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Patent Searching and Data


Title:
MAGNETIC FLAW DETECTING METHOD AND MAGNETIC FLAW DETECTION DEVICE
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/139432
Kind Code:
A1
Abstract:
A magnetic flaw detection device (100) is provided with a magnetizing means (1) which causes a rotating magnetic field to act on a material to be inspected, a detection means (2) which detects flaw detection signals, and a signal processing means (3) which subjects the flaw detection signals to signal processing.  The magnetizing means supplies alternate currents, as exciting currents, obtained by superimposing a first current and a second current of a lower frequency than the first current.  The signal processing means is provided with a first synchronous detection means (31) which synchronously detects the flaw detection signals with the first current as a reference signal, a second synchronous detection means (32) which synchronously detects outputted signals from the first synchronous detection means with the second current as a reference signal and extracts flaw candidate signals, and a flaw detection image display means (34) which displays flaw detection images wherein respective pixels have densities according to the intensities of the flaw candidate signals at the respective sections of the material to be inspected, so that the phases of the flaw candidate signals at the respective sections can be identified.

Inventors:
SUZUMA TOSHIYUKI (JP)
IMANISHI KENJI (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/058969
Publication Date:
November 19, 2009
Filing Date:
May 14, 2009
Export Citation:
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Assignee:
SUMITOMO METAL IND (JP)
SUZUMA TOSHIYUKI (JP)
IMANISHI KENJI (JP)
International Classes:
G01N27/90
Foreign References:
JPS62145162A1987-06-29
JPH0266446A1990-03-06
JP2005164516A2005-06-23
JP2002131285A2002-05-09
Other References:
See also references of EP 2282199A4
Attorney, Agent or Firm:
OHNAKA, Minoru (JP)
Minoru Onaka (JP)
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Claims:
 被検査材に回転磁界を作用させ、該回転磁界によって生じる探傷信号に基づいてきずを検出する磁気探傷方法であって、
 前記回転磁界を励磁するための励磁電流として、第1電流と該第1電流よりも周波数の低い第2電流とを重畳した交流電流を用い、前記探傷信号を前記第1電流を参照信号として同期検波した後、前記第2電流を参照信号として同期検波することにより、きず候補信号を抽出するステップと、
 被検査材の各部位に対応する複数の画素で構成された探傷画像であって、各画素が前記各部位におけるきず候補信号の強度に応じた濃度を有し、当該各部位におけるきず候補信号の位相を識別可能とされた探傷画像を表示するステップと、
 前記表示された探傷画像に基づいてきずを検出するステップとを含むことを特徴とする磁気探傷方法。
 被検査材に回転磁界を作用させ、該回転磁界によって生じる探傷信号に基づいてきずを検出する磁気探傷方法であって、
 前記回転磁界を励磁するための励磁電流として、第1電流と該第1電流よりも周波数の低い第2電流とを重畳した交流電流を用い、前記探傷信号を前記第1電流を参照信号として同期検波した後、前記第2電流を参照信号として同期検波することにより、きず候補信号を抽出するステップと、
 前記きず候補信号を所定のしきい値で2値化することにより、被検査材におけるきず候補部位を検出するステップと、
 被検査材の各部位に対応する複数の画素でそれぞれ構成され、前記検出されたきず候補部位に対応する画素が他の画素と識別可能な濃度を有する探傷画像を、前記きず候補部位におけるきず候補信号の位相に応じて複数枚形成するステップと、
 前記複数枚の探傷画像のそれぞれに対して個別に画像処理を施すことにより、各探傷画像に存在するきず候補部位におけるきず候補信号の位相に応じた方向についての当該きず候補部位の連続性を評価するステップと、
 前記きず候補部位の連続性に基づいて、きずを検出するステップとを含むことを特徴とする磁気探傷方法。
 前記第1電流及び前記第2電流の周波数が下記式(1)を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気探傷方法。
 第1電流の周波数/第2電流の周波数≧8 ・・・(1)
 被検査材に回転磁界を作用させる磁化手段と、
 前記回転磁界によって生じる探傷信号を検出する検出手段と、
 前記探傷信号に信号処理を施す信号処理手段とを備えた磁気探傷装置であって、
 前記磁化手段は、第1電流と該第1電流よりも周波数の低い第2電流とを重畳した交流電流を励磁電流として通電する励磁コイルを具備し、
 前記信号処理手段は、
 前記検出手段によって検出した探傷信号を前記第1電流を参照信号として同期検波する第1同期検波手段と、
 該第1同期検波手段の出力信号を前記第2電流を参照信号として同期検波してきず候補信号を抽出する第2同期検波手段と、
 被検査材の各部位に対応する複数の画素で構成された探傷画像であって、各画素が前記各部位におけるきず候補信号の強度に応じた濃度を有し、当該各部位におけるきず候補信号の位相を識別可能とされた探傷画像を表示する探傷画像表示手段とを具備することを特徴とする磁気探傷装置。
 被検査材に回転磁界を作用させる磁化手段と、
 前記回転磁界によって生じる探傷信号を検出する検出手段と、
 前記探傷信号に信号処理を施す信号処理手段とを備えた磁気探傷装置であって、
 前記磁化手段は、第1電流と該第1電流よりも周波数の低い第2電流とを重畳した交流電流を励磁電流として通電する励磁コイルを具備し、
 前記信号処理手段は、
 前記検出手段によって検出した探傷信号を前記第1電流を参照信号として同期検波する第1同期検波手段と、
 該第1同期検波手段の出力信号を前記第2電流を参照信号として同期検波してきず候補信号を抽出する第2同期検波手段と、
 前記きず候補信号を所定のしきい値で2値化することにより、被検査材におけるきず候補部位を検出するきず候補部位検出手段と、
 被検査材の各部位に対応する複数の画素でそれぞれ構成され、前記検出されたきず候補部位に対応する画素が他の画素と識別可能な濃度を有する探傷画像を、前記きず候補部位におけるきず候補信号の位相に応じて複数枚形成する探傷画像形成手段と、
 前記複数枚の探傷画像のそれぞれに対して個別に画像処理を施すことにより、各探傷画像に存在するきず候補部位におけるきず候補信号の位相に応じた方向についての当該きず候補部位の連続性を評価する連続性評価手段と、
 前記きず候補部位の連続性に基づいて、きずを検出するきず検出手段とを具備することを特徴とする磁気探傷装置。
 前記第1電流及び前記第2電流の周波数が下記式(1)を満足することを特徴とする請求項4又は5に記載の磁気探傷装置。
 第1電流の周波数/第2電流の周波数≧8 ・・・(1)
Description:
磁気探傷方法及び磁気探傷装置

