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Patent Searching and Data


Title:
NOVEL LIVING RADICAL POLYMERIZATION METHOD WHEREIN ALCOHOL IS USED AS CATALYST
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/136510
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a low-cost environmentally friendly living radical polymerization catalyst having high activity. The catalyst is used for a living radical polymerization method, and contains a central element composed of oxygen and at least one halogen atom bonded to the central element. An alcohol compound can be used as a catalyst precursor. By radically polymerizing a monomer having a radically reactive unsaturated bond in the presence of the catalyst, there can be obtained a polymer having a narrow molecular weight distribution and the cost of the living radical polymerization can be remarkably reduced. The living radical polymerization method of the present invention is significantly more environmentally friendly and economically excellent than conventional living radical polymerization methods, due to advantages of the catalyst such as low toxicity, low usage, high solubility, mild reaction conditions, and colorlessness/odorlessness (which do not require a post-treatment for a molded article).

Inventors:
GOTO ATSUSHI (JP)
FUKUDA TAKESHI (JP)
TSUJII YOSHINOBU (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/052115
Publication Date:
November 12, 2009
Filing Date:
February 06, 2009
Export Citation:
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Assignee:
UNIV KYOTO (JP)
GOTO ATSUSHI (JP)
FUKUDA TAKESHI (JP)
TSUJII YOSHINOBU (JP)
International Classes:
C08F4/40; C08F12/08; C08F20/10
Domestic Patent References:
WO2008139980A12008-11-20
Foreign References:
JPS4713366B11972-04-22
Other References:
ANDO, T. ET AL.: "Amino alcohol additives for the fast living radical polymerization of methyl methacrylate with RuCl2(PPh3)", JOURNAL OF POLYMER SCIENCE, PART A: POLYMER CHEMISTRY, vol. 41, no. 22, 2003, pages 3597 - 3605
Attorney, Agent or Firm:
YAMAMOTO, Shusaku et al. (JP)
Shusaku Yamamoto (JP)
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Claims:
 リビングラジカル重合を行う方法であって、
 ラジカル開始剤から生じたラジカルと、触媒前駆体化合物とを反応させて活性化ラジカルを生じさせる工程、および
 該活性化ラジカルを用いて、ラジカル反応性不飽和結合を有するモノマーを重合してポリマーを得る工程を含み、
 ここで、該前駆体化合物が、炭素、ケイ素、窒素またはリンに結合した少なくとも1つの水酸基を含み、
 該ラジカル開始剤から生じたラジカルは、該前駆体化合物中の該水酸基から水素原子を引き抜いて、該活性化ラジカルを生じさせ、そして
 該活性化ラジカルは、該モノマーの重合反応のリビングラジカル触媒として作用する、方法。
 請求項1に記載の方法であって、前記水酸基が結合する原子が炭素である、方法。
 請求項1に記載の方法であって、前記水酸基が結合する原子が隣接する原子との間に二重結合または三重結合を有し、該水酸基の水素が引き抜かれた後に生じる活性化ラジカルが該二重結合または三重結合との間の共鳴により安定化される、方法。
 請求項1に記載の方法であって、前記触媒前駆体化合物が以下の式(I)で示されるアルコールまたはフェノールであり、
R 1 n (OH) m     (I)
ここで、R 1 は、置換もしくは非置換のアルキル基もしくはアルケニル基もしくはアルキニル基であるか、または置換もしくは非置換のアリール基または置換もしくは非置換のヘテロアリール基であり、
 nは正の整数であり、
 mは正の整数であり、
 ここで、該置換基が、アルキル、アルケニル、アルキルカルボキシル、ハロアルキル、アルキルカルボニル、アミノ基、シアノ基、アルコキシ、アリールまたはアルキル置換アリールであり、
 R 1 中の炭素鎖は、鎖状構造もしくは環状構造を有し、
 R 1 が環状構造を有する場合、該環状構造は、アリール環もしくはヘテロアリール環に1つ以上の環が縮合した縮合環状構造であってもよく、ここで、該アリール環もしくはヘテロアリール環に縮合する1つ以上の環状構造は、ヘテロ原子として酸素原子または窒素原子を含むヘテロ環であっても良い、方法。
 リビングラジカル重合法のための触媒であって、酸素からなる少なくとも1つの中心元素と、該中心元素に結合したハロゲン原子と、該中心元素に結合した炭素原子、ケイ素原子、窒素原子またはリン原子とを含む化合物からなる、触媒。
 請求項5に記載の触媒であって、前記中心元素がハロゲン原子および炭素原子に結合する、触媒。
 請求項5に記載の触媒であって、前記中心元素基が結合する原子が、隣接する原子との間に二重結合または三重結合を有し、該中心元素に結合したハロゲン原子が脱離した後に生じる活性化ラジカルが該二重結合または三重結合との間の共鳴により安定化された構造を有する、触媒。
 請求項5に記載の触媒であって、以下の一般式(Ia)の化合物からなる、触媒:
R 1 n (OX 1 ) m     (Ia)
 ここで、R 1 はアルキル、アルキルカルボキシル、ハロアルキル、アルキルカルボニル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、置換アリールまたは置換ヘテロアリールであり、
 nは正の整数であり、
 mは正の整数であり、
 X 1 はハロゲンである。
 請求項5に記載の触媒であって、前記ハロゲンがヨウ素または臭素である、触媒。
 請求項5に記載の触媒であって、前記ハロゲンがヨウ素である、触媒。
 リビングラジカル重合を行う工程を包含する重合方法であって、該リビングラジカル重合工程が、請求項5に記載の触媒の存在下で行われる、方法。
 請求項1に記載の方法であって、触媒濃度が、反応溶液のうちの0.75重量%以下である、方法。
 請求項1に記載の方法であって、反応温度が、20℃~100℃である、方法。
 請求項1に記載の方法であって、前記リビングラジカル重合反応において炭素-ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物が使用され、該有機ハロゲン化物から与えられるハロゲンが成長鎖の保護基として使用される、方法。
 請求項14に記載の方法であって、前記有機ハロゲン化物中のハロゲンが結合している炭素に、2つまたは3つの炭素が結合している、方法。
 
 
Description:
アルコールを触媒として用いた 規リビングラジカル重合法

 本発明は、リビングラジカル重合に用い れる高活性触媒およびそれを用いた重合方 に関する。より具体的には、本発明は、酸 を中心元素として有する触媒をリビングラ カル重合に用いる。

 従来から、ビニルモノマーを重合してビ ルポリマーを得る方法として、ラジカル重 法が周知であったが、ラジカル重合法は一 に、得られるビニルポリマーの分子量を制 することが困難であるという欠点があった また、得られるビニルポリマーが、様々な 子量を有する化合物の混合物になってしま 、分子量分布の狭いビニルポリマーを得る とが困難であるという欠点があった。具体 には、反応を制御しても、重量分子平均分 量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)として 2~3程度にまでしか減少させることができな った。

 このような欠点を解消する方法として、1 990年頃から、リビングラジカル重合法が開発 されている。すなわち、リビングラジカル重 合法によれば、分子量を制御することが可能 であり、かつ分子量分布の狭いポリマーを得 ることが可能である。具体的には、Mw/Mnが2以 下のものを容易に得ることが可能であること から、ナノテクノロジーなどの最先端分野に 用いられるポリマーを製造する方法として脚 光を浴びている。

 リビングラジカル重合法に現在用いられ 触媒としては、遷移金属錯体系触媒が知ら ている。

 遷移金属錯体系触媒としては、例えば、C u、Ni、Re、Rh、Ruなどを中心金属とする化合物 に配位子を配位させた錯体が使用されている 。このような触媒は、例えば、以下の文献に 記載されている。

 特許文献1(特開2002-249505号公報)は、Cu、Ru Fe、Niなどを中心金属とする錯体を触媒とし て使用することを開示する。

 なお、特許文献1は、その請求項1におい 、重合開始剤として、有機ハロゲン化物を いると記載している。この記載は、ハロゲ 化炭化水素がリビングラジカル重合の触媒 して作用することを意味するものではない 特許文献1の発明においては、遷移金属を中 金属とする金属錯体が、リビングラジカル 合触媒として使用されている。特許文献1の 発明においては、有機ハロゲン化物が、本願 明細書中で後述するドーマント種として使用 されている。

 特許文献2(特開平11-322822号公報)は、ヒド ドレニウム錯体を触媒として使用すること 開示する。

 なお、特許文献2は、その請求項1におい 、「ヒドリドレニウム錯体およびハロゲン 炭化水素の組み合わせからなるラジカルリ ング重合用触媒」と記載している。この記 は、ハロゲン化炭化水素がリビングラジカ 重合の触媒として作用することを意味する のではない。特許文献2の発明においては、 ドリドレニウム錯体が、リビングラジカル 合触媒として使用されている。特許文献2の 発明においては、ハロゲン化炭化水素が、本 願明細書中で後述するドーマント種として使 用されている。その触媒とドーマント種との 組み合わせを特許文献2では触媒と記載して るものであって、ハロゲン化炭化水素がリ ングラジカル重合の触媒となることを記載 ているのではない。

 非特許文献1(Journal of The American Chemical  Society 119,674-680(1997))は、4,4’-ジ-(5-ノニル)-2, 2’-ビピリジンを臭化銅に配位させた化合物 触媒として使用することを開示する。

 なお、非特許文献1は、スチレンの重合の 際に1-フェニルエチルブロミドを用いたこと 記載している。すなわち、特許文献2の発明 においては、臭化銅錯体が、リビングラジカ ル重合触媒として使用され、1-フェニルエチ ブロミドが、本願明細書中で後述するドー ント種として使用されている。

 しかしながら、このような遷移金属錯体 媒を用いる場合には、使用量として多量の 移金属錯体触媒が必要であり、反応後に使 された大量の触媒を製品から完全に除去す ことが容易でないという欠点があった。ま 不要となった触媒を廃棄する際に環境上の 題が発生し得るという欠点があった。さら 、遷移金属には毒性の高いものが多く、製 中に残存する触媒の毒性が環境上問題とな 場合があり、遷移金属を食品包装材、生体 医療材料などに使用することは困難であっ 。また、反応後に製品から除去された触媒 毒性が環境上問題となる場合もあった。さ に、導電性の遷移金属がポリマーに残存す とそのポリマーに導電性が付与されてしま て、レジストや有機ELなどの電子材料に使 することが困難であるという問題もあった また、錯体を形成させないと反応液に溶解 ないため、配位子となる化合物を用いなけ ばならず、このために、コストが高くなり かつ、使用される触媒の総重量がさらに多 なってしまうという問題もあった。さらに 配位子は、通常、高価であり、あるいは煩 な合成を要するという問題もあった。また 重合反応に高温(例えば、110℃以上)が必要で あるという欠点があった(例えば、上記非特 文献1では、110℃において重合を行っている) 。

 なお、触媒を用いる必要がないリビング ジカル重合方法も公知である。例えば、ニ ロキシル系、およびジチオエステル系の方 が知られている。しかし、これらの方法に いては、特殊な保護基をポリマー成長鎖に 入する必要があり、この保護基が非常に高 であるという欠点がある。また、重合反応 高温(例えば、110℃以上)が必要であるとい 欠点がある。さらに、生成するポリマーが ましくない性能を有しやすいという欠点が る。すなわち、生成するポリマーがその高 子本来の色と異なる色に着色されたものに りやすく、また、生成するポリマーが臭気 有するものになりやすいという欠点がある

 他方、非特許文献2(Polymer Preprints 2005, 46 (2), 245-246)および特許文献3(特開2007-92014号公 )は、Ge、Snなどを中心金属とする錯体を触 として使用することを開示する。

 非特許文献1に記載されていた銅錯体触媒 では、ポリマー1kgを重合する際に必要とされ る触媒の費用がおよそ数千円になっていた。 これに対して、ゲルマニウム触媒においては 、約千円程度にまで費用が低減されるので、 非特許文献2の発明は、触媒の費用を顕著に 減させるものであった。しかしながら、リ ングラジカル重合を汎用樹脂製品等に応用 るためには、さらなる低コストの触媒が求 られていた。

 一般に、遷移金属、あるいは遷移金属元 の化合物が、各種化学反応の触媒として好 しいことが知られている。例えば、J.D.LEE  無機化学」(東京化学同人、1982年4月15日第1 発行)311頁は、「多くの遷移金属とその化合 物は触媒作用をもつ。…ある場合には、遷移 金属はいろいろな原子価をとり、不安定な中 間体化合物をつくることがあり、また他の場 合には、遷移金属は良好な反応面を提供しこ れらが触媒作用として働くのである」と記載 している。すなわち、不安定な様々な中間体 化合物を形成できるなどの遷移金属に特有の 性質が、触媒の機能には欠かせないことが当 業者に広く理解されていたのである。

 そして上述した非特許文献2に記載された Ge、Sn、Sbは遷移金属ではないが、周期表の第 4周期および第5周期に位置する元素であって 大きい原子番号を有し、多数の電子および 数の電子軌道を有する。従って、Ge、Sn、Sb おいては、これらの原子が多数の電子およ 多数の電子軌道を有することが、触媒とし 有利に作用していることが推測される。

 このような従来技術の各種触媒に関する 術常識によれば、周期表の第2周期および第 3周期に位置する典型元素は少数の電子およ 電子軌道しか有さず、触媒化合物に用いる とは不利であり、これらの典型元素を用い 化合物に触媒作用は期待できないと考えら ていた。

 また、非特許文献3にはリン化合物を用いた 触媒が開示されているが、リンと異なる電子 配置を有し、リンと顕著に異なる性質を有す る酸素を中心元素として用いることについて の記載はない。

特開2002-249505号公報

特開平11-322822号公報

特開2007-92014号公報 Journal of The American Chemical Society 119,674 -680(1997) Polymer Preprints 2005, 46(2), 245-246, 「German ium- and Tin-Catalyzed Living Radical Polymerizations  of Styrene」、American Chemical Society, Division of Polymer Chemistry Polymer Preprints 2007, 56(2), 2452「ゲルマニ ウムおよびリン化合物を用いた新しいリビン グラジカル重合」高分子学会、第56回高分子 論会

 本発明は、上記問題点の解決を意図する のであり、リビングラジカル重合のための い活性を有する触媒およびこの触媒を用い 重合法を提供することを目的とする。

 本発明者らは、上記課題を解決するため 鋭意研究を重ねた結果として、本発明を完 させた。すなわち、本発明によれば、以下 触媒および重合方法が提供され、そのこと より上記課題が解決される。

 (1) リビングラジカル重合を行う方法であ て、
 ラジカル開始剤から生じたラジカルと、触 前駆体化合物とを反応させて活性化ラジカ を生じさせる工程、および
 該活性化ラジカルを用いて、ラジカル反応 不飽和結合を有するモノマーを重合してポ マーを得る工程を含み、
 ここで、該前駆体化合物が、炭素、ケイ素 窒素またはリンに結合した少なくとも1つの 水酸基を含み、
 該ラジカル開始剤から生じたラジカルは、 前駆体化合物中の該水酸基から水素原子を き抜いて、該活性化ラジカルを生じさせ、 して
 該活性化ラジカルは、該モノマーの重合反 のリビングラジカル触媒として作用する、 法。

 (2) 上記項1に記載の方法であって、前記 酸基が結合する原子が炭素である、方法。

 (3) 上記項1または2に記載の方法であって 、前記水酸基が結合する炭素原子が隣接する 炭素原子との間に二重結合または三重結合を 有し、該水酸基の水素が引き抜かれた後に生 じる活性化ラジカルが該二重結合または三重 結合との間の共鳴により安定化される、方法 。

 (4) 上記項1~3のいずれか1項に記載の方法で って、前記触媒前駆体化合物が以下の式(I) 示されるアルコールまたはフェノールであ 、
R 1 n (OH) m     (I)
ここで、R 1 は、置換もしくは非置換の飽和もしくは不飽 和のアルキル基もしくはアルケニル基もしく はアルキニル基であるか、または置換もしく は非置換のアリール基または置換もしくは非 置換のヘテロアリール基であり、
 nは正の整数であり、
 mは正の整数であり、
 ここで、該置換基が、アルキル、アルケニ 、アルキルカルボキシル、ハロアルキル、 ルキルカルボニル、アミノ基、シアノ基、 ルコキシ、アリールまたはアルキル置換ア ールであり、
 R 1 中の炭素鎖は、鎖状構造もしくは環状構造を 有し、
 R 1 が環状構造を有する場合、該環状構造は、ア リール環もしくはヘテロアリール環に1つ以 の環が縮合した縮合環状構造であってもよ 、ここで、該アリール環もしくはヘテロア ール環に縮合する1つ以上の環状構造は、ヘ ロ原子として酸素原子または窒素原子を含 ヘテロ環であっても良い、方法。

 (5) リビングラジカル重合法のための触 であって、酸素からなる少なくとも1つの中 元素と、該中心元素に結合したハロゲン原 と、該中心元素に結合した炭素原子とを含 化合物からなる、触媒。

