Login| Sign Up| Help| Contact|

Patent Searching and Data


Title:
R-T-B SINTERED MAGNET
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/139559
Kind Code:
A1
Abstract:
R-T-B sintered magnet comprising 12 to 17 atom% rare earth element (R), 5.0 to 8.0 atom% boron (B), 0.02 to 0.3 atom% Mn and the balance transition metal (T). The rare earth element (R) is at least one member selected from among rare earth elements including Y(yttrium), wherein 0.2 to 10 atom% Pr is contained. The element of transition metal (T) contains Fe as a main component.

Inventors:
TOMIZAWA HIROYUKI (JP)
Application Number:
PCT/JP2007/059384
Publication Date:
November 20, 2008
Filing Date:
May 02, 2007
Export Citation:
Click for automatic bibliography generation   Help
Assignee:
HITACHI METALS LTD (JP)
TOMIZAWA HIROYUKI (JP)
International Classes:
H01F1/053; C22C38/00; H01F1/08
Foreign References:
JP2006303436A2006-11-02
JPS5989401A1984-05-23
JPS647503A1989-01-11
JPS6223960A1987-01-31
US4917778A1990-04-17
JP2006303436A2006-11-02
EP1705671A22006-09-27
Other References:
See also references of EP 2034493A4
S. HIROSAWA ET AL.: "Magnetization and Magnetic Anisotropy of Nd2Fe14B Measured on Single Crystals", J. APPL. PHYS., vol. 59, 1986, pages 873 - 879
Attorney, Agent or Firm:
OKUDA, Seiji (10th Floor Osaka Securities Exchange Bldg., 8-16, Kitahama 1-chome, Chuo-ku, Osaka-sh, Osaka 41, JP)
Download PDF:
Claims:
 希土類元素R:12原子%以上、17原子%以下、
 硼素B:5.0原子%以上、8.0原子%以下、
 Mn:0.02原子%以上、0.3原子%以下
 遷移金属T:残部
を含有し、
 希土類元素Rは、Y(イットリウム)を含む希土類元素から選択された少なくとも1種であって、
 Pr:0.2原子%以上、10原子%以下を含有し、
 遷移元素Tは、Feを主成分として含有する、R-T-B系焼結磁石。
 希土類元素Rとして、TbおよびDyの少なくとも一方を含む請求項1に記載のR-T-B系焼結磁石。
 遷移金属Tとして、Co:20原子%以下を含有する、請求項1に記載のR-T-B系焼結磁石。
 希土類元素R:12原子%以上、17原子%以下、
 硼素B:5.0原子%以上、8.0原子%以下、
 Mn:0.02原子%以上、0.3原子%以下
 添加元素M:0を含まず、5.0原子%以下、
 遷移金属T:残部
を含有し、
 希土類元素Rは、Y(イットリウム)を含む希土類元素から選択された少なくとも1種であって、
 Pr:0.2原子%以上、10原子%以下を含有し、
遷移元素Tは、主成分としてFeを含有し、
 添加元素Mは、Al、Ni、Cu、Zn、Ga、Ag、In、Sn、Bi、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、およびWからなる群から選択された少なくとも1種である、R-T-M-B系焼結磁石。
 希土類元素Rとして、TbおよびDyの少なくとも一方を含む請求項4に記載のR-T-M-B系焼結磁石。
 遷移金属Tとして、Co:20原子%以下を含有する、請求項5に記載のR-T-M-B系焼結磁石。
Description:
R-T-B系焼結磁石

 本願発明は、R-T-B(希土類-鉄-硼素)系焼結 石に関する。

 R-T-B系焼結磁石は、その優れた磁気特性 より、各種モータ、アクチュエータなど、 々な用途に使用され、エレクトロニクス産 においては欠くことのできない材料となっ いる。また、省エネルギー志向から、ます す用途が拡大している。

 近年では、ハイブリッド自動車の駆動/発 電用回転機や、エレベーターの巻上機用モー タなど、従来以上に高性能が要求される用途 が急拡大しており、それに伴い、要求性能も ますます厳しくなっている。

 元来、R-T-B系磁石は、強磁性を失う温度 あるキュリー点が300℃程度と比較的低く、 のため不可逆熱減磁が生じやすいと云う欠 を有しており、この改善のため、希土類種 調整により保磁力を高めたり、特許文献1な に記載されたCo添加によりキュリー点を高 るなどの方策が採られていた。

