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Title:
III-GROUP NITRIDE SEMICONDUCTOR LIGHT EMITTING ELEMENT, METHOD FOR MANUFACTURING THE ELEMENT, AND LAMP
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/154129
Kind Code:
A1
Abstract:
Provided are a III-group nitride semiconductor light emitting element, which is highly crystalline and excellent in an internal quantum efficiency so that it can acquire a high light emission output, a method for manufacturing the element, and a lamp.  An AlN seed-layer (12) of a III-group nitride family compound is laid over a substrate (11).  The individual layers of an n-type semiconductor layer (14) made of a III-group nitride semiconductor, a light emitting layer (15) and a p-type semiconductor layer (16) are sequentially laid over the AlN seed-layer (12).  In the p-type semiconductor layer (16), an X-ray rocking curve half width in a (0002) plane is 60 arcsecs or less, and an X-ray rocking curve half width in a (10-10) plane is 250 arcsecs or less.

Inventors:
HANAWA KENZO (JP)
SAKAI HIROMITSU (JP)
SASAKI YASUMASA (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/060677
Publication Date:
December 23, 2009
Filing Date:
June 11, 2009
Export Citation:
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Assignee:
SHOWA DENKO KK (JP)
HANAWA KENZO (JP)
SAKAI HIROMITSU (JP)
SASAKI YASUMASA (JP)
International Classes:
B82Y10/00; B82Y20/00; B82Y40/00; H01L21/205; H01L33/06; H01L33/32; H01L33/56; H01L33/62
Foreign References:
JP2001094150A2001-04-06
JP2007220745A2007-08-30
JP2002270894A2002-09-20
JP2005019964A2005-01-20
JP2006313771A2006-11-16
JP2008034444A2008-02-14
JP2007088295A2007-04-05
JP2005302940A2005-10-27
Other References:
VALCHEVA E. ET AL.: "Interface structure of hydride vapor phase epitacial GaN grown with high-temperature reactively sputtered A1N buffer", APPLIED PHYSICS LETTERS, vol. 76, no. 14, April 2000 (2000-04-01), pages 1860 - 1862
Attorney, Agent or Firm:
SHIGA Masatake et al. (JP)
Masatake Shiga (JP)
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Claims:
 基板上にIII族窒化物系化合物からなるAlNシード層が積層され、該AlNシード層上に、III族窒化物半導体からなるn型半導体層、発光層及びp型半導体層の各層が順次積層されてなるIII族窒化物半導体発光素子であって、
 前記p型半導体層の(0002)面におけるX線ロッキングカーブ半値幅が60arcsec以下であり、且つ(10‐10)面におけるX線ロッキングカーブ半値幅が250arcsec以下であることを特徴とするIII族窒化物半導体発光素子。
 前記発光層は、障壁層と井戸層とが交互に繰り返して積層され、且つ、前記n型半導体層側及び前記p型半導体層側に前記障壁層が配される順で積層されてなり、前記障壁層の1層あたりの厚さが6~9nmの範囲とされていることを特徴とする請求項1に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
 前記発光層は、さらに、1層の前記障壁層と、該1層の障壁層に隣接する1層の前記井戸層との合計の厚さが8~12nmの範囲とされていることを特徴とする請求項2に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
 前記AlNシード層がAlN単結晶からなることを特徴とする請求項1~請求項3の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
 前記AlNシード層の(0002)面におけるX線ロッキングカーブ半値幅が100arcsec以下であり、且つ(10‐10)面におけるX線ロッキングカーブ半値幅が1.7°以下であることを特徴とする請求項1~請求項4の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
 請求項1~請求項5の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子を製造する方法であって、
 前記p型半導体層を、有機金属気相化学反応法(MOCVD法)によって成膜するとともに、成膜装置のチャンバ内において、前記基板上にIII族窒化物半導体からなる層が形成されたウェーハと、該ウェーハのIII族窒化物半導体からなる面に対して並行に備えられるシールドとの距離を30mm以下とすることを特徴とするIII族窒化物半導体発光素子の製造方法。
 請求項6に記載の製造方法によって得られるIII族窒化物半導体発光素子。
 請求項1~請求項5、又は請求項7の内の何れかに記載のIII族窒化物半導体発光素子が用いられてなるランプ。
Description:
III族窒化物半導体発光素子及び の製造方法、並びにランプ

 本発明は、発光ダイオード(LED)、レーザダ オード(LD)、電子デバイス等に、好適に用い れるIII族窒化物半導体発光素子及びその製 方法、及びIII族窒化物系化合物半導体発光 子を用いたランプに関する。
  本願は、2008年6月18日に日本に出願された 願2008-159690に基づき優先権を主張し、その 容をここに援用する。

 III族窒化物系化合物半導体は、例えば発 素子とした場合に、発光スペクトルが紫外 ら赤色の広範囲にわたる直接遷移型の半導 であり、発光ダイオード(LED)やレーザーダ オード(LD)などの発光素子に応用されている このような発光素子は、従来の照明関連の 源に比べて発光効率が高いので、消費エネ ギーが小さくて済む。また、このような発 素子は寿命が長いなどのメリットもあり、 に青色LEDの市場が急速に拡大している。

 このようなIII族窒化物半導体発光素子は、 般的に、トリメチルガリウム、トリメチル ルミニウムおよびアンモニアを原料として 有機金属化学気相成長(MOCVD)法により、例え ば、サファイア(Al 2 O 3 )からなる基板上に成膜されることで製造さ ている。MOCVD法は、キャリアガスに原料の蒸 気を含ませて基板表面に運搬し、加熱された 基板の表面で原料を分解させることにより、 結晶を成長させる方法である。

 従来、III族窒化物半導体の単結晶ウェー は市販されておらず、III族窒化物半導体と ては、異なる材料の単結晶ウェーハ上に結 を成長させて得る方法が一般的である。し しながら、このような異種基板と、この基 上にエピタキシャル成長させるIII族窒化物 導体結晶との間には大きな格子不整合が存 する。例えば、サファイア基板上に窒化ガ ウム(GaN)を成長させた場合、両者の間には16 %の格子不整合が存在する。一般に、上述の うな大きな格子不整合が存在する場合、基 上に結晶を直接エピタキシャル成長させる とが困難となる。

 そこで、MOCVD法によって、サファイア単 晶基板もしくはSiC単結晶基板の上に、III族 化物半導体結晶をエピタキシャル成長させ 際、まず、基板上に窒化アルミニウム(AlN)や 窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)からなる低 バッファ層と呼ばれる層を積層し、その上 高温でIII族窒化物半導体結晶をエピタキシ ル成長させる方法が提案されており、一般 行われている(例えば、特許文献1、2)。特許 献1、2に記載の方法によれば、基板上に形 された低温バッファ層の上にIII族窒化物半 体結晶を成長させることで、結晶性に優れ 単結晶のGaNを形成することができ、高い輝 を有する発光素子を得ることが可能となる

 一方、特許文献1、2のような低温バッフ 層を用いた技術により、単結晶のGaNを形成 ることが可能になるものの、このようなGaN 結晶は、他の材料の単結晶に比べれば欠陥 度が高く結晶性に劣るものとなる。しかし がら、一般に、GaNが用いられてなるIII族窒 物半導体発光素子においては、結晶性が多 劣っている場合であっても一定以上の発光 力が得られることから、従来、結晶性が一 レベル以上であれば、欠陥密度は発光出力 ほとんど影響しないものと考えられていた 例えば、III族窒化物半導体発光素子に備え れ、GaN障壁層とInGaN井戸層とからなり多重量 子井戸構造を有する発光層において、光ルミ ネセンス(PL)と貫通転位密度との間に相関性 ほとんど無く、発光出力は貫通転位密度に 存しないものと考えられていた。このため 従来、III族窒化物半導体発光素子の発光効 を向上させる技術の研究としては、結晶性 高めて内部量子効率を向上させ、発光強度 高くする技術よりも、光取り出し効率を向 させる技術が中心として行なわれている。 こで、光取り出し効率とは、発光層で発生 た光の内、発光素子の外部に取り出すこと できる光の割合である。

 一般に、発光素子の発光効率を表す指標と ては、上述した内部量子効率に加え、外部 子効率が挙げられる。ここで、内部量子効 とは、素子に注入した電流のエネルギーが 光層で光に変換される割合である。また、 部量子効率とは、内部量子効率と光取り出 効率とを掛け合わせたものであり、発生し 光をどれだけ有効に使うことができるかの 標となる。つまり、外部量子効率が高けれ 、発光出力の高い発光素子と言うことがで 、また、外部量子効率を向上させるために 光取り出し効率を改善する必要がある。
 従って、近年においては、発光素子の発光 率を向上させるための方法として、主に、 取り出し効率を高めることによって外部量 効率を向上させる技術について、研究が進 られていた。また、上述したような、結晶 と内部量子効率との間に明確な相関性が無 という従来の考え方に基づき、内部量子効 の向上による発光効率の向上は限界に差し かっているものと考えられていた。

 ここで、GaN等からなるIII族窒化物半導体の 晶性は、例えば、LED構造を構成する最上層 なるp-GaN(p型半導体層)のX線回析を行うこと より、p-GaNの(0002)面及び(10-10)面のX線ロッキ ングカーブ半値幅FWHM(Full Width at Half-Maximum) 求め、指標とすることができる。
例えば、上記特許文献1、2のようなAlN又はGaN からなるバッファ層の結晶性は、FWHMで数千 ~数万arcsec程度のオーダーとなる。このため 従来、このバッファ層上に、さらにLED構造 構成する各層を成長させるのに伴って上層 結晶性が向上した場合でも、最上層のp-GaNの FWHMは、(0002)面で100arcsec程度、(10-10)面で300arcs ec程度が限界と考えられていた。
 また、例えば、FWHMで、(0002)面が100arcsec、(10 -10)が300arcsecのGaN結晶と、(0002)面が150arcsec、(1 0-10)が380arcsecのGaN結晶とを比較した場合、両 が同様のLED構造を備えている場合は、結晶 よりもLED構造を成長させる際の成長条件の が、発光効率に対して大きな影響を与えて り、結晶性との相関性は殆ど無いものと考 られていた。

 低温バッファの発明以降、GaN単結晶の結晶 が飛躍的に向上し、P型半導体GaNができたこ と、InGaNを活性層に使ったDouble Heterostructure LEDができたことにより、UV(紫外)、Blue(青)、G reen(緑)のLEDの輝度が向上し、新たな市場が拡 大した。しかしながら、結晶性が向上したも のの、GaNの結晶性は欠陥密度が10 +9 /cm 2 程度であり、GaAs系のエピタキシャル単結晶 膜が1×10 +4 /cm 2 程度を達成しているのに比べると、欠陥密度 が非常に高い。これにも関わらず、外部量子 効率が10%を越える発光素子ができ始めたので 、どうしてGaN系のLEDは欠陥密度が高くても高 い発光効率が得られるのか、という点につい て数多くの研究が向けられることになった。

 上記のような研究が行なわれるようにな た理由の一つには、結晶性の改善が限界に たことによる。Laser Diodeの用途では、閾値 流が結晶性と相関していることからさらに 晶性を挙げる必要があり、その手段として Epitaxial Lateral Overgrownという方法が取られ 。ところが、この方法は部分的には結晶性 良くするものの、ウェーハ全面の結晶性を 善するわけではないので、Laserでは適用可能 であるが、コストが重要とされ、一枚のウェ ーハからの取れる素子の数量が問題になるLED においては、適用が敬遠されていた。そこで 、LEDの高輝度化では光の取り出し効率の改善 に主体が向けられ、結晶性の改善による内部 量子効率の改善の研究については少なくなる 傾向にあった。

 ここで、GaP系Green LEDにおいては、発光中に 劣化したチップのTEM観察を行なった場合、転 位が増加していることが確認されている(例 ば、非特許文献1を参照)。また、ZnSe系Blue-gre en LEDにおいて、従来から存在していた積層 陥等が増殖して小さい転位が高密度で生成 、非発光中心になることが、TEM観察によっ 確認され、報告されている(例えば、非特許 献2を参照)。これら非特許文献1、2の場合は 、転位密度が10 +4 /cm 2 のレベルであっても上記問題が発生している 。ここで、転位があると、余計なエネルギー 順位ができあがり、励起された電子がそこに 落ち込むと本来の波長で光が出射されなくな るので、このような状態を非発光中心と呼ぶ 。GaN系のLEDにおいては、10 +10 /cm 2 であっても10%以上の発光効率が得られ、寿命 もGaAs系などに比べて長いものが得られてい ので、転位が非発光中心ではないのではな かと考えられてきた。これに対しSugahara等( えば、非特許文献3を参照)と、Rosner等(例え 、非特許文献4を参照)は、CL発光させた場所 同じ場所をTEM観察することにより、GaN系LED おいても転位が非発光中心であることを証 した。

 ここで、ピーク波長が370nm近辺で発光す LEDを試作するに当たり、p-GaN 1200Å/p-AlGaN 60 0Å/undoped InGaN 400Å/n-AlGaN 300Å/n-GaN 4μm/GaN Buffer 300Åという構造で、僅かにInが入って るInGaNとGaNとを活性層として用いて比べる 、InGaNを用いた方が、発光出力が10倍も高い とを、Mukai、Nakamura等が1998年に報告してい (例えば、非特許文献5を参照)。従って、高 発光効率を得るための必須条件としてInGaNが 存在することがあるとし、その理由として、 InGaNの量子井戸層のInの濃度ゆらぎによって じたエネルギー状態の局在化が、本質的な きをしていると考えた。さらに、Mukaiらは( えば、非特許文献6を参照)、同じ構造でUV、B lue、GreenのLEDを試作し、ピーク波長の電流と 度依存性を調べ、ピーク波長が375nm以上で ると電流を上げた際に短波長側にシフトし 温度に関しては変化しないことを確認した 一方、GaInAlP系のLEDでは逆であり、電流を上 てもピーク波長は変化しないが、温度を上 ると長波長側にシフトする作用により、こ らは発光機構が全く異なるとされている(例 えば、非特許文献7を参照)。

