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Patent Searching and Data


Title:
PHARMACEUTICAL PREPARATION
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/078445
Kind Code:
A1
Abstract:
A pharmaceutical preparation capable of inhibiting homocysteic acid from binding to an NMDA receptor, suppressing an increase in homocysteic acid concentration in cells, and preventing, improving or treating neurodegenerative diseases, heart diseases, stress syndrome, anxiety syndrome and osteoporosis is provided. The pharmaceutical preparation of the invention comprises, as an active ingredient, an anti-homocysteic acid antibody or an antigen-binding fragment thereof. Also, the pharmaceutical preparation further contains a complex in which homocysteic acid, a pharmaceutically acceptable salt thereof or homocysteic acid derivative is bound to a given carrier.

Inventors:
HASEGAWA TORU (JP)
MIZUNO KOHJI (JP)
MATSUYAMA NAOTO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/073000
Publication Date:
June 25, 2009
Filing Date:
December 17, 2008
Export Citation:
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Assignee:
ALFRESA PHARMA CORP (JP)
HASEGAWA TORU (JP)
MIZUNO KOHJI (JP)
MATSUYAMA NAOTO (JP)
International Classes:
A61K39/395; A61K47/48; A61P9/02; A61P19/10; A61P25/18; A61P25/22; A61P25/28; A61P43/00
Domestic Patent References:
WO2007116458A12007-10-18
Foreign References:
JP2005082523A2005-03-31
JP2002535289A2002-10-22
Other References:
"Characterization of monoclonal antibody to L-homocysteic acid and its immunohistochemistry in rat hippocampus", JOURNAL OF HUAZHONG UNIVERSITY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY, MEDICAL SCIENCES, vol. 25, no. 1, 2005, pages 1 - 4
DATABASE CAPLUS LIU, CHANGJIN ET AL: "Liangpin, Preparation and characterization of monoclonal antibody to L- homocysteic acid", Database accession no. 2001:894214
Attorney, Agent or Firm:
MATSUO, Kenichiro (Shinkumi Akasaka Bldg.10-17, Akasaka 1-chome,Chuo-ku, Fukuoka-shi, Fukuoka 42, JP)
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Claims:
 抗ホモシステイン酸抗体またはその抗原結合フラグメントを有効成分として含有する医薬品。
 前記抗ホモシステイン酸抗体が、ポリクローナル抗体であることを特徴とする請求項1に記載の医薬品。
 前記抗ホモシステイン酸抗体が、モノクローナル抗体であることを特徴とする請求項1に記載の医薬品。
 前記抗ホモシステイン酸抗体が、ヒト抗体、ヒト化抗体、部分的ヒト抗体、キメラ抗体または組換え抗体であることを特徴とする請求項1に記載の医薬品。
 所定の担体にホモシステイン酸、又は薬学的に許容しうる範囲のホモシステイン酸塩若しくはホモシステイン酸誘導体を結合した複合体を含有する医薬品。
 前記所定の担体は、アルブミン、KLH(スカシ貝ヘモシアニン:keyhole limpet hemocyanin)、組換えコレラトキシンBサブユニット(recombinant cholera toxin B subunit)、組換えシュードモナスエキソプロテインA(recombinant pseudomonas exoprotein A)、ポリスチレン、多糖から選ばれる少なくともいずれか1つであり、前記ホモシステイン酸又はホモシステイン酸誘導体は、架橋剤を介して結合したことを特徴とする請求項5に記載の医薬品。
Description:
医薬品

 本発明は、医薬品に関し、具体的には抗 モシステイン酸抗体及び/または同抗ホモシ ステイン酸抗体の抗原結合部位を有するフラ グメントを含有する医薬品に関する。

 従来より、アルツハイマー病やパーキン ン病等の神経変性疾患は、病理組織学的所 として、大脳皮質の老人斑や神経原繊維変 といった異常構造物が広範に認められるこ が知られている。

 特に、老人斑の構成成分中には、アミロ ドβタンパク(Aβ)が、健常者に比して多量に 凝集し沈着しており、この沈着したアミロイ ドβタンパクが神経細胞死を誘発することで 前述の神経変性疾患を発症させるものと考 られている。

 このアミロイドβタンパクは、複数の分 種が知られており、中でも、神経変性疾患 罹患した患者の神経細胞には、アミロイドβ タンパクの分子種のうち不溶性を示すAβ1-42 多く存在することが知られている。

 一方、種々の研究結果から、このアミロ ドβタンパクの沈着に係る機序が明らかに りつつあり、神経細胞の膜タンパクとして 在するグルタミン酸型NMDA(N-メチル-D-アスパ ギン酸)受容体(以下、「NMDA受容体」という) の活性化が大きく関与していることが示唆さ れている。

 具体的に説明すれば、NMDA受容体に所定の リガンドが結合して強く活性化されると、ア ミロイドβタンパクの前駆体であるアミロイ 前駆体タンパク(APP)の細胞内への取り込み 促進され、プロテアーゼの一種であるセク ターゼの作用によりスプライシングを受け 不溶性のAβ1-42が多く発生する。

 そして、このAβ1-42が凝集して核となり、 さらに可溶性のアミロイドβタンパクを取り みながら成長することで沈着を起こすもの 考えられている。

 ホモシステイン酸がNMDA受容体のリガンド であることはすでに知られているが、近年、 本発明者らの鋭意研究により、ホモシステイ ン酸が神経変性疾患を引き起こす可能性のあ ることをインビトロの実験で推定した。

 一方、神経変性疾患の治療薬として、NMDA 受容体にアンタゴニストとして作用するメマ ンチンが提供されており、神経変性疾患の予 防や改善、治療を行うようにしている(例え 、特許文献1参照。)。

 このメマンチンによれば、NMDA受容体が活性 化するのを抑制し、細胞内へのアミロイド前 駆体タンパクの取り込み量を減少させること で、神経変性疾患の予防や改善、治療を行う ことができるとしている。

特表2007-505152号公報

 しかしながら、上記従来のメマンチンを 用した神経変性疾患の予防や改善、治療で 、記憶の減退や判断能力の低下を遅らせる 果が確認されるものの、患者の6~7%に、めま いや頭痛などの副作用が生じてしまうという 報告がなされており、併せて、眠気や痙攣な どの副作用が生じるおそれもあった。

 しかも、神経変性疾患に罹患した患者に く見られ、NMDA受容体のリガンドとなるホモ システイン酸は、各種細胞の酸化ストレスを 増大させ、機能障害を誘発して細胞死を起こ したり、精神的な不安症状を誘発する。

 それゆえ、神経変性疾患に罹患した患者 、心臓病やストレス症候群、不安症候群、 粗鬆症を併発する場合が多いが、メマンチ はこれらの合併症の改善効果については報 されていない。

 本発明では、ホモシステイン酸が神経変 疾患の原因であることを初めて直接証明す ことにより、同疾患や、心臓病、ストレス 候群、不安症候群、骨粗鬆症の予防や改善 治療を行うことのできる医薬品を提供する とに成功した。

 上記従来の課題を解決するために、本発 では、抗ホモシステイン酸抗体またはその 原結合フラグメントを有効成分として含有 ることとした。

 また、本発明は以下の点にも特徴を有する
(1)前記抗ホモシステイン酸抗体が、ポリクロ ーナル抗体であること。
(2)前記抗ホモシステイン酸抗体が、モノクロ ーナル抗体であること。
(3)前記抗ホモシステイン酸抗体が、ヒト抗体 、ヒト化抗体、部分的ヒト抗体、キメラ抗体 または組換え抗体であること。

 また、本発明では、所定の担体にホモシ テイン酸、又は薬学的に許容しうる範囲の モシステイン酸塩若しくはホモシステイン 誘導体を結合した複合体を含有することと た。

 また、前記所定の担体は、アルブミン、K LH(スカシ貝ヘモシアニン:keyhole limpet hemocyani n)、組換えコレラトキシンBサブユニット(recom binant cholera toxin B subunit)、組換えシュード ナスエキソプロテインA(recombinant pseudomonas  exoprotein A)、ポリスチレン、多糖から選ばれ 少なくともいずれか1つであり、前記ホモシ ステイン酸又はホモシステイン酸誘導体は、 架橋剤を介して結合したことにも特徴を有す る。

