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Patent Searching and Data


Title:
METHOD OF PRODUCING STARCH HAVING HIGH LESS DIGESTIBLE STARCH CONTENT
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/155892
Kind Code:
A1
Abstract:
It is intended to provide a method of easily and economically producing starch which has an increased content of digestible starch. The method of producing starch having a high content of digestible starch is characterized by comprising contacting starch with hot water at a temperature of 160 to 260oC which has a pressure corresponding to the saturated vapor pressure at that temperature or more.

Inventors:
YAMAKU KEIKO (JP)
GOTO MASARU (JP)
ISOBE YOSUKE (JP)
YOSHIDA HIROYUKI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/001528
Publication Date:
December 24, 2008
Filing Date:
June 13, 2008
Export Citation:
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Assignee:
J OIL MILLS INC (JP)
UNIV OSAKA PREFECT PUBLIC CORP (JP)
YAMAKU KEIKO (JP)
GOTO MASARU (JP)
ISOBE YOSUKE (JP)
YOSHIDA HIROYUKI (JP)
International Classes:
A23L1/30; C08B30/12; A23L29/20; C08B30/20
Domestic Patent References:
WO2006041851A12006-04-20
WO2006041851A12006-04-20
Foreign References:
JP2006320325A2006-11-30
JPH07252301A1995-10-03
JPH115802A1999-01-12
JPH10195105A1998-07-28
JPH0912601A1997-01-14
JP2006320325A2006-11-30
US20060263503A12006-11-23
JPH08503123A1996-04-09
JPH07252301A1995-10-03
JPH115802A1999-01-12
EP1088832A12001-04-04
US20040047963A12004-03-11
Other References:
KENICHIRO KANAYA: "Requirement for analyzing dietary fiber", JOURNAL OF JAPANESE ASSOCIATION FOR DIETARY FIBER RESEARCH, vol. 10, no. 2, 2006, pages 113 - 114
"Science of Dietary Fiber", ASAKURA SHOTEN, pages: 148 - 149
See also references of EP 2138514A4
Attorney, Agent or Firm:
NAKAJIMA, Shinsuke (Kyobashi NS Bldg. 3F5-21, Kyobashi 2-chome,Chuo-k, Tokyo 31, JP)
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Claims:
 アミロース含有澱粉を、160~260℃の温度、かつその温度の飽和蒸気圧以上の圧力を有する熱水と接触させることを含む、難消化性澱粉含有率の高い澱粉の製造方法。
 前記澱粉がハイアミロースコーンスターチであることを特徴とする、請求項1に記載の難消化性澱粉含有率の高い澱粉の製造方法。
 前記ハイアミロースコーンスターチのアミロース含量が、50~85重量%であることを特徴とする、請求項2に記載の難消化性澱粉含有率の高い澱粉の製造方法。
 前記熱水との接触が、170~230℃の温度で0.1~60分間行われることを特徴とする、請求項1に記載の難消化性澱粉含有率の高い澱粉の製造方法。
 前記熱水との接触が、スラリー状態で行われることを特徴とする、請求項1に記載の難消化性澱粉含有率の高い澱粉の製造方法。
 請求項1に記載の製造方法により得られる、原料澱粉よりも難消化性澱粉含有率および結晶化度が高められた澱粉。
 前記難消化性澱粉含有率が澱粉総量の50~70重量%、結晶化度が12~30%であることを特徴とする、請求項6に記載の結晶化度および難消化性澱粉含有率の高められた澱粉。
 澱粉粒子の形状として短径と長径の比率が2.0以上のもの割合が5%以下であることを特徴とする、請求項6に記載の結晶化度および難消化性澱粉含有率の高められた澱粉。
 請求項6に記載の結晶化度および難消化性澱粉含有率の高められた澱粉を配合した食品。
Description:
難消化性澱粉含有率の高い澱粉 製造方法

