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Title:
ELECTROCHEMICAL SENSOR DEVICE AND ELECTROCHEMICAL MEASURING METHOD USING THE SAME
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/031375
Kind Code:
A1
Abstract:
An electrochemical sensor device in which the channel can be micromachined while maintaining the measurement sensitivity and an object substance contained in a trace of sample can be quantitated surely. An electrochemical sensor device (1) comprises a channel portion (10) formed in a substrate, and a working electrode (20) for electrochemically measuring an object substance contained in a solution flowing through the channel portion (10). In this electrochemical sensor device, the working electrode (20) includes a plurality of measuring portions (15, 16) provided one by one, and has a plurality of conductive protrusions (51) so formed as to protrude from the bottom faces of the measuring portions (15, 16).

Inventors:
FUKUDA JUNJI (JP)
SUZUKI HIROAKI (JP)
OKAMURA KENTARO (JP)
HASHIMOTO MASATOSHI (JP)
ANADA TAKAHISA (JP)
KURAMITSU HIDEKI (JP)
TAZAKI GO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/063667
Publication Date:
March 12, 2009
Filing Date:
July 30, 2008
Export Citation:
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Assignee:
UNIV TSUKUBA (JP)
KURARAY CO (JP)
FUKUDA JUNJI (JP)
SUZUKI HIROAKI (JP)
OKAMURA KENTARO (JP)
HASHIMOTO MASATOSHI (JP)
ANADA TAKAHISA (JP)
KURAMITSU HIDEKI (JP)
TAZAKI GO (JP)
International Classes:
G01N27/30; G01N27/28; G01N37/00
Foreign References:
JP2004085392A2004-03-18
JP2002170557A2002-06-14
JPH01174960A1989-07-11
JP2006119051A2006-05-11
Other References:
WATARU SATO ET AL.: "Kaimen choryoku o riyo shita bisho soeki kiko", PAPERS OF TECHNICAL MEETING ON CHEMICAL SENSOR ENGINEERING,IEE,JAPAN,ISSUED BY THE INSTITUTE OF ELECTRICAL ENGINEERS OF JAPAN, 28 November 2003 (2003-11-28), pages 149 - 154
Attorney, Agent or Firm:
HARUKA PATENT & TRADEMARK ATTORNEYS (28-4 Yotsuya 4-chome, Shinjuku-k, Tokyo 04, JP)
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Claims:
 基板に形成された流路部と、
 前記流路部内を流通する溶液に含まれる対象物質を電気化学的に測定するための作用電極と、
 を有する電気化学的センサ装置であって、
 前記流路部は、
 第一溶液及び第二溶液がそれぞれ流通する第一幹部及び第二幹部と、
 前記第一幹部及び前記第二幹部の下流側に延びて前記作用電極が一つずつ設けられた複数の測定部と、
 を含み、
 前記複数の測定部は、
 前記第一幹部から分岐した枝部と前記第二幹路から分岐した枝部との合流部分から下流側に延びて前記第一溶液と前記第二溶液との混合溶液が流通する合流部と、
 他の流路と合流することなく前記第一幹部の下流側に延びて前記第一溶液が流通する第一独立部と、
 他の流路と合流することなく前記第二幹部の下流側に延びて前記第二溶液が流通する第二独立部と、
 を含み、
 前記作用電極は、前記測定部の底面から突出して形成された導電性の複数の突出部を有する
 ことを特徴とする電気化学的センサ装置。
 前記複数の突出部は、
 前記測定部における長手方向の流れの一部を遮るよう前記測定部を横切る板状に形成された複数の板状突出部と、
 柱状に形成された複数の柱状突出部と、
 を含み、
 前記複数の板状突出部は、前記長手方向において一部が重なり合うよう配置された一対の板状突出部を含み、
 前記複数の柱状突出部は、前記一対の板状突出部の間に配置される
 ことを特徴とする請求の範囲第1項に記載された電気化学的センサ装置。
 前記一対の板状突出部は、一方が前記測定部の一方の側面から延び出し、他方が前記測定部の他方の側面から延び出している
 ことを特徴とする請求の範囲第2項に記載された電気化学的センサ装置。
 前記作用電極の上流端部分において前記測定部における長手方向の流れの一部を遮るよう前記測定部の一方の側面及び他方の側面からそれぞれ延び出した一対の上流側提部と、
 前記作用電極の下流端部分において前記測定部における長手方向の流れの一部を遮るよう前記測定部の一方の側面及び他方の側面からそれぞれ延び出した一対の下流側提部と、
 を有する
 ことを特徴とする請求の範囲第1項乃至第3項のいずれかに記載された電気化学的センサ装置。
 請求の範囲第1項乃至第4項のいずれかに記載された電気化学的センサ装置を用いて、前記測定部を流通する溶液に含まれる前記対象物質を電気化学的に測定する
 ことを特徴とする電気化学的測定方法。
 前記対象物質の複数の濃度と、前記複数の濃度の各々に対応する電流値との相関関係を示す検量データを準備し、
 前記対象物質を含む前記第一溶液を前記第一幹部に流入させるとともに前記対象物質を含まない前記第二溶液を前記第二幹部に流入させて、
 前記合流部、前記第一独立部、及び前記第二独立部において前記作用電極により測定された電流値と、前記検量データと、に基づいて、前記第一溶液に含まれる前記対象物質の濃度を決定する
 ことを特徴とする請求の範囲第5項に記載された電気化学的測定方法。
Description:
電気化学的センサ装置及びこれ 用いた電気化学的測定方法

 本発明は、電気化学的センサ装置及びこ を用いた電気化学的測定方法に関し、特に 微小な流路内に配置された作用電極を備え 電気化学的センサ装置及びこれを用いた電 化学的測定方法に関する。

 従来、溶液が流通する微小な流路を備え 当該溶液中に含まれる物質を電気化学的に 定するための作用極が、当該流路の底面に 板状に形成されたセンサがあった(例えば、 特許文献1)。

 また、特許文献2には、平板状の作用電極の 上流側に、表面が導電性の材料で修飾された 、生体試料に含まれる妨害物質を除去するた めの微小突起を備えたバイオセンサが記載さ れている。この特許文献2には、作用電極と 小突起とを電極として用いることにより、2 分の同時測定が可能であることも記載され いる。また、特許文献3には、平板状の作用 電極の上流側に、熱可塑性樹脂で形成された 微小突起を備えたバイオセンサが記載されて いる。

特開2000-9679号公報

特開2000-97899号公報

特開2006-201080号公報

 しかしながら、例えば、測定の対象とな 対象物質を含む試料が微量であり、しかも 該試料に含まれる当該対象物質が微量であ 場合、上記従来のセンサによっては当該対 物質を定量できないことがあった。

 すなわち、試料が微量である場合には、 該試料を流通させる流路の体積を可能な限 低減する必要がある。しかしながら、作用 極が流路の底面に沿った平板状である上記 来のセンサにおいては、当該流路の微小化 伴い当該作用電極の表面積も減少して測定 度が低下するため、当該流路の微小化には 界があった。この問題は、その上流側に微 突起が設けられた平板状の作用電極につい も同様であった。また、流路内に作用電極 加えて微小突起を配置するため、当該流路 微小化には限界があった。

 また、作用電極で測定される電流値が対 物質の濃度を正確に反映するためには、当 作用電極に接触する試料中の当該対象物質 濃度、及び当該濃度に対応して測定される 流値が特定の範囲であることが好ましい。 方、例えば、対象物質が疾患のマーカーで る場合には、患者から採取した試料中の当 対象物質の濃度が上記特定の範囲を大きく 回っていることがある。

 したがって、上記従来のセンサを用いて 料をそのまま測定すると、電流値が上記特 の範囲を大きく外れるために正確な結果が られず、しかも稀少な当該試料や試薬を使 果たしてしまうことがあった。

 本発明は、上記課題に鑑みて為されたも であり、測定感度を維持しつつ流路の微小 を図ることができ、微量の試料に含まれる 象物質を確実に定量できる電気化学的セン 装置及びこれを用いた電気化学的測定方法 提供することをその目的の一つとする。

 上記課題を解決するための本発明の一実 形態に係る電気化学的センサ装置は、基板 形成された流路部と、前記流路部内を流通 る溶液に含まれる対象物質を電気化学的に 定するための作用電極と、を有する電気化 的センサ装置であって、前記流路部は、第 溶液及び第二溶液がそれぞれ流通する第一 部及び第二幹部と、前記第一幹部及び前記 二幹部の下流側に延びて前記作用電極が一 ずつ設けられた複数の測定部と、を含み、 記複数の測定部は、前記第一幹部から分岐 た枝部と前記第二幹路から分岐した枝部と 合流部分から下流側に延びて前記第一溶液 前記第二溶液との混合溶液が流通する合流 と、他の流路と合流することなく前記第一 部の下流側に延びて前記第一溶液が流通す 第一独立部と、他の流路と合流することな 前記第二幹部の下流側に延びて前記第二溶 が流通する第二独立部と、を含み、前記作 電極は、前記測定部の底面から突出して形 された導電性の複数の突出部を有すること 特徴とする。本発明によれば、測定感度を 持しつつ流路の微小化を図ることができ、 量の試料に含まれる対象物質を確実に定量 きる電気化学的センサ装置を提供すること できる。

 また、前記複数の突出部は、前記測定部 おける長手方向の流れの一部を遮るよう前 測定部を横切る板状に形成された複数の板 突出部と、柱状に形成された複数の柱状突 部と、を含み、前記複数の板状突出部は、 記長手方向において一部が重なり合うよう 置された一対の板状突出部を含み、前記複 の柱状突出部は、前記一対の板状突出部の に配置されることとしてもよい。また、こ 場合、前記一対の板状突出部は、一方が前 測定部の一方の側面から延び出し、他方が 記測定部の他方の側面から延び出している ととしてもよい。さらに、これらの場合、 記作用電極の上流端部分において前記測定 における長手方向の流れの一部を遮るよう 記測定部の一方の側面及び他方の側面から れぞれ延び出した一対の上流側提部と、前 作用電極の下流端部分において前記測定部 おける長手方向の流れの一部を遮るよう前 測定部の一方の側面及び他方の側面からそ ぞれ延び出した一対の下流側提部と、を有 ることとしてもよい。このようにすれば、 量の試料に含まれる対象物質をより確実に 量できる。

 上記課題を解決するための本発明の一実 形態に係る電気化学的測定方法は、上記い れかの電気化学的センサ装置を用いて、前 測定部を流通する溶液に含まれる前記対象 質を電気化学的に測定することを特徴とす 。本発明によれば、微量の試料に含まれる 象物質を確実に定量できる電気化学的測定 法を提供することができる。

 また、この電気化学的測定方法において 、前記対象物質の複数の濃度と、前記複数 濃度の各々に対応する電流値との相関関係 示す検量データを準備し、前記対象物質を む前記第一溶液を前記第一幹部に流入させ とともに前記対象物質を含まない前記第二 液を前記第二幹部に流入させて、前記合流 、前記第一独立部、及び前記第二独立部に いて前記作用電極により測定された電流値 、前記検量データと、に基づいて、前記第 溶液に含まれる前記対象物質の濃度を決定 ることとしてもよい。こうすれば、微量の 料に含まれる対象物質をより確実に定量で る。

