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Patent Searching and Data


Title:
MASS ANALYZER
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/054026
Kind Code:
A1
Abstract:
A product ion spectrum is prepared based on data obtained by MS2 analysis for each of a parent compound and a metabolite (S1, S2). Further, a neutral loss spectrum is prepared using, instead of mass, a difference in mass between each product ion and a precursor ion (S3). For the parent compound and the metabolite, a peak common in mass is extracted in neutral loss spectra(S4). A complementary peak at a position of a difference in mass between the common peak, which appears on the product ion spectrum for the metabolite, and the precursor ion is extracted (S5). The ion corresponding to the complementary peak is set as a precursor ion in a next MS3 analysis (S6), and the MS3 analysis is executed (S7). When the part common to the parent compound and the metabolite is eliminated as a neutral molecule while allowing the remaining part to stay as an ion, the MS3 analysis is carried out using the ion as the remaining part as the precursor ion to obtain information on the structure of the metabolic site.

Inventors:
YAMAGUCHI SHINICHI (JP)
Application Number:
PCT/JP2007/001156
Publication Date:
April 30, 2009
Filing Date:
October 23, 2007
Export Citation:
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Assignee:
SHIMADZU CORP (JP)
YAMAGUCHI SHINICHI (JP)
International Classes:
G01N27/62
Foreign References:
JP2007218692A2007-08-30
JPH08124519A1996-05-17
JPH1164285A1999-03-05
JPH10293120A1998-11-04
JPH10142196A1998-05-29
JP2001249114A2001-09-14
Other References:
SHIN'ICHI YAMAGUCHI ET AL.: "Ion Trap Hiko Jikan Gata Shitsuryo Bunsekikei o Riyo shita Ekitai Chromatography Tandem Shitsuryo Bunseki Date o Mochiiru Bubun Saisho 2-joho ni yoru Taishabutsu Jido Kenshutsuho", J.MASS SPECTROM. SOC. JPN, vol. 55, no. 2, 12 January 2007 (2007-01-12), pages 83 - 89, XP008134026
GABRIELA ZUREK ET AL.: "Novel Strategies for Metabolite Identification Using HPLC-Ion Trap Mass Spectrometry", LC GCNORTH AMERICA, June 2003 (2003-06-01), pages 13 - 14, XP003022678
See also references of EP 2208991A4
Attorney, Agent or Firm:
KOBAYASI, Ryohei (7th Floor Hougen-Sizyokarasuma Building, 37, Motoakuozi-tyo, Higasinotouin Sizyo-sagaru, Simogyo-ku, Kyoto-s, Kyoto 91, JP)
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Claims:
 MS n 分析(nは3以上の整数)可能な質量分析装置であって、
 a)第1、第2なる2つの成分についてそれぞれMS m-1 分析(mは3以上n以下の整数)を行って得られた質量分析データに基づいてそれぞれMS m-1 スペクトルを作成するマススペクトル作成手段と、
 b)前記両MS m-1 スペクトルのそれぞれについて当該スペクトルに現れる全て又は一部のピークの質量とプリカーサイオンの質量との差を求め、この質量差の位置にピークを有するMS m-1 質量差スペクトルを作成する質量差スペクトル作成手段と、
 c)第1成分と第2成分についての両MS m-1 質量差スペクトルにおいて質量が同一のピークを抽出する共通ピーク抽出手段と、
 d)前記プリカーサイオンの質量と前記共通ピークの質量との差に対応した相補ピークを、第1成分及び/又は第2成分についてのMS m-1 スペクトル上で抽出する相補ピーク抽出手段と、
 e)第1成分及び/又は第2成分に対するMS m 分析を実行する際のm-1段目の開裂操作のプリカーサイオンの候補として、前記相補ピークに対応するイオンを設定する分析制御手段と、
 を備えることを特徴とする質量分析装置。
 MS n 分析(nは3以上の整数)可能な質量分析装置であって、
 a)第1、第2なる2つの成分についてそれぞれMS m-1 分析(mは3以上n以下の整数)を行って得られた質量分析データに基づいてそれぞれMS m-1 スペクトルを作成するマススペクトル作成手段と、
 b)前記両MS m-1 スペクトルのそれぞれについて当該スペクトルに現れる全て又は一部のピークの質量とプリカーサイオンの質量との差を求め、この質量差の位置にピークを有するMS m-1 質量差スペクトルを作成する質量差スペクトル作成手段と、
 c)第1成分と第2成分についての両MS m-1 質量差スペクトルにおいて質量が同一のピークを抽出する共通ピーク抽出手段と、
 d)前記プリカーサイオンの質量と前記共通ピークの質量との差に対応した相補ピークを、第1成分及び/又は第2成分についてのMS m-1 スペクトル上で抽出する相補ピーク抽出手段と、
 e)第1成分及び/又は第2成分に対するMS m 分析を実行する際のm-1段目の開裂操作のプリカーサイオンの候補として、前記相補ピークに対応するイオンを設定する分析制御手段と、
 を備えることを特徴とする質量分析装置。
 MS n 分析(nは3以上の整数)可能な質量分析装置であって、
 a)第1、第2なる2つの成分についてそれぞれMS m-1 分析(mは3以上n以下の整数)を行って得られた質量分析データに基づいてそれぞれMS m-1 スペクトルを作成するマススペクトル作成手段と、
 b)第1成分と第2成分についての両MS m-1 スペクトルにおいて質量が同一のピークを抽出する共通ピーク抽出手段と、
 c)第1成分及び/又は第2成分に対するMS m 分析を実行する際のm-1段目の開裂操作のプリカーサイオンの候補として、前記共通ピークに対応するイオンを除外する又はその実行に低い優先度を与える分析制御手段と、
 を備えることを特徴とする質量分析装置。
Description:
質量分析装置

