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Title:
COMPOSITION FOR REPAIRING DEFECT IN SKIN OR GINGIVAL SOFT TISSUE AND METHOD OF CULTURING AUTOLOGOUS FIBROBLASTS
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/136183
Kind Code:
A1
Abstract:
[PROBLEMS] To provide a method of producing an autologous fibroblast aggregate for producing autologous fibroblasts having been aggregating in a fibrous state, and an aggregate produced by this method. To provide a composition for repairing a defect in a skin or gingival soft tissue which can remain in the area to be treated over a long period of time and thus exhibit a continuous therapeutic effect, and an injection having this composition. [MEANS FOR SOLVING PROBLEMS] The above problems can be solved by a method of producing an autologous fibroblast aggregate which comprises the step of culturing autologous fibroblasts in a culture medium containing vitamin C and the step of culturing the autologous fibroblasts by a procedure selected from among rotary culture, shaken culture and slant culture so as to form a fibrous aggregate due to the extracellular matrix containing collagen that is secreted by the autologous fibroblasts, the aggregate thus produced and so on.

Inventors:
ISHIZUKA YASUYUKI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/001088
Publication Date:
November 13, 2008
Filing Date:
April 25, 2008
Export Citation:
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Assignee:
APPLIED CELL BIOTECHNOLOGIES I (JP)
ISHIZUKA YASUYUKI (JP)
International Classes:
A61L27/00; A61F2/10; A61K35/33; A61K35/36; A61L27/36; A61L27/38; A61L27/40; C12N5/07; C12N5/071; C12N5/077
Foreign References:
JP2006510399A2006-03-30
JP2005023080A2005-01-27
JP2004105742A2004-04-08
Other References:
FURUKAWA K. ET AL.: "Senkai Nagare ni yoru Seijo Hifu Sen'ime Saibo no 3jigen Gyoshukai no Keisei to Baiyo Hifu eno Oyo no Kokoromi", BIOENGINEERING KOENKAI KOEN RONBUNSHU, vol. 13TH, 2001, pages 174 - 175
Attorney, Agent or Firm:
HIROSE, Takayuki (The Royal Building 3F3-8-7, Irifun, Chuo-ku Tokyo 42, JP)
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Claims:
 自己線維芽細胞の凝集塊の製造方法であって,  
   ビタミンCが添加された培養培地で培養する工程と,
   自己線維芽細胞を,前記自己線維芽細胞により分泌されたコラーゲンを含む細胞外マトリックスにより糸状の凝集塊となるように,回転培養,振とう培養,または傾斜培養のいずれかの培養方法で培養する工程と,
を含む,自己線維芽細胞の凝集塊の製造方法。
 トリプシンを含む分離液で細胞を剥離する工程をさらに含む,
 請求項1に記載の製造方法。
 前記培養培地で培養する工程は,
  自己血清培地または無血清培地で培養する工程である,
 請求項1に記載の製造方法。
 前記自己線維芽細胞は,
  皮膚由来の線維芽細胞,または歯肉由来の線維芽細胞のいずれかである,
 請求項1に記載の製造方法。
 前記培養する工程は,
  回転培養により培養する工程であり,
   前記回転培養は,
    0.1~2回転/分で行われる,
 請求項1に記載の製造方法。
 前記培養方法で培養する工程は,
  振とう培養を行う工程であり,
   前記振とう培養は,
    上下動培養,水平動培養,又は旋回培養のいずれかであり,
    5~50回/分で振とうが行われる,
 請求項1に記載の製造方法。
 前記自己線維芽細胞の凝集塊の製造方法であって,
  前記培養する工程は,
  回転培養を行う工程であり,
   前記回転培養を行う工程は,
   0.1~0.5回転/分で細胞を培養する工程,
   0.01~1mMとなるようにビタミンCを培地に添加し,1.5~2回転/分で細胞を培養する工程,及び
   0.5~1.5回転/分で細胞を培養する工程,
 をこの順で含む,請求項1に記載の製造方法。
 前記自己線維芽細胞の凝集塊の製造方法であって,
  前記培養する工程は,
  振とう培養を行う工程であり,
   前記振とう培養を行う工程は,
  5~10回/分で細胞を培養する工程,
   0.01~1mMとなるようにビタミンCを培地に添加し,20~30回/分で細胞を培養する工程,及び
  10~20回/分で細胞を培養する工程と,
 をこの順に含む,請求項1に記載の製造方法。
 請求項1に記載の方法で製造される凝集塊。
凝集塊と,薬学的に許容される液剤とを含む,軟組織の欠損を修復するための組成物であって,
 前記凝集塊は,
  自己線維芽細胞の凝集塊の製造方法であって,  
   ビタミンCが添加された自己血清培地または無血清培地で培養する工程と,
   自己線維芽細胞を,前記自己線維芽細胞により分泌されたコラーゲンを含む細胞外マトリックスにより糸状の凝集塊となるように,回転培養,振とう培養,または傾斜培養のいずれかの培養方法で培養する工程と,
を含む,自己線維芽細胞の凝集塊の製造方法により製造され,
 前記薬学的に許容される液剤は,
  糖質,電解質,およびアミノ酸を含む液剤である,
 組成物。
 前記凝集塊は,
  歯肉由来の線維芽細胞から作製される分化した線維芽細胞を含む凝集塊である,
 請求項10に記載の組成物。
 ビタミンCが添加された自己血清培地または無血清培地で培養する工程と,
 自己線維芽細胞を,前記自己線維芽細胞により分泌されたコラーゲンを含む細胞外マトリックスにより糸状の凝集塊となるように,回転培養,振とう培養,または傾斜培養のいずれかの培養方法で培養する工程と,
 培養した細胞を剥離する工程と,
を含み,
 前記回収する工程で得られた凝集塊を,第1の注射針を介して前記凝集塊を注射器に収容した後に,
  前記注射器から前記第1の注射針を取り除き,前記注射器に前記第1の注射針よりも内径の小さな第2の注射針を取り付ける,
 注射剤の製造方法。
 
Description:
皮膚または歯肉の軟組織の欠損 補修するための組成物,及び自己線維芽細胞 の培養方法

 本発明は,自己線維芽細胞として,自己コ ーゲンを含む細胞外マトリックスにより被 され,その結果凝集塊となったものを用いる とで,治療箇所に自己線維芽細胞を留めさせ ることができる,皮膚または歯肉の軟組織の 損を補修するための組成物などに関する。

 皮膚の軟組織の欠損を補修するために,顔 などへコラーゲンや自己線維芽細胞などを注 入する方法が知られている。たとえば,特公 7-10763号公報(下記特許文献1)には,コラーゲン を含む美容整形剤が開示されている。

 また,特許第3559566号公報(下記特許文献2) は,自己の継代皮膚線維芽細胞を担体溶液に 濁した懸濁物が開示されている。一方,この 公報には,自己の皮膚線維芽細胞を無血清培 中でインキュベートして得られる凝集塊を 射器内に吸引して,患者に投与する方法が開 されている(たとえば,同公報第6頁3行目~18行 目を参照。)。

 しかしながら,上記公報には医療上大きな 問題があった。それは,被験者血漿を少量使 するものの,同種(他人)の血漿,フィブリンや ヒト血清を用いた培養液を用いることで,ウ ィルス等の感染症のリスクがあった。更に, 記公報では,細胞同士を結合させるのではな ,血漿の凝集塊にふりかけている。しかも, 己線維芽細胞や血漿凝集塊とを同時に局所 注入しても,線維芽細胞には足場となるもの ないので,生体内で速やかに移動する。その 結果,線維芽細胞が治療を行いたい部分に留 らないため,治療効果が薄いという問題があ 。また,同公報では,そもそも懸濁物を得る とを目的とするものであって,細胞の凝集塊 得ることを目的とするものではない。