 本発明は、難消化性澱粉の含有率の高い 粉組成物を製造する方法に関し、より詳細 はそのような澱粉組成物を簡易かつ安価に 造する方法に関する。

 大腸ガンが日本人の死因の上位を占める中 大腸ガンの予防策として、ヒトの小腸で消 され難い食物繊維を多く摂取することが一 に推奨されている。澱粉中にも、食物繊維 ようにヒトの小腸で消化され難い性質の澱 があることが1980年代に見出された。このよ うな澱粉を、難消化性澱粉またはレジスタン トスターチ(Resistant
starch)と呼んでいる。難消化性澱粉は、小腸 消化吸収されなくても、大腸では常在する 内細菌によって発酵分解される。発酵で産 される短鎖脂肪酸、特に酪酸は、大腸内を 性にし、腸内環境を整える作用も有する。

 難消化性澱粉には、肝臓や血中のコレス ロールやトリグリセリドを低下させる作用 ある。したがって、これらの目的や大腸ガ の発生防止のために、難消化性澱粉を含む 品を多く摂ることが有意義である。

 澱粉中の難消化性澱粉含有率(以下、「RS 有率」ということがある)は、澱粉の由来に よって異なる。例えば、ハイアミロースコー ンスターチで20%以上、ジャガイモ澱粉で約10% 、小麦澱粉で5%以下である。これらの澱粉を トが一日に摂取可能な量は限られているの 、澱粉中のRS含有率は高い方が望ましい。

 澱粉の加工処理によって、澱粉中の食物 維および/または難消化性澱粉の含有率を高 める研究が行われている。特開平10-195105号公 報(食物繊維高含有澱粉素材の製造法、特許 献1)には、アミロース含量が30重量%以上の澱 粉を、減圧ラインと加圧蒸気ラインの両方を 付設した耐圧性容器に入れて、減圧した後、 蒸気を導入して加圧加熱することを特徴とす る食物繊維高含有澱粉素材の製造法が記載さ れている。総食物繊維量(TDF)は、プロスキー 定法により評価される。

 難消化性澱粉を食物繊維ととらえるかど かは、現在、議論中である(非特許文献1お び2)。最近、澱粉中のRS含有率を直接測定す 方法として、AOAC公定法 2002.02が認知されて きた。そこで、前記従来技術を利用した湿熱 処理ハイアミロース澱粉のRS含有率をAOAC公定 法 2002.02で再評価したところ、あまり増大さ れていないことが判明した。

 上記の従来技術は、ハイアミロースコー スターチを低い水分条件下で高温加熱する わゆる「湿熱処理」である。湿熱処理は、 ッチ処理のため工業的に大掛りな装置を必 とし、コスト面でも不利である。

 特開平09-012601号公報(アミラーゼ耐性粒状 デンプンの製造法、特許文献2)には、少なく も40重量%のアミロース含有率およびデンプ と水との混合物の重量に基づいて10~80重量% 合計湿分含有率を有する高アミロースデン ンを60~160℃の温度で加熱することにより耐 粒状デンプンを製造する方法が記載されて る。この発明によれば、少なくとも12%の総 物繊維含有率のデンプンを製造することが きる。この発明もまた、特許文献1の発明と 同じく、澱粉中の総食物繊維量の増大に向け られている。

 特開2006-320325号公報(増加した総食物繊維 有するフラワー組成物、その製造プロセス よび使用、特許文献3)には、約10~50重量%の 水含量の高アミロースフラワーを約80~160℃ 温度で、目標温度での約0.5~15分間の加熱に り調製できるフラワー組成物が記載されて る。この発明によれば、高アミロースフラ ーを短時間熱水処理することによりその総 物繊維(TDF)含量を増加できる。この発明もま た、特許文献1や特許文献2の発明と同じく、 粉中の総食物繊維量の増大に向けられてい 。

 特表平08-503123号公報(高アミロース澱粉およ び抵抗性澱粉画分、特許文献4)には、アミロ ス含量85%以上の高アミロース澱粉を粒度に って分画することにより得られるトウモロ シ由来の高アミロース澱粉を含む食物繊維 よび/または抵抗性澱粉含量が高められた澱 粉画分が記載されている。特許文献4の発明 、原料のハイアミロースコーンスターチか 易消化性澱粉を除くものである。得られた 消化性澱粉の割合は最大でも36%程度と低い さらに、それを得るためには約47%もの澱粉 除去せねばならず、収率が非常に低くなる
金谷健一郎、食物繊維の分析に求められ もの、日本食物繊維学会誌、Vol.10 No.2 2006 p 113-114 食物繊維の科学 148-149頁(辻啓介編、朝 書店刊行)

