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Patent Searching and Data


Title:
METHOD FOR DETOXIFYING TOXIC COMPOUND
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/041002
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a method for detoxifying a toxic compound, which is useful for efficiently detoxifying a toxic compound containing arsenic or the like. Specifically disclosed is a method for detoxifying a toxic compound, which is characterized in that a toxic compound containing at least one element selected from the group consisting of arsenic, antimony and selenium is detoxified by light irradiation and/or heating in the presence of a cobalt complex.In a preferable mode of this method for detoxifying a toxic compound, detoxification is performed by alkylating arsenic, antimony or selenium.

Inventors:
NAKAMURA KOICHIRO (JP)
HISHINUMA AKIHIRO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/002566
Publication Date:
April 02, 2009
Filing Date:
September 18, 2008
Export Citation:
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Assignee:
NIPPON SHEET GLASS CO LTD (JP)
NAKAMURA KOICHIRO (JP)
HISHINUMA AKIHIRO (JP)
International Classes:
A62D3/176; A62D3/30; A62D3/37; B09B3/00; C02F1/70; C02F11/00; C07F15/06; C07H23/00; A62D101/43
Domestic Patent References:
WO2008012953A12008-01-31
WO2008012948A12008-01-31
WO2007088680A12007-08-09
Other References:
KAISE ET AL., ORGANOMET. CHEM., vol. 12, 1998, pages 137 - 143
Attorney, Agent or Firm:
SAKANO, Hiroyuki (NOSTEL COURT Kannai 2-43 Aioi-cho, Naka-kuYokohama-cit, Kanagawa 12, JP)
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Claims:
 コバルト錯体の存在下、光照射及び/又は加熱により、ヒ素、アンチモン、セレンからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含有する有害化合物を無害化することを特徴とする有害化合物の無害化方法。
 前記ヒ素、アンチモン、又はセレンをアルキル化することにより無害化する請求項1記載の方法。
 前記アルキル化反応を光照射及び/又は加熱条件下で行う請求項1又は2項に記載の方法。
 さらに、ヒ素、アンチモン、セレンからなる群から選択される少なくとも1種の金属を還元する還元剤の存在下、無害化する請求項1~3項のいずれか1項に記載の方法。
 前記還元剤が、SH基を有する物質である請求項4記載の方法。
 SH基を有する物質が、グルタチオン、還元型グルタチオン(GSH)、システイン、S-アデノシルシステイン、スルフォラファン、ホモシステイン、チオグリコールからなる群から選択される少なくとも1種である請求項5記載の組成物。 
 前記コバルト錯体が、メチルコバラミン(メチル化ビタミンB12、正式名称:Coα-[α-5、6-ジメチルベンズ-1H-イミダゾール-1-イル-Coβ-メチルコバミド]、シアノコバラミンなどのビタミンB12、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート、コバルトカルボニル(二コバルトオクタカルボニル)、コバルト(II)1、1、1、5、5、5-ヘキサフルオロアセチルアセトナート、コバルト(II)メゾ-テトラフェニルポルフィン、ヘキサフルオロりん酸ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)コバルト、N、N’-ビス(サリチリデン)エチレンジアミンコバルト(II)、ビス(2、2、6、6-テトラメチル-3、5-ヘプタンジオナト)コバルト(II)、(クロロフタロシアニナト)コバルト(II)、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)コバルト(I)、酢酸コバルト(II)のメチル錯体、安息香酸コバルト(II)、シアン化コバルト(II)、シクロヘキサン酪酸コバルト(II)、2-エチルヘキサン酸コバルト(II)、meso-テトラメトキシフェニルポルフィリンコバルト(II)、ナフテン酸コバルト、フタロシアニンコバルト(II)、メチルコバルト(III)プロトポルフィリンIX、ステアリン酸コバルト、スルファミン酸コバルト(II)、(1R、2R)-(-)-1、2-シクロヘキサンジアミノ-N、N’-ビス(3、5-ジ-t-ブチルサリチリデン)コバルト(II)、(1S、2S)-(+)-1、2-シクロヘキサンジアミノ-N、N’-ビス(3、5-ジ-t-ブチルサリチリデン)コバルト(II)、シクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)コバルト(I)、シクロペンタジエニルコバルトジカルボニル、ジブロモビス(トリフェニルホスフィン)コバルト(II)、(テトラアミノクロロフタロシアニナト)コバルト(II)、(テトラ-t-ブチルフタロシアニナト)コバルト(II)から選ばれた少なくとも1種の化合物のメチル錯体、または、前記コバルト化合物とハロゲン化アルキル、特にハロゲン化メチルを共存させて形成するコバルト-メチル錯体、からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1~6項のいずれか1項に記載の方法。
 前記アルキル化が、メチル化である請求項2~7項のいずれか1項に記載の方法。
 前記メチル化によって、有害化合物をジメチル化合物又はトリメチル化合物とする請求項8記載の方法。
 前記ジメチル化合物が、ジメチルアルソニルエタノール(DMAE)、ジメチルアルソニルアセテート(DMAA)、ジメチルアルシン酸、又はアルセノシュガーである請求項9記載の方法。
 前記トリメチル化合物が、アルセノコリン、アルセノベタイン、トリメチルアルセノシュガー又はトリメチルアルシンオキシドである請求項9記載の方法。
Description:
有害化合物の無害化方法