 本発明は、MS n (但しnは3以上の整数)分析可能な質量分析装 に関する。

 イオントラップ型質量分析装置などを用 た質量分析においては、従来よりMS/MS分析( ンデム分析)という手法が知られている。一 般的なMS/MS分析では、まず分析対象物から目 とする特定の質量(厳密には質量電荷比m/z) 有するイオンをプリカーサイオンとして選 し、その選別したプリカーサイオンをCID(Coll usion Induced Dissociation:衝突誘起分解)によって 開裂させることでプロダクトイオン(フラグ ントイオンともいう)を生成する。その後、 のプロダクトイオンを質量分析することに って、プロダクトイオンや開裂により脱離 たイオン或いは中性分子などの質量に関す 情報を取得し、これに基づいて目的とする 料分子の組成や化学構造を推定する。

 近年、こうした装置で分析しようとする試 はますます分子量が大きくなり、構造(組成 )も複雑になる傾向にある。そのため、試料 性質によっては、一段階の開裂操作だけで 十分に小さな質量までイオンが開裂しない 合がある。そうした場合には、開裂の操作 複数回繰り返し、最終的に生成したプロダ トイオンを質量分析するMS n 分析が行われることもある(例えば特許文献1 2など参照)。上記MS/MS分析はn=2におけるMS n 分析である。

 ところで、様々な疾病・疾患の診断、医薬 や機能性食品の有効性や安全性の評価、生 習慣や健康に関する研究などの分野におい 、生体内での化学的変化の産物である代謝 を分析することは非常に重要であり、近年 メタボロミクス(Metabolomics)と呼ばれる、代 物を網羅的に解析する手法が注目されてい 。このような代謝物解析において、構造が 知である或る化合物(以下、これを親化合物 いう)から代謝により変化した別の化合物( 下、これを代謝物という)を探索する場合で 、上記のように、分子量の大きな親化合物 対して1乃至複数段の開裂を行って収集した MS n スペクトルを利用する手法は有用である。

 こうした代謝物解析にMS n 分析を利用する場合、代謝物の化学構造を明 らかにするには、代謝物に特異的な代謝部位 (親化合物の構造の一部で修飾された部位)に 目して多段の開裂操作を行うことが必要で る。即ち、例えば1回の開裂操作により得ら れた多数のプロダクトイオンのピークの中で 適切なイオンをプリカーサイオンとして選択 して、次段の開裂操作を行うことが重要であ る。従来、プリカーサイオンを自動的に選択 する方法として、例えば、マススペクトルに 現れたピークの中で所定の閾値以上の信号強 度を持つ複数のピークについて、強度の大き い順、或いは質量電荷比の小さい順などとい った選択基準が用いられている。しかしなが ら、こうした従来のプリカーサイオン選択手 法では、必ずしも上述のように着目している 代謝部位に対応するイオンがプリカーサイオ ンとして選択されるとは限らない。

