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Patent Searching and Data


Title:
VINYL ALCOHOL POLYMER-CONTAINING COATING AGENT FOR PAPER AND PAPER AND THERMAL PAPER COATED WITH THE COATING AGENT
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/041358
Kind Code:
A1
Abstract:
This invention provides a vinyl alcohol polymer-containing coating agent for paper, which, despite the fact that a curing step after coating the coating agent onto a paper surface can be omitted, can form a layer (for example, a coating layer or a color developing layer) having excellent water resistance and having no significant susceptibility to yellowing with the elapse of time. The coating agent is an aqueous composition comprising a vinyl alcohol polymer (A) satisfying a formula “X + 0.2Y > 95”, wherein X represents the content of vinyl alcohol units, % by mole; and Y represents the content of ethylene units, % by mole, and an addition condensation product (B) between ethylene urea and glyoxal. In the addition condensation product (B), the content of the terminal aldehyde group per g of the solid is 1.2 to 3.0 (mmol). The weight ratio on a solid basis between the vinyl alcohol polymer (A) and the addition condensation product (B) is in the range of (A) : (B) = 99 : 1 to 50 : 50. In the above formula, X < 99.9 and 0 ≤ Y < 10.

Inventors:
JIKIHARA ATSUSHI (JP)
NAKAMAE MASATO (JP)
NAKAGAWA KAZUKI (JP)
HORI KOJI (JP)
WATANABE MISA (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/066979
Publication Date:
April 02, 2009
Filing Date:
September 19, 2008
Export Citation:
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Assignee:
KURARAY CO (JP)
JIKIHARA ATSUSHI (JP)
NAKAMAE MASATO (JP)
NAKAGAWA KAZUKI (JP)
HORI KOJI (JP)
WATANABE MISA (JP)
International Classes:
B41M5/337; D21H19/20; C08G12/36; D21H19/24
Foreign References:
JPS6174887A1986-04-17
JPS59163497A1984-09-14
JPH08269289A1996-10-15
JPH0966666A1997-03-11
JPH11208115A1999-08-03
JPS59163497A1984-09-14
US4471087A1984-09-11
Other References:
"Bunseki Kagaku Benran", THE JAPAN SOCIETY FOR ANALYTICAL CHEMISTRY, pages: 314
See also references of EP 2194188A4
Attorney, Agent or Firm:
KAMADA, Koichi (UMEDA PLAZA BLDG. ANNEX 4-3-25, Nishitenma, Kita-ku, Osaka-sh, Osaka 47, JP)
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Claims:
 ビニルアルコール単位の含有率X(モル%)およびエチレン単位の含有率Y(モル%)が、以下の式(1)を満たすビニルアルコール系重合体(A)と、
 固形分1gあたりの末端アルデヒド基の含有量が1.2~3.0(mmol)である、エチレン尿素およびグリオキサールの付加縮合物(B)と、を含み、
 ビニルアルコール系重合体(A)と付加縮合物(B)との固形分重量比が、(A):(B)=99:1~50:50の範囲である紙用塗工剤。
       X+0.2Y>95     (1)
 ただし、上記式(1)において、X<99.9、0≦Y<10、である。
 ビニルアルコール系重合体(A)が、前記含有率XおよびYに関して以下の式(2)を満たす請求項1に記載の紙用塗工剤。
       X+0.2Y>98.5   (2)
 ただし、上記式(2)において、X<99.9、0≦Y<10、である。
 ビニルアルコール系重合体(A)が、エチレン単位を含む請求項1に記載の紙用塗工剤。
 請求項1に記載の紙用塗工剤が紙面に塗工された紙。
 請求項1に記載の紙用塗工剤が紙面に塗工された感熱紙。
Description:
ビニルアルコール系重合体を含 紙用塗工剤と、これを塗工した紙および感 紙

 本発明は、ビニルアルコール系重合体を む紙用塗工剤と、この塗工剤を塗工した紙 よび感熱紙とに関する。

 ビニルアルコール系重合体(以下、単に「 PVA」ともいう)は、その造膜性および接着性( えば接着強度)において、他の水溶性樹脂の 追随を許さぬ性能を有することから、各種の バインダー、接着剤、あるいは表面処理剤な どとして幅広く用いられている。PVAの用途の 一つに、紙の表面強度の向上などを目的とす る紙用塗工剤があり、PVAが紙面に塗工された 紙は、例えば、印刷用紙として用いられてい る。なお、PVAには、ビニルアルコール単位以 外の構成単位、例えばエチレン単位、を有す る変性ポリビニルアルコールが含まれる。

 紙の印刷方法には様々な種類があるが、 在、オフセット印刷が主流である。オフセ ト印刷では、金属製の平板に非画像部およ 画像部を形成し、非画像部に湿し水を、画 部にインクを配置した後に、これをゴム製 ブランケットに接触転移させ、さらにブラ ケットから紙面に転写させて画像を形成す 。このため、オフセット印刷に用いる印刷 紙には、湿し水に対応した耐水性が求めら るが、PVA自体は水溶性であり耐水性に劣る め、PVAと架橋剤(耐水化剤)とを組み合わせ 塗工剤が一般に用いられている。

 また、PVAは、その優れた造膜性および接 性から、感熱紙などの感熱記録材料のコー 層(オーバーコート層もしくはバックコート 層)、あるいは発色層(顔料層もしくは染料層) のバインダー、として用いられている。感熱 記録材料の発色源には、一般にロイコ染料が 用いられることが多いが、このような記録材 料では、記録された画像の安定性が悪く、例 えば、油脂類やプラスチックフィルムに含ま れる可塑剤と感熱記録面とが接触することで 、当該画像が消色したり、地肌部(非画像部) 変色したりする。コート層は、これら消色 よび変色を抑制し、画像の安定性を高める 果を有する。コート層には、一般に、カル キシル基により変性したPVAが用いられる。 かし、カルボキシル基変性PVAは水に溶解し すいため、架橋剤と組み合わせた塗工剤と た上で、当該塗工剤を感熱紙に塗工し、乾 させた後、さらにキュア工程を行うことが 須となる。キュア工程とは、塗工剤を塗工 た紙を、1日~1週間程度の期間にわたり30~40 の環境下で保管することにより、形成した ート層を所望の耐水レベルに到達させるた の工程である。キュア工程を実施するため は、広大な面積の保管場所が必要であるし また、キュア工程は、感熱記録材料の製造 率を低下させる大きな要因であるので、キ ア工程を省略可能な塗工剤の実現が望まれ 。

