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Title:
COMPOSITE METAL MATERIAL AND PROCESS FOR PRODUCTION THEREOF
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/054309
Kind Code:
A1
Abstract:
A process for the production of a composite metal material which comprises the step of preparing a solution containing a surfactant exhibiting both hydrophilicity and hydrophobicity, the step of dispersing a nano- to micro-sized fine carbonaceous substance in the solution in a monodisperse state, the step of bringing the resulting solution in which the fine carbonaceous substance is dispersed into contact with metal powder particles, the step of drying the resulting metal powder particles to make the fine carbonaceous substance in a monodisperse state adhere to the surfaces of the metal powder particles via the components of the solution, and the step of thermally decomposing and removing the components of the solution adhering to the surfaces of the metal powder particles by heat-treating the metal powder particles either in a hydrogen-containing reducing atmosphere or in a vacuum atmosphere to make partially the surfaces of the metal powder particles bare of the fine carbonaceous substance and thus promote the diffusion among the metal powder particles and the sintering of the metal powder particles in bare areas.

Inventors:
KONDOH KATSUYOSHI (JP)
FUGETSU BUNSHI
Application Number:
PCT/JP2008/068746
Publication Date:
April 30, 2009
Filing Date:
October 16, 2008
Export Citation:
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Assignee:
UNIV HOKKAIDO NAT UNIV CORP (JP)
KONDOH KATSUYOSHI (JP)
FUGETSU BUNSHI
International Classes:
B22F1/16; C01B31/02; C22C1/10; C22C47/14; C22C49/02; C22C49/04; C22C49/06; C22C49/14; C22C101/10
Domestic Patent References:
WO2005110594A12005-11-24
WO2005110594A12005-11-24
Foreign References:
JP2006265686A2006-10-05
JP2007154246A2007-06-21
JP2005200723A2005-07-28
Other References:
C.S. GOH; J. WEI; L. C. LEE; M. GUPTA, MATERIAL SCIENCE AND ENGINEERING A, vol. 423, 2006, pages 153 - 156
See also references of EP 2223757A4
Attorney, Agent or Firm:
ITOH, Hidehiko et al. (Oriental Sakaisuji Bldg.21-19, Shimanouchi 1-chome,Chuo-ku, Osaka-shi, Osaka 82, JP)
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Claims:
親水性および疎水性を有する界面活性剤を含む溶液を準備する工程と、
 前記溶液中に、ナノからマイクロサイズの微小炭素系物質を単分散状態で分散させる工程と、
 前記微小炭素系物質が分散している前記溶液を金属粉末粒子の表面に接触させる工程と、
 前記金属粉末粒子を乾燥し、前記溶液の成分を介して前記金属粉末粒子の表面に単分散状態の前記微小炭素系物質を付着させる工程と、
 前記金属粉末粒子を、水素を含む還元雰囲気中または真空雰囲気中で熱処理することによって、金属粉末粒子の表面に付着した溶液成分を熱分解させて除去し、金属粉末粒子の表面を部分的に前記付着微小炭素系物質から露出させ、露出した部分での金属粉末粒子間の拡散および焼結を進行させる工程とを備える、複合金属材の製造方法。
前記拡散および焼結を進行させた後の金属粉末粒子集合体を押出加工する工程をさらに備える、請求項1に記載の複合金属材の製造方法。
前記熱処理を450℃以上の温度で行なう、請求項1に記載の複合金属材の製造方法。
前記金属粉末粒子の材質は、マグネシウム、銅、アルミニウムおよびチタンからなる群から選ばれた金属またはその合金である、請求項1に記載の複合金属材の製造方法。
前記微小炭素系物質は、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、フラーレンおよびカーボンブラックからなる群から選ばれた物質である、請求項1に記載の複合金属材の製造方法。
前記熱処理によって金属粉末粒子表面に付着した前記微小炭素系物質の一部と粉末粒子の金属とを反応させて金属炭化物を生成させることを含む、請求項1に記載の複合金属材の製造方法。
前記金属粉末粒子はチタンまたはチタン合金であり、
 前記金属炭化物は炭化チタンである、請求項6に記載の複合金属材の製造方法。
前記金属粉末粒子はチタンまたはチタン合金であり、
 前記金属炭化物は炭化チタンであり、
 前記熱処理は、前記金属粉末粒子表面に付着した微小炭素系物質の20~50%が炭化チタンを生成するように、その条件が選ばれている、請求項6に記載の複合金属材の製造方法。
金属粉末粒子の集合体を焼結固化した複合金属材において、
 前記金属粉末粒子は、その表面を部分的に露出した状態で、ナノからマイクロサイズの大きさで単分散状態で分布している微小炭素系物質で覆われており、
 前記露出部分で金属粉末粒子間の拡散および焼結が進行していることを特徴とする、複合金属材。
前記微小炭素系物質は、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、フラーレンおよびカーボンブラックからなる群から選ばれた物質である、請求項9に記載の複合金属材。
前記微小炭素系物質は、親水性および疎水性を有する界面活性剤の溶液成分を介して前記金属粉末粒子の表面に付着されている、請求項9に記載の複合金属材。
前記金属粉末粒子の材質は、マグネシウム、銅、アルミニウムおよびチタンからなる群から選ばれた金属またはその合金である、請求項9に記載の複合金属材。
内部に、前記微小炭素系物質を分散させるとともに、前記微小炭素系物質と前記粉末粒子の金属との反応によって生成される金属炭化物を分散させている、請求項9に記載の複合金属材。
前記金属粉末粒子はチタンまたはチタン合金であり、
 前記金属炭化物は炭化チタンである、請求項13に記載の複合金属材。
前記金属粉末粒子表面に付着した微小炭素系物質の20~50%が粉末粒子の金属と反応して炭化チタンを生成している、請求項14に記載の複合金属材。
 
 
Description:
複合金属材およびその製造方法

 この発明は、ナノからマイクロサイズの 小炭素系物質を表面に付着させた複合金属 末粒子の集合体を焼結固化した複合金属材 よびその製造方法に関するものである。

 カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナ ファイバー、フラーレンおよびカーボンブ ックのような微小炭素系物質は、軽量、高 度および高剛性という特性に加えて、優れ 電気伝導性および熱伝導性を有することか 、金属中に均一に分散することにより金属 料の物理的特性を飛躍的に向上させること 期待されている。

 従来から、マグネシウムに代表される金 の高強度化の方法として、例えばカーボン ノ材料を金属中に分散させることが考えら ていた。

 例えば、特開2007-154246号公報(特許文献1) 、マグネシウムやアルミニウムなどの金属 末粒子表面にメカニカルアロイング法でカ ボンナノ材料を付着させて複合粉末を作り その後この複合粉末を集合させて成形固化 る技術を開示している。

