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Patent Searching and Data


Title:
FERRITIC STAINLESS STEEL SHEET FOR EGR COOLERS
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2010/047131
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a ferritic stainless steel sheet for EGR coolers, which is characterized by containing at least, in mass%, not more than 0.03% of C, not more than 0.05% of N, not less than 0.1% but not more than 1% of Si, not less than 0.02% but not more than 2% of Mn, not less than 0.2% but not more than 1.5% of Cu, not less than 15% but not more than 25% of Cr, not less than 8(C + N)% but not more than 1% of Nb, and not more than 0.5% of Al, with the balance made up of Fe and unavoidable impurities.  The ferritic stainless steel sheet is also characterized in that Ti is further contained therein in an amount satisfying formulae (1) and (2) in mass%, and that the amounts of Cr and Cu are within the ranges satisfying formula (3). Ti - 3N ≤ 0.03     (1) 10(Ti - 3N) + Al ≤ 0.5     (2) Cr + 2.3Cu ≥ 18     (3)

Inventors:
HIRAIDE NOBUHIKO (JP)
TAKAHASHI AKIHIKO (JP)
MAEDA SHIGERU (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/005607
Publication Date:
April 29, 2010
Filing Date:
October 23, 2009
Export Citation:
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Assignee:
NIPPON STEEL & SUMIKIN SST (JP)
HIRAIDE NOBUHIKO (JP)
TAKAHASHI AKIHIKO (JP)
MAEDA SHIGERU (JP)
International Classes:
C22C38/38; C22C38/58; F02M25/07
Foreign References:
JPS5760056A1982-04-10
JPH07292446A1995-11-07
JP2000073147A2000-03-07
JP2009174046A2009-08-06
JP2009174040A2009-08-06
JP2007064515A2007-03-15
JP2007224786A2007-09-06
JPH01249294A1989-10-04
JP2001026855A2001-01-30
JP2003193205A2003-07-09
JP2005055153A2005-03-03
JP2008096048A2008-04-24
JPH07292446A1995-11-07
JPH11236654A1999-08-31
JP2008195985A2008-08-28
JP2007339732A2007-12-28
Other References:
See also references of EP 2351868A4
Attorney, Agent or Firm:
SHIGA, Masatake et al. (JP)
Masatake Shiga (JP)
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Claims:
 質量%で、
C:0.03%以下、
N:0.05%以下、
Si:0.1%以上、1%以下、
Mn:0.02%以上、2%以下、
Cu:0.2%以上、1.5%以下、
Cr:15%以上、25%以下、
Nb:8(C+N)%以上、1%以下、
Al:0.5%以下
を少なくとも含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、
更に、質量%で、
Tiについて、下記式(1)及び(2)を満足する範囲とし、
Cr、Cuについて、下記式(3)を満足する範囲で含有することを特徴とするEGRクーラ用フェライト系ステンレス鋼板。
 Ti-3N≦0.03 ・・・(1)
 10(Ti-3N)+Al≦0.5 ・・・(2)
 Cr+2.3Cu≧18 ・・・(3)
 更に、質量%で、
Mo:3%以下、
Ni:3%以下
のうち何れか一方又は両方を含有し、なお且つ下記式(4)を満足する範囲で含有することを特徴とする請求項1に記載のEGRクーラ用フェライト系ステンレス鋼板。
 Cr+1.9Mo+1.6Ni+2.3Cu≧18 ・・・(4)
 更に、質量%で、
V:3%以下、
W:5%以下
のうち何れか一方又は両方を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のEGRクーラ用フェライト系ステンレス鋼板。
 更に、質量%で、
Ca:0.002%以下、
Mg:0.002%以下、
B:0.005%以下
のうち何れか1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載のEGRクーラ用フェライト系ステンレス鋼板。
 C+N:0.015%以上であることを特徴とする請求項1~4何れか一項に記載のEGRクーラ用フェライト系ステンレス鋼板。
Description:
EGRクーラ用フェライト系ステン ス鋼板

 本発明は、例えば自動車のディーゼルエ ジンやガソリンエンジンなどで使用される ガス再循環(Exhaust Gas Recirculation:以下、EGR いう。)システムにおいて、排ガスをエンジ 冷却水や空気などで冷却するEGRクーラに用 て好適なEGRクーラ用フェライト系ステンレ 鋼板に関する。

