Login| Sign Up| Help| Contact|

Patent Searching and Data


Title:
CRYOPRESERVATIVE COMPOSITION FOR CELL AND TISSUE
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/157209
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a cryopreservative composition which can cryopreserve a cell or tissue of an animal including human or a plant safely without the need of using any toxic cryopreservative agent such as dimethyl sulfoxide.  Also disclosed is the application of the cryopreservative composition for the cryopreservation of foods or pharmaceutical preparations or the application of the cryopreservative composition to cryopreserved products. Succinic anhydride is reacted with ε-poly-L-lysine to block 60% or more of the amino groups in ε-poly-L-lysine.  A polymeric compound produced in this manner is dissolved in Dulbecco's modified Eagle's medium (DMEM), which is one of commercially available liquid culture media, at a concentration of 7.5 w/w% to produce a cryopreservative solution.  For a food or pharmaceutical preparation, the ε-poly-L-lysine/succinic acid derivative is added to the food or pharmaceutical preparation at a concentration of 0.5 to 10% to prevent the occurrence of cryonical concentration of the food or pharmaceutical preparation.

Inventors:
MATSUMURA KAZUAKI (JP)
SUGAI HAJIME (JP)
HYON SUONG-HYU (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/002941
Publication Date:
December 30, 2009
Filing Date:
June 26, 2009
Export Citation:
Click for automatic bibliography generation   Help
Assignee:
BIOVERDE INC (JP)
MATSUMURA KAZUAKI (JP)
SUGAI HAJIME (JP)
HYON SUONG-HYU (JP)
International Classes:
C12N5/00; A01N1/02
Foreign References:
JPH10146168A1998-06-02
EP1723857A12006-11-22
JP2003171463A2003-06-20
JPH0540326A1993-02-19
JP2003267801A2003-09-25
JP2007141647A2007-06-07
JP2005126533A2005-05-19
JP2003250506A2003-09-09
JP3694730B22005-09-14
JP2008041596A2008-02-21
JP2003171463A2003-06-20
JP2005318815A2005-11-17
Other References:
KAZUAKI MATSUMURA ET AL.: "Shinki Saibo Toketsu Hozon Kobunshi no Kaihatsu", KOBUNSHI TORONKAI YOKOSHU, vol. 57, no. 2, 9 September 2008 (2008-09-09), pages 5070 - 5071, XP008141422
KAZUAKI MATSUMURA ET AL.: "Polylysine Yudotai ni yoru Saibo Toketsu Hozon Koka", ORGAN BIOLOGY, vol. 15, no. 3, 20 October 2008 (2008-10-20), pages 277, XP008141483
BAE, JUNG YOO. ET AL.: "Polylysine Yudotai o Mochiita Shuju no Baiyo Saibo no Toketsu Hozon", REGENERATIVE MEDICINE, vol. 8, 5 February 2009 (2009-02-05), pages 262, XP008143079
GAKUKI KIN ET AL.: "Polylysine Yudotai Tenka ni yoru Saibo no 4°C Hozon Koka", REGENERATIVE MEDICINE, vol. 8, 5 February 2009 (2009-02-05), pages 262, XP008143080
KANHI SO ET AL.: "Polylysine Yudotai o Mochiita Hito Shibo Soshiki Yurai Kansaibo no Toketsu Hozon", REGENERATIVE MEDICINE, vol. 8, 5 February 2009 (2009-02-05), pages 243, XP008143081
KAZUAKI MATSUMURA ET AL.: "Dimethyl Sulfoxide ni Kawaru Shinki Saibo Toketsu Hozonzai no Kaihatsu", REGENERATIVE MEDICINE, vol. 8, 5 February 2009 (2009-02-05), pages 261, XP008143082
See also references of EP 2305792A4
LOVELOCK JE; BISHOP MWH, NATURE, vol. 183, 1959, pages 1394 - 1395
POLGE C; SMITH AU; PARKES AS, NATURE-666, vol. 164, 1949, pages 666
MISZTA-LANE H; GILL P; MIRBOLOOKI M; LAKEY JRT, CELL PRESERV TECHNOL, vol. 5, 2007, pages 16 - 24
HA SY; JEE BC; SUH CS; KIM HS; OH SK; KIM SH; MOON SY, HUMAN REPRODUCTION, vol. 20, 2005, pages 1779 - 1786
YU HN; LEE YR; NOH EM ET AL., INT J. HEMATOL, vol. 87, 2008, pages 189 - 194
ADLER S; PELLOZZER C; PAPARELLA M; HARTUNG T; BREMER S, TOXICOL IN VITRO, vol. 20, 2006, pages 265 - 271
Attorney, Agent or Firm:
TSUTADA, Akiko et al. (JP)
Shoko Tsutada (JP)
Download PDF:
Claims:
 生理的溶液中に、ε-ポリ-L-リジン、α-ポリ-L-リジン、ポリアルギニン、その他のポリアミノ酸、アミノ化多糖類、及びポリアリルアミンからなる群から選択される、アミノ基含有単位の重合体からなる高分子化合物を1~50w/w%溶解させたことを特徴とする細胞および組織の凍結保存用組成物。
 前記高分子化合物のアミノ基の50~99モル%について、無水カルボン酸を反応させてカルボキシル化またはアセチル化することでブロックしたことを特徴とする請求項1に記載の凍結保存用組成物。
 生理的溶液中に、ポリアクリル酸、α-ポリグルタミン酸、γ-ポリグルタミン酸、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、その他のポリアミノ酸、カルボキシル化多糖類からなる群から選択されるカルボキシル基含有単位の重合体からなる高分子化合物を1~50w/w%溶解させたことを特徴とする細胞および組織の凍結保存用組成物。
 前記高分子化合物のカルボキシル基の1~50モル%について、ジアミン、トリアミン、ポリアミンなどのアミノ基を複数もつ化合物を反応させてアミノ化することでブロックしたことを特徴とする請求項3に記載の凍結保存用組成物。
 生理的溶液が、生理食塩水、ダルベッコ改変イーグルMEM培地(DMEM)、または、その他の細胞・組織用の培養液であることを特徴とする請求項1~4いずれかに記載の凍結
保存用組成物。
 前記高分子化合物が、数平均分子量1000~2万のε-ポリ-L-リジンであることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の凍結保存用組成物。
前記高分子化合物が、数平均分子量1000~300万のポリアクリル酸であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の凍結保存用組成物。
 ε-ポリ-L-リジン、α-ポリ-L-リジン、ポリアルギニン、その他のポリアミノ酸、アミノ化多糖類、及びポリアリルアミンからなる群から選択される、アミノ基含有単位の重合体からなる高分子化合物に対し、無水カルボン酸を反応させてカルボキシル化またはアセチル化することでブロックしたことを特徴とする、食品または医薬品の凍結保存用または凍結乾燥用の添加剤組成物。
 請求項1の添加剤組成物を、食品または医薬品の含水原料組成物、または、燃料電池の内部構成部材その他の工業製品の部材に親水性表面層を設けるための含水原料組成物に、1~15w/w%となるように配合することを特徴とする、食品または医薬品または燃料電池などの工業製品の製造方法。
Description:
細胞および組織の凍結保存用組 物