 また,特表2005-532090号公報(下記特許文献3) は,自己線維芽細胞を用いた治療に関する発 明が開示されている。この公報には,自己の 代線維芽細胞及び筋細胞を含む組成物であ て,それらがコラーゲンを含むマトリックス 組み込まれたものが,開示されている(たと ば,請求項8,段落[0064]~[0067])を参照。)。

 一方,特表2005-532090号公報は,尿失禁,膀胱 管逆流現象又は胃食道逆流現象の治療に関 るものである。また,同公報の請求項1に記載 されるように,同公報に開示される発明は,「 地血清由来のタンパク質および該線維芽細 以外の細胞を実質的に含有しない,自己の継 代皮膚線維芽細胞の懸濁物」に関する。この ため,同公報に記載された発明は,コラーゲン 含む細胞外マトリックスで被覆された自己 維芽細胞を投与するものではない。もっと ,同公報に開示された発明は,自己のコラー ンを皮膚の軟組織の欠損を補修するために いるものでもない。

 また,特表2006-510399号公報(下記特許文献4)に ,皮膚,軟部組織,及び骨の欠損を修復する治 に関する発明が開示されている。この公報 は,組織を修復するための組成物として,未 化間葉細胞及び線維芽細胞を含むことが開 されている。しかしながら,未分化細胞は細 周期が短く盛んに分裂増殖を繰り返す傾向 あるため,腫瘍化するリスクがあり,治療予 も不良であるという問題があった。

特公平7-10763号公報

特許第3559566号公報

特表2005-532090号公報

特表2006-510399号公報

 本発明は,糸状に凝集した自己線維芽細胞 を製造するための自己線維芽細胞の凝集塊の 製造方法,及びそのような方法で製造された 集塊を提供することを目的とする。

 本発明は,治療箇所に長期間留まることで 効果的な治療効果を持続させることができる ,皮膚または歯肉の軟組織の欠損を補修する めの組成物,又はそのような組成物を具備す 注射剤を提供することを目的とする。

 注射により液剤を投与する場合,注射液中 に凝集塊が存在すると,注射針内部に凝集塊 つまり,うまく注射をすることができない。 のため,線維芽細胞やコラーゲンなどを注射 により投与する場合,注射液に凝集抑制剤を 合し,凝集塊ができないようにするのが通常 ある。しかしながら,自己線維芽細胞を局所 に注入しても,線維芽細胞には足場となるも がないので,生体内で速やかに移動する。そ 結果,線維芽細胞が治療を行いたい部分に留 まらないため,治療効果が薄いという問題が る。そこで,本発明は,基本的には,注射には さないと考えられた凝集塊をあえて製造し, のような凝集塊を投与することで,コラーゲ ンによる足場を与えることができ,その結果, 部に自己線維芽細胞が長期間にわたり留ま ことができるという知見に基づくものであ 。

 本発明の第1の側面は,自己線維芽細胞の 集塊の製造方法に関する。すなわち,自己線 芽細胞を,ビタミンCが添加された培養培地 培養する工程と,自己線維芽細胞を,前記自己 線維芽細胞により分泌されたコラーゲンを含 む細胞外マトリックスにより糸状の凝集塊と なるように,回転培養,振とう培養,または傾斜 培養のいずれかの培養方法で培養する工程と を含む,自己線維芽細胞の凝集塊の製造方法 ある。後述する実施例で示されたとおり,こ ような工程を行うことによって,糸状の凝集 塊を製造することができる。さらに,後述す 実施例で示されたとおり,上記工程によって 造される凝集塊は,コラーゲンを多く含有す る。よって,線維芽細胞同士が強力につなが た糸状の凝集塊を製造することができる。 して,後述する実施例で示されたとおり,プロ テアーゼ抵抗性を有する凝集塊を製造するこ とができる。すなわち,本発明の製造方法に れば,患部に投与した際,凝集塊が患部外へ移 動しにくく,さらに生体内のプロテアーゼで ラバラに分散されにくい,治療効果の高い凝 塊を製造することができる。

 本発明の第1の側面の好ましい態様は,ト プシンを含む分離液で細胞を剥離する工程 さらに含む上記に記載の製造方法である。 述する実施例に示されたとおり,本発明の製 方法では,得られる糸状の凝集塊は,コラー ンを多く含有し,トリプシンを含む分離液を いて剥離しても,バラバラに分散することが ない。すなわち,プロテアーゼ抵抗性を有す 。よって,本発明の製造方法によれば,患部に 投与した際,凝集塊が患部外へ移動しにくく, らに生体内のプロテアーゼでバラバラに分 されにくい,治療効果の高い凝集塊を製造す ることができる。

 本発明の第1の側面の好ましい態様は,前 培養培地で培養する工程は,自己血清培地ま は無血清培地で培養する工程である,上記に 記載の製造方法である。培養培地として,自 血清培地または無血清培地を用いることで, 集塊を患部に投与した際,患部で炎症反応が 起こりにくい凝集塊を製造することができる 。また,自己由来の原料を用いることで,ウィ スなどによる感染や汚染などを防止するこ ができることになるので,高い治療効果を得 ることができる。

 本発明の第1の側面の好ましい態様は,前 自己線維芽細胞は,皮膚由来の線維芽細胞,ま たは歯肉由来の線維芽細胞のいずれかである ,上記に記載の製造方法である。

 本発明の第1の側面の好ましい態様は,前 培養する工程は,回転培養により培養する工 であり,前記回転培養は,0.1~2回転/分(A~Bは,A 上B以下を意味する。以下同じ)で行われる, 記に記載の製造方法である。回転培養を行 と,その回転方向に応じて,線維芽細胞から分 泌されたコラーゲンに方向性をもたせること ができるので,効果的に糸状の凝集塊を得る とができる。

 本発明の第1の側面の好ましい態様は,前 培養方法で培養する工程は,振とう培養を行 工程であり,前記振とう培養は,上下動培養, 平動培養,又は旋回培養のいずれかであり,5~ 50回/分で振とうが行われる,上記に記載の製 方法である。後述する実施例で示されたと り,振とう培養を行うと,その振とう方向に応 じて,線維芽細胞から分泌されたコラーゲン 方向性をもたせることができるので,効果的 糸状の凝集塊を得ることができる。

 本発明の第1の側面の好ましい態様は,前 培養する工程は,回転培養を行う工程であり, 前記回転培養を行う工程は,0.1~0.5回転/分で細 胞を培養する工程,0.01~1mMとなるようにビタミ ンCを培地に添加し,1.5~2回転/分で細胞を培養 る工程,及び0.5~1.5回転/分で細胞を培養する 程をこの順で含む,上記に記載の製造方法で ある。このように回転数を変化させる培養工 程とすることで,効率よく線維芽細胞から分 されるコラーゲン同士でつながった線維芽 胞の凝集塊を得ることができる。また線維 細胞から分泌されるコラーゲンに方向性を たせることができるので,効果的に糸状の細 凝集塊を製造することができる。