特開平10-195105号公報

特開平09-012601号公報

特開2006-320325号公報

特表平08-503123号公報

 そこで、本発明の目的は、難消化性澱粉 有率の高い澱粉を簡易かつ安価に製造する 法を提供することである。

 本発明者等は、上記課題を鋭意検討した 果、意外にもアミロース含有澱粉を熱水処 する際に難消化性澱粉に効率的に変質させ 条件が存在することを見出し、本発明に至 た。

 すなわち、本発明は、アミロース含有澱 を、160~260℃の温度、かつその温度の飽和蒸 気圧以上の圧力を有する熱水と接触させるこ とを含む、難消化性澱粉含有率の高い澱粉の 製造方法を提供する。

 本発明の製法に処した後の澱粉中の難消 性澱粉含有率は、AOAC公定法 2002.02で測定さ れるものである。

 本発明の製法に使用する原料は、ハイア ロースコーンスターチであることが好まし 。本明細書において、「ハイアミロースコ ンスターチ」とは、アミロース含量が澱粉 量の40重量%以上であるトウモロコシ澱粉を 味する。

 さらに、ハイアミロースコーンスターチ アミロース含量は、50~85重量%であることが ましい。

 本発明の製法では、熱水処理が、170~230℃ の温度で0.1~60分間行われることが好ましい。

 また、熱水処理が、粉体ではなくスラリ 状態で行われることが好ましい。具体的に 、澱粉乾燥重量あたり50%以上の水分で行わ ることが好ましい。水分は、本明細書にお て、澱粉の乾燥重量に対する水分(dry starch base %)を意味する。

 本発明の製法で得られる難消化性澱粉含 率の高められた澱粉は、原料の澱粉や従来 術の湿熱処理品と比べて、結晶化が進んで ることが判明した。このような澱粉は新規 ものであり、したがって、本発明は、上記 造方法により得られる、原料澱粉よりも難 化性澱粉含有率がおよび結晶化度が高めら た澱粉もまた提供する。

 特に、前記難消化性澱粉含有率は澱粉総 の50~70重量%であり、前記結晶化度は12~30%で る。

 上記結晶化度および難消化性澱粉含有率 高められた澱粉は、真球状に近く、特に短 と長径の比が2.0以上のものの割合が、通常 数平均で5%以下である。

 本発明は、また、本発明の製法により得 れるような結晶化度および難消化性澱粉含 率の高められた澱粉を配合した食品を提供 る。

 特開2005-87987号公報には、蒸煮爆砕装置を 用いてジャガイモ廃棄物から難消化性デキス トリンを製造する方法が記載されている。ジ ャガイモ原料に澱粉質が豊富であっても、特 開2005-87987に記載の製法は、本発明の製法と 反応条件が異なる。その結果、特開2005-87987 得られる生成物は低分子化された水溶性デ ストリンであり、本発明の製法により得ら るRS含有率の高められた澱粉とは全く相違 る。

 本発明によれば、例えば原料にハイアミ ースコーンスターチを用いると、条件によ てはRS含有率を初期の40重量%から70重量%以 へ増加させることができる。しかも、本発 の製法は、従来の方法と比べて、工程が簡 で連続処理に適しており、製造コストも安 にすることが可能である。

本発明の製法に用いる連続式反応装置 一実施形態の概略図である。 本発明の製法に用いるバッチ式反応装 の一実施形態の概略図である。 実施例に用いた澱粉原料ハイアミロー コーンスターチ製品(HAS)の顕微鏡写真(図面 用写真)である。 図3のHASの長径/短径分布図である。 図3のHASのX線回折図である。 実施例5の熱水処理品の顕微鏡写真(図 代用写真)である。 実施例5の熱水処理品の長径/短径分布 である。 実施例5の熱水処理品のX線回折図であ 。 従来技術の湿熱処理製品(製品名:ロー スター)のX線回折図である。 HAS、実施例5の熱水処理品、および従 技術の湿熱処理製品(ロードスター)のGPC測定 結果を示すグラフである。 HAS、実施例5の熱水処理品、および従 技術の湿熱処理製品(ロードスター)のDSC測定 結果を示すグラフである。

