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Patent Searching and Data


Title:
COMPOSITION FOR INDUCING PILI FORMATION IN BACTERIUM OF GENUS BIFIDOBACTERIUM
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2020/175690
Kind Code:
A1
Abstract:
The present invention addresses the problem of providing a method for inducing pili formation in a bacterium of the genus Bifidobacterium, and a method for promoting the fixation of the bacterium in the intestine. 3-Phenylpropionic acid and/or 3-(4-hydroxyphenyl) propionic acid are used as an active ingredient of a composition for inducing pili formation in a bacterium of the genus Bifidobacterium and as an active ingredient of a composition for promoting the fixation of the bacterium in the intestine.

Inventors:
SHIMIZU KANETADA (JP)
OSAWA RO (JP)
NISHIYAMA KEITA (JP)
OKADA NOBUHIKO (JP)
KOYAMA NOBUHIRO (JP)
MUKAI TAKAO (JP)
TOMODA HIROSHI (JP)
Application Number:
PCT/JP2020/008457
Publication Date:
September 03, 2020
Filing Date:
February 28, 2020
Export Citation:
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Assignee:
MORINAGA MILK INDUSTRY CO LTD (JP)
UNIV KOBE NAT UNIV CORP (JP)
THE KITASATO INST (JP)
International Classes:
A61P1/00; A23L33/135; A61K31/192; A61K35/742; A61K35/745
Foreign References:
US20180168196A12018-06-21
JPS6379586A1988-04-09
Other References:
S. FUKUDA ET AL., NATURE, vol. 469, 2011, pages 543 - 547
FANNING ET AL., PNAS, vol. 109, no. 6, 2012, pages 2108 - 2113
SIVAN A. ET AL., SCIENCE, vol. 350, no. 6264, 2015, pages 1084 - 1089
O'CONNELL MOTHERWAY ET AL., PNAS, vol. 108, no. 27, 2011, pages 11217 - 11222
F. TURRONI ET AL., PNAS, vol. 110, no. 27, 2013, pages 11151 - 11156
S.R. ELSDEN ET AL., ARCHIVES OF MICROBIOLOGY, vol. 107, no. 3, April 1976 (1976-04-01), pages 283 - 288
K. SUZUKI ET AL., B.M.F.H., vol. 35, no. 1, 2016, pages 19 - 27
DODDER ET AL.: "ClosTron-mediated engineering of Clostridium", 50794), THE CLOSTRON: MUTAGENESIS IN CLOSTRIDIUM
T. MATSUKI ET AL., APPL. ENVIRON. MICROBIOL., vol. 70, no. 1, 2004, pages 167 - 173
S. MORANDI ET AL., ANAEROBE, vol. 34, 2015, pages 44 - 49
See also references of EP 3932484A4
Attorney, Agent or Firm:
IP FIRM SHUWA (JP)
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Claims:
\¥0 2020/175690 22 卩(:17 2020 /008457

請求の範囲

[請求項 1 ] 3 -フエニルプロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒドロキシフエニ ル) プロピオン酸を有効成分として含有する、 ビフイ ドバクテリウム 属細菌の線毛形成誘導用の組成物。

[請求項 2] 3 -フエニルプロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒドロキシフエニ ル) プロピオン酸を有効成分として含有する、 ビフイ ドバクテリウム 属細菌の腸内定着促進用の組成物。

[請求項 3] 前記ビフイ ドパクテリウム属細菌が、 ビフイ ドパクテリウム · ロン 1〇叩11111) である、 請求項 1又は 2に記載の組 成物。

[請求項 4] 飲食品である、 請求項 1〜 3のいずれか一項に記載の組成物。

[請求項 5] 医薬品である、 請求項 1〜 4のいずれか一項に記載の組成物。

[請求項 6] ビフイ ドパクテリウム属細菌の線毛形成誘導用の組成物の製造にお ける、 3 -フエニルプロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒドロキシフ エニル) プロピオン酸の使用。

[請求項 7] ビフイ ドパクテリウム属細菌の線毛形成誘導のための、 3—フエニ ルプロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒドロキシフエニル) プロピオ ン酸の使用。

[請求項 8] ビフイ ドパクテリウム属細菌の線毛形成誘導のために用いられる、

3 -フエニルプロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒドロキシフエニル ) プロピオン酸。

[請求項 9] 3 -フエニルプロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒドロキシフエニ ル) プロピオン酸を動物に投与することを含む、 ビフイ ドバクテリウ ム属細菌の線毛形成を誘導する方法。

[請求項 10] ビフイ ドパクテリウム属細菌の腸内定着促進用の組成物の製造にお ける、 3 -フエニルプロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒドロキシフ エニル) プロピオン酸の使用。

[請求項 1 1 ] ビフイ ドバクテリウム属細菌の腸内定着促進のための、 3—フエニ \¥0 2020/175690 23 卩(:171? 2020 /008457

ルプロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒドロキシフエニル) プロピオ ン酸の使用。

[請求項 12] ビフイ ドパクテリウム属細菌の腸内定着促進のために用いられる、

3 -フエニルプロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒドロキシフエニル ) プロピオン酸。

[請求項 13] 3 -フエニルプロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒドロキシフエニ ル) プロピオン酸を動物に投与することを含む、 ビフイ ドバクテリウ ム属細菌の腸内定着を促進する方法。

[請求項 14] 3 -フエニルプロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒドロキシフエニ ル) プロピオン酸を産生する微生物を含有する、 ビフイ ドバクテリウ ム属細菌の線毛形成誘導用の組成物。

[請求項 15] 3 -フエニルプロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒドロキシフエニ ル) プロピオン酸を産生する微生物を含有する、 ビフイ ドバクテリウ ム属細菌の腸内定着促進用の組成物。

[請求項 16] 前記微生物が、 クロストリジウム ((^(^ ^ _1 1^) 属細菌である、 請求項 1 4又は 1 5に記載の組成物。

[請求項 17] 前記ビフイ ドパクテリウム属細菌が、 ビフイ ドパクテリウム · ロン ガムである、 請求項 1 4〜 1 6の何れか一項に記載の組成物。

[請求項 18] ビフイ ドバクテリウム属細菌、 並びに 3 -フエニルプロピオン酸及 び/又は 3 - (4 -ヒドロキシフエニル) プロピオン酸を含有する、 整腸用組成物。

[請求項 19] ビフイ ドバクテリウム属細菌、 並びに 3 -フエニルプロピオン酸及 び/又は 3 - (4 -ヒドロキシフエニル) プロピオン酸を含有する、 腸内細菌叢改善用組成物。

Description:
明 細 書

発明の名称 :

ビフイ ドパクテリゥ厶属細菌の線毛形成誘導用の組 成物

技術分野

[0001] 本発明は、 3 -フエニルプロピオン酸及び 3 - (4 -ヒドロキシフエニル ) プロピオン酸の新たな用途、 すなわちビフイ ドバクテリウム属細菌の線毛 形成を誘導する用途及び前記細菌の腸内定着 を促進する用途に関する。