 本発明は、ヒトを含む動物細胞および組 の凍結解凍障害を軽減可能な凍結保存剤に する。また、皮膚、角膜、膵島、心臓弁な 他の生体組織移植分野及び造血幹細胞、間 系幹細胞、ES細胞、iPS細胞などの幹細胞を いる再生医療分野においてもこの技術の需 は高まると予測される。

 植物や動物の細胞、組織、あるいは食品 どの水を含む物質を長期に保存するために0 ℃以下の温度で凍結保存法が日常的に用いら れている。しかし、これら水を含有する物質 を凍結すると、凍結中に水分子同士が、溶質 や混入物の媒質を排除しながら結晶化して水 分子のみからなる氷結晶を形成するため、含 水物中で溶質や混入物の媒質が不均一に拡散 し、凍結濃縮が発生することが知られている 。

 このような凍結濃縮を防止するため、様 な低分子化合物を添加する方法が行われて る。例えば、細胞の凍結保存を行う場合に 凍結保存中に起こる細胞内の結晶化による 胞へのダメージを最小限に抑えるために、 結保護剤として、ジメチルスルホキシド(DMS O)やグリセロール等を添加する方法が行われ いる。

 すなわち、5~20%のジメチルスルホキシド グリセリン、エチレングリコール、プロピ ングリコールなどの凍結保存剤を含む培養 などの生理的溶液に細胞を懸濁しクライオ ューブに詰めて冷却し、最終的に-80℃もし は-196℃の極低温で凍結保存するのが一般的 ある。

 そのなかで最も効果が高く、よく用いら ているのがジメチルスルホキシドである。 かしジメチルスルホキシドが特に高い濃度 は生理学的に有毒であり、凍結保存された 胞を注入された患者に高血圧、悪心、嘔吐 引き起こすことも知られている。ジメチル ルホキシドの毒性により解凍した細胞の培 時もしくは生体に注入した後の生存率や機 が低下する問題もある。

 また、グリセリンなどのその他の凍結保 剤は効果が低いため、細胞を懸濁してしば く室温もしくは冷蔵で放置してから凍結す 必要や、プログラムフリーザーなどによる 密な温度管理が必要とされる。また、凍結 護効果が低く、解凍後の機能が低下するな の問題がある。

 一方、ES細胞やiPS細胞などの幹細胞や精 、卵子、受精卵などでは例えばジメチルス ホキシド、アセトアミド、プロピレングリ ール、ポリエチレングリコールなどの高濃 の凍害保護物質を含有する急速凍結法(ガラ 化法)が知られている。ガラス化法とは急激 に低温にすることで細胞に含まれる水分をガ ラス状にし、氷晶形成による障害を避ける方 法である。しかしながら、この際に用いられ る高濃度の凍害防止剤の毒性が高いため、細 胞や組織を損傷する可能性が高く、組織の凍 結保護には限定的にしか用いられていない。

 他方、医薬品や食品、ディスプレイ用の を製造する場合に、塩化ナトリウム等の塩 や、グルコース、トレハロース等の糖類を 加することも行われている。さらに、植物 魚類、昆虫などが産生する不凍蛋白質や不 糖蛋白質の添加が知られている(特許文献3~4 )。

 また、燃料電池においては、電気化学反 に伴って一方の電極で水が生じる。例えば 固体高分子型燃料電池では、カソード電極 おいて水が生じる。また、生じた水の一部 、電解質膜を介してアノード側へと移動す 。このように燃料電池内で生じた水、ある は、燃料電池に供給されるガス中の水蒸気 燃料電池内で凝縮すると、燃料電池内にお るガス流れが妨げられる可能性がある。そ て、電極へのガスの供給が妨げられること よって、電池性能が低下する可能性がある このような、凝縮水がガス流れを妨げるこ に起因する不都合を防止するための構成と て、燃料電池の内部、例えばガスセパレー の表面にタンパク質などの親水性塗膜を設 ることによって、水の滞留を抑える構成が られているが、低温条件下においては、液 が凍結することに起因する不都合が生じる 合があった。上記目的を達成するために、 えば、固体高分子電解質膜の表面層をなす 化性樹脂に、高分子電解質ととともに、液 からの氷の結晶の成長を抑制する不凍タン ク質を添加する方法がある(特許文献5)が、 れもコストが高いなどの問題がある。

