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Patent Searching and Data


Title:
LITHIUM TRANSITION METAL COMPOUND POWDER, PROCESS FOR PRODUCTION THEREOF, SPRAY-DRIED PRODUCT USEFUL AS FIRING PRECURSOR, AND POSITIVE ELECTRODE FOR LITHIUM SECONDARY BATTERY AND LITHIUM SECONDARY BATTERY MADE BY USING THE SAME
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/078695
Kind Code:
A1
Abstract:
A lithium transition metal compound powder for the positive electrode material of a lithium secondary battery, characterized by being prepared by using a lithium transition metal compound permitting the insertion and extraction of lithium ions as the main component, incorporating the main component raw material with both at least one compound (hereinafter referred to as “additive (1)”) containing one or more elements (hereinafter referred to as “additive element (1)”) selected from between B and Bi and at least one compound (hereinafter referred to as “additive (2)”) containing one or more elements (hereinafter referred to as “additive element (2)”) selected from between Mo and W in a total amount of additives (1) and (2) of 0.01% by mole or above and below 2% by mole based on the total molar amount of transition metal elements contained in the main component raw material, and then firing the obtained mixture.

Inventors:
SHIZUKA KENJI (JP)
OKAHARA KENJI (JP)
KIKUCHI KAZUHIRO (JP)
TERADA KAORU (JP)
Application Number:
PCT/JP2007/074698
Publication Date:
July 03, 2008
Filing Date:
December 21, 2007
Export Citation:
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Assignee:
MITSUBISHI CHEM CORP (JP)
SHIZUKA KENJI (JP)
OKAHARA KENJI (JP)
KIKUCHI KAZUHIRO (JP)
TERADA KAORU (JP)
International Classes:
H01M4/131; H01M4/36; H01M4/505; H01M4/525; H01M50/417; H01M50/489
Domestic Patent References:
WO2002041419A12002-05-23
Foreign References:
JPH10241691A1998-09-11
JP2005251716A2005-09-15
JPH1116566A1999-01-22
JP2000113884A2000-04-21
JPH04253162A1992-09-08
JPH04328258A1992-11-17
JPH0554889A1993-03-05
JPH05325971A1993-12-10
JPH08213052A1996-08-20
JPH0547384A1993-02-26
JPH0855624A1996-02-27
JPH10241691A1998-09-11
JPH1116566A1999-01-22
JP2000048820A2000-02-18
JP2000113884A2000-04-21
JP2002260632A2002-09-13
JP2002304993A2002-10-18
JP2003031219A2003-01-31
JP2004335278A2004-11-25
JP2005251716A2005-09-15
JP2004152753A2004-05-27
JP2005320184A2005-11-17
JP3088716B12000-09-18
JP3362025B22003-01-07
JP2004303673A2004-10-28
JP2005235628A2005-09-02
JP2006164934A2006-06-22
JP2006349912A2006-12-28
JP2007079360A2007-03-29
Other References:
J. POWER SOURCES, vol. 102, 2001, pages 162
J. ELECTROCHEM. SOC., vol. 151, 2004, pages A1789
See also references of EP 2110872A4
Attorney, Agent or Firm:
SHIGENO, Tsuyoshi (9F 5-10, Shinjuku 2-chome, Shinjuku-k, Tokyo 22, JP)
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Claims:
 リチウムイオンの挿入・脱離が可能な機能を有するリチウム遷移金属系化合物を主成分とし、表面増強ラマン分光スペクトルにおいて、800cm -1 以上、900cm -1 以下にピークAを有することを特徴とするリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
 表面増強ラマン分光スペクトルにおいて、ピークAの半値幅が30cm -1 以上であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
 表面増強ラマン分光スペクトルにおいて、600±50cm -1 付近のピークBの強度に対するピークAの強度が、0.04より大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
 飛行時間型二次イオン質量分析において、添加元素間、又は、添加元素と正極活物質を構成する元素とが結合したフラグメントに由来するピークが観察されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
 飛行時間型二次イオン質量分析において、BWO 5 - 及びM’BWO 6 - (M’は、2価の状態を取りうる元素である)、又は、BWO 5 - 及びLi 2 BWO 6 - に由来するピークが観察されることを特徴とするリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
 レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって、屈折率を1.24に設定し、粒子径基準を体積基準として、5分間の超音波分散(出力30W、周波数22.5kHz)後に測定されたメジアン径が2μm以上、8μm以下であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
 BET比表面積が0.5m 2 /g以上、3m 2 /g以下であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
 水銀圧入法による水銀圧入曲線において、圧力3.86kPaから413MPaまでの昇圧時における水銀圧入量が、0.4cm 3 /g以上、1.5cm 3 /g以下であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
 水銀圧入法による細孔分布曲線が、細孔半径300nm以上、1500nm以下にピークトップが存在するメインピークを少なくとも1つ以上有し、かつ細孔半径80nm以上、300nm未満にピークトップが存在するサブピークを有することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
 水銀圧入法による細孔分布曲線において、細孔半径300nm以上、1500nm以下にピークトップが存在するピークに係る細孔容量が0.3cm 3 /g以上、0.8cm 3 /g以下であり、かつ細孔半径80nm以上、300nm未満にピークトップが存在するサブピークに係る細孔容量が0.01cm 3 /g以上、0.3cm 3 /g以下であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
 水銀圧入法による細孔分布曲線が、細孔半径400nm以上、1500nm以下にピークトップが存在するメインピークを少なくとも1つ以上有し、かつ細孔半径300nm以上、400nm未満にピークトップが存在するサブピークを有することを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
 嵩密度が1.2g/cm 3 以上、2.0g/cm 3 以下であることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
 40MPaの圧力で圧密した時の体積抵抗率が1×10 3 ω・cm以上、1×10 7 ω・cm以下であることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
 層状構造に帰属する結晶構造を含んで構成されるリチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物を主成分としたことを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
 組成が、下記組成式(I)で示されることを特徴とする請求項14に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
        LiMO 2  …(I)
 (ただし、上記式(I)中、Mは、Li、Ni及びMn、或いは、Li、Ni、Mn及びCoから構成される元素であり、Mn/Niモル比は0.1以上、5以下、Co/(Mn+Ni+Co)モル比は0以上、0.35以下、M中のLiモル比は0.001以上、0.2以下である。)
 含有炭素濃度をC(重量%)とした時、C値が0.005重量%以上、0.25重量%以下であることを特徴とする請求項14又は15に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
 前記組成式(I)中のMが、下記式(II’)で表されることを特徴とする請求項15又は16に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
  M=Li z’/(2+z’) {(Ni (1+y’)/2 Mn (1-y’)/2 ) 1-x’ Co x’ } 2/(2+z’)  …(II’)
〔ただし、組成式(II’)中、
                 0.1<x’≦0.35
                -0.1≦y’≦0.1
 (1-x’)(0.02-0.98y’)≦z’≦(1-x’)(0.20-0.88y’)〕
 前記組成式(I)中のMが、下記式(II)式で表されることを特徴とする請求項15又は16に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
  M=Li z/(2+z) {(Ni (1+y)/2 Mn (1-y)/2 ) 1-x Co x } 2/(2+z)  …(II)
〔ただし、組成式(II)中、
                 0≦x≦0.1
              -0.1≦y≦0.1
 (1-x)(0.05-0.98y)≦z≦(1-x)(0.20-0.88y)〕
 CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、回折角2θが64.5°付近に存在する(110)回折ピークの半価幅をFWHM(110)とした時に、0.01≦FWHM(110)≦0.3で表されることを特徴とする請求項17又は18に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
 CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、回折角2θが64°付近に存在する(018)回折ピーク、64.5°付近に存在する(110)回折ピーク、及び68°付近に存在する(113)回折ピークにおいて、それぞれのピークトップよりも高角側に、異相由来の回折ピークを持たないか、あるいは異相由来の回折ピークを有する場合、本来の結晶相の回折ピークに対する異相ピークの積分強度比が、各々、以下の範囲内にあることを特徴とする請求項17ないし19のいずれか1項に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
   0≦I 018 * /I 018 ≦0.20
   0≦I 110 * /I 110 ≦0.25
   0≦I 113 * /I 113 ≦0.30
(ここで、I 018 、I 110 、I 113 は、それぞれ(018)、(110)、(113)回折ピークの積分強度を表し、I 018 * 、I 110 * 、I 113 * は、それぞれ(018)、(110)、(113)回折ピークのピークトップよりも高角側に現れる異相由来の回折ピークの積分強度を表す。)
 リチウムイオンの挿入・脱離が可能な機能を有するリチウム遷移金属系化合物を主成分とし、該主成分原料に、B及びBiから選ばれる少なくとも1種以上の元素(以下「添加元素1」と称す。)を含有する化合物(以下「添加剤1」と称す。)と、Mo及びWから選ばれる少なくとも1種以上の元素(以下「添加元素2」と称す。)を含有する化合物(以下「添加剤2」と称す。)をそれぞれ1種以上、主成分原料中の遷移金属元素の合計モル量に対して、添加剤1と添加剤2の合計で0.01モル%以上、2モル%未満の割合で併用添加した後、焼成されたものであることを特徴とするリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
 添加剤1が、ホウ酸、オキソ酸塩、酸化物及び水酸化物から選択されたものであることを特徴とする請求項21に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
 添加剤2が、酸化物であることを特徴とする請求項21又は22に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
 添加剤1と添加剤2の添加割合が、10:1~1:20(モル比)の範囲であることを特徴とする請求項21ないし23のいずれか1項に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
 一次粒子の表面部分の、Liと前記添加元素1及び添加元素2以外の金属元素の合計に対する該添加元素1の合計の原子比が、粒子全体の該原子比の20倍以上であることを特徴とする請求項21ないし24のいずれか1項に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
 一次粒子の表面部分の、Liと前記添加元素1及び添加元素2以外の金属元素の合計に対する該添加元素2の合計の原子比が、粒子全体の該原子比の3倍以上であることを特徴とする請求項21ないし25のいずれか1項に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
 レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって、屈折率を1.24に設定し、粒子径基準を体積基準として、5分間の超音波分散(出力30W、周波数22.5kHz)後に測定されたメジアン径が2μm以上、8μm以下であることを特徴とする請求項21ないし26のいずれか1項に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
 一次粒子の平均径が0.1μm以上、2μm以下であることを特徴とする請求項21ないし27のいずれか1項に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
 BET比表面積が0.5m 2 /g以上、3m 2 /g以下であることを特徴とする請求項21ないし28のいずれか1項に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
 水銀圧入法による水銀圧入曲線において、圧力3.86kPaから413MPaまでの昇圧時における水銀圧入量が、0.4cm 3 /g以上、1.5cm 3 /g以下であることを特徴とする請求項21ないし29のいずれか1項に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
 水銀圧入法による細孔分布曲線が、細孔半径300nm以上、1500nm以下にピークトップが存在するメインピークを少なくとも1つ以上有し、かつ細孔半径80nm以上、300nm未満にピークトップが存在するサブピークを有することを特徴とする請求項21ないし30のいずれか1項に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
 水銀圧入法による細孔分布曲線において、細孔半径300nm以上、1500nm以下にピークトップが存在するピークに係る細孔容量が0.3cm 3 /g以上、0.8cm 3 /g以下であり、かつ細孔半径80nm以上、300nm未満にピークトップが存在するサブピークに係る細孔容量が0.01cm 3 /g以上、0.3cm 3 /g以下であることを特徴とする請求項21ないし31のいずれか1項に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
 水銀圧入法による細孔分布曲線が、細孔半径400nm以上、1500nm以下にピークトップが存在するメインピークを少なくとも1つ以上有し、かつ細孔半径300nm以上、400nm未満にピークトップが存在するサブピークを有することを特徴とする請求項21ないし30のいずれか1項に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
 嵩密度が1.2g/cm 3 以上、2.0g/cm 3 以下であることを特徴とする請求項21ないし33のいずれか1項に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
 40MPaの圧力で圧密した時の体積抵抗率が1×10 3 ω・cm以上、1×10 7 ω・cm以下であることを特徴とする請求項21ないし34のいずれか1項に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
 層状構造に帰属する結晶構造を含んで構成されるリチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物を主成分としたことを特徴とする請求項21ないし35のいずれか1項に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
 組成が、下記組成式(I)で示されることを特徴とする請求項36に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
        LiMO 2  …(I)
 (ただし、上記式(I)中、Mは、Li、Ni及びMn、或いは、Li、Ni、Mn及びCoから構成される元素であり、Mn/Niモル比は0.1以上、5以下、Co/(Mn+Ni+Co)モル比は0以上、0.35以下、M中のLiモル比は0.001以上、0.2以下である。)
 酸素含有ガス雰囲気下において、焼成温度900℃以上で焼成されたものであることを特徴とする請求項36又は37に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
 含有炭素濃度をC(重量%)とした時、C値が0.005重量%以上、0.25重量%以下であることを特徴とする請求項36ないし38のいずれか1項に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
 前記組成式(I)中のMが、下記式(II’)で表されることを特徴とする請求項37ないし39のいずれか1項に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
  M=Li z’/(2+z’) {(Ni (1+y’)/2 Mn (1-y’)/2 ) 1-x’ Co x’ } 2/(2+z’)  …(II’)
〔ただし、組成式(II’)中、
                 0.1<x’≦0.35
                -0.1≦y’≦0.1
 (1-x’)(0.02-0.98y’)≦z’≦(1-x’)(0.20-0.88y’)〕
 前記組成式(I)中のMが、下記式(II)式で表されることを特徴とする請求項37ないし39のいずれか1項に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
  M=Li z/(2+z) {(Ni (1+y)/2 Mn (1-y)/2 ) 1-x Co x } 2/(2+z)  …(II)
〔ただし、組成式(II)中、
                 0≦x≦0.1
              -0.1≦y≦0.1
 (1-x)(0.05-0.98y)≦z≦(1-x)(0.20-0.88y)〕
 CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、回折角2θが64.5°付近に存在する(110)回折ピークの半価幅をFWHM(110)とした時に、0.01≦FWHM(110)≦0.3で表されることを特徴とする請求項40又は41に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
 CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、回折角2θが64°付近に存在する(018)回折ピーク、64.5°付近に存在する(110)回折ピーク、及び68°付近に存在する(113)回折ピークにおいて、それぞれのピークトップよりも高角側に、異相由来の回折ピークを持たないか、あるいは異相由来の回折ピークを有する場合、本来の結晶相の回折ピークに対する異相ピークの積分強度比が、各々、以下の範囲内にあることを特徴とする請求項40ないし42のいずれか1項に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
   0≦I 018 * /I 018 ≦0.20
   0≦I 110 * /I 110 ≦0.25
   0≦I 113 * /I 113 ≦0.30
(ここで、I 018 、I 110 、I 113 は、それぞれ(018)、(110)、(113)回折ピークの積分強度を表し、I 018 * 、I 110 * 、I 113 * は、それぞれ(018)、(110)、(113)回折ピークのピークトップよりも高角側に現れる異相由来の回折ピークの積分強度を表す。)
 リチウム化合物と、V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,及びCuから選ばれる少なくとも1種類以上の遷移金属化合物と、添加剤1及び添加剤2とを、液体媒体中で粉砕し、これらを均一に分散させたスラリーを噴霧乾燥する噴霧乾燥工程と、得られた噴霧乾燥体を焼成する焼成工程とを含むことを特徴とする請求項1ないし43のいずれか1項に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体の製造方法。
 スラリー調整工程において、リチウム化合物と、前記遷移金属化合物と、前記添加剤1及び添加剤2とを、液体媒体中で、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって、屈折率を1.24に設定し、粒子径基準を体積基準として、5分間の超音波分散(出力30W、周波数22.5kHz)後に測定するメジアン径が0.4μm以下になるまで粉砕し、噴霧乾燥工程において、噴霧乾燥時のスラリー粘度をV(cp)、スラリー供給量をS(L/min)、ガス供給量をG(L/min)とした際、50cp≦V≦4000cp、500≦G/S≦10000となる条件で噴霧乾燥を行うことを特徴とする請求項44に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体の製造方法。
 前記遷移金属化合物として少なくともニッケル化合物,マンガン化合物及びコバルト化合物を含み、前記焼成工程において、前記噴霧乾燥体を、酸素含有ガス雰囲気下、900℃以上で焼成することを特徴とする請求項44又は45に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体の製造方法。
 リチウム化合物が炭酸リチウムであることを特徴とする請求項44ないし46のいずれか1項に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体の製造方法。
 リチウム化合物と、V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cuから選ばれる少なくとも1種類以上の遷移金属化合物と、添加剤1及び添加剤2とを、液体媒体中で粉砕し、これらを均一に分散させたスラリーを噴霧乾燥して得られる、リチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体の前駆体となる噴霧乾燥体であって、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって、屈折率を1.24に設定し、粒子径基準を体積基準として、5分間の超音波分散(出力30W、周波数22.5kHz)後に測定された該噴霧乾燥体のメジアン径が0.1μm以上、4μm以下であることを特徴とする噴霧乾燥体。
 BET比表面積が10m 2 /g以上、100m 2 /g以下であることを特徴とする請求項48に記載の噴霧乾燥体。
 請求項1ないし43のいずれか1項に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体と結着剤とを含有する正極活物質層を集電体上に有することを特徴とするリチウム二次電池用正極。
 リチウムを吸蔵・放出可能な負極、リチウム塩を含有する非水電解質、及びリチウムを吸蔵・放出可能な正極を備えたリチウム二次電池であって、正極として請求項50に記載のリチウム二次電池用正極を用いたことを特徴とするリチウム二次電池。
Description:
リチウム遷移金属系化合物粉体 その製造方法、及びその焼成前駆体となる 霧乾燥体、並びにそれを用いたリチウム二 電池用正極及びリチウム二次電池 発明の分野

 本発明は、リチウム二次電池正極材料と て用いられるリチウム遷移金属系化合物粉 、その製造方法、及びその焼成前駆体であ 噴霧乾燥体と、このリチウム遷移金属系化 物粉体を用いたリチウム二次電池用正極、 びにこのリチウム二次電池用正極を備える チウム二次電池に関する。

発明の背景

 リチウム二次電池は、エネルギー密度及 出力密度等に優れ、小型、軽量化に有効で るため、ノート型パソコン、携帯電話及び ンディビデオカメラ等の携帯機器の電源と てその需要は急激な伸びを示している。リ ウム二次電池はまた、電気自動車や電力の ードレベリング等の電源としても注目され おり、近年ではハイブリッド電気自動車用 源としての需要が急速に拡大しつつある。 に電気自動車用途においては、低コスト、 全性、寿命(特に高温下)、負荷特性に優れ ことが必要であり、材料面での改良が望ま ている。

 リチウム二次電池を構成する材料のうち、 極活物質材料としては、リチウムイオンを 離・挿入可能な機能を有する物質が使用可 である。これら正極活物質材料は種々あり それぞれ特徴を持っている。また、性能改 に向けた共通の課題として負荷特性向上が げられ、材料面での改良が強く望まれてい 。
 さらに、低コスト、安全性、寿命(特に高温 下)にも優れた、性能バランスの良い材料が められている。

 現在、リチウム二次電池用の正極活物質 料としては、スピネル構造を有するリチウ マンガン系複合酸化物、層状リチウムニッ ル系複合酸化物、層状リチウムコバルト系 合酸化物などが実用化されている。これら リチウム含有複合酸化物を用いたリチウム 次電池は、いずれも特性面で利点と欠点を する。即ち、スピネル構造を有するリチウ マンガン系複合酸化物は、安価かつ合成が 較的容易であり、電池とした時の安全性に れる一方、容量が低く、高温特性(サイクル 、保存)が劣る。層状リチウムニッケル系複 酸化物は、容量が高く、高温特性に優れる 面、合成が難しく、電池とした時の安全性 劣り、保管にも注意を要する等の欠点を抱 ている。層状リチウムコバルト系複合酸化 は、合成が容易かつ電池性能バランスが優 ているため、携帯機器用の電源として広く いられているが、安全性が不十分な点や高 ストである点が大きな欠点となっている。

 こうした現状において、これらの正極活 質材料が抱えている欠点が克服ないしは極 低減され、かつ電池性能バランスに優れる 物質材料の有力候補として、層状構造を有 るリチウムニッケルマンガンコバルト系複 酸化物が提案されている。特に近年におけ 低コスト化要求、高電圧化要求、安全化要 の高まりの中で、いずれの要求にも応え得 正極活物質材料として有望視されている。

 ただし、その低コスト化、高電圧化、及 安全性の程度は、組成比によって変化する め、更なる低コスト化、より高い上限電圧 設定しての使用、より高い安全性の要求に しては、マンガン/ニッケル原子比を概ね1 上としたり、コバルト比率を低減させたり るなど、限られた組成範囲のものを選択し 使用する必要がある。しかしながら、この うな組成範囲のリチウムニッケルマンガン バルト系複合酸化物を正極材料として使用 たリチウム二次電池は、レート・出力特性 いった負荷特性や低温出力特性が低下する め、実用化に際しては、更なる改良が必要 あった。