 (6) 上記項5に記載の触媒であって、前記 心元素がハロゲン原子および炭素原子に結 する、触媒。

 (7) 上記項5に記載の触媒であって、前記 心元素基が結合する原子が、隣接する原子 の間に二重結合または三重結合を有し、該 心元素に結合したハロゲン原子が脱離した に生じる活性化ラジカルが該二重結合また 三重結合との間の共鳴により安定化された 造を有する、触媒。

 (8) 上記項5に記載の触媒であって、以下の 般式(Ia)の化合物からなる、触媒:
R 1 n (OX 1 ) m     (Ia)
 ここで、R 1 はアルキル、アルキルカルボキシル、ハロア ルキル、アルキルカルボニル、アルケニル、 アルキニル、アリール、ヘテロアリール、置 換アリールまたは置換ヘテロアリールであり 、
 nは正の整数であり、
 mは正の整数であり、
 X 1 はハロゲンである。

 (9) 上記項5~8のいずれか1項に記載の触媒 あって、前記ハロゲンがヨウ素または臭素 ある、触媒。

 (10) 上記項5~9のいずれか1項に記載の触媒 であって、前記ハロゲンがヨウ素である、触 媒。

 (11) リビングラジカル重合を行う工程を 含する重合方法であって、該リビングラジ ル重合工程が、上記項5~10のいずれか1項に 載の触媒の存在下で行われる、方法。

 (12) 上記項1~4および11のいずれか1項に記 の方法であって、触媒濃度が、反応溶液の ちの0.75重量%以下である、方法。

 (13) 上記項1~4、11および12のいずれか1項 記載の方法であって、反応温度が、20℃~100 である、方法。

 (14)上記項1~4および11~13のいずれか1項に記 載の方法であって、前記リビングラジカル重 合反応が炭素-ハロゲン結合を有する有機ハ ゲン化物の存在下において行われる、方法

 (15)上記項14に記載の方法であって、前記 機ハロゲン化物中のハロゲンが結合してい 炭素に、2つまたは3つの炭素が結合してい 、方法。

 本発明によれば、さらに、以下の方法が 供される。

 (16) リビングラジカル重合を行う方法で って、炭素-ハロゲン結合を有する有機ハロ ゲン化物および上記項5に記載の触媒の存在 で、ラジカル反応性不飽和結合を有するモ マーをラジカル重合反応させる工程を包含 る、方法。

 この方法によれば、例えば、上記項1~4、 たは11~13に記載の方法において、前記触媒 加えて、炭素-ハロゲン結合を有する有機ハ ゲン化物の存在下で前記ラジカル重合反応 行われる。

 (17) 上記項16に記載の方法であって、前記 素-ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物 、以下の一般式(II)を有する化合物であり:
 CR 2 R 3 R 4 X 2    (II)
 ここで、R 2 およびR 3 は、独立して、ハロゲン、水素またはアルキ ルであり、R 4 はハロゲン、水素、アルキル、アリールまた はシアノであり、X 2 はハロゲンである、
そして前記ラジカル反応性不飽和結合を有す るモノマーが以下から選択される、方法:
(メタ)アクリル酸エステルモノマー、芳香族 飽和モノマー(スチレン系モノマー)、カル ニル基含有不飽和モノマー、(メタ)アクリロ ニトリル、(メタ)アクリルアミド系モノマー ジエン系モノマー、ビニルエステルモノマ 、N-ビニルモノマー、(メタ)アクリル酸モノ マー、ハロゲン化ビニルモノマー、および1- レフィンモノマー。

 本発明によれば、高い活性を有するリビ グラジカル重合のための触媒およびそれを いた重合方法が提供される。この触媒は、 毒性であるという利点を有する。この触媒 、反応液に高溶解性であるという利点を有 、そのため、配位子を添加して錯体とする 要もない。この触媒は、高い活性を有する め、重合反応に高温(例えば、110℃以上)を 要とすることもなく、そして触媒の使用量 低減することができる。また、ポリマー成 鎖を反応中に保護するために高価な特殊な 護基を必要とすることもない。さらに、本 明の方法により得られたポリマーから得ら る成形品は、成形時に着色したり臭いがつ たりすることが実質的にないという利点を する。

 さらに、本発明は、下記の長所を有する

 (1)経済性
 安価な触媒(触媒前駆体)が提供される。例 ば、2,6-di-t-butyl-4-methyl phenol(BHT)は、非常に 価なリン触媒(触媒前駆体)であるジエチルホ スファイトよりも、1kgあたりの単価として、 3割程度安価である。

 (2)人体および環境への安全性
 ビタミンE、ビタミンC、BHTなどのアルコー 触媒前駆体は無毒であり、人体に摂取され も害がない。従って、安全性の観点に基づ て生成ポリマーから除去する必要性がない 何らかの理由により、除去する場合であっ も、水への溶解性が高いなどの特長により 除去作業が極めて容易である。

 (3)リサイクル性
 フェノール樹脂やフェノールを担持したビ ズは各種市販されている。これらを触媒(触 媒前駆体)として用いることも可能である。 れらのビーズは回収可能であり、さらに、 度も再使用することができる。

 (4)天然物の有効利用
 ビタミンE、ビタミンC、カテキン、フラボ イド、ポリフェノールなどの多様な天然物 触媒(触媒前駆体)として利用することができ る。

 (5)モノマー汎用性
 様々な種類のモノマーにおいてリビングラ カル重合を行うことが可能となる。

 このように、本発明によれば、従来法に べて格段に環境に優しく経済性に優れるリ ングラジカル重合法が実現された。

スチレン重合(スチレン/PE-I/VR110または BPB/TI(100℃))におけるモノマー濃度の時間変化 を示す。黒丸は、表1のentry 1の値を示す。白 丸は、表1のentry 2の値を示す。 スチレン重合(スチレン/PE-I/VR110またはBPB/TI(10 0℃))におけるM n およびM w /M n 対Conversion(重合率)のプロットを示す。Mnでは Theoretical lineと記載された理論値と整合す 結果が得られている。 スチレン重合(スチレン/PE-I/VR110/R-OH(100 ℃))におけるモノマー濃度の時間変化を示す 黒丸は表2のentry 1の値を示す。白丸は表2の entry 6の値を示す。黒四角は表2のentry 23の値 を示す。白四角は表2のentry 27の値を示す。 三角は表2のentry 31の値を示す。 スチレン重合(スチレン/PE-I/VR110/R-OH(100℃))に けるM n およびM w /M n 対Conversion(重合率)のプロットを示す。Mnでは Theoretical lineと記載された理論値と整合す 結果が得られている。 スチレン重合(スチレン/PE-I/BPB/R-OH(100 ))におけるモノマー濃度の時間変化を示す。 黒丸は表2のentry 2の値を示す。白丸は表2のen try 7の値を示す。黒四角は表2のentry 24の値 示す。白四角は表2のentry 28の値を示す。黒 角は表2のentry 32の値を示す。 スチレン重合(スチレン/PE-I/BPB/R-OH(100℃))にお けるM n およびM w /M n 対Conversion(重合率)のプロットを示す。Mnでは Theoretical lineと記載された理論値と整合す 結果が得られている。 MMA重合(MMA/CP-I/PERKADOX16/R-OH(80℃))におけ るモノマー濃度の時間変化を示す。黒丸は表 5のentry 1の値を示す。白丸は表5のentry 3の値 を示す。黒四角は表5のentry 5の値を示す。白 四角は表5のentry 6の値を示す。黒三角は表5 entry 10の値を示す。 MMA重合(MMA/CP-I/PERKADOX16/R-OH(80℃))におけるM n およびM w /M n 対Conversion(重合率)のプロットを示す。Mnでは Theoretical lineと記載された理論値と整合す 結果が得られている。 実施例16のグラフトポリマーを示す。 (A)は、シリコン基板へのIHEの固定化の際の ターニングを示す。丸い部分がIHEの先端の ウ素が存在する部分である。図(B)は、ビタ ンEを用いて重合した後の顕微鏡写真であり 濃厚ポリマーブラシが形成されたことを示 ている。色の濃い四角いスポットがグラフ ポリマーの存在する部分である。 本発明の概念を示す模式図であり、本発明の リビングラジカル重合の鍵となる反応を示す 。この図においては、触媒のラジカルがA で示され、そのラジカルにヨウ素が結合した 化合物がAと黒丸との結合した図として示さ ている。この触媒は、従来技術に比べて桁 いに安価であり、超高活性であるため極め 少ない触媒量で使用することが可能であり 触媒を製造する際に精製が不要であるかあ いは精製が必要な場合であってもその精製 容易であり、低毒性あるいは無毒であるた に人体および環境に対する安全性が高いと う特徴を有する。

 以下、本発明を詳細に説明する。

 (一般的用語)
 以下に本明細書において特に使用される用 を説明する。

 本明細書において「アルキル」とは、鎖状 たは環状の脂肪族炭化水素(アルカン)から 素原子が一つ失われて生ずる1価の基をいう 鎖状の場合は、一般にC k H 2k+1 -で表される(ここで、kは正の整数である)。 状のアルキルは、直鎖または分枝鎖であり る。環状のアルキルは、環状構造のみから 成されてもよく、環状構造にさらに鎖状ア キルが結合した構造であってもよい。アル ルの炭素数は、任意の自然数であり得る。 ましくは1~30であり、より好ましくは1~20であ る。

 本明細書において「低級アルキル」とは、 素数の比較的少ないアルキル基を意味する 好ましくは、C 1~10 アルキルであり、より好ましくは、C 1~5 アルキルであり、さらに好ましくは、C 1~3 アルキルである。具体例としては、例えば、 メチル、エチル、プロピル、イソプロピルな どである。

 本明細書において「アルケニル」とは、二 結合を有する鎖状または環状の脂肪族炭化 素(アルケン)から水素原子が一つ失われて ずる1価の基をいう。二重結合を1つ有する鎖 状アルケンの場合は、一般にC k H 2k-1 -で表される(ここで、kは正の整数である)。 重結合の数は1つであってもよく、2つ以上で あってもよい。二重結合の数に上限は特にな いが、10以下であってもよく、あるいは5以下 であってもよい。二重結合と単結合とが交互 に繰り返される構造が好ましい。鎖状のアル ケニルは、直鎖または分枝鎖であり得る。環 状のアルケニルは、環状構造のみから構成さ れてもよく、環状構造にさらに鎖状構造が結 合した構造であってもよい。また、二重結合 は、環状構造部分に存在してもよく、鎖状構 造部分に存在してもよい。アルケニルの炭素 数は、任意の自然数であり得る。好ましくは 1~30であり、より好ましくは1~20である。

 アルケニルは、比較的炭素数の少ないもの すなわち低級アルケニルであってもよい。 の場合、炭素数は、好ましくは、C 2~10 であり、より好ましくは、C 2~5 であり、さらに好ましくは、C 2~3 である。アルケニルの具体例としては、例え ば、ビニルなどがある。

 好ましい実施形態において、アルケニルは の炭素鎖中の末端の炭素に二重結合を有す 。好ましくは、この二重結合を有する末端 素が上記触媒化合物または触媒前駆体化合 中の中心元素の酸素と結合する。すなわち 酸素が炭素に結合し、その炭素が次の炭素 二重結合で結合する構造:
 「O-C=C」
を触媒化合物または触媒前駆体化合物が有す るようにアルケニルを選択することが好まし い。

 好ましい実施形態において、アルケニルは :-CR 7 =CR 8 R 9 で示される。R 7 、R 8 ,R 9 は水素でもよく、アルキル基でもよく、その 他の置換基(例えば、アルケニル、アルキル ルボキシル、ハロアルキル、アルキルカル ニル、アミノ基、シアノ基、アルコキシ、 リールまたはアルキル置換アリール)であっ も良い。R 7 、R 8 、R 9 がすべて水素の場合、この基はビニル基であ る。

 本明細書において「アルキニル」とは、三 結合を有する鎖状または環状の脂肪族炭化 素(アルキン)から水素原子が一つ失われて ずる1価の基をいう。三重結合を1つ有する鎖 状アルキンの場合は、一般にC k H 2k-3 -で表される(ここで、kは正の整数である)。 重結合の数は1つであってもよく、2つ以上で あってもよい。三重結合の数に上限は特にな いが、10以下であってもよく、あるいは5以下 であってもよい。三重結合と単結合とが交互 に繰り返される構造が好ましい。鎖状のアル キニルは、直鎖または分枝鎖であり得る。環 状のアルキニルは、環状構造のみから構成さ れてもよく、環状構造にさらに鎖状構造が結 合した構造であってもよい。また、三重結合 は、環状構造部分に存在してもよく、鎖状構 造部分に存在してもよい。アルキニルの炭素 数は、任意の自然数であり得る。好ましくは 1~30であり、より好ましくは1~20である。

 アルキニルは、比較的炭素数の少ないもの すなわち低級アルキニルであってもよい。 の場合、炭素数は、好ましくは、C 2~10 であり、より好ましくは、C 2~5 であり、さらに好ましくは、C 2~3 である。

 好ましい実施形態において、アルキニルは の炭素鎖中の末端の炭素に三重結合を有す 。好ましくは、この三重結合を有する末端 素が上記触媒化合物または触媒前駆体化合 中の中心元素の酸素と結合する。すなわち 酸素が炭素に結合し、その炭素が次の炭素 三結合で結合する構造:
 「O-C≡C」
を触媒化合物または触媒前駆体化合物が有す るようにアルキニルを選択することが好まし い。

 好ましい実施形態において、アルキニルは :-C≡CR 10 で示される。R 10 は水素でもよく、アルキル基でもよく、その 他の置換基(例えば、アルケニル、アルキル ルボキシル、ハロアルキル、アルキルカル ニル、アミノ基、シアノ基、アルコキシ、 リールまたはアルキル置換アリール)であっ も良い。

 本明細書において「アルコキシ」とは、 記アルキル基に酸素原子が結合した基をい 。すなわち、上記アルキル基をR-と表した 合にRO-で表される基をいう。鎖状のアルコ シは、直鎖または分枝鎖であり得る。環状 アルコキシは、環状構造のみから構成され もよく、環状構造にさらに鎖状アルキルが 合した構造であってもよい。アルコキシの 素数は、任意の自然数であり得る。好まし は1~30であり、より好ましくは1~20である。

 本明細書において「低級アルコキシ」とは 炭素数の比較的少ないアルコキシ基を意味 る。好ましくは、C 1~10 アルコキシであり、より好ましくは、C 1~5 アルコキシであり、さらに好ましくは、C 1~3 アルコキシである。具体例としては、例えば 、メトキシ、エトキシ、プトキシ、イソプロ ポキシなどである。

 本明細書において「アルキルカルボキシ 」とは、上記アルキル基にカルボキシル基 結合した基をいう。すなわち、上記アルキ 基をR-と表した場合にRCOO-で表される基をい う。鎖状のアルキルカルボキシルは、直鎖ま たは分枝鎖であり得る。環状のアルキルカル ボキシルは、環状構造のみから構成されても よく、環状構造にさらに鎖状アルキルが結合 した構造であってもよい。アルキルカルボキ シルの炭素数は、任意の自然数であり得る。 好ましくは1~30であり、より好ましくは1~20で る。

 本明細書において「低級アルキルカルボキ ル」とは、炭素数の比較的少ないアルキル ルボキシル基を意味する。好ましくは、C 1~10 であり、より好ましくは、C 1~5 であり、さらに好ましくは、C 1~3 である。

 本明細書において「アルキルカルボニル とは、上記アルキル基にカルボニル基が結 した基をいう。すなわち、上記アルキル基 R-と表した場合にRCO-で表される基をいう。 状のアルキルカルボニルは、直鎖または分 鎖であり得る。環状のアルキルカルボニル 、環状構造のみから構成されてもよく、環 構造にさらに鎖状アルキルが結合した構造 あってもよい。アルキルカルボニルの炭素 は、任意の自然数であり得る。好ましくは1 ~30であり、より好ましくは1~20である。

 本明細書において「低級アルキルカルボニ 」とは、炭素数の比較的少ないアルキルカ ボニル基を意味する。好ましくは、C 1~10 であり、より好ましくは、C 1~5 であり、さらに好ましくは、C 1~3 である。

 本明細書において「ハロアルキル」とは 上記アルキル基の水素がハロゲンで置換さ た基をいう。鎖状のハロアルキルは、直鎖 たは分枝鎖であり得る。環状のハロアルキ は、環状構造のみから構成されてもよく、 状構造にさらに鎖状アルキルが結合した構 であってもよい。ハロアルキルの炭素数は 任意の自然数であり得る。好ましくは1~30で あり、より好ましくは1~20である。ハロアル ルにおいては、そのすべての水素がハロゲ に置換されていてもよく、一部の水素のみ 置換されていてもよい。

 本明細書において「低級ハロアルキル」と 、炭素数の比較的少ないハロアルキル基を 味する。好ましくは、C 1~10 であり、より好ましくは、C 1~5 であり、さらに好ましくは、C 1~3 である。好ましい低級ハロアルキル基の具体 例としては、トリフルオロメチル基などが挙 げられる。

