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Title:
FLOW CYTOMETER HAVING CELL-FRACTIONATION FUNCTION AND METHOD OF FRACTIONATING LIVING CELLS
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/153056
Kind Code:
A1
Abstract:
A liquid sample flow containing living cells is irradiated with measurement laser light and the photo data of at least either scattering light or fluorescence that is generated by each of the living cells in the liquid sample flow due to the irradiation with the measurement laser light is acquired. Based on the photo data thus acquired, it is determined whether each of the cells assignable to the respective photo data is an unnecessary living cell or a desired living cell. Based on the determination results, a pulse voltage is then applied exclusively to the living cells having been determined as unnecessary living cells so that the unnecessary living cells are damaged and killed.

Inventors:
NAKADA SHIGEYUKI (JP)
KIMURA NORIAKI (JP)
ITO AKIHIDE (JP)
YASUDA KENJI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/060676
Publication Date:
December 18, 2008
Filing Date:
June 11, 2008
Export Citation:
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Assignee:
MITSUI SHIPBUILDING ENG (JP)
NAKADA SHIGEYUKI (JP)
KIMURA NORIAKI (JP)
ITO AKIHIDE (JP)
YASUDA KENJI (JP)
International Classes:
C12N5/00; C12M1/34; C12M1/42; C12N5/07; C12N5/071; G01N15/14; G01N33/48
Domestic Patent References:
WO2002098501A22002-12-12
Foreign References:
JP2007104929A2007-04-26
Other References:
BEEBE S.J. ET AL.: "Nanosecond, high-intensity pulsed electric fields induce apoptosis in human cells", FASEB J., vol. 17, no. 11, 2003, pages 1493 - 1495, XP008134896
Attorney, Agent or Firm:
GLOBAL IP TOKYO (8-3-30 Nishi-Shinjuk, Shinjuku-ku Tokyo 23, JP)
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Claims:
 生細胞分別処理方法であって、
 複数の不要生細胞と複数の目的生細胞とが混合してなる生細胞群を含み、前記生細胞群の各生細胞がそれぞれ離間して一直線上に流れるサンプル液流を形成するステップと、
 前記サンプル液流に測定光を照射するステップと、
 前記測定光の照射を受けて、前記サンプル液流の各生細胞それぞれから発する、散乱光および蛍光の少なくともいずれか一方の光情報それぞれを取得するステップと、
 前記取得するステップによって取得された光情報に基づき、各光情報に対応する前記生細胞が、前記不要生細胞または前記目的生細胞のいずれであるかをそれぞれ判別するステップと、
 前記判別するステップにおける判別結果に応じて、前記サンプル液流中の前記不要生細胞に対応する部分にパルス電界を発生させることで、前記不要生細胞に損傷を与えて死細胞とするステップと、
 を有することを特徴とする生細胞分別処理方法。
 前記死細胞とするステップでは、前記不要生細胞にパルス電界を作用させ、前記不要生細胞に損傷を与えて死細胞とする請求項1記載の生細胞分別処理方法。
 前記死細胞とするステップにおいて前記不要生細胞に作用させるパルス電界は、前記不要生細胞の細胞核に電界がかかり、前記細胞核内部のDNA(deoxyribonucleic acid)が損傷を受けるよう、パルス幅が設定されている請求項2記載の生細胞分別処理方法。
 前記パルス幅は、1.0×10 -6 (秒)より短い請求項3記載の生細胞分別処理方法。
 前記死細胞とするステップでは、前記不要生細胞にパルス電界を作用させて前記不要生細胞内にパルス電流を生じさせ、前記パルス電流によるジュール熱によって前記不要生細胞にアポトーシスを起こさせる請求項4に記載の生細胞分別処理方法。
 前記死細胞とするステップにおいて前記不要生細胞に作用させるパルス電界は、前記不要生細胞の細胞核と比較して前記不要生細胞の細胞膜により高い電界がかかり、前記細胞膜が不可逆破壊されるよう、パルス幅およびピーク電圧が設定されている請求項2記載の生細胞分別処理方法。
 前記パルス幅は、1.0×10 -6 (秒)と同等またはそれより長い請求項6記載の生細胞分別処理方法。
 前記不要生細胞の細胞膜にかかる電界が1kV/cm以上であり、前記ピーク電圧は10V以上である請求項7記載の生細胞分別処理方法。
 さらに、前記パルス電圧の印加によって損傷を受けた前記死細胞と前記目的生細胞とが含まれる、前記パルス電圧が印加された後の前記サンプル液を回収容器に回収するステップと、
 前記サンプル液中、前記回収容器の内壁面に付着した細胞を、前記目的生細胞として回収するとともに、前記回収容器の内壁面に付着せず前記サンプル液に浮遊する細胞を、前記死細胞として分別して回収するステップと、を有する請求項1~8のいずれかに記載の生細胞分別処理方法。
 さらに、前記パルス電圧の印加によって損傷を受けた前記死細胞と前記目的生細胞とが含まれる、前記パルス電圧が印加された後の前記サンプル液を回収容器に回収するステップと、
 前記回収容器中の前記サンプル液に対して生細胞を培養可能な培養処理を施し、前記サンプル液中の前記目的生細胞のみを培養することで、前記サンプル液中の前記死細胞の割合を減少させるステップと、を有する請求項1~8のいずれかに記載の生細胞分別処理方法。
 細胞分別処理機能を有するフローサイトメータであって、
 複数の不要生細胞と複数の目的生細胞とが混合してなる生細胞群を含むサンプル液が内部を流れるフローセルと、
 前記フローセル内の特定領域にパルス電界を発生させる電界発生部と、
 前記フローセル内の前記サンプル液流に測定光を照射する測定光照射部と、
 前記測定光の照射を受けて、前記サンプル液流の各生細胞それぞれから発する、散乱光および蛍光の少なくともいずれか一方の光情報それぞれを取得する光情報取得部と、
 前記光情報取得手段によって取得された光情報に基づき、各光情報に対応する前記生細胞が、前記不要生細胞または前記目的生細胞のいずれであるか、をそれぞれ判別する生細胞判別部と、
 前記生細胞判別手段における判別結果に応じ、前記電界発生手段による前記パルス電界の発生タイミングを制御する制御部と、を有し、
 前記制御部が、前記フローセル内の前記特定領域を前記不要生細胞が通過するタイミングで、前記電界発生部によって前記特定領域に前記電界を発生させて、前記不要生細胞に損傷を与えて死細胞とすることを特徴とする、細胞分別処理機能を有するフローサイトメータ。
 前記電界発生部は、前記フローセルの特定領域を挟むように配置された2つの電極と、
 前記2つの電極間にパルス電圧を印加するパルス電圧印加部と、
 を有して構成されている請求項11記載の細胞分別処理機能を有するフローサイトメータ。
Description:
細胞分別処理機能を有するフロ サイトメータ、および生細胞分別処理方法