 なお、従来、リチウム遷移金属系化合物 対して、本発明が示すところの「添加元素1 (B、Bi)」又は「添加元素2(Mo、W)」を導入処理 た公知の文献としては、以下の特許文献1~24 及び非特許文献1~3が開示されている。

 特許文献1には、LiCoO 2 のCoの一部をBi、Bで置換したものを活物質と た正極を具備することが開示されている。

 特許文献2には、正極活物質であるLi 1-x CoO 2 にホウ素(B)を添加することで、粒子の表面が ホウ素で覆われ、高電圧でも活物質は分解さ れることがなく、優れた充放電サイクル特性 を示すことが開示されている。

 特許文献3には、層状構造の複合酸化物を 構成する元素として、ホウ素(B)やビスマス(Bi )を含むことが開示されている。

 特許文献4には、正極活物質として一般式LiB x Co( 1-x )O 2 (0.001≦x≦0.25)で示されるリチウムホウ素コバ ルト複合酸化物を用いることが開示されてい る。

 特許文献5には、リチウムニッケルコバル ト系複合酸化物の置換元素としてBが含まれ ものが開示されている。

 特許文献6には、リチウムとコバルトの複 合酸化物を主体とする正極に、Biとリチウム の複合酸化物を含むことが開示されている

 特許文献7には、式AMO 2 (A=Li、Na、M=Co、Ni、Fe、Cr)で示される組成を含 む層状構造酸化物であって、この結晶子の表 面又は結晶子間にBiやBが酸化物の形で存在す る層状構造酸化物が開示されている。

 特許文献8には、正極活物質の構成元素とし てLi、O、Mgを必須元素とし、かつ層状、もし はジグザグ層状のLiMeO 2 構造を有し、かつMeがMn、Co、Ni、Feから選ば た少なくとも1種を含み、かつLiMeO 2 構造におけるLi位置にMgが存在するものであ て、さらにMoやBi、Bを構成元素として含んだ ものが開示されている。

 特許文献9には、正極活物質の周りにB、Bi 、やMo、W等の金属間化合物又は酸化物で被覆 したものを使用することが開示されている。

 特許文献10には、リチウムを含有するCo、 Ni、Mn及びFeよりなる群から選ばれた少なくと も1種の遷移元素の酸化物からなる基体粒子 表面の一部又は全部が、Bi等の金属からなる 導電層で被覆されたものが開示されている。

 特許文献11には、B、Bi、Mo、W等の元素を 加してなるコバルト酸リチウムもしくはニ ケル酸リチウムを正極活物質として用いる とが開示されている。

 特許文献12には、マンガン酸リチウムと ッケル酸リチウムの混合物を正極活物質と て用いた二次電池において、正極電極中にBi を含むことが開示されている。

 特許文献13には、リチウムニッケルマン ンコバルト系複合酸化物の製造方法におい 、ホウ素化合物を含むことが開示されてい 。

 特許文献14には、リチウムニッケルマン ンコバルト系複合酸化物の遷移金属サイト 一部がBで置換されたものが開示されている

 特許文献15には、層状構造を有するリチ ムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物 子の表面にホウ酸リチウムを有することが 示されている。

 特許文献16には、少なくとも層状構造の チウム遷移金属複合酸化物の粒子表面に、Mo 、W、B等の化合物を有することが開示されて る。

 特許文献17には、層状構造を有するリチ ムニッケルマンガン系複合酸化物の製造方 において、リチウムとニッケルとマンガン ホウ素とを含有する混合物を焼成すること 開示されている。

 特許文献18には、スピネル型リチウムマ ガン複合酸化物の表面にタングステンを含 酸化物を修飾してなることが開示されてい 。

 特許文献19及び特許文献20には、層状構造 を有するリチウムニッケル系複合酸化物にお いて、遷移金属サイトへの置換元素としてW,M oを用いることが開示されており、これによ 、充電状態における熱安定性が向上すると 載されている。

 特許文献21には、リチウムニッケルマンガ コバルト系酸化物において、W,Moを含んだも を用いることが開示されており、これによ 、LiCoO 2 より安価かつ高容量で充電状態での熱安定性 に優れたものとなることが記載されている。

 特許文献22には、リチウムニッケルマン ンコバルト系複合酸化物において、遷移金 サイトにWを置換した実施例が開示されてい 。

 特許文献23には、単斜晶構造のリチウム ンガンニッケル系複合酸化物において、そ 遷移金属サイトにMo,Wが置換されたものを正 活物質とすることが開示されており、これ より、高エネルギー密度、高電圧で、信頼 の高いリチウム二次電池を提供することが きると記載されている。

 特許文献24には、層状構造を有するリチ ムニッケルマンガンコバルトモリブデン系 合酸化物を用いることが開示されている。

 非特許文献1には、層状構造を有するLiNi 1/3 Mn 1/3 Mo 1/3 O 2 複合酸化物が開示されている。

 非特許文献2には、LiNi 0.8 Co 0.2 O 2 が表面をLi 2 O-B 2 O 3 ガラスで被覆処理した材料が開示されている 。

 非特許文献3には、Li[Ni x Co 1-2x Mn x ]O 2 にB 2 O 3 を添加処理し、焼結添加剤の効果を調べたこ とが開示されている。

 ここで、特許文献1~7、10、12~15、17~24、及 、非特許文献1~3については、本発明に係る 加剤1と添加剤2との併用添加に関する記載 なく、本発明の目的を達成することは困難 ある。

 また、特許文献8、9、11、16には、添加元 1と添加元素2の双方を含む旨の記載がなさ ており、このうち、特許文献8によれば、添 元素1としてB、添加元素2としてMoを併用し 実施例の記載があるが、これら元素の合計 が2モル%と多すぎることに加え、LiサイトにM gが存在することを必須としているため、充 電時におけるリチウムの挿入・脱離反応が 害されやすく、十分な性能改善が図られな という問題があった。

 特許文献9、11には、添加元素1と添加元素 2の双方の記載があるが、実際に双方を併用 た正極活物質の記載はない。また、本発明 ような正極活物質が高負荷特性を発現する とは、記載も示唆もされていない。

 特許文献16によれば、添加元素1として、B、 添加元素2として、Mo又はWの記載があるが、 際に双方を併用した正極活物質の記載はな 。

特開平4-253162号

特開平4-328258号

特開平5-54889号

特開平5-325971号

特開平8-213052号

特開平5-47384号

特開平8-55624号

特開平10-241691号

特開平11-16566号

特開2000-48820号

特開2000-113884号

特開2002-260632号

特開2002-304993号

特開2003-31219号

特開2004-335278号

特開2005-251716号

特開2004-152753号

特開2005-320184号

特許第3088716号

特許第3362025号

WO2002-041419号

特開2004-303673号

特開2005-235628号

特開2006-164934号 Microelectronics Journal,36(2005)491. J.Power Sources,102(2001)162. J.Electrochem.Soc.,151(2004)A1789.

発明の概要

 本発明者らは、レート・出力特性といった 荷特性向上という課題を解決するためには 活物質を焼成する段階において十分に結晶 の高いものとしつつも粒成長及び焼結を抑 て微細な粒子を得ることが重要と考え、鋭 検討した結果、とりわけ層状リチウムニッ ルマンガンコバルト系複合酸化物において MoやW等の元素を含有する化合物を添加後、 定以上の温度で焼成することにより、粒成 及び焼結の抑えられた微細な粒子からなる チウム遷移金属系化合物粉体が得られるこ を見出し、リチウム二次電池正極材料とし 、低コスト化、耐高電圧化、高安全化に加 、レートや出力特性といった負荷特性の向 との両立が可能なものとした。
 しかしながら、この方法では嵩密度の低下 比表面積の増大といった物性変化が起こる め、粉体としての取り扱いや電極調製が困 になるという新たな課題に直面した。

 従って、本発明の目的は、リチウム二次 池正極材料としての使用において、レート 出力特性といった負荷特性の向上を図りつ 粉体物性の改善を図り、さらに好ましくは コスト化、耐高電圧化及び高安全性化との 立が可能なリチウム二次電池正極材料用リ ウム遷移金属系化合物粉体及びその製造方 と、このリチウム遷移金属系化合物粉体を いたリチウム二次電池用正極、並びにこの チウム二次電池用正極を備えるリチウム二 電池を提供することにある。

 本発明者らは、レート・出力特性といっ 負荷特性の向上を図りつつ粉体物性の改善 図るという課題を解決するために、嵩密度 向上や比表面積の最適化をはかるべく鋭意 討を重ねた結果、B、Biから選ばれる少なく も1種以上の元素を含有する化合物と、Mo、W から選ばれる少なくとも1種以上の元素を含 する化合物をそれぞれ1種以上、規定の割合 併用添加した後、焼成することにより、前 の改善効果を損なうことなく、取り扱いや 極調製の容易なリチウム含有遷移金属系化 物粉体を得ることができ、リチウム二次電 正極材料として、優れた粉体物性と高い負 特性、耐高電圧性、高安全性を示し、低コ ト化が可能なリチウム遷移金属系化合物粉 を得ることができること、また、このよう リチウム遷移金属系化合物粉体は、表面増 ラマン分光スペクトルにおいて特長的なピ クを有することを見出し、本発明を完成す に至った。

 即ち、第1態様のリチウム二次電池正極材料 用リチウム遷移金属系化合物粉体は、リチウ ムイオンの挿入・脱離が可能な機能を有する リチウム遷移金属系化合物を主成分とし、表 面増強ラマン分光スペクトルにおいて、800cm -1 以上、900cm -1 以下にピークAを有することを特徴とする。

 ここで、このリチウム遷移金属系化合物粉 は、表面増強ラマン分光スペクトルにおい 、ピークAの半値幅が30cm -1 以上であることが好ましい。

 また、このリチウム遷移金属系化合物粉体 、表面増強ラマン分光スペクトルにおいて 600±50cm -1 付近のピークBの強度に対するピークAの強度 、0.04より大きいことが好ましい。

 また、このリチウム遷移金属系化合物粉 は、飛行時間型二次イオン質量分析におい 、添加元素間、又は、添加元素と正極活物 を構成する元素とが結合したフラグメント 由来するピークが観察されることがことが ましい。

 第2の態様に係る本発明のリチウム二次電池 正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体は 、飛行時間型二次イオン質量分析において、 BWO 5 - 及びM’BWO 6 - (M’は、2価の状態を取りうる元素である)、 は、BWO 5 - 及びLi 2 BWO 6 - に由来するピークが観察されることを特徴と する。

 また、第3の態様に係る本発明のリチウム 二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合 物粉体は、リチウムイオンの挿入・脱離が可 能な機能を有するリチウム遷移金属系化合物 を主成分とし、該主成分原料に、B及びBiから 選ばれる少なくとも1種以上の元素(以下「添 元素1」と称す。)を含有する化合物(以下「 加剤1」と称す。)と、Mo及びWから選ばれる なくとも1種以上の元素(以下「添加元素2」 称す。)を含有する化合物(以下「添加剤2」 称す。)をそれぞれ1種以上、主成分原料中の 遷移金属元素の合計モル量に対して、添加剤 1と添加剤2の合計で0.01モル%以上、2モル%未満 の割合で併用添加した後、焼成されたもので あることを特徴とする。

 ここで、このリチウム遷移金属系化合物 体は、添加剤1が、ホウ酸、オキソ酸塩、酸 化物及び水酸化物から選択されたものである ことが好ましい。

 また、このリチウム遷移金属系化合物粉 は、添加剤2が酸化物であることが好ましい 。

 また、このリチウム遷移金属系化合物粉 は、添加剤1と添加剤2の添加割合が、10:1~1:2 0(モル比)の範囲であることが好ましい。

 また、一次粒子の表面部分の、Liと前記 加元素1及び添加元素2以外の金属元素の合計 に対する該添加元素1の合計の原子比が、粒 全体の該原子比の20倍以上であることが好ま しい。

 また、一次粒子の表面部分の、Liと前記 加元素1及び添加元素2以外の金属元素の合計 に対する該添加元素2の合計の原子比が、粒 全体の該原子比の3倍以上であることが好ま い。

 また、第1~第3態様のリチウム遷移金属系 合物粉体は、レーザー回折/散乱式粒度分布 測定装置によって、屈折率を1.24に設定し、 子径基準を体積基準として、5分間の超音波 散(出力30W、周波数22.5kHz)後に測定されたメ アン径が2μm以上、8μm以下であることが好 しい。

 また、第3態様のリチウム遷移金属系化合 物粉体は、一次粒子の平均径が0.1μm以上、2μ m以下であることが好ましい。

 また、第1~第3態様のリチウム遷移金属系化 物粉体は、BET比表面積が0.5m 2 /g以上、3m 2 /g以下であることが好ましい。

 また、第1~第3態様のリチウム遷移金属系化 物粉体は、水銀圧入法による水銀圧入曲線 おいて、圧力3.86kPaから413MPaまでの昇圧時に おける水銀圧入量が、0.4cm 3 /g以上、1.5cm 3 /g以下であることが好ましい。

 また、第1~第3態様のリチウム遷移金属系化 物粉体は、水銀圧入法による細孔分布曲線 、細孔半径300nm以上、1500nm以下にピークト プが存在するメインピークを少なくとも1つ 上有し、かつ細孔半径80nm以上、300nm未満に ークトップが存在するサブピークを有する とが好ましく、この場合において、水銀圧 法による細孔分布曲線において、細孔半径3 00nm以上、1500nm以下にピークトップが存在す ピークに係る細孔容量が0.3cm 3 /g以上、0.8cm 3 /g以下であり、かつ細孔半径80nm以上、300nm未 にピークトップが存在するサブピークに係 細孔容量が0.01cm 3 /g以上、0.3cm 3 /g以下であることが好ましい。

 また、第1~第3態様のリチウム遷移金属系 合物粉体は、水銀圧入法による細孔分布曲 が、細孔半径400nm以上、1500nm以下にピーク ップが存在するメインピークを少なくとも1 以上有し、かつ細孔半径300nm以上、400nm未満 にピークトップが存在するサブピークを有す ることが好ましい。

 また、第1~第3態様のリチウム遷移金属系化 物粉体は、嵩密度が1.2g/cm 3 以上、2.0g/cm 3 以下であることが好ましい。

 また、第1~第3態様のリチウム遷移金属系化 物粉体は、40MPaの圧力で圧密した時の体積 抗率が1×10 3 ω・cm以上、1×10 7 ω・cm以下であることが好ましい。

 また、第1~第3態様のリチウム遷移金属系 合物粉体は、層状構造に帰属する結晶構造 含んで構成されるリチウムニッケルマンガ コバルト系複合酸化物を主成分としたもの あることが好ましい。

 さらに、前記リチウム遷移金属系化合物粉 は、組成が、下記組成式(I)で示されるもの 好ましい。
        LiMO 2  …(I)
 ただし、上記式(I)中、Mは、Li、Ni及びMn、或 いは、Li、Ni、Mn及びCoから構成される元素で り、Mn/Niモル比は0.1以上、5以下、Co/(Mn+Ni+Co) モル比は0以上、0.35以下、M中のLiモル比は0.00 1以上、0.2以下である。

 また、組成が前記組成式(I)で示される本 明のリチウム遷移金属系複合酸化物粉体は 酸素含有ガス雰囲気下において、焼成温度9 00℃以上で焼成されたものであることが好ま い。

 また、組成が前記組成式(I)で示される本 明のリチウム遷移金属系複合酸化物粉体は その含有炭素濃度をC(重量%)とした時、C値 0.005重量%以上、0.25重量%以下であることが好 ましい。

 さらに、組成が前記組成式(I)で示されるリ ウム遷移金属系複合酸化物粉体は、Mが、下 記式(II’)で表されることが好ましい。
  M=Li z’/(2+z’) {(Ni (1+y’)/2 Mn (1-y’)/2 ) 1-x’ Co x’ } 2/(2+z’)  …(II’)
〔ただし、組成式(II’)中、
               0.1<x’≦0.35
              -0.1≦y’≦0.1
 (1-x’)(0.02-0.98y’)≦z’≦(1-x’)(0.20-0.88y’)

 さらに、組成が前記組成式(I)で示されるリ ウム遷移金属系複合酸化物粉体は、Mが、下 記式(II)で表される組成であることが好まし 。
  M=Li z/(2+z) {(Ni (1+y)/2 Mn (1-y)/2 ) 1-x Co x } 2/(2+z)  …(II)
〔ただし、組成式(II)中、
                 0≦x≦0.1
              -0.1≦y≦0.1
 (1-x)(0.05-0.98y)≦z≦(1-x)(0.20-0.88y)〕

 また、前記組成式(I)のMが、前記(II)式で されるリチウムニッケルマンガンコバルト 複合酸化物粉体について、CuKα線を使用した 粉末X線回折測定において、回折角2θが64.5° 近に存在する(110)回折ピークの半価幅をFWHM(1 10)とした時に、0.01≦FWHM(110)≦0.3で表される とが好ましい。

 また、前記組成式(I)のMが、前記(II)式で示 れるリチウムニッケルマンガンコバルト系 合酸化物粉体を、CuKα線を使用した粉末X線 折測定において、回折角2θが64°付近に存在 る(018)回折ピーク、64.5°付近に存在する(110) 回折ピーク、及び68°付近に存在する(113)回折 ピークにおいて、それぞれのピークトップよ りも高角側に、異相由来の回折ピークを持た ないか、あるいは異相由来の回折ピークを有 する場合、本来の結晶相の回折ピークに対す る異相ピークの積分強度比が、各々、以下の 範囲内にあることが好ましい。
   0≦I 018 * /I 018 ≦0.20
   0≦I 110 * /I 110 ≦0.25
   0≦I 113 * /I 113 ≦0.30
(ここで、I 018 、I 110 、I 113 は、それぞれ(018)、(110)、(113)回折ピークの積 分強度を表し、I 018 * 、I 110 * 、I 113 * は、それぞれ(018)、(110)、(113)回折ピークのピ ークトップよりも高角側に現れる異相由来の 回折ピークの積分強度を表す。)。

 第4態様のリチウム二次電池正極材料用リ チウム遷移金属系化合物粉体の製造方法は、 このような本発明のリチウム遷移金属系化合 物粉体を製造する方法であって、リチウム化 合物と、V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,及びCuから選ばれる少 くとも1種類以上の遷移金属化合物と、添加 1及び添加剤2とを、液体媒体中で粉砕し、 れらを均一に分散させたスラリーを噴霧乾 する噴霧乾燥工程と、得られた噴霧乾燥体 焼成する焼成工程とを含むことを特徴とす 。

 第4態様のリチウム遷移金属系化合物粉体 の製造方法においては、スラリー調整工程に おいて、リチウム化合物と、前記遷移金属化 合物と、前記添加剤1と添加剤2とを、液体媒 中で、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装 置によって、屈折率を1.24に設定し、粒子径 準を体積基準として、5分間の超音波分散(出 力30W、周波数22.5kHz)後に測定するメジアン径 0.4μm以下になるまで粉砕し、噴霧乾燥工程 おいて、噴霧乾燥時のスラリー粘度をV(cp) スラリー供給量をS(L/min)、ガス供給量をG(L/mi n)とした際、50cp≦V≦4000cp、500≦G/S≦10000とな る条件で噴霧乾燥を行うことが好ましい。

 また、第4態様のリチウム遷移金属系化合 物粉体の製造方法において、前記遷移金属化 合物として少なくともニッケル化合物,マン ン化合物及びコバルト化合物を含み、前記 成工程において、前記噴霧乾燥体を、酸素 有ガス雰囲気下、900℃以上で焼成すること 好ましい。

 また、第4態様のリチウム遷移金属系化合 物粉体の製造方法において、使用するリチウ ム化合物原料は炭酸リチウムであることが好 ましい。

 さらに、第5態様のリチウム二次電池正極 材料用リチウム遷移金属系化合物粉体の前駆 体である噴霧乾燥体は、リチウム化合物と、 V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cuから選ばれる少なくとも1種類 上の遷移金属化合物と、添加剤1及び添加剤 2とを、液体媒体中で粉砕し、これらを均一 分散させたスラリーを噴霧乾燥して得られ 、リチウム二次電池正極材料用リチウム遷 金属系化合物粉体の前駆体となる噴霧乾燥 であって、レーザー回折/散乱式粒度分布測 装置によって、屈折率を1.24に設定し、粒子 径基準を体積基準として、5分間の超音波分 (出力30W、周波数22.5kHz)後に測定された該噴 乾燥体のメジアン径が0.1μm以上、4μm以下で ることを特徴とする。

 また、第5態様のリチウム遷移金属系化合物 の噴霧乾燥体は、BET比表面積が10m 2 /g以上、100m 2 /g以下であることが好ましい。

 第6態様のリチウム二次電池用正極は、前 記の第1~第3態様のリチウム遷移金属系化合物 粉体と結着剤とを含有する正極活物質層を集 電体上に有することを特徴とする。

 第7態様のリチウム二次電池は、リチウム を吸蔵・放出可能な負極、リチウム塩を含有 する非水電解質、及びリチウムを吸蔵・放出 可能な正極を備えたリチウム二次電池であっ て、正極として、このような第6態様のリチ ム二次電池用正極を用いたことを特徴とす 。

