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Patent Searching and Data


Title:
SUSTAINED RELEASE PREPARATION OF BASIC FIBROBLAST GROWTH FACTOR
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/120741
Kind Code:
A1
Abstract:
It is intended to provide a sustained release preparation which contains an agarose hydrogel carrying basic fibroblast growth factor and/or its homolog. A sustained release preparation wherein the agarose hydrogel is prepared from agarose alone or in a granular form is preferred. It is also intended to provide use of basic fibroblast growth factor and/or its homolog and an agarose hydrogel for producing the sustained release preparation as described above; and the sustained release preparation as described above and a commercial package having a description relating to the sustained release preparation wherein it is indicated that the sustained release preparation can be used for promoting angiogenesis or tissue regeneration or should be used therefor.

Inventors:
MORIBE KUNIKAZU (JP)
ISHIDA ATSUSHI (JP)
YAMAMOTO KEIJI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/056162
Publication Date:
October 09, 2008
Filing Date:
March 28, 2008
Export Citation:
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Assignee:
UNIV CHIBA NAT UNIV CORP (JP)
KAKEN PHARMA CO LTD (JP)
MORIBE KUNIKAZU (JP)
ISHIDA ATSUSHI (JP)
YAMAMOTO KEIJI (JP)
International Classes:
A61K38/22; A61K9/14; A61K47/36; A61P9/00; A61P9/10
Foreign References:
JP2000178180A2000-06-27
Other References:
KURANE A. ET AL.: "In vivo cellular repopulation of tubular elastin scaffolds mediated by basic fibroblast growth factor", BIOMATERIALS, vol. 28, 25 February 2007 (2007-02-25), pages 2830 - 2838, XP022004004
LIU J. ET AL.: "SDS-aided immobilization and controlled release of camptothecin from agarose hydrogel", EUROPEAN JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES, vol. 25, no. 2-3, 2005, pages 237 - 244, XP004903821
HAGLUND B.O. ET AL.: "Dissolution Controlled Drug Release from Agarose Beads", DRUG DEVELOPMENT AND INDUSTRIAL PHARMACY, vol. 20, no. 6, 1994, pages 947 - 959
Attorney, Agent or Firm:
TAKASHIMA, Hajime (1-1 Fushimimachi 4-chome, Chuo-k, Osaka-shi Osaka 44, JP)
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Claims:
 塩基性線維芽細胞増殖因子及び/又はその同族体を担持させたアガロースハイドロゲルを含有してなる徐放性製剤。
 アガロースハイドロゲルがアガロースのみから調製されるものである、請求項1記載の製剤。
 アガロースハイドロゲルが粒子状である請求項1又は2に記載の製剤。
 吸水したときの粒子の平均粒子径が1.0~1000μmである、請求項3に記載の製剤。
 アガロースハイドロゲルの乾燥重量1mg当り、0.1μg~10mgの塩基性線維芽細胞増殖因子及び/又はその同族体が担持されたものである、請求項1~4いずれか1項に記載の製剤。
 血管新生促進又は組織再生に用いられる、請求項1~5いずれか1項に記載の製剤。
 請求項1~6のいずれか1項に記載の徐放性製剤を製造するための、塩基性線維芽細胞増殖因子及び/又はその同族体とアガロースハイドロゲルの使用。
 請求項1~6のいずれか1項に記載の徐放性製剤、及び当該徐放性製剤を血管新生促進又は組織再生に使用することができること又は使用すべきであることを記載した当該徐放性製剤に関する記載物を含む商業パッケージ。
Description:
塩基性線維芽細胞増殖因子の徐 性製剤

 本発明は、塩基性線維芽細胞増殖因子の 放性製剤に関する。詳しくは、アガロース 用いる塩基性線維芽細胞増殖因子の徐放性 剤及びその血管閉塞性疾患の治療又は再生 療分野における用途に関する。

 動脈硬化、血栓形成、動脈炎、外傷など 種原因に基づく慢性的な血管閉塞性状態が 続すると、閉塞部位の周辺及び下流の支配 織に血行不全に基づく虚血状態を来たし、 末的には組織の壊死に至ることがある。こ ような血管閉塞の治療には、近年、血管外 領域における手術手技の進歩や、各種イン ーベーション技術の開発により、重症の虚 症に対しても良好な予後が期待できるよう なった。しかし、広範囲にわたる閉塞例や 尿病に合併しやすい末梢型閉塞例など血行 建が不可能な症例も依然残されており、治 に難渋することが少なくない。これらの症 に対する治療は薬物療法が主体となるが、 の効果には限界がある。

 最近、新しい治療法として、治療的血管 生(Therapeutic angiogenesis)が注目を集めている この治療法は、虚血部位に血管新生を誘導 、側副血行路を発達させて血行を改善する いうものである。具体的には、血管新生を 導する増殖因子を投与する方法があげられ 。増殖因子の投与は、増殖因子タンパクの 与、増殖因子遺伝子の投与及びex vivoで増 因子遺伝子を導入した細胞の投与に大別さ る。