 本明細書において「置換アルキル」とは アルキル基の水素が置換基に置換された基 意味する。このような置換基としては、例 ば、アリールまたはシアノなどが挙げられ 。

 本明細書において「ハロゲン化置換アル ル」とは、アルキル基の水素がハロゲンに 換され、かつアルキル基の別の水素が別の 換基に置換された基を意味する。当該別の 換基としては、例えば、アリールまたはシ ノなどが挙げられる。

 本明細書において「アリール」とは、芳香 炭化水素の環に結合する水素原子が1個離脱 して生ずる基をいう。アリールを構成する芳 香族炭化水素の環の数は、1つであってもよ 、2つ以上であっても良い。好ましくは、1~3 ある。分子内芳香族炭化水素の環が複数存 する場合、それらの複数の環は縮合してい もよく、縮合していなくてもよい。具体的 は、例えば、フェニル、ナフチル、アント セニル、ビフェニルなどである。
 本明細書において「ヘテロアリール」とは アリールの芳香環の環骨格を構成する元素 、炭素以外のヘテロ元素を含む基をいう。 テロ原子の例としては、具体的には、酸素 窒素、イオウなど挙げられる。芳香環中の テロ原子の数は特に限定されず、例えば、1 つのみのヘテロ原子を含んでもよく、2つま は3つあるいは4つ以上のヘテロ原子が含まれ てもよい。

 本明細書において「置換アリール」とは、 リールに置換基が結合して生ずる基をいう
 本明細書において「置換ヘテロアリール」 は、ヘテロアリールに置換基が結合して生 る基をいう。

 本明細書において「ハロゲン」とは、周 表7B族に属するフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br) 、ヨウ素(I)などの元素の1価の基をいう。好 しくは、臭素またはヨウ素であり、より好 しくはヨウ素である。

 本明細書において「リビングラジカル重 」とは、ラジカル重合反応において連鎖移 反応および停止反応が実質的に起こらず、 量体が反応しつくした後も連鎖成長末端が 性を保持する重合反応をいう。この重合反 では、重合反応終了後でも生成重合体の末 に重合活性を保持しており、モノマーを加 ると再び重合反応を開始させることができ 。

 リビングラジカル重合の特徴としては、 ノマーと重合開始剤の濃度比を調節するこ により任意の平均分子量をもつ重合体の合 ができること、また、生成する重合体の分 量分布が極めて狭いこと、ブロック共重合 へ応用できること、などが挙げられる。な 、リビングラジカル重合は「LRP」と略され 場合もある。

 本明細書において「中心元素」とは、触 となる化合物を構成する原子のうち、ハロ ン原子と結合して主に触媒作用を担う原子 意味する。従来技術において使用される「 心金属」との用語と同じ意味であるが、本 明において用いられる酸素は一般には金属 分類されないから、誤解を避けるために、 来技術における用語「中心金属」の代わり 、「中心元素」との用語を用いる。

 以下、本発明について詳細に説明する。

 (触媒)
 本発明においては、リビングラジカル重合 のための触媒として、中心元素が酸素であ 化合物を用いる。

 好ましくは、中心元素の酸素は、炭素、 イ素、窒素またはリンに結合している。よ 好ましくは、中心元素の酸素は、炭素に結 している。中心元素が結合する原子は隣接 る原子(例えば、炭素)との間に二重結合ま は三重結合を有することが好ましい。すな ち、中心元素の酸素が結合する原子は、ア ケニル基(例えば、ビニル基)、アルキニル基 、またはアリール基(例えば、フェニル基)の ずれかの基の不飽和結合を有する炭素であ ことが好ましい。また、アルケニル基また アルキニル基の場合には、その末端に二重 合または三重結合が存在することが好まし 、その末端炭素に中心元素の酸素が結合す ことが特に好ましい。なお、このような構 が好ましいことは、後述する触媒前駆体化 物でも同様である。

 上述したような二重結合または三重結合 炭素に中心元素の酸素が結合した触媒また 触媒前駆体化合物の酸素が酸素ラジカルに った場合には、共鳴安定化により、酸素ラ カルが安定になり、リビングラジカル重合 媒としての性能が良好になると考えられる

 本発明において、触媒は、ドーマント種 一種である使用される炭素-ハロゲン結合を 有する有機ハロゲン化物と組み合わせて使用 することができる。触媒は、リビングラジカ ル重合の際に、この有機ハロゲン化物からハ ロゲンを引き抜いて、ラジカルを生成させる 。従って、本発明において、触媒は、ドーマ ント種として使用される化合物の、生長反応 を抑制している基をはずして活性種に変換し 生長反応をコントロールする。なお、ドーマ ント種は有機ハロゲンに限定されない。

 なお、特許文献2は、その請求項1におい 、ヒドリドレニウム錯体およびハロゲン化 化水素の組み合わせがラジカルリビング重 用触媒であると記載しているが、特許文献2 記載されたハロゲン化炭化水素はリビング ジカル重合の触媒ではなく、ドーマント種 該当するものであるから、特許文献2に記載 されたハロゲン化炭化水素は触媒とは区別さ れる。

 触媒化合物は、少なくとも1つの中心元素 を有する。1つの好ましい実施形態では、1つ 中心元素を有するが、2つ以上の中心元素を 有しても良い。

 中心元素として酸素を用いた触媒化合物 多くは導電性を有さない。そのため、例え 、ポリマー中に導電性物質が残存すること 望ましくない用途(例えば、レジストや有機 ELなどの電子材料)に用いられるポリマーの場 合には、導電性を有さない酸素化合物を触媒 として用いることが好ましい。

 また、酸素は、一般に、人体への毒性お び環境への影響においても有利である。こ ため、導電性物質の残存が許容される用途 あっても、酸素を有する触媒を用いること 、従来技術における遷移金属錯体触媒など 比べて著しく有利である。

 さらに、本発明の触媒は、少ない使用量 触媒作用を行うことができるという特徴が るから、上述したように、人体への毒性お び環境への影響が少ない材料を、少ない量 使用することが可能になり、従来の触媒に べて、非常に有利である。

 (触媒中のハロゲン原子)
 上記触媒の化合物中には、少なくとも1つの ハロゲン原子が中心元素に結合している。上 記触媒の化合物が2つ以上の中心元素を有す 場合、それぞれの中心元素に対して少なく も1つのハロゲン原子が結合している。この ロゲン原子は、好ましくは、塩素、臭素ま はヨウ素である。より好ましくは、ヨウ素 ある。ハロゲン原子は1分子中に2原子以上 在してもよい。例えば、2原子、3原子、また は4原子存在してもよく、それ以上存在して よい。好ましくは、2~4個である。ハロゲン 子が1分子中に2原子以上存在する場合、その 複数のハロゲン原子は同一であってもよく、 異なる種類であってもよい。

 (触媒中のハロゲン以外の基)
 触媒化合物は、必要に応じて、ハロゲン以 の基を有していてもよい。例えば、中心元 に、任意の有機基または無機基を結合させ ことが可能である。

 このような基は、有機基であってもよく 無機基であってもよい。有機基としては、 リール、置換アリール、アルケニル基(例え ば、ビニル基)、アルキニル基、アルコキシ (メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、 トキシ基など)、エステル基(脂肪族カルボ 酸エステルなど)、アルキルカルボニル基(メ チルカルボニル基など)、ハロアルキル基(ト フルオロメチル基など)などが挙げられる。 1つの好ましい実施形態では、アリール、置 アリール、アルケニル基(例えば、ビニル基) 、またはアルキニル基である。

 また、無機基としては、水酸基、アミノ 、シアノ基などが挙げられる。

 有機基として、アリールまたは置換アリ ルを有する触媒化合物は、ラジカルの活性 より高くなる傾向にあり、好ましい。

 置換アリールにおいてアリールに結合する 換基としては、例えば、アルキルまたはア キルオキシ、シアノ基、アミノ基等が挙げ れる。アルキルとしては、低級アルキルが ましく、より好ましくは、C 1 ~C 5 アルキルであり、さらに好ましくは、C 1 ~C 3 アルキルであり、特に好ましくは、メチルで ある。アルキルオキシにおけるアルキルとし ては、低級アルキルが好ましく、より好まし くは、C 1 ~C 5 アルキルであり、さらに好ましくは、C 1 ~C 3 アルキルであり、特に好ましくは、メチルで ある。すなわち、1つの実施形態において、 心元素に結合する有機基は、フェニル、低 アルキルフェニルまたは低級アルキルオキ フェニルである。

 上記有機基および無機基の数は特に限定 れないが、好ましくは、3以下であり、より 好ましくは、1である。

 なお、置換アリールにおける当該置換基 数は、特に限定されないが、好ましくは1~3 あり、より好ましくは1~2であり、さらに好 しくは、1である。

 置換アリールにおける当該置換基の位置 、任意に選択される。アリールがフェニル ある場合(すなわち、置換アリールが置換フ ェニルである場合)、置換基の位置は中心元 に対してオルト、メタ、パラのいずれの位 であってもよい。好ましくは、パラの位置 ある。

 1つの実施形態において、以下の一般式(Ia) 化合物を触媒として使用することができる
R 1 n (OX 1 ) m     (Ia)
 ここで、R 1 は有機基であり、好ましくは、アルキル、ア ルケニル、アルキニル、アルキルカルボキシ ル、アルキルカルボニル、ハロアルキル、水 酸基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ、ア リールまたは置換アリールであり、より好ま しくは、アリール、置換アリール、アルケニ ル、またはアルキニルである。

 ここで、R 1 は鎖状であってもよく、環状であってもよく 、鎖状構造と環状構造の両方を有してもよい 。

 また、R 1 が置換アリールである場合、その置換基とし ては、アルキル、アルコキシ、シアノが好ま しく、より好ましくは低級アルキル、低級ア ルコキシおよびシアノである。

 nは正の整数である。例えば、1であって よく、2であってもよく、3以上の整数であっ てもよい。1つの実施形態では1~10であり、別 実施形態では1~5であり、また別の実施形態 は1~3であり、さらに別の実施形態では1~2で る。

 また、一般式(Ia)において、X 1 はハロゲンであり、
 mは正の整数である。例えば、1であっても く、2であってもよく、3以上の整数であって もよい。1つの実施形態では1~10であり、別の 施形態では1~5であり、また別の実施形態で 1~3であり、さらに別の実施形態では1~2であ 。

 一般式(Ia)において、通常、n、mは、化学 (Ia)の全体の原子価が釣り合うように選択さ れる。

 また一般式(Ia)において、通常、酸素原子O R 1 とX 1 と両方に結合している。

 (酸素を中心元素とする触媒化合物)
 酸素を中心元素とする触媒化合物の具体例 しては、上記定義に該当する任意の公知の 合物が使用可能である。酸素を中心元素と る触媒化合物の好ましい具体例としては、 ロゲン化酸素(例えば、ヨウ化酸素)、アル キシハライドあるいはカルボキシルハライ (R 1 OX、例えば、ヨウ化安息香酸(PhCOOI))、フェノ ル系化合物中のフェノール性水酸基のHをハ ロゲンに置換した化合物(例えば、ヨウ化チ ール)などが挙げられる。

 触媒化合物は、好ましくは、ラジカル反 性二重結合を有さないものである。

 (酸素を中心元素とする触媒前駆体化合物)
 酸素を中心元素とする触媒の前駆体となる 合物は、上記触媒化合物中の酸素原子に結 したハロゲンを水素に置換した化合物であ 、ハロゲンを水素に置換すること以外は、 述した触媒化合物についての説明が、その ま触媒前駆体化合物にもあてはまる。

 酸素を中心元素とする触媒の前駆体とな 化合物としては、上記触媒化合物中の酸素 子に結合したハロゲンを水素に置換した任 の化合物が使用可能である。すなわち、炭 、ケイ素、窒素またはリンに水酸基が結合 た構造を有する任意の化合物が使用可能で る。

 触媒前駆体化合物は、好ましくは、芳香 環にOHが結合した構造を有するフェノール 化合物、または脂肪族基の炭素にOHが結合し た構造を有する脂肪族アルコール系化合物で ある。

 前駆体化合物の水酸基が結合した原子(以 下、便宜上、「1位原子」という)は、好まし は、炭素、窒素またはリンであり、より好 しくは炭素である。1位原子には、当該水酸 基以外には、炭素および水素から選択される 原子のみが結合していることが好ましい。1 原子に隣接する原子(以下、便宜上、「2位原 子」という)は好ましくは、炭素である。2位 子には、炭素、酸素および水素から選択さ る原子のみが結合していることが好ましい また、1位原子と2位原子との間に二重結合 存在することが好ましい。好ましい実施形 では、2つの2位原子が存在し、そのうちの1 の2位原子と1位原子との間に二重結合が存在 する化合物を触媒前駆体化合物として使用す ることができる。例えば、1位原子が炭素で り、2位原子として2つの炭素原子が存在し、 そのうちの1つの炭素と1位原子の炭素との間 二重結合が存在する化合物を触媒前駆体化 物として使用することができる。また、2つ 以上の2位原子が存在することが好ましく、1 の2位原子と1位原子との間の二重結合と、 う1つの2位炭素と1位炭素との間の単結合と 、共役系の一部となっていることが好まし 。例えば、1位原子が炭素であり、2つの炭素 が2位原子として存在し、1つの2位原子と1位 子との間の二重結合と、もう1つの2位原子と 1位原子との間の単結合とが、共役系の一部 なっていることが好ましい。

 従って、前駆体化合物としては、芳香族 に水酸基が結合した構造を有するフェノー 系化合物が好ましく、例えば、アリールま は置換アリールに水酸基が結合した化合物 好ましい。ここで、アリールとしては、フ ニルまたはビフェニルが好ましい。ここで 置換アリール中の置換基は、アルキル基、 ルコキシル基、シアノ基などが好ましい。 級アルキル基および低級アルコキシル基が り好ましい。

 触媒前駆体化合物は、好ましくは、ラジカ 反応性二重結合を有さないものである。芳 族二重結合(例えば、ベンゼン環の二重結合 )のように、ラジカルとの反応性が低い二重 合を触媒前駆体化合物が有しても良い。脂 族二重結合であっても、ビタミンC中の二重 合のように、ラジカルとの反応性が低い二 結合は、触媒前駆体として使用することに 障がない。従って、ビタミンCは、触媒前駆 体として使用できる。一般に、水酸基と結合 した二重結合は、ラジカルとの反応性は無い 。例えば、ビニルアルコール(CH 2 =CH-OH)は、ラジカル重合性モノマーではない 水酸基と結合した三重結合も同様に、ラジ ル反応性はなく、そのような化合物は、ラ カル重合性モノマーではない。

 他方、水酸基から離れた位置にのみ二重 合または三重結合を有する化合物(すなわち 、1位炭素が二重結合または三重結合を有さ 、2位炭素またはそれ以上に離れた炭素が二 結合または三重結合を有する化合物)は、触 媒前駆体化合物としての性能が比較的高くな い傾向にある。従って、水酸基から離れた位 置にのみ二重結合または三重結合を有する化 合物以外の化合物を触媒前駆体化合物として 選択することが好ましい。

 また、本発明の1つの実施形態においては 、前駆体化合物として、酸化防止剤としての 性能を有する水酸基含有化合物を用いること が好ましい。ただし、酸化防止剤に関しては 、一般に、水酸基の近くに大きい置換基が存 在することが重要であると考えられているが 、本発明の前駆体化合物については、そのよ うな限定はなく、水酸基の近くに大きい置換 基が存在する必要はない。例えば、無置換の フェノールのように、水酸基以外に置換基を 有さない化合物であっても本発明においては 前駆体化合物として好適に用いることができ る。

 また、本発明の1つの実施形態においては 、前駆体化合物として、ケイ素、窒素または リンに結合した水酸基(すなわち、Si-OH、N-OH P-OH)を有する化合物を用いることもできる。

 (触媒の製造方法)
 本発明の触媒として使用される化合物は、 の多くは公知化合物であり、試薬販売会社 どから市販されているものをそのまま用い ことが可能であり、あるいは、公知の方法 より合成することが可能である。また、ビ ミン類などの天然物中に存在する化合物は その天然物から抽出するなどの方法により 手することもできる。

 触媒として、酸素に有機基R 1 (例えば、アルキル、アルコキシ、アリール たは置換アリール)が結合したものを用いる 合、このような化合物としては市販されて るものを用いることができる。またはこの うな化合物は公知の方法により合成するこ ができる。例えば、R 1 OHにIClを反応させる方法により、ROIが合成さ るなど、酸素にハロゲンおよび有機基R 1 が結合した化合物を合成することができる。 あるいは、Tetrahedron Letters 21,2005-2008(1980)に 載された方法、Tetrahedron Letters 25,1953-1956(198 4)、あるいはTetrahedron Letters 30,4791-4794(1989)に 記載された方法により、酸素にハロゲンおよ び有機基R 1 が結合した化合物を合成することができる。