 第1~第3態様のリチウム二次電池正極材料 リチウム遷移金属系化合物粉体は、リチウ 二次電池正極材料として用いた場合、低コ ト化及び高安全性化と高負荷特性、粉体取 扱い性向上の両立を図ることができる。こ ため、本発明によれば、安価で取り扱い性 優れ、安全性が高く、しかも高い充電電圧 使用しても、性能の優れたリチウム二次電 が提供される。

実施例1において、製造されたリチウム ニッケルマンガンコバルト複合酸化物粉体の 細孔分布曲線を示すグラフである。 実施例2において、製造されたリチウム ニッケルマンガンコバルト複合酸化物粉体の 細孔分布曲線を示すグラフである。 実施例3において、製造されたリチウム ニッケルマンガンコバルト系複合酸化物粉体 の細孔分布曲線を示すグラフである。 実施例4において、製造されたリチウム ニッケルマンガンコバルト系複合酸化物の粉 体の細孔分布曲線を示すグラフである。 実施例5において、製造されたリチウム ニッケルマンガンコバルト系複合酸化物の粉 体の細孔分布曲線を示すグラフである。 比較例1において、製造されたリチウム ニッケルマンガンコバルト複合酸化物粉体の 細孔分布曲線を示すグラフである。 比較例2において、製造されたリチウム ニッケルマンガンコバルト複合酸化物粉体の 細孔分布曲線を示すグラフである。 比較例3において、製造されたリチウム ニッケルマンガンコバルト複合酸化物の粉体 の細孔分布曲線を示すグラフである。 比較例4において、製造されたリチウム ニッケルマンガンコバルト複合酸化物の粉体 の細孔分布曲線を示すグラフである。 比較例5において、製造されたリチウ ニッケルマンガンコバルト複合酸化物の粉 の細孔分布曲線を示すグラフである。 比較例6において、製造されたリチウ ニッケルマンガンコバルト複合酸化物の粉 の細孔分布曲線を示すグラフである。 比較例7において、製造されたリチウ ニッケルマンガンコバルト複合酸化物の粉 の細孔分布曲線を示すグラフである。 実施例1において、製造されたリチウ ニッケルマンガンコバルト複合酸化物のSEM 像(写真)(倍率×10,000)である。 実施例2において、製造されたリチウ ニッケルマンガンコバルト複合酸化物のSEM 像(写真)(倍率×10,000)である。 実施例3において、製造されたリチウ ニッケルマンガンコバルト系複合酸化物のSE M画像(写真)(倍率×10,000)である。 実施例4において、製造されたリチウ ニッケルマンガンコバルト系複合酸化物のSE M画像(写真)(倍率×10,000)である。 実施例5において、製造されたリチウ ニッケルマンガンコバルト系複合酸化物のSE M画像(写真)(倍率×10,000)である。 比較例1において、製造されたリチウ ニッケルマンガンコバルト複合酸化物のSEM 像(写真)(倍率×10,000)である。 比較例2において、製造されたリチウ ニッケルマンガンコバルト複合酸化物のSEM 像(写真)(倍率×10,000)である。 比較例3において、製造されたリチウ ニッケルマンガンコバルト複合酸化物のSEM 像(写真)(倍率×10,000)である。 比較例4において、製造されたリチウ ニッケルマンガンコバルト複合酸化物のSEM 像(写真)(倍率×10,000)である。 比較例5において、製造されたリチウ ニッケルマンガンコバルト複合酸化物のSEM 像(写真)(倍率×10,000)である。 比較例6において、製造されたリチウ ニッケルマンガンコバルト複合酸化物のSEM 像(写真)(倍率×10,000)である。 比較例7において、製造されたリチウ ニッケルマンガンコバルト複合酸化物のSEM 像(写真)(倍率×10,000)である。 実施例1において、製造されたリチウ ニッケルマンガンコバルト複合酸化物のXRD ターンを示すグラフである。 実施例2において、製造されたリチウ ニッケルマンガンコバルト複合酸化物のXRD ターンを示すグラフである。 実施例3において、製造されたリチウ ニッケルマンガンコバルト系複合酸化物のXR Dパターンを示すグラフである。 実施例4において、製造されたリチウ ニッケルマンガンコバルト系複合酸化物のXR Dパターンを示すグラフである。 実施例5において、製造されたリチウ ニッケルマンガンコバルト系複合酸化物のXR Dパターンを示すグラフである。 比較例1において、製造されたリチウ ニッケルマンガンコバルト複合酸化物のXRD ターンを示すグラフである。 比較例2において、製造されたリチウ ニッケルマンガンコバルト複合酸化物のXRD ターンを示すグラフである。 比較例3において、製造されたリチウ ニッケルマンガンコバルト複合酸化物のXRD ターンを示すグラフである。 比較例4において、製造されたリチウ ニッケルマンガンコバルト複合酸化物のXRD ターンを示すグラフである。 比較例5において、製造されたリチウ ニッケルマンガンコバルト複合酸化物のXRD ターンを示すグラフである。 比較例6において、製造されたリチウ ニッケルマンガンコバルト複合酸化物のXRD ターンを示すグラフである。 比較例7において、製造されたリチウ ニッケルマンガンコバルト複合酸化物のXRD ターンを示すグラフである。 実施例1で得られたリチウム遷移金属 化合物粉体のSERSパターンを示すグラフであ 。 実施例2で得られたリチウム遷移金属 化合物粉体のSERSパターンを示すグラフであ 。 実施例3で得られたリチウム遷移金属 化合物粉体のSERSパターンを示すグラフであ 。 実施例4で得られたリチウム遷移金属 化合物粉体のSERSパターンを示すグラフであ 。 実施例5で得られたリチウム遷移金属 化合物粉体のSERSパターンを示すグラフであ 。 実施例1で得られたリチウム遷移金属 化合物粉体のToF-SIMSパターンを示すグラフで ある。

詳細な説明

 以下、本発明の実施の形態について詳細 説明するが、以下に記載する構成要件の説 は、本発明の実施態様の一例(代表例)であ 、これらの内容に特定はされない。

 [リチウム遷移金属系化合物粉体]
 本発明のリチウム二次電池正極材料用リチ ム遷移金属系化合物粉体(以下「本発明の正 極活物質」と称す場合がある。)は、上記で したように、表面増強ラマン分光スペクト において、800cm -1 以上、900cm -1 以下にピークAを有することを特徴とする。

 ここで、表面増強ラマン分光法(以下SERS 略す)は、試料表面に銀などの貴金属をごく く海島状に蒸着することにより、試料最表 の分子振動に由来するラマンスペクトルを 択的に増幅する手法である。通常のラマン 光法における検出深さはおおよそ0.1~1μm程 とされているが、SERSでは貴金属粒子に接し 表層部分の信号が大部分を占めることとな 。

 本発明においては、SERSスペクトルにおいて 、800cm -1 以上、かつ、900cm -1 以下にピークAを有する。ピークAの位置は、 常800cm -1 以上、好ましくは810cm -1 以上、より好ましくは820cm -1 以上、さらに好ましくは830cm -1 以上、最も好ましくは840cm -1 以上であり、通常900cm -1 以下、好ましくは895cm -1 以下、より好ましくは890cm -1 以下、最も好ましくは885cm -1 以下である。この範囲を逸脱すると、本発明 の効果が十分に得られない可能性がある。

 また、本発明の正極活物質は、上記で示し ように、SERSにおいて、上記ピークAの半値 が30cm -1 以上であることが好ましく、60cm -1 以上であることがさらに好ましい。このよう な半値幅を有するブロードなピークの帰属の 原因は、添加元素が正極活物質中の元素との 相互作用により化学的に変化したものに由来 すると推察され、ピークAの半値幅が上記範 を逸脱する場合、すなわち添加元素と正極 物質中の元素の相互作用が小さい場合は、 発明の効果が十分に得られない可能性があ 。なお、ここでいう添加元素は、後述する 加元素と同義である。

 さらに、本発明の正極活物質は、上記で示 たように、SERSにおいて600±50cm -1 のピークBの強度に対するピークAの強度が0.04 より大きいことが好ましく、0.05以上である とがさらに好ましい。ここで、600±50cm -1 のピークBは、M''O 6 (M''は正極活物質中の金属元素である)の伸縮 動に由来するピークである。ピークBに対す るピークAの強度が小さい場合、本発明の効 が十分に得られない可能性がある。

 加えて、本発明の正極活物質は、上記で したように、飛行時間型二次イオン質量分 (以下ToF-SIMSと略す)において、添加元素間、 又は、添加元素と正極活物質を構成する元素 が結合したフラグメントに由来するピークが 観測されることが好ましい。

 ここで、ToF-SIMSは、試料にイオンビーム 照射して発生する二次イオンを飛行時間型 量分析器によって検出し、試料最表面に存 する化学種を推定する手法である。この方 により、表層付近に存在する添加元素の分 状態を推察することができる。添加元素間 又は、添加元素と正極活物質中の元素が結 したフラグメントに由来するピークを有さ い場合には、添加元素の分散が十分でなく 本発明の効果が十分に得られない可能性が る。

 ところで、本発明のリチウム二次電池正極 料用リチウム遷移金属系化合物粉体は、ToF- SIMSにおいて、添加元素として、B及びWを用い たとき、BWO 5 - 及びM’BWO 6 - (M’は2価の状態を取りうる元素である)、又 、BWO 5 - 及びLi 2 BWO 6 - に由来するピークが観測されることを特徴と する。上記のピークが観測されない場合、添 加元素の分散が十分でなく、本発明の効果が 十分に得られない可能性がある。

 本発明の正極活物質は、リチウムイオン 挿入・脱離が可能な機能を有するリチウム 移金属系化合物を主成分とし、該主成分原 に、B及びBiから選ばれる少なくとも1種以上 の元素(以下「添加元素1」と称す。)を含有す る化合物(以下「添加剤1」と称す。)と、Mo及 Wから選ばれる少なくとも1種以上の元素(以 「添加元素2」と称す。)を含有する化合物( 下「添加剤2」と称す。)をそれぞれ1種以上 主成分原料中の遷移金属元素の合計モル量 対して、添加剤1と添加剤2の合計で0.01モル% 以上、2モル%未満の割合で併用添加した後、 成されたものであることを特徴とする。

 〈リチウム含有遷移金属化合物〉
 本発明のリチウム遷移金属系化合物とは、L iイオンを脱離、挿入することが可能な構造 有する化合物であり、例えば、硫化物やリ 酸塩化合物、リチウム遷移金属複合酸化物 どが挙げられる。硫化物としては、TiS 2 やMoS 2 などの二次元層状構造をもつ化合物や、一般 式Me x Mo 6 S 8 (MeはPb,Ag,Cuをはじめとする各種遷移金属)で表 される強固な三次元骨格構造を有するシュブ レル化合物などが挙げられる。リン酸塩化合 物としては、オリビン構造に属するものが挙 げられ、一般的にはLiMePO 4 (Meは少なくとも1種以上の遷移金属)で表され 具体的にはLiFePO 4 、LiCoPO 4 、LiNiPO 4 、LiMnPO 4 などが挙げられる。リチウム遷移金属複合酸 化物としては、三次元的拡散が可能なスピネ ル構造や、リチウムイオンの二次元的拡散を 可能にする層状構造に属するものが挙げられ る。スピネル構造を有するものは、一般的に LiMe 2 O 4 (Meは少なくとも1種以上の遷移金属)と表され 具体的にはLiMn 2 O 4 、LiCoMnO 4 、LiNi 0.5 Mn 1.5 O 4 、CoLiVO 4 などが挙げられる。層状構造を有するものは 、一般的にLiMeO 2 (Meは少なくとも1種以上の遷移金属)と表され 具体的にはLiCoO 2 、LiNiO 2 、LiNi 1-x Co x O 2 、LiNi 1-x-y Co x Mn y O 2 、LiNi 0.5 Mn 0.5 O 2 、Li 1.2 Cr 0.4 Mn 0.4 O 2 、Li 1.2 Cr 0.4 Ti 0.4 O 2 、LiMnO 2 などが挙げられる。

 本発明のリチウム遷移金属系化合物粉体 、リチウムイオン拡散の点からオリビン構 、スピネル構造、層状構造に帰属する結晶 造を含んで構成されるものが好ましい。中 も層状構造に帰属する結晶構造を含んで構 されるものが特に好ましい。

 また、本発明のリチウム遷移金属系化合 粉体は、異元素が導入されてもよい。異元 としては、Na,Mg,Al,Si,K,Ca,Ti,V,Cr,Fe,Cu,Zn,Ga,Ge,Sr, Y,Zr,Nb,Ru,Rh,Pd,Ag,In,Sn,Sb,Te,Ba,Ta,Re,Os,Ir,Pt,Au,Pb,La,C e,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,N,F,P,S,Cl,Br,Iの何 か1種以上の中から選択される。これらの異 元素は、リチウムニッケルマンガンコバルト 系複合酸化物の結晶構造内に取り込まれてい てもよく、あるいは、リチウムニッケルマン ガンコバルト系複合酸化物の結晶構造内に取 り込まれず、その粒子表面や結晶粒界などに 単体もしくは化合物として偏在していてもよ い。

 本発明では、添加元素1として、B及びBiか ら選ばれる少なくとも1種以上を用いること 特徴としている。これらの添加元素1の中で 、工業原料として安価に入手でき、かつ軽 素である点から、添加元素1がBであること 好ましい。

 添加元素1を含有する化合物(添加剤1)の種 類としては、本発明の効果を発現するもので あればその種類に格別の制限はないが、通常 はホウ酸、オキソ酸の塩類、酸化物、水酸化 物などが用いられる。これらの添加剤1の中 も、工業原料として安価に入手できる点か 、ホウ酸、酸化物であることが好ましく、 ウ酸であることが特に好ましい。

 添加剤1の例示化合物としては、BO、B 2 O 2 、B 2 O 3 、B 4 O 5 、B 6 O、B 7 O、B 13 O 2 、LiBO 2 、LiB 5 O 8 、Li 2 B 4 O 7 、HBO 2 、H 3 BO 3 、B(OH) 3 、B(OH) 4 、BiBO 3 、Bi 2 O 3 、Bi 2 O 5 、Bi(OH) 3 などが挙げられ、工業原料として比較的安価 かつ容易に入手できる点から、好ましくはB 2 O 3 、H 3 BO 3 、Bi 2 O 3 が挙げられ、特に好ましくは、H 3 BO 3 が挙げられる。これらの添加剤1は1種を単独 用いても良く、2種以上を混合して用いても 良い。

 本発明では、添加元素2として、Mo及びWか ら選ばれる少なくとも1種以上を用いること 特徴としている。これらの添加元素2の中で 、効果が大きい点から、添加元素2がWであ ことが好ましい。

 添加元素2を含有する化合物(添加剤2)の種 類としては、本発明の効果を発現するもので あればその種類に格別の制限はないが、通常 は酸化物が用いられる。

 添加剤2の例示化合物としては、MoO、MoO 2 、MoO 3 、MoO x 、Mo 2 O 3 、Mo 2 O 5 、Li 2 MoO 4 、WO、WO 2 、WO 3 、WO x 、W 2 O 3 、W 2 O 5 、W 18 O 49 、W 20 O 58 、W 24 O 70 ,W 25 O 73 、W 40 O 118 、Li 2 WO 4 などが挙げられ、工業原料として比較的入手 し易い、又はリチウムを包含するといった点 から、好ましくはMoO 3 、Li 2 MoO 4 、WO 3 、Li 2 WO 4 が挙げられ、特に好ましくはWO 3 が挙げられる。これらの添加剤2は1種を単独 用いても良く、2種以上を混合して用いても 良い。

 添加剤1と添加剤2の合計の添加量の範囲 しては、主成分を構成する遷移金属元素の 計モル量に対して、通常0.01モル%以上、2モ %未満、好ましくは0.03モル%以上、1.8モル%以 、より好ましくは0.04モル%以上、1.6モル%以 、特に好ましくは0.05モル%以上、1.5モル%以 である。下限を下回ると、前記効果が得ら なくなる可能性があり、上限を超えると電 性能の低下を招く可能性がある。

 添加剤1と添加剤2の添加割合の範囲とし は、モル比で、通常10:1以上、1:20以下、好ま しくは5:1以上、1:15以下、より好ましくは2:1 上、1:10以下、特に好ましくは1:1以上、1:5以 である。この範囲を逸脱すると、本発明の 果を得にくくなる虞がある。

 本発明のリチウム遷移金属系化合物粉体 、その一次粒子の表面部分に、添加剤由来 元素(添加元素)、即ち、B、Bi(添加元素1)並 にMo、W(添加元素2)から選ばれる少なくとも1 以上の元素が濃化して存在していることが 徴である。具体的には、一次粒子の表面部 の、Liと添加元素1及び添加元素2以外の金属 元素(即ち、Liと添加元素1と添加元素2以外の 属元素)の合計に対する添加元素1の合計の ル比が、通常、粒子全体の該原子比の20倍以 上である。この比率の下限は30倍以上である とが好ましく、40倍以上であることがより ましく、50倍以上であることが特に好ましい 。上限は通常、特に制限されないが、500倍以 下であることが好ましく、400倍以下であるこ とがより好ましく、300倍以下であることが特 に好ましく、200倍以下であることが最も好ま しい。この比率が小さすぎると粉体物性の改 善効果が小さく、反対に大きすぎると電池性 能の悪化を招く場合がある。

 また、一次粒子の表面部分のLiと添加元 1及び添加元素2以外の金属元素(即ち、Liと添 加元素1と添加元素2以外の金属元素)の合計に 対する添加元素2のモル比は、通常、粒子全 の該原子比の3倍以上である。この比率の下 は4倍以上であることが好ましく、5倍以上 あることがより好ましく、6倍以上であるこ が特に好ましい。上限は通常、特に制限さ ないが、150倍以下であることが好ましく、1 00倍以下であることがより好ましく、50倍以 であることが特に好ましく、30倍以下である ことが最も好ましい。この比率が小さすぎる と電池性能の改善効果が小さく、反対に大き すぎると電池性能の悪化を招く場合がある。

 リチウム遷移金属系化合物粉体の一次粒 の表面部分の組成の分析は、X線光電子分光 法(XPS)により、X線源として単色光AlKαを用い 分析面積0.8mm径、取り出し角65°の条件で行 。一次粒子の組成により、分析可能な範囲( 深さ)は異なるが、通常0.1nm以上50nm以下、特 正極活物質においては通常1nm以上10nm以下と る。従って、本発明において、リチウム遷 金属系化合物粉体の一次粒子の表面部分と 、この条件において測定可能な範囲を示す

 〈メジアン径及び90%積算径(D 90 )〉
 本発明のリチウム遷移金属系化合物粉体の ジアン径は通常2μm以上、好ましくは2.5μm以 上、より好ましくは3μm以上、更に好ましく 3.5μm以上、最も好ましくは4μm以上で、通常8 μm以下、好ましくは7.5μm以下、より好ましく は7μm以下、更に好ましくは6.5μm以下、最も ましくは6μm以下である。メジアン径がこの 限を下回ると、正極活物質層形成時の塗布 に問題を生ずる可能性があり、上限を超え と電池性能の低下を来たす可能性がある。

 また、本発明のリチウムリチウム遷移金属 化合物粉体の二次粒子の90%積算径(D 90 )は通常15μm以下、好ましくは12μm以下、より ましくは10μm以下、最も好ましくは8μm以下 、通常3μm以上、好ましくは4μm以上、より ましくは5μm以上、最も好ましくは6μm以上で ある。90%積算径(D 90 )が上記上限を超えると電池性能の低下を来 す可能性があり、下限を下回ると正極活物 層形成時の塗布性に問題を生ずる可能性が る。

 なお、本発明において、平均粒子径として メジアン径及び90%積算径(D 90 )は、公知のレーザー回折/散乱式粒度分布測 装置によって、屈折率1.24を設定し、粒子径 基準を体積基準として測定されたものである 。本発明では、測定の際に用いる分散媒とし て、0.1重量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水 液を用い、5分間の超音波分散(出力30W、周波 数22.5kHz)後に測定を行った。

 〈平均一次粒子径〉
 本発明のリチウムリチウム遷移金属系化合 粉体の平均径(平均一次粒子径)としては、 に限定されないが、下限としては、好まし は0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、最 好ましくは0.3μm以上、また、上限としては 好ましくは2μm以下、より好ましくは1.5μm以 、さらに好ましくは1μm以下、最も好ましく は0.9μm以下である。平均一次粒子径が、上記 上限を超えると、粉体充填性に悪影響を及ぼ したり、比表面積が低下したりするために、 レート特性や出力特性等の電池性能が低下す る可能性が高くなる可能性がある。上記下限 を下回ると結晶が未発達であるために充放電 の可逆性が劣る等の問題を生ずる可能性があ る。