 本発明は、複数の不要生細胞と複数の目 生細胞とが混合してなる生細胞群のうち、 定の生細胞に処理を行うフローサイトメー 、および、上記生細胞群から目的生細胞を 別して回収する生細胞分別処理方法に関す 。

 例えば癌などの研究における細胞や染色 の解析には、従来は顕微鏡が用いられてい 。しかし、顕微鏡による解析では、大量の ータを集めて統計的に検討するのに、非常 多くの手間と時間を要していた。現在、多 の場合、細胞や染色体の解析には、短時間 多くのサンプル(細胞や染色体)を解析し、 頼性の高い統計データを得ることを可能と る、フローサイトメータが用いられている フローサイトメータでは、抗体が蛍光染色 れた細胞などのサンプル粒子を含むサンプ 液の流れであるサンプル液流を形成し、こ サンプル液流にレーザ光を照射して、流れ 大量のサンプル粒子の1つ1つから放出される 蛍光や散乱光を測定し、信頼性の高い統計デ ータを得ることができる。このようなフロー サイトメータは、医療分野における研究など に広く利用されている。

 ところで、今後の医療分野において大き 期待がかかっているのは、再生細胞ともい れる幹細胞(stem cell)を用いた治療である。 細胞とは、生体を構成する細胞の生理的な 殖・分化などの過程において、自己増殖能 、特定の機能を持つ細胞に分化する能力と あわせ有する細胞である。すなわち、幹細 は、自分自身が増える複製能力と、ほかの 胞になる能力を備えている細胞である。幹 胞には、胚から取り出される胚性幹細胞(ES 胞)、成人から取り出される成体幹細胞、胎 児から取り出される胎児性幹細胞など、様々 な種類がある。この幹細胞を、けがや病気で 傷んだ臓器などの細胞に分化させることがで きれば、移植して修復に使えることから、再 生医療の分野等で研究が盛んになっている。

 胚性幹細胞や胎児性幹細胞などから幹細 を取り出すには、胚を壊してしまう(殺して しまう)必要があるといった倫理的な問題を している。このため、現在の再生医療に関 る研究の多くは、生きている人(子どもまた 成人)から、その体を傷つけることなく幹細 胞を採取することができる成体幹細胞に関す るものとなっている。成体幹細胞の研究には 、当然ながら、成体幹細胞が必要である。成 体幹細胞は、骨髄や血液、目の角膜や網膜、 肝臓、皮膚などで見つかるものであるが、見 つかることは非常にまれであり、通常、採取 した大量の細胞サンプルの中から、ごく微量 しか見つけることはできない。例えば、骨髄 間質の中には、骨、軟骨、脂肪、筋肉、腱、 神経など多くの組織に分化できる間葉系幹細 胞と呼ばれ細胞が存在しており、病気や外傷 などによる組織欠損に対する再生医療におい て注目されている。しかしながらこの細胞は 骨髄中には10万個に1個の割合でしか存在して いない。そのため欠損組織の再生を行うため には一度体外で培養して細胞を増やす必要が ある。そのためには、この骨髄中の複数の細 胞の中から、ごく微量の幹細胞を分離・抽出 する必要がある。大量の細胞サンプルの中か ら、なるべく短時間に、ごく微量の成体幹細 胞を分離・抽出するために、現在、上記フロ ーサイトメータを用いた細胞の分離・回収シ ステム(セルソータ)が利用されている。

 例えば、下記非特許文献1には、このよう なセルソータの一例について記載されている 。図4は、下記非特許文献1記載のセルソータ1 00について説明する概略構成図である。セル ータ100では、大量の細胞サンプル102を含ん サンプル液を、ノズル103からジェット流104 して出射する。これら大量の細胞サンプル1 02には、わずかながら幹細胞が含まれており 大量の細胞サンプル102には、このような幹 胞を特徴づけるための蛍光ラベリングが施 れている。セルソータ100は、このジェット 104に測定用のレーザ光106を照射して、大量 細胞サンプル102に対して順次レーザ光106を 射する。そして、光電子増倍管108および光 子増倍管110を有する図示しない評価手段に って、個々の細胞サンプル102から発せられ 各種散乱光や蛍光の情報を取得する。そし 、図示しない評価手段において、レーザ光1 06を照射した細胞サンプルが、幹細胞サンプ であるか否かを判定する(なお、下記非特許 文献1では、幹細胞を多く含んだサンプル細 の集団部分を特定している)。ここまでは、 般的なフローサイトメータの構成であるが セルソータ100では、特定した細胞を分離(ソ ーティング)する機能を有している。セルソ タ100では、例えば図示しない圧電素子等に ってノズル103を高周波で振動させ、ジェッ 流104を強制的に液滴112とする。この液滴112 形成する際、幹細胞サンプルなどの特定の 胞サンプルが液滴に入った瞬間に、この特 液滴に対して、プラス(+)またはマイナス(-)( 示例ではプラス)の電荷をかける(チャージ る)。

 液滴112は、2枚の電場形成電極板114および 116によって形成された水平方向の電場118の間 を順次通過する。この際、チャージされた液 滴112のみが、この水平方向の電場によって落 下方向を変えて(偏向して)落下し、所望の試 管120に回収される。このようにして、幹細 サンプルなどの特定の細胞サンプル102のみ 、試験管120に回収される。チャージされな ったその他の細胞サンプル102は、鉛直に落 して、廃液受け122に回収される。

“超高速セルソータMoFloTMによる幹細胞 新しい分析・分離方法”、[online]、[平成19年 2月19日検索]、インターネット<URL:http://www.t akara-bio.co.jp/goods/bioview/pdfs/42/42_15-16.pdf>