背景技術

[0002] ビフイ ドバクテリウム (Bifidobacterium) 属細菌は、 ヒトの腸内に定着し ている細菌のひとつであり、 下痢の防止、 有害細菌や毒性化合物の減少、 免 疫調節、 及び抗発癌性活性等、 宿主であるヒトに様々な有益な作用をもたら すことが知られている (非特許文献 1〜 3) 。

宿主と細菌との間の相互作用には、 線毛構造が関与していると推測されて きた (非特許文献 4〜 5) 。 そして、 ビフイ ドパクテリウム属細菌には、 線 毛の形成に関わる遺伝子クラスターが存在す ることが分かつている。 しかし ながら、 これまでにヒトから分離され一般的な条件で 培養されたビフイ ドバ クテリウム属細菌においては、 線毛構造は確認されていない。

[0003] ところで、 3 -フエニルプロピオン酸は、 腸内細菌であるクロストリジウ ム スポロゲネス (Clostridium sporogenes) による、 フエニルアラニンか らの代謝産物であることが知られている (非特許文献 6) 。

先行技術文献

非特許文献

[0004] 非特許文献 1 : S. Fukuda et al., Nature, 2011, 469, 543-547.

非特許文献 2 : S. Fanning et al., PNAS, 2012, 109 (6), 2108-2113.

非特許文献 3 : Si van A. et al., Science. 2015, 350 (6264), 1084-1089. 非特許文献 4 : O’ConneU Motherway et al., PNAS 2011, 108 (27), 11217-1 \¥0 2020/175690 2 卩(:17 2020 /008457

非特許文献 5 : F. Tur ron i et a l. , PNAS 2013, 1 10 (27) 1 1 151 -1 1 156.

非特許文献 6 : S. R. E Lsden, et a l. , Arch i ves of M i crob i o logy Apr i L 197 6, 107 (3) , 283-288.

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0005] 本発明者らは、 ビフイ ドパクテリウム属細菌は腸内では線毛を形成 してい ると推測し、 腸内に該細菌に線毛形成を誘導する物質が存 在すると仮定した 。 線毛構造は該細菌の腸内定着を促すと推測さ れることから、 かかる物質は ビフイ ドパクテリウム属細菌の腸内定着促進作用を 有すると考えられ、 腸内 細菌叢改善に有用となり得る。

かかる状況に鑑み、 本発明は、 ビフイ ドパクテリウム属細菌の線毛形成を 誘導する方法、 及び該細菌の腸内定着を促進する方法を提供 することを課題 とする。

課題を解決するための手段

[0006] 本発明者らは上記課題を解決するべく鋭意検 討したところ、 腸管を摸した モデル培養液で培養したビフイ ドパクテリウム属細菌では、 線毛形成が認め られることを見出した。 そして、 該培養液から線毛形成を誘導する物質とし て 3 -フエニルプロピオン酸を同定した。 さらに、 線毛形成が誘導されたビ フイ ドパクテリウム属細菌では、 腸上皮を構成する物質への接着性が高まる ことを見出し、 3 -フエニルプロピオン酸がビフイ ドバクテリウム属細菌の 腸内定着を促進し得ることにも想到した。 また、 クロストリジウム属細菌に より産生される、 フエニルアラニンの代謝産物である 3—フエニルプロピオ ン酸及びチロシンの代謝産物である 3 - ( 4 -ヒドロキシフエニル) プロピ オン酸がそれぞれ、 ビフイ ドパクテリウム属細菌の線毛形成を誘導する こと をも見出し、 クロストリジウム属細菌がビフイ ドパクテリウム属細菌の線毛 形成を誘導したり、 腸内定着を促進したりし得るクロストークの 関係にある ことにも想到した。

[0007] すなわち、 本発明の一態様は、 3 -フエニルプロピオン酸及び/又は 3 - \¥0 2020/175690 3 卩(:17 2020 /008457

(4 -ヒ ドロキシフエニル) プロピオン酸を有効成分として含有する、 ビフ ィ ドパクテリウム (8 _ 1 〇1(^3(^6「_ 1 ) 属細菌の線毛形成誘導用の組成物であ る。

また、 本発明の別の態様は、 3 -フエニルプロピオン酸及び/又は 3 - ( 4 -ヒ ドロキシフエニル) プロピオン酸を有効成分として含有する、 ビフィ ドパクテリウム属細菌の腸内定着促進用の組 成物である。

[0008] [化 1 ]

3 -フエニノレプ□ピオン酸

[0009] [化 2]

3 - (4 -ヒド□キシフエニル) プ□ピオン酸

[001 0] これらの態様において、 前記ビフイ ドバクテリウム属細菌は、 好ましくは ビフイ ドバクテリウム · ロンガム 1〇叩11111) である。

また、 これらの態様における組成物は、 好ましくは飲食品又は医薬品であ る。

[001 1 ] 本発明の別の態様は、 ビフイ ドパクテリウム属細菌の線毛形成誘導用の組 成物の製造における、 3—フエニルプロピオン酸及び/又は 3— (4—ヒ ド ロキシフエニル) プロピオン酸の使用である。

本発明の別の態様は、 ビフイ ドパクテリウム属細菌の線毛形成誘導のため の、 3 -フエニルプロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒ ドロキシフエニル) \¥0 2020/175690 4 卩(:171? 2020 /008457

プロピオン酸の使用である。

本発明の別の態様は、 ビフイ ドパクテリウム属細菌の線毛形成誘導のため に用いられる、 3 -フエニルプロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒドロキシ フエニル) プロピオン酸である。

本発明の別の態様は、 3 -フエニルプロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒ ドロキシフエニル) プロピオン酸を動物に投与することを含む、 ビフイ ドバ クテリウム属細菌の線毛形成を誘導する方法 である。

[0012] 本発明の別の態様は、 ビフイ ドパクテリウム属細菌の腸内定着促進用の組 成物の製造における、 3—フエニルプロピオン酸及び/又は 3— (4—ヒド ロキシフエニル) プロピオン酸の使用である。

本発明の別の態様は、 ビフイ ドパクテリウム属細菌の腸内定着促進のため の、 3 -フエニルプロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒドロキシフエニル) プロピオン酸の使用である。

本発明の別の態様は、 ビフイ ドパクテリウム属細菌の腸内定着促進のため に用いられる、 3 -フエニルプロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒドロキシ フエニル) プロピオン酸である。

本発明の別の態様は、 3 -フエニルプロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒ ドロキシフエニル) プロピオン酸を動物に投与することを含む、 ビフイ ドバ クテリウム属細菌の腸内定着を促進する方法 である。

[0013] 本発明の別の態様は、 3 -フエニルプロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒ ドロキシフエニル) プロピオン酸を産生する微生物を含有する、 ビフイ ドバ クテリウム属細菌の線毛形成誘導用の組成物 である。

