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Patent Searching and Data


Title:
METHOD FOR EXTRACTION OF NUCLEOTIDE
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/096429
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a method for extracting a nucleotide in a sample in a simple manner and with high efficiency. Also disclosed is a nucleotide extraction reagent. Further disclosed is a regent kit for measuring a nucleotide, which comprises the nucleotide extraction reagent. A nucleotide (e.g., ATP, GTP and/or UTP) in a sample can be extracted from the sample with a high degree of efficiency by using a solution containing a phenolic compound. An extraction reagent comprising a phenolic compound can be used in the measurement of ATP or the like. It becomes also possible to provide a reagent kit for measuring ATP, which comprises the extraction reagent.

Inventors:
KIDO HIROSHI (JP)
CHIDA JUNJI (JP)
TAKEI TSUNETOMO (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/051364
Publication Date:
August 06, 2009
Filing Date:
January 28, 2009
Export Citation:
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Assignee:
UNIV TOKUSHIMA (JP)
KIDO HIROSHI (JP)
CHIDA JUNJI (JP)
TAKEI TSUNETOMO (JP)
International Classes:
C12Q1/66; C12Q1/68; G01N21/76
Other References:
NOACK, H. ET AL.: "Evaluation of a Procedure for the Simultaneous Determination of Oxidized and Reduced Pyridine Nucleotides and Adenylates in Organic Phenol Extracts from Mitochondria", ANALYTICAL BIOCHEMISTRY, vol. 202, 1992, pages 162 - 165
ARRETXE, M. ET AL.: "The effect of toxic discharges on ATP content in activated sludge", ENVIRONMENTAL TOXICOLOGY AND WATER QUALITY, vol. 12, 1997, pages 23 - 29
Attorney, Agent or Firm:
SHOJI, Takashi et al. (3-4-1 Higashi-nihonbashi, Chuo-k, Tokyo 04, JP)
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Claims:
試料中に含有されるヌクレオチドの測定のために、フェノール化合物を含む溶液で試料を処理することを特徴とする試料中のヌクレオチド抽出方法。
フェノール化合物を含む溶液が、さらにクロロホルムを含有する溶液である請求項1に記載の試料中のヌクレオチド抽出方法。
ヌクレオチドが、アデノシン三リン酸(ATP)、グアノシン三リン酸(GTP)及び/又はウリジン三リン酸(UTP)である請求項1又は2に記載の抽出方法。
フェノール化合物と、さらにタンパク質変性剤を含む溶液で試料を処理することを特徴とする請求項1~3のいずれか1に記載の抽出方法。
フェノール化合物がフェノールである請求項1~4のいずれか1に記載の抽出方法。
フェノール化合物を含む溶液が、pH4~10である請求項1~5のいずれか1に記載の抽出方法。
以下の工程を含む試料中に含有されるヌクレオチドの測定方法:
1)請求項1~6のいずれか1に記載の抽出方法で、測定対象物であるヌクレオチドを抽出する工程;
2)抽出したヌクレオチドを、ヌクレオチド測定用試薬を用いて定量する工程。
ヌクレオチドがATPであり、ヌクレオチド測定用試薬がルシフェラーゼを含むATP測定用試薬であり、ルシフェラーゼの発光度を測定することにより定量する請求項7に記載の測定方法。
フェノール化合物を含む溶液であることを特徴とする、試料からヌクレオチドを抽出するためのヌクレオチド抽出用試薬。
さらにクロロホルムを含有することを特徴とする請求項9に記載のヌクレオチド抽出用試薬。
ヌクレオチドがATPである請求項9又は10に記載のヌクレオチド抽出用試薬。
請求項9~11のいずれか1に記載のヌクレオチド抽出用試薬とヌクレオチド測定用試薬を含むヌクレオチド測定用試薬キット。
ヌクレオチドがATPであり、ヌクレオチド抽出用試薬と、ルシフェラーゼを含むATP測定用試薬を含む請求項12に記載の試薬キット。
Description:
ヌクレオチドの抽出方法