 また、Chichibuらが1996年にundoped In x Ga 1-x Nのxを、x=0.2、0.3、0.45に変更した量子井戸を 用したLEDを試作し、電流を流して発光させ その発光ピークの組成依存性を測定したり 波長を変えた単色光を当てて起電力を測定 た際の組成依存性を測定したりする方法に り、エネルギー構造の解析を光学的な観点 ら種々の方法で行った。その他、MQWの断面T EMより井戸層の中で色が濃く見える部分が周 的にあることを見出した。以上の結果を総 して、Inの濃度にゆらぎがあることでポテ シャルの極小が存在することにより、holeが の部分に局在するために発光効率が上がる した(例えば、非特許文献8を参照)。その後 系統的に研究が進められ、量子井戸層での 起子の局在があるために励起寿命が長くな 、ホールの拡散距離が貫通転位の間隔より 短くなるので、非発光中心である貫通転位 存在が輝度の影響しなくなるとされている( 例えば、非特許文献9-14を参照)。また、1998年 に、中村は上記をまとめあげてGaN系のLED、LD おける結晶欠陥の役割を整理し、LEDでは結 性を向上させても発光効率には関係ないも と結論付けている(例えば、非特許文献15を 照)。

 また、Epitaxially Laterally Overgrown という方 が1997年に碓井ら(例えば、非特許文献16を参 )により提唱され、結晶性をさらに向上させ ることができるようになった。これは、低温 バッファ法を用いてMOCVD法によってGaNを成長 せた後、フォトリソグラフィの技術を使っ SiO 2 で部分的に表面を覆う。その後にHPVE法でGaN 成長させると、SiO 2 上ではGaNは成長できないので、SiO 2 の上は横成長して埋めることになる。このよ うな、横方向成長したGaNは貫通転位が非常に 少なくなるので、ウェーハの上でSiO 2 の上のみにおいて、貫通転位が非常に少ない GaN単結晶ができる。
 また、向井、竹川、中村は、Mg doped p-GaN 2 000Å/Mg doped p-AlGaN 300Å/undoped InGaN 25Å/undo ped GaN 2000Å/Si doped n-GaN 2.3μm/undoped GaN 1.5 μm/の構造のLEDをELOG基板として作製し、サフ イアの上にLT GaN buffer 300Åを積んで上記 構造を積層したLEDと比較した結果を1998年に 告した(例えば、非特許文献17を参照)。ここ で、貫通転位密度はELOGによって1×10 +10 /cm 2 から7×10 +6 /cm 2 に減らすことができたが、ピーク波長が470と 464nmでは若干違うものの、発光出力は20mAで6mW であり、ほぼ同等であった。但し、1.8Vとい 低電圧でのリーク電流が、転位密度が大き ELOG品は0.001μA以下であるのに対しmサファイ 品は0.01μA以上であった。

 また、Chichibuらは、1999年に、ELOGを使った 基板の上にInGaNのSQWとMQWを成長させ、時間積 と時間分解のPLを、転位密度の高い部分と い部分とで測定し、報告している(例えば、 特許文献18を参照)。この結果、光学特性は 通転位密度が変化してもほとんど何も変化 ないことが確認されている。ここで、貫通 位が非発光中心ではないのではないかとい 議論もあったが、GaN系LEDにおいても転位が 発光中心であることを、Sugaharaらは同じ場 をTEMとCLとで見ることによって確認し、報告 している(例えば、非特許文献3を参照)。

 また、向井・中村は、1999年に、ELOGを使 したGaN上と一般のサファイア上との両方にUV ,Blue、GreenのLED構造を作製し、発光効率を比 した(例えば、非特許文献19を参照)。この結 、GaNを活性層にした場合はELOGを使って結晶 性が良い方が、発光効率が高いものの、InGaN 活性層に使用すると、ELOGでも、サファイア の上に成長したLEDでも、発光効率は変わらな い。但し、UVの場合には、電流密度を上げた ころではELOGの方が、発光効率が高い。この ような結果となった原因としては、上述した ようなIn濃度ゆらぎに起因する励起子局在化 挙げられている。

 また、2006年に以上の議論を総括した報告 があり、InNが局所的にホールを捕捉し、発光 までの間に移動するホールの距離が極端に短 いために、欠陥にホールが落ち込む前に発光 するからであると説明されている(例えば、 特許文献20を参照)。従って、LEDの高輝度化 方向は、人工的に量子井戸の不均一を作る とが好ましいと提案している。この報告に 、GaN系のLED及びLDの開発と学問研究を、はじ めから牽引していたNakamuraとAkasakiが連名にな っており、現状の到達点であると理解できる 。

 また、サファイア基板の上にGaN単結晶膜 成膜するのにあたり、AlNかGaNを500-800℃の低 温で300Å程度成膜して、その後高温に上げる ことによって島状の結晶を作り、その島状の 結晶の横方向成長を用いることでGaN単結晶を 作製する方法が発明され、普及した。この成 長温度よりも低温で成長させた層は、バッフ ァ層と呼ばれている。この層は、多結晶もし くはアモルファスであり、高温で結晶化する 場所は全体ではなく一部である。このように 、部分的に非常に多くの場所で結晶化するこ とにより、結晶方位が合っている結晶のみが 横方向成長で合体するという機構が働き、サ ファイアとGaNの結晶を結びつけている。この ような低温バッファ層の技術によってGaN単結 晶の成長が可能となり、高輝度青色LEDの市場 が急速に拡大した。

 高輝度青色LEDは、低温バッファの技術に りGaN単結晶の成長が可能となったが、他のG aAsなどの単結晶と比べると、結晶としては非 常に欠陥密度の高いものである。GaNの結晶が 比較的欠陥密度が高いものであっても、出力 の高いLEDが作れることから、一定レベルの結 晶性であれば欠陥密度と発光効率は関係ない とするのが有力であり、これについては非常 に多くの文献が発表されている(例えば、非 許文献15、20を参照)。これら各文献における 主張を要約すると、以下の通りとなる。

 貫通転位密度は、横方向エピタキシャル被 成長によって制御できるようになり、転位 度のレベルが異なる部分を作ることができ 輝度との関係を評価できるようになった。
この結果、InGaN量子井戸における光ルミネセ ス(PL)と貫通転位密度との関係を調べたとこ ろ、発光強度は貫通転位密度に依存しないこ とが明らかとなった。貫通転位は、拡散長以 内にある周囲のキャリアの非発光性再結合チ ャネルになっているものの、発光領域の体積 を減少させているのみである。これは、InGaN 重量子井戸では、Inの濃度ゆらぎ起因でポ ンシャル極小ができ、そこにホールが捕ま ために非発光センターである転位まで移動 る前に発光するためである。
 従って、GaN系LEDの発光効率を向上させるた の開発は、光取り出し効率を向上させる方 に向いており、結晶性を良くし、欠陥密度 減らすことで発光効率を高めるという方向 研究開発は、殆ど行なわれなくなって久し 。横方向エピタキシャル被覆成長は、主にL Dで採用されていたが、2001年に、岡川らは、 ファイア基板に凹凸加工をすることにより 方向成長させることに成功し、それをLEDに 用した(例えば、非特許文献21を参照)。ここ では、転位密度を4×10 +8 /cm 2 から1.5×10 + 8/cm 2 に減らすことにより、ピーク波長382nmのUVで 力が3.5mWから9mWに向上したとされている。し かしながら、その後、非特許文献21の結果に しても、サファイアの凹凸加工によって光 り出し効率が上がったからだとする解釈が され、結晶性を向上させることで輝度が高 られるという技術的認識は、LEDの分野にお ては、近年では皆無となっていたものと考 られる。

 しかしながら、LEDの分野において、発光 率をさらに向上させることができれば、用 が飛躍的に拡大することが明確であり、発 効率向上への要求はますます強くなってい 。LEDの発光効率は、大きく分けて内部量子 率と外部量子効率に分けられる。内部量子 率は、流した電流がどれだけ光になったか 指標であり、外部量子効率は、発生した光 どれだけ有効に使うことができるかの指標 ある。このように、概念的には分けること できるものの、実際には、一度発生した光 GaInNのエネルギーギャップに再度吸収され しまう損失分が存在する。このような光の 失分は、そもそも一度光になったのかどう を見分けることが原理的に難しいという問 がある。結晶性を向上させても、発光効率 変わらないという考え方を受け入れた場合 内部量子効率は限界に来ていることになる で、最近の発光効率向上にむけた研究開発 主力は、光取り出し効率をあげることで外 量子効率を向上させることに向けられてい のが現状である。

特許3026087号公報

特開平4-297023号公報

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 しかしながら、LEDのようなIII族窒化物半 体発光素子は、エネルギーギャップが存在 る結晶中を電流が流れることにより、ギャ プに相当するエネルギーを持つ光が発生す ものなので、エネルギーギャップ以外のと ろに電流が流れた場合には発光効率が低下 てしまう。このため、結晶中に欠陥が存在 、特に、欠陥が電流の流れる方向で貫通し 発生している場合には、印加電圧が上昇す のに伴って電流が結晶欠陥を通じて流れる うになり、発光効率が低下するという問題 ある。従って、III族窒化物半導体発光素子 結晶性と発光効率との間には、一定の相関 があることが明らかである。

 また、近年、LED等のIII族窒化物半導体発 素子の分野においては、より発光強度を高 ることで発光素子の用途が飛躍的に広がる 能性があることから、光取り出し効率のみ らず、内部量子効率を向上させることで発 強度をより高めることが強く求められてい 。このため、光取り出し効率を向上させる 法のみならず、III族窒化物半導体発光素子 内部量子効率を向上させることで発光強度 高め、発光出力をより向上させることが切 求められていた。

 本発明は上記課題に鑑みてなされたもので り、結晶性が高く内部量子効率に優れ、高 発光出力が得られるIII族窒化物半導体発光 子を提供することを目的とする。
 また、結晶性の高いIII族窒化物半導体を形 することができ、高い発光出力を備えるIII 窒化物半導体発光素子の製造方法を提供す ことを目的とする。
 さらに、上記III族窒化物半導体発光素子を いたランプを提供することを目的とする。

 本発明者等は、上記問題を解決するため 鋭意検討を重ね、まず、サファイアからな 基板上に、結晶性が非常に高められた単結 のAlN等の、III族窒化物系化合物からなるAlN ード層を形成することにより、この上に形 されるGaN等のIII族窒化物半導体の結晶性が 幅に向上することを知見した。そして、こ ような結晶性の高いGaN結晶が成膜されたウ ーハを用いて、結晶性と発光強度との関係 ついて詳細に検討したところ、結晶性の高 GaN結晶の上にLED構造を成長させる場合、下 のGaN結晶の結晶性に応じてLED構造や成膜条 を最適化することにより、発光強度を大幅 向上させることが可能となることを見出し 。

 ここで、一般的に、単結晶とは、結晶粒 が存在しない結晶のことであり、全ての部 で同じ結晶方位を有している結晶を言う。 かしながら、完全結晶でない限り、如何な 結晶においても何らかの欠陥を内包してお 、この欠陥の配置によって結晶方位が結晶 で微妙に変化するため、欠陥の内包状態に って単結晶と多結晶とを区別するのは困難 面もある。これについて、C面の薄膜を考え た場合で整理してみる。まず、2θ解析をした 場合、C面からのみの回折ピークが観察され 他の面からのピークがないということが、 界が無いことの必要条件である。しかしな ら、本発明で言う単結晶とは、もっと狭い 念である。結晶性は、(0002)面の回折ピーク 幅が問題となり、回折ピークが充分にシャ プなピークとなっている場合には、面間隔 一定な状態で、抜けのない面が並んでいる いうことになる。この際、入射X線と同程度 シャープさで、半導体結晶として充分かと ると、決してそうでは無い。面内における の場所においても同じ方向を向いているか うかについての尺度が、X線ロッキングカー ブのシャープさ、即ちX線ロッキングカーブ 値幅(FWMH)になる。このFWMHの値が大きいと、C 面が微妙に色々な方向を向いていることにな るので、結晶が乱れた方向に成長する可能性 があり、平滑な面を形成することができなく なる。また、(10-10)面においては、基板表面 垂直な方向から見た際、部分的に回転して る場所がどの程度あるかを示す指標が、X線 ッキングカーブのピークの半値幅になる。 の数値が劣化すると、C軸方向に貫通する欠 陥が生じてゆくことになる。即ち、本発明で 言う単結晶とは、X線ロッキングカーブの半 幅の値をあるレベル以下に規定し、低温バ ファでは現れる柱状結晶が全く観察されな 結晶のことである。

 また、III族窒化物半導体の結晶性レベル 示すため、結晶性を定量化して定義してお 必要がある。このため、本発明においては III族窒化物半導体の結晶性について、LED構 を構成する最上層となるp型半導体層のX線 析を行うことにより、p型半導体層の(0002)面 び(10-10)面のX線ロッキングカーブ半値幅FWHM( Full Width at Half-Maximum)を求め、指標とする。

 そして、本発明者等は、上記知見に基づ 、下層のGaN結晶の結晶性に応じてLED構造や 膜条件を最適化することにより、結晶性が く内部量子効率に優れ、高い発光出力が得 れるIII族窒化物半導体発光素子が得られる とを見出し、本発明を完成させた。即ち、 発明は以下に関する。

 [1] 基板上にIII族窒化物系化合物からなるAl Nシード層が積層され、該AlNシード層上に、II I族窒化物半導体からなるn型半導体層、発光 及びp型半導体層の各層が順次積層されてな るIII族窒化物半導体発光素子であって、前記 p型半導体層の(0002)面におけるX線ロッキング ーブ半値幅が60arcsec以下であり、且つ(10‐10 )面におけるX線ロッキングカーブ半値幅が250a rcsec以下であることを特徴とするIII族窒化物 導体発光素子。
 [2] 前記発光層は、障壁層と井戸層とが交 に繰り返して積層され、且つ、前記n型半導 層側及び前記p型半導体層側に前記障壁層が 配される順で積層されてなり、前記障壁層の 1層あたりの厚さが6~9nmの範囲とされているこ とを特徴とする上記[1]に記載のIII族窒化物半 導体発光素子。
 [3] 前記発光層は、さらに、1層の前記障壁 と、該1層の障壁層に隣接する1層の前記井 層との合計の厚さが8~12nmの範囲とされてい ことを特徴とする上記[2]に記載のIII族窒化 半導体発光素子。
 [4] 前記AlNシード層がAlN単結晶からなるこ を特徴とする上記[1]~[3]の何れか1項に記載の III族窒化物半導体発光素子。
 [5] 前記AlNシード層の(0002)面におけるX線ロ キングカーブ半値幅が100arcsec以下であり、 つ(10‐10)面におけるX線ロッキングカーブ半 値幅が1.7°以下であることを特徴とする上記[ 1]~[4]の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体 光素子。