本発明の一実施形態に係る電気化学的 ンサ装置の一例についての説明図である。 本発明の一実施形態に係る流路基板の 例についての平面図である。 本発明の一実施形態に係る電極基板の 例についての平面図である。 本発明の一実施形態に係る作用電極の 例についての断面図である。 本発明の一実施形態に係る柱状突出部 有する作用電極の一例についての平面図で る。 図5に示すVI-VI線で切断した電気化学的 ンサ装置の断面図である。 本発明の一実施形態に係る柱状突出部 板状突出部とを有する作用電極の一例につ ての平面図である。 図5に示すVIII-VIII線で切断した電気化学 的センサ装置の断面図である。 本発明の一実施形態に係る柱状突出部 板状突出部とを有する作用電極の他の例に いての平面図である。 本発明の一実施形態に係る柱状突出部 と板状突出部とを有する作用電極のさらに他 の例についての平面図である。 本発明の一実施形態に係る電気化学的 センサ装置の他の例についての説明図である 。 本発明の一実施形態に係る電気化学的 センサ装置のさらに他の例についての説明図 である。 本発明の一実施形態に係る電気化学的 測定方法の一例に含まれる主な工程を示すフ ロー図である。 本発明の一実施形態に係る作用電極の 一例についての電子顕微鏡写真である。 本発明の一実施形態に係る電極基板の さらに他の例についての説明図である。 本発明の一実施形態における電流値の 測定結果の一例についての説明図である。 本発明の一実施形態における電流値の 測定結果の他の例についての説明図である。 本発明の一実施形態において作製され た作用電極の条件についての説明図である。 本発明の一実施形態における実測結果 とシミュレーション結果とを対比して示す説 明図である。 本発明の一実施形態のシミュレーショ ンで得られた側面視における濃度分布の一例 を示す説明図である。 本発明の一実施形態のシミュレーショ ンで得られた平面視における濃度分布の一例 を示す説明図である。 本発明の一実施形態のシミュレーショ ンで得られた平面視における濃度分布の他の 例を示す説明図である。 本発明の一実施形態のシミュレーショ ンで得られた平面視における濃度分布のさら に他の例を示す説明図である。 本発明の一実施形態のシミュレーショ ンで得られた流路幅方向における濃度分布の 一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態のシミュレーショ ンで得られた反応量比の一例を示す説明図で ある。 本発明の一実施形態のシミュレーショ ンで得られた速度ベクトル分布の一例を示す 説明図である。 本発明の一実施形態に係る堤部を有す る電気化学的センサ装置の一例についての平 面図である。 図27に示すXXVIII-XXVIII線で切断した電気 化学的センサ装置の断面図である。 本発明の一実施形態における金黒形成 の効果を示す説明図である。

 以下に、本発明の一実施形態に係る電気 学的センサ装置(以下、「本装置」という。 )及び本装置を用いた電気化学的測定方法(以 、「本方法」という。)について説明する。 なお、本発明は、本実施形態に示す例に限ら れるものではない。

 図1は、本装置1の一例についての説明図 ある。図1に示すように、本装置1は、溶液が 流通する微小な流路であるマイクロ流路部10 形成された流路基板2と、当該溶液に含まれ る対象物質を電気化学的に測定するための三 つの作用電極20a,20b,20cが設けられた電極基板3 と、を備えている。

 なお、矢印Fの指す方向は、マイクロ流路 10の下流側方向を示している。また、以下の 明において、本装置1が同様の部分を複数有 する場合には、当該複数の部分に同一の数字 と互いに異なる小文字のアルファベットとを 組み合わせた符号を付して記載する(例えば 「作用電極20a,20b,20c」)ことがある。ただし これら複数の部分を特に区別する必要がな 場合には、アルファベットを省略して数字 みを付して記載する(例えば、「作用電極20 )。

 図1に示すように、流路基板2のうち、電 基板3に対向する、下方側の表面(下面2i)には 、マイクロ流路部10が形成されている。また 電極基板2の流路基板2に対向する上方側の 面(上面3i)のうち、マイクロ流路部10の一部 対応する部分には、作用電極20を含む電極系 が形成されている。これら流路基板2と電極 板3とを貼り合わせることにより、本装置1を 構成することができる。

 図2は、流路基板2を、その下面2i側から見 た平面図である。図3は、電極基板3を、その 面3i側から見た平面図である。図3において 、マイクロ流路部10が配置される位置を二 鎖線で示している。

 図1、図2に示すように、マイクロ流路部10 は、その上流側の端部に形成された、当該マ イクロ流路部10の外部から内部に溶液を流入 せるための第一流入部11a及び第二流入部11b 有している。第一流入部11a及び第二流入部1 1bには、流路基板2を貫通する円形の穴が形成 されている。

 そして、図1に示すように、第一流入部11a 及び第二流入部11bが流路基板2の上方側の表 2iiに開口する部分には、本装置1の外部から イクロ流路部10内に溶液を導くための第一 入管4a及び第二流入管4bがそれぞれ接続され いる。第一流入管4a及び第二流入管4bは、例 えば、シリコーンゴム製のチューブにより構 成することができる。

 また、図2に示すように、マイクロ流路部 10は、第一流入部11a及び第二流入部11bのそれ れから下流側に向けて互いに平行に隣接し 延びる第一幹部12a及び第二幹部12bを有して る。

 さらに、マイクロ流路部10は、第一幹部12 a及び第二幹部12bから分岐した複数の枝部13,14 を有している。すなわち、第一幹部12aの下流 端からは、第二幹部12b側及びその反対側にそ れぞれ直角に分岐して延びる第一合流枝部13a 及び第一独立枝部14aが形成されている。また 、第二幹部12bの下流端からは、第一幹部12a側 及びその反対側にそれぞれ直角に分岐して延 びる第二合流枝部13b及び第二独立枝部14bが形 成されている。第一合流枝部13aと第二合流枝 部13bとは、その下流端が第一幹部12aと第二幹 部12bとの間の位置で合流している。

 そして、図1~図3に示すように、マイクロ 路部10は、第一幹部12a及び第二幹部12bの下 側に延びて作用電極20が一つずつ設けられた 複数の測定部15,16を有している。すなわち、 イクロ流路部10は、第一合流枝部13aと第二 流枝部13bとの合流部分から下流側に延びる 流部15を有している。この合流部15は、第一 流枝部13aと第二合流枝部13bに対して直角に 曲して下流側に延びている。また、マイク 流路部10は、第一独立枝部14a及び第二独立 部14bのそれぞれの下流端(流路基板2の幅方向 外側の端部)からさらに下流側に、他の流路 合流することなく、合流部15と平行に延びる 第一独立部16a及び第二独立部16bを有している 。

 これら合流部15、第一独立部16a、第二独 部16bは、マイクロ流路部10の下流端部分を構 成しており、その各々の下流端は流路基板2 下流端に開口している。

 流路基板2を構成する材料は、特に限られ ず、目的に応じて任意の材料を用いることが でき、例えば、合成樹脂を好ましく用いるこ とができる。合成樹脂としては、例えば、ポ リメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル -スチレン共重合体等のアクリル系樹脂、ポ スチレン等のスチレン系樹脂、シクロオレ ィン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレン レフタレート、ポリ乳酸等のエステル系樹 、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン 樹脂、ポリカーボネート樹脂等を好ましく いることができる。

 また、流路基板2の作製方法は、特に限ら れず、目的に応じて任意の方法を用いること ができる。例えば、フォトリソグラフィを用 いてマイクロ流路部10に対応する形状の鋳型 作製し、当該金型を用いてシリコーン系樹 等の合成樹脂を成形する方法を好ましく用 ることができる。

 一方、図1、図3に示すように、電極基板3 おいては、その上面3iのうち、第一独立部16 aの中途部分に対応する位置に第一作用電極20 aが形成され、合流部15の中途部分に対応する 位置に第二作用電極20bが形成され、第二独立 部16bの中途部分に対応する位置に第三作用電 極20cが形成されている。

 すなわち、本装置1においては、マイクロ 流路部10のうち、第一独立部16a、合流部15、 二独立部16bの各々に、作用電極20が一つずつ 形成されている。また、これら三つの作用電 極20a,20b,20cは、それぞれ第一独立部16a、合流 15、第二独立部16bの上流端からの距離が等 い位置に形成され、マイクロ流路部10の流れ 方向において同一の位置に(すなわち、電極 板3の幅方向において直線的に)配置されてい る。

 さらに、電極基板3の上面3iのうち、当該 極基板3の幅方向の一方側の端部には、三つ の作用電極20a,20b,20cのそれぞれに対応する三 の作用電極パッド21a,21b,21cと、当該対応す 三つの作用電極20a,20b,20cと三つの作用電極パ ッド21a,21b,21cとをそれぞれ接続する三つのリ ド線22a,22b,22cと、が形成されている。

 また、電極基板3の上面3iのうち、作用電 20の下流側には、当該電極基板3の幅方向に いて、三つの測定部(第一独立部16a、合流部 15、第二部16b)に跨って延びる、導電性材料か ら形成された、帯状の一つの参照電極帯40が 成されている。さらに、電極基板3の上面3i うち、参照電極帯40の下流側には、当該参 電極帯40と平行に、当該電極基板3の幅方向 おいて、三つの測定部15,16に跨って延びる、 導電性材料から形成された、帯状の一つの対 向電極帯30が形成されている。

 そして、図1、図3に示すように、電極基 3の上面3iのうち、作用電極20と、作用電極パ ッド21と、参照電極帯40及び対向電極帯30のう ち測定部15,16と重複する部分と、当該参照電 帯40及び対向電極帯30のうち電極基板3の幅 向の一方側の端部分と、を除く部分は、絶 性材料からなる絶縁膜3iiにより覆われる。 の結果、参照電極帯40及び対向電極帯30のう 、絶縁膜3iiで覆われていない測定部15,16と 重複部分には、当該参照電極帯40及び対向電 極帯30の一部が露出してそれぞれ参照電極41 び対向電極31が形成される。なお、絶縁膜3ii は、例えば、電極基板2がガラス製である場 には、ポリイミド等から形成することがで る。

 この結果、本装置1においては、図3に示 ように、第一独立部16a内に、第一作用電極20 a、第一参照電極41a、第一対向電極31aからな 一組の第一電極系が形成される。また、合 部15内には、第二作用電極20b、第二参照電極 41b、第二対向電極31bからなる一組の第二電極 系が形成される。また、第二独立部16bには、 第三作用電極20c、第三参照電極41c、第三対向 電極31cからなる一組の第三電極系が形成され る。すなわち、三つの測定部15,16a,16bの各々 は、作用電極20、参照電極40、対向電極30が つずつ形成される。