 請求項1に記載の発明では、抗ホモシステ イン酸抗体またはその抗原結合フラグメント を有効成分として含有することとしたため、 抗ホモシステイン酸抗体やその抗原結合フラ グメントがホモシステイン酸に結合し、ホモ システイン酸がNMDA受容体に結合するのを阻 することができる。

 また、免疫系にてホモシステイン酸が貪 されるのを促し、細胞内のホモシステイン 濃度を低下させることができて、細胞内に 剰量のホモシステイン酸が生成されたこと 由来する神経変性疾患や、心臓病、ストレ 症候群、不安症候群、骨粗鬆症の予防や改 、治療が可能な医薬品を提供することがで る。

 また、請求項2に記載の発明では、前記抗 ホモシステイン酸抗体が、ポリクローナル抗 体であることとしたため、容易かつ安価にホ モシステイン酸がNMDA受容体に結合するのを 害すると共に、細胞内のホモシステイン酸 度の上昇を抑制し、しかも、神経変性疾患 、心臓病、ストレス症候群、不安症候群、 粗鬆症の予防や改善、治療を行うことので る医薬品を提供することができる。

 また、請求項3に記載の発明では、前記抗 ホモシステイン酸抗体が、モノクローナル抗 体であることとしたため、効率よくホモシス テイン酸と結合し、力価の高い前述の医薬品 を提供することができる。

 請求項4に記載の発明では、前記抗ホモシ ステイン酸抗体が、ヒト抗体、ヒト化抗体、 部分的ヒト抗体、キメラ抗体または組換え抗 体であることとしたため、体内での本医薬品 に対する免疫反応を抑制できる医薬品を提供 することができる。

 請求項5に記載の発明では、所定の担体に ホモシステイン酸、又は薬学的に許容しうる 範囲のホモシステイン酸塩若しくはホモシス テイン酸誘導体を結合した複合体を含有する こととしたため、患者の体内において抗ホモ システイン酸抗体を発現させることができ、 ホモシステイン酸がNMDA受容体に結合するの 阻害すると共に、細胞内のホモシステイン 濃度の上昇を抑制し、しかも、神経変性疾 や、心臓病、ストレス症候群、不安症候群 骨粗鬆症の予防や改善、治療を行うことの きる医薬品を提供することができる。

 請求項6に記載の発明では、前記所定の担 体は、アルブミン、KLH(スカシ貝ヘモシアニ :keyhole limpet hemocyanin)、組換えコレラトキシ ンBサブユニット(recombinant cholera toxin B subun it)、組換えシュードモナスエキソプロテイン A(recombinant pseudomonas exoprotein A)、ポリスチレ ン、多糖から選ばれる少なくともいずれか1 であり、前記ホモシステイン酸又はホモシ テイン酸誘導体は、架橋剤を介して結合し ため、レセプターに結合したホモシステイ 酸への反応力を向上させることができ、ホ システイン酸がNMDA受容体に結合するのを阻 すると共に、細胞内のホモシステイン酸濃 の上昇を抑制し、しかも、神経変性疾患や 心臓病、ストレス症候群、不安症候群、骨 鬆症の予防や改善、治療をさらに効果的に うことのできる医薬品を提供することがで る。

本実施形態に係る医薬品を投与してい いマウスと投与したマウスとの海馬近傍の 薄切片を示した説明図である。 本実施形態に係る所定の担体にホモシ テイン酸を結合した複合体を含有する医薬 の合成過程を示した説明図である。

符号の説明

 CA1 海馬CA1部位

 本実施形態に係る医薬品は、その一例と て、抗ホモシステイン酸抗体及び/またはそ の抗原結合フラグメントを有効成分として含 有するものが挙げられる。

 すなわち、抗ホモシステイン酸抗体及び/ またはその抗原結合フラグメントが、脳内の ホモシステイン酸に特異的に結合することに より、ホモシステイン酸がNMDA受容体へ結合 るのを阻害すると共に、細胞外のホモシス イン酸濃度の上昇を抑制し、しかも、神経 性疾患や、心臓病、ストレス症候群、不安 候群、骨粗鬆症の予防や改善、治療を行う とのできる医薬品を提供するものである。

 またここで、抗ホモシステイン酸抗体は ポリクローナル抗体であっても良く、また モノクローナル抗体であっても良い。

 抗ホモシステイン酸抗体をポリクローナ 抗体とした場合には、ホモシステイン酸を 々な角度で捕捉する種々の抗体を含有して るため、ホモシステイン酸がNMDA受容体に結 合するのを阻害したり、細胞内のホモシステ イン酸濃度の上昇を抑制する作用を効果的に 発現させることができる。

 また、抗ホモシステイン酸抗体をモノク ーナル抗体とした場合には、ホモシステイ 酸に対する特異性を向上させることができ ホモシステイン酸に類似する物質に結合す ことで生起される副作用を可及的抑制する とができる。

 また、医薬品には、抗ホモシステイン酸 体の抗原結合フラグメントを含有するよう しても良い。

 この抗原結合フラグメントは、具体的に 抗ホモシステイン酸抗体のFab断片(Fab fragmen t)や、F(ab')2断片(F(ab')2 fragment)とすることが きる。

 このように、本実施形態に係る医薬品に 原結合フラグメントを含有させることで、 モシステイン酸に同抗原結合フラグメント 結合させて、ホモシステイン酸をNMDA受容体 に結合不可能な状態とし、ホモシステイン酸 による活性化を抑制することができる。

 また、本実施形態に係る医薬品では、前 抗ホモシステイン酸抗体が、ヒト抗体、ヒ 化抗体、部分的ヒト抗体、キメラ抗体また 組換え抗体であることとしても良い。

 ここで、ヒト抗体とは、イムノグロブリ を構成するH鎖の可変領域及びH鎖の定常領 並びにL鎖の可変領域及びL鎖の定常領域を含 む全ての領域がヒトイムノグロブリンをコー ドする遺伝子に由来するイムノグロブリンの ことをいう。

 また、ヒト化抗体とは、ヒト以外の動物 抗体を、遺伝子工学や化学的な修飾によっ 部分的に改変し、ヒト抗体と同一または抗 性の問題が解決される程度に類似としたイ ノグロブリンのことをいう。

 また、部分的ヒト抗体とは、ヒト以外の 物型抗体において、抗原性の問題が生じる 位をヒト型の抗体に由来する部位に置き換 たイムノグロブリンのことをいう。

 また、キメラ抗体とは、同抗体をコード る遺伝子が、ヒトに限らず複数種の動物の 体遺伝子を組みかえて得られた遺伝子であ て、同遺伝子により発現したイムノグロブ ンのことをいう。

 また、組換え抗体とは、同抗体をコード る遺伝子が人為的及び/または突然変異によ り組み換えられた遺伝子であって、同遺伝子 により発現したイムノグロブリンのことをい う。

 また、本実施形態に係る医薬品は、所定 担体にホモシステイン酸、又は薬学的に許 しうる範囲のホモシステイン酸塩若しくは モシステイン酸誘導体を結合した複合体を 有する医薬品であっても良い。

 ここで用いられる担体は低分子化合物を 原として免疫する場合に通常用いられるも が利用できる。たとえば、アルブミン、KLH( スカシ貝ヘモシアニン:keyhole limpet hemocyanin) 組換えコレラトキシンBサブユニット(recombin ant cholera toxin B subunit)、組換えシュードモ スエキソプロテインA(recombinant pseudomonas exo protein A)、ポリスチレン、多糖などがあげら る。これらの担体に、ホモシステイン酸ま は薬学的に許容しうる範囲のホモシステイ 酸塩若しくはホモシステイン酸の誘導体を 合させて形成した複合体を医薬品に含有す ことにより、ヒトの体内で該複合体を抗原 して認識させ、抗ホモシステイン酸抗体を 導することができる。すなわち、ワクチン しても使用することができる。

 また、前記ホモシステイン酸又はホモシ テイン酸誘導体は、架橋剤を介して結合す のが望ましい。この架橋剤としては、グル ルアルデヒド、グリオキサール、マロンア デヒド、ノナンジアール、bis[sulfosuccinimidyl]  suberate、Dimethyl Suberimidate、disuccinimidyl tartra te、1-ethyl-3-[3-dimethylaminopropyl]carbodiimide hydrochl oride、m-maleimidobenzoyl-N-hydoxysuccinimide ester、(m-m aleimidobenzoyl-N-hydoxysuccinimide ester等、担体のア ミノ基、カルボキシル基、チオール基等とホ モシステイン酸のアミノ基、カルボキシル基 の反応性を利用したクロスリンカーが使用で きる。