 本発明は、試料中に含有されるヌクレオ ドの抽出方法に関し、具体的にはアデノシ 三リン酸(ATP)、グアノシン三リン酸(GTP)及び /又はウリジン三リン酸(UTP)等のヌクレオチド の抽出方法に関する。さらには、本発明はヌ クレオチド抽出用試薬及びヌクレオチド測定 用試薬キットに関する。

 本出願は、参照によりここに援用される ころの日本出願特願2008-017863号優先権を請 する。

 ATPは、すべての生物の細胞内に含まれる クレオチドである。試料中に含まれるATPの 定は、各種工業分野において広く行なわれ いる。特に、食品衛生、バイオ、臨床検査 医学等の現場では、試料中の微生物の有無 判定、該微生物の細胞数の計数等を目的と て、細胞内ATPの測定が行なわれている。細 内ATPを測定する場合、細胞を含む試料に界 活性剤等を添加して細胞内ATPを抽出した後 抽出されたATPを測定する方法が多用されて る。

 近年、ヒトで起こる様々な疾患が、組織 エネルギー産生の低下によって起こること 明らかにされている。組織のエネルギー産 の低下とは、具体的には、組織を構成する 々の細胞のATPレベルの減少を示しており、 天的なミトコンドリア遺伝子の変異によっ 起こる場合と、後天的な遺伝子変異やウイ ス感染等によって起こる場合がある。先天 の疾患としてはミトコンドリア脳筋症(CPEO: chronic progressive external ophthalmoplegia, MELAS: m itochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis  and stroke-like episodes, MERRF: myoclonus epilepsy as sociated with ragged red fibers)等が知られており 、後天性の疾患としては脳梗塞、脳の神経変 性疾患(Alzheimer's 病、Parkinson's病、Huntington's 、ウイルス性の脳症)等が報告されている。 た、これらの疾患では、痙攣、てんかん、 神運動発達遅延、筋力低下、肝機能障害、 音性難聴等の全身での臨床症状が認められ ことが特徴である。

 このような事実から、生体内の様々な組織 ATPレベルを正確に測定する技術は、1)組織 おけるミトコンドリアの病理学の研究、2)遺 伝子疾患の診断・予防という観点から、臨床 医学的にも重要である。もし、この技術が確 立されれば、各組織のエネルギー状態、代謝 機能の状態、生理学的ストレスの状態を調べ ることが可能となる。このような細胞内ATPレ ベルの減少・枯渇によって発症する多様な疾 患の研究は、その大半が培養細胞を用いた人 工的環境下での研究であり、細胞のミトコン ドリアの膜電位を指標とした蛍光プローブ(Mi toTracker (R) 、JC-1 (R) :Invitrogen社)等を用いた間接的半定量法による 細胞外からのATPレベルのモニターか、細胞を 破壊して含まれるATPを測定しているのが現状 である。

 ATPの測定法としては、例えば生物発光反応 具体的にはルシフェリン-ルシフェラーゼ発 光反応を利用して測定するキット(ENLITEN (R)  ATP Assay System:プロメガ社)がすでに開発さ ており、市販されている。特に、食品衛生 バイオ、臨床検査、医学等の現場では、試 中の微生物の有無の判定、該微生物の細胞 の計数等を目的として、細胞内ATPレベルの 定が行なわれている。試料中のATPレベルを 定する場合、試料からATPを抽出してATPを定 的に測定することが必要である。

 試料からATPを抽出する方法として、1)過塩 酸をベースにした抽出法(PCA抽出法)(非特許 献1)、2)蒸留水中で加熱する方法(Boiling抽出 )(非特許文献2)が報告されている。その後、A TP抽出効率の高い方法として、プロテインキ ーゼKで処理をする改良法(Proteinase K抽出法) が報告された(非特許文献3)。また、培養細胞 からATPを抽出する方法として、トリクロロ酢 酸をベースにした抽出法(TCA抽出法)が報告さ ている(非特許文献4,5)。さらに、最近では 動物組織のATPレベルを測定するためのキッ (『組織の』ATP測定キット TM :東洋ビーネット社)が市販されており、PEG含 抽出用溶液がATP抽出用試薬として添付され いる。

