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Patent Searching and Data


Title:
MICROCHIP AND PROCESS FOR PRODUCING MICROCHIP
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/087787
Kind Code:
A1
Abstract:
A microchip in which any inter-substrate gap in the vicinity of aperture provided therein can be infilled so as to prevent leakage of a reagent, etc. The microchip comprises microchip substrate (10) and microchip substrate (14). The microchip substrate (10) is furnished with groovelike microchannel (11) and a through-hole. The microchip is produced by joining the microchip substrate (10)with the microchip substrate (14). Aperture (12) is connected to the microchannel (11), and through the aperture (12), there are carried out, for example, introduction of a reagent, etc. and discharge of a reagent, etc. The aperture (12) on its internal surface is provided with dielectric film (13). A SiO2 film or TiO2 film is used as the dielectric film (13).

Inventors:
HIRAYAMA HIROSHI (JP)
Application Number:
PCT/JP2007/071985
Publication Date:
July 24, 2008
Filing Date:
November 13, 2007
Export Citation:
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Assignee:
KONICA MINOLTA OPTO INC (JP)
HIRAYAMA HIROSHI (JP)
International Classes:
G01N35/08; B01J19/00; G01N37/00
Foreign References:
JP2005114414A2005-04-28
US20030150555A12003-08-14
JP2002174610A2002-06-21
Other References:
See also references of EP 2105744A4
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Claims:
 2つの樹脂製基板のうち少なくとも1つの樹脂製基板には表面に流路用溝が形成され、さらに、前記2つの樹脂製基板のうち少なくとも1つの樹脂製基板には前記流路用溝と繋がって外部との開口部を形成する貫通孔が形成され、前記2つの樹脂製基板を、前記流路用溝が形成されている面を内側にして接合されたマイクロチップであって、
 前記開口部の内面に1層以上の誘電体膜が形成されていることを特徴とするマイクロチップ。
 前記誘電体膜は、SiO 2 膜又はTiO 2 膜であることを特徴とする請求の範囲第1項に記載のマイクロチップ。
 前記誘電体膜は、異なる材料の膜が積層して形成されていることを特徴とする請求の範囲第1項に記載のマイクロチップ。
 前記誘電体膜は、TiO 2 膜上にSiO 2 膜が積層して形成されていることを特徴とする請求の範囲第3項に記載のマイクロチップ。
 前記開口部の内側面に形成された誘電体膜の厚さt 1 と、前記接合によって形成された前記開口部の底面に形成された誘電体膜の厚さt 2 との比(t 1 /t 2 )が、1/10以上であることを特徴とする請求の範囲第1項から請求の範囲第4項のいずれかに記載のマイクロチップ。
 前記開口部の内側面に形成された誘電体膜の厚さt 1 と、前記接合によって形成された前記開口部の底面に形成された誘電体膜の厚さt 2 との比(t 1 /t 2 )が、1/3以上であることを特徴とする請求の範囲第1項から請求の範囲第4項のいずれかに記載のマイクロチップ。
 前記開口部の内側面に形成された誘電体膜の厚さt 1 と、前記接合によって形成された前記開口部の底面に形成された誘電体膜の厚さt 2 との比(t 1 /t 2 )が、1/2以上であることを特徴とする請求の範囲第1項から請求の範囲第4項のいずれかに記載のマイクロチップ。
 前記誘電体膜は、前記開口部の内面と前記流路用溝の内面に形成されていることを特徴とする請求の範囲第1項から請求の範囲第7項のいずれかに記載のマイクロチップ。
 前記誘電体膜は、前記貫通孔が形成された樹脂製基板の表面であって、相手方の樹脂製基板と接合する面の反対側の面にも形成されていることを特徴とする請求の範囲第1項から請求の範囲第8項のいずれかに記載のマイクロチップ。
 前記誘電体膜は、前記貫通孔が形成されていない樹脂製基板の表面であって、相手方の樹脂製基板と接合する面の反対側の面にも形成されていることを特徴とする請求の範囲第1項から請求の範囲第9項のいずれかに記載のマイクロチップ。
 前記誘電体膜は、前記開口部の内側面から前記接合によって形成された前記開口部の底面にかけて連続的に形成されていることを特徴とする請求の範囲第1項から請求の範囲第10項のいずれかに記載のマイクロチップ。
 2つの樹脂製基板のうち少なくとも1つの樹脂製基板には表面に流路用溝が形成され、さらに、前記2つの樹脂製基板のうち少なくとも1つの樹脂製基板には前記流路用溝と繋がって外部との開口部を形成する貫通孔が形成され、前記2つの樹脂製基板を、前記流路用溝が形成されている面を内側にして、接合するマイクロチップの製造方法であって、
 前記開口部の内面に1層以上の誘電体膜を形成することを特徴とするマイクロチップの製造方法。
 前記2つの樹脂製基板を接合した後、前記開口部の内面に前記誘電体膜を形成することを特徴とする請求の範囲第12項に記載のマイクロチップの製造方法。
 プラズマCVD、スパッタリング、塗布、又はマイクロプラズマジェットによって、前記開口部に前記誘電体膜を形成することを特徴とする請求の範囲第12項又は請求の範囲第13項のいずれかに記載のマイクロチップの製造方法。
Description:
マイクロチップ、及びマイクロ ップの製造方法

 この発明は、流路用溝が形成されたマイ ロチップ、及びそのマイクロチップの製造 法に関する。

 微細加工技術を利用してシリコンやガラ 基板上に微細な流路や回路を形成し、微小 間上で核酸、タンパク質、血液などの液体 料の化学反応や、分離、分析などを行うマ クロ分析チップ、あるいはμTAS(Micro Total An alysis Systems)と称される装置が実用化されて る。このようなマイクロチップの利点とし は、サンプルや試薬の使用量又は廃液の排 量が軽減され、省スペースで持ち運び可能 安価なシステムの実現が考えられる。

 マイクロチップは、少なくとも一方の部 に微細加工が施された部材2つをはり合わせ ることにより製造される。従来においては、 マイクロチップにはガラス基板が用いられ、 様々な微細加工方法が提案されている。しか しながら、ガラス基板は大量生産には向かず 、非常に高コストであるため、廉価で使い捨 て可能な樹脂製マイクロチップの開発が望ま れている。

 ここで、従来技術に係るマイクロチップ 構成について図6及び図7を参照して説明す 。図6は、従来技術に係るマイクロチップの 面図である。図7は、従来技術に係るマイク ロチップの断面図であり、図6のVII-VII断面図 ある。マイクロチップ100は、表面に微細流 111が形成されたマイクロチップ基板110と、 細流路111をカバーするための平板状のマイ ロチップ基板120とを備えて構成されている このマイクロチップ100は、微細流路111を内 にしてマイクロチップ基板110、120を接合す ことで製造される。また、マイクロチップ1 00には、ゲルや液体状の試薬を微細流路111に 入したり、微細流路111から排出したりする めの開口部112が形成されている。図6及び図 7に示す例では、微細流路111が形成されたマ クロチップ基板110に貫通孔が形成されてお 、マイクロチップ110、120を接合することで 口部112が形成される。この開口部112から微 流路111に試薬などを導入し、又は、微細流 111の試薬などを開口部112から排出する。

 また、マイクロチップ基板を接合する方法 して、接着剤を用いて接合する方法、有機 剤で樹脂基板の表面を溶かして接合する方 (例えば特許文献1)、超音波融着を利用して 合する方法(例えば特許文献2)、熱融着を利 して接合する方法(例えば特許文献3)、レー 融着を利用する方法などがある(例えば特許 文献4)。

特開2005-80569号公報

特開2005-77239号公報

特開2005-77218号公報

特開2005-74796号公報

 しかしながら、上記の方法で樹脂製基板 士を接合する場合、マイクロチップに形成 れた開口部付近では成形ひずみが大きくな 、面精度が悪くなってしまう。そのため、 口部付近においてマイクロチップ基板同士 強く接合しようとすると、微細流路が潰れ しまう場合がある。また、微細流路が潰れ いようにマイクロチップ基板同士を接合し うとすると、貫通孔が形成されたマイクロ ップ基板と形成されていないマイクロチッ 基板との間に微細な隙間が生じてしまい、 体状の試薬などを圧送又は電気泳動する際 、試薬などが漏れてしまう場合がある。例 ば図7に示すように、開口部112付近(破線の で示す部分A)において、マイクロチップ基板 110とマイクロチップ基板120との間に隙間が生 じてしまい、その隙間から試薬などが漏れて しまうおそれがある。試薬などの漏れを防止 するために接着剤やシール材を用いることも 考えられるが、微細流路の幅が数十μmである ため、所望の部位に接着材やシール材を設け ることが困難であり、接着剤などで微細流路 を塞いでしまうおそれがある。