 なお、本発明における平均一次粒子径は 走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した平均径で り、30,000倍のSEM画像を用いて、10~30個程度の 一次粒子の粒子径の平均値として求めること ができる。

 〈BET比表面積〉
 本発明のリチウムリチウム遷移金属系化合 粉体はまた、BET比表面積が、通常0.5m 2 /g以上、好ましくは0.6m 2 /g以上、更に好ましくは0.8m 2 /g以上、最も好ましくは1.0m 2 /g以上で、通常3m 2 /g以下、好ましくは2.8m 2 /g以下、更に好ましくは2.5m 2 /g以下、最も好ましくは2.0m 2 /g以下である。BET比表面積がこの範囲よりも さいと電池性能が低下しやすく、大きいと 密度が上がりにくくなり、正極活物質形成 の塗布性に問題が発生しやすくなる可能性 ある。

 なお、BET比表面積は、公知のBET式粉体比 面積測定装置によって測定できる。本発明 は、大倉理研製:AMS8000型全自動粉体比表面 測定装置を用い、吸着ガスに窒素、キャリ ガスにヘリウムを使用し、連続流動法によ BET1点式法測定を行った。具体的には粉体試 を混合ガスにより150℃の温度で加熱脱気し 次いで液体窒素温度まで冷却して混合ガス 吸着させた後、これを水により室温まで加 して吸着された窒素ガスを脱着させ、その を熱伝導検出器によって検出し、これから 料の比表面積を算出した。

〈水銀圧入法による細孔特性〉
 本発明のリチウム二次電池正極材料用リチ ム遷移金属系化合物粉体は、好ましくは水 圧入法による測定において、特定の条件を たす。

 本発明のリチウム遷移金属系化合物粉体の 価で採用する水銀圧入法について以下に説 する。
 水銀圧入法は、多孔質粒子等の試料につい 、圧力を加えながらその細孔に水銀を浸入 せ、圧力と圧入された水銀量との関係から 比表面積や細孔径分布などの情報を得る手 である。

 具体的には、まず、試料の入った容器内 真空排気した上で、容器内に水銀を満たす 水銀は表面張力が高く、そのままでは試料 面の細孔には水銀は浸入しないが、水銀に 力をかけ、徐々に昇圧していくと、径の大 い細孔から順に径の小さい孔へと、徐々に 孔の中に水銀が浸入していく。圧力を連続 に増加させながら水銀液面の変化(つまり細 孔への水銀圧入量)を検出していけば、水銀 加えた圧力と水銀圧入量との関係を表す水 圧入曲線が得られる。

 ここで、細孔の形状を円筒状と仮定し、そ 半径をr、水銀の表面張力をδ、接触角をθ すると、細孔から水銀を押し出す方向への きさは-2πrδ(cosθ)で表される(θ>90°なら、 の値は正となる)。また、圧力P下で細孔へ 銀を押し込む方向への力の大きさはπr 2 Pで表されることから、これらの力の釣り合 から以下の数式(1)、数式(2)が導かれること なる。

   -2πrδ(cosθ)=πr 2 P    …(1)

   Pr=-2δ(cosθ)        …(2)

 水銀の場合、表面張力δ=480dyn/cm程度、接 角θ=140°程度の値が一般的に良く用いられ 。これらの値を用いた場合、圧力P下で水銀 圧入される細孔の半径は以下の数式(3)で表 れる。

 すなわち、水銀に加えた圧力Pと水銀が浸 入する細孔の半径rとの間には相関があるこ から、得られた水銀圧入曲線に基づいて、 料の細孔半径の大きさとその体積との関係 表す細孔分布曲線を得ることができる。例 ば、圧力Pを0.1MPaから100MPaまで変化させると 7500nm程度から7.5nm程度までの範囲の細孔に いて測定が行えることになる。

 なお、水銀圧入法による細孔半径のおおよ の測定限界は、下限が約2nm以上、上限が約2 00μm以下であり、後述する窒素吸着法に比べ 、細孔半径が比較的大きな範囲における細 分布の解析に向いていると言える。
 水銀圧入法による測定は、水銀ポロシメー 等の装置を用いて行うことができる。水銀 ロシメータの具体例としては、Micromeritics社 製オートポア、Quantachrome社製ポアマスター等 が挙げられる。

 本発明のリチウム遷移金属系化合物粉体は 水銀圧入法による水銀圧入曲線において、 力3.86kPaから413MPaまでの昇圧時における水銀 圧入量が、0.4cm 3 /g以上、1.5cm 3 /g以下であることが好ましい。水銀圧入量は り好ましくは0.45cm 3 /g以上、最も好ましくは0.5cm 3 /g以上であり、より好ましくは1.4cm 3 /g以下、更に好ましくは1.3cm 3 /g以下、最も好ましくは1.2cm 3 /g以下である。この範囲の上限を超えると空 が過大となり、本発明のリチウム遷移金属 化合物粉体を正極材料として用いる際に、 極板への正極活物質の充填率が低くなって まい、電池容量が制約されてしまう。一方 この範囲の下限を下回ると、粒子間の空隙 過小となってしまうため、本発明のリチウ 遷移金属系化合物粉体を正極材料として電 を作製した場合に、粒子間のリチウム拡散 阻害され、負荷特性が低下する。

 本発明のリチウム遷移金属系化合物粉体は 上述の水銀圧入法によって細孔分布曲線を 定した場合に、通常、以下に説明する特定 メインピークが現れる。
 なお、本明細書において「細孔分布曲線」 は、細孔の半径を横軸に、その半径以上の 径を有する細孔の単位重量(通常は1g)当たり の細孔体積の合計を、細孔半径の対数で微分 した値を縦軸にプロットしたものであり、通 常はプロットした点を結んだグラフとして表 す。特に本発明のリチウム遷移金属系化合物 粉体を水銀圧入法により測定して得られた細 孔分布曲線を、以下の記載では適宜「本発明 にかかる細孔分布曲線」という。

 また、本明細書において「メインピーク」 は、細孔分布曲線が有するピークの内で最 大きいピークをいい、「サブピーク」とは 細孔分布曲線が有するメインピーク以外の ークを表す。
 また、本明細書において「ピークトップ」 は、細孔分布曲線が有する各ピークにおい 縦軸の座標値が最も大きい値をとる点をい 。

 〈メインピーク〉
 本発明に係る細孔分布曲線が有するメイン ークは、そのピークトップが、細孔半径が 常300nm以上、より好ましくは500nm以上、最も 好ましくは700nm以上、また、通常1500nm以下、 ましくは1200nm以下、より好ましくは1000nm以 、更に好ましくは980nm以下、最も好ましく 950nm以下の範囲に存在する。この範囲の上限 を超えると、本発明のリチウム遷移金属系化 合物粉体を正極材料として電池を作成した場 合に、正極材内でのリチウム拡散が阻害され 、又は導電パスが不足して、負荷特性が低下 する可能性がある。一方、この範囲の下限を 下回ると、本発明のリチウム遷移金属系化合 物粉体を用いて正極を作製した場合に、導電 材や結着剤の必要量が増加し、正極板(正極 集電体)への活物質の充填率が制約され、電 容量が制約される可能性がある。また、微 子化に伴い、塗料化時の塗膜の機械的性質 硬く、又は脆くなり、電池組立て時の捲回 程で塗膜の剥離が生じ易くなる可能性があ 。

 また、本発明に係る細孔分布曲線が有する 細孔半径300nm以上、1500nm以下にピークトッ が存在するピークの細孔容量は、好適には 通常0.3cm 3 /g以上、好ましくは0.32cm 3 /g以上、より好ましくは0.34cm 3 /g以上、最も好ましくは0.35cm 3 /g以上、また、通常0.8cm 3 /g以下、好ましくは0.7cm 3 /g以下、より好ましくは0.6cm 3 /g以下、最も好ましくは0.5cm 3 /g以下である。この範囲の上限を超えると空 が過大となり、本発明のリチウム遷移金属 化合物粉体を正極材料として用いる際に、 極板への正極活物質の充填率が低くなって まい、電池容量が制約されてしまう可能性 ある。一方、この範囲の下限を下回ると、 子間の空隙が過小となってしまうため、本 明のリチウム遷移金属系化合物粉体を正極 料として電池を作製した場合に、二次粒子 のリチウム拡散が阻害され、負荷特性が低 する可能性がある。

 〈サブピーク〉
 本発明に係る細孔分布曲線は、上述のメイ ピークに加えて、複数のサブピークを有し いてもよく、特には80nm以上、300nm以下の細 半径の範囲内にピークトップが存在するサ ピークを有することが好ましい。

また、特に、細孔半径400nm以上、1500nm以下 ピークトップが存在するメインピークを有 る場合、細孔半径300nm以上、400nm未満にピー クトップが存在するサブピークを有すること が好ましい。

 本発明に係る細孔分布曲線が有する細孔半 80nm以上、300nm未満にピークトップが存在す サブピークの細孔容量は、好適には、通常0 .01cm 3 /g以上、好ましくは0.02cm 3 /g以上、より好ましくは0.03cm 3 /g以上、最も好ましくは0.04cm 3 /g以上、また、通常0.3cm 3 /g以下、好ましくは0.25cm 3 /g以下、より好ましくは0.20cm 3 /g以下、最も好ましくは0.18cm 3 /g以下である。この範囲の上限を超えると二 粒子間の空隙が過大となり、本発明のリチ ム遷移金属系化合物粉体を正極材料として いる際に、正極板への正極活物質の充填率 低くなってしまい、電池容量が制約されて まう可能性がある。一方、この範囲の下限 下回ると、二次粒子間の空隙が過小となっ しまうため、本発明のリチウム遷移金属系 合物粉体を正極材料として電池を作製した 合に、二次粒子間のリチウム拡散が阻害さ 、負荷特性が低下する可能性がある。
 なお、本発明においては、水銀圧入法によ 細孔分布曲線が、細孔半径300nm以上、1500nm 下にピークトップが存在するメインピーク 少なくとも1つ以上有し、かつ細孔半径80nm以 上、300nm未満にピークトップが存在するサブ ークを有するリチウム二次電池正極材料用 チウム遷移金属系化合物粉体が好ましいも として挙げられる。
 また、水銀圧入法による細孔分布曲線が、 孔半径400nm以上、1500nm以下にピークトップ 存在するメインピークを少なくとも1つ以上 し、かつ細孔半径300nm以上、400nm未満にピー クトップが存在するサブピークを有するリチ ウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系 化合物粉体も好ましいものとして挙げられる 。

 〈嵩密度〉
 本発明のリチウム遷移金属系化合物粉体の 密度は通常1.2g/cc以上、好ましくは1.3g/cc以 、より好ましくは1.4g/cc以上、最も好ましく 1.5g/cc以上で、通常2.0g/cc以下、好ましくは1. 9g/cc以下、より好ましくは1.8g/cc以下、最も好 ましくは1.7g/cc以下である。嵩密度がこの上 を上回ることは、粉体充填性や電極密度向 にとって好ましい一方、比表面積が低くな 過ぎる可能性があり、電池性能が低下する 能性がある。嵩密度がこの下限を下回ると 体充填性や電極調製に悪影響を及ぼす可能 がある。
 なお、本発明では、嵩密度は、リチウム遷 金属系化合物粉体5~10gを10mlのガラス製メス リンダーに入れ、ストローク約20mmで200回タ ップした時の粉体充填密度(タップ密度)g/ccと して求める。

 〈体積抵抗率〉
 本発明のリチウム遷移金属系化合物粉体を4 0MPaの圧力で圧密した時の体積抵抗率の値は 下限としては、1×10 3 ω・cm以上が好ましく、1×10 4 ω・cm以上がより好ましく、1×10 5 ω・cm以上がさらに好ましく、5×10 5 ω・cm以上が最も好ましい。上限としては、1 10 7 ω・cm以下が好ましく、8×10 6 ω・cm以下がより好ましく、5×10 6 ω・cm以下がさらに好ましく、3×10 6 ω・cm以下が最も好ましい。この体積抵抗率 この上限を超えると電池とした時の負荷特 が低下する可能性がある。一方、体積抵抗 がこの下限を下回ると、電池とした時の安 性などが低下する可能性がある。

 なお、本発明において、リチウム遷移金 系化合物粉体の体積抵抗率は、四探針・リ グ電極、電極間隔5.0mm、電極半径1.0mm、試料 半径12.5mmで、印加電圧リミッタを90Vとして、 リチウム遷移金属系化合物粉体を40MPaの圧力 圧密した状態で測定した体積抵抗率である 体積抵抗率の測定は、例えば、粉体抵抗測 装置(例えば、ダイアインスツルメンツ社製 、ロレスターGP粉体抵抗測定システム)を用い 、粉体用プローブユニットにより、所定の加 圧下の粉体に対して行うことができる。

 〈結晶構造〉
 本発明のリチウム遷移金属系化合物粉体は 層状構造に帰属する結晶構造を含んで構成 れるリチウムニッケルマンガンコバルト系 合酸化物を主成分としたものが好ましい。
 ここで、層状構造に関してさらに詳しく述 る。層状構造を有するものの代表的な結晶 としては、LiCoO 2 、LiNiO 2 のようなα-NaFeO 2 型に属するものがあり、これらは六方晶系で あり、その対称性から空間群

 (以下「層状R(-3)m構造」と表記することが ある。)に帰属される。

 ただし、層状LiMeO 2 とは、層状R(-3)m構造に限るものではない。こ れ以外にもいわゆる層状Mnと呼ばれるLiMnO 2 は斜方晶系で空間群Pm2mの層状化合物であり また、いわゆる213相と呼ばれるLi 2 MnO 3 は、Li[Li 1/3 Mn 2/3 ]O 2 とも表記でき、単斜晶系の空間群C2/m構造で るが、やはりLi層と[Li 1/3 Mn 2/3 ]層及び酸素層が積層した層状化合物である

 〈組成〉
 また、本発明のリチウム含有遷移金属化合 粉体は、下記組成式(I)で示されるリチウム 移金属系複合酸化物粉体であることが好ま い。
        LiMO 2  …(I)
 ただし、Mは、Li、Ni及びMn、或いは、Li、Ni Mn及びCoから構成される元素であり、Mn/Niモ 比は通常0.1以上、好ましくは0.3以上、より ましくは0.5以上、更に好ましくは0.6以上、 り一層好ましくは0.7以上、更に好ましくは0. 8以上、最も好ましくは0.9以上、通常5以下、 ましくは4以下、より好ましくは3以下、更 好ましくは2.5以下、最も好ましくは1.5以下 ある。Co/(Mn+Ni+Co)モル比は通常0以上、好まし くは0.01以上、より好ましくは0.02以上、更に ましくは0.03以上、最も好ましくは0.05以上 通常0.35以下、好ましくは0.20以下、より好ま しくは0.15以下、更に好ましくは0.10以下、最 好ましくは0.099以下である。M中のLiモル比 通常0.001以上、好ましくは0.01以上、より好 しくは0.02以上、さらに好ましくは0.03以上、 最も好ましくは0.05以上、通常0.2以下、好ま くは0.19以下、より好ましくは0.18以下、さら に好ましくは0.17以下、最も好ましくは0.15以 である。

 なお、上記組成式(I)においては、酸素量 原子比は便宜上2と記載しているが、多少の 不定比性があってもよい。不定比性がある場 合、酸素の原子比は通常2±0.2の範囲、好まし くは2±0.15の範囲、より好ましくは2±0.12の範 、さらに好ましくは2±0.10の範囲、特に好ま しくは2±0.05の範囲である。

 また、本発明のリチウム遷移金属系化合 粉体は、正極活物質の結晶性を高めるため 酸素含有ガス雰囲気下で高温焼成を行って 成されたものであることが好ましい。焼成 度の下限は特に、上記組成式(I)で示される 成を持つリチウムニッケルマンガンコバル 系複合酸化物においては、通常900℃以上、 ましくは920℃以上、より好ましくは940度以 、更に好ましくは950℃以上、最も好ましく 960℃以上であり、上限は1200℃以下、好まし くは1175℃以下、更に好ましくは1150℃以下、 も好ましくは1125℃以下である。焼成温度が 低すぎると異相が混在し、また結晶構造が発 達せずに格子歪が増大する。また比表面積が 大きくなりすぎる。逆に焼成温度が高すぎる と一次粒子が過度に成長し、粒子間の焼結が 進行し過ぎ、比表面積が小さくなり過ぎる。

 〈含有炭素濃度C〉
 本発明のリチウム遷移金属系化合物粉体の 有炭素濃度C(重量%)値は、通常0.005重量%以上 、好ましくは0.01重量%以上、更に好ましくは0 .015重量%以上、最も好ましくは0.02重量%以上 あり、通常0.25重量%以下、好ましくは0.2重量 %以下、より好ましくは0.15重量%以下、更に好 ましくは0.1重量%以下、最も好ましくは0.07重 %以下である。この下限を下回ると電池性能 が低下する可能性があり、上限を超えると電 池とした時のガス発生による膨れが増大した り電池性能が低下したりする可能性がある。

 本発明において、リチウムニッケルマンガ コバルト系複合酸化物粉体の含有炭素濃度C は、後述の実施例の項で示すように、酸素気 流中燃焼(高周波加熱炉式)赤外吸収法による 定で求められる。
 なお、後述の炭素分析により求めたリチウ ニッケルマンガンコバルト系複合酸化物粉 の含有炭素成分は、炭酸化合物、特に炭酸 チウムの付着量についての情報を示すもの みなすことができる。これは、炭素分析に り求めた炭素量を、全て炭酸イオン由来と 定した数値と、イオンクロマトグラフィー より分析した炭酸イオン濃度が概ね一致す ことによる。

 一方、電子伝導性を高めるための手法と て導電性カーボンと複合化処理をしたりす 場合には、前記規定範囲を超えるC量が検出 されることがあるが、そのような処理が施さ れた場合におけるC値は、前記規定範囲に限 されるものではない。

 〈好適組成〉
 本発明のリチウム二次電池正極材料用リチ ム遷移金属系複合酸化物粉体は、前記組成 (I)におけるMサイト中の原子構成が下記式(II )又は下記式(II’)で示されるものが特に好ま い。

  M=Li z/(2+z) {(Ni (1+y)/2 Mn (1-y)/2 ) 1-x Co x } 2/(2+z)  …(II)
(ただし、上記式(II)中、
                 0≦x≦0.1、
              -0.1≦y≦0.1、
 (1-x)(0.05-0.98y)≦z≦(1-x)(0.20-0.88y)
である。)

  M=Li z’/(2+z’) {(Ni (1+y’)/2 Mn (1-y’)/2 ) 1-x’ Co x’ } 2/(2+z’)  …(II’)
(ただし、組成式(II’)中、
                 0.1<x’≦0.35
                -0.1≦y’≦0.1
 (1-x’)(0.02-0.98y’)≦z’≦(1-x’)(0.20-0.88y’))

 上記(II)式において、xの値は通常0以上、 ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上 更に好ましくは0.03以上、最も好ましくは0.04 以上、通常0.1以下、好ましくは0.099以下、最 好ましくは0.098以下である。

 yの値は通常-0.1以上、好ましくは-0.05以上 、より好ましくは-0.03以上、最も好ましくは- 0.02以上、通常0.1以下、好ましくは0.05以下、 り好ましくは0.03以下、最も好ましくは0.02 下である。

 zの値は通常(1-x)(0.05-0.98y)以上、好ましく (1-x)(0.06-0.98y)以上、より好ましくは(1-x)(0.07- 0.98y)以上、さらに好ましくは(1-x)(0.08-0.98y)以 、最も好ましくは(1-x)(0.10-0.98y)以上、通常(1 -x)(0.20-0.88y)以下、好ましくは(1-x)(0.18-0.88y)以 、より好ましくは(1-x)(0.17-0.88y)、最も好ま くは(1-x)(0.16-0.88y)以下である。zがこの下限 下回ると導電性が低下し、上限を超えると 移金属サイトに置換する量が多くなり過ぎ 電池容量が低くなる等、これを使用したリ ウム二次電池の性能低下を招く可能性があ 。また、zが大きすぎると、活物質粉体の炭 ガス吸収性が増大するため、大気中の炭酸 スを吸収しやすくなる。その結果、含有炭 濃度が大きくなると推定される。

 上記(II’)式において、x’の値は通常0.1 り大きく、好ましくは0.15以上、より好まし は0.2以上、更に好ましくは0.25以上、最も好 ましくは0.30以上、通常0.35以下、好ましくは0 .345以下、最も好ましくは0.34以下である。

 y’の値は通常-0.1以上、好ましくは-0.05以 上、より好ましくは-0.03以上、最も好ましく -0.02以上、通常0.1以下、好ましくは0.05以下 より好ましくは0.03以下、最も好ましくは0.0 2以下である。

 z’の値は通常(1-x’)(0.02-0.98y’)以上、好 しくは(1-x’)(0.03-0.98y)以上、より好ましく (1-x’)(0.04-0.98y’)以上、最も好ましくは(1-x )(0.05-0.98y’)以上、通常(1-x’)(0.20-0.88y’)以 、好ましくは(1-x’)(0.18-0.88y’)以下、より好 ましくは(1-x’)(0.17-0.88y’)、最も好ましくは( 1-x’)(0.16-0.88y’)以下である。z’がこの下限 下回ると導電性が低下し、上限を超えると 移金属サイトに置換する量が多くなり過ぎ 電池容量が低くなる等、これを使用したリ ウム二次電池の性能低下を招く可能性があ 。また、z’が大きすぎると、活物質粉体の 炭酸ガス吸収性が増大するため、大気中の炭 酸ガスを吸収しやすくなる。その結果、含有 炭素濃度が大きくなると推定される。