 このように様々な改良方法を考案しなけ ばならないように、従来の方法は操作が煩 であったり、試料中のタンパク質変性凝集 中にATPが混入して抽出効率が下がる、用い タンパク質変性剤の影響によるATP測定の阻 、等の問題があった。例えば、ATPの測定法 ルシフェリン-ルシフェラーゼ発光反応を利 用する方法である場合、上記タンパク質変性 剤としてTCAを用いると、測定系が酸性となっ て発光反応が阻害されるという問題、試料中 のタンパク質濃度が高い場合に、変性タンパ ク質に覆われたATPが抽出されない問題、等が ある。そのため、従来の測定方法では、培養 細胞等比較的タンパク質濃度の低い条件では ほぼ正確にATPレベルを測定することは可能で あるが、タンパク質濃度の高い生体組織中の ATPを測定する場合、ATPの抽出効率が急激に低 下してATPレベルを正確に測定しているとはい えない。

 さらには、生物の細胞内には、ATP以外に GTP、UTP、CTPや各種デオキシヌクレオチド等 種のヌクレオチドが存在している。これら ヌクレオチドも、生体を維持するために必 であるが、効果的な抽出方法や測定方法が 分に解明されているとはいえない。各種ヌ レオチドが効果的に抽出され、各ヌクレオ ド特異的な測定方法が開発されれば、生物 における各ヌクレオチドの存在や機能につ て更に解明されることになり医療、食品、 種工業分野において有用と考えられるが、 れらのヌクレオチドの抽出効率もいまだ十 とはいえない。

New York Academic Press, 151 (1972) New York Academic Press, 559-572 (1963) J Biochem Biophys Methods, 63: 69-77 (2005) Microbiol Rev, 44: 739-796 (1980) Methods Enzymol, 133: 14-22 (1989)

 本発明は、簡便に効率よく試料中のヌク オチドを抽出する方法を提供することを課 とし、具体的にATP、GTP及び/又はUTP等のヌク レオチドの抽出方法を提供することを課題と する。さらにはヌクレオチド測定のために使 用するヌクレオチド抽出用試薬及びヌクレオ チド測定用試薬キットを提供することを課題 とする。

 本発明者らは上記課題を解決するために 意研究を重ねた結果、フェノール化合物を む溶液を用いることで、タンパク質変性凝 塊へのATP混入による抽出効率の低下を生じ ことなく、試料から効率よくヌクレオチド 抽出できることを見出し、本発明を完成し 。

 すなわち本発明は、以下よりなる。
1.試料中に含有されるヌクレオチドの測定の めに、フェノール化合物を含む溶液で試料 処理することを特徴とする試料中のヌクレ チド抽出方法。
2.フェノール化合物を含む溶液が、さらにク ロホルムを含有する溶液である前項1に記載 の試料中のヌクレオチド抽出方法。
3.ヌクレオチドが、アデノシン三リン酸(ATP) グアノシン三リン酸(GTP)及び/又はウリジン リン酸(UTP)である前項1又は2に記載の抽出方 。
4.フェノール化合物と、さらにタンパク質変 剤を含む溶液で試料を処理することを特徴 する前項1~3のいずれか1に記載の抽出方法。
5.フェノール化合物がフェノールである前項1 ~4のいずれか1に記載の抽出方法。
6.フェノール化合物を含む溶液が、pH4~10であ 前項1~5のいずれか1に記載の抽出方法。
7.以下の工程を含む試料中に含有されるヌク オチドの測定方法:
1)前項1~6のいずれか1に記載の抽出方法で、測 定対象物であるヌクレオチドを抽出する工程 ;
2)抽出したヌクレオチドを、ヌクレオチド測 用試薬を用いて定量する工程。
8.ヌクレオチドがATPであり、ヌクレオチド測 用試薬がルシフェラーゼを含むATP測定用試 であり、ルシフェラーゼの発光度を測定す ことにより定量する前項7に記載の測定方法 。
9.フェノール化合物を含む溶液であることを 徴とする、試料からヌクレオチドを抽出す ためのヌクレオチド抽出用試薬。
10.さらにクロロホルムを含有することを特徴 とする前項9に記載のヌクレオチド抽出用試 。
11.ヌクレオチドがATPである前項9又は10に記載 のヌクレオチド抽出用試薬。
12.前項9~11のいずれか1に記載のヌクレオチド 出用試薬とヌクレオチド測定用試薬を含む クレオチド測定用試薬キット。
13.ヌクレオチドがATPであり、ヌクレオチド抽 出用試薬と、ルシフェラーゼを含むATP測定用 試薬を含む前項12に記載の試薬キット。