 近年、自動車分野においては、環境問題 対する意識の高まりから、排ガス規制がよ 強化されると共に、炭酸ガス排出抑制に向 た取り組みが進められている。また、バイ エタノールやバイオディーゼル燃料といっ 燃料面からの取り組みに加え、軽量化や排 熱を熱回収する熱交換器を取り付けて燃費 上を図ったり、EGR、DPF(Diesel Particulate Filter )、尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システム いった排ガス処理装置を設置するといった り組みを実施している。

 このうち、EGRシステムは、エンジンの排 スを冷却させた後、吸気側に戻して再燃焼 せることで、燃焼温度を下げ、有害ガスで るNOxを低下させることを目的としている。 た、EGRクーラは、排ガスをエンジン冷却水 空気により冷却する装置であり、その熱交 部分には良好な熱効率が要求され熱伝導性 良好であることが望まれる。

 従来、EGRクーラには、下記特許文献1や下 記特許文献2等に開示されているように、一 的にはSUS304やSUS316といったオーステナイト ステンレス鋼が使用されている。しかしな ら、最近、NOxをより低減させるために、EGR ーラの出側温度を低下させたいとの要求が り、このようなオーステナイト系ステンレ 鋼では入出側の温度差拡大による熱疲労特 劣化が懸念されつつある。そこで、オース ナイト系ステンレス鋼よりも、熱伝導率に れ、また熱膨張係数が小さく、そして安価 フェライト系ステンレス鋼が注目されてい 。

 また、EGRクーラは、これまでディーゼル ンジン用に設置されるのが一般的であった 、直噴化による燃費向上とNOx低減を両立さ るために、ガソリンエンジンへの適用も検 されている。一般的に、ガソリンエンジン 、ディーゼルエンジンに比べ排ガス温度は く、EGRクーラの入側温度は500~600℃に達する といわれている。この温度域は、SUS304やSUS316 といったオーステナイト系ステンレス鋼にと って鋭敏化による粒界腐食が懸念される領域 であり、この点からもフェライト系ステンレ ス鋼が注目されている。

 EGRクーラ、特にその熱交換部分の製造に いては、ろう付け接合により組み立てられ のが一般的である。また、EGRクーラの排ガ 側においては、冷却時に排ガス成分が凝縮 得る。このため、ろう付け性と排ガス凝縮 に対する耐食性が要求される。

 下記特許文献3には、Ni系ろう材を有機系 インダーと共に懸濁して、ステンレス鋼板 面上に噴霧塗布後加熱して作製される、プ コートろう被覆金属板材が開示されている

 下記特許文献4には、表面粗さを調整した ステンレス鋼板上に、プラズマ溶射にてNi系 う材を被覆させた、自己ろう付け性に優れ ニッケルろう被覆ステンレス鋼板の製造方 が開示されている。何れの場合も、実施例 対象にしているステンレス鋼は、オーステ イト系ステンレス鋼である。

 下記特許文献5には、C:0.5%以下、Si:2%以下 Mn:3%以下、S:0.2%以下、Ni:8~18%、Cr:12~25%、Mo:0~4 %、W:0~2%で、かつ(Ni/Cu):2以上、Nb:0~2.5%の範囲 あり、実質的にオーステナイト系ステンレ 鋳鋼からなる排気ガス再循環部品が開示さ ている。

 下記特許文献6には、パイプ内又は複数の パイプの間にフィンを挿入して高熱流体通路 を形成し、この高熱流体に隣接して低熱流体 を形成した熱交換器において、フィンをオー ステナイト系ステンレス鋼、パイプをフェラ イト系ステンレス鋼で構成した熱交換器が開 示されており、オーステナイト系ステンレス 鋼としてSUS304、フェライト系ステンレス鋼と してSUS430が例示されている。オーステナイト 系ステンレス鋼とフェライト系ステンレス鋼 との熱膨張係数差を利用した構造となってお り、ろう付け接合を省略することで、安価で かつ短時間に製造できることを特徴としてい る。そのため、ろう付け性に関する記述が認 められないと共に、凝縮水耐食性に対しても 言及していない。