 増殖因子タンパクの投与方法については 既に各種増殖因子の経カテーテル的動脈内 与が試みられ、動物モデルでは良好な成績 報告されている(非特許文献1)。しかし、タ パク質薬剤は半減期が短いので、当該薬剤 作用効果を持続させるために、徐放性製剤 開発されている。これまでに、アルギン酸 ゼラチン、アガロース等の天然高分子を材 としてゲルマトリックスを調製し、マイク ビーズ、カプセルなどが放出担体として開 されてきた。

 アルギン酸は、海藻から単離される酸性 糖である。アルギン酸カルシウムがゲルの 製に通常用いられ、架橋したアルギン酸ゲ 製剤が塩基性線維芽細胞増殖因子の徐放性 剤として研究されている(非特許文献2、3)。

 塩基性線維芽細胞増殖因子(塩基性線維芽 細胞成長因子ともいう。以下、「bFGF」と省 する場合もある。)は、組織再生又は血管新 の用途が期待されている増殖因子の1つであ る。bFGFは、創傷治療に用いられており、治 的血管新生への臨床応用も実施されている bFGF製剤としては、特許文献1には、骨疾患治 療に有用なbFGFを含有する架橋ゼラチンゲル 剤が、特許文献2には、bFGFが優れた軟骨組織 新生ないし再生促進効果を有し、軟骨組織修 復に有用であることが記載されている。特許 文献3には、bFGFを含有する歯周疾患治療剤が 示されている。さらに、特許文献4には、歯 周病の処置に有用なbFGFを含有する歯科用粘 製剤が開示されている。

 ゼラチン、すなわち変性コラーゲンは、 物由来の生分解性材料であり、bFGFの徐放性 製剤にも使用されている。特許文献5には、 種の血管閉塞性疾患の治療に有用な、bFGFを 有する酸性ゼラチンハイドロゲル粒子が記 されている。また、上述したように、特許 献1には、骨疾患治療に有用なbFGFを含有す 架橋ゼラチンゲル製剤が記載されている。 性ゼラチンを用いて、bFGF以外の増殖因子の イドロゲル担体も調製されている(非特許文 献4~6)。

 特許文献5は、bFGFの徐放性担体として生 内分解性の酸性ゼラチンハイドロゲル粒子 用いる薬物送達システムを開示している。 性ゼラチンは、bFGFとイオン性相互作用によ 結合する。酸性ゼラチンハイドロゲルは、 えば、牛の骨のコラーゲンを水酸化カルシ ムで処理して得た酸性ゼラチンに、グルタ アルデヒドなどの架橋剤を加えて重合・ゲ 化することによって調製される。当該薬物 達システムは、ゼラチン粒子が所定の期間 生分解を受けながらbFGFを放出し、血流を顕 著に改善し得るものである。

 アガロースは、紅藻類(テングサ)から単離 精製される中性多糖である。アガロースマ クロ粒子は、抗癌治療の徐放薬に使用され きた(非特許文献7)。血管新生因子への利用 しては、アガロースとヒアルロン酸からな ハイドロゲルに血管新生因子を添加し、組 中に埋め込んで毛細血管が豊富な空隙を形 させる用具が開示されている(特許文献6、特 に実施例1、3)。アガロースハイドロゲル粒子 は、生体内で低分解性である。アガロースは 電荷を持っていないので、bFGFを取り込んだ ガロース粒子は不安定であると考えられる これまで、薬物送達システムとして、アガ ース単独からなる担体を用いてbFGFの効果を 告した文献はほとんどない。

国際公開第94/27630号パンフレット

特開平7-233085号公報

特開平7-17876号公報

国際公開第03/082321号パンフレット

特開2005-104910号公報

特開2000-178180号公報 Takeshita S, Zheng LP, Brogi E, Kearney M et  al: J Clin Invest, 1994, 93: 662-670 Tanihara M, Suzuki Y, Yamamoto E, Noguchi A, M izushima Y: J Biomed. Mater. Res, 2001, 56: 216-221 Suzuki Y, Nishimura Y, Tanihara M, Suzuki K, N akamura T, Shimizu Y, Yamawaki Y, Kakimaru Y: J Bio med. Mater. Res, 1998, 39: 317-322 Kawai K, Suzuki S, Tabata Y, Ikada Y, Nishimur a Y: Biomaterials, 2000, 21: 489-499 Yamamoto M, Tabata Y, Kawasaki H, Ikada Y: J. Mater. Sci. Mater. Med., 2000, 11: 213-218 Yamamoto M, Takahashi Y, Tabata Y: Biomaterials,  2003, 24:4375-4383 Liu J, Li L: Eur J Pharm Sci. 2005, 25(2-3):2 37-244

 bFGFの徐放性担体として酸性ゼラチンを用 いることは、bFGFと担体との親和性及び担体 しての生分解性に優れるものの、動物由来 原料は、例えば、牛海綿状脳症(BSE)が発生し た場合の原料供給の不安定性、タンパク成分 ゼラチンに対する免疫反応などのリスクも考 えられる。本発明の目的は、非動物由来の原 料を用いて、酸性ゼラチン徐放性製剤に匹敵 する新たなbFGFの徐放性製剤を提供すること ある。