本発明の別の態様は、 3 -フエニルプロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒ ドロキシフエニル) プロピオン酸を産生する微生物を含有する、 ビフイ ドバ クテリウム属細菌の腸内定着促進用の組成物 である。

これらの態様において、 前記微生物は、 好ましくはクロストリジウム (01〇 s1; r i d i um) 属細菌である。

これらの態様において、 前記ビフイ ドバクテリウム属細菌は、 好ましくは \¥02020/175690 5 卩(:171? 2020 /008457

ビフイ ドバクテリウム · ロンガム (Bifidobacterium longum) である。

[0014] 本発明の別の態様は、 ビフイ ドバクテリウム属細菌、 並びに 3—フェニル プロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒドロキシフェニル) プロピオン酸を含 有する、 整腸用組成物である。

本発明の別の態様は、 ビフイ ドバクテリウム属細菌、 並びに 3—フェニル プロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒドロキシフェニル) プロピオン酸を含 有する、 腸内細菌叢改善用組成物である。

発明の効果

[0015] 本発明によれば、 ビフイ ドパクテリウム属細菌の線毛形成を誘導する こと ができ、 またそれにより該細菌の腸内定着を促進する ことができる。 本発明 は、 腸内細菌叢をビフイ ドパクテリウム属細菌が優勢な状態へと改善 するこ とにもつながり得る。

図面の簡単な説明

[0016] [図 1]試験例 1 における、 腸管モデル (KUHIMM) 培養液で培養したビフイ ドバ クテリウム · ロンガムの透過型電子顕微鏡写真。 a : ヒト便の添加あり、 b : ヒト便の添加なし

[図 2]試験例 3における、 培養ビフイ ドパクテリウム · ロンガムの走査型電子 顕微鏡写真。 P P A- : 3—フェニルプロピオン酸非添加、 P P A+ : 3 - フェニルプロピオン酸添加

[図 3]試験例 3における、 培養ビフイ ドパクテリウム · ロンガムのヒト腸管上 皮細胞株への接着性を示すグラフ。 各群左から、 P P A- : 3—フェニルプ ロピオン酸非添加、 P P A + : 3 -フェニルプロピオン酸添加、 P P A + (F imA Ab) : 3—フェニルプロピオン酸添加かつ抗 F i mA抗体添加

[図 4]試験例 4における、 クロストリジウム ·スポロゲネスと共培養したビフ イ ドバクテリウム · ロンガムの線毛形成を示すウェスタン · ブロッテイング の写真。

[図 5]試験例 5における、 アミノ酸代謝物を添加した G A M培地で培養したビ フイ ドバクテリウム · ロンガムの線毛形成を示すウェスタン · ブロッテイン \¥0 2020/175690 6 卩(:171? 2020 /008457

グの写真。 フエニルアラニン及びその代謝物 1 : フエニルアラニン、 2 : フ エニル乳酸、 3 : フエニルアクリル酸、 4 : 3 -フエニルプロピオン酸、 チ ロシン及びその代謝物 1 : チロシン、 2 : 4 -ヒドロキシフエニル乳酸、 3 : 4—ヒドロキシフエニルアクリル酸、 4 : 3 - (4—ヒドロキシフエニル ) プロピオン酸、 トリプトファン及びその代謝物 1 : トリプトファン、 2 : インドール乳酸、 3 :インドールアクリル酸、 4 : 3 - (インドール) プロ ピオン酸

[図 6]試験例 6における、 ノ トバイオートマウス糞便中のビフィ ドバクテリウ ム · ロンガムの走査型電子顕微鏡写真。 巳 !_ : ビフィ ドパクテリウム · ロン ガム接種マウス、 巳 !_ +〇3 : ビフィ ドバクテリウム · ロンガム及びクロス トリジウム スポロゲネス接種マウス

[図 7]試験例 7における、 トバイオートマウスの盲腸粘液上のビフィ ドバクテ リウム · ロンガムの菌数を示すグラフ。 巳 : ビフィ ドバクテリウム ロン ガム接種マウス、 巳 !_ +〇3 : ビフィ ドバクテリウム · ロンガム及びクロス トリジウム スポロゲネス接種マウス

発明を実施するための形態

[0017] 次に、 本発明を詳細に説明する。 ただし、 本発明は以下の実施形態に限定 されず、 本発明の範囲内で自由に変更することができ るものである。

[0018] 本発明の組成物は、 3 -フエニルプロピオン酸 ( とも記す) 及び/ 又は 3 - (4 -ヒドロキシフエニル) プロピオン酸 (1 ~ 1 八とも記す) を 有効成分として含有する。 これらのうち、 ビフィ ドパクテリウム属細菌の線 毛形成誘導作用の強さの観点から、 3—フエニルプロピオン酸を有効成分と することが好ましい。

[0019] 3 -フエニルプロピオン酸及び 3 - (4 -ヒ ドロキシフエニル) プロピオ ン酸はそれぞれ、 公知の合成方法により製造してもよいし、 市販されている ものを用いてもよい。

[0020] また、 本発明の組成物の有効成分としては、 3—フエニルプロピオン酸及 び/又は 3 - (4 -ヒドロキシフエニル) プロピオン酸を産生する微生物の \¥0 2020/175690 7 卩(:171? 2020 /008457

形態で用いてもよい。

かかる微生物としては、 クロストリジウム属細菌が好ましく挙げられ 、 よ り具体的にはクロストリジウム スポロゲネス (c. sporogenes) 、 クロスト リジウム カダべリス (C. cadaver i s) 等が好ましく挙げられる。 これらの 細菌において、 3 -フエニルプロピオン酸はフエニルアラニン 代謝物とし て、 3 - (4 -ヒドロキシフエニル) プロピオン酸はチロシンの代謝物とし て、 それぞれ産生される。

本発明の組成物がこのような微生物製剤の態 様である場合、 通常は生菌体 を含む形態とする。

[0021 ] 本発明の組成物における 3—フエニルプロピオン酸及び/又は 3— (4 - ヒ ドロキシフエニル) プロピオン酸の量は、 組成物の態様により適宜設定す ればよく、 特に限定されないが、 例えば、 総量で好ましくは組成物全体の 0 . 0 1質量%以上、 より好ましくは 0 . 1質量%以上とするのがよい。 3— フエニルプロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒ ドロキシフエニル) プロピオ ン酸の含量の上限は特に制限されないが、 例えば総量で 1 0 0質量%以下で あってよい。

[0022] 本発明の組成物は、 ビフイ ドパクテリウム属細菌の線毛形成を誘導する こ とができる。 前記ビフイ ドバクテリウム属細菌としては、 特に限定されない が、 好ましくはビフイ ドバクテリウム · ロンガムである。