 また、電極基板3の幅方向の一方側の端部 には、三つの作用電極パッド21a,21b,21cと、一 の参照電極パッド42と、一つの対向電極パ ド32と、が形成される。なお、参照電極パッ ド42は及び対向電極パッド32は、参照電極帯40 及び対向電極帯30のうち、絶縁膜3iiで覆われ いない、電極基板3の幅方向における一方端 部分である。

 本装置1において特徴的なことの一つは、 三つの作用電極20a,20b,20cの各々が、図1に示す ように、一群の突出部51を含む凹凸形状に形 されている点である。すなわち、作用電極2 0は、測定部15,16内に突出して形成された導電 性の突出部51を複数有している。また、この 用電極20は、測定部15,16の内面に沿って形成 された導電性の基部50を有している。図1に示 す例において、基部50は、電極基板3の上面3i 平板状に形成され、突出部51は、当該基部50 から上方に突出する円柱状に形成されている 。基部50と突出部51とは、これらの導電性表 を介して電気的に接続され、一体となって つの作用電極20を構成している。なお、図1 は、説明の便宜上、三つの作用電極20a,20b,20c のうち一つの第三作用電極20cを拡大して示し ているが、他の二つの作用電極20a,20bも同様 、基部50と複数の突出部51とを有して構成さ ている。

 図4には、この作用電極20を、一部の突出 51を通る面で切断した場合の断面図を示す 図4に示すように、複数の突出部51の各々は 基部50の表面に立設された立体的構造物とし て形成されている。

 すなわち、第一作用電極20aの突出部51、 二作用電極20bの突出部51、第三作用電極20cの 突出部51は、それぞれ第一独立部16a、合流部1 5、第二独立部16b内において、その流路高さ 向(電極基板3の上面3iに垂直な方向)に延びて いる。

 また、図1、図3に示すように、第一作用 極20a、第二作用電極20b、第三作用電極20cの 部50の幅(測定部15,16の長手方向に対して直交 する方向の長さ)は、それぞれ第一独立部16a 合流部15、第二独立部16bの幅と略同一となっ ている。そして、一群の突出部51は、基部50 幅方向の全域にわたって形成されている。

 また、基部50は、導電性の電極用材料か なる薄膜として形成されている。一方、突 部51の表面は、図4に示すように、電極用材 からなる電極薄膜52により構成されている。 すなわち、作用電極20は、基部50と、突出部51 の表面に形成された電極薄膜52と、が電気的 接続されて一体化した一つの電極表面を有 ている。この結果、作用電極20そのものが 基部50と突出部51とから構成される一体的な 凸形状で形成され、当該凹凸形状に基づく きな表面積の電極表面を有している。

 突出部51の形状、サイズ、数は、作用電 20の電極表面の面積を効果的に増加させるこ とができれば特に限られない。すなわち、突 出部51の形状は円柱状に限られず、例えば、 角柱状、円錐状、多角錘状等の柱状とする とができる。柱状の突出部51の径(突出部51 円柱状なら断面の直径、多角柱なら断面の 角形の対角線長さ)は、例えば、1~300μmの範 内とすることができ、1~100μmの範囲内とする ことが好ましく、5~50μmの範囲内とすること より好ましく、10~30μmの範囲内とすることが 特に好ましい。この柱状の突出部51のアスペ ト比(径に対する高さの比率)は、例えば、1~ 10程度とすることが好ましい。

 また、突出部51の形状は、柱状に限られ 、例えば、板状とすることもできる。また 一つの基部50上には、互いに異なる形状の複 数の突出部51を形成することもできる。

 突出部51の高さは、例えば、10~300μmの範 内とすることができ、10~100μmの範囲内とす ことが好ましく、10~50μmの範囲内とすること がより好ましい。また、隣接する突出部51の 隔は、当該突出部51の間を溶液が流通する とができる範囲で、目的に応じて適宜設定 ることができる。

 電極基板3を構成する材料は、特に限られ ず、目的に応じて任意の材料を用いることが でき、例えば、ガラスや合成樹脂を好ましく 用いることができる。合成樹脂としては、例 えば、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル 酸メチル-スチレン共重合体等のアクリル系 脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、シ ロオレフィン等のオレフィン系樹脂、ポリ チレンテレフタレート、ポリ乳酸等のエス ル系樹脂、ポリジメチルシロキサン等のシ コーン系樹脂、ポリカーボネート樹脂等を ましく用いることができる。

 作用電極20(基部50及び電極薄膜52を含む電 極表面)、作用電極パッド21、リード線22、対 電極帯30、参照電極帯40(図1、図3参照)を構 する電極用材料は、導電性を有する材料で れば特に限られず、例えば、金属、金属酸 物、炭素等の導電性を有する材料のうちか 目的に応じて選択された任意のものを用い ことができる。具体的には、例えば、金、 金、銀等の酸素過電圧の高い貴金属を好ま く用いることができる。また、例えば、作 電極20の表面には、金黒や白金黒を形成する こともできる。

 作用電極20や対向電極31を構成する材料と しては、例えば、貴金属等の腐食性が低い分 極性の材料を好ましく用いることができる。 また、参照電極41を構成する材料としては、 えば、銀/塩化銀等の非分極性の材料を好ま しく用いることができる。

 作用電極20の基部50、作用電極パッド21、 ード線22、対向電極帯30、参照電極帯40を形 する方法は、特に限られず、目的に応じて 意の方法を用いることができる。すなわち これらは、例えば、フォトマスク及びフォ レジストを用いたフォトリソグラフィと、 極用材料のスパッタリングと、を用いた方 により形成することができる。

 また、突出部51を構成する材料としては 使用に際して当該突出部51の形状を維持でき る自己支持性を有するものであれば特に制限 されず用いることができる。例えば、合成樹 脂、感光性樹脂、めっき用金属材料等を好ま しく用いることができ、コスト等の観点から 、合成樹脂を特に好ましく用いることができ る。

 合成樹脂としては、例えば、ポリメタク ル酸メチル、メタクリル酸メチル-スチレン 共重合体等のアクリル系樹脂、ポリスチレン 等のスチレン系樹脂、シクロオレフィン等の オレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレ ート、ポリ乳酸等のエステル系樹脂、ポリジ メチルシロキサン等のシリコーン系樹脂、ポ リカーボネート樹脂等を用いることができる 。なお、このような樹脂には、本来の性能を 損なわない限り着色剤、拡散剤、増粘剤等の 各種添加剤を含有させて用いることができる 。

 また、突出部51を形成する方法は、特に られず、目的に応じて選択された任意の方 を用いることができる。すなわち、例えば フォトリソグラフィ、モールドを用いた転 成形、三次元光造形、精密機械切削、ウェ トエッチング、ドライエッチング、レーザ 加工、放電加工等の方法を用いることがで 、要求される加工精度、コスト等を考慮し これらの方法のうち少なくとも一つを適宜 択して用いることができる。

 本実施形態においては、フォトリソグラ ィを用いて、作用電極20の基部50の上に、マ スクを介した紫外線照射により硬化させたフ ォトレジスト樹脂からなる突出部51を形成し いる。そして、また、突出部51の表面に金 は白金を蒸着することで、電極用材料から る電極薄膜52(図4参照)を形成している。

 また、突出部51は、少なくともその表面 導電性を有する電極用材料で形成されてい ばよく、上述のように、その表面に電極用 料からなる電極薄膜52が形成されるものに限 られない。例えば、突出部51自体を電極用材 で構成することもできる。また、例えば、 出部51をフォトレジスト樹脂等の樹脂で形 した後、当該突出部51を加熱して酸化するこ とにより、当該突出部51に導電性を付与する ともできる。

 また、モールドを用いた転写成形方法に り突出部51を形成する方法としては、例え 、金属構造体を金型とした樹脂成形方法を いることができる。この樹脂成形方法は、 属構造体の形状を高い転写率で樹脂成形体 再現することが可能であり、また汎用の樹 材料を使用することにより材料コストを低 できるため、好ましく用いることができる このような金属構造体の金型を用いる方法 、低コストであり、高い寸法精度を満足で る点で優れている。

 金属構造体を作製する方法としては、例 ば、フォトリソグラフィによって作製され レジスト構造体や三次元光造形によって作 された樹脂構造体へのメッキ処理、精密機 切削、ウェットエッチング、ドライエッチ グ、レーザー加工、放電加工等を用いるこ ができ、用途、要求される加工精度、コス 等を考慮してこれらのうちから適宜選択し 方法を用いることができる。

 このような方法を用いて作製された金属 造体を金型として用いて突出部51を成形す 方法としては、例えば、射出成形、プレス 形、モノマーキャスト成形、溶剤キャスト 形、ホットエンボス成形、押出成形による ール転写等の方法を用いることができ、要 される構造体形状、加工精度、コスト等を 慮してこれらのうちから適宜選択した方法 用いることができる。

 また、作用電極20の突出部51及び基部50に 、対象物質との相互作用により、当該作用 極20で測定可能な電流を発生させるための ンサ物質を固定することができる。このセ サ物質としては、例えば、対象物質と特異 に結合する物質を用いることができる。す わち、例えば、対象物質を抗原とする抗体 、対象物質を基質とする酵素を用いること できる。

 具体的に、センサ物質として抗体を用い 場合には、作用電極20の突出部51及び基部50 当該抗体を結合させておくことにより、当 抗体を介して溶液中の対象物質を当該突出 51及び基部50に固定することができる。この 場合、さらに、突出部51及び基部50に捕捉さ ている対象物質に酵素で標識された抗体を 合させ、次いで、当該酵素の基質を添加す ことにより、当該酵素と基質との反応に基 く電流を作用電極20に発生させることができ る。このようにして、突出部51及び基部50に 捉された対象物質の量に応じた電流を作用 極20で測定することができる。

 なお、対象物質がDNAやRNA等の核酸である 合には、当該対象物質とハイブリダイズ可 な塩基配列を有するDNAプローブ等の核酸プ ーブを用いることができる。この場合にも 上述の例と同様にして酵素反応に基づく電 を測定することができる。

 また、センサ物質と電極との間において 子の授受を媒介する、電子受容体(メディエ ータ)を用いることもできる。この場合、例 ば、フェロセンやベンゾキノン等のメディ ータを含む媒介層を突出部51及び基部50の表 に形成することができる。

 マイクロ流路部10を流れる溶液中の対象 質と、作用電極20の突出部51及び基部50に固 化されたセンサ物質と、の間で生化学的な 互作用が行われることにより、本装置1は、 感度なバイオセンサ装置として利用するこ ができる。

 図5及び図6には、作用電極20のより具体的 な一例を示す。図5は、作用電極20の平面図( 路基板2側から見た図)であり、図6は、図5に すVI-VI線で切断した当該作用電極20の断面図 である。ここでは、合流部15に設けられた作 電極20を例として説明する。なお、以下の 明では、図に示す矢印Fに沿った方向を、合 部15の長手方向といい、当該長手方向に対 て直交する方向を当該合流部15の幅方向とい う。