 特開2005-200723号公報(特許文献2)は、ポリ ニルアルコール水溶液にホウ砂を加えてな ゲル状の分散液中にカーボンナノファイバ を分散させ、この中に金属粉末を添加して 練し、その後に乾燥してカーボンナノファ バー金属系粉末を得る技術を開示している

 しかしながら、ナノからマイクロサイズ 微小炭素系物質は、炭素原子間のファンデ ワールス力によりすぐに凝集してしまうの 、上記の方法では、微小炭素系物質を金属 末粒子の表面に均一に分散させることはで ず、最終的に金属材料の特性を飛躍的に向 させることは困難である。

 本願発明の一方の発明者である古月(FUGETS U)は、WO2005/110594A1(特許文献3)において、親水 および疎水性を有する界面活性剤の両親媒 (amphiphilic)を利用し、溶液中でのカーボンナ ノチューブの単体分散化に成功したことを開 示した。

 本願発明の他方の発明者である近藤(KONDOH )は、上記の古月の技術を利用することによ て、金属材料中にカーボンナノチューブを 一に分散させて金属材料の特性を飛躍的に 上させることが可能ではないかと考えた。 こで、近藤および古月は、共同研究として 上記の古月の技術を使って金属粉末粒子の 面にカーボンナノチューブを均一に付着さ 、その後、複合金属粉末粒子間の固相反応 よってカーボンナノチューブを金属または 金中に均一に分散させたCNT均一分散型合金 作製する取り組みを進めた。

 当初、単純に、古月が作ったCNT分散液中 金属粉末粒子を浸漬し、金属粉末表面にCNT 付着させれば、最終的に得られる金属材料 高強度化を実現できると考えていたが、必 しも強度が向上するものではなかった。

 その一つの原因として、金属粉末にCNTが く付着しすぎることで、金属粉末粒子表面 完全にCNTで覆い隠してしまい、金属粉末粒 間の固相反応を阻害するという点が考えら る。

 他の原因として、分散液の成分(以下、「 バインダー」と称する)によってCNTを金属粉 表面に付着させることになるが、金属粉末 加熱して結合・固化する際に、このバイン ー成分の存在によって最終金属材料の強度 低下させる点が考えられる。バインダーを 全に除去しなければ、金属粉末粒子同士の 金的結合(焼結)を阻害する。さらに、粉末表 面にバインダーが残存した状態で金属粉末粒 子同士を結合・固化した場合、バインダーが 熱分解してガスを発生し、そのガスが固化し た金属素材の内部に気泡(ブリスター)として 在するために、素材の強度低下を誘発する

 最終的な金属材料の特性を向上させるに 、金属粉末表面を部分的に露出させた状態 CNTが金属粉末表面に分散して付着している うにするのが望ましいと考えられる。ある は、金属粉末粒子表面にCNTを付着させる接 剤としての役割を果たすバインダーの残存 を最小にすることが望ましい。しかもこの インダーを熱分解させる条件を見出す必要 ある。

 本発明の目的は、CNTなどの微小炭素系物 を分散させた高強度の複合金属材およびそ 製造方法を提供することである。

 この発明に従った複合金属材は、金属粉 粒子の集合体を焼結固化したものである。 属粉末粒子は、その表面を部分的に露出し 状態で、ナノからマイクロサイズの大きさ 単分散状態で分布している微小炭素系物質 覆われている。上記の露出部分で、金属粉 粒子間の拡散および焼結が進行している。

 ここで「ナノからマイクロサイズ」とは、 えば、径が10 -6 ~10 -9 mのオーダー、長さが10 -4 ~10 -9 m(好適には10 -6 ~10 -9 m)のオーダーである物質をいう。これらの微 炭素系物質として、カーボンナノチューブ カーボンナノファイバー、フラーレンまた カーボンブラックを挙げることができる。 単分散状態」とは、微小炭素系物質が単独 状態で分散していることを意味するが、ネ トワーク状に分散していることも含むもの ある。

 特開2007-154246号公報や特開2005-200723号公報 に開示された方法では、微小炭素系物質の凝 集が避けられなかったので、微小炭素系物質 を単分散状態で金属粒子表面に付着させるこ とはできなかった。それに対して、本発明の 好ましい実施形態によれば、親水性および疎 水性を有する界面活性剤を含む溶液中に微小 炭素系物質を単分散状態で分散させ、この溶 液を金属粉末粒子の表面に接触させるもので あるので、微小炭素系物質は凝集することな く単分散状態で金属粒子表面に付着する。こ の場合、微小炭素系物質は、親水性および疎 水性を有する界面活性剤の溶液成分を介して 金属粉末粒子の表面に付着している。なお、 親水性および疎水性を有する界面活性剤を含 む溶液は、WO2005/110594A1に詳しく記載されてい る。

 上記のような複合金属粉末粒子を出発原 として金属素材を製造すれば、金属素材中 微小炭素系物質が均一に分散するので、金 素材の強度を向上させることができる。

 好ましくは、金属粉末粒子の材質は、マ ネシウム、銅、アルミニウムおよびチタン らなる群から選ばれた金属または合金であ 。

 好ましい複合金属材は、内部に、微小炭 系物質を分散させるとともに、微小炭素系 質と粉末粒子の金属との反応によって生成 れる金属炭化物を分散させている。一つの ましい実施形態では、金属粉末粒子はチタ またはチタン合金であり、金属炭化物は炭 チタンである。好ましくは、金属粉末粒子 面に付着した微小炭素系物質の20~50%が粉末 子の金属と反応して炭化チタンを生成して る。

 好ましくは、後工程での金属粉末粒子同 の冶金的結合(焼結)を促進するために、金 粉末粒子の表面に付着している界面活性剤 溶液成分を、水素を含む雰囲気で還元処理 ることによって除去しておく。さらに、金 粉末粒子同士の冶金的結合を促進するとい 観点から、金属粉末粒子の表面が、微小炭 系物質で覆われていない露出領域を有する うにしておくことも望ましい。そのための つの方法としては、分散液の濃度を従来の のよりも100倍といったレベルで大幅に希釈 ることが考えられる。

 複合金属材としては、焼結固化後の素材 押出加工したものであっても良い。

 この発明に従った複合金属材の製造方法 、親水性および疎水性を有する界面活性剤 含む溶液を準備する工程と、この溶液中に ナノからマイクロサイズの微小炭素系物質 単分散状態で分散させる工程と、微小炭素 物質が分散している溶液を金属粉末粒子の 面に接触させる工程と、金属粉末粒子を乾 し、溶液の成分を介して金属粉末粒子の表 に単分散状態の微小炭素系物質を付着させ 工程と、金属粉末粒子を、水素を含む還元 囲気中または真空雰囲気中で熱処理するこ によって、金属粉末粒子の表面を部分的に 着微小炭素系物質から露出させ、露出した 分での金属粉末粒子間の拡散および焼結を 行させる工程とを備える。