 保磁力を高める方法にはいくつかの方法 提案されている。

 一つは、例えば特許文献2に示された技術 で、希土類元素中に、特定比率のDy、Tb等の 希土類元素を含めることである。実用上、Dy とTbの2種のみが有効である。この方法は、磁 性を担う磁石主相の異方性磁界そのものを高 めて、磁石としての保磁力を高めるものであ る。

 次に、例えば特許文献3、4などに示され 、Al、Ga、Sn、Cu、Agなどの添加元素により保 力を高める方法である。これらの元素は、 細は未だ完全に解明されたわけではないが 主としてR-richと呼ばれる粒界相の、高温域 の主相との濡れ性など、物性を変えて、ミ ロな組織を変えることで保磁力を高める効 を有する。

 更に、例えば特許文献5などに示されたTi V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、W等の添加元素は、焼 時の結晶粒成長を抑制し、結果的に焼結体 金属組織を微細化することで保磁力を高め 働きをする。

 また、希土類種の選定については、例えば 特許文献1などに種々の希土類元素を用いた 場合のR 2 Fe 14 B化合物の磁気特性が示されており、これを 考にして組成設計ができる。例えば、Prは異 方性磁界の温度依存性がNdよりも大きいため 室温の保磁力を高めても、80℃を越える温 域では却ってNdよりも小さな保磁力となり、 耐熱性の観点からは逆効果であることが推察 できる。

 これらの手法のうち、重希土類を用いる方 が磁束密度の低下が比較的小さいため、最 有用である。一方、他の方法は、磁石の磁 密度の低下が大きくなるので、活用範囲が い。実用磁石では、これらの技術が適宜組 合わされて利用されている。

特開昭59-64733号公報

特開昭60-34005号公報

特開昭59-89401号公報

特開昭64-7503号公報

特開昭62-23960号公報 Magnetization and magnetic anisotropy of Nd2Fe14B  measured  on single crystals (S.Hirosawa et.al.) J.  Appl. Phys., 59(1986)873-879

 DyやTbなどの重希土類元素は、希土類元素 の中では希少で高価なため、大量に用いると 磁石の価格が高くなる等の問題が生じる。ま た、用途の急拡大により、重希土類元素の、 埋蔵量や産出地域などの資源的制約が問題と なっている。

 また、前述のように他の方法は、それぞ 単独での効果がそれほど大きくなく、また 般にどの方法も磁石の磁束密度を大きく低 させることから、重希土類元素を使わずに 磁力を高めることは非常に困難であった。

 本願の目的は、Dy、Tb等の重希土類元素の 効果とは独立に作用する、新たな保磁力向上 手段を確立することにある。

 本願発明のR-T-B系焼結磁石は、希土類元 R:12原子%以上、17原子%以下、硼素B:5.0原子%以 上、8.0原子%以下、Mn:0.02原子%以上、0.3原子% 下、遷移金属T:残部を含有し、希土類元素R 、Y(イットリウム)を含む希土類元素から選 された少なくとも1種であって、Pr:0.2原子%以 上、10原子%以下を含有し、遷移元素Tは、Feを 主成分として含有する。

 好ましい実施形態において、希土類元素R として、TbおよびDyの少なくとも一方を含む

 好ましい実施形態において、遷移金属Tと して、Co:20原子%以下を含有する。

 本願発明のR-T-M-B系焼結磁石は、希土類元素 R:12原子%以上、17原子%以下、硼素B:5.0原子%以 、8.0原子%以下、Mn:0.02原子%以上、0.3原子%以 下、添加元素M:0を含まず、5.0原子%以下、遷 金属T:残部
を含有し、希土類元素Rは、Y(イットリウム) 含む希土類元素から選択された少なくとも1 であって、Pr:0.2原子%以上、10原子%以下を含 有し、遷移元素Tは、主成分としてFeを含有し 、添加元素Mは、Al、Ni、Cu、Zn、Ga、Ag、In、Sn Bi、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、およびWか なる群から選択された少なくとも1種である 、
 好ましい実施形態において、希土類元素Rと して、TbおよびDyの少なくとも一方を含む。

 好ましい実施形態において、遷移金属Tと して、Co:20原子%以下を含有する。

 R-T-B系焼結磁石において、Prを必須とし、 さらに所定範囲の量のMnを添加することで、 温付近の保磁力を改善すると共に、80℃以 の高温域でも従来の磁石より高い保磁力が られる。また、所定量のMnの添加により、焼 結磁石製造工程において、焼結反応を促進し 、結果として低温または短時間の焼結を可能 とし、焼結組織が均質化するため、減磁曲線 の角形性をも向上させることができる。

