MAETA ATSUHIKO (JP)
NASU KAZUCHIKA (JP)
MAETA ATSUHIKO (JP)
JPS54116795A | 1979-09-11 | |||
JPH1029108A | 1998-02-03 | |||
JP2000202703A | 2000-07-25 | |||
JP2704917B2 | 1998-01-26 | |||
JPH11235606A | 1999-08-31 |
ドリル本体(1)の先端に、多角形のスローアウェイチップ(5)をドリル中心(O)からの設置距離を異ならせて少なくとも2個装着し、 ドリル内径側に配置されるスローアウェイチップの切削負担量(A)をそのチップよりもドリルの外径側に配置されるスローアウェイチップの切削負担量(B)よりも大きくすると共に、ドリルの外径側に配置されるスローアウェイチップをドリル内径側に配置されるスローアウェイチップよりも軸方向前方に突出させ、 最外径側スローアウェイチップ(5)の外端コーナ部(9a)を最先端に位置させてワークに対する食いつきがその外端コーナ部(9a)から起こるようにしたスローアウェイドリル。 |
ドリル本体の先端のドリル周方向に半周した位置に第1、第2の2個のスローアウェイチップ(5 -1 ,5 -2 )を配置し、ドリル内径側に配置される第1スローアウェイチップ(5 -1 )の切れ刃稜線で中心刃(8)を、ドリル外径側に配置される第2スローアウェイチップ(5 -2 )の切れ刃稜線で外周刃(9)をそれぞれ構成し、前記中心刃(8)の切削負担量(A)と外周刃(9)の切削負担量(B)の割合をA:B=52:48~55:45の範囲に設定した請求項1に記載のスローアウェイドリル。 |
前記第1、第2スローアウェイチップ(5 -1 ,5 -2 )として同一仕様の平行四辺形のチップを採用し、その平行四辺形のチップの鈍角コーナのひとつを含む長辺の稜線で径方向外端側が軸方向前方に突出する方向に傾いた中心刃(8)を、鋭角コーナのひとつを含む短辺の稜線で前記中心刃と同方向に傾いた外周刃(9)をそれぞれ形成した請求項2に記載のスローアウェイドリル。 |
ドリル本体(1)の外周に設ける切屑排出用の溝(2)をねじれ溝とし、そのねじれ溝を、ドリル本体(1)の周囲をほぼ1/4周する溝にし、各ねじれ溝の終端の切れ上がり開始点(2a)を、前記外周刃(9)から周方向に85~95°回転した位置に設定した請求項1~3のいずれかに記載のスローアウェイドリル。 |
ドリル本体(1)の先端のドリル周方向に半周した位置に第1スローアウェイチップ(5 -1
)と第2スローアウェイチップ(5 -2
)を回転中心(O)からの設置距離を異ならせて配置し、 ドリル外径側に配置される第2スローアウェイチップ(5 -2 )をドリル内径側に配置される第1スローアウェイチップ(5 -1 )よりも軸方向前方に突出させてワークに対する食いつきが第2スローアウェイチップ(5 -2 )の外端コーナ部(9a)から起こるようにし、さらに、前記第1スローアウェイチップ(5 -1 )によって形成される中心刃(8)の切削負担量(A)と第2スローアウェイチップ(5 -2 )によって形成される外周刃(9)の切削負担量(B)の割合をA:B=52:48~55:45の範囲に設定し、 以上の構成としたスローアウェイドリルの外径を変更する際に前記中心刃(8)と外周刃(9)の切削負担量の比率A:B=52:48~55:45がドリル径変更後も維持される位置に前記第1、第2スローアウェイチップ(5 -1 ,5 -2 )を配置するようにしたスローアウェイドリルのチップ配置方法。 |
この発明は、切れ刃が複数個のスローア ェイチップで構成されるスローアウェイド ル、詳しくは、切削性能が安定し、穴出口 ばりの発生も抑制されるスローアウェイド ルと、そのドリルの安定した切削性能をド ル径変更後も維持可能となすチップ配置方 に関する。
金属の穴あけに用いるスローアウェイド ルの中に、下記特許文献1、2などに開示さ たものや、図16、図17に示すようなものがあ 。