特表平10-511402

特許第3694730号

特開2005-126533

特開2003-250506

特開2008-041596

Lovelock JE and Bishop MWH, Nature 183:1394-1395 , 1959 Polge C, Smith AU, Parkes AS, Nature 164:666-66 6, 1949 Miszta-Lane H, Gill P, Mirbolooki M, Lakey JRT.  Cell Preserv Technol 5,16-24, 2007 Ha SY, Jee BC, Suh CS, Kim HS, Oh SK, Kim S H, Moon SY. Human Reproduction 20,1779-1786, 2005 Yu HN, Lee YR, Noh EM, et al. INT J HEMATOL ≡87: 189-194 ;2008 Adler S, Pellozzer C, Paparella M, Hartung T,  Bremer S. Toxicol in Vitro 20:265-271; 2006

 急速冷凍法を含む現状の凍結保存法では 凍結解凍後の細胞・組織の完全な形での保 が困難であり、毒性の低い新たな凍結保存 質が待ち望まれている。また、ジメチルス ホキシドはHL-60細胞などの分化を誘導する とがわかっており、保存に適しない細胞も る。一方、不凍蛋白質や不凍糖蛋白質は凍 濃縮を防止する効果には優れているものの あまりにも高価(130万円/g)で食品などへの応 には限界がある。

 そこで本発明は、ジメチルスルホキシド 代わる、低毒性でさらに細胞組織の保護効 に優れた凍結保存剤を提供することを目的 する。また、本発明は、食品や医薬などの 凍保存や凍結乾燥保存を行うにあたり、不 蛋白質や不凍糖蛋白質と同等な凍結濃縮を 止する効果を有し、安価でしかも安全なも を提供しようとするものである。

 本発明の凍結保存液は、アミノ基を側鎖 もつポリアミンを実質上1-50%を含み、その 組成は生理食塩水や培養液成分などの生理 溶液である。

 様々なヒトを含む動物細胞、植物細胞を 保存液に浸漬して-80℃または液体窒素中も くは液体窒素蒸気中で凍結保存することで 性の高いジメチルスルホキシドなどの既存 凍結保存剤を使用せずに生存率、生理活性 維持したまま保存することが可能である。 存のジメチルスルホキシドやグリセリン、 チレングリコールなどの凍結保存剤を使用 ないため、凍結する細胞に対する毒性が低 抑えられ、機能を維持したまま長期間凍結 存することが可能である。また、ウシ胎児 清、アルブミンなどのタンパク質成分を使 しないため感染症などの心配がなく、生物 剤によるロット間格差も影響しない。

 ε-ポリ-L-リジンやポリアリルアミンなど アミノ基を側鎖にもつポリアミンは、その ミノ基により細胞膜親和性を持つため、細 の保護効果があると考えられる。また、カ ボキシル基を分子中に多数持つ高分子化合 は水との親和性が高く、細胞内の液体を凍 中に速やかに外に排出することを助けるこ から細胞の凍結保存時の保護効果があると 待される。これら両官能基を分子中に適度 割合で持つことでさらに優れた凍結時細胞 護効果が期待できる。そこで本発明におい は側鎖にアミノ基などのカチオン性置換基 もつポリアミノ酸もしくはカルボキシル基 どのアニオン性置換基を持つ高分子化合物 およびカチオン性置換基とアニオン性置換 の両方をもつ高分子化合物の条件を鋭意検 することにより、有効性と安全性の高い凍 保存液を提供する。

 また、本発明の凍結保存剤はDMSOに比べて 毒性が低いため、解凍後の洗浄が不要で、そ のまま培地に添加することですぐに培養を行 うことができる。

 本発明により、実験用培養細胞の凍結保 を安定的に行うことが可能となるだけでな 、膵島や幹細胞の様な機能性細胞やES細胞 間葉系幹細胞、iPS細胞などの幹細胞もその 能を失わずに保存することができるため、 胞移植の効率が向上すると期待される。

 また、本発明の不凍結ポリアミノ酸を用 ることにより、生理活性物質を含む含水物 凍結する際の、該生理活性物質の失活を抑 することもできる。さらに、本発明の不凍 ポリアミノ酸を用いることにより、水分子 外の成分を含む含水物を凍結又は凍結乾燥 て得られる凍結物又は凍結乾燥物中におけ 該成分の拡散を均質にすることもできる。 結物としては、アイスクリーム、シャーベ ト、氷菓、ディスプレイ用の氷、冷凍スー 等が挙げられる。凍結乾燥物としては、凍 乾燥により製造される粉末状のフリーズド イ食品や医薬品等が挙げられる。