R-T-B系焼結磁石において、種々の希土 R種における焼結磁石の保磁力の温度変化を すグラフである。 R-T-B系焼結磁石において、R=Nd+Prの場合 に関し、Mn添加量の差異による焼結磁石の保 力の温度変化の挙動差異を示すグラフであ 。 図2Aのグラフの一部を拡大したグラフ ある。 Nd-Pr-Dy-Fe-Co-Al-Cu-Mn-B焼結磁石において、 Mn添加量xと室温の保磁力との関係を示したグ ラフである。 実施例の組成を示す表である。 実施例の組成を示す表である。

 本願発明者は、磁石組成のうち、希土類 素の一部にPrを用い、かつ、Mnを添加するこ とにより、室温での保磁力を高めると同時に 、従来Prを用いた場合の欠点であった80℃以 の温度域での保磁力の低下を抑制できるこ を見出した。

 本願発明のR-T-B系焼結磁石は、希土類元 R:12原子%以上、17原子%以下、硼素B:5.0原子%以 上、8.0原子%以下、Mn:0.02原子%以上、0.3原子% 下、遷移金属T:残部を含有する。

 希土類元素Rは、Y(イットリウム)を含む希 土類元素から選択された少なくとも1種であ て、Pr:0.2原子%以上、10原子%以下を含有する また、遷移元素Tは、Feを主成分として含有 る。

 また、種々の効果を得るため、Ni、Cu、Zn Ga、Ag、In、Sn、Bi、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf Ta、およびWからなる群から選択された少な とも1種の添加元素Mを添加しても良い。

 従来、Mn添加の影響は、キュリー点、異方 磁界、磁化の全てを低下させるものと認識 れていた。一方、Prは、Pr 2 Fe 14 B化合物の物性として種々調査されており、 方性磁界については室温付近ではNdの場合よ り大きいにも関わらず80℃付近で逆転するこ 、磁化はNdの場合に比べやや小さいこと等 公知である。

 しかしながら、PrとMnを同時に用いた場合の 効果については、これまで全く知られていな い。すなわち、Nd 2 Fe 14 B相を主とする磁石では、FeをMnで置換すると 磁力、磁化共に低下するのに対し、本願発 は、Ndの一部をPrで置換した場合には、保磁 力が向上することを新たに知見したものであ る。また、この技術は、従来知られている保 磁力向上手段とは完全に独立で作用する。

[組成]
 本願発明における希土類元素の成分は、本 発明の効果を得るには重要な限定項目であ 。R-T-B系焼結磁石の高性能を発現させるに 、一般にNdが必須である。本願発明において は、保磁力向上を目的とするため、Rは、Ndを 基本とし、Prを所定量加える。

 Prの量については、Prが所定量未満である と本願発明の効果が得られず、本願発明の必 須元素であるMn添加により磁化も保磁力も低 してしまう。Prが所定量を超えると、残留 化の低下が大きくなると共に、100℃を超え 温度域の保磁力低下が著しくなるので、好 しくない。また、所定量以上のPr量では、後 に述べるMn添加によって保磁力を高めるには 多量のMnが必要になり、その場合、Mn添加自 体が保磁力を低下させるため、効果が相殺さ れてしまうという問題も生じる。

 好ましいPrの組成範囲の下限は、0.2原子% 上、さらに好ましくは0.5原子%以上であり、 好ましいPrの上限は、10原子%以下、さらに好 しくは8.0原子%以下である。

 Rの量は、以下に示す所定範囲であれば、多 いほど保磁力が高く、同時に残留磁化が小さ くなる傾向にある。12原子%未満であると、主 相であるR 2 T 14 B化合物の量が少なくなり、代わって、例え Feなどの軟磁性相が生成して保磁力が大幅に 低下する。一方、17原子%を超えると、主相で あるR 2 T 14 B化合物の量が少なくなって磁化が低下する 共に、余剰のRが金属状態で主相粒界に集ま ので、耐食性が著しく低下する恐れがある 従って、Rは、12原子%以上、17原子%以下が好 ましい。さらに好ましくは、Rは、12.5原子%以 上、15原子%以下である。