 この作用電極20は、合流部15の底面15i(電 基板3の一部)に沿って形成された平板状の基 部50と、各々が当該基部50から突出する柱状 形成された複数の突出部51と、を有している 。

 基部50は、合流部15の底面15iの幅方向全域 に形成されている。すなわち、基部50の幅W2 、合流部15の幅(一方の側面15iiから他方の側 15iiiまでの距離)W1と等しくなっている。

 突出部51の高さH2は、基部50上を流通する 液の高さ(すなわち基部50と合流部15の上面( 路基板2の一部)15ivとの距離)H1よりも僅かに さくなっている。なお、この突出部51の高 H2は、溶液の高さH1と等しくすることもでき 。

 複数の突出部51は、一定の間隔で規則的 配置されている。隣接する突出部51間の距離 は任意に設定することができるが、例えば、 当該突出部51の径と等しい又は当該径より小 いことが好ましい。

 また、合流部15の長手方向において上流 と下流側とに隣接して配置される突出部51は 、当該長手方向において互いにずれた位置に 配置されている。すなわち、例えば、図5に す一点鎖線Uで囲まれた列(上流列)及び一点 線Dで囲まれた列(下流列)に着目すると、当 上流列において幅方向に隣接する一対の突 部51aの隙間の下流側に、下流列の突出部51b 配置されている。

 図7及び図8には、作用電極20の他の例を示 す。図7は、作用電極20の平面図であり、図8 、図7に示すVIII-VIII線で切断した当該作用電 20の断面図である。

 この作用電極20は、合流部15の底面15iに沿 って形成された平板状の基部50と、各々が当 基部50から突出する板状に形成された複数 板状突出部51aと、各々が当該基部50から突出 する円柱状に形成された複数の柱状突出部51b と、を有している。

 基部50の幅W2は、上述の例と同様に、合流 測定部15の幅W1と等しくなっている。板状突 部51aの高さH3及び柱状突出部51bの高さH4は、 部50上を流通する溶液の高さH1と等しくなっ ている。

 板状突出部51aは、合流部15における長手 向の流れの一部を遮るよう当該合流部15を横 切って延びている。すなわち、この例におい て、板状突出部51aは、合流部15の幅方向に延 ている。

 また、合流部15の長手方向において隣接 て並行に配置されている一対の板状突出部51 aは、当該長手方向において一部が重なり合 よう配置されている。すなわち、例えば、 も上流側の板状突出部51aUの一部と、その下 側の板状突出部51aDの一部と、は合流部15の 手方向において重なり合う位置に設けられ いる。

 また、この一対の板状突出部51aU,51aDのう 、上流側の板状突出部51aUは合流部15の一方 側面15iiから延び出し、下流側の板状突出部 51aDは当該合流部15の他方の側面15iiiから延び している。

 この結果、合流部15の長手方向において 接して並行に配置されている一対の板状突 部51aの間には、幅方向に延びる副流路53が形 成されている。すなわち、作用電極20の上流 部分においては、合流部15のうち、最も上 側の板状突出部51aUと合流路15の側面15iiiとの 間にのみ隙間が形成されている。一方、この 隙間の下流側は、下流側に隣接する板状突出 部51aDのよって遮られている。そして、この 流側の板状突出部51aDと合流路15の側面15iiと 間にのみ隙間が形成されている。

 このため、作用電極20の上流側において 流部15を流通してきた溶液は、上流側の板状 突出部51aUと当該合流部15の側面15iiiとの隙間 ら、当該上流側の板状突出部51aUと下流側の 板状突出部51aDとの間に形成された空間であ 副流路53に流入する。そして、溶液は、一対 の板状突出部51aU,51aDに沿って幅方向に流通し 、下流側の板状突出部51aDと合流部15の側面15i iとの隙間から、下流側に流出する。

 このように、一対の板状突出部51aU,51aDは 合流部15における長手方向の流れ(主流れ)を 、当該合流部15における幅方向の流れ(副流れ )に切り換える役割を果たす。

 そして、副流路53の幅(一対の板状突出部5 1aU,51aDの間隔)W3は、合流部15の幅W1より小さく なっている。このため、溶液の流量を一定に 維持する場合、主流れにおける溶液の線速度 に比べて、副流れにおける溶液の線速度は増 加する。したがって、主流れに比べて、副流 れにおいては、より乱れた流れが生じやすく 、物質移動が促進される。

 さらに、この副流路53には、複数の柱状 出部51bが設けられている。特に、図7に示す においては、副流路53に沿った方向(合流部1 5の幅方向)において隣接して配置される突出 51bは、当該幅方向において互いにずれた位 に配置されている。すなわち、例えば、一 鎖線Uで囲まれた上流側の列に含まれる柱状 突出部51bUと下流側の板状突出部51aDとの隙間 幅方向には、一点鎖線Dで囲まれた下流側の 列に含まれる柱状突出部51bDが配置されてい 。

 このため、副流路53において溶液は、効 よく柱状突出部51bに接触しながら幅方向に 通することができる。しかも、上述のよう 、副流路53内の線速度は大きくなっているた め、当該副流路53内においては、柱状突出部5 1bによって極めて効果的に流れを乱すことが きる。すなわち、副流路53においては、溶 に含まれる対象物質と柱状突出部51b及び板 突出部51aとを効率よく接触させることがで る。

 図9は、作用電極20のさらに他の例につい の平面図である。図9に示す作用電極20は、 7及び図8に示した作用電極20に類似して、平 板状の基部50と、複数の板状突出部51aと、複 の柱状突出部51bと、を有している。

 この例においては、合流部15の一方の側 15iiと他方の側面15iiiとの間にそれぞれ隙間 形成されるよう設けられた板状突出部51aUと これに隣接して設けられ、当該一方の側面1 5iiから延びる板状突出部51aDR及び当該他方の 面15iiiから延びる板状突出部51aDLと、が設け られている。

 したがって、合流部15を流通する溶液は 上流側の板状突出部51aUと両側面15ii,15iiiとの 二つの隙間から副流路53に流入し、下流側の 対の板状突出部51aDR,51aDLの一つの隙間から 流側に流出する。また、この副流路53内にお いて、副流れは、複数の柱状突出部51bとの接 触によって効果的に乱される。

 図10は、作用電極20のさらに他の例につい ての平面図である。図10に示す作用電極20も た、平板状の基部50と、複数の板状突出部51a と、複数の柱状突出部51bと、を有している。

 この例においては、合流部15の幅方向に いて、複数の板状突出部51aが所定の間隔で 列的に配置されている。したがって、合流 15を流通する溶液は、幅方向に並んだ板状突 出部51aの隙間から下流側に流通し、その過程 で複数の柱状突出部51bと効率よく接触する。

 図11には、本装置1の他の例についての説 図を示す。図11に示す例において、マイク 流路部10は、図1~図3に示した上述の例と同様 に、二つの流入部11a,11bと、二つの幹部12a,12b 、を有している。

 一方、このマイクロ流路部10は、上述の とは異なり、第一幹部12aから分岐した枝部 、第二幹部12bから分岐した枝部と、の合流 分から下流側に延びる複数の合流部18,15を有 している。

 また、マイクロ流路部10は、他の流路と 流することなく第一幹部12aの下流側に延び 複数の第一独立部19a,19c,16aと、他の流路と合 流することなく第二幹部12bの下流側に延びる 複数の第二独立部19b,19d,16bと、を有している

 そして、これら合流部18,15及び独立部19,16 のうち、流路の分岐と合流が複数段階繰り返 された結果形成された、三つの合流部15a,15b,1 5c、及び二つの独立部16a,16bには、作用電極20 一つずつ設けられている。

 すなわち、図11に示すように、第一独立 16aには第一作用電極20aが設けられ、第一合 部15aには第二作用電極20bが設けられ、第二 流部15bには第三作用電極20cが設けられ、第 合流部15cには第四作用電極20dが設けられ、 二独立部16bには第五作用電極20eが設けられ いる。また、図1~図3に示した上述の例と同 に、5つの測定部15,16には、参照電極帯40の互 いに異なる一部である参照電極(不図示)が一 ずつ設けられるとともに、対向電極帯30の いに異なる一部である対向電極(不図示)が一 つずつ設けられている。そして、本装置1に いて、基板2,3の幅方向の端部には、五つの 用電極20のそれぞれに対応する五つの作用電 極パッド21a,21b,21c,21d,21eと、五つの参照電極 共通の一つの参照電極パッド42と、五つの対 向電極に共通の一つの対向電極パッド32と、 設けられている。

 第一段階の分岐及び合流により形成され 合流部18aには、第一幹部12aに流入した第一 液と第二幹部12bに流入した第二溶液とが混 された第一混合溶液が流通する。また、第 段階の分岐により形成された第一独立部19a び第二独立部19bには、それぞれ第一溶液及 第二溶液がそのまま流通する。

 第二段階の分岐及び合流により形成され 第一合流部18b及び第二合流部18cには、第一 合溶液と第一溶液とが混合された第二混合 液及び当該第一混合溶液と第二溶液とが混 された第三混合溶液がそれぞれ流通する。 た、第二段階の分岐により形成された第一 立部19c及び第二独立部19dには、それぞれ第 溶液及び第二溶液がそのまま流通する。

 そして、第三段階の分岐及び合流により 成された三つの合流部15a,15b,15cには、第一 液と第二溶液とが互いに異なる比率で混合 れた、互いに組成の異なる混合溶液が流通 る。すなわち、第一合流部15aには、第二混 溶液と第一溶液とが混合した第四混合溶液 流入し、第二合流部15bには、第二混合溶液 第三混合溶液とが混合した第五混合溶液が 入し、第三合流部15cには、第三混合溶液と 二溶液とが混合した第六混合溶液が流入す 。また、第三段階の分岐により形成された 一独立部16a及び第二独立部16bには、それぞ 第一溶液及び第二溶液がそのまま流通する

 したがって、例えば、第一溶液が対象物 を含む試料溶液であり、第二溶液が当該試 溶液を希釈するための、当該対象物質を含 ない希釈溶液である場合には、中央の三つ 合流部15a,15b,15cには、当該試料溶液が当該 釈溶液によって互いに異なる希釈率で希釈 れた第四混合溶液、第五混合溶液、第六混 溶液がそれぞれ流通する。このため、本装 1においては、三つの合流部15a,15b,15cに形成 れた三つの作用電極20b,20c,20dにより、第四混 合溶液、第五混合溶液、第六混合溶液に含ま れる対象物質の各濃度に応じた電流値をそれ ぞれ測定することができる。

 また、希釈溶液によって希釈されていな 試料溶液の原液と、試料溶液と混合してい い希釈溶液の原液と、はそれぞれマイクロ 路部10の一方端に形成された第一独立部16a の作用電極20a、当該マイクロ流路部10の他方 端に形成された第二独立部16b内の作用電極20e により測定することができる。