 溶液を金属粉末粒子の表面に接触させる 体的方法として、一例は、金属粉末粒子を 液中に浸漬することであり、他の例は、溶 を金属粉末粒子の表面に向けて噴霧するこ である。

 好ましくは、上記の熱処理または還元処 を450℃以上の温度で行う。金属粉末粒子の 質は、例えば、マグネシウム、銅、アルミ ウムおよびチタンからなる群から選ばれた 属またはその合金である。

 複合金属材の製造方法は、上記の拡散お び焼結を進行させた後の金属粉末粒子集合 を押出加工する工程を備えるものであって よい。

 上記の熱処理によって、金属粉末粒子表 に付着した微小炭素系物質の一部と粉末粒 の金属とを反応させて金属炭化物を生成さ るようにしてもよい。一つの実施形態では 金属粉末粒子はチタンまたはチタン合金で り、金属炭化物は炭化チタンである。好ま くは、熱処理は、金属粉末粒子表面に付着 た微小炭素系物質の20~50%が炭化チタンを生 するように、その条件が選ばれている。

マグネシウム合金粉末の外観およびカ ボンナノチューブの外観を示す写真である CNT分散溶液に浸漬する前の原料AZ31Bマ ネシウム合金粉末粒子の表面を示す写真で る。 CNT分散溶液中に浸漬した後に乾燥したA Z31Bマグネシウム合金粉末粒子の表面を示す 真である。 CNT分散溶液中に浸漬した後に乾燥したA Z31Bマグネシウム合金粉末粒子の表面を示す 真である。 CNT分散溶液中に浸漬した後に乾燥したA Z31Bマグネシウム合金粉末粒子に対して大気 で480℃×1hr保持する熱処理を施した粉末粒子 の表面を示す写真である。 CNT分散溶液中に浸漬した後に乾燥したA Z31Bマグネシウム合金粉末粒子に対して大気 で550℃×1hrの熱処理を施した粉末粒子の表面 を示す写真である。 CNT分散溶液中に浸漬した後に乾燥したA Z31Bマグネシウム合金粉末粒子の表面を示す 真である。 CNT分散溶液中に浸漬した後に乾燥したA Z31Bマグネシウム合金粉末粒子に対して、ア ゴンガス雰囲気中で600℃×1hrの熱処理を施し た粉末粒子の表面を示す写真である。 CNT分散溶液中に浸漬した後に乾燥したA Z31Bマグネシウム合金粉末粒子に対して、水 ガス雰囲気中で600℃×1hrの熱処理を施した粉 末粒子の表面を示す写真である。 CNT分散溶液中に浸漬した後に乾燥した AZ31Bマグネシウム合金粉末粒子に対して、水 ガス雰囲気中で800℃×1hrの熱処理を施した 末粒子の表面を示す写真である。 CNT分散溶液中に浸漬した後に乾燥した 純銅粉末粒子の表面を示す写真である。 CNT分散溶液中に浸漬した後に乾燥した 純銅粉末粒子の表面を示す写真である。 CNT分散溶液中に浸漬した後に乾燥した 純銅粉末粒子に対して、アルゴンガス雰囲気 中で600℃×1hrの熱処理を施した粉末粒子の表 を示す写真である。 CNT分散溶液中に浸漬した後に乾燥した 純銅粉末粒子に対して、アルゴンガス雰囲気 中で600℃×1hrの熱処理を施した粉末粒子の表 を示す写真である。 CNT分散溶液中に浸漬した後に乾燥した 純銅粉末粒子に対して、水素雰囲気中で600℃ ×1hrの熱処理を施した粉末粒子の表面を示す 真である。 CNT分散溶液中に浸漬した後に乾燥した 純銅粉末粒子に対して、水素雰囲気中で600℃ ×1hrの熱処理を施した粉末粒子の表面を示す 真である。 CNT分散溶液中に浸漬した後に乾燥した 純銅粉末粒子に対して、水素雰囲気中で800℃ ×1hrの熱処理を施した粉末粒子の表面を示す 真である。 CNT分散溶液中に浸漬した後に乾燥した 純銅粉末粒子に対して、水素雰囲気中で800℃ ×1hrの熱処理を施した粉末粒子の表面を示す 真である。 AZ31(CNT被覆)粉末の外観およびAZ31(CNT混 )粉末の外観を示す写真である。 AZ31(CNT被覆)粉末粒子の表面のSEM観察結 果を示す写真である。 AZ31B(CNT被覆)粉末粒子表面より削り取 たCNT被覆膜についてのTGA結果を示す図であ 。 AZ31B(原料)粉末、AZ31B(CNT混合)粉末、AZ31 B(CNT被覆)粉末の各粉末を用いて作製した圧粉 成形体の外観を示す写真である。 CNT被覆AZ31B粉末(480℃×1hr大気熱処理)を 用いた押出材の外観を示す写真である。 CNT被覆AZ31B粉末(480℃×1hr大気熱処理)を 用いた押出材の外観を示す写真である。 Mg粉末押出材において、CNTの含有量に する引張耐力の増加量の関係を示す図であ 。 Ti粉末押出材に対する応力-歪曲線の一 例を示す図である。

 [マグネシウム合金(AZ31B)粉末およびカーボ ナノチューブの外観]
 図1(a)は、切削加工によりAZ31Bマグネシウム 金インゴットから採取したマグネシウム合 粉末(AZ31B粉末)の外観を示す写真であり、図 1(b)は、本研究で用いたカーボンナノチュー (CNT:直径約20nm、長さ2~10μm)の外観を示す写真 である。

 [カーボンナノチューブ分散液の調製]
 (1A)3-(N,N-dimethylmyristylammonio)-propanesulfonate「3-( N,N-ジメチルミレステルアンモニオ)プロパン ルホネート」(両性イオン界面活性剤,Fluka製 )2.0g、ポリオキシエチレンジスチレン化フェ ルエーテル(花王製)2.0g、アルキル(14-18)ジメ チルベタイン(花王製)1.0gおよび脱イオン水400 mlを混合し、カーボンナノチユーブを分散す ための水溶液を調製した。

 (2A)上記(1A)で得られた水溶液に20.2~20.5gの ーボンナノチューブ(直径20nm、長さ2~10μm)を 添加して、脱イオン水で溶液全体が500mlにな ように調整した後、ボールミル胴体(円筒形 、内容積=1800ml、ジルコニウムビーズの直径=5 0~150mm、ビーズ量の充填量=1200g)に入れ、ボー ミル胴体を回転架台(アサヒ理化研究所製「 AS ONE」)に載せて約8時間緩やかに撹拌し、カ ーボンナノチューブを含む1次分散液(粗分散 )を作成した。