 保磁力向上に有効な、TbやDyの添加は、本 願発明の技術と相反するものではないから、 必要な磁気特性、特に保磁力に応じて、1種 たは2種を添加することができる。TbおよびDy の少なくとも一方による合計置換量は、6原 %を超えると、残留磁化が1.1Tを下回り、特に 高温環境での用途を考慮した場合、Sm-Co磁石 性能が逆転する。またTbやDyを大量に用いる と、磁石の原料費も高額になり、この点でも Sm-Co磁石に対する優位性が小さくなることか 、工業的に有用なTbおよび/またはDyの量は 6原子%以下である。さらに、Yを含むその他 希土類元素は、磁気特性上は有用ではない 、不可避不純物として含むことはできる。

 硼素は、R-T-B系焼結磁石の形成には必須の 素であり、この量により主相であるR 2 T 14 B化合物の量が決まる。焼結磁石の保磁力を 保しつつ大きな磁化を得るためには、Bの量 重要である。B量は、以下に示す所定範囲の 量であれば、多いほど大きな保磁力を得やす くなる。また、B量が少ないときの保磁力は Bの所定量を境に急激に小さくなるため、工 的にはB量が所定量を下回らないことは特に 重要である。残留磁化はB量に応じて多いほ 小さくなる。B量が5.0原子%未満であると、主 相の量が少なくなると共に主相以外の軟磁性 化合物が生成し、磁石の保磁力が低下する。 一方、8.0原子%を超えると、主相の量が減少 、磁石の磁化が低下する。従って、Bの量は 5.0原子%以上、8.0原子%以下である。高性能 石を得るためにさらに好ましい範囲は、5.5 子%以上、7.0原子%以下である。

 遷移金属Tは、Feを基本とし、Mnを必須元 として含む。Mnは、磁石合金中では原則とし て主相に固溶し、R=Ndの場合は、量に比例し 主相の磁化、異方性磁界、キュリー点の全 が低下するので、磁石の性能は低下する。 のため従来はMnの量は極力少なくなるように されてきた。一方、R=Prであると、Mn量の少な い領域で磁石の保磁力が僅かに向上する組成 範囲が存在し、R=Pr+Ndとした場合には、R=Prの 合の欠点である高温域での低い保磁力の欠 も解消される。

 図1は、Mn量(一定)=0.01原子%のときの、R-T-B 系焼結磁石の保磁力の温度変化を、種々の希 土類種について示すグラフである。図中、曲 線1は、R=Ndの試料1の特性を示し、曲線(破線)4 は、R=Nd+Dyの試料4の特性を示している。R=Ndに 対し、一部をDy等の重希土類で置換した場合 図示した温度範囲全域で保磁力が向上する とがわかる。また、曲線2、3は、R=Pr+Ndの試 2、3の特性を示している。試料2、3の室温に おける保磁力は、R=Ndの試料の保磁力に比べ と、Pr置換量に応じて向上するが、この傾向 は80℃以上では逆転する。80℃以上の高温域 の磁石使用を考慮する場合、Pr置換は逆効果 になる。また、曲線1と曲線2、3との線の交点 は、Pr量の異なる試料2と試料3との間で差異 なく、80℃付近である。

 図2Aは、Mnの添加が磁石の保磁力に与える 効果を模式的に示すグラフである。図2Bは、 2Aのグラフの一部を拡大したグラフである ここで、曲線1、3は、図1に示す曲線1、3と同 じものである。曲線5は、試料3のMn量を0.15原 %に変更した試料5の特性を示している。Mnを 極微量添加した試料5では、すべての温度域 試料3よりも大きな保磁力を示し、その結果 試料1と保磁力が逆転する温度がより高い温 度にシフトしている。曲線6は、R=Ndの試料にM nを添加した試料6の特性を示しており、何れ 温度でも保磁力が低下している。

 Mnの量は、0.3原子%を超えると、磁化の低 が顕在化し、また保磁力の低下も顕在化す ため、0.3原子%以下とする。さらに好ましく は、Mn無添加、またはMn:0.01原子%以下の場合 得られる保磁力(室温)と同等以上の保磁力が 得られる0.02原子%未満である。

 一方、Mnの量が0.02原子%未満では、本願発 明の効果は現れないため、好ましいMn量の下 は0.02原子%である。

 Pr使用時のMnの効果について、メカニズムが 解明されているわけではないが、可能性とし ては2点挙げられる。一つは、R=Prにおいて、 定のMn量でR 2 Fe 14 B化合物の異方性磁界を高める働きをしてい こと、この種の働きは、例えばR=Yにおいて 告されている。もう一つの考え方は、Mnが主 相にあるか否かは別として、強磁性の主相と 常磁性の粒界相との界面の反応に寄与し、例 えば濡れ性の改善や結晶の整合性の改善効果 をもたらすというものである。現時点ではど ちらが正しいか、また他の要因があるかの判 断はできない。

