図1に、本発明による、透析治療等のため に人体の腕の血管に穿刺された注射針の脱落 を事前に検知する磁気検知装置の構成例を示 す。これは点滴の場合も同様の状態となる。 以下の具体的実施例においては、人体の腕の 血管に穿刺された注射針の脱落を事前に検知 することを事例として説明しているが、これ は、本発明の用途が、人体に穿刺された注射 針の脱落検知に限られるという意味合いのも のではない。本発明は、小型の検知対象用磁 石手段と、小型の磁気バイアス磁石手段と、 近傍の磁界強度を定期的に検知する磁気セン サ手段とを備えることによって、3つの手段� �間での位置関係の変移を磁界強度の変化と� �て検出しようとする磁気検知装置を対象と� �るものである。

 以下、透析治療等のために人体の腕の血� ��に穿刺された注射針の脱落事前検知装置に� ��定して説明する。患者の腕1の血管には、透 析治療のための注射針2が穿刺される。注射� �2は、注射器3に接続され、注射器3は、チュ� �ブ4に接続されている。注射針2、注射器3、� �よびチューブ4を介して、患者の腕1の血管か ら血液が取り出され、かつ浄化された血液が 患者の血管に戻される。点滴の場合は、チュ ーブ4に点滴液が滴下され、注射針2から患者� ��腕1の血管中に注入される。注射器3は、粘� �性テープなどの固定具5を介することによっ� ��患者の腕1に固定され、同様にチューブ4の� �部も、粘着性テープなどの固定具6を介する� ��とによって患者の腕1に固定される。固定具 6は単純にチューブ4を固定しているために固� ��具6には力がほとんど働かず、患者の腕1に� �実に固定されるが、固定具5は構造物の注射� ��3を固定するために当該固定具5には力が加� �り、患者の腕1からズレたり剥がれたりする� ��とがある。固定具5が患者の腕1からズレた� �剥がれたりすると、注射針2が患者の腕1の血 管から脱落することにつながり、大量の出血 あるいは空気の流入などの致命的な事故を引 き起こすことがある。

 本発明の磁気検知装置100は、注射針2の患 者の腕1の血管からの脱落につながる、固定� �5が患者の腕1からのズレ又は剥がれを事前に 検知するものである。

 本発明の磁気検知装置100は、磁気センサ7 、磁気バイアス磁石8、検知対象用磁石9、リ� ��ット部12、磁気センサ7にポート部13を介し� �接続される制御部20、制御部20に接続される� ��憶部30、および制御部20に接続される警報部 40を備える。

 磁気センサ7は、患者の腕1に固定するの� �適した小さな寸法を有し、例えば縦横の長� �が1cmから2cm程度であり、厚みが1mm程度であ� �。磁気センサ7は、例えばホール素子または� ��気抵抗素子などの磁界強度を検出すること� ��できる任意の種類の磁気センサである。こ� ��は公知の技術によって提供できるものであ� ��ので、ここでは詳細な説明はしない。

 磁気センサ7には、図1に示されるような� �ード11を用いて外部から給電されるか、ある いは内蔵された電池から給電されることもで きる。磁気バイアス磁石8は、チューブ4を固� ��する固定具6によって患者の腕1に確実に固� �して配置される。つまり、粘着性テープ等� �固定具6の適宜箇所、例えば、端部近傍に接� ��固定することができる。検知対象用磁石9も 、注射器3を固定する固定具5によって患者の� ��1に固定される。同様に、粘着性テープ等の 固定具5の端部近傍に接着固定することがで� �る。磁気バイアス磁石8および検知対象用磁� ��9は、非常に小さい磁石であり、例えば2mm角 程度であって、一例としてネオジウムを含む 永久磁石などである。これは、固定具5又は� �定具6の端部に小型磁石を予め埋め込んだも� ��を用いても良いし、所望の小型磁石を各固� ��具5又は固定具6に対して、別の粘着手段に� �り配置する方法を採用しても良い。