[6] 上記[1]~[5]の何れか1項に記載のIII族窒化 半導体発光素子を製造する方法であって、 記p型半導体層を、有機金属気相化学反応法( MOCVD法)によって成膜するとともに、成膜装置 のチャンバ内において、前記基板上にIII族窒 化物半導体からなる層が形成されたウェーハ と、該ウェーハのIII族窒化物半導体からなる 面に対して並行に備えられるシールドとの距 離を30mm以下とすることを特徴とするIII族窒 物半導体発光素子の製造方法。
 [7] 上記[6]に記載の製造方法によって得ら るIII族窒化物半導体発光素子。
 [8] 上記[1]~[5]、又は[7]の何れかに記載のIII 窒化物半導体発光素子が用いられてなるラ プ。

 本発明のIII族窒化物半導体発光素子によ ば、基板上にIII族窒化物系化合物からなるA lNシード層が積層され、該AlNシード層上に、I II族窒化物半導体からなるn型半導体層、発光 層及びp型半導体層の各層が順次積層されて り、p型半導体層の(0002)面におけるロッキン カーブ半値幅が60arcsec以下であり、且つ(10 10)面におけるロッキングカーブ半値幅が250ar csec以下である構成なので、III族窒化物半導 からなる各層が結晶性に優れた層となり、 部量子効率が向上することによって高い発 出力が得られる。

 さらに、本発明のランプは、本発明のIII 窒化物半導体発光素子が用いられてなるの 、優れた発光特性を備えたものとなる。

本発明に係るIII族窒化物半導体発光素 の一例を模式的に説明する概略断面図であ 。 本発明に係るIII族窒化物半導体発光素 の一例を模式的に説明する図であり、図1に 示す発光素子の概略平面図である。 本発明に係るIII族窒化物半導体発光素 を用いて構成したランプの一例を模式的に す概略断面図である。 本発明に係るIII族窒化物半導体発光素 の製造方法の一例を模式的に説明する図で り、AlNシード層の形成に用いるスパッタ装 を示す概略図である。 本発明に係るIII族窒化物半導体発光素 の製造方法の一例を模式的に説明する図で り、LED構造を構成する各層の成膜に用いるM OCVD装置を示す概略図である。

 以下、本発明に係るIII族窒化物半導体発 素子及びその製造方法、並びにランプの一 施形態について、図面を適宜参照しながら 明する。

[III族窒化物半導体発光素子]
 図1は、本発明に係るIII族窒化物半導体発光 素子(以下、発光素子と略称することがある) 一例を模式的に示した概略断面図である。 た、図2は、図1に示すIII族窒化物半導体発 素子の平面構造を示す概略図である。本実 形態で説明する発光素子1は、図1に示すよう に、一面電極型のものであり、基板11上に、I II族窒化物系化合物からなるAlNシード層12と III族窒化物半導体からなるLED構造20とが形成 されているものである。LED構造20は、図1に示 すように、n型半導体層14、発光層15及びp型半 導体層16の各層がこの順で積層されてなるも である。また、本発明に係る発光素子1は、 p型半導体層16の(0002)面におけるX線ロッキン カーブ半値幅が60arcsec以下であり、且つ(10‐ 10)面におけるX線ロッキングカーブ半値幅が25 0arcsec以下とされている。
 そして、本実施形態の発光素子1は、図1及 図2に示す例のように、p型半導体層16上に透 性正極17が積層され、その上に正極ボンデ ングパッド18が形成されるとともに、n型半 体層14のn型コンタクト層14bに形成された露 領域14dに負極19が積層されてなる。
 以下、本実施形態のIII族窒化物半導体発光 子について詳述する。

<基板及びAlNシード層>
 従来、III族窒化物半導体であるGaN、AlN、InGa N、AlGaNは、大型のバルク単結晶を成長するこ とが極めて困難であるので、サファイアを基 板として用いたヘテロエピタキシャル成長が 一般に行われてきた。しかしながら、サファ イアと上記III族窒化物半導体との間には、11~ 23%の格子不整合、及び、2×10 -6 [deg -1 ]以下の熱膨張係数差が存在する。また、両 の化学的性質が異なるために、サファイア に直接成長させたIII族窒化物半導体エピタ シャル膜は、基板の単結晶としての性質を 分的にしか受け継ぐことができず、3次元的 成長してしまうため、表面の形状を平坦に つことが非常に難しいとされてきた。

 GaNの単結晶膜を成長させるために、基板に 要な特性としては、まず、1200℃迄の耐熱性 と、このような温度においてNH 3 に反応しないことが要求される。工業生産的 に使用可能なコストで、製造可能な基板とし ては、サファイアとSiCのみが挙げられる。こ れらの中でも、コストを比較するとサファイ アが圧倒的に有利であり、実際に生産されて いるGaN系のLEDの内の90%以上がサファイア基板 を使用している。
 しかしながら、サファイアとGaNとでは、格 定数や熱膨張係数が異なること、さらに、 学的特性が異なること等から、このような 料からなる基板上に、GaN単結晶を直接成長 せることはできないとされている。この結 、サファイア基板上に形成されたInGaN発光 子は、種々の工夫によって大幅な改善がな れてきたとはいえ、内部において、かなり 密度で欠陥を包含しており、発光効率や素 寿命を充分に向上させることに限界がある いう問題があった。

 一般的に、格子不整合の大きなヘテロエピ キシャル成長で結晶性の良好な単結晶膜を る方法としては、以下の2通りの考え方の流 れがある。本発明は、以下の2通りの考え方 内、下記(1)の流れに沿うものである。
 (1)基板とエピタキシャル膜の中間的な物理 数を有する材料を介して成長を行うことに り、エピタキシャル膜の品質を向上するこ ができる。即ち、格子定数、化学的性質及 熱膨張係数等が中間的な性質である薄膜を 基板とエピタキシャル膜の間に介在させる この場合には、基板の単結晶の性質を、出 る限りそのまま単結晶でエピタキシャル膜 受け継がせたいので、これらの間に単結晶 膜を介在させる必要がある。
 (2)目的の単結晶薄膜と同じ物質の多結晶、 るいは非晶質の膜を基板とエピタキシャル の間に介在させる。通常、このような膜を 成する方法としては、単結晶成長温度より 低い温度で成膜することによって成膜する SOS(Silicon on sapphire)等のエピタキシャル法 用いられる。また、GaN on sapphire法では、低 温バッファ層として大きな成果があげられて いる。また、この場合の機構としては、バッ ファ層上においてはGaNの核発生密度が高く、 この中で、結晶方位が良好に揃った結晶粒の みが選別的に成長及び合体することで粒界の 発生を抑え、バッファ層上において横成長方 向の成長が速いことを利用して平坦化する。

「サファイアからなる基板の条件」
 本発明において用いることが好ましいサフ イアからなる基板11の条件としては、以下 ようなことが挙げられる。
 まず、サファイアからなる基板11表面を充 に洗浄する。ここで説明する洗浄とは、以 の(1)~(4)に示すものを極力排除することであ 。
 (1) 研磨剤の残りやサファイアの切り屑を 表例とするパーティクル。
 (2) 取り扱い時に生じる表面傷、潜傷とよ れる非常になだらかな凹凸や微妙な組成変 。
 (3) 空気中に浮遊する有機物が表面に付着 た有機物の薄膜。
 (4) 工程において治具が接触することによ て発生するパーティクルと、環境中におい 存在するゴミ。

 さらに、基板11表面の平坦度については、 下の条件を満足させるのが好適である。
なお単結晶の方位としては、C面(0002)が好ま い。
 (1) Ra≦2Åを満たすこと。
 (2) 適切なオフ角、好ましくは0.1~0.7度、さ に好ましくは0.3~0.6度のオフ角を有すること 。
 (3) 各面のステップが、原子間力顕微鏡(AFM) 等で観察できるレベルで明瞭に備えられてい ること。この場合の面密度は高いほど好まし い。
 (4) 上記オフ角を設けることで生成したス ップ以外の突起は、極力ない方がよい。

 なお、サファイア単結晶の結晶性について 、当然のことながら、欠陥が少ないほど好 しいが、ヘテロエピタキシャル成長をさせ 基板であるので、上記の表面性を確保する とが重要であり、基板の結晶性の微妙な差 、エピタキシャル成長後のGaNの特性に大き は作用しない。よって、サファイア単結晶 成長方法は、コストを最優先として決定す ことができる。
 また、本発明は、サファイアからなる基板1 1の直径が100mm以上である場合に、特に効果を 発揮するものである。

「AlNシード層」
 本実施形態の発光素子1は、基板11上に、III 窒化物系化合物からなるAlNシード層12が形 される。
 AlNシード層12をなすIII族窒化物系化合物と ては、AlN単結晶を用いることが好ましい。

 AlNシード層12は、(0002)面におけるX線ロッキ グカーブ半値幅(FWHM)が100arcsec以下であり、 つ(10‐10)面におけるFWHMが1.7°以下であるこ が好ましい。
 一般的に、III族窒化物系化合物では、(0002) のFWHMは結晶の平坦性(ティルト)の指標とな 、(10-10)面のFWHMは結晶の転位密度(ツイスト) の指標となる。AlNシード層12の(0002)面及び(10- 10)面のFWHMが上記範囲であれば、AlNシード層12 が良好な結晶性及び配向を有するとともに、 平坦性に優れた膜となるので、その上に形成 されるLED構造20の各層が結晶性に優れたもの なる。

 AlNシード層12の膜厚は、10~50nmの範囲とする とが好ましく、より好ましくは25~35nmの範囲 である。
 また、本発明のIII族窒化物半導体発光素子 得るためには、後述の製造方法におけるプ セス制御により、AlNシード層12中の酸素含 量を5原子%以下になるように制御することが 好ましい。

 本発明におけるAlNシード層12は、単結晶か なるシード機能を有する層であり、この上 結晶性に優れるGaNを成膜するために設けら る。
 一方、従来から用いられている所謂バッフ 層は、柱状結晶の集合体からなる多結晶構 を有し、サファイア等からなる基板と、そ 上のGaN層との格子不整合を緩和するために けられる層であり、本発明のAlNシード層12 は異なるものである。

<LED構造>
 図1に示すように、LED構造20は、基板11上に 上述のようなAlNシード層12を介して、III族窒 化物半導体からなるn型半導体層14、発光層15 びp型半導体層16が順次積層された構造とさ ている。

「n型半導体層」
 n型半導体層14は、通常、AlNシード層12上に 下地層(アンドープGaN)を成長させた後に積層 される層であり、本実施形態において説明す る例では、AlNシード層12上に積層された下地 14a上に、さらにn型コンタクト層14b及びn型 ラッド層14cが積層されて構成される。なお n型コンタクト層は、下地層、及び/又は、n クラッド層を兼ねることが可能であるが、 地層が、n型コンタクト層、及び/又は、n型 ラッド層を兼ねることも可能である。

「発光層」
 発光層15は、n型半導体層14上に積層され、p 半導体層16がその上に積層される層である このような発光層としては、例えば、多重 子井戸構造の他、単一井戸構造を採用する とができる。本実施形態で説明する例では 図1に示すように、障壁層15aと井戸層15bとが 互に繰り返して積層され、且つ、n型半導体 層14側及びp型半導体層16側に障壁層15aが配さ る順で積層される。

 障壁層15aとしては、例えば、井戸層15bより バンドギャップエネルギーが大きいAl c Ga 1-c N(0≦c<0.3)等の窒化ガリウム系化合物半導体 を、好適に用いることができる。
 また、井戸層15bには、インジウムを含有す 窒化ガリウム系化合物半導体として、例え 、Ga 1-s In s N(0<s<0.4)等の窒化ガリウムインジウムを いることができる。

 本実施形態の発光層15は、障壁層15aの1層あ りの厚さが6~9nmの範囲とされていることが ましい。また、発光層15は、さらに、1層の 壁層15aと、該1層の障壁層15aに隣接する1層の 井戸層15bとの合計の厚さが8~12nmの範囲とされ ていることが好ましい。
 また、発光層15全体膜厚としては、特に限 されないが、障壁層15a及び井戸層15bの膜厚 上記範囲とされたうえで、量子効果の得ら る程度の膜厚、即ち臨界膜厚領域であるこ が好ましい。例えば、発光層15の全体膜厚は 、500nm以下であることが好ましく、100nm前後 膜厚であればより好ましい。発光層15の全体 膜厚が上記範囲であると、発光出力の向上に 寄与する。

 発光層15に備えられる活性層、即ち井戸層15 bには、Inが含有されることから成長温度を低 くする必要がある。しかしながら、Inを含有 る井戸層を低温で成長させると、成膜後の 晶性が低下するという問題がある。そこで Inを添加していない障壁層15aを成長させて 晶性を回復させる。従って、結晶性をでき 限り回復させるためには、障壁層15aの厚さ 可能な限りで厚い方が好ましい。この際、 えば、隣接する井戸層と障壁層との合計の さを、例えば150Å程度に厚くすることが考 られるが、このような場合には発光強度(輝 )が低下するという問題がある。
 本発明においては、AlNシード層12の結晶性 高めることにより、該AlNシード層12上に形成 されるn型半導体層14の結晶性が優れたものと なる。これにより、n型半導体層14上に形成さ れる発光層15において、隣接する井戸層15bと 壁層15aとの合計の厚さを薄く構成した場合 あっても、これら各層の結晶性が低下する が抑制される。また、発光層15の発光強度 、隣接する井戸層15bと障壁層15aとの合計の さが薄いほど向上するので、発光強度をよ 向上させることが可能となる。
 一方、隣接する井戸層15bと障壁層15aとの合 の厚さを薄くした場合には、これに伴って リーク電流が増大してしまうという問題も じる。

