下で溶媒を 去し、残渣をアルミナカラムクロマトグラ ィー(活性度II-III, ヘキサン / ジクロロメ ン = 2 / 1)で分離精製することで(E)-5の黄 固体1.2 gを得た(収率82%)。黄色固体をヘキサ ンージクロロメタンから再結晶することで黄 色結晶を得た。 1 H-NMR (CD 2 Cl 2 ) :δ 7.40 (d, (8.0), 4H), 7.20 (d, (7.8), 4H), 3. 91 (s, 6H), 2.38 (s, 6H). Anal. Calcd for C 24 H 20 O 4 : C, 77.40; H, 5.41. Found: C, 77.31; H, 5.49.

<(E)-6>
窒素雰囲気下(E)-2(1.0 g, 2.7 mmol)をTHF (100 mL)  に溶解させ、得られた深赤色溶液を-78℃に 却した。ここに水素化ジイソブチルアルミ ウムの1Mトルエン溶液 (14 mL, 14 mmol) を滴 下し、室温まで昇温したところ薄い褐色溶液 に変化した。そのまま2時間攪拌を続けたの 、メタノールを加えて反応を終結させたと ろ白沈が生じた。セライト綿栓ろ過を行い 沈を除き、ろ液を減圧下で溶媒を留去した 残渣をアルミナカラムクロマトグラフィー( 性度II-III, ヘキサン / ジクロロメタン =  1 / 3、次いでジクロロメタン / メタノール  = 50 / 1)で分離精製を行い薄い黄色ペース 状の(E)-6 660 mg を得た (収率78%) 。これ以 上の精製は困難であったため、次の反応にそ のまま用いた。

<(E)-7>
窒素雰囲気下、(E)-3 (680 mg, 2.1 mmol), N,N-ジ チル-4-アミノピリジン (1.0 g, 8.3 mmol), 1- チル-3-(3-ジメチルアミノプロピル) カルボ イミド塩酸塩 (2.1 g, 11 mmol) を脱水ジク ロメタン (30 mL) に溶解した。無色の溶液 さらに脱水トリエチルアミン (1.5 mL, 20 mmo l) および酢酸 (0.62 mL. 9.5 mmol) を加えた。 9時間攪拌したのち、水を加えて反応を終結 せた。水、飽和食塩水で洗浄したのち有機 を硫酸ナトリウムで乾燥し、硫酸ナトリウ をろ別後減圧下溶媒を留去した。残渣をア ミナカラムクロマトグラフィー(活性度II-III,  ヘキサン / ジクロロメタン = 3 / 2)で分 精製することで(E)-7の無色固体を370 mg 得 (収率44%)。さらにジクロロメタンーヘキサン より再結晶することで無色結晶を得た。 1 H-NMR (CD 2 Cl 2 ) :δ7.36 (d, (8.0), 4H), 7.18 (d, (7.8), 4H), 5.03  (s, 4H), 2.37 (s, 6H), 2.12 (s, 6H). Anal. Calcd for C 26 H 24 O 4 : C, 77.98; H, 6.04. Found: C, 77.90; H, 6.12.

<(E)-8>
窒素雰囲気下595 mg (1.1 mmol) の(E)-2から得ら れた(E)-4、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン (349  mg, 2.9 mmol)、塩化ジ-tert-ブチルメチルシラ  (642 mg, 4.3 mmol) を脱水DMF (10 mL) に溶解 させた。このオレンジ色溶液に脱水トリエチ ルアミン (200 μl, 1.43 mmol) を加え19 時間 拌したのち、メタノールを加えて反応を停 させたところ白沈を生じた。さらにジクロ メタンを加えたのち水と飽和食塩水で洗浄 行い、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した 減圧下で溶媒を留去した。残渣をアルミナ ラムクロマトグラフィー(活性度II-III, ヘキ ン / ジクロロメタン = 1 / 2)で分離精製 ることで(E)-8のオレンジ色固体を284 mg得た( 収率36%, (E)-2より)。ジクロロメタンから再結 晶することでオレンジ色結晶を得た。 1 H-NMR (Toluene-d8): δ 4.71 (s, 4H), 4.43 (dd, (1.8,  1.8), 4H), 4.14 (s, 10H), 3.96 (dd, (1.8, 1.8), 4 H), 1.08 (s, 18H), 0.26 (s, 12H). Anal. Calcd for  C 40 H 52 Fe 2 O 2 Si 2 : C, 65.57; H, 7.15. Found: C, 65.28; H, 7.19. 