 (3A)上記(2A)で作成したカーボンナノチュ ブを含有する1次分散液の全量をボールミル 体から取り出して、ビーズミル(WAB社製「ダ イノーミル」、筒形状、内容積=2000ml、直径1. 0mmのジルコニアビーズを1800g充填)を用い、100 0ml/分の流量で、30~60分間、分散処理を行い、 カーボンナノチューブの2次分散液(カーボン ノチューブは96%以上が1本1本に分散されて る。すなわち、孤立単分散状態である。)を 製した。

 [金属粉末粒子表面上でのカーボンナノチュ ーブネットの形成および固定化処理]
 (1B)上記(3A)で得られたカーボンナノチュー の2次分散液を、金属粉末粒子(形状に関して は特に問わないが、比表面積の大きい形状、 例えば、球状または粒子状の基材が特に望ま しい)と十分混合させた後、逐次に(温度80℃~1 10℃)、または瞬間的に(噴霧乾燥、温度200~280 )水分を蒸発させた。水分が分散液から取り 除かれる過程の中で、1本1本に分散されてい カーボンナノチューブは、分散液の相(液相 またはエアゾル)から金属粉末粒子の表面(固 )に遷移した。その結果、カーボンナノチュ ーブは、1本1本に分散した状態を保ちながら 金属粉末粒子の表面上に蜜に繋がったネッ を形成し、金属粉末粒子の表面に孤立分散 れた状態を維持しながら固定化されること なった。

 (2B)金属粉末粒子の表面に固定されている カーボンナノチューブの量を、2次分散液に けるカーボンナノチューブの濃度または上 の(1B)の過程において使用される分散液の絶 量を変えることにより、変化させることが きる。具体的には、以下の比率を有する金 粉末粒子/カーボンナノチューブの複合金属 粉末粒子を調整した。

 (3B)上記(3A)で得られたカーボンナノチュ ブの2次分散液900mL(CNTの濃度;1.5%)とAZ31Bマグ シウム合金粉末(直径150~250μm)307.2gを十分に 合した後、80℃の恒温槽の中で、一晩中、静 置し、分散液中の水分を逐次に蒸発させた。 この処理により、カーボンナノチューブネッ トを持つマグネシウム合金粒子を作成するこ とができた。マグネシウム/カーボンナノチ ーブの比率=307.2/13.5=22.8/1であった。

 図2は、CNT分散溶液に浸漬する前の原料AZ3 1Bマグネシウム合金粉末粒子(M1-1)の表面を示 写真である。

 図3は、CNT分散溶液中に浸漬した後に乾燥 したAZ31Bマグネシウム合金粉末粒子(M1-2)の表 を示す写真である。針状に見えるものがCNT あり、粉末粒子の表面を緻密に被覆してい 。CNTは、凝集しておらず、単分散状態とな ている。

 図4は、上記の(M1-2)のAZ31Bマグネシウム合 粉末粒子と同様の粉末粒子(M1-3)の表面を示 写真である。バインダーが高濃度であるた に、バインダー(界面活性剤成分)が凝集し いる部分が観察される。CNTは、凝集してお ず、単分散状態となっている。

 図5は、上記の(M1-2)のAZ31Bマグネシウム合 粉末粒子に対して大気中で480℃×1hr保持す 熱処理を施した粉末粒子(M1-4)の表面を示す 真である。バインダー(界面活性剤成分)が層 状となって粉末粒子表面を覆っている。この 場合も、CNTの孤立単分散状態は維持されてい る。

 図6は、上記の(M1-2)のAZ31Bマグネシウム合 粉末粒子に対して大気中で550℃×1hrの熱処 を施した粉末粒子(M1-5)の表面を示す写真で る。バインダー(界面活性剤成分)が微小なう ろこ状となって粉体表面を覆っている。大気 中で高温加熱保持したためにCNTは変質してい る。

 (4B)脱イオン水を用いて上記(3A)で得られ カーボンナノチューブの2次分散液を100倍に 釈した水溶液900mL(CNTの濃度;0.15%)を準備し、 この中に上記(3B)で用いたAZ31Bマグネシウム合 金粉末307.2gを添加して十分に混合し、3時間 漬した後に粉体を取り出して大気乾燥を施 た。この際、マグネシウム/カーボンナノチ ーブの比率=307.2/0.135=2280/1であった。

 図7は、CNT分散溶液中に浸漬した後に乾燥 したAZ31Bマグネシウム合金粉末粒子(M2-1)の表 を示す写真である。この写真は、熱処理前 状態を示している。針状に見えるものがCNT ある。分散溶液を100倍に希釈したので、CNT 明瞭に孤立して単分散している。CNTは凝集 ていないが、バインダー(界面活性剤成分) 、粉末粒子の表面全体を被覆しており、局 的にうろこ状に凝集している。

 図8は、上記の(M2-1)のAZ31Bマグネシウム合 粉末に対してアルゴンガス雰囲気中で600℃ 1hrの熱処理を施した粉末粒子(M2-2)の表面を す写真である。バインダー(界面活性剤成分) が微小なうろこ状となって粉末粒子表面全体 を均一に覆っている。CNTの孤立単分散状態は 、維持されている。

 図9は、上記の(M2-1)のAZ31Bマグネシウム合 粉末に対して水素ガス雰囲気中で600℃×1hr 熱処理を施した粉末粒子(M2-3)の表面を示す 真である。粉末粒子の表面にバインダー(界 活性剤成分)の残存は確認されず、粉末粒子 の素地が観察される。CNTの孤立単分散状態は 維持されている。

 図10は、上記の(M2-1)のAZ31Bマグネシウム合 金粉末に対して水素ガス雰囲気中で800℃×1hr 熱処理を施した粉末粒子(M2-4)の表面を示す 真である。上記の(M2-3)と同様に、粉末粒子 面にバインダー(界面活性剤成分)の残存は 認されず、粉末粒子の素地が観察される。CN Tの孤立単分散状態は維持されている。

 (5B)脱イオン水を用いて上記(3A)で得られ カーボンナノチューブの2次分散液を100倍に 釈した水溶液100mL(CNTの濃度;0.15%)を準備し、 この中に純銅粉末(平均粒子径36.7μm)10gを添加 して十分に混合し2時間浸漬した後に粉体を り出して大気乾燥を施した。この際、銅/カ ボンナノチューブの比率=10/0.135=74/1であっ 。