 以下、本発明の一実施の形態を添付の図 を用いて説明する。図1には、連続式熱水処 理装置が示されている。水タンク容器11中の を水ポンプ12で所定の圧力に昇圧した後、 ーター13で加熱し、所定温度の温水を作る。 原料の澱粉は、浄水と混合して溶液またはス ラリー液の状態にしてから原料タンク14へ投 される。次に、前記原料をスラリーポンプ1 5で昇圧し、温水と原料スラリーとを混合し 、耐熱耐圧管16へ通す。その後、クーラー17 室温付近まで冷却し、フィルター18で凝集 を除去し、背圧弁19を通して処理水を容器へ 回収する。常圧に戻して、沈殿物を澱粉とし て回収する。

 図2には、バッチ式の反応装置を示す。該 装置は、例えば示すステンレス鋼のような耐 腐食性の材質でできた開閉自在の耐圧耐熱管 21、熱水温度でのソルトバス22のような恒温 置、攪拌機24や反応管揺動装置のような前記 反応容器の内容物を均質化するため機構など からなる。上記反応管に澱粉および浄水を入 れて密閉し、この反応管を所定温度に加熱し て、反応管内を高温高圧とすれば、前記反応 管内部の水が熱水となり、投入された原料が 熱水処理される。

 上記連続式およびバッチ式の反応装置に 入される原料の澱粉は、アミロースを含有 る澱粉であれば特に制限されない。したが て、ワキシーコーンスターチのようなアミ ースを含有しないか、アミロース含有量の い澱粉は、本製法の原料として適さない。 発明で使用する澱粉は、変性されていても また未変性でもよい。

 アミロースを含有する澱粉の具体例とし は、トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉 緑豆澱粉、ジャガイモ澱粉、甘藷澱粉、タ オカ澱粉、サゴ澱粉、葛澱粉、バナナ澱粉 どが挙げられる。これらの中で、アミロー 含量の比較的高いトウモロコシ澱粉が好ま い。

 さらに、トウモロコシ澱粉の中でも、ア ロース含量の特に高いハイアミロースコー スターチは、RS含有率を高める上で最適な 料である。ハイアミロースコーンスターチ アミロース含量は、澱粉全量に対して、通 、40~90重量%、好ましくは50~85重量%である。

 原料の澱粉と浄水を反応装置に投入する あるいは、原料を浄水に懸濁させてから反 装置に投入する。反応中の澱粉の全量が水 内に均質に分散またはスラリー化した状態 あることが好ましい。そのために、熱水反 における水分は、通常、50~98%であり、好ま くは60~95%とする。水分が50%より低いと、ス リーの流動性が悪く、反応装置内で不均質 なり局所的に反応が不十分であったり、熱 解反応が進みすぎて炭化したりする恐れが る。逆に、98%より高いと、反応後の澱粉回 時のロスや廃液が多くなるなどから経済的 ない。

 反応温度は、160~260℃であり、好ましくは 170~230℃である。温度が、160℃より低いと、 応時間が長くなり、工業的に適さない。逆 、温度が260℃より高いと、熱分解反応が短 間で進み過ぎて有機酸が発生したり、炭化 たりする場合がある。また、高温高圧によ 反応装置の腐食が起きやすく、より耐圧性 反応容器が必要になる。

 反応圧力は、反応温度の飽和蒸気圧以上 あり、好ましくは反応温度の飽和蒸気圧か 0~22Mpa高い範囲にある。よって、反応器内の 水は、ほとんど水相(液相)状態にある。

 反応時間は、反応温度で適宜調整される 、通常、0.1~120分であり、好ましくは0.1~60分 である。反応温度が170℃では5分~60分間、反 温度が230℃では、0.1~2分である。

 反応後、内容物を速やかに常温まで冷却 る。常圧に戻した後、装置内の沈殿物また 懸濁物を回収する。その回収方法としては 特に制限されず、自然沈降、遠心分離、濾 、フィルタープレスなどで沈殿物を回収し 後、通風、減圧、流動層、気流、噴霧など 方法により乾燥し、さらに凝集が見られる 合は粉砕、整粒、篩分を行ってもよい。強 なゲル状の場合は、そのまま蒸発乾固させ 後、水洗して水溶性成分を除去してもよい こうして、RS含有率の高い澱粉が得られる