 また、III族窒化物半導体発光素子におい は、井戸層15bの厚さと、該井戸層15bで発生 る光の発光強度との間に相関性があること 知られている。本発明の発光素子のように GaN結晶(n型半導体層14)上に形成されるGaInN結 晶(井戸層15b)は、格子定数の違いによって圧 歪みが生じる。この際、ピエゾ電界が発生 、この電界のためにシュタルク効果の作用 よってエネルギーギャップのずれが生じ、 光効率の大幅な低下をもたらす場合がある ここで、井戸幅の狭い量子井戸においては エゾ電界の効果が抑制されることから、井 幅を狭く、即ち井戸層の厚さを薄くするこ により、発光強度の改善が期待できる。し しながら、上述したように、井戸層を薄く 成した場合には、貫通した転位密度が多い リーク電流が増大してしまうため、井戸幅 狭くすることには限界があった。

 本発明においては、基板11上に上記構成 AlNシード層12を積層し、この上に、下地層14a を備えるn型半導体層14を形成することにより 、結晶性に優れたn型半導体層14を備えている 。そして、この結晶性に優れたn型半導体層14 の上に発光層15を形成することにより、井戸 において貫通した転位密度が発生するのが 制されるので、井戸層におけるリーク電流 抑制することができ、発光強度を大幅に向 させることが可能となる。即ち、基板11上 結晶性に優れたn型半導体層14が形成された ェーハを用いることと、障壁層15aの厚さを6~ 9nm(1層あたり)の範囲とし、且つ、隣接する障 壁層15aと井戸層15bとの合計厚さを8~12nmの範囲 とすることで、井戸層15bの厚さ(井戸幅)を薄 且つ適正範囲に限定することにより、上記 果を得ることが可能となる。

 このように、本発明の発光素子においては 下層のn型半導体層14(GaN結晶)の結晶性に応 て、LED構造20をなす発光層15の構造や、その 膜条件を最適化することにより、発光強度 大幅に向上させることが可能となる。
 また、本発明では、上記構成により、発光 15を構成する障壁層15a及び井戸層15bの何れ 結晶性が高められるので、発光層15における 最上層の障壁層15a上に形成される、後述のp 半導体層16の結晶性も向上する。

「p型半導体層」
 p型半導体層16は、p型クラッド層16a及びp型 ンタクト層16bから構成されている。なお、p コンタクト層がp型クラッド層を兼ねる構成 であってもよい。

(p型半導体層のX線ロッキングカーブ半値幅)
 本発明に係る発光素子1においては、基板11 にAlNシード層12を介してLED構造20が積層され 、この最上層となるp型半導体層16(本例ではp コンタクト層16b)の(0002)面におけるX線ロッ ングカーブ半値幅(FWHM)が60arcsec以下であり、 且つ(10‐10)面におけるX線ロッキングカーブ 値幅が250arcsec以下であることが好ましい。II I族窒化物半導体が積層されてなるLED構造20に おいて、最上層となるp型半導体層のFWHMが上 範囲であれば、LED構造20のほぼ全体に渡っ 良好な結晶性が得られるので、内部量子効 が大幅に向上し、高い発光強度が得られる

 従来、一般的に行なわれているような低 バッファ層を用いる方法であると、バッフ 層をAlNやAlGaNから構成した場合、バッファ の結晶性はFWHMで数千~数万arcsec(1°~10°)程度 オーダーとなるため、バッファ層上にLED構 を構成する各層を成長させるのに伴い、上 の結晶性が向上した場合でも、最上層のp型 導体層のFWHMは、(0002)面で100arcsec程度、(10-10 )面で300arcsec程度が限界と考えられていた。

 本発明においては、発光層15を構成する井 層15bの結晶性が向上しているので、p型半導 層16を形成する際の成長温度を高くするこ が可能となり、後述の製造方法において詳 を説明するが、p型半導体層16の結晶性が向 するという効果が得られる。これにより、 発明においては、p型半導体層16(p型コンタク ト層16b)の(0002)面におけるX線ロッキングカー 半値幅が60arcsec以下であり、且つ(10‐10)面 おけるX線ロッキングカーブ半値幅が250arcsec 下である特性が得られる。
 上述したように、LED構造20の最上層となるp 半導体層16の結晶性を表すFWHMは、III族窒化 半導体発光素子全体の結晶性を表す指標と る。本発明では、p型半導体層16の(0002)面及 (10-10)面のFWHMが上記範囲となる構成とする とにより、p型半導体層16のみならず、発光 子1全体の結晶性が高められたものとなり、 い発光強度が得られる。

<電極>
 本実施形態の発光素子1は、上記構造を有す るLED構造20に備えられるp型半導体層16のp型コ ンタクト層上に正極が、n型半導体層14のn型 ンタクト層14b上に負極が設けられる。

『正極』
 本実施形態の発光素子1に設けられる正極は 、p型半導体層16(p型コンタクト層16b)上に形成 される透光性正極17と、その上に形成される 極ボンディングパッド18とからなる。

 透光性正極17は、上述のようなLED構造20のp 半導体層16上に形成される、透光性を有する 電極である。
 透光性正極17の材質としては、特に限定さ ず、ITO(In2O3-SnO2)、AZO(ZnO-Al2O3)、IZO(In2O3-ZnO)、G ZO(ZnO-Ga2O3)等の材料を、この技術分野でよく られた慣用の手段で設けることができる。 た、その構造も、従来公知の構造を含めて 何なる構造のものも何ら制限なく用いるこ ができる。

 正極ボンディングパッド18は、図2に示すよ に、透光性正極17上に形成される電極であ 。
 正極ボンディングパッド18の材料としては 通常、オーミック接合層、拡散防止層及び ンディング層の3層からなり、Ti/Pt/Auの3層か なる構成が、最も広く知られている構造で る。また、ITOとオーミック接触する金属と て、Tiの代わりにCr、Ta、Zr等を用い、また 拡散防止層として、上記PtをMo、W、Rh等と置 換えた構成としても良い。

 負極19は、n型半導体層14、発光層15及びp型 導体層16が順次積層されてなるLED構造20にお て、た半導体層において、n型半導体層14のn 型コンタクト層14bに接するように形成される 。このため、負極19を形成する工程において 、図1及び図2に示すように、p型半導体層16 発光層15及びn型半導体層14の一部を除去して n型コンタクト層14bの露出領域14dを形成し、 の上に負極19を形成する。
 負極19の材料としては、上述のような正極 ンディングパッド18に用いる材料をそのまま 用いることが可能で、各種組成および構造の 負極が周知であり、これら周知の負極を何ら 制限無く用いることができ、この技術分野で よく知られた慣用の手段で設けることができ る。

 以上説明したような、本発明に係るIII族 化物半導体発光素子1によれば、基板11上にI II族窒化物系化合物からなるAlNシード層12が 層され、該AlNシード層12上に、III族窒化物半 導体からなるn型半導体層14、発光層15及びp型 半導体層16の各層が順次積層されてなり、p型 半導体層16の(0002)面におけるロッキングカー 半値幅が60arcsec以下であり、且つ(10‐10)面 おけるロッキングカーブ半値幅が250arcsec以 である構成なので、III族窒化物半導体から る各層が結晶性に優れた層となり、内部量 効率が向上することによって高い発光出力 得られる。

[III族窒化物半導体発光素子の製造方法]
 本実施形態のIII族窒化物半導体発光素子の 造方法は、基板11上にIII族窒化物系化合物 らなるAlNシード層12を積層し、該AlNシード層 12上に、n型半導体層14、発光層15及びp型半導 層16の各層をIII族窒化物半導体から形成し 順次積層し、上記構成のIII族窒化物半導体 光素子を製造する方法であり、特に、p型半 体層16を有機金属気相化学反応法(MOCVD法)に って成膜するとともに、成膜装置のチャン 内において、基板11上にIII族窒化物半導体 らなる層が形成されたウェーハと、該ウェ ハのIII族窒化物半導体からなる面に対して 行に備えられるシールドとの距離を30mm以下 する方法としている。

<AlNシード層の形成>
 まず、基板11に前処理を行なった後、基板11 上に、III族窒化物系化合物からなるAlNシード 層12を成膜する。

『表面プラズマ処理』
 本発明においては、基板11上にAlNシード層12 を形成する前に、基板11表面のプラズマ処理 行なうことが好ましい。このような表面プ ズマ処理においては、電圧の印加方法、ガ の種類、ガス圧、印加パワー及び温度等の 件が重要なパラメータとなる。

 サファイアからなる基板を、真空中でプ ズマを発生させる成膜装置内に配置して、A lN単結晶からなるAlNシード層12を形成する際 上述のように、基板11表面が充分に洗浄され ている場合でも、一般に、基板11の洗浄及び 燥が終了してから成膜装置に投入するまで 、一定の時間がかかってしまう。例えば、 リーンルーム内で基板11を真空パックして クリーンルーム内で取り出したとしても、 般に、基板表面は状況によって広い範囲で 化してしまう。そこで、真空とされた成膜 置に基板11を搬入して、成膜する直前にプラ ズマを用いて基板11表面を整えるのが好適で る。

「電圧の印加方法」
 成膜装置のチャンバ内にプラズマを起こす 法としては、大別すると、印加する電圧がD CあるいはRFかで、また、チャンバをアースし た場合、電圧をかける対象がターゲットある いは基板かで、合わせて4種類に分類される ここで、サファイアからなる基板11が絶縁性 であること、並びに、ターゲットの原子が飛 び出すと基板表面についてしまう可能性があ るので目的から外れてしまうこと、の2つの から、基板11の表面を成膜直前に整える目的 を考慮し、RF電圧を基板側にかける方法とす ことが好ましい。

「ガスの種類」
 基板11の表面にプラズマ処理を施す際、プ ズマ発生に用いるガスの種類としては、特 限定されず、適宜選択して用いることがで る。但し、本工程の目的は基板表面の有機 を飛ばすことが主であり、サファイアから る基板表面の原子が叩き出されてしまうと 基板表面のステップが乱れてしまうものと えられる。このため、表面プラズマ処理の 程においては、反応性の高いガスを使用す ことは困難である。また、不活性ガスを用 る場合であっても、重い原子は上記同様に 壊力が勝ってしまうので好ましくないため 例えば、HeやH 2 等を用いることが考えられるが、プラズマ放 電が安定しにくいという問題があり、安定す るまでArを混ぜると、Arによる破壊力が問題 なる。従って、表面プラズマ処理には、O 2 かN 2 を用いることが好ましい。しかしながら、O 2 は、ガスがチャンバ内に残留すると、それが 微量であっても、次工程のAlNのスパッタの際 に、結晶成長を阻害するので使用を避けるこ とが好ましい。従って、板11の表面にプラズ 処理を施す際は、N 2 プラズマを使った処理が好ましい。また、プ ラズマを安定に保つ目的から、Arを混ぜても いことは言うまでもない。

「印加パワー・ガス圧」
 基板に表面プラズマ処理を施す際の投入パ ーは、極力低い方が好ましく、プラズマが 定に保てる最低レベルであれば良い。従来 知のスパッタ成膜装置において用いられる ャンバ及びカソードのサイズでは、投入パ ーは10-100W程度が適切な範囲である。
 また、ガス圧については、高すぎる場合に 、粒子は互いにぶつかり合って運動エネル ーを失ってゆく。一方、ガス圧が低い場合 は、運動エネルギーの大きな粒子が基板表 を叩き付けることになるので、プラズマを 定に保てる範囲で高圧とすることが好まし 。但し、無理にガス圧を上げると、プラズ を安定に保つためには大きなパワーが必要 なるが、パワーが100Wよりも高くなると、基 板表面を整える以上に欠陥を導入してしまう 。従って、表面プラズマ処理時のガス圧は、 0.8-1.5Paが適切な範囲である。

「温度」
 基板11の表面を整えるという目的において 、温度はさほど重要なパラメータではなく 室温から1000℃迄の、どの範囲の温度であっ も目的を達することができる。但し、成膜 前の処理であることから、次工程におけるA lNシード層の成膜温度と同じ温度とすること 、工業生産上の観点から好ましい。なお、 面プラズマ処理における温度が高すぎると 板に与えるダメージが大きくなり過ぎる可 性がある。ここで説明する、高すぎる温度 は、例えば、800℃を超える温度を指す。
 また、表面プラズマ処理を、AlNシード層12 成膜処理を行なうチャンバとは異なる、別 チャンバで行うことも可能である。この場 の利点としては、スループットが上げられ また、温度を別々に設定できるということ 挙げられる一方、不利な点としては、表面 ラズマ処理から次の成膜までの時間がかか 、基板表面の汚染が生じる可能性があると うことが挙げられる。

『AlNシード層の成膜処理』
 表面プラズマ処理に引き続いて、基板11上 、AlN単結晶からなるAlNシード層12を成膜する 。
 ここで説明する単結晶とは、結晶粒界がな 結晶のことであり、全ての部分で同じ結晶 位を有している結晶のことである。しかし がら、通常、完全結晶でない限り何らかの 陥は存在し、その欠陥の配置によって微妙 結晶方位が結晶中で変化してゆく。従って どの程度の欠陥が入ると多結晶で、どこか が単結晶かを区切るのは困難である。本例 おいては、サファイアからなる基板上のAlN ード層において、TEM断面観察で200nm□視野 粒界が見えない状態を目標とし、これを実 するためには以下に説明するような各条件 満足する必要がある。

 C面の薄膜を考慮した場合、いわゆる結晶性 としては、まず、(0002)面のX線ロッキングカ ブ(XRC)回折ピークの幅が問題となる。この回 折ピークが充分にシャープになっている場合 には、抜けのない面が一定の面間隔で並んで いる状態となる。
 次に、面内におけるどの場所でも同じ方向 向いているかどうかの尺度が、XRCのシャー さ(FWMH)となる。これが乱れていると、結晶 勝手な方向に成長してしまう可能性があり 平滑な面を確保できなくなる。従って、AlN ード層としての結晶性では、(0002)面が良好 揃っていることが前提条件となる。
 次に、(10-10)面は、この面と垂直な方向から 見た場合、部分的に回転している場所がどの 程度あるかを示す指標が、XRCのピークの半値 幅になる。この指標が悪くなると、C軸方向 貫通する欠陥ができていくことになるので 耐圧を確保するためには重要なパラメータ ある。しかしながら、AlNシード層としては 不連続な境界がなければ問題ないと考えら る。