これらのドリルは、中心にクランプ穴を する板状スローアウェイチップ5(符号は図16 、図17を参照)を2個組み合わせて使用し、そ スローアウェイチップ5をドリル本体1の先端 にドリル中心からの設置距離を異ならせて、 かつ、設置点の位相をドリル周方向に180°異 らせて配置し、ドリル内径側に配置される ローアウェイチップで中心刃8を、ドリル外 径側に配置されるスローアウェイチップで外 周刃9をそれぞれ形成している。
この種のドリルは、同一仕様のスローア ェイチップを使用してドリル径を変更する 合(外径の異なるドリルを作る場合)、図18に 示すように、中心刃8を固定し、外周刃9を径 向に移動させてドリル径(図の1/2Dはドリル 径を表す)を変化させる方法が一般的に採ら ている。
また、各刃のワークに対する食いつきは、
心刃8の中央部や外周刃9の中央部からなさ
るようにするのが一般的である。
特許文献1が開示しているような従来のス ローアウェイドリルは、ワークに対する食い つきが中心刃や外周刃の中央部から起こるた め、食いつき時の切削抵抗(水平分力)が安定 ず、これが原因で加工穴の食いつき側では 口穴径のばらつき、面粗度の悪化などの問 が発生する。また、貫通穴加工の場合、穴 通時の切削バランスが悪化し、出口穴径の らつきや面粗度悪化などの問題も発生する 穴貫通時に外径側の切り抜けが遅れて外径 から内側に向かって押す力が働くため、穴 口側では穴径が縮小傾向となり、そのドリ を加工した穴から引き抜くときに、穴の内 にいわゆる戻りマークがつきやすい。これ 加えて、穴貫通時にばりが発生し易い。外 側の切り抜けが遅れることによって切り抜 が遅れた位置に薄くて切れ難い肉が残り、 れが切り残されてワークWに加工された穴11 口の縁に図19に示すようなばり12が発生する 。
また、上記の従来法によるドリル径変更 は、中心刃が固定され、外周刃のみが径方 に移動する。そのために、中心刃と外周刃 切削負担率(図18のA:B)が外周刃の移動の前後 において変化し、これに伴う切削バランスの 変動によってドリル性能(加工穴径や切削抵 など)のばらつきが起こる。
この発明は、切れ刃が複数個のスローア ェイチップで構成されるスローアウェイド ルを、安定した性能が発揮されて入口穴径 出口穴径の精度が向上し、穴出口のばりの 生も抑制されるようにすること、及び、ド ル径変更後も安定した切削性能が維持され ようにすることを課題としている。
上記の課題を解決するため、この発明に いては、ドリル本体の先端に、多角形のス ーアウェイチップをドリル中心からの設置 離を異ならせて少なくとも2個装着したスロ ーアウェイドリルに、以下の構成を加えた。 すなわち、ドリル内径側に配置されるスロー アウェイチップの切削負担量をそのチップよ りもドリルの外径側に配置されるスローアウ ェイチップの切削負担量よりも大きくすると 共に、ドリルの外径側に配置されるスローア ウェイチップをドリル内径側に配置されるス ローアウェイチップよりも軸方向前方に突出 させ、最外径側スローアウェイチップの外端 コーナ部を最先端に位置させてワークに対す る食いつきがその最外径側スローアウェイチ ップの外端コーナ部から起こるようにした。
このドリルの好ましい形態を以下に列挙す
。
(1)ドリル本体の先端のドリル周方向に半周し
た位置に第1、第2の2個のスローアウェイチッ
プを配置し、ドリル内径側に配置される第1
ローアウェイチップで中心刃を、ドリル外
側に配置される第2スローアウェイチップで
周刃をそれぞれ形成し、前記中心刃の切削
担量Aと外周刃の切削負担量Bの割合をA:B=52:4
8~55:45の範囲に設定したもの。
(2)第1、第2スローアウェイチップとして同一
様の平行四辺形のチップを採用し、その平
四辺形のチップの鈍角コーナのひとつを含
長辺の稜線で径方向外端側が軸方向前方に
出する方向に傾いた中心刃を、鋭角コーナ
ひとつを含む短辺の稜線で前記中心刃と同