 本製法によれば、澱粉の収率を維持した ま、RS含有率を初期の1.1~2倍、特に1.2~1.6倍 増強することが可能である。具体的には、 製法により得られる澱粉のAOAC公定法 2002.02 測定されるRS含有率は、通常、40~75重量%で り、特に50~70重量%である。

 本発明の製法は、従来技術の湿熱製法と べて、反応温度と水分が高い。本製法で得 れる澱粉は、RS含有率が増加しただけでな 、物性が既存のアミロース含有澱粉や湿熱 理品と異なっている。

 具体的には、本発明の製法で得られる澱 は、形状が真球状(短径と長径との比率が1.0 ~1.1)に近い。特に、ハイアミロースコーンス ーチに特徴的なひも状の粒子(短径と長径の 比率が2.0以上)がほとんど見られず、比較的 一な粒子となる。具体的には、短径と長径 比が2.0以上のものの割合が数平均で通常、5% 以下、特に1%以下である。

 本発明の製法で得られる澱粉は、結晶化 が原料の澱粉よりも増大する。処理前のハ アミロースコーンスターチの結晶化度は11.4 %であったところ、これを本発明の製法に付 と、通常、12~30%、特に18~20%に増大する。

 上記結晶化度は、以下の手順により測定さ るものである。試料をシャーレに薄く広げ 25重量%の硫酸水溶液とともに、デシケータ 中に2日間保存する。こうして相対湿度81.7% 平衡水分に達した試料に内部標準としてフ 化カルシウムCaF 2 を添加して、X線回折に供する。具体的には 測定試料95mgとCaF 2  5mg を乳鉢で均一に混合し、X線結晶解析用 試料板に均一に塗布し、X線管球:Cu 電圧: 4 0kV、電流: 40mA, 走査速度: 2°/min, 走査ステ プ:0.02°,発散スリット: 1°,散乱スリット: 1 °,受光スリット: 0.15mmの測定条件にて測定す る。得られたX線回折図形に対して平滑化点 19でスムージングし、バックグラウンドを除 去する。処理後のX線回折図形におけるフッ カルシウムのピーク面積に対する各澱粉試 におけるピークの相対面積を結晶化度とす 。

 澱粉の結晶化度の増大は、栄養機能面で 難消化性の向上、物性面では食品加工時の 熱によるアミロース溶出が少なく食品の劣 (澱粉質の老化や硬化)が抑制されるなどの 点がある。

 更に、本製法により得られる難消化性澱 は、粒径が真球状であり、食品へ応用した きの口ざわり(ざらつきやパサつき)が改善 れる。

 本製法により得られ、上記物性と形状を する難消化性澱粉は、食物繊維と同様の機 (腸内環境の改善、血糖値上昇抑制、脂質代 謝改善機能)が期待され、尚且つ、食物繊維 合の食品に特有の食品に配合した際の食味 下や長期保存時の食感の劣化が無いおいし 食品を提供するための配合材料として非常 有用といえる。したがって、本発明は、本 法により得られる結晶化度およびRS含有率の 高められた澱粉を含む食品を提供する。その ような食品の具体例としては、菓子、スナッ ク、パン、ケーキ、ドーナッツ、ベーカリー 製品、麺類、シリアル、穀類、米飯類、揚物 、畜肉加工品、水産加工品などが挙げられる 。本発明の澱粉の配合量は、用途によって適 宜変更されるが、通常、食品全量に対して1~5 0重量%、特に5~20%である。

 以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳 に説明するが、本発明はこれらに限定され ものではない。
〔実施例1~11、および比較例1~4〕
 市販のハイアミロースコーンスターチ(製品 名HS-7、株式会社J-オイルミルズ製、以下、HAS と略称する)を用意した。HASのアミロース含 は、82重量%であった。HASの顕微鏡写真を図3 、長径/短径分布図(n=100)を図4に、そしてX線 回折結果を図5に示す。図3の顕微鏡写真には HASに特徴的なひも状の粒子が数多く見られ 粒度もバラバラであった。図4の長径/短径 布図に示すように、その比率は1~4.5の間に幅 広く分布した。