 これまで、耐水性に劣るというPVAの欠点 改善するために、種々の方法が検討されて た。

 印刷用紙にコート層を形成するために、P VAと、架橋剤としてグリオキサールとを組み わせる方法が広く知られている。この方法 は、比較的低い温度でのPVAの架橋が可能で り、形成したコート層に耐水性を賦与でき が、当該コート層が経時的に黄変するとい 欠点がある。

 特開平8-269289号公報には、エチレン変性PV Aと、キトサン系化合物と、多価アルデヒド 合物とを含む耐水性組成物が開示されてい 。しかし、特開平8-269289号公報に開示の組成 物では、耐水化剤としてキトサン化合物およ び多価アルデヒド化合物が用いられているた め、この組成物から形成された層が長期間空 気にさらされると、黄変するという欠点があ る。特開平9-66666号公報には、特定の構成を する(ダイアッド表示によるシンジオタクテ シティが55モル%以上、かつけん化度が85モ %以上)エチレン変性PVAと架橋剤とを、発色層 のバインダーとして用いた記録材料が開示さ れている。特開平11-208115号公報には、エチレ ン変性PVAと、架橋剤としてアジリジン基を2 上含有する化合物とを、オーバーコート層 して用いた感熱記録材料が開示されている しかし、特開平9-66666号公報、特開平11-208115 公報に開示されているエチレン変性PVAと架 剤との組み合わせでは、必ずしも十分な耐 性を得ることができない。

 これらの問題を鑑み本発明は、ビニルア コール系重合体を含む紙用塗工剤であって 紙面へ塗工した後のキュア工程を省略可能 ありながら、耐水性に優れるとともに経時 な黄変が少ない層(例えば、コート層あるい は発色層)を形成できる紙用塗工剤を提供す ことを目的とする。

 本発明者らは、鋭意検討の結果、PVAおよ 架橋剤を特定の構成とすることにより、こ ような紙用塗工剤が実現可能であることを 出した。

 即ち、本発明の紙用塗工剤は、ビニルアル ール単位の含有率X(モル%)およびエチレン単 位の含有率Y(モル%)が、以下の式(1)を満たす ニルアルコール系重合体(A)と、固形分1gあた りの末端アルデヒド基の含有量が1.2~3.0(mmol) ある、エチレン尿素およびグリオキサール 付加縮合物(B)とを含み、ビニルアルコール 重合体(A)と付加縮合物(B)との固形分重量比 、(A):(B)=99:1~50:50の範囲である。
       X+0.2Y>95     (1)
 ただし、上記式(1)において、X<99.9、0≦Y&l t;10、である。

 本発明の紙は、上記本発明の紙用塗工剤 紙面に塗工された紙である。

 本発明の感熱紙は、上記本発明の紙用塗 剤が紙面に塗工された感熱紙である。

 本発明によれば、ビニルアルコール単位 含有率X、およびエチレン単位の含有率Yを 定の範囲としたPVA(A)と、末端アルデヒド基 含有量が特定の範囲にある、エチレン尿素 よびグリオキサールの付加縮合物(B)とを含 ことにより、紙面へ塗工した後のキュア工 を省略可能でありながら、耐水性に優れる ともに経時的な黄変が少ない層(例えば、コ ト層あるいは発色層)を形成できる紙用塗工 剤とすることができる。

 本発明の紙および感熱紙は、上記本発明 紙用塗工剤が紙面に塗工された紙であり、 えば、塗工剤の塗工により形成された層(例 えば、コート層あるいは発色層)の耐水性を 上させるために従来必要であったキュア工 を省略して製造できる。また、耐水性に優 るとともに経時的な黄変が少ない層(例えば コート層あるいは発色層)を有する紙および 感熱紙とすることができる。即ち、本発明の 紙および感熱紙は、例えば、耐水性、画像記 録保持性、耐可塑剤性、生産性などに優れて おり、オフセット印刷、感熱印刷をはじめと する各種の印刷に好適に用いることができる 。

 以下、紙用塗工剤の紙面への塗工により 成される層を、単に「層」という。当該層 しては、例えば、上述したコート層および 色層(発色層においては、通常、紙用塗工剤 は顔料または染料のバインダーとなる)が挙 られるが、特にこの2種類の層に限定される のではない。

 [PVA(A)]
 PVA(A)は、以下の式(1)を満たすポリビニルア コール系重合体である限り、特に限定され い。
       X+0.2Y>95    (1)
 ただし上記式(1)において、Xは、PVA(A)におけ るビニルアルコール単位の含有率(モル%)であ り、Yは、PVA(A)におけるエチレン単位の含有 (モル%)である。XおよびYは、それぞれ、式X&l t;99.9、および0≦Y<10を満たす数値である。

 PVA(A)におけるビニルアルコール単位の含 率X(PVA(A)のけん化度、ともいえる)は、99.9モ ル%よりも小さいことが必要であり、99.8モル% 以下が好ましく、99.7モル%以下がより好まし 。含有率Xが99.9モル%以上の場合、塗工剤と ての粘度安定性が低下して、実用的な塗工 とすることができない。また、含有率Xは、 95モル%以上が好ましく、98.5モル%以上がより ましく、99モル%以上がさらに好ましい。即 、含有率Xは、95モル%以上99.9モル%未満が好 しく、98.5~99.8モル%がより好ましく、99~99.7 ル%がさらに好ましい。含有率Xがこれらの範 囲にある場合、より耐水性に優れる層を形成 できる。