 本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討した ころ、意外にもアガロースゲルがbFGFの徐放 性担体として優れていることを見出し、本発 明を完成するに至った。
 すなわち、本発明は、以下のものを提供す 。
〔1〕塩基性線維芽細胞増殖因子及び/又はそ 同族体を担持させたアガロースハイドロゲ を含有してなる徐放性製剤。
〔2〕アガロースハイドロゲルがアガロース みから調製されるものである、前記〔1〕記 の製剤。
〔3〕アガロースハイドロゲルが粒子状であ 前記〔1〕又は〔2〕に記載の製剤。
〔4〕吸水したときの粒子の平均粒子径が1.0~1 000μmである、前記〔3〕に記載の製剤。
〔5〕アガロースハイドロゲルの乾燥重量1mg り、0.1μg~10mgの塩基性線維芽細胞増殖因子及 び/又はその同族体が担持されたものである 前記〔1〕~〔4〕いずれか1つに記載の製剤。
〔6〕血管新生促進又は組織再生に用いられ 、前記〔1〕~〔5〕いずれか1つに記載の製剤
〔7〕前記〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載の 放性製剤を製造するための、塩基性線維芽 胞増殖因子及び/又はその同族体とアガロー スハイドロゲルの使用。
〔8〕前記〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載の 放性製剤、及び当該徐放性製剤を血管新生 進又は組織再生に使用することができるこ 又は使用すべきであることを記載した当該 放性製剤に関する記載物を含む商業パッケ ジ。

 本発明の徐放性製剤は、bFGFの担持性、徐 放性、血管新生作用に優れるものである。か かる効果は、生分解性のゼラチンを用いた徐 放性製剤と同等である。また、本発明の徐放 性製剤は、アガロースを原料としていること から、ゲル化の工程が1工程で完了し、ゼラ ンを原料とする場合の架橋処理が不要であ 点で、製造上有利である。

粒子状アガロースハイドロゲルの製造 程を示す模式図である。 粒子状アガロースハイドロゲルの特徴 示す図である。図2Aは凍結乾燥後のアガロ ス粒子の形状を、図2Bは水に分散後のアガロ ース粒子の形状を、図2Cは粒子径の分布を示 。 アガロースハイドロゲルディスク及び ガロースハイドロゲル粒子中のbFGFの保持率 を示すグラフである。図中、×はアガロース イドロゲルディスクの結果を、○はアガロ スハイドロゲル粒子の結果を示す。 アガロースハイドロゲル粒子またはゼ チンハイドロゲル粒子中のbFGFの保持率を示 すグラフである。図中、●はアガロースハイ ドロゲル粒子(bFGF50μg)の結果を、○はアガロ スハイドロゲル粒子(bFGF2μg)の結果を、黒塗 三角はゼラチンハイドロゲル粒子(bFGF50μg)の 果を示す。バーは平均±S.D.を示す。 レーザードップラー式血流画像化によ 、虚血肢モデルにおける血流の回復を定量 したグラフである。 bFGFを担持したアガロースハイドロゲル 粒子の注射後3週間の虚血肢筋肉のPCNA免疫染 を示す写真である。図6AはbFGFを担持したア ロースハイドロゲル粒子の結果を、図6BはbF GFを担持しないアガロースハイドロゲル粒子 結果を示す。

 本発明の徐放性製剤は、bFGF及び/又はそ 同族体を担持させたアガロースハイドロゲ を含有することを特徴とする。本発明にお て「徐放性製剤」とは、徐放性担体として ガロースハイドロゲルを用いてbFGF及び/又は その同族体を長期間に亘って放出可能な製剤 をいう。

 bFGF及びその同族体は、天然に存在するも のであってもよく、遺伝子組換え技術により 微生物もしくは培養細胞に産生させたものか ら単離精製することにより、又はそれらを化 学的修飾もしくは生物的修飾することにより 得られたものであってもよい。

 天然のbFGFとしては、哺乳動物由来のもの があげられる。哺乳動物としては、ヒト、サ ル、イヌ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ等があ げられる。bFGFはこれら哺乳動物から公知の 法により得ることができ、また、市販のも を用いることもできる。本発明で用いるbFGF しては特にヒトbFGF又はその同族体が好まし い。

 また本発明の徐放性製剤においては、有 成分としてbFGFの同族体を用いてもよい。こ こで、bFGFの同族体とは、下記〔I〕又は〔II のポリペプチドを意味する。

〔I〕特定の哺乳動物で産生されるbFGFと実 的に同一のアミノ酸配列からなるポリペプ ド。実質的に同一のアミノ酸配列とは、ア ノ酸配列中の1~6個のアミノ酸が別種のアミ 酸により置換されたものでbFGFの生物活性を 有するものを意味する。

〔II〕特定の哺乳動物で産生されるbFGFのN 端及び/又はC末端、あるいは上記〔I〕のポ ペプチドのN末端及び/又はC末端に、追加の ミノ酸セグメントが付加されたポリペプチ 。追加のアミノ酸セグメントとは、1~12個の ミノ酸からなり、bFGFの生物活性又は上記〔 I〕のポリペプチドの生物活性を損なわない のを意味する。