 しかし、上記非特許文献1のように、サン プル液をジェット流にするためには、ノズル の出口部分の直径を例えば25(μm)と著しく小 くする必要がある。上記非特許文献1の例で 、直径が数(μm)~20(μm)程度の細胞が、この狭 い出口部分を通過する際に物理的剪弾力を受 けるので、必要である幹細胞までもが損傷を 受けてしまう可能性が高かった。また、強制 的に液滴とする際の高周波振動によっても、 損傷を受けてしまう可能性があった。また、 細胞サンプルが含まれる液滴をチャージして 、しかも高電場をかけた場合、幹細胞などの 必要な細胞にまで電気的な衝撃が加わり、こ の必要な細胞まで損傷を受けてしまうといっ た問題もあった。このようなセルソータを用 いて幹細胞サンプルを分離して、所望の臓器 などの細胞に分化させるとしても、分離した 幹細胞サンプルが損傷を受けている場合、う まく分化しなかったり、あるいは不良細胞( えば癌細胞)が発現してしまうなど、多様か 危険な問題が発生する可能性を完全には排 できない。このため、細胞に損傷を与える とができないような慎重を要する研究分野 は、依然としてこのような高速セルソータ 用いることができなかった。

 このように、細胞の取り扱いに慎重を要 る分野では、例えば、上記セルソータ100の 験管120自体を、所定のタイミングで移動さ ることで、液滴112に含まれて落下する特定 胞サンプルを、分離・回収していた。しか 、試験管120自体の移動速度は、ジェット流1 04が液滴化された液滴112の落下速度に比べて しく小さい速度しか達成できない。大量の ンプルを高速度に流した場合、大量の細胞 ンプルに対して、ごくわずかな特定細胞サ プルしか取得することしかできない。また 試験管120の移動速度に応じて、サンプルの 速度を著しく低くした場合は、細胞の分離 抽出に多くの時間を要する。

 本発明は、上記従来の問題点に着目して されたものであり、目的とする生細胞には 切の損傷を与えることなく、大量の生細胞 含まれる生細胞群から、短時間かつ高精度 、不要生細胞を分別して処理することを可 とする、生細胞分別処理機能を有するフロ サイトメータを提供することを目的とする また、大量の生細胞が含まれる生細胞群か 、目的生細胞のみを分別して回収すること 可能とする、生細胞分別処理方法を提供す ことを目的とする。また、大量の生細胞が まれる生細胞群から、目的生細胞のみを分 して培養することを可能とする、生細胞分 処理方法を提供することを目的とする。

 上記問題を解決するために、本発明は、 細胞分別処理方法であって、複数の不要生 胞と複数の目的生細胞とが混合してなる生 胞群を含み、前記生細胞群の各生細胞がそ ぞれ離間して一直線上に流れるサンプル液 を形成するステップと、前記サンプル液流 測定光を照射するステップと、前記測定光 照射を受けて、前記サンプル液流の各生細 それぞれから発する、散乱光および蛍光の なくともいずれか一方の光情報それぞれを 得するステップと、前記取得するステップ よって取得された光情報に基づき、各光情 に対応する前記生細胞が、前記不要生細胞 たは前記目的生細胞のいずれであるかをそ ぞれ判別するステップと、前記判別するス ップにおける判別結果に応じて、前記サン ル液流中の前記不要生細胞に対応する部分 パルス電界を発生させることで、前記不要 細胞に損傷を与えて死細胞とするステップ 、を有することを特徴とする生細胞分別処 方法を提供する。

 その際、前記死細胞とするステップでは、 記不要生細胞にパルス電界を作用させ、前 不要生細胞に損傷を与えて死細胞とするこ が好ましい。さらに、その際、前記死細胞 するステップにおいて前記不要生細胞に作 させるパルス電界は、前記不要生細胞の細 核に電界がかかり、前記細胞核内部のDNA(deo xyribonucleic acid)が損傷を受けるよう、パルス が設定されていることが好ましい。このと 、前記パルス幅は、1.0×10 -6 (秒)より短いことが好ましい。
 その際、前記死細胞とするステップでは、 記不要生細胞にパルス電界を作用させて前 不要生細胞内にパルス電流を生じさせ、前 パルス電流によるジュール熱によって前記 要生細胞にアポトーシスを起こさせること 好ましい。

 また、前記死細胞とするステップにおいて 記不要生細胞に作用させるパルス電界は、 記不要生細胞の細胞核と比較して前記不要 細胞の細胞膜により高い電界がかかり、前 細胞膜が不可逆破壊されるよう、パルス幅 よびピーク電圧が設定されていることが好 しい。その際、前記パルス幅は、1.0×10 -6 (秒)と同等またはそれより長いことが好まし 。前記不要生細胞の細胞膜にかかる電界が1 kV/cm以上であり、前記ピーク電圧は10V以上で ることが好ましい。

 さらに、前記パルス電圧の印加によって 傷を受けた前記死細胞と前記目的生細胞と 含まれる、前記パルス電圧が印加された後 前記サンプル液を回収容器に回収するステ プと、前記サンプル液中、前記回収容器の 壁面に付着した細胞を、前記目的生細胞と て回収するとともに、前記回収容器の内壁 に付着せず前記サンプル液に浮遊する細胞 、前記死細胞として分別して回収するステ プと、を有することが好ましい。

 さらに、前記パルス電圧の印加によって 傷を受けた前記死細胞と前記目的生細胞と 含まれる、前記パルス電圧が印加された後 前記サンプル液を回収容器に回収するステ プと、前記回収容器中の前記サンプル液に して生細胞を培養可能な培養処理を施し、 記サンプル液中の前記目的生細胞のみを培 することで、前記サンプル液中の前記死細 の割合を減少させるステップと、を有する とが好ましい。

 また、本発明は、細胞分別処理機能を有 るフローサイトメータであって、複数の不 生細胞と複数の目的生細胞とが混合してな 生細胞群を含むサンプル液が内部を流れる ローセルと、前記フローセル内の特定領域 パルス電界を発生させる電界発生部と、前 フローセル内の前記サンプル液流に測定光 照射する測定光照射部と、前記測定光の照 を受けて、前記サンプル液流の各生細胞そ ぞれから発する、散乱光および蛍光の少な ともいずれか一方の光情報それぞれを取得 る光情報取得部と、前記光情報取得手段に って取得された光情報に基づき、各光情報 対応する前記生細胞が、前記不要生細胞ま は前記目的生細胞のいずれであるか、をそ ぞれ判別する生細胞判別部と、前記生細胞 別手段における判別結果に応じ、前記電界 生手段による前記パルス電界の発生タイミ グを制御する制御部と、を有し、前記制御 が、前記フローセル内の前記特定領域を前 不要生細胞が通過するタイミングで、前記 界発生部によって前記特定領域に前記電界 発生させて、前記不要生細胞に損傷を与え 死細胞とすることを特徴とする、細胞分別 理機能を有するフローサイトメータを提供 る。