 本発明者等が、(10-10)面のXRCの半値幅が1.5deg reeの試料を、平面TEMによって数十視野観察し たところ、不連続な粒界がないことが確認さ れているので、これ以下ならば問題はないも のと考えられる。
 また、AlNシード層の(0002)面と(10-10)面のX線 折のロッキングカーブの半値幅(FWHM)が、そ ぞれ100arcsec,1.7degree以下であれば、その上に 晶性の良好なGaNをエピタキシャル成長させ ことができる。この場合には、LED構造20の 上層であるp型半導体層16(p-GaN層)の結晶性が XRC FWHMで(0002)面、(10-10)面のそれぞれが60arcs ec,250arcsecのレベルで得ることが可能となる。

 本発明の製造方法のAlNシード層12の成膜 理において、重要なパラメータとしては、 ーゲットの種類、電圧・磁場印加方法、ガ の種類、ターゲットと基板の距離、プラズ の形状とプラズマを閉じ込める体積、ガス 力、印加パワー及び成膜温度が挙げられる 以下に、各条件について説明する。

「ターゲットの種類・電圧・磁場印加方法」
 チャンバ内にプラズマを起こす方法として 、大別して、印加する電圧がDC又はRFである か、また、チャンバをアースした場合に電圧 をかける対象が、ターゲット又は基板である かで、合わせて4種類に分類される。
 また、AlNシード層を成膜するためのターゲ トとしては、高純度AlNをターゲットにする 法と、高純度AlをターゲットとしてガスにN 2 をいれ、プラズマでN 2 を分解してAlとNとを反応させる方法とが考え られる。しかしながら、高純度AlN粉末を焼結 しようとすると、CeO 2 等の焼結助剤を入れる必要があり、高純度で 緻密なAlNターゲットを得るのが難しいという 問題がある。ここで、本発明の目的のために は、最低でも5N以上の純度の高純度Alが必要 あるが、高純度Alは6Nまで市販されており、 易に確保することができる。

 また、DCで放電を起こす場合は、ターゲ トが導電体であることが必須である。した ってターゲットに高純度AlNを用いた場合に 、必然的に電圧の印加方法はRFでなければな らなくなる。ターゲットが高純度Alであれば DCとRFの両方から適宜選択して用いることが できる可能性がある。但し、ターゲットに高 純度Alを用いた場合、Al表面でAlNが生成され 絶縁化されてしまうことがあり、このよう 場合には、電荷が溜まって落雷現象が発生 る。従って、DCの場合は、Al表面にAlN膜が生 しないよう、パルス印加とすることが必要 ある。

 なお、DCスパッタ及びRFスパッタの、各々の 長所及び短所について以下に説明する。
 DCスパッタを用いた場合には、安価な電源 用いることができ、制御が容易であり、ま 、カソードとアノードが明確なので、プラ マによって叩きつけられる場所や成膜する 所を容易に制御することができ、またさら 、不純物低減の設計がしやすいという長所 ある。一方、DCスパッタでは、放電が安定す る範囲や、運動エネルギーの範囲が狭いとい う短所がある。
 RFスパッタを用いた場合には、放電が安定 る範囲や、運動エネルギーの範囲が広いと う長所がある。一方、RFスパッタでは、電源 が高価であり、マッチングボックスが必要で 放電が立つまでの時間が遅いという問題の他 、カソードとアノードが明確でないために、 シールドの何れの位置からもプラズマによっ て粒子が叩き出され、また、不純物の低減の 設計がし難いという短所がある。

 なお、DCスパッタ及びRFスパッタともに、プ ラズマを安定にするためには、磁場を作る必 要がある。磁場のかけ方としては、永久磁石 を用いる方法、あるいは電磁石を用いる方法 の二種類があり、磁場を均一にするために磁 石を運動させる場合が多い。ここで、ターゲ ットが円形の場合は、永久磁石を回転させる のが一般的であり、また、ターゲットが四角 形の場合には、永久磁石を往復運動させるの が一般的である。また、永久磁石をうまく配 置できない場合には、コイルを外側においた ICP電極と呼ばれる形式がある。
 また、プラズマ密度は、主に磁場の強さに 存するので、膜厚を均一にするためには磁 の強さが均一になっている必要がある。こ ため、種々の磁場発生法を組み合わせた方 も、頻繁に採用されている。
 以上説明したような各条件を総合して勘案 た場合、AlNシード層を成膜する場合は、高 度Alターゲットを用いたRF放電が最も適して いる。

「ガスの種類」
 AlNシード層の成膜処理において、プラズマ 発生させるガスの種類としては、ターゲッ がAlNであればArのみの使用でも可能である 、ターゲットがAlの場合は、Ar及びN 2 が必要である。ターゲットがAlの場合にガス N 2 のみであると、Al原子が叩き出される前にAlN なってしまい、成膜速度がほとんど上がら いという問題があり、また、ガスがArのみ あると、金属Alの薄膜が成膜されてしまう。
 ここで、N 2 の量を増やしていくとAlNが成膜されてゆくが 、N 2 のガス分圧が低いとAlNのNが不足し、形成さ た膜に色がついてしまう。また、Alで飛び出 した原子を過不足なく窒素化するためには、 活性化したN 2 の量が、叩き出されるAl原子の数に合ってい 必要がある。N 2 の量が過剰だと、AlN膜に欠陥が大量に導入さ れ、膜に色がついた状態となる。従って、Ar N 2 とを適切な比率で混合したガスを用いること が好ましい。
 また、ArとN 2 の適切な比率は、ガス圧と印加パワーによっ ても変化する。ここで、Alがたたき出される 度は、印加パワーには依存するがガス圧に 依存しない。しかしながら、N 2 の活性化率は、ガス圧が低い方が高くなる。 このため、ガス圧が低い場合にはArの比率を げる必要があり、また、印加パワーが高い 合もArの比率を下げる必要がある。

 なお、本発明に用いる窒素原料としては、 般に知られているNH 3 などの化合物をなんら問題なく用いることが できる。窒素ガス(N 2 )を窒素原料として用いた場合、装置が簡便 済む一方で、N 2 は非常に安定で活性化しにくいため、高い反 応速度を得るのが難しいという問題がある。 本発明では、サファイアからなる基板をプラ ズマ中に入れることにより、N 2 が基板表面近傍で活性化する作用を利用して いる。この結果、アンモニアには劣るが利用 可能な程度の成膜速度を得ることができる。

「ターゲットと基板の距離」
 サファイアからなる基板が直径100mmである 合、全面に均一に成膜するためには、ター ットの大きさは直径200mm程度であることが必 要とある。上述したように、スパッタ成膜時 、プラズマを安定にするために磁場をかける のが一般的であるが、磁石を配置する場所は 、通常、ターゲットの裏側になる。この場合 、ターゲット表面に磁場が集中するので、プ ラズマ密度もターゲット表面において高くな る。
 本発明では、高エネルギーを持つプラズマ 子同士を、基板表面において反応させるの 目的であるから、プラズマ密度ができるだ 高い位置に基板を配置する必要がある。タ ゲットと基板の距離を離しすぎると、基板 プラズマ密度の高い所に置くことができな なるので好ましくない。また、基板が直径1 00mmであり、直径200mmのターゲットを用いる場 合、ターゲットと基板の距離は40~80mm程度が 正である。

「プラズマの形状とプラズマを閉じ込める体 積」
 AlNシード層の成膜処理時、プラズマがチャ バの壁面まで届いてしまうと、壁面が汚れ しまい、この汚れを取り除くのは困難であ ので、一般的に、プラズマを閉じ込めるた のシールドをチャンバ内に設置して用いる シールドは、チャンバの壁面が汚れるのを ぐためのみならず、チャンバにアースされ ことで電極としての働きも有しており、プ ズマの形状を規定するものとなる。

 ここで、チャンバ内の真空度を上げるため は排気効率を高める必要があり、そのため は、できる限り容積の小さなチャンバを用 ることが好ましい。しかしながら、小さす る空間にプラズマを閉じ込めると、シール がプラズマで叩かれ、シールドの材料成分 成膜される膜にまで混入してしまうという 題がある。特に、シールドの表面には、ほ 必ず水分子が付着しており、この水分子が ラズマで叩かれて放出されると、スパッタ 膜される膜中にまでOHやOが入り込んでしま 。
 従って、シールドの大きさとしては、ター ットをぎりぎりで囲む程度の寸法ではなく ターゲットから、ある程度離してシールド 配置できる寸法とする必要がある。このた 、直径200mmのターゲットを用いた場合には 最低でも300mm程度の直径を持つシールドが必 要となる。

「ガス圧力・印加パワー」
 AlNシード層の成膜処理においては、基本的 は、ベースプレッシャーが膜質を決定する のと考えられる。
 本発明では、2.0×E -5 Pa以下の圧力を示す高真空が必要である。こ よりも劣る真空度であると、チャンバ内の 囲気中に存在するO等の不純物が、成膜され たAlNシード層中に混入してしまい、結晶に欠 陥が導入されてしまう。また、ベースプレッ シャーが充分に下がっている場合でも、プラ ズマを立てた際に、シールド表面に付着した 水分等の不純物が叩き出されて膜質が低下す ることがある。

 また、ガス圧力が高過ぎると、プラズマ中 粒子が衝突し合って運動エネルギーを失う いう問題がある。単結晶を成膜する場合に 、高い運動エネルギーを有するAlとNとが基 表面で反応することが必要であるから、高 ぎるガス圧は好ましくない。しかしながら ガス圧を低くし過ぎると、N 2 のプラズマ粒子がAlターゲットに衝突して反 してしまう量が増大してしまうので、好ま くない。このため、ガス圧力としては、一 のスパッタ成膜ガス圧力である0.3~0.8Paの範 が適正である。

 AlNシード層の成膜処理における印加パワー 、成膜速度に比例するので、小さ過ぎる場 には成膜速度が充分に得られない。また、 ャンバ内の雰囲気中に存在するO 2 、H 2 O等の残留ガス成分が不可避的に膜中に入り むが、これらが入り込む量は、所定時間当 りで一定と考えられる。このため、成膜速 が遅いと入り込む量が相対的に増えること ら、膜の純度が低下するので好ましくない 従って、出来る限り早い成膜速度が必要と るので、印加パワーは高い方が好ましい。 し、印加パワーが大き過ぎると、シールド 直接プラズマに曝されるので、シールドか 不純物が叩き出されてしまう。従って、適 な印加パワーとしては、直径200mm程度のター ゲットを用いた場合は、500~2500W程度である。
 また、適切なガス圧力は、印加パワーによ て変化する。印加パワーが大きい場合、そ が適切な範囲であっても比較的高いガス圧 とすることが好ましく、印加パワーが低い 合には、それが適切な範囲であっても相対 に低いガス圧力とすることが好ましい。

「成膜温度」
 AlNシード層の成膜時の基板の温度は、300~800 ℃の範囲であることが好ましい。AlNシード層 成膜時の基板の温度が300℃未満だと、原子が 基板に到達して単結晶を作るために移動する 距離が充分でなくなり、基板の全面を覆うこ とができず、ピットが生成し始める。また、 基板の表面で単結晶を作るという観点では、 AlNが分解し始める温度まで基板温度を上げた 方が有利であり、その温度は1200℃程度であ ので、上限はもっと高い温度である。しか ながら、基板周りの固定ジグやシールド等 並行して温度が上昇するため、そのような 所からの脱ガスが多くなり、膜中に混入す 不純物混入が増えてしまうので、高い温度 設定した場合でも、必ずしも良い結果は得 れない。
従って、実際のプロセスにおいては、成膜温 度を800℃よりも高くしないことが好ましい。 但し、高真空度が維持できる構造が達成でき れば、より高い成膜温度で成膜する方が、結 晶性を向上させる点から、さらに有利になる と考えられる。

「AlNシード層中の酸素濃度」
 本発明の製造方法においては、上記のIII族 化物半導体積層構造体を得るために、得ら るAlN結晶膜中の酸素含有量が5原子%以下に るように、プロセスを適正に制御すること 好ましい。

 なお、上記各条件によって成膜されるAlN ード層12の膜厚は、10~50nmの範囲が好ましく より好ましくは25~35nmの範囲である。

<LED構造の形成>
 本実施形態の製造方法では、基板11上に成 されたAlNシード層12の上に、III族窒化物半導 体からなるLED構造20を形成する。本例では、L ED構造20を構成する各層を、従来公知のMOCVD法 によって形成する方法としている。

『n型半導体層(下地層、n型コンタクト層、n クラッド層)の形成』
 LED構造20を形成する際、まず、n型半導体層1 4の下地層14aをAlNシード層12上に積層して成膜 する。次いで、下地層14a上に、n型コンタク 層14b及びn型クラッド層14cを成膜する。この 、下地層14a、n型コンタクト層14b及びn型ク ッド層14cの各層は、同じMOCVD装置を用いて成 膜することができる。

「下地層(GaN単結晶)の成長方法」
 サファイアからなる基板11の上に、AlN単結 からなるAlNシード層12が形成されると、その 上にGaN(III族窒化物半導体)単結晶を成長させ ことは、ホモエピタキシャル成長に近くな ことから比較的容易である。この際、従来 ら広く行われているMOCVD(有機金属化学気相 長法)を用いることにより、欠陥密度の小さ いGaN単結晶構造の成長が実現できる。このよ うなMOCVD法は、従来公知の一般的な方法を用 れば良い。その概略は以下の通りである。