 図2に、磁気センサ7、磁気バイアス磁石8� ��および検知対象用磁石9の配置構成の一例を 概念図として示す。図2に示される構成では� �磁気バイアス磁石8が、複数の要素磁石81、82 、83、および84からなり、複数の要素磁石81、 82、83、および84それぞれが、一直線状に配置 され、且つ配置される直線方向に対してほぼ 垂直な所定方向に所定の同一極(S極又はN極)� �向けて、互いに密接して配置される。なお� �2に示される構成では、検知対照用磁石9は、 単一の磁石からなる。この場合、検知対照用 磁石9と磁気バイアス磁石8の磁極の向きは同� ��方向が望ましい。この図2に示した構成では 、磁気センサ7に向かう面に磁気バイアス磁� �8のS極が配置され、また磁気センサ7に向か� �面にも検知対象用磁石9のS極が配置される。 このような磁石配置の複数の要素磁石からな る磁気バイアス磁石8を用いると、磁気バイ� �ス磁石8からの磁気センサ7への磁界強度を強 くすることができる。そのため、磁気バイア ス磁石8をより小型にすることができる、磁� �センサ7の外乱に対する感度を下げることが� ��きる、または磁気センサ7から磁気バイアス 磁石8までの距離を長くとることができるな� �、磁気検知装置の設計における自由度を高� �ることができる。検知対象用磁石9に、磁気� ��イアス磁石8が複数の要素磁石からなる上述 の磁石構成を採用すれば、検知対象用磁石9� �関する設計に同様の利点を有することがで� �る。また磁気バイアス磁石8および検知対象� ��磁石9を、それぞれ単一の磁石から構成して も良い。

 磁気センサ7、磁気バイアス磁石8、およ� �検知対象用磁石9の配置構成の概念は、磁気� ��イアス磁石8と検知対象用磁石9を直線状に� �置し、磁気センサ7を検知対象用磁石9の垂直 方向に配置した図2に示される配置に限らず� �様々な配置構成が可能である。要するに、� �気バイアス磁石8、検知対象用磁石9および磁 気センサ7の3つの手段が必要な構成であり、� ��の配置構成は適宜実施すれば良いものであ� ��。しかし、磁気バイアス磁石8と検知対象用 磁石9とは、別構造の磁石でなければならな� �というものではなく、例えば、磁気バイア� �磁石8自体を複数個配置することもできる。� ��た、配置構成においても、磁気バイアス磁� ��8および検知対象用磁石9を、磁気センサ7に� ��して同じ側に配置する図2の配置構成ではな く、両者を磁気センサ7に対して互いに異な� �側に配置することもできる。要するに、磁� �バイアス磁石8、検知対象用磁石9および磁気 センサ7の3つの手段を適宜近傍に配置するこ� ��が肝要である。ここで、「近傍」との技術� ��意味合いは、磁気バイアス磁石8は、地磁気 や患者周囲に存在する磁性体の影響をバイア スできる程度に磁気バイアス磁石8と磁気セ� �サ7が配置されている必要があり、検知対象� ��磁石9は、ズレや剥がれ等による数ミリ程度 の位置変化が生起する磁界強度の変化を検地 できる程度に検知対象用磁石9と磁気センサ7� ��配置されている必要があるということであ� ��。

 この実施例では、磁気バイアス磁石8は、 磁気センサ7とは別手段として構成した例を� �しているが、検知対象用磁石9の位置の変化� ��検知しようとするのであれば、磁気バイア� ��磁石8と磁気センサ7との位置関係は固定的� �あっても良いのであるから、図5に示すよう� ��、磁気バイアス磁石8は磁気センサ7の内部� �取り込んで構成することも可能である。こ� �ような、磁気バイアス磁石8を自らの磁気セ� ��サ7内に設けたものは、磁気検知装置を構成 する端末部分として有効である。また、図5� �おいては、検知対象用磁石9を粘着性テープ� ��固定具5に対して配置する手段としては、別 の粘着手段15を用いて固定具5に配置する方法 を採用した。粘着手段15は、図示では円形状� ��裏面に粘着材を設けたものである。

 図3に、本発明の磁気検知装置100の制御部 を含む構成の一例を示す。図3には、磁気セ� �サ7、磁気検知装置の動作を開始する開始信� ��を制御部20に送信するリセット部12、磁気セ ンサ7およびリセット部12を制御部に接続し、 相互間の信号送受信をするポート13、磁気検� ��装置100の動作を制御する制御部20、初期環� �の磁界強度を記憶する初期磁界強度記憶手� �31、および注射針2の脱落に対する警報を出� �べき警報範囲を設定するための初期環境の� �界強度に対する所定の閾値を記憶する閾値� �憶手段32を含む記憶部30、および注射針2の脱 落に対する警報を出す警報部40が含まれる。