 PVA(A)はエチレン単位を有する、即ち、PVA( A)におけるエチレン単位の含有率Yが0モル%を える(例えば、0<Y<10)、ことが好ましく この場合、より耐水性に優れる層を形成で る。

 PVA(A)におけるエチレン単位の含有率Yは、 10モル%未満である必要があり、1~9モル%が好 しく、3~8モル%がより好ましい。含有率Yが10 ル%以上の場合、PVA(A)の水溶性が添加して塗 工剤の形成が困難となったり、塗工剤として の粘度安定性が低下したりする。

 なお、PVA(A)の含有率Yは、公知の方法により 求めることができ、例えば、当該PVAの前駆体 であるビニルエステル系重合体に対して、 1 H-NMR(プロトン核磁気共鳴)測定を実施して求 てもよい。具体的な例を以下に挙げる。測 対象であるビニルエステル系重合体に対し 、n-ヘキサン/アセトン混合溶液を用いた再 精製を少なくとも3回以上行う。次に、精製 の重合体を80℃で3日間減圧乾燥させる。次 、十分に乾燥させた重合体をDMSO-d6(重水素 ジメチルスルホキシド)に溶解させ、80℃に いて、その 1 H-NMRを測定する。測定したプロファイルにお る、ビニルエステル単位の主鎖に存在する チン由来のピーク(化学シフトが4.7~5.2ppm)と ビニルエステル単位およびエチレン単位の 鎖に存在するメチレン由来のピーク(化学シ フトが0.8~1.6ppm)とから、含有率Yを求めること ができる。

 耐水性により優れるとともに、経時的な黄 がさらに抑制された層を形成できることか 、PVA(A)が、上記含有率XおよびYに関して、 下の式(2)を満たすことが好ましい。
       X+0.2Y>98.5    (2)
 ただし、上記式(2)において、XおよびYは、 れぞれ、式X<99.9、および0≦Y<10を満たす 数値である。

 PVA(A)は、通常、酢酸ビニルに代表される ニルエステル系単量体を、単独で、あるい エチレンとともに、公知の重合方法(塊状重 合、メタノールなどを溶媒とする溶液重合、 乳化重合、懸濁重合など)で重合した後、形 された重合体を各種のけん化方法(アルカリ ん化、酸けん化、アルコリシスなど)により けん化して、得ることができる。ビニルエス テル系単量体として、上記酢酸ビニル以外に も、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレ リン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン 酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビ ニル、バーサチック酸ビニル、ピバリン酸ビ ニルなどの各種の単量体を用いることができ るが、酢酸ビニルを用いることが好ましい。

 PVA(A)の重合度(粘度平均分子量により求め た重合度)は特に限定されないが、通常、200~4 000程度であり、250~3000程度が好ましく、300~200 0程度が特に好ましい。PVAの重合度が200未満 場合、十分な耐水性、耐可塑剤性を有する を形成できないことがある。一方、PVAの重 度が4000を超えると塗工剤としての粘度が過 に増大して、その塗工性が低下することが る。PVA(A)の重合度は、JIS-K6726(ポリビニルア ルコール試験方法)の規定に基づいて評価で る。

 PVA(A)は、本発明の効果が損なわれない範 で、上記ビニルエステル系単量体およびエ レンと共重合可能な単量体由来の構成単位 含んでいてもよい。このような単量体とし は、例えば、プロピレン、1-ブテン、イソ テン、1-ヘキセンなどのα-オレフィン類;メ ルビニルエーテル、エチルビニルエーテル n-プロピルビニルエーテル、i-プロピルビニ エーテル、n-ブチルビニルエーテルなどの ニルエーテル類;エチレングリコールビニル ーテル、1,3-プロパンジオールビニルエーテ ル、1,4-ブタンジオールビニルエーテルなど ヒドロキシ基含有ビニルエーテル類;アリル セテート;プロピルアリルエーテル、ブチル アリルエーテル、ヘキシルアリルエーテルな どのアリルエーテル類;オキシアルキレン基 有する単量体;ビニルトリメトキシシランな のビニルシラン類;酢酸イソプロペニル;3-ブ テン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、5-ヘキ ン-1-オール、7-オクテン-1-オール、9-デセン- 1-オール、3-メチル-3-ブテン-1-オールなどの ドロキシ基含有α-オレフィン類;フマール酸 マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸 無水イタコン酸などのカルボキシル基含有 量体;エチレンスルホン酸、アリルスルホン 酸、メタアリルスルホン酸、2-アクリルアミ -2-メチルプロパンスルホン酸などのスルホ 酸基含有単量体;ビニロキシエチルトリメチ ルアンモニウムクロライド、ビニロキシブチ ルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニ ロキシエチルジメチルアミン、ビニロキシメ チルジエチルアミン、N-アクリルアミドメチ トリメチルアンモニウムクロライド、3-(N- タクリルアミド)プロピルトリメチルアンモ ウムクロライド、N-アクリルアミドエチル リメチルアンモニウムクロライド、N-アクリ ルアミドジメチルアミン、アリルトリメチル アンモニウムクロライド、メタアリルトリメ チルアンモニウムクロライド、ジメチルアリ ルアミン、アリルエチルアミンなどのカチオ ン基含有単量体;アクリル酸、アクリル酸エ テル、アクリルアミド、アクリルアミド誘 体;など、が挙げられる。これらの単量体に 来する構成単位によるPVA(A)の変性量は、本 明の効果が損なわれない限り特に限定され いが、通常は、PVA(A)の全構成単位に対して2 0モル%以下であり、10モル%以下が好ましい。