 そのため、現実には、分析担当者がMS n スペクトルを目視で確認し、次のプリカーサ イオンとして適当なイオンを選別したり、プ リカーサイオンの選別の優先順位を決めたり することが行われるが、こうした判断は容易 ではなく、その判断の正確性が分析担当者の 経験や技量などに依存することも避けられな い。

特開平10-142196号公報

特開2001-249114号公報

 本発明は上記課題を解決するために成され ものであり、その目的とするところは、親 合物と代謝物などのように、化学構造が類 した複数の成分のMS n スペクトルを利用して化学構造の推定などの 解析作業を行う際に、適切なプリカーサイオ ンを自動的に選択して分析を行ったり、優先 的に分析すべきプリカーサイオンの情報を提 供したりすることができる質量分析装置を提 供することにある。

 上記課題を解決するために成された第1発明 は、MS n 分析(nは3以上の整数)可能な質量分析装置で って、
 a)第1、第2なる2つの成分についてそれぞれMS m-1 分析(mは3以上n以下の整数)を行って得られた 量分析データに基づいてそれぞれMS m-1 スペクトルを作成するマススペクトル作成手 段と、
 b)前記両MS m-1 スペクトルのそれぞれについて当該スペクト ルに現れる全て又は一部のピークの質量とプ リカーサイオンの質量との差を求め、この質 量差の位置にピークを有するMS m-1 質量差スペクトルを作成する質量差スペクト ル作成手段と、
 c)第1成分と第2成分についての両MS m-1 質量差スペクトルにおいて質量が同一のピー クを抽出する共通ピーク抽出手段と、
 d)前記プリカーサイオンの質量と前記共通 ークの質量との差に対応した相補ピークを 第1成分及び/又は第2成分についてのMS m-1 スペクトル上で抽出する相補ピーク抽出手段 と、
 e)第1成分及び/又は第2成分に対し、前記相 ピークに対応するイオンをプリカーサイオ に設定したm-1段目の開裂操作を行うようにMS m 分析の実行を指示する分析制御手段と、
 を備えることを特徴としている。

 また上記課題を解決するために成された第2 発明は、MS n 分析(nは3以上の整数)可能な質量分析装置で って、
 a)第1、第2なる2つの成分についてそれぞれMS m-1 分析(mは3以上n以下の整数)を行って得られた 量分析データに基づいてそれぞれMS m-1 スペクトルを作成するマススペクトル作成手 段と、
 b)前記両MS m-1 スペクトルのそれぞれについて当該スペクト ルに現れる全て又は一部のピークの質量とプ リカーサイオンの質量との差を求め、この質 量差の位置にピークを有するMS m-1 質量差スペクトルを作成する質量差スペクト ル作成手段と、
 c)第1成分と第2成分についての両MS m-1 質量差スペクトルにおいて質量が同一のピー クを抽出する共通ピーク抽出手段と、
 d)前記プリカーサイオンの質量と前記共通 ークの質量との差に対応した相補ピークを 第1成分及び/又は第2成分についてのMS m-1 スペクトル上で抽出する相補ピーク抽出手段 と、
 e)第1成分及び/又は第2成分に対するMS m 分析を実行する際のm-1段目の開裂操作のプリ カーサイオンの候補として、前記相補ピーク に対応するイオンを設定する分析制御手段と 、
 を備えることを特徴としている。

 また上記課題を解決するために成された第3 発明は、MS n 分析(nは3以上の整数)可能な質量分析装置で って、
 a)第1、第2なる2つの成分についてそれぞれMS m-1 分析(mは3以上n以下の整数)を行って得られた 量分析データに基づいてそれぞれMS m-1 スペクトルを作成するマススペクトル作成手 段と、
 b)第1成分と第2成分についての両MS m-1 スペクトルにおいて質量が同一のピークを抽 出する共通ピーク抽出手段と、
 c)第1成分及び/又は第2成分に対するMS m 分析を実行する際のm-1段目の開裂操作のプリ カーサイオンの候補として、前記共通ピーク に対応するイオンを除外する又はその実行に 低い優先度を与える分析制御手段と、
 を備えることを特徴としている。