 さらに、Mnには、微量の添加で焼結反応 促進するという、焼結磁石製造上有利な特 を有していることも明らかとなった。Mn添加 効果により、より低温、またはより短時間で 焼結反応による緻密化が進行するため、結晶 粒成長が顕著になる前に充分な焼結密度が得 られ、かつ組織が均質になるために磁石特性 上も減磁曲線の角形性が向上するという効果 をもたらす。

 Mnによる焼結挙動改善の効果を得るため は、Mnを0.02原子%以上添加すれば効果が認め れるが、より好ましくは、0.05原子%以上で る。

 焼結性改善効果を発揮し得る、コスト面で 用な元素はMnだけであると思われる。この 由は、Mnが有用元素の中で唯一、実質的に主 相のみに固溶する元素であるからであると考 えられる。従来、焼結性改善のための元素と しては、AlやCuが挙げられていたが、これら 粒界相の物性を改善する効果によるもので り、主相であるR 2 T 14 B相の焼結反応には間接的にしか作用しない に対し、Mnは、主相の焼結反応に直接作用す る。

 R-T-B系焼結磁石では、磁気特性や耐食性 改善のために、Feの一部をCoで置換する場合 ある。本願発明の実施にあたって、Co添加 本願発明の効果を阻害するものではなく、 ュリー点の上昇や耐食性の向上などの効果 得られることから、Coの添加は好ましい。Co 加量は、20原子%を超えると、磁化の低下が きくなり、また保磁力が低下するので、Co 添加量の上限は原子%とするのが好ましい。

 添加元素Mは、その作用効果から、Al、Ni Cu、Zn、Ga、Ag、In、Sn、Biの第1グループと、Ti 、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wの第2グループに 分けられる。前者の第1グループ元素は、磁 の金属組織において主に粒界に存在し、粒 相と主相との相互作用に寄与する。具体的 は、粒界相の融点を低下させて磁石の焼結 動を改善したり、主相と粒界相の濡れ性を 善して粒界相を主相界面により効果的に回 込ませ、結果として磁石の保磁力を高める きをする。これらの元素で最も効果的に用 られるのはAlとCuである。一方後者の第2グル ープは、高融点の析出物を生成し、焼結組織 を微細にして保磁力を高める働きをする。但 し、第1および第2グループの何れの元素も、 磁性相としての働きは示さないので、添加 が多いと、磁石の磁化は低下する。従って これら添加元素の最大量は、すべての元素 合計で5原子%以下にする。さらに好ましく 、2原子%以下が良い。

 その他の元素は、本願発明の限定にはな が、本願発明の効果とは無関係であり、そ 存在を排除するものではない。例えば、水 、炭素、窒素、酸素は、製造工程上不可避 あり、本願発明の実施例においても分析を えば検出される。これらのうち、炭素や窒 は、Bと置換可能である場合もあるが、その 場合は磁石の保磁力が低下するなどの磁気特 性への顕著な影響が生じる。通常の焼結磁石 においては、炭素や窒素は、酸素と同様、希 土類と反応して何らかの形態の炭化物、窒化 物、酸化物を形成し、磁気特性に影響を与え ない形で存在しているものと思われる。また 、水素や窒素は、主相の格子間に侵入し、キ ュリー点を向上させる等の効果も期待できる が、本願発明とは独立の効果である。F、Cl、 Mg、Ca等は、希土類金属の精錬過程で混入す 恐れがあり、そのまま磁石組成に含まれる 能性がある。P、Sは、Fe原料に含まれている 能性がある。また、Si、Alは、原料ソースで あるフェロボロン合金から取り込まれる以外 に、磁石用母合金の溶解時にるつぼ成分が混 入する可能性もある。