 本発明は、回転磁界を用いて被検査材に 在する種々の方向に延びるきずを高精度に 傷可能な磁気探傷方法及び磁気探傷装置に する。

 従来より、鋼板や鋼管等の被検査材に存 するきずを非破壊的に検出する方法として 渦流探傷法や漏洩磁束探傷法などの磁気探 方法が知られている。渦流探傷法は、被検 材に交流磁界を作用させることにより誘起 れる渦電流が、きずによって乱れることを 用する探傷方法である。また、漏洩磁束探 法は、磁性体からなる被検査材に磁界を作 させて磁化した場合に、被検査材に生ずる 束を遮るようなきずが存在すると、このき が存在する部位で磁束が表面空間に漏洩す ことを利用する探傷方法である。

 斯かる磁気探傷方法では、一般的に、作 させる磁界の方向ときずの延びる方向とが 定の角度を成す場合に、検出されるきず信 (所定の検出センサで検出される探傷信号の 内、きずが存在する部位から得られる信号) 振幅が最大となる。例えば、漏洩磁束探傷 におけるきず信号の振幅は、作用させる磁 の方向(被検査材中の磁束の方向)ときずの延 びる方向とが直交する場合に最大となり、磁 界の方向がきずの延びる方向に対して直交す る方向からずれるに従って低下する。

 このため、きずの延びる方向が如何なる 向であっても検出できるように(検出可能な 振幅のきず信号が得られるように)、被検査 に磁界の方向が時々刻々変化する回転磁界 作用させ、該回転磁界によって生じる探傷 号に基づいて、種々の方向に延びるきずを 出する磁気探傷方法が提案されている(例え 、日本国特開2002-131285号公報参照)。

 斯かる回転磁界を生成するには、例えば 図1に示すような励磁コイルが用いられる。 すなわち、図1に示す励磁コイル10は、導線の 巻回方向が互いに直交(従って、生成される 界が互いに直交)すると共に、中心位置が互 に一致するように配置された2つの励磁コイ ル(X方向励磁コイル1及びY方向励磁コイル2)を 備える。そして、各励磁コイル1、2に通電す 交流の励磁電流の位相を90°ずらす(例えば X方向励磁コイル1には余弦波の励磁電流を通 電し、Y方向励磁コイル2には正弦波の励磁電 を通電する)ことにより、各励磁コイル1、2 生成された磁界の合成磁界が、各励磁コイ 1、2の中心位置を中心として360°回転(図1に す角度φが0~360°に変化)することになる。こ れにより、種々の方向(図1に示す角度θが0~360 °)に延びるきずを検出することが可能である 。

 ところで、一般的に、ノイズを含む種々 周波数成分からなる信号に対して、検出し い信号(磁気探傷方法の場合にはきず信号) 特定の周波数成分を有する場合、その周波 成分を有する信号を抽出するために同期検 が用いられることが多い。

 回転磁界を利用しない従来の磁気探傷方 では、きず信号が交流の励磁電流に同期す 。このため、励磁電流を参照信号として探 信号を同期検波し、励磁電流に同期する信 を抽出することにより、探傷信号から高いS /N比できず信号を抽出することが可能である そして、同期検波により抽出された交流信 は、きず信号と、励磁電流に同期せずにラ ダムに発生するノイズとの比率(S/N比)を高 するため、ローパスフィルタによって平滑 されるのが一般的である。好ましくは、ロ パスフィルタの時定数を調整することによ 、同期検波により抽出された交流信号は、 照信号(励磁電流)の2~3周期分程度に相当する 単位領域毎に平滑化される。

 また、渦流探傷法では、探傷信号を同期 波した信号を用いてきず検出能を向上させ 手法として、位相解析法が一般的に用いら る。この位相解析法では、参照信号で探傷 号を同期検波したものをX信号とし、参照信 号の位相を90°遅らせて探傷信号を同期検波 たものをY信号とする。そして、X信号をX軸 分とし、Y信号をY軸成分として、XY座標系の2 次元平面上に信号をベクトル表示する(ベク ル先端の軌跡をリサージュ波形と称する)こ により、探傷信号が参照信号に対してどの 度の位相遅れがあるのかを測定する方法で る。例えば、参照信号と同位相の探傷信号 同期検波した場合には、位相遅れがないた 、図2(a)に示すようなX軸に沿ったリサージ 波形が得られる。より具体的には、きず信 の場合、検出センサがきずの直上を通過す 際に位相が180°反転するため、0°方向(X軸の の方向)及び180°方向(X軸の負の方向)に沿っ リサージュ波形が得られることになる。同 にして、参照信号に対して位相が45°遅れた 探傷信号については、図2(b)に示すような45° 向及び225°方向に沿ったリサージュ波形が られ、位相が90°遅れた探傷信号については 図2(c)に示すような90°方向及び270°方向に沿 ったリサージュ波形が得られる。

 ここで、磁気探傷方法によって検出され きず信号(すなわち、きずによる渦電流の乱 れに起因した信号や、きずによる漏洩磁束に 対応した信号)の位相と、探傷時の主なノイ の一種であるリフトオフ変動ノイズ(検出セ サと被検査材との離間距離を変動させた場 に生じる探傷信号の変動)の位相とは、全く 同一になることは希であり、一般的には位相 差を有する。図3は、きず信号とリフトオフ 動ノイズとが位相差を有することを示すリ ージュ波形の模式図である。図3(a)に示すよ に、きず信号の位相φdと、リフトオフ変動 イズの位相φlとは、異なるのが一般的であ 。そして、図3(a)に示すように、きず信号の 振幅をAd、リフトオフ変動ノイズの振幅をAl すると、この例ではS/N比(=Ad/Al)が約1.5となる 。しかしながら、図3(b)に示すように、リフ オフ変動ノイズがX軸に沿うようにXY座標系 回転させ、回転後のX’Y’座標系におけるY 軸方向の信号成分を探傷信号とすることに り、この例ではS/N比(=Sd/Sl)が10より大きくな ため、振幅でS/N比を評価する場合(図3(a))に べてS/N比が大幅に向上する。このように、 相解析法を適用すれば、きず検出能に対す リフトオフ変動ノイズの影響を抑制し得る とが期待できる。

 また、位相解析法には、上記のようにリ ージュ波形のXY座標系を回転させる方法だ ではなく、リサージュ波形の内、特定の位 を有する信号成分の振幅のみを評価し、そ 他の位相を有する信号成分の振幅を評価対 から外す方法も含まれる。