 本発明の第1の側面の好ましい態様は,前 培養する工程は,振とう培養を行う工程であ ,前記振とう培養を行う工程は,5~10回/分で細 胞を培養する工程,0.01~1mMとなるようにビタミ ンCを培地に添加し,20~30回/分で細胞を培養す 工程,及び10~20回/分で細胞を培養する工程と をこの順に含む,上記に記載の製造方法であ 。このように振とう数を変化させる培養工 とすることで,効率よく線維芽細胞から分泌 れるコラーゲン同士でつながった線維芽細 の凝集塊を得ることができる。また線維芽 胞から分泌されるコラーゲンに方向性を持 せることができるので,効果的に糸状の細胞 凝集塊を作製することができる。

 本発明の第1の側面の好ましい態様は,上 に記載の方法で製造される凝集塊に関する 後述する実施例で示されたとおり,このよう 製造された凝集塊は,コラーゲンを多く含有 し,自己線維芽細胞から分泌されるコラーゲ を含む細胞外マトリックスを介して前記自 線維芽細胞同士がつなげられることにより 状となった凝集塊である。また,後述する実 例で示されたとおり,本発明の凝集塊は,プ テアーゼ抵抗性を有する。このようなコラ ゲンを含む細胞外マトリックスでつながっ 凝集塊は,患部に投与したとき,コラーゲンを 含む細胞外マトリックスが足場となり,患部 に凝集塊が移動しにくくなる。また,プロテ ーゼ抵抗性を有するので,生体内のプロテア ーゼによって分散されにくい。よって,本発 の凝集塊は,患部に留まることできるので,高 い治療効果を得ることができる。また,細胞 多数まとめて患部に投与することができる め,線維芽細胞の増殖性が高く,高い治療効果 を得ることができる。

 本発明の第2の側面は,凝集塊と,薬学的に 容される液剤とを含む,軟組織の欠損を修復 するための組成物に関する。前記凝集塊は, タミンCが添加された自己血清培地または無 清培地で培養する工程と,自己線維芽細胞を ,前記自己線維芽細胞により分泌されたコラ ゲンを含む細胞外マトリックスにより糸状 凝集塊となるように,回転培養,振とう培養, たは傾斜培養のいずれかの培養方法で培養 る工程とを含む,自己線維芽細胞の凝集塊の 造方法により製造される。前記薬学的に許 される液剤は,糖質,電解質,およびアミノ酸 含む液剤である。本発明の組成物に含まれ 凝集塊は,上記したとおり,コラーゲンを多 含有し,プロテアーゼ抵抗性を有する。そし ,動物や他人のタンパク質を利用しないので ,炎症反応やウィルス感染なのどのリスクを 減することができる。後述する実施例によ 示されたとおり,高カロリー輸液など電解質 びアミノ酸を含む液剤中に懸濁させた場合, 自己線維芽細胞の生存性を高めることができ る。よって,本発明の組成物は,高い治療効果 得ることができるので,軟組織の欠損を修復 するために好適に用いることができる。

 本発明の第2の側面の好ましい態様は,前 凝集塊は,分化した線維芽細胞を含む凝集塊 ある,上記に記載の組成物である。分化した 線維芽細胞を含むことによって,投与後の線 芽細胞が腫瘍化するリスクを軽減すること でき,軟組織の欠損を補修する組成物として ましく用いることができる。

 本発明の第3の側面は,ビタミンCが添加さ た自己血清培地または無血清培地で培養す 工程と,自己線維芽細胞を,前記自己線維芽 胞により分泌されたコラーゲンを含む細胞 マトリックスにより糸状の凝集塊となるよ に,回転培養,振とう培養,または傾斜培養の ずれかの培養方法で培養する工程と,培養し 細胞を凝集塊として回収する工程とを含み, 前記回収する工程で得られた凝集塊を,第1の 射針を介して前記凝集塊を注射器に収容し 後に,前記注射器から前記第1の注射針を取 除き,前記注射器に前記第1の注射針よりも内 径の小さな第2の注射針を取り付ける,注射剤 製造方法に関する。

 このように,一端内径の太い注射針で凝集 塊を吸い上げておいて,内径の細い注射針に えるので,施術の際に適度な凝集塊の大きさ 成形でき,細胞への物理的なダメージを最小 限にでき,更に,注射針内に固まる事態を効果 に防止できる。

 本発明によれば,糸状に凝集した自己線維 芽細胞を製造するための自己線維芽細胞の凝 集塊の製造方法,及びそのような方法で製造 れた凝集塊を提供することができる。

 本発明によれば,治療箇所に長期間留まる ことで効果的な治療効果を持続させることが できる,皮膚または歯肉の軟組織の欠損を補 するための組成物,又はそのような組成物を 備する注射剤を提供することができる。

図1は,実施例1により得られた線維芽細 を含む液剤を示す図面に替わる写真である 図2は,従来方法により得られる線維芽 胞を含む液剤を示す図面に替わる写真であ 。 図3は,実施例1において得られた凝集塊 分散させた様子を示す図面に替わる写真で る。 図4は,線維芽細胞の細胞塊を分散させ 様子を示す図面に替わる写真である。 図5は,高カロリー注射液で懸濁した場 の細胞の様子を示す図面に替わる写真であ 。 図6は,生理食塩水で懸濁した場合の細 の様子を示す図面に替わる写真である。 図7は,静置培養または回転培養により られた線維芽細胞の様子を示す図面に替わ 写真である。図7Aは,静置培養をして得られ 線維芽細胞の様子を示し,図7B及び図7Cは,回 培養をして得られた線維芽細胞の様子を示 。 図8は,4℃で一定時間おいた細胞の状態 示す図面に替わる写真である。図8Aは,培養 始24時間後の細胞の状態を示す図面に替わ 写真である。図8Bは,培養開始48時間後の細胞 の状態を示す図面に代わる写真である。

 本発明の第1の側面は,自己線維芽細胞の 集塊の製造方法に関する。すなわち,自己線 芽細胞を,ビタミンCが添加された自己血清 地または無血清培地で培養する工程と,自己 維芽細胞を,前記自己線維芽細胞により分泌 されたコラーゲンを含む細胞外マトリックス により糸状の凝集塊となるように,回転培養, とう培養,または傾斜培養のいずれかの培養 方法で培養する工程とを含む,自己線維芽細 の凝集塊の製造方法である。従来,線維芽細 を培養すると,線維芽細胞の細胞塊が偶然得 られる場合があった。しかしながら,このよ な細胞塊は,通常取り除かれたし,細胞同士が バラバラな状態であり,仮に生体内に注入し も移動しやすいものであった。一方,本発明 は,積極的に,コラーゲンを含む細胞外マト ックスを分泌させ,自己線維芽細胞の凝集塊 得ることを目的とする。本発明では,細胞外 マトリックスを介して,自己線維芽細胞同士 つなげられるため,生体内に注入された際に, 良好な足場が得られ,長期間患部に滞留する 集塊を製造することができる。

 凝集塊を製造するための線維芽細胞は,公 知の方法で,補修する軟組織などから採取し, 養することができる。培養条件は,当業者で あれば,培養する線維芽細胞の由来に応じて 宜調整することができる。また,線維芽細胞 培養する培地は,培養する線維芽細胞の由来 に応じて,当業者であれば,適宜公知の培地を いることができる。本発明の凝集塊は,凝集 塊を製造するために線維芽細胞を提供した患 者本人に投与するため,線維芽細胞を培養す 培地は自己血清培地や,動物由来成分を使用 ていない無血清培地(例えばASF培地104など) 好ましい。動物や他人のタンパク質を利用 ないことで,ウィルスの感染や,汚染などのリ スクを軽減できる。また,動物や他人のタン ク質が,患者に投与されたときにおこる免疫 応を防ぐことができる。