 (触媒の使用量)
 本発明の触媒は、極めて活性が高く、少量 リビングラジカル重合を触媒することが可 である。以下に、触媒の使用量について説 するが、触媒前駆体を使用する場合の量も 媒の量と同様である。

 本発明の方法において、触媒または触媒 駆体として使用される化合物は、理論上溶 として使用され得る液体の化合物である場 もある。しかし、触媒または触媒前駆体と て使用するにあたっては、溶媒としての効 を奏するほど大量に用いる必要はない。し がって、触媒または触媒前駆体の使用量は いわゆる「溶媒量」(すなわち溶媒としての 効果を達成するのに必要な量)よりも少ない とすることができる。本発明の方法におい 、触媒または触媒前駆体は、上述した通り リビングラジカル重合を触媒するのに充分 量で使用されればよく、それ以上に添加す 必要はない。

 具体的には、例えば、好ましい実施形態 は、反応溶液1リットルに対して、触媒使用 量を10ミリモル(mM)以下とすることが可能であ る。さらに好ましい実施形態では、反応溶液 1リットルに対して、触媒使用量を5ミリモル 下とすることが可能であり、2ミリモル以下 とすることも可能である。さらには、1ミリ ル以下とすることも可能であり、0.5ミリモ 以下とすることも可能である。重量基準で 、触媒使用量を反応溶液のうちの1重量%以下 とすることが可能である。好ましい実施形態 では、0.75重量%以下とすることが可能であり また0.70重量%以下とすることも可能であり さらに好ましい実施形態では、0.5重量%以下 することが可能であり、0.2重量%以下とする ことも可能であり、さらには0.1重量%以下と ることも可能であり、0.05重量%以下とするこ とも可能である。例えば、リン触媒の場合、 0.75重量%以下とすることが可能であり、また0 .70重量%以下とすることも可能であり、さら 好ましい実施形態では、0.5重量%以下とする とが可能であり、0.2重量%以下とすることも 可能であり、さらには0.1重量%以下とするこ も可能であり、0.05重量%以下とすることも可 能である。すなわち、溶媒として効果を奏す るよりも「格段に」少ない量とすることが可 能である。

 なお、フェノール系化合物、すなわちフ ノール性水酸基を有する化合物を触媒前駆 化合物として用いる場合、モノマーの種類 よっては、その使用量が多過ぎる場合には フェノール系化合物が重合禁止剤として作 してしまう場合があり得る。例えば、スチ ンなどを重合する場合にフェノール系化合 の量が多過ぎると、重合反応が進まなくな てしまう。従って、触媒前駆体系化合物の 用量としては、重合禁止剤としての効果が 現しない程度の少量とすることが好ましい なお、アクリレートやメタクリレートなど モノマーの場合には、フェノール系化合物 有効な重合禁止剤とならないので、フェノ ル系化合物の使用量がある程度多くても重 禁止効果による不利益はない。

 また、触媒の使用量は、好ましくは、反 溶液1リットルに対して、0.02ミリモル以上 あり、より好ましくは、0.1ミリモル以上で り、さらに好ましくは、0.5ミリモル以上で る。重量基準では、触媒使用量を反応溶液 うちの0.001重量%以上とすることが好ましく より好ましくは、0.005重量%以上であり、さ に好ましくは、0.02重量%以上である。触媒の 使用量が少なすぎる場合には、分子量分布は 広くなり易い。

 1つの実施形態において、本発明のリビン グラジカル重合方法においては、酸素原子を 中心元素とする触媒または触媒前駆体化合物 以外のリビングラジカル重合触媒または触媒 前駆体化合物(以下、「他種触媒または他種 媒前駆体化合物」)を併用しなくても、充分 リビングラジカル重合を行うことが可能で る。しかし、必要に応じて、他種触媒また 他種触媒前駆体化合物を併用することも可 である。その場合、酸素原子を中心元素と る触媒または触媒前駆体化合物の利点をで るだけ生かすためには、酸素原子を中心元 とする触媒または触媒前駆体化合物の使用 を多く、かつ、他種触媒または他種触媒前 体化合物の使用量を少なくすることが好ま い。そのような場合、他種触媒または他種 媒前駆体化合物の使用量は、酸素原子を中 元素とする触媒または触媒前駆体化合物100 量部に対して、100重量部以下とすることが 能であり、50重量部以下とすることも可能 あり、20重量部以下、10重量部以下、5重量部 以下、2重量部以下、1重量部以下、0.5重量部 下、0.2重量部以下または0.1重量部以下とす ことも可能である。

 (保護基)
 本発明の方法には、リビングラジカル重合 反応途中の成長鎖を保護する保護基を用い 。このような保護基としては、従来からリ ングラジカル重合に用いる保護基として公 の各種保護基を用いることが可能である。 こで、保護基としてハロゲンを用いること 好ましい。従来技術に関して上述したとお 、特殊な保護基を用いる場合には、その保 基が非常に高価であることなどの欠点があ 。

 (有機ハロゲン化物(ドーマント種))
 本発明の方法においては、好ましくは、炭 -ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物を 反応材料に添加し、この有機ハロゲン化物か ら成長鎖に与えられるハロゲンを保護基とし て用いる。このような有機ハロゲン化物は比 較的安価であるので、リビングラジカル重合 に用いられる保護基のために用いられる公知 の他の化合物に比べて有利である。また、必 要に応じて、炭素以外の元素にハロゲンが結 合したドーマント種を用いることも可能であ る。

 有機ハロゲン化物は、分子中に少なくと 1個の炭素-ハロゲン結合を有してドーマン 種として作用するものであればよく特に限 されるものではない。しかし、一般的には 機ハロゲン化物の1分子中にハロゲン原子が1 個または2個含まれているものが好ましい。

 有機ハロゲン化物のハロゲンが結合した 素(以下、便宜上、「有機ハロゲン化物の1 炭素」という)が有する水素は、2つ以下であ ることが好ましく、1つ以下であることがよ 好ましく、水素を有さないことがさらに好 しい。また、有機ハロゲン化物の1位炭素に 合しているハロゲンの数は、3つ以下である ことが好ましく、2つ以下であることがより ましく、1つであることがさらに好ましい。 に、有機ハロゲン化物の1位炭素に結合して いるハロゲンが塩素である場合には、その塩 素の数は、3つ以下であることが非常に好ま く、2つ以下であることがいっそう好ましく 1つであることがとりわけ好ましい。

 有機ハロゲン化物の1位炭素には、炭素が 1つ以上結合していることが好ましく、炭素 2つまたは3つ結合していることが特に好まし い。

 有機ハロゲン化物のハロゲン原子は、触 中のハロゲン原子と同一であってもよく、 なってもよい。異種のハロゲン原子であっ も、有機ハロゲン化物と触媒の化合物との で、互いにハロゲン原子を交換することが 能であるからである。ただし、有機ハロゲ 化物のハロゲン原子と、触媒中のハロゲン 子とが同一であれば、有機ハロゲン化物と 媒の化合物との間でのハロゲン原子の交換 より容易であるので、好ましい。

 1つの実施形態において、有機ハロゲン化 物は、以下の一般式(II)を有する。

 CR 2 R 3 R 4 X 2    (II)
 ここで、R 2 は、ハロゲン、水素またはアルキルである。 好ましくは、水素または低級アルキルである 。より好ましくは、水素またはメチルである 。

 R 3 は、R 2 と同一であってもよく、または異なってもよ く、ハロゲン、水素またはアルキルである。 好ましくは、水素または低級アルキルである 。より好ましくは、水素またはメチルである 。

 R 4 は、ハロゲン、水素、アルキル、アリールま たはシアノである。好ましくは、アリールま たはシアノである。R 4 が、ハロゲン、水素またはアルキルである場 合、R 4 はR 2 またはR 3 と同一であってもよく、または異なってもよ い。

 X 2 は、ハロゲンである。好ましくは、塩素、臭 素またはヨウ素である。R 2 ~R 4 にハロゲンが存在する場合、X 2 は、そのR 2 ~R 4 のハロゲンと同一であってもよく、異なって いてもよい。1つの実施形態では、X 2 のハロゲンは、触媒化合物に含まれるハロゲ ンと同じハロゲンとすることができる。しか し、触媒化合物に含まれるハロゲンと異なる ハロゲンであってもよい。

 上記R 2 ~R 4 およびX 2 は、それぞれ、互いに独立して選択されるが 、R 2 ~R 4 のうちにハロゲン原子が0または1つ存在する と(すなわち、有機ハロゲン化物として、化 合物中に1または2つのハロゲン原子が存在す こと)が好ましい。

 1つの好ましい実施形態では、有機ハロゲ ン化物は、ハロゲン化アルキルまたはハロゲ ン化置換アルキルである。より好ましくは、 ハロゲン化置換アルキルである。ここで、ア ルキルは2級アルキルであることが好ましく より好ましくは3級アルキルである。

 ハロゲン化アルキルまたはハロゲン化置 アルキルにおいてアルキルの炭素数は2また は3であることが好ましい。従って、有機ハ ゲン化物は、さらに好ましくは、ハロゲン 置換エチルまたはハロゲン化置換イソプロ ルであるハロゲン化置換アルキルにおける 換基としては、例えば、フェニルまたはシ ノなどが挙げられる。

 有機ハロゲン化物の好ましい具体例として 、例えば、以下の、CH(CH 3 )(Ph)I、およびC(CH 3 ) 2 (CN)Iなどである。

 有機ハロゲン化物の別の具体例としては、 えば、塩化メチル、塩化メチレン、クロロ ルム、クロロエタン、ジクロロエタン、ト クロロエタン、ブロモメチル、ジブロモメ ン、ブロモホルム、ブロモエタン、ジブロ エタン、トリブロモエタン、テトラブロモ タン、ブロモトリクロロメタン、ジクロロ ブロモメタン、クロロトリブロモメタン、 ードトリクロロメタン、ジクロロジヨード タン、ヨードトリブロモメタン、ジブロモ ヨードメタン、ブロモトリヨードメタン、 ードホルム、ジヨードメタン、ヨウ化メチ 、塩化イソプロピル、塩化t-ブチル、臭化 ソプロピル、臭化t-ブチル、トリヨードエタ ン、ヨウ化エチル、ジヨードプロパン、ヨウ 化イソプロピル、ヨウ化t-ブチル、ブロモジ ロロエタン、クロロジブロモエタン、ブロ クロロエタン、ヨードジクロロエタン、ク ロジヨードエタン、ジヨードプロパン、ク ロヨードプロパン、ヨードジブロモエタン ブロモヨードプロパン、2-ヨード-2-ポリエ レングリコシルプロパン、2-ヨード-2-アミジ ノプロパン、2-ヨード-2-シアノブタン、2-ヨ ド-2-シアノ-4-メチルペンタン、2-ヨード-2-シ アノ4-メチル-4-メトキシペンタン、4-ヨード-4 -シアノ-ペンタン酸、メチル-2-ヨードイソブ レート、2-ヨード-2-メチルプロパンアミド 2-ヨード-2,4-ジメチルペンタン、2-ヨード-2- アノブタノール、4-メチルペンタン、シアノ -4-メチルペンタン、2-ヨード-2-メチル-N-(2-ヒ ロキシエチル)プロピオンアミド4-メチルペ タン、2-ヨード-2-メチル-N-(1,1-ビス(ヒドロ シメチル)-2-ヒドロキシエチル)プロピオンア ミド4-メチルペンタン、2-ヨード-2-(2-イミダ リン-2-イル)プロパン、2-ヨード-2-(2-(5-メチ -2-イミダソリン-2-イル)プロパン等が挙げら る。これらのハロゲン化物は単独で用いて よく、または組合せて用いてもよい。

 本発明の方法において、有機ハロゲン化 は、溶媒として使用されるものではないの 、溶媒としての効果を奏するほど大量に用 る必要はない。したがって、有機ハロゲン 物の使用量は、いわゆる「溶媒量」(すなわ ち溶媒としての効果を達成するのに必要な量 )よりも少ない量とすることができる。本発 の方法において、有機ハロゲン化物は、上 した通り、成長鎖にハロゲンを保護基とし 提供するために使用されるので、反応系中 成長鎖に充分な量のハロゲンを提供できれ 充分である。具体的には、例えば、本発明 方法における有機ハロゲン化物の使用量は 重合反応系中におけるラジカル重合開始剤1 ル当たり0.05モル以上であることが好ましく 、より好ましくは0.5モル以上であり、さらに 好ましくは1モル以上である。また、重合系 におけるラジカル重合開始剤1モル当たり100 ル以下であることが好ましく、より好まし は30モル以下であり、さらに好ましくは5モ 以下である。さらに、ビニル系単量体の1モ ル当たり0.001モル以上であることが好ましく より好ましくは0.005モル以上である。また ビニル系単量体の1モル当たり0.5モル以下で ることが好ましく、より好ましくは0.4モル 下であり、さらに好ましくは0.3モル以下で り、特に好ましくは0.2モル以下であり、最 好ましくは0.1モル以下である。さらに、必 に応じて、ビニル系単量体の1モル当たり0.0 7モル以下、0.05モル以下、0.03モル以下、0.02 ル以下もしくは0.01モル以下とすることも可 である。

 上記有機ハロゲン化物は、その多くの化 物が公知化合物であり、試薬販売会社など ら市販されている試薬などをそのまま用い ことが可能である。あるいは、従来公知の 成方法を用いて合成してもよい。

 有機ハロゲン化物は、その原料を仕込み、 機ハロゲン化物を重合中にin situで生成さ 、それをこの重合法の有機ハロゲン化物と て使用することもできる。例えば、アゾビ (イソブチロニトリル)とヨウ素(I 2 )を原料として仕込み、ヨウ化アルキルであ CP-I(化学式は上記のとおり)を重合中にin situ で生成させ、それをこの重合法のヨウ化アル キルとして使用することができる。

 有機ハロゲン化物は、無機または有機固 表面や、無機または有機分子表面などの表 に固定化したものを使用することもできる 例えば、シリコン基板表面、高分子膜表面 無機または有機微粒子表面、顔料表面など 固定化した有機ハロゲン化物を使用するこ ができる。固定化には、例えば、化学結合 物理結合などが利用できる。

 (モノマー)
 本発明の重合方法には、モノマーとして、 ジカル重合性モノマーを用いる。ラジカル 合性モノマーとは、有機ラジカルの存在下 ラジカル重合を行い得る不飽和結合を有す モノマーをいう。このような不飽和結合は 重結合であってもよく、三重結合であって よい。すなわち、本発明の重合方法には、 来から、リビングラジカル重合を行うこと 公知の任意のモノマーを用いることができ 。

 より具体的には、いわゆるビニルモノマー 呼ばれるモノマーを用いることができる。 ニルモノマーとは、一般式「CH 2 =CR 5 R 6 」で示されるモノマーの総称である。

 この一般式においてR 5 がメチルであり、R 6 がカルボシキシレートであるモノマーをメタ クリレート系モノマーといい、本発明に好適 に用いることができる。

 メタクリレート系モノマーの具体例とし は、メチルメタクリレート、エチルメタク レート、プロピルメタクリレート、n-ブチ メタクリレート、t-ブチルメタクリレート、 ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシル タクリレート、ノニルメタクリレート、ベ ジルメタクリレート、グリシジルメタクリ ート、シクロヘキシルメタクリレート、ラ リルメタクリレート、n-オクチルメタクリ ート、2-メトキシエチルメタクリレート、ブ トキシエチルメタクリレート、メトキシテト ラエチレングリコールメタクリレート、2-ヒ ロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキ プロピルメタクリレート、3-クロロ2-ヒドロ シプロピルメタクリレート、テトラヒドロ ルフリルメタクリレート、2-ヒドロキシ3-フ ェノキシプロピルメタクリレート、ジエチレ ングリコールメタクリレート、ポリエチレン グリコールメタクリレート、2-(ジメチルアミ ノ)エチルメタクリレート等が挙げられる。 た、メタクリル酸も用いることができる。

 上記ビニルモノマーの一般式においてR 5 が水素であり、R 6 がカルボキシレートで示されるモノマーは、 一般にアクリル系モノマーと言い、本発明に 好適に使用可能である。

 アクリレート系モノマーの具体例として 、メチルアクリレート、エチルアクリレー 、プロピルアクリレート、n-ブチルアクリ ート、t-ブチルアクリレート、ヘキシルアク リレート、2-エチルヘキシルアクリレート、 ニルアクリレート、ベンジルアクリレート グリシジルアクリレート、シクロヘキシル クリレート、ラウリルアクリレート、n-オ チルアクリレート、2-メトキシエチルアクリ レート、ブトキシエチルアクリレート、メト キシテトラエチレングリコールアクリレート 、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒド キシプロピルアクリレート、3-クロロ2-ヒド キシプロピルアクリレート、テトラヒドロ ルフリルアクリレート、2-ヒドロキシ3-フェ ノキシプロピルアクリレート、ジエチレング リコールアクリレート、ポリエチレングリコ ールアクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチ アクリレートなどが挙げられる。また、ア リル酸もしくはメタクリル酸も使用可能で る。