 次に、図4に示されるフローチャートを参 照して、本発明による磁気検知装置の動作を 説明する。

 ステップS1(測定準備)で、まず注射針2の� �落検知(脱落の事前検知のための検知を簡単� ��言う)のために行われる磁界強度測定の準備 を行う。具体的には、患者の腕1の血管に、� �射器3の注射針2を穿刺して、粘着性テープな どの固定具5、及び固定具6を用いて、注射器3 を固定具5により固定し、およびチューブ4を� ��定具6により固定するとともに、これに対し て、磁気バイアス磁石8および検知対象用磁� �9を適宜手段(粘着性固定具)によって患者の� �1に固定する。この場合は、磁気バイアス磁� ��8を固定具6に対して配置し、検知対象用磁� �9を固定具5に対して配置する。その後、磁気 センサ7を適切な手段を用いて患者の腕1に固� ��する。これは、両面粘着テープを用いても� ��いし、裏面に粘着テープを配した磁気セン� ��7を構成しても良い。磁気センサ7は、ポー� �13を介して制御部20に接続される。

 ステップS2(リセット部オン)で、押される と開始信号を制御部20へ送信するスイッチな� ��のリセット部12を作動させることで、磁気� �知装置の動作は開始される。なお、図1に示� ��れる例では、リセット部12は磁気センサ7の� ��部に設けられる。また、このリセット部12� �、動作の開始の指示と、開始所期状態での� �気センサ7によって検出される初期環境の磁� ��を検知し記憶することであるので、これら� ��動作が達成されるのであれば制御部20側に� �り込むことも可能である。

 ステップS3(測定開始)で、制御部20は、磁� ��センサ7に、初期環境の磁界強度を測定させ るとともに、定期的な時間間隔で環境の磁界 強度を測定させる。ここで、初期環境の磁界 には、磁気バイアス磁石8および検知対象用� �石9からの磁界と、磁気センサ7が配置される 環境における磁性体および地磁気からの磁界 とが含まれる。これを、「初期環境の磁界強 度」等と称する。磁気バイアス磁石8を配置� �る目的は、磁気バイアス磁石8から与えられ� ��バイアス磁界によって、使用環境における� ��性体および地磁気の変化による測定される� ��界強度への影響が低減されるようにするも� ��である。したがって、磁気センサ7に対する 磁気バイアス磁石8の位置、磁気バイアス磁� �8の強度、および磁気センサ7の検知感度など を選択する必要がある。その際、検知対象用 磁石9の位置変化に基づく磁界強度変化が、� �気センサ7によって十分検知できる状態を維� ��することも考慮する必要がある。固定した� ��射器のズレ又は剥がれの検知の度合いは、� ��の程度ずれた際に異常と検出するか、どの� ��度のタイミングで異常を検出すれば安全を� ��保できるかによって決まる。つまり、固定� ��た注射器のズレ又は剥がれの位置変化の検� ��は、検出する必要がある距離(1cm或いは5mm等 )により決まる。磁界強度の測定を行う定期� �な時間間隔は、例えば1分間隔或いは30秒間� �など必要に応じて適宜決定される。また、� �のような定期的な磁界強度の測定は、透析� �療又は点滴に必要な所定の時間期間、例え� �数時間にわたって継続して行われる。固定� �た注射器のズレ又は剥がれの位置変化の検� �目標となる変移距離は、磁界強度の変化検� �の閾値として記憶部30の閾値記憶手段32に記� ��されている。

 ステップS4(初期値記憶)で、制御部20は、� ��定された初期環境の磁界強度を、記憶部30� �初期磁界強度記憶手段31に記憶させるととも に、計算手段21に送る。

 ステップS5(警報範囲計算)で、制御部20は� ��計算手段21に、動作開始時に記憶部30の初期 磁界強度記憶手段31に記憶された初期環境の� ��界強度と、記憶部30の閾値記憶手段32に記憶 された所定の閾値とに基づいて、警報を出す べき警報範囲を計算させて、計算された警報 範囲を比較手段22に送らせる。初期環境の磁� ��強度に対する所定の閾値は、固定した注射� ��のズレ又は剥がれの位置変化の検出目標と� ��る変移距離(1cm或いは5mm等)によって適宜決� �されるものであり、例えば、目標となる変� �距離に応じて初期環境の磁界強度からの検� �時の磁界強度の上下30%などが閾値として決� �されるものである。一例として、動作開始� �に測定された初期環境の磁界強度が10ガウス であり、所定の閾値が上下30%であるなら、警 報範囲は、7~13ガウスになる。この閾値は、� �の値に限定されず所期の目的を達成できる� �囲であれば自由に設定できるものである。� �た、図3の実施例では、初期環境の磁界強度� ��閾値とに基づいて、事前に警報を出すべき� ��報範囲を比較手段22に送っておき、測定時� �磁界強度が警報範囲内に入っているか否か� �判断するようにしたが、初期環境の磁界強� �と閾値が解っていれば、測定タイミング毎� �、その時の磁界強度と初期環境の磁界強度� �閾値とから計算することにより、固定した� �射器のズレ又は剥がれの位置変化の判別は� �易にできるものである。つまり、この場合� �、ステップS5(警報範囲計算)を省くことが可� ��である。この場合は、図4のS5が削除された� ��ローが行われる。また、閾値も一定の目標� ��が事前に定められているのであれば、その� ��毎に設定する必要はなく、システムを立ち� ��げる段階で装置内に取り込んでおくことも� ��能である。