 本発明は、有害化合物の無害化方法、特 光照射により有害化合物を無害化する有害 合物の無害化方法に関する。

 ヒ素、アンチモン、セレン等の重金属は 半導体等の工業材料として広く用いられて る物質であるが、生物に有毒な物質である とから、環境中に流出することにより生物 与えられる影響が懸念されている。

 従来、これらの重金属を除去する方法と て、有毒な亜砒酸等の無機ヒ素を含む廃水 ポリ塩化アルミニウム(PAC)等の凝集剤を添 し、該凝集剤と原水中の鉄分にヒ素を凝集 吸着し、沈殿させた後、濾過により除去す 方法や、活性アルミナ、セリウム系吸着剤 よりヒ素化合物等を吸着させる方法等が一 に知られている。

 一方、自然界において、海藻等の海洋生 では、無機ヒ素が蓄積され、該無機ヒ素の 部が生理反応により、ジメチル化ヒ素など 有機ヒ素化合物へ転換されることが明らか なっている(非特許文献1:Kaise et al.、 1998 Organomet.Chem.、12 137-143)。そして、これらの 機ヒ素化合物は、一般に、哺乳動物に対し 無機ヒ素よりも低い毒性を示すことが知ら ている。

Kaise et al.、 1998、 Organomet. Chem.、 12  137-143

 しかしながら、濾過、吸着等を利用した 述の重金属を除去する方法では、依然とし 有害なままである無機ヒ素等の有害化合物 含んだ汚泥、及び当該有害化合物が吸着さ ている吸着剤を、当該有害化合物が外部に れないようにコンクリート等で密封するな した上で保管するか又は埋め立てる必要が り、保管場所、埋め立て地用の広いスペー を要することから、大量処理が困難である いう問題があった。

 また、魚貝類に含まれるヒ素は、無毒の ルセノベタインであることが国際的に認め れており、本発明では、猛毒無機ヒ素を無 のアルセノベタインに化学的に変換して、 毒化を達成することが可能である。

 そこで、本発明は、上記問題点を解決す く、ヒ素等を含む有害化合物を効率的に無 化するのに有益な有害化合物の無害化方法 提供することを目的とする。

 上記目的を達成するために、本発明者ら 、コバルト錯体を用いた化学反応によって 素等を含む有害化合物をメチル化、特に、 メチル化、更に好ましくはトリメチル化す ことを試み、当該有害化合物のメチル化反 の最適な条件について鋭意検討した結果、 発明を見出すに至った。

 すなわち、本発明の有害化合物の無害化 法は、コバルト錯体の存在下、光照射及び/ 又は加熱により、ヒ素、アンチモン、セレン からなる群から選択される少なくとも1種の 素を含有する有害化合物を無害化すること 特徴とする。

 本発明の有害化合物の無害化方法の好ま い態様において、前記ヒ素、アンチモン、 はセレンをアルキル化することにより無害 することを特徴とする。

 本発明の有害化合物の無害化方法の好ま い態様において、前記アルキル化反応を光 射及び/又は加熱条件下で行うことを特徴と する。

 本発明の有害化合物の無害化方法の好ま い態様において、さらに、ヒ素、アンチモ 、セレンからなる群から選択される少なく も1種の金属を還元する還元剤の存在下、無 害化することを特徴とする。