 図11および図12は、CNT分散溶液中に浸漬し た後に乾燥した純銅粉末粒子(C-1およびC-2)の 面を示す写真である。針状に見えるものがC NTである。分散溶液を100倍に希釈したので、C NTが明瞭に孤立して単分散している。CNTは凝 していないが、バインダー(界面活性剤成分 )は粉末粒子の表面全体を層状に被覆してお 、局所的にうろこ状に凝集している。

 図13および図14は、上記の(C-1)の純銅粉末 子に対して、アルゴンガス雰囲気中で600℃ 1hrの熱処理を施した粉末粒子(C-3およびC-4)の 表面を示す写真である。バインダー(界面活 剤成分)が微小な房状となって粉末粒子表面 体を均一に覆っている。バインダーが膜状 濃化して固形化する場所も観察される。こ 場合も、CNTの孤立単分散状態は維持されて る。

 図15および図16は、上記の(C-1)の純銅粉末 子に対して、水素雰囲気中で600℃×1hrの熱 理を施した粉末粒子(C-5およびC-6)の表面を示 す写真である。粉末粒子表面にバインダー( 面活性剤成分)の残存は確認されず、粉末粒 の素地が観察される。この場合も、CNTの孤 単分散状態は維持されている。また、水素 囲気中で加熱することにより、銅粉末粒子 士の拡散・焼結現象が進行しており、粉末 3重点(旧粉末粒界)に球状化した空隙が観察 れる。

 図17および図18は、上記の(C-1)の純銅粉末 子に対して、水素雰囲気中で800℃×1hrの熱 理を施した粉末粒子(C-7およびC-8)の表面を示 す写真である。粉末粒子表面にバインダー( 面活性剤成分)の残存は確認されず、粉末粒 の素地が観察される。この場合も、CNTの孤 単分散状態は維持されている。

 [水素還元熱処理による炭素量(バインダー) 残存量に関する分析結果]
 両性イオン界面活性剤のみを含む水溶液(上 記の(1A)で得られた水溶液)にAZ31Bマグネシウ 粉末を浸漬し、乾燥した後に大気熱処理お び水素還元熱処理を施した試料について、 存炭素量を分析した。その結果は、次の通 であった。

 (1)AZ31B原料粉末(水溶液に浸漬する前):0.003wt%
 (2)水溶液に浸漬・乾燥したAZ31Bマグネシウ 合金粉末:0.013wt%
 (3)上記の(2)の粉末に対して大気中で550℃×1h rの熱処理を施した粉末:0.008wt%
 (4)上記の(2)の粉末に対して水素雰囲気中で5 50℃×1hrの熱処理を施した粉末:0.002wt%
 上記の分析結果から、(4)の水素還元熱処理 施すことによってバインダー成分は完全に 解し、粉末粒子表面には残存しないことが かる。一方、(3)の大気熱処理では、(2)の被 粉末に比べて炭素量が減少していることか 、バインダー成分は多少、分解していると えられるが、(4)の水素還元処理に比べて残 炭素量が多いことから、AZ31B粉末粒子の表 に炭素が残存していることがわかる。この うな残存バインダー皮膜は、AZ31B粉末同士の 焼結性を阻害し、押出材の機械的特性を低下 させる。

 [CNTを付着させるための異なった方法の比較 ]
 CNTによって表面被覆したAZ31Bマグネシウム 金粉末粒子を作製するにあたり、以下の2つ 方法を行って比較した。

 (1)両性イオン界面活性剤を含む水溶液中に 漬する方法
 CNTが孤立単分散している水溶液(CNTの含有量 1%w/v)300mlを含む容器中にAZ31B原料粉末98.3gを添 加した状態で80℃に管理した恒温槽内に静置 た。溶液中の水分が蒸発する過程の中で、 立分散状態のCNTは水溶液からAZ31B原料粉末 子上に遷移し、その表面にCNT単体のネット ーク構造(CNTネットと略記する)を形成した。 その結果、CNTは、孤立分散した単体状態で原 料粉末粒子の表面に定着した。このようにし て作製した複合粉末を「AZ31(CNT被覆)」と記す 。

 (2)単純に混合する方法
 AZ31B原料粉末(以下、「AZ31(原料)」と記す)に 、CNT粉末を単純に混合した。この混合粉末を 「AZ31(CNT混合)」と記す。

 (3)粉末の外観比較
 図19(a)はAZ31(CNT被覆)粉末の外観を示し、図19 (b)はAZ31(CNT混合)粉末の外観を示す。AZ31(CNT混 )粉末の場合、CNTの凝集部が存在しており、 AZ31(原料)粉末と分離した状態を呈している。 一方、AZ31(CNT被覆)粉末では、表面全体が黒色 を呈しており、CNTが均一に付着していると考 えられる。また、通常の取り扱い過程におい て、CNTは剥離しないことが確認された。

 (4)AZ31(CNT被覆)粉末表面のCNTの付着状況
 図20は、AZ31(CNT被覆)粉末粒子の表面のSEM観 結果を示す。図20(a)において、白く観察され る部分Aと、黒色領域Bとが確認された。それ をそれぞれ高倍率下で観察した結果、領域A に存在する溶液の固形成分量が領域Bに比べ 多いため白色化したものと考えられる。た し、図20(b)および(c)に示すように、いずれの 領域においても、CNTは凝集することなく単体 で粉末粒子表面を被覆し、それぞれCNTは網目 状(ネットワーク構造)を呈している。このよ に、溶液中に単分散したCNTをAZ31B原料粉末 付着させることで、乾燥後の粉末粒子表面 おいても、CNTは、凝集体を形成することな 均一に分散・被覆できることを明らかにし 。

 [付着成分の熱分解温度の調査]
 CNTは界面活性剤をはじめとする溶液成分を してAZ31B粉末表面に付着しているが、粉末 固化成形時の加工・熱処理過程において上 成分の熱分解が生じる。その際、炭素残留 あるいはガスとして素材内部に残存するこ で特性低下を誘発する恐れがある。そこで 熱分解過程を調査すべく、表面を被覆するCN T皮膜を採取して熱重量分析装置(島津製作所 DTG-60)を用い、アルゴン雰囲気中で973Kまで 熱することで付着成分の熱分解温度を調査 た。

 AZ31B(CNT被覆)粉末粒子表面より削り取った CNT被覆膜についてのTGA結果を図21に示す。約5 23K~723Kの温度範囲で著しい重量減少が確認さ 、この範囲で溶液成分の熱分解が生じたも と考えられる。言い換えると、今回作製し CNT複合Mg粉末を成形固化する際には、723K以 の温度域で加熱することで、溶液成分を分 し、素材内部に残存しないような条件管理 好ましい。