 しかしながら、従来の回転磁界を利用した 気探傷方法には、単一周波数の励磁電流を いていることに起因して、以下のような問 がある。
 (1)同期検波の効果を十分に得ることができ いため、きず検出能(S/N比)が低下する虞が る。
 (2)きずの角度情報(何れの方向に延びている のか)を推定できない。
 (3)渦流探傷法におけるきず検出能(S/N比)を 上させる手法として一般的な位相解析法を いることができない。
 (4)きずの連続性を正確に評価することがで ない。

 従って、従来の回転磁界を利用した磁気 傷方法によれば、理論的には種々の方向に びるきずを検出可能であるものの、実用的 はきず検出能が十分とはいえない。また、 ずの角度情報を推定できないため、きずの 生原因等を判断することも困難である。以 、上記(1)~(4)の問題点について、具体的に説 明する。

 前述のように、磁気探傷方法では、一般 に、作用させる磁界の方向ときずの延びる 向とが特定の角度を成す場合に、検出され きず信号の振幅が最大となる。ここで、き 信号の振幅が最大となる方向からの磁界の 向のずれ角が±α°を超えると、きず信号の 幅が0になると仮定する。図1に示すような 磁コイル10を用いた従来の単一周波数の励磁 電流による回転磁界を利用した磁気探傷方法 では、励磁電流の1周期の間に磁界の方向が36 0°回転するため、上記仮定の下で、きず信号 が出現する(きず信号の振幅が0より大きくな )のは、励磁電流1周期の内の特定の範囲(き 信号の振幅が最大となる方向を基準として- α°~+α°の磁界の方向が得られる範囲)に限定 れる。

 ここで、被検査材に、延びる方向の異な 2種類のきずA、B(きずAの角度θ(図1参照)=20° きずBの角度θ=70°)が存在し、α=20°であると 仮定する。前述のように、漏洩磁束探傷法に おけるきず信号の振幅は、作用させる磁界の 方向ときずの延びる方向とが直交する場合に 最大となるため、漏洩磁束探傷法の場合、上 記仮定の下で、きずAのきず信号は、磁界の 向φ(図1参照)が、φ=20°+90°+180°×n(nは整数)の ときに最大となり、φ±20°の範囲を超えると 幅が0となる。同様にして、きずBのきず信 は、磁界の方向φが、φ=70°+90°+180°×n(nは整 )のときに最大となり、φ±20°の範囲を超え と振幅が0となる。

 図4は、上記仮定の下での、励磁電流波形 ときず信号波形との時系列的な関係を示すグ ラフである。また、図5は、励磁電流を参照 号としてきず信号を含む探傷信号を同期検 し、同期検波により抽出されたきず信号を 照信号の2周期分に相当する単位領域毎に平 化した後のきず信号波形を示すグラフであ 、図5(a)はきずAのきず信号波形を、図5(b)は ずBのきず信号波形を示す。なお、図4及び 5において、探傷信号に含まれるノイズの波 は図示を省略している。

 探傷信号を同期検波する場合、図1に示す X方向励磁コイル1に通電する励磁電流、又はY 方向励磁コイル2に通電する励磁電流を参照 号として用いることになるが、図4からも分 るように、きずA、Bから得られるきず信号 、いずれの励磁電流よりも周期が短い。す わち、きず信号の周期と参照信号の周期と 一致していないため、同期検波の効果(探傷 号から高いS/N比できず信号を抽出する)を十 分に得ることができず、きず検出能が低下す る虞がある(前述した(1)の問題点)。

 また、同期検波により抽出されたきず信 を参照信号の2周期分に相当する単位領域毎 に平滑化する場合、図5に示すように、平滑 後のきず信号の位相情報(きずの角度情報)は 失われることになり、きずA及びBの双方につ て、平滑化後のきず信号は同様の直流信号 形となる。つまり、きずの角度情報を推定 きないことになる(前述した(2)の問題点)。

 また、上記のように平滑化後のきず信号 位相情報が失われ、励磁電流の1周期の内、 きず信号が何れの位置に存在するかを特定す ることができないため、きず検出能(S/N比)を 価する際には、図3(a)を参照して前述したよ うに、常にきず信号の振幅とノイズの振幅と の比で評価する必要が生じる。つまり、きず 検出能を向上させる手法として一般的な位相 解析法を用いることができない(前述した(3) 問題点)。

 さらに、従来より、きずの連続性を正確 評価して探傷精度を向上させることを目的 して、探傷画像により、きずの2次元分布状 態を把握して、きずの連続性を評価する手法 が提案されている。具体的には、この手法で は、きず信号を含む探傷信号を画像化した、 或いは、この探傷信号を所定のしきい値で2 化して得られる信号を画像化した探傷画像( 淡画像やカラー画像)を形成し、この探傷画 像を目視することにより、或いは、探傷画像 に適宜の画像処理フィルタ等を用いた画像処 理を施すことにより、きずの2次元分布状態 把握して、きずの連続性を評価している。 れは、きずの有害度を評価する際に、分断 れて検出された個々のきずの深さや長さを 価する以外に、同じ方向に延びる複数のき (群集欠陥)を1つのきずとして、この群集欠 全体の長さを有害度の評価指標とすること あるためである。この指標は、たとえ複数 分断されて検出されたきずであったとして 、実際には連続した1つのきずである場合に 、実際に分断されているきずに比べて、有 度を高く評価するために設けられている。 って、群集欠陥全体の長さ、すなわち、き の連続性を正確に評価することは重要であ 。

 しかしながら、従来の回転磁界を利用し 磁気探傷方法では、前述のように、きずの 度情報を推定できないため、探傷信号の振 情報のみに基づいて探傷画像を形成するし ない。このため、実際には連続した単一の ずであっても、例えば部分的にきずの深さ 浅いために分断されて検出され、探傷画像 おいては分断されて表示されるようなきず ついては、きずの連続性を正確に評価する とは困難である(前述した(4)の問題点)。特 、きずの寸法と比較して十分に小さな検出 ンサの走査間隔を設定できないため、探傷 像の位置分解能が低下せざるを得ない場合( 検査材を高速搬送するラインでは検査能率 制約からよくあるケース)には、探傷画像自 体から、きずがどの方向に延びているかの正 確な情報が得られないため、きずの連続性を 正確に評価することは困難である。以下、図 6~図8を参照して、より具体的に説明する。

 図6に示すように、被検査材Sに、2つのき A、Bとノイズ源Nとが存在する場合を想定す 。そして、この被検査材S上で検出センサを 走査して得られる探傷画像(探傷信号を所定 しきい値で2値化して得られる信号を画像化 た探傷画像)内には、図7に示すように、検 センサのA/D変換速度や走査速度等に応じて 散化された、被検査材Sにおけるきず候補部 に対応する画素群、すなわち、きずAに対応 する4つの画素群a1~a4と、きずBに対応する2つ 画素群b1、b2と、ノイズ源Nに対応する画素n が存在すると想定する。