 この発明は上記の問題を解決するもので り、マイクロチップに形成された開口部付 における基板間の隙間を埋めて、試薬など 漏れを防止することが可能なマイクロチッ 、及びそのマイクロチップの製造方法を提 することを目的とする。 

 この発明の第1の形態は、2つの樹脂製基 のうち少なくとも1つの樹脂製基板には表面 流路用溝が形成され、さらに、前記2つの樹 脂製基板のうち少なくとも1つの樹脂製基板 は前記流路用溝と繋がって外部との開口部 形成する貫通孔が形成され、前記2つの樹脂 基板を、前記流路用溝が形成されている面 内側にして接合されたマイクロチップであ て、前記開口部の内面に1層以上の誘電体膜 が形成されていることを特徴とするマイクロ チップである。

 また、この発明の第2の形態は、第1の形態 係るマイクロチップであって、前記誘電体 は、SiO 2 膜又はTiO 2 膜であることを特徴とする。

 また、この発明の第3の形態は、第1の形 係るマイクロチップであって、前記誘電体 は、異なる材料の膜が積層して形成されて ることを特徴とする。

 また、この発明の第4の形態は、第3の形態 係るマイクロチップであって、前記誘電体 は、TiO 2 膜上にSiO 2 膜が積層して形成されていることを特徴とす る。

 また、この発明の第5の形態は、第1の形態 ら第4の形態のいずれかに係るマイクロチッ であって、前記開口部の内側面に形成され 誘電体膜の厚さt 1 と、前記接合によって形成された前記開口部 の底面に形成された誘電体膜の厚さt 2 との比(t 1 /t 2 )が、1/10以上であることを特徴とする。

 また、この発明の第6の形態は、第1の形態 ら第4の形態のいずれかに係るマイクロチッ であって、前記開口部の内側面に形成され 誘電体膜の厚さt 1 と、前記接合によって形成された前記開口部 の底面に形成された誘電体膜の厚さt 2 との比(t 1 /t 2 )が、1/3以上であることを特徴とする。

 また、この発明の第7の形態は、第1の形態 ら第4の形態のいずれかに係るマイクロチッ であって、前記開口部の内側面に形成され 誘電体膜の厚さt 1 と、前記接合によって形成された前記開口部 の底面に形成された誘電体膜の厚さt 2 との比(t 1 /t 2 )が、1/2以上であることを特徴とする。

 また、この発明の第8の形態は、第1の形 から第7の形態のいずれかに係るマイクロチ プであって、前記誘電体膜は、前記開口部 内面と前記流路用溝の内面に形成されてい ことを特徴とする。

 また、この発明の第9の形態は、第1の形 から第8の形態のいずれかに係るマイクロチ プであって、前記誘電体膜は、前記貫通孔 形成された樹脂製基板の表面であって、相 方の樹脂製基板と接合する面の反対側の面 も形成されていることを特徴とする。

 また、この発明の第10の形態は、第1の形 から第9の形態のいずれかに係るマイクロチ ップであって、前記誘電体膜は、前記貫通孔 が形成されていない樹脂製基板の表面であっ て、相手方の樹脂製基板と接合する面の反対 側の面にも形成されていることを特徴とする 。

 また、この発明の第11の形態は、第1の形 から第10の形態のいずれかに係るマイクロ ップであって、前記誘電体膜は、前記開口 の内側面から前記接合によって形成された 記開口部の底面にかけて連続的に形成され いることを特徴とする。

 また、この発明の第12の形態は、2つの樹 製基板のうち少なくとも1つの樹脂製基板に は表面に流路用溝が形成され、さらに、前記 2つの樹脂製基板のうち少なくとも1つの樹脂 基板には前記流路用溝と繋がって外部との 口部を形成する貫通孔が形成され、前記2つ の樹脂製基板を、前記流路用溝が形成されて いる面を内側にして、接合するマイクロチッ プの製造方法であって、前記開口部の内面に 1層以上の誘電体膜を形成することを特徴と るマイクロチップの製造方法である。

 また、この発明の第13の形態は、第12の形 態に係るマイクロチップの製造方法であって 、前記2つの樹脂製基板を接合した後、前記 口部の内面に前記誘電体膜を形成すること 特徴とする。

 また、この発明の第14の形態は、第12の形 態又は第13の形態のいずれかに係るマイクロ ップの製造方法であって、プラズマCVD、ス ッタリング、塗布、又はマイクロプラズマ ェットによって、前記開口部に前記誘電体 を形成することを特徴とする。

 この発明によると、開口部の内面に1層以 上の誘電体膜を形成することで、開口部付近 における基板間の隙間を埋めることができ、 そのことにより、開口部付近での試薬などの 漏れを防止することが可能となる。

この発明の第1実施形態に係るマイクロ チップの断面図である。 この発明の第2実施形態に係るマイクロ チップの断面図である。 この発明の第3実施形態に係るマイクロ チップの断面図である。 この発明の実施例と比較例に関する条 を示す表である。 この発明の実施例6に係るマイクロチッ プの反射率を示すグラフである。 従来技術に係るマイクロチップの上面 である。 従来技術に係るマイクロチップの断面 であり、図6のVII-VII断面図である。

符号の説明

 10、14、20、22、30、35 マイクロチップ基板
 11、21、31 微細流路
 12、23、32 開口部
 13、24、33、34 誘電体膜

[第1の実施の形態]
 この発明の第1実施形態に係るマイクロチッ プ、及びそのマイクロチップの製造方法につ いて、図1を参照して説明する。図1は、この 明の第1実施形態に係るマイクロチップの断 面図である。
(マイクロチップの構成)
 第1実施形態に係るマイクロチップは、マイ クロチップ基板10とマイクロチップ基板14を えて構成されている。マイクロチップ基板10 には溝状の微細流路11が形成されている。さ に、マイクロチップ基板10には、基板を貫 して形成された貫通孔が形成されている。 の貫通孔は微細流路11に接して形成されてお り、マイクロチップ基板10とマイクロチップ 板14を接合することで開口部12となる。マイ クロチップ基板10の接合の相手方となるマイ ロチップ基板14は、平板状の基板である。 細流路11が形成されている面を内側にして、 マイクロチップ基板10とマイクロチップ基板1 4を接合する。これにより、マイクロチップ 板14が微細流路11の蓋(カバー)として機能し マイクロチップ基板10に形成されている貫通 孔は開口部12となる。なお、マイクロチップ 板10、14が、この発明の「樹脂製基板」の1 に相当する。

 マイクロチップ基板10の貫通孔は微細流 11に接して形成されているため、その貫通孔 による開口部12は微細流路11に繋がっている この開口部12は、ゲル、試料、緩衝液の導入 、保存、排出を行うための孔である。開口部 12の形状は、円形状や矩形状の他、様々な形 であっても良い。この開口部12に、分析装 に設けられたチューブやノズルを接続し、 のチューブやノズルを介して、ゲル、試料 又は緩衝液などを微細流路11に導入し、又は 、微細流路11から排出する。

 さらに、開口部12の内面には誘電体膜13が形 成されている。詳しく説明すると、誘電体膜 13は、開口部12の内側面から底面にかけて断 されることなく、連続的に形成されている なお、本稿においては、「開口部12の内側面 」とは、開口部における底面以外の壁面のこ とであり図1においては微細流路11の流路方向 に直角な壁面のことである。また「開口部12 内面」とは、「開口部12の内側面」に「開 部12の底面」を加えたものである。
開口部12の内側面と底面との境界には、誘電 膜13が埋められた状態で形成されている。 の誘電体膜13には、SiO 2 膜又はTiO 2 膜が用いられる。SiO 2 膜はSiO 2 を主成分とする膜であり、SiO 2 膜の親水性機能が保たれる程度であれば、SiO 2 以外の不純物を含んでいても構わない。また 、TiO 2 膜はTiO 2 を主成分とする膜であり、TiO 2 膜の親水性機能が保たれる程度であれば、TiO 2 以外の不純物を含んでいても構わない。

 誘電体膜13(SiO 2 膜又はTiO 2 膜)の膜厚は、開口部12の内面が誘電体膜13で われること、開口部12の内面への密着性が 保できること、微細流路11を塞いでしまわな いことなどを考慮して決定する。塗布によっ て誘電体膜13を形成する場合は、塗布溶液の 性、種類に応じて膜厚を調整する。例えば 10nm~3μmの範囲内の値であることが好ましく 10nm~2μmの範囲内の値であることがより好ま い。また、スパッタリングやCVDによって誘 体膜13を形成する場合、誘電体膜の内部応 が増加する傾向にあるため、10nm~1μmの範囲 の値であることが好ましく、50nm~500nmの範囲 の値であることがより好ましい。