 [圧粉体の成形性]
 油圧プレス成形機を用いてAZ31B(原料)粉末、 AZ31B(CNT被覆)粉末およびAZ31B(CNT混合)粉末を常 にて圧粉固化し、その成形性について評価 た。コンテナ内径φ34mm、加圧力600MPaとし、A Z31B(原料)粉末およびAZ31B(CNT混合)粉末につい は、全長約30mm、AZ31B(CNT被覆)粉末については 、全長約25mmとなるように固化成形し、各圧 体の外観を観察した。

 AZ31B(原料)粉末、AZ31B(CNT混合)粉末、AZ31B(CN T被覆)粉末の各粉末を用いて作製した圧粉成 体の外観を図22に示す。従来の機械的混合 により作製したAZ31B(CNT混合)粉末圧粉体にお ては、表面にCNTの凝集体が偏在しているこ が確認でき、ハンドリング性も悪く、軽い 撃でも崩れることが観察された。また、理 高さ30mmに対して、試料全長は40mmとなり、 粉体内部に多くの空隙を含んでいることか 成形性に劣るといえる。一方、AZ31B(CNT被覆) 末を用いて作製した圧粉体は、加圧面・側 のいずれにも亀裂・欠損等はなく、またCNT 凝集体は存在せずにCNTが均一分散すること 、圧粉体全体が濃灰色を呈している。試料 長は、理論値とほぼ一致していることから 原料粉末と同様、内部空隙が少ない健全な 粉体が成形されていると考えられる。

 [CNT被覆AZ31B圧粉成形体の押出]
 CNT被覆AZ31Bマグネシウム合金粉末粒子の熱 理条件と、圧粉成形体を押出加工して得ら た押出材の引張強度との関連性を調査した その結果を表1に示す。

 

 表1中の試料A~Dが好ましい発明例である。 これらの試料は、CNT被覆AZ31Bマグネシウム合 粉末粒子を水素を含む雰囲気で還元処理し ものを出発原料とした押出材であり、良好 引張強度(TS)および伸びを示した。それに対 して、CNT被覆AZ31Bマグネシウム合金粉末粒子 大気中で熱処理したものを出発原料とした 出材(試料EおよびF)については、引張強度特 性および伸び特性が劣っていた。CNT被覆を有 しないAZ31B原料粉末を出発原料とした試料Gの 押出材についても、試料A~Dに比べて引張強度 特性および伸び特性が劣っていた。

 図23は、CNT被覆AZ31B粉末(480℃×1hr水素ガス 中熱処理)を用いた押出材の外観を示す写真 ある。写真から明らかなように、良好な押 加工を行うことができた。

 図24は、CNT被覆AZ31B粉末(480℃×1hr大気熱処 理)を用いた押出材の外観を示す写真である 写真から明らかなように、粉末は固化しな った。この原因は、粉末粒子表面にバイン ー成分が付着していたからと思われる。

 [CNT被覆純銅圧粉成形体の押出]
 CNT被覆純銅粉末粒子の熱処理条件と、圧粉 形体を押出加工して得られた押出材の引張 度との関連性を調査した。その結果を表2に 示す。

 

 表2中の試料AおよびBが好ましい発明例で る。これらの試料は、CNT被覆純銅粉末粒子 水素を含む雰囲気で還元処理したものを出 原料とした押出材であり、良好な引張強度 よび伸びを示した。それに対して、CNT被覆 銅粉末粒子を大気中で熱処理したものを出 原料とした押出材(試料CおよびD)については 、引張強度特性および伸び特性が劣っていた 。CNT被覆を有しない純銅原料粉末を出発原料 とした試料Eの押出材については、試料Aおよ Bに比べて引張強度特性が劣っていた。

 本願発明の発明者は、さらに下記の追加 験を行なった。

 [CNT分散水溶液の作製]
 3-(N,N-dimethylmyristylammonio)-propanesulfonate「3-(N,N- ジメチルミレステルアンモニオ)プロパンス ホネート」(両性イオン界面活性剤);2.0g,ポリ オキシエチレンジスチレン化フェニルエーテ ル;2.0g,アルキル(14-18)ジメチルベタイン;1.0gお よび脱イオン水400mlを混合し、カーボンナノ ューブを分散するための水溶液を調合した この水溶液を一旦、攪拌処理した後に多層 ーボンナノチューブ(直径20nm,全長1~5μm、以 CNTと記す)を添加した。その際、CNTの濃度が 3mass%となるようにCNTを配合して添加した後、 ジルコニアボールと共にボールミル胴体に入 れて8時間の撹拌処理を施すことでCNTを含む1 分散液(粗分散液)を作製した。この水溶液 対して1時間の超音波洗浄処理を施すことでC NTが孤立単分散する2次分散液(以下、CNT分散 と記す)を作製した。

 [原料粉末の準備]
 CNTを表面に被覆する金属粉末として、純マ ネシウム(Mg)粉末、純銅(Cu)粉末、純チタン(T i)粉末、銅合金粉末を準備した。

 先ず、純Mg粉末には、粉砕法により作製 た粗粒粉末(純度;99.9%、平均粒子径;1.47mm)と アトマイズ法により作製した微粒粉末(純度; 99.9%、平均粒子径;155μm)の2種類の粉末を用い 。純Cu粉末としては、純度;99.8%、平均粒子 ;178μmの粉末を用いた。純Ti粉末にはスポン チタン粉末(純度;99.9%、平均粒子径;697μm)を いた。銅合金粉末としてCu-40%Zn黄銅粉末(Zn;39 .8%,Fe;0.12%,平均粒子径;40μm)を用いた。

 [各金属粉末表面へのCNT被覆方法]
 いずれの金属粉末においても、CNTによる表 被覆方法は同じであり、以下の手順で行な た。先ず、金属粉末を上記のCNT分散液に浸 し、3分間保持した後に粉末を分散液から取 り出す。その際、粉末粒子径よりも小さい網 目(メッシュ間隔)を有する篩やネットを用い 。その上に溜まった粉末をマッフル炉内で ルゴン雰囲気中にて110℃で2時間加熱保持す ることで粉末表面に存在する水分を蒸発させ る。これにより金属粉末の表面には1本ずつ 孤立分散した多層CNTが均一に付着した粉末( 下、CNT被覆粉末と記す)が得られる。

 [CNT被覆Mg粉末の熱間固化方法]
 上述した2種類の純Mg粉末を用いてCNT被覆Mg 末を作製し、それぞれの粉末を放電プラズ 焼結装置によって、第1次焼結固化工程とし 真空度1×10 -4 Pa以下、加圧力30MPa、焼結温度550℃、保持時 30分間の固相焼結によって焼結体を作製した 。さらに引き続いて第2次焼結工程(無加圧の 態で真空度1×10 -4 Pa以下、焼結温度700℃、保持時間20分間の液 焼結)を施すことでCNTが内部に孤立単分散す 押出用Mg粉末焼結ビレットが得られる。