向に傾いた外周刃をそれぞれ形成したもの
(3)ドリル本体の外周に設ける切屑排出用の溝
をねじれ溝とし、そのねじれ溝を、ドリル本
体の周囲をほぼ1/4周する溝にして各ねじれ溝
の終端側切れ上がり開始点を、前記外周刃か
ら周方向に85~95°回転した位置に設定したも
。ここで言う角度は、ねじれ溝の中心を基
した角度である。その詳細は後述する。
この発明においては、ドリル径を変更した
きの切削性能の変動をなくするために、ド
ル本体の先端のドリル周方向に半周した位
に第1、第2の2個のスローアウェイチップを
リル中心からの設置距離を異ならせて配置
、
ドリル外径側に配置される第2スローアウェ
イチップをドリル内径側に配置される第1ス
ーアウェイチップよりも軸方向前方に突出
せてワークに対する食いつきが第2スローア
ェイチップの外端コーナ部から起こるよう
し、さらに、前記第1スローアウェイチップ
によって形成される中心刃の切削負担量Aと
2スローアウェイチップによって形成される
周刃の切削負担量Bの割合をA:B=52:48~55:45の範
囲に設定し、
以上の構成としたスローアウェイドリルの
径を変更する際に前記中心刃と外周刃の切
負担量の比率A:B=52:48~55:45がドリル径変更後
維持される位置に前記第1、第2スローアウ
イチップを配置するスローアウェイドリル
チップ配置方法も併せて提供する。
この発明のドリルは、最外径側に配置さ たスローアウェイチップの外端コーナ部を 先端に位置させてその外端コーナ部からワ クに食いつかせる設計にしたので、食いつ 時の切削抵抗(水平分力)が安定する。従来 ドリルは食いつき当初に食いつき点が外径 に移っていって食いつき部に作用する内向 (外径側から内径側に向かう向き)の水平分力 が変動し、それが切削バランスの崩れの原因 となるが、この発明のドリルは、最外径側に 配置されたスローアウェイチップの外端コー ナ部から食いつきが起こるので、食いつき当 初の水平分力の変動が抑えられ、加工の安定 性が保たれる。
また、貫通穴の加工では、外周刃の外端 先に切り抜けるので、出口穴径が縮小傾向 なることが抑制されて出口穴径の精度が向 する。また、戻りマークが低減され、ばり 発生し難くなる。
なお、第1スローアウェイチップで中心刃 を、第2スローアウェイチップで外周刃をそ ぞれ形成し、中心刃の切削負担量Aと外周刃 切削負担量Bの割合をA:B=52:48~55:45の範囲に設 定したものは、切削時のスラスト、水平分力 が小さく抑えられて切削の安定性が特に高ま る。
また、同一仕様の平行四辺形のチップを 用してそのチップの長辺の稜線と短辺の稜 で中心刃と外周刃をそれぞれ形成するもの 、使用するスローアウェイチップの種類が 合されて経済効果が高まる。
さらに、ドリル本体の外周に設けるねじ 溝をドリル本体の周囲をほぼ1/4周する溝に て各溝の終端の切れ上がり開始点を外周刃 対して周方向に85~95°回転した位置に設定し たものは、ドリル本体のランド部の終端がド リルの正面視において穴加工時に水平分力が 作用する方向の両側に位置してその位置にド リル本体の肉が残され、これにより、ドリル 本体の根元側の水平分力に耐える方向の強度 が確保されて水平分力によるドリル本体の振 れが小さく抑えられる。
また、この発明のチップ配置方法によれ 、ドリル径が変わっても中心刃と外周刃の 削負担量の割合が変更前と同じ値に維持さ るので、切削負担量の割合の変動に起因し 性能変化が防止され、ドリル径変更後も安 した切削性能が発揮されて加工穴精度のば つきが抑制される。
1 ドリル本体
2 切屑排出用の溝
2a 切れ上がり開始点
3 チップ座
4 ランド部
5 -1
,5 -2
スローアウェイチップ
6 クランプ穴
7 クランプねじ
8 中心刃
9 外周刃
9a 外端コーナ部
10 ドリル
11 加工穴
12 ばり