<(E)-9>
窒素雰囲気下2,3-ジブロモフマル酸ジメチル  (443 mg, 1.5 mmol)、ヨウ化銅(I) (14 mg)、ビス( リフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジク リド (12 mg)、4-ニトロエチニルベンゼン (21 0 mg, 1.4 mmol)、エチニルフェロセン (300 mg, 1.4 mmol) に脱水トリエチルアミン (50 mL)  加えた。得られた茶褐色懸濁液を100℃に加 したところ、すぐさま赤い懸濁液へと変化 た。さらに還流を2時間行ったのち、ジクロ メタンを加えセライト綿栓ろ過を行い、不 成分を除去した。溶媒を減圧下で留去した ち、残渣をアルミナカラムクロマトグラフ ー(活性度II-III, ヘキサン / ジクロロメタ  = 1 / 1)で精製することで(E)-9の深赤色固 を29 mg得た(収率4.1%)。得られた固体を暗所 てジクロロメタン-ヘキサンより再結晶する ことで深赤色結晶を得た。 1 H-NMR (Toluene-d8): δ 7.62 (d, (8.8), 2H), 4.38 (dd , (1.9, 1.9), 2H), 3.98-3.97 (m, 7H), 3.50 (s, 3H),  3.41 (s, 3H) (残りのプロトン由来のシグナ はトルエン-d 8 のそれと重なり観測されなかった). 

<(E)-10>
窒素雰囲気下、2,3-ジブロモフマル酸ジメチ (148 mg, 0.49 mmol)、 ヨウ化銅(I)(16 mg)、 ビ (トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジ ロリド(16 mg)に1-フェロセニル-1,3-ブタジイ  (148 mg, 0.49 mmol) の1,4-ジオキサン溶液 (1 00 mL, 1.0 mmol) を加えた。この褐色懸濁液に 脱水トリエチルアミン (30 mL) を加え、1時 100℃で加熱還流を行ったところ紫色懸濁液 と変化した。冷却後ジクロロメタンを加え セライト綿栓ろ過を行い、不溶物を除去し 。減圧下で溶媒を留去し、残渣をアルミナ ラムクロマトグラフィー(活性度II-III, ヘキ ン / ジクロロメタン = 3 / 2)で分離精製 ることで(E)-7の深紫色固体を得た。さらに 紫色固体をヘキサンージクロロメタンから 結晶することで深紫色結晶を54 mgを得た(収 18%)。 1 H-NMR (Toluene-d8): δ 4.23 (dd, (1.8, 1.8), 4H), 3. 91 (s, 10H), 3.86 (dd, (1.8, 1.8), 4H), 3.31 (s, 6 H). Anal. Calcd for C 34 H 24 O 4 Fe 2 : C, 67.14; H, 3.98. Found: C, 66.98; H, 4.20.

[まとめ]

上述の化合物の分子群は、高性能な光・電子 材料となり得る。具体的な特徴として、例え ば、化合物(E)-1は、トリアリールアミン類に 徴的な高いドナー性を保持しつつ、モル吸 係数εに換算して50000M -1 cm -1 程度の強い光吸収力を持つ色素となっている 。加えて、可視光で色が変わる高効率のフォ トクロミック特性を持ち(量子収率6.1%)、E体 びZ体、両異性体ともに熱的に安定である。 らに、室温において蛍光を示す。これらの 徴は、電化輸送材料、光電変換材料、分子 メモリ・スイッチ材料として重要である。

[用途]

トリアリールアミン系分子などが強い電子 ドナー性を持つことを利用し、新たな高性能 化・電子材料を合成することができた。具体 的な光・電子機能としては、強い光吸収力を 持つ色素になること、光で色が変わるフォト クロミック特性を持つフォトクロミック材料 、発光材料となることが考えられる。