 各ビレットを400℃に加熱した後、押出比3 7で熱間押出加工を施すことで直径7mmの丸棒 材を作製した。

 それぞれの押出材における炭素分析を行 た結果、CNT含有量は粗粒純Mg粉末を用いた 合には0.52mass%、微粒純Mg粉末を用いた場合に は0.80mass%であった。

 [CNT被覆Cu粉末の熱間固化方法]
 上記の純Cu粉末を用いてCNT被覆Cu粉末を作製 し、この粉末を放電プラズマ焼結装置によっ て、第1次焼結固化工程として真空度1×10 -4 Pa以下、加圧力30MPa、焼結温度500℃、保持時 30分間の固相焼結によって焼結体を作製し、 さらに引き続いて第2次焼結工程(無加圧の状 で真空度1×10 -4 Pa以下、焼結温度900℃、保持時間20分間の焼 )を施すことでCNTが内部に孤立単分散する押 用Cu粉末焼結ビレットが得られる。

 このビレットを800℃に加熱した後、押出 36で熱間押出加工を施すことで直径10mmの丸 素材を作製した。押出材における炭素分析 行った結果、CNT含有量は0.52mass%であった。

 [CNT被覆Ti粉末の熱間固化方法]
 上記のスポンジ純Ti粉末を用いてCNT被覆Ti粉 末を作製し、この粉末を放電プラズマ焼結装 置によって、真空度1×10 -4 Pa以下、加圧力30MPa、焼結温度1000℃、保持時 30分間の固相焼結によって固化することでCN Tが内部に孤立単分散する押出用Ti粉末焼結ビ レットが得られる。

 このビレットを1000℃に加熱した後、押出 比37で熱間押出加工を施すことで直径7mmの丸 素材を作製した。押出材における炭素分析 行った結果、CNT含有量は0.72mass%であった。

 [CNT被覆黄銅粉末の熱間固化方法]
 上記の黄銅粉末を用いてCNT被覆黄銅粉末を 製し、この粉末を放電プラズマ焼結装置に って、真空度1×10 -4 Pa以下、加圧力30MPa、焼結温度780℃、保持時 30分間の固相焼結によって固化することでCNT が内部に孤立単分散する押出用黄銅粉末焼結 ビレットが得られる。

 このビレットを800℃にて40分間加熱保持 た後、押出比36で熱間押出加工を施すことで 直径10mmの丸棒素材を作製した。押出材にお る炭素分析を行った結果、CNT含有量は0.84mass %であった。

 [CNT分散Mg粉末押出材の引張試験]
 上記の2種類のCNT分散Mg粉末押出材から引張 験片を作製し、常温にて歪速度5*10 -4 /sの条件下で引張試験を行った。比較としてC NTを含まない原料純Mg粉末、および従来技術 あるボールミルによる機械的混合法を用い CNTと微粒純Mg粉末を混合した粉末を上記の同 一条件で固化した際の結果を併せて表3に示 。

 

 表3に示すように、本製法を用いてCNTを分 散させることで引張耐力、引張強さ、さらに ヤング率が増加していることがわかる。逆に 、従来のボールミル混合法によれば、CNTの凝 集・偏析が解消されないために、その部分が 材料欠陥となるために強度の低下を招く。

 CNTの含有量に対する引張耐力の増加量の 係を図25に示す。ここでは、従来技術とし 文献(C.S. Goh, J. Wei, L. C. Lee, M. Gupta; Mate rial Science and Engineering A 423, 2006 153-156)か 採取したデータおよびCNTを機械的混合法に ってMg粉末に分散した場合に得られた押出 の引張強度特性の結果を併せて示す。比較 である従来技術によるMg押出材に比べて、本 研究による試料では高い引張耐力を示してお り、本製法の有効性を確認できる。また本製 法によれば、CNT添加量の増加に伴って耐力は 増加する。

 [CNT分散Cu粉末押出材の熱伝導率]
 上記のCNT分散純Cu粉末押出材から円盤状試 (直径10mm,厚み2mm)を機械加工により採取し、 温での熱伝導率を測定した。比較としてCNT 含まない純Cu粉末押出材についても同一条 で測定した。

 CNTを含まない純Cu粉末押出材では398W/(m・K )となり、ほぼ理論値(390W/(m・K))と一致した。 一方、本製法によれば、526W/(m・K)となり、CNT 添加による熱伝導率の顕著な増加が確認でき た。なお、従来製法である乾式ボールミルに より0.52mass%のCNTを純Cu粉末と混合し、得られ 混合粉末を用いて同一条件でCNT分散純Cu粉 押出材を作製した後に熱伝導率を測定した 果、386W/(m・K)となり、CNTの添加効果が確認 きなかった。

 [CNT分散Ti粉末押出材の引張試験]
 上記のCNT分散Ti粉末押出材から引張試験片 作製し、常温にて歪速度5*10 -4 /sの条件下で引張試験を行った。応力-歪曲線 の一例を図26に示す。比較としてCNTを含まな 原料純Tiスポンジ粉末を上記の同一条件で 化した際の結果を併せて同図に示す。また 張強さ、引張耐力、破断伸びの結果を表4に す。

 図26および表4に見られるように、CNTを含 ことで引張耐力と引張強さは著しく向上し いる。一方、ボールミルを用いて単純混合 により純Ti粉末とCNTを混合した粉末を同一 件で押出固化した際の引張試験結果を同表 併せて示す。これから判るように、本製法 よれば、CNTが凝集・偏析することなく1本ず 単独に分散することによりTi押出材の強度 著しく増加させる。他方、従来の混合法に れば、CNTの凝集部が存在することでかえっ 強度・伸びの低下を招いている。

 [CNT分散黄銅粉末押出材の熱伝導率]
 上記のCNT分散黄銅粉末押出材から円盤状試 (直径10mm,厚み2mm)を機械加工により採取し、 常温での熱伝導率を測定した。比較としてCNT を含まない黄銅粉末押出材についても同一条 件で測定した。

 CNTを含まない黄銅粉末押出材では106.4W/(m K)となり、ほぼ文献等で報告されている値(1 09W/(m・K))と一致した。一方、本製法によれば 、133.3W/(m・K)となり、CNT添加による熱伝導率 顕著な増加を確認できた。

 なお、従来製法である乾式ボールミルに り0.84mass%のCNTを黄銅粉末と混合し、得られ 混合粉末を用いて同一条件でCNT分散黄銅粉 押出材を作製した後に熱伝導率を測定した 果、102.2W/(m・K)となり、CNTの添加効果を確 できなかった。