 本発明のヌクレオチド抽出方法によれば 生体等の試料から効果的にヌクレオチド、 体的にはATP、GTP及び/又はUTPを抽出すること ができる。従来では、培養細胞や血液等、タ ンパク質濃度の低い試料についてはATP等所望 のヌクレオチドを抽出し、測定することが可 能であったが、生体組織等タンパク質濃度の 高い試料では、正確な測定結果が得られてい るとはいえない状況であった。本発明の抽出 方法によれば、従来困難であった試料中のヌ クレオチドを効果的に抽出することができる 。また、本発明の抽出方法により、ATP等のヌ クレオチドを抽出したのち、ATP特異的に反応 するルシフェラーゼを含むATP測定試薬を用い て測定することにより、ATPを定量的に、より 正確に測定することができる。

標準核酸混合液(ATP、UTP、GTP、CTP)のHPLC よるヌクレオチドの分離パターンを示す図 ある。(実験例1) 肝組織をフェノールTE飽和溶液を含む 出用溶液で処理した抽出液中のヌクレオチ のHPLC分析結果を示す図である。(実施例2、 験例1) 肝組織をTCA含有抽出用溶液で処理した 出液中のヌクレオチドのHPLC分析結果を示す 図である。(比較例1、実験例1) 肝組織をPGE含有抽出用溶液で処理した 出液中のヌクレオチドのHPLC分析結果を示す 図である。(比較例2、実験例1) 各組織中からの抽出液中のATP、UTP及びG TPのHPLC分析結果を示す図である。(実験例2) 各組織中からの抽出液について、ルシ ェラーゼ試薬を用いたATPの測定結果を示す である。(実験例3) 血液抽出物でのATP測定値を示す図であ (正常マウス、ヘテロ型欠損マウス、JVSマウ ス)(実験例4) 肝抽出物でのATP測定値を示す図である( 正常マウス、ヘテロ型欠損マウス、JVSマウス )(実験例4) 心臓抽出物でのATP測定値を示す図であ (正常マウス、ヘテロ型欠損マウス、JVSマウ ス)(実験例4) 脾臓抽出物でのATP測定値を示す図であ る(正常マウス、ヘテロ型欠損マウス、JVSマ ス)(実験例4) 抽出後に含まれるATP以外の核酸(GTP,AMP) のルシフェラーゼ発光反応への影響を確認し た図である。(実験例5) 健常人の末梢血試料に含まれるATP量を 確認した図である。(実験例6) 各種疾患の末梢血試料に含まれるATP量 を確認した図である。(実験例7) 脳症及び回復期(健常者)の末梢血試料 含まれるATP量を確認した図である。(実験例 8)

発明を実施するための形態

 本発明のヌクレオチド抽出方法における クレオチドとは、DNAやRNA等のポリヌクレオ ドとは区別される核酸であり、具体的にはA TP、GTP及び/又はUTP等のヌクレオチドをいう。 以下、本発明のヌクレオチド、即ちポリヌク レオチドでないヌクレオチドについて、単に 核酸という場合もある。

 本発明において、試料とは上記ヌクレオ ドを含有可能性のある試料であれば良く、 体由来の試料であってもよいし、生体外に 在する試料であってもよい。また、生体は ヒト及びヒトをのぞく脊柱動物であっても い。試料として、例えば生体組織、尿、糞 、血液、喀痰、膿汁、細胞、細胞の培養液 飲食物・医薬品・化粧品等の各工業製品・ の半製品・その原料、海水、河川水、工業 水、下水、土壌等を挙げることができる。 た、細菌汚染検査、清浄度検査、拭き取り 査等の各種検査における検体も、本発明に ける試料とすることができる。さらには、 記試料を適当な溶媒(例えば、蒸留水、生理 的食塩水、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、酢 酸ナトリウム緩衝液等)に懸濁した溶液を試 としてもよい。試料が固形分を含む場合に 、該試料を上記溶媒に懸濁するか、ミキサ 等でホモジナイズすれば溶液状のものと同 に扱うことができる。