 PVA(A)は、チオール酢酸、メルカプトプロ オン酸、ドデシルメルカプタンなどのチオ ル化合物存在下で、上記の重合およびけん を行って得た末端変性PVAであってもよい。

 PVA(A)は、本発明の効果が損なわれない限 、ビニルエステル系単量体を単独で、ある はエチレンとともに重合して得た重合体を ん化した後、さらに後反応により変性させ 得た変性PVAであってもよい。このような変 PVAとしては、例えば、ブチルアルデヒドな のアルデヒドにより変性させた各種のアセ ール化PVA、ジケテンなどによりアセトアセ ル基を導入したアセトアセチル基変性PVAな が挙げられる。PVA(A)を変性PVAとする場合、 セトアセチル基変性PVA、即ちアセトアセチ 基を有する構成単位を含むPVA、とすること 好ましい。

 アセトアセチル基変性PVAにおける変性量 即ち当該PVAにおけるアセトアセチル基を有 る構成単位の含有率、は、一般に8モル%以 が好ましく、7モル%以下がより好ましい。変 性量が過大になると、塗工剤としての粘度安 定性が低下することがある。

 [付加縮合物(B)]
 エチレン尿素およびグリオキサールの付加 合物(B)は、その固形分1gあたりの末端アル ヒド基の含有量が1.2~3.0(mmol:ミリモル)である 。なお、これ以降、固形分1gあたりの末端ア デヒド基の含有量の単位を、(mmol/g-固形分) 表記する。

 付加縮合物(B)は、各種の製造方法により ることができるが、例えば、エチレン尿素 グリオキサールとを、モル比にして、エチ ン尿素:グリオキサール=1:0.9~1.5の範囲で混 し、反応系のpHを調整した後、所定の温度で 付加縮合反応を進めることにより、得ること ができる。

 付加縮合物(B)を得る際のエチレン尿素お びグリオキサールの混合比は、エチレン尿 1モルに対してグリオキサール0.9~1モルが好 しい。

 エチレン尿素およびグリオキサールの混 比が、エチレン尿素1モルに対してグリオキ サール1.5モルを超えると、得られた付加縮合 物における双方の末端がアルデヒド基である 確率が高くなって、塗工剤としての粘度安定 性が低下する。また、エチレン尿素に対する グリオキサールの量が過剰になることで、付 加縮合物に残存する残存グリオキサールの量 が増加して、塗工剤としての安全性が低下す る。グリオキサールは、同じアルデヒド化合 物であるホルムアルデヒドほどの揮発性を有 さないが、人体の皮膚や粘膜に対する刺激性 を有するとともに、その変異原性が陽性であ るため、安全性の観点からは、残存グリオキ サールの量が少ないことが望まれる。

 一方、エチレン尿素およびグリオキサー の混合比が、エチレン尿素1モルに対してグ リオキサール0.9モル未満になると、付加縮合 物における残存グリオキサール量が低下する ことで塗工剤としての安全性を向上できるが 、得られた付加縮合物における双方の末端が アミド基である確率が高くなって、形成した 層の耐水性が低下する。

 付加縮合物(B)における末端アルデヒド基 含有量は、実施例に示すように、特開昭59-1 63497号公報(米国特許第4471087)に記載の方法に り評価できる。付加縮合物(B)における末端 ルデヒド基の含有量は、1.5~2.4(mmol/g-固形分) が好ましい。

 付加縮合物(B)における残存グリオキサー 量は、通常、付加縮合物(B)の固形分濃度が4 0重量%である溶液中において、0.3重量%以下で ある。

 なお、既存化学物質変異原性試験データ (日本化学物質情報・安全センター発行、199 6年)に記載のグリオキサール単体の変異原性 ータから判断すると、付加縮合物(B)におけ 残存グリオキサール量を上記範囲とするこ により、残存グリオキサールによる変異原 は陰性になると判断できる。

 エチレン尿素とグリオキサールとを付加 合させる反応系の諸条件は特に限定されな が、例えば、系の温度(反応温度)は、40~70℃ が好ましい。反応温度が40℃未満になると、 者の反応速度が過度に遅くなって、得られ 付加縮合物におけるグリオキサールの残留 が増加する。一方、反応温度が70℃を超え と、得られた付加縮合物の着色が増大する ともに、その安定性が低下する。

 また例えば、付加縮合を行う反応系のpH 、4~7が好ましい。当該系のpHが4未満になる 、付加縮合の反応が過度に進んで、得られ 付加縮合物の安定性が低下する。一方、当 系のpHが7を超えると、得られた付加縮合物 着色が増大するとともに、その安定性が低 する。付加縮合を行う系のpHは、pH調整剤に り調整できる。pH調整剤は特に限定されず 例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウ 、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭 カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素 トリウム、リン酸アンモニウム、リン酸水 アンモニウムなどを用いることができる。

 付加縮合物(B)は上記反応により水溶液と て得られるが、当該水溶液における固形分 度が10~60重量%となるようにエチレン尿素と リオキサールとを付加縮合させることが好 しい。当該濃度が60重量%を超えると、得ら た水溶液の粘度が高くなって、他の物質と 混合性が低下するとともに、その安定性も 下する。一方、当該濃度が10重量%未満では 塗工剤として用いたときに、層の形成に時 を要する。固形分濃度が15~50重量%となるよ に、両者を付加縮合させることが好ましい

 付加縮合物(B)は、例えば、エチレン尿素 グリオキサールとを、モル比にして、エチ ン尿素:グリオキサール=1:0.9~1の範囲で混合 、付加縮合を行う系のpHをpH調整剤により4~7 に調整した後、40~60℃で反応を進めることに り、得てもよい。