 [チタン粉末にCNTを付着させた実験]
 (1)原料粉末
 純チタン粉末として、スポンジチタン粉末( 純度;99.9%、平均粒子径;697μm)と、微細球状チ ン粉末(純度;99.7%、平均粒子径;163μm)を用い 。

 (2)チタン粉末表面へのCNT被覆方法
 まず、チタン粉末を上述のCNT分散液に浸漬 、3分間保持した後に、分散液から取出した 。その際、粉末粒子径よりも小さい網目(メ シュ間隔)を有する篩やネットを用いて取出 作業を行なった。篩やネット上に溜まった 末をマッフル炉内でアルゴン雰囲気中にて1 10℃で2時間加熱保持し、粉末表面に存在する 水分を蒸発させた。これにより、1本ずつに 立分散した多層CNTが粉末表面に均一に付着 た粉末が得られた。以下、「CNT被覆粉末」 記す。

 (3)CNT被覆Ti粉末の熱間固化方法
 上記の2種類の純Ti粉末を用いてCNT被覆Ti粉 を作製し、各粉末をアルゴンと水素との混 ガス(流量比率は1:1)雰囲気中において熱処理 を行なった。熱処理の温度は600℃で、保持時 間は30分間であった。この熱処理により、粉 表面に付着した界面活性剤の固形成分を熱 解した。続いて、各粉末を放電プラズマ焼 装置によって、加圧力30MPa、焼結温度1000℃ 保持時間30分~120分間の固相焼結を行い、押 用Ti粉末焼結ビレットを作製した。焼結ビ ットの内部には、CNTが孤立単分散状態で分 している。

 上記の焼結ビレットを1000℃に加熱し、3分 保持した後に、押出比37で熱間押出加工を行 い、直径7mmの丸棒素材を作製した。押出材に おける炭素分析を行なった結果、スポンジTi 末を用いた場合のCNT含有量は0.28mass%であり 微細球状チタン粉末では0.38mass%であった。 た、それぞれのCNT分散Ti粉末押出材から引 試験片を作製し、常温にて歪速度5×10 -4 /sの条件下で引張試験を行なった。

 (4)炭化チタンの生成量の調整
 放電プラズマ焼結工程における焼結温度1000 ℃にて、保持時間を30分~120分の範囲で変える ことにより、CNTとTi粉末との反応性を制御し 合成する炭化チタン(TiC)の生成量を調整し 。

 TiCの生成量に関しては、X線回折における TiCの回折ピーク強度を用いた。具体的には、 まず基準となる材料を作製するために、1200 ×120分間の条件下で放電プラズマ焼結を施し た。作製した基準材料では、全てのCNTがTiと 応してTiCを生成しており、CNTが単体として 在していない。この基準材料のTiC回折ピー 強度を100とし、これに対する各押出材にお るTiCのピーク強度を用いてTiC生成量を定量 に評価した。

 表5に各押出材の引張試験結果と上記のピ ーク強度比との関係を示した。なお、ピーク 強度比が0の材料は、CNTを添加しない純チタ 粉末押出材である。表5から明らかなように いずれのチタン粉末を用いた場合において 、CNTの全てがTiCの生成に消費された場合、 張強さは低下している。しかしながら、TiC CNTとが混在して分散する場合には、引張強 は増大している。特に、粉末表面に付着し いたCNTの20~50%がTiCの生成に寄与した場合(CNT 分散量;80~50%)、CNTとTiCとの複合分散強化によ て引張強さはさらに向上する。

 [チタン粉末にカーボンブラックを付着させ た実験]
 (1)原料粉末
 原料粉末として、微細球状純チタン粉末(純 度;99.7%、平均粒子径;163μm)を用いた。CNTに代 って用いたカーボンブラック粒子の平均粒 径は1.25μmである。

 (2)粉末表面へのカーボンブラック粒子の被 方法
 まず、チタン粉末をカーボンブラック分散 に浸漬し、3分間保持した後に粉末を分散液 から取出した。カーボンブラック分散液は、 既述の分散液の製造方法においてCNTに代わり カーボンブラック粒子を用いたものであり、 濃度を含めて分散液製造のための他の条件は 全て同一である。分散液から粉末を取出す際 、粉末粒子径よりも小さい網目(メッシュ間 )を有する篩やネットを用いた。

 篩やネット上に溜まった粉末をマッフル 内でアルゴン雰囲気中にて110℃で2時間加熱 保持し、粉末表面に存在する水分を蒸発させ た。これにより、チタン粉末の表面には、凝 集体を伴うことなくカーボンブラック粒子が 均一に付着した。

 (3)カーボンブラック粒子被覆Ti粉末の熱間 化方法
 上記のカーボンブラック粒子被覆Ti粉末を ルゴンと水素の混合ガス(流量比率は1:1)雰囲 気中において熱処理を行い、粉末表面に付着 した界面活性剤の固形成分を熱分解した。熱 処理の温度は600℃で、保持時間は30分間であ た。

 続いて、粉末を放電プラズマ焼結装置に って、加圧力30MPa、焼結温度1000℃、保持時 30分~100分間の固相焼結を行い、押出用Ti粉 焼結ビレットを作製した。焼結ビレットの 部には、カーボンブラック粒子が孤立単分 状態で分布している。

 上記ビレットを1000℃に加熱し、3分間保持 た後に、押出比37で熱間押出加工を施し、直 径7mmの丸棒素材を作製した。押出材における 炭素分析を行なった結果、0.45mass%であり、こ れがカーボンブラック粒子の含有量となる。 カーボンブラック粒子分散Ti粉末押出材から 張試験片を作製し、常温にて歪速度5×10 -4 /sの条件下で引張試験を行なった。

 (4)炭化チタン生成量の調整
 前述の実験例と同様の方法により、TiCの回 ピーク強度を用いてTiCの生成量を定量化し 。表6に、各押出材の引張強さとTiCピーク強 度比との関係を示す。なお、ピーク強度比が 0の材料は、カーボンブラック粒子を添加し い純チタン粉末押出材である。

 表6から明らかなように、カーボンブラッ ク粒子をTi粉末押出材中に均一分散すること より、引張強さは増加している。また、カ ボンブラック粒子とTiとの反応によって生 するTiC量が増大することで、その強度はさ に増加する。

 以上、図面を参照してこの発明の実施形 を説明したが、この発明は、図示した実施 態のものに限定されない。図示した実施形 に対して、この発明と同一の範囲内におい 、あるいは均等の範囲内において、種々の 正や変形を加えることが可能である。

 この発明は、強度特性に優れた金属素材を るための技術として有利に利用され得る。
 




 
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