 下記特許文献7には、排気ガス用熱交換器 に組み込まれる扁平チューブに内蔵されて、 扁平チューブが形成する排気ガス流路の広幅 方向を小区画に分割して、多数個の細長い排 気ガス流路を形成するインナーフィンにおい て、インナーフィンの材質をフェライト系ス テンレス鋼とした排気ガス用熱交換器のイン ナーフィンが開示されている。フェライト系 ステンレス鋼の成形性を考慮した形状とする ことで、耐熱性を改善したことを特徴として おり、SUS405、SUS446が例示されている。耐熱性 がよいことと折り曲げ可能であることのみを 必要特性として挙げており、ろう付け性や凝 縮水耐食性については言及していない。

 下記特許文献8には、C:0.025%以下、Si:0.10% 下、Mn:1.0%以下、Cr:17.0~25.0%、Ni:0.50%以下、Mo:0 .50~2.00%以下、Al:0.025%以下、N:0.025%以下、かつN b、Tiのいずれか1種または2種を10(C+N)~1.0%の範 で含有する熱交換器用フェライト系ステン ス鋼が開示されている。ろう付け性の観点 らSi、Al量を制限すると共に、耐食性、耐酸 化性の観点から高いCrかつMo添加量としてお 、このうち、Moは特に、排ガス凝縮水に対す る耐食性に非常に有効な元素としている。腐 食環境がさらに厳しくなった場合には、Mo添 量を増加させる必要があるが、Moは高価な 素であるためコストパフォーマンスに劣る 題がある。

 下記特許文献9には、C:0.08%以下、Si:0.01~2.0 %、Mn:0.05~1.5%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Cr:13~32% 、Mo:3.0%以下、Al:0.005~0.1%、Ni:1.0%以下、Cu:1.0% 下、Ti:0.05%以下の範囲で含有するろう接性に 優れたアンモニア-水系吸収式サイクル熱交 器用フェライト系ステンレス鋼が開示され いる。ろう接性(ろう付け性)の観点からTiを0 .05%以下に制限し、高温高圧アンモニア水環 における耐食性の観点からCrを13%以上とする ことを特徴としている。Mo、Ni、Cuも耐食性に 有効な元素として記載されているが、その必 要量については記載されていない。

 下記特許文献10には、Cr:18.0~27.0%、Cu:0.8~3.5 %、Si:0.5~2.0%、Mo:0.5~1.5%、Nb:2.5%以下、Ni:0.6%以 、C:0.12%以下、Mn:1.0%以下、Al:0.10%以下、P:0.15% 以下、S:0.15%以下、N:0.10%以下で、かつ(Cu+Si)が 2.0%を超えることを特徴とする耐酸性に優れ フェライト系ステンレス鋳鋼が開示されて る。被削性の観点からフェライト系とし、 酸性の観点からCr、Cu、Siならびに(Cu+Si)量を 定していることを特徴としている。耐酸性 観点から多量のCu、Siを必要とするため、硬 質となり、鋼板として使用する場合には成形 性に問題がある。

特開2007-64515号公報

特開2007-224786号公報

特開平1-249294号公報

特開2001-26855号公報

特開2003-193205号公報

特開2005-55153号公報

特開2008-96048号公報

特開平7-292446号公報

特開平11-236654号公報

特開2008-195985号公報

 本発明は、このような従来の事情に鑑み 提案されたものであり、優れたろう付け性 排ガス凝縮水に対する耐食性とを兼ね備え EGRクーラ用フェライト系ステンレス鋼板を 供することを目的とする。