 [紙用塗工剤]
 本発明の塗工剤は、上述したPVA(A)および付 縮合物(B)を、固形分重量比にして、(A):(B)=99 :1~50:50の範囲で含む。より耐水性に優れ、経 的な黄変がさらに少ない層を形成できるこ から、当該重量比は、(A):(B)=98:2~60:40の範囲 あることが好ましく、(A):(B)=97:3~65:35である とがより好ましい。上記固形分重量比にし 、(A):(B)=99:1よりも付加縮合物(B)が少ない場 、付加縮合物(B)による架橋剤としての効果 不十分となって、十分な耐水性を有する層 形成できない。一方、上記固形分重量比に て、(A):(B)=50:50よりも付加縮合物(B)が多い場 合、塗工剤としての粘度安定性が低下する。

 本発明の塗工剤は、必要に応じて、各種 添加剤を含んでいてもよい。添加剤として 、例えば、多価金属塩、水溶性ポリアミド 脂などの耐水化剤;グリコール類、グリセリ ンなどの可塑剤;アンモニア、カセイソーダ 炭酸ソーダ、リン酸などのpH調節剤;消泡剤 離型剤、界面活性剤;など、が挙げられる。 だし、上述したように、塗工剤の安全性を 上させるためには、グリオキサール、なら に、使用時にホルムアルデヒドが揮発する 能性がある尿素樹脂およびメラミン樹脂を 加剤として含まないことが好ましい。

 本発明の塗工剤は、また例えば、添加剤 して、澱粉、変性澱粉、カゼイン、カルボ シメチルセルロースなどの水溶性高分子;ス チレン-ブタジエンラテックス、ポリアクリ 酸エステルエマルジョン、酢酸ビニル-エチ ン共重合エマルジョン、酢酸ビニル-アクリ ル酸エステル共重合エマルジョンなどの合成 樹脂エマルジョン;などを、本発明の効果が なわれない範囲で含んでいてもよい。

 本発明の塗工剤は、例えば、クリア塗工剤 るいは発色料(顔料または染料)塗工剤とし 用いることができる。本発明の塗工剤をク ア塗工剤として用いた場合、例えば、上述 たコート層を紙面に形成でき、発色料塗工 として用いた場合、例えば、上述した発色 を紙面に形成できる。本発明の塗工剤の塗 量は特に限定されないが、通常、固形分換 で0.1~30g/m 2 程度である。

 本発明の塗工剤をクリア塗工剤として用 る場合、塗工の対象となる紙の種類は特に 定されないが、例えば、マニラボール、白 ール、ライナーなどの板紙;一般上質紙、中 質紙、グラビア用紙などの印刷用紙;などが げられる。

 本発明の塗工剤を発色料塗工剤として用 る場合においても、塗工の対象となる紙の 類は特に限定されないが、例えば、感熱紙 インクジェット用紙、感圧紙、アート・コ ト紙、微塗工紙、などが挙げられる。

 本発明の塗工剤をクリア塗工剤として用 る場合、例えば、当該塗工剤を、そのまま 塗工対象となる紙の紙面に塗工すればよい

 本発明の塗工剤を発色料塗工剤として用 る場合、例えば、当該塗工剤と発色料とを 合して得た塗工液を、塗工対象となる紙の 面に塗工すればよい。塗工剤と発色料との 合比は特に限定されないが、発色料100重量 に対して、塗工剤0.5~15重量部を混合するこ が好ましく、塗工剤1~10重量部を混合するこ とがより好ましい。塗工液の固形分濃度は、 30~65重量%の範囲で適宜調整できる。

 塗工剤と混合する発色料としては、例え 、クレー、カオリン、炭酸カルシウム、チ ン白、サチン白などの顔料が挙げられる。

 本発明の塗工剤を紙面に塗工する方法は に限定されず、例えば、公知のコーター(サ イズプレスコーター、エアナイフコーター、 ブレードコーター、ロールコーターなど)を いればよい。紙面への塗工後は、必要に応 て、乾燥工程、カレンダー工程などの任意 工程を経てもよく、このようにして、本発 の紙(感熱紙)を得ることができる。

 以下、実施例により本発明をより詳細に 明する。本発明は、以下に示す実施例に限 されない。本実施例における、「部」およ 「%」は、特に記載がない限り、重量基準で ある。

 [エチレン尿素およびグリオキサールの付加 縮合物の合成]
 (合成例1)
 還流冷却器、温度計および攪拌装置を設置 た4口フラスコに、エチレン尿素86部を仕込 、水129部および濃度40%のグリオキサール溶 130.5部(モル比にして「エチレン尿素:グリオ キサール=1:0.9」に相当)を加え、pH調整剤とし て濃度10%の水酸化ナトリウム溶液を用いて系 のpHを7に調整した後、エチレン尿素およびグ リオキサールを60℃で10時間反応させた。反 終了後、35℃で16時間熟成させ、その後、系 温度を30℃以下まで冷却するとともに、濃 20%の硫酸溶液により、系のpHを6に調整した このようにして、エチレン尿素およびグリ キサールの付加縮合物を含む淡黄色の透明 溶液を得た。なお、当該溶液における上記 加縮合物の固形分濃度は40%であった。

 上記のようにして得た付加縮合物の平均 子量、付加縮合物における末端アルデヒド の含有量、および、上記溶液中の残存グリ キサール量を、以下に示す方法により評価 たところ、平均分子量(重量平均分子量)が 720、末端アルデヒド基の含有量が1.81(mmol/g- 形分)、残存グリオキサール量が0.1重量%であ った。なお、これらの値の評価方法は、以降 の合成例においても同様である。

 <付加縮合物の平均分子量の評価>
 付加縮合物の平均分子量は、ゲルパーミエ ションクロマトグラフィ(GPC)分析法により めた。分析の条件は以下のとおりである。

 標準物質:ポリエチレングリコール、分析 装置:LC-6A(島津製作所社製)、カラム:HSPgel AQ2. 5(Waters社製)、カラムサイズ:6.0×150mm、カラム 度:20℃、検出器:RID-6A(島津製作所社製)、分 液:蒸留水(和光純薬工業社製)、流量:0.3ml/分 、注入試料濃度:0.4mg/mL、試料注入量:5μL。