 ヒトbFGFはアミノ酸146個のポリペプチドで あるが、本発明の徐放性製剤においては、ヒ トbFGFの同族体(前記〔I〕の同族体)として、 えば特表平2-504468号公報に記載のアミノ酸146 個のポリペプチドを用いてもよい。このポリ ペプチドは、ヒトbFGFのアミノ酸配列を構成 る69位のシステイン(Cys)及び87位のシステイ (Cys)がそれぞれセリン(Ser)により置換された のである。

 また、前記〔II〕の同族体として、例え 特表昭63-500843号公報に記載のアミノ酸155個 ポリペプチドを用いてもよい。このポリペ チドは、ヒトbFGFのN末端にアミノ酸9個のセ メントが付加されたものである。

 また、N末端にメチオニン(Met)が付加され アミノ酸147個のポリペプチドや、特表昭63-5 01953号公報に記載のN末端にアミノ酸11個から るセグメントが付加されたアミノ酸157個の リペプチドを用いてもよい。

 特に好ましいbFGFとしては、トラフェルミ ン(遺伝子組換え)(科研製薬製)があげられる

 本発明の徐放性製剤においては、一種類 bFGFを単独で使用してもよいし、複数種を併 用してもよい。さらに、前述したように、bFG Fの同族体は複数種あるが、これらの同族体 ついても、それぞれを単独で使用してもよ し、併用してもよい。

 なお、生体内におけるbFGFの存在量は極微 量であるため、本発明の徐放性製剤を商業的 に安定して供給するためには、遺伝子組換え 技術により大腸菌等の微生物又は培養細胞に 産生させたbFGF又はその同族体を使用するこ が特に好ましい。bFGF又はその同族体(この場 合は一般に前記〔I〕のポリペプチド)を産生 せるための遺伝子を微生物又は培養細胞に み込んだ場合、この微生物又は培養細胞か 産生されるものは、一般に、bFGFのN末端及 /又はC末端、又は上記〔I〕のポリペプチド N末端及び/又はC末端に、追加のアミノ酸セ メントが付加したもの、すなわち前述した II〕のポリペプチドである。

 本発明において「アガロースハイドロゲ 」とは、アガロースを原料とし、水分を多 に含む性質を有するゲルをいう。

 アガロースハイドロゲルは、bFGF又はその 同族体の保持性及び放出特性が良好なことか ら、アガロースのみから調製されるものが好 ましい。

 アガロースとは、1,3位で結合したβ-d-ガ クトピラノース及び1,4位で結合した3,6-アン ドロ-α-l-ガラクトピラノースの繰り返し構 からなる多糖をいい、β-d-ガラクトピラノ スの2位及び6位に少量のスルホン酸エステル 、硫酸エステル、ピルビン酸ケタール、カル ボキシル基などが存在するといわれている(El ectrophoresis 1999, 20, 1455-1461)。本発明におい は、市販のアガロースを好適に使用するこ ができる。

 アガロースハイドロゲルの形状は特に制 はなく、例えば、円柱(ディスク)状、角柱 、シート状、粒子状、ペースト状などがあ られる。注入可能な製剤として用いる場合 は、粒子状が好ましい。

 アガロースハイドロゲルの大きさは、投与 る部位に適合するように任意に設定するこ ができる。前記形状が粒子状の場合、アガ ースハイドロゲルが吸水したときの粒子の 均粒子径は、通常1.0~1000μmであり、注射投 の観点から、1~100μmが好ましく、10~100μmがよ り好ましい。
 吸水したアガロースハイドロゲルの粒子径 布および平均粒子径は、各種微粒子50mgを蒸 留水10mL中に分散させ、1時間経過後に日機装 式会社製 MICROTRAC Full Range Analyzer (FRAR)に り測定した値である。

 本発明の徐放性製剤に含まれるbFGF及び/ はその同族体の量は、bFGFをその薬効が発揮 れる限度で目的の組織に長期に亘って供給 能な量であればよく、治療目的、対象とす 組織の大きさ等により適宜設定することが きる。例えば、ヒトの下肢の血管新生を目 とする場合、本発明の徐放性製剤に担体と て含まれるアガロースハイドロゲルの乾燥 量1mg当り、0.1μg~10mg、好ましくは0.2~100μgが 示される。

 本発明の徐放性製剤は、bFGF及び/又はそ 同族体を担持させたアガロースハイドロゲ そのものであってもよい。この場合、本発 の徐放性製剤は、減圧乾燥製剤又は凍結乾 製剤であることが好ましい。

 あるいは、本発明の徐放性製剤は、さら 医薬上許容されうる担体を含有するもので ってもよい。医薬上許容されうる担体とし は、本発明の徐放性製剤が注入可能な製剤 ある場合には、注射用精製水、生理食塩水 緩衝液(例、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ク エン酸緩衝液)などの媒体があげられ、さら 必要に応じ、分散剤、界面活性剤、等張化 、pH調整剤、無痛化剤、安定化剤、保存剤、 着色剤などを用いてもよい。

 また、本発明の徐放性製剤は、bFGF及び/ はその同族体を担持させたアガロースハイ ロゲルと、医薬上許容されうる担体とを別 の容器に格納したキットの形式であっても い。