以下、この発明の実施の形態を、添付図面 図1~図6に基づいて説明する。図1~図5は、こ 発明のスローアウェイドリルの具体例を示 ている。このドリル10は、ドリル本体1と、 のドリル本体の先端外周に装着する2個のス ローアウェイチップ5 -1 ,5 -2 (付加記号の -1 、 -2 は区別の便宜上付した)と、各スローアウェ チップ5 -1 ,5 -2 をドリル本体1に着脱自在に固定するクラン ねじ7とで構成されている。
ドリル本体1は、外周に切屑排出用の2条 溝2を有し、さらに、先端のドリル周方向に 周した位置にチップ座3,3を有する。溝2はス トレート溝も考えられるが、例示のドリルで はねじれ溝を採用しており、また、チップ座 3,3は、回転中心Oからの距離を異ならせた位 に設けられている。
スローアウェイチップ5 -1 ,5 -2 は、中心にクランプ穴6を設けた平行四辺形 チップであり、同一仕様(同一形状、同一寸 )のチップが採用されている。この2個のス ーアウェイチップ5 -1 ,5 -2 が、ドリル本体1の先端に設けたチップ座3,3 装着され、クランプねじ7によってドリル本 1に固定されている。
一方のスローアウェイチップ(第1スローア ェイチップ)5 -1 は、ドリル本体1の中心側に回転中心Oを越え 状態に配置されており、このチップ5 -1 の鈍角コーナのひとつを含む長辺の稜線によ ってドリルの中心刃8が形成されている。ま 、他方のスローアウェイチップ(第2スローア ウェイチップ)5 -2 はドリル本体1の外周部に配置されており、 のチップ5 -2 の鋭角コーナのひとつを含む短辺の稜線によ ってドリルの外周刃9が形成されている。
その中心刃8と外周刃9は、図1、図2に示す ように、共に径方向外端側が軸方向前方に突 出する方向に傾いた刃として形成されて図4 示すように、外周刃9が中心刃8よりも軸方向 前方にh突出するように配置されており、そ ために、ワークに対するドリルの食いつき 貫通穴加工時のドリルの切り抜けが共に外 刃9の外端コーナ部9aの位置から起こる。そ によって、食いつき当初の水平分力の変動 小さくなり、切削バランスの崩れが抑制さ て入口穴精度のばらつきが抑制される。ま 、貫通穴の加工では、穴の外径側が先に切 抜けるため、出口穴径の縮小傾向がなくな 、ばりも発生し難くなる。なお、中心刃8に する外周刃9の突出量hは、外周刃9の外端コ ナ部9aがワークに食いついてからドリルが1 転するまでの間に中心刃8がワークに食いつ くように設定すると食いつき当初の回転バラ ンスの崩れが起こり難い。その突出量hは、 リルの使用時の送り量を考慮して適正な値 設定するとよい。
図6に示す中心刃8の切削負担量Aは外周刃9 の切削負担量Bよりも大きい。図6の1/2Dはドリ ル半径を表す。中心刃8の切削負担量Aと外周 9の切削負担量Bの割合は、A:B=52:48~55:45の範 に設定されており、この割合は、ドリル径 関係なく固定され、ドリル径を変更すると (同一仕様のチップを使用して外径の異なる リルを作るとき)にも同一割合での設定がな される。
ドリル径の変更は、中心刃8と外周刃9を形 するスローアウェイチップ5 -1 ,5 -2 の相対位置を、図6(a)から図6(b)のように、或 は図6(b)から図6(a)のように変化させて変更 、そのときに各刃の切削負担量A、Bの比率が ドリル径変更後も維持される位置にスローア ウェイチップを配置する方法でなされる。図 6(a)、(b)のように、外周刃9だけでなく中心刃8 の固定位置も変えるようにすることで、ドリ ル径の選択範囲を広げることができる。
設置点を変更した2個のスローアウェイチッ プ5 -1 ,5 -2 を、ドリル本体(これは径変更前のドリル本 とは仕様が異なる)に装着して外径の異なる リルを作成する。そのドリルは、中心刃の 削負担量Aと外周刃の切削負担量Bの割合が リル径を変更する前と同じになるように設 されているので、切削負担量の割合の変化 起因した切削性能の変動は起こらない。