ビフイ ドバクテリウム属細菌の線毛は、 ソルターゼ (SrtC、 及び SrtA) に より F i mAタンパク質が菌体表面上で重合され、 その先端に F i mBタンパク質が 結合して巨大なファイバーとしてなり形成さ れる (K. Suzuk i et a l. , B. M. F. H. , 2016, 35(1), 19-27) 。 後述の実施例で示されるように、 3—フエニル プロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒドロキシフエニル) プロピオン酸存在 下では、 線毛形成に関与する遺伝子の、 具体的には少なくとも線毛構造タン パク質をコードする遺伝子 (f i mA、 f i mB) 及び前記構造タンパク質を重合さ せる酵素をコードする遺伝子 (srtC) の発現が増強し、 線毛形成が誘導され る。 \¥0 2020/175690 8 卩(:17 2020 /008457

[0023] 線毛が形成されたことは、 例えば走査型電子顕微鏡によりビフイ ドパクテ リウ厶属細菌の菌体表面を観察することによ り直接的に確認することができ る。

また、 線毛を構成するタンパク質を認識する抗体、 例えば抗ド! !^抗体等を 用いて、 ウェスタン · ブロッテイング等の周知の方法により確認す ることも できる。 なお、 線毛が形成されている場合は、 通常 単量体の分子量であ る約 50 1^3から約 200 1^3又はそれ以上の位置にラダー様の線毛を示 すバンド が認められる。

[0024] ビフイ ドパクテリウム属細菌の線毛の主要な構成タ ンパク質 レクチ ン様の性質を有するため、 これが線毛を介する該細菌の腸内上皮細胞へ の接 着性に寄与すると考えられる。 後述の試験例で示されるように、 線毛形成が 誘導されたビフイ ドパクテリウム属細菌では、 腸上皮を構成する細胞に、 線 毛形成が誘導されていない場合よりも大きく 結合する。

腸内上皮細胞へのビフイ ドパクテリウム属細菌の接着性が向上すると 、 該 細菌の腸内定着が促されると考えられる。 ここで 「定着」 とは、 腸内上皮へ 接着することにより、 腸内に存在する菌量が組成物摂取 (投与) 前よりも増 加すること、 及び腸内から排出される筋量が組成物摂取 (投与) 前よりも減 少することを含む。

したがって、 本発明の組成物は、 ビフイ ドパクテリウム属細菌の腸内定着 を促進することができる。 さらには、 腸内細菌叢をビフイ ドパクテリウム属 細菌が優勢な状態へと改善することも期待さ れる。

[0025] 本発明の組成物を投与する (摂取させる) 対象は、 動物であれば特に限定 されないが、 ヒトが好ましい。 また、 成人、 小児、 乳児、 新生児 (低体重児 を含む) 等のいずれであってもよい。

[0026] 本発明の別の態様は、 ビフイ ドパクテリウム属細菌の線毛形成誘導用の組 成物の製造における、 3—フェニルプロピオン酸及び/又は 3— (4—ヒド ロキシフェニル) プロピオン酸の使用である。

本発明の別の態様は、 ビフイ ドパクテリウム属細菌の線毛形成誘導のため \¥0 2020/175690 9 卩(:171? 2020 /008457

の、 3 -フエニルプロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒドロキシフエニル) プロピオン酸の使用である。

本発明の別の態様は、 ビフイ ドパクテリウム属細菌の線毛形成誘導のため に用いられる、 3 -フエニルプロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒドロキシ フエニル) プロピオン酸である。

本発明の別の態様は、 3 -フエニルプロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒ ドロキシフエニル) プロピオン酸を動物に投与することを含む、 ビフイ ドバ クテリウム属細菌の線毛形成を誘導する方法 である。

[0027] 本発明の別の態様は、 ビフイ ドパクテリウム属細菌の腸内定着促進用の組 成物の製造における、 3—フエニルプロピオン酸及び/又は 3— (4—ヒド ロキシフエニル) プロピオン酸の使用である。

本発明の別の態様は、 ビフイ ドパクテリウム属細菌の腸内定着促進のため の、 3 -フエニルプロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒドロキシフエニル) プロピオン酸の使用である。

本発明の別の態様は、 ビフイ ドパクテリウム属細菌の腸内定着促進のため に用いられる、 3 -フエニルプロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒドロキシ フエニル) プロピオン酸である。

本発明の別の態様は、 3 -フエニルプロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒ ドロキシフエニル) プロピオン酸を動物に投与することを含む、 ビフイ ドバ クテリウム属細菌の腸内定着を促進する方法 である。

[0028] 本発明の別の態様は、 ビフイ ドバクテリウム属細菌、 並びに 3—フエニル プロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒドロキシフエニル) プロピオン酸を含 有する、 整腸用組成物である。

本発明の別の態様は、 ビフイ ドバクテリウム属細菌、 並びに 3—フエニル プロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒドロキシフエニル) プロピオン酸を含 有する、 腸内細菌叢改善用組成物である。

本発明において、 「整腸」 とは、 「腸内菌叢を整え、 腸内菌叢に関連する 疾患を改善」 することをいう。 後述の実施例に示す通り、 3—フエニルプロ \¥0 2020/175690 10 卩(:171? 2020 /008457

ピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒドロキシフエニル) プロピオン酸は腸内に ビフィズス菌を定着させることができるため 、 本態様の組成物は、 いわゆる 悪玉菌を減らし、 腸内細菌叢をビフィ ドパクテリウム属細菌が優勢な状態へ と改善することができ、 その結果腸内菌叢に関連する疾患を改善する ことが できる。

[0029] 例えば、 腸内細菌叢のうち、 _部の悪玉菌は変異原物質や発癌性物質を生 成又は活性化することで、 発癌を促進する場合があり、 一方、 一部の善玉菌 はそれらの物質を分化、 不活性化、 又は、 吸着等により除去する働きにより 、 癌の予防に役立つことが知られている。 また、 例えば、 腸内細菌叢が肥満 やメタボリックシンドロームに深く関与して いることを示す研究も報告され ている。 さらに腸内細菌叢が自閉症やうつ等の精神疾 患やストレスに対する 応答、 情動行動や学習等の脳機能に関連する現象に まで関わっていることを 示唆する報告もされている。

よって、 「腸内細菌叢に関連する疾患」 としては、 例えば、 潰瘍性大腸炎 等の炎症性疾患、 機能性便秘 ·機能性下痢をはじめとする機能性胃腸障 害、 腸管系の癌、 メタボリックシンドローム、 神経疾患等が挙げられる。 腸 管系の癌としては、 例えば、 十二指腸癌、 小腸癌、 大腸癌等が挙げられる。 大腸癌としては、 例えば、 盲腸癌、 結腸癌、 直腸癌等が挙げられる。 メタボ リックシンドロームとしては、 例えば、 肥満 (特に、 内臓脂肪型肥満) 、 高 血圧症、 脂質代謝異常症、 糖尿病等が挙げられる。 神経疾患としては、 例え ば、 不安障害、 自閉症、 うつ病等が挙げられる。