 図7に示す探傷画像に対してきずの連続性 を評価する場合、探傷信号の振幅情報のみに 基づいて探傷画像が形成されているため、き ず候補部位に対応する画素群の分布状態のみ に基づいて連続性を評価せざるを得ない。従 って、きずの連続性を評価するための画像処 理フィルタ等の構成に応じて、図8に示すよ に、画素群a1~a4、b1が1つのきずAであり、画 群b2、nが1つのきずBであると間違って評価し てしまう虞がある。換言すれば、きずAにつ ては、その長さを実際の長さよりも過大に 価する一方、きずBについては、その長さを 際の長さよりも過少に評価すると共に、ノ ズ源Nに対応する画素nをもきずと誤認識し しまう虞がある。このため、きずの有害度 正確に評価できない虞がある。

 本発明は、斯かる従来技術の問題点を解 するべくなされたものであり、回転磁界を いて被検査材に存在する種々の方向に延び きずを高精度に探傷可能な磁気探傷方法及 磁気探傷装置を提供することを課題とする

 前記課題を解決するべく、本発明は、被 査材に回転磁界を作用させ、該回転磁界に って生じる探傷信号に基づいてきずを検出 る磁気探傷方法であって、前記回転磁界を 磁するための励磁電流として、第1電流と該 第1電流よりも周波数の低い第2電流とを重畳 た交流電流を用い、前記探傷信号を前記第1 電流を参照信号として同期検波した後、前記 第2電流を参照信号として同期検波すること より、きず候補信号を抽出するステップと 被検査材の各部位に対応する複数の画素で 成された探傷画像であって、各画素が前記 部位におけるきず候補信号の強度に応じた 度を有し、当該各部位におけるきず候補信 の位相を識別可能とされた探傷画像を表示 るステップと、前記表示された探傷画像に づいてきずを検出するステップとを含むこ を特徴とする磁気探傷方法を提供するもの ある。

 斯かる発明によれば、回転磁界を励磁す ための励磁電流として、第1電流と該第1電 よりも周波数の低い第2電流とを重畳した交 電流を用いるため、周波数の高い第1電流に よって生成される磁界(及びこの磁界によっ 誘起される渦電流)が支配的に被検査材に作 する一方、周波数の低い第2電流は、主とし て前記生成された磁界(及び渦電流)の方向を 検査材において回転させるために機能する これは、被検査材に生じる誘導起電力が励 電流の周波数に比例するからである。

 そして、本発明によれば、探傷信号を第1 電流を参照信号として同期検波した後、第2 流を参照信号として同期検波することによ 、きず候補信号を抽出することになる。す わち、先ず最初に、磁界の回転周波数(第2電 流の周波数に相当)よりも高い周波数の第1電 を参照信号として探傷信号を同期検波する め、従来のように磁界の回転周波数と同一 周波数の参照信号で同期検波する場合に比 て、実際にきずが存在する部位から得られ きず信号の有する周期成分と参照信号の周 とを一致させ易く、同期検波の効果(探傷信 号から高いS/N比できず信号を抽出する)を十 に得られることが期待できる。また、上記 1電流を参照信号として同期検波することに り抽出された探傷信号を、当該参照信号の2 ~3周期分程度に相当する単位領域毎に平滑化 ても、平滑化後の探傷信号に含まれるきず 号の位相情報は保持され易いため、きずの 度情報(何れの方向に延びているのか)を推 可能である。さらに、上記のように平滑化 ても、きず信号の位相情報が保持され易い め、引き続いて第2電流を参照信号として同 検波する際に位相解析法を適用することが き、きず検出能に対するリフトオフ変動ノ ズの影響等を抑制することが可能である。

 さらに、本発明によれば、被検査材の各 位に対応する複数の画素で構成された探傷 像であって、各画素が前記各部位における ず候補信号(第2電流を参照信号として同期 波した後の探傷信号)の強度に応じた濃度を し(所定のしきい値できず候補信号の強度が 2値化された場合を含む)、当該各部位におけ きず候補信号の位相を識別可能とされた探 画像が表示されることになる。具体的には 例えば、位相解析法を適用することによっ 得られたきず候補信号の位相に応じて各画 が異なる色に色付けされた(各画素の濃度は きず候補信号の強度に応じて異なる)1枚のカ ー画像が探傷画像として表示されることに る。或いは、各画像中に含まれるきず候補 号の位相(位相の範囲)が異なる複数枚の濃 画像(各画素の濃度はきず候補信号の強度に じて異なる)が探傷画像として表示されるこ とになる。このため、探傷画像におけるきず 候補信号の強度のみならず位相(角度情報)を 視することができるので、きずの連続性を 確に評価可能である。

 また、前記課題を解決するべく、本発明 、被検査材に回転磁界を作用させ、該回転 界によって生じる探傷信号に基づいてきず 検出する磁気探傷方法であって、前記回転 界を励磁するための励磁電流として、第1電 流と該第1電流よりも周波数の低い第2電流と 重畳した交流電流を用い、前記探傷信号を 記第1電流を参照信号として同期検波した後 、前記第2電流を参照信号として同期検波す ことにより、きず候補信号を抽出するステ プと、前記きず候補信号を所定のしきい値 2値化することにより、被検査材におけるき 候補部位を検出するステップと、被検査材 各部位に対応する複数の画素でそれぞれ構 され、前記検出されたきず候補部位に対応 る画素が他の画素と識別可能な濃度を有す 探傷画像を、前記きず候補部位におけるき 候補信号の位相に応じて複数枚形成するス ップと、前記複数枚の探傷画像のそれぞれ 対して個別に画像処理を施すことにより、 探傷画像に存在するきず候補部位における ず候補信号の位相に応じた方向についての 該きず候補部位の連続性を評価するステッ と、前記きず候補部位の連続性に基づいて きずを検出するステップとを含むことを特 とする磁気探傷方法としても提供される。

 斯かる発明によれば、前述した発明と同 に、同期検波の効果が十分に得られること 期待でき、きずの角度情報を推定可能であ 、きず検出能に対するリフトオフ変動ノイ の影響等を抑制することが可能である。そ て、きずの連続性を画像処理によって自動 に正確に評価可能である。

 なお、第1電流の周波数と第2電流の周波 との比は、きずの角度情報を如何なる分解 で推定するか等によって適宜決定すればよ (両者の比が大きくなればなるほど分解能は きくなる)。例えば、少なくとも45°ピッチ 分解能で推定するためには、両者の比を8(360 °/45°=8)以上に設定する必要がある。