 ここで、MS n 分析可能な質量分析装置とは、例えば三次元 四重極型イオントラップを典型とするイオン トラップを利用したイオントラップ型質量分 析装置などである。プリカーサイオンを開裂 させる手法として一般的には衝突誘起解離が 利用されることが多いが、それ以外の手法に よりプリカーサイオンを開裂させてもよい。

 また、第1成分及び第2成分として任意の 分を選択することができるが、化学構造が く相違する2つの成分に本発明を適用しても 意な結果は得られないから、実質的に、類 した化学構造を持つ成分が対象となる。例 ば、或る化合物と、該化合物が生体内等で 謝を受けて生成された代謝物とを第1成分と 第2成分とにすることができる。

 上記マススペクトル作成手段で作成されるM S m-1 スペクトルは、実際に質量分析装置の検出器 で検出されたプロダクトイオン(又は開裂さ ずに残ったプリカーサイオン)の強度を反映 たマススペクトルである。一方、質量差ス クトル作成手段で作成されるMS m-1 質量差スペクトルは、プリカーサイオンが1 である場合においては、開裂によりプリカ サイオンから脱離して排除されてしまった 性分子(ニュートラルロス)の強度を反映した マススペクトルであるから、実際には検出さ れていない物質についての仮想的なマススペ クトルであるとみなすことができる。なお、 プリカーサイオンが多価である場合には、MS m-1 質量差スペクトルにも実際に検出される脱離 イオンの強度が反映される。

 例えば第1成分についてのMS m-1 スペクトル上の相補ピークは、第1成分及び 2成分についてのMS m-1 質量差スペクトル上での共通ピークの質量Ma 第1成分をMS m-1 分析した際のそのプリカーサイオンの質量Mb( 但しMb>Ma)との差Mb-Maの質量の位置に出現す ピークである。また、第2成分についてのMS m-1 スペクトル上の相補ピークは、第1成分及び 2成分についてのMS m-1 質量差スペクトル上での共通ピークの質量Ma 第2成分をMS m-1 分析した際のそのプリカーサイオンの質量Mc( 但しMc>Mc)との差Mc-Maの質量の位置に出現す ピークである。

 第1成分と第2成分との化学構造が類似して り、衝突誘起解離のような開裂操作により 学構造の一部の結合が切れて複数の断片に 裂した場合、化学構造が共通である断片が 性分子であれば、MS m-1 質量差スペクトル上で共通ピークとして出現 する。また、プリカーサイオンが多価イオン であれば、化学構造が共通である断片がイオ ンであっても、MS m-1 質量差スペクトル上で共通ピークとして出現 する可能性がある。逆に言えば、MS m-1 スペクトル上で相補ピークとして出現するイ オンは、第1成分と第2成分との化学構造で相 する部位、即ち、第1成分と第2成分とが親 合物と代謝物とである場合には代謝部位で ると推測できる。このイオンが代謝部位に 当するイオンであれば、このイオンを次段 開裂操作の対象のプリカーサイオンとする とにより、代謝部位の構造をさらに分解し その構造を推測するのに有用な情報を得る とができる。

 そこで、第1発明に係る質量分析装置では、 分析制御手段の制御の下に、上述のようにMS m-1 スペクトル上で相補ピークとして出現するイ オンを自動的に次段の開裂操作対象のプリカ ーサイオンに設定して、MS m 分析を実行する。また、第2発明に係る質量 析装置では、自動的にプリカーサイオンを 定してMS m 分析を実行するのではなく、上述のようにMS m-1 スペクトル上で相補ピークとして出現するイ オンを次段の開裂操作対象のプリカーサイオ ンの候補として挙げる。構造解析などのため に的確な情報を収集できる可能性の高いもの から順に優先順位を付すような場合には、当 該プリカーサイオンの優先順位を高くすれば よい。