 上記課題を解決することを目的とした本発 の要旨は、以下のとおりである。
〔1〕 質量%で、
C:0.03%以下、
N:0.05%以下、
Si:0.1%以上、1%以下、
Mn:0.02%以上、2%以下、
Cu:0.2%以上、1.5%以下、
Cr:15%以上、25%以下、
Nb:8(C+N)%以上、1%以下、
Al:0.5%以下
を少なくとも含有し、残部がFe及び不可避不 物からなり、
更に、質量%で、
Tiについて、下記式(1)及び(2)を満足する範囲 し、
C、Cuについて、下記式(3)を満足する範囲で含 有することを特徴とするEGRクーラ用フェライ ト系ステンレス鋼板。
 Ti-3N≦0.03 ・・・(1)
 10(Ti-3N)+Al≦0.5 ・・・(2)
 Cr+2.3Cu≧18 ・・・(3)
〔2〕 更に、質量%で、
Mo:3%以下、
Ni:3%以下
のうち何れか1種又は2種以上を含有し、なお つ下記式(4)を満足する範囲で含有すること 特徴とする前記〔1〕に記載のEGRクーラ用フ ェライト系ステンレス鋼板。
 Cr+1.9Mo+1.6Ni+2.3Cu≧18 ・・・(4)
〔3〕 更に、質量%で、
V:3%以下、
W:5%以下
のうち何れか一方又は両方を含有することを 特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載のEGRク ラ用フェライト系ステンレス鋼板。
〔4〕 更に、質量%で、
Ca:0.002%以下、
Mg:0.002%以下、
B:0.005%以下
のうち何れか1種又は2種以上を含有すること 特徴とする前記〔1〕~〔3〕の何れか一項に 載のEGRクーラ用フェライト系ステンレス鋼 。
〔5〕 C+N:0.015%以上であることを特徴とする 記〔1〕~〔4〕の何れか一項に記載のEGRクー 用フェライト系ステンレス鋼板。

 以上のように、本発明によれば、優れた う付け性と排ガス凝縮水に対する耐食性を ね備えたフェライト系ステンレス鋼板を提 できるため、このフェライト系ステンレス 板をEGRクーラ、なかでもEGRクーラの熱交換 に好適に用いることが可能である。

ろうのぬれ広がり性とTi、Al量の関係を 示す特性図である。 排ガス模擬凝縮水中での腐食速度とCr+2 .3Cu≧18の関係(pH1.5)を示す特性図である。 排ガス模擬凝縮水中での腐食速度とCr+1 .9M+1.6Ni+2.3Cuの関係(pH1.5)を示す特性図である 排ガス模擬凝縮水中における腐食速度 及ぼすCuの影響(pH1)を示す特性図である。 排ガス模擬凝縮水中における腐食速度 及ぼすMoの影響(pH1)を示す特性図である。 排ガス模擬凝縮水中における腐食速度 及ぼすNiの影響(pH0.5)を示す特性図である。

 以下、本発明の実施の形態について、図面 参照して詳細に説明する。
 EGRクーラには、NiやCuによるろう付け性が要 求される。このため、本発明者等は、ろう付 け性に対する合金元素の影響について鋭意検 討を行った。その結果、下記式(1)及び(2)に示 すように、フェライト系ステンレス鋼板にお いて、加工性や粒界腐食性の向上を目的とし て添加されることが多いTi、そして脱酸を目 として添加されるAlに、良好なろう付け性 確保できる上限値があることを知見した。
Ti-3N≦0.03 ・・・(1)
10(Ti-3N)+Al≦0.5 ・・・(2)

 良好なろう付け性を得るには、溶融した うがステンレス鋼板の表面上をぬれ広がる 要があるが、ぬれ性にはろう付け雰囲気で テンレス鋼板上に形成される表面皮膜が影 する。また、ろう付け雰囲気では、Fe、Crの 酸化物は、還元される条件が維持できたとし ても、Fe、Crよりも酸化し易いTi、Alは酸化物 形成して、ろうのぬれ広がりを阻害して、 う付け性を劣化させる。こうした皮膜形成 寄与するのは、固溶しているTi、Alであり、 ろう付け温度でも比較的安定な窒化物として 存在している場合には皮膜形成には寄与せず 、ろうのぬれ広がりを阻害しない。

 こうした点から、Ti、Al量とろうのぬれ広 がり性との関係を、表1に記載の16~21Crのフェ イト系ステンレス鋼板を用いて、後述する 施例と同一の試験条件にて評価した。表1に おいて、残部はFe及び不可避不純物である。 の結果を図1に示す。