 「自己線維芽細胞により分泌されたコラ ゲンを含む細胞外マトリックス」は,自己線 維芽細胞を培養することにより得られた自己 コラーゲンや,コラーゲン同士を接着する機 を有するフィブロネクチンなどを含む物が げられる。後述する実施例により示された うに,具体的な細胞外マトリックスは,I型コ ーゲン,VI型コラーゲン,フィブロネクチン,ビ メンチン及びミクロフィブリル関連糖タンパ ク質などがあげられる。なお,細胞外マトリ クスの主成分は,通常自己コラーゲンである ら,本明細書において,「自己コラーゲンを む細胞外マトリックス」を含むとは「自己 ラーゲンを含む」と読み替えてもよい。

 本発明の培養工程では,自己線維芽細胞を 培養する際に,培地にビタミンCを0.001mM以上10m M以下(好ましくは0.01mM以上1mM以下,より好まし くは0.05mM以上0.5mM以下)添加する。そして,自 線維芽細胞からコラーゲンを分泌させ,それ より自己線維芽細胞の凝集塊を得る。本発 の凝集塊を得るための培養期間は,2日~1か月 があげられ,4~20日が好ましく,7~14日がさらに ましい。培養工程では,数日おきに培地を交 することが好ましい。培地交換を行う期間 して,1~7日があげられ,好ましくは2~4日であ 。定期的に培地を交換することで,長期間培 する細胞の生存率を高めることができるの ,治療効果の高い凝集塊を製造することがで きる。また,培地交換を行う場合は,培地交換 行う毎に培地に添加するビタミンCの濃度を 上げていってもよい。徐々に濃度を高くする ことで,コラーゲンの方向をそろえることが き,効率的に糸状の凝集塊を製造することが きる。

 本発明において,コラーゲンの方向とは, ラーゲンの伸長方向のことをさす。コラー ンに方向性を持たせるとは,コラーゲンを特 の方向に伸長させることをいう。そして,コ ラーゲンの方向をそろえるとは,複数の線維 細胞から分泌されるコラーゲンをそれぞれ じ方向に向かって伸長させることをいう。

 本発明の培養工程では,自己線維芽細胞を ,前記自己線維芽細胞により分泌されたコラ ゲンを含む細胞外マトリックスにより糸状 凝集塊となるように,回転培養,振とう培養, たは傾斜培養のいずれかの培養方法で培養 る。

 回転培養は,円筒状の培養容器など公知の 回転培養用の容器を用い,公知の装置を用い 行うことができる。回転培養を行う場合の 転速度は,0.01~5回転/分があげられ,0.05~3回転/ が好ましく,0.1~2回転/分がより好ましい。回 転培養工程は,培養工程の途中で回転速度を 更してもよい。回転速度を変更する具体的 培養工程としては,回転培養を開始後1~2日は, 0.1~0.5回転/分で培養する工程,その後,細胞が70 ~80%コンフルエントになるまで1.5~2回転/分で 養する工程,その後培養を終了するまで0.5~1.5 回転/分で培養する工程があげられる。細胞 コンフルエントの割合は当業者であれば適 判断することができる。培地に添加するビ ミンCは,全行程の培地に添加しておいてもよ いが,1.5~2回転/分で培養する工程,及び0.5~1.5回 転/分で培養する工程の培地に添加すること 好ましい。これら工程に添加するビタミンC 度は,0.001mM~10mMがあげられ,0.01mM~1mMが好まし ,0.05mM~0.5mMがより好ましい。このような工程 とすることで,コラーゲンの方向をそろえる とができ,効率的に糸状の凝集塊を製造する とができる。

 振とう培養としては,上下動培養,水平動 養,旋回培養などがあげられる。これらの培 には,培養面が平面な公知の培養用容器を用 いて行うことができる。振とう培養するため の振とう培養装置は,公知の装置を用いるこ ができる。

 上下動培養は,シーソー状態での振とう培 養である。上下動培養においての1回とは,例 ば,上下動培養用装置が,培養用容器を載置 る板の中心に支点を有し,板の両端が上下に く場合,板が水平の状態から,一端が上方向 たは下方向に動き,その後,反対の方向に動き ,そして水平の状態に戻るという1サイクルを1 回とカウントする。上下動培養を行う場合の 振とう速度は,1~50回/分があげられ,5~30回/分が 好ましく,10~20回/分がより好ましい。シーソ 状態の上下動をする角度は,培養用容器を水 に置いた位置を0度としたときに,±1~15度が げられ,±3~13度が好ましく,±5~10度がより好ま しい。

 上下動培養工程は,培養工程の途中で振と う速度,又は振とう角度を変更してもよい。 とう速度を変更する具体的な培養工程とし は,上下動培養を開始後1~2日は,5~10回/分で培 する工程,その後,細胞が70~80%コンフルエン になるまで20~30回/分で培養する工程,その後 養を終了するまで10~20回/分で培養する工程 あげられる。また,振とう角度を変更する具 体的な培養工程としては,上下動培養を開始 1~2日は,±1~2度で培養する工程,その後,細胞が 70~80%コンフルエントになるまで±10~13度で培 する工程,その後培養を終了するまで±5~10度 培養する工程があげられる。培地に添加す ビタミンCは,全行程の培地に添加しておい もよいが,振とう速度を変更する工程では,20~ 30回/分で培養する工程,及び10~20回/分で培養 る工程の培地に添加することが好ましい。 た,振とう角度を変更する工程では,±10~13度 培養する工程,及び±5~10度で培養する工程の 地にビタミンCを添加することが好ましい。 これら工程に添加するビタミンC濃度は,0.001mM ~10mMがあげられ,0.01mM~1mMが好ましく,0.05mM~0.5mM より好ましい。振とう速度,及び振とう角度 を変更する培養工程は,振とう速度,または振 う角度の一方を固定にして,もう一方だけを 変更してもよいし,両工程を変更してもよい このような工程とすることで,コラーゲンの 向をそろえることができ,効率的に糸状の凝 集塊を製造することができる。

 水平動培養は,水平面を保って一方向を往 復する振とう培養であり,1往復を1回とする。 水平動培養を行う場合の振とう速度は,1~50回/ 分があげられ,5~30回/分が好ましく,10~20回/分 より好ましい。水平動培養工程は,培養工程 途中で振とう速度を変更してもよい。振と 速度を変更する具体的な培養工程としては, 水平動培養を開始後1~2日は,5~10回/分で培養す る工程,その後,細胞が70~80%コンフルエントに るまで20~30回/分で培養する工程,その後培養 を終了するまで10~20rpmで培養する工程があげ れる。培地に添加するビタミンCは,全行程 培地に添加しておいてもよいが,振とう速度 変更する工程では,20~30回/分で培養する工程 ,及び10~20回/分で培養する工程の培地に添加 ることが好ましい。これら工程に添加する タミンC濃度は,0.001mM~10mMがあげられ,0.01mM~1mM 好ましく,0.05mM~0.5mMがより好ましい。このよ うな工程とすることで,コラーゲンの方向を ろえることができ,効率的に糸状の凝集塊を 造することができる。