 このように第1及び第2発明に係る質量分析 置によれば、化学構造が互いに類似した第1 分と第2成分とについて、構造が相違する部 位に着目して質量分析データを収集すること ができる。そして、そうした部位に対応した プリカーサイオンの選択に関し、分析担当者 自らがMS n スペクトルを解析してプリカーサイオンとし ての適否の判断を下すという作業が軽減でき 、またそうした作業の経験や技量の乏しい者 であっても、適切な情報を収集して構造解析 を効率よく進めることが可能となる。

 一方、第1成分と第2成分との化学構造が類 しており、衝突誘起解離のような開裂操作 より化学構造の一部の結合が切れて複数の 片に分裂した場合、化学構造が共通である 片がイオンであれば、MS m-1 スペクトル上で共通ピークとして出現する。 この場合のこの共通ピークに対応したイオン をプリカーサイオンに設定してMS m 分析を行っても、代謝部位の構造に関する情 報が得られる可能性は低い。そこで、第3発 に係る質量分析装置では、MS m-1 スペクトル上で共通ピークとして出現するイ オンを次段の開裂操作対象のプリカーサイオ ンの候補から除外するか、或いはそのイオン をプリカーサイオンに設定する優先順位を下 げる。これにより、構造解析に有益でない無 駄な分析を行うことを抑制し、結果的に構造 解析の効率向上を図ることができる。

本発明に係る質量分析装置の一実施例 全体構成図。 本実施例の質量分析装置における分析 御動作の一例を示すフローチャート。 本実施例の質量分析装置で得られる2つのMS n スペクトルの一例を示す図。 本実施例の質量分析装置における分析 御動作を説明するための図。 本実施例の質量分析装置でのスペクト の表示方法を説明するための模式図。 本実施例の質量分析装置のMS n スペクトルの表示方法を説明するための図。

符号の説明

1…質量分析部
2…イオン源
3…イオン光学系
4…イオントラップ
5…飛行時間型質量分離器(TOF)
6…検出器
10…中央制御部
11…分析制御部
12…データ処理部
13…操作部
14…表示部

 本発明に係る質量分析装置の一実施例に いて図面を参照して説明する。図1はこの質 量分析装置の全体構成図である。

 質量分析部1は、試料分子をイオン化する イオン源2、イオンをその内部空間に一時的 蓄積するとともにその内部空間においてイ ンの衝突誘起解離を促進させる、三次元四 極型のイオントラップ4、イオン源2で生成さ れたイオンを上記イオントラップ4まで案内 るイオン光学系3、イオントラップ4から放出 されたイオンを質量(厳密には質量電荷比m/z) 応じて分離する飛行時間型質量分離器(TOF)5 TOF5により分離されたイオンを検出する検出 器6、を含む。

 分析制御部11は中央制御部10からの指示に基 づいて、上記質量分析部1の各部の動作を制 することでMS n 分析を実行する。またデータ処理部12は検出 6で得られた検出信号を受けてデジタル化し 、後述するようなプリカーサイオン選択処理 を含めて所定のデータ処理を実行する。中央 制御部10にはユーザーインターフェースとし の操作部13及び表示部14が接続されている。 なお、中央制御部10、分析制御部11、及びデ タ処理部12の大部分は所定の制御/処理ソフ ウエアを搭載したパーソナルコンピュータ より具現化することができる。

 上記構成の質量分析装置の基本的な動作を 略的に説明する。開裂操作を伴わない通常 質量分析(=MS 1 分析)を実行する際には、分析制御部11の制御 の下に、イオン源2は試料分子をイオン化し それにより発生した各種イオンがイオン光 系3を経てイオントラップ4の内部に導入され る。イオントラップ4では、図示しない電源 り各電極に印加される高周波電圧により形 される四重極電場によって、イオンは一旦 捉される。イオントラップ4の内部に捕捉さ たイオンは、所定のタイミングで一斉に運 エネルギーを付与されてイオントラップ4か ら放出され、TOF5に導入される。つまり、イ ントラップ4がTOF5に対するイオンの飛行の出 発点となる。TOF5の飛行空間を飛行する間に 量に応じて各イオンには時間差が生じ、順 に検出器6に到達して検出される。