 上記ビニルモノマーの一般式においてR 5 が水素であり、R 6 がフェニルで示されるモノマーはスチレンで あり、本発明に好適に使用可能である。R 6 がフェニルまたはフェニル誘導体で示される モノマーは、スチレン誘導体といい、本発明 に好適に使用可能である。具体的には、o-、m -、p-メトキシスチレン、o-、m-、p-t-ブトキシ チレン、o-、m-、p-クロロメチルスチレン、o -、m-、p-クロロスチレン、o-、m-、p-ヒドロキ スチレン、o-、m-、p-スチレンスルホン酸等 挙げられる。また、R 6 が芳香族である、ビニルナフタレン等が挙げ られる。

 上記ビニルモノマーの一般式においてR 5 が水素であり、R 6 がアルキルであるモノマーはアルキレンであ り、本発明に好適に使用可能である。

 本発明には、2つ以上のビニル基を有する モノマーも使用可能である。具体的には、例 えば、ジエン系化合物(例えば、ブタジエン イソプレンなど)、アリル系を2つ有する化合 物(例えば、ジアリルフタレートなど)、ジオ ル化合物のジメタクリレート、ジオール化 物のジアクリレートなどである。

 本発明には、上述した以外のビニルモノ ーも使用可能である。具体的には、例えば ビニルエステル類(例えば、酢酸ビニル、プ ロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸ビ ニル)、上記以外のスチレン誘導体(例えば、 -メチルスチレン)、ビニルケトン類(例えば ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケト 、メチルイソプロペニルケトン)、N-ビニル 合物(例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニル ピロール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニル ンドール)、(メタ)アクリルアミドおよびそ 誘導体(例えば、N-イソプロピルアクリルア ド、N-イソプロピルメタクリルアミド、N,N- メチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタク ルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N- メチロールメタクリルアミド)、アクリロニ リル、メタアクリロニトリル、マレイン酸 よびその誘導体(例えば、無水マレイン酸)、 ハロゲン化ビニル類(例えば、塩化ビニル、 化ビニリデン、テトラクロロエチレン、ヘ サクロロプロピレン、フッ化ビニル)、オレ ィン類(例えば、エチレン、プロピレン、1- キセン、シクロヘキセン)などである。

 これらは単独で使用してもよいし、また2 種類以上併用してもよい。

 なお、本発明においては、ヒドロキシル およびラジカル重合性二重結合の両方を有 るモノマー(例えば、2-ヒドロキシメチルメ クリレート)も、カルボキシル基およびラジ カル重合性二重結合の両方を有するモノマー (例えば、アクリル酸)も、モノマーとして使 できる。これらの化合物では、ラジカル重 性二重結合と水酸基が少なくとも一つ以上 元素(例えば、炭素)を介して離れている。 ジカル重合性二重結合と直接結合しない水 基は、ラジカルとの反応性が低い。一方、 酸基と直接結合しないラジカル重合性二重 合は、ラジカルとの反応性が高い。そのた 、これらの化合物では、水酸基とラジカル の反応よりも、二重結合とラジカルとの反 が、優先的に生じることになり、これらの 合物はリビングラジカル重合においてモノ ーとして作用するが、実質的に触媒前駆体 して作用しない。したがって、これらの化 物は本発明においては、触媒前駆体ではな 、モノマーとして分類される。

 他方、二重結合と直接結合した水酸基は ラジカルとの反応性が高い。一方、水酸基 直接結合した二重結合は、ラジカルとの反 性がない(あるいは非常に低い)。ビタミンC 、その分子中に1つの二重結合および4つの 酸基を有するが、ビタミンC中の二重結合は 水酸基と直接結合しているため(芳香族二重 結合に近い性質を示すものであり)、その二 結合とラジカルとの反応性はない(あるいは 常に低い)。そのため、ビタミンCにおいて 、二重結合とラジカルとの反応性よりも、 酸基とラジカルとの反応性の方が著しく高 ため、ビタミンCは、モノマーとして作用せ 、触媒前駆体として作用する。

 上述したモノマーの種類と、本発明の触 の種類との組み合わせは特に限定されず、 意に選択されたモノマーに対して任意に選 された本発明の触媒を用いることが可能で る。ただし、メタクリレート系モノマーに いては、芳香環を有する置換基を有する触 、より具体的にはアリールまたは置換アリ ルを有する触媒を使用することが、反応性 点で、それ以外の触媒よりも好ましい。

 (ラジカル反応開始剤)
 本発明のリビングラジカル重合方法におい は、必要に応じて、必要量のラジカル反応 始剤を用いる。このようなラジカル反応開 剤としては、ラジカル反応に使用する開始 として公知の開始剤が使用可能である。例 ば、アゾ系のラジカル反応開始剤および過 化物系のラジカル開始剤などが使用可能で る。アゾ系のラジカル反応開始剤の具体例 しては、例えば、アゾビス(イソブチロニト リル)が挙げられる。過酸化物としては、有 化酸化物が好ましい。過酸化物系のラジカ 開始剤の具体例としては、例えば、ベンゾ ルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイ 、t-butyl peroxybenzoate(BPB)、di(4-tert-butylcyclohexyl ) peroxydicarbonate(PERKADOX16)が挙げられる。

 ラジカル開始剤の使用量は特に限定され いが、好ましくは、反応液1リットルに対し て、1ミリモル以上であり、より好ましくは 5ミリモル以上であり、さらに好ましくは、1 0ミリモル以上である。また、好ましくは、 応液1リットルに対して、500ミリモル以下で り、より好ましくは、100ミリモル以下であ 、さらに好ましくは、50ミリモル以下であ 。

 (溶媒)
 モノマーなどの反応混合物が反応温度にお て液体であれば、必ずしも溶媒を用いる必 はない。必要に応じて、溶媒を用いてもよ 。溶媒としては、従来、リビングラジカル 合に用いられていた溶媒をそのまま使用す ことが可能である。溶媒を用いる場合には その使用量は重合反応が適切に行われる限 特に限定されないが、モノマー100重量部に して1重量部以上用いることが好ましく、10 量部以上用いることがより好ましく、50重 部以上用いることがさらに好ましい。溶媒 使用量が少なすぎる場合には、反応溶液の 度が高くなりすぎる場合がある。また、モ マー100重量部に対して2000重量部以下とする とが好ましく、1000重量部以下とすることが より好ましく、500重量部以下とすることがさ らに好ましい。溶媒の使用量が多すぎる場合 には、反応溶液のモノマー濃度が薄くなりす ぎる場合がある。

 モノマーと混ざり合わない溶媒を用いる とにより、乳化重合や、分散重合、懸濁重 を行うこともできる。例えば、スチレンや タクリレートをモノマーとした場合、水を 媒とするとで、乳化重合や、分散重合、懸 重合を行うことができる。

 (その他の添加剤等)
 上述したリビングラジカル重合のための各 材料には、必要に応じて、公知の添加剤等 必要量添加してもよい。そのような添加剤 しては、例えば、重合抑制剤などが挙げら る。

 (原料組成物)
 上述した各種原料を混合することにより、 ビングラジカル重合の材料として適切な原 組成物が得られる。得られた組成物は、従 公知のリビングラジカル重合方法に用いる とができる。

 1つの実施形態では、原料組成物は、上述し た各種原料以外の原料を含まない。例えば、 環境問題などの観点から、原料組成物は、遷 移金属を含む原料を実質的に含まないことが 好ましい。1つの好ましい実施形態では、原 組成物は、開始剤、触媒、触媒前駆体化合 、ラジカル反応性不飽和結合を有するモノ ー、溶媒、および炭素-ハロゲン結合を有す 有機ハロゲン化物以外の原料を実質的に含 ない。また、原料組成物は、リビングラジ ル重合に無関係な材料(例えば、エピスルフ ィド化合物など)を実質的に含まないことが ましい。例えば、リビングラジカル重合に 関係な材料(例えば、エピスルフィド化合物 ど)の含有量を、ラジカル反応性不飽和結合 を有するモノマー100重量部に対して、1重量 以下とすることが好ましく、0.1重量部以下 することがより好ましく、0.01重量部以下と ることがさらに好ましく、0.001重量部以下 することが特に好ましい。リビングラジカ 重合に無関係な材料の含有量を0重量部とす こと、すなわち、まったく含まないことも 能である。
 さらに、酸素を中心元素とする触媒または 媒前駆体の利点をできるだけ生かしたい場 には、原料組成物は、酸素を中心元素とす 触媒および触媒前駆体以外のリビングラジ ル重合触媒または触媒前駆体を実質的に含 ない組成物とすることが可能である。例え 、酸素を中心元素とする触媒および触媒前 体以外のリビングラジカル重合触媒または 媒前駆体(例えば、遷移金属錯体、ホウ素化 合物など)の含有量を、ラジカル反応性不飽 結合を有するモノマー100重量部に対して、1 量部以下とすることが好ましく、0.1重量部 下とすることがより好ましく、0.01重量部以 下とすることがさらに好ましく、0.001重量部 下とすることがいっそう好ましく、0.0001重 部以下とすることが特に好ましい。酸素を 心元素とする触媒および触媒前駆体以外の ビングラジカル重合触媒または触媒前駆体( 例えば、遷移金属錯体、ホウ素化合物など) 含有量を0重量部とすること、すなわち、ま たく含まないことも可能である。
 なお、本願明細書中において、以下、「実 的に含まない」と記載する場合には、一般 、その物質の含有量が、ラジカル反応性不 和結合を有するモノマー100重量部に対して 1重量部以下とすることが好ましく、0.1重量 部以下とすることがより好ましく、0.01重量 以下とすることがさらに好ましく、0.001重量 部以下とすることがいっそう好ましく、0.0001 重量部以下とすることが特に好ましい。含有 量を0重量部とすること、すなわち、まった 含まないことも可能である。

 1つの実施形態では、原料組成物は、開始 剤と、触媒または触媒前駆体と、ラジカル反 応性不飽和結合を有するモノマーと、炭素- ロゲン結合を有する有機ハロゲン化物を含 、さらに溶媒を含んでもよい。

 (触媒を含む原料組成物)
 触媒化合物を用いる実施形態では、原料組 物は、開始剤と、触媒と、ラジカル反応性 飽和結合を有するモノマーと、炭素-ハロゲ ン結合を有する有機ハロゲン化物を含む。原 料組成物は、これらに加えてさらに溶媒を含 んでもよい。

 1つの実施形態では、原料組成物は実質的 に、開始剤と、触媒と、ラジカル反応性不飽 和結合を有するモノマーと、炭素-ハロゲン 合を有する有機ハロゲン化物と、溶媒とか なる組成物である。ここで、不要な場合に 、溶媒は含まれなくてもよい。原料組成物 、例えば、開始剤と、触媒と、ラジカル反 性不飽和結合を有するモノマーと、炭素-ハ ゲン結合を有する有機ハロゲン化物と、溶 以外にはラジカル重合反応に関与する成分 実質的に含まない組成物である。開始剤と 触媒と、ラジカル反応性不飽和結合を有す モノマーと、炭素-ハロゲン結合を有する有 機ハロゲン化物と、溶媒のみから組成物が構 成されてもよい。なお、ここでも、不要な場 合には、溶媒は含まれなくてもよい。

 (触媒前駆体化合物を含む原料組成物)
 触媒前駆体化合物を用いる実施形態では、 料組成物は、過酸化物と、触媒前駆体化合 と、ラジカル反応性不飽和結合を有するモ マーと、炭素-ハロゲン結合を有する有機ハ ロゲン化物を含む。原料組成物は、これらに 加えてさらに溶媒を含んでもよい。

 1つの実施形態では、原料組成物は実質的 に、過酸化物と、触媒前駆体化合物と、ラジ カル反応性不飽和結合を有するモノマーと、 炭素-ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化 と、溶媒からなる組成物である。ここで、 要な場合には、溶媒は含まれなくてもよい 例えば、過酸化物と、触媒前駆体化合物と ラジカル反応性不飽和結合を有するモノマ と、炭素-ハロゲン結合を有する有機ハロゲ 化物と、溶媒以外にはラジカル重合反応に 与する成分を含まない組成物である。過酸 物と、触媒前駆体化合物と、ラジカル反応 不飽和結合を有するモノマーと、炭素-ハロ ゲン結合を有する有機ハロゲン化物と、溶媒 のみから組成物が構成されてもよい。なお、 ここでも、不要な場合には、溶媒は含まれな くてもよい。

 (反応温度)
 本発明の方法における反応温度は特に限定 れない。好ましくは、10℃以上であり、よ 好ましくは、20℃以上であり、さらに好まし くは、30℃以上であり、いっそう好ましくは 40℃以上であり、特に好ましくは、50℃以上 である。また、好ましくは、130℃以下であり 、より好ましくは、120℃以下であり、さらに 好ましくは、110℃以下であり、いっそう好ま しくは、105℃以下であり、特に好ましくは、 100℃以下である。

 温度が高すぎる場合には、加熱のための 備等にコストがかかるという欠点がある。 度が室温以下の場合には、冷却のための設 等にコストがかかるという欠点がある。ま 、室温以下で重合するように反応混合物を 製すると、その反応混合物が室温では不安 で反応してしまうために、反応混合物の保 が困難になるという欠点がある。したがっ 、上記の、室温より少し高く、かつ過度に すぎない温度範囲(例えば、50℃から100℃)は 、実用的な意味において非常に好適である。

 (反応時間)
 本発明の方法における反応時間は特に限定 れない。好ましくは、15分間以上であり、 り好ましくは、30分間以上であり、さらに好 ましくは、1時間以上である。また、好まし は、3日以下であり、より好ましくは、2日以 下であり、さらに好ましくは、1日以下であ 。

 反応時間が短すぎる場合には、充分な分 量を得ることが難しい。反応時間が長すぎ 場合には、プロセス全体としての効率が悪 。適切な反応時間とすることにより、優れ 性能(適度な重合速度と副反応の軽減)が達 され得る。

 (雰囲気)
 本発明の方法における重合反応は、反応容 中に空気が存在する条件下で行ってもよい また、必要に応じて窒素やアルゴンなどの 活性ガスで空気を置換しても良い。

 (前駆体)
 本発明の重合方法においては、上述した触 を直接的に用いて(すなわち、触媒を重合容 器に投入して)反応を行ってもよいが、また 触媒を直接用いることなく、触媒の前駆体 用いて反応を行ってもよい。ここで、触媒 前駆体とは、その化合物は反応容器に投入 る際の状態では上記触媒の定義に該当しな が、反応容器中において化学変化して触媒 して作用できる状態になる化合物をいう。 こで、上記「触媒として作用できる状態に る」とは、好ましくは、前駆体が上記触媒 合物に変換されることである。

 上記触媒化合物から重合反応の際に発生 る活性化ラジカルと同様の活性化ラジカル 生成させることができる化合物は、前駆体 該当する。例えば、酸素の水素化物は前駆 に該当する。すなわち、ラジカル開始剤が 解して生成したラジカルや、それに由来す ポリマーラジカルが、酸素の水素化物の水 を引き抜けば酸素化合物の活性化ラジカル 発生させることができ、リビングラジカル 合を行うことができる。

 従って、本発明の重合方法の1つの実施形 態においては、上述した触媒を直接用いて反 応を行うことができるが、別の実施形態にお いては、上述した触媒を直接用いることなく 、触媒化合物の前駆体を用いることができる 。この場合、重合反応を行う工程の前に前駆 体を化学変化させる工程が行われる。この前 駆体の化学変化工程は、重合反応を行う容器 内で行ってもよく、重合反応容器と別の容器 で行っても良い。重合反応を行う容器内で重 合反応工程と同時に行うことが全体のプロセ スが簡略になる点で有利である。

 前駆体の使用量としては、上述した触媒 使用量と同様の量が使用できる。前駆体か 得られる活性化ラジカルの量が、上述した の触媒を使用した場合の活性化ラジカルの と同様になるようにすることが好ましい。

 本発明のリビングラジカル重合方法は、 独重合、すなわち、ホモポリマーの製造に 用することが可能であるが、共重合に本発 の方法を用いてコポリマーを製造すること 可能である。共重合としては、ランダム共 合であってもよく、ブロック共重合であっ もよい。

 ブロック共重合体は、2種類以上のブロッ クが結合した共重合体であってもよく、3種 以上のブロックが結合した共重合体であっ もよい。

 2種類のブロックからなるブロック共重合 の場合、例えば、第1のブロックを重合する 程と、第2のブロックを重合する工程とを包 する方法によりブロック共重合体を得るこ ができる。この場合、第1のブロックを重合 する工程に本発明の方法を用いてもよく、第 2のブロックを重合する工程に本発明の方法 用いてもよい。第1のブロックを重合する工 と、第2のブロックを重合する工程の両方に 本発明の方法を用いることが好ましい。