 また、工業用の燃料電池を起動する際の 体の凍結に起因する起動性の低下を抑制す 用途などにも適用可能である。

無水コハク酸により部分的にアミノ基 ブロックしたε-ポリ-L-リジンを用いてL929細 胞を凍結保存した場合の、アミノ基のブロッ ク率と細胞生存率との関係を示すグラフであ る。 アミノ基あたり63モル%の無水コハク酸 添加したε-ポリ-L-リジン(PLL無水コハク酸63% )を用いてL929細胞を凍結保存した場合の、こ 部分ブロック化ポリリジンの濃度と細胞生 率との関係を示すグラフである。 L929細胞を10%DMSO/ウシ胎児血清中にて 結し、解凍後洗浄や希釈をせずにそのまま レート上に移して24時間培養した場合の様子 を示す顕微鏡写真である。 L929細胞をPLL無水コハク酸63%の7.5%溶液 中にて凍結し、解凍後洗浄や希釈をせずにそ のままプレート上に移して24時間培養した場 の様子を示す顕微鏡写真である。 PLL無水コハク酸63%の7.5%溶液、及び、10% DMSO/ウシ胎児血清を凍結保存液として用いラ ト間葉系幹細胞(RMSC)を凍結保存後に、多分 能(骨、脂肪、軟骨への分化誘導)を評価し 結果を示すグラフである。未凍結の場合、 び、非分化誘導系を併せて示す。 スクロース30%の水溶液に無処理のPLL(ε- ポリ-L-リジン)および無水コハク酸処理PLL(PLL 水コハク酸63%)を0.1-15%で添加し、氷再結晶 制効果を観察した一連の顕微鏡写真である 無処理のPLL(ε-ポリ-L-リジン)の5%溶液、 および無水コハク酸処理PLL(PLL無水コハク酸63 %)の5%溶液を凍結させた場合の、氷の結晶の 態を示す顕微鏡写真である。 凍結解凍寒天ゲルの写真(1)である。左 無添加のもの、右がPLL無水コハク酸63%を5% 加したものを示す。 凍結解凍寒天ゲルの写真(2)である。PLL 水コハク酸63%の添加量が、0%のもの(左)、1% もの(中)、及び3%のもの(右)を示す。

 本発明の凍結保存液は、生理的溶液に、 リリジンなどの高分子化合物が1-50w/w%溶解 れてなる。好ましくは2~20w/w%、特に好ましく は3~15w/w%、さらに好ましくは5~10w/w%溶解され なる。生理的溶液としては、生理食塩水の 、各種の細胞または組織用の一般的な培養 を用いることができる。例えば、ダルベッ 改変イーグルMEM培地(DMEM)を好ましいものと て挙げることができる。ポリリジンに代え 、またはポリリジンとともに、ポリアリル ミンを用いることもできる。また、これら 代えて、または、これらの少なくとも一方 とともに、アミノ化多糖類などの他のポリ ミン、ポリアルギニン、ポリグルタミン酸 ポリアスパラギン酸などのポリアミノ酸お びアミノ化多糖類から選択される化合物を いることができ、また、ポリアクリル酸な のポリカルボン酸の他、デキストラン、デ ストリン、プルラン、キトサンからなる群 ら選択される多糖類を用いることもできる これら高分子のうちでも、同一分子内にカ オン性置換基とアニオン性置換基の両方を つ単量体が重合した形の高分子化合物、特 は、ポリアミノ酸を好ましいものとして挙 ることができる。すなわち、高分子化合物 繰り返し単位が、アミノ基及びカルボキシ 基を共に有するのが特に好ましい。ポリリ ンは、ε-ポリ-L-リジンもしくはε-ポリ-D-リ ン、α-ポリ-L-リジン、α-ポリ-D-リジンのい れであっても良い。凍結保護成分である高 子化合物は分子量が100~100,000である。最も好 ましい高分子種として、微生物または酵素に より生産される数平均分子量がb1000~2万、特 は1000~1万のε-ポリ-L-リジンを挙げることが きる。ε-ポリ-L-リジンは、ストレプトマイ ス属(Streptomyces)に属する放線菌により生産さ れてもっぱら食品添加物として用いられてお り(http://www.chisso.co.jp/fine/jp/polylisin/index.html)、 重合度15~35のものの他、重合度が20以下のも の生産も試みられている(例えば、特開2003-17 1463、特開2005-318815)。数平均分子量または数 均重合度の測定は、SDS-PAGE(ドデシル硫酸ナ リウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動)法 により、例えば、アトー(株)製の電気泳動装 及びデンシトグラフ(AE-6920V型)を用いて容易 に測定することができる。このとき、標準タ ンパクマーカーを用いる。なお、ポリリジン は、加熱処理による高分子量化により分子量 3万以上として用いることもできる。しかし 粘度の上昇を防ぐ等の観点から上記の分子 範囲が好ましい。末端のみにフリーのカル キシル基を有するポリリジンは、側鎖に1級 ミノ基のみを有しているが、後述するよう 無水カルボン酸を用いて部分的にアミド化 ることで、優れた混和性能ないし可溶化性 を発揮するものと考えられる。特には、無 ジカルボン酸などを反応させて部分的にカ ボキシル化することで、優れた性能を発揮 ることができる。本発明でも用いる特に好 しい高分子種の他の例として、重量平均分 量が1000~1000000、好ましくは1000~2万のポリア ルアミンを挙げることができる。例えば、 リルアミン重合体(日東紡績(株)のPAA-03)の水 溶液に無水酢酸または酢酸を添加したものや 、部分メトキシカルボニル化アリルアミン重 合体(日東紡績(株)のPAA-U5000)を挙げることが きる。アリルアミン重合体は、ポリリジン 場合と同様、側鎖に1級アミノ基のみを有す が、単位分子量あたりの1級アミノ基の密度 は大きく、後述のように部分的にカルボキシ ル化した場合、ポリリジンを部分的にカルボ キシル化したと同様の作用を行うものと考え られる。