 その際、前記電界発生部は、前記フロー ルの特定領域を挟むように配置された2つの 電極と、前記2つの電極間にパルス電圧を印 するパルス電圧印加部と、を有して構成さ ていることが好ましい。

 本発明の細胞分別処理機能を有するフロ サイトメータは、目的とする生細胞には一 の損傷を与えることなく、大量の生細胞が まれる生細胞群から、短時間かつ高精度に 要生細胞を分別し、この不要生細胞に損傷 与えて死細胞とすることができる。また、 発明の生細胞分別処理方法では、目的とす 生細胞には一切の損傷を与えることなく、 量の生細胞が含まれる生細胞群から、短時 かつ高精度に、目的生細胞を分別して回収 ることができる。また、本発明の生細胞分 処理方法では、目的とする生細胞には一切 損傷を与えることなく、大量の生細胞が含 れる生細胞群から、短時間かつ高精度に、 的生細胞を分別して培養することができる

本発明の細胞分別処理機能を有するフ ーサイトメータの一例について説明する概 斜視図である。 図1に示すフローサイトメータの光学ユ ニットおよび電圧印加ユニットの構成および 動作についてより詳細に説明する、概略側面 図である。 (a)および(b)は、図1に示すフローサイト メータのフローセルに設けられた電極および その近傍を拡大して示す概略側面図である。 従来の細胞分別処理機能を有するフロ サイトメータの一例である、セルソータに いて説明する概略構成図である。

符号の説明

 10 フローサイトメータ
 11 生細胞群
 12 分析サンプル
 12a 幹細胞
 12b 不要生細胞
 13 死亡細胞
 15 シース流
 17 サンプル液流
 20 液流形成ユニット
 22 液体供給装置
 25 分析サンプル液タンク
 27 シース液タンク
 32 フローセル
 34 外部管路
 36 サンプル液流管
 40 光学ユニット
 42 測定レーザ光照射部
 44、46 受光部
 50 分析ユニット
 52 データ取得部
 54 データ処理・判別部
 60 電圧印加ユニット
 62 パルス電圧発生器
 64a、64b 電極
 70 制御装置
 72 印加タイミング制御部
 82 細胞膜
 84 細胞質
 86 核膜
 88 核質
 100 セルソータ
 102 細胞サンプル
 103 ノズル
 104 ジェット流
 106 レーザ光
 108、110 光電子増倍管
 112 液滴
 114、116 電場形成電極板
 120 試験管

 以下、本発明の細胞分別処理機能を有す フローサイトメータ、および細胞分別処理 法について、添付の図面に示される好適実 例を基に詳細に説明する。図1は、本発明の 細胞分別処理機能を有するフローサイトメー タの一例である、フローサイトメータ10につ て説明する概略斜視図である。

 フローサイトメータ10は、液流形成ユニ ト20、光学ユニット40、分析ユニット50、電 印加ユニット60、各部の動作シーケンスを制 御する制御装置70、回収容器80とを有して構 されている。フローサイトメータ10は、大量 の不要生細胞(幹細胞以外の細胞)に、目的生 胞である幹細胞がごく僅かだけ含まれる生 胞群について、各細胞毎に幹細胞であるか かを判別し、幹細胞でない(すなわち不要生 細胞)と判別された生細胞に対してのみパル 電圧を印加し、不要生細胞に損傷を与えて 細胞とする装置である。フローサイトメー 10は、また、パルス電圧が印加された後の、 死細胞と幹細胞とが含まれるサンプル液を回 収するための回収容器80を備えており、回収 器80の内壁面に付着せずサンプル液に浮遊 る細胞を、死細胞として分別して回収する 能や、回収容器80中のサンプル液に対して生 細胞を培養可能な培養処理を施し、サンプル 液中の幹細胞のみを分別して培養することで 、サンプル液中の死細胞の割合を減少させる 機能も有する。

 フローサイトメータ10は、例えば、ヒト 骨髄から抽出した生細胞群など、大量の生 胞の中に、ごく少ない割合ながら幹細胞を んだ(含む可能性が高い)生細胞群から、幹細 胞を分別する、いわゆるソーティング機能を 有する装置(ソーティングシステム)である。 実施形態では、このように、フローサイト ータ10を用いて、例えば、ヒトの骨髄から 出した生細胞群など、大量の生細胞の中に ごく少ない割合ながら幹細胞を含んだ(含む 能性が高い)生細胞群から、幹細胞を分別し 、各種の処理を施す。なお、本発明における 目的生細胞は、幹細胞であることに限定され ない。

 上述したように、ヒトの骨髄の中には、 葉系幹細胞と呼ばれ細胞が、10万個に1個の 合でしか存在していない。フローサイトメ タ10を用いて行なう細胞分別処理において 、このような生細胞群に対して、予め、蛍 色素を用いて一様に染色処理(蛍光ラベル)を 施すことで、幹細胞とその他の不要生細胞と を識別可能に特徴付けておく。幹細胞は、い わゆるMDR(Multi Drug Resistance)の働きで、細胞 に取り込んだ色素を吐き出す性質をもって る。特定の蛍光色素を用い、所定の条件で 細胞群を染色処理した場合、このMDRの機能 よって、幹細胞についてはほとんど染色さ ない(色素を吐き出した)状態となる。フロー サイトメータ10で行う細胞分別処理には、こ ように、細胞における蛍光色素の染色状態 違いによって、幹細胞12aとその他の不要生 胞12bとを識別可能に特徴付けた生細胞群11 用いる。生細胞群11において、各細胞が、そ れぞれ幹細胞12aであるか不要生細胞12bである かについては、生細胞群11をフローサイトメ タ10に導入する時点では不明であることは うまでもない。本明細書では、幹細胞12aと 要生細胞12bとを、(特に、幹細胞であるか不 生細胞であるか不明である状態において)共 に分析サンプル12として記載する。なお、本 施形態では、幹細胞の有するMDR機能を利用 て、幹細胞とその他の不要生細胞とを識別 能に特徴付けているが、本発明において、 光色素によって目的細胞とその他の不要生 胞とを識別可能に特徴付ける手法は、特に 定されない。