[製造方法]
 本願発明は、R-T-B系焼結磁石のあらゆる製 方法で同様の効果が得られ、従って製造方 を限定するものではないが、以下に製造方 の一例を示す。

[原料合金]
 種々の製法によって製造され、また種々の 態を有する原料合金が利用可能である。原 合金の代表例は、インゴット、ストリップ ャスト、アトマイズ粉末、還元拡散法によ 粉末、また超急冷法による合金リボン等で る。これらの原料合金は単独で用いられる けではなく、異なる種類の原料合金を混合 て用いることもできる。さらに、組成の異 る合金を混合して用いる、いわゆる2合金法 を採用することもできる。この場合、高温域 での保磁力改善効果と焼結性改善効果を同時 に得るためには、MnとPrは、両方の元素を両 の合金に添加する方法、両方の元素を片側 合金:好ましくは磁石合金の組成に近い主相 合金に添加する方法のいずれかが選択でき 。焼結性の改善だけを目的とする場合は、M nとPrをそれぞれ別の合金に含ませて混合する こともできるが、高温域の保磁力改善効果は 小さくなる場合がある。

 また、母合金に対し、組織改善、元素分 改善、均質化等を目的として、熱処理を行 こともできる。

[粉砕]
 粉砕工程も、任意の方法が採られる。出発 料の性状によって選択することができるが 例えばストリップキャスト合金を出発原料 する場合、粗粉砕-微粉砕の2段階の工程を ることが多い。このとき、粗粉砕は、機械 に粉砕する方法や、希土類合金に適する、 素脆化を利用した粉砕方法を採ることがで る。水素脆化法とは、合金を容器に水素ガ と共に封じ込め、合金に水素ガスを侵入さ 、その際の合金の体積変化に伴う歪を利用 て粉砕する方法である。この方法では、粗 末に多量の水素が含まれた形になるので、 要に応じて粗粉末を加熱することで、余分 水素を放出させることもできる。

 なお、粗粉砕の後、微粉砕工程の前に、 えばふるいなどを用いて粒度を特定粒度以 に揃えることもできる。

 微粉砕は、高速気流を用いるジェットミ 粉砕が一般的だが、機械的に微粉砕する方 や、分散媒を用いた湿式ボールミル粉砕も 用可能である。また、粉砕に際して、事前 粉砕助剤を加えても良い。特に微粉砕工程 粉砕効率を高めるためには有用である。

 なお、原料合金の取扱、粉砕粉の取扱に いては、高性能磁石を製造するためには不 性雰囲気で取り扱うことが重要である。不 性雰囲気とは、少なくとも常温での取扱に しては窒素ガスで充分であるが、例えば300 以上の熱処理を行うような場合はヘリウム スまたはアルゴンガスを用いる必要がある

 粉砕粒度は、磁石の性能と、次の成形工 での取り扱い上の制約とから決めればよい 、通常、気流分散式レーザー回折法によるD 50粒径で3-7μmとする。この粒度は、逆に、高 気流式の粉砕方法で得やすい粒度範囲であ 。なお、微粉粒度を気流分散法で測るのは 微粉末が強磁性体で容易に磁気的に凝集し しまうためである。

[成形]
 異方性焼結磁石では、磁界中で微粉末を成 し、磁石の磁気異方性を付与する。一般的 は、粉砕工程で得られた微粉末を、成形機 ダイスホールに充填し、パンチでキャビテ を構成しつつ外部から磁界を印加し、その まパンチで加圧して成形した後取り出す。 の工程において、原料の微粉末は、磁界に る配向を向上させる目的、また金型潤滑を める目的で潤滑剤を添加したものでも良い この潤滑剤は、固体状のものや液体状のも があり、種々の要因を考慮して選択すれば い。また、ダイスホールへの充填を容易に ることなどを目的に、適宜造粒することも きる。

 また、配向のために印加する磁界として 直流電源による静磁界だけでなく、例えば ンデンサ放電によるパルス磁界や、交流磁 も利用できる。

 本願発明の組成系では、磁界の強さは通 0.4MA/m以上、より好ましくは0.8MA/m以上を用 る。さらに、成形後、脱磁処理として、逆 界を印加することもできる。脱磁処理によ 、その後の成形体の取扱において、残磁が く、取扱が容易になる効果がある。

 なお、成形時の磁界印加の方向を工夫す ことで、種々の配向状態の磁石を作ること できる。例えば、円環形状では軸方向の配 の他、径方向のラジアル配向や、磁極を複 持つ極異方配向も可能である。

 成形方法も、ダイスとパンチによる方法 外に、ゴム型を用いる成形方法も適用可能 ある。さらに、成形と磁界印加を別々に行 ても良い。

[焼結]
 焼結工程は、真空、またはアルゴンガス雰 気で行われる。雰囲気の圧力等は任意に設 できる。なお、ヘリウムガス雰囲気でも焼 は可能だが、ヘリウムガスの熱伝導の良さ ために焼結炉の熱効率が低下する可能性が る。