 このように、図11に示すマイクロ流路部10 は、当該マイクロ流路部10に互いに独立に流 した第一溶液及び第二溶液を他の溶液と混 することなくそのまま下流端まで流通させ 独立部12,19,16を有するとともに、流路の分 と合流が、並列に配置される流路の数を増 させながら段階的に繰り返される流路構造 有している。

 図12には、本装置1のさらに他の例につい の説明図を示す。図12に示す例において、 イクロ流路部10は、図11に示した例と同様に 流路の分岐と合流を複数段階にわたって繰 返す構造となっているが、特に、各流路が 行しながら下流側に延びている。この例に るマイクロ流路部10においては、蛇行した 路を有することにより、例えば、当該各流 内において溶液の混合を促進することがで る。

 次に、本装置1を用いた本方法について説 明する。図13は、本方法の一例に含まれる主 処理を示すフロー図である。図13に示すよ に、本方法は、本装置1の作用電極20に一定 電圧を印加する印加工程S100と、当該本装置1 のマイクロ流路部10内に対象物質を含む溶液 流通させる流通工程S200と、当該作用電極20 流れる電流値を測定する測定工程S300と、を 含んでいる。

 印加工程S100においては、例えば、本装置 1のマイクロ流路部10に所定の溶液を満たし、 作用電極パッド21、対向電極パッド32、参照 極パッド42(図1、図3、図11参照)をそれぞれ外 部電源を備えた電圧印加装置(例えば、ポテ ショスタット)に接続して、作用電極20に一 の電圧を印加する。作用電極20に印加する電 圧の大きさは、目的に応じて適宜設定するこ とができるが、例えば、対象物質の酸化に十 分な正の電圧、又は対象物質の還元に十分な 負の電圧を作用電極20に印加することができ 。

 流通工程S200においては、例えば、マイク ロ流路部10の流入部11に接続された流入管4(図 1参照)を、微小な流量で溶液を圧送できるポ プ装置(例えば、マイクロシリンジポンプ装 置)に接続し、当該流入部11を介して当該マイ クロ流路部10に対象物質を含む溶液を流入さ る。このとき、流入した溶液は、マイクロ 路部10の各測定部15,16内において、当該各測 定部15,16に形成された作用電極20が有する複 の突出部51の間を縫って流通する。すなわち 、図1、図4、図5、図6に示すように、各突出 51が円柱状に形成されている場合には、溶液 は、当該各突出部51の円形先端面及び円柱側 に接触しながら流通する。

 測定工程S300においては、例えば、本装置 1に接続された電圧印加装置が備える電流測 装置によって、マイクロ流路部10内の溶液に 含まれる対象物質と作用電極20との相互作用 より発生した電流を測定する。すなわち、 えば、印加工程S100において、作用電極20に 対象物質の酸化に十分な正の電圧を印加し 場合には、還元体である対象物質は当該作 電極20の電極表面(図4に示す基部50、及び突 部51の電極薄膜52)上で酸化される。この結 、測定工程S300においては、この対象物質の 化に伴って作用電極20に流れる電流を測定 ることができる。

 このようにして、本方法においては、例 ば、図1~図3に示す本装置1を用いて、そのマ イクロ流路部10のうち、測定部15,16を流通す 溶液に含まれる対象物質を、当該測定部15,16 に形成された作用電極20により電気化学的に 定することができる。

 ここで、本装置1において、作用電極20は 上述のとおり、一群の突出部51を有する凹 形状に形成され(図1、図4~図10参照)、その電 表面の面積を大きく確保できているため、 感度の測定が可能となる。すなわち、例え 、作用電極20の突出部51は、測定部15,16にお て底面15iから突出して流路高さ方向に延び いるため、当該突出部51は、当該作用電極20 の基部50近傍のみならず、当該基部50から離 た位置を流れる溶液に含まれている対象物 とも効率的に接触することができる。

 この結果、本装置1が備える凹凸形状の作 用電極20によれば、その大きな電極表面積を 用して、溶液中の対象物質が微量の場合で っても、当該作用電極20が基部50のみからな る場合に比べて、大きな電流値を得ることが できる。

 また、測定部15,16内の溶液は、作用電極20 の基部50上において突出部51に衝突しながら 通するため、当該基部50上において当該溶液 の流れを効果的に乱すことができる。このた め、溶液に含まれる対象物質を、突出部51及 基部50と効率よく接触させることができる

 特に、図7~図10に示すように、作用電極20 板状突出部51aと柱状突出部51bとを有する場 には、溶液を当該板状突出部51aにより形成 れた副流路53に流通させるとともに、当該 流路53内で当該柱状突出部51bによって当該溶 液の流れを効果的に乱すことができる。

 また、図5~図10に示すように、上流側の列 の柱状突出部51と、下流側の列の柱状突出部5 1と、を互いにずれた位置に配置することに り、流れの上流側に配置された柱状突出部51 と接触することなく通過した対象物質を、下 流側の柱状突出部51と効率よく接触させるこ ができる。

 したがって、本装置1においては、十分な 測定感度を維持しながら、従来の平板状の作 用電極を備えた装置に比べて、マイクロ流路 部10を効果的に微小化することができる。

 また、例えば、図1~図3に示す本装置1を用 いた本方法において、第一幹部12a及び第二幹 部12bに、少なくとも一方が対象物質を含み、 互いに組成が異なる第一溶液及び第二溶液を それぞれ流入させて、合流部15において、当 合流部15に形成された一つの作用電極20bに り、当該第一溶液と当該第二溶液とが混合 てなる混合溶液に含まれる当該対象物質を 気化学的に測定することができる。

 同様に、例えば、図11に示すような本装 1を用いる場合には、三つの合流部15a,15b,15c おいて、第一溶液と第二溶液とが互いに異 る比率で混合された三種類の混合溶液に含 れる対象物質を測定することができる。

 凹凸形状に形成された作用電極20を備え 本装置1においては、測定感度を維持しつつ 流路を微小化できるため、上述のように流 の分岐と合流を繰り返し、且つ溶液の混合 良好に行われるマイクロ流路部10を備える とができる。この結果、本装置1においては 対象物質を広範な濃度範囲で確実に測定す ことができる。

 また、例えば、図1~図3に示す例に係る本 置1を用いた本方法において、第一幹部12aに 対象物質を含む試料溶液を流入させ、第二幹 部12bに当該試料溶液を希釈するための希釈溶 液を流入させて、第一独立部16a及び合流部15 おいて、作用電極20と対象物質との相互作 に基づく電流値を測定するとともに、第二 立部16bにおいて、作用電極20と当該希釈溶液 との相互作用に基づく電流値を測定すること ができる。すなわち、この場合、対象物質を 異なる濃度で含む溶液と、希釈溶液そのもの と、の両方を作用電極20で測定することによ 、当該希釈溶液そのものの測定結果を参照 果(ブランク)とした上で、当該対象物質の 定結果を評価することができる。

 また、同様に、例えば、図11に示すよう 本装置1を用いた本方法においては、第一独 部16a及び三つの合流部15a,15b,15cにおいて、 用電極20と対象物質との相互作用に基づく電 流値を測定するとともに、第二独立部16bにお いて、作用電極20と希釈溶液との相互作用に づく電流値を測定することができる。

 この場合には、試料溶液の希釈に用いた 釈溶液自体の測定結果をブランクとして一 の作用電極20eにより取得するとともに、希 率の互いに異なる四種類の試料溶液を四つ 作用電極20a,20b,20c,20dで測定できる。したが て、例えば、本装置1の各作用電極20に、対 物質を抗原として認識する抗体(センサ物質 )を固定化してバイオセンサ装置を構成する とにより、従来、比較的大きなウェルプレ トと希釈用ロボットとを用いて行われてい 酵素免疫測定法(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay:E LISA)を、簡便且つ迅速に行うことが可能とな 。なお、この場合も、上述のように、各作 電極20に捕捉されている対象物質に酵素標 抗体を結合させるとともに、当該酵素の基 を溶液中に添加して、当該酵素と基質との 応に基づく電流を測定することができる。

 ここで、本装置1を用いて、ELISAを実施す 本方法の具体的な一例について説明する。 の例においては、本装置1を、骨粗鬆症を診 断するためのチップ型バイオセンサ装置とし て用いる。骨粗鬆症の症状を判断する指標と しては、骨代謝マーカー(骨吸収マーカー及 骨形成マーカーを含む)と呼ばれる種々のタ パク質が知られている。ここでは、骨形成 ーカーとして知られるヒト骨型アルカリフ スファターゼ(BAP)を対象物質として選択し 本装置1を用いたELISA法によって当該BAPの定 を行う例について説明する。

 まず、図11に示すような、複数の合流部15 を備えた本装置1を準備する。この本装置1に いては、各測定部15,16に設けられた作用電 20の表面(基部50及び突出部51の表面)に、セン サ物質として抗BAP抗体(一次抗体)を固定して く。

 次に、患者から採取された、BAPを未知の 度で含む試料溶液を、第一流入部11aから第 幹部12aに流入させるとともに、BAPを含まな 希釈用の溶液を第二流入部11bから第二幹部1 2bに流入させる。

 この結果、第一独立部16aから第二独立部1 6bまで、五つの測定部15,16には、BAPの線形濃 勾配が形成される。そして、各測定部15,16の 作用電極20には、当該各測定部15,16に流入し 溶液中の濃度に応じた量のBAPが抗BAP抗体を して結合する。なお、例えば、第一溶液、 二溶液又はこれらの混合溶液が各測定部15,16 に到達した時点で送液を停止し、所定時間イ ンキュベートすることにより、試薬の量を節 約しつつ、作用電極20における抗原抗体反応 確実に行わせることもできる。

 その後、洗浄用の溶液を第一流入部11a及 第二流入部11bから流入させて、五つの測定 15,16を十分に洗浄する。溶液は、各測定部15 ,16の下流端から本装置1外に排出することが きる。

 次いで、酵素(例えば、β-galactosidase(β-gal) )を標識した抗BAP抗体(二次抗体)を含む溶液を 第一流入部11a及び第二流入部11bから流入させ る。これによって、各測定部15,16の作用電極2 0には、当該作用電極20に固定化されたBAPの量 に応じた量の酵素標識抗BAP抗体が結合する。 なお、この場合も、上述のように送液を停止 した状態でインキュベーションを行うことに より、作用電極20における抗原抗体反応を確 に行わせることができる。

 次いで、作用電極20上の二次抗体に結合 ている酵素の基質(例えば、β-galの基質であ p-aminophenyl-β-D-galactopyranoside(PAPG))を含む溶液 を第一流入部11a及び第二流入部11bから流入さ せるとともに、本装置1に接続した電圧印加 置(例えば、ポテンショスタット)により、五 つの測定部15,16の各作用電極20に所定の電圧( えば、+0.7V)を印加する。

 この結果、基質と二次抗体の酵素との反 に伴う電流値(例えば、PAPGとβ-galとの反応 より生成されたp-imminoquinoneが作用極20上で酸 化されることで発生する酸化電流値)を作用 極20によって測定することができる。この電 流値は、作用電極20に固定されたBAPの量に応 た値、すなわち各作用電極20と接触した溶 中に含まれたBAPの濃度に応じた値となる。