 図1に示す結果から、上記式(1)及び(2)を満 足する範囲において、ろうのぬれ広がり性が 良好であることが判明した。また、TiないしA l量が上記条件を満足しない鋼について、ろ 付け熱処理後の表面皮膜を分析したところ 数十から数百nmの厚さで、TiないしAlの濃化 た酸化皮膜が一様に形成された。したがっ 、こうした皮膜形成がろうのぬれ広がりを 害していると考えられる。

 本発明が対象とするEGRクーラでは、強度 必要であり、ろう付け後の強度低下が小さ ことが望ましい。Niろう付けやCuろう付けの ように、1000~1150℃といった高温でろう付けさ れる場合には、結晶粒粗大化に伴う強度低下 を抑制することが重要と考えられる。結晶粒 の粗大化抑制には、析出物によるピン止めが 有用である。本発明では、析出物としてNbの 窒化物を活用し、C+Nを0.015%以上とすること より、結晶粒の粗大化抑制に有用な、Nbの 窒化物の析出量、及び安定性が確保される とを知見した(特願2007-339732号公報を参照。)

 EGRクーラにおいては、排ガス中に含まれ SOx、NOx、HCに起因して、硫酸、硝酸、有機 からなる酸性の凝縮水が生じる。EGRクーラ おいては、マフラーのような下流部材とは なり、エンジン直下で触媒前にあり、浄化 の排ガスを対象とするため、生成する凝縮 の酸濃度も高くなる。

 また、最近では、グローバル化に伴って S濃度の高い低品位の燃料も自動車用燃料と して使用される場合がある。この場合、凝縮 水中の硫酸濃度も高くなる。こうした酸濃度 の上昇はpHの低下につながり、EGRクーラの凝 水のpHは1.5程度に達すると言われている。 般的に、EGRクーラの熱交換部の板厚は0.1~0.5m mと薄いため、こうした硫酸、硝酸、有機酸 らなるpH1.5程度の凝縮液中において優れた耐 食性が必要となる。

 そこで、本発明者らは、16~19Cr、0~0.5Cuの範 のフェライト系ステンレス鋼を用いて、凝 水耐食性に及ぼすCr、Cuの影響を、実施例と 一条件の腐食試験により検討した。その結 を図2に示す。なお、NO 3- イオンは、腐食抑制イオン種として働くため 、無添加として安全側の評価とした。

 図2には、pH1.5の溶液中における試験結果 示すが、Cr+2.3Cu≧18を満足することで優れた 耐食性を示すことがわかる。

 次に、Ni、Moを加えて、13~21Cr、0~2Mo、0~3Ni、0 ~1Cuの範囲のフェライト系ステンレス鋼を用 て、凝縮水耐食性に及ぼすCr、Ni、Mo、Cuの影 響を、実施例と同一条件での腐食試験により 検討した。その結果を図3に示す。なお、こ でも、NO 3- イオンは無添加とした。

 図3にpH1.5の溶液中における試験結果を示 が、Cr、Ni、Mo、Cuの何れの元素も耐食性向 に有効であるが、なかでもCuが最も耐食性向 上に有効であり、Cr+1.9Mo+1.6Ni+2.3Cu≧18を満足 ることで優れた耐食性を示すことがわかる

 ここで、各合金元素の係数は、臨界pHに対 る合金元素の寄与度を重回帰分析によって めたものである。なお、臨界pHは、腐食速度 が0.1g・m -2 ・h -1 以下となる上限のpHである。そして、図4には 、pH1の溶液における腐食速度に及ぼすCuの影 を、図5には、pH1の溶液における腐食速度に 及ぼすMoの影響を、図6には、pH0.5の溶液中に ける腐食速度に及ぼすNiの影響をそれぞれ す。

 図4、図5及び図6の結果から、Cuは、Mo、Ni 比べ、より少ない添加量で腐食速度が顕著 低下しており、耐食性向上に非常に有効な 素であることがわかる。また、Cuは、耐酸 を向上させる元素として知られるが、電気 学的測定によりCuの影響を検討したところ、 Cu添加により腐食電位が貴化する現象が認め れた。このことは、Cuには、活性溶解抑制 用以外に、不動態化を促進する作用がある とを示しており、この2つの効果により耐食 向上への寄与が大きくなったと考えられる