 本発明のヌクレオチド抽出方法に使用さ るフェノール化合物は、フェノール基を有 る化合物であって、試料中のヌクレオチド 抽出しうる化合物であれば良く、特に限定 れない。特に好適にはフェノールである。 ェノール化合物を含む溶液には、クロロホ ムを含んでいても良い。また、フェノール 合物を含む溶液には、タンパク質変性剤を んでいても良い。ここにおいて、タンパク 変性剤とは、自体公知のものが挙げられ、 に従来のATP抽出方法に使用可能であったタ パク質変性剤が好適である。そのようなタ パク質変性剤としては、グアニジンイソチ ネート、過塩素酸、TCA、プロテインキナー K等が挙げられる。しかしながら、試料中に 、ATP分解酵素以外のタンパク質が多く含まれ る場合には、タンパク質変性剤を加えること でタンパク質が変性して凝集する場合がある 。このような場合には測定対象物であるATP等 の核酸が変性により凝集したタンパク質中に 埋没して抽出が困難になってしまう場合もあ り、正確な測定ができるとはいえない。また 、従来のATP抽出方法である加熱処理方法も、 本発明のヌクレオチド抽出方法に組み合わせ て処理することができるが、タンパク質が多 く含まれる試料の場合には、同様に加熱によ り変性したタンパク質中に核酸が取り込まれ る場合もある。従って、タンパク変性剤や加 熱処理を組み合わせないでフェノール化合物 を含む溶液で処理することが最も効率的にヌ クレオチドを抽出することができるものと考 えられる。

 本発明のフェノール化合物を含む溶液のp Hは特に限定されないが、最も感度良く測定 行うためには、ルシフェラーゼ測定試薬等 核酸測定試薬において最も効率的に反応し るpHに合わせることが適当と考えられる。本 発明のフェノール化合物を含む溶液を用いて 試料を処理した場合には、例えばpH 4~10等ど ようなpHの溶液で処理しても、従来の抽出 法に比べて効果的にヌクレオチドが抽出さ る。例えばルシフェラーゼ試薬を用いてATP 測定する場合には、ルシフェラーゼの特質 よりpH 7~9付近で効果的な測定を行うことが きるため、本発明のフェノール化合物を含 溶液は、これらのpHとすることができ、よ 好適にはpH 8付近とすることができる。上記 のヌクレオチド抽出方法に使用されるフェノ ール化合物を含む溶液は、試料からのヌクレ オチド抽出用試薬として利用することができ る。

 本発明のヌクレオチド抽出用試薬におけ フェノール化合物の溶媒は、特に限定され いが、例えばTE(10mM Tris-HCl pH8.0, 1mM EDTA)を 用いることができる。さらに、必要に応じて 安定化剤を加えても良い。

 本発明のヌクレオチド抽出方法によると 試料に各種ヌクレオチドが存在する場合は ATPのみならず、GTPやUTP等も効果的に抽出さ る。本発明のヌクレオチドの測定は、測定 的対象物に応じて適宜測定方法を選択する とができ、自体公知の方法、または今後開 されるあらゆる測定方法を含めることがで る。今後開発される方法については、例え ATP、GTP又はUTP等の測定用試薬であって、目 に応じて、各々の核酸特異的に測定可能な 薬を用いて測定することが好ましい。

 自体公知の方法として、例えばATPの測定に いてはルシフェリン-ルシフェラーゼ発光反 応を利用する方法、ATP変換反応を利用する方 法等を適用することができる。ルシフェリン -ルシフェラーゼ発光反応を利用するATPの測 方法としては、ルシフェリンおよびルシフ ラーゼを含む発光試薬と、標的ATPとを、金 イオン(マグネシウムイオン等)の存在下で接 触させ、生成した光の発光量を測定する方法 が挙げられる。例えば、市販のATP測定用キッ トとして、ENLITEN (R)  ATP Assay System:プロメガ社、「細胞の」ATP測 定キット TM :東洋ビーネット社、「組織の」ATP測定キッ TM :東洋ビーネット社、ルシフェール250プラス TM :キッコーマン、等を用いることができる。 れらのATP測定用試薬を用いて測定すると、 発明のヌクレオチド抽出方法によりヌクレ チドを抽出して得た試料について、例えばGT PやUTP等のATPを除くヌクレオチドが含まれて ても、ATP特異的に測定することができる。