 この検出信号を受けたデータ処理部12は、TO F5における飛行時間を質量に換算して、横軸 質量、縦軸を相対強度とするマススペクト を作成し、中央制御部10を介して表示部14の 画面上にマススペクトルを表示させる。この 質量分析結果に基づいて、分析担当者は1段 開裂操作を伴うMS 2 (=MS/MS)分析の対象となるプリカーサイオンを 定する。

 分析担当者が例えばプリカーサイオンの質 を操作部13より入力した上でMS 2 分析の実行を指示すると、分析制御部11の制 の下に、イオン源2は試料分子をイオン化し 、発生した各種イオンはイオン光学系3を経 イオントラップ4に導入される。イオントラ プ4では上述したような四重極電場によって イオンが一旦捕捉されるが、その直後に、先 に設定されたプリカーサイオンを除く他の不 所望のイオンが発散するような電圧が各電極 に印加される。これにより、プリカーサイオ ンのみがイオントラップ4の内部に残される( リカーサイオンの選別)。さらにそこに外部 より所定のCIDガスが導入され、プリカーサイ オンはCIDガスと衝突することで開裂し、開裂 の態様によって各種のプロダクトイオンが生 成される。

 開裂により生じたプロダクトイオン(及びプ リカーサイオンが残っている場合には該イオ ンも)は所定のタイミングで一斉にイオント ップ4から放出され、TOF5に導入される。そし て、通常の質量分析と同様に、TOF5の飛行空 を飛行する間に質量に応じて各イオンには 間差が生じ、順番に検出器6に到達して検出 れる。この検出信号を受けたデータ処理部1 2は、TOF5における飛行時間を質量に換算してM S 2 スペクトルを作成し、中央制御部10を介して 示部14の画面上にMS 2 スペクトルを表示させる。

 イオントラップ4内で開裂して生成したプロ ダクトイオンの1つを再びプリカーサイオン して選別した後に、該プリカーサイオンをCI Dにより開裂させる、という開裂操作を複数 繰り返すことで、n=3以上のMS n 分析を実行することができる。理論的には開 裂操作の繰り返しの段数には制限はないが、 実際上はnの最大値は3~6程度の範囲である。

 本実施例の質量分析装置におけるデータ処 部12では、例えば上述のようなMS 2 分析による検出信号を受けて、開裂操作を1 増やしたMS 3 分析のためのプリカーサイオンの選択処理を 行い、中央制御部10を介してそのプリカーサ オンの選択情報を受けた分析制御部11は、 該プリカーサイオンを2段目の開裂操作のプ カーサイオンとしたMS 3 分析を実行するように質量分析部1を制御す 。こうした手順について図2~図6を参照して 明する。

 ここでは一例として、化学構造が既知で る親化合物Aに由来する代謝物Bの構造解析 する場合について説明する。図2は本実施例 質量分析装置における特徴的な処理及び制 動作を示すフローチャートである。

 まず、図1に示した質量分析装置を用いて、 親化合物Aに対するMS 2 分析と代謝物Bに対するMS 2 分析とをそれぞれ実行し、MS 2 スペクトルデータを収集する(ステップS1)。 のとき、親化合物Aに対するMS 2 分析ではプリカーサイオンの質量が475、代謝 物Bに対するMS 2 分析ではプリカーサイオンの質量が455である 。図3は親化合物Aと代謝物Bとに対するそれぞ れのMS 2 スペクトルの一例を示す図である。プリカー サイオンに対応するピークは実際には存在し ないが、ここでは後述の説明の理解を容易に するために点線で示している。図3に示したMS 2 スペクトルはプロダクトイオンの強度を示す マススペクトルであるので、以下の説明では プロダクトイオンスペクトルと呼ぶ。

 上述のようにデータが収集され、データ 理が開始されると、データ処理部12では、 集したデータに基づいて、図3に示したよう 、プロダクトイオンスペクトルをそれぞれ 成する(ステップS2)。この際に、質量と強度 とを対応付けたピークリストが作成される。 つまり、このピークリストに挙げられたピー クを、横軸が質量、縦軸が強度であるグラフ 上に描出したものがプロダクトイオンスペク トルである。