 より具体的には例えば、第1のブロックを 重合した後、得られた第1のポリマーの存在 に、第2のブロックの重合を行うことにより ブロック共重合体を得ることができる。第1 のポリマーは、単離精製した後に、第2のブ ックの重合に供することもできるし、第1ポ マーを単離精製せず、第1のポリマーの重合 の途中または完結時に、第1の重合に第2のモ マーを添加することにより、ブロックの重 を行うこともできる。

 3種類のブロックを有するブロック共重合 体を製造する場合も、2種類以上のブロック 結合した共重合体を製造する場合と同様に それぞれのブロックを重合する工程を行っ 、所望の共重合体を得ることができる。そ て、すべてのブロックの重合において本発 の方法を用いることが好ましい。

 (反応メカニズム)
 本発明は特に理論に束縛されないが、その 定されるメカニズムを説明する。

 リビングラジカル重合法の基本概念はド マント種(polymer-X)の成長ラジカル(polymer・) の可逆的活性化反応にあり、保護基Xにハロ ンを、活性化の触媒として遷移金属錯体を いた系は、有用なリビングラジカル重合法 一つである。本発明によれば、酸素化合物 用いて、高い反応性で、有機ハロゲン化物 ハロゲンを引き抜くことが可能であり、ラ カルを可逆的に生成させることができる(ス キーム1)。

 従来から、一般に、遷移金属はその電子 様々な遷移状態にあり得るため、各種化学 応を触媒する作用に優れることが知られて る。このため、リビングラジカル重合の触 としても、遷移金属が優れていると考えら ていた。逆に、典型元素はこのような触媒 は不利であると考えられていた。

 しかしながら、予期せぬことに、本発明 よれば、酸素を中心元素とする触媒を用い ことにより、図5の模式図に示すように、触 媒化合物と反応中間体との間でハロゲンを交 換しながら、極めて効率よく重合反応が進行 する。これは、中心元素とハロゲンとの結合 が、反応中間体とのハロゲンの交換を行う上 で適切であることによると考えられる。従っ て、基本的には、この中心元素とハロゲンと の結合を有する化合物であれば、中心元素お よびハロゲン以外の置換基を有する化合物で あっても、良好にリビングラジカル重合を触 媒できると考えられる。

 以下のスキーム1に、本発明の触媒を用いた 場合の反応式を示す。
(スキーム1)

 また、前駆体(R-OH(アルコール))を用いる場 には、上述したメカニズムに基づく反応の に、あるいはその反応と同時に、前駆体か 活性化ラジカル(R-O・)を生じさせる工程が行 われる。具体的には、ラジカル開始剤(例え 、過酸化物)の分解により生じたラジカル、 るいはそれから生成した成長ラジカル(いず れもR’・で表記する)が前駆体の水素原子を き抜くことにより、活性化ラジカルを得る とができる(スキーム2(a))。
(スキーム2)

 (生成ポリマーの末端に結合するハロゲンの 除去)
 本発明の方法で得られる生成ポリマーは、 端にハロゲン(例えば、ヨウ素)を有する。 のポリマーを製品に使用する際には、必要 あれば、末端のハロゲンを除去して、使用 ることもできる。また、末端のハロゲンを 極的に利用し、これを別の官能基に変換し 、新たな機能を引き出すこともできる。末 のハロゲンの反応性は、一般に高く、非常 様々な反応により、その除去や変換ができ 。例えば、ハロゲンがヨウ素である場合の リマー末端の処理方法の例を以下のスキー 3に示す。これらのスキームに示す反応など より、ポリマー末端を利用することができ 。また、ハロゲンがヨウ素以外である場合 ついても、同様にポリマー末端を官能基に 換することができる。

 (スキーム3)
 (ポリマーの用途)
 上述した本発明のリビングラジカル重合方 によれば、分子量分布の狭いポリマーが得 れる。例えば、反応材料の配合や反応条件 適切に選択することにより、重合平均分子 Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnが1.5以下のポ マーを得ることが可能であり、さらに反応 料配合および反応条件を適切に選択するこ により、Mw/Mnが1.4以下、1.3以下、1.2以下、 らには1.1以下のポリマーを得ることが可能 なる。

 本発明のリビングラジカル重合方法によ 得られるポリマーは、各種用途に使用可能 ある。例えば、レジスト、接着剤、潤滑剤 塗料、インク、分散剤、包装材、薬剤、パ ソナルケア製品(整髪料・化粧品など)エラ トマー(自動車材料、工業用品、スポーツ用 、電線被服材、建築資材など)、コーティン グ(粉体塗装など)などの生産に使用可能であ 。また、新しい電子・光学・力学・結晶・ 離・潤滑・医療材料の創成に利用しうる。

 本発明のリビングラジカル重合方法によ 得られるポリマーは、また、ポリマー中に 存する触媒量が少ないという点においても 種用途に有利に使用可能である。すなわち 従来の遷移金属系の触媒などに比べて触媒 を減らせるため、得られる樹脂の純度が高 ものになり、高純度の樹脂が必要とされる 途にも好適に使用できる。触媒残渣は、用 に応じて、生成したポリマーから除去して よいし、除去しなくともよい。このような 種用途に応じて、ポリマーは成形されたり 溶媒または分散媒に溶解または分散させた することがあるが、成形された後のポリマ 、あるいは溶解または分散等された後のポ マーも本発明の利点を維持しているもので り、依然として本発明の重合方法で得られ ポリマーの範囲に入るものである。

 本発明の重合法を用いて合成したポリマ は分子量分布が狭く、ポリマー中の残存触 量が少なく、かつコストが安いという利点 生かして、様々な用途に利用可能である。

 例えば、ベンジルメタクリレートからな 分子量分布の狭い単独重合体、ランダム共 合体、ブロック共重合体は、高性能のレジ トとして使用可能である。

 また例えば、メタクリレート(例えば、ジ メチルアミノメタクリレートや、2-ヒドロキ エチルメタクリレート)、メタクリル酸、ア クリレート、アクリル酸などの重合体は、接 着剤、塗料、インク、顔料分散剤などの用途 に使用可能である。

 また、本発明の方法で多分岐ポリマーを 成すれば、潤滑剤として有用である。

 また、本発明の方法で得られたポリマー( 例えば、ヒドロキシエチルメタクリレート、 ポリエチレングリコールメタクリレートなど )は、薬剤除放材・医療材料にも有用である

 また、本発明の方法で得られたポリマー( 例えば、ジメチルアミノメタクリレートや、 メタクリル酸、2-ヒドロキシエチルメタクリ ート、ポリエチレングリコールメタクリレ トなど)は、パーソナルケア製品(例えば、 髪料や化粧品)にも有用である。

 また、本発明の方法で得られたポリマー( 例えば、(アクリレート、メタクリレート、 チレン、ジエンなど)は、エラストマーや、 ーティングなどの用途にも有用である。

 また、本発明の方法で得られるポリマー 、従来にない新しい電子材料・光学材料・ 学材料・結晶材料・分離材料・潤滑材料・ 療材料などの創製と製造にも有用である。

 さらに本発明の方法は、例えば、表面グ フト重合に応用することも可能であり、高 度のポリマーブラシを製造して各種用途に いることもできる。

 また、触媒として、導電性を有さない化 物を用いた場合、導電性不純物がポリマー に残存しないことが必要とされる用途(例え ばレジストや有機EL等)においても、好適に使 用可能なポリマーが得られる。

 本発明の触媒は、その触媒の中心元素が 素であるという特徴を有する。酸素では、p 軌道(あるいはそのs軌道との混成軌道)に位置 する電子(ラジカル)が反応に寄与する。d軌道 の電子が反応に寄与する遷移金属とは全く異 なる。本発明らの研究の結果、酸素のp軌道 位置するラジカルは、リビングラジカル重 の際にハロゲン化アルキル(ドーマント種)か らハロゲンを引き抜く力が極めて高いことが わかった。そして、このp軌道のラジカルは 一般に、遷移金属のラジカルに比べてもド マント種からハロゲンを引き抜く力が格段 高いことがわかった。従って、このように 力なp軌道ラジカルを生成できる酸素は、強 な触媒となることができる。

 以下に、本発明の実施例を説明するが、 発明は、これらの実施例により限定される のではない。

 以下に、後述する各実施例で使用したモ マー、ハロゲン化アルキル、および触媒を す。

 (用いた化合物)
 まず、実施例で用いた主な化合物の構造を 下に記載する。

 (モノマー)

 (有機ハロゲン化化合物)

 (触媒)

 (実施例1および比較例1)
[ヨウ化チモール(触媒)を用いたスチレン(St) 単独重合]

 ハロゲン化アルキルとして、80mMの1-phenylethy l iodide(PE-I;化学構造式は上述のとおり)を用 た。触媒として5mMのヨウ化チモール(TI;化学 造式は上述のとおり)を用いた。ラジカル開 始剤として10mMの2,2’-azobis(2,4,4-trimethylpentane)( VR110)を用いた。これらの材料を2gのスチレン( St)に溶解して上記濃度の反応溶液とした。モ ノマー濃度は8M(バルク)であった。これらの 料の溶解性は良好であり、均一な溶液が形 された。アルゴンにて残存酸素を置換し、 の反応溶液を100℃に加熱することにより重 反応を行った。

 なお、濃度の「mM」は、モノマー1リット を基準とするミリモル数を示す。例えば、8 0mMは、モノマー1リットルに80ミリモルが溶解 していることを意味する。濃度の「M」は、 ノマー1リットルを基準とするモル数を示す 例えば、8Mは、モノマー1リットルに8モルが 溶解していることを意味する。

 表1に示すとおりに、反応材料および反応条 件を変更しながら、entries 1-4ならびにentry C1 の実験を行った。entries 1-4の実験が実施例1 実験であり、entry C1の実験が比較例1の実験 ある。表1および下記のすべての表(表1-17)に おいて、PDIはM w /M n の比を示す。また、M n は、得られたポリマーの数平均分子量である 。

 M n,theo は、以下の式:
 
で算出される理論値である。なお、[M] 0 および[R-I] 0 はそれぞれ、モノマーとヨウ化アルキルの初 期濃度(仕込み濃度)を表す。また、convは、モ ノマーの転化率(重合率)である。

 この重合では、VR110の解裂により生じた成 ラジカル(polymer・)が、不活性化剤TIのヨウ素 を引き抜き、活性化ラジカルであるチモール ラジカル(アルコールラジカルR-O・)がin situ (ポリマー-ヨウ素付加体(polymer-I)とともに)生 成する(スキーム1)。活性化反応はチモールラ ジカルの作用による。結果を表1(entry 1)およ 図1AおよびB(●)に示す。図1Aの縦軸の[M]はモ ノマー濃度を表す。[M] 0 は初期モノマー濃度(重合時間ゼロでのモノ ー濃度)を表す。例えば、24hで、重合率は59% なり、M n およびPDIはそれぞれ5100、1.32であった。M n は重合率にほぼ比例し、PDIは重合初期から1.3 程度と小さく、活性化頻度は十分高いと言え る。ラジカル開始剤として、より解裂の速い t-butyl peroxybenzoate(BPB)を用いることにより、 えば、7時間で重合率は76%と大きく増大し、M n およびPDIはそれぞれ8500、1.29であった(表1(entr y 2)および図1AおよびB(○))。このように、PDI 制御したまま、重合速度をあげることがで た。さらに、触媒の量を5mMから2mMに下げ、 らに温度を100℃から80℃に下げても(entry 3) 分子量分布は制御された(PDI=1.34)。2mMの量は 、TIの分子量(約560)を考慮すると、スチレン ノマー溶液中の約0.135重量%に相当する。こ 量は、後述する非特許文献1に記載された実 例において使用された触媒の量(8.9重量%)に べて、およそ65分の1である。このように極 て少量でリビングラジカル重合反応を行え ことから、触媒の活性が極めて高いことが 認された。ハロゲン化アルキルとして、PE-I に代え、CP-I(化学構造式は上述のとおり)を用 いることもできた(entry 4)。

 比較例1、すなわち、触媒を含まない系で は、Mw/Mnは1.55であり、本発明の触媒を用いた スチレンの重合実験結果よりも分子量分布が 広かった(entry C1)。分子量分布の制御は触媒 作用によると言える。生成したポリマーの クティシティから本重合がラジカル重合で ることを確認した。

 
モノマー:スチレン(St)
モノマー濃度:8M(バルク)
ハロゲン化アルキル(R-I): 1-phenylethyl iodide(PE- I)、2-ヨード-2-シアノプロピル(CP-I)
ラジカル開始剤(I):2,2’-azobis(2,4,4-trimethylpentan e)(VR110)、t-butyl peroxybenzoate(BPB)、過酸化ベン イル(BPO)
触媒:ヨウ化チモール(TI)
M n およびPDI:テトラヒドロフラン(THF)を溶出液と するゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を用いて たポリスチレン(PSt)換算分子量と分子量分 指数。

 (実施例2)
[アルコール(前駆体型触媒)を用いたスチレン (St)の単独重合]
 表2(entries 1-40)に示すように、反応材料およ び反応条件を変更した以外は、実施例1と同 に、スチレン(St)の重合を行った。

 実施例1と同様の系で、ただし、酸素のヨ ウ化物であるヨウ化チモール(TI)に代わり、 素の水素化物であるアルコールR-OHを触媒の 駆体として使用した(スキーム2)。この重合 は、ラジカル開始剤の解裂により生成した ジカル、あるいはそれに由来して生成した 長ラジカル(polymer・)がR-OHの水素を引き抜き 、活性化ラジカルであるR-O・が生成する(ス ーム2a)。この酸素ラジカルの作用により可 的活性化が成立する(スキーム2b)。

 本実施例では、触媒(化学構造式は上述した とおり)として、2,4,6-trimethyl phenol(2,4,6-Me)、2, 6-di-t-butyl-4-methyl phenol(2,6-tBu-4-Me(BHT))、2,4-dimet hyl phenol(2,4-Me)、2-isopropyl-5-methyl phenol(2-iPr-5-M e)、2,6-di-t-butyl-4-methoxy phenol(2,6-tBu-4-MeO(BHA))、 2,6-dimethoxy-4-methyl(2,6-MeO-4-Me)、2,6-dimethyl-4-cyano phenol(2,6-Me-4-CN)、4-nitro phenol(4-NO 2 )、フェノール、ビタミンE、ビタミンC、ヒド ロキノン、レゾルシノール、カテコール、ヒ ドロキシヒドロキノン、尿酸、モリン水和物 を用いた。これらの酸素の水素化物は、ヨウ 化物(TIなど)に比べて、水や光に対する安定 が高く、重合溶液の調製に際して、より簡 な操作をもたらしうる。そして、極めて安 である。

 2,4,6-Meを触媒として用いたスチレンの重合 果を表2(entries 1-5)および図2AおよびB(●)と図 3AおよびB(●)に示す。5mMという少量の触媒で M n は重合率にほぼ比例し、PDIは重合初期から1.2 程度と小さく、重合はよく制御された。ラジ カル開始剤には、2,2’-azobis(2,4,4-trimethylpentane )(VR110)(表2(entry 1、3)および図2AおよびB)や、t- butyl peroxybenzoate(BPB)(表2(entry 2、4)および図3A よびB)を用いることができた。BPBの分解はVR 110より速く、BPBを用いると、重合をより高速 で行うことができ、例えば、7時間で、重合 は65%と高重合率に達し、M n およびPDIはそれぞれ6500、1.15であった。この うに、PDIを制御したまま、重合を高速で行 ことができた。ハロゲン化アルキルとして PE-I(entries 1、2)およびCP-I(entries 3-5)を用い ことが有効であった。重合は、100℃におい 制御され(entries 1-4)、そしてまた、より低い 温度、すなわち80℃においても制御された(ent ry 5)。

 2,4,6-Me(entries 1-5)よりも嵩高い2,6-tBu-4-Me(BHT)( entries 6-9)や、嵩高さの小さい2,4-Me(entries 5と 6)を用いても、分子量分布を高度に制御する とができた(PDI=1.19-1.43)。また、2-iPr-5-Me(チ ール)(entry 13)を用いることもできた。電子 与基をもつ2,6-tBu-4-MeO(BHA)(entries 14-16)や2,6-MeO -4-Me(entries 17-19)、また、電子吸引基をもつ2,6 -Me-4-CN(entries 20,21)や4-NO 2 (entry 22)を用いることもできた。BHTやBHAは食 添加物にも広く利用される、汎用で極めて 全性の高い化合物である。さらに、構造が もシンプルな無置換のフェノール(entries 23- 26)や、天然物で無毒のチモール(香草のタイ の香り成分)(上記(entry 13))、ビタミンE(entries  27-30)やビタミンC(entries 31-34)を用いること できた。いずれの触媒を用いた場合も、BPB 用いると、重合を高速で行うことができ、 えば、7時間で、重合率は68-84%に達した。
 さらに、水酸基を複数有する化合物を用い ことができた。上述のビタミンCのほかに、 例えば、水酸基を2つ有する化合物として、hy droquinone(entry 35)、resorcinol(entry 36)、catechol(ent ry 37)、および4-t-butyl hydroquinone(entry 38)を使 することができ、いずれも2.5mM(水酸基濃度 5mM)の微量で、PDI=1.16-1.25の分子量分布の狭 ポリマーが得られた。水酸基を3つ有する化 物として、例えば、hydroxyhydroquinone(entry 39) よびUric acid(尿酸)(entry 40)を利用すること でき、水酸基を5つ有する化合物として、天 フラボノールのMorin hydrate(entry 41)を利用す ることができた。
 以上のように、18種のアルコール(酸素の水 化物)を触媒として用いることにより、スチ レンの重合の制御に成功した。なお、重合に 適したアルコールはこの18種に限らない。