 また、開口部12の内側面に形成された誘電 膜13aの厚さt 1 と、開口部12の底面に形成された誘電体膜13b 厚さt 2 との比(t 1 /t 2 )が、1/10以上であることが好ましい。さらに 比(t 1 /t 2 )が1/3以上であることがより好ましく、1/2以 であることが更に好ましい。

 一般的に膜を凹凸物に均一な膜厚で形成す ことは難しい。特に成膜材料が直線的に飛 で形成される蒸着方法の場合、開口部12の 側面にはSiO 2 膜は形成され難い。従って、開口部12の内側 と底面の境界に膜を隙間なく埋めようとし 場合、均一に形成できる成膜方法の10倍な しはそれ以上の膜厚を形成する必要があり 効率的ではない。さらに、開口部12の内側面 と底面の膜質が大きく異なり、微細流路11の 質性を阻害する要因となり、好ましくない
半導体プロセスでは一般的に段差への被膜の 状態を表す指標としてステップカバレッジが 使われる。ステップカバレッジとは、段差壁 面への膜厚/表面への膜厚(%)を管理指標とし いる。本願発明においては、ステップカバ ッジを使用していない。その理由は内側面 底面への成膜状態が問題であり、表層(接合 )への成膜状態は重要でないためである。広 く普及している蒸着においては、t 1 /t 2 は小さく、内側面には成膜されにくい。また そのような場合には、内側面に形成された膜 は膜密度が低く、柱状構造であり、液体(水) 浸透してしまう恐れがある。それを改善す ためにはCVD、スパッタ、スプレーコーティ グなどの成膜方法が有効である。本願発明 はt 1 /t 2 が大きいほど、膜の密度、構造が内側面と底 面で差がなくなり、したがって連続的に成膜 されるため、液体(水)の浸透を防げることを 見した。

 そこで、例えば、比(t 1 /t 2 )が1/10以上になるようにSiO 2 膜を形成すれば、開口部12の底面に100nmのSiO 2 膜を形成した場合、内側面には10nm以上のSiO 2 膜が形成され、開口部12の内側面と底面との 界部の隙間を十分に埋めることができる。

 同様に、比(t 1 /t 2 )が1/3以上になるようにSiO 2 膜を形成すれば、開口部12の底面に30nmのSiO 2 膜を形成した場合、内側面には10nm以上のSiO 2 膜が形成され、開口部12の内側面と底面との 界部の隙間を十分に埋めることができる。

 同様に、比(t 1 /t 2 )が1/2以上になるようにSiO 2 膜を形成すれば、開口部12の底面に20nmのSiO 2 膜を形成した場合、内側面には10nm以上のSiO 2 膜が形成され、開口部12の内側面と底面との 界部の隙間を十分に埋めることができる。

 このように、比(t 1 /t 2 )が1に近くなるようにSiO 2 膜を形成すれば、全体的に形成するSiO 2 膜を少なくすることができ、膜応力が原因の クラックや膜はがれが発生しにくいという効 果がある。また、同じ膜厚であっても、比(t 1 /t 2 )が1に近いほうが境界部の隙間を塞ぐ効果は い。
(マイクロチップ基板の材料)
 マイクロチップ基板10、14には樹脂が用いら れる。その樹脂としては、成形性(転写性、 型性)が良いこと、透明性が高いこと、紫外 や可視光に対する自己蛍光性が低いことな が条件として挙げられるが、特に限定され ものではない。例えば、ポリカーボネート ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、 リアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポ エチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイ ロン66、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデ 、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリ チレン、ポリジメチルシロキサン、環状ポ オレフィンなどが好ましい。特に、ポリメ クリル酸メチル、環状ポリオレフィンなど 好ましい。マイクロチップ基板10とマイク チップ基板14とで、同じ材料を用いても良く 、異なる材料を用いても良い。
(マイクロチップ基板の形状)
 マイクロチップ基板10、14の形状は、ハンド リング、分析しやすい形状であればどのよう な形状であっても良い。例えば、10mm角~200mm 程度の大きさが好ましく、10mm角~100mm角がよ 好ましい。マイクロチップ基板10、14の形状 は、分析手法、分析装置に合わせれば良く、 正方形、長方形、円形などの形状が好ましい 。
(微細流路の形状)
 微細流路11の形状は、分析試料、試薬の使 量を少なくできること、成形金型の作製精 、転写性、離型性などを考慮して、幅、深 ともに、10μm~200μmの範囲内の値であること 好ましいが、特に限定されるものではない また、アスペクト比(溝の深さ/溝の幅)は、0. 1~3程度が好ましく、0.2~2程度がより好ましい また、微細流路11の幅と深さは、マイクロ ップの用途によって決めれば良い。なお、 明を簡便にするために、図1に示す微細流路1 1の断面の形状は矩形状となっているが、こ 形状は微細流路11の1例であり、曲面状とな ていても良い。

 また、微細流路11が形成されたマイクロチ プ基板10の板厚は、成形性を考慮して、0.2mm~ 5mm程度が好ましく、0.5mm~2mmがより好ましい。 微細流路11を覆うための蓋(カバー)として機 するマイクロチップ基板14の板厚は、成形性 を考慮して、0.2mm~5mm程度が好ましく、0.5mm~2mm がより好ましい。また、蓋(カバー)として機 するマイクロチップ基板14に微細流路を形 しない場合、フィルム(シート状の部材)を用 いても良い。この場合、フィルムの厚さは、 30μm~300μmでることが好ましく、50μm~150μmであ ることがより好ましい。
(作用及び効果)
 以上の構成を有するマイクロチップによる 、開口部12付近(図1中、破線の円で示す部分 A)において、マイクロチップ基板10とマイク チップ基板14との間に生じていた隙間を誘電 体膜13で埋めることが可能となる。その結果 開口部12付近での試薬などの漏れを防止す ことが可能となる。すなわち、誘電体膜13は 、開口部12の内側面から底面に掛けて断絶さ ることなく連像的に形成されているため、 板間の隙間を埋めることができ、試薬など 漏れを防止することができる。

 また、SiO 2 膜は親水性機能を有するため、開口部12にSiO 2 膜を形成することで、水や試薬などを圧送し なくても毛細管現象によって、水や試薬など を開口部12や微細流路11にスムースに導入す ことが可能である。また、TiO 2 膜は紫外線を照射することで親水性を発揮す るため、開口部12にTiO 2 膜を形成した後、紫外線を照射することでSiO 2 膜と同様の効果を奏することが可能である。
(製造方法)
 次に、上述した第1実施形態に係るマイクロ チップの製造方法について説明する。第1実 形態では、マイクロチップ基板10、14を接合 た後、開口部12に誘電体膜13を形成すること で、第1実施形態に係るマイクロチップを製 する。
(マイクロチップ基板の接合)
 まず、微細流路11が形成されている面を内 にして、マイクロチップ基板10とマイクロチ ップ基板13を接合する。マイクロチップ基板 接合は、例えば、熱融着、超音波融着、又 レーザ融着によって行うことができる。さ に、紫外線、プラズマ、又はイオンビーム よってマイクロチップ基板の表面を活性化 せてマイクロチップ基板を接合することが きる。
(誘電体膜の形成)
 マイクロチップ基板10とマイクロチップ基 14を接合した後、開口部12に誘電体膜13を形 する。誘電体膜13は、例えば、蒸着、スパッ タリング、CVD、又は塗布によって形成するこ とができ、その成膜方法は特に限定されない 。塗布、スパッタリング、又はCVDによる成膜 方法が、微細流路11の内面、特に微細流路11 垂直壁面に密着性の良好なSiO 2 膜を形成できるため、より好ましい方法であ る。

 開口部12の内面のみならず、マイクロチ プの表面や微細流路11にも誘電体膜を形成し ても良い。開口部12の内面のみに誘電体膜を 成する場合は、内面のみに誘電体膜が形成 れるようにマイクロチップの表面(マイクロ チップ基板10の表面であって、微細流路11が 成された面の反対側の面)をマスクキングし 誘電体膜13を形成する。一方、マイクロチ プの表面にも誘電体膜を形成する場合は、 面にマスキングをせずに誘電体膜を形成す 。

 なお、開口部12の内面に誘電体膜13を形成す ることで、微細流路11への接続部分B(図1中、 線で示す部分B)にも誘電体膜13が形成される が、その接続部分Bを塞いでしまうほど誘電 膜13を成膜することはない。
(塗布による誘電体膜の形成例)
 例えば、塗布によって開口部12に誘電体膜13 を形成する場合、硬化後に誘電体膜となる塗 布溶液をマイクロチップの表面に塗布し、そ の後、塗布溶液を硬化させることで、開口部 12の内面に誘電体膜13を形成することができ 。