 液流形成ユニット20は、液体供給装置22と 、流管部30とを有して構成されている。液体 給装置22と流管部30は、配管24によって接続 れている。液体供給装置22内には、分析サ プル液を貯溜しておく分析サンプル液タン 25、シース液を貯溜しておくシース液タンク 27とを有している。流管部30は、サンプル液 シース液に囲まれて内部を流れるフローセ 32と、フローセル32にシース液を供給するフ ーセル32と連続した外部管路34と、外部管路 34の内部に設けられて、フローセル32にサン ル液を供給するサンプル液流管36とを有して いる。液体供給装置22のサンプル液タンク25 サンプル液流管36に、シース液タンク27は外 管路34に、配管24を介してそれぞれ接続され ている。フローセル32の出口には、回収容器8 0が設けられている。

 この液体供給装置22は、図示しないエア ンプを各タンク毎に備えている。フローサ トメータ10では、シース液タンク27内部を図 しないエアポンプによって加圧することで 部管路34内部にシース液を供給し、外部管 34およびフローセル32内を図1中上側から下側 に向けて流れるシース流15(図2参照)を形成す 。そして、サンプル液タンク25を図示しな エアポンプによって加圧することで、サン ル液流管36の内部にサンプル液を供給し、サ ンプル液流管36の図中下側の開口端である吐 口38から、シース流15の中にサンプル液を吐 出する。

 フローセル32では、サンプル液は、シー 流15中に吐出された段階で流体力学的絞り込 みが生じ、シース流15に囲まれたサンプル液 流れは非常に細くなり、分析サンプル12そ ぞれが流れの方向に離間して1列に並んだ、 ンプル液流17を形成する。本実施形態のフ ーサイトメータ10では、サンプル液流などの 分析サンプル12それぞれが、ほぼ均等に所定 間隔(例えば10μm)だけ離間して流れるように 、液体供給装置22などの動作(エアポンプの圧 力など)が調整されている。すなわち、フロ セル32では、分析サンプル12は1列となり、1 ずつ順番に所定の速さV(m/秒)でフローセル32 を流れる。このフローセル32には、光学ユ ット40の測定レーザ光照射部42によってレー 光が照射されており、このレーザ光を横切 ようにして分析サンプル12は1個づつ順番に れる。

 光学ユニット40は、フローセル32にむけて 測定用のレーザ光を照射する測定レーザ光照 射部42と、フローセル32を流れる(サンプル液 17に含まれて流れる)分析サンプル12による 乱光を受光し、受光した散乱光に応じた信 を出力する受光部44と、フローセル32を流れ 分析サンプル12から発光した蛍光を受光し 受光した蛍光に応じた信号を出力する受光 46と、を有している。受光部44および46は分 ユニット50に接続されており、出力された光 信号は分析ユニット50に送られる。

 図2は、光学ユニット40および電圧印加ユ ット60の構成および動作についてより詳細 説明する、概略側面図である。測定レーザ 照射部42は、フローセル32を流れるサンプル 流17に向けて特定波長のレーザ光を出射す 測定レーザ光照射部42と、測定レーザ光照射 部42から出射された測定用レーザ光を整形し フローセル32内のサンプル液流17に導く、レ ンズなどからなるレーザ光整形・調整部64と 備えて構成されている。測定レーザ光照射 42は、図示しないレーザ電源に接続されて り、制御装置10の制御の下、フローセル32内 流れる、分析サンプル12が1列に並んだサン ル液流17に向けて、測定用レーザ光を連続 に出射する。測定レーザ光照射部42から出射 される測定用レーザ光は、分析サンプル12に 着された(特に不要生細胞12b内に取り込まれ て付着している)蛍光色素を励起させて特定 長範囲の蛍光を発生させる、特定波長のレ ザ光である。測定レーザ光照射部42としては 、固体レーザや半導体レーザなどの、周知の レーザ装置を用いればよい。

 受光部44は、フローセル32を挟んで測定レ ーザ光照射部42と対向するように配置されて り、フローセル32を通過する分析サンプル12 によるレーザ光の前方散乱光を連続して受光 し、受光した前方散乱光の強度に応じたアナ ログ電気信号を出力する。一方、受光部46は レーザ光照射部42から出射されるレーザ光 出射方向に対して垂直方向であって、かつ 外部管路30中の分析サンプル12の移動方向に して垂直方向に配置されており、レーザ光 受けて分析サンプル12から発せられた蛍光 受光して、受光した蛍光の強度に応じたア ログ電気信号を出力する。受光部44および受 光部46における光検出およびアナログ電気信 の出力には、例えばPMT(photomultiplier tube)を いればよい。

 分析ユニット50は、データ取得部52と、デ ータ処理・判別部54とを有して構成されてい 。データ取得部52は、受光部44および受光部 46から出力されたアナログ信号を受け取り、 のアナログ信号をAD変換してデジタル信号 して出力する。データ処理・判別部54は、デ ータ取得部52から出力されたデジタル情報を 理して、例えば、各分析サンプル12の染色 合(生細胞中の蛍光色素量の程度)を示す情報 (染色量情報)を導出する。データ処理・判別 54は、さらに、この染色量情報に基づいて 染色量情報に対応する分析サンプル12が、不 要生細胞または幹細胞のいずれであるか判別 する。本実施形態では、上述のように、不要 生細胞12bに比べて、幹細胞12aは染色具合(生 胞中の蛍光色素量の程度)が低いので、比較 染色具合が低いことを表す染色量情報(例え ば、染色量の表す値が所定の閾値以下など) 対応する分析サンプル12を、幹細胞12aである と判別する。

 データ処理・判別部54は、判別結果を、 御装置70の印加タイミング制御部72(タイミン グ制御部72)に送信する。なお、分析ユニット 50には、ディスプレイやプリンタなど、図示 ない出力装置が接続されており、データ処 部54における解析結果を表示出力すること 可能となっている。なお、本実施形態では 光情報から細胞の染色具合の程度を導出す ことで、幹細胞であるか不要生細胞である を判別していたが、本発明の生細胞の判別 に用いる、目的生細胞と不要生細胞との判 基準については、特に限定されない。本発 の生細胞の判別時に用いる、取得した蛍光 報などの光情報に施す処理の内容や、目的 胞を特定するためのアルゴリスムなどは、 に限定されない。