図6のように、中心刃8と外周刃9として同 仕様の平行四辺形のスローアウェイチップ 使用する場合、切削負担量の大きい中心刃8 に長辺の稜線を、切削負担量の小さい外周刃 9に短辺の稜線を各々割り当てるとよい。こ により、径の異なるドリルに対して、同一 様のスローアウェイチップを対応させるこ が可能になる。このときのスローアウェイ ップの形状は、短辺の稜線の長さに対して 辺の稜線の長さを1.1倍程度にすると、中心 と外周刃の最適長さの比率を保ちつつ幅広 径展開を行なうことができて好ましい。
例示のドリル10の切屑排出用の溝2(ねじれ 溝)は、ドリル本体1の周囲をほぼ1/4周する溝 し、図5(a)のドリル端面視において、各ねじ れ溝の終端の切れ上がり開始点2a(その開始点 の溝幅方向中心点)を、外周刃9から周方向に =85~95°回転した位置に設定してあり、そのた めに、ドリル本体1の2箇所のランド部4の終端 がドリルの正面視においてチップ設置部のド リル軸方向後方、すなわち、穴加工時に水平 分力が作用する方向の両側に位置してその位 置にドリル本体の肉が残され、これにより、 ドリル本体1の根元側の水平分力に耐える方 の強度が確保され、水平分力によるドリル 体の振れが小さく抑えられる。
なお、例示のドリル10は、中心刃8と外周 9の回転中心と直角な線に対する傾き角θ(図 1、図2参照)を共に5°としたが、この角度は外 周刃の半径方向すかし角β(図6(a)参照)が0°と らない範囲で任意に設定することができる
また、中心刃8の半径方向すくい角γ1を-5 、外周刃9の半径方向すくい角γ2、を+5°に設 定したが、その半径方向すくい角は切れ味や チップの耐久性に支障の出ない範囲で任意に 変更してよい。
さらに、中心刃8は、直線である必要はな く、例えば、径方向途中が軸方向前方に突き 出す山形の刃などであってもよい。
このほか、この発明のドリルは、スペー 的な問題がなければスローアウェイチップ 3個、或いはそれ以上組み合わせて切れ刃を 構成しても構わない。
-実施例1-
中心刃の切削負担量Aと外周刃9の切削負担
Bの割合を、A:B=52:48~55:45としてドリル径を変
するときにもその割合を維持することの有
性を確認するために、直径D=18.5mm、20.0mm、22
.5mmの3種類のドリル(いずれも図1~図5に示す形
状)を使用して以下の実験を行った。
実験は、各ドリルについて、外周刃に対す
中心刃の切削負担量の割合を50%にした試料I
、52.5%にした試料II、55.0%にした試料IIIをそれ
ぞれ準備し、以下の
条件で穴あけを行ってそのときのスラストと
水平分力を、キスラー動力計を使用して測定
した。また、送りを変えたときのドリル径の
実測値と加工された穴の入口径、中間径(深
方向中間点の径)、出口径をそれぞれ求めた
-切削条件-
ワーク材質:S50C
切削速度V=175m/min
送りf=0.08mm/rev及びf=0.15mm/rev
湿式切削
この試験の結果を、図7~図12に示す。図7~図9
は、試料I~IIIに関するf=0
.08mm/revのときとf=0.15mm/revのときのスラストS
水平分力Fを表している。
また、図10~図12は、試料I~IIIに関するf=0.08mm/
revのときとf=0.15mm/revのときのドリル径の実測
値と加工された穴の径をそれぞれ表している
。
図7~図9のデータからわかるように、中心 の切削負担量Aの割合を52.5%にした試料IIは Aの値を50.0%にした試料Iや55.0%にした試料III 比べてスラストSと水平分力Fが明らかに小さ くて安定している。また、試料IIは、図10~図1 2のデータからわかるように、送り量変更に うトルク変動に対して送り量変更前後の穴 の変化の傾向も近似しており、試料I、IIIよ も切削性能が安定していることがわかる。
-実施例2-
直径D=20mmの図1~図5に示す形状のドリル(発明
品)と、同一外径の比較ドリル(住友電工ハー
メタル社製 WDS200M3S25 その刃先形状は図13
参照)を使用して以下の条件で穴あけを行い