 従って、好ましくは、前記磁気探傷方法に いて、前記第1電流及び前記第2電流の周波 が下記式(1)を満足するものとされる。
 第1電流の周波数/第2電流の周波数≧8 ・・ (1)

 また、前記課題を解決するべく、本発明 、被検査材に回転磁界を作用させる磁化手 と、前記回転磁界によって生じる探傷信号 検出する検出手段と、前記探傷信号に信号 理を施す信号処理手段とを備えた磁気探傷 置であって、前記磁化手段は、第1電流と該 第1電流よりも周波数の低い第2電流とを重畳 た交流電流を励磁電流として通電する励磁 イルを具備し、前記信号処理手段は、前記 出手段によって検出した探傷信号を前記第1 電流を参照信号として同期検波する第1同期 波手段と、該第1同期検波手段の出力信号を 記第2電流を参照信号として同期検波してき ず候補信号を抽出する第2同期検波手段と、 検査材の各部位に対応する複数の画素で構 された探傷画像であって、各画素が前記各 位におけるきず候補信号の強度に応じた濃 を有し、当該各部位におけるきず候補信号 位相を識別可能とされた探傷画像を表示す 探傷画像表示手段とを具備することを特徴 する磁気探傷装置としても提供される。

 さらには、前記課題を解決するべく、本 明は、被検査材に回転磁界を作用させる磁 手段と、前記回転磁界によって生じる探傷 号を検出する検出手段と、前記探傷信号に 号処理を施す信号処理手段とを備えた磁気 傷装置であって、前記磁化手段は、第1電流 と該第1電流よりも周波数の低い第2電流とを 畳した交流電流を励磁電流として通電する 磁コイルを具備し、前記信号処理手段は、 記検出手段によって検出した探傷信号を前 第1電流を参照信号として同期検波する第1 期検波手段と、該第1同期検波手段の出力信 を前記第2電流を参照信号として同期検波し てきず候補信号を抽出する第2同期検波手段 、前記きず候補信号を所定のしきい値で2値 することにより、被検査材におけるきず候 部位を検出するきず候補部位検出手段と、 検査材の各部位に対応する複数の画素でそ ぞれ構成され、前記検出されたきず候補部 に対応する画素が他の画素と識別可能な濃 を有する探傷画像を、前記きず候補部位に けるきず候補信号の位相に応じて複数枚形 する探傷画像形成手段と、前記複数枚の探 画像のそれぞれに対して個別に画像処理を すことにより、各探傷画像に存在するきず 補部位におけるきず候補信号の位相に応じ 方向についての当該きず候補部位の連続性 評価する連続性評価手段と、前記きず候補 位の連続性に基づいて、きずを検出するき 検出手段とを具備することを特徴とする磁 探傷装置としても提供される。

 好ましくは、前記磁気探傷装置において、 記第1電流及び前記第2電流の周波数が下記 (1)を満足するものとされる。
 第1電流の周波数/第2電流の周波数≧8 ・・ (1)

 本発明によれば、前述した(1)~(4)の問題点 を解決することができ、回転磁界を用いて被 検査材に存在する種々の方向に延びるきずを 高精度に探傷可能である。

図1は、回転磁界を生成するための励磁 コイルの一例を示す平面視断面図である。 図2は、リサージュ波形の例を示す模式 図である。 図3は、きず信号とリフトオフ変動ノイ ズとが位相差を有することを示すリサージュ 波形の模式図である。 図4は、従来の回転磁界を利用した磁気 探傷方法における、励磁電流波形ときず信号 波形との時系列的な関係を示すグラフである 。 図5は、図4に示す励磁電流を参照信号 してきず信号を含む探傷信号を同期検波し 同期検波により抽出されたきず信号を参照 号の2周期分に相当する単位領域毎に平滑化 た後のきず信号波形を示すグラフである。 図6は、被検査材に存在するきず及びノ イズ源を模式的に示す図である。 図7は、図6に示す被検査材について得 れる従来の探傷画像の一例を模式的に示す である。 図8は、図7に示す探傷画像に対してき の連続性を評価した結果を示す図である。 図9は、本発明の一実施形態に係る磁気 探傷装置の概略構成を示すブロック線図であ る。 図10は、図9に示す探傷プローブの模式 的な外観図を示す。 図11は、図9に示す磁化手段によって生 成される信号波形を示すグラフである。 図12は、図9に示す検出手段によって検 出されるきず信号波形の一例を模式的に示す グラフである。 図13は、図9に示す第1同期検波手段に いて、第1電流を参照信号としてきず信号を む探傷信号を同期検波し、同期検波により 出されたきず信号を参照信号の2周期分に相 当する単位領域毎に平滑化した後のきず信号 波形の一例を模式的に示すグラフである。 図14は、図6に示す被検査材について、 図9に示す探傷画像形成手段によって形成さ る探傷画像の一例を模式的に示す図である 図15は、図14に示す探傷画像について 図9に示す連続性評価手段が行う評価方法を 明する図である。 図16は、本発明の実施例に係る探傷試 の概要を説明する説明図であり、図16(a)は 断面図を、図16(b)は平面図を示す。 図17は、図16に示す探傷試験によって られたきず信号のリサージュ波形を示す。

 以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発 の一実施形態について説明する。

 図9は、本発明の一実施形態に係る磁気探 傷装置の概略構成を示すブロック線図である 。図10は、図9に示す探傷プローブの模式的な 外観図を示す。図9に示すように、本実施形 に係る磁気探傷装置100は、被検査材に回転 界を作用させる磁化手段1と、前記回転磁界 よって生じる探傷信号を検出する検出手段2 と、前記探傷信号に信号処理を施す信号処理 手段3とを備えている。

 磁化手段1は、回転磁界を生じさせるため の励磁電流を通電する励磁コイル11を具備す 。図10に示すように、励磁コイル11は、導線 の巻回方向が互いに直交すると共に、中心位 置が互いに一致するように配置されたX方向 磁コイル111及びY方向励磁コイル112を備える X方向励磁コイル111に励磁電流(X方向励磁電 )を通電することにより、図10に示すX方向に 磁界が生成される。一方、Y方向励磁コイル11 2に励磁電流(Y方向励磁電流)を通電すること より、図10に示すY方向に磁界が生成される そして、各励磁コイル111、112に通電する交 の励磁電流の位相を90°ずらすことにより、 励磁コイル111、112で生成された磁界の合成 界が、各励磁コイル111、112の中心位置を中 として360°回転することになる。