 次に、親化合物Aと代謝物Bのそれぞれにつ て、プロダクトイオンスペクトルに現れる( 記ピークリストに挙げられている)各プロダ クトイオンの質量とプリカーサイオンの質量 との質量差を順番に計算し、この質量差とそ の質量差の由来となったプロダクトイオンの 強度とを対応付けた質量差ピークリストを作 成する。例えば図3(a)の例で説明すると、プ カーサイオンの質量は475であるから、質量 150であるプロダクトイオンに対応する質量 は325であり、この質量差と質量が150である ロダクトイオンピークの強度とを対応付け ものが、質量差ピークリストに挙げられる プロダクトイオンスペクトルに現れている ピークについて同様の処理が行われること 質量差ピークリストができあがり、そのピ クリストに挙げられたピークを、横軸が質 、縦軸が強度であるグラフ上に描出したも がMS 2 質量差スペクトルである。図3(b)のMS 2 スペクトルを元に求めたMS 2 質量差スペクトルが図3(c)である。上記質量 は開裂によってプリカーサイオンから脱離 た断片の質量に相当し、プリカーサイオン 1価である場合を想定すると、脱離する断片 中性分子である。そこで、ここでは、MS 2 質量差スペクトルをニュートラルロススペク トルと呼ぶ(ステップS3)。

 ステップS2、S3の処理により、親化合物A ついてのプロダクトイオンスペクトル及び ュートラルロススペクトルと、代謝物Bにつ てのプロダクトイオンスペクトル及びニュ トラルロススペクトルとが作成される。次 で、親化合物Aについての質量差ピークリス トと代謝物Bについての質量差ピークリスト を比較し、同一の質量を有するピークをニ ートラルロススペクトル上での共通ピーク して抽出する(ステップS4)。

 ここで、ニュートラルロススペクトル上で 共通ピークの意味について図4により説明す る。いま、図4(a)に模式的に示すような化学 造の親化合物Aの構造の一部が代謝により修 され、図4(b)に模式的に示すような化学構造 を有する代謝物Bに変化したとする。この親 合物A、代謝物BがそれぞれMS 2 分析において開裂操作を受け、図中のWの位 で結合が切れたとすると、一方の断片は構 が同じ共通部分、他方の断片は代謝による 飾の影響を受けた差異部分となる。いま、 裂操作によって差異部分がイオンとして残 、共通部分が中性分子として脱離するとす と、親化合物A及び代謝物Bのニュートラルロ ススペクトル上では共通部分が共通ピークと して現れる。上述のように、元のプリカーサ イオンから上記中性分子が脱離したのがプロ ダクトイオンであるから、そのプリカーサイ オンの質量から共通ピークに対応する質量を 差し引いた残りは、差異部分の質量に相当す る筈である。

 そこで次に、代謝物Bのニュートラルロス スペクトルに現れる1乃至複数の共通ピーク 対をなす相補ピークの質量を求める。ここ 「対をなす」との意味は、共通ピークの質 と相補ピークの質量とを加算したものがプ カーサイオンの質量となることであり、プ カーサイオンの質量からその共通ピークの 量を差し引くことで、対となる相補ピーク 質量を求めることができる。例えば、図3(c) おいて、質量90のピークはニュートラルロ スペクトル上で共通ピークであるが、これ 相補ピークは、プロダクトイオンスペクト において、プリカーサイオンの質量455から90 を差し引いた365を質量とするピークである。 こうして、ニュートラルロススペクトル上の 全ての共通ピークに対応する相補ピークの質 量を求め、ピークリストから相補ピークを抽 出する(ステップS5)。

 なお、ステップS2、S3で作成された4つの ススペクトル(プロダクトイオンスペクトル びニュートラルロススペクトル)は、次のよ うに表示部14の同一表示画面内に表示すると い。ここでは、図5に示すように、代謝物B プロダクトイオンスペクトルP1と親化合物A プロダクトイオンスペクトルP4とを水平な質 量軸を中心に上下対称配置とし、代謝物Bの ュートラルロススペクトルP2と親化合物Aの ュートラルロススペクトルP3とを同じく水平 な質量軸を中心に上下対称配置とし、さらに 水平方向に隣接するプロダクトイオンスペク トルとニュートラルロススペクトルとは垂直 な強度軸を中心に左右対称配置とする。