 本発明の有害化合物の無害化方法の好ま い態様において、前記還元剤が、SH基を有 る物質であることを特徴とする。

 本発明の有害化合物の無害化方法の好ま い態様において、SH基を有する物質が、グ タチオン、還元型グルタチオン(GSH)、システ イン、S-アデノシルシステイン、スルフォラ ァン、ホモシステイン、チオグリコールか なる群から選択される少なくとも1種である ことを特徴とする。 

 本発明の有害化合物の無害化方法の好ま い態様において、前記コバルト錯体が、メ ルコバラミン(メチル化ビタミンB12、正式名 称:Coα-[α-5、6-ジメチルベンズ-1H-イミダゾー -1-イル-Coβ-メチルコバミド]、シアノコバラ ミンなどのビタミンB12、コバルト(II)アセチ アセトナート、コバルト(III)アセチルアセト ナート、コバルトカルボニル(二コバルトオ タカルボニル)、コバルト(II)1、1、1、5、5、5 -ヘキサフルオロアセチルアセトナート、コ ルト(II)メゾ-テトラフェニルポルフィン、ヘ キサフルオロりん酸ビス(ペンタメチルシク ペンタジエニル)コバルト、N、N’-ビス(サリ チリデン)エチレンジアミンコバルト(II)、ビ (2、2、6、6-テトラメチル-3、5-ヘプタンジオ ナト)コバルト(II)、(クロロフタロシアニナト )コバルト(II)、クロロトリス(トリフェニルホ スフィン)コバルト(I)、酢酸コバルト(II)のメ ル錯体、安息香酸コバルト(II)、シアン化コ バルト(II)、シクロヘキサン酪酸コバルト(II) 2-エチルヘキサン酸コバルト(II)、meso-テト メトキシフェニルポルフィリンコバルト(II) ナフテン酸コバルト、フタロシアニンコバ ト(II)、メチルコバルト(III)プロトポルフィ ンIX、ステアリン酸コバルト、スルファミ 酸コバルト(II)、(1R、2R)-(-)-1、2-シクロヘキ ンジアミノ-N、N’-ビス(3、5-ジ-t-ブチルサリ チリデン)コバルト(II)、(1S、2S)-(+)-1、2-シク ヘキサンジアミノ-N、N’-ビス(3、5-ジ-t-ブチ ルサリチリデン)コバルト(II)、シクロペンタ エニルビス(トリフェニルホスフィン)コバ ト(I)、シクロペンタジエニルコバルトジカ ボニル、ジブロモビス(トリフェニルホスフ ン)コバルト(II)、(テトラアミノクロロフタ シアニナト)コバルト(II)、(テトラ-t-ブチル タロシアニナト)コバルト(II)から選ばれた なくとも1種の化合物のメチル錯体、または 前記コバルト化合物とハロゲン化アルキル 特にハロゲン化メチルを共存させて形成す コバルト-メチル錯体、からなる群から選択 される少なくとも1種であることを特徴とす 。

 本発明の有害化合物の無害化方法の好ま い態様において、前記アルキル化が、メチ 化であることを特徴とする。

 本発明の有害化合物の無害化方法の好ま い態様において、前記メチル化によって、 害化合物をジメチル化合物又はトリメチル 合物とすることを特徴とする。

 本発明の有害化合物の無害化方法の好ま い態様において、前記ジメチル化合物が、 メチルアルソニルエタノール(DMAE)、ジメチ アルソニルアセテート(DMAA)、ジメチルアル ン酸、又はアルセノシュガーであることを 徴とする。

 本発明の有害化合物の無害化方法の好ま い態様において、前記トリメチル化合物が アルセノコリン、アルセノベタイン、トリ チルアルセノシュガー又はトリメチルアル ンオキシドであることを特徴とする。

 本発明の有害化合物の無害化方法によれ 、有害化合物を限りなく無害化することが きるので、保管場所等の広いスペースを必 としないという有利な効果を奏する。また 本発明の方法によれば、生物体そのものを きたままで利用するものではないので、不 要な副産物を発生させないという有利な効 を奏する。さらに、本発明によれば、簡便 操作で、有害な無機ヒ素などをより少なく ることができるという有利な効果を奏する