 ポリアミンのアミノ基は、好ましくは、 分的に、無水カルボン酸によってカルボキ ル化もしくはアセチル化されて、ブロック れる。この際、ポリアミンのアミノ基につ て、好ましくは50~99モル%、特には50~93%、よ 好ましくは50~90モル%、さらに好ましくは55~8 0モル%、最も好ましくは58~76モル%をカルボキ ル化またはアセチル化することでブロック る。なお、ポリアミンのアミノ基に対して5 2~53モル%の無水カルボン酸を反応させること 約50%のアミノ基をブロックすることができ 。また、100モル%の無水カルボン酸を反応さ せた場合、通常の反応条件で、90~95%のアミノ 基をブロックすることができる。ブロック率 が上記の範囲を超えても、また、下回っても 、凍結保存効果が小さくなる。ここで用いら れる無水カルボン酸としては、無水酢酸、無 水クエン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸 、無水リンゴ酸、無水フマル酸、及び無水マ レイン酸を挙げることができる。これらのう ち、無水コハク酸及び無水酢酸を特に好まし いものとして挙げることができる。

 しかし、ポリアミンのアミノ基がブロッ されずフリーの状態にあるものを用いるこ もできる。すなわち、カルボキシル化およ アセチル化の度合いは0-100mol/mol%の範囲で有 効である。本発明において、カルボキシル基 が一部アミノ化されたポリカルボン酸も有効 である。すなわちポリカルボン酸のカルボキ シル基をジアミン、トリアミン、ポリアミン などの化合物と反応させることにより一部ア ミノ化したものも有効である。用いるジアミ ンとしてはエチレンジアミン、アジポジヒド ラジドなどのヒドラジドなどが挙げられる。 これらアミノ化合物とカルボン酸との反応は カルボジイミドを用いた付加反応によるもの である。この時のアミノ化の度合いは0-100mol/ mol%の範囲で有効であるが、アミノ基をブロ クする場合と同様に、好ましくは50~99モル% より好ましくは60~97モル%のカルボキシル基 残り、その残余がアミノ化されるように反 を行う。例えば、数平均分子量1000~300万のポ リアクリル酸、特には、数平均分子量1000~1万 のポリアクリル酸を用い、そのカルボキシル 基の1~50モル%、好ましくは3~40モル%をエチレ ジアミン、ジヒドラジドなどのアミン種及 カルボジイミド等を用いてブロックする。 方、本発明の凍結保存剤には、ジメチルス ホキシドやグリセロール、エチレングリコ ル、トレハロースやスクロースなどの既存 凍結保護物質が0.1-50w/w%、特には0.3~15w/w%共存 していてもよい。細胞が凍結から解凍される 際に酸化ストレスによるダメージを受けると 言われており、抗酸化剤を添加することでさ らなる有効性の向上が期待される。抗酸化剤 は例えば、カタラーゼ、ペルオキシダーゼ、 スーパーオキシドジスムターゼ、ビタミンE ビタミンC、エピガロカテキンガレートなど ポリフェノール類またはグルタチオンなど 挙げられる。

 本発明の凍結保存剤の浸透圧は200-1000mOsm/ kgであり、より好ましくは300-700mOsm/kgであり 更に好ましいのは400-600mOsm/kgである。本発明 の凍結保存剤は保存する対象が細胞に限らず 組織に対しても適用することが可能である。 本発明の凍結保存剤を用いて凍結保存が可能 な細胞としては、培養用樹立細胞、ヒトを含 む動物の受精卵および卵細胞を挙げることが できる。また、精細胞、ES細胞、iPS細胞、間 系幹細胞、造血系幹細胞、神経幹細胞、臍 血細胞などの幹細胞、肝細胞、神経細胞、 筋細胞、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞、 球細胞などのヒトを含む動物細胞もしくは 物細胞を挙げることができる。本発明の凍 保存剤を用いて凍結保存が可能な組織・臓 としては、皮膚、神経、血管、軟骨、角膜 肝臓、腎臓、心臓、膵島などを挙げること できる。

 なお、上記に説明したと同様の高分子化 物を、食品または医薬品の含水物に添加し 凍結濃縮を抑制し、含有成分が均質に拡散 た凍結物又は凍結乾燥物の製造に応用する とができる。具体的には、ε-ポリ-L-リジン α-ポリ-L-リジン、ポリアルギニン、その他 ポリアミノ酸、アミノ化多糖類、及びポリ リルアミンからなる群から選択される、ア ノ基含有単位の重合体からなる高分子化合 に対し、無水コハク酸、無水酢酸またはそ 他の上記無水カルボンさんを反応させてカ ボキシル化またはアセチル化することでブ ックしたものを用いることができる。この 合、生理的溶液中に溶解したものを用いる 要はなく、例えば先述のアイスクリームの 水原料組成物またはフリーズドライ食品を 造する際の含水原料組成物に、アミノ基を 分的にブロックしたポリリジンその他のポ アミノ酸またはアミノ化多糖類を、1~15%の 量濃度となるように配合する。このように て、凍結濃縮の抑制を実現することができ 。無水コハク酸を用いた場合、アミノ基の50 ~85モル%に相当する無水コハク酸を反応させ もの(実際のブロック率が約48~80モル%のもの) を用いるならば、凍結濃縮防止において優れ た効果が得られた。