 図6は、図3に示した親化合物A及び代謝物B のプロダクトイオンスペクトルと、これから 得られるニュートラルロススペクトルとを表 示統合処理した場合の一例である。ここで、 共通ピークは質量軸を中心にして垂直方向に 上下に延伸する線で表されるが、代謝物Bの ュートラルロススペクトルにおいて共通ピ クが目立つようにするために、他のピーク は異なる表示色で以て描出するように表示 を設定し、代謝物Bのプロダクトイオンスペ トルにおいて相補ピークが目立つようにす ために、他のピークとは異なる表示色で以 描出するように表示色を設定する。但し、 6では表示色の相違を表現できないので、共 通ピークで表示色を変える部分を点線で示し 、相補ピークで表示色を変える部分を一点鎖 線で示している。例えば、共通ピークは赤色 、相補ピークは青色、それ以外のピークは黒 色の表示色とすればよい。なお、図6では共 ピークと相補ピークとの関係を矢印で示し いるが、この矢印は表示画面に現れるよう してもしなくてもよい。

 この例では、プロダクトイオンスペクトル で、質量355、365の2個所に相補ピークが出現 している。上述のようにこの相補ピークの質 量を持つイオンは代謝物Bにおいて差異部分 つまりは代謝部位に対応したものである可 性が高いので、データ処理部12はその相補ピ ークの質量情報を分析制御部11へと送る。こ に応じて、分析制御部11は、この質量を代 物Bに対するMS 3 分析の2段目の開裂操作の際のプリカーサイ ンとして設定する(ステップS6)。なお、MS 3 分析の1段目の開裂操作の際のプリカーサイ ンは、MS 2 分析時と同じ質量455のイオンである。そして 、代謝物Bに対するMS 3 分析の実行が指示されると、分析制御部11は 上述のように設定されたプリカーサイオン 対象として開裂操作を行ってMS 3 分析のデータを収集する(ステップS7)。

 以上のように、本実施例の質量分析装置で 、代謝物Bを特徴付ける代謝部位に対応する イオンが自動的にプリカーサイオンに設定さ れ、MS 3 分析が実行される。なお、相補ピークに対応 したイオンを自動的にプリカーサイオンに設 定するのではなく、プリカーサイオンの候補 として高い優先度を与え、代謝物BのMS n 分析実行時に優先度の高いものから順にMS n 分析を実行するようにしてもよい。この場合 、上記プリカーサイオンの選択処理により高 い優先度が与えられても、例えば分析担当者 の判断により、意図的に優先度を下げてMS 3 分析を行わないようにすることもできる。

 上記実施例は、親化合物Aと代謝物Bとの構 上の差異部分がMS 2 分析の結果、ニュートラルロススペクトルに 現れる場合であるが、当該差異部分が中性分 子として脱離し、共通部分がイオンとして残 る場合には、上記手法は適用できない。そこ で、その場合には、上記ステップS4と同様の 法により、プロダクトイオンスペクトル上 共通ピークを抽出し、この共通ピークに対 するイオンは代謝物Bの代謝部位を特徴付け るものではないと判断して、MS 3 分析の際のプリカーサイオンから除外したり 、或いは優先度を低く設定したりするとよい 。これにより、プロダクトイオンスペクトル からMS 3 分析のプリカーサイオンを選択する際に、有 益な情報をもたらさないピークを予め除外で きるのでプリカーサイオンの絞り込みが容易 になり、結果的に、構造解析の効率向上を図 ることができる。

 また、上記実施例ではMS 2 分析で得られる結果を用いて上記のようなプ リカーサイオンの選択処理を実行したが、MS 3 分析、MS 4 分析等、2以上の任意のnに対するMS n 分析で得られる結果に対し上記処理を適用で きることは当然である。

 さらにまた、それ以外の点において、本 明の趣旨の範囲で適宜に変更、修正、追加 行っても本願請求の範囲に包含されること 当然である。




 
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