 本発明の有害化合物の無害化方法は、コ ルト錯体を使用する。ここで、コバルト錯 としては特に限定されないが、コバルト-炭 素結合を有する有機金属錯体などを挙げるこ とができる。

 コバルト-炭素結合を有する有機金属錯体 の例としては、以下を例示できる。すなわち 、メチルコバラミン(あるいは、メチル化ビ ミンB12、正式名称:Coα-[α-5、6-ジメチルベン -1H-イミダゾール-1-イル-Coβ-メチルコバミド ]が好ましく用いられる。また、シアノコバ ミンなどのビタミンB12、コバルト(II)アセチ アセトナート、コバルト(III)アセチルアセ ナート、コバルトカルボニル(二コバルトオ タカルボニル)、コバルト(II)1、1、1、5、5、 5-ヘキサフルオロアセチルアセトナート、コ ルト(II)メゾ-テトラフェニルポルフィン、 キサフルオロりん酸ビス(ペンタメチルシク ペンタジエニル)コバルト、N、N’-ビス(サ チリデン)エチレンジアミンコバルト(II)、ビ ス(2、2、6、6-テトラメチル-3、5-ヘプタンジ ナト)コバルト(II)、(クロロフタロシアニナ )コバルト(II)、クロロトリス(トリフェニル スフィン)コバルト(I)、酢酸コバルト(II)のメ チル錯体、安息香酸コバルト(II)、シアン化 バルト(II)、シクロヘキサン酪酸コバルト(II) 、2-エチルヘキサン酸コバルト(II)、meso-テト メトキシフェニルポルフィリンコバルト(II) 、ナフテン酸コバルト、フタロシアニンコバ ルト(II)、メチルコバルト(III)プロトポルフィ リンIX、ステアリン酸コバルト、スルファミ 酸コバルト(II)、(1R、2R)-(-)-1、2-シクロヘキ ンジアミノ-N、N’-ビス(3、5-ジ-t-ブチルサ チリデン)コバルト(II)、(1S、2S)-(+)-1、2-シク ヘキサンジアミノ-N、N’-ビス(3、5-ジ-t-ブ ルサリチリデン)コバルト(II)、シクロペンタ ジエニルビス(トリフェニルホスフィン)コバ ト(I)、シクロペンタジエニルコバルトジカ ボニル、ジブロモビス(トリフェニルホスフ ィン)コバルト(II)、(テトラアミノクロロフタ ロシアニナト)コバルト(II)、(テトラ-t-ブチル フタロシアニナト)コバルト(II)から選ばれた なくとも1種の化合物のメチル錯体、または 、前記コバルト化合物とハロゲン化アルキル 、特にハロゲン化メチルを共存させて形成す るコバルト-メチル錯体を例示できる。有害 無機ヒ素などを含む有害化合物を比較的容 にアルキル化し、毒性の低い有機物にする とが可能であるという観点から、コバルト- 素結合を有する有機金属錯体としては、メ ルコバラミンが好ましい。

 コバルト錯体を使用したのは、コバルト 体の使用により、ヒ素等へのメチル基転移 応を進行させることが可能だからである。 素等へのメチル化が達成されると、有害な 質が、より無害な物質へと転換させること できる。水銀、鉛などの例のように、一般 には、メチル化されるとより毒性が高くな 事が知られているが、ヒ素等の場合、メチ 化されることにより、毒性を大きく低減す ことが可能である。

 本発明においては、光照射及び/又は加熱 により、メチル基転移反応を進行させること ができる。詳細なメカニズムは不明であるが 、コバルト錯体としてメチルコバラミンを使 用した場合を例にとると、メチル化因子であ るメチルコバラミンのCo-Me基のCo-C結合が光照 射及び/又は加熱により開裂して、ヒ素等の 子に転位しやすくなるものと推定される。

 光照射の条件については、常法に従い特に 定されるものではない。メチル基転移を促 させるという観点から、光強度としては、0 .1~1000 mW/cm 2 、より好ましくは、1~1000mW/cm 2 である。エネルギーとしては、1mJ~100J、好ま くは、100mJ~100Jである。照射する光の波長と しては、紫外線、可視光線、近赤外線、赤外 線、遠赤外線が用いられる。好ましくは、コ バルト錯体による吸収帯の吸収極大波長(λmax )を中心として、λmax±500nm、より好ましくは λmax±250nm、更に好ましくは、λmax±100nmの波 の光を照射することで、本発明のメチル化 応を効率よく進行させることができる。