 そして、このようにして測定された電流 に基づいて、試料溶液に含まれていたBAPの 度を決定する。すなわち、ここでは、予備 験において、BAPの複数の濃度と、当該複数 濃度の各々に対応する電流値と、の相関関 を示す検量データを準備する。具体的に、 えば、BAP濃度と電流値との直線関係を示す 量線を予め取得しておく。

 そして、試料溶液の原液、希釈された試 溶液、希釈に用いられた希釈用溶液につい 測定された電流値と、検量データと、に基 いて、当該原液に含まれていた対象物質の 度を決定する。すなわち、例えば、検量デ タにおいて作用電極20で得られた電流値に 応している濃度を、当該作用電極20と接触し た溶液中のBAP濃度と決定することができる。 この溶液が試料溶液を希釈したものであれば 、希釈率を考慮して、当該試料溶液中のBAP濃 度を決定することができる。

 ここで、検量データにおいて、BAPの特定 濃度範囲内においてのみ、当該BAPの濃度と 流値との間に直線関係が得られる場合、作 電極20と接触させる溶液中のBAP濃度は、当 特定の濃度範囲内であることが好ましい。 れに対し、患者から採取された試料溶液中 BAP濃度は未知であり、検量データにおける 記特定の濃度範囲を大きく上回ることもあ 。このため、ELISA法を実施するにあたっては 、希釈用溶液によって試料溶液を様々な率で 段階的に希釈して、様々なBAP濃度の測定用溶 液を調製し、各測定用溶液について測定を行 う必要がある。

 しかしながら、従来のピペットや分注ロ ットと、マルチウェルプレートと、を用い ELISA法においては、所定量以上の試料溶液 必要であるため、試料溶液が微量の場合に 適切に実施することが困難であった。

 これに対し、本装置1においては、マイク ロ流路部10によって、微量の試料溶液から、B AP濃度が所望の線形関係となる複数の希釈率 測定用溶液を簡便且つ確実に調製すること できる。しかも、各作用電極20は、上述の うに、突出部51を有することにより溶液中の 対象物質と効率よく接触することができる。

 このため、本装置1の微小化と、これを用 いたBAPの高感度な定量と、が可能となる。し たがって、本装置1を用いたELISA法においては 、従来のELISA法に比べて、試料溶液の量を顕 に低減することができる。また、BAPの検出 用いる試薬の量も顕著に低減できるため、 量の試料溶液に含まれる微量のBAP物質を、 量の希少な試薬を用いて簡便且つ確実に定 することもできる。

 なお、さらに多様な希釈率の試料溶液を 製する必要がある場合であっても、各測定 15、16に凹凸形状の作用電極20を一つずつ備 た本装置1においては、測定の感度を維持し つつマイクロ流路部10を微小化することが可 であるため、例えば、図11及び図12で示した ような希釈流路構造を発展させた、より多様 な希釈が可能なマイクロ流路部10を有する本 置1を用いることができる。

[実施例1]
 ガラス製の平坦な基板(直径76.2mm、厚さ0.05mm )を25質量%アンモニア水と30質量%過酸化水素 と純水とを1:1:4の体積比で混合し沸騰させた 水溶液に浸漬した。この基板をさらに沸騰し た純水にてすすぎ、その後、自然乾燥させた 。

 乾燥後の基板に、ポジ型フォトレジスト( S1818、Rohm and Haas Electronic Materials LLC製)を 500rpm(5秒)、2000rpm(10秒)の条件でスピンコート した。スピンコート後の基板を80℃で30分間 ークし、暗所にて自然冷却した。

 さらに、この基板に対し、参照電極(500μm ×2mm)、対向電極(500μm×4mm)、電極パッド(2mm×4m m)及びリード線に対応する形状の開口が形成 れたマスクを介して、マスクアライナー(ミ カサ株式会社製)にて紫外線を60秒間照射した 。露光後の基板を現像液(MF319、Rohm and Haas E lectronic Materials LLC製)に浸漬し、1分間現像を 行った。現像後の基板を蒸留水で洗浄後、窒 素中で乾燥させた。

 この基板に、スパッタリング装置(芝浦メ カトロニクス株式会社製)を用い、出力100W、0 .3Paのアルゴン雰囲気下にて、クロムを5分間 パッタした。次いで、クロム層の上に、同 件にて、白金を30分間スパッタした。そし 、この基板をアセトン(関東化学株式会社製) に2時間浸漬し、リフトオフを行った。こう て、基板上に白金薄膜を有する対向電極を 成した。

 次に、この基板に、ポジ型フォトレジス (S1818、Rohm and Haas Electronic Materials LLC製) 、500rpm(5秒)、2000rpm(10秒)の条件でスピンコー トした。スピンコート後の基板を80℃で30分 ベークし後、暗所にて自然冷却した。

 そして、この基板に対し、参照電極部分 対応する形状の開口が形成されたマスクを して、マスクアライナー(ミカサ株式会社製 )にて紫外線を60秒間照射した。露光後の基板 を30℃のトルエン中に浸漬し、30秒間撹拌し 。この基板を80℃で30分間ベークし、暗所で 然冷却した。さらに、この基板を現像液(MF3 19、Rohm and Haas Electronic Materials LLC製)に浸 し、1分間現像を行った。現像後の基板を蒸 水で洗浄後、窒素中で乾燥させた。

 この基板に、スパッタリング装置(芝浦メ カトロニクス株式会社製)を用いて、出力100W 0.3Paのアルゴン雰囲気下にて、銀を12分間ス パッタした。そして、この基板をアセトン( 東化学株式会社製)に2時間浸漬し、リフトオ フを行った。

 次に、この基板に、ポリイミド(セミコフ ァイン、東レ株式会社製)を、700rpm(10秒)、4000 rpm(30秒)の条件でスピンコートした。スピン ート後の基板を80℃で30分間ベークした。さ に、ポジ型フォトレジスト(S1818、Rohm and Ha as Electronic Materials LLC製)を、500rpm(5秒)、2000r pm(10秒)の条件でスピンコートした。スピンコ ート後の基板を80℃で30分間ベークし、暗所 て自然冷却した。

 そして、この基板に対し、作用電極(500μm ×500μm)、参照電極、対向電極の各電極部分に 対応する形状の開口が形成されたマスクを介 して、マスクアライナー(ミカサ株式会社製) て紫外線を60秒間照射した。露光後の基板 99.5%エタノール(関東化学株式会社製)に5分間 浸漬することで、不要なポリイミドを除去し た。この操作を2回繰り返した。この基板を15 0℃で15分間、その後200℃で15分間、さらに300 で30分間、順次ベークして、当該基板上の リイミドを硬化させ、絶縁膜を形成させた

 この基板を所定の容器内にて25℃の1.0MのK Cl-HCl緩衝液(pH2.2)中に浸漬した。さらに、こ 容器内に銀/塩化銀参照電極(株式会社堀場製 作所製)、及び白金対向電極を浸漬し、基板 参照電極部分と、当該参照電極及び白金対 電極と、をガルバノスタット(北斗電工株式 社製)に接続した。そして、0.1μAの電流を5 間印加することで当該参照電極部分に塩化 を形成させた。その後、基板を蒸留水で洗 後、自然乾燥させた。こうして、基板上に /塩化銀薄膜を有する参照電極を形成した。

 次に、この基板上に、ネガ型フォトレジ ト(SU―8―25、化薬マイクロケム株式会社製) を500rpm(10秒)、800rpm(30秒)の条件でスピンコー した。スピンコート後の基板を65℃のホッ プレートで5分間ベークし、さらに95℃のホ トプレートで15分間ベークした後、暗所にて 自然冷却した。

 そして、この基板に対し、作用電極部分 対応する範囲内に、直径20μmの円形の開口 、当該円の中心間距離が40μmとなるよう規則 的な配置で形成されたマスクを介して、マス クアライナー(ミカサ株式会社製)にて紫外光 180秒間照射した。露光後の基板を65℃のホ トプレートで1分間ベークし、さらに95℃の ットプレートで4分間ベークした。そして、 の基板を現像液(SU-8 Developer、化薬マイクロ ケム株式会社製)に浸漬し、5分間現像を行っ 。現像後の基板を窒素中で乾燥させた。こ して、作用電極部分の範囲内に、直径20μm 高さが50μmの円柱状の突起(ピラー)を143本形 した。

 この基板を、ダイシングソー(株式会社東 京精密製)にて15mm×20mm角に切断した。切断後 基板を純水で洗浄して自然乾燥させた。さ に、この基板に、作用電極部分に対応する 状の開口が形成されたメタルマスクをポリ ミドテープで固定した後、スパッタリング 置(芝浦メカトロニクス株式会社製)を用い 、出力100W、0.3Paのアルゴン雰囲気下にて、 ロムを5分間スパッタした。次いで、クロム の上に、同条件にて、白金を30分間スパッ した。こうして、複数のピラー表面を含む 金の電極表面を有する作用電極を形成した

 図14には、このようにして作成された作 電極20の電子顕微鏡写真を示す。図14に示す うに、作用電極20は、基部50と、当該基部50 に突出して形成され、その各々の表面に白 薄膜が形成された複数の円柱状のピラー51 有していた。なお、図14に示す白線の長さは 100μmを示す。

 このようにして、図15に示すように、複 のピラー51を有する白金作用電極20、銀/塩化 銀参照電極41、白金対向電極31を備えた電極 板3を作製した。

[実施例2]
 上述のようにして作製した電極基板3の作用 電極20、銀/塩化銀参照電極41(株式会社堀場製 作所製)、白金対向電極31を所定の容器内で0.1 MのKH 3 PO 4 及び0.1MのKClを含むリン酸緩衝液(pH7.4)中に浸 し、当該電極基板3の作用電極20、当該銀/塩 化銀参照電極41、当該白金対向電極31をそれ れポテンショスタット(北斗電工株式会社製) に接続した。そして、+0.7Vの定常電圧を印加 ながら、リン酸緩衝液に100mMのH 2 O 2 溶液を200μL滴下し、その時の電流値を測定し た。同様に、H 2 O 2 溶液の追加的な滴下及び滴下後の電流値の測 定を数回繰り返した。

 また、上述の電極基板3の作製方法と同様の 方法により、ピラー51が形成されていない作 電極(500μm×500μm)(すなわち、基部50のみ)を する対照基板を作製した。そして、この対 基板を用いて、上述の電極基板の場合と同 に、H 2 O 2 溶液の滴下及び滴下後の電流値の測定を行っ た。

 図16には、H 2 O 2 溶液の滴下量に対応するリン酸緩衝液中のH 2 O 2 濃度と、各H 2 O 2 濃度において測定された電流値と、の関係を 示す。図16において、横軸はH 2 O 2 の濃度(mM)、縦軸は測定された電流値(nA)をそ ぞれ示す。また、四角印は電極基板3を用い た測定結果、菱形印は対照基板を用いた測定 結果をそれぞれ示す。図16に示すように、同 のH 2 O 2 濃度では、電極基板3において、対照基板に べ、1.5~1.8倍の電流値が得られた。