 本実施形態に係る励磁コイル11は、第1電 と該第1電流よりも周波数の低い第2電流と 重畳した交流電流を励磁電流として通電す 点に特徴を有する。具体的には、X方向励磁 イル111には、第1電流と第2電流とを重畳し X方向励磁電流が通電する一方、Y方向励磁コ イル112には、第1電流と第2電流とが重畳する 共にX方向励磁電流に対して位相が90°ずれ Y方向励磁電流が通電する。以下、図11も適 参照しつつ、上記の特徴部分について、よ 具体的に説明する。

 本実施形態に係る磁化手段1は、第1電流 電圧波形を生成する第1発信器12と、第2電流 電圧波形を生成する第2発信器13とを具備す 。すなわち、図11(a)に示すように、第1発信 12からは、予め決定した第1電流の周波数と 一周波数の電圧波形(以下、第1電圧波形と う)が出力され、第2発信器13からは、予め決 した第2電流の周波数と同一周波数の電圧波 形(以下、第2電圧波形という)が出力される。 第2電圧波形の周波数は、第1電圧波形の周波 よりも低周波である。なお、予め決定する 1電流の周波数と第2電流の周波数との比は きずの角度情報を如何なる分解能で推定す か等によって適宜決定すればよいが、好ま くは、第1電流の周波数/第2電流の周波数≧8 満足するように決定される。

 また、磁化手段1は、乗算器14と、パワー ンプ15とを具備する。第1発信器12から出力 れた第1電圧波形と、第2発信器13から出力さ た第2電圧波形とは、乗算器14によって乗算( 重畳)され、パワーアンプ15によって電流に変 換される。パワーアンプ15から出力される電 は、図11(b)に示すように、X方向励磁コイル1 11に通電するX方向励磁電流として用いられる 。

 一方、磁化手段1は、90°移相器16と、乗算 器17と、パワーアンプ18とを具備する。第2発 器13から出力された第2電圧波形は、その位 が90°移相器16によって90°だけ移相される。 例えば、図11(a)に示すように、第2発信器13か 出力される第2電圧波形が余弦波である場合 、90°移相器16から出力される電圧波形は、第 2電圧波形と同一周波数の正弦波となる。そ て、第1発信器12から出力された第1電圧波形 、90°移相器16から出力された電圧波形とは 乗算器17によって乗算(重畳)され、パワーア ンプ18によって電流に変換される。パワーア プ18から出力される電流は、図11(b)に示すよ うに、Y方向励磁コイル112に通電するY方向励 電流として用いられる。

 以上の構成により、図11(b)に示すように X方向励磁コイル111には、第1電流と第2電流 を重畳したX方向励磁電流が通電する一方、Y 方向励磁コイル112には、第1電流と第2電流と 重畳すると共にX方向励磁電流に対して位相 が90°ずれたY方向励磁電流が通電することに る。

 このように、本実施形態に係る磁化手段1 は、回転磁界を励磁するための励磁電流(X方 励磁電流及びY方向励磁電流)として、第1電 と該第1電流よりも周波数の低い第2電流と 重畳した交流電流を用いるため、周波数の い第1電流によって生成される磁界(及びこの 磁界によって誘起される渦電流)が支配的に 検査材に作用する一方、周波数の低い第2電 は、主として前記生成された磁界(及び渦電 流)の方向を被検査材において回転させるた に機能する。

 本実施形態に係る検出手段2は、励磁コイ ル11の中心を通り、X方向及びY方向に直交す Z方向(図10参照)の磁束の変化を検出するため の検出コイルとされている。検出コイル2は Z方向の磁束の変化を検出し、探傷信号とし 信号処理手段3に出力する。なお、検出コイ ル2は、前述したX方向励磁コイル111及びY方向 励磁コイル112と一体化されて、探傷プローブ 4を形成している。

 信号処理手段3は、検出手段2によって検 した探傷信号を前記第1電流を参照信号とし 同期検波する第1同期検波手段31を具備する 具体的には、第1同期検波手段31は、第1発信 器12から出力される第1電圧波形(第1電流の電 波形)を参照信号として、検出手段2から出 される探傷信号を同期検波する。さらに、 1同期検波手段31は、同期検波により抽出さ た交流信号を、参照信号(第1電流の電圧波形 )の2~3周期分程度に相当する単位領域毎に平 化して出力する。

 ここで、従来技術について前述したのと 様に、被検査材に、延びる方向の異なる2種 類のきずA、B(きずAの角度θ(図1参照)=20°、き Bの角度θ=70°)が存在し、α=20°であると仮定 する。本発明においても、漏洩磁束探傷法の 場合、上記仮定の下で、きずAのきず信号は 磁界の方向φ(図1参照)が、φ=20°+90°+180°×n(n 整数)のときに最大となり、φ±20°の範囲を えると振幅が0となる。同様にして、きずB きず信号は、磁界の方向φが、φ=70°+90°+180° ×n(nは整数)のときに最大となり、φ±20°の範 を超えると振幅が0となる。

 図12は、上記仮定の下での、きずA、Bのき ず信号波形を模式的に示すグラフである。ま た、図13は、第1同期検波手段において、第1 流を参照信号としてきず信号を含む探傷信 を同期検波し、同期検波により抽出された ず信号を参照信号の2周期分に相当する単位 域毎に平滑化した後のきず信号波形を示す ラフである。なお、図12及び図13において、 探傷信号に含まれるノイズの波形は図示を省 略している。

 図12及び前述した図11を参照すれば分かる ように、きずA、Bから得られるきず信号には 第1電流の周期と一致する周期成分が含まれ るため、第1電流を参照信号として同期検波 れば、従来のように磁界の回転周波数と同 の周波数の参照信号(本発明の第2電流に相当 )で同期検波する場合に比べて、探傷信号か 高いS/N比できず信号を抽出することが可能 ある。

 また、図13に示すように、第1電流を参照 号として同期検波することにより抽出され きず信号を、当該参照信号の2周期分に相当 する単位領域毎に平滑化しても、平滑化後の きず信号の位相情報は保持されるため、きず A、Bの角度情報(何れの方向に延びているのか )を推定可能である。

 信号処理手段3は、第1同期検波手段31の出 力信号を前記第2電流を参照信号として同期 波してきず候補信号を抽出する第2同期検波 段32を具備する。また、信号処理手段3は、 2同期検波手段32の出力信号に基づいてリサ ジュ波形を表示するリサージュ波形表示手 33を具備する。