 旋回培養は,水平面を保ち一定方向に旋回 する振とう培養である。旋回培養においての 1回とは,1回転をさす。旋回培養を行う場合の 振とう速度は,1~50回/分があげられ,5~30回/分が 好ましく,10~20回/分がより好ましい。旋回培 工程は,培養工程の途中で振とう速度を変更 てもよい。振とう速度を変更する具体的な 養工程としては,旋回培養を開始後1~2日は,1~ 3回/分で培養する工程,その後,細胞が70~80%コ フルエントになるまで20~30回/分で培養する 程,その後培養を終了するまで10~20回/分で培 する工程があげられる。培地に添加するビ ミンCは,全行程の培地に添加しておいても いが,振とう速度を変更する工程では,20~30回/ 分で培養する工程,及び10~20回/分で培養する 程の培地に添加することが好ましい。これ 工程に添加するビタミンC濃度は,0.001mM~10mMが あげられ,0.01mM~1mMが好ましく,0.05mM~0.5mMがより 好ましい。このような工程とすることで,コ ーゲンの方向をそろえることができ,効率的 糸状の凝集塊を製造することができる。

 傾斜培養は,培養面が平面な公知の培養用 容器を用いて行うことができる。傾斜培養を 行うときの傾斜角度は,1~15度があげられ,5~10 が好ましい。傾斜培養を行う際は,培養開始 1~2日は,傾斜をつけず水平な状態で培養し, の後培養を終了するまで傾斜角度1~15度で傾 培養することが望ましい。培地に添加する タミンCは,培養開始時の培地から添加して いてもよいが,傾斜培養を開始してから添加 てもよい。添加するビタミンC濃度は,0.001mM~ 10mMがあげられ,0.01mM~1mMが好ましく,0.05mM~0.5mM より好ましい。このような工程とすること ,コラーゲンの方向をそろえることができ,効 率的に糸状の凝集塊を製造することができる 。

 本発明の培養工程を終了後は,公知の方法 で細胞を剥離し,細胞の凝集塊を回収するこ ができる。本発明の細胞の凝集塊を剥離さ る分離液は,公知の分離液を使用することが きる。具体的な分離液として,トリプシンや EDTAを含む分離液があげられる。静置培養し 細胞から糸状の凝集塊を得るためには,細胞 バラバラにならないように分解力の弱いEDTA や非酵素系の分離液を使用する必要がある。 しかしながら,後述する実施例で示されたと り,本発明の製造方法で製造される凝集塊は, 自己線維芽細胞により分泌されたコラーゲン を含む細胞外マトリックスにより線維芽細胞 同士が強力につながっているので,プロテア ゼ活性を有するトリプシンなどの酵素を用 ても凝集塊がほぐれることがない。よって, リプシンなどの分解力の大きいプロテアー 等を含む分離液を使用して細胞を剥離させ ことができる。

 本発明の細胞を剥離する工程で使用する 離液に含まれるトリプシンは,動物由来原料 を使用していないトリプシンであることが好 ましい。動物由来ではないトリプシンを使用 することで,製造された凝集塊を患部に投与 た際,動物由来のトリプシンに対する免疫反 を防ぐことができる。動物由来ではないト プシンは,市販されている組換え酵素である トリプシンなど公知のものを使用すればよい 。

 本発明の凝集塊を製造する線維芽細胞と て,皮膚または歯肉由来の線維芽細胞が好ま しい。皮膚または歯肉由来の線維芽細胞は, ラーゲン分泌量が多いので,効率よく糸状の 集塊を製造することができる。

 本発明の凝集塊は,後述する実施例で示さ れたとおり,コラーゲンを多く含有し,自己線 芽細胞から分泌されるコラーゲンを含む細 外マトリックスを介して前記自己線維芽細 同士がつなげられることにより糸状となっ 凝集塊である。また,後述する実施例で示さ れたとおり,本発明の凝集塊は,プロテアーゼ 抗性を有する。このようなコラーゲンを含 細胞外マトリックスでつながった凝集塊は, 患部に投与したとき,コラーゲンを含む細胞 マトリックスが足場となり,患部外に凝集塊 移動しにくくなる。また,プロテアーゼ抵抗 性を有するので,生体内のプロテアーゼによ て分散されにくい。さらに,自己血清培地ま は無血清培地を用いて製造された凝集塊は, 凝集塊を患部に投与した際,患部で炎症反応 起こりにくい。また,自己由来の原料を用い ことで,ウィルスなどによる感染や汚染など を防止することができることになるので,高 治療効果を得ることができる。本発明の製 方法によって製造された凝集塊は,は,動物や 他人のタンパク質を利用しない。よって,本 明の製造方法によって製造された凝集塊は, ィルスの感染や,汚染などのリスクを軽減で きる。よって,本発明の凝集塊は,患部に留ま ことでき,凝集塊を投与した際におこる免疫 反応やウィルス感染などのリスクを軽減でき ,高い治療効果を得ることができるので,軟組 の欠損を修復するために好適に用いること できる。

 本発明の第2の側面は,凝集塊と,薬学的に 容される液剤とを含む,軟組織の欠損を修復 するための組成物に関する。前記凝集塊は, タミンCが添加された自己血清培地または無 清培地で培養する工程と,自己線維芽細胞を ,前記自己線維芽細胞により分泌されたコラ ゲンを含む細胞外マトリックスにより糸状 凝集塊となるように,回転培養,振とう培養, たは傾斜培養のいずれかの培養方法で培養 る工程とを含む,自己線維芽細胞の凝集塊の 造方法により製造される。前記薬学的に許 される液剤は,糖質,電解質,およびアミノ酸 含む液剤である。薬学的に許容される液剤 して,注射剤などに用いられる公知の液剤を 適宜用いることができる。具体的には,精製 ,蒸留水,生理食塩水などがあげられる。本発 明の組成物は,凝集塊を剥離させ,遠心分離に り細胞を分離し,その後,生理食塩水などの 浄液で洗浄し,薬学的に許容される液剤を加 ることで得ることができる。なお,本発明の 組成物には,凝集塊となっていない分散した 胞が含まれていてもよい。分散した細胞は, 成物を患部に投与した際,凝集塊と凝集塊の 隙間を埋めることができるので,治療効果を めることができる。本発明の組成物におい ,凝集塊と分散した細胞の割合は,50:50~99:1が げられ,70:30~80:20でもよく,80:20~95:5でもよい。 分散した細胞の割合が多すぎると,患部に細 をとどめにくくなるので,好ましくは80:20~95:5 である。

 一方,後述する実施例により示されたとお り,高カロリー輸液など糖類,電解質及びアミ 酸を含む液剤中に懸濁させた場合,自己線維 芽細胞の生存性を高めることができる。高い カロリー輸液として,公知のものを適宜用い ことができる。糖類として,主にブドウ糖が いられる。ブドウ糖の他の糖類として,フル クトース,キシリトース,又はソルビトースを いてもよい。電解質として,Na(ナトリウム),K (カリウム),Cl(クロール),Ca(カルシウム),Mg(マ ネシウム)等があげられる。また,必要により ,Zn(亜鉛),P(リン),Fe(鉄),Cu(銅)等の微量金属類, びクエン酸,グルコン酸,酢酸(アセテート類) ,乳酸(ラクテート類)等の有機酸が添加されて もよい。アミノ酸として,グリシン,L-アラニ ,L-プロリン,L-アスパラギン酸,L-セリン,L-チ シン,L-グルタミン酸,L-システイン,L-ロイシ ,L-イソロイシン,L-バリン,L-リジン,L-メチオ ン,L-フェニルアラニン,L-トレオニン,L-トリ トファン,L-アルギニン,又はL-ヒスチジンが げられる。これらの組成は,公知の高カロリ 輸液におけるものを適宜採用すればよい。