 <溶液の残存グリオキサール量の評価>
 上記溶液の残存グリオキサール量は、高速 体クロマトグラフィー法により求めた。分 の条件は以下のとおりである。

 分析装置:LC-6A(島津製作所社製)、カラム:S him-pack CLC-ODS(島津製作所社製)、カラムサイ :6.0×150mm、カラム温度:40℃、検出器:RID-6A(島 製作所社製)、分離液:蒸留水(和光純薬工業 製)、流量:0.3ml/分、注入試料濃度:4.0mg/mL:試 注入量:5μL。

 <付加縮合物における末端アルデヒド基の 含有量の評価>
 分析化学便覧(日本分析化学会編、改訂第三 版、第314頁)を参考に、酸性亜硫酸ナトリウ 法により、上記溶液中に存在する全アルデ ド基の量(重量%)を求め、求めた全アルデヒ 基の量から、上述のように求めた残存グリ キサール量をアルデヒド基に換算した量(重 %)を差し引いた。差し引き後の値を、付加 合物の固形分濃度(重量%)およびアルデヒド の分子量(Mw=29)で除して、付加縮合物におけ 末端アルデヒド基の含有量(mmol/g-固形分)と た。

 酸性亜硫酸ナトリウム法(直接法)の具体的 手順を以下に示す。試料1gと、濃度0.3Mの亜 酸ナトリウム(NaHSO 3 )水溶液5mLと、水5mLとを混合し、得られた混 液を密封した状態で1時間放置する。次に、 合液にデンプン指示薬0.5mLを加え、速やか 0.1NのI 2 液で滴定して、滴定に要したI 2 液の液量A(mL)から、以下の式により、上記溶 中に存在する全アルデヒド基の量(重量%)を めることができる。
 全アルデヒド基の量(重量%)=(A×0.1×29)/(2×1000 )×100(%)

 -合成例2-
 濃度40%のグリオキサール溶液を174部用いた 外は(モル比にして「エチレン尿素:グリオ サール=1:1.2」に相当)、合成例1と同様にして 、エチレン尿素とグリオキサールとの付加縮 合物を含む淡黄色の透明な溶液を得た。なお 、当該溶液における付加縮合物の固形分濃度 は40%であった。

 上記のようにして得た付加縮合物の平均 子量、付加縮合物における末端アルデヒド の含有量、および、上記溶液中の残存グリ キサール量を評価したところ、平均分子量( 重量平均分子量)が約820、末端アルデヒド基 含有量が2.16(mmol/g-固形分)、残存グリオキサ ル量が0.3重量%であった。

 -合成例3-
 濃度40%のグリオキサール溶液を188.5部用い 以外は(モル比にして「エチレン尿素:グリオ キサール=1:1.3」に相当)、合成例1と同様にし 、エチレン尿素とグリオキサールとの付加 合物を含む淡黄色の透明な溶液を得た。な 、当該溶液における付加縮合物の固形分濃 は40%であった。

 上記のようにして得た付加縮合物の平均 子量、付加縮合物における末端アルデヒド の含有量、および、上記溶液中の残存グリ キサール量を評価したところ、平均分子量( 重量平均分子量)が約880、末端アルデヒド基 含有量が2.41(mmol/g-固形分)、残存グリオキサ ル量が0.5重量%であった。

 -合成例4-
 合成例1で用いたものと同様の4口フラスコ 、エチレン尿素86部を仕込み、水129部および 濃度40%のグリオキサール溶液111.7部(モル比に して「エチレン尿素:グリオキサール=1:0.77」 相当)を加え、pH調整剤として濃度10%の水酸 ナトリウム溶液を用いて系のpHを7.5に調整 た後、55℃で1時間攪拌した。次に、pH調整剤 として濃度20%の硫酸を用いて系のpHを6.5とし 後、エチレン尿素とグリオキサールとを55 で1時間半反応させた。反応終了後、系の温 を30℃以下まで冷却するとともに、濃度25% 水酸化ナトリウム溶液を用いて系のpHを7と 、固形分濃度が40%となるように水を加えて エチレン尿素およびグリオキサールの付加 合物を含む淡黄色の透明な溶液を得た。

 上記のようにして得た付加縮合物の平均 子量、付加縮合物における末端アルデヒド の含有量、および、上記溶液中の残存グリ キサール量を評価したところ、平均分子量( 重量平均分子量)が約650、末端アルデヒド基 含有量が0.78(mmol/g-固形分)であり、残存グリ キサール量は検出されなかった。

 -合成例5-
 濃度40%のグリオキサール溶液を116.0部用い 以外は(モル比にして「エチレン尿素:グリオ キサール=1:0.8」に相当)、合成例4と同様にし 、エチレン尿素とグリオキサールとの付加 合物を含む淡黄色の透明な溶液を得た。な 、当該溶液における付加縮合物の固形分濃 は40%であった。

 上記のようにして得た付加縮合物の平均 子量、付加縮合物における末端アルデヒド の含有量、および、上記溶液中の残存グリ キサール量を評価したところ、平均分子量( 重量平均分子量)が約700、末端アルデヒド基 含有量が1.21(mmol/g-固形分)であり、残存グリ キサール量は検出されなかった。

 -合成例6-
 濃度40%のグリオキサール溶液を290.0部用い 以外は(モル比にして「エチレン尿素:グリオ キサール=1:2.0」に相当)、合成例1と同様にし 、エチレン尿素とグリオキサールとの付加 合物を含む淡黄色の透明な溶液を得た。な 、当該溶液における付加縮合物の固形分濃 は40%であった。