 電圧印加ユニット60は、パルス電圧発生器62 と、フローセル32の管壁にそれぞれ対向して けられた、パルス電圧発生器62の出力端子 それぞれ接続された電極64aおよび64bとを有 て構成されている。パルス電圧発生器62は、 制御ユニット70の印加タイミング制御部72の 御の下、電極64aおよび64bとの間にパルス電 を印加する。パルス電圧発生器62は、例えば 1.0×10 -9 (秒)~1.0×10 -6 (秒)程度のパルス幅でパルス電圧を出力する とが可能な、公知のパルス電圧発生手段で る。

 電極64aおよび電極64bは、測定レーザ光の 射位置A(図2参照)から、サンプル液流17の流 向の下流側に十分離間した位置(例えば、1.0 mm以上離間した位置)に配置されている。例え ば、電極64aおよび電極64bの中央部分に対応す る電極位置B(図2参照)と測定レーザ光の照射 置Aとは、予め設定された距離D(m)だけ離間し ているとし、サンプル液流17の速度、すなわ 分析サンプル12の移動速度V(m/秒)であるとし たとき、1つの分析サンプル12は、測定レーザ 光の照射を受けたタイミングからT=D/V(秒)だ 経過したタイミングで、電極位置Bを通過す ことになる。分析ユニット50では、光情報 取得してから、少なくともこのT(秒)経過す までの間に、取得した光情報に対応する分 サンプルが、不要生細胞か幹細胞かを判別 て、印加タイミング制御部72に判別結果を送 信する。

 印加タイミング制御部72は、分析ユニッ 50のデータ処理・判別部54から、測定レーザ に照射された分析サンプル12が不要生細胞12 bであるとの判別結果を受け取った場合、こ 不要生細胞12bにパルス電圧が印加されるよ 、パルス電圧発生器62の動作を制御する。逆 に、分析ユニット50のデータ処理・判別部54 ら、測定レーザ光に照射された分析サンプ 12が幹細胞12aであるとの判別結果を受け取っ た場合、この幹細胞12aにはパルス電圧が印加 されないよう、パルス電圧発生器62の動作を 御する。

 具体的には、印加タイミング制御部72は 分析ユニット50のデータ処理・判別部54から 測定レーザ光に照射された分析サンプル12 不要生細胞12bであるとの判別結果を受け取 と、所定の時間範囲(対応する分析サンプル1 2が、後述する有効電界領域Eを確実に通過す 時間範囲)だけ、パルス電圧発生器62に電圧 印加させる(すなわち、電極64aと電極64bとの 間にパルス電圧を印加させる)。また、印加 イミング制御部72は、分析ユニット50のデー 処理・判別部54から、測定レーザ光に照射 れた分析サンプル12が幹細胞12aであるとの判 別結果を受け取ると同時に、所定の時間範囲 (対応する分析サンプル12が、後述する有効電 界領域Eを確実に通過する時間範囲)において 、パルス電圧発生器62がパルス電圧を印加 ないように制御する。

 上記所定の時間範囲は予め設定されてい もよく、例えば、印加タイミング制御部72 上記T=D/V(秒)の情報や、後述する有効電界領 E(図3を参照)の大きさの情報も設定されてお り、印加タイミング制御部72が比較的高い処 能力を有する場合など、以下のようにして ルス電圧の印加を制御すればよい。例えば 印加タイミング制御部72は、送信された判 結果を受け取ったタイミングから、分析ユ ット50における各処理時間の影響を加味して 、この判別結果に対応する分析サンプル12(す なわち幹細胞12a)が測定レーザ光の照射位置A 通過したタイミングを同定する。さらに、 加タイミング制御部72は、幹細胞12aである の判別結果を受け取った場合は、少なくと 、この同定したタイミングからT=D/V(秒)だけ 過したタイミング(すなわち、上記対応する 分析サンプル12が、電極位置Bを通過するタイ ミング)を同定する。さらに、有効電界領域E 大きさに基いて、電極位置Bを通過するタイ ミングを含む所定の時間範囲(対応する1つの 析サンプル12が、有効電界領域Eを通過して る時間範囲)を求める。印加タイミング制御 部72は、幹細胞12aであるとの判別結果を受け った場合は、少なくとも、この所定の時間 囲(対応する分析サンプル12が、後述する有 電界領域Eを確実に通過する時間範囲)では パルス電圧発生器62がパルス電圧を印加しな いように制御する。

 図3(a)および(b)は、フローセル32内を移動 る不要生細胞12bに対するパルス電圧の印加 ついて説明する図であり、図2に示すフロー セル32の電極64aおよび64b近傍を拡大して示す である。電極64aおよび64bは、フローセル32 管壁に固定されている。電極64aおよび64bが 例えばシース流15のシース液に接触すると、 シース液やサンプル液が激しく電気分解を起 こし、フローセル32内の必要な生細胞(すなわ ち幹細胞12a)まで損傷を与える可能性がある で、電極64aおよび電極64bは、シース液やサ プル液に直接は接触せず、絶縁物を介して 触している。図3(a)および(b)では、電極64aお び64bの一部がフローセル32の管壁に埋め込 れる形で固定されており、例えば石英など 絶縁物であるフローセル32の管壁の一部を、 シース液と電極64aおよび64bとの間に配置する 構成としている。

 本実施形態では、図3(a)に示すように、パル ス電圧を印加するための電極は、いわゆるダ イポール構造となっており、対向する2つの 極64aおよび64bで構成されている。パルス電 発生器62によって、電極64aおよび64bとの間に パルス電圧が印加されると、電極64aおよび64b との間に電界が発生する。シース流15のシー 液およびサンプル液流17のサンプル液はと に導電性を有し、フローセル32内部には電界 が生じる。例えば、電極64aがより高い電位、 電極64bがより低い電位となるよう、1.0×10 -9 (秒)~1.0×10 -6 (秒)程度のパルス幅でパルス電圧が印加され とすると、1.0×10 -9 (秒)~1.0×10 -6 (秒)程度のパルス幅で、電極64aから電極64bに かう電気力線で表される電界(パルス電界) 発生する。