 今後開発されるヌクレオチド測定方法、 えば新たなATP測定方法、その他GTPやUTP特異 な新規測定方法が開発される場合にも本発 のヌクレオチド抽出方法を適用することが きる。

 本発明は、フェノール化合物を含む溶液 らなる、試料からヌクレオチドを抽出する めのヌクレオチド抽出用試薬にも及ぶ。ヌ レオチド抽出用試薬には、フェノール化合 のほか、さらにクロロホルムを含有してい も良い。また、本発明は、ヌクレオチド抽 用試薬及びヌクレオチド測定用試薬を含む クレオチド測定用試薬キットにも及ぶ。具 的には、フェノール化合物を含むヌクレオ ド抽出用試薬と、ルシフェラーゼを含むATP 定用試薬を含むヌクレオチド測定用試薬キ トにも及ぶ。

 本発明の理解を助けるために、以下に実 例を示して具体的に本発明を説明するが、 発明は本実施例に限定されるものでないこ はいうまでもない。

(実施例1)トリゾル(TRIzol (R) )試薬を用いたヌクレオチド抽出方法
 3週齢のマウス(C57BL/6J)の各組織(心臓、肝臓 脾臓、筋肉、血液)を摘出し、各組織0.05~0.4 gに、本実施例のヌクレオチド抽出用溶液3.0 mLを加え、ホモジナイズした。
 本実施例のヌクレオチド抽出用溶液として フェノール、グアニジンイソチオシアネー を含む市販のRNA抽出用試薬であるTRIzol (R) 試薬(pH 5.0:Invitrogen社)2.8 mLにクロロホルム200  μLを加えたものを用いた。
 上記ホモジナイズを4℃で12,000 rpm×10分間遠 心処理し、上清200 μLを保存用チューブに入 、-80℃にて保存した。

(実施例2)フェノールTE飽和溶液を用いたヌク オチド抽出方法
 本実施例のヌクレオチド抽出用溶液として 市販のフェノールTE飽和溶液(TE (10mM Tris-HCl  pH8.0, 1mM EDTA:WAKO社)2.8 mLにクロロホルム200 μLを加えたものを用いた他は、実施例1と同 の処理を行った。本抽出用溶液は、安定化 として0.1% (w/v)の8-ヒドロキシキノリンを含 み、pH8.0に調整されたものである。

(実施例3)フェノールTE飽和溶液(mod.)を用いた クレオチド抽出方法
 本実施例のヌクレオチド抽出用溶液として フェノール、グアニジンイソチオシアネー を含むフェノールTE飽和溶液(TE (10 mM Tris-H Cl pH8.0, 1 mM EDTA)2.8 mLにクロロホルム200 μL を加えたものを用いた他は、実施例1と同様 処理を行った。本抽出用溶液は、pH 8.0に調 されたものである。

(比較例1)TCAを用いたヌクレオチド抽出方法
 本比較例のヌクレオチド抽出用溶液として 市販のATP測定用試薬(ENLITEN (R)  rLuciferase/Luciferin Reagent:プロメガ社)が推奨 ているATP抽出用試薬(TCA含有)を用いた。
 実施例1と同様に3週齢のマウス(C57BL/6J)の各 織(心臓、肝臓、脾臓、筋肉、血液)を摘出 た。その後各組織0.05~0.4 gあたりに0.25 M ス クロース溶液(10 mM HEPES-NaOH、pH 7.4)を3.0 mL え、ホモジナイズした。上清500 μLをチュー ブに入れ、更に10%TCAを含む抽出用溶液500 μL チューブに加えた。上記抽出用溶液を含む 料液を4℃で12,000 rpm×10分間遠心処理し、上 清400 μLを新たなチューブに分注した。1.0 M Tris-Acetate(pH 7.75)を200 μL加えて攪拌した後 -80℃にて保存した。