 さらに、上記に説明したと同様の高分子 合物を工業用の燃料電池に添加して、起動 の液体の凍結に起因する起動性の低下を抑 する用途などにも適用可能である。具体的 は、ε-ポリ-L-リジン、α-ポリ-L-リジン、ポ アルギニン、その他のポリアミノ酸、アミ 化多糖類、及びポリアリルアミンからなる から選択される、アミノ基含有単位の重合 からなる高分子化合物に対し、無水コハク 、無水酢酸またはその他の上記無水カルボ 酸を反応させてカルボキシル化またはアセ ル化することでブロックしたものを、燃料 池内部に露出する表面層の材料に添加して いることができる。例えば、セパレーター 固体電解質膜の表面をなす塗膜の材料、特 はUV硬化性の樹脂液に、1~15%の重量濃度とな るように配合することができる。

 以下、この発明の実施例及び比較例を示 。なお、本発明は下記の実施例に限定され ものではない。

<実施例1 凍結保存溶液の調整>
 ε-ポリ-L-リジン(チッソ社製、分子量4000)は2 5%水溶液のものを、ポリアリルアミン(日東紡 、分子量5000(PAA-05L)、15000(PAA-L)、60000(PAA-H))は2 0%水溶液のものを用い、分子中のアミノ基に し、モル%で0-100%の無水コハク酸(和光純薬 業製)を添加することでアミノ基のブロック の異なるポリアミンを作成した。それぞれ ポリアミン溶液をダルベッコ改変培地(DMEM シグマアルドリッチ製)に0-10w/w%となるよう 添加した。この際、pHが7.0-8.0の範囲内にな ように1Nの塩酸もしくは水酸化ナトリウム水 溶液で中和した。また、溶液の浸透圧はWescor 社製5520型蒸気圧法オズモメーターにて測定 、浸透圧の調整には10%塩化ナトリウム水溶 を用いた。

<実施例2 培養細胞の凍結保存>
 1×10 6 個のL929, MG63, Caco-2細胞(大日本住友製薬), co lon26, HT1080, B16F1, KB細胞(ATCC)をクライオバイ アル(Simport Plastics)中で各凍結保存液1mLに懸 し、-80℃のフリーザー中で凍結保存を行っ 。1週間後、37℃の温浴中で速やかに融解し DMEMで洗浄したのち、トリパンブルー染色に り生死判定を行った。また、解凍した細胞 6wellカルチャーディッシュに1×10 5 個ずつ播種し、6時間後、24時間後のそれぞれ の生存率をトリパンブルー染色により評価し た。比較例としては一般的によく用いられて いる保存液である10%DMSO/ウシ胎児血清(FBS)を いた。

 図1に示すように、L929細胞を凍結保存す にあたり、アミノ基のモル数に対して50%以 のモル数の無水コハク酸を添加したポリリ ン(PLL)の7.5%溶液を用いた場合、比較例のDMSO 液を用いた場合に比べて播種後24時間にお てほぼ同じか、より良好な生存率を示した なお、100モル%の無水コハク酸を添加したカ ボキシル化ポリリジンについて、残留アミ 基含量をニンヒドリン法およびTNBS法で定量 することにより、アミノ基のブロック率を求 めたところ93%であった。また、ポリリジンの アミノ基に対して10モル%、27モル%、45モル%、 52モル%、63モル%、及び、79モル%の無水コハク 酸を添加した場合に、ブロック率は、それぞ れ、10%、25%、43%、50%、60%、76%であった。した がって、図1から知られるように、50~93%のブ ック率について凍結保存効果が確認された 、ブロック率が60%のもの(63モル%の無水コハ 酸添加)、及び76%のもの(79モル%の無水コハ 酸添加)で、特に優れた凍結保存効果が見ら た。アミノ基を部分的にブロックしたポリ リルアミン(分子量5000のアリルアミン重合 について、アミノ基の45~90モル%に相当する 水コハク酸を反応させたもの)の水溶液を用 た場合にも、ほぼ同様に、無水コハク酸に るアミノ基ブロック率が増大するにつれて より良好な生存率が得られた。

 図2では、同じくL929細胞を凍結保存する あたり、アミノ基のモル数に対して63%のモ 数の無水コハク酸を添加したε-ポリ-L-リジ (図表中にPLL(0.63)と表示し、以下本文中にPLL 水コハク酸63%と表記)を用い、この部分ブロ ック化ポリリジンの濃度と細胞生存率との関 係を示す。図2から知られるように、部分ブ ック化ポリリジン(PLL無水コハク酸63%)の濃度 が7.0%以上である場合に、DMSO溶液を用いた場 とほぼ同等か、より高い細胞生存率が得ら た。アミノ基を部分的にブロックしたポリ リルアミン(分子量5000のアリルアミン重合 について、アミノ基の63~85モル%に相当する 水コハク酸を反応させたもの)を用いた場合 も、同様の傾向を示した。

 図1~2にて最も良好な結果を示す領域は、 結保存液の浸透圧を求めた場合に、400~600mOs m/kgである。すなわち、浸透圧が400~600mOsm/kgで 最も高い保存効果が得られた。

 一方、表1には、7.5%PLL無水コハク酸63%で保 したときのその他の細胞の保存効果を示す 表1の結果から知られるように、すべての細 種においてDMSO系(10%DMSO/ウシ胎児血清)とほ 同じかそれ以上の生存率を示した。なお、 体的なデータは示さないが、アミノ基を部 的にブロックしたポリアリルアミンを用い 場合にも同様であった。