 本発明の製造方法で説明するMOCVD法におい は、キャリアガスとして、水素(H 2 )又は窒素(N 2 )、III族原料であるGa源としてトリメチルガリ ウム(TMG)又はトリエチルガリウム(TEG)、Al源と してトリメチルアルミニウム(TMA)又はトリエ ルアルミニウム(TEA)、In源としてトリメチル インジウム(TMI)又はトリエチルインジウム(TEI )、V族原料であるN源としてアンモニアが用い られる。
 また、ドーパント元素のn型不純物としては 、Si原料として、モノシラン(SiH 4 )又はジシラン(Si 2 H 6 )を用いることができる。また、ドーパント 素のp型不純物には、Mg原料として、例えば ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp 2 Mg)又はビスエチルシクロペンタジエニルマグ ネシウム(EtCp 2 Mg)を用いることができる。

 また、GaN(III族窒化物半導体)単結晶の成膜 際に流通させるキャリアガスとしては、一 的なものを何ら問題なく使用することがで る。つまり、MOCVD等の気相化学成膜方法で広 く用いられる水素や窒素を用いても良い。
 また、成膜時の基板11の温度としては、GaN 分解を始める温度よりも低い温度である必 がある。GaNが分解を始める温度についての 究結果は、測定方法によって種々のデータ 報告されており、正確な数値は明らかでは いが、950℃を超えると微妙に分解が始まり 1000℃以上では確実に分解することが明らか なっている。この分解温度は、GaNの結晶性 も依存し、結晶欠陥がある場所から分解が まると考えられるため、欠陥が少ない結晶 ど分解温度が高い。このため、微妙に分解 始まる温度で結晶を成長させると、欠陥が るところは分解し、欠陥がないところだけ 残ることになるので、欠陥を極力少なく成 させるためには、基板温度の設定が極めて 要となる。従って、適切な温度による成膜 行った場合には、上記機構により、成長に って欠陥を減らすことが可能となる。

 ここで、GaN単結晶(ここでは下地層)/AlN単 晶(AlNシード層)界面近傍のGaN結晶は、相対 に多い欠陥を含んでいる。そして、GaN単結 (下地層)を一定の厚さで成長させると、徐々 に欠陥が抜け、欠陥密度の非常に低い単結晶 を得ることができる。結晶欠陥を抜くために 必要な厚さとしては、最低でも2μmが必要で り、充分な結晶性を得るためには、通常、4~ 8μmの範囲の厚さが必要となる。GaN(下地層)を 、上記範囲より厚くした場合であっても、効 果が薄くなり、基板の反りが大きくなり、ケ ースによっては結晶にクラックが入り始める ことがある。また、基板の反りが大き過ぎる と、電極を形成する素子化工程におけるフォ トリソグラフィ処理が困難になる。

 AlN単結晶からなるAlNシード層12の上に成長 せたGaN単結晶膜の結晶性は、非常に良好と る。
 ここで、改めて、結晶性を定量化するため 指標について述べる。本発明においては、 晶性の指標として、GaN結晶の(0002)面と(10-10) 面のX線回折におけるロッキングカーブの半 幅FWHM(Full Width at Half-Maximum for(0002) and (10- 10) diffraction)を用いる。

 本発明では、GaN単結晶からなる下地層の 晶性として、(0002)面のロッキングカーブ半 幅(FWHM)が100arcsec以下であり、かつ(10‐10)面 ロッキングカーブ半価幅が300arcsec以下とさ ていることが好ましい。(10-10)面のFWHMは、 通転位の量と相関があるとされているので これは貫通転位の量が極めて少ないことを 味するが、発光素子の発光効率は、貫通転 の量と相関する。なぜならば、p型半導体層1 6(p-GaN)、n型半導体層14(n-GaN)間を流れた電流の 内、どれだけの量の電流が光に変換されたか を示す指標が発光効率であるが、貫通転位を 通じて流れてしまう電流があると、その分発 光効率は下がることになるからである。

 ここで、GaNからなる下地層14aの成長に関 ては、AlNあるいはGaNを用いた低温バッファ の上に成長させた場合と、基本的には同じ ある。しかしながら、成長温度については 分解が始まるぎりぎりの温度を選択すると う考え方があるので、上述したように、欠 密度が低いほど成長温度を高くできる。本 明では、AlN単結晶からなるAlNシード層12上 ら、GaN単結晶からなる下地層14aが成長する で、欠陥密度が比較的低い場所から成長さ ることができる。

 ここで、さらに、下地層14aとAlNシード層12 の結晶性との関係について述べる。
 従来のAlN又はGaNからなるバッファ層を用い 場合には、バッファ層の結晶性は、FWHMで表 示すると(0002)面で数千~数万arcsecのオーダー あり、また、(10-10)面ではFWHMが測定できない 。一方、本発明における、AlN単結晶からなる AlNシード層12の結晶性は、(0002)面及び(10-10)面 のX線回折のロッキングカーブの半値幅(FWHM) 、それぞれ60arcsec、及び、1.5degree以下である 。
 そして、GaN単結晶からなる下地層14aは、(000 2)面については、GaN単結晶がその結晶性を引 継げば良い。また、(10-10)面については、GaN 単結晶を成長させている間に結晶欠陥が減少 してゆく。また、この際、MOCVD法で成長中に 陥を減らしていく機構が同様であっても、 膜の開始時点で残留している欠陥の密度が く異なるので、従来のように、例えば、成 開始時点で多結晶になった膜は、どんなに 切な条件で厚く積んだとしても、(10-10)面の FWHMを300arcsec以下にすることは極めて困難と る。

 ここで、上述の、AlNシード層12を、スパッ 法を用いてAlN単結晶膜として形成すること より、その上のGaNの結晶性が向上する理由 ついて、以下に説明する。
 まず、図4に示す例のスパッタ装置40を用い ターゲット47としてAlターゲットを設置し、 チャンバ41内にAr及びN 2 を導入して0.1~10Paの範囲の圧力に調整する。 いで、RF電源48によってターゲット47とチャ バ41との間に電圧を印加すると、チャンバ41 内に放電が起こってプラズマが発生し、Al原 がターゲット47から叩き出される。そして 基板11表面にAl原子とN原子が到達した場合、 これらの原子はプラズマから非常に大きな運 動エネルギーを得ているので、相当な範囲を 動くことが可能となる。AlN結晶は、粒界のエ ネルギーが非常に大きいので、粒界が全く無 い単結晶組織となることが、最も結晶が安定 する。従って、上記AlN結晶は、原子が動くこ とが出来れば、自ら粒界が無い単結晶に移行 する作用を発現する。

 また、GaNの組織構造は、基板をなすサフ イアの組織構造とは異なるので、そのまま は基板上にGaNの単結晶を成長させることは 来ない。これに対し、従来、基板上に低温 ッファ層と呼ばれるGaN結晶層を形成するこ により、この上にGaN単結晶を積層してウェ ハを得る方法が採用されていた。しかしな ら、上述のような低温バッファ層自体の結 性は決して高くはないので、このような低 バッファ層を用いた場合のGaNの結晶性は自 と限界があり、LED構造を積層した際に最上 となるp型半導体層の結晶性は、FWHMで、(0002 )面において、100arcsec程度、(10-10)面において3 00arcsec程度が限界とされていた。

 本発明の製造方法は、基板とエピタキシ ル膜の中間的な物理定数をもつ材料を介し エピタキシャル成長を行うことにより、エ タキシャル膜の品質を向上することができ という考え方に基づく方法である。従って サファイア基板上にGaN層を成長させるため は、AlNシード層を介した成長が有効である 考えられる。これは、AlNがサファイアとGaN 中間的な格子定数と熱膨張係数を持つため 格子不整合と熱歪みが効率的に緩和される とによる効果である。

 また、AlNとGaNは化学的特性が近く、両者の の界面エネルギーも小さい。これは、見方 変えると以下のように判断することできる
 サファイア(Al 2 O 3 )は酸化物であり、これに化学的に最も近い 化物は、Alを共通にしてなるAlNである。これ ら両者の格子の不整合は11%で、比較的大きい ものの、Alを共通としていることにより、AlN 結晶が成長しやすい。また、AlNは、GaNが唯 、全率固溶で混ざり合うことが可能な化合 なので、化学的性質が最も近く、格子不整 は2%しかない。これにより、GaN/Al 2 O 3 を直接成長させるのは難しくても、GaN/AlN/Al 2 O 3 のように、AlNを介在させれば、サファイア(Al 2 O 3 )の結晶性を引きついでGaNの単結晶を成長さ ることができる。従って、平坦なAlNシード を、単結晶のまま形成できさえすれば、そ 上に成長するヘテロエピタキシャル膜のGaN 膜質を飛躍的に向上させることが可能とな 。

 上述のような理由により、ヘテロエピタ シャル成長させる場合の中間的な物理特性 持つ薄膜材料としては、AlNが最適であり、 のAlNを結晶性に優れた単結晶組織として成 する方法としては、反応性スパッタ法が好 である。従って、AlNシード層12をAlN単結晶 し、反応性スパッタ法によって成膜するこ により、その上に、結晶性が非常に高いGaN 形成することができ、ひいてはLED構造20全体 の結晶性を向上させることが可能となる。

「n型コンタクト層(n-GaN)及びn型クラッド層(n- clad)の形成」
 そして、図1に示すように、GaN単結晶からな る下地層14aの上に、n型コンタクト層14b及びn クラッド層14cを順次積層し、n型半導体層14 形成する。これら各層には、上述したよう n型不純物をドープする。

『発光層(障壁層、井戸層)の形成』
 n型クラッド層14c上には、発光層15を、従来 知のMOCVD法によって形成する。図1に例示す ような本実施形態で形成する発光層15は、Ga N障壁層に始まりGaInN障壁層に終わる積層構造 を有しており、SiドープのGaNからなる6層の障 壁層15aと、ノンドープのGaNからなる5層の井 層15bとを交互に積層して形成する。

 n型半導体層14とp型半導体層16の間には、 長を制御するためのGaInN層(発光層15)を成膜 る。このような発光層(GaInN層)15は、一般に 多重量子井戸構造(MQW)と呼ばれる障壁層(バ ア層)となるn型GaN層と、井戸層(ウェル層)と なるGalnN層を交互に積層させて形成する。こ で、多重量子井戸構造からなる発光層15は n型コンタクト層14b(n-GaN)とp型コンタクト層16 b(p-GaN)とで直接挟む形で形成するのではなく n型コンタクト層14bと発光層との間にはn型 ラッド層14c(n-clad:n-GaInN)を、p型コンタクト層 16bと発光層15との間にはp型クラッド層16a(p-cla d:p-GaAlN)を介在させた構造として形成する。

 発光層15の成長過程においては、TMIを供給 る。つまり、成長時間を制御しながら、断 的にlnを供給するプロセスを採用する。この 際のキャリアガスはN 2 とする。
障壁層15a(n型GaN層)と井戸層15b(GalnN層)の膜厚 、発光出力が最も高くなる条件を選択する そして、最適膜厚が決定されたうえで、III の原料供給量と成長時間を適宜選択する。
 また、発光層15の成長温度は、サセプタの 度で700℃から1000℃の範囲とすることが好ま い。しかしながら、井戸層15bの成長過程に いては、成長温度が高すぎるとInが成長膜 に取り込まれ難くなり、所定の波長を発光 せるために必要な量のInを固溶させることが できなくなる。このため、井戸層15bの成長温 度は、あまり高くならない範囲内で選択する ことが好ましい。
 一方、障壁層15aは、成長温度が出来るだけ い方が結晶性を維持し易い。しかしながら 障壁層15aの成長温度が高すぎると、井戸層1 5bをなすGaInNが分解してしまうため、このよ な面も考慮しながら成長温度を設定するこ が好ましい。
 発光層15の成長においては、最後の1層、つ り最上層として、障壁層15aを成長させて終 となる(最終障壁層)。 

『p型半導体層(p型クラッド層、p型コンタク 層)の形成』
 発光層15上、つまり、発光層15の最上層とな る障壁層15a上には、p型クラッド層16a及びp型 ンタクト層16bからなるp型半導体層16を、MOCV D法を用いて形成する。

 本実施形態では、まず、MgをドープしたAl 0.1 Ga 0.9 Nからなるp型クラッド層16aを発光層15(最上層 障壁層15a)上に形成し、その上に、Mgをドー したAl 0.02 Ga 0.98 Nからなるp型コンタクト層16bを形成する。こ 際、p型クラッド層16a及びp型コンタクト層16 bの積層には、同じMOCVD装置を用いることがで きる。

「p型コンタクト層(p-GaN)の形成」
 p型コンタクト層16b(p-GaN)の成長は、以下の うな手順で行なう。
 まず、TMG、TMA及びドーパントであるCp 2 Mgを、キャリアガス(水素、又は、窒素、ある いは両者の混合ガス)及びNH 3 ガスと共に、上述したp型クラッド層16a上に りこむ。この際の成長温度は、サセプタの 度で980~1100℃の範囲とすることが好ましく、 ウェーハの温度では830~970℃の範囲である。 長温度がこの範囲よりも低いと、結晶性の いエピタキシャル層が形成されてしまい、p コンタクト層16bのホール密度が上がらなく る。また、成長温度が上記範囲よりも高い 、下層に位置する発光層15の内、井戸層15b GaInNが分解してInが析出してしまう可能性が る。

 p型コンタクト層16bの成長圧力については 、特に制限はないが、50kPa(500mbar)以下とする とが好ましい。成長圧力が50kPa(500mbar)以下 条件であると、ドーパントとして送りこん Mgが、p型コンタクト層16b中の2次元方向(成長 基板の面内方向)において、濃度分布が均一 なる。p型コンタクト層16b中のMg濃度は、一 的な質量分析装置(SIMS)を用いて測定するこ ができる。

 また、p型コンタクト層16bを成長させる際の 膜厚としては、50~300nmの範囲が好ましく、100~ 200nmの範囲がより好ましい。
 なお、p型コンタクト層16bの成長速度は、ウ ェーハ断面のTEM観察、又は分光エリプソメト リーによってp型コンタクト層16bの膜厚を計 し、成長時間で割り返すことによって求め ことができる。