 上記(II),(II’)式の組成範囲において、z,z 値が定比である下限に近い程、電池とした のレート特性や出力特性が低くなる傾向が られ、逆にz,z’値が上限に近い程、電池と た時のレート特性や出力特性が高くなるが 一方で容量が低下するという傾向が見られ 。また、y,y’値が下限、つまりマンガン/ニ ッケル原子比が小さい程、低い充電電圧で容 量が出るが、高い充電電圧を設定した電池の サイクル特性や安全性が低下する傾向が見ら れ、逆にy,y’値が上限に近い程、高い充電電 圧で設定した電池のサイクル特性や安全性が 向上する一方で、放電容量やレート特性、出 力特性が低下する傾向が見られる。また、x,x ’値が下限に近い程、電池とした時のレート 特性や出力特性といった負荷特性が低くなる という傾向が見られ、逆に、x,x’値が上限に 近い程、電池とした時のレート特性や出力特 性が高くなるが、この上限を超えると、高い 充電電圧で設定した場合のサイクル特性や安 全性が低下し、また原料コストが高くなる。 前記組成パラメータx,x’、y,y’、z,z’を規定 範囲とすることは、本発明の重要な構成要素 である。

 ここで本発明のリチウム遷移金属系化合物 体の好適組成であるリチウムニッケルマン ンコバルト系複合酸化物におけるLi組成(z,z 及びx,x’)の化学的な意味について、以下に より詳細に説明する。
 前述のように層状構造は必ずしもR(-3)m構造 限られるものではないが、R(-3)m構造に帰属 うるものであることが電気化学的な性能面 ら好ましい。
 上記リチウム遷移金属系化合物の組成式のx ,x’、y,y’、z,z’を求めるには、各遷移金属 Liを誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP- AES)で分析して、Li/Ni/Mn/Coの比を求める事で計 算される。

 構造的視点では、z,z’に係るLiは、同じ 移金属サイトに置換されて入っていると考 られる。ここで、z,z’に係るLiによって、電 荷中性の原理によりNiの平均価数が2価より大 きくなる(3価のNiが生成する)。z,z’はNi平均 数を上昇させるため、Ni価数(Ni(III)の割合)の 指標となる。

 なお、上記組成式から、z,z’の変化に伴うN i価数(m)を計算すると、Co価数は3価、Mn価数は 4価であるとの前提で、
となる。この計算結果は、Ni価数はz,z’のみ 決まるのではなく、x,x’及びy,y’の関数と っていることを意味している。z,z’=0かつy, y’=0であれば、x,x’の値に関係なくNi価数は2 価のままである。z,z’が負の値になる場合は 、活物質中に含まれるLi量が化学量論量より 足していることを意味し、あまり大きな負 値を有するものは本発明の効果が出ない可 性がある。一方、同じz,z’値であっても、N iリッチ(y,y’値が大きい)及び/又はCoリッチ(x, x’値が大きい)な組成ほどNi価数は高くなる いうことを意味し、電池に用いた場合、レ ト特性や出力特性が高くなるが、反面、容 低下しやすくなる結果となる。このことか 、z,z’値の上限と下限はx,x’及びy,y’の関 として規定するのがより好ましいと言える

 また、x値が0≦x≦0.1と、Co量が少ない範囲 あると、コストが低減されることに加え、 い充電電位で充電するように設計されたリ ウム二次電池として使用した場合において 充放電容量やサイクル特性、安全性が向上 る。
 他方、x’値が0.10<x’≦0.35と、Co量が比較 的多い範囲にあると、リチウム二次電池とし て使用した場合において、充放電容量やサイ クル特性、負荷特性、安全性などがバランス よく向上する。

 〈粉末X線回折ピーク〉
 本発明において、前記組成式(I)及び(II)を満 たす組成を有するリチウムニッケルマンガン コバルト系複合酸化物粉体は、CuKα線を使用 た粉末X線回折パターンにおいて、回折角2θ が64.5°付近に存在する(110)回折ピークの半価 をFWHM(110)とした時に、0.1≦FWHM(110)≦0.3の範 にあることを特徴とする。
 一般に、結晶性の尺度としてX線回折ピーク の半価幅が用いられることから、本発明者ら は結晶性と電池性能の相関について鋭意検討 を行った。その結果、回折角2θが64.5°付近に 存在する(110)回折ピークの半価幅の値が、規 した範囲内にあるものが良好な電池性能を 現することを見出した。

 本発明において、FWHM(110)は通常0.01以上、 好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上 更に好ましくは0.12以上、最も好ましくは0.1 4以上、通常0.3以下、好ましくは0.28以下、よ 好ましくは0.26以下、更に好ましくは0.24以 、最も好ましくは0.22以下である。

 また、本発明において、前記組成式(I)及び( II)を満たす組成を有するリチウムニッケルマ ンガンコバルト系複合酸化物粉体は、CuKα線 使用した粉末X線回折測定において、回折角 2θが64°付近に存在する(018)回折ピーク、64.5° 付近に存在する(110)回折ピーク、及び68°付近 に存在する(113)回折ピークにおいて、それぞ のピークトップよりも高角側に、異相由来 回折ピークを持たないか、あるいは異相由 の回折ピークを有する場合、本来の結晶相 回折ピークに対する異相ピークの積分強度 が、各々、以下の範囲内にあることが好ま い。
   0≦I 018 * /I 018 ≦0.20
   0≦I 110 * /I 110 ≦0.25
   0≦I 113 * /I 113 ≦0.30
(ここで、I 018 、I 110 、I 113 は、それぞれ(018)、(110)、(113)回折ピークの積 分強度を表し、I 018 * 、I 110 * 、I 113 * は、それぞれ(018)、(110)、(113)回折ピークのピ ークトップよりも高角側に現れる異相由来の 回折ピークの積分強度を表す。)

 ところで、この異相由来の回折ピークの原 物質の詳細は明らかではないが、異相が含 れると、電池とした時の容量やレート特性 サイクル特性等が低下する。このため、回 ピークは本発明の電池性能に悪影響を与え い程度の回折ピークを有していてもよいが 前記範囲の割合であることが好ましく、そ ぞれの回折ピークに対する異相由来の回折 ークの積分強度比は、通常I 018 * /I 018 ≦0.20、I 110 * /I 110 ≦0.25、I 113 * /I 113 ≦0.30、好ましくはI 018 * /I 018 ≦0.15、I 110 * /I 110 ≦0.20、I 113 * /I 113 ≦0.25、より好ましくはI 018 * /I 018 ≦0.10、I 110 * /I 110 ≦0.15、I 113 * /I 113 ≦0.20、更に好ましくはI 018 * /I 018 ≦0.05、I 110 * /I 110 ≦0.10、I 113 * /I 113 ≦0.15であり、最も好ましくは異相由来の回 ピークが無いことが特に好ましい。

 〈本発明のリチウム遷移金属系化合物粉体 上述の効果をもたらす理由〉
 本発明のリチウム遷移金属系化合物粉体が 述の効果をもたらす理由としては次のよう 考えられる。
 即ち、本発明のリチウム遷移金属系化合物 体は、結晶二次粒子が球状の形骸を維持し おり、水銀圧入曲線における昇圧時の水銀 入量が多く、結晶粒子間の細孔容量が大き ために、これを用いて電池を作製した場合 正極活物質表面と電解液との接触面積を増 させることが可能となることに加え、負荷 性(特に低温出力特性)の向上をもたらすよ な表面状態となり、さらに結晶性が高度に 達し、また異相の存在比率が極めて少なく えられた結果、正極活物質として優れた特 バランスと粉体取り扱い性を達成できたも と推定される。

 [リチウム二次電池正極材料用リチウム遷移 金属系化合物粉体の製造方法]
 本発明のリチウム遷移金属系化合物粉体を 造する方法は、特定の製法に限定されるも ではないが、リチウム化合物と、V、Cr、Mn Fe、Co、Ni、及びCuから選ばれる少なくとも1 類以上の遷移金属化合物と、添加剤1と添加 2とを、液体媒体中で粉砕し、これらを均一 に分散させたスラリーを得るスラリー調製工 程と、得られたスラリーを噴霧乾燥する噴霧 乾燥工程と、得られた噴霧乾燥体を焼成する 焼成工程を含む本発明のリチウム二次電池正 極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体の製 造方法により、好適に製造される。

 例えば、リチウムニッケルマンガンコバ ト系複合酸化物粉体を例にあげて説明する 、リチウム化合物、ニッケル化合物、マン ン化合物、コバルト化合物、並びに添加剤1 と添加剤2を液体媒体中に分散させたスラリ を噴霧乾燥して得られた噴霧乾燥体を、酸 含有ガス雰囲気中で焼成して製造すること できる。

 以下に、本発明の好適態様であるリチウ ニッケルマンガンコバルト系複合酸化物粉 の製造方法を例にあげて、本発明のリチウ 遷移金属系化合物粉体の製造方法について 細に説明する。

 〈スラリー調製工程〉
 本発明の方法により、リチウム遷移金属系 合物粉体を製造するに当たり、スラリーの 製に用いる原料化合物のうち、リチウム化 物としては、Li 2 CO 3 、LiNO 3 、LiNO 2 、LiOH、LiOH・H 2 O、LiH、LiF、LiCl、LiBr、LiI、CH 3 OOLi、Li 2 O、Li 2 SO 4 、ジカルボン酸Li、クエン酸Li、脂肪酸Li、ア ルキルリチウム等が挙げられる。これらリチ ウム化合物の中で好ましいのは、焼成処理の 際にSO X 、NO X 等の有害物質を発生させない点で、窒素原子 や硫黄原子、ハロゲン原子を含有しないリチ ウム化合物であり、また、焼成時に分解ガス を発生する等して、噴霧乾燥粉体の二次粒子 内に分解ガスを発生するなどして空隙を形成 しやすい化合物であり、これらの点を勘案す ると、Li 2 CO 3 、LiOH、LiOH・H 2 Oが好ましく、特にLi 2 CO 3 が好ましい。これらのリチウム化合物は1種 単独で使用しても良く、2種以上を併用して 良い。

 また、ニッケル化合物としては、Ni(OH) 2 、NiO、NiOOH、NiCO 3 、2NiCO 3 ・3Ni(OH) 2 ・4H 2 O、NiC 2 O 4 ・2H 2 O、Ni(NO 3 ) 2 ・6H 2 O、NiSO 4 、NiSO 4 ・6H 2 O、脂肪酸ニッケル、ニッケルハロゲン化物 が挙げられる。この中でも、焼成処理の際 SO X 、NO X 等の有害物質を発生させない点で、 Ni(OH) 2 、NiO、N iOOH、NiCO 3 、2NiCO 3 ・3Ni(OH) 2 ・4H 2 O、NiC 2 O 4 ・2H 2 Oのようなニッケル化合物が好ましい。また 更に工業原料として安価に入手できる観点 及び反応性が高い、という観点からNi(OH) 2 、NiO、NiOOH、NiCO 3 、さらに焼成時に分解ガスを発生する等して 、噴霧乾燥粉体の二次粒子内に空隙を形成し やすい、という観点から、特に好ましいのは Ni(OH) 2 、NiOOH、NiCO 3 である。これらのニッケル化合物は1種を単 で使用しても良く、2種以上を併用しても良 。

 また、マンガン化合物としてはMn 2 O 3 、MnO 2 、Mn 3 O 4 等のマンガン酸化物、MnCO 3 、Mn(NO 3 ) 2 、MnSO 4 、酢酸マンガン、ジカルボン酸マンガン、ク エン酸マンガン、脂肪酸マンガン等のマンガ ン塩、オキシ水酸化物、塩化マンガン等のハ ロゲン化物等が挙げられる。これらのマンガ ン化合物の中でも、MnO 2 、Mn 2 O 3 、Mn 3 O 4 、MnCO 3 は、焼成処理の際にSO X 、NO X 等のガスを発生せず、更に工業原料として安 価に入手できるため好ましい。これらのマン ガン化合物は1種を単独で使用しても良く、2 以上を併用しても良い。

 また、コバルト化合物としては、Co(OH) 2 、CoOOH、CoO、Co 2 O 3 、Co 3 O 4 、Co(OCOCH 3 ) 2 ・4H 2 O、CoCl 2 、Co(NO 3 ) 2 ・6H 2 O、Co(SO 4 ) 2 ・7H 2 O、CoCO 3 等が挙げられる。中でも、焼成工程の際にSO X 、NO X 等の有害物質を発生させない点で、Co(OH) 2 、CoOOH、CoO、Co 2 O 3 、Co 3 O 4 、CoCO 3 が好ましく、更に好ましくは、工業的に安価 に入手できる点及び反応性が高い点でCo(OH) 2 、CoOOHである。加えて焼成時に分解ガスを発 する等して、噴霧乾燥粉体の二次粒子内に 隙を形成しやすい、という観点から、特に ましいのはCo(OH) 2 、CoOOH、CoCO 3 である。これらのコバルト化合物は1種を単 で使用しても良く、2種以上を併用しても良 。

 また、上記のLi、Ni、Mn、Co原料化合物以 にも他元素置換を行って前述の異元素を導 したり、後述する噴霧乾燥にて形成される 次粒子内の空隙を効率よく形成させたりす ことを目的とした化合物群を使用すること 可能である。なお、ここで使用する、二次 子の空隙を効率よく形成させることを目的 して使用する化合物の添加段階は、その性 に応じて、原料混合前又は混合後の何れか 選択することが可能である。特に、混合工 によって機械的剪断応力が加わるなどして 解しやすい化合物は混合工程後に添加する とが好ましい。

 添加剤1としては、前述の通りである。ま た、添加剤2としては、前述の通りである。

 原料の混合方法は特に限定されるものでは く、湿式でも乾式でも良い。例えば、ボー ミル、振動ミル、ビーズミル等の装置を使 する方法が挙げられる。原料化合物を水、 ルコール等の液体媒体中で混合する湿式混 は、より均一な混合が可能であり、かつ焼 工程において混合物の反応性を高めること できるので好ましい。
 混合の時間は、混合方法により異なるが、 料が粒子レベルで均一に混合されていれば く、例えばボールミル(湿式又は乾式)では 常1時間から2日間程度、ビーズミル(湿式連 法)では滞留時間が通常0.1時間から6時間程度 である。

 なお、原料の混合段階においてはそれと 行して原料の粉砕が為されていることが好 しい。粉砕の程度としては、粉砕後の原料 子の粒径が指標となるが、平均粒子径(メジ アン径)として通常0.4μm以下、好ましくは0.3μ m以下、さらに好ましくは0.25μm以下、最も好 しくは0.2μm以下とする。粉砕後の原料粒子 平均粒子径が大きすぎると、焼成工程にお る反応性が低下するのに加え、組成が均一 し難くなる。ただし、必要以上に小粒子化 ることは、粉砕のコストアップに繋がるの 、平均粒子径が通常0.01μm以上、好ましくは 0.02μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上とな ように粉砕すれば良い。このような粉砕程 を実現するための手段としては特に限定さ るものではないが、湿式粉砕法が好ましい 具体的にはダイノーミル等を挙げることが きる。

 なお、本発明においてスラリー中の粉砕 子のメジアン径は、公知のレーザー回折/散 乱式粒度分布測定装置によって、屈折率1.24 設定し、粒子径基準を体積基準に設定して 定されたものである。本発明では、測定の に用いる分散媒として、0.1重量%ヘキサメタ ン酸ナトリウム水溶液を用い、5分間の超音 波分散(出力30W、周波数22.5kHz)後に測定を行っ た。 後述の噴霧乾燥体のメジアン径につい は、それぞれ0、1、3、5分間の超音波分散後 に測定を行った他は同様の条件である。

 〈噴霧乾燥工程〉
 湿式混合後は、次いで通常乾燥工程に供さ る。乾燥方法は特に限定されないが、生成 る粒子状物の均一性や粉体流動性、粉体ハ ドリング性能、乾燥粒子を効率よく製造で る等の観点から噴霧乾燥が好ましい。

 (噴霧乾燥粉体)
 本発明のリチウムニッケルマンガンコバル 系複合酸化物粉体等のリチウム遷移金属系 合物粉体の製造方法においては、原料化合 と添加剤1及び添加剤2とを湿式粉砕して得 れたスラリーを噴霧乾燥することにより、 次粒子が凝集して二次粒子を形成してなる 体を得る。一次粒子が凝集して二次粒子を 成してなる噴霧乾燥粉体は、本発明品の噴 乾燥粉体の形状的特徴である。形状の確認 法としては、例えば、SEM観察、断面SEM観察 挙げられる。

 本発明のリチウムニッケルマンガンコバ ト系複合酸化物粉体等のリチウム遷移金属 化合物粉体の焼成前駆体でもある噴霧乾燥 より得られる粉体のメジアン径(ここでは超 音波分散をかけずに測定した値)は通常10μm以 下、より好ましくは9μm以下、更に好ましく 8μm以下、最も好ましくは7μm以下となるよう にする。ただし、あまりに小さな粒径は得に くい傾向にあるので、通常は3μm以上、好ま くは4μm以上、より好ましくは5μm以上である 。噴霧乾燥法で粒子状物を製造する場合、そ の粒子径は、噴霧形式、加圧気体流供給速度 、スラリー供給速度、乾燥温度等を適宜選定 することによって制御することができる。

 即ち、例えば、リチウム化合物、ニッケ 化合物、マンガン化合物、及びコバルト化 物と添加剤1と添加剤2とを液体媒体中に分 させたスラリーを噴霧乾燥後、得られた粉 を焼成してリチウムニッケルマンガンコバ ト系複合酸化物粉体を製造するに当たり、 霧乾燥時のスラリー粘度をV(cp)、スラリー供 給量をS(L/min)、ガス供給量をG(L/min)とした際 スラリー粘度Vが、50cp≦V≦4000cpであって、 つ、気液比G/Sが、500≦G/S≦10000となる条件で 噴霧乾燥を行う。

 スラリー粘度V(cp)が低すぎると一次粒子 凝集して二次粒子を形成してなる粉体を得 くくなる虞があり、高過ぎると供給ポンプ 故障したり、ノズルが閉塞する虞がある。 って、スラリー粘度V(cp)は、下限値として通 常50cp以上、好ましくは100cp以上、更に好まし くは300cp以上、最も好ましくは500cpであり、 限値としては通常4000cp以下、好ましくは3500c p以下、更に好ましくは3000cp以下、最も好ま くは2500cp以下である。

 また、気液比G/Sが上記下限を下回ると二 粒子サイズが粗大化したり、乾燥性が低下 やすくなるなどして、上限を超えると生産 が低下する虞がある。従って、気液比G/Sは 下限値として通常500以上、好ましくは800以 、更に好ましくは1000以上、最も好ましくは 1500以上であり、上限値としては通常10000以下 、好ましくは9000以下、更に好ましくは8000以 、最も好ましくは7500以下である。

 スラリー供給量Sやガス供給量Gは、噴霧 燥に供するスラリーの粘度や用いる噴霧乾 装置の仕様等によって適宜設定される。

 本発明の方法においては、前述のスラリ 粘度V(cp)を満たし、かつ用いる噴霧乾燥装 の仕様に適したスラリー供給量とガス供給 を制御して、前述の気液比G/Sを満たす範囲 噴霧乾燥を行えばよく、その他の条件につ ては、用いる装置の種類等に応じて適宜設 されるが、更に次のような条件を選択する とが好ましい。

 即ち、スラリーの噴霧乾燥は、通常、50 以上、好ましくは70℃以上、更に好ましくは 120℃以上、最も好ましくは140℃以上で、通常 300℃以下、好ましくは250℃以下、更に好まし くは200℃以下、最も好ましくは180℃以下の温 度で行うことが好ましい。この温度が高すぎ ると得られた造粒粒子が中空構造の多いもの となる可能性があり、粉体の充填密度が低下 する虞がある。一方、低すぎると粉体出口部 分での水分結露による粉体固着・閉塞等の問 題が生じる可能性がある。