 具体的には、第2同期検波手段32は、第1同 期検波手段31の出力信号を互いに同一の2つの 信号に分岐する。そして、第2同期検波手段32 は、第2発信器13から出力される第2電圧波形( 2電流の電圧波形)を参照信号として、前記 岐した一方の信号を同期検波する。この同 検波された信号(X信号)は、リサージュ波形 示手段33に出力される。また、第2同期検波 段32は、90°移相器16から出力される電圧波形 (第2電流の電圧波形と位相が90°異なる電圧波 形)を参照信号として、前記分岐した他方の 号を同期検波する。この同期検波された信 (Y信号)は、リサージュ波形表示手段33に出力 される。

 リサージュ波形表示手段33は、第2同期検 手段32から出力されたX信号をX軸成分とし、 Y信号をY軸成分としたリサージュ波形を表示 る。この際、必要に応じて、検出コイル2の リフトオフ変動ノイズがX軸に沿うようにXY座 標系を回転させれば、S/N比を向上させること が可能である。前述のように、第1同期検波 段31での平滑化後のきず信号の位相情報は保 持されるため、第2同期検波手段32及びリサー ジュ波形表示手段33によって、上記のような 相解析法を適用することができ、きず検出 に対するリフトオフ変動ノイズの影響等を 制することが可能である。

 また、信号処理手段3は、被検査材の各部 位に対応する複数の画素で構成された探傷画 像であって、各画素が前記各部位におけるき ず候補信号の強度に応じた濃度を有し、当該 各部位におけるきず候補信号の位相を識別可 能とされた探傷画像を表示する探傷画像表示 手段34を具備する。

 具体的には、探傷画像表示手段34は、第2同 検波手段32から出力されるX信号の強度X及び Y信号の強度Yに基づき、以下の式(2)で表され 振幅Aと、式(3)で表される位相θを算出する
 A=(X 2 +Y 2 ) 1/2   ・・・(2)
 θ=tan -1 (Y/X) ・・・(3)
 そして、適宜のセンサ(図示せず)で検出さ た探傷プローブ4と被検査材との相対位置関 (すなわち、探傷プローブ4で探傷を行って る被検査材の部位)が探傷画像表示手段34に 力される。探傷画像表示手段34は、前記セン サで検出した被検査材の各部位に対応する複 数の画素で構成された探傷画像であって、各 画素が前記各部位における振幅Aに応じた濃 を有し、当該各部位における位相θを識別可 能とされた探傷画像を表示する。例えば、探 傷画像表示手段34は、位相θに応じて各画素 異なる色に色付けされた(各画素の濃度は振 Aに応じて異なる)1枚のカラー画像を探傷画 として表示する。或いは、探傷画像表示手 34は、各画像中に含まれる位相θ(位相θの範 囲)が異なる複数枚の濃淡画像(各画素の濃度 振幅Aに応じて異なる)を探傷画像として表 する。

 信号処理手段3は、上記構成の探傷画像表 示手段34を具備するため、探傷画像における 幅Aのみならず位相(角度情報)を目視するこ ができるので、きずの連続性を正確に評価 能である。

 本実施形態では、探傷画像表示手段34に って表示される探傷画像の各画素が被検査 の各部位における振幅Aに応じた濃度を有す 構成について説明した。しかしながら、本 明はこれに限るものではなく、探傷画像表 手段34によって表示される探傷画像の各画 が、被検査材の各部位におけるX信号の強度X 、又は、Y信号の強度Yに応じた濃度を有する 成を採用することも可能である。また、探 画像表示手段34によって表示される探傷画 の各画素が、検出コイル2のリフトオフ変動 イズがX軸に沿うようにXY座標系を回転させ 後のX’Y’座標系におけるY’軸方向の信号 分の強度に応じた濃度を有する構成を採用 ても良い。さらに、探傷画像表示手段34に って表示される探傷画像の各画素が、振幅A X信号の強度、Y信号の強度、又は、Y’軸方 の信号成分の強度の何れかを所定のしきい で2値化した濃度を有する構成を採用するこ とも可能である。

 さらに、信号処理手段3は、きず候補信号 を所定のしきい値で2値化することにより、 検査材におけるきず候補部位を検出するき 候補部位検出手段35と、被検査材の各部位に 対応する複数の画素でそれぞれ構成され、前 記検出されたきず候補部位に対応する画素が 他の画素と識別可能な濃度を有する探傷画像 を、前記きず候補部位におけるきず候補信号 の位相に応じて複数枚形成する探傷画像形成 手段36と、前記複数枚の探傷画像のそれぞれ 対して個別に画像処理を施すことにより、 探傷画像に存在するきず候補部位における ず候補信号の位相に応じた方向についての 該きず候補部位の連続性を評価する連続性 価手段37と、前記きず候補部位の連続性に づいて、きずを検出するきず検出手段38とを 具備する。

 具体的には、きず候補部位検出手段35は、 2同期検波手段32から出力されるX信号の強度X 及びY信号の強度Yに基づき、以下の式(2)で表 れる振幅Aと、式(3)で表される位相θを算出 る。
 A=(X 2 +Y 2 ) 1/2   ・・・(2)
 θ=tan -1 (Y/X) ・・・(3)
 きず候補部位検出手段35は、振幅Aを所定の きい値で2値化することにより、被検査材に おけるきず候補部位を検出し、きず候補部位 検出信号として、探傷画像形成手段36に出力 る。また、きず候補部位検出手段35は、き 候補部位検出信号に対応する位相θも探傷画 像形成手段36に出力する。

 探傷画像形成手段36には、きず候補部位 出手段35から出力されたきず候補部位検出信 号と、適宜のセンサ(図示せず)で検出された 傷プローブ4と被検査材との相対位置関係( なわち、探傷プローブ4で探傷を行っている 検査材の部位)が入力される。探傷画像形成 手段36は、前記センサで検出した被検査材の 部位に対応する複数の画素でそれぞれ構成 れ、前記検出されたきず候補部位に対応す 画素が他の画素と識別可能な濃度を有する( 例えば、検出されたきず候補部位に対応する 画素が255の濃度を有し、他の画素が0の濃度 有する)探傷画像を、前記きず候補部位にお る位相θ(位相の範囲)に応じて複数枚形成す る。例えば、探傷画像形成手段36は、きず候 部位における位相θの範囲がそれぞれ0°≦θ <45°、135°≦θ<180°である2枚の探傷画像 形成する。図14は、前述した図6に示す被検 材Sについて、探傷画像形成手段36によって 成される探傷画像の一例を模式的に示す図 あり、図14(a)はきず候補部位における位相θ 範囲が0°≦θ<45°である探傷画像を、図14( b)はきず候補部位における位相θの範囲が135° ≦θ<180°である探傷画像を示す。図14(a)に す探傷画像には、きずAに対応する4つの画素 群a1~a4がきず候補部位として正確に含まれ、 14(b)に示す探傷画像には、きずBに対応する2 つの画素群b1、b2がきず候補部位として正確 含まれる。なお、ノイズ源Nに対応するきず 補部位は、45°≦θ<135°の位相θを有する め、探傷画像は形成されない。しかし、本 明はこれに限るものではなく、45°≦θ<135 の位相θを有するきず候補部位についても、 1枚の又は位相θの範囲が異なる複数枚の探傷 画像を形成し、後述のように、連続性評価手 段37による画像処理によって算出したきず長 の大小に応じて、きずであるか否かの判断 行うことも可能である。