 上述してきた本実施形態に係る医薬品は ホモシステイン酸がNMDA受容体へ結合するの を阻害すると共に、細胞外のホモシステイン 酸濃度の上昇を抑制し、しかも、神経変性疾 患や、心臓病、ストレス症候群、不安症候群 、骨粗鬆症の予防や改善、治療を行うことの できる医薬品とすることができる。

 ここで、本実施形態に係る医薬品が心臓 、ストレス症候群、不安症候群、骨粗鬆症 各疾患に対して予防や改善、治療効果を生 する作用機序について具体的に説明すると 心臓病は、ホモシステイン酸が血管内皮に 用して内皮障害を発現し心臓病が発症する 考えられているが、本実施形態に係る医薬 がホモシステイン酸と結合しホモシステイ 酸を不活性化して内皮障害となるのを防ぐ め心臓病を改善したり、治療することがで るのである。なお、本実施形態に係る医薬 を予め投与しておくことにより、ホモシス イン酸を不活性化することとなるため、心 病が発症するのを予防することができる。

 また、ストレス症候群は、ホモシステイ 酸が種々の神経系に作用してストレス情報 発現することによりストレス症候群が発症 ると考えられているが、本実施形態に係る 薬品がホモシステイン酸を不活性化して他 神経系の活性化を防ぐためストレス症候群 改善したり、治療することができるのであ 。なお、本実施形態に係る医薬品を予め投 しておくことにより、ホモシステイン酸を 活性化することとなるため、ストレス症候 が発症するのを予防することができる。

 また、同じように不安症候群は、ストレ 症候群と同様の作用によりホモシステイン が不安症状を発現する神経系に作用して不 症候群が発症すると考えられているが、本 施形態に係る医薬品がホモシステイン酸を 活性化して不安症候群を改善したり、治療 ることができるのである。なお、本実施形 に係る医薬品を予め投与しておくことによ 、ホモシステイン酸を不活性化することと るため、不安症候群が発症するのを予防す ことができる。

 また、骨粗鬆症は、ホモシステイン酸が 破壊細胞に作用して骨破壊細胞の活性化を き起こし骨粗鬆症が発症すると考えられて るが、本実施形態に係る医薬品がホモシス イン酸を不活性化して骨破壊細胞の活性化 なるのを防ぐため骨粗鬆症を改善したり、 療することができるのである。なお、本実 形態に係る医薬品を予め投与しておくこと より、ホモシステイン酸を不活性化するこ となるため、骨粗鬆症が発症するのを予防 ることができる。

 これらの医薬品の投与は、脳室内投与、 腔内投与、経口投与、静脈内投与、筋肉内 与、髄腔内投与、皮下投与、舌下投与、経 腸投与、経鼻、吸入、経皮投与、経皮的吸 のいずれであっても良い。

 本実施形態に係る医薬品を上述の形態で 与することにより、医薬品の効果を最大限 引き出すことができる。

 次に、本実施形態に係る医薬品をマウスに 与した試験結果について述べる。ここでは 下記の順を追って本試験について説明する
(1)実験動物について
(2)医薬品について
(3)脳切片の検鏡
(4)水迷路試験(学習能力)
(5)水迷路試験(短期記憶)
(6)水迷路試験(長期記憶)
(7)血中ストレス指標物質量測定
(8)記憶力回復試験
(9)医薬品(ワクチン)の合成
(10)投与試験1
(11)投与試験2
(12)投与試験3
(13)血清中の抗体量の確認試験

〔1.実験動物について〕
 本試験では、実験動物として、家族性アル ハイマー病のモデルマウス3xTg-ADのオスとメ スから生まれた第1世代子孫を用いることと た。

 家族性アルツハイマー病のモデルマウス3 xTg-ADは、APP遺伝子、Presenilin遺伝子、Tau遺伝 の3つの遺伝子が改変されており、いずれも 族性アルツハイマー病の原因遺伝子である 以下、APP遺伝子、Presenilin遺伝子、Tau遺伝子 を総称して「原因遺伝子」という。

 この改変された原因遺伝子を有するヘテ 型モデルマウスのオスとメスとを掛け合わ ると、メンデルの遺伝法則により、改変さ た原因遺伝子を持たないNonTgマウスと、原 遺伝子の全てが改変されているhomozygousマウ と、原因遺伝子の半分が改変された原因遺 子であるhemizygousマウスとの3種のマウスが まれることとなる。

 これら3種のマウスは、普通食を施餌しな がら飼育を行うことにより、NonTgマウスは記 障害を発現せず、homozygousマウスは4ヶ月齢 記憶障害を発現し、hemizygousマウスは6ヶ月齢 で発現することとなる。

 しかも、これら3種のマウスは、ビタミン B6欠乏食を施餌することにより、より顕著に 憶障害を発現することとなる。またNonTgマ スも記憶障害を発現する。

 そこで、以下の試験では、3ヶ月齢のNonTg ウスと、3ヶ月齢のhemizygousマウスを用いて ビタミンB6欠乏食を施餌することにより各種 試験を行うこととした。

〔2.医薬品について〕
 以下の試験において前述のマウスに投与す 医薬品は、抗ホモシステイン酸抗体を調製 たり、所定の担体にホモシステイン酸を結 した複合体を調製することで実現すること できるが、ここでは、MobiTec社製ウサギ由来 抗ホモシステイン酸ポリクローナル抗体(No.10 37GE)を医薬品として用いることとした。

 また、以下において、MobiTec社製ウサギ由 来抗ホモシステイン酸ポリクローナル抗体(No .1037GE)の原液を抗ホモシステイン酸抗体標準 として使用することとした。なお、以下に いて、同標準液を2倍、10倍、100倍希釈した 薬品は、標準液を生理食塩水で希釈したも である。

〔3.脳切片の検鏡〕
 次に、本実施形態に係る医薬品を投与したh emizygousマウス(以下、「Tg Exマウス」という) 脳内のAβ1-42量について、本実施形態に係る 医薬品を投与しないhemizygousマウス(以下、「T g controlマウス」という)との比較を行った。

 ここでいうAβ1-42は、前述の通り、老人斑 中に見られるアミロイドβタンパクであり、A β1-42が凝集して核となり、さらに可溶性のア ミロイドβタンパクを取り込みながら成長す ことで沈着を起こし、脳神経細胞を侵すこ により神経細胞変性疾患を生起すると考え れている物質である。

 Aβ1-42の測定について具体的に説明すると 、まず、使用する被験動物として、2匹の3ヶ 齢のhemizygousマウスをそれぞれ1匹ずつ別々 ケージに入れ、ビタミンB6欠乏食を自由に施 餌し、3週間に亘って飼育した。

 また、2匹のhemizygousマウスのうち、1匹に 本実施形態に係る医薬品を投与せずTg contro lマウスとし、もう1匹には本実施形態に係る 薬品を投与してTg Exマウスとした。

 Tg Exマウスへ投与した医薬品は、上述の ホモシステイン酸抗体標準液を100倍希釈し ものを用い、脳室へシリンジ針を穿刺して2 0μ1注入することにより投与した。また、こ 医薬品の投与は、3日毎に行った。

 次に、上述の手段により飼育した各マウ から脳を採取した。採取した各マウスの脳 氷薄切片とし、Aβ1-42を特異的に染色すべく 、免疫染色法により染色した。

 そして、染色した脳切片を光学顕微鏡に 検鏡し、各マウスにおけるAβ1-42の蓄積度合 いを目視にて比較した。この際、Aβ1-42が高 度で存在する部位は茶褐色~黒色に染色され 斑点状や顆粒状に観察されることとなる。

 また、検鏡は扁桃体、大脳皮質、海馬を 心に行った。なお、扁桃体は情動を司る部 であって、異常をきたすと不安行動が生起 れ、大脳皮質は学習を司る部位であって、 常をきたすと学習能力の低下が生起され、 馬は記憶を司る部位であって、異常をきた と記憶力の低下が生起される。

 これらの部位について検鏡した結果、Tg  controlマウスの脳切片は、扁桃体、大脳皮質 海馬のいずれにおいても顆粒状に染色され Aβ1-42が強く認められ、Tg controlマウスの扁 体、大脳皮質、海馬にはAβ1-42が多量に蓄積 ていることが示された。