 (表2)
 

 
 
 
モノマー:スチレン(St)
モノマー濃度:8M(バルク)
ハロゲン化アルキル(R-I):1-phenylethyl iodide(PE-I) 、2-ヨード-2-シアノプロピル(CP-I)
ラジカル開始剤(I):2,2’-azobis(2,4,4-trimethylpentan e)(VR110)、t-butyl peroxybenzoate(BPB)
触媒:2,4,6-trimethyl phenol(2,4,6-Me)、2,6-di-t-butyl-4- methyl phenol(2,6-tBu-4-Me(BHT))、2,4-dimethyl phenol(2,4 -Me)、2-isopropyl-5-methyl phenol(2-iPr-5-Me)、2,6-di-t-b utyl-4-methoxy phenol(2,6-tBu-4-MeO(BHA))、2,6-dimethoxy-4 -methyl(2,6-MeO-4-Me)、2,6-dimethyl-4-cyano phenol(2,6-Me- 4-CN)、4-nitro phenol(4-NO 2 )、フェノール、ビタミンE、ビタミンC、ヒド ロキノン、レゾルシノール、カテコール、4-t -ブチルカテコール、ヒドロキシヒドロキノ 、尿酸、モリン水和物
M n およびPDI:テトラヒドロフラン(THF)を溶出液と するゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を用いて たポリスチレン(PSt)換算分子量と分子量分 指数。

 (実施例3)
[ハロゲン化アルキルのin situ合成を利用した スチレン(St)のアルコール(前駆体型触媒)を用 いた単独重合]
 実施例2と同様の系で実験を行った。ただし 、ヨウ化アルキルとして単離精製した2-ヨー -2-シアノプロピル(CP-I)に代え、その原料と るアゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)とヨ 素(I 2 )を仕込み化合物として用い、スチレン(St)の ルク単独重合を、2,4,6-Meを触媒(前駆体)とし て用いて80℃で行った(表3)。CP-Iの生成過程を スキーム4に示す。AIBNの分解により、2-シア プロピルラジカル(CP・)が生成する。CP・はI 2 と反応し、CP-Iを与える。AIBNは、I 2 との反応が完了したのち、その残存分が(成 ラジカルを与える)ラジカル開始剤として作 する。AIBNが(I 2 と反応しうる)フリーのCP・を与える効率は60% 程度であり、AIBNは、I 2 に比べ過剰に(2当量)添加した。
 (スキーム4)
 
 表3(entry 1)に示す条件では、最初の0.5時間 、重合が進行しなかった。この間にAIBNの一 分が分解し、分解生成物がヨウ素と反応し CP-Iが生成した。0.5時間でI 2 はすべて消費された。その後、このCP-Iと、 存したAIBN、および触媒(前駆体)として用い 2,4,6-Meを含む重合がスタートし、分子量分布 の狭いポリマーが得られた。その分子量は、 I 2 から定量的にCP-Iの生成したとき(40mMのI 2 から80mMのCP-Iが生成したとき)の理論値とほぼ 一致した。
 
モノマー:スチレン(St)
モノマー濃度:8M(バルク)
ラジカル開始剤(I):アゾビスイソブチロニト ル(AIBN)
触媒:2,4,6-trimethyl phenol(2,4,6-Me)
M n およびPDI:テトラヒドロフラン(THF)を溶出液と するゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を用いて たポリスチレン(PSt)換算分子量と分子量分 指数

 (実施例4)
[ヨウ化チモール(触媒)を用いたメタクリル酸 メチル(MMA)の単独重合]

 スチレン(実施例1)に代え、MMAの重合を行っ 。この実験では、ハロゲン化アルキルとし 2-ヨード-2-シアノプロピル(CP-I:化学構造式 上述のとおり)を用いた。重合は、ラジカル 始剤に2,2’-azobis(2,4,4-trimethylpentane)(VR110)を 触媒にヨウ化チモール(TI)を用いて95℃で行 た。モノマー濃度は8Mであった。結果を表4(e ntry 1)に示す。CP-Iを80mM、VR110を40mM、触媒を15 mM用いたところ、例えば、4hで、重合率は37% なり、M n =3800、PDI=1.37の分子量分布の狭いポリマーが られた。このように、TIを用いてMMAの重合を 制御することができた。

モノマー:メタクリル酸メチル(MMA)
モノマー濃度:8M(バルク)
ハロゲン化アルキル(R-I):2-ヨード-2-シアノプ ピル(CP-I)
ラジカル開始剤(I):2,2’-azobis(2,4,4-trimethylpentan e)(VR110)
触媒:ヨウ化チモール(TI)
M n およびPDI:テトラヒドロフラン(THF)を溶出液と するゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を用いて たポリメタクリル酸メチル(PMMA)換算分子量 分子量分布指数。

 (実施例5)
 [アルコール(前駆体型触媒)を用いたメタク ル酸メチル(MMA)の単独重合]
 アルコールを触媒(前駆体)として用いて、 タクリル酸メチル(MMA)の重合を行った(表5お び図4AおよびB)。ヨウ化アルキルとして2-ヨ ド-2-シアノプロピル(CP-I)(80mM)を、ラジカル 始剤としてdi(4-tert-butylcyclohexyl) peroxydicarbona te(PERKADOX16)(80mM)を、触媒として2,4,6-trimethyl ph enol(2,4,6-Me)(10mM)を用いて80℃で重合を行った ころ、例えば、30分で、重合率は79%と高重合 率に達し、Mn=6900、PDI=1.30の分子量分布の狭い ポリマーが得られた(表5(entry 1)および図4Aお びB(●))。このように、重合を高速で行いな がら、分子量分布の良好な制御に成功した。 なお、表5の重合時間の単位は分であること 留意いただきたい。

 同様に、2,6-di-t-butyl-4-methyl phenol(2,6-tBu-4-M e(BHT))(entry 2)や2,6-di-t-butyl-4-methoxy phenol(2,6-tBu -4-MeO(BHA))(entries 3、4)、また無置換のフェノ ル(entry 5)、さらには天然物のビタミンE(entri es 6-9)やビタミンC(entry 10)を用いて、分子量 布を制御することもできた。複数の水酸基 もつ化合物として、例えば、二つの水酸基 もつhydroquinone(entry 11)、catechol(entry 12)、お び2-methoxy hydroquinone(entry 13)を用いることも できた。CP-Iの濃度を下げることにより、Mnを 上げることもできた(entry 9)。また、いずれ 触媒を用いた場合も、PERKADOX16や2,2’-azobis(4- methoxy-2,4-dimethylvaleronitrile)(V70)を用いることに より、重合を高速で行うことができ、実施例 の条件では、いずれの場合も、1時間以内に 合率は59%以上に達した。以上のように、9種 アルコール(酸素の水素化物)を触媒として いて、MMAの重合の制御に成功した。なお、 合に適したアルコールはこの9種に限らない

モノマー:メタクリル酸メチル(MMA)
モノマー濃度:8M(バルク)
ハロゲン化アルキル(R-I):2-ヨード-2-シアノプ ピル(CP-I)
ラジカル開始剤(I):di(4-tert-butylcyclohexyl) peroxyd icarbonate(PERKADOX16)、2,2’-azobis(4-methoxy-2,4-dimethy lvaleronitrile)(V70)
触媒:2,4,6-trimethyl phenol(2,4,6-Me)、2,6-di-t-butyl-4- methyl phenol(2,6-tBu-4-Me(BHT))、2,6-di-t-butyl-4-methoxy  phenol(2,6-tBu-4-MeO(BHA))、フェノール、ビタミ E、ビタミンC、hydroquinone、catechol、2-methoxy hy droquinone
M n およびPDI:テトラヒドロフラン(THF)を溶出液と するゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を用いて たポリメタクリル酸メチル(PMMA)換算分子量 分子量分布指数。

 (実施例6)
 [アルコール(前駆体型触媒)を用いたメタク ル酸ベンジル(BzMA)の単独重合]
 アルコールを触媒(前駆体)として用いて、 タクリル酸ベンジル(BzMA)の重合を行った(表6 )。ヨウ化アルキルとして2-ヨード-2-シアノプ ロピル(CP-I)(80mM)を、ラジカル開始剤としてdi( 4-tert-butylcyclohexyl) peroxydicarbonate(PERKADOX16)(80mM) を、触媒としてcatechol(30mM)を、catecholから生 する酸素中心ラジカルをヨウ素化して重合 制御能を高めるための添加剤としてI 2 (3mM)を用いて80℃で重合を行ったところ、例 ば、30分で、重合率は60%と高重合率に達し、 M n =12600、PDI=1.17の分子量分布の狭いポリマーが られた(表6(entry 1))。また、添加剤I 2 の濃度を1mMに減らしても、分子量分布を制御 (PDI=1.31)することができた(entry 2)。catecholの 度を30mMから、10mM(entry 3)、さらには5mM(entry  4)へと減らしても、良好な分子量分布の制御 達成された。例えば、entry 3の条件では、10 分で、重合率は83%と高重合率に達し、M n =11600、PDI=1.32の分子量分布の狭いポリマーが られた。このように、重合を高速で行いな ら、分子量分布の良好な制御に成功した。 お、表6の重合時間の単位は分であることに 留意いただきたい。
 
モノマー:メタクリル酸ベンジル(BzMA)
モノマー濃度:8M(バルク)
ハロゲン化アルキル(R-I):2-ヨード-2-シアノプ ピル(CP-I)
ラジカル開始剤(I):di(4-tert-butylcyclohexyl) peroxyd icarbonate(PERKADOX16)
触媒:catechol
M n およびPDI:テトラヒドロフラン(THF)を溶出液と するゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を用いて 多角光散乱(MALLS)検出器により決定した分子 量と分子量分布指数。

 (実施例7)
 [アルコール(前駆体型触媒)を用いたメタク ル酸グリシジル(GMA)の単独重合]
 アルコールを触媒(前駆体)として用いて、 タクリル酸グリシジル(GMA)の重合を行った( 7)。ヨウ化アルキルとして2-ヨード-2-シアノ ロピル(CP-I)(80mM)を、ラジカル開始剤としてd i(4-tert-butylcyclohexyl) peroxydicarbonate(PERKADOX16)(80m M)を、触媒としてcatechol(10mM)を、重合の制御 を高めるための添加剤としてI 2 (1mM)を用いて80℃で重合を行ったところ、M n =6700、PDI=1.39の分子量分布の狭いポリマーが られた(表7(entry 1))。
 
モノマー:メタクリル酸グリシジル(GMA)
モノマー濃度:8M(バルク)
ハロゲン化アルキル(R-I):2-ヨード-2-シアノプ ピル(CP-I)
ラジカル開始剤(I):di(4-tert-butylcyclohexyl) peroxyd icarbonate(PERKADOX16)
触媒:catechol
M n およびPDI:テトラヒドロフラン(THF)を溶出液と するゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を用いて 多角光散乱(MALLS)検出器により決定した分子 量と分子量分布指数。
 

(実施例8)
 [アルコール(前駆体型触媒)を用いたメタク ル酸ポリエチレンオキシド(PEGMA)の単独重合 ]
 アルコールを触媒(前駆体)として用いて、 タクリル酸ポリエチレンオキシド(PEGMA)(分子 量(M.W.)=246)の重合を行った(表8)。ヨウ化アル ルとして2-ヨード-2-シアノプロピル(CP-I)(80mM )を、ラジカル開始剤としてdi(4-tert-butylcyclohex yl) peroxydicarbonate(PERKADOX16)(80mM)を、触媒とし catechol(10mM)を用いて80℃で重合を行ったとこ 、M n =10200、PDI=1.18の分子量分布の狭いポリマーが られた(表8(entry 1))。
 
モノマー:メタクリル酸グリシジル(PEGMA)
モノマー濃度:8M(バルク)
ハロゲン化アルキル(R-I):2-ヨード-2-シアノプ ピル(CP-I)
ラジカル開始剤(I):di(4-tert-butylcyclohexyl) peroxyd icarbonate(PERKADOX16)
触媒:catechol
M n およびPDI:ジメチルホルムアミド(DMF)を溶出液 とするゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を用い 、多角光散乱(MALLS)検出器により決定した分 子量と分子量分布指数。
 

(実施例9)
 [アルコール(前駆体型触媒)を用いたメタク ル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)の単独重合]
 アルコールを触媒(前駆体)として用いて、 タクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)(4M)の溶 重合を行った(表9)。ヨウ化アルキルとして2- ヨード-2-シアノプロピル(CP-I)(40mM)を、ラジカ ル開始剤としてdi(4-tert-butylcyclohexyl) peroxydicar bonate(PERKADOX16)(40mM)を、触媒としてcatechol(15mM) 、溶媒としてメチルエチルケトン(MEK)(35vol%) および1-プロパノール(15vol%)を含む溶液重合( ノマー50vol%)を80℃で行ったところ、M n =7000、PDI=1.36の分子量分布の狭いポリマーが られた(表9(entry 1))。
 
モノマー:メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HE MA)
モノマー濃度:4M(50vol%)(溶液重合)
溶媒:メチルエチルケトン(MEK)(35vol%)、1-プロ ノール(15vol%)
ハロゲン化アルキル(R-I):2-ヨード-2-シアノプ ピル(CP-I)
ラジカル開始剤(I):di(4-tert-butylcyclohexyl) peroxyd icarbonate(PERKADOX16)
触媒:catechol
M n およびPDI:ジメチルホルムアミド(DMF)を溶出液 とするゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を用い 、多角光散乱(MALLS)検出器により決定した分 子量と分子量分布指数。
 

(実施例10)
 [アルコール(前駆体型触媒)を用いたメタク ル酸メチル(MMA)とメタクリル酸2-ヒドロキシ エチル(HEMA)のランダム共重合]
 アルコールを触媒(前駆体)として用いて、 タクリル酸メチル(MMA)とメタクリル酸2-ヒド キシエチル(HEMA)のランダム共重合を溶液重 (総モノマー濃度4Mとした)で行った(表10)。 ノマーの組成はそれぞれ、50モル%とした。 ウ化アルキルとして2-ヨード-2-シアノプロピ ル(CP-I)(40mM)を、ラジカル開始剤としてdi(4-tert -butylcyclohexyl) peroxydicarbonate(PERKADOX16)(40mM)を、 触媒としてcatechol(15mM)を、溶媒としてメチル チルケトン(MEK)(35vol%)および1-プロパノール( 15vol%)を含む溶液重合(モノマー50vol%)を80℃で ったところ、M n =5000、PDI=1.27の分子量分布の狭いポリマー(ラ ダム共重合体)が得られた(表10(entry 1))。
 
モノマー:メタクリル酸メチル(MMA),メタクリ 酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)
モノマー濃度:4M(50vol%)(溶液重合)
溶媒:メチルエチルケトン(MEK)(35vol%)、1-プロ ノール(15vol%)
ハロゲン化アルキル(R-I):2-ヨード-2-シアノプ ピル(CP-I)
ラジカル開始剤(I):di(4-tert-butylcyclohexyl) peroxyd icarbonate(PERKADOX16)
触媒:catechol
M n およびPDI: ジメチルホルムアミド(DMF)を溶出 とするゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を用 て得たポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)換算分 子量と分子量分布指数。
 

(実施例11)
 [アルコール(前駆体型触媒)を用いたメタク ル酸メチル(MMA)とメタクリル酸(MAA)のランダ ム共重合]
 アルコールを触媒(前駆体)として用いて、 タクリル酸メチル(MMA)とメタクリル酸(MAA)の ンダム共重合を行った(表11)。モノマーの組 成はそれぞれ、75モル%、25モル%とした。ヨウ 化アルキルとして2-ヨード-2-シアノプロピル( CP-I)(80mM)を、ラジカル開始剤としてdi(4-tert-but ylcyclohexyl) peroxydicarbonate(PERKADOX16)(80mM)を、触 としてcatechol(20mM)を用いて80℃で重合を行っ たところ、M n =3400、PDI=1.38の分子量分布の狭いポリマー(ラ ダム共重合体)が得られた(表11(entry 1))。
 
モノマー:メタクリル酸メチル(MMA),メタクリ 酸(MAA)
モノマー濃度:8M(バルク)
ハロゲン化アルキル(R-I):2-ヨード-2-シアノプ ピル(CP-I)
ラジカル開始剤(I):di(4-tert-butylcyclohexyl) peroxyd icarbonate(PERKADOX16)
触媒:catechol
M n およびPDI:テトラヒドロフラン(THF)を溶出液と するゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を用いて たポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)換算分子 と分子量分布指数。
 