 また、加熱条件についても特に限定され ものではないが、メチル基転移を促進させ という観点から、加熱温度は、20~250℃、よ 好ましくは、50~150℃である。

 ここで、本明細書において、「有害化合 」とは、環境中に流出し、生物に暴露され 際に、何らかの悪影響を生物に与える恐れ ある化合物を意味する。

 前記有害化合物のうちヒ素を含有する有害 合物としては、亜ヒ酸、五酸化ヒ素、三塩 ヒ素、五塩化ヒ素、硫化ヒ素化合物、シア ヒ素化合物、クロロヒ素化合物、及びその のヒ素無機塩類等が挙げられる。これらの 素は、例えばLD 50 (mg/kg)(マウスにおける50%致死量)が20以下であ 、一般に生物に対して有毒な値である。

 また、アンチモンを含有する有害化合物 しては、三酸化アンチモン、五酸化アンチ ン、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン が挙げられる。

 さらに、セレンを含有する有害化合物と ては、二酸化セレン、三酸化セレン等が挙 られる。

 好ましい実施態様において、本発明の有 化合物の無害化方法は、さらに、ヒ素、ア チモン、セレンからなる群から選択される なくとも1種の金属を還元する還元剤の存在 下行うことができる。このような還元剤の存 在により、アルキル化をさらに促進すること ができる。ヒ素のアルセノベタインへの変換 においてヒ素を還元する能力やメチル基転移 反応などが律速となっている可能性が考えら れるが、還元剤を添加することによりアルセ ノベタインなどへの変換を促進できると考え られる。このような還元剤としては、例えば 、SH基を有する物質を挙げることができ、具 的には、SH基を有する物質が、グルタチオ 、還元型グルタチオン(GSH)、システイン、S- デノシルシステイン、スルフォラファン、 モシステイン、チオグリコールからなる群 ら選択される少なくとも1種を挙げることが できる。また、これらの任意の組み合わせを 用いてもよい。例えば、グルタチン+ホモシ テイン、グルタチオン+チオグリコールなど 挙げることができる。

 本発明の方法において、光照射及び/又は加 熱による無害化反応を適当な緩衝液中で行う ことができる。緩衝液は、通常、生体材料を 単離、精製、保存等に用いられるものを使用 することができ、特に限定されるものではな く、例えば、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、 炭酸緩衝液、ホウ酸緩衝液などの緩衝液を例 示することができる。また、前記緩衝液のpH しては、より安全に無害化を達成できる点 考慮して、5~10の範囲であることが好ましい 。また、アルキル化用組成物のpHがさらに好 しくは9未満である。本発明のアルキル化用 組成物は、さらに、H 2 O 2 を含有することができる。すなわち、酸化状 態を高めることによって(三価→五価)、急性 性を下げるために、過酸化水素を添加して 良い。

 本発明の無害化方法の好ましい実施態様に いて、50%細胞増殖阻害濃度(IC 50 )若しくはLD 50 が大きく、より無害化を達成できるという観 点から、上記有害化合物に含まれる上記一種 の元素の価数を高酸化数とすることにより前 記有害化合物を無害化することが好ましい。 具体的には、上述した本発明の方法において 、アルキル化によって、上記一種の元素の価 数を高酸化数とすることが可能である。なお 、上記元素がヒ素又はアンチモンである場合 、価数が3価のものを5価に、セレンの場合、 数が4価のものを6価にすることが好ましい

 本発明において、上記有害化合物の無害 は、上記有害化合物をアルキル化すること より行うことが可能である。ここで、上記 害化合物中の上記一種の元素の少なくとも1 つの結合手をアルキル化することにより無害 化を達成することができる。ここで、上記一 種の元素に付加するアルキル基としては、例 えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が 挙げられる。無毒化をより効率的に達成する という観点から、アルキル基として、メチル 基が好ましい。