(形成前にCP 2 Mgのみを大量に短時間流す処理)
 本発明の発光素子の製造方法においては、p 型半導体層16を形成する際の成長温度は極力 いほうがGaNの結晶性を上げやすく、Mgのド プ効率もよくなると考えられる。ところがp 半導体層16(p-GaN)を成長する際は、直下の層 InGaNを含んだ発光層15(MQW層)が存在する。InGa Nは、Inの量が増えるに従って分解温度が下が る。本来ならば、n型半導体層(n-GaN)を成長す 温度とp型半導体層(p-GaN)を成長する温度は 同レベルの温度であるべきだが、上記理由 より、p-GaNを成長する温度はn-GaNを成長する 度よりも100℃以上低いのが一般的である。 発明では、上述したように、発光層15に備 られ、Inを含有する井戸層15bの結晶性が向上 しているので、InGaN層の分解温度も上昇して り、それに伴ってp型半導体層16の成長温度 高くすることが可能となる。
 本発明の製造方法のように、p型半導体層16 n型半導体層14の成長温度の差を60℃以内と ることにより結晶性に優れたp型半導体層16 形成することが可能となる。
 本発明においては、上記構成により、LED構 20の最上層となるp型半導体層16の結晶性が 常に高められたものとなる。

 また、p型半導体層16を形成する前に、Cp 2 Mgのみを大量に短時間流す処理を行なうにあ り、例えば、図5に示すようなMOCVD装置50を いてp型半導体層16を発光層15上に形成する際 に、チャンバ51内において、基板11上に発光 15までが形成されたウェーハ1Aと、該ウェー の発光層15側の面に対して並行に備えられ シールド55との距離を30mm以下とすることが ましい。ウェーハ1Aと、MOCVD装置50に備えら るシールド55との配置を上記関係として、p 半導体層16を形成する前にCp 2 Mgのみを大量に短時間流す処理を行なうこと より、以下に説明するような発光特性向上 効果が得られる。

 LED等のIII族窒化物半導体発光素子は、エ ルギーギャップが存在する結晶中に電流を すことにより、ギャップに相当するエネル ーを有する光が発生することで発光作用が られるものである。従って、出来る限り多 の電流を流すため、n型半導体層及びp型半 体層のホールとキャリアをできるだけ多く 生させる必要がある。ここで、n型半導体層 p型半導体層とを比べると、n型半導体層を すn-GaN結晶の抵抗値は比較的低減されるもの の、p型半導体層をなすp-GaN結晶の抵抗値は低 減され難い傾向がある。このため、発光素子 の発光強度(輝度)を向上させるためには、p型 半導体層16(p型コンタクト層16b)のホール濃度 、可能な限り高いことが好ましい。

 p型半導体層16(p型コンタクト層16b)のホー 濃度を高くするための方法としては、以下 ような方法が考えられる。まず、GaN結晶のN が抜けたVacancy N等の欠陥があると、Mgがこの 欠陥に捕捉され、活性化率が大きく低下して しまう。従って、活性化率を上げるためには 結晶性を極力向上させる必要がある。

 また、p型半導体層の成長温度がより高い 方が、結晶性が高められるのでMgが結晶中に り込み易い。但し、発光層に備えられる井 層(GaInN)に含有されるInが分解を始めるので n型半導体層(n-GaN)を成長させる際に比べる 、通常、100℃程度低い温度で成長するのが 般的である。この際、発光層の下側のAlNシ ド層及びn型半導体層の結晶性が高いほど、G aInNの分解温度が高くなるので、n型半導体層 成長温度を高くすることが可能となる。こ ような各層の成長温度としては、一般的に 、ウェーハを置くためのSiCコートが施され カーボントレイの温度を測定しており、基 (サファイア)表面あるいはその上に成長す GaN結晶の、表面温度の絶対値を正確に測定 るのは難しい。従って、本例の説明におい は、n型半導体層(n-GaN)を成長させた際の温度 と、p型半導体層(p-GaN)を成長させた際の温度 の差で説明している。

 本発明においては、基板11上にAlNシード層12 を介して積層されるn型半導体層14の結晶性を 向上させることにより、p型半導体層16の成長 温度を、従来に比べて50℃程度、高くするこ が可能となった。このように、p型半導体層 14の成長温度を50℃程高くできることを発光 性の向上に利用するためには、製造プロセ 条件の変更が必要となる。III族窒化物半導 発光素子において、p型半導体層(p-GaN)を成長 させる際には、p型ドーパントとしてMgをドー プさせるが、一般に、ビスシクロペンタジエ ニルマグネシウム(Cp 2 Mg)又はビスエチルシクロペンタジエニルマグ ネシウム(EtCp 2 Mg)を供給することにより、ドープ処理してい る。しかしながら、このようなドーパント材 料は、TMG等に比べて分解条件が大きく異なる ため、GaN結晶に取り込まれる効率が低いとい う問題がある。

 ここで、p型コンタクト層16bの成長前に、短 時間で大量のCp 2 Mgを供給すると、基板11(ウェーハ1A)に並行な ールド55に付着したデポジションBの表面にM gが多く吸着するものと考えられる。そして p型コンタクト層16bを成長させるために基板1 1(ウェーハ1A)の温度を上昇させると、シール 55の温度も輻射熱によって上昇し、デポジ ョンBの表面に吸着していたMgがチャンバ51内 に放出されるが、このような放出Mgは、Cp 2 Mgによって供給されたMgよりもGaN結晶中に取 込まれ易いという作用がある。そこで、p型 ラッド層16aを成長させる直前に、大量のCP 2 Mgを供給してシールド55(デポジションB)にMgを 吸着させ、p型コンタクト層16bを成長させる に温度を上昇させるのに伴い、デポジショ B表面からMgをチャンバ51内に放出させ、この 放出Mgを補助ドープ源とするのが、本発明で 明するスパイクドープ処理である。

 即ち、結晶性の優れたウェーハ1Aを用い 、上述のようなスパイクドープの方法を組 合わせることにより、p型半導体層16のホー 濃度を上昇させることができ、発光強度を 幅に向上させることが可能となる。このよ なスパイクドープは、図5に示すように、ウ ーハ1Bの直上に、デポジションBが付着する ールド55を配することが必要となり、特に ウェーハ1Aの表面に対して並行に備えられる シールド55との距離を30mm以下とすることが、 高い結晶性を発光特性改善に結びつける点か ら重要となる。

 本発明では、シード層機能を有するAlNシー 層12を、反応性スパッタ法によってAlN単結 で成膜することにより、その上に、非常に い結晶性を有するGaN系半導体結晶を形成す ことができる。このような、欠陥が低減さ たウェーハを用いることにより、p型半導体 16の成長温度を高くすることが可能となり これに伴い、p型クラッド層16aの成長直前に Cp 2 Mgを大量に短時間で供給することにより、発 強度を大幅に向上させることが可能となる

 ここで、例え、基板上に形成されるGaN系半 体結晶の結晶性が高い場合でも、従来のLED 造を成長させる条件を用いると、大きな発 強度の向上は望めない。
 また、発光層に備えられる障壁層の厚さを くすると、駆動電圧Vfが下がり、発光変換 率も上昇することは従来公知であるが、障 層を薄く構成した場合には、当然のことな らリーク電流が発生しやすくなる。このた 、障壁層を薄く構成してリーク電流を抑制 る場合には、非常に高い結晶性が必要とな 。
 本発明においては、上述のように、結晶性 高いGaN結晶の上にLED構造を成長させる際、 層のGaN結晶の結晶性に応じてLED構造や成膜 件を最適化することにより、発光強度を大 に向上させることができるというものであ 。

<電極の形成>
 本実施形態の製造方法では、上記各手順に り、基板11上に、AlNシード層12及びLED構造20 積層されたウェーハのp型コンタクト層16b上 に正極を形成し、n型半導体層14をなすn型コ タクト層14bに接するように負極を形成する

「正極の形成」
 まず、LED構造20が積層されたウェーハのp型 ンタクト層16b上に、例えば、ITO等からなる 光性正極17を形成する。
 透光性正極17の形成方法としては、特に限 されず、例えば、フォトリソグラフィ法等 この技術分野でよく知られた慣用の手段で けることができる。また、その構造も、従 公知の構造を含めて如何なる構造のものも ら制限なく用いることができる。

 透光性正極17を成膜するためのスパッタリ グ法としては、従来公知のスパッタリング 置を用いて従来公知の条件を適宜選択して 施することができる。この際、まず、LED構 20が積層された基板をチャンバ内に収容する 。チャンバ内は、真空度が10 -4 ~10 -7 Paとなるまで予め排気しておく。そして、Ar スをチャンバ内に導入し、0.1~10Pa、より好ま しくは0.2~5Paの範囲に圧力を設定した後、放 を行う。また、スパッタリング時に供給す 電力は、0.2~2.0kWの範囲が好ましい。この際 放電時間と供給電力を調節することにより 形成する透光性正極の厚さを制御すること できる。
 なお、透光性正極17を形成した後、合金化 透明化を目的とした熱アニールを施す場合 あるが、施さなくても構わない。

 次いで、LED構造20上に形成された透光性正 17上に、さらに、正極ボンディングパッド18 形成する。
 この正極ボンディングパッド18は、例えば 透光性正極17の表面側から順に、Ti、Pt、Auの 各材料を、従来公知の方法で積層することに よって形成することができる。

「負極の形成」
 負極19を形成する際は、まず、基板11上に形 成された発光層15、p型半導体層16、及びn型半 導体層14の一部を、フォトリソグラフィ及び ライエッチングによって除去することによ 、n型コンタクト層14bの露出領域14dを形成す る(図1及び図2参照)。そして、ウェーハの上 全体に保護膜を形成した後、フォトリソグ フィによって、露出領域14d上における負極 成部分の保護膜を除去し、従来公知の方法 例えば、真空蒸着法等によって負極19を形成 する。この際、例えば、露出領域14d表面側か ら順に、Ti、Pt及びAuの各材料を積層すること により、3層構造の負極19を形成することがで きる。

 そして、上述のようにして、LED構造20上に 透光性正極17、正極ボンディングパッド18及 負極19を設けたウェーハを、基板11の裏面を 研削及び研磨してミラー状の面とした後、例 えば、350μm角の正方形に切断することにより 、発光素子チップ(発光素子1)とすることがで きる。
 これにより、図1及び図2に示すような発光 子1が得られる。

 以上説明したような、本発明に係るIII族 化物半導体発光素子1の製造方法によれば、 基板11上にIII族窒化物系化合物からなるAlNシ ド層12を積層し、該AlNシード層12上に、n型 導体層14、発光層15及びp型半導体層16の各層 III族窒化物半導体から形成して順次積層す 方法であり、特に、p型半導体層16をMOCVD法 よって成膜するとともに、成膜装置のチャ バ内において、基板11上にIII族窒化物半導体 からなる層が形成されたウェーハと、該ウェ ーハのIII族窒化物半導体からなる面に対して 並行に備えられるシールドとの距離を30mm以 とする方法としているので、III族窒化物半 体からなる各層の結晶性を高めて内部量子 率を向上させることができ、高い発光出力 備えたIII族窒化物半導体発光素子を効率良 製造することが可能となる。

[ランプ]
 以上説明したような、本発明に係るIII族窒 物半導体発光素子を、ケース付きリードフ ームに接着剤で配置し、P,Nパッドからリー フレームにワイヤーを引き出す構成として リードフレーム端子から電流を流すことに り、ランプとすることができる。
一般的には、ワイヤーとリードフレーム表面 のAgメッキ及びチップを保護する目的で、III 窒化物半導体発光素子を透明樹脂で封止し 構成とされる。またさらに、封止樹脂に蛍 体を分散させることにより、白色LEDを構成 ることも可能である。
 以上のように、当業者周知の手段によって ンプを構成することができる。従来より、 光素子と蛍光体と組み合わせることによっ 発光色を変える技術が知られており、この うな技術を何ら制限されることなく採用す ことが可能である。例えば、蛍光体を適正 選定することにより、発光素子より長波長 発光を得ることも可能となり、また、発光 子自体の発光波長と蛍光体によって変換さ た波長とを混ぜることにより、白色発光を するランプとすることもできる。また、ラ プとしては、一般用途の砲弾型、携帯のバ クライト用途のサイドビュー型、表示器に いられるトップビュー型等、何れの用途に 用いることができる。

 例えば、図3に示す例のように、同一面電 極型のIII族窒化物半導体発光素子1を砲弾型 実装する場合には、2本のフレームの内の一 (図3ではフレーム31)に発光素子1を接着し、 た、発光素子1の負極(図2に示す符号19参照) ワイヤー34でフレーム32に接合し、発光素子 1の正極ボンディングパッド(図2に示す符号18 照)をワイヤー33でフレーム31に接合する。 して、透明な樹脂からなるモールド35で発光 素子1の周辺をモールドすることにより、図3 示すような砲弾型のランプ3を作成すること ができる。

[その他のIII族窒化物半導体素子]
 本発明によって得られるIII族窒化物半導体 積層構造は、上述の発光素子の他、レーザ 子や受光素子等の光電気変換素子、又は、H BTやHEMT等の電子デバイス等にも適用すること が可能である。
これらの半導体素子は各種構造のものが知ら れており、本発明に係る発光素子1に備えら るLED構造20のような半導体素子構造は、これ ら周知の素子構造を含めて何ら制限されない 。

 次に、本発明のIII族窒化物半導体発光素 及びその製造方法、並びにランプを、実施 および比較例を示してより詳細に説明する 、本発明はこれらの実施例にのみ限定され ものではない。

[実験例1]
 図1に、本実施例で作製したIII族窒化物半導 体発光素子の積層半導体の断面模式図を示す 。本実験例では、まず、サファイア基板のc 上に、AlNシード層としてRFスパッタ法を用い てAlNからなる層を形成し、その上に下地層と してMOCVD法を用いてGaNからなる層を形成した