 上記のようにして得た付加縮合物の平均 子量、付加縮合物における末端アルデヒド の含有量、および、上記溶液中の残存グリ キサール量を評価したところ、平均分子量( 重量平均分子量)が約1150、末端アルデヒド基 含有量が3.71(mmol/g-固形分)、残存グリオキサ ール量が0.4重量%であった。

 合成例1~6の末端アルデヒド基の含有量、 よび、残存グリオキサール量を、エチレン 素とグリオキサールとの混合比と併せて、 下の表1にまとめて示す。

 [PVAの合成]
 (PVA-1)
 撹拌機、窒素の導入口、エチレンの導入口 重合開始剤の添加口、およびディレー溶液 添加口を備えた内容積250Lの加圧反応槽に、 酢酸ビニルモノマー130.5kg、およびメタノー 19.5kgを仕込み、槽内を60℃に昇温した後、30 間の窒素バブリングにより、反応系内を窒 置換した。次に、反応槽内の圧力が0.39MPaと なるようにエチレンガスを槽内に導入した後 、反応槽内の酢酸ビニルモノマーとメタノー ルとの混合物に重合開始剤としてAMV(2,2’-ア ビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリ ))のメタノール溶液(濃度2.8g/L、窒素バブリ グによる窒素置換済み)90mLを添加して、酢酸 ビニルモノマーとエチレンとの共重合を開始 した。重合中は、槽内の温度を60℃に維持す とともに、重合開始剤として上記AMV溶液を 135mL/時間のレートで槽内に連続的に供給し 。

 およそ4時間後に重合率が40%となったとこ ろで反応系を冷却して、重合反応を停止させ た。重合中、槽内の圧力は徐々に低下し、重 合停止時における当該圧力は0.37MPaであった

 次に、反応槽を開放して槽内からエチレ を除去した後、窒素バブリングによる反応 内の脱エチレンを行った。次に、反応槽に タノール蒸気を導入して、反応系内に残留 ている未反応の酢酸ビニルモノマーを排出 、構成単位としてエチレン単位を含むポリ 酸ビニル(エチレン変性ポリ酢酸ビニル)の タノール溶液(濃度40%)を得た。

 次に、得られた溶液にメタノールを加え 当該溶液における上記ポリ酢酸ビニルの濃 が30%となるように調整した後、調整後の当 溶液1000g(上記ポリ酢酸ビニルが300g含まれる )に、23.7gのアルカリ溶液(水酸化ナトリウム メタノール溶液:濃度10%)を加えて(酢酸ビニ 単位に対する水酸化ナトリウムのモル比は0. 017)、エチレン変性ポリ酢酸ビニルのけん化 行った。なお、けん化の温度は40℃とした。

 アルカリ溶液の添加後、約2分で溶液全体が ゲル化したため、形成したゲルを反応槽から 取り出して粉砕機により粉砕し、40℃で1時間 放置してけん化をさらに進行させた後、酢酸 メチルを用いて、残存する水酸化ナトリウム を中和した。フェノールフタレイン指示薬に より、中和の完了を確認した後、濾別して得 た白色固体を5倍量のメタノールに投入し、 温で3時間放置して洗浄した。次に、濾別お び当該濾別により得た白色固体をメタノー に投入する洗浄操作を3回繰り返した後、遠 心分離により得られた白色固体を、70℃に保 した乾燥機中に1日間放置して乾燥させ、エ チレン変性PVA(PVA-1)を得た。PVA-1の重合度、ビ ニルアルコール単位の含有率X(モル%)、およ エチレン単位の含有率Y(モル%)を、JIS K6726( リビニルアルコール試験方法)の規定、なら に、上述した 1 H-NMRを用いた方法に基づき評価したところ、 合度は1500、含有率Xは97.5モル%、含有率Yは3. 0モル%であった。

 (PVA-2~PVA-17)
 酢酸ビニルモノマーの重合条件、および/ま たは、けん化の条件、を変化させることで、 PVA-1とは、重合度、含有率Xおよび含有率Yか 選ばれる少なくとも1つが異なる16種類のPVA(P VA-2~PVA-17)を得た。PVA-1を含め、これら合成し PVAの重合度、含有率Xおよび含有率Yを、以 の表2にまとめて示す。なお、PVA-11~PVA-13は、 エチレンガスを反応槽に導入することなく重 合反応を進行させて作製した。

 [塗工剤の作製]
 (実施例1)
 水酸化アルミニウム粉末(昭和電工社製、ハ イジライトH42)90gを蒸留水210gに投入し、手で 拌した後に、ホモミキサー(IKA-Labortechnik社 、タイプT-25-SI)を用いて回転速度13500rpmで5分 間攪拌して、水酸化アルミニウムの分散液A( 酸化アルミニウム濃度30%)を調製した。

 これとは別に、PVA-1を95℃の熱水に溶解さ せて、濃度10%のPVA水溶液を調製した。

 次に、PVA水溶液60gを22gの分散液Aに加え、 両者を均一に混合した後、さらに、付加縮合 物として合成例1を、PVA:付加縮合物(固形分重 量比)=90:10となるように加え、均一に混合し 固形分濃度が15%となるように蒸留水を加え 、塗工剤(実施例1)を得た。得られた塗工剤 粘度を、B型粘度計を用いて温度20℃、内筒 回転速度60rpmで測定したところ、480mPa・sで った。

 得られた塗工剤の粘度安定性を、以下の 法により評価した。評価結果を以下の表3に 示す。

 [粘度安定性]
 上記のようにして得た塗工剤を温度20℃で20 時間放置し、放置後の粘度をB型粘度計を用 て上記と同様に測定して、当該粘度の初期 度に対する比を増粘倍率(=放置後の粘度/初 粘度)として求めた。塗工剤の粘度安定性は 求めた増粘倍率の値に基づき、以下に示す3 段階で評価した。
 -粘度安定性の判定基準-
  ○(良):増粘倍率が1.5倍未満であった。
  △(可):増粘倍率が1.5倍以上3.0倍未満であ た。
  ×(不可):増粘倍率が3.0倍以上であった。