 本発明の無害化方法においては、生体への 全性という観点から、上記アルキル化する とにより無害化された化合物の50%致死量(LD 50 )(マウスの50%が死亡する薬物用量による経口 性)が1000mg/kg以上であることが好ましく、500 0mg/kg以上であることがより好ましい。

 また、本発明の無害化方法においては、生 への安全性という観点から、上記アルキル 又はアリール化することにより無害化され 化合物の50%細胞増殖阻害濃度(IC 50 )が、1000μM以上であることが好ましく、3000μM 以上であることがより好ましい。ここで、本 明細書において、50%細胞増殖阻害濃度(IC 50 )とは、ある細胞をある物質と共に100ある細 の増殖を50%阻止又は阻害するのに必要な物 の濃度を示す数値を意味する。IC 50 の数値が小さいほど細胞毒性が大きいことを 示す。なお、IC 50 は、37℃、24時間の条件下で、プラスミドDNA 傷が示す細胞毒性について検討した結果か 算出した。

 ここで、各ヒ素化合物のIC 50 を表1に示す。

 表1から、3価のヒ素を有するアルセノシ ガーは、5価のヒ素を有するものモノメチル ヒ素(MMA)及びジメチル化ヒ素(DMA)よりも細胞 毒性が高いが、3価のヒ素を有するMMA、DMA及 亜ヒ酸より細胞毒性が低いことが分かる。 方で、3価のヒ素を有するMMA、DMAは、亜ヒ酸( 3価及び5価)よりも細胞毒性が高いが、全体と して、細胞毒性という観点から、5価のヒ素 有するヒ素化合物が3価のヒ素を有するヒ素 合物よりも生体への安全性が高いことが理 できる。

 また、各ヒ素化合物のLD 50 を表2に示す。

 また、本発明の無害化方法においては、 体への安全性という観点から、上記アルキ 化することにより無害化された化合物の生 学的半減期が8時間以下であることが好まし い。本発明の無害化方法において、前記メチ ル化によって、有害化合物をジメチル化合物 又はトリメチル化合物とすることが、より安 全で毒性が低いという観点から好ましい。前 記ジメチル化合物としては、ジメチルアルソ ニルエタノール(DMAE)、ジメチルアルソニルア セテート(DMAA)、ジメチルアルシン酸、又はア ルセノシュガーを挙げることができる。また 、トリメチル化合物としては、アルセノコリ ン、アルセノベタイン、トリメチルアルセノ シュガー又はトリメチルアルシンオキシドを 挙げることができる。

 以下、本発明の実施例を説明するが、下 の実施例は、本発明の範囲を何ら限定する のではない。

実施例1~8
 以下、本発明の実施例1~8を説明する。
 40mg(130μmol)のグルタチオン還元型(GSH)と10mg(7 .4μmol)のメチルコバラミン(MC)を50μLの緩衝液( 40mM Tris-HCl緩衝液、pH8)に加え、これに、三価 の無機ヒ素である亜ヒ酸水溶液(原子吸光用 準液、100ppm)を2μL(亜ヒ酸として2.7nmol)加えた 。反応溶液中の濃度は、グルタチオン還元型 (GSH):2.6mmol/L、メチルコバラミン(MC):0.15mmol/L、 3価の無機ヒ素:5nmol/Lである。反応試薬の調合 条件を表3に示す。これを定温加熱器に入れ 所定の温度で所定時間反応させた。反応条 を表4に示す。反応終了後、反応溶液を10%過 化水素水で処理し、超純水で500倍に希釈し 、HPLC-ICP-MS法で定性定量分析を行った。5価 無機ヒ素、5価のモノメチルヒ素(MMA)、5価の ジメチルヒ素(DMA)、5価のトリメチルヒ素(TMAO) テトラメチルヒ素(TeMA)の5種類の化学種別に 離し、標準品で検量線を作成し、定量した 反応後の相対濃度は、下記に定義した式に って計算した。

iAs(V)の相対濃度 =100%×〔iAs(V)/(iAs(V)+MMA+DMA+TMAO +TeMA)〕
MMAの相対濃度 =100%×〔MMA/(iAs(V)+MMA+DMA+TMAO+TeMA) 〕
DMAの相対濃度 =100%×〔DMA/(iAs(V)+MMA+DMA+TMAO+TeMA) 〕
TMAOの相対濃度=100%×〔TMAO/(iAs(V)+MMA+DMA+TMAO+TeMA) 〕
TeMAの相対濃度 =100%×〔TeMA/(iAs(V)+MMA+DMA+TMAO+TeM A)〕