 本発明の徐放性製剤は、生体内に投与し 場合、有効成分であるbFGF及び/又はその同 体が長期に亘って持続的に放出されるもの あることから、bFGFの作用効果が期待される 々な治療用途に用いられうる。治療用途と ては、bFGFの公知の用途が限定なくあげられ 、例えば、血管新生促進、組織再生、創傷、 骨疾患、歯周疾患、軟骨疾患が例示されるが 、ゼラチン徐放性製剤と同等の効果が発揮さ れる血管新生促進又は組織再生が好ましい。

 本発明において、血管新生促進及び/又は 組織再生により症状が改善されることが期待 される疾患としては、血管閉塞性疾患及び該 血管閉塞に伴う虚血性疾患全般であり、具体 的には、慢性動脈閉塞性疾患一般であり、例 えば、閉塞性動脈硬化症、バージャー病、糖 尿病性壊疽、心筋梗塞、狭心症などが挙げら れる。

 また、本発明の徐放性製剤は、当該徐放 製剤を血管新生促進又は組織再生に使用す ことができること又は使用すべきであるこ を記載した当該徐放性製剤に関する記載物 共に含む商業パッケージとしても提供する とができる。

 本発明の徐放性製剤の製造方法は、塩基 線維芽細胞増殖因子及び/又はその同族体と アガロースハイドロゲルを使用することを特 徴とする。以下、製造方法について詳述する 。

アガロースハイドロゲルの調製方法
 アガロースハイドロゲルは、一般的には、 ガロースと水を混合し、加熱してアガロー を溶解した後、成型、冷却することによっ 調製される。アガロースの濃度は、溶液が ル化する濃度以上であって、ゲルからのbFGF の放出速度を制御しうる濃度であればよく、 通常、0.5~10w/v%であり、好ましくは1~5w/v%であ 。加熱条件は、通常90~120℃程度であり、常 下で加熱又は高圧蒸気滅菌により行うこと できる。加熱時間はアガロースが完全に溶 するまでの時間であれば特に限定されない
 溶解したアガロースの成型及び冷却は、ア ロース水溶液を所望の形状の鋳型に流し込 、室温で一定時間放置するか、0~10℃程度の 冷蔵庫内又は氷上にて冷却することによりゲ ル化され、鋳型の形状に応じて成型される。 成型されたゲルをさらに、所定の大きさに切 断することも可能である。ペースト状のアガ ロースハイドロゲルも同様の方法で調製する ことができる。

粒子状のアガロースハイドロゲルの調製方法
 粒子状のゲルの調製法としては、例えば、E mulsification/internal gelation法、すなわち、上記 ようにして溶解したアガロース溶液を加温 た油相に加え、攪拌してW/Oエマルションと る方法などが挙げられる。
 用いられる油としては、ヒマシ油、オリー 油、大豆油、綿実油、テレビン油などがあ られる。油の加温条件としては、通常、40~8 0℃である。80℃を超えると、ゲルの凝集が起 こりやすくなる。攪拌条件としては、200~2000r pmが例示され、ゲルの粒子サイズの微調整が 能なことから、1200~1800rpm程度が好ましい。 た、油の粘度と得られるゲルの平均粒子径 の関係は、ヒマシ油等の粘度が高い油を用 ると平均粒子径の小さいゲルが得られ、テ ビン油等の粘度が低い油を用いると平均粒 径の大きいゲルが得られる傾向がある。ま 、油の粘度を約10~20mPa・s(60℃で、E型回転粘 度計を用いて測定した値)の範囲に設定した 合、攪拌条件の影響を受けずに数十μmの平 粒子径のゲルを安定して得ることができる また、アガロース溶液の粘度と油の粘度と 差もゲルの平均粒子径に影響する。

 その後、ゲル溶液の分散状態を保つため 攪拌を続けながらエマルションを冷却する アセトン、エタノール、酢酸エチル等の有 溶媒を加えて粘度を下げた後に吸引ろ過に り油相から粒子を分離し、アセトン、エタ ール、酢酸エチル等の有機溶媒で洗浄して ル粒子を採取する。

 上記のようにして得られたアガロースハ ドロゲルは減圧乾燥又は凍結乾燥させるこ ができる。凍結乾燥は、風乾させたゲルを- 20℃で1時間凍結させた後に凍結乾燥機で1~3日 間乾燥させることにより行う。

 上記のようにして調製したアガロースハ ドロゲルにbFGFを担持させるには、bFGF水溶 をアガロースハイドロゲルに滴下して含浸 せるか、アガロースハイドロゲルをbFGF水溶 中に懸濁して再吸水させる。

 アガロースハイドロゲルに担持させるこ ができるbFGFの量は、アガロースハイドロゲ ル乾燥重量1mg当たり0.1μg~10mgであり、0.2~100μg が好ましい。

 なお、徐放期間、bFGFの放出量等は、アガ ロースハイドロゲルの含水率、用いたアガロ ースの物性、製剤に担持されるbFGFの量、投 される部位などの種々の条件により異なる 、当業者であれば、本発明に開示された記 を考慮して適宜条件設定をすることができ 。

 上記のようにして得られた本発明の徐放 製剤は、凍結乾燥することもできる。凍結 燥する場合には、例えば、液体窒素中で30 以上又は80℃で1時間以上凍結させた後に、 結乾燥機で1~3日間乾燥させることにより行 。