[0030] 本発明の組成物の摂取 (投与) 時期は、 特に限定されず、 投与対象の状態 に応じて適宜選択することが可能である。

[0031 ] 本発明の組成物の摂取 (投与) 量は、 摂取 (投与) 対象の年齢、 性別、 状 態、 その他の条件等により適宜選択される。 3—フエニルプロピオン酸及び /又は 3 - (4 -ヒドロキシフエニル) プロピオン酸の摂取量として、 好ま しくは 1 0 0〜 1 0 0 0 9 /日、 より好ましくは 1 0 0〜 5 0 0〇1 9 /日 、 さらに好ましくは 1 0 0〜 3 0 0 9 /日の範囲となる量を目安とするの \¥0 2020/175690 1 1 卩(:171? 2020 /008457

がよい。

なお、 摂取 (投与) の量や期間にかかわらず、 組成物は 1 日 1回又は複数 回に分けて投与することができる。

[0032] 本発明の組成物の摂取 (投与) 経路は、 経口又は非経口のいずれでもよい が経口が好ましい。 また、 非経口摂取 (投与) としては、 経皮、 静注、 直腸 投与、 吸入等が挙げられる。

なお、 摂取 (投与) 後に、 腸内において 3—フエニルプロピオン酸及び/ 又は 3 - (4 -ヒドロキシフエニル) プロピオン酸として、 有効量以上が維 持されていることが望ましい。

[0033] 本発明の組成物を経口摂取される組成物とす る場合は、 飲食品の態様とす ることが好ましい。

[0034] 飲食品としては、 3 -フエニルプロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒドロ キシフエニル) プロピオン酸の効果を損なわず、 経口摂取できるものであれ ば形態や性状は特に制限されず、 3—フエニルプロピオン酸及び/又は 3— (4 -ヒドロキシフエニル) プロピオン酸を含有させること以外は、 通常飲 食品に用いられる原料を用いて通常の方法に よって製造することができる。

[0035] 飲食品としては、 液状、 ペースト状、 ゲル状固体、 粉末等の形態を問わず 、 例えば、 錠菓;流動食 (経管摂取用栄養食) ;パン、 マカロニ、 スバゲッ ティ、 めん類、 ケーキミックス、 から揚げ粉、 パン粉等の小麦粉製品;即席 めん、 カップめん、 レトルト ·調理食品、 調理缶詰め、 電子レンジ食品、 即 席スープ ·シチュー、 即席みそ汁 ·吸い物、 スープ缶詰め、 フリーズ · ドラ イ食品、 その他の即席食品等の即席食品類;農産缶詰 め、 果実缶詰め、 ジャ ム マーマレード類、 漬物、 煮豆類、 農産乾物類、 シリアル (毂物加工品) 等の農産加工品;水産缶詰め、 魚肉ハム · ソーセージ、 水産練り製品、 水産 珍味類、 つくだ煮類等の水産加工品;畜産缶詰め ·ペースト類、 畜肉ハム · ソーセージ等の畜産加工品;加工乳、 乳飲料、 ヨーグルト類、 発酵乳、 乳酸 菌飲料類、 チーズ、 アイスクリーム類、 調製粉乳類、 クリーム、 その他の乳 製品等の乳 ·乳製品;バター、 マーガリン類、 植物油等の油脂類; しょうゆ \¥0 2020/175690 12 卩(:171? 2020 /008457

、 みそ、 ソース類、 トマト加工調味料、 みりん類、 食酢類等の基礎調味料; 調理ミックス、 カレーの素類、 たれ類、 ドレッシング類、 めんつゆ類、 スバ イス類、 その他の複合調味料等の複合調味料 ·食品類;素材冷凍食品、 半調 理冷凍食品、 調理済冷凍食品等の冷凍食品;キャラメル、 キャンディー、 チ ユーインガム、 チヨコレート、 クッキー、 ビスケッ ト、 ケーキ、 パイ、 スナ ック、 クラッカー、 和菓子、 米菓子、 豆菓子、 デザート菓子、 ゼリー、 その 他の菓子などの菓子類;炭酸飲料、 天然果汁、 果汁飲料、 果汁入り清涼飲料 、 果肉飲料、 果粒入り果実飲料、 野菜系飲料、 豆乳、 豆乳飲料、 コーヒー飲 料、 お茶飲料、 粉末飲料、 濃縮飲料、 スポーツ飲料、 栄養飲料、 アルコール 飲料、 その他の嗜好飲料等の嗜好飲料類、 ベビーフード、 ふりかけ、 お茶漬 けのり等のその他の市販食品等;育児用調製 粉乳;経腸栄養食;機能性食品 (特定保健用食品、 栄養機能食品) 等が挙げられる。

[0036] また、 飲食品の一態様として飼料とすることもでき る。 飼料としては、 ぺ ッ トフード、 家畜飼料、 養魚飼料等が挙げられる。

飼料の形態としては特に制限されず、 3 -フエニルプロピオン酸及び/又 は 3 - (4 -ヒ ドロキシフエニル) プロピオン酸の他に例えば、 トウモロコ シ、 小麦、 大麦、 ライ麦、 マイロ等の毂類;大豆油粕、 ナタネ油粕、 ヤシ油 粕、 アマニ油粕等の植物性油粕類; フスマ、 麦糠、 米糠、 脱脂米糠等の糠類 ; コーングルテンミール、 コーンジャムミール等の製造粕類;魚粉、 脱脂粉 乳、 ホエイ、 イエローグリース、 タロー等の動物性飼料類; トルラ酵母、 ビ —ル酵母等の酵母類;第三リン酸カルシウム 、 炭酸カルシウム等の鉱物質飼 料;油脂類;単体アミノ酸;糖類等を含有す るものであってよい。

[0037] 本発明の組成物が飲食品 (飼料を含む) の態様である場合、 その中に含ま れる 3 -フエニルプロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒ ドロキシフエニル) プロピオン酸の量は、 特に限定されず適宜選択すればよいが、 例えば、 総量 として好ましくは飲食品全体の 0 . 0 1質量%以上、 より好ましくは 0 . 1 質量%以上とするのがよい。 3 -フエニルプロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒ ドロキシフエニル) プロピオン酸の含量の上限は特に制限されな いが、 \¥0 2020/175690 13 卩(:171? 2020 /008457

例えば好ましくは 7 0質量%以下、 より好ましくは 4 0質量%以下、 さらに 好ましくは 5質量%以下であってもよい。

[0038] 本発明の組成物が飲食品 (飼料を含む) の態様である場合、 ビフィ ドパク テリウム属細菌の腸内定着促進という用途が 表示された飲食品として提供 · 販売されることが可能である。 また、 本明細書に係る 3—フエニルプロピオ ン酸及び/又は 3 - (4 -ヒドロキシフエニル) プロピオン酸は、 これら飲 食品等の製造のために使用可能である。