 また、ヒ素の転換率は、下式に従って計算 た。
転換率=100%×(反応後のヒ素濃度/反応前のヒ素 濃度)
   =100%×〔(iAs(V)+MMA+DMA+TMAO+TeMA)/iAs(III)〕

 結果を表3に示す。表3は、反応試薬の添加 件を示す。

 表4に反応条件を示す。

 表5に反応生成物の相対比率と転換率を示す 。

 実施例1、参考例1、比較例1を比べること より、還元剤不在下、加熱を行わない場合 光照射することにより、亜ヒ酸が、毒性の いモノメチルヒ素(MMA)に変換されることが 明した。

 また、実施例2、実施例3、実施例4を、そ ぞれ、参考例2、参考例3、参考例4と比較す ことにより、還元剤不在下、光照射するこ により、亜ヒ酸が、毒性の低いモノメチル 素(MMA)に変換されることが判明した。

 実施例5、実施例6、実施例7、実施例8を、 それぞれ、参考例5、参考例6、参考例7、参考 例8と比較することにより、還元剤存在下、 照射することにより、亜ヒ酸が、毒性の低 モノメチルヒ素(MMA)、ジメチルヒ素(DMA)、ト メチルヒ素(TMAO)に変換されるメチル化反応 促進されることが判明した。また、実施例5 、実施例6、実施例7、実施例8を比較すること により、還元剤存在下、加熱処理条件下、光 照射することにより、亜ヒ酸が、毒性の低い モノメチルヒ素(MMA)、ジメチルヒ素(DMA)、ト メチルヒ素(TMAO)に変換されるメチル化反応 促進されることが判明した。

実施例9
 さらに、光照射等の効果について調べた。 6は、iAs(III)を出発物質とした場合のメチル 反応に対する還元剤、光照射、温度の効果 示す。

 表中、iAs(III):三酸化ヒ素、iAs(V):ヒ酸、MMA: ノメチルヒ素、DMA:ジメチルヒ素、TMAO:トリ チルヒ素、TeMA:テトラメチルヒ素、GSH:光照 、出発ヒ素化合物ヒ素濃度:2.7nmol、GSH(還元 グルタチオン):130μmol、メチルコバラミン: 7 .4μmol、溶媒(トリス塩酸緩衝液、pH 8):50μL、 エネルギー:36J(5mW/cm 2 、2時間)をそれぞれ示す。また、転換率(%)=100 (%)×反応後のヒ素濃度/反応前のヒ素濃度とし て算出された。

 実験番号4と実験番号2を比較することによ 、還元剤GSHが存在しない場合でも、光照射 より下式[化1]のメチル化反応が進行した。

 実験番号3と実験番号1を比較することによ 、還元剤GSHが存在する場合については、光 射により、下式[化2]のメチル化反応が著し 促進されたことが分かる。

 実験番号9と実験番号15と実験番号19を比 することにより、80℃における光照射により 、無毒のTMAOが90%以上得られ、光照射をしな で、より高温(100℃、120℃)の条件(実験番号15 と実験番号19)と同程度の効果が得られること が明らかになった。

実施例10
 さらに、別の例について、光照射等の効果 ついて調べた。表7は、iAs(V)を出発物質とし た場合のメチル化反応に対する還元剤、光照 射、温度の効果を示す。

 表中、iAs(III):三酸化ヒ素、iAs(V):ヒ酸、MMA: ノメチルヒ素、DMA:ジメチルヒ素、TMAO:トリ チルヒ素、TeMA:テトラメチルヒ素、GSH:光照 、出発ヒ素化合物ヒ素濃度:2.7nmol、GSH(還元 グルタチオン):130μmol、メチルコバラミン: 7 .4μmol、溶媒(トリス塩酸緩衝液、pH 8):50μL、 エネルギー:36J(5mW/cm 2 、2時間)をそれぞれ示す。また、転換率(%)=100 (%)×反応後のヒ素濃度/反応前のヒ素濃度とし て算出した。