 焼結は、通常、1000℃-1100℃で30分-16時間 われる。本願発明の組成範囲では液相焼結 なるので、さほど高い温度は必要でない。 お、同じ温度または異なる温度で、複数回 分けて焼結を行うこともできる。温度保持 の冷却については、必ずしも急冷または徐 が必須でなく、以下の熱処理を含め、適宜 件を組み合わせることができる。

 焼結後は、本願発明の磁石では、比重7.3 上が得られる。より好ましくは7.4以上であ 。

 なお、外部から圧力を加えながら加温す ホットプレスや、成形体に通電してジュー 熱により過熱する通電焼結など、粉末冶金 で用いられるあらゆる焼結手段も適用でき 。これらの手法を用いる場合は、焼結温度 時間は前記の限りでない。

[熱処理]
 保磁力を高めることを目的に、焼結終了後 焼結温度以下で熱処理を行うことができる また、この熱処理を、同じ温度または温度 変えて複数回行っても良い。熱処理の際の 却条件も、種々の条件を選択できる。

 なお、焼結上がりで充分な保磁力が得ら ている場合は、あえて熱処理を行う必要は い。

[加工]
 焼結後の磁石は、最終形状に近い状態のこ もあるが、一般的には切断、研削、研磨等 機械加工を行い、所定形状に仕上げる。な 、この加工は、焼結後であれば、熱処理の でも後でも、または複数回の熱処理の中間 行っても良い。

[表面処理]
 本願発明の組成系の焼結磁石は、通常の環 では長期的には錆が発生するため、適宜表 を被覆する処理を行う。例えば、樹脂塗装 金属めっき、蒸着膜などが用いられており 用途、要求性能、コストを勘案して適切な 面処理を選択することができる。

[着磁]
 本願発明の磁石は、通常、パルス磁界で着 する。この工程は、一般的には製品の組立 便から、組立後に行うことが多いが、当然 石単体で着磁してから製品に組み込むこと 可能である。

 着磁の方向は、当然磁界中成形時の配向 向を考慮して決めるべきであり、その方向 一致して初めて高性能磁石が得られるが、 途によっては必ずしも成形時の配向方向と 磁方向を一致させる必要はない。

 (実施例1)
 純度99.5%以上のPr、Nd、純度99.9%以上のTb、Dy 電解鉄、低炭素フェロボロン合金を主とし 、その他目的元素を純金属の形で添加して 的組成の合金を溶解し、ストリップキャス 法で鋳造し、厚さ0.3-0.4mmの板状合金を得た

 この合金を原料として、水素加圧雰囲気 水素脆化させた後、600℃まで真空中で加熱 冷却した後、ふるいにて425μm以下の粒度の 金粗粉を得た。この粗粉に対し、質量比で0 .05%のステアリン酸亜鉛を添加、混合した。

 次いでジェットミル装置を用いて、窒素 流中で乾式粉砕し、粒径D50が4-5μmである微 砕粉を得た。このとき、特に酸素量を目標 する試料では、粉砕ガス中の酸素濃度を50pp m以下に制御している。なお、この粒径は、 流分散法によるレーザー回折法で得られた である。

 得られた微粉末を、磁界中で成形して成 体を作製した。このときの磁界はおよそ0.8M A/mの静磁界で、加圧力は98MPaとした。なお、 界印加方向と加圧方向とは直交している。 た、特に酸素量を目標とする試料では、粉 から焼結炉に入れるまでの雰囲気を可能な り窒素雰囲気とした。

 次に、この成形体を、真空中、1020-1080℃の 度範囲で2時間焼結した。焼結温度は組成に より異なるが、何れも焼結後の密度が7.5Mg/m 3 が得られる範囲で低い温度を選択して焼結を 行った。

 得られた焼結体の組成を分析した結果を 図4に示す。図5は、図4の結果を元に、原子% に換算したものである。なお、分析は、ICPを 用いた。但し酸素、窒素、炭素は、ガス分析 装置での分析結果である。なお、何れの試料 も、溶解法による水素分析の結果、水素量は 10-20ppmの範囲にあった。