 一方、Tg Exマウスの脳切片は、Tg control ウスの脳切片に比して扁桃体、大脳皮質、 馬のいずれにおいても染色度合いが非常に く、Tg Exマウスの扁桃体、大脳皮質、海馬 はAβ1-42がTg controlマウスに比して蓄積して ないことが示された。

 これらの検鏡結果を踏まえると、本実施 態に係る医薬品は、ホモシステイン酸がNMDA 受容体に結合するのを阻害して、細胞内にAβ 1-42が蓄積するのを防ぐことが示された。

 すなわち、細胞内のAβ1-42の濃度を低濃度 に保つことにより、神経細胞が障害を受ける のを防止して、神経変性疾患の予防や改善、 治療が可能であることが示された。また、ホ モシステイン酸は、自身も細胞毒性を有して おり、このホモシステイン酸の毒性を抗体に よって抑制することによっても、神経細胞が 障害を受けるのを防止して、神経変性疾患の 予防や改善、病状の進行の抑制、治療が可能 である。

 なお、本発明者らは、これらの部位を検 した際に撮影した画像を有しており、必要 応じて提出する用意がある。

〔4.水迷路試験(学習能力)〕
 次に、本実施形態に係る医薬品の学習能力 よび記憶力改善効果の確認を行うべく、モ スの水迷路(Morris water maze)を用いた試験を った。

 ここで、モリスの水迷路に使用する試験 置について説明すると、試験装置は、室温 した水を満たした大きな円形プール(直径1.5 m、高さ50cm)を備えており、同円形プール内の 水は、あらかじめ粉乳や非毒性色素等を加え て不透明としている。また、水深はマウスが 遊泳する際に底に体が接触しないよう充分に 深くしている。

 また、円形プールには、避難台(直径5cm) 水面下に没した状態で設けられており、不 明の水によって隠された状態となっている 遊泳するマウスがこの避難台を探り当てる 、台上で休憩することができるようにして る。

 そして、マウスをこの円形プールの水面 に放ち、避難台に到達するまでの時間や行 を分析することにより、学習能力や記憶能 の度合いを検証することができるようにし いる。

 さらに詳説すると、避難台は、円形プー を4分の1円に区画したいずれかの一つの略 心部の水面下1.0cmに配設されている。

 また、円形プールの周囲には、マウスが 識可能な目印を配設しており、避難台に到 したマウスは、この目印を元に、避難台が 形プールのどの辺りに位置するか個々の能 に応じて学習や記憶するようにしている。

 換言すると、マウスが、プール周辺の任 のスタート地点から泳ぎ始めて、効率的に 難台の位置を特定することを可能とする能 は、迷路周囲の情報の利用に依存するよう している。

 また、円形プール内におけるマウスの行 は、プールの中心2.5m上に吊り下げられたカ メラによって記録されており、このカメラは 、ビデオ追跡システムおよび、挙動解析ソフ トウェアを搭載するコンピュータに接続され ている。

 また、試験は、円形プールに避難台を備 た状態で、マウスに避難台の位置を学習・ 憶させる訓練習得セッションと、避難台を えたまま、または、避難台を取り去って観 するプローブドトライアルとの二段階で行 た。

 すなわち、本試験では、このような試験 置にて、4つの区画のうちで、無作為に選択 した区画をスタート区画とし、同スタート区 画に対して90度離れた位置のうちの1つに避難 台を設けてゴール区画として、まず訓練習得 セッションを行う。

 次いで、所定時間経過した後、プローブ トライアルを行って、避難台のある状態で タート地点から避難台に到達するまでの時 や、避難台のない状態でゴール区画内にて 泳しながら滞在する時間や、マウスの遊泳 にゴール区画の線を跨いだ回数について計 を行うことで学習能力や記憶能力について 証を行った。

 次に、上述のモリスの水迷路を用いた本 験(学習能力試験)の内容について説明する

 本試験では、前述の訓練習得セッション 行った後、1.5時間マウスをケージ内で自由 状態におき、その後、プローブドトライア を行うことで、避難台の位置探索が学習に りどの程度効率的に行われるかについて検 を行った。

 試験に使用したマウスは、以下の4種16匹の ウスである。
(1)NonTgマウス(3ヶ月齢) 4匹
(2)Tg controlマウス(3ヶ月齢) 4匹
(3)TgEx(2倍希釈)マウス(3ヶ月齢) 4匹
(4)TgEx(100倍希釈)マウス(3ヶ月齢) 4匹

 ここで、(3)および(4)の希釈倍数は、前述 〔2.医薬品について〕にて示した抗ホモシ テイン酸抗体標準液の希釈倍数であり、抗 モシステイン酸抗体のマウスへの投与量は TgEx(2倍希釈)マウス>TgEx(100倍希釈)マウスと している。なお、各マウスは〔脳切片の検鏡 〕の項で述べた方法により予め飼育されたも のである。

 上記マウスについてモリスの水迷路を用 、学習能力について試験した結果を表1およ び表2に示す。なお、結果は各群の4匹の平均 を示している。

 表1は、スタート区画の水面にマウスを放ち 、訓練習得セッションを行った際に避難台の あった区画(ゴール区画)内に入ってから、実 には撤去されている避難台を探して区画内 留まっていた時間を測定した結果を示して る。

 表1からも分かるように、NonTgマウスは、 ール区画内で約43秒に亘って避難台を探し けたのに比して、Tg controlマウスでは、ゴー ル区画内で留まる時間が約27秒と短くなった このことは、Tg controlマウスの学習能力が 下していることを示唆している。

 一方、抗ホモシステイン酸抗体を接種し マウス(TgExマウス)では、2倍希釈した標準液 を接種したマウスで約41秒、100倍希釈した標 液を接種したマウスで約45秒と、Tg controlマ ウスに比して長時間ゴール区画内で留まって おり、マウスの学習能力が改善していること が示された。

 表2は、マウスが遊泳中にゴール区画の分割 線を横断した回数を測定した結果を示してい る。

 表2からも分かるように、NonTgマウスは、 ール区画の線を横断した回数は6回であった のに対し、Tg controlマウスでは、横断した回 が3回と低くかった。このことは、Tg control ウスの学習能力が低下していることを示唆 ている。

 一方、抗ホモシステイン酸抗体を接種し マウス(TgExマウス)では、2倍希釈した標準液 を接種したマウスで4回、100倍希釈した標準 を接種したマウスで6回と、Tg controlマウス 比して長時間ゴール区画内で留まっており マウスの学習能力が改善していることが示 れた。

 なお、抗ホモシステイン酸抗体を接種し マウス(TgExマウス)の中でも、2倍希釈した標 準液を接種したマウスよりも、100倍希釈した 標準液を接種したマウスの方が、高い学習能 力改善効果が生起されているが、この現象は 、異種抗体によるアレルギー反応が原因のひ とつである可能性が考えられる。

〔5.水迷路試験(短期記憶)〕
 次に、本実施形態に係る医薬品の記憶力改 効果の確認を行うべく、モリスの水迷路(Mor ris water maze)を用いて試験を行った。具体的 は、スタート区画の水面にマウスを放った 点から、前述の訓練習得セッションを行っ 際に避難台のあった区画(ゴール区画)内に 達するまでに要した時間を測定することで 験を行った。

 なお、本試験では、訓練習得セッション 行った後、1.5時間マウスをケージ内で自由 状態におき、その後、プローブドトライア を行うことで、避難台の位置をどの程度記 しているか検証を行った。プローブドトラ アルは1匹のマウスあたり3回行い、各プロ ブドトライアルの間は1.5時間ケージ内に収 して自由時間とした。

 試験に使用したマウスは、以下の5種20匹の ウスである。
(1)NonTgマウス(3ヶ月齢) 4匹
(2)Tg controlマウス(3ヶ月齢) 4匹
(3)TgEx(2倍希釈)マウス(3ヶ月齢) 4匹
(4)TgEx(10倍希釈)マウス(3ヶ月齢) 4匹
(5)TgEx(100倍希釈)マウス(3ヶ月齢) 4匹

 ここで、(3)~(5)の希釈倍数は、前述の〔2. 薬品について〕にて示した抗ホモシステイ 酸抗体標準液の希釈倍数であり、抗ホモシ テイン酸抗体のマウスへの投与量は、TgEx(2 希釈)マウス>TgEx(10倍希釈)マウス>TgEx(100 倍希釈)マウスとしている。なお、各マウス 〔脳切片の検鏡〕の項で述べた方法により め飼育されたものである。