 また、本発明に係るリチウムニッケルマ ガンコバルト系複合酸化物粉体等のリチウ 遷移金属系化合物粉体の噴霧乾燥粉体は、 次粒子間の凝集力が弱いのが特徴であり、 れは超音波分散に伴うメジアン径の変化を べることによって確認できる。ここで5分間 の超音波分散“Ultra Sonic”(出力30W、周波数22 .5kHz)をかけた後で測定したときの噴霧乾燥粒 子のメジアン径の上限は、通常4μm以下、好 しくは3.5μm以下、より好ましくは3μm以下、 に好ましくは2.5μm以下、最も好ましくは2μm 以下であり、下限は、通常0.01μm以上、好ま くは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、 も好ましくは0.2μm以上である。この超音波 散後のメジアン径が上記の値より大きい噴 乾燥粒子を用いて焼成されたリチウム遷移 属系化合物粉体は、粒子間の空隙が少なく 負荷特性が改善されない。一方、超音波分 後のメジアン径が上記の値より小さい噴霧 燥粒子を用いて焼成されたリチウム遷移金 系化合物粉体は、粒子間の空隙が多くなり ぎ、嵩密度が低下したり、塗布特性が悪く るなどの問題が生じやすくなる可能性があ 。

 また、本発明のリチウムニッケルマンガ コバルト複合酸化物粉体等のリチウム遷移 属系化合物粉体の噴霧乾燥粉体の嵩密度は 常0.1g/cc以上、好ましくは0.3g/cc以上、より ましくは0.5g/cc以上、最も好ましくは0.7g/cc以 上である。この下限を下回ると粉体充填性や 粉体の取り扱いに悪影響を及ぼす可能性があ り、また、通常1.7g/cc以下、好ましくは1.6g/cc 下、より好ましくは1.5g/cc以下、最も好まし くは1.4g/cc以下である。嵩密度がこの上限を 回ることは、粉体充填性や粉体の取り扱い とって好ましい一方、比表面積が低くなり ぎる可能性があり、焼成工程での反応性が 下する可能性がある。

 また、噴霧乾燥により得られる粉体は、比 面積が小さいと、次の工程であるリチウム 合物との焼成反応に際して、リチウム化合 との反応性が低下してしまうため、前記の く、噴霧乾燥前に出発原料を粉砕するなど 手段により、できるだけ高比表面積化され いることが好ましい。一方で、過度に高比 面積化しようとすると、工業的に不利とな だけでなく、本発明のリチウム遷移金属系 合物が得られなくなる可能性がある。従っ 、これによって得られた噴霧乾燥粒子は、B ET比表面積にして通常10m 2 /g以上、好ましくは20m 2 /g以上、更に好ましくは30m 2 /g以上、最も好ましくは50m 2 /g以上で、通常100m 2 /g以下、好ましくは80m 2 /g以下、更に好ましくは70m 2 /g以下、最も好ましくは65m 2 /g以下とすることが好ましい。

<焼成工程>
 このようにして得られた焼成前駆体は、次 で焼成処理される。
 ここで、本発明において「焼成前駆体」と 、噴霧乾燥粉体を処理して得られる焼成前 リチウムニッケルマンガンコバルト系複合 化物等のリチウム遷移金属系化合物の前駆 を意味する。例えば、前述の焼成時に分解 スを発生又は昇華して、二次粒子内に空隙 形成させる化合物を、上述の噴霧乾燥粉体 含有させて焼成前駆体としてもよい。

 この焼成条件は、組成や使用するリチウ 化合物原料にも依存するが、傾向として、 成温度が高すぎると一次粒子が過度に成長 、粒子間の焼結が進行し過ぎ、比表面積が さくなり過ぎる。逆に低すぎると異相が混 し、また結晶構造が発達せずに格子歪が増 する。また比表面積が大きくなりすぎる。 成温度としては、通常700℃以上であるが、 記一般式(I)及び(II)で示される組成において は900℃以上が好ましく、より好ましくは920℃ 以上、さらに好ましくは940℃以上、一層好ま しくは950℃以上、最も好ましくは960℃以上で あり、通常1200℃以下、好ましくは1175℃以下 更に好ましくは1150℃以下、最も好ましくは 1125℃以下である。

 焼成には、例えば、箱形炉、管状炉、ト ネル炉、ロータリーキルン等を使用するこ ができる。焼成工程は、通常、昇温・最高 度保持・降温の三部分に分けられる。二番 の最高温度保持部分は必ずしも一回とは限 ず、目的に応じて二段階又はそれ以上の段 をふませてもよく、二次粒子を破壊しない 度に凝集を解消することを意味する解砕工 又は、一次粒子或いはさらに微小粉末まで くことを意味する粉砕工程を挟んで、昇温 最高温度保持・降温の工程を二回又はそれ 上繰り返しても良い。

 昇温工程は通常1℃/分以上10℃/分以下の 温速度で炉内を昇温させる。この昇温速度 あまり遅すぎても時間がかかって工業的に 利であるが、あまり速すぎても炉によって 炉内温度が設定温度に追従しなくなる。昇 速度は、好ましくは2℃/分以上、より好まし くは3℃/分以上で、好ましくは7℃/分以下、 り好ましくは5℃/分以下である。

 最高温度保持工程での保持時間は、温度 よっても異なるが、通常前述の温度範囲で れば30分以上、好ましくは1時間以上、更に ましくは3時間以上、最も好ましくは5時間 上で、50時間以下、好ましくは25時間以下、 に好ましくは20時間以下、最も好ましくは15 時間以下である。焼成時間が短すぎると結晶 性の良いリチウム遷移金属系化合物粉体が得 られ難くなり、長すぎるのは実用的ではない 。焼成時間が長すぎると、その後解砕が必要 になったり、解砕が困難になったりするので 、不利である。

 降温工程では、通常0.1℃/分以上10℃/分以 下の降温速度で炉内を降温させる。降温速度 があまり遅すぎても時間がかかって工業的に 不利であるが、あまり速すぎても目的物の均 一性に欠けたり、容器の劣化を早めたりする 傾向にある。降温速度は、好ましくは1℃/分 上、より好ましくは3℃/分以上で、好まし は7℃/分以下、より好ましくは5℃/分以下で る。

 焼成時の雰囲気は、得ようとするリチウ 遷移金属系化合物粉体の組成によって適切 酸素分圧領域があるため、それを満足する めの適切な種々ガス雰囲気が用いられる。 ス雰囲気としては、例えば、酸素、空気、 素、アルゴン、水素、二酸化炭素、及びそ らの混合ガス等を挙げることができる。本 明において具体的に実施しているリチウム ッケルマンガンコバルト系複合酸化物粉体 ついては、空気等の酸素含有ガス雰囲気を いることができる。通常は酸素濃度が1体積 %以上、好ましくは10体積%以上、より好まし は15体積%以上で、100体積%以下、好ましくは5 0体積%以下、より好ましくは25体積%以下の雰 気とする。

 このような製造方法において、本発明のリ ウム遷移金属系化合物粉体、例えば前記特 の組成を有するリチウムニッケルマンガン バルト系複合酸化物粉体を製造するには、 造条件を一定とした場合には、リチウム化 物、ニッケル化合物、マンガン化合物、及 コバルト化合物と、添加剤1と添加剤2とを 体媒体中に分散させたスラリーを調製する 、各化合物の混合比を調整することで、目 とするLi/Ni/Mn/Coのモル比を制御することがで きる。
 このようにして得られたリチウムニッケル ンガンコバルト系複合酸化物粉体等の本発 のリチウム遷移金属系化合物粉体によれば 容量が高く、低温出力特性、保存特性に優 た、性能バランスの良いリチウム二次電池 正極材料が提供される。

[リチウム二次電池用正極]
 本発明のリチウム二次電池用正極は、本発 のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷 金属系化合物粉体及び結着剤を含有する正 活物質層を集電体上に形成してなるもので る。

 正極活物質層は、通常、正極材料と結着 と更に必要に応じて用いられる導電材及び 粘剤等を、乾式で混合してシート状にした のを正極集電体に圧着するか、或いはこれ の材料を液体媒体中に溶解又は分散させて ラリー状にして、正極集電体に塗布、乾燥 ることにより作成される。

 正極集電体の材質としては、通常、アル ニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、 タン、タンタル等の金属材料や、カーボン ロス、カーボンペーパー等の炭素材料が用 られる。中でも金属材料が好ましく、アル ニウムが特に好ましい。また、形状として 、金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金 コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンド タル、パンチメタル、発泡メタル等が、炭 材料の場合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱 が挙げられる。中でも、金属薄膜が、現在 業化製品に使用されているため好ましい。 お、薄膜は適宜メッシュ状に形成しても良 。

 正極集電体として薄膜を使用する場合、 の厚さは任意であるが、通常1μm以上、好ま しくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、ま 通常100mm以下、好ましくは1mm以下、より好 しくは50μm以下の範囲が好適である。上記範 囲よりも薄いと、集電体として必要な強度が 不足する可能性がある一方で、上記範囲より も厚いと、取り扱い性が損なわれる可能性が ある。

 正極活物質層の製造に用いる結着剤とし は、特に限定されず、塗布法の場合は、電 製造時に用いる液体媒体に対して安定な材 であれば良いが、具体例としては、ポリエ レン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレ タレート、ポリメチルメタクリレート、芳 族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロ ス等の樹脂系高分子、SBR(スチレン・ブタジ エンゴム)、NBR(アクリロニトリル・ブタジエ ゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタ ジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム等の ゴム状高分子、スチレン・ブタジエン・スチ レンブロック共重合体及びその水素添加物、 EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重 体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・エ チレン共重合体、スチレン・イソプレンスチ レンブロック共重合体及びその水素添加物等 の熱可塑性エラストマー状高分子、シンジオ タクチック-1,2-ポリブタジエン、ポリ酢酸ビ ル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロ レン・α-オレフィン共重合体等の軟質樹脂 高分子、ポリフッ化ビニリデン、ポリテト フルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビ リデン、ポリテトラフルオロエチレン・エ レン共重合体等のフッ素系高分子、アルカ 金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン 導性を有する高分子組成物等が挙げられる なお、これらの物質は、1種を単独で用いて 良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率 で併用しても良い。

 正極活物質層中の結着剤の割合は、通常0 .1重量%以上、好ましくは1重量%以上、更に好 しくは5重量%以上であり、通常80重量%以下 好ましくは60重量%以下、更に好ましくは40重 量%以下、最も好ましくは10重量%以下である 結着剤の割合が低すぎると、正極活物質を 分保持できずに正極の機械的強度が不足し サイクル特性等の電池性能を悪化させてし う可能性がある一方で、高すぎると、電池 量や導電性の低下につながる可能性がある

 正極活物質層には、通常、導電性を高め ために導電材を含有させる。その種類に特 制限はないが、具体例としては、銅、ニッ ル等の金属材料や、天然黒鉛、人造黒鉛等 黒鉛(グラファイト)、アセチレンブラック のカーボンブラック、ニードルコークス等 無定形炭素等の炭素材料などを挙げること できる。なお、これらの物質は、1種を単独 用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ 及び比率で併用しても良い。正極活物質層中 の導電材の割合は、通常0.01重量%以上、好ま くは0.1重量%以上、更に好ましくは1重量%以 であり、また、通常50重量%以下、好ましく 30重量%以下、更に好ましくは20重量%以下で る。導電材の割合が低すぎると導電性が不 分になることがあり、逆に高すぎると電池 量が低下することがある。

 スラリーを形成するための液体媒体とし は、正極材料であるリチウム遷移金属系化 物粉体、結着剤、並びに必要に応じて使用 れる導電材及び増粘剤を溶解又は分散する とが可能な溶媒であれば、その種類に特に 限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちら 用いても良い。水系溶媒の例としては水、 ルコールなどが挙げられ、有機系溶媒の例 してはN-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホ ルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチル エチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチ ル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン 、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、エチ ンオキシド、テトラヒドロフラン(THF)、トル エン、アセトン、ジメチルエーテル、ジメチ ルアセタミド、ヘキサメチルホスファルアミ ド、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、キシ レン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレ ン、ヘキサン等を挙げることができる。特に 水系溶媒を用いる場合、増粘剤に併せて分散 剤を加え、SBR等のラテックスを用いてスラリ ー化する。なお、これらの溶媒は、1種を単 で用いても良く、2種以上を任意の組み合わ 及び比率で併用しても良い。

 正極活物質層中の正極材料としての本発 のリチウム遷移金属系化合物粉体の含有割 は、通常10重量%以上、好ましくは30重量%以 、更に好ましくは50重量%以上であり、通常9 9.9重量%以下、好ましくは99重量%以下である 正極活物質層中のリチウム遷移金属系化合 粉体の割合が多すぎると正極の強度が不足 る傾向にあり、少なすぎると容量の面で不 分となることがある。

 また、正極活物質層の厚さは、通常10~200 m程度である。

 なお、塗布、乾燥によって得られた正極活 質層は、正極活物質の充填密度を上げるた に、ローラープレス等により圧密化するこ が好ましい。
 かくして、本発明のリチウム二次電池用正 が調製できる。

[リチウム二次電池]
 本発明のリチウム二次電池は、リチウムを 蔵・放出可能な上記の本発明のリチウム二 電池用正極と、リチウムを吸蔵・放出可能 負極と、リチウム塩を電解塩とする非水電 質とを備える。更に、正極と負極との間に 非水電解質を保持するセパレータを備えて ても良い。正極と負極との接触による短絡 効果的に防止するには、このようにセパレ タを介在させるのが望ましい。

〈負極〉
 負極は通常、正極と同様に、負極集電体上 負極活物質層を形成して構成される。
 負極集電体の材質としては、銅、ニッケル ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属 料や、カーボンクロス、カーボンペーパー の炭素材料が用いられる。中でも金属材料 場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金 板、金属薄膜等が、炭素材料の場合、炭素 、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。中 も、金属薄膜が、現在工業化製品に使用さ ていることから好ましい。なお、薄膜は適 メッシュ状に形成しても良い。負極集電体 して金属薄膜を使用する場合、その好適な さの範囲は、正極集電体について上述した 囲と同様である。

 負極活物質層は、負極活物質を含んで構 される。負極活物質としては、電気化学的 リチウムイオンを吸蔵・放出可能なもので れば、その種類に他に制限はないが、通常 安全性の高さの面から、リチウムを吸蔵、 出できる炭素材料が用いられる。

 炭素材料としては、その種類に特に制限 ないが、人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛(グラ ファイト)や、様々な熱分解条件での有機物 熱分解物が挙げられる。有機物の熱分解物 しては、石炭系コークス、石油系コークス 石炭系ピッチの炭化物、石油系ピッチの炭 物、或いはこれらピッチを酸化処理したも の炭化物、ニードルコークス、ピッチコー ス、フェノール樹脂、結晶セルロース等の 化物等及びこれらを一部黒鉛化した炭素材 ファーネスブラック、アセチレンブラック ピッチ系炭素繊維等が挙げられる。中でも 鉛が好ましく、特に好適には、種々の原料 ら得た易黒鉛性ピッチに高温熱処理を施す とによって製造された、人造黒鉛、精製天 黒鉛、又はこれらの黒鉛にピッチを含む黒 材料等であって、種々の表面処理を施した のが主として使用される。これらの炭素材 は、それぞれ1種を単独で用いても良いし、2 種以上を組み合わせて用いても良い。

 負極活物質として黒鉛材料を用いる場合、 振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd 値(層間距離:d 002 )が、通常0.335nm以上、また、通常0.34nm以下、 ましくは0.337nm以下であるものが好ましい。

 また、黒鉛材料の灰分が、黒鉛材料の重 に対して通常1重量%以下、中でも0.5重量%以 、特に0.1重量%以下であることが好ましい。

 更に、学振法によるX線回折で求めた黒鉛 材料の結晶子サイズ(Lc)が、通常30nm以上、中 も50nm以上、特に100nm以上であることが好ま い。

 また、レーザー回折・散乱法により求め 黒鉛材料のメジアン径が、通常1μm以上、中 でも3μm以上、更には5μm以上、特に7μm以上、 また、通常100μm以下、中でも50μm以下、更に 40μm以下、特に30μm以下であることが好まし い。

 また、黒鉛材料のBET法比表面積は、通常0.5m 2 /g以上、好ましくは0.7m 2 /g以上、より好ましくは1.0m 2 /g以上、更に好ましくは1.5m 2 /g以上、また、通常25.0m 2 /g以下、好ましくは20.0m 2 /g以下、より好ましくは15.0m 2 /g以下、更に好ましくは10.0m 2 /g以下である。

 更に、黒鉛材料についてアルゴンレーザー を用いたラマンスペクトル分析を行った場 に、1580~1620cm -1 の範囲で検出されるピークP A の強度I A と、1350~1370cm -1 の範囲で検出されるピークP B の強度I B との強度比I A /I B が、0以上0.5以下であるものが好ましい。ま 、ピークP A の半価幅は26cm -1 以下が好ましく、25cm -1 以下がより好ましい。

 なお、上述の各種の炭素材料の他に、リチ ムの吸蔵及び放出が可能なその他の材料の 極活物質として用いることもできる。炭素 料以外の負極活物質の具体例としては、酸 錫や酸化ケイ素などの金属酸化物、Li 2.6 Co 0.4 Nなどの窒化物、リチウム単体やリチウムア ミニウム合金等のリチウム合金などが挙げ れる。これらの炭素材料以外の材料は、そ ぞれ1種を単独で用いてもよいし、2種以上を 組み合わせて用いても良い。また、上述の炭 素材料と組み合わせて用いても良い。

 負極活物質層は、通常は正極活物質層の 合と同様に、上述の負極活物質と、結着剤 、必要に応じて導電材及び増粘剤とを液体 体でスラリー化したものを負極集電体に塗 し、乾燥することにより製造することがで る。スラリーを形成する液体媒体や結着剤 増粘剤、導電材等としては、正極活物質層 ついて上述したものと同様のものを使用す ことができる。

〈非水電解質〉
 非水電解質としては、例えば公知の有機電 液、高分子固体電解質、ゲル状電解質、無 固体電解質等を用いることができるが、中 も有機電解液が好ましい。有機電解液は、 機溶媒に溶質(電解質)を溶解させて構成さ る。

 ここで、有機溶媒の種類は特に限定され いが、例えばカーボネート類、エーテル類 ケトン類、スルホラン系化合物、ラクトン 、ニトリル類、塩素化炭化水素類、エーテ 類、アミン類、エステル類、アミド類、リ 酸エステル化合物等を使用することができ 。代表的なものを列挙すると、ジメチルカ ボネート、ジエチルカーボネート、エチル チルカーボネート、プロピレンカーボネー 、エチレンカーボネート、ビニレンカーボ ート、ビニルエチレンカーボネート、テト ヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラ 、1,4-ジオキサン、4-メチル-2-ペンタノン、1, 2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、 γ-ブチロラクトン、1,3-ジオキソラン、4-メチ ル-1,3-ジオキソラン、ジエチルエーテル、ス ホラン、メチルスルホラン、アセトニトリ 、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、ブ ロニトリル、バレロニトリル、1,2-ジクロロ エタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルス ルホキシド、リン酸トリメチル、リン酸トリ エチル等が挙げられ、これら化合物は、水素 原子が一部ハロゲン原子で置換されていても よい。また、これらの単独若しくは2種類以 の混合溶媒が使用できる。

 上述の有機溶媒には、電解塩を解離させ ために、高誘電率溶媒を含めることが好ま い。ここで、高誘電率溶媒とは、25℃にお る比誘電率が20以上の化合物を意味する。高 誘電率溶媒の中でも、エチレンカーボネート 、プロピレンカーボネート、及び、それらの 水素原子をハロゲン等の他の元素又はアルキ ル基等で置換した化合物が、電解液中に含ま れることが好ましい。高誘電率溶媒の電解液 に占める割合は、好ましくは20重量%以上、更 に好ましくは25重量%以上、最も好ましくは30 量%以上である。高誘電率溶媒の含有量が上 記範囲よりも少ないと、所望の電池特性が得 られない場合がある。

 また、有機電解液中には、CO 2 、N 2 O、CO、SO 2 等のガスやビニレンカーボネート、ポリサル ファイドS x 2- など、負極表面にリチウムイオンの効率良い 充放電を可能にする良好な被膜を形成する添 加剤を、任意の割合で添加しても良い。この ような添加剤としてはなかでもとりわけビニ レンカーボネートが好ましい。

 電解塩の種類も特に限定されず、従来公知 任意の溶質を使用することができる。具体 としては、LiClO 4 、LiAsF 6 、LiPF 6 、LiBF 4 、LiB(C 6 H 5 ) 4 、LiBOB、LiCl、LiBr、CH 3 SO 3 Li、CF 3 SO 3 Li、LiN(SO 2 CF 3 ) 2 、LiN(SO 2 C 2 F 5 ) 2 、LiC(SO 2 CF 3 ) 3 、LiN(SO 3 CF 3 ) 2 等が挙げられる。これらの電解塩は任意の1 を単独で用いても良く、2種以上を任意の組 合わせ及び比率で併用しても良い。

 電解塩のリチウム塩は電解液中に、通常0 .5mol/L以上1.5mol/L以下となるように含有させる 。電解液中のリチウム塩濃度が0.5mol/L未満で 1.5mol/Lを超えても、電気伝導度が低下し、 池特性に悪影響を与えることがある。この 度の下限としては0.75mol/L以上、上限として1. 25mol/L以下が好ましい。