 誘電体膜13としてSiO 2 膜を形成する場合、塗布溶液としては、例え ば、アルコキシシランを加水分解、縮重合し て得られるポリシロキサンオリゴマーをアル コール溶媒に溶かしたものを用いる。この場 合、塗布溶液を加熱してアルコール溶媒を揮 発させ、SiO 2 膜(誘電体膜13)を形成する。具体的には、JSR 製のグラスカ7003や、コルコート社製のメチ シリケート51などが挙げられる。

 また、パーヒドロポリシラザンをキシレン ジブチルエーテル溶媒に溶かしたものを塗 溶液に用いる。この場合、塗布溶液を加熱 て溶媒を揮発させると同時に水と反応させ 、SiO 2 膜(誘電体膜13)を形成する。具体的には、AZエ レクトロニックマテリアルズ社製のアクアミ カなどが挙げられる。

 また、アルコキシシリル基含有ポリマーと ルコキシシランを加水分解・共縮合して得 れる無機-有機ハイブリッドポリマーをアル コール溶媒に溶かしたものを塗布溶液に用い る。この場合、加熱してアルコール溶媒を揮 発させ、SiO 2 が主成分となるハイブリッド膜を形成する。 具体的には、JSR社製のグラスカ7506などが挙 られる。
(塗布溶液の塗布方法)
 塗布溶液を開口部12に均一に塗布すること 重要である。塗布溶液の物性(粘度、揮発性) を考慮し、塗布方法を適宜選択する。例えば 、ディッピング、スプレーコーティング、ス ピンコーティング、スリットコーティング、 スクリーン印刷、パッド印刷、インクジェッ ト印刷などが挙げられる。

 そして、塗布溶液を硬化させることで、SiO 2 膜(誘電体膜13)を形成する。例え
ば、熱硬化性の塗布溶液を用いた場合は、熱 処理を施すことにより塗布溶液を硬化させて 、SiO 2 膜(誘電体膜13)を形成する。
(塗布溶液の硬化方法)
 塗布溶液を硬化させてSiO 2 膜(誘電体膜13)を形成する際には、塗布溶液 溶媒を十分に揮発させ、SiO 2 の強固なネットワークを形成できることが望 ましい。塗布溶液の物性(粘度、揮発性、触 )を考慮し、硬化方法を適宜選択する。例え 、常温で塗布溶液を放置して硬化させたり 塗布溶液を60℃~100℃の温度で加熱すること 硬化させたり、塗布溶液を高温高湿下(温度 60℃で湿度90%、温度80℃で湿度90%など)で硬化 せたりする。また、紫外線硬化や、可視光 化などを利用して塗布溶液を硬化させても い。
(スパッタリングによる誘電体膜の形成例)
 また、スパッタリングによって開口部12にSi O 2 膜(誘電体膜13)を形成する場合、例えば、シ クロン製スパッタリング装置(装置名:RAS-1100C )を使用してSiO 2 膜(誘電体膜13)を形成する。シリコンのメタ 成膜室と酸化室に分かれており、基材を貼 付けたドラムを回転させてSiO 2 膜(誘電体膜13)を形成する。例えば、アルゴ ガス流量が250sccm、酸素ガス流量が120sccm、RF 力が4.5kW、成膜レートが4Å/secの条件で、SiO 2 膜(誘電体膜13)を形成する。

 また、スパッタリングによって開口部12にTi O 2 膜(誘電体膜13)を形成する場合、チタンのメ ル成膜室と酸化室に分かれており、基材を り付けたドラムを回転させてTiO 2 膜(誘電体膜13)を形成する。アルゴンガス流 が250sccm、酸素ガス流量が120sccm、RF出力が5.5k W、成膜レートが2.5Å/secの条件で、TiO 2 膜(誘電体膜13)を形成する。
(CVDによる誘電体膜の形成例)
 また、CVDによって開口部12にSiO 2 膜(誘電体膜13)を形成する場合、例えば、サ コ社製CVD装置(装置名:PD-270ST)を使用してSiO 2 膜(誘電体膜13)を形成する。TEOS(Tetra Ethoxy Sil ane)、TMOS(Tetra Mthoxy Silane)など、シリコンを む液体ソースを気化させ、プラズマ空間中 分解、酸化させることでSiO 2 膜(誘電体膜13)を形成する。例えば、TEOS流量 12sccm、酸素ガス流量が400sccm、RF出力が300W、 圧力が50Pa、成膜レートが30Å/secの条件で、Si O 2 膜(誘電体膜13)を形成する。
(微細流路11への誘電体膜の形成)
 また、微細流路11に親水性機能を付与する めに、微細流路11の内面に誘電体膜(SiO 2 膜又は紫外線照射したTiO 2 膜)を形成しても良い。この場合、マイクロ ップ基板10の微細流路11が形成されている面 誘電体膜を形成し、さらに、相手方のマイ ロチップ基板14の接合面に誘電体膜を形成 る。その後、マイクロチップ基板10とマイク ロチップ基板14を接合する。マイクロチップ 板の接合には、紫外線、プラズマ、又はイ ンビームによる表面活性化接合が適してい 。すなわち、紫外線、プラズマ、又はイオ ビームを、マイクロチップ基板10、14の誘電 体膜が形成された面(接合面)に照射し、接合 を活性化させてマイクロチップ基板10、14を 接合する。基板同士を接合した後、開口部12 内面に誘電体膜13を形成する。開口部12の内 面に誘電体膜13を形成することで、上述した 果と同じ効果を奏することができ、さらに 微細流路11の内面が誘電体膜で覆われてい ため、反応の安定性、再現性をより高める とが可能となる。

 また、開口部12の内面と微細流路11の内面全 てに誘電体膜を形成しても良い。それを実現 するために、マイクロプラズマが有効である 。マイクロプラズマは一般に極微細空間での ガス放電であり、RFからVHF、UHF領域の高周波 マイクロ波を使用する。このマイクロプラ マ中に気化した原料を導入し、プラズマで 解させることで微細流路11の内面にSiO 2 又はTiO 2 の薄膜を形成することが可能である。

 SiO 2 膜又は紫外線照射したTiO 2 膜は親水性を有するため、タンパク質などの 低分子や高分子の微細流路11の内面への付着 抑制することが可能となる。マイクロチッ 基板10、14は樹脂で構成されているため、通 常、疎水性であり、タンパク質などの低分子 や高分子は、微細流路11に付着しやすいが、S iO 2 膜又は紫外線照射したTiO 2 膜を形成することで、その付着を抑制するこ とが可能となる。

 また、SiO 2 膜は化学的に安定であるため、親水性機能を 安定的に持続させることができる。樹脂製の マイクロチップ基板10、14の表面をプラズマ 理することで親水化処理することができる 、効果が時間とともに減少してしまい、数 で親水性の機能がなくなる場合が多い。ま 、マイクロチップ基板10、14の表面にオリゴ チレングリコールや2-メタクリロイルオキ エチルホスホリルコリンなどの高分子をデ ッピングなどにより表面修飾し、親水化処 することも可能であるが、表面修飾基の吸 力が弱い、ムラが発生するなどが原因とな て、均一な親水性の表面が得られない場合 ある。

 これに対して、SiO 2 膜を微細流路11が形成されたマイクロチップ 板10と、蓋(カバー)として機能するマイクロ チップ基板14に形成することで、マイクロチ プ基板10とマイクロチップ基板14の樹脂素材 が異なる場合でも、同一の表面状態を形成す ることが可能となる。そのことにより、分析 の正確性、信頼性を増加することが可能とな る。基板の表面状態が異なると、分析する液 体の流速や反応にばらつきが発生してしまい 、分析チップの検出感度が低下してしまう問 題がある。SiO 2 膜を微細流路11の内面に形成することで、ば つきの発生を抑え、分析チップの検出感度 向上させることが可能となる。
(マイクロチップの表面への誘電体膜の形成)
 また、開口部12の内面のみに誘電体膜を形 しても良く、マイクロチップの表面にも誘 体膜を形成しても良い。マイクロチップの 面に誘電体膜を形成することで、マイクロ ップ表面の耐擦傷性が良くなるという効果 ある。なお、図1に示す例では、開口部12だ でなく、マイクロチップの表面にも誘電体 13を形成している。詳しく説明すると、マイ クロチップ基板10の表面であって、微細流路1 1が形成されている面の反対側の面にも誘電 膜13が形成されている。さらに、マイクロチ ップの両面に誘電体膜を形成しても良い。つ まり、図示していないが、マイクロチップ基 板14に対しても、接合面の反対側の面に誘電 膜を形成しても良い。
[第2の実施の形態]
 次に、この発明の第2実施形態に係るマイク ロチップ、及びマイクロチップの製造方法に ついて、図2を参照して説明する。図2は、こ 発明の第2実施形態に係るマイクロチップの 断面図である。第2実施形態では、蓋(カバー) として機能するマイクロチップ基板に貫通孔 を形成した。