[0039] かかる 「表示」 行為には、 需要者に対して前記用途を知らしめるための 全 ての行為が含まれ、 前記用途を想起 ·類推させうるような表現であれば、 表 示の目的、 表示の内容、 表示する対象物 ·媒体等の如何に拘わらず、 全て本 発明の 「表示」 行為に該当する。

また、 「表示」 は、 需要者が上記用途を直接的に認識できるよう な表現に より行われることが好ましい。 具体的には、 飲食品に係る商品又は商品の包 装に前記用途を記載したものを譲渡し、 引き渡し、 譲渡若しくは引き渡しの ために展示し、 輸入する行為、 商品に関する広告、 価格表若しくは取引書類 に上記用途を記載して展示し、 若しくは頒布し、 又はこれらを内容とする情 報に上記用途を記載して電磁気的 (インターネッ ト等) 方法により提供する 行為等が挙げられる。

[0040] 一方、 表示内容としては、 行政等によって認可された表示 (例えば、 行政 が定める各種制度に基づいて認可を受け、 そのような認可に基づいた態様で 行う表示等) であることが好ましい。 また、 そのような表示内容を、 包装、 容器、 カタログ、 パンフレッ ト、 〇 等の販売現場における宣伝材、 その 他の書類等へ付することが好ましい。

[0041 ] また、 「表示」 には、 健康食品、 機能性食品、 経腸栄養食品、 特別用途食 品、 保健機能食品、 特定保健用食品、 栄養機能食品、 機能性表示食品、 医薬 用部外品等としての表示も挙げられる。 この中でも特に、 消費者庁によって 認可される表示、 例えば、 特定保健用食品、 栄養機能食品、 若しくは機能性 表示食品に係る制度、 又はこれらに類似する制度にて認可される表 示等が挙 \¥0 2020/175690 14 卩(:171? 2020 /008457

げられる。 具体的には、 特定保健用食品としての表示、 条件付き特定保健用 食品としての表示、 身体の構造や機能に影響を与える旨の表示、 疾病リスク 減少表示、 科学的根拠に基づいた機能性の表示等を挙げ ることができ、 より 具体的には、 健康増進法に規定する特別用途表示の許可等 に関する内閣府令 (平成二十一年八月三十一年内閣府令第五十 七号) に定められた特定保健用 食品としての表示 (特に保健の用途の表示) 及びこれに類する表示が典型的 な例である。

かかる表示としては、 例えば、 「ビフィズス菌を増やしたい方」 、 「腸内 細菌叢の改善用」 等と表示することが挙げられる。

[0042] 本発明の組成物は、 医薬品の態様とすることもできる。

医薬品の投与経路は、 経口又は非経口のいずれでもよいが経口が好 ましい 。 また、 非経口投与としては、 経皮、 静注、 直腸投与、 吸入等が挙げられる 医薬品の形態としては、 投与方法に応じて、 適宜所望の剤形に製剤化する ことができる。 例えば、 経口投与の場合、 散剤、 顆粒剤、 錠剤、 カプセル剤 等の固形製剤;溶液剤、 シロップ剤、 懸濁剤、 乳剤等の液剤等に製剤化する ことができる。 また、 非経口投与の場合、 座剤、 軟膏剤、 注射剤等に製剤化 することができる。

なお、 投与後に、 腸内において 3—フエニルプロピオン酸及び/又は 3— (4 -ヒドロキシフエニル) プロピオン酸として、 有効量以上が維持されて いることが望ましいことから、 経口剤の場合は、 腸溶性カプセル剤や耐酸性 の糖衣錠等が好ましく挙げられる。

[0043] 製剤化に際しては、 3—フエニルプロピオン酸及び/又は 3— (4—ヒド ロキシフエニル) プロピオン酸の他に、 通常製剤化に用いられている賦形剤 、 1 ~ 1調整剤、 着色剤、 矯味剤等の成分を用いることができる。 また、 他の 薬効成分や、 公知の又は将来的に見出される腸内細菌叢改 善作用を有する成 分などを併用することも可能である。

加えて、 製剤化は剤形に応じて適宜公知の方法により 実施できる。 製剤化 \¥0 2020/175690 15 卩(:171? 2020 /008457

に際しては、 適宜、 製剤担体を配合して製剤化してもよい。

[0044] 賦形剤としては、 例えば、 乳糖、 白糖、 ブドウ糖、 マンニッ ト、 ソルビッ 卜等の糖誘導体; トウモロコシデンプン、 馬鈴薯デンプン、 デンプン、 デキストリン、 カルボキシメチルデンプン等のデンプン誘導 体;結晶セルロ —ス、 ヒドロキシプロピルセルロース、 ヒドロキシプロピルメチルセルロー ス、 カルボキシメチルセルロース、 カルボキシメチルセルロースカルシウム 等のセルロース誘導体; アラビアゴム;デキストラン ; プルラン ;軽質無水 珪酸、 合成珪酸アルミニウム、 メタ珪酸アルミン酸マグネシウム等の珪酸塩 誘導体; リン酸カルシウム等のリン酸塩誘導体;炭酸 カルシウム等の炭酸塩 誘導体;硫酸カルシウム等の硫酸塩誘導体等 が挙げられる。

[0045] 結合剤としては、 例えば、 上記賦形剤の他、 ゼラチン;ポリビニルピロリ ドン;マクロゴール等が挙げられる。

[0046] 崩壊剤としては、 例えば、 上記賦形剤の他、 クロスカルメロースナトリウ ム、 カルボキシメチルスターチナトリウム、 架橋ポリビニルピロリ ドン等の 化学修飾されたデンプン又はセルロース誘導 体等が挙げられる。

[0047] 滑沢剤としては、 例えば、 タルク ;ステアリン酸;ステアリン酸カルシウ ム、 ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸 金属塩; コロイ ドシリカ ; ピーガム、 ゲイロウ等のワックス類;硼酸; グリコール; フマル酸、 アジピ ン酸等のカルボン酸類;安息香酸ナトリウム 等のカルボン酸ナトリウム塩; 硫酸ナトリウム等の硫酸塩類; ロイシン; ラウリル硫酸ナトリウム、 ラウリ ル硫酸マグネシウム等のラウリル硫酸塩;無 水珪酸、 珪酸水和物等の珪酸類 ;デンプン誘導体等が挙げられる。

[0048] 安定剤としては、 例えば、 メチルパラベン、 プロピルパラベン等のパラオ キシ安息香酸エステル類; クロロブタノール、 ベンジルアルコール、 フエニ ルエチルアルコール等のアルコール類;塩化 ベンザルコニウム ;無水酢酸; ソルビン酸等が挙げられる。