 高分子固体電解質を使用する場合にも、そ 種類は特に限定されず、固体電解質として 知の任意の結晶質・非晶質の無機物を用い ことができる。結晶質の無機固体電解質と ては、例えば、LiI、Li 3 N、Li 1+x J x Ti 2-x (PO 4 ) 3 (J=Al、Sc、Y、La)、Li 0.5-3x RE 0.5+x TiO 3 (RE=La、Pr、Nd、Sm)等が挙げられる。また、非 質の無機固体電解質としては、例えば、4.9Li I-34.1Li 2 O-61B 2 O 5 、33.3Li 2 O-66.7SiO 2 等の酸化物ガラス等が挙げられる。これらは 任意の1種を単独で用いても良く、2種以上を 意の組み合わせ及び比率で用いても良い。

〈セパレータ〉
 電解質として前述の有機電解液を用いる場 には、電極同士の短絡を防止するために、 極と負極との間にセパレータが介装される セパレータの材質や形状は特に制限されな が、使用する有機電解液に対して安定で、 液性に優れ、且つ、電極同士の短絡を確実 防止できるものが好ましい。好ましい例と ては、各種の高分子材料からなる微多孔性 フィルム、シート、不織布等が挙げられる 高分子材料の具体例としては、ナイロン、 ルロースアセテート、ニトロセルロース、 リスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリ ッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエ レン、ポリブテン等のポリオレフィン高分 が用いられる。特に、セパレータの重要な 子である化学的及び電気化学的な安定性の 点からは、ポリオレフィン系高分子が好ま く、電池におけるセパレータの使用目的の つである自己閉塞温度の点からは、ポリエ レンが特に望ましい。

 ポリエチレンからなるセパレータを用い 場合、高温形状維持性の点から、超高分子 リエチレンを用いることが好ましく、その 子量の下限は好ましくは50万、更に好まし は100万、最も好ましくは150万である。他方 分子量の上限は、好ましくは500万、更に好 しくは400万、最も好ましくは300万である。 子量が大きすぎると流動性が低くなりすぎ しまい、加熱された時にセパレータの孔が 塞しない場合があるからである。

〈電池形状〉
 本発明のリチウム二次電池は、上述した本 明のリチウム二次電池用正極と、負極と、 解質と、必要に応じて用いられるセパレー とを、適切な形状に組み立てることにより 造される。更に、必要に応じて外装ケース の他の構成要素を用いることも可能である

 本発明のリチウム二次電池の形状は特に 限されず、一般的に採用されている各種形 の中から、その用途に応じて適宜選択する とができる。一般的に採用されている形状 例としては、シート電極及びセパレータを パイラル状にしたシリンダータイプ、ペレ ト電極及びセパレータを組み合わせたイン イドアウト構造のシリンダータイプ、ペレ ト電極及びセパレータを積層したコインタ プなどが挙げられる。また、電池を組み立 る方法も特に制限されず、目的とする電池 形状に合わせて、通常用いられている各種 法の中から適宜選択することができる。

 以上、本発明のリチウム二次電池の一般 な実施形態について説明したが、本発明の チウム二次電池は上記実施形態に制限され ものではなく、その要旨を超えない限りに いて、各種の変形を加えて実施することが 能である。

 以下に実施例により本発明を更に詳細に 明するが、本発明はその要旨を超えない限 、これらの実施例によってなんら制限され ものではない。

[物性の測定方法]
 後述の各実施例及び比較例において製造さ たリチウム遷移金属系化合物粉体の物性等 、各々次のようにして測定した。

 <組成(Li/Ni/Mn/Co)>
 ICP-AES分析により求めた。

 <添加元素(Mo,W,Nb,B,Sn)の定量>
 ICP-AES分析により求めた。

 <X線光電子分光法(XPS)による一次粒子表面 の組成分析>
 Physical Electronics社製 X線光電子分光装置「E SCA-5700」を用い、下記条件で行った。
  X線源:単色化AlKα
  分析面積:0.8mm径
  取り出し角:65°
  定量方法:Bls、Mn2p 1/2 、Co2p 3/2 、Ni2p 3/2 、W4f各ピークの面積を感度係数で補正。

 <二次粒子のメジアン径>
 超音波分散5分後に測定した。

 <平均一次粒子径>
 30,000倍のSEM画像により求めた。

 <水銀圧入法による各種物性の測定>
 水銀圧入法による測定装置としては、Microme ritics社製オートポアIII9420型を用いた。また 水銀圧入法の測定条件としては、室温で3.86k Paから413MPaまで昇圧しながら測定を行った。 お、水銀の表面張力の値としては480dyn/cm、 触角の値としては141.3°を用いた。

 <嵩密度>
 試料粉体4~10gを10mlのガラス製メスシリンダ に入れ、ストローク約20mmで200回タップした 時の粉体充填密度として求めた。

 <比表面積>
 BET法により求めた。

 <含有炭素濃度C>
 (株)堀場製作所製EMIA-520炭素硫黄分析計を使 用した。数十から100mgの試料を、空焼きした 性るつぼに秤り取り、助燃剤を加えて、酸 気流中、高周波加熱炉で炭素を燃焼抽出し 。燃焼ガス中のCO 2 を、非分散赤外吸光光度法により定量した。 感度較正には社団法人日本鉄鋼連盟製150-15低 合金鋼1号(C保障値:0.469重量%)を使用した。

 <体積抵抗率>
 粉体抵抗率測定装置(ダイアインスツルメン ツ社製:ロレスターGP粉体低効率測定システム PD-41)を用い、試料重量3gとし、粉体用プロー ユニット(四探針・リング電極、電極間隔5.0 mm、電極半径1.0mm、試料半径12.5mm)により、印 電圧リミッタを90Vとして、種々加圧下の粉 の体積抵抗率[ω・cm]を測定し、40MPaの圧力 における体積抵抗率の値について比較した

 <結晶相(層状構造)の確認、半価幅FWHM(110) 測定
 (018)(110)(113)回折ピーク中の異相ピークの有 確認並びに異相ピーク/本来の結晶相ピーク の積分強度及び積分強度比の算出>
 以下に記載のCuKα線を使用した粉末X線回折 定により求めた。各試料で観測された 六 晶系R-3m(No.166)由来の(018)、(110)、(113)回折ピ クについて、プロファイルフィッティング 実施し積分強度、積分強度比等を算出した
 ・半価幅、面積の算出は、集中法の固定ス ットモードで測定した場合の回折パターン 使用
 ・実際のXRD測定(実施例、比較例)は、可変 リットモードで測定し、可変→固定のデー 変換を実施
 ・可変→固定の変換は、強度(固定)=強度(可 変)/sinθの計算式による
(粉末X線回折測定装置仕様)
  装置名:オランダ PANalytical社製 X'Pert Pro  MPD
  光学系:集中法光学系
(光学系仕様)
  入射側:封入式X線管球(CuKα)
        Soller Slit(0.04rad)
        Divergence Slit (Variable Slit)
  試料台:回転試料台(Spinner)
  受光側:半導体アレイ検出器(X'Celerator)
      Ni-filter
  ゴニオ半径:243mm
(測定条件)
  X線出力(CuKα):40kV、30mA
  走査軸:θ/2θ
  走査範囲(2θ):10.0-75.0°
  測定モード:Continuous
  読込幅:0.015°
  計数時間:99.7sec
  自動可変スリット(Automatic-DS:10mm(照射幅))
  横発散マスク:10mm(照射幅)

 <スラリー中の粉砕粒子のメジアン径>
 公知のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装 置を用い、屈折率を1.24に設定し、粒子径基 を体積基準として測定した。また、分散媒 しては0.1重量%ヘキサメタリン酸ナトリウム 溶液を用い、5分間の超音波分散(出力30W、 波数22.5kHz)後に測定を行った。

 <原料Li 2 CO 3 粉末の平均粒子径としてのメジアン径>
 公知のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装 置(堀場製作所製、LA-920)を用い、屈折率を1.24 に設定し、粒子径基準を体積基準として測定 した。また、分散媒としてエチルアルコール を用い、5分間の超音波分散(出力30W、周波数2 2.5kHz)後に測定を行った。

 <噴霧乾燥により得られた粒子状粉体の物 性>
 形態はSEM観察及び断面SEM観察により確認し 。平均粒子径としてのメジアン径及び90%積 径(D 90 )は、公知のレーザー回折/散乱式粒度分布測 装置(堀場製作所製、LA-920)によって、屈折 を1.24に設定し、粒子径基準を体積基準とし 測定した。また、分散媒としては0.1重量%ヘ キサメタリン酸ナトリウム水溶液を用い、0 、1分、3分、5分間の超音波分散(出力30W、周 数22.5kHz)後に測定を行った。比表面積は、BE T法により求めた。嵩密度は、試料粉体4~6gを1 0mlのガラス製メスシリンダーに入れ、ストロ ーク約20mmで200回タップした時の粉体充填密 として求めた。

 [リチウム遷移金属系化合物粉体の製造( 施例及び比較例)]

 実施例1
 Li 2 CO 3 、Ni(OH) 2 、Mn 3 O 4 、CoOOH、H 3 BO 3 、WO 3 を、Li:Ni:Mn:Co:B:W=1.12:0.45:0.45:0.10:0.005:0.010のモ 比となるように秤量し、混合した後、これ 純水を加えてスラリーを調製した。このス リーを攪拌しながら、循環式媒体攪拌型湿 粉砕機を用いて、スラリー中の固形分をメ アン径0.15μmに粉砕した。
 次に、このスラリー(固形分含有量15重量%、 粘度1140cp)を、二流体ノズル型スプレードラ ヤー(大川原化工機(株)製:LT-8型)を用いて噴 乾燥した。この時の乾燥ガスとして空気を い、乾燥ガス導入量Gは45L/min、スラリー導入 量Sは7×10 -3 L/minとした(気液比G/S=6429)。また、乾燥入り口 温度は150℃とした。スプレードライヤーによ り噴霧乾燥して得られた粒子状粉末、約15gを アルミナ製るつぼに仕込み、空気雰囲気下、 950℃で6時間焼成(昇降温速度3.33℃/min.)した後 、解砕して、体積抵抗率が2.5×10 6 ω・cm、含有炭素濃度Cは0.064重量%、組成がLi 1.118 (Ni 0.451 Mn 0.451 Co 0.098 )O 2 の層状構造を有するリチウムニッケルマンガ ンコバルト複合酸化物(x=0.098、y=0.000、z=0.118) 得た。また、(Ni,Mn,Co)トータルのモル比を1 した時、B及びWの含有モル比率はそれぞれ0.3 9モル%、0.96モル%であった。この平均一次粒 は0.3μmで、メジアン径は4.7μm、90%積算径(D 90 )は7.0μm、嵩密度は1.2g/cc、BET比表面積は1.8m 2 /gであった。さらに、粒子全体のB(ホウ素)の 子比(B/(Ni+Mn+Co))に対して、一次粒子表面のB 原子比は69倍、粒子全体のW(タングステン) 原子比(W/(Ni+Mn+Co))に対して、一次粒子表面の Wの原子比は6.0倍となっていた。

 実施例2
 Li 2 CO 3 、Ni(OH) 2 、Mn 3 O 4 、CoOOH、H 3 BO 3 、WO 3 を、Li:Ni:Mn:Co:B:W=1.12:0.45:0.45:0.10:0.005:0.010のモ 比となるように秤量し、混合した後、これ 純水を加えてスラリーを調製した。このス リーを攪拌しながら、循環式媒体攪拌型湿 粉砕機を用いて、スラリー中の固形分をメ アン径0.27μmに粉砕した。
 次に、このスラリー(固形分含有量15重量%、 粘度650cp)を、二流体ノズル型スプレードライ ヤー(大川原化工機(株)製:LT-8型)を用いて噴霧 乾燥した。この時の乾燥ガスとして空気を用 い、乾燥ガス導入量Gは45L/min、スラリー導入 Sは6×10 -3 L/minとした(気液比G/S=7500)。また、乾燥入り口 温度は150℃とした。スプレードライヤーによ り噴霧乾燥して得られた粒子状粉末、約15gを アルミナ製るつぼに仕込み、空気雰囲気下、 1000℃で6時間焼成(昇降温速度3.33℃/min.)した 、解砕して、体積抵抗率が1.5×10 6 ω・cm、含有炭素濃度Cは0.038重量%、組成がLi 1.129 (Ni 0.448 Mn 0.454 Co 0.098 )O 2 の層状構造を有するリチウムニッケルマンガ ンコバルト複合酸化物(x=0.098、y=-0.007、z=0.129) を得た。また、(Ni,Mn,Co)トータルのモル比を1 した時、B及びWの含有モル比率はそれぞれ0. 39モル%、0.96モル%であった。この平均一次粒 は0.6μmで、メジアン径は4.1μm、90%積算径(D 90 )は6.2μm、嵩密度は1.5g/cc、BET比表面積は1.0m 2 /gであった。さらに、粒子全体のB(ホウ素)の 子比(B/(Ni+Mn+Co))に対して、一次粒子表面のB 原子比は134倍、粒子全体のW(タングステン) 原子比(W/(Ni+Mn+Co))に対して、一次粒子表面 Wの原子比は12倍となっていた。

 実施例3
 Li 2 CO 3 、Ni(OH) 2 、Mn 3 O 4 、CoOOH、H 3 BO 3 、WO 3 を、Li:Ni:Mn:Co:B:W=1.12:0.45:0.45:0.10:0.0025:0.005のモ ル比となるように秤量し、混合した後、これ に純水を加えてスラリーを調製した。このス ラリーを攪拌しながら、循環式媒体攪拌型湿 式粉砕機を用いて、スラリー中の固形分をメ ジアン径0.38μmに粉砕した。
 次に、このスラリー(固形分含有量15重量%、 粘度750cp)を、二流体ノズル型スプレードライ ヤー(大川原化工機(株)製:LT-8型)を用いて噴霧 乾燥した。この時の乾燥ガスとして空気を用 い、乾燥ガス導入量Gは45L/min、スラリー導入 Sは6×10 -3 L/minとした(気液比G/S=7500)。また、乾燥入り口 温度は150℃とした。スプレードライヤーによ り噴霧乾燥して得られた粒子状粉末、約15gを アルミナ製るつぼに仕込み、空気雰囲気下、 1000℃で6時間焼成(昇降温速度3.33℃/min.)した 、解砕して、体積抵抗率が7.3×10 5 ω・cm、含有炭素濃度は0.038重量%、組成がLi 1.135 (Ni 0.447 Mn 0.456 Co 0.097 )O 2 のリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸 化物(x=0.097、y=-0.010、z=0.135)を得た。また、(Ni ,Mn,Co)トータルのモル比を1とした時、B及びW 含有モル比率はそれぞれ0.23モル%、0.51モル% あった。この平均一次粒径は1.0μmで、メジ ン径は3.6μm、90%積算径(D 90 )は5.7μm、嵩密度は1.3g/cc、BET比表面積は0.8m 2 /gであった。さらに、粒子全体のB(ホウ素)の 子比(B/(Ni+Mn+Co))に対して、一次粒子表面のB 原子比は71倍、粒子全体のW(タングステン) 原子比(W/(Ni+Mn+Co))に対して、一次粒子表面の Wの原子比は16倍となっていた。

 実施例4
 Li 2 CO 3 、Ni(OH) 2 、Mn 3 O 4 、CoOOH、H 3 BO 3 、WO 3 を、Li:Ni:Mn:Co:B:W=1.12:0.45:0.45:0.10:0.0025:0.01のモ 比となるように秤量し、混合した後、これ 純水を加えてスラリーを調製した。このス リーを攪拌しながら、循環式媒体攪拌型湿 粉砕機を用いて、スラリー中の固形分をメ アン径0.27μmに粉砕した。
 次に、このスラリー(固形分含有量15重量%、 粘度1020cp)を、二流体ノズル型スプレードラ ヤー(大川原化工機(株)製:LT-8型)を用いて噴 乾燥した。この時の乾燥ガスとして空気を い、乾燥ガス導入量Gは45L/min、スラリー導入 量Sは6×10 -3 L/minとした(気液比G/S=7500)。また、乾燥入り口 温度は150℃とした。スプレードライヤーによ り噴霧乾燥して得られた粒子状粉末、約15gを アルミナ製るつぼに仕込み、空気雰囲気下、 1000℃で6時間焼成(昇降温速度3.33℃/min.)した 、解砕して、体積抵抗率が3.0×10 6 ω・cm、含有炭素濃度は0.047重量%、組成がLi 1.134 (Ni 0.449 Mn 0.453 Co 0.098 )O 2 のリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸 化物(x=0.098、y=-0.004、z=0.134)を得た。また、(Ni ,Mn,Co)トータルのモル比を1とした時、B及びW 含有モル比率はそれぞれ0.23モル%、1.00モル% あった。この平均一次粒径は0.5μmで、メジ ン径は2.1μm、90%積算径(D 90 )は3.9μm、嵩密度は1.2g/cc、BET比表面積は1.5m 2 /gであった。さらに、粒子全体のB(ホウ素)の 子比(B/(Ni+Mn+Co))に対して、一次粒子表面のB 原子比は53倍、粒子全体のW(タングステン) 原子比(W/(Ni+Mn+Co))に対して、一次粒子表面の Wの原子比は9.4倍となっていた。

 実施例5
 Li 2 CO 3 、Ni(OH) 2 、Mn 3 O 4 、CoOOH、H 3 BO 3 、WO 3 を、Li:Ni:Mn:Co:B:W=1.05:0.333:0.333:0.333:0.005:0.005の ル比となるように秤量し、混合した後、こ に純水を加えてスラリーを調製した。この ラリーを攪拌しながら、循環式媒体攪拌型 式粉砕機を用いて、スラリー中の固形分を ジアン径0.31μmに粉砕した。
 次に、このスラリー(固形分含有量18重量%、 粘度830cp)を、二流体ノズル型スプレードライ ヤー(大川原化工機(株)製:LT-8型)を用いて噴霧 乾燥した。この時の乾燥ガスとして空気を用 い、乾燥ガス導入量Gは45L/min、スラリー導入 Sは6×10 -3 L/minとした(気液比G/S=7500)。また、乾燥入り口 温度は150℃とした。スプレードライヤーによ り噴霧乾燥して得られた粒子状粉末、約10gを アルミナ製るつぼに仕込み、空気雰囲気下、 940℃で6時間焼成(昇降温速度3.33℃/min.)した後 、解砕して、体積抵抗率が2.0×10 6 ω・cm、含有炭素濃度は0.031重量%、組成がLi 1.054 (Ni 0.332 Mn 0.335 Co 0.333 )O 2 のリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸 化物(x=0.333、y=-0.004、z=0.054)を得た。また、(Ni ,Mn,Co)トータルのモル比を1とした時、B及びW 含有モル比率はそれぞれ0.41モル%、0.50モル% あった。この平均一次粒径は0.6μmで、メジ ン径は3.8μm、90%積算径(D 90 )は7.5μm、嵩密度は1.2g/cc、BET比表面積は1.2m 2 /gであった。さらに、粒子全体のB(ホウ素)の 子比(B/(Ni+Mn+Co))に対して、一次粒子表面のB 原子比は73倍、粒子全体のW(タングステン) 原子比(W/(Ni+Mn+Co))に対して、一次粒子表面の Wの原子比は15倍となっていた。

 SERS測定
 実施例1~5で得られたリチウム遷移金属系化 物粉体について、以下の測定条件にてSERSを 測定した。得られたSERSパターンをそれぞれ 図37~41に示す。

<SERS測定方法>
装置:Thermo Fisher Scientific製 Nicoret Almega XR
前処理:銀蒸着(10nm)
励起波長:532nm
励起出力:試料位置で0.5mW以下
解析方法:各ピークから直線バックグラウン を除いた高さ及び半値幅を測定
スペクトル分解能:10cm -1

 得られた結果を纏めたものを以下の表1に 示す。

 ToF-SIMS測定方法
 実施例1で得られた正極活物質について、以 下の測定条件にてToF-SIMSを測定した。得られ ToF-SIMSパターンを図42に示す。

<ToF-SIMS測定方法>
 装置:ION-TOF社製 TOF-SIMS IV
 一次イオン:Bi 3 ++
 加速電圧:25kV
 照射電流:0.1pA
 照射領域:200μm×200μm
 積算時間:98秒間
 図42に示すとおり、質量数272から277の範囲 BWO 5 - に由来する6本のピークが検出された(図42(a)) さらに、M’BWO 6 - に由来するピーク群も検出され、質量数344か ら348には特に強い5本のピークが検出された( 42(b))。