この実験における食いつき時の水平分力X、
Yをキスラー動力計で測定した。
-切削条件-
ワーク材質:SCM415
切削速度V=130m/min
送りf=0.10mm/rev
加工穴:深さd=50mmの貫通穴
湿式切削
この試験で得られたデータを図14に示す この発明のドリルは、ワークに対する食い き時の水平分力X、Yが比較品に比べて小さく 、その分力の変動も少ない。
また、送りf=0.10mm/revの条件と、f=0.15mm/rev 条件(その他の条件は変化なし)でのドリル の実測値に対する加工穴の入口径、中間径 出口径の変化状況を調べた。その結果を図15 に示す。比較品は送りが変化したときの穴径 変動が大きく、送りf=0.15mm/revでの穴出口径の 縮小傾向も顕著であるが、発明品は送り量が 変化しても穴径の変化傾向が安定しており、 また、穴出口径の縮小傾向が殆ど生じていな い。
-実施例3-
実施例2で用いた発明品のドリルと比較ドリ
ルを使用して以下の条件で貫通穴の加工を行
い、加工された穴の出口側(切り抜け側)にお
るばりの発生状況を調べた。
-切削条件-
ワーク材質:SUS304
切削速度V=140m/min
回転数N=1783min -1
送りf=0.10mm/rev及びf=0.15mm/rev
加工穴:深さd=50mmの貫通穴
湿式切削
その結果を以下に比較して示す。
送りf=0.10mm/rev時の発生ばり高さ(図19のs1)。
明品ドリル:Max0.80mm、比較ドリル:Max1.20mm
送りf=0.15mm/rev時に発生したばりの高さ。発
品ドリル:Max0.95mm、比較ドリル:Max1.20mm
この試験結果から、切れ刃の径方向外端 先に切り抜けるこの発明のドリルは、ばり 抑制効果も得られることがわかる。
-実施例4-
ドリル本体の外周に設ける切屑排出用の溝
、ドリル本体の周囲をほぼ1/4周するねじれ
にして各ねじれ溝の終端側切れ上がり開始
を、前記外周刃から周方向に85~95°回転した
位置に設定したドリルの性能評価試験を行っ
た。その評価試験は、図20に示す、タイプ1~
イプ5の形状の評価ドリル(ドリル径D=φ20.0mm
L/D=4)を用いて行った。Lは有効長さである。
試験は、ドリル本体に負担を与える加工と
て、いわゆるだるま穴の加工{図21(a)に示す
るま穴の斜線部の加工}と、ワークに対する
斜め食い付き加工{図21(b)の45°傾斜の面を有
るワークに対する穴加工}を行って、切屑排
用の溝の切れ上がり位置の違いによる加工
の穴面性状の違いを比較した。
だるま穴加工での加工条件は、ワーク:S50C
切削速度V=130m/min、送りf=0.10mm/rev、湿式切削
ある。斜め食い付き加工での加工条件も、
るま穴加工での条件と同一とした。
だるま穴加工で得られた加工面の写真を 22に、斜め食い付き加工で得られた加工面 写真を図23にそれぞれ示す。タイプ1~タイプ5 の形状のドリルは、だるま穴加工、斜め食い 付き加工のどちらにおいても、切削抵抗値の 差はほとんど無かったが、加工面の性状はタ イプ3のドリルによるものが他のドリルによ ものに比べて良好であった。
だるま穴加工では、タイプ4,5のドリルは 工面全体に擦れ痕が発生し、戻りマークも 生している。その原因は、ドリル本体の剛 が弱く、撓みながらの切削がなされたこと あると推測される。タイプ1のドリルは擦れ 痕の発生はないが、戻りマークが発生してお り、これも撓みながらの切削になったことが 原因と推測される。タイプ2、3のドリルは、 干のビビリ痕、擦れ痕が見られるが、全体 には良好レベルの加工面が得られていると える。
斜め食い付き加工では、タイプ1,2,4,5のド リルは加工面全体に擦れ痕が発生し、戻りマ ークも発生している。その原因は、ドリル本 体の剛性が弱く撓みながらの切削になったか らであると推測される。タイプ3のドリルは 干の擦れ痕が見られるが、全体的には良好 ベルの加工面が得られている。