<実施例3 毒性試験>
 L929細胞を用いた毒性試験を行った。10%ウシ 胎児血清を含有したダルベッコ改変イーグル MEM培地(DMEM)に懸濁させたL929細胞を、96wellマ クロプレートに1.0×10 3 cell/well播種し、37℃で72時間培養後、ε-ポリ-L -リジン、及び、種々の濃度の無水コハク酸 添加したポリリジンを、最終濃度0-10%となる ように添加し、48時間後、未添加系をコント ールとして細胞の増殖が50%阻害される濃度 IC 50 とし、MTT法で求めた。その結果を表2に示す 比較例はDMSO系(10%DMSO/ウシ胎児血清)とした。 表2の結果から知られるように、PLL無水コハ 酸58%、63%、79%のIC 50 は、DMSO系の場合の2~3倍であった。すなわち 上記実施例で用いた部分ブロック化ポリリ ンの毒性は、従来一般的な凍結保存液の1/2~1 /3と判断された。特には、図1のデータにて細 胞生存率が高かったPLL無水コハク酸63%と、PLL 無水コハク酸58%とにおいて、IC 50 の値が特に大きかった。

 一方、L929細胞を含む凍結保存液を解凍後に 、そのまま12wellプレートに播種し、37℃で24 間培養後に観察した。すなわち、PLL無水コ ク酸63%の7.5%溶液、及び、10%DMSO/ウシ胎児血 の各凍結保存液にて、実施例2と同様にして 結保存し解凍を行ったが、解凍後に希釈や 浄をせずに、そのままプレート上に移して 養を行った。その結果、図3-1に示すようにD MSO系(10%DMSO/ウシ胎児血清)では明らかに細胞 丸くなり死んでいるのに対して、図3-2に示 ように本発明の保存液ではディッシュに付 し、良好に生着していることが確認された アミノ基を部分的にブロックしたポリアリ アミン(分子量5000のアリルアミン重合体につ いて、アミノ基の63~85モル%に相当する無水コ ハク酸を反応させたもの)でも同様の低毒性 結果を得た。

<実施例4 間葉系幹細胞の保存>
 ラット間葉系幹細胞(RMSC)の凍結保存を行っ 。比較例の保存液は10%DMSO/ウシ胎児血清で り、実施例の保存液はPLL無水コハク酸63%の7. 5%溶液(図4中に7.5%PLL(0.63)と表示)である。

 表3にラット間葉系幹細胞(RMSC)の解凍後の生 存率を示すが、本発明の凍結保存液でDMSO系 ほぼ同じ生存率を示した。部分ブロック化 リアリルアミンを用いた凍結保存液(分子量5 000のアリルアミン重合体について、アミノ基 の63~85モル%に相当する無水コハク酸を反応さ せ、DMEM倍地に7.5%濃度となるように添加した の)でも同様の高い生存率であった。

 次に、実施例2と同様にして凍結保存後に 解凍した後、分化誘導をかけることにより骨 細胞、脂肪細胞、軟骨細胞への分化能を評価 したところ、図4に示すように未凍結系、DMSO とほぼ同様に多分化能を維持していること 以下のように確認された。図4は、カラーの 顕微鏡写真の画像データについて、光の3原 (RGB)への色分解を行い、赤色(R)の色要素のみ を示したものである。したがって、赤色部分 が白色に表現され、青色部分が黒色に表現さ れている。骨分化能はカルシウムの沈着をア リザリンレッドS染色により評価した結果、 ずれの場合も同じく赤く染色された。図4中 上段の写真を見た場合、非分化誘導系に比 て、分化誘導系がいずれも同様に淡いモノ ロパターンに表現されているが、この淡い ノクロパターンいはカラー写真にて全体に 味がかかっていることを示す。また、アル リ性ホスファターゼ活性は非分化誘導系に べ、いずれの保存液で凍結した場合でも未 結系と同じく高い値を示した。脂肪分化能 、細胞中の脂肪滴をオイルレッドOを用いて 染色したところ、いずれの保存液で凍結した 場合でも未凍結系と同じく赤く染色された脂 肪滴(図4中段にて、径が数十μmの淡色の円形 いし楕円形パターンとして表された部分)が 確認された。軟骨分化能に関しては、細胞塊 中のプロテオグリカンをアルシアンブルーで 染色したところ、いずれの保存液で凍結した 系でも未凍結と同じく青く染まるプロテオグ リカン(図4の下段にて濃い黒色部分として表 れた部分)が確認された。ポリアリルアミン から作成した凍結保存剤(分子量5000のアリル ミン重合体について、アミノ基の63~85モル% 相当する無水コハク酸を反応させ、DMEM倍地 に7.5%濃度となるように添加したもの)で凍結 た場合でも同様に多分化能を維持していた

<実施例5 臍帯血の保存>
 臍帯血は、血液抗凝固剤(EDTA2Na)を10.5mg充填 れた7mLプラスチック製真空採血管(テルモ株 式会社製、ベノジェクト2真空採血管)を使用 てヒト臍帯より採取した。次いで、このよ に抗凝固剤を添加したヒト臍帯血中に、7.5% となるようにPLL無水コハク酸63%(7.5%PLL(0.63))を 添加し、-80℃のフリーザー中で3ヶ月間凍結 存した。37℃の温浴中で速やかに融解し、希 釈等を行わないままのヒト臍帯血を一部採取 して、造血幹細胞の表面マーカーであるCD34 発現率をフローサイトメトリー法を用いて 定した。CD34造血幹細胞数をフローサイトメ リーを用いて、文献(A. Higuchi et al., J. Bio med. Mater. Res., 68A, 34-42 (2004))記載の常法に り測定した。すなわち、CD34造血幹細胞数は 、Stem-Kit(ベックマン・コールター社製)を用 て、そのマニュアル(国際血液療法・移植学  ISHAGEガイドライン)に従って行った。3ヶ月 後においても、CD34造血幹細胞数は、初日に 測された70%前後の細胞数が観察された。一 、10%DMSO溶液で凍結保存したヒト臍帯血中のC D34造血幹細胞数は、初日に計測された20%前後 の細胞数であった。このように、ε-ポリ-L-リ ジンを添加した保存液でヒト臍帯血を保存す ると、CD34造血幹細胞を未分化の状態で長期 保存できることが明らかとなった。