[実施例3]
 25質量%アンモニア水と30質量%過酸化水素水 純水とを1:1:4の体積比で混合し沸騰させた 溶液により洗浄したガラス製の平坦な基板 に、ネガ型フォトレジスト(SU―8―25、化薬 イクロケム株式会社製)を500rpm(10秒)、750rpm(30 秒)の条件でスピンコートした。スピンコー 後の基板を65℃のホットプレートで5分間ベ クし、さらに95℃のホットプレートで15分間 ークした後、暗所にて自然冷却した。

 さらに、この基板に対し、図15に示す作 電極20、参照電極41、対向電極31を含む一本 直線的なマイクロ流路部(0.5mm×16.5mm)に対応 る形状の開口が形成されたマスクを介して マスクアライナー(ミカサ株式会社製)にて紫 外光を120秒間照射した。露光後の基板を65℃ ホットプレートで1分間ベークし、さらに95 のホットプレートで4分間ベークした。そし て、この基板を現像液(SU-8 Developer、化薬マ クロケム株式会社製)に浸漬し、5分間現像を 行った。現像後の基板を窒素中で乾燥させた 。

 そして、乾燥後の基板を所定の容器内に 置し、当該容器内に、ポリジメチルシロキ ン(PDMS、信越化学工業株式会社製)の前駆体 硬化剤とを10:1の質量比で混合した反応液を 流し込んだ。この容器をデシケータ内に入れ 、真空ポンプを用いて反応液の脱泡を行った 。この反応液を室温にて24時間放置して硬化 せ、硬化したPDMS成形体を基板から剥がした 。こうして、一本の直線的なマイクロ流路部 (0.5mm×16.5mm)10が形成されたPDMS製の流路基板2 作製した。

 さらに、この流路基板2のうち、マイクロ 流路部10の上流端部分に、溶液を流入させる めの直径2mmの貫通穴を形成した。そして、 の流路基板2を、上述のようにして作製した 電極基板3上に重ね合わせ、本装置1を構成し 。

 この本装置1の流路基板2に形成された貫 穴に内径0.5mm、外径1mmのシリコーン製のチュ ーブ(アズワン株式会社製)の一方端を接続し 接着剤(一液型RTVゴム、信越化学工業株式会 社製)により固定した。このシリコンチュー の他方端にはマイクロシリンジ(1mL、Bioanalyti cal Systems Inc.製)を接続し、当該マイクロシ ンジをマイクロシリンジポンプ(Bioanalytical S ystems Inc.製)に設置した。また、本装置1の作 電極20、参照電極41、対向電極31をそれぞれ テンショスタット(北斗電工株式会社製)に 続した。

 そして、10μL/分の流速で、0.2mMのH 2 O 2 水溶液を、本装置1内のマイクロ流路部10に流 通させるとともに、ポテンショスタットによ り、本装置1の作用電極20に一定電位+0.7V(対銀 /塩化銀参照電極)を印加し、当該H 2 O 2 水溶液の流通に伴い生じた電流値を当該ポテ ンショスタットのレコーダで記録した。

 また、上述の本装置1の作製方法と同様の方 法により、ピラー51が形成されていない作用 極(500μm×500μm)を有する対照基板に、上述の ように作製された流路基板2を重ね合わせて 照装置を作製した。そして、この対照装置 用いて、上述の本装置1の場合と同様に、H 2 O 2 溶液流通時の電流値を測定した。

 図17には、このようにして測定された電 値の測定結果を示す。図17において、白抜き の棒は本装置1により測定された電流値(nA)を し、黒塗りの棒は対照装置により測定され 電流値(nA)を示す。図17に示すように、本装 1においては、対照装置に比べ、約1.6倍の電 流値が得られた。すなわち、本装置1におい は、例えば、測定感度を対照装置と同レベ に維持しつつ、当該対照装置に比べて、マ クロ流路部のさらなる微小化を図ることが きることが確認された。

 本装置1における突出部51の効果を確認す ため、実際に製造した本装置1を用いた電流 値の測定と、コンピュータを用いたシミュレ ーションと、を実施した。

[実施例4]
 図18には、ここで用いられた4種類の作用電 20の条件を対比して示す。すなわち、ここ は、基部50のみからなる突出部51を有しない 坦な作用電極(平坦)、直径が30μmの円柱状の 突出部(ピラー)51を有する作用電極(φ30)、直 が20μmの円柱状のピラー51を有する作用電極( φ20)、及び直径が10μmの円柱状のピラー51を有 する作用電極(φ10)を検討の対象とした。

 なお、4種類の作用電極20の各々において 基部50は矩形(500μm×500μm)の導電性薄膜とし 形成され、ピラー51は当該基部50上に図18に す間隔及び数で、図5に示すように規則的に 配置された。また、ピラー51の高さH2は50μmで あり、マイクロ流路部10の高さH1は55μmであっ た(図6参照)。

 そして、上述の実施例3の場合と同様に、 作用電極20として上記4種類のいずれかを有す るセンサ装置を製造した。対象物質としては アスコルビン酸を用いた。電圧が印加された 作用電極20の導電性表面にアスコルビン酸が 触すると、アスコルビン酸の参加に伴う電 が当該作用電極に流れることとなる。

 そこで、各センサ装置のマイクロ流路部1 0に、1mMの濃度でアスコルビン酸を含むリン 緩衝液(pH7.4)を、10μL/分の流速で流通させる ともに、ポテンショスタットを用いて、当 各センサ装置の作用電極20に、銀/塩化銀参 電極に対して一定電位(+0.7V)を印加した。そ して、各センサ装置において、アスコルビン 酸を含む溶液の流通に伴い生じた電流値を作 用電極20で測定し、ポテンショスタットのレ ーダで記録した。

 一方、シミュレーションは、下記の式(I)で す濃度輸送拡散の式を用いた有限差分法に り行った。コンピュータによる数値計算に 、汎用流動解析用コード(FLOW3D、フローサイ エンス社)を用いた。

 式(I)において、Cは単位体積あたりのモル濃 度(mol/cm 2 )、Aは表面積(cm 2 )、Uは流速(cm/s)、Dは拡散係数(cm 2 /s)、Dsは単位面積あたりの濃度消費体積速度( cm 3 /cm 2 ・s)を表す。

 流路入口(作用電極20の上流端)におけるアス コルビン酸濃度(mol/cm 3 )と流量(cm 3 /s)との積により、単位時間あたりに当該流路 入口に流入するアスコルビン酸の物質量(mol/s )を算出した。

 また、流路出口(作用電極20の下流端)におい て、その断面上のある微小要素についての濃 度(mol/cm 3 )と流量(cm 3 /s)との積により、単位時間あたりに当該微小 要素を移動するアスコルビン酸の物質量(mol/s )を算出した。出口断面上のすべての微小要 について、同様の算出を行い、それらの和 より単位時間あたりに流路出口から流出す アスコルビン酸の物質量(mol/s)を算出した。

 そして、上記の流入物質量(mol/s)と流出物 質量(mol/s)との差分として、単位時間あたり 流路内で反応するアスコルビン酸の物質量( 位時間あたりのアスコルビン酸の反応量)(mo l/s)を算出した。

 なお、シミュレーションに用いた濃度消 体積速度Dsは、実際の測定結果に基づいて 定した。すなわち、まず、基部50のみからな る平坦な作用電極20を配置したマイクロ流路 10について、ある値のDsを用いて数値シミュ レーション解析を行い、アスコルビン酸の単 位時間あたりの反応量(mol/s)を算出した。

 一方、シミュレーションと同様の平坦な 用電極20を設けたセンサ装置を実際に製造 、当該センサ装置において、上述したシミ レーションと同様の条件でアスコルビン酸 液を流通させたときの酸化電流値(A)を実測 た。

 そして、測定した電流値から、下記の式(II) を用いてアスコルビン酸の単位時間あたりの 反応量(mol/s)を算出した。

 ここで、Cはアスコルビン酸濃度(mol/L)、a 1分子のアスコルビン酸の酸化反応により生 じる電子数、Fはファラデー定数(C/mol)、Qは流 量(L/s)、Iは測定電流値(A)を表す。

 このようにして得られたシミュレーション 果と実測結果とを比較し、これらの結果が 致するようにDsの値を決定した。その結果 Dsは、0.00072cm 3 /cm 2 ・sと決定することができた。

 図19には、4種類の作用電極20について得ら た電流値(μA)の結果を、その電極表面積(mm 2 )と対応させて示す。図19において、黒丸印は 実際にセンサ装置を用いて測定された電流値 を示し、白丸印はシミュレーションよって算 出された電流値を示している。

 図19に示すように、作用電極20の表面積が 増加するに従って、測定される電流値も増加 した。すなわち、作用電極20の測定感度は、 ラー51を有することにより、ピラー51を有し ない場合に比べて高くなった。

 また、シミュレーションの結果は、実際 センサ装置を用いて測定された結果とよく 致していた。すなわち、このシミュレーシ ンは、作用電極20の構造に基づくマイクロ 路部10内の流れを正確に予測するために有用 であることが確認された。

 図20は、マイクロ流路部10をピラー51の延 る方向に沿って切断した、側面視における 該マイクロ流路部10内のアスコルビン酸濃 分布をシミュレーションにより算出した結 を示す。

 図20において、アスコルビン酸の濃度は から白までのグラデーションにより視覚的 表示している。色が濃く黒に近いほど、ア コルビン酸の濃度が高いことを示す。した って、色が薄く白に近いほど、作用電極20の 表面で反応して消失したアスコルビン酸の量 (反応量)が多いことを示している。

 図20に示すように、ピラー51を有しない平 坦な作用電極20を設けたマイクロ流路10(図20 一番上の結果)においては、当該作用電極20( なわち基部50)の近傍(すなわちマイクロ流路 部10の底面近傍)では、当該作用電極20との反 によってアスコルビン酸の濃度が低減され いるが、当該作用電極20から離れた位置で アルコルビン酸は当該作用電極20と反応する ことなく素通りしていることがわかる。

 これに対し、作用電極20がピラーを有す 場合には、マイクロ流路部10の底面近傍のみ ならず、当該底面から離れた位置においても アスコルビン酸の濃度が減少していることが わかる。これは、マイクロ流路部10の底面か 離れた位置(マイクロ流路部10の高さ方向上 側)まで突出している導電性のピラー51によ て、当該マイクロ流路部10を流通する溶液 のアスコルビン酸が当該ピラー51の表面と効 率よく反応していることを示している。特に 、ピラー51の直径が低減され、ピラーの数が 加するに従って、作用電極20上を流通する 液中のでアスコルビン酸をより多く確実に 該作用電極20と反応させることができること が確認された。