 本発明の組成物は,低温(たとえば,1℃以上 10℃以下,好ましくは2℃以上8℃以下)に保持す ることが好ましい。保持期間は,5日以下があ られ,12時間以内が好ましく,4時間以内が最 好ましい。後述する実施例に示されたとお ,本発明の凝集塊は低温で一定時間保存した も,細胞の増殖能が保たれている。よって, のような凝集塊を含む組成物を患部に投与 ることで,高い治療効果をえることができる 本発明の組成物は,低温で保存した組成物を 低温のまま患部に投与してもよいが,投与前 組成物を34~37度まで温めて投与してすること が好ましい。投与前に組成物を温めることに よって,患部に投与後の細胞増殖や,凝集塊の 部への接着性を高めることができる。

 本発明の第2の側面の好ましい態様は,前 凝集塊は,分化した線維芽細胞を含む凝集塊 含む組成物である。線維芽細胞を分化させ 方法は,公知の方法で培養することによって 分化させることができる。細胞の分化速度は ,培養日数,培養条件によって異なるが,当業者 であれば適宜調整することができる。細胞の 分化度は公知の方法で測定することができる 。たとえば,未分化の細胞にのみ発現するタ パク質の活性を測定すればよい。また,未分 の細胞にのみ発現するタンパク質を染色し もよい。当業者であれば,細胞の分化度を適 宜測定することができる。未分化の細胞は, 胞周期が短く盛んに分裂増殖を繰り返す傾 があるため,分化した細胞と比較して腫瘍化 リスクがある。一方,分化度の高い細胞は, 器の構造・機能的性質が残っており,治療予 が良好である。よって,分化度の高い線維芽 細胞を含む凝集塊を含む組成物は,軟組織の 損を修復するため好適に使用することがで る。

 本発明の組成物の好ましい態様は,皮膚の 軟組織の欠損を補修するための組成物であり ,しわや皮膚のたるみを除去するなど美容の めに用いられるもののほか,何らかの疾患に り失った皮膚の何組織を回復するための医 組成物としても用いることができる。この 成物の好ましい利用態様は,注射剤であるが ,それ以外の用途に用いてもよい。

 また,本発明の組成物の好ましい態様は, 肉の軟組織の欠損を補修するための組成物 あり,老化,歯茎の傷,または歯肉を切るよう 外科的治療などによって生じた歯肉退縮な の治療のために用いることができる。この 成物の好ましい利用態様は,注射剤であるが, それ以外の用途に用いてもよい。

 本発明の第3の側面は,注射剤の製造方法 関する。具体的には,ビタミンCが添加された 自己血清培地または無血清培地で培養する工 程と,自己線維芽細胞を,前記自己線維芽細胞 より分泌されたコラーゲンを含む細胞外マ リックスにより糸状の凝集塊となるように, 回転培養,振とう培養,または傾斜培養のいず かの培養方法で培養する工程と,培養した細 胞を剥離する工程とを含み,前記回収する工 で得られた凝集塊を,第1の注射針を介して前 記凝集塊を注射器に収容した後に,前記注射 から前記第1の注射針を取り除き,前記注射器 に前記第1の注射針よりも内径の小さな第2の 射針を取り付ける,注射剤の製造方法である 。このように,一端内径の太い注射針で凝集 を吸い上げておいて,内径の細い注射針に替 るので,施術の際に適度な凝集塊の大きさに 成形でき,細胞への物理的なダメージを最小 にでき,更に,凝集塊が注射針内に固まる事態 を効果的に防止できる。

 本発明の自己線維芽細胞を含む凝集塊は, 線維芽細胞同士がコラーゲンを含む細胞外マ トリックスによりつなげられたものである。 凝集塊が大きすぎると,注射針で注入できな なり,小さすぎると,患部に留まらない。その ような観点から,注射剤に含まれる凝集塊の 状や大きさとして,糸状で,18~20G(ゲージ)の注 針により吸引できて,24Gから30Gの注射針で注 入できることが好ましい。このような大きさ の凝集塊は,培養容器の培養面積に占める細 の割合を調整すること,細胞を剥離する分離 の濃度を調整すること,又は剥離して回収し た細胞を静置することで得ることができる。 培養容器の培養面積に占める細胞の割合とし ては,70~100%コンフルエントがあげられ,80~90%コ ンフルエントでもよく,90~95%コンフルエント もよい。細胞を剥離する分離液の濃度は,用 る分離液に応じて適宜調整することができ 。例えば,トリプシンを含む分離液を用いる 場合,分離液中のトリプシン濃度は,0.1~2%があ られる。細胞を剥離した際,細胞の凝集塊が 小さい場合は,剥離した細胞を公知の容器に 収し静置する。静置時間は30秒~10分があげら れ,1分~3分でもよく,3分~5分でもよい。剥離し 細胞の大きさによって適宜調整することが きる。細胞を静置し沈殿させることで,分離 した細胞同士が再度つながるので,凝集塊の きさを大きくすることができる。沈殿させ 細胞は,タッピング等でほぐすことで,凝集塊 を得ることができる。

以下,実施例を用いて本発明を具体的に説 するが,本発明は以下の実施例に限定される のではない。すなわち,当業者に自明は範囲 において,適宜修正を加えることができ,その うなものも本発明に含まれる。

  実施例1 自己線維芽細胞の凝集塊 の調製
 皮膚組織から分離した線維芽細胞の培養を, 公知の方法(R. I. Freshney編,Culture of Animal Cel ls : A MANUAL OF BASIC TECHNIQUE (Wiley-Liss,Inc.2000 ))にしたがって,行った。具体的には皮膚組織 片から分離した線維芽細胞を継代培養しなが ら,順次拡大培養して最終的にはT-225フラスコ 数個まで増殖させた。培養終了(注入予定日) 3日前に0.01mM以上1mM以下の範囲でビタミンC 培地に添加した。更に,培養終了前日に,ビタ ミンC無添加で2%以上5%以下の自己血清添加培 に交換した。培養した線維芽細胞を,培養容 器からEDTA溶液や酵素を用いない分散液で剥 させ,遠心により細胞と分散液を分離した。 の後,生理食塩水で3回以上洗浄した。

 このようにして得られた分散液を図1に示 す。図1は,実施例1により得られた線維芽細胞 を含む液剤を示す図面に替わる写真である。 一方,図2に,培地にビタミンCを添加せず,EDTA溶 液や酵素を用いて線維芽細胞を剥離した分散 液を図2に示す。図2は,従来方法により得られ る線維芽細胞を含む液剤を示す図面に替わる 写真である。

 図1と図2とを比較すると,美容に用いられ 注射液の外観としては,従来方法の方が優れ ることがわかる。そして,図1から,上記の方法 によれば,線維芽細胞が凝集塊を多く形成す ことがわかる。一方,図2から,従来の培養方 では,凝集塊を形成しないことがわかる。

 また,実施例1により得られた線維芽細胞 含む液剤から細胞凝集塊をピペットで分散 せ,生理食塩水に浮遊させた後,顕微鏡写真を 撮影した。その結果を図3に示す。図3は,実施 例1において得られた凝集塊を分散させた様 を示す図面に替わる写真である。一方,培地 ビタミンCを添加せず,EDTA溶液や酵素を用い 線維芽細胞を剥離した分散液における細胞 をピペットで分散させ,生理食塩水に浮遊さ せた後,顕微鏡写真を撮影した。その結果を 4に示す。図4は,線維芽細胞の細胞塊を分散 せた様子を示す図面に替わる写真である。