 第2実施形態に係るマイクロチップは、マ イクロチップ基板20とマイクロチップ基板22 備えて構成されている。マイクロチップ基 20には溝状の微細流路21が形成されている。 イクロチップ基板20の接合の相手方となる イクロチップ基板22は、平板状の基板である 。第2実施形態では、マイクロチップ基板22に 貫通孔を形成した。微細流路21が形成されて る面を内側にして、マイクロチップ基板20 マイクロチップ基板22を接合する。これによ り、マイクロチップ基板22が微細流路21の蓋( バー)として機能し、マイクロチップ基板22 形成されている貫通孔は開口部23となる。 通孔を、マイクロチップ基板20の微細流路21 位置に合わせてマイクロチップ基板22に形 することで、開口部23を微細流路21に繋げる とができる。この開口部23に、分析装置に けられたチューブやノズルを接続し、その ューブやノズルを介して、ゲル、試料、又 緩衝液などを微細流路21に導入し、又は、微 細流路21から排出する。なお、マイクロチッ 基板20、22が、この発明の「樹脂製基板」の 1例に相当する。

 さらに、開口部23の内面には、第1実施形態 同様に、誘電体膜24(SiO 2 膜又はTiO 2 膜)が形成されている。すなわち、誘電体膜24 は、開口部23の内側面から底面にかけて断絶 れることなく、連続的に形成されている。 して、開口部23の内側面と底面との境界に 、誘電体膜24が埋められた状態で形成されて いる。誘電体膜24の膜厚は、第1実施形態にお ける膜厚と同じである。また、開口部23の内 面に形成されている誘電体膜24aの厚さt 1 と、開口部23の底面に形成されている誘電体 24bの厚さt 2 との比(t 1 /t 2 )が、1/10以上であることが好ましく、1/3以上 あることがより好ましく、1/2以上であるこ が更に好ましい。

 また、マイクロチップ基板20、22の材料は第 1実施形態と同様に樹脂が用いられ、マイク チップ基板20、22の寸法、微細流路21の形状 、第1実施形態と同じである。
(製造方法)
 第1実施形態と同様に、マイクロチップ基板 20、22を接合した後、開口部23に誘電体膜24を 成することで、第2実施形態に係るマイクロ チップを製造する。マイクロチップの接合方 法、誘電体膜の成膜方法は、第1実施形態と じである。また、開口部23のみならず、微細 流路21の内面に誘電体膜を形成しても良く、 イクロチップの表面に誘電体膜を形成して 良い。
(作用及び効果)
 以上の構成を有するマイクロチップによる 、第1実施形態と同様に、開口部23付近(図2 、破線の円で示す部分C)において、マイクロ チップ基板20とマイクロチップ基板22との間 生じていた隙間を誘電体膜24で埋めることが 可能となる。その結果、開口部23付近での試 の漏れなどを防止することが可能となる。
[第3の実施の形態]
 次に、この発明の第3の実施形態に係るマイ クロチップ、及びマイクロチップの製造方法 について、図3を参照して説明する。図3は、 の発明の第3実施形態に係るマイクロチップ の断面図である。第3実施形態では、微細流 が形成されたマイクロチップ基板に貫通孔 形成し、開口部に2層の誘電体膜を形成した
(マイクロチップの構成)
 第3実施形態に係るマイクロチップは、マイ クロチップ基板30とマイクロチップ基板35を えて構成されている。マイクロチップ基板30 には溝状の微細流路31が形成されている。さ に、マイクロチップ基板30には、基板を貫 して形成された貫通孔が形成されている。 の貫通孔は微細流路31に接して形成されてお り、マイクロチップ基板30とマイクロチップ 板35を接合することで開口部32となる。マイ クロチップ基板30の接合の相手方となるマイ ロチップ基板35は、平板状の基板である。 細流路31が形成されている面を内側にして、 マイクロチップ基板30とマイクロチップ基板3 5を接合する。これにより、マイクロチップ 板35が微細流路31の蓋(カバー)として機能し マイクロチップ基板30に形成されている貫通 孔は開口部32となる。マイクロチップ基板30 貫通孔は微細流路31に接して形成されている ため、その貫通孔による開口部32は微細流路3 1に繋がっている。なお、マイクロチップ基 30、35が、この発明の「樹脂製基板」の1例に 相当する。

 さらに、開口部32の内面には第1の誘電体膜3 3が形成され、その第1の誘電体膜33上に第2の 電体膜34が積層されている。第1の誘電体膜3 3と第2の誘電体膜33には互いに異なる材料が いられる。例えば、第1の誘電体膜33にはTiO 2 膜が用いられ、第2の誘電体膜34にはSiO 2 膜が用いられる。第1の誘電体膜33と第2の誘 体膜34は、第1実施形態と同様に、開口部32の 内側面から底面にかけて断絶されることなく 、連続的に形成されている。

 第1の誘電体膜33と第2の誘電体膜34の合計 膜厚は、開口部32の内面が第1の誘電体膜33 第2の誘電体膜34で覆われること、開口部32の 内面への密着性が確保できること、微細流路 31を塞いでしまわないことなどを考慮して決 する。塗布によって2層の誘電体膜を形成す る場合は、塗布溶液の特性、種類に応じて膜 厚を調整する。例えば、第1の誘電体膜33と第 2の誘電体膜の合計の膜厚が、10nm~3μmの範囲 の値であることが好ましく、10nm~2μmの範囲 の値であることがより好ましい。また、ス ッタリングやCVDによって2層の誘電体膜を形 する場合、誘電体膜の内部応力が増加する 向にあるため、合計の膜厚が、10nm~1μmの範 内の値であることが好ましく、50nm~500nmの範 囲内の値であることがより好ましい。

 また、開口部32の内側面に形成された第1の 電体膜33aと第2の誘電体膜34aの合計の膜厚t 1 と、開口部32の底面に形成された第1の誘電体 膜33bと第2の誘電体膜34bの合計の膜厚t 2 との比(t 1 /t 2 )が、1/10以上であることが好ましい。さらに 比(t 1 /t 2 )が1/3以上であることがより好ましく、1/2以 であることが更に好ましい。

 また、マイクロチップ基板30、35の材料は第 1実施形態と同様に樹脂が用いられ、マイク チップ基板30、35の寸法、微細流路31の形状 、第1実施形態と同じである。
(製造方法)
 第1実施形態と同様に、マイクロチップ基板 30、35を接合した後、開口部32に第1の誘電体 33と第2の誘電体膜34を形成することで、第3 施形態に係るマイクロチップを製造する。 体的には、開口部32に第1の誘電体膜33を形成 し、その後、第1の誘電体膜33上に第2の誘電 膜34を形成する。また、マイクロチップの接 合方法、及び誘電体膜の成膜方法は、第1実 形態と同じである。また、開口部32のみなら ず、微細流路31の内面に誘電体膜を形成して 良く、マイクロチップの表面に誘電体膜を 成しても良い。

 なお、開口部32の内面に誘電体膜を形成す ことで、微細流路31への接続部分B(図1中、破 線で示す部分B)にも誘電体膜が形成されるが その接続部分Bを塞いでしまうほど誘電体膜 を成膜することはない。
(作用及び効果)
 以上の構成を有するマイクロチップによる 、第1実施形態と同様に、開口部32付近(図3 、破線の円で示す部分A)において、マイクロ チップ基板30とマイクロチップ基板35との間 生じていた隙間を第1の誘電体膜33と第2の誘 体膜34で埋めることが可能となる。その結 、開口部32付近での試薬の漏れなどを防止す ることが可能となる。

 さらに、マイクロチップの表面にも第1の 誘電体膜33と第2の誘電体膜34を積層すること より、マイクロチップの表面に、反射防止 の機能を持たせることが可能となる。その とにより、第3実施形態に係るマイクロチッ プを用いた分析時において、誘電体膜が形成 されている面側から光を照射して試料を検出 すれば、光の利用効率を高めることが可能と なる。

 なお、上述した第1実施形態から第3実施形 では、一方のマイクロチップ基板に微細流 を形成し、また、一方のマイクロチップ基 に開口部を形成するための貫通孔を形成し いる。この発明においては、2つのマイクロ ップ基板のうち少なくとも1つのマイクロチ ップ基板に微細流路を形成し、さらに、少な くとも1つのマイクロチップ基板に開口部を 成するための貫通孔を形成していれば良い 従って、両方のマイクロチップ基板に微細 路を形成しても良く、また、両方のマイク チップ基板に開口部を形成するための貫通 を形成しても良い。
[実施例]
 次に、具体的な実施例について図4を参照し て説明する。図4は、実施例と比較例に関す 条件を示す表である。まず、実施例に対す 比較例について説明し、その後、実施例に いて説明する。
(比較例)
 比較例では、図7に示す従来技術に係るマイ クロチップを作製して評価を行った。
(マイクロチップ基板)
 射出成形機で透明樹脂材料の環状ポリオレ ィン樹脂(日本ゼオン社製、ゼオノア)を成 し、外形寸法が50mm×50mm×1mmの板状部材に幅50 μm、深さ50μmの複数の微細流路と、内径2mmの 数の貫通孔で構成される流路側マイクロチ プ基板を作製した。この流路側マイクロチ プ基板が、図7に示す微細流路111が形成され たマイクロチップ基板110に相当する。また、 同様に外形寸法が50mm×50mm×1mmのカバー側マイ クロチップ基板を作製した。このカバー側マ イクロチップ基板が、図7に示すマイクロチ プ基板120に相当する。微細流路の内面を親 化処理するため、流路側マイクロチップ基 の微細流路が形成された面とカバー側マイ ロチップ基板の表面にプラズマを照射した