 (実施例12)
 アルコール(前駆体型触媒)を用いたアクリ 酸n-ブチル(BA)とスチレン(St)のランダム共重
 アクリル酸n-ブチル(BA)とスチレン(St)のラン ダム共重合を、アルコールを触媒(前駆体)と て用いて行った(表5)。ヨウ化アルキルとし 1-phenylethyl iodide(PE-I)を、ラジカル開始剤と てt-butyl peroxybenzoate(BPB)を、触媒として2,4,6- trimethyl phenol(2,4,6-Me)を用い、100℃で重合を行 った。5mMの触媒で、分子量分布の狭いポリマ ー(ランダム共重合体)が得られた(表12(entry 1) )。

モノマー:アクリル酸n-ブチル(BA)、スチレン(S t)
モノマー濃度:8M(バルク)
ハロゲン化アルキル(R-I):1-phenylethyl iodide(PE-I)
ラジカル開始剤(I):t-butyl peroxybenzoate(BPB)
触媒:2,4,6-trimethyl phenol(2,4,6-Me)
M n およびPDI:テトラヒドロフラン(THF)を溶出液と するゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を用いて たポリスチレン(PSt)換算分子量と分子量分 指数。

 (実施例13)
[アルコール(前駆体型触媒)を用いたアクリル 酸n-ブチル(BA)とメタクリル酸メチル(MMA)のラ ダム共重合]

 アクリル酸n-ブチル(BA)とメタクリル酸メチ (MMA)のランダム共重合を、アルコールを触 (前駆体)として用いて行った(表13)。ヨウ化 ルキルとして2-ヨード-2-シアノプロピル(CP-I) を、ラジカル開始剤としてdi(4-tert-butylcyclohexy l) peroxydicarbonate(PERKADOX16)を、触媒としてビタ ミンEを用い、80℃で重合を行った結果、分子 量分布の狭いポリマー(ランダム共重合体)が られた(表13(entry 1))。なお、表13の重合時間 の単位は分であることに留意いただきたい。

モノマー:アクリル酸n-ブチル(BA)、メタクリ 酸メチル(MMA)
モノマー濃度:8M(バルク)
ハロゲン化アルキル(R-I):2-ヨード-2-シアノプ ピル(CP-I)
ラジカル開始剤(I):di(4-tert-butylcyclohexyl) peroxyd icarbonate(PERKADOX16)
触媒:ビタミンE
M n およびPDI:テトラヒドロフラン(THF)を溶出液と するゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を用いて たポリメタクリル酸メチル(PMMA)換算分子量 分子量分布指数。

 (実施例14)
[アルコール(前駆体型触媒)を用いたメタクリ ル酸メチル(MMA)(単独重合:第一ブロック)と、 タクリル酸ベンジル(BzMA)(単独重合:第二ブ ック)のブロック共重合]
 アルコールを触媒(前駆体)として用いて、 タクリル酸ベンジル(BzMA)の重合を行った。 ウ化アルキルとしてポリメタクリル酸メチ -ヨウ素付加体(PMMA-I)(M n =2700およびPDI=1.15)(80mM)を、ラジカル開始剤と てdi(4-tert-butylcyclohexyl) peroxydicarbonate(PERKADOX1 6)(80mM)を、触媒としてcatechol(10mM)を、重合の 御能を高めるための添加剤としてI 2 (2mM)を用いて80℃で重合を行ったところ、10分 で、重合率は84%と高重合率に達し、M n =12300、PDI=1.33の狭い分子量分布を有すブロッ コポリマー(PMMA-b-PBzMA)が得られた(表14(entry  1))。なお、ここでPBzMAは、ポリベンジルメタ リレートである。
 
モノマー:メタクリル酸ベンジル(BzMA)
モノマー濃度:8M(バルク)
ハロゲン化アルキル(R-I):ポリメタクリル酸メ チル-ヨウ素付加体(PMMA-I)(M n =2700およびPDI=1.15)
ラジカル開始剤(I):di(4-tert-butylcyclohexyl) peroxyd icarbonate(PERKADOX16)
触媒:catechol
M n およびPDI:テトラヒドロフラン(THF)を溶出液と するゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を用いて たポリメタクリル酸メチル(PMMA)換算分子量 分子量分布指数
 

 (実施例15)
[アルコール(前駆体型触媒)を用いたメタクリ ル酸メチル(MMA)(単独重合:第一ブロック)と、 タクリル酸ベンジル(BzMA)(単独重合:第二ブ ック)のブロック共重合-MMAとBzMAの逐次添加]
 メタクリル酸メチル(MMA)の単独重合を第一 ロックとし、MMAおよびメタクリル酸ベンジ (BzMA)のランダム共重合を第二ブロックとす ブロック共重合を、アルコールを触媒(前駆 )として用いて行った。第一ブロックとして 、MMA(6M)の溶液重合(トルエン25vol%)を、ヨウ化 アルキルとして2-ヨード-2-シアノプロピル(CP- I)(60mM)を、ラジカル開始剤としてdi(4-tert-butylc yclohexyl) peroxydicarbonate(PERKADOX16)(60mM)を、触媒 してcatechol(7.5mM)を、重合の制御能を高める めの添加剤としてI 2 (1.5mM)を用いて80℃で10分重合をおこなったと ろ、重合率は21%となり、M n =3400、PDI=1.29のポリメタクリル酸メチル-ヨウ 付加体(PMMA-I)が生成した。この溶液に(PMMA-I 単離精製することなく)、BzMAとPERKADOX16(BzMA 0.005当量)を添加し、80℃で重合を行った。こ れにより、第二ブロックとして、MMA(第一ブ ック時の未重合モノマー)とBzMAのランダム共 重合が生じ、分子量分布の狭いPMMA-ブロック- (PMMA-ランダム-PBzMA)が生成した(表15(entry 1))。 なお、PBzMAはポリメタクリル酸ベンジルを表 。
 
モノマー:メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリ ル酸ベンジル(BzMA)
モノマー濃度:第一モノマーの重合において 6M(溶液重合(75vol%モノマー))
溶媒:第一モノマーの重合において、トルエ (25vol%)
ハロゲン化アルキル(R-I):2-ヨード-2-シアノプ ピル(CP-I)
ラジカル開始剤(I):di(4-tert-butylcyclohexyl) peroxyd icarbonate(PERKADOX16)
触媒:catechol
M n およびPDI:テトラヒドロフラン(THF)を溶出液と するゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を用いて たポリメタクリル酸メチル(PMMA)換算分子量 分子量分布指数。
 

 (実施例16)
[アルコール(前駆体型触媒)を用いたメタクリ ル酸ベンジル(BzMA)のシリコン基板表面からの 表面グラフト重合]
 6-(2-bromo-2-isobutyloxy)hexyltriethoxysilane(BHE:スキ ム5)(6.2g:15 mmol)とNaI(11.23g:75mmol)を脱水アセト ン(100mL)中、50℃で2日撹拌した。クロロホル を添加し、析出したNaI(NaBrを含む)を濾過し 。ろ液を真空乾燥させ、6-(2-iodo-2-isobutyloxy)he xyltriethoxysilane(IHE:スキーム5)を98%の収率で得 。
 (スキーム5:ビタミンEを用いた表面開始グラ フト重合)
 
 シリコン基板を、IHE(1wt%)とNH 3 (1wt%)のテトラヒドロフラン(THF)溶液に、12時 浸漬し、シリコン基板表面にIHEを固定化し 。
 モノマーとしてメタクリル酸ベンジル(BzMA)( 3g(6M))、溶媒としてトルエン(1g)、ヨウ化アル ルとして2-ヨード-2-シアノプロピル(CP-I)(0.05 85g(60mM))、ラジカル開始剤としてdi(4-tert-butylcy clohexyl) peroxydicarbonate(PERKADOX16)(0.120g(60mM))、お よび触媒としてビタミンE(0.0161g(10mM))を含む 液に、IHEを固定化したシリコン基板を浸漬 、80℃で8分加熱した(表16(entry 1))。溶液中で 生成したフリーの(基板に固定化されていな )ポリマーのM n は13000、PDIは1.45となり、分子量分布の狭いポ リマーが得られた。
 基板表面から成長したグラフトポリマーの 厚は13nmであった。フリーポリマーとグラフ トポリマーの分子量と分子量分布は、ほぼ等 しいことが既往の事例で分かっており、これ より、グラフトポリマーの表面密度は0.48chain s/nm 2 と算出された。この表面密度は、濃厚領域に 達する非常に高いものである。以上により、 分子量分布の制御された濃厚ポリマーブラシ (濃厚領域にあるグラフトポリマー層)の作成 成功した。また、シリコン基板にIHEを固定 する際に、パターニング(図5(a))をほどこす とにより(図5(a)の丸がIHEを表す)、濃厚ポリ ーブラシの二次元パターン形成をすること できた(図5(b))。
 
モノマー:メタクリル酸ベンジル(BzMA)
モノマー濃度:6M(溶液重合(モノマー75vol%)
溶媒:トルエン
ハロゲン化アルキル(R-I):2-ヨード-2-シアノプ ピル(CP-I)およびシリコン基板に固定化され 6-(2-iodo-2-isobutyloxy)hexyltriiethoxysilane(IHE)
ラジカル開始剤(I):di(4-tert-butylcyclohexyl) peroxyd icarbonate(PERKADOX16)
触媒:ビタミンE
M n およびPDI:テトラヒドロフラン(THF)を溶出液と するゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を用いた リメタクリル酸メチル(PMMA)換算分子量と分 量分布指数。

 (比較例2)
 以下の配合を用いた以外は、実施例1と同様 に、重合実験を行った。
モノマー:スチレン、8.0M(1g)
ハロゲン化アルキル:1-フェニルエチルブロミ ド、80mM(0.016g)
          (以下の表中では「PEB」と略す )
触媒:CuBr 5mM(0.00071g)
配位子:4,4’-ジ-(5-ノニル)-2,2’-ビピリジン 1 0mM(0.0035g)
    (以下の表中では「dHbipy」と略す)
 配位子はCuBr(触媒)をモノマーに溶かすため 必ず必要であり、dHbipyの場合、CuBrに対して 2当量必要である。この実験の触媒濃度(CuBr錯 体濃度)は5mMである。なお、この実験におい は、過酸化物を用いなかった。銅錯体触媒 場合には過酸化物を用いないことが当業者 技術常識であったからである。その理由は (1)銅錯体触媒の場合には、過酸化物を用い くてもラジカル反応が開始されること、お び、(2)銅錯体触媒に過酸化物を加えると、 長種の失活反応が起こってしまって却って 子量分布が広くなってしまうことである。 体的には、例えば、上記非特許文献1におい も、過酸化物を含まない反応原料が用いら ることが記載されている。

 これらの原料をモノマーに溶解して反応 液とした。この反応溶液を、80℃に加熱し 。結果は以下のとおりであった。

 PEB:1-フェニルエチルブロミド
 dHbipy:CuBrをモノマー(スチレン)に溶かすため の配位子。

 この結果、実施例1におけるスチレンの重合 率と比較して、重合率がかなり低かった。ま た、反応後のMnは1200~1400であって著しく低く 高分子量のポリスチレンが得られなかった またMw/Mnの値(PDI)も、実施例1における本発 の触媒における値よりもかなり大きくなっ いる。従って、遷移金属触媒の活性が、本 明の触媒の活性に比べて著しく劣ることが 解される。

 この比較例2の結果と、実施例1の結果と 対比からも理解されるとおり、本発明の触 は、先行技術における遷移金属錯体触媒に べて、著しく活性が高い。

 上記の実施例は、先行技術に開示された 行技術の触媒の性能と比べても本発明が優 ることを示している。

 例えば、上述した非特許文献1に記載された 実験例では、以下の反応溶液を反応させる:
スチレン 8.7 M (1 g)
1-フェニルエチルブロミド 87 mM (0.016 g)
CuBr 87 mM (0.013 g)
4,4’-ジ-(5-ノニル)-2,2’-ビピリジン 174 mM (0 .076 g)
この反応溶液を110℃で7時間加熱して、ポリ ーを得ている。モノマー1gに対して、錯体化 合物を0.089g、すなわち、モノマーに対して8.9 重量%という多量の触媒を用いている。

 本発明においては、この例と比較して、 媒使用量を格段に減らすことができ、反応 度を10~40℃下げることができ、かつ、配位 を用いる必要もない。

 以上のように、本発明の好ましい実施形 を用いて本発明を例示してきたが、本発明 、この実施形態に限定して解釈されるべき のではない。本発明は、特許請求の範囲に ってのみその範囲が解釈されるべきである とが理解される。当業者は、本発明の具体 な好ましい実施形態の記載から、当業者の 術常識に基づいて特許請求の範囲と等価な 囲を理解することができる。本明細書にお て引用した特許、特許出願および文献は、 の内容自体が具体的に本明細書に記載され いるのと同様にその内容が本明細書に対す 参考として援用されるべきであることが理 される。

 上述したとおり、本発明者らは、酸素原 を触媒の中心原子として利用した新しいタ プのリビングラジカル重合方法(精密制御ラ ジカル重合)を発明した。その特徴は、触媒 低毒性、低使用量、高溶解性(配位子が不要) 、温和な反応条件、無着色・無臭(重合反応 の処理が不要)などにあり、従来のリビング ジカル重合に比べて格段に環境に優しく経 性に優れる。

 世界の高分子化合物生産量の半分以上は ジカル重合によるが、リビングラジカル重 は、各種高付加価値材料の生産に応用でき 。具体的には、例えば、熱可塑性エラスト ー(自動車材料、工業用品、医療材料、履物 、スポーツ用品、玩具、電線被覆材、建設・ 土木資材、樹脂改質など)レジスト、有機EL、 接着剤、ポリマーアロイ、各種フィラー添加 剤、潤滑剤、界面活性剤、塗料、インク、包 装材、薬剤(例えば、医薬除放材)、パーソナ ケア製品(化粧品、整髪料など)などの生産 応用でき、市場規模は極めて大きい。本発 のリビングラジカル重合は、新しい電子材 、光学材料、分離材料、または生体材料を 産する優れたプロセスとして幅広く利用さ 得る。

 リビングラジカル重合の実用化にあたり 従来技術の大きな問題点は、その高い触媒 コストであった。すなわち、リビングラジ ル重合を行った場合、触媒は得られるポリ ー中に取り込まれた状態になってしまうた 、その触媒をポリマーから回収することは 常に手間がかかり、結果としてプロセスの 用を莫大なものにしてしまい、現実的では い。このため、現実的には、触媒を回収し 再利用することは困難であり、実質的に触 を使い捨てにすることが実情である。

 本発明者らは、安価な酸素化合物がリビ グラジカル重合の優れた触媒として作用す ことを発見し、従来技術に比べて、はるか 低コストのリビングラジカル重合を実現し 。具体的には、1kgのポリマーを合成するの 必要な触媒の費用をアルドリッチ社のカタ グに記載された価格に基づいて計算すると 例えば、従来型触媒で最もよく利用されて る銅錯体触媒では、触媒の費用がおよそ数 円になる。また、ゲルマニウム触媒を用い も約千円程度の費用がかかるのに対し、本 明では、例えば、酸素のヨウ化物の触媒の 合、数十円から数円の費用しかかからない さらに安価な塩化物等の触媒を用いれば、 媒費用はさらに低減される。さらに安価な 素化物(アルコール)を用いれば、触媒費用 さらに低減される。例えば、実施例に示し アルコール系化合物の触媒の場合、数円か 数銭の費用しかかからない。すなわち、本 明によれば、従来の触媒に比べて桁違いに 用を低減させることが可能なのである。

 汎用的な様々なモノマーの価格が一般に1 kgあたり100円~数百円程度であることを考慮す ると、従来技術においてはモノマーの費用の 10倍程度の触媒費用が必要であったのに対し 、本発明では、モノマーの費用の10分の1あ いは100分の1程度しか触媒費用を必要としな いのであって、その費用削減効果は劇的であ る。

 さらに、触媒の低毒性(あるいは無毒性)、 溶解性(配位子が不要)、温和な反応条件、無 着色・無臭(重合反応後の処理が不要)といっ ゲルマニウム触媒がもつ利点を、本発明の 素を中心元素とする触媒および触媒前駆体 すべて保持している。そして、ゲルマニウ 触媒において達成されている少触媒量をさ に下回る(例えば1/3の)触媒量で重合の制御 可能である。ゲルマニウム触媒(ヨウ化物)は やや水分と光に弱いが、酸素を中心元素とす る触媒および触媒前駆体は水分と光に極めて 強く、重合操作をさらに容易にする。このよ うに、本発明は、従来法にはない高い環境安 全性と、従来法をはるかに凌ぐ優れた経済性 と高い簡便性を併せもち、実用性に極めて富 む。