 ステップS6(測定範囲は警報範囲を超える� ��?)で、制御部20は、比較手段22に、定期的な� ��間間隔で測定された磁界強度と、計算手段2 1から送られた警報範囲とを比較させる。比� �の結果、測定された磁界強度が警報範囲を� �えないなら、ステップS6を繰り返す。警報範 囲を越える場合には、ステップS7に進む。

 上述の初期環境の磁界強度と閾値が解っ� ��いれば、測定タイミング毎に、その時の磁� ��強度と初期環境の磁界強度と閾値とから計� ��することにより、固定した注射器のズレ又� ��剥がれの位置変化の判別する場合には、ス� ��ップS5(警報範囲計算)は不要であるので、ス テップS6(測定範囲は警報範囲を超えるか?)で� ��、制御部20が、初期磁界強度記憶手段31に記 憶された初期環境の磁界強度と、閾値記憶手 段32に記憶された所定の閾値とを参照して、� ��定のタイミングで検出された磁界強度が警� ��範囲を越えるか否かを判別することになる� ��判別の結果、測定された磁界強度が警報範� ��を越えないなら、ステップS6を繰り返す。� �報範囲を越える場合には、ステップS7に進む 。

 ステップS7(警報を出す)で、制御部20は、� ��較手段22に、警報信号を警報部40へ送信させ 、警報部40は、注射針の脱落に対する警報を� ��す。この警報は、例えば、警報音によって� ��、ランプ等の視覚的表示によっても良く、� ��析治療等を行っている患者が居住する家屋� ��いる家族などの他の人物に、または患者を� ��容している病院の医療従事者に知らされる� ��家族に対しても病院の医療従事者に対して� ��、個々に所持する携帯電話機等に直接連絡� ��ることも可能である。知らされた家族また� ��医療従事者は、患者に対して適切な処置を� ��うことができる。

 その後、ステップS8で終了する。

 ある変形実施形態として、本発明の磁気� ��出装置100を、複数の患者の透析治療等を行� ��病院などで使用することができる。その場� ��には、各患者に磁気検出装置の検出端末部� ��(磁気バイアス磁石8、検知対象用磁石9およ� ��磁気センサ7の3つの手段)を設置して、各患� ��の磁気センサ7を、各ポート13を介して共通� ��制御部20に接続する。その際、各ポート13に 識別情報を割り当て、どの磁気センサ7から� �報信号が送信されているかを、共通の制御� �20が識別できるように構成することもできる 。なお識別情報が、患者名を含むこともでき る。

 本発明は、新規な磁気検知装置を提供す� ��ものであるが、それに利用する新規な磁気� ��知装置用の検出端末部分(磁気バイアス磁石 8、検知対象用磁石9および磁気センサ7の3つ� �手段)に用いる、磁気バイアス磁石8を配置し た固定手段、検知対象用磁石9を配置した固� �手段、およびリセット部を設けた磁気セン� �7を提供するものでもある。また、磁気セン� ��は磁気バイアス磁石8を内部に配置構成も可 能である。

 本発明の磁気検知装置は、本明細書で記� ��された構成以外にも、様々な変形実施形態� ��可能であり、例えば、本発明の磁気検知装� ��が備える各構成要素の構成、および制御部� ��行う処理には、様々な変更が可能である。

 本発明は、上述したように透析治療用や� ��滴等の医療現場だけでなく、一般産業用と� ��ても微小の位置変動を検知する手段として� ��い分野において、例えば、美術館での展示� ��の盗難防止のための微小位置ズレ検知や、� ��震実験における構造体の変形検出や、商品� ��保管・物流における荷崩れ検知等として、� ��準位置に対して被測定位置が微小距離変移� ��たか否かを検知する磁気検知装置に利用が� ��能なものである。