 本発明は、上記知見に基づいてなされた のであり、優れたろう付け性と排ガス凝縮 に対する耐食性とを兼ね備えたEGRクーラ用 ェライト系ステンレス鋼板を提供するもの あり、その要旨とするところは、特許請求 範囲に記載した通りの内容である。

 以下、EGRクーラ用フェライト系ステンレ 鋼板の各組成を限定した理由について説明 る。なお、以下の説明では、特に断らない り、各成分の%は、質量%を表すものとする

(C:0.03%以下)
 Cは、耐粒界腐食性、加工性を低下させるた め、その含有量を低く抑える必要がある。こ のため、Cを0.03%以下とした。しかしながら、 過度に低めることはろう付け時の結晶粒粗大 化を助長し、かつ精練コストを上昇させるた め、Cを0.002%以上とすることが好ましい。よ 好ましくは0.005~0.025%である。

(N:0.05%以下)
 Nは、耐孔食性に有用な元素であるが、耐粒 界腐食性、加工性を低下させるため、その含 有量を低く抑える必要がある。このため、N 0.05%以下とした。しかしながら、過度に低め ることはろう付け時の結晶粒粗大化を助長し 、精練コストを上昇させるため、Nを0.002%以 とすることが好ましい。より好ましくは0.005 ~0.03%である。

(Si:0.1%以上、1%以下)
 Siは、脱酸元素として有用なTi、Alを制限し いるため、脱酸元素として必要である。ま 、ろう付け熱処理により表面のCr濃度が低 するため、ろう付け後の耐酸化性向上にSiは 有効な元素となる。このため、Siを少なくと 0.1%以上含有させる必要がある。しかしなが ら、過剰な添加は加工性を低下させるため、 1%以下とすることが好ましい。より好ましく 0.1~0.5%である。

(Mn:0.02%以上、2%以下)
 Mnは、脱酸元素として有用な元素であり、 なくとも0.02%以上必要である。しかしながら 、過剰に含有させると耐食性を劣化させるの で、2%以下とすることが好ましい。より好ま くは、0.1~1%である。

(Cu:0.2%以上、1.5%以下)
 Cuは、排ガス凝縮水耐食性を確保する上で Crと同様重要な元素であり、少なくとも0.2% 上必要である。一方、Cuは、その含有量を増 加させるほど耐食性を向上させることができ るが、過剰な添加は加工性を劣化させるため 、1.5%以下とすることが好ましい。より好ま くは、0.2~1.0%である。

(Cr:15%以上、25%以下)
 Crは、排ガス凝縮水耐食性、耐酸化性を確 する上で基本となる元素であり、少なくと 15%以上必要である。一方、Crは、その含有量 を増加させるほど耐食性、耐酸化性を向上さ せることができるが、過剰な添加は加工性、 製造性を低下させるため、25%以下とすること が好ましい。より好ましくは17~23%である。

(Nb:8(C+N)%以上、1%以下)
 Nbは、C、Nを固定し、溶接部の耐粒界腐食性 を向上させる上で有用な元素であるため、(C+ N)量の8倍以上含有させる必要がある。また、 Nbは、高温強度向上にも有用であり、EGRクー のように高温で使用される部材に必要であ 。また、Nbの炭窒化物は、ろう付け時の結 粒粗大化の抑制に有用である。しかしなが 、過剰の添加は、加工性、製造性を低下さ るため、1.0%以下とすることが好ましい。よ 好ましくは10(C+N)~0.6%である。

(C+N:0.015%以上)
 さらに、ろう付け時に結晶粒粗大化に伴う 度低下を抑制する観点から、C+Nを0.015%以上 することが好ましい。C+Nは、望ましくは0.02 %以上である。CとNの過剰の添加は、耐粒界腐 食性及び加工性を低下させるため、C+Nを0.04% 下とすることが望ましい。

(Al:0.5%以下)
 Alは、脱酸効果等を有するので精練上有用 元素であり、成形性を向上させる効果があ が、本発明で最も重要な特性であるろう付 性を阻害するため0.5%以下とした。好ましく 0.001~0.1%であり、より好ましくは0.001~0.05%で る。