 また、ワキシーコーンスターチ(製品名ワ キシーコーンスターチY、株式会社J-オイルミ ルズ製、以下、WSと略称する)も用意した。

 HAS澱粉のRS含有率を、AOAC公定法 2002.02の方 に準拠して以下のように測定した。まず、H ASを膵α-アミラーゼとアミログルコシダーゼ 37℃で16時間作用させて消化性澱粉を可溶化 、加水分解した。エタノールを添加して反応 を停止させ、難消化性澱粉を遠心分離機によ り回収した。回収された難消化性澱粉を2M
KOHで溶解し、酢酸緩衝液で中和して、アミロ グルコシダーゼによりグルコースまで加水分 解した。得られたグルコースをグルコースオ キシダーゼパーオキシダーゼで測定したとこ ろ、HASのRS含有率は41%であった。一方、WSのRS 含有率を同様に測定したところ、0%であった

〔反応装置の準備〕
 熱水処理には、図2のバッチ式反応装置20を 用した。この反応装置20は、ステンレス製 21(外径10mm、内径8.2mm、長さ150mm、容積8.2cm 3 )の両端にキャップ(SWAGELOK製、商品名SS-600-C) 脱着自在に取り付けたものである。

 熱水処理の間、反応管21を高温の一定温 に保つため、ソルトバス22(トーマス化学社 、製品名Thermometer Inspecting Bath CELSIUS600H)を 用した。前記ソルトバス内の熱媒体には、 酸カリウムと亜硝酸ナトリウムを1:1の割合 混ぜた配合塩(融点140℃)を使用した。反応 置20は、さらに、反応管を納めるカゴ(縦7cm 横20cm、深さ3cm)と、このカゴを上下に揺らし て、反応管内の試料を攪拌するための攪拌機 24を具備した。

〔各処理温度における圧力および水仕込量の 計算〕
 反応管内の圧力は、水の飽和蒸気圧に等し と仮定した。また、管内の容積に占める各 の割合は、下記式:
〔式中、Vは反応管容積(cm 3 )、Vsは澱粉(乾燥)の体積(cm 3 )、V 1 は水相(液相)の体積(cm 3 )、V 2 は気相の体積(cm 3 )である〕
で表される。

 また、澱粉(乾燥)の仕込量(g)と水仕込量と 間には、下記式:
〔式中、V、V S 、V 1 およびV 2 は上記と同様であり、m w は水仕込量(g)、mは澱粉(乾燥)の重量(g)、wは 水率、ν 1 は水相での水の比容積(cm 3 /g)、ν 2 は気相での水の比容積(cm 3 /g)、ρは水の密度(g/cm 3 )である〕
で表される。

 反応管に投入可能な水仕込量Vは、澱粉を0 した場合、
である。

 したがって、熱水処理温度で反応管容積に る水量は、8.2/ν 1 (g)となる。気相分の余裕を持たせるため、Max 水相量をその80%とした。

〔試料投入〕
 原料の澱粉を表1に示す水分となるように浄 水に溶解させ、試料液を作製した。なお、原 料澱粉の水分は、HASが13.1%、WSが12.5%であった 。この試料液5.0mlを図2の反応管21に充填し、 ャップを閉めた。

〔熱水処理〕
 次に、反応管を恒温槽に浸漬することによ 、熱水処理を行った。具体的には、澱粉お び水の仕込まれた反応管21をカゴ23に載置し た後、反応管21をカゴ23ごと、表1に示す温度 ソルトバス22に浸漬した。さらに、表1記載 条件で反応させた。

 熱水処理の間は、上記攪拌機24により、 応管21を35回/分の間隔で上下に揺動させた。 その後、前記反応管21をソルトバス22から取 出し、水冷した。

〔沈殿物の回収〕
 水冷した反応管21をよく振り、内容物を均 化させた。反応管21のキャップを開け、バイ トン製チップのついた押棒で、管の内容物を 全量、試験管に移した。反応管内の内容物を 取り出し、外観観察を行った。