 本発明の徐放性製剤を注入可能な製剤と る場合には、注射用精製水、生理食塩水、 衝液などの媒体に適宜懸濁する。緩衝液と ては、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン 緩衝液などがあげられる。さらに必要に応 、注射可能な製剤の製造に通常使用される 分散剤、界面活性剤、等張化剤、pH調整剤 無痛化剤、安定化剤、保存剤、着色剤など 適宜配合することができる。

 本発明の徐放性製剤は、ヒトのみならず の他の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、 ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒ ツジ、サル等)にも投与可能である。

 本発明の徐放性製剤の投与方法は、特に 定されないが、治療対象部位への局所投与 好ましい。例えば、18~27G程度の太さの注射 を取り付けた注射筒で本発明の徐放性製剤 適量取り、治療対象部位へ筋肉内投与、皮 投与、静脈内投与する方法等があげられる また、簡易型注射器具のようなキット製品 リザーバー部分に予め本発明の徐放性製剤 充填しておき、投与することも可能である

 本発明の徐放性製剤の投与量は、対象や 症度、対象の体重や年齢等により適宜変更 ることができるが、一般的には、ヒトの場 には、bFGF及び/又はその同族体量で1箇所の 置部位に対して1回の処置あたり、10μg~10mg 例示される。投与回数は症例、1回の処置あ りの投与量にもよるが、通常1~2回程度から 回が好ましい。

 以下に実施例を用いて本発明を詳述するが 本発明は以下の実施例に限定されるもので ない。
 すべての定量データは、平均±標準誤差(SEM) で表わした。統計学的解析は、SPSSバージョ 10.0 (SPSS Inc)を用いる片側Student's t-検定に り行った。p<0.05の値を有する差を有意と なした。

実施例1 bFGFを担持した円柱状アガロースハ ドロゲルの調製
 アガロースハイドロゲルは、以下のように て調製した。アガロース(Agarose 1500、和光 薬製)0.3gを水9.7mLに混合し、30分間室温で撹 した。撹拌後、90℃に加熱し完全に溶解した 。得られたアガロース溶液1gを型(1.5mLのマイ ロチューブ)に注ぎ、室温まで冷却してゲル を調製した。得られたゲルを、24時間凍結乾 した。凍結乾燥したアガロースゲルを、直 5mm、高さ7mm、重さ約10mgに切断し、bFGF(トラ ェルミン(遺伝子組換え)、科研製薬製)の水 液(0.1mg/mL)20μLを加えて混合することで、bFGF を担持した円柱状アガロースハイドロゲルを 得た。

実施例2 粒子状アガロースハイドロゲルの調 製
 粒子状アガロースハイドロゲルは、Emulsifica tion/internal gelation法に基づき図1に示した方法 で調製した。アガロース0.3gに水を加えて10g し、115℃の油浴中で加熱して完全に溶解し 3%アガロース溶液を調製した。得られたアガ ロース溶液を予め60℃に加温した油相200mL中 加え、メカニカルスターラーを用いて10分間 攪拌しw/oエマルションを調製した。ゲル溶液 の分散状態を保つために攪拌を続けながらエ マルションを氷浴中で冷却し、ゲル粒子を得 た。アセトンを加えて粘度を下げた後に吸引 ろ過により油相からゲル粒子を分離し、アセ トンで洗浄してゲル粒子を採取し、凍結乾燥 を行うことにより溶媒を完全に除去した。
 凍結乾燥後のアガロース粒子の形状を図2A 、水に分散後のアガロース粒子の形状を図2B に、粒子径の分布を図2Cにそれぞれ示した。 和前後のアガロース粒子は滑らかな表面を つ球状であった(図2A、B)。水和後のアガロ ス粒子の平均サイズは、47.0μmであり、注射 剤として使用可能である。実際、当該アガ ース粒子の懸濁液は、29G針を容易に通過し 。

比較例1 粒子状ゼラチンゲルの調製
 40℃に加温したオリーブ油250mLに予め調製し た10%ゼラチン水溶液25gを加え、10分間攪拌しw /oエマルションを調製した。ゲル溶液の分散 態を保ちながらエマルションを氷浴中で冷 してゲル化させ、吸引ろ過により油相から 子を分離した。アセトンで洗浄し、風乾さ て乾燥粒子を得た。得られた乾燥粒子を篩 し、粒子径が32~75μmのものを用いて、次に すように架橋を行った。Tween80を0.1%含む2%グ タルアルデヒド水溶液に乾燥粒子を分散さ 氷浴中で1時間攪拌した後、4℃で23時間静置 した。続いて遠心分離により得た粒子を10mM リシン水溶液中で1時間攪拌して未反応のグ タルアルデヒドを除去した。得られた架橋 子を0.1%Tween80水溶液で2回洗浄した後、凍結 燥して架橋ゼラチン粒子を得た。

製造例1 各種微粒子担体へのbFGFの封入
 実施例2及び比較例1で調製した粒子状凍結 燥ハイドロゲルをそれぞれ、マイクロチュ ブに2mg(乾燥重量)量り取り、2.5mg/mL(又は0.1mg/ mL)のbFGF(科研製薬製)水溶液20μLを滴下し、25 で1時間静置させることによりbFGFを50μg(又は 2μg)各種微粒子担体に封入した。