 上記マウスについて短期記憶力について 験した結果を表3に示す。なお、この結果は 各群における4匹の平均値を示している。

 表3は、訓練練習セッションにて、スタート 区画の水面にマウスを放った時点から、前述 の訓練練習セッションを行った際に避難台の あった区画(ゴール区画)内に到達するまでに した時間を100%とし、プローブドトライアル を繰り返すうちに記憶が裏付けされてどの程 度時間短縮がなされるかを示したグラフであ る。なお、表3において、訓練練習セッショ 時よりも時間を要した場合(100%を越えた場合 )は、全て100%として示している。また、説明 便宜上、表3において2匹いるTg controlマウス はそれぞれTg control(A)、Tg control(B)と示すこ とする。

 表3からも分かるように、NonTgマウスは、 練練習セッションに要した時間(100%)に対し 、1回目のプローブドトライアルで38%、2回 のプローブドトライアルで16%、3回目のプロ ブドトライアルで13%と、時間が顕著に短縮 れる傾向にあった。

 一方、Tg controlマウスでは、例えば、Tg c ontrol(A)マウスによれば、訓練練習セッション に要した時間(100%)に対して、1回目および2回 のプローブドトライアルで100%、3回目のプ ーブドトライアルで46%と、NonTgマウスに比べ て時間の短縮が非常に鈍化しているのが分か る。

 また、Tg control(B)マウスにいたっては、 練練習セッションに要した時間(100%)に対し 、3回全てのプローブドトライアルで100%と、 時間の短縮傾向が認められなかった。

 これらのことから、Tg controlマウスは、No nTgマウスに比して、短期記憶能力が低下して いることが分かる。

 ここで、抗ホモシステイン酸抗体を接種 たマウス群(TgExマウス群)に目を転じると、2 倍希釈した標準液を接種したマウスでは、訓 練練習セッションに要した時間(100%)に対して 、1回目のプローブドトライアルで89%、2回目 プローブドトライアルで62%、3回目のプロー ブドトライアルで59%と、時間が顕著に短縮さ れる傾向にあった。

 また、10倍希釈した標準液を接種したマ スも同様に、訓練練習セッションに要した 間(100%)に対して、1回目のプローブドトライ ルで91%、2回目のプローブドトライアルで76% 、3回目のプローブドトライアルで45%と、時 が顕著に短縮される傾向にあった。

 また、100倍希釈した標準液を接種したマ スも同様に、訓練練習セッションに要した 間(100%)に対して、1回目のプローブドトライ アルで56%、2回目のプローブドトライアルで29 %、3回目のプローブドトライアルで34%と、時 が顕著に短縮される傾向にあった。

 なお、抗ホモシステイン酸抗体を接種し マウス(TgExマウス)の中でも、2倍希釈した標 準液を接種したマウスよりも、10倍希釈した 準液を接種したマウスの方が記憶力改善効 が高く、さらに、100倍希釈した標準液を接 したマウスの方がより高い記憶力改善効果 生起されているが、これらの現象について 、前述のように、異種抗体によるアレルギ 反応が原因のひとつである可能性が考えら る。

 本試験の結果から、本実施形態に係る医 品は、ホモシステイン酸がNMDA受容体に結合 するのを阻害すると共に、細胞内のホモシス テイン酸濃度の上昇を抑制し、比較的短期間 における記憶力の改善が可能であることが示 された。

〔6.水迷路試験(長期記憶)〕
 次に、本実施形態に係る医薬品の比較的長 間における記憶力改善効果の確認を行うべ 、モリスの水迷路(Morris water maze)を用いて 験を行った。具体的には、前述の水迷路試 (短期記憶)と同様に、スタート区画の水面 マウスを放った時点から、前述の訓練練習 ッションを行った際に避難台のあった区画( ール区画)内に到達するまでに要した時間を 測定することで試験を行った。

 なお、本試験では、訓練練習セッション 行った後、24時間マウスをケージ内で自由 状態におき、その後、プローブドトライア を行うことで、避難台の位置をどの程度記 しているか検証を行った。プローブドトラ アルは1匹のマウスあたり2回行い、各プロー ブドトライアルの間は24時間ケージ内に収容 て自由時間とした。

 試験に使用したマウスは、以下の3種12匹の ウスである。
(1)NonTgマウス(3ヶ月齢) 4匹
(2)Tg controlマウス(3ヶ月齢) 4匹
(3)TgExマウス(3ヶ月齢) 4匹

 ここで、各マウスは〔脳切片の検鏡〕の で述べた方法により予め飼育されたもので る。上記マウスについて長期記憶力につい 試験した結果を表4に示す。なお、結果は、 各群の4匹の平均値を示している。

 表4は、訓練練習セッションにて、スタート 区画の水面にマウスを放った時点から、前述 の訓練練習セッションを行った際に避難台の あった区画(ゴール区画)内に到達するまでに した時間を100%とし、プローブドトライアル を繰り返すうちに記憶が裏付けされてどの程 度時間短縮がなされるかを示したグラフであ る。なお、表4において、訓練練習セッショ 時よりも時間を要した場合(100%を越えた場合 )は、全て100%として示している。

 表4からも分かるように、NonTgマウスは、 練練習セッションに要した時間(100%)に対し 、1回目のプローブドトライアルで90%、2回 のプローブドトライアルで50%と、時間が顕 に短縮される傾向にあった。

 一方、Tg controlマウスでは、訓練練習セ ションに要した時間(100%)に対して、1回目の ローブドトライアルで100%、2回目のプロー ドトライアルで70%と、NonTgマウスに比べて時 間の短縮が非常に鈍化しているのが分かる。

 これらのことから、Tg controlマウスは、No nTgマウスに比して、長期記憶能力が低下して いることが分かる。

 ここで、抗ホモシステイン酸抗体を接種 たマウス(TgExマウス)に目を転じると、訓練 習セッションに要した時間(100%)に対して、1 回目のプローブドトライアルで80%、2回目の ローブドトライアルで25%と、時間が顕著に 縮される傾向にあった。

 本試験の結果から、本実施形態に係る医 品は、ホモシステイン酸がNMDA受容体に結合 するのを阻害すると共に、細胞内のホモシス テイン酸濃度の上昇を抑制し、比較的長期間 における記憶力の改善が可能であることが示 された。

〔7.血中ストレス指標物質量測定〕
 次に、本実施形態に係る医薬品を投与したh emizygousマウス(Tg Exマウス)の血中ストレス指 物質量について、NonTgマウスと、本実施形 に係る医薬品を投与しないhemizygousマウス(Tg control)との比較を行った。

 ここでいうストレス指標物質とは、アド ナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンの とをいい、ベータアドレナジック受容体の 性化によるストレスが増加するにつれ、血 濃度が高くなることが知られている物質で る。

 これらストレス指標物質の測定について 体的に説明すると、1匹のNonTgマウス(3ヶ月 )と、2匹のhemizygous(3ヶ月齢)マウスとの3匹の ウスをそれぞれ1匹ずつ別々のケージに入れ 、ビタミンB6欠乏食を自由に施餌し、3週間に 亘って飼育した。

 また、2匹のhemizygousマウスのうち、1匹に 本実施形態に係る医薬品を投与せずTg contro lマウスとし、もう1匹には本実施形態に係る 薬品を投与してTg Exマウスとした。

 Tg Exマウスへ投与した医薬品は、100倍希 した抗ホモシステイン酸抗体標準液であり 脳室へシリンジ針を穿刺して20μL注入する とにより投与した。また、この医薬品の投 は、3日毎に行った。

 次に、このように飼育した各マウスから 血を行った。各マウスの採血は、眼底採血 により行われた。すなわち、マウスを少量 ジエチルエーテルで麻酔し、EMマイスター マトクリット毛細管を用いて眼下静脈より 血を行った。その後、採取した血液を4℃に 2000rpmで、20分間遠心分離し、上清である血 を回収した。

 そして、同血清を高速液体クロマトグラ ィー(HPLC)にて分析し、血清中に含まれるア レナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン の定量を行った。

 表5は、各マウスの血清中におけるアドレナ リン量を示している。表5にも示すように、 変された原因遺伝子を持たないNonTgマウスで は1mlあたり約15000pgのアドレナリンが検出さ たが、改変された遺伝子を有し、かつ、本 施形態に係る医薬品を投与していないTg cont rolマウスでは、更に多い約22500pgのアドレナ ンが検出された。