 次に、上記のようにして得た塗工剤を、 販の感熱紙(コクヨ社製)の紙面に、ワイヤ バーのNo.14(ETO社製)を用いて手塗りした後、 風乾燥機を用いて、塗工面を50℃で5時間乾 させた。次に、乾燥後の感熱紙を、20℃、65 %RHに調整した室内に3時間放置して、塗工剤 より形成された層の特性(耐水性、耐ブロッ ング性、耐可塑剤性、および、経時的な黄 の程度)を評価するためのサンプルとした。

 [耐水性]
 上記サンプルを40℃の水に24時間浸漬させた 後、塗工面を指で10回擦って、当該面に生じ 剥がれの状態を観察した。塗工剤により形 された層の耐水性は、観察した状態を以下 基準により判定して5段階で評価した。
 -耐水性の判定基準-
  5:表面の剥がれが全くなかった。
  4:表面の剥がれがごく少しあった。
  3:表面の剥がれが少しあった。
  2:表面の剥がれが多かった。
  1:表面の大部分が剥がれた。

 [耐ブロッキング性(表面耐水性)]
 上記サンプルを40℃の温度雰囲気下に72時間 放置した後、5cm角に裁断した。次に、塗工面 に一滴(約30μL)の水を垂らした後、その上に 水滴を垂らしていない別のサンプルを塗工 同士が接触するように重ね、自然乾燥させ 。乾燥後、サンプル同士を引き剥がして、 の剥がれ方の状態を観察した。塗工剤によ 形成された層の耐ブロッキング性は、観察 た状態を以下の基準により判定して3段階で 価した。
 -耐ブロッキング性の判定基準-
  3:特に力を加えることなく、自然に離れた 。
  2:表面同士が部分的に付着していたが、サ ンプルに破れなどは生じなかった。
  1:表面同士が付着しており、引き剥がしに よってサンプルに破れが生じた。

 [耐可塑剤性]
 上記サンプルの塗工面を印字面として、市 の感熱紙ファクシミリ(リコー社製、リファ ックス300)により印字を行った。次に、ポリ ーボネートパイプ(40mm径)にラップフィルム( 井化学社製、ハイラップSAS)を3重に巻き付 、その上に、上記印字したサンプルを巻き けた後、その上にさらに、上記ラップフィ ムを3重に巻き付けた。次に、これを40℃の 度雰囲気下で24時間放置して、放置後の印字 の濃度をマクベス濃度計により測定し、塗工 剤により形成された層の耐可塑剤性を評価し た。表3に示す数値が大きいほど、印字の濃 を保持できた、即ち、塗工剤により形成さ た層の耐可塑剤性が高い、といえる。

 [経時的な黄変の程度]
 上記サンプルの塗工面を印字面として、上 感熱紙ファクシミリにより印字を行った。 に、上記印字したサンプルを、40℃、95%RHに 調整した恒温恒湿槽内に3週間放置した。放 後のサンプルの色あいを色差計(日本電子工 社性、PF-10)を用いて測定し、その黄色味を らわす尺度としてb値を評価した。b値の数 が大きいほど、黄色度が強い、即ち、黄変 進んだことを示す。

 (実施例2~20、比較例1~10)
 合成例1~6として形成した付加縮合物と、PVA- 1~PVA-17とを、実施例1と同様に、以下の表3A、 3Bに示す比率で混合して、塗工剤(実施例2~20 、比較例1~10)を得た。なお、比較例8では、付 加縮合物の代わりに架橋剤としてグリオキサ ールを用いた。

 得られた塗工剤の粘度安定性、ならびに 当該塗工剤により形成された層の特性を、 施例1と同様に評価した。評価結果を以下の 表3A、表3Bに示す。

 表3A、表3Bに示すように、本発明の塗工剤 である実施例1~20において、その粘度安定性 ならびに、当該塗工剤を用いて形成した層 諸特性を、高いレベルでバランスよく発現 せることができた。

 また、実施例1~20のなかでも、「X+0.2Y」の 値が100を超える実施例6~9、および13~15におい 、さらに高い耐水性を有する層の形成を実 できた。

 これに対して、比較例1~3、5では「X+0.2Y」 の値が、比較例4ではビニルアルコール単位 含有率Xが、比較例6、7では付加縮合物にお る末端アルデヒド基の含有量が、比較例9~10 はPVAと付加縮合物との混合比が、本発明で 定する範囲から外れ、上記特性をバランス く発現させることができなかった。より具 的には、耐水性および耐ブロッキング性に るか、あるいは、塗工剤の粘度安定性が低 した。また、末端アルデヒド基の含有量が 発明で規定する範囲よりも大きい付加縮合 (合成例6)を用いた比較例7では、これに加え て経時的な黄変の程度が増した。

 また、架橋剤にグリオキサールを用いた 較例8は、耐水性に劣るとともに、経時的な 黄変の程度が著しく大きくなった。

 本発明は、その意図および本質的な特徴 ら逸脱しない限り、他の実施形態に適用し る。この明細書に開示されている実施形態 、あらゆる点で説明的なものであってこれ 限定されない。本発明の範囲は、上記説明 はなく添付したクレームによって示されて り、クレームと均等な意味および範囲にあ すべての変更はそれに含まれる。

 上述したように本発明の紙用塗工剤を用 ることにより、紙面へ塗工した後のキュア 程を省略可能でありながら、耐水性に優れ とともに経時的な黄変が少ない層(例えば、 コート層あるいは発色層)を形成できる。即 、耐水性に優れ、かつ経時的な黄変が少な 層(例えば、コート層あるいは発色層)を有す る紙を製造でき、当該紙は、例えば、耐水性 、画像記録保持性、耐可塑剤性、生産性など に優れ、オフセット印刷、感熱印刷をはじめ とする各種の印刷に好適に用いることができ る。