「AlNシード層の形成」
 まず、全て同様の加工工程を経て得られた 直径100mm、厚さ0.9mmのC面サファイアからな 基板を100枚用意した。この基板は、OFF角0.35 で切り出されており、表面はRa≦2Åであっ 。
 次いで、この基板を500rpmで回転させながら 純水を噴射することによって湿式洗浄を行 、その後、基板の回転数を2000rpmに上昇させ て乾燥処理を行なった。
 そして、基板をスパッタ装置に導入し、チ ンバ内で基板を600℃まで加熱し、窒素ガス 75sccmの流量で導入した。その後、チャンバ の圧力を1Paに保持して、基板側に30Wの高周 パワーを印加することでチャンバ内に窒素 ラズマを発生させ、基板を窒素プラズマに1 5秒間晒すことで基板表面を洗浄した。

 続いて、基板上にAlNからなるAlNシード層を 成するため、チャンバ内にアルゴンと窒素 スを導入し、基板温度を600℃とした。この 、ターゲットとして5Nの高純度Alを用い、タ ーゲットの直径を200mm、ターゲット-基板間距 離TSを60mmに設定した。
 次いで、1500Wの高周波パワーをターゲット- ャンバ間に印加し、チャンバ内の圧力を0.5P aに保ちながら、アルゴンガスを25sccm、窒素 スを75sccm流通させた条件(ガス全体に対する 素の比は75%)で、サファイア基板のc面上にAl N層の成膜を開始した。そして、高周波パワ を100秒の間印加し、単結晶構造を有する厚 30nmのAlN層を成膜後、プラズマを立てるのを め、基板温度を低下させた。
 なお、AlNシード層の形成には、スパッタ装 として、高周波式の電源を持ち、ターゲッ 内でマグネットの位置を動かす機構を有す ものを用い、ターゲット内のマグネットは 基板洗浄の際も成膜の際も回転させた。

 以上の工程により、c面サファイアからなる 基板上にAlN単結晶のAlNシード層を形成し、こ の成膜条件の一覧を下記表1に示した。
 また、上記条件で得られたサンプルについ 、AlNシード層のX線回析を行ない、(0002)面及 び(10-10)面のX線ロッキングカーブ半値幅(FWHM) 測定し、結果を下記表4に示した。

「下地層の形成」
 次に、AlNの成膜された基板をスパッタ装置 ら取り出し、MOCVD装置に導入して、以下に す方法によってGaNからなる下地層の成膜を った。
 まず、MOCVD装置内に配置された加熱用のSiC ートカーボン製サセプタ上に基板を載置し チャンバ内に窒素ガスを流通した後、ヒー を作動させて基板温度を1100℃に昇温させた その後、温度が安定したのを確認し、窒素 であるアンモニア(NH 3 )のチャンバ内への流通を開始した。続いて Ga源であるトリメチルガリウム(TMG)の蒸気を む水素(H 2 :キャリアガス)をチャンバ内へ供給し、基板 (ここではAlNシード層上)へのGaN(下地層)の成 膜を開始した。また、この際、V族元素/III族 素比が6000となるように調節した。そして、 アンドープで6μmの膜厚のGaNからなる下地層 、2μm/hrの成長速度で成膜した。

「n型コンタクト層の形成」
 下地層の形成に引き続き、同じMOCVD装置に ってGaNからなるn型コンタクト層を形成した この際、n型コンタクト層にはSiをドープし 。結晶成長は、Siのドーパント原料として ノシラン(SiH 4 )を120sccmで流通させた以外は、下地層と同じ 件によって行った。また、モノシランはキ リアガスとともにチャンバ内に供給し、そ 供給濃度は、TMGの供給量との比率で制御し 。そして、原料ガスのMOCVD装置への供給を 止して結晶成長を停止させ、その後、ヒー への通電を停止して基板の温度を室温まで 温した。取り出した基板は無色透明のミラ 状を呈した。
 以上のような手順により、AlNシード層上に ンドープGaNからなる下地層を形成し、さら 下地層上にn型コンタクト層を形成し、この 際の成膜条件の一覧を下記表2に示した。
 また、上記条件で得られたサンプルについ 、n-GaN半導体結晶からなるn型コンタクト層 X線回析を行ない、(0002)面及び(10-10)面のX線 ッキングカーブ半値幅(FWHM)を測定し、結果 下記表4に示した。

「n型クラッド層~発光層~p型半導体層の形成
(n型クラッド層の形成)
 上記手順でn型コンタクト層を成長させた基 板について、MOCVD装置にアンモニアを流通さ ながら、キャリアガスを窒素として、基板 度を760℃へ低下させた。
 次いで、アンモニアをチャンバ内に流通さ ながら、SiH 4 ガスと、バブリングによって発生させたTMI及 びTEGの蒸気をチャンバ内へ流通させ、Ga 0.99 In 0.01 Nからなるn型クラッド層を50nmの膜厚で成膜し た。

(発光層の形成)
 発光層は、GaNからなる障壁層と、Ga 0.92 In 0.08 Nからなる井戸層とから構成され、多重量子 戸構造を有する。この発光層の形成にあた ては、n型クラッド層上に、まず、障壁層を 成し、この障壁層上に、Ga 0.92 In 0.08 Nからなる井戸層(膜厚3nm)を形成した。本例で は、このような積層手順を5回繰り返した後 5番目に積層した井戸層上に、6番目の障壁層 を形成し、多重量子井戸構造を有する発光層 の両側に障壁層を配した構造とした。

 まず、基板温度を940℃に昇温してTEGとSiH 4 のチャンバ内への供給を開始し、所定の時間 SiをドープしたGaNからなる厚さ6nmの障壁層を 成した。この際のSiH 4 の量は、Si濃度が1×10 17 cm -3 になるように調整した。

 障壁層の成長終了後、基板温度を760℃に降 し、次いで、TEGとTIGをチャンバ内へ供給し 井戸層の成膜処理を行ない、3nmの膜厚を成 Ga 0.92 In 0.08 N層(井戸層)を形成した。
 そして、Ga 0.92 In 0.08 Nからなる井戸層の成長終了後、TEGの供給量 設定を変更した。引き続いて、TEGおよびSiH 4 の供給を再開し、2層目の障壁層の形成を行 った。

 上述のような手順を5回繰り返すことにより 、5層のSiドープGaNからなる障壁層と、5層のGa 0.92 In 0.08 Nからなる井戸層を形成した。
 そして、5層目のGa 0.92 In 0.08 Nからなる井戸層を形成した後、引き続いて 上記同様の条件で6層目の障壁層の形成を行 た。

 以上の手順により、GaNからなる6層の障壁層 と、Ga 0.92 In 0.08 Nからなる5層の井戸層とから構成される、多 量子井戸構造の発光層を形成した。

「p型半導体層の形成」
 上述の各工程に引き続き、同じMOCVD装置を いて、MgをドープしたAl 0.07 Ga 0.93 Nよりなるp型クラッド層を20nmの膜厚で成膜し 、更にその上に、膜厚が150nmのMgをドープし GaNからなるp型コンタクト層を成膜し、p型半 導体層とした。

 まず、NH 3 ガスを供給しながら基板温度940℃から1010℃ 昇温し、キャリアガスを窒素から水素に切 替え、チャンバ内にCp 2 Mgを700sccmで15秒間流通させ、チャンバ内にお てウェーハの積層面に並行に配されたシー ドに付着したデポジションに吸着させた。 して、チャンバ内へTMG及びCp 2 Mgを所定量で供給することにより、Mgをドー したAl 0.07 Ga 0.93 Nよりなるp型クラッド層を形成した。
 その後、Cp 2 Mgの流量を変更し、150nmのp型GaNよりなるp型コ ンタクト層16bを形成した。
 そして、p型クラッド層及びp型コンタクト の気相成長を終了させた後、MOガスの供給を 停止し、所定の冷却速度でチャンバ内の基板 を冷却した。

 上述のようにして作製したLED用のエピタキ ャルウェーハは、c面を有するサファイアか らなる基板上に、粒界が全く存在しないAlN層 (AlNシード層)を形成した後、基板側から順に 6μmのアンドープGaN層(下地層)、5×10 18 cm -3 の電子濃度を持つ2μmのSiドープGaNらなるn型 ンタクト層、4×10 18 cm -3 のSi濃度を有し、50nmのGa 0.99 In 0.01 Nからなるn型クラッド層、GaN障壁層に始まっ GaN障壁層に終わり、層厚が6nmとされた5層の SiドープGaN障壁層(障壁層)と、層厚が3nmとさ た5層のノンドープGa 0.92 In 0.08 N井戸層とを備える多重量子井戸構造(発光層) 、膜厚が20nmのMgドープAl 0.07 Ga 0.93 Nからなるp型クラッド層、及び、膜厚が150nm MgドープGaNからなるp型コンタクト層bから構 されるp型半導体層を積層した構造を有する 。

「LEDの作製」
 次いで、上記方法で得られたLED用のエピタ シャルウェーハを用いて、LEDを作製した。
 まず、上記ウェーハのp型コンタクト層の表 面に、公知のフォトリソグラフィ技術及びエ ッチング技術によってITOからなる透光性正極 を形成した。この際、まず、上記ウェーハを スパッタ装置内に導入し、p型コンタクト層 に、膜厚が約2nmのITOをRFスパッタ法によって 成膜し、次いで、膜厚が約400nmのITOをDCスパ タ法によって積層した。なお、RFスパッタ成 膜時の圧力は約0.3Pa、供給電力は0.5kWとした また、DCスパッタ成膜時の圧力は約0.8Pa、供 電力は1.5kWとした。

 上記手順でITO膜を成膜した後、酸素を20%含 窒素雰囲気中において、500℃の温度で1分間 のアニール処理を施した。
 そして、アニール処理の終了後、負極を形 する領域に一般的なドライエッチングを施 、その領域に限り、n型コンタクト層の表面 を露出(図1及び図2参照)させた。次に、ウェ ハ表面全体にSiO 2 からなる保護膜を成膜した後、フォトリソグ ラフィ技術によってパッド(各電極)表面の保 膜を取り除いた。そして、真空蒸着法によ 、ITO膜上の一部及びn型コンタクト層の露出 領域に、Tiからなる第1層(膜圧=40nm)、Ptからな る第2層(層厚=200nm)、Auからなる第3層(膜圧=300n m)を順に積層し、それぞれ正極ボンディング ッド及び負極として形成した。

 そして、上述の手順で素子化されたウェー について、サファイアからなる基板の裏面 、ダイヤモンド微粒の砥粒を使用して研削 び研磨し、最終的に鏡面状に仕上げた。そ て、このウェーハを350μm角の正方形のチッ に切断し、図1及び図2に示すような350μm角 正方形とされた、個別のLEDチップへと分離 た。
 次いで、3528トップビューパッケージ用のリ ードフレーム上に、LEDチップをエポキシ接着 剤でボンディングし、負極および正極ボンデ ィングパッドを、各々、金(Au)線でリードフ ームに結線し、エポキシ樹脂の封止剤で封 した(図3のランプ3を参照)。

 上述のようにして作製したトップビューパ ケージにおいて、正極(p側)と負極(n側)の電 間に順方向電流を流して電気的特性及び発 特性を評価し、この結果の一覧を下記表4に 示した。
 本実験例で作製したサンプルは、電流20mAに おける順方向電圧は3.05Vであった。また、p側 の透光性正極を通して発光状態を観察したと ころ、発光波長は459nmであり、発光出力は22.3 mWを示した。
 なお、本実験例においては、直径100mmのウ ーハから、外観不良品を除いて約50000個のLED が得られたが、上記電気的特性及び発光特性 は、ウェーハのほぼ全面から作製されたLEDチ ップおいて、ばらつきなく得られた。

 基板の洗浄処理及びAlNシード層の成膜条 を下記表1に示すとともに、下地層及びn型 ンタクト層の成膜条件を下記表2に示し、n型 クラッド層、発光層及びp型クラッド層の成 条件を下記表3に示す。また、電気的特性及 発光特性の測定結果、並びに、AlNシード層 びp型半導体層(p型コンタクト層)のX線ロッ ングカーブ半値幅(FWHM)の測定結果の各一覧 下記表4に示す。

[規則26に基づく補充 15.07.2009] 

[実験例2~11]
 発光層を形成する際、多重井戸構造を構成 る障壁層の成長時間を変更することにより 障壁層を上記表4に示すような厚さに各々変 更した点を除き、上記実験例1と同様の手順 用いて、実験例2~11のLEDチップサンプルを作 した。そして、実験例1と同様に、電気的特 性及び発光特性の測定結果、並びに、AlNシー ド層及びp型半導体層のFWHMの測定結果の各一 を上記表4に示した。

[実験例12~15]
 基板の洗浄条件及びAlNの成膜条件を上記表1 に示す条件とした点を除き、上記実験例1と 様の手順で、基板上にAlNシード層を積層し その上に各層を積層して実験例12~15のLEDチッ プサンプルを作製した。そして、実験例1と 様に、電気的特性及び発光特性の測定結果 並びに、AlNシード層及びp型半導体層のFWHMの 測定結果の各一覧を上記表3に示した。

[各実験例の評価結果]
 表4に示すように、発光層をなす障壁層の1 あたりの厚さ及び隣接する井戸層との合計 厚が適正な範囲とされた実験例1~4のサンプ は、p型半導体層の結晶性が高く、また、電 的特性及び発光特性に優れることがわかる
 一方、表4中の成膜条件特記事項に示すよう に、必ずしも適正範囲ではない条件を含む方 法で作製された、実験例5~12、実験例14及び15 サンプルは、p型半導体層の結晶性、電気的 特性あるいは発光特性の各項目の内、少なく とも何れかの項目が劣る結果となった。

 上記実施例の結果により、本発明のIII族 化物半導体発光素子が、結晶性が高く内部 子効率に優れ、高い発光特性を備えている とが明らかである。

 本発明で得られるIII族窒化物半導体発光 子は、良好な結晶性を持つIII族窒化物半導 からなり、優れた発光特性を有する。従っ 、発光特性に優れた発光ダイオード、レー ダイオード、或いは電子デバイス等の半導 素子を作製することが可能となる。

1…III族窒化物半導体発光素子(発光素子)、 1A…ウェーハ、3…ランプ、11…基板、12…AlN ード層、14…n型半導体層、15…発光層、15a… 障壁層、15b…井戸層、16…p型半導体層、20…L ED構造、40…スパッタ装置、50…MOCVD装置(成膜 装置)、55…シールド




 
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