 例えば、図3(a)に示すダイポール構造の電極 間に電界が印加された場合、生細胞を死細胞 とするに十分な強度を有する有効電界領域E 、電極位置Bを中心としたある程度の拡がり もってフローセル32内に形成される。有効 界領域Eは、1つの分析サンプル12が、この有 電界領域Eを通過している最中に、外の分析 サンプル12が有効電界領域Eに存在しないよう 、十分に小さく形成されている。例えば分析 サンプル12の移動速度、すなわちサンプル液 17の流速を5.0(m/秒)、1秒間に流す分析サンプ ル12の数を5000個とすると、サンプル液流17中 おける分析サンプル12間の距離は、平均で 1.0×10 -3 (m)となる。この場合、有効電界領域Eの、サ プル液の流方向に沿った方向の拡がりが1.0× 10 -3 (m)より十分に小さくなるよう、電極64aおよび 64bの大きさや、印加電界の大きさが調整され ている。なお、本発明では、有効電界領域E 、サンプル液の流方向に沿った方向の拡が を抑制するために、図3(b)に示すように、パ ス電圧を印加するための電極64aおよび64bに えて電界調整用電極66aおよび66bを設けて、 わゆる多重電極構造としてもよい。

 フローセル32内を移動する不要生細胞12bに して、十分大きな強度のパルス電界が作用 ると、不要生細胞12bは損傷を受けて死細胞 なる。不要生細胞12bにパルス電界が作用す ことで(すなわち、パルス電圧を印加するこ で)、不要生細胞12bが死細胞となるには、主 に2つの形態がある。第1の形態は、パルス幅 1.0×10 -6 (秒)以上と、比較的広いパルス幅のパルス電 を印加することで、不要生細胞12bの細胞膜8 2に電界を集中させ、この細胞膜82に修復不能 な穴を生じさせることで、不要生細胞12bを死 細胞とする形態である。細胞膜82に修復不能 穴が生じれば、細胞質84は細胞外へ流れ出 、不要生細胞12bは死に至る。また、第2の形 は、パルス幅が1.0×10 -6 (秒)より短い、比較的狭いパルス幅のパルス 圧を印加することで、不要生細胞12bの細胞 88にも電界を作用させ(言い換えると、電界 進入させ)、細胞核88に含まれるDNA(deoxyribonuc leic acid)に損傷を与え、不要生細胞12bを死細 とする形態である。第2の形態によれば、例 えば、DNAに元々プログラミングされているア ポトーシスを引き起こし、不要生細胞12bを死 細胞とすることができる。この場合、不要生 細胞12bに対して、十分大きな強度のパルス電 界が作用するので、パルス電界に対応したパ ルス電流が、不要生細胞12内の特に細胞核88 流れ、パルス電流によるジュール熱によっ DNAに損傷を与え、アポトーシスを引き起こ 。

 一般的な細胞である不要生細胞12bや幹細胞1 2aは、核質88が核膜86で包まれてなる核と細胞 質84とが、細胞膜82に包まれた構造となって る。核質88には、DNAが含まれる染色体が存在 している。このような不要生細胞12bを等価回 路で表すと、細胞膜82および核膜88部分は、 抗とキャパシタとで表現され、キャパシタ 誘電率は比較的高い。すなわち、このよう 不要生細胞12bの等価回路において、細胞膜82 および核膜88部分は、主にキャパシタとして 用する。このような等価回路全体に印加さ るパルス幅が大きい(すなわち印加電圧の周 波数が低い)と、キャパシタは電荷を蓄積し 比較的大きな電圧が作用する。一方、パル 幅が小さい(すなわち印加電圧の周波数が高 )ほど、キャパシタには電荷は蓄積されず、 等価回路全体に電圧が作用する。不要生細胞 12bの場合も同様であり、パルス幅が1.0×10 -6 (秒)以上と、比較的広いパルス幅のパルス電 を印加すると、上記第1の形態のように、不 要生細胞12bの細胞膜82に電界が集中する。逆 、パルス幅が1.0×10 -6 (秒)より小さい、比較的狭いパルス幅のパル 電圧を印加すると、上記第2の形態のように 、不要生細胞12bの細胞核88にも電界が作用す (言い換えると、電気エネルギーが進入する )。

 ここで、第1の形態のように、細胞膜82に電 を集中させて穴を形成しても、電界が比較 小さい場合、細胞膜82が有する自己修復機 によって、形成した穴は短時間で修復して まう。すなわち、第1の形態のように細胞膜8 2に穴を形成する場合、細胞膜82に作用する電 界が比較的小さいと、不要生細胞12bを死細胞 とすることができない。第1の形態のように 胞膜82に穴を形成して不要生細胞12bを死細胞 とする場合、細胞の自己修復機能によって修 復できない穴を形成する必要がある。このよ うな穴を形成するには、細胞膜82の組織を十 に破壊できる程度の、十分強い電界を印加 ることが必要である。本願発明では、パル 幅が1.0×10 -6 (秒)以上と、比較的広いパルス幅のパルス電 を印加する場合、細胞膜82に作用する電界 1kV/cm以上と十分強いことが好ましい。一般 なフローセルの直径は100~400(μm)であり、パ ス電圧を印加するための電極間距離も、同 の100~400(μm)とすることができるので、パル 電圧のピーク値は、例えば10(V)以上とするこ とが好ましい。なお、サンプル液やシース液 にかかる電界があまりに強すぎると、衝撃波 が生じたりサンプル液やシース液が突然沸騰 したりして、フローセルが破壊されてしまう 可能性もある。このような装置の損壊を防止 するために、パルス電圧のピーク値は1000(V) 下であることが好ましい。すなわち、本発 では、パルス幅が1.0×10 -6 (秒)以上と、比較的広いパルス幅のパルス電 を印加する場合、パルス電圧のピーク値は 例えば10(V)以上、1000(V)以下にすることが好 しい。

 上述のように、第2の形態では、例えば、 DNAに元々プログラミングされているアポトー シスを引き起こし、不要生細胞12bを死細胞と する。アポトーシスとは、多細胞生物の体を 構成する細胞の死に方の一種で、個体をより 良い状態に保つために積極的に引き起こされ る、管理・調節された細胞の自殺のことをい う。このアポトーシスに対し、血行不良、外 傷などによる細胞内外の環境の悪化によって 起こる細胞死は、ネクロシス(necrosis)または 死(えし)と呼ばれる。上記第1の形態のよう 、細胞膜に不可逆的に穴が形成されて起こ 細胞の死は、このネクロシスにあたる。