 そして、微細流路を内側にして流路側マイ ロチップ基板とカバー側マイクロチップ基 を合わせ、加熱プレス機にて120℃、1kgf/cm 2 の条件下で1分間保持することで、基板同士 接合した。これにより、内径2mm、深さ1mmの 口部(図7の開口部112に相当する)が形成され 。
(評価)
 比較例のマイクロチップをシリンジポンプ つなぎ、水を0.13MPaで圧送したところ、微細 流路に水を流すことができたが、開口部付近 から水が漏れてしまった。このように水が漏 れてしまうと、試料を正確に混合できない、 電気泳動の際に絶縁破壊してしまうなどの不 具合が生じてしまう。開口部付近から水が漏 れた原因は、開口部付近にわずかな成形ひず みが残留しており、基板の接合時に、開口部 付近において、流路側マイクロチップ基板と カバー側マイクロチップ基板との間に隙間が 生じてしまったためであると考えられる。
(実施例1)
 実施例1では、第1実施形態に係るマイクロ ップの具体例について説明する。
(マイクロチップ基板)
 射出成形機で透明樹脂材料の環状ポリオレ ィン樹脂(日本ゼオン社製、ゼオノア)を成 し、外形寸法が50mm×50mm×1mmの板状部材に幅50 μm、深さ50μmの複数の微細流路と、内径2mmの 数の貫通孔で構成される流路側マイクロチ プ基板を作製した。この流路側マイクロチ プ基板が、上記第1実施形態における微細流 路11が形成されたマイクロチップ基板10に相 する。また、同様に外形寸法が50mm×50mm×1mm カバー側マイクロチップ基板を作製した。 のカバー側マイクロチップ基板が、第1実施 態における蓋(カバー)として機能するマイ ロチップ基板14に相当する。微細流路の内面 を親水化処理するため、流路側マイクロチッ プ基板の微細流路が形成された面とカバー側 マイクロチップ基板の表面にプラズマを照射 した。

 そして、微細流路を内側にして流路側マイ ロチップ基板とカバー側マイクロチップ基 を合わせ、加熱プレス機にて120℃、1kgf/cm 2 の条件下で1分間保持することで、基板同士 接合した。これにより、内径2mm、深さ1mmの 口部(第1実施形態の開口部12に相当する)が形 成された。
(SiO 2 膜の形成)
 実施例1では、誘電体膜としてSiO 2 膜を用い、CVDによってSiO 2 膜を形成した。具体的には、接合されたマイ クロチップに形成された開口部の内面に、CVD 装置(サムコ社製、PD-270ST)を使用してSiO 2 膜を200nm形成した。CVDの原料は、TEOS(ADEKA製) 使用した。内径2mm、深さ1mmの開口部の内面( 側面と底面)に、SiO 2 膜を均一に形成することができた。開口部の 内側面に形成されたSiO 2 膜の厚さt 1 は150nm、底面に形成されたSiO 2 膜の厚さt 2 は200nmであった。この場合比(t 1 /t 2 )は、0.75(=150/200)と1/2以上である。

 また、開口部の内面のみにSiO 2 膜が形成されるように、マイクロチップの表 面をマスキングしてSiO 2 膜を形成しても良く、マスキングせずにマイ クロチップの表面にもSiO 2 膜を形成しても良い。マイクロチップの表面 にSiO 2 膜を形成することで、マイクロチップ表面の 耐擦傷性が良くなるという効果がある。さら に、マスキングのコストを抑えることができ る。実施例1では、開口部(貫通孔)が形成され ている流路側マイクロチップ基板側にSiO 2 膜をマスキングなしで形成した。
(評価)
 実施例1のマイクロチップをシリンジポンプ につなぎ、水を0.13MPaで圧送したところ、微 流路、開口部付近から液体が漏れることな 十分な密封性を示した。流路側マイクロチ プ基板とカバー側マイクロチップ基板を接 した後であって、開口部にSiO 2 膜を形成する前においては、比較例と同様に 、開口部付近において、流路側マイクロチッ プ基板とカバー側マイクロチップ基板との間 に隙間が生じていたが、SiO 2 膜を開口部の内面に形成することで、その隙 間を埋めることができたと考えられる。

 また、実施例1のマイクロチップの断面をミ クロトームで作成し、電子顕微鏡で断面観察 を行ったところ、開口部の内面にSiO 2 膜が断絶することなく均一に形成されている ことが分かった。これにより、SiO 2 膜が開口部付近の液体の漏れを防ぐ役割をし ていることが分かった。

 さらに、開口部の内面が親水性のSiO 2 膜で覆われているため、水や試薬を圧送しな くても毛細管現象によって、開口部や微細流 路にスムースに導入できるという効果がある ことも分かった。
(実施例2)
 実施例2では、第2実施形態に係るマイクロ ップの具体例について説明する。
(マイクロチップ基板)
 射出成形機で透明樹脂材料の環状ポリオレ ィン樹脂(日本ゼオン社製、ゼオノア)を成 し、外形寸法が50mm×50mm×1mmの板状部材に幅50 μm、深さ50μm、の複数の微細流路で構成され 流路側マイクロチップ基板を作製した。こ 流路側マイクロチップ基板が、上記第2実施 形態における微細流路21が形成されたマイク チップ基板20に相当する。また、同様に外 寸法が50mm×50mm×1mmの板状部材に、内径2mmの 数の貫通孔が形成されたカバー側マイクロ ップ基板を作製した。このカバー側マイク チップ基板が、第2実施形態における蓋(カバ ー)として機能するマイクロチップ基板22に相 当する。微細流路の内面を親水化処理するた め、流路側マイクロチップ基板の微細流路が 形成されている面とカバー側マイクロチップ 基板の表面にプラズマを照射した。

 そして、微細流路を内側にして流路側マイ ロチップ基板とカバー側マイクロチップ基 を合わせ、加熱プレス機にて120℃、1kgf/cm 2 の条件下で1分間保持することで、基板同士 接合した。これにより、内径2mm、深さ1mmの 口部(第2実施形態の開口部23に相当する)が形 成された。
(SiO 2 膜の形成)
 実施例2では、誘電体膜としてSiO 2 膜を用い、CVDによってSiO 2 膜を形成した。具体的には、接合されたマイ クロチップに形成された開口部の内面に、CVD 装置(サムコ社製、PD-270ST)を使用してSiO 2 膜を200nm形成した。CVDの原料は、TEOS(ADEKA製) 使用した。内径2mm、深さ1mmの開口部の内面( 側面と底面)に、SiO 2 膜を均一に形成することができた。開口部の 内側面に形成されたSiO 2 膜の厚さt 1 は150nm、底面に形成されたSiO 2 膜の厚さt 2 は200nmであった。この場合比(t 1 /t 2 )は、0.75(=150/200)と1/2以上である。

 また、開口部の内面のみにSiO 2 膜が形成されるように、マイクロチップの表 面をマスキングしてSiO 2 膜を形成しても良く、マスキングせずにマイ クロチップの表面にもSiO 2 膜を形成しても良い。マイクロチップの表面 にSiO 2 膜を形成することで、マイクロチップ表面の 耐擦傷性が良くなるという効果がある。さら に、マスキングのコストを抑えることができ る。実施例2では、開口部(貫通孔)が形成され ているカバー側マイクロチップ基板側にSiO 2 膜をマスキングなしで形成した。
(評価)
 実施例2のマイクロチップをシリンジポンプ につなぎ、水を0.13MPaで圧送したところ、微 流路、開口部付近から液体が漏れることな 十分な密封性を示した。流路側マイクロチ プ基板とカバー側マイクロチップ基板を接 した後であって、開口部にSiO 2 膜を形成する前においては、比較例と同様に 、開口部付近において、流路側マイクロチッ プ基板とカバー側マイクロチップ基板との間 に隙間が生じていたが、SiO 2 膜を開口部の内面に形成することで、その隙 間を埋めることができたと考えられる。