 これらに比して、改変された遺伝子を有 、かつ、本実施形態に係る医薬品を投与し Tg Exマウスでは、血中アドレナリン量が1ml たり約5000pgと非常に低い値であった。

 次に、各マウスの血清中におけるノルア レナリン量を表6に示す。

 表6にも示すように、改変された原因遺伝子 を持たないNonTgマウスでは1mlあたり約7800pgの ルアドレナリンが検出されたが、改変され 遺伝子を有し、かつ、本実施形態に係る医 品を投与していないTg controlマウスでは、 に多い約12500pgのノルアドレナリンが検出さ た。

 これらに比して、改変された遺伝子を有 、かつ、本実施形態に係る医薬品を投与し Tg Exマウスでは、血中ノルアドレナリン量 1mlあたり約6000pgと非常に低い値であった。

 次に、各マウスの血清中におけるドーパ ン量を表7に示す。

 表7にも示すように、改変された原因遺伝子 を持たないNonTgマウスでは1mlあたり約750pgの ーパミンが検出された。また、改変された 伝子を有し、かつ、本実施形態に係る医薬 を投与していないTg controlマウスでも、NonTg ウスとほぼ同等の約700pgのドーパミンが検 された。

 これらに比して、改変された遺伝子を有 、かつ、本実施形態に係る医薬品を投与し Tg Exマウスでは、血中ドーパミン量が1mlあ り約320pgとNonTgマウスおよびTg controlマウス りも顕著に低い値であった。

 これらの血中ストレス指標物質の定量結 を踏まえると、本実施形態に係る医薬品がT g Exマウスの体内でホモシステイン酸を抗体 より不活性化させてストレス反応を抑制し ため血中ストレス指標物質が減少している とが分かる。

 それゆえ、本実施形態に係る医薬品は、 臓病やストレス症候群、不安症候群を改善 たり、治療できることが示唆された。また 本実施形態に係る医薬品を予め投与してお ことにより、ホモシステイン酸を不活性化 ることとなるため、心臓病やストレス症候 、不安症候群が発症するのを予防できるこ が示唆された。

〔(8)記憶力回復試験〕
 次に、本実施形態に係る医薬品の記憶力回 の確認を行うべく、モリスの水迷路(Morris w ater maze)を用いて試験を行った結果について 明する。

 試験に使用したマウスは、以下の3種12匹の ウスである。
(1)Tg controlマウス(3ヶ月齢) 5匹
(2)TgEx(脳室内投与)マウス(3ヶ月齢) 5匹
(3)TgEx(腹腔内投与)マウス(3ヶ月齢) 2匹

 ここで、(2)及び(3)のマウスに投与した本 施形態に係る医薬品は、前述の〔(2)医薬品 ついて〕にて示した抗ホモシステイン酸抗 標準液をそれぞれ5μLづつ使用した。なお、 各マウスは〔(3)脳切片の検鏡〕の項で述べた 方法により予め飼育されたものである。

 試験は、スタート区画の水面にマウスを った時点から、前述の訓練練習セッション 行った際に避難台のあった区画(ゴール区画 )内に到達するまでに要した時間を測定する ととした。

 なお、本試験では、訓練練習セッション 行った後、マウスをケージ内で自由な状態 おき、その後、1日1回のプローブドトライ ルを行うことで、避難台の位置に関する記 がどの程度回復するか検証を行った。プロ ブドトライアルは1匹のマウスあたり3回(3日 )行い、各プローブドトライアルの間はケー ジ内に収容して自由時間とした。また、(2)及 び(3)のマウスには、所定の投与方法により本 実施形態に係る医薬品5μLを毎日投与した。 れらのマウスの記憶力回復について試験し 結果を表8に示す。なお、この数値はそれぞ の群の平均値を示す。

 ここで表8は、横軸を日数とし、縦軸は避難 台のあった区画(ゴール区画)内に到達するま に要した時間を示している。また、表8にお いて、(1)Tg controlマウスは三角マーカを有す 実線で示し、(2)TgEx(脳室内投与)マウスは四 マーカを有する実線で示し、(3)TgEx(腹腔内 与)マウスはひし形マーカを有する実線で示 ている。なお、表中に示す*印は、t検定に り群間の有意差が認められたことを示して る。

 表8からも分かるように、Tg controlマウス 、1回目のプローブドトライアルで58秒を要 、2回目のプローブドトライアルで48秒、3回 目のプローブドトライアルで29秒と、時間が 々に短縮される傾向にあった。

 一方、(2)及び(3)のTgExマウス群に着目する と、表8中において四角のマーカにて示すよ に、TgEx(脳室内投与)マウスは、1回目のプロ ブドトライアルで13秒を要し、2回目のプロ ブドトライアルで8秒、3回目のプローブド ライアルで5秒と、Tg controlマウスに比して1 目のプローブドトライアルから顕著に時間 短縮される現象が確認された。

 特に、1回目及び2回目のプローブドトラ アルでは、Tg controlマウスとの間に有意差(p& lt;0.01)が認められた。

 また、TgEx(腹腔内投与)マウスについても 1回目のプローブドトライアルで29秒を要し 2回目のプローブドトライアルで28秒、3回目 のプローブドトライアルで16秒と、Tg control ウスに比して1回目のプローブドトライアル ら顕著に時間が短縮される現象が確認され 。

 そして、上述の試験に供したTg controlマ ス及びTgEx(脳室内投与)マウスについて、海 を摘出し、超薄切片を調製してヘマトキシ ン・エオジン染色したものを検鏡した。そ 結果を図1に示す。

 図1(a)は、Tg controlマウスの海馬の検鏡写 であり、図(b)は、TgEx(脳室内投与)マウスの 馬の検鏡写真である。図1(a)からもわかるよ うに、ビタミンB6欠乏食を与えられてアルツ イマーを発症したTg controlマウスの海馬で 、全体的に萎縮が見られるとともに、CA1の 経細胞が密に集合した部位(図1中の丸で囲ん だ箇所の帯状に見える部位)の一部の染色度 いが薄くなっていることがわかる。

 一方、TgEx(脳室内投与)マウスの海馬では 図1(b)からもわかるように、Tg controlマウス 比して萎縮は認められず、また、CA1の神経 胞が密に集合した部位の染色度合いも良好 あることから、多くの神経細胞が機能して ることがわかる。

 ここで、Tg controlマウス及びTgEx(脳室内投 与)マウスの海馬の大きさを測定した結果を 9に示す。

 表9は、Tg controlマウス及びTgEx(脳室内投与) ウスの海馬の大きさを、同一個体の脳につ て複数回(Tg controlマウスは5回、TgEx(脳室内 与)マウスは4回)超薄切片を調整し、測定し 結果を示している。

 表9からもわかるように、Tg controlマウス 海馬の直径の平均は、8.6±0.5mmであったのに 対し、TgEx(脳室内投与)マウスでは、9.9±0.4mm 大きさを維持していることがわかった。

 また、TgEx(脳室内投与)マウスの海馬は、T g controlマウスの海馬に比して直径が有意に(p <0.01)大きいことが認められた。

 これらのことから、本実施形態に係る医 品を脳室内や腹腔内に投与することにより 記憶力を効果的に回復させることが可能で ることが示された。

 しかも、特に着目すべき点として、(3)TgEx (腹腔内投与)マウスのように、本実施形態に る医薬品の投与が腹腔内投与であっても、 著な記憶力の回復効果が見られた点が挙げ れる。

 一般に、血液と脳(そして脊髄を含む中枢 神経系)の組織液との間には、物質交換を制 する血液脳関門という機構が存在すること 知られている。

 しかしながら、本実施形態に係る医薬品 、詳細な作用機序は未だ不明なものの、腹 内への投与でありながら、顕著な記憶力回 効果を生起させることができる。

 このことは、頭部や脳を侵襲することな 、医薬品の投与が可能であることを示唆す 結果であり、患者が受ける負担を飛躍的に 減させることができるものと考えられる。

 なお、本試験において各マウスには、ホ システイン酸抗体を医薬品として投与した 、ホモシステイン酸と所定の物質とを結合 せてワクチンを投与して、生体内でホモシ テイン酸抗体を誘導するようにしてもよい