 連続性評価手段37は、例えば、図14(a)、(b) に示す2枚の探傷画像のそれぞれに対して個 に画像処理を施すことにより、各探傷画像 存在するきず候補部位における位相θに応じ た方向についての当該きず候補部位の連続性 を評価する。この連続性の評価には、適宜の 画像処理フィルタが用いられる。例えば、図 14(a)に示す探傷画像については、図15(a)に示 ように、きず候補部位を構成する一つの注 画素E1について、位相θの範囲(0°≦θ<45°) 応じた近傍画素領域(図中、ハッチを施した 領域S1)内に、きず候補部位を構成する他の画 素が存在するか否かを判断する。他の画素が 存在する場合、当該他の画素と注目画素E1と 、同じきず候補部位についての画素領域で ると判断する。図15(a)に示す例では、注目 素E1と他の画素E2、E3とは、同じきず候補部 についての画素領域であると判断される。 続性評価手段37は、各探傷画像内のきず候補 部位を構成する全ての画素を注目画素として 、上記の処理を繰り返し行い、その結果、同 一のきず候補部位と判断されたものについて 、その長さを算出する。図15に示す例では、 ず候補部位を構成する全ての画素が同一の ず候補部位であると判断され、その長さL1( 一のきず候補部位を構成する両端画素の距 )が算出される。図14(b)に示す探傷画像につ ても、図15(b)に示すように、同様の処理が されて、きず候補部位の長さL2が算出される 。ただし、図14(b)に示す探傷画像における位 θの範囲(135°≦θ<180°)は図14(a)に示す探傷 画像における位相θの範囲(0°≦θ<45°)と異 るため、図15(b)に示す近傍画素領域(図中、 ッチを施した領域S2)は、図15(a)に示す近傍 素領域とは異なる。

 きず検出手段38は、きず候補部位の連続 に基づいて、きずを検出する。すなわち、 えば、連続性評価手段37によって算出したき ず候補部位の長さが、予め定めた長さより長 い場合にはきずであると判断し、予め定めた 長さ以下である場合にはきずでないと判断す る。図15(a)に示すきず候補部位の長さL1、及 、図15(b)に示すきず候補部位の長さL2が、予 定めた長さより長い場合には、双方共に、 ずとして検出されることになる。そして、 傷画像が形成されない位相θの範囲に存在 るきず候補部位については、ノイズ源に対 する部位であると判断されることになる。

 信号処理手段3は、上記構成のきず候補部 位検出手段35、探傷画像形成手段36、連続性 価手段37及びきず検出手段38を具備するため 探傷画像における振幅Aのみならず位相(角 情報)を利用して、きずの連続性を自動的に 確に評価可能である。

 本実施形態では、きず候補部位検出手段3 5が、振幅Aを所定のしきい値で2値化すること により、被検査材におけるきず候補部位を検 出し、きず候補部位検出信号として、探傷画 像形成手段36に出力する構成について説明し 。しかしながら、本発明はこれに限るもの はなく、きず候補部位検出手段35が、X信号 強度X、又は、Y信号の強度Yを所定のしきい で2値化することにより、被検査材における きず候補部位を検出し、きず候補部位検出信 号として、探傷画像形成手段36に出力する構 を採用することも可能である。また、きず 補部位検出手段35が、検出コイル2のリフト フ変動ノイズがX軸に沿うようにXY座標系を 転させた後のX’Y’座標系におけるY’軸方 の信号成分の強度を所定のしきい値で2値化 することにより、被検査材におけるきず候補 部位を検出し、きず候補部位検出信号として 、探傷画像形成手段36に出力する構成を採用 ても良い。

 以上に説明したように、本実施形態に係 磁気探傷装置100によれば、単一周波数の励 電流を用いることに起因する従来の回転磁 を利用した磁気探傷方法の問題点を解決す ことができ、回転磁界を用いて被検査材に 在する種々の方向に延びるきずを高精度に 傷可能である。

 以下、実施例を示すことにより、本発明 特徴をより一層明らかにする。

 図9及び図10に概略構成を示す磁気探傷装置1 00を用いて、図16に示すように、鋼板Sに形成 た線状の人工きずFの探傷試験を実施した。 表1に探傷条件の概要を、表2に被検査材の概 仕様を示す。表1に示すように、探傷プロー ブ4として、一辺が6mmの立方体である芯材の 面にそれぞれ50回巻きされたX方向及びY方向 磁コイルと、前記芯材の底面に取り付けら た直径5mmの100回巻きの検出コイルとを具備 るものを作製した。

 そして、図16に示すように、作製した探 プローブ4を鋼板Sの直上で且つ人工きずFの 上を通るように一定方向(図16に示すY方向)に 走査して探傷信号を検出した。この際、人工 きずの延びる方向と探傷プローブ4の走査方 との相対的な角度を順次変化させ、各角度 に探傷信号を検出した。具体的には、図16に 示すX方向と人工きずFの延びる方向との成す 度をθとした場合に、θ=0°~75°の範囲を15° ッチで変化させ、各角度θでの探傷信号を検 出した。

 図17は、上記の探傷試験によって得られ きず信号のリサージュ波形を示す。図17に示 すように、各角度(θ=0°、15°、30°、45°、60° 75°)のきず信号のリサージュ波形は、互い 異なる位相を有することが識別可能である また、きず信号のリサージュ波形は、どの 度のきずについても全て十分に大きな振幅 有する。この結果より、本発明によれば、 期検波の効果を十分に得ることができると に、きずの角度情報を推定可能であること 分かる。従って、探傷画像を用いたきずの 続性評価も正確に行うことが可能である。

 なお、図11に示す例では、リフトオフ変 ノイズが生じていないが、生じている場合 は、リフトオフ変動ノイズがX軸に沿うよう XY座標系を回転させ、回転後のX’Y’座標系 におけるY’軸方向の信号成分をきず候補信 とすることにより、きず検出能に対するリ トオフ変動ノイズの影響を抑制することが 能である。