[0049] 矯味矯臭剤としては、 例えば、 甘味料、 酸味料、 香料等が挙げられる。

なお、 経口投与用の液剤の場合に使用する担体とし ては、 水等の溶剤等が \¥02020/175690 16 卩(:171? 2020 /008457

挙げられる。

[0050] 本発明の組成物が医薬品の態様である場合、 その中に含まれる 3—フエニ ルプロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒドロキシフエニル) プロピオン酸の 量は、 特に限定されず適宜選択すればよいが、 例えば、 総量で好ましくは医 薬品全体の 40質量%以上、 より好ましくは 50質量%以上、 さらに好まし くは 97質量%以上とするのがよい。 3 -フエニルプロピオン酸及び/又は 3 - (4 -ヒドロキシフエニル) プロピオン酸の含量の上限は特に制限され ないが、 例えば 1 00質量%以下であってよい。

[0051] 本発明の医薬品を投与するタイミングは、 例えば食前、 食後、 食間、 就寝 前など特に限定されない。

実施例

[0052] 以下に実施例を用いて本発明をさらに具体的 に説明するが、 本発明はこれ ら実施例に限定されるものではない。

[0053] <試験例 1>腸管モデル培養における線毛形成の確認

GAM培地でビフィ ドバクテリウム ロンガム 1 — 1株を培養し、 該培養 液を〇D_=0. 1 に調整した菌液 1 mLを透析膜内に入れ、 単ーバッチ式嫌 気性培養システム (KUHIMM、 R. Takagi et. al., PLoS One. 2016, 11(8): e 0160533., D. Sasaki et. al., Sci. Rep. 2018, 8(1): 435.) 内で、 p Hが 6以下にならないよう 1 Mの N a 2 C〇 3 液でコントロールしながら 24時間 3 7 °Cで嫌気培養を行った。 なお、 試験群の培地には生理食塩水で 1 0% (w /v) に予め調整しておいたヒト糞便溶液 1 O O M Lを添加し、 陰性対照群 には添加しなかった。

培養後の細菌を酸化オスミウムで固定し, 透過型電子顕微鏡で観察したと ころ、 ヒト糞便を添加して培養した場合は、 大きなファイバー上の線毛が観 察された (図 1) 。

また、 ヒト糞便を添加して培養した試験群のビフィ ドパクテリウム · ロン ガム 1 - 1株について、 トランスクリプトーム解析を行ったところ、 fimA、 fimB、 及び srtC遺伝子を含むクラスターが、 陰性対照群に比べて 2倍以上発 \¥02020/175690 17 卩(:171? 2020 /008457

現が増強されていた。

[0054] <試験例 2>線毛形成誘導物質の同定

試験例 1で用いたヒト糞便を添加した KUHIMM培養液 (900 mL) を、 活性炭 カラム (樹脂容積: 45 mL) を用いて、 MiUiQ水、 50%メタノール、 及び 1 00 %メタノール (各 250m L) の順で分画した。 各画分のうち、 1 00 M Lを別の容器に回収し減圧乾固した後、 Mi U iQ水 50 M Lで再溶解した。 次に, GAM培地でビフイ ドバクテリウム · ロンガム 1 — 1株を培養し、 該 培養液を〇D_=0. 1 に調整した菌液 1 mLに上記の分取画分の再溶解液 5 〇M Lを添加し、 37°C、 24時間培養した。 培養後に遠心分離 (4, 00 0X 9、 5分間) により菌体を回収した。 ムタノリシンおよびリゾチームを 含む抽出液 (参考組成: extract ion buffer (50 mM Tris-HCl [pH 7.0], 40% [w/v] sucrose, 0.1 mg [w/v] lysozyme, 25 U mutano lys i n [Sigma-Aldr ic h, M9901], complete [Roche])により菌体を処理することで線毛を む菌体 表層画分を分画した。 次いで、 トリクロロ酢酸沈殿によりタンパク質を濃縮 し、 S DS— PAGEに供した。 PVD F膜に転写後、 抗 FimA抗体を用いた ウェスタン · ブロッテイングにより実施し, 線毛のシグナルを検出すること で、 線網誘導活性を評価した。 1 〇〇%メタノールで溶出した画分において 、 線毛誘導活性が認められた。

[0055] さらに、 該画分を H P LC (カラム: PEGASIL ODS SP100 020 X 250 mm 、 溶媒条件: 15-55%CH 3 CN/H 2 〇-0.1%HC0 2 H 40 min gradient、 流速: 6.0 mL/mi n、 検出: UV 210 rnn) で分画 ·精製し、 線毛誘導活性が認められた溶出ピー ク (保持時間 38 min) を繰り返し分取した。 次いで、 その回収液を減圧乾固 することにより、 4.8 mg の収量で目的の活性物質を得た。 この物質について 質量分析及び N MR解析により構造決定を行ったところ、 該画分に含まれる 化合物が 3 -フェニルプロピオン酸であることが同定さ た。

また、 3 -フェニルプロピオン酸を添加した (終濃度 0. 01、 0. 1、

0. 5、 1. 0、 2. 5、 1 0、 20、 40、 又は 8 O^g/mL) GAM 寒天培地で、 ビフイ ドパクテリウム ロンガム 1 — 1株を 24時間 37 ° Cで \¥02020/175690 18 卩(:171? 2020 /008457

嫌気培養したところ、 3—フエニルプロピオン酸の用量依存的に線 重合を 誘導することが確認された。 特に、 培地に 0. 1 M 9 / m Lよりも高濃度で 添加すると線毛形成が明確に誘導された。

[0056] <試験例 3 > P P Aの線毛形成誘導活性の確認

3 -フエニルプロピオン酸 1 0 M 9 / m Lを添加した G A M寒天培地で、 ビフイ ドパクテリウム ロンガム 1 — 1株を 24時間 37 ° Cで嫌気培養した 培養後の細菌を走査型電子顕微鏡で観察した ところ、 3—フヱニルプロピ オン酸を添加して培養した場合は、 大きなファイバー上の線毛が観察された (図 2) 0

前記線毛形成が確認された細菌について、 定量的逆転写 P C Rにより線毛 形成関連遺伝子の発現状況を解析したところ 、 fimA、 fimB、 及び srtC遺伝子 を含むクラスターが、 陰性対照群に比べて約 3〜 5倍発現が増強されていた

[0057] さらに、 前記培養細胞の、 ヒト腸管上皮細胞株 (Caco-2又は HT29-MTX) へ の接着性を評価した。 具体的には、 ビフイ ドパクテリウム · ロンガム 1 - 1 株を、 10 Mg/mL PPA添加した GAM培地で 37 ° C、 1 5時間培養した。 菌体 を遠心分離し (4,000Xg, 1min, 4°〇 回収した後、 Dulbecco's modified Ea gle's medium (DMEM) に 0D_ = 0.5となるように懸濁した。 本菌液 0.2mLを HT2 9-MTXまたは Caac-2細胞を単層培養したチャンバースライ ドグラスに添加し、 37 ° C、 2時間静置した。 DMEM培地で洗浄した後、 4%パラホルムアルデヒドで接 着したビフイ ドバクテリウム · ロンガムを固定し、 クリスタルバイオレツ ト により染色した。 1 ウエルあたりの菌数を顕微鏡下でカウントし た。