(Ti:式(1)及び(2)を満足する範囲)
 本発明においては、最も重要な特性である う付け性において、良好なろうのぬれ広が 性を得るために上記式(1)及び式(2)を同時に 足させる必要がある。これを満足するため 上記知見に基づき、Tiについては上記式(1) び(2)を満足する範囲とした。Ti-3Nの値は、望 ましくは0.02%以下である。しかしながら、Ti 含有量が低すぎると、加工性を劣化させる め、Ti-3Nの値が-0.08%以上になるようにTiの含 量を調整することが望ましい。加工性など 特に要求されない場合は、Tiを添加しなく もよい。

(Cr、Cu:式(3)を満足する範囲)
 本発明においては、硫酸、硝酸、有機酸か なるpH1.5程度の排ガス凝縮液中において良 な耐食性を発現させるために、Cr、Cuについ は下記式(3)を満足させる必要がある。
Cr+2.3Cu≧18 ・・・(3)

 また、本発明においては、更に、Mo又はNiの うち何れか一方又は両方を含有させてもよい 。
(Mo:3%以下)
 Moは、耐食性を向上させる上で、必要に応 て3%以下含有させることができる。安定した 効果が得られるのは0.3%以上である。しかし がら、過剰の添加は、加工性を劣化させる 共に、高価であるためコストアップにつな る。したがって、0.3~3%含有させることが好 しい。

(Ni:3%以下)
 Niは、耐食性を向上させる上で、必要に応 て3%以下含有させることができる。安定した 効果が得られるのは0.2%以上である。しかし がら、過剰の添加は、加工性を劣化させる 共に、高価であるためコストアップにつな る。したがって、0.2~3%含有させることが好 しい。

 さらに、Mo又はNiのうち何れか一方又は両方 を添加する場合には、硫酸、硝酸、有機酸か らなるpH1.5程度の排ガス凝縮液中において良 な耐食性を発現させるために、下記式(4)を 足させる必要がある。
Cr+1.9Mo+1.6Ni+2.3Cu≧18 ・・・(4)

 また、本発明においては、更に、V、Wのう 何れか一方又は両方を含有させてもよい。
(V:3%以下)
 Vは、耐食性を向上させる上で、必要に応じ て3%以下含有させることができる。安定した 果が得られるのは0.2%以上である。しかしな がら、過剰の添加は、加工性を劣化させると 共に、高価であるためコストアップにつなが る。したがって、0.2~3%含有させることが好ま しい。

(W:5%以下)
 Wは、耐食性を向上させる上で、必要に応じ て3%以下含有させることができる。安定した 果が得られるのは0.5%以上である。しかしな がら、過剰の添加は、加工性を劣化させると 共に、高価であるためコストアップにつなが る。したがって、0.5~5%含有させることが好ま しい。

 また、本発明においては、更に、Ca、Mg、B うち何れか一方又は両方を含有させてもよ 。
(Ca:0.002%以下)
 Caは、脱酸効果等を有するので精練上有用 元素であり、必要に応じて0.002%以下含有さ ることができる。また、Caを含有させる場合 には、安定した効果が得られる0.0002%以上と ることが好ましい。

(Mg:0.002%以下)
 Mgは、脱酸効果等を有するので精練上有用 元素であり、また、組織を微細化し、加工 、靭性の向上にも有用であることから、必 に応じて0.002%以下含有させることができる また、Mgを含有させる場合には、安定した効 果が得られる0.0002%以上とすることが好まし 。

(B:0.005%以下)
 Bは、2次加工性を向上させるのに有用な元 であり、必要に応じて0.005%以下含有させる とができる。また、Bを含有させる場合には 安定した効果が得られる0.0002%以上とするこ とが好ましい。

 なお、不可避不純物のうち、Pについては 、溶接性の観点から0.04%以下とすることが好 しい。また、Sについては、耐食性の観点か ら0.01%以下とすることが好ましい。