 このように、本発明の実施例の凍結保存 は、臍帯血の保存の効果においても際立っ 優れていることが知られた。

<実施例6 不凍タンパク活性>
 PLL(ε-ポリ-L-リジン)および無水コハク酸処 PLLの不凍タンパク質活性を調べた。すなわ 、氷の再結晶を阻害する効果について調べ 。不凍タンパクには種々の特殊な活性が知 れており、氷の表面に吸着することなどに り、熱ヒステリシス、氷の再結晶成長抑制 氷晶の六方晶もしくはバイピラミッド状へ 形態変化を引き起こすことが知られている( 許文献3~4)。

 まず、スクロース30%の水溶液に無処理のP LL、PLL無水コハク酸20%, PLL無水コハク酸46%, P LL無水コハク酸50%, PLL無水コハク酸65%, PLL無 コハク酸76%, 及びPLL無水コハク酸84%を0.1-15% で添加した。これら無水コハク酸処理PLLにお ける実際のアミノ基ブロック率を前述の方法 で測定したところ、約0.20, 0.43, 0.48, 0.62, 0. 73及び0.80であった。その溶液をガラスプレー トに4μLのせ、さらにガラスプレートでカバ してからリンカム社製10002L温度制御顕微鏡 テージにて-30℃まで急冷し氷結晶を作成し 。その後ゆっくりと温度を上げていき-9℃で 30分放置することにより氷結晶の成長を顕微 で観察した。その結果、図5の一連の顕微鏡 写真が知られるように、PLL(ε-ポリ-L-リジン) アミノ基に対しその50モル%以上のカルボキ ル基を導入することによりPLLに氷再結晶抑 効果を付与できることが確認された。図5に は、重量濃度が5%となるように添加した場合 示すが、PLL無水コハク酸50%(PLL(0.50))~PLL無水 ハク酸84%(PLL(0.84))は、1%~15%までの濃度で氷 結晶抑制に有効であった。

 次に同じ急冷プレートにてPLLの5%溶液の の結晶の形態、および無水コハク酸処理PLL(P LL無水コハク酸65%)の5%溶液の氷の結晶の形態 しらべた。すなわち、一旦-30℃まで急冷し 氷結晶を多数作成した後、視野に1つの直径 10μm程度の氷結晶が存在する温度まで0.02℃/mi nで温度を上昇させる。その状態で安定して ら今度は0.02℃/minで温度を降下させることで 氷の成長時の形態を観察した。形態は図6の 微鏡写真に示すように無水コハク酸で処理 ることにより六方晶を示すことがわかった なお、このような六方晶の氷結晶は、無水 ハク酸処理PLL(PLL(0.50)~PLL(0.84))の濃度が1%~15% 範囲であるならば見られた。熱ヒステリシ とは、融点と氷晶成長開始温度の差のこと 、不凍タンパク質の特徴として挙げられる 無水コハク酸処理PLLで最大0.1度の熱ヒステ シス効果が得られた。これらのことから、PL Lのアミノ基に対しにカルボキシル基を50モル %以上導入することで不凍タンパク質の活性 得られることが確認された。

<実施例7 食品の保存>
 凍結濃縮防止(凍結融解寒天ゲル);寒天末(1 試薬 ナカライテスク(株)社製)にPLL無水コハ ク酸63%を添加して5%溶液を調整し、この溶液 赤色インクを添加しプラスチック容器に入 -20℃にて凍結した後、常温で解凍した。結 を図7の写真に示す。左が無添加のもの、右 がPLL琥珀酸誘導体5%添加のものである。無添 のものは赤色の部分(不透明な上半部)と、 明な部分(ゲルを載せた箇所の右上に影を生 させているが、ゲルの下方のペーパータオ のメッシュ模様が透けて見えている部分)と に、明らかに分離しているのが解かる。一方 、PLL琥珀酸誘導体5%添加物は解凍ゲル全体が 一に赤色を呈し、凍結濃縮が防止できてい のが知られた。

 凍結乾燥寒天ゲル;寒天末(1級試薬 ナカ イテック(株)社製)にPLL無水コハク酸63%(実際 ブロック率0.60)を0%、1%、3%添加してプラス ック容器に入れ-20℃にて凍結した後、真空 1torrで2~3日間凍結乾燥を行い、凍結乾燥寒天 を得た。得られた凍結乾燥物を図8の写真に す。PLL琥珀酸誘導体の添加量が0%のもの(左) 凍結乾燥により体積が1/3程度に収縮してい 。しかし、PLL琥珀酸誘導体の添加量が1%の の(中)と3%のもの(右)の凍結乾燥物は体積の 縮があまり生じていない。このことから、 発明の不凍ポリアミノ酸を含有し凍結乾燥 ることにより、効率よく、かつ品質を安定 保ち、被乾燥物を乾燥できた。