 すなわち、ホモシステイン酸と所定の担 とを結合させてワクチンを調製し、このワ チンを医薬品としてヒトやマウスなどの生 に投与することで、同生体内にホモシステ ン酸抗体を誘導して、ホモシステイン酸がN MDA受容体に結合するのを阻害すると共に、細 胞内のホモシステイン酸濃度の上昇を抑制し 、しかも、神経変性疾患や、心臓病、ストレ ス症候群、不安症候群、骨粗鬆症の予防や改 善、治療を行うようにしてもよい。

 さらに、このワクチンの調製に用いるホモ ステイン酸に替えて、例えば、ホモシステ ン酸の誘導体を用いることとしても良い。 なわち、以下の説明において、ワクチンの 製に用いるホモシステイン酸や、ワクチン 構成するホモシステイン酸は、分子式:C 4 H 9 NO 5 Sで示されるホモシステイン酸の他、例えば ホモシステイン酸ナトリウム等薬学的に許 しうる範囲のホモシステイン酸塩及びホモ ステイン酸の誘導体を含む概念である。

 以下、所定の担体にホモシステイン酸又 ホモシステイン酸を結合した複合体を含有 る医薬品に係る具体的な一実施形態につい 述べる。本実施形態では、所定の担体とし 前述のKLH(スカシ貝ヘモシアニン:keyhole limpe t hemocyanin)を用い、ホモシステイン酸を結合 せて複合体を形成し、この複合体を医薬品( ワクチン)としてマウスに投与することとし 。

 〔(9)医薬品(ワクチン)の合成〕
 本実施形態に係るワクチンは、図2に示す方 法により合成を行った。まず、L-ホモシステ ン酸(L-Homocysteic acid) 0.27mmolに過剰量のグル タルアルデヒド(Glutaraldehyde)2.7mmolを反応させ 図2(a)に示すように、ホモシステイン酸のア ミノ基をグルタルアルデヒドで修飾した(HCA-G A)。

 次いで、得られたHCA-GAの過剰量をKLH上に 数存在するアミノ基と反応させて、図2(b)に 示すように、中間体を合成した。

 そして、この中間体を還元した後、ゲル 過により低分子を除き、図2(c)に示すように 、KLHとホモシステイン酸の複合体(HCA-G-KLH)を た。

 次に、生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム溶 )0.1 mLあたり、抗原(HCA-G-KLH)約100μgを含む溶 に等量のフロインドの完全アジュバント(Fre und' complete adjuvant:FCA)を添加し十分に乳化さ この乳化液を本実施形態に係る医薬品(ワク チン)とした。

〔(10)投与試験1〕
 次に、このワクチンの効果を検証すべく、 ウスに投与して確認試験を行った。試験は 合成したワクチンを投与する試験群と、ワ チン非投与対照群と、記憶障害を発現して ない正常群との3群を設定し、これらのマウ スを水迷路試験に供することで行った。また 、試験は、1日1回5日間連続で行った。なお、 いずれのマウスも、ビタミンB6欠乏食を自由 施餌して飼育したマウスである。
  試験群:(TgEx)5ヵ月齢マウス(2匹) HCA-G-KLHワ チン投与
  対照群:(Tg-control)5ヵ月齢マウス(2匹)
  正常群:(3x-Tg)3ヵ月齢マウス(2匹)

 なお、試験群へのワクチン投与は、一匹 たり約0.2 mL(100μg)を腹腔内に投与した。な 、投与する部位は、背部皮下数ヶ所にわけ 投与しても良い。

 また、試験群へのワクチン投与は、生後4 ヵ月齢の時点で行い、その後、4.5ヵ月齢でブ ースター投与を行っている。

 試験群にてブースター投与した薬剤は、 ロインドの不完全アジュバント(Freund's incom plete adjuvant:FIA)を用いてHCA-G-KLHの量を半分の 50 μg / 匹で同様に調製したものである。 のようにして得られた3群のマウスを水迷路 試験に供した結果を表10に示す。

 表10は、各群のマウスがゴール到達まで 要する時間の経時変化を示したグラフであ 、縦軸はゴール到達までに要した時間(各群2 匹の平均値)、横軸は日数である。

 試験群は四角のマーカで示す折れ線グラ 、対照群は菱形のマーカで示す折れ線グラ 、正常群は三角のマーカで示す折れ線グラ としている。なお、1日目については、全て の群において、ゴール到達までに60秒以上を したが、便宜上60秒を要したものとし、2日 以降については、実測値を示している。ま 、×印のマーカで示す折れ線グラフは、正 群の折れ線グラフを一日分平行移動させた ラフであり、試験群との比較を行うための 考用折れ線グラフである。

 表10を見ると分かるように、試験群と対 群とを比較すると、対照群は、試験開始の1 目から5日目に至るまで、ゴール到達に要す る時間は約50~60秒とほぼ横這いで推移してい が、試験群は、試験1日目及び2日目では対 群に対して顕著な差は見られなかったもの 、3日目より徐々に差が現れ、4日目及び5日 では到達時間の顕著な低下が認められた。

 このことは、対照群が5日間に亘って試験 を行ってもゴールの位置を覚えられなかった のに対し、試験群は、日数を経る毎にゴール の位置をより明確に覚え効率的にゴールへ向 かえたことを示している。

 また、試験群の2日目から5日目までのグ フの傾きについて、正常群とのグラフの傾 と比較すると、四角のマーカのグラフと×印 のマーカのグラフとを参照すれば分かるよう に、ほぼ同様の挙動を示している。

 すなわち、試験群と正常群とを比較する 、1日のずれがあるものの、ほぼ同じ傾きで 、到達時間の短縮がみられた。

 これは、正常マウスとほぼ同等の記憶能 が損傷するのを防いだワクチンによる予防 果であると言える。

 なお、本投与試験1にて試験群及び対照群 として用いたマウスは、ビタミンB6欠乏食を 餌しながら飼育することで、約5ヵ月齢で記 憶障害を発症するマウスである。

 すなわち、本投与試験結果1によれば、記 憶障害の発症初期段階において、本実施形態 に係る医薬品(ワクチン)を投与することによ 、記憶障害を効果的に予防可能であること 分かる。

〔(11)投与試験2〕
 つぎに、十分に記憶障害を発症しているマ スに対し本実施形態にかかる医薬品(ワクチ ン)を投与した場合における記憶力改善効果 ついて検証を行った。

 本投与試験2では、記憶障害を発病した6 月齢のマウス(2匹)に対し、5日間の水迷路試 を行い、同一個体が6.5ヵ月齢の時点で本実 形態に係る医薬品(ワクチン)を投与し、7ヵ 齢の時点でブースター投与し、7.5ヵ月齢と った時点で再度4日間の水迷路試験を行った 。なお、いずれのマウスも、ビタミンB6欠乏 を自由に施餌して飼育したマウスである。 投与試験2の結果を表11に示す。

 表11は、マウスがゴール到達までに要す 時間の経時変化を示したグラフであり、縦 はゴール到達までに要した時間(各群2匹の平 均値)、横軸は日数である。

 三角形のマーカで示す折れ線グラフはワ チン投与前の到達時間の経時変化を示した ラフ、四角のマーカで示す折れ線グラフは ワクチン投与後の到達時間の経時変化を示 たグラフである。なお、1日目については、 ワクチン投与後(四角のマーカ)以外の群にお て、ゴール到達までに60秒以上を要したが 便宜上60秒を要したものとし、2日目以降に いては、実測値を示している。また、菱形 マーカで示す折れ線グラフは、3ヵ月齢の記 障害を発症していないマウスによる到達時 の経時変化を示した折れ線グラフである。

 表11の三角形マーカーのグラフで示すよ に、ワクチン投与前の6ヵ月齢時点でのマウ は、試験1日目から5日目に至るまで、いず もゴールに到達するまでに50~60秒の時間を要 していた。

 その後、同マウスに対しワクチンを接種 ることにより、四角形マーカのグラフで示 ように、ワクチン投与前の状態に比して、 験1日目ではゴール到達までの時間に顕著な 差異は見られなかったものの、2~4日目には大 幅な低下傾向が確認された。