 また、実施例2のマイクロチップの断面をミ クロトームで作成し、電子顕微鏡で断面観察 を行ったところ、開口部の内面にSiO 2 膜が断絶することなく均一に形成されている ことが分かった。これにより、SiO 2 膜が開口部付近の液体の漏れを防ぐ役割をし ていることが分かった。

 さらに、開口部の内面が親水性のSiO 2 膜で覆われているため、水や試薬を圧送しな くても毛細管現象によって、開口部や微細流 路にスムースに導入できるという効果がある ことも分かった。
(実施例3)
 実施例3では、第1実施形態に係るマイクロ ップの具体例について説明する。
(マイクロチップ基板)
 射出成形機で透明樹脂材料の環状ポリオレ ィン樹脂(日本ゼオン社製、ゼオノア)を成 し、外形寸法が50mm×50mm×1mmの板状部材に幅50 μm、深さ50μmの複数の微細流路と、内径2mmの 数の貫通孔で構成される流路側マイクロチ プ基板を作製した。この流路側マイクロチ プ基板が、上記第1実施形態における微細流 路11が形成されたマイクロチップ基板10に相 する。また、同様に外形寸法が50mm×50mm×1mm カバー側マイクロチップ基板を作製した。 のカバー側マイクロチップ基板が、第1実施 態における蓋(カバー)として機能するマイ ロチップ基板14に相当する。微細流路の内面 を親水化処理するため、流路側マイクロチッ プ基板の微細流路が形成された面とカバー側 マイクロチップ基板の表面にプラズマを照射 した。

 そして、微細流路を内側にして流路側マイ ロチップ基板とカバー側マイクロチップ基 を合わせ、加熱プレス機にて120℃、1kgf/cm 2 の条件下で1分間保持することで、基板同士 接合した。これにより、内径2mm、深さ1mmの 口部(第1実施形態の開口部12に相当する)が形 成された。
(SiO 2 膜の形成)
 実施例3では、誘電体膜としてSiO 2 膜を用い、スパッタリングによってSiO 2 膜を形成した。具体的には、接合されたマイ クロチップに形成された開口部の内面に、ス パッタリング装置(シンクロン社製、RAS-1100C) 使用してSiO 2 膜を200nm形成した。スパッタリング装置を使 することで、内径2mm、深さ1mmの開口部の内 (内側面と底面)に、SiO 2 膜を均一に形成することができた。開口部の 内側面に形成されたSiO 2 膜の厚さt 1 は150nm、底面に形成されたSiO 2 膜の厚さt 2 は200nmであった。この場合比(t 1 /t 2 )は、0.75(=150/200)と1/2以上である。

 また、開口部の内面のみにSiO 2 膜が形成されるように、マイクロチップの表 面をマスキングしてSiO 2 膜を形成しても良く、マスキングせずにマイ クロチップの表面にもSiO 2 膜を形成しても良い。マイクロチップの表面 にSiO 2 膜を形成することで、マイクロチップ表面の 耐擦傷性が良くなるという効果がある。さら に、マスキングのコストを抑えることができ る。実施例3では、開口部(貫通孔)が形成され ている流路側マイクロチップ基板側にSiO 2 膜をマスキングなしで形成した。
(評価)
 実施例3のマイクロチップをシリンジポンプ につなぎ、水を0.13MPaで圧送したところ、微 流路、開口部付近から液体が漏れることな 十分な密封性を示した。流路側マイクロチ プ基板とカバー側マイクロチップ基板を接 した後であって、開口部にSiO 2 膜を形成する前においては、比較例と同様に 、開口部付近において、流路側マイクロチッ プ基板とカバー側マイクロチップ基板との間 に隙間が生じていたが、SiO 2 膜を開口部の内面に形成することで、その隙 間を埋めることができたと考えられる。

 また、実施例3のマイクロチップの断面をミ クロトームで作成し、電子顕微鏡で断面観察 を行ったところ、開口部の内面にSiO 2 膜が断絶することなく均一に形成されている ことが分かった。これにより、SiO 2 膜が開口部付近の液体の漏れを防ぐ役割をし ていることが分かった。

 さらに、開口部の内面が親水性のSiO 2 膜で覆われているため、水や試薬を圧送しな くても毛細管現象によって、開口部や微細流 路にスムースに導入できるという効果がある ことも分かった。
(実施例4)
 実施例4では、第1実施形態に係るマイクロ ップの具体例について説明する。
(マイクロチップ基板)
 射出成形機で透明樹脂材料の環状ポリオレ ィン樹脂(日本ゼオン社製、ゼオノア)を成 し、外形寸法が50mm×50mm×1mmの板状部材に幅50 μm、深さ50μmの複数の微細流路と、内径2mmの 数の貫通孔で構成される流路側マイクロチ プ基板を作製した。この流路側マイクロチ プ基板が、上記第1実施形態における微細流 路11が形成されたマイクロチップ基板10に相 する。また、同様に外形寸法が50mm×50mm×1mm カバー側マイクロチップ基板を作製した。 のカバー側マイクロチップ基板が、第1実施 態における蓋(カバー)として機能するマイ ロチップ基板14に相当する。微細流路の内面 を親水化処理するため、流路側マイクロチッ プ基板の微細流路が形成された面とカバー側 マイクロチップ基板の表面にプラズマを照射 した。

 そして、微細流路を内側にして流路側マイ ロチップ基板とカバー側マイクロチップ基 を合わせ、加熱プレス機にて120℃、1kgf/cm 2 の条件下で1分間保持することで、基板同士 接合した。これにより、内径2mm、深さ1mmの 口部(第1実施形態の開口部12に相当する)が形 成された。
(SiO 2 膜の形成)
 実施例4では、誘電体膜としてSiO 2 膜を用い、塗布によってSiO 2 膜を形成した。具体的には、接合されたマイ クロチップに形成された開口部の内面に、ス プレーコーター(ウシオ電機社製、USC-200ST)を 用し、SiO 2 塗布膜(AZエレクトロニックマテリアルズ社製 、アクアミカ)を1μmの厚さになるように調整 て塗布した。そして、100℃のオーブンに1時 間投入し、仮硬化させた。この時点では、十 分に水と反応できていないため、有機成分を 微量ながら含んでいた。そこで、さらに80℃ 90%の高温高湿槽に3時間投入することでSiO 2 膜を形成した。スプレーコーターを使用する ことで、内径2mm、深さ1mmの開口部の内面(内 面と底面)に、SiO 2 膜を均一に形成することができた。開口部の 内側面に形成されたSiO 2 膜の厚さt 1 は0.55μm、底面に形成されたSiO 2 膜の厚さt 2 は1μmであった。この場合比(t 1 /t 2 )は、0.55(=0.55/1)と1/2以上である。

 また、開口部の内面のみにSiO 2 膜が形成されるように、マイクロチップの表 面をマスキングしてSiO 2 膜を形成しても良く、マスキングせずにマイ クロチップの表面にもSiO 2 膜を形成しても良い。マイクロチップの表面 にSiO 2 膜を形成することで、マイクロチップ表面の 耐擦傷性が良くなるという効果がある。さら に、マスキングのコストを抑えることができ る。実施例4では、開口部(貫通孔)が形成され ている流路側マイクロチップ基板側にSiO 2 膜をマスキングなしで形成した。
(評価)
 実施例4のマイクロチップをシリンジポンプ につなぎ、水を0.13MPaで圧送したところ、微 流路、開口部付近から液体が漏れることな 十分な密封性を示した。流路側マイクロチ プ基板とカバー側マイクロチップ基板を接 した後であって、開口部にSiO 2 膜を形成する前においては、比較例と同様に 、開口部付近において、流路側マイクロチッ プ基板とカバー側マイクロチップ基板との間 に隙間が生じていたが、SiO 2 膜を開口部の内面に形成することで、その隙 間を埋めることができたと考えられる。

 また、実施例4のマイクロチップの断面をミ クロトームで作成し、電子顕微鏡で断面観察 を行ったところ、開口部の内面にSiO 2 膜が断絶することなく均一に形成されている ことが分かった。これにより、SiO 2 膜が開口部付近の液体の漏れを防ぐ役割をし ていることが分かった。

 さらに、開口部の内面が親水性のSiO 2 膜で覆われているため、水や試薬を圧送しな くても毛細管現象によって、開口部や微細流 路にスムースに導入できるという効果がある ことも分かった。
(実施例5)
 実施例5では、第1実施形態に係るマイクロ ップの具体例について説明する。
(マイクロチップ基板)
 射出成形機で透明樹脂材料の環状ポリオレ ィン樹脂(日本ゼオン社製、ゼオノア)を成 し、外形寸法が50mm×50mm×1mmの板状部材に幅50 μm、深さ50μmの複数の微細流路と、内径2mmの 数の貫通孔で構成される流路側マイクロチ プ基板を作製した。この流路側マイクロチ プ基板が、上記第1実施形態における微細流 路11が形成されたマイクロチップ基板10に相 する。また、同様に外形寸法が50mm×50mm×1mm カバー側マイクロチップ基板を作製した。 のカバー側マイクロチップ基板が、第1実施 態における蓋(カバー)として機能するマイ ロチップ基板14に相当する。微細流路の内面 を親水化処理するため、流路側マイクロチッ プ基板の微細流路が形成された面とカバー側 マイクロチップ基板の表面にプラズマを照射 した。