 実験番号23と実験番号21を比較することによ り、還元剤GSHが存在する場合については、光 照射により、下式[化3]のメチル化反応が著し く促進された。

 実験番号29と実験番号35と実験番号39を比 することにより、80℃における光照射によ 、無毒のTMAOが90%以上得られ、光照射をしな で、より高温(100℃、120℃)の条件(実験番号3 5と実験番号39)と同程度の効果が得られるこ が明らかになった。

実施例11
 光照射及び温度等の効果についてさらに調 た。表8は、MMAを出発物質とした場合のメチ ル化反応に対する還元剤、光照射、温度の効 果を示す。

 表中、iAs(III):三酸化ヒ素、iAs(V):ヒ酸、MMA: ノメチルヒ素、DMA:ジメチルヒ素、TMAO:トリ チルヒ素、TeMA:テトラメチルヒ素、GSH:光照 、出発ヒ素化合物ヒ素濃度:2.7nmol、GSH(還元 グルタチオン):130μmol、メチルコバラミン: 7 .4μmol、溶媒(トリス塩酸緩衝液、pH 8):50μL、 エネルギー:36J(5mW/cm 2 、2時間)をそれぞれ示す。また、転換率(%)=100 (%)×反応後のヒ素濃度/反応前のヒ素濃度とし て算出した。

 実験番号43と実験番号41を比較することによ り、還元剤GSHが存在する場合については、光 照射により、下式[化4]のメチル化反応が著し く促進された。

 実験番号49と実験番号55と実験番号59を比 することにより、80℃における光照射によ 、無毒のTMAOが80%以上得られ、光照射をしな で、より高温(100℃、120℃)の条件(実験番号5 5と実験番号59)と同程度の効果が得られるこ が明らかになった。

実施例12
 光照射及び温度等の効果についてさらに調 た。表9は、DMAを出発物質とした場合のメチ ル化反応に対する還元剤、光照射、温度の効 果を示す。

 表中、iAs(III):三酸化ヒ素、iAs(V):ヒ酸、MMA: ノメチルヒ素、DMA:ジメチルヒ素、TMAO:トリ チルヒ素、TeMA:テトラメチルヒ素、GSH:光照 、出発ヒ素化合物ヒ素濃度:2.7nmol、GSH(還元 グルタチオン):130μmol、メチルコバラミン: 7 .4μmol、溶媒(トリス塩酸緩衝液、pH 8):50μL、 エネルギー:36J(5mW/cm 2 、2時間)をそれぞれ示す。また、転換率(%)=100 (%)×反応後のヒ素濃度/反応前のヒ素濃度とし て算出した。

 実験番号63と実験番号61を比較することによ り、還元剤GSHが存在する場合については、光 照射により、下式[化5]のメチル化反応が著し く促進された。

 実験番号65と実験番号67を比較することに より、50℃における光照射により、無毒のTMAO が90%以上得られた。

実施例13
 光照射及び加熱条件について調べた。表10 、TMAOを出発物質とした場合のメチル化反応 対する還元剤、光照射、温度の効果を示す

 表中、iAs(III):三酸化ヒ素、iAs(V):ヒ酸、MMA: ノメチルヒ素、DMA:ジメチルヒ素、TMAO:トリ チルヒ素、TeMA:テトラメチルヒ素、GSH:光照 、出発ヒ素化合物ヒ素濃度:2.7nmol、GSH(還元 グルタチオン):130μmol、メチルコバラミン: 7 .4μmol、溶媒(トリス塩酸緩衝液、pH 8):50μL、 エネルギー:36J(5mW/cm 2 、2時間)をそれぞれ示す。また、転換率(%)=100 (%)×反応後のヒ素濃度/反応前のヒ素濃度とし て算出した。

 無毒のTMAOを出発物質とした場合の、メチ ル化反応を参考例として表10に示す。実験番 82、84、86、88、90、92、94、96、98、100から明 かなように、本反応条件においては、無毒 TMAOは、光照射、熱により、iAs(III)、iAs(V)、M MA、DMAに分解されないで安定に存在すること 明らかになった。

産業上の利用可能性
 ヒ素などの有害化合物は、本発明の方法に って、より無害な化合物に変換され、無害 合物は、極めて安定でかつ安全であるので 広く産業廃棄物の処理等の分野、汚泥、土 の環境保護の分野において極めて有効であ 。




 
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