試験例1 bFGF保持性
 実施例1で得られた円柱状アガロースゲル10m g(bFGFを2μg担持)及び製造例1で得られた粒子状 アガロースゲル2mg(bFGFを2μg担持)について、bF GFの保持性を検討したところ、いずれも98%前 の高い保持性を示した(図3)。これにより、b FGFの吸着後、bFGFはアガロース粒子中に安定 て保持されることが示された。
 また、粒子状アガロースゲル2mgに対しbFGFを 2μg又は50μg封入して保持性を検討したところ 、初期放出率に違いは見られるもののその後 の放出はいずれにおいても殆どなく、24時間 においても95%以上という高い保持率を示し (図4)。本実施例で用いたアガロースは、1,3 で結合したβ-d-ガラクトピラノース及び1,4 で結合した3,6-アンヒドロ-α-l-ガラクトピラ ースの繰り返し構造からなるが、β-d-ガラ トピラノースの2位及び6位に少量のスルホン 酸エステル、硫酸エステル、ピルビン酸ケタ ール、カルボキシル基などが存在するために アガロースハイドロゲルはごく弱く陰性を帯 びている。このことから、初期放出はうまく アガロース微粒子担体に吸着又は取り込まれ なかったbFGFの放出によると考えられ、残り bFGF分子は電気的相互作用によりアガロース 粒子担体に強く保持されているのではない と推察された。また、アガロース微粒子担 とゼラチン微粒子担体のbFGFの保持性を比較 したところ、両者とも95%以上の保持率を示し た。in vivoでは、注入されるハイドロゲルの 濁液の量は、可能な限り小さいほうがよい 95%以上というbFGFの保持量は、他に報告され た実験例に比べ高く、in vivoにおいて許容さ やすいであろう。

(アガロース粒子の粒径に作用する因子)
 アガロース粒子の粒径に作用し得るパラメ ターとしては、回転速度、油の温度及び粘 があげられる。回転速度及び冷却前の油温 の、平均粒子径に対する影響の結果を表1に 示す。

 回転数を1200rpmから1800rpmに増加すると、 均粒子径は減少した。攪拌中に油温度を40℃ から80℃に変化しても、平均粒子径に影響は かった。温度が80℃を超えると、水中のア ロース粒子の湿潤性が低下し、凝集するこ もあった。温度が高くなると、アガロース 子の疎水性部がアガロース粒子の表面に現 るようである。

 平均粒子径への油粘度の作用を表2に示す。 ハイドロゲル粒子の調製に用いた油の粘度の 測定は、RE80U(東機産業株式会社)粘度計で行 た。測定はすべて60℃で行った。使用したず り速度は、200s-1 (ヒマシ油)及び383s-1(その他) であった。
 粘度が1.0mPa・s未満のテレビン油を用いると 、アガロース粒子の粒径は600μmより大きくな った。該粒子は、球状ではなく塊であった。 粘度が他の油よりも大きいヒマシ油を用いた 場合、最も小さいアガロース粒子が得られた 。しかしながら、粘度が16.5から19.2mPa・sの範 囲であるオリーブ油、大豆油及び綿実油では 、粘度と粒径との間に明確な関係性は見られ なかった。油相と水相の間の粘度の違いが大 きいほど、ミクロスフェア径が大きくなると いうことが知られているため、粘度差も表2 示す。しかし、粘度差と平均粒子径との間 明確な関係は観測されなかった。

 以上の結果より、油とアガロース溶液の 度は粒径に大いに作用することが示された 以前に報告されたように、ゲル化工程中の 相体積と界面張力における変化に加え、粘 の連続した変化も、粒径を予測することを 難にしている。

試験例2 慢性虚血肢モデルでの徐放性製剤の 効果
 以下に虚血モデルとして慢性虚血肢のマウ モデルを使用した試験例を示して詳細に説 するが、本発明はこれらの記載に限定され ものではない。本発明者らは、bFGF封入アガ ロース粒子の治療の有効性をbFGF封入ゼラチ 粒子の有効性と比較した。
 実験動物を用いる研究は、千葉大学動物管 利用委員会で許可され、国立衛生研究所(NIH )ガイドラインを遵守した。
(実験手法)
動物モデルとして、体重15~18gの生後6週齢の 性C57BL/6Jマウス(日本SLC)を用いた。ペントバ ビタールナトリウム(60mg/kg腹腔内投与)で麻 し、皮膚の切開後、左大腿動脈とその分枝 6-0絹縫合糸(直径約0.08mm)で結紮した。次い 、外腸骨動脈と前記の全動脈を結紮した。 大腿動脈を、外腸骨動脈の分岐としてその 位源から膝窩動脈と伏在動脈に分岐する位 まで切除した。