 試験管に水を添加して、容量を約45mlとし た。その後、遠心処理(3000rpm×15分)にて、遠 させた。遠心分離後、沈殿物を回収した。

 沈殿物を減圧乾燥し、RS含有率の測定を った。RS含有率は、AOAC公定法 2002.02に準拠 て行った。結果を表1に示す。

圧力:温度から求めた計算値である。

 表1に示すとおり、実施例1~9でのRS含有率 、条件によっては、原料澱粉の41%から最高6 6%へ増加していた。

 従来技術のハイアミロース湿熱処理品(製品 名:ロードスター、日本食品化工株式会社製) RS含有率をAOAC公定法 2002.02で測定したとこ 、43%であった。すなわち、湿熱処理品は、 ロスキー法で評価される全食物繊維量(TDF) ハイアミロースコーンスターチと比べて増 させるが、AOAC公定法
2002.02で評価される難消化性澱粉(RS)はあまり 大させないことがわかる。一方、本製法で られる澱粉のRS含有率は、湿熱処理品と比 ても有意に増加している。

 実施例5で得られた澱粉粒子の顕微鏡写真 を図6に示す。図7には、長径/短径分布図(n=68) を示す。HASの粒子は図3のように角張ってい のに対し、本発明に従う熱水処理品の粒子 形状は、真球状に近くなり、粒度もほぼ均 にそろっていた(図6)。長径/短径の比率は、1 ~2の範囲に収束し、短径と長径の比率が2.0以 のものの割合は0%であった(図7)。

 実施例5で得られた熱水処理品のX線回折 を図8に示す。原料のX線回折図(図5)との比較 から、本発明に従って熱水処理した澱粉は、 結晶化が進んでいることがわかる。さらに、 前述したような測定方法によって結晶化度を 測定したところ、HASの結晶化度は11.4%であっ が、実施例5の熱水処理品では18.6%に増大し 。

 図9に、従来技術のハイアミロースコーン スターチ湿熱処理品(製品名ロードスター、 本食品化工株式会社製)のX線回折図を示す。 図9と図8(本発明に従う熱水処理品)との比較 ら、本発明の熱水処理品は、湿熱処理品と 較しても結晶質を多く含むことがわかる。 れらの結晶化度を、比較のため未加工コー スターチおよび未加工馬鈴薯澱粉の結果と もに表2に示す。

 図10には、HAS、実施例5の熱水処理品、およ 従来技術の湿熱処理製品(製品名:ロードス ー)のGPC測定結果を示す。測定には、カラム 東ソー社製TSKgel α-M ×2本(7.8mmφ x 30cm)を い、条件は、流速0.5ml/min、溶離液 5mM NaNO 3  in DMSO、試料濃度1.0g/L、カラム温度40℃とし た。分子量の算出には、プルランの分子量標 準を用いた。

 図10の結果から、本発明の熱水処理品は 従来技術の湿熱処理品やHASと較べて分子量 かなり小さくなっており、構造が異なるこ が確認された。

 図11には、HAS、実施例5の熱水処理品、お び従来技術の湿熱処理製品(製品名:ロード ター)のDSC測定結果を示す。測定にはマック イエンス社製DSC 3100Sを用い、70μlアルミセ 中に試料10mgを入れ、最終固形分含量が35%に なるように水を加え、一晩室温で放置後、リ ファレンスを水とし10℃/minで130℃まで昇温し た。

 図11は、従来技術の湿熱処理品は、吸熱 ーク温度が高温側に大きくシフトしている に対して、本発明の熱水処理品は、HASに近 吸熱ピーク温度を示している。本発明の熱 処理品をHASと比較すると、低温側の吸熱ピ ク部分が減少している。この結果からも、 来技術の湿熱処理品やHASと比べて、本発明 熱水処理品は、構造だけでなく物性(糊化特 )も異なっていることが確認された。

符号の説明

10      熱水処理装置
11      水タンク容器
12      水ポンプ
13      ヒーター
14      原料タンク
15      スラリーポンプ
16      熱水処理用耐熱耐圧管
17      クーラー
18      フィルター
19      背圧弁
20      バッチ式反応装置
21      耐圧耐熱管
22      ソルトバス
23      カゴ
24      攪拌機
A       澱粉