 そして、微細流路を内側にして流路側マイ ロチップ基板とカバー側マイクロチップ基 を合わせ、加熱プレス機にて120℃、1kgf/cm 2 の条件下で1分間保持することで、基板同士 接合した。これにより、内径2mm、深さ1mmの 口部(第1実施形態の開口部12に相当する)が形 成された。
(TiO 2 膜の形成)
 実施例5では、誘電体膜としてTiO 2 膜を用い、スパッタリングによってTiO 2 膜を形成した。具体的には、接合されたマイ クロチップに形成された開口部の内面に、ス パッタリング装置(シンクロン社製、RAS-1100C) 使用してTiO 2 膜を200nm形成した。スパッタリング装置を使 することで、内径2mm、深さ1mmの開口部の内 (内側面と底面)に、TiO 2 膜を均一に形成することができた。開口部の 内側面に形成されたTiO 2 膜の厚さt 1 は150nm、底面に形成されたTiO 2 膜の厚さt 2 は200nmであった。この場合比(t 1 /t 2 )は、0.75(=150/200)と1/2以上である。

 また、開口部の内面のみにTiO 2 膜が形成されるように、マイクロチップの表 面をマスキングしてTiO 2 膜を形成しても良く、マスキングせずにマイ クロチップの表面にもTiO 2 膜を形成しても良い。マイクロチップの表面 にTiO 2 膜を形成することで、マイクロチップ表面の 耐擦傷性が良くなるという効果がある。さら に、マスキングのコストを抑えることができ る。実施例5では、開口部(貫通孔)が形成され ている流路側マイクロチップ基板側にTiO 2 膜をマスキングなしで形成した。
(評価)
 実施例5のマイクロチップをシリンジポンプ につなぎ、水を0.13MPaで圧送したところ、微 流路、開口部付近から液体が漏れることな 十分な密封性を示した。流路側マイクロチ プ基板とカバー側マイクロチップ基板を接 した後であって、開口部にTiO 2 膜を形成する前においては、比較例と同様に 、開口部付近において、流路側マイクロチッ プ基板とカバー側マイクロチップ基板との間 に隙間が生じていたが、TiO 2 膜を開口部の内面に形成することで、その隙 間を埋めることができたと考えられる。

 また、実施例5のマイクロチップの断面をミ クロトームで作成し、電子顕微鏡で断面観察 を行ったところ、開口部の内面にTiO 2 膜が断絶することなく均一に形成されている ことが分かった。これにより、TiO 2 膜が開口部付近の液体の漏れを防ぐ役割をし ていることが分かった。

 また、TiO 2 膜は紫外線を照射することで親水性を発揮す る。そこで、TiO 2 膜が形成されたマイクロチップに紫外線を1mW /cm 2 の強度で1分間照射した後、水を導入する実 を行った。その結果、TiO 2 膜が親水性を有するため、水を圧水しなくて も毛細管現象によって、開口部や微細流路に スムースに導入できるという効果があること も分かった。
(実施例6)
 実施例6では、第3実施形態に係るマイクロ ップの具体例について説明する。
(マイクロチップ基板)
 射出成形機で透明樹脂材料の環状ポリオレ ィン樹脂(日本ゼオン社製、ゼオノア)を成 し、外形寸法が50mm×50mm×1mmの板状部材に幅50 μm、深さ50μmの複数の微細流路と、内径2mmの 数の貫通孔で構成される流路側マイクロチ プ基板を作製した。この流路側マイクロチ プ基板が、上記第3実施形態における微細流 路31が形成されたマイクロチップ基板30に相 する。また、同様に外形寸法が50mm×50mm×1mm カバー側マイクロチップ基板を作製した。 のカバー側マイクロチップ基板が、第1実施 態における蓋(カバー)として機能するマイ ロチップ基板35に相当する。微細流路の内面 を親水化処理するため、流路側マイクロチッ プ基板の微細流路が形成された面とカバー側 マイクロチップ基板の表面にプラズマを照射 した。

 そして、微細流路を内側にして流路側マイ ロチップ基板とカバー側マイクロチップ基 を合わせ、加熱プレス機にて120℃、1kgf/cm 2 の条件下で1分間保持することで、基板同士 接合した。これにより、内径2mm、深さ1mmの 口部(第3実施形態の開口部32に相当する)が形 成された。
(TiO 2 膜とSiO 2 膜の形成)
 実施例6では、誘電体膜としてTiO 2 膜とSiO 2 膜を用い、スパッタリングによってTiO 2 膜とSiO 2 膜を形成した。具体的には、接合されたマイ クロチップに形成された開口部の内面に、ス パッタリング装置(シンクロン社製、RAS-1100C) 使用して、まずTiO 2 膜を15nm形成し、そのTiO 2 膜の上に、SiO 2 膜を120nm形成した。スパッタリング装置を使 することで、内径2mm、深さ1mmの開口部の内 (内側面と底面)に、TiO 2 膜とSiO 2 膜を均一に形成することができた。開口部の 内側面に形成されたTiO 2 膜とSiO 2 膜の合計の膜厚t 1 は100nm、底面に形成されたTiO 2 膜とSiO 2 膜の合計の膜厚t 2 は135nmであった。この場合比(t 1 /t 2 )は、0.74(=100/135)と1/2以上である。

 また、開口部の内面のみにTiO 2 膜とSiO 2 膜が形成されるように、マイクロチップの表 面をマスキングしてTiO 2 膜とSiO 2 膜を形成しても良く、マスキングせずにマイ クロチップの表面にもTiO 2 膜とSiO 2 膜を形成しても良い。マイクロチップの表面 にTiO 2 膜とSiO 2 膜を形成することで、マイクロチップ表面の 耐擦傷性が良くなるという効果がある。さら に、マスキングのコストを抑えることができ る。実施例6では、開口部(貫通孔)が形成され ている流路側マイクロチップ基板側にTiO 2 膜とSiO 2 膜をマスキングなしで形成した。
(評価)
 実施例6のマイクロチップをシリンジポンプ につなぎ、水を0.13MPaで圧送したところ、微 流路、開口部付近から液体が漏れることな 十分な密封性を示した。流路側マイクロチ プ基板とカバー側マイクロチップ基板を接 した後であって、開口部にTiO 2 膜とSiO 2 膜を形成する前においては、比較例と同様に 、開口部付近において、流路側マイクロチッ プ基板とカバー側マイクロチップ基板との間 に隙間が生じていたが、TiO 2 膜とSiO 2 膜を開口部の内面に形成することで、その隙 間を埋めることができたと考えられる。

 また、実施例6のマイクロチップの断面をミ クロトームで作成し、電子顕微鏡で断面観察 を行ったところ、開口部の内面にTiO 2 膜とSiO 2 膜が断絶することなく均一に形成されている ことが分かった。これにより、TiO 2 膜とSiO 2 膜が開口部付近の液体の漏れを防ぐ役割をし ていることが分かった。

 さらに、開口部の最表面が親水性のあるSiO 2 膜で覆われているため、水や試薬を圧送しな くても毛細管現象によって、開口部や微細流 路にスムースに導入できるという効果がある ことも分かった。

 また、マイクロチップの表面(流路側マイク ロチップの表面)の反射率を測定した。その 定結果を図5に示す。図5は、実施例6に係る イクロチップの反射率を示すグラフである 横軸が波長、縦軸が反射率を示している。 5のグラフに示すように、波長450nm~750nmにか て、マイクロチップの表面は、反射防止膜 機能を果たしていることが分かった。この イクロチップを用いた分析時において、TiO 2 膜とSiO 2 膜が形成されている面側から光を照射して試 料を検出すれば、光の利用効率を高めること ができる。このように、誘電体膜(TiO 2 膜とSiO 2 膜)の膜厚を調整したり、屈折率の異なる材 を積層したりすることで、液体の漏れ防止 みならず、マイクロチップ表面の傷防止と 射防止の効果があることが分かった。

 以上のように、実施例1から実施例6による 、マイクロチップの開口部に誘電体膜を形 することで、開口部付近の液体の漏れを防 することが可能となる。なお、実施例1から 施例6に示したマイクロチップ基板の材料や SiO 2 膜及びTiO 2 膜の成膜方法などは1例であり、この発明が れらに限定されるものではない。