 本発明のステンレス鋼の製造方法は、フ ライト系ステンレス鋼を製造する一般的な 程でよい。一般に、転炉又は電気炉で溶鋼 し、AOD炉やVOD炉などで精錬して、連続鋳造 又は造塊法で鋼片とした後、熱間圧延-熱延 板の焼鈍-酸洗-冷間圧延-仕上げ焼鈍-酸洗の 程を経て製造される。必要に応じて、熱延 の焼鈍を省略してもよいし、冷間圧延-仕上 焼鈍-酸洗を繰り返し行ってもよい。

(実施例)
 以下、実施例により本発明の効果をより明 かなものとする。なお、本発明は、以下の 施例に限定されるものではなく、その要旨 変更しない範囲で適宜変更して実施するこ ができる。

 本実施例では、下記表2に示す化学組成を 有する鋼を溶製し、熱延、冷延、焼鈍工程を 経て、板厚0.4mmの冷延鋼板を製造し、ろう付 性と排ガス模擬凝縮水中での耐食性を評価 た。

(ろう付け性)
 冷延鋼板より、幅50mm、長さ70mmの試験片を り出した後、エメリー紙にて片面を#400まで 式研磨を施した。その後、研磨面上に0.1gの Niろうを置き、1100℃、5×10 -3 torrの真空雰囲気で10分加熱した。そして、常 温まで冷却後、加熱後のろう面積を測定した 。その測定結果を表3に示す。

 なお、表3中に示すろう付け性については 、加熱前のろう面積に対して加熱後のろう面 積が2倍以上あるときは、ぬれ広がりが「Good( 良好)」、2倍未満のときは、ぬれ広がりが「B ad(不良)」として評価を行った。また、その 、断面ミクロ組織を観察した。そして、圧 方向に平行に長さ20mmの範囲にわたって、板 方向に存在する結晶粒の数を測定し、板厚 向に2個以上の結晶粒が存在するものを、ミ クロ組織が「Good(良好)」、1個しか存在しな ものを、ミクロ組織が「Bad(不良)」として評 価を行った。

(腐食試験)
 冷延鋼板より25W×40Lの試験片を切り出し、 メリー紙にて全面を#320まで湿式研磨した。 薬に塩化アンモニウム、硫酸、蟻酸、酢酸 用いて、50ppmCl - +5000ppmSO 4 2- +5000ppmHCOO - +3000ppmCH 3 COO - の溶液を調製した。その後、硫酸もしくはア ンモニア水を用いて、pH1.5とpH1.0に調整した 60℃に加熱したこの溶液に3h、試験片を浸漬 、浸漬前後の質量変化から腐食速度を求め 。その測定結果を表3に示す。
 なお、表3中に示す腐食試験については、そ の腐食速度が0.1g・m -2 ・h -1 以下のものを「Good(良好)」、0.1g・m -2 ・h -1 を超えるものを「Bad(不良)」として評価を行 た。

 表3に示す試験結果から、本発明の範囲内 にある実験例No.1~13の鋼は、ろうのぬれ広が 性が良好で、ろう付け後の結晶粒粗大化が 制されており、pH1.5の排ガス模擬凝縮水中で の耐食性が良好である。このうち、実験例No. 2、3、4、6、7、9、10、11の鋼は、pH1.0の排ガス 模擬凝縮水中において良好な耐食性を示して おり、腐食環境がさらに厳しくなった場合に 対応できるEGRクーラ用材料として好適である 。

 一方、Alが本発明の範囲から外れる実験 No.14、上記式(2)を満足しない実験例No.15は、 うのぬれ広がり性に劣ることがわかる。ま 、上記式(1)~(3)の全てが本発の明範囲から外 れる実験例No.16は、ろうのぬれ広がり性、排 ス模擬凝縮水中での耐食性共に劣ることが かる。また、Cr量と上記式(3)が本発明の範 から外れるとともに、(C+N)量が0.015%未満とな る実験例No.17は、排ガス模擬凝縮水中での耐 性に劣ると共に、結晶粒の粗大化が顕著で ることがわかる。

 本発明の優れたろう付け性と排ガス凝縮 に対する耐食性とを兼ね備えたフェライト ステンレス鋼板は、EGRクーラ部材、なかで EGRクーラの熱交換部材に好適である。その 、排ガス凝縮水に曝され、ろう付け接合さ る排ガス経路部材にも好適である。