(比較例2)ポリエチレングリコール(PEG)を用い ヌクレオチド抽出方法
 本比較例のヌクレオチド抽出用溶液として 市販のATP測定用試薬(『組織の』ATP測定キッ ト TM :東洋ビーネット社)に添付のATP抽出用試薬(PEG 含有)を用いた。
 比較例1と同様に3週齢のマウス(C57BL/6J)の各 織(心臓、肝臓、脾臓、筋肉、血液)を摘出 、各組織0.05~0.4 gあたりに0.25 M スクロース 溶液(10 mM HEPES-NaOH、pH 7.4)を3.0 mL加え、ホ ジナイズした。ホモジェネートを4℃で12,000 rpm×10分間遠心処理し、上清100 μLを新たな ューブに分注した。本比較例のPEG含有ATP抽 用溶液100 μLを加えて攪拌した後、室温にて 30分放置した後、-80℃にて保存した。

(実施例4)改良型ATP測定用試薬(rLuciferase/Luciferi n Reagent mod.)
 改良型ATP測定用試薬の組成を以下に示す。
  D-ルシフェリンカリウム (D-Luciferin Potassiu m Salt) 0.8 mg
  ホタル由来遺伝子組換ルシフェラーゼ(Luci ferase Recombinant) 1 mg/mL(緩衝液)
  緩衝液組成
   20 mM トリシン(Tricine: (HOCH 2 ) 3 C-NHCH 2 CO 2 H)
   1.05 mM Mg-Carbonate Hydroxide Pentahydrate
   2.7 mM 硫酸マグネシウム(Magnesium Sulfate)
   33.3 mM ジチオスレイトール(Dithiothreitol)

(実験例1)HPLCによる抽出産物の解析
 実施例2、比較例1及び2の、各ヌクレオチド 出方法で得られた肝組織の抽出液中のヌク オチド(ATP、UTP、GTP、CTP、ITP)の抽出につい 調べた。
 各抽出物の分析は、東ソー株式会社のHPLC分 析情報(Data code: G00707)に準じて行った。本分 析は溶離液としてアセトニトリル/75 mM カリ ウム2水素リン酸水溶液(70:30, v/v)、HPLCカラム としてTSK-gel (R)  Amide-80(5 μm、I.D. 4.6×250 mm)(東ソー株式会 )およびHPLC装置として日立高速液体クロマト グラフィー LaChrom TM  ELUTEシリーズ:日立ハイテクノロジーズ社を 用して実施した。抽出液は希釈せず0.025 mL カラムに供し、カラム温度30℃、1.0 mL/minの 流速、260 nmの波長でモニターした。なお、 準核酸物質としてATP、UTP、GTP、CTP(シグマ社) を使用した。

 上記の分析結果を、図1~4に示した。図1は 、標準核酸物質の抽出パターンであり、図2 実施例2のフェノールTE飽和溶液(pH8.0)を用い ヌクレオチド抽出方法により得られた抽出 の抽出パターンであり、図3は同様に比較例 1のTCAを用いたヌクレオチド抽出方法による のであり、図4は比較例2のPEGを用いたヌクレ オチド抽出方法によるものである。これらの 結果より、実施例2の抽出方法により得られ 抽出物中には、比較例1、2の抽出方法により 得られた抽出物に比べ、ATP、GTP及びUTPがより 多く抽出されることが確認された。

(実験例2)各組織中のヌクレオチド量について
 実施例2、比較例1及び2の、各ヌクレオチド 出方法で得られた脳、心臓、肝臓、筋肉の 組織の抽出液中のヌクレオチド(ATP、UTP、GTP )の抽出について、HPLCにより調べた。HPLCの測 定条件は、実験例1と同様に行った。

 上記の分析の結果、実施例2の方法で抽出 した場合には、比較例1及び2の方法で抽出し 場合に比べて、各ヌクレオチドについて高 抽出効果が認められた(図5)。

(実験例3)各組織のATP抽出について
 実施例1~3、及び比較例1、2の各抽出方法を った希釈試料10μLを、ENLITEN (R)  rLuciferase/Luciferin Reagent:プロメガ社90μLで、1 /10倍に希釈し、ATPの測定を行った。タンパク 質量は、BCA TM タンパク定量アッセイキット(BCA TM  Protein Assay Kit, PIERCE社)により測定した。