 図4から,従来法により線維芽細胞を得た 合は,細胞がバラバラな状態であることがわ る。一方,図3から,本発明の方法に従えば,コ ラーゲン線維に線維芽細胞が結合し,帯状の 胞塊を得ることができることがわかる。特 ,このような帯状(糸状)の細胞塊となるので, 射針で吸引でき,注入することができる。し かしながら,帯状(糸状)となった凝集塊の量は 少なかった。

  実施例2 ビタミンCを添加するこ によるコラーゲン産生への効果
 実施例1のビタミンC添加培地で培養した線 芽細胞の培養上清と,ビタミンC無添加の培養 上清に含まれるコラーゲン濃度を,ヒトコラ ゲンELISA定量キット(ACバイオ社)で測定した その結果を,表1に示す。

 表1から,培地にビタミンCを添加すること ,コラーゲンの産生能は飛躍的に高まること がわかる。このことは,培地にビタミンCを添 することで,線維芽細胞が凝集塊を形成しや すくなることを意味する。

  実施例3 本発明の組成物の効果の 検証
 ボランティア4名から採取した皮膚組織片か ら,アウトグロウス(outgrowth)法により細胞を分 離し,実施例1に示される方法で,自己血清添加 培地で培養した。凝集塊を含む液を,高カロ ー輸液中に懸濁させて,4℃で保管した。この けん濁状態の線維芽細胞は,図1に示されるよ に凝集塊を形成していた。注入前に遠心に り細胞と輸液に分け,細胞に適当量の生理食 塩水を加えて,軽く撹拌し,懸濁状態にした。 集塊ごと18Gの注射針で注射器に吸引し,26G注 射針または27G注射針に付け代えて,必要とす 局所に注入した。

 注入後,ボランティア4名の効果を医師や 容専門家が判定した。なお,これら専門家に る判定が得られない場合は,自己評価とした 。その結果を表2に示す。

 いずれのボランティアも,本注射剤を注入 した翌日には腫れが引いたものの,注入箇所 盛り上がりが認められた。数日後には注入 位の周囲にも張りがでて,陥没部位が修復さ ,皺が消えた。また,目の下のくまも消失し, 学的,美容的な効果が認められた。この効果 は,いずれのボランティアにおいても,少なく も1年半は持続した。

  実施例4 高カロリー注射剤による 細胞培養への影響の検討
 通常の方法で培養したフラスコから線維芽 胞を剥離し,その直後で生細胞の割合が100% あったことを確認し,50mlディスポ遠沈管に線 維芽細胞2×10 7 個を生理食塩水25mlに懸濁させた状態と,同数 細胞を高カロリー注射剤(アミノフリード等 )25mlに懸濁させた状態のものを調整した。こ らを保冷剤で冷却した状態で2時間輸送した 後,生細胞数を測定した。その後,1/5の細胞数 をそれぞれT-225フラスコで培養した。

 生細胞数はトリパンブルー染色後に血球 算版で生細胞と死細胞数を計測した。表3に 生細胞の割合を示す。また,24時間後のフラス コ培養の後の細胞を写真撮影した。図5は,高 ロリー注射液で懸濁した場合の細胞の様子 示す図面に替わる写真である。一方,図6は, 理食塩水で懸濁した場合の細胞の様子を示 図面に替わる写真である。

 表3から,高カロリー注射剤に懸濁した方 10%も生細胞率が高まることがわかる。また 5と図6から,高カロリー注射剤に懸濁した細 の方が,増殖性も良いことが明らかである。

  実施例5 細胞凝集塊のタンパク質 成分の解析
 実施例1で作製した細胞の凝集塊を生理的リ ン酸緩衝液(PBS)に浮遊させ,細胞を更に分散さ せるためにディスパーゼI(合同酒精)を終濃度 で1,000PU/mlに調製し,37℃で1時間処理した。そ 後,遠心にて細胞と上清に分離し,その上清 の分子量3,000以上の蛋白質を遠心濃縮器(ミ ポア)で濃縮した。2次元電気泳動にて蛋白質 成分をスポットとして分離し,そのスポット ゲルより切り出し,トリプシン消化後に質量 析計にてタンパク質を同定した。

 その結果,I型コラーゲン,VI型コラーゲン, ィブロネクチン,ビメンチン及びミクロフィ ブリル関連糖タンパク質等の細胞外マトリッ クスが検出された。

  実施例6 糸状細胞凝集塊の調整方 法
 実施例1より更に糸状の細胞凝集塊の割合を 多くするために,皮膚組織片から分離した線 芽細胞を以下の2つの方法で培養を行った。
 1)T225フラスコ2個で,それぞれ100%コンフルエ トになるまで培養した線維芽細胞をローラ ボトル(表面積850cm 2 )に播種して,0.2~2回転/分で回転培養を行った 最適条件は0.4~0.5回転/分であった。
 2)T225フラスコに播種した細胞を,水平,上下, 回運動を行う振とう器(5~50回/分)で振とう培 養した。最適条件は,上下振とう(10~20回/分)培 養であった。培地組成や培養環境は,実施例1 同じ条件で行った。
 線維芽細胞は,100%コンフルエントになるま 培養し,細胞分散液により細胞を分散させ,回 収した。細胞分散液は,トリプシンを使用し い(動物由来原料を使用していない)タイプの 分散液(例えば,インビトロジェン社製のTrypLE Select,TrypLE Expressなど)を用いた。同じ濃度の 分散液を添加し,同じ条件でインキュベート て細胞を分散させると,静置培養と回転培養 細胞塊の有無に差が生じた。その結果を図7 に示した。図7Aは,フラスコで静置培養した細 胞を分散させて回収した細胞の写真である。 図7B,及び図7Cは,回転培養で培養した細胞を分 散させて回収した細胞の写真である。図7で されたように,静置培養した細胞は,凝集塊を 形成せず,通常の分散状態である。一方,回転 養した細胞は,糸状の細胞凝集塊を形成した 。この細胞塊は,注射針24~26G(ゲージ)に注入で きる大きさであり,細胞塊の割合や大きさは, 養時間と分散液の濃度で調整できる。また, 図7B,図7Cに示した糸状細胞凝集塊は,回収後, 置して沈殿させることでも細胞塊の割合や きさを調整することができる。

  実施例7 糸状細胞凝集塊の特徴1: ラーゲン量の比較
 同じ培養面積から得られた回転培養の細胞 集塊と静置培養の単離細胞に付着している ラーゲン量の定量を行った。具体的には,そ れぞれの細胞ペレットを数回,生理食塩水で 浄し,最終濃度が0.01~0.5mg/mLになるようにペプ シン(SIGMA社製)を添加し,4℃で一晩振とうして コラーゲンを抽出し,その上清中のコラーゲ 量をヒトコラーゲン タイプI ELISAキット(エ ーシーバイオテクノロジーズ社製)を用いて 定した。その結果を表4に示す。表4で示され たように,回転培養の細胞凝集塊は,静置培養 単離細胞と比較して,約5倍もコラーゲン量 多いことがわかった。回転培養で得られた 胞凝集塊を,培養面積100cm 2 あたりの細胞凝集塊が含むコラーゲン量に換 算すると2μg以上含むことになる。