 動物モデルでの成功にも関わらず、ヒトの 作為化臨床試験ではいくつかの血管新生因 の成功率が低かった。ヒトでの成功に至ら かったことは、多元的要因があると思われ が、1つの理由は、現在の実験モデルが正確 にヒトの慢性的動脈硬化による動脈の閉塞、 換言すれば、慢性の虚血を反映していないた めであると思われる。現在使用されている肢 虚血の実験モデルは、急性の虚血モデルであ る。本発明者らは、慢性後肢虚血モデルは急 性後肢虚血と比較すると、より多数の側副動 脈、より多くの血流、より少ない壊死と炎症 を発現しているであろうと仮定した。そこで 、本発明者らは、虚血処理後2週間放置した ウスを慢性の虚血肢モデルとして使用した
 手術後14日の虚血肢マウスを無作為に以下 7群に分けた:処理なしの対照群(o0)、50μgのbFG Fを含有するか、もしくは含有しない生理食 水を筋肉内投与した群(n50、n0)、50μgのbFGFを 持するか、もしくは担持しないゼラチンハ ドロゲル粒子を筋肉内投与した群(g50、g0)、 50μgのbFGFを担持するか、もしくは担持しない アガロース粒子を筋肉内投与した群(a50、a0)

(レーザードップラー式血流計(LDPI)による測 )
 血管新生の効果を評価するために、レーザ ドップラー式血流画像化(LDPI)装置(Moor Instru ments製)を用いてマウス虚血肢モデルの皮下の 血流を測定した。光及び温度等の影響を最小 にするため、LDPI指数を右肢血流(非虚血)に対 する左肢血流(虚血)の比として表した。図5は 、bFGF封入ハイドロゲル粒子の虚血肢への筋 注射後のレーザードップラーによる血流量 測定を示す。生理食塩水群(n50)では、肢の血 流に著しい増加は見られなかった。ゼラチン 群(g50)では、術後35日目に明らかな増加が観 された。アガロース群(a50)では、bFGFを含ま い群との比較において、顕著な肢血流の増 が観測された。

(毛細血管密度及び細動脈密度の評価)
 処置後3週間(手術後35日目)、すべてのマウ を犠牲死させた。虚血肢検体を回収し、ホ マリンで固定し、パラフィンに包埋して4μm 厚さの切片を作製した。組織切片をヘマト シリン-エオジンで染色し、組織学的に解析 した。毛細血管密度及び細動脈密度の評価の ため、組織切片を、内皮細胞マーカーである 抗フォン・ヴィレブランド因子(vWF)抗体(DAKO  Corp製)、及び平滑筋マーカーである抗α平滑 アクチン(αSMC)抗体(Sigma Aldrich製)でそれぞれ 染色した。結果を表3に示す。
 また、前記切片を、加湿したチャンバー内 室温で一晩、抗核内増殖抗原(PCNA)(1:100 希 、サンタクルーズバイオテクノロジー社)で 色した。細胞増殖活性は、手術後35日目で PCNA免疫染色により評価した。結果を図6に示 す。

 表3より、50μgのbFGFを含有する群(n50、g50 びa50)とbFGFを含有しない群との比較において 、毛細血管密度の顕著な増加が見られた。こ れは、αSMA免疫染色での細動脈密度の定量化 おいても確認された。a50群の虚血領域での SMA免疫染色ポジティブ細動脈の数は、n50群 おけるよりも多かった。

 図6Aに示すように、bFGFを担持するアガロ スハイドロゲル粒子は、多数のPCNA陽性紡錘 型細胞に取り囲まれていた。前記細胞は、筋 肉繊維内に移動していた。このことは、アガ ロースハイドロゲル粒子から成長可能なbFGF 放出され、細胞増殖していることを示唆す 。一方では、図6Bに示すように、bFGFを担持 ないアガロースハイドロゲル粒子は、小さ 炎症型細胞に取り囲まれ、単に筋肉繊維に 動するだけの小数のPCNA陽性紡錘型細胞に取 囲まれていた。このことは、アガロースハ ドロゲル単独では細胞増殖活性が非常に低 ことを示唆する。

 これらの結果により、50μgのbFGFを含有す アガロース粒子は、50μgのbFGFを含有するゼ チンハイドロゲル粒子と同等以上に血管新 を促進することが示された。

 アガロースはゼラチンのように生分解さ 得ないので、bFGF放出機構は異なるであろう が、bFGF担持アガロース粒子の治療効果は、bF GF担持ゼラチンハイドロゲル粒子に匹敵する また、アガロース粒子の調製は、ゼラチン 子の調製におけるグルタルアルデヒド等で 架橋工程を要さないため、製造工程上有利 ある。アガロースハイドロゲル粒子は、臨 に用いられ得るbFGFの担体候補である。

 本発明の徐放性製剤は、ゼラチン製剤と同 のbFGFの担持性および徐放性、並びに血管新 生作用を示し、かつ植物由来で安全性に優れ ているので、血管新生促進、組織再生をはじ めとして、bFGFが治療効果を有する疾患の治 剤として極めて有用である。
 本出願は、日本で出願された特願2007-094703( 願日:平成19年3月30日)を基礎としており、そ の内容はすべて本明細書に包含されるものと する。また、本明細書中であげられた特許明 細書を含む全ての刊行物に記載された内容は 、本明細書での引用により、その全てが明示 されたと同程度に本明細書に組み込まれるも のである。