 表以外の元素では、水素の他にSi、Ca、Cr La、Ce等が検出される場合があるが、SiはAl 共に主にフェロボロン原料と合金溶解時の つぼから混入し、Ca、La、Ceは希土類の原料 ら混入する。またMnやCrは、鉄から混入する 能性があり、これらを完全に0にすることは できない。従って、例えば試料1のAlは、事実 上無添加を狙ったものであるにも関わらず分 析結果としてはAlが検出される。

 得られた焼結体に対し、Ar雰囲気中にて 種々の温度で1時間の熱処理を行い、冷却し 。熱処理は、組成により種々の温度条件で い、また、温度を変えて最大3回の熱処理を 行なったものもある。これらの試料を、機械 加工後、B-Hトレーサーにより室温での磁気特 性を測定した。更に同じ試料で、140℃での磁 気特性を測定した。その結果を表1に示す。

 なお、各組成の試料で種々の熱処理条件 もののうち、それぞれ室温での保磁力が最 大きい試料を評価対象とした。

 試料No.13-18は、Mn:0.02原子%未満の比較例を 示し、PrとMnとを共に添加した本願発明の実 例No.1-12に比べて、140℃の保磁力が低い。

 試料No.19、20は、希土類種がPrまたはNdど らか一方のみの比較例を示し、本願発明、 の元素の量が同じでないが、例えばNo.4と比 すればNo.19では室温の保磁力が低く、No.20で は140℃の保磁力が低い。

 (実施例2)
 Nd 13.5-A Pr A Dy 1.0 Fe bal. Co 2.0 Al 0.5 Cu 0.1 Mn x B 6.0 (原子%)組成の磁石において、Pr量:A=0、2、5、8 、11(原子%)の場合について、種々のMnの値xに ける室温の保磁力を、図3に示す。なお、本 磁石は、実施例1と同様の製造方法によった

 A=0の場合、Mnを添加すると、保磁力は一 に低下するのに対し、希土類の一部をPrで置 換した場合は、特定量のMn添加の範囲では、 磁力が向上することがわかる。

 Pr量:A=11原子%の場合は、Mnを添加しても明 確な保磁力の向上は認められない。

 (実施例3)
 Nd 11.5 Pr 1.0 Dy 1.2 Fe bal. Cu 0.1 Mn x B 6.0 (原子%)組成の磁石において、種々のxの値の 結磁石を作製し、磁気特性を評価した。評 結果を表2に示す。

 製造方法は実施例1と同様に行い、すべての 組成で焼結を1020℃2時間で行った。磁気特性 評価は、指標としてH k を求め、H k /H cJ の値を角形性の指標とした。H k は、減磁界中で、磁化の値がJ r の90%になったときの減磁界の値であり、H k /H cJ の値が1に近いほど角形性が良く、磁石とし 有用であると判断される。

 表2によれば、Mn添加量が0.02原子%以上では 同条件の焼結において磁石密度が向上し、 の結果残留磁化J r 、減磁曲線の角形比H k /H cJ が向上する。一方、Mn量が0.50原子%を超える 、Mn添加による主相の磁化低下により、Mn:0.0 1原子%の試料21よりも残留磁化J r が下回る。Mn:0.02原子%以上0.30原子%以下の範 において、同一焼結条件下で好ましい磁気 性が得られる組成範囲である。

 なお、焼結磁石に含まれる不可避不純物 して、ガス分析によれば、酸素:0.44-0.49質量 %、炭素:0.035-0.043質量%、窒素:0.010-0.014質量%、 水素:<0.002質量%の範囲で含有しており、ICP 析では、Siが最大0.04質量%、Cr、Ce、Ca等が0.0 1質量%以下検出された。

 (実施例4)
 実施例1と同様の方法で、種々の組成の焼結 磁石を作製した。Mnの添加量は0.06原子%に固 し、希土類量、B量、添加元素Mとして第1グ ープからAl、Cu、Ga、第2グループからMoを選 、その添加の有無や量を種々に変えた。こ ときの磁石組成(分析値)を表3に、磁気特性 表4に示す。

 何れの組成においても、本願発明の効果 発現する。

 なお、焼結磁石に含まれる表以外の不可 不純物として、ガス分析によれば、炭素:0.0 32-0.057質量%、窒素:0.010-0.027質量%、水素:<0.0 02質量%の範囲で含有しており、ICP分析では、 Siが最大0.05質量%、Cr、Ce、Ca等が0.01質量%以下 検出された。

 本願発明による焼結磁石は、高性能な焼 磁石が使用される各種の用途に広く利用さ 得る。