  実施例8 糸状細胞凝集塊の特徴2: 胞凝集塊の増殖能
 調整した細胞凝集塊の細胞が生存するか,以 下の方法で確認した。すなわち,ローラーボ ルを用いて回転培養した細胞を分散液で剥 させ,遠心分離により分散液を除去し細胞ペ ットを得た。その細胞を遠沈管に入れて,ピ ペッティングによりペレットを解して,4℃で8 時間放置した。その後,再度細胞ペレットを ペッティングによりペレットを解して,10分 静置した。細胞凝集塊は沈殿し,単離状態の 胞は浮遊しているので,沈殿した細胞凝集塊 を集めて,フラスコで培養した。培養開始24時 間後の細胞凝集塊がフラスコに付着し(図8A),4 8時間後には付着した細胞が増殖を始めた(図8 B)。このように凝集した細胞は,4℃で一定時 経過後でも増殖できることがわかった。
 このように凝集した細胞は,4℃一定時間後 も培養を開始すれば,また増殖できることか ,生体(in vivo)でも細胞増殖が可能性が高い とを示している。

  実施例9 シミ改善効果
 臨床実験への参加の同意を得たボランティ から,線維芽細胞を採取して,培養し,細胞凝 塊を調整して,顔の右コメカミにある2cm×1cm シミ(肝班)の周囲に適当量(合計5×10 6 個の細胞)を2週間間隔で2回注入した。その結 果,1ヶ月後からシミが薄くなり,半年後には完 全に消えて(痕跡程度),その後1年半以上消え 状態を維持している。その間,特別なことは ず,通常の化粧品を使用していた。

  実施例10 歯肉由来線維芽細胞の 殖性
   歯肉由来線維芽細胞の分離法
 来院した患者から研究目的での使用の了承 得て抜去歯を入手し,抗生物質(500U/mlペニシ ンと500ug/mlストレプトマイシン)を添加した 理食塩水でよく洗浄した後,抜去歯の周囲に 付着している歯肉をメスで分離し,その歯肉 織片を細切した。その組織片を6ウェルの組 培養プレートに貼り付け,5分間静置して固 した組織片が浸るように,抗生物質,10%自己血 清を添加した培地をできるだけ少ない液量加 えて,37℃のCO 2 インキュベーターで培養した。プレートに固 定(付着)した組織片に上記培養液を加えて約2 週間培養し,細胞が組織片から遊走して増殖 ,局所的にコンフルエントになった時点で継 を開始した。継代は以下のように行った。 胞を生理食塩水で洗浄し,分離液で処理して 浮遊化させ,自己血清を加えて酵素を不活化 るか,生理食塩水で分散液を希釈して,遠沈に より細胞を回収した。この細胞を上記培地に 懸濁してT-75フラスコに播種して培養し,以後 的の細胞数まで拡大培養した。

   歯肉由来線維芽細胞の増殖性
 皮膚由来線維芽細胞及び歯肉由来線維芽細 をそれぞれ96ウェルプレートに5×10 3 個/wellで播種し,培養翌日から1,2,3日間培養し, 細胞増殖性をWST-1(タカラバイオ社製)試薬の 色(吸光度450nm)で比較した。吸光度が大きい ど細胞のviabilityが高く,比例して細胞数も多 くなる。結果を表5に示した。表5に示したよ に,皮膚由来よりも歯肉由来の線維芽細胞の 方が増殖性が良かった。

  実施例11 歯肉由来線維芽細胞の 状凝集塊の調製方法
 上記の糸状細胞凝集塊の調製方法に準じて, 歯肉由来線維芽細胞をローラーボトルに播種 し回転培養,又はフラスコに播種し振とう培 を行った。細胞は100%コンフルエント状態に て,細胞分散液により細胞を剥離,分散させ 。皮膚線維芽細胞と同様に回転培養の細胞 凝集塊を形成した。実施例7(表4)と同様に,同 一培養条件で,回転培養とフラスコでの静置 養から得られた細胞ペレット中のコラーゲ 量を測定した。その結果を表6に示した。表6 に示したように,回転培養により得られた細 凝集塊のコラーゲン量は,静置培養により得 れた細胞のコラーゲン量よりも約16倍多い とがわかった。回転培養で得られた細胞凝 塊を,培養面積100cm 2 あたりの細胞凝集塊が含むコラーゲン量に換 算すると200μg以上含むことになる。実施例7 皮膚由来線維芽細胞を回転培養して得られ 細胞凝集塊と,本実施例11の歯肉由来線維芽 胞を回転培養して得られた細胞凝集塊のコ ーゲン量を比較すると,歯肉由来線維芽細胞 ら得られた細胞凝集塊は,皮膚由来線維芽細 胞から得られた細胞凝集塊の100倍多いことが わかった。

  実施例12 細胞凝集塊の特徴1:ALP活 性の検討
 歯肉由来の線維芽細胞の分化度を,ALPを指標 に検討した。上記細胞と細胞凝集塊をPBS(-)で 洗浄後,メタノールで10分間固定し,数回PBS(-) 洗浄した。ALP染色は,HarlowとLaneの方法(Antibodi es:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Co ld Spring Harbor,NY(1988))に準じて以下の通りに った。
 すなわち,0.05M MgCl 2 を含む0.1M Tris-HCl緩衝液(pH9.5),に0.15mg/ml 5-ブ モ-4-クロロ-3-インヒドリルに0.3mg/ml ニトロ ブルー テトラゾリウム クロライド(共にイ ビトロジェン社製)を溶解した反応液を細胞 及び細胞凝集塊に添加し,室温暗所で2時間反 させた。その結果,2時間では染色させず,一 おいて漸く青色に染色したことから,ALPは殆 ど発現していない(ALP活性がない)ことが判明 た。

 実施例12の結果から,本発明で得られる線 芽細胞は,ALP活性を殆ど発現していないので ,分化した線維芽細胞であることがわかった 分化度が低い細胞は,転移後の増殖も早く,腫 瘍化に進みやすく,治療予後が不良であるこ が知られている。本発明で得られる線維芽 胞は,分化度が高いため,腫瘍化へは容易に進 めないと考えられるので,歯肉難組織の欠損 修復するために好ましく使用することがで る。

  実施例13 細胞凝集塊の特徴2:GGT活 性の測定
 歯周ポケットには歯周病菌が存在し,炎症反 応を惹起させるGGTを発現していることから, 離した線維芽細胞に歯周病菌やGGTを発現す 炎症系(T細胞やマクロファージ)細胞の混入 可能性が考えられる。そのため,分離した線 芽細胞がGGTを発現していないことを確認す ために,GGT活性の測定を行った。
 上記実施例で培養した培養上清中のGGT(γ-グ ルタミルトランスペプチダーゼ)活性をエー ーバイオテクノロジーズ社製のキット(GGT活 測定キット 品番:AD101)を用いて測定した。 キットは勧告法(JSCC)に基づいた測定法で,GGT は供与体基質であるグリシルグリシン存在下 で,L-γ-グルタミルグリシルグリシンと5-アミ -2-ニトロ安息香酸を作成させる。この作成 れた5-アミノ-2-ニトロ安息香酸を吸光度(410n m)における単位時間あたりの吸光度の増加を 定して活性値を求めた。その結果を表7に示 した。表7に示したとおり,培養時間によるGGT 性の増加はなく,皮膚及び歯肉の線維芽細胞 とも同じ活性であった。よって,本発明で得 れる線維芽細胞はGGT活性陰性であり,この細 を回転培養することで歯肉を上げる効果を する細胞凝集塊を調整することができる。

  本発明は,化粧料などとして化粧品産業 美容産業などにおいて,効果的に利用されう る。また,歯科などの医療分野においても,効 的に利用されうる。