 また、図21には、平坦な作用電極20を備え たマイクロ流路部10及び直径20μmのピラーを えたマイクロ流路部10について、当該マイク ロ流路部10の底面から27.5μmだけ離れた位置に おけるアスコルビン酸の濃度分布を示す。な お、マイクロ流路部10において、溶液は、図 の右方から左方に向けて流れることとした また、図21において横軸はマイクロ流路部10 の長手方向の位置(x座標)を示し、縦軸は当該 マイクロ流路部10の幅方向の位置(y座標)を示 ている。ここでは、マイクロ流路部10のう 長手方向110μm、幅方向50μmの範囲内について 解析を行った。

 図21Aより、平坦な作用電極20を有する場 には、アスコルビン酸の濃度が高いまま溶 が当該作用電極10上を通過していることがわ かる。また、図21Bより、作用電極20がピラー5 1を有することで、当該作用電極20の表面とア スコルビン酸とを反応させ、その濃度を効果 的に低減できることが裏付けられた。

 そこで、次に、図7~図10に示すような板状 突出部51aと柱状突出部51bとを有する作用電極 20についても同様にシミュレーションを行っ 。ピラー51bの直径は20μm、板状突起部51aの さ(マイクロ流路部10の長手方向の長さ)は10μ m、ピラー51b及び板状突起部51aの高さは50μm、 マイクロ流路10の高さは50μmとした。

 また、比較のために、図7に示すような板 状突出部51aと基部50とを有し、柱状突出部51b 有しない作用電極20についても同様にシミ レーションを行った。

 図22及び図23は、図21と同様の、各マイク 流路部10内におけるアスコルビン酸の濃度 布を示す。なお、図22及び図23において、白 表示されている部分は、アスコルビン酸が 費されて濃度が低くなった領域ではなく、 スコルビン酸を含む溶液が流通しない領域 あると考えられた。

 また、図24には、図21、図22及び図23に示 た6種類のマイクロ流路部10の下流端におけ 、当該マイクロ流路部10の幅方向の濃度分布 を示す。図24A及び図24Bは、それぞれ図21A及び 図21Bに対応し、図24C及び図24Dは、それぞれ図 22A及び図22Bに対応し、図24E及び図24Fは、それ ぞれ図23A及び図23Bに対応している。図24にお て、横軸はマイクロ流路部10の幅方向の位 (μm)を示し、縦軸はアスコルビン酸の濃度(mM )を示す。また、実線はシミュレーション結 における濃度分布を示し、破線は平均濃度 レベルを示している。

 さらに、図25には、上記6種類のマイクロ 路部10において、上述のように算出された スコルビン酸の単位時間あたりの反応量の 率を示す。図25において、横軸は作用電極20 種類を示し、縦軸は突出部51を有しない平 な作用電極20における反応量に対する各条件 の反応量の比率を示す。

 図25の横軸において、「平坦」及び「ピ ー」はそれぞれ図21A及び図21Bの作用電極20に 対応し、「板」及び「板+ピラー(1)」はそれ れ図22A及び図22Bの作用電極20に対応し、「板 +ピラー(2)」及び「板+ピラー(3)」はそれぞれ 23A及び図23Bの作用電極20に対応している。

 図24及び図25より、作用電極20がピラー51b は板状突出部51aを有することにより、これ 突起部51を有しない場合に比べて、アスコ ビン酸の反応量が顕著に増加し、当該作用 極20から流出する溶液中のアスコルビン酸の 濃度が低減されることが確認された。

 さらに、作用電極20がピラー51b及び板状 出部51aの両方を有することによって、ピラ 51b又は板状突出部51aのいずれか一方のみを する場合に比べて、アスコルビン酸の反応 がさらに増加することも確認された。

 図26には、この板状突出部51aの間にピラ 51bを配置することの効果を裏付ける結果の 部を示す。この図26には、図21及び図22に示 た4種類のマイクロ流路部10について、濃度 布を評価した位置と同じ位置における局所 な速度ベクトルの分布を示す。図26において は、色が濃く黒に近いほど、速度ベクトルが 大きいことを示している。

 基部50のみからなる作用電極20(図26A)及び 部50とピラー51bとからなる作用電極20(図26B) おいては、特に速度ベクトルが局所的に大 い領域は見られなかった。

 これに対し、図26Cに示すように、マイク 流路部10を横切る板状突出部51bを設けるこ により、当該板状突出部51bの間には、速度 クトルが顕著に増加している領域が確認さ た。

 さらに、図26Dに示すように、板状突出部5 1aの間にピラー51bを配置した場合には、当該 状突出部51aのみの場合(図26C)に比べても、 度ベクトルがさらに増加していた。

 すなわち、まず、板状突起部51aを設けて 流路53(図7参照)を形成することにより、当 副流路53において速度ベクトルを顕著に増加 させることができた。

 この場合、図26Dに示すように、副流路53 さらにピラー51bを設けることにより、当該 流路53内の速い流れが当該ピラー51bに衝突し て効果的に乱されることが期待できる。

 その結果、副流路53内においては、ピラ 51bの間又はピラー51bと板状突出部51aとの間 通過する溶液に含まれるアスコルビン酸を 当該ピラー51b及び板状突出部51aの電極表面 効率よく接触させることができると考えら る。

 また、図26Dに示す作用電極20においては 上流側から当該作用電極20に流入してくる溶 液の全てを一つの入り口から確実に副流路53 に導き、当該副流路53内のピラー51bと効率 く接触させることができる。

 同様の効果は、例えば、図23Aに示される 用電極20においても得られる。すなわち、 の作用電極20においては、最も上流側の副流 路53に対する入口は二箇所あるが、当該副流 53から下流側への副流路53への流れの出口は 、マイクロ流路部10の幅方向中央の一箇所の となっている。このため、作用電極20に流 する溶液を全て確実に副流路53に導くことが できる。

 また、図27及び図28に示すように、本装置 1において、作用電極20の上流端部分に一対の 上流側提部17aを設けるとともに、当該作用電 極20の下流端部分に一対の下流側提部17bを設 ることにより、突出部51による効果を確実 得ることができる。図28は、図27に示すXXVIII- XXVIII線で切断した断面図である。

 図27及び図28に示すように、これら上流側 提部17a及び下流側提部17bは、いずれも測定部 15における長手方向の流れの一部を遮るよう 設けられている。

 また、一対の上流側提部17aの一方及び他 は測定部15の一方の側面15ii及び他方の側面1 5iiiからそれぞれ延び出している。また、一 の下流側提部17bの一方及び他方もまた、測 部15の一方の側面15ii及び他方の側面15iiiから それぞれ延び出している。

 このような提部17を設けることにより、 えば、図21Bに示した結果で示唆されるよう 、突出部51と側面15ii,15iiiとの隙間における 象物質の素通りを効果的に防止できる。し がって、この場合、作用電極20に流入する対 象物質の大部分を突出部51と効率よく接触さ ることができる。

 また、この提部17は、必ずしも基部50上に 設ける必要はない。すなわち、図27及び図28 示す例において、上流側提部17aは作用電極20 の上流側に隣接して設けられ、下流側提部17b は当該作用電極20の下流側に隣接して設けら ている。なお、このような堤部17としては 上流側堤部17aのみ設け、下流側堤部17bは設 ないこととしてもよい。

 また、提部17は、流路基板2と一体的に形 することもできる。すなわち、例えば、流 基板2をPDMS等の樹脂のモールド成形により 形する場合には、提部17は、マイクロ流路10 形成と同時に簡便に形成することができる

 そして、提部17を有する流路基板2と、作 電極20が形成された電極基板3と、を適切に 置合わせして貼り合わせることにより、当 作用電極20の上流端部分及び下流端部分に 該提部17が配置された本装置1を簡便且つ確 に製造することができる。

[実施例5]
 作用電極20の表面に金黒を形成することの 果について確認した。上述の実施例4と同様 、平坦な作用電極20及び直径30μmのピラー51 有する作用電極20をそれぞれ製造し、これ 作用電極20の表面において金黒を形成させた 。

 すなわち、まず、上述のようにして基板上 作製した参照電極部分及び対向電極部分を ポジ型フォトレジスト(S1818、Rohm and Haas El ectronic Materials LLC製)で覆った。その後、所 の容器内にて、この基板を83mMのテトラクロ 金および1.6mM酢酸鉛を含む水溶液中に浸漬 るとともに、当該基板の参照電極部分と、 該参照電極及び白金電極と、をガルバノス ット(北斗電工株式会社製)に接続した。そし て、-60μA/mm 2 の電流密度を5分間印加することで作用電極 分に金黒を形成させた。その後、基板をア トン、続いて蒸留水で洗浄後、自然乾燥さ た。こうして、その表面に金黒が形成され 作用電極を形成した。

 そして、上述の例と同様にして、各作用 極20を備えたセンサ装置を用いて、アスコ ビン酸の流通に伴い当該各作用電極20を流れ る電流値(μA)を測定した。

 図29において、横軸は作用電極20の種類を 示し、縦軸は検出された電流値(μA)を示す。 29より、平坦な作用電極20及びピラー51を有 る作用電極20のいずれについても、その表 に金黒を形成することによって測定感度が 上することが確認された。

 また、ピラー51を有する作用電極20の金黒 形成による感度の増加は、平坦な作用電極20 比べて顕著であった。これは、ピラー51を する作用電極20においては、マイクロ流路部 10内の溶液は、当該ピラー51に衝突しながら 通するため、金黒形成による表面積の増大 果がより顕著に現れたと考えられる。

 なお、本装置1は、上述の例に限られない 。例えば、マイクロ流路部10は、上述の例に したものに限られない。すなわち、マイク 流路部10は、二つの流入部11及び二つの幹部 12を有するものに限られず、1又は複数の任意 の数の流入部11及び幹部12を有することもで る。また、例えば、マイクロ流路部10に含ま れる各流路部の分岐の態様は、一つの流路部 の下流端から二つに分岐するものに限られず 、三つ以上に分岐することもできる。また、 分岐の態様は、一つの流路部の下流端から直 角に分岐するものに限られず、例えば、分岐 した複数の流路が互いに距離を増加させなが ら下流側に向けて傾斜しつつ延びるよう形成 することもできる。また、本装置1は、上述 ように互いに別体に形成された流路基板2と 極基板3とを組み合わせて構成されるものに 限られない。すなわち、例えば、一方の基板 にマイクロ流路部10と電極系とを形成し、他 の基板で蓋をする構成とすることもできる また、作用電極20等の電極系は、上述のよ にマイクロ流路部10の底面に形成されるもの に限られない。すなわち、例えば、作用電極 20等の電極系は、少なくとも一部がマイクロ 路部10の側面に形成することもできる。こ 場合、作用電極20の複数の突出部51の少なく も一部は、流路側面のうち、流路高さ方向 全域に形成され、流路の幅方向に延びるよ 形成することもできる。また、対向電極31 び参照電極41は、各測定部(例えば、図1~図3 示す測定部15,16a,16b)に一つずつ形成されるも のに限られない。すなわち、例えば、対向電 極31は、マイクロ流路部10のうち測定部以外 部分に形成することもできる。