また、例えば、トリアリールアミン誘導体 は、有機EL用ホール輸送層として実用化され 有機TFT用高移動度材料としても研究されて る、また、電荷移動錯体系に組み込むこと よって太陽電池用光電変換材料としても有 であることが研究されている。本実施形態 分子群は、フォトクロミック特性を持ち、 で電子輸送特性をスイッチできること、強 光吸収能を持ち、電荷輸送特性も持つため 光電子輸送材料となりえること、さらに発 材料になり得ることなどの優れた特性を持 ため、様々な有機光・電子デバイスの材料 して有用である。

なお、上述の化合物は、優れた稀有な特性 を持つため次のような用途も考えられる。発 光素子、色の変色によって情報を記録する光 記録材料、光ディスク、電子ペーパーなどの ディスプレイ、記録材料・表示材料といった エレクトロニクス分野だけでなく、必要時の み発色させるといった装飾材料、フォトクロ ミックインキ、サングラス、ゴーグル、遮光 フィルム、光学フィルター、ディスプレイ、 玩具、アクセサリー、塗料、インキ、カーテ ン、Tーシャツ、水着、繊維加工、光記録材 、非破壊読み出し、リライタブルペーパー 光チエックカード、サンチエッカーなどの か、シールやTシャツ、ファンデーションチ ックなどの化粧品、耐光性に優れ発色、消 のスピードの向上のためのフォトクロミッ マイクロカプセルなどである。さらに、極 細膜構造、超高密度記録膜、光メモリ、バ テリオロドプシンなどの生体模倣応用、表 ナノ模様制御、単一分子光メモリなどの記 媒体、着色するメガネレンズ用樹脂および 色剤、フォトクロミック技術応用の肌用演 パウダーなどの調光、フォトクロミック色 、ラビングフリー化液晶配向膜、機能性イ キ、カラー表示材料などの画像表示、光応 粘弾性による薬剤放出、光応答錯形成、シ カゲル細孔の開閉、光変形などの拡散制御 全光スイッチ、空間光変調材料、光ニュー ルネットワークシステム、光変形制御、光 御型フォトニック結晶、微細パターン作製 料、光通信向け偏光子などの光学・光電部 、光で伸縮する有機・無機複合体、微細光 動装置、マイクロマシンの駆動源、光エネ ギーから機械エネルギーへの直接変換など エネルギー蓄積・変換、光アンテナ機能、D NA2重鎖および3重鎖の形成制御、メソポーラ シリカ薄膜の細孔配向・細孔径の光制御、 常構造たんぱく質の正常化、たんぱく質合 の光制御用人工DNAなどの反応・構造・配向 御、昇華ジアリールエテンなどの薄膜作製 法、光物性高精度予測システム、物性観測 測定なども応用例として挙げることができ 。幅広い波長の紫外可視光を強く吸収する となどから、色素増感太陽電池用の色素と ての応用も例として挙げることができる。

[権利解釈など]

以上、特定の実施形態を参照しながら、本 発明について説明してきた。しかしながら、 本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が実 施形態の修正又は代用を成し得ることは自明 である。すなわち、例示という形態で本発明 を開示してきたのであり、本明細書の記載内 容を限定的に解釈するべきではない。本発明 の要旨を判断するためには、冒頭に記載した 特許請求の範囲の欄を参酌すべきである。

また、この発明の説明用の実施形態が上述 の目的を達成することは明らかであるが、多 くの変更や他の実施例を当業者が行うことが できることも理解されるところである。特許 請求の範囲、明細書、図面及び説明用の各実 施形態のエレメント又はコンポーネントを他 の1つまたは組み合わせとともに採用しても い。特許請求の範囲は、かかる変更や他の 施形態をも範囲に含むことを意図されてお 、これらは、この発明の技術思想および技 的範囲に含まれる。

光で色が変わるフォトクロミック特性を持 つフォトクロミック材料、発光材料、色素増 感太陽電池用の色素などが用途の例として挙 げられる。