 細胞にアポトーシスを生じさせるには、DNA 損傷を与えることが必要である。第2の形態 では、パルス幅が1.0×10 -6 (秒)より小さい、比較的狭いパルス幅のパル 電圧を印加することで、不要生細胞12bの細 核88にも電界を作用させ(言い換えると、電 を進入させ)、細胞核88に含まれるDNA(deoxyribo nucleic acid)に損傷を与える。第2の形態では、 細胞核88になるべく大きな電界がかかるよう 言い換えると、不要生細胞12bのなるべく深 にまで電気エネルギーが侵入するよう、パ ス幅は、1.0×10 -7 (秒)未満と、なるべく小さい方が好ましい。

 パルス電圧によって生細胞を損傷して死細 とする本願発明では、例えば1.0×10 -9 (秒)~1.0×10 -6 (秒)程度と、十分小さいパルス幅のパルス電 の1つによって、1つの細胞を死細胞とする とができる。すなわち、1パルス毎に1つの細 胞を死細胞とすることもできる。例えば、1.0 ×10 -9 (秒)のパルス幅でパルス電圧を印加する場合 最大で、1秒間に1.0×10 9 個もの細胞を、死細胞とすることができる。 パルス電圧発生装置によってパルス電圧を連 続して出力する際、パルス幅が短くなるほど 、すなわち周波数が高くなるほど、1つ1つの ルス電圧は低めに抑えられる。上述のよう 、フローサイトメータ10では、直径100(μm)~40 0(μm)といった非常に細いフローセル32の管壁 電極64aおよび64bを設け、電極間距離100(μm)~4 00(μm)と非常に近接した電極64aおよび64bの間 パルス電圧を印加する。これにより、1つ1つ のパルス電圧は低めに抑えられたとしても、 電極間に発生する電界の強度は、細胞を死細 胞とする程度に十分大きくすることができる 。

 フローサイトメータ10では、印加タイミ グ制御部72が、分析ユニット50のデータ処理 判別部54から、測定レーザ光に照射された 析サンプル12が不要生細胞12bであるとの判別 結果を受け取った場合、この不要生細胞12bに パルス電圧が印加されるよう、パルス電圧発 生器62の動作を制御することで、サンプル群1 2のうちの不要生細胞12bは、確実に死亡細胞 される。また、逆に、分析ユニット50のデー タ処理・判別部54から、測定レーザ光に照射 れた分析サンプル12が幹細胞12aであるとの 別結果を受け取った場合、この幹細胞12aに パルス電圧が印加されないよう、パルス電 発生器62の動作を制御するので、サンプル群 12のうちの幹細胞12aは、損傷を一切受けるこ なく、確実に有効電界領域Eを通過する。

 有効電界領域Eを通過した分析サンプル12 、回収容器80内に落下する。例えば、生細 は、一般的に、接触した物体に付着(着床)す る性質を有している。このため、回収容器80 壁面には、パルス電圧の印加によって死亡 胞13となっていない分析サンプル12、すなわ ち幹細胞12aのみが付着している状態となる。 パルス電圧の印加によって死亡細胞13となっ 細胞は、回収容器80内のサンプル液に浮遊 ている状態となる。この浮遊状態の死亡細 13(不要生細胞12bであったもの)を除去するこ で、回収容器80内に目的生細胞である幹細 12aのみを分離して、回収することができる フローサイトメータ10は、このような、回収 容器80の内壁面に付着せずサンプル液に浮遊 る細胞を、死亡細胞13として分別して回収 、回収容器80内に目的生細胞である幹細胞12a のみを分離・回収する分離・回収機構を有し ていることが好ましい。

 また、回収容器80中のサンプル液に対し 生細胞を培養可能な培養処理を施せば、サ プル液中の死亡細胞(不要生細胞12bであった の)は培養される(増殖する)ことなく、サン ル液中の生細胞のみが培養される(増殖する )。このように、サンプル群11中の不要生細胞 12bを、パルス電圧によって確実に死亡細胞と しているので、サンプル液に培養処理を施す ことで、サンプル群11中の幹細胞12aのみを分 して培養することができ、サンプル液中の 亡細胞13の割合を減少させることができる このような培養処理によって、ほとんど全 の細胞が幹細胞12aからなる細胞群を得るこ ができる。フローサイトメータ10は、このよ うな、回収容器80中のサンプル液に対して生 胞を培養可能な培養処理を施すことができ 培養装置を有していることが好ましい。フ ーサイトメータ10は、以上のような構成と っている。

 本発明の細胞分別処理機能を有するフロ サイトメータによれば、目的とする生細胞 は一切の損傷を与えることなく、大量の生 胞が含まれる生細胞群から、短時間かつ高 度に不要生細胞を分別し、この不要生細胞 損傷を与えて死細胞とすることができる。 た、本発明の生細胞分別処理方法の一態様 よれば、目的とする生細胞には一切の損傷 与えることなく、大量の生細胞が含まれる 細胞群から、短時間かつ高精度に、目的生 胞を分別して回収することができる。また 本発明の生細胞分別処理方法の他の態様に れば、目的とする生細胞には一切の損傷を えることなく、大量の生細胞が含まれる生 胞群から、短時間かつ高精度に、目的生細 を分別して培養することができる。

 上記実施形態では、電極間にパルス電圧を 加することで、細胞にパルス電界を作用さ て死細胞とした。本発明では、サンプル液 中の不要生細胞に対応する部分にパルス電 を発生させ、例えばサンプル液自体に電界 作用させてもよい。例えば、上記フローサ トメータ10において、電極64aと64bとの間に 生する電界強度を、1.0×10 3 (V)~1.0×10 4 (V)と極端に大きくした場合、シース液やサン プル液内で放電が生じ、例えばサンプル液内 に衝撃波が生じる。この衝撃波によって、不 要生細胞12bの細胞膜が破壊(付加逆破壊)され ば、不要生細胞12bは死細胞となる。また、 らに極端に大きな電界がサンプル液に作用 ると、サンプル液はプラズマ状態となって 外線が発生する。この紫外線によって不要 細胞12bの細胞核88、さらにはDNAにまで損傷 生じさせることもできる。本願発明では、 のように、サンプル液自体にパルス電界を 用させることで、不要生細胞を死細胞とし もよい。

 以上、細胞分別処理機能を有するフロー イトメータ、および細胞分別処理方法につ て詳細に説明したが、本発明は上記実施例 限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない 囲において、各種の改良および変更を行っ もよいのはもちろんである。