 また、菱形のマーカのグラフで示す正常 と比較すると、やや傾きが緩いものの、か り似た低下傾向を示すことが分かる。

 すなわち、本投与試験2の結果から、実施 形態に係る医薬品(ワクチン)は、記憶障害が 症した状態であっても、記憶改善効果を生 することができる。

〔(12)投与試験3〕
 つぎに、ビタミンB6を補完した通常食にて 育し記憶障害を発症させたマウスに対し、 施形態にかかる医薬品(ワクチン)を投与した 場合における記憶力改善効果について検証を 行った。

 前述までの試験は、記憶障害を顕著に発 させるべくビタミンB6欠乏食を施餌して飼 したマウスを被験動物として使用したが、 タミンB6欠乏という特殊条件下での試験であ ったとも考えられるため、今回は、マウスを 通常食にて飼育し、自然発生的に記憶障害を 発症した例について試験を行うこととした。

 本投与試験3では、通常食にて飼育した6ヵ 齢のオスのマウス5匹を被験動物として使用 た。
  試験群:(TgEx)6ヵ月齢マウス(2匹) HCA-G-KLHワ チン投与
  対照群:(TgEx)6ヵ月齢マウス(3匹) KLH投与
 上記試験群の2匹のマウスは、5ヵ月齢の時 で本実施形態に係る医薬品(ワクチン)を投与 し、5.5ヵ月齢の時点でブースター投与してい る。また、対照群の3匹のマウスについては HCA-G-KLH の代わりにKLHをアジュバント(初回FC A、2回目以降FIA)に加え乳化させたものを医薬 品(ワクチン)と同様の方法で投与した。これ 試験群2匹及び対照群3匹のマウスに対して 5日間の水迷路試験を行った。本投与試験3の 結果を表12に示す。

 表12は、マウスがゴール到達までに要す 時間の経時変化を示したグラフであり、縦 はゴール到達までに要した時間(各群の平均 )、横軸は日数である。

 四角形のマーカで示す折れ線グラフは対 群の到達時間の経時変化を示したグラフ、 角形のマーカで示す折れ線グラフは、ワク ンを投与した試験群の到達時間の経時変化 示したグラフである。なお、1日目について は、ワクチン投与後(四角のマーカ)以外の群 おいて、ゴール到達までに60秒以上を要し が、便宜上60秒を要したものとし、2日目以 については、実測値を示している。

 表12の四角形マーカーのグラフで示すよ に、ワクチン投与前の6ヵ月齢時点でのマウ は、試験1日目から5日目に至るまで、いず もゴールに到達するまでに50~60秒の時間を要 していた。

 一方、ワクチンを接種した試験群のマウ は、三角形マーカのグラフで示すように、 照群に比して、試験1日目ではゴール到達ま での時間に顕著な差異は見られなかったもの の、2~4日目には大幅な低下傾向(28秒→39秒→3 2秒→28秒)が確認された。

 このように、本投与試験3の結果を踏まえ ると、本実施形態に係る医薬品(ワクチン)は ビタミンB6欠乏によるものではなく、自然 症的に惹起された記憶障害に対しても、記 改善効果を生起可能であることが示唆され と言える。

〔(13)血清中の抗体量の確認試験〕
 次に、本実施形態に係る医薬品(ワクチン) 投与したマウスと、投与していないマウス の血清中における免疫グロブリンG(IgG)及び 疫グロブリンM(IgM)の量の比較を行った。試 は、投与群4個体と、非投与群4個体との計8 体で行った。本試験の結果を表13に示す。

 表13のグラフは、投与群における血清中 IgM及びIgGの量と、非投与群における血清中 IgM及びIgGの量とを比較したグラフである。 お、値は平均±標準偏差を示している。

 表13に示すように、ワクチンを投与して ないマウスの血清中のIgG量は、400±115μg/mlで あったのに対し、ワクチンを投与したマウス の血清中のIgG量は、1575±196μg/mlと高い値を示 していた。

 また、ワクチンを投与していないマウス 血清中のIgM量は、130±90μg/mlであり、ワクチ ンを投与したマウスの血清中のIgM量は、688±1 48μg/mlと高値であった。

 これらのデータを踏まえると、マウスに リクローナルの抗ホモシステイン酸抗体を 与したときの結果と、ワクチン投与による 憶改善効果とは、全く一致するため、ワク ンによって、抗ホモシステイン酸抗体が作 れたことが推定できる。

 すなわち、ワクチン投与により免疫グロ リン量が増加していることからも、抗ホモ ステイン酸抗体がが産生されていることが く示唆される。

 この結果から、本実施形態に係る医薬品( ワクチン)は、血中の抗ホモシステイン酸抗 を誘導することが示唆された。

 このように、本実施形態に係る所定の担 にホモシステイン酸を結合した複合体を含 する医薬品によれば、抗ホモシステイン酸 体を誘導することができ、ホモシステイン がNMDA受容体に結合するのを阻害すると共に 、細胞内のホモシステイン酸濃度の上昇を抑 制して、神経変性疾患の予防や改善、治療が 可能であることが示された。

 また、同様の作用機序から、心臓病、ス レス症候群、不安症候群、骨粗鬆症の予防 改善、治療も可能であるものと考えられた

 なお、本実施形態では、アジュバントを ロインドの完全アジュバントやフロインド 不完全アジュバントを用いることとしたが これに限定されるものではなく、例えば、T iterMax(登録商標)、 Gold Adjuvant(シグマ社)、Imj ect(登録商標)アルミニウムアジュバント(Alum( アス社)など)やムラミルジペプチドなどを いるようにしても良い。

 ここまで説明してきたように、本実施形 に係る医薬品によれば、抗ホモシステイン 抗体またはその抗原結合フラグメントを有 成分として含有することとしたため、抗ホ システイン酸抗体やその抗原結合フラグメ トがホモシステイン酸に結合し、ホモシス イン酸がNMDA受容体に結合するのを阻害する ことができる。

 また、免疫系にてホモシステイン酸が貪 されるのを促し、細胞内のホモシステイン 濃度を低下させることができて、細胞内に 剰量のホモシステイン酸が生成されたこと 由来する神経変性疾患や、心臓病、ストレ 症候群、不安症候群、骨粗鬆症の予防や改 、治療が可能な医薬品を提供することがで る。

 すなわち、前述の試験結果を再度振り返 ながら、これらの効果についてまとめると アルツハイマー病のモデルマウス3xTg-AD由来 のhemizygousマウスにビタミンB6欠乏食を与え、 人為的に欠乏症を誘発すると、まずhemizygous ウスは行動学的な不安症状を発現し、扁桃 、海馬、皮質の神経細胞内にベータアミロ ドを蓄積し神経機能が病理変化を示すこと なる。

 また、それに呼応して著しいストレスホ モンの増加が観察される(表5~表7のTg control 参照。)。また、同じく記憶障害が観察され た(表1~表4のTg controlを参照。)。いずれも、No nTgに比して、記憶に伴う標的に到達する時間 が短縮しない点が特徴的である。特に表1に けるTg controlマウスでは、学習に伴う、区画 内に留まる時間が短く、表2におけるTg control マウスでは、区画を横切る回数も最も少ない 。

 それに対して抗ホモシステイン酸抗体を 与したマウス(TgExマウス)は、Tg controlマウ に比して、ストレスホルモンが減少し(表5~ 7のTgExを参照。)、記憶に伴う標的に到達す 時間が短縮した。また、表1におけるTgExマウ スでは、学習に伴う、区画内に留まる時間が 長く、表2におけるTgExマウスでは、区画を横 る回数もTg controlマウスに比して増加して る。

 即ち、これらのデータは、抗ホモシステ ン酸抗体により、不溶性のAβ1-42の神経細胞 内蓄積を効果的に抑制した結果に基づくもの であると言える。このことは、抗体の基質特 異性に鑑みれば、Aβ1-42の神経細胞内蓄積は ホモシステイン酸の増加が大きな原因のひ つであると推定される。

 それゆえ、TgExマウスでは、記憶障害や不 安症状が消失し、ストレスホルモンが増加せ ず、記憶がよく、学習能力も良い結果を出し た。

 これらの結果から、本実施形態に係る医 品により、発病因子であるホモシステイン が細胞内で増加するのを効果的に抑制する め、ホモシステイン酸の濃度上昇に伴う疾 の発現が顕著に抑制された。

 最後に、上述した各実施の形態の説明は 発明の一例であり、本発明は上述の実施の 態に限定されることはない。このため、上 した各実施の形態以外であっても、本発明 係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば 設計等に応じて種々の変更が可能であるこ はもちろんである。