該接着性は、 3—フエニルプロピオン酸存在下では非存在 に比べて有意 に大きく、 また抗 F i mA抗体により阻害され有意に小さくなること 確認され た (図 3) 。

これらの結果から、 3 -フエニルプロピオン酸がビフイ ドバクテリウム · ロンガムの線毛形成を誘導する作用を有する こと、 及び線毛が腸管上皮への \¥02020/175690 19 卩(:171? 2020 /008457

接着因子であることが分かる。

[0058] <試験例 4 > P P A代謝酵素欠損クロストリジウム属細菌と共 養したビフ ィ ドパクテリウム属細菌における線毛形成

Dodderらの方法にしたがい (C losT ron-med i ated engineering of C lost r id i um (PMID: 22750794)、 The ClosTron: Mutagenesis in Clostridium refine d and streamlined (PMID: 19891996)) , クロストリジウム スポロゲネス ATCC 1 1 437株の 1 (PMID: 29168502)に C losTronカセッ トを揷入す ることで、 f LdCサブユニッ トを破壊した。 なお、 f LdCは、 クロストリジウム スポロゲネスにおける P P A代謝酵素フエニル乳酸デヒドラターゼのを -ドする遺伝子である。 この fldC欠損クロストリジウム .スポロゲネスを G A M培地で 36時間培養したところ、 培養上清中に P P Aが検出されないこと を確認した。

クロストリジウム ·スポロゲネスの前記 fldC欠損株又は野生株と、 ビフィ ドパクテリウム ロンガム 1 — 1株とを、 GAM培養液で 24時間共培養し た。

培養後のビフィ ドバクテリウム · ロンガムについて、 試験例 1 と同様にウ エスタン · プロッティングを行ったところ、 クロストリジウム ·スポロゲネ ス fldC欠損株と共培養した場合は線毛形成が認 られなかった (図 4) 。

[0059] <試験例 5 >芳香族アミノ酸及びその代謝物の線毛形 誘導活性の確認

芳香族アミノ酸又はクロストリジウム ·スポロゲネスが産生する前記アミ ノ酸の代謝物 1 0 M 9 / m Lを添加した G A M寒天培地で、 ビフィ ドパクテ リウム ロンガム 1 _ 1株を24時間37°〇で嫌気培養した。 添加物質は、 フエニルアラニン及びその代謝物として、 フエニルアラニン、 フエニル乳酸 、 フエニルアクリル酸、 又は 3 -フエニルプロピオン酸を、 チロシン及びそ の代謝物としてチロシン、 4 -ヒドロキシフエニル乳酸、 4 -ヒドロキシフ エニルアクリル酸、 又は 3 - (4 -ヒドロキシフエニル) プロピオン酸を、 トリプトファン及びその代謝物としてトリプ トファン、 インドール乳酸、 イ ンドールアクリル酸、 又は 3 - (インドール) プロピオン酸を用いた。 \¥02020/175690 20 卩(:171? 2020 /008457

[0060] 試験例 1 と同様に、 培養後のビフィ ドパクテリウム · ロンガムの培養液か ら表層タンパク質を抽出し、 ウェスタン · プロッティングを行ったところ、

3 -フェニルプロピオン酸を添加して培養した 合は線毛形成が認められた 。 また、 3 - (4 -ヒドロキシフェニル) プロピオン酸を添加して培養した 場合も、 前者よりは小さいものの線毛形成が認められ た (図 5) 。

[0061] <試験例 6 >クロストリジウム属細菌摂取マウスにお るビフィ ドパクテリ ウム属細菌の線毛形成の確認

無菌マウスに、 クロストリジウム スポロゲネス ATCC11437株及びビフィ ド バクテリウム · ロンガム 1 _ 1株 (B L + CS群、 n =4) またはビフィ ド パクテリウム · ロンガム 1 — 1株 (B L群、 n = 5) を 1 日目に 1度投与し た。 クロストリジウム ·スポロゲネス ATCC11437株は 2.0X10 7 CFU/100MU ビ フィ ドバクテリウム ロンガム 1 - 1株は 3.4X10 7 CFU/100MLを投与した。 実験期間を通して, 1週間毎に糞便中の細菌数を T. Matsuki et al. , Appl. Environ. Microbiol. (2004) 70(1) = 167-73の方法に従い定量的 PCRにより測 定した。 ビフィ ドバクテリウム ロンガムの検出に使用したプライマーは、 B i LON-1 /B i LON-2 (T. Matsuki et a 1. , Appl. Environ. Microbiol. (2004) 70(1):167-173) , クロストリジウム スポロゲネスのの検出に使用したブラ イマーは、 Sporog-F / Sporog-R (S. Morandi et a 1. , Anaerobe. 2015, 34: 44-49. ) である。

B L+CS群では実験期間を通してクロストリジウ ·スポロゲネスが安 定してコロニーを形成することを確認した。 また、 B L + CS群では糞便中 の P P Aが平均 2 1〜 38 M Mで検出されたが、 B L群では P P Aは検出さ れなかった。

投与開始 7週間後にマウスを解剖し、 各群マウスの腸上皮に接着したビフ ィ ドパクテリウム · ロンガムを走査型電子顕微鏡で観察したとこ ろ、 B L + CS群では、 大きなファイバー上の線毛が観察された (図 6) 。

[0062] また、 マウス糞便を 100 mg採取し, 300 しのムタノリシンおよびリゾチー ムを含む抽出液に完全に懸濁し、 3時間 37 ° Cでインキユベートした。 遠心 \¥0 2020/175690 21 卩(:171? 2020 /008457

分離(8, 000 X 9, 10 1111 ^ 4〇し、 上清 200 し回収した。 次いで、 トリクロ 口酢酸沈殿によりタンパク質を濃縮し、 3034八0£に供した。 ド膜に転写後 、 抗ド_1111八抗体を用いるウェスタン · ブロッテイングを行って線毛のシグナル を検出したところ、 巳 1_ + 0 3群ではド 1111八重合体が検出され線毛形成が認め られた。

[0063] <試験例 7>ビフイ ドパクテリウム属細菌のマウス腸管への接着 性の評価 クロストリジウム スポロゲネス 八丁〇〇 1 1 4 3 7株及びビフイ ドバク テリウム · ロンガム 1 - 1株 (巳 !_ +〇3群、 n = 4) またはビフイ ドバク テリウム · ロンガム 1 — 1株 (巳 !_群、 n = 5) を投与したマウスを, 投与 開始 7週間後に解剖した。 盲腸を生理食塩水で洗浄し, 腸上皮に接着した細 菌をスクレイパーで回収した。 試験例 6 よりクロストリジウ ム ·スポロゲネス及びビフイ ドバクテリウム · ロンガムの菌数を測定した。 図 7に結果を示す。 線毛が観察された巳 !_ + 0 3群では, 巳 !_群と比較し , マウス盲腸上皮における接着菌数の有意 ( <0. 05) な向上が認められた。