 比較例1
 Li 2 CO 3 、Ni(OH) 2 、Mn 3 O 4 、CoOOH、Li 2 WO 4 を、Li:Ni:Mn:Co:W=1.10:0.45:0.45:0.10:0.005のモル比と なるように秤量し、混合した後、これに純水 を加えてスラリーを調製した。このスラリー を攪拌しながら、循環式媒体攪拌型湿式粉砕 機を用いて、スラリー中の固形分をメジアン 径0.16μmに粉砕した。
 次に、このスラリー(固形分含有量15重量%、 粘度1720cp)を、二流体ノズル型スプレードラ ヤー(大川原化工機(株)製:LT-8型)を用いて噴 乾燥した。この時の乾燥ガスとして空気を い、乾燥ガス導入量Gは45L/min、スラリー導入 量Sは6×10 -3 L/minとした(気液比G/S=7500)。また、乾燥入り口 温度は150℃とした。スプレードライヤーによ り噴霧乾燥して得られた粒子状粉末、約15gを アルミナ製るつぼに仕込み、空気雰囲気下、 1000℃で6時間焼成(昇降温速度3.33℃/min.)した 、解砕して、体積抵抗率が5.4×10 4 ω・cm、含有炭素濃度Cは0.042重量%、組成がLi 1.114 (Ni 0.453 Mn 0.450 Co 0.097 )O 2 の層状構造を有するリチウムニッケルマンガ ンコバルト複合酸化物(x=0.097、y=0.003、z=0.114) 得た。また、(Ni,Mn,Co)トータルのモル比を1 した時、Wの含有モル比率は0.62モル%であっ 。この平均一次粒径は0.4μmで、メジアン径 1.4μm、90%積算径(D 90 )は2.1μm、嵩密度は1.1g/cc、BET比表面積は2.1m 2 /gであった。さらに、粒子全体のW(タングス ン)の原子比(W/(Ni+Mn+Co)に対して、一次粒子表 面のWの原子比は9.8倍となっていた。

 比較例2
 Li 2 CO 3 、Ni(OH) 2 、Mn 3 O 4 、CoOOH、Li 2 WO 4 を、Li:Ni:Mn:Co:W=1.10:0.45:0.45:0.10:0.01のモル比と るように秤量し、混合した後、これに純水 加えてスラリーを調製した。このスラリー 攪拌しながら、循環式媒体攪拌型湿式粉砕 を用いて、スラリー中の固形分をメジアン 0.17μmに粉砕した。
 次に、このスラリー(固形分含有量15重量%、 粘度1890cp)を、二流体ノズル型スプレードラ ヤー(大川原化工機(株)製:LT-8型)を用いて噴 乾燥した。この時の乾燥ガスとして空気を い、乾燥ガス導入量Gは45L/min、スラリー導入 量Sは7×10 -3 L/minとした(気液比G/S=6429)。また、乾燥入り口 温度は150℃とした。スプレードライヤーによ り噴霧乾燥して得られた粒子状粉末、約15gを アルミナ製るつぼに仕込み、空気雰囲気下、 1000℃で6時間焼成(昇降温速度3.33℃/min.)した 、解砕して、体積抵抗率が4.7×10 4 ω・cm、含有炭素濃度Cは0.030重量%、組成がLi 1.139 (Ni 0.450 Mn 0.452 Co 0.098 )O 2 の層状構造を有するリチウムニッケルマンガ ンコバルト複合酸化物(x=0.098、y=-0.002、z=0.139) を得た。また、(Ni,Mn,Co)トータルのモル比を1 した時、Wの含有モル比率は1.03モル%であっ 。この平均一次粒径は0.3μmで、メジアン径 2.2μm、90%積算径(D 90 )は3.9μm、嵩密度は1.0g/cc、BET比表面積は2.9m 2 /gであった。さらに、粒子全体のW(タングス ン)の原子比(W/(Ni+Mn+Co)に対して、一次粒子表 面のWの原子比は9.4倍となっていた。

 比較例3
 Li 2 CO 3 、Ni(OH) 2 、Mn 3 O 4 、CoOOH、Li 2 WO 4 を、Li:Ni:Mn:Co:W=1.10:0.45:0.45:0.10:0.02のモル比と るように秤量し、混合した後、これに純水 加えてスラリーを調製した。このスラリー 攪拌しながら、循環式媒体攪拌型湿式粉砕 を用いて、スラリー中の固形分をメジアン 0.13μmに粉砕した。
 次に、このスラリー(固形分含有量15重量%、 粘度1910cp)を、二流体ノズル型スプレードラ ヤー(大川原化工機(株)製:LT-8型)を用いて噴 乾燥した。この時の乾燥ガスとして空気を い、乾燥ガス導入量Gは45L/min、スラリー導入 量Sは7×10 -3 L/minとした(気液比G/S=6429)。また、乾燥入り口 温度は150℃とした。スプレードライヤーによ り噴霧乾燥して得られた粒子状粉末、約15gを アルミナ製るつぼに仕込み、空気雰囲気下、 1000℃で6時間焼成(昇降温速度3.33℃/min.)した 、解砕して、体積抵抗率が1.1×10 4 ω・cm、含有炭素濃度Cは0.050重量%、組成がLi 1.124 (Ni 0.457 Mn 0.446 Co 0.097 )O 2 の層状構造を有するリチウムニッケルマンガ ンコバルト複合酸化物(x=0.097、y=0.012、z=0.124) 得た。また、(Ni,Mn,Co)トータルのモル比を1 した時、Wの含有モル比率は2.06モル%であっ 。この平均一次粒径は0.2μmで、メジアン径 0.8μm、90%積算径(D 90 )は1.3μm、嵩密度は0.9g/cc、BET比表面積は3.8m 2 /gであった。さらに、粒子全体のW(タングス ン)の原子比(W/(Ni+Mn+Co)に対して、一次粒子表 面のWの原子比は6.0倍となっていた。

 比較例4
 Li 2 CO 3 、Ni(OH) 2 、Mn 3 O 4 、CoOOH、WO 3 を、Li:Ni:Mn:Co:W=1.10:0.45:0.45:0.10:0.005のモル比と なるように秤量し、混合した後、これに純水 を加えてスラリーを調製した。このスラリー を攪拌しながら、循環式媒体攪拌型湿式粉砕 機を用いて、スラリー中の固形分をメジアン 径0.17μmに粉砕した。
 次に、このスラリー(固形分含有量14重量%、 粘度1670cp)を、二流体ノズル型スプレードラ ヤー(大川原化工機(株)製:LT-8型)を用いて噴 乾燥した。この時の乾燥ガスとして空気を い、乾燥ガス導入量Gは45L/min、スラリー導入 量Sは7×10 -3 L/minとした(気液比G/S=6429)。また、乾燥入り口 温度は150℃とした。スプレードライヤーによ り噴霧乾燥して得られた粒子状粉末、約15gを アルミナ製るつぼに仕込み、空気雰囲気下、 1000℃で6時間焼成(昇降温速度3.33℃/min.)した 、解砕して、体積抵抗率が5.8×10 4 ω・cm、含有炭素濃度Cは0.033重量%、組成がLi 1.094 (Ni 0.453 Mn 0.450 Co 0.097 )O 2 の層状構造を有するリチウムニッケルマンガ ンコバルト複合酸化物(x=0.097、y=0.003、z=0.094) 得た。また、(Ni,Mn,Co)トータルのモル比を1 した時、Wの含有モル比率は0.51モル%であっ 。この平均一次粒径は0.5μmで、メジアン径 1.6μm、90%積算径(D 90 )は2.4μm、嵩密度は1.0g/cc、BET比表面積は2.2m 2 /gであった。さらに、粒子全体のW(タングス ン)の原子比(W/(Ni+Mn+Co)に対して、一次粒子表 面のWの原子比は12倍となっていた。

 比較例5
 Li 2 CO 3 、Ni(OH) 2 、Mn 3 O 4 、CoOOH、Li 2 B 4 O 7 を、Li:Ni:Mn:Co:B=1.10:0.45:0.45:0.10:0.005のモル比と なるように秤量し、混合した後、これに純水 を加えてスラリーを調製した。このスラリー を攪拌しながら、循環式媒体攪拌型湿式粉砕 機を用いて、スラリー中の固形分をメジアン 径0.16μmに粉砕した。
 次に、このスラリー(固形分含有量15重量%、 粘度1460cp)を、二流体ノズル型スプレードラ ヤー(大川原化工機(株)製:LT-8型)を用いて噴 乾燥した。この時の乾燥ガスとして空気を い、乾燥ガス導入量Gは45L/min、スラリー導入 量Sは6×10 -3 L/minとした(気液比G/S=7500)。また、乾燥入り口 温度は150℃とした。スプレードライヤーによ り噴霧乾燥して得られた粒子状粉末、約15gを アルミナ製るつぼに仕込み、空気雰囲気下、 1000℃で6時間焼成(昇降温速度3.33℃/min.)した 、解砕して、体積抵抗率が5.3×10 4 ω・cm、含有炭素濃度Cは0.047重量%、組成がLi 1.096 (Ni 0.450 Mn 0.451 Co 0.099 )O 2 の層状構造を有するリチウムニッケルマンガ ンコバルト複合酸化物(x=0.099、y=-0.001、z=0.096) を得た。また、(Ni,Mn,Co)トータルのモル比を1 した時、Bの含有モル比率は0.24モル%であっ 。この平均一次粒径は1.0μmで、メジアン径 5.9μm、90%積算径(D 90 )は8.9μm、嵩密度は1.8g/cc、BET比表面積は0.8m 2 /gであった。さらに、粒子全体のB(ホウ素)の 子比(B/(Ni+Mn+Co)に対して、一次粒子表面のB 原子比は213倍となっていた。

 比較例6
 Li 2 CO 3 、Ni(OH) 2 、Mn 3 O 4 、CoOOH、H 3 BO 3 を、Li:Ni:Mn:Co:B=1.10:0.45:0.45:0.10:0.005のモル比と なるように秤量し、混合した後、これに純水 を加えてスラリーを調製した。このスラリー を攪拌しながら、循環式媒体攪拌型湿式粉砕 機を用いて、スラリー中の固形分をメジアン 径0.22μmに粉砕した。
 次に、このスラリー(固形分含有量15重量%、 粘度1450cp)を、二流体ノズル型スプレードラ ヤー(大川原化工機(株)製:LT-8型)を用いて噴 乾燥した。この時の乾燥ガスとして空気を い、乾燥ガス導入量Gは45L/min、スラリー導入 量Sは7×10 -3 L/minとした(気液比G/S=6429)。また、乾燥入り口 温度は150℃とした。スプレードライヤーによ り噴霧乾燥して得られた粒子状粉末、約15gを アルミナ製るつぼに仕込み、空気雰囲気下、 950℃で6時間焼成(昇降温速度3.33℃/min.)した後 、解砕して、体積抵抗率が3.5×10 4 ω・cm、含有炭素濃度Cは0.065重量%、組成がLi 1.096 (Ni 0.447 Mn 0.453 Co 0.100 )O 2 の層状構造を有するリチウムニッケルマンガ ンコバルト複合酸化物(x=0.100、y=-0.007、z=0.096) を得た。また、(Ni,Mn,Co)トータルのモル比を1 した時、Bの含有モル比率は0.39モル%であっ 。この平均一次粒径は0.2μmで、メジアン径 5.5μm、90%積算径(D 90 )は8.6μm、嵩密度は1.2g/cc、BET比表面積は1.8m 2 /gであった。さらに、粒子全体のB(ホウ素)の 子比(B/(Ni+Mn+Co)に対して、一次粒子表面のB 原子比は40倍となっていた。

 比較例7
 Li 2 CO 3 、Ni(OH) 2 、Mn 3 O 4 、CoOOH、H 3 BO 3 を、Li:Ni:Mn:Co:B=1.10:0.45:0.45:0.10:0.005のモル比と なるように秤量し、混合した後、これに純水 を加えてスラリーを調製した。このスラリー を攪拌しながら、循環式媒体攪拌型湿式粉砕 機を用いて、スラリー中の固形分をメジアン 径0.22μmに粉砕した。
 次に、このスラリー(固形分含有量15重量%、 粘度1450cp)を、二流体ノズル型スプレードラ ヤー(大川原化工機(株)製:LT-8型)を用いて噴 乾燥した。この時の乾燥ガスとして空気を い、乾燥ガス導入量Gは45L/min、スラリー導入 量Sは7×10 -3 L/minとした(気液比G/S=6429)。また、乾燥入り口 温度は150℃とした。スプレードライヤーによ り噴霧乾燥して得られた粒子状粉末、約15gを アルミナ製るつぼに仕込み、空気雰囲気下、 1000℃で6時間焼成(昇降温速度3.33℃/min.)した 、解砕して、体積抵抗率が5.8×10 4 ω・cm、含有炭素濃度Cは0.033重量%、組成がLi 1.110 (Ni 0.447 Mn 0.453 Co 0.100 )O 2 の層状構造を有するのリチウムニッケルマン ガンコバルト複合酸化物(x=0.100、y=0.007、z=0.11 0)を得た。また、(Ni,Mn,Co)トータルのモル比を 1とした時、Bの含有モル比率は0.42モル%であ た。この平均一次粒径は0.8μmで、メジアン は5.3μm、90%積算径(D 90 )は7.9μm、嵩密度は1.4g/cc、BET比表面積は1.0m 2 /gであった。さらに、粒子全体のB(ホウ素)の 子比(B/(Ni+Mn+Co)に対して、一次粒子表面のB 原子比は113倍となっていた。

 上記、実施例及び比較例で製造したリチ ム遷移金属系化合物粉体の組成及び物性値 、表2、表3、表4、及び表5に示す。また、焼 成前駆体である噴霧乾燥体の粉体性状を表6 示す。

 また、実施例1~5及び比較例1~7で製造され リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸 物粉体の細孔分布曲線を、図1~12にそれぞれ 示し、SEM画像(写真)(倍率×10,000)を図13~24にそ ぞれ示し、粉末X線回折パターンを図25~36に れぞれ示す。

 〔電池の作製及び評価〕
 上述の実施例1~5及び比較例1~7で製造したリ ウム遷移金属系化合物粉体をそれぞれ正極 料(正極活物質)として用いて、以下の方法 よりリチウム二次電池を作製し、評価を行 た。

 (1)レート試験:
 実施例1~5及び比較例1~7で製造したリチウム 移金属系化合物粉体の各々75重量%と、アセ レンブラック20重量%、ポリテトラフルオロ チレンパウダー5重量%の割合で秤量したも を乳鉢で十分混合し、薄くシート状にした のを9mmφのポンチを用いて打ち抜いた。この 際、全体重量は約8mgになるように調整した。 これをアルミニウムエキスパンドメタルに圧 着して、9mmφの正極とした。

 この9mmφの正極を試験極とし、リチウム金 板を対極とし、EC(エチレンカーボネート):DMC (ジメチルカーボネート):EMC(エチルメチルカ ボネート)=3:3:4(容量比)の溶媒にLiPF 6 を1mol/Lで溶解した電解液を用い、厚さ25μmの 孔性ポリエチレンフィルムをセパレータと てコイン型セルを組み立てた。

 得られたコイン型セルについて、初期2サイ クルは、充電上限電圧を4.4Vに設定して定電 ・定電圧充電(電流密度:0.137mA/cm 2 (0.1C)で4.4Vまで定電流充電後、0.01Cとなるまで 定電圧充電)を行った後、放電下限電圧を3.0V 設定して定電流放電(電流密度0.137mA/cm 2 (0.1C))を行った。さらに3~10サイクル目を、0.2C の定電流・定電圧充電(0.2Cで4.4Vまで定電流充 電後、0.01Cとなるまで定電圧充電)、0.1C、0.2C 0.5C、1C、3C、5C、7C、及び9Cの各定電流放電 の試験を行った。ただし、1C相当の電流は、 活物質1g当たり150mAと仮定した。この時の1サ クル目の0.1C放電容量(mAh/g)(初回放電容量)、 3サイクル目の0.1C放電容量(mAh/g)(3サイクル目 電容量)[a])、6サイクル目の1C放電容量(mAh/g)( 6サイクル目放電容量[b])、及び10サイクル目 9C放電容量(mAh/g))(10サイクル目放電容量[c])を 調べ、結果を表7に示した。

 なお、実施例の合格判定基準として、前 1サイクル目の初期放電容量が170mAh/g以上、3 サイクル目の0.1C放電容量が170mAh/g以上、6サ クル目の1C放電容量が155mAh/g以上、10サイク 目の9C放電容量が120mAh/g以上を設定した。

 (2)低温負荷特性試験:
 実施例1~5及び比較例1~7で製造した層状リチ ムニッケルマンガンコバルト複合酸化物粉 を各々75重量%、アセチレンブラック20重量% ポリテトラフルオロエチレンパウダー5重量 %の割合で秤量したものを乳鉢で十分混合し 薄くシート状にしたものを9mmφ及び12mmφのポ ンチを用いて打ち抜いた。この際、全体重量 は各々約8mg、約18mgになるように調整した。 れをアルミニウムエキスパンドメタルに圧 して、9mmφ及び12mmφの正極とした。9mmφのも を「正極A」、12mmφのものを「正極B」とい 。

 9mmφの正極Aを試験極とし、リチウム金属板 対極とし、EC(エチレンカーボネート):DMC(ジ チルカーボネート):EMC(エチルメチルカーボ ート)=3:3:4(容量比)の溶媒にLiPF 6 を1mol/Lで溶解した電解液を用い、厚さ25μmの 孔性ポリエチレンフィルムをセパレータと てコイン型セルを組み立てた。

 得られたコイン型セルについて、0.2mA/cm 2 の定電流定電圧充電、即ち正極からリチウム イオンを放出させる反応を上限4.2Vで行った 次いで0.2mA/cm 2 、正極活物質単位重量当たりの初期充電容量 をQs(C)[mAh/g]、初期放電容量をQs(D)[mAh/g]とした 。

 負極活物質として平均粒子径8~10μmの黒鉛粉 末(d 002 =3.35Å)、バインダーとしてポリフッ化ビニリ デンをそれぞれ用い、これらを重量比で92.5:7 .5の割合で秤量し、これをN-メチルピロリド 溶液中で混合し、負極合剤スラリーとした このスラリーを20μmの厚さの銅箔の片面に塗 布し、乾燥して溶媒を蒸発させた後、12mmφに 打ち抜き、0.5ton/cm 2 (49MPa)でプレス処理をしたものを負極Bとした この時、電極上の負極活物質の量は約5~12mg なるように調節した。

 なお、この負極Bを試験極とし、リチウム金 属を対極として電池セルを組み、0.2mA/cm 2 -3mVの定電流-定電圧法(カット電流0.05mA)で負 にリチウムイオンを吸蔵させる試験を下限0V で行った際の、負極活物質単位重量当たりの 初期吸蔵容量をQf[mAh/g]とした。

 上記正極Bと負極Bを組み合わせ、コインセ を使用して試験用電池を組み立て、その電 性能を評価した。即ち、コインセルの正極 の上に、作製した上述の正極Bを置き、その にセパレータとして厚さ25μmの多孔性ポリ チレンフィルムを置き、ポリプロピレン製 スケットで押さえた後、非水電解液として EC(エチレンカーボネート):DMC(ジメチルカー ネート):EMC(エチルメチルカーボネート)=3:3:4( 容量比)の溶媒にLiPF 6 を1moll/Lで溶解した電解液を用い、これを缶 に加えてセパレータに十分染み込ませた後 上述の負極Bを置き、負極缶を載せて封口し コイン型のリチウム二次電池を作製した。 お、この時、正極活物質の重量と負極活物 重量のバランスは、ほぼ以下の式を満たす うに設定した。
  正極活物質重量[g]/負極活物質重量[g]
         =(Qf[mAh/g]/1.2)Qs(C)[mAh/g]

 こうして得られた電池の低温負荷特性を測 するため、電池の1時間率電流値、即ち1Cを 式の様に設定し、以下の試験を行った。
  1C[mA] = Qs(D)×正極活物質重量[g]/h

 まず、室温で定電流0.2C充放電2サイクル及 定電流1C充放電1サイクルを行った。なお、 電上限は4.1V、下限電圧は3.0Vとした。次に、 1/3C定電流充放電により、充電深度40%に調整 たコインセルを-30℃の低温雰囲気に1時間以 保持した後、定電流0.5C[mA]で10秒間放電させ た時の10秒後の電圧をV[mV]、放電前の電圧をV 0 [mV]とした時、δV=V-V 0 として下式より抵抗値R[ω]を算出した。
  R[ω] = δV[mV]/0.5C[mA]

 表7に、実施例1~5及び比較例1~7のリチウム ニッケルマンガンコバルト複合酸化物をそれ ぞれ正極活物質とした使用した電池で測定し た抵抗値を示す。抵抗値が小さい程、低温負 荷特性が良好であることを表す。なお、実施 例の合格判定基準として、該抵抗値が480ω以 であることを設定した。

 表7より、本発明のリチウム二次電池正極 材料用リチウムニッケルマンガンコバルト系 複合酸化物粉体等によれば、負荷特性に優れ たリチウム二次電池を実現することができる ことが分かる。

 本発明を特定の態様を用いて詳細に説明し が、本発明の意図と範囲を離れることなく 々な変更が可能であることは当業者に明ら である。
 なお、本出願は、2006年12月26日付で出願さ た日本特許出願(特願2006-349912)及び2007年3月26 日付で出願された日本特許出願(特願2007-79360) に基づいており、その全体が引用により援用 される。