 その結果、タンパク質あたりのATP量は、 較例1及び2の方法で抽出した場合に比べて 実施例1~3の方法で抽出した場合のほうが、 い結果が得られ、効果的にATP量を測定でき ことが示唆された(図6)。

(実験例4)遺伝性カルニチン欠乏JVSマウスのATP 量の測定
 本発明のヌクレオチド抽出方法により抽出 た場合のATP測定値について、動物組織でのA TPの低下を、全身性カルニチン欠損症、即ち トコンドリアの脂肪酸代謝障害の疾患モデ として確立しているJVS(juvenile visceral steatos is) マウスを用いて調べた。JVSマウスは、sodi um-dependent carnitine cotransporter (OCTN2)遺伝子の スセンス変異を伴ったマウスで、先天性長 脂肪酸代謝障害を示す (Lu K, Nishimori H, Na kamura Y, Shima K, Kuwajima M. Biochem Biophys Res  Commun 252:290-594, 1998)。このマウス に、イン ルエンザウイルス(Influenza A/PR/8/38株)を感染 させた場合の、血液、肝臓、心臓及び脾臓で のATPレベルを測定し、多臓器不全の程度を判 定した。

 7日齢の野生型マウス(C57BL/6J)、OCTN2遺伝子 のヘテロ型欠損マウスとホモ型欠損マウス(JV Sマウス)に、インフルエンザウイルスを感染 せ、3日放置した。10日齢の野生型及びJVSマ スについて、インフルエンザウイルス感染 しのマウスと3日間感染させた各マウスにつ いて、実施例1と同様に各組織を摘出し、実 例2の方法に従いヌクレオチド抽出を行い、A TPの定量を行った。ATPの定量は、実験例3の方 法に従った。

 各組織におけるATPレベルを、図7~10に示し た。各図において、+/+は野生型マウスを、+/- はヘテロ型欠損マウスを、-/-はJVSマウスを示 す。各組織について、インフルエンザに感染 したマウスでは、非感染マウスに比べて野生 型、ヘテロ型欠損、JVSマウスのいずれでもATP 量は低下傾向にあるが、中でもJVSマウスの場 合ではATP量が著名に低値を示した事実から、 多臓器不全を来していることが確認された。

(実験例5)ルシフェラーゼを用いたATP測定試薬 のATP特異性の確認
 以上の実験例の結果より、本発明のヌクレ チド抽出法により動物の組織から効率良く クレオチドを抽出することが可能であるこ が明らかとなった。しかし、実験例1及び2 示したように、動物の組織にはATPの他にも 々なヌクレオチドが存在する。本実験例で 、各抽出液に含まれるATP以外のヌクレオチ がルシフェラーゼ発光反応に影響するか否 を検討した。ATP各希釈溶液に各濃度のGTP又 AMPを混合した溶液を調製し、これらの溶液 ついて実験例3の方法に従い、ルシフェラー 発光反応を行った。

 その結果、ルシフェラーゼ発光反応によるA TP測定には、組織中に存在すると考えられるG TP、AMP量、さらにそのATP濃度の10 6 ~10 9 倍のGTP、AMP濃度存在下においても影響のない ことが確認された(図11)。

(実験例6) ヒトの血液試料のATPの測定
 健常者(被験者)の末梢血を試料とし、実施 1~3に示すヌクレオチド抽出方法により抽出 たATP測定値と、比較例1及び2の、各ヌクレオ チド抽出方法で測定したATP測定値を比較した 。被験者(3名)の末梢血試料は、インフォーム ド・コンセントを書面で行い、徳島大学倫理 審査委員会の承認を得て、採血を行ったもの を用いた。ATPの定量は、実験例3に従った。

 上記の測定の結果、実施例1~3の方法で抽 した場合には、比較例1及び2の各抽出法を いて抽出した場合に比べて、ATPの高い抽出 果が認められた(図12参照)。

(実験例7)ヒト患者の血液試料のATPの測定
 各種疾患で入院したヒト患者(被験者)の末 血を試料とし、実施例2の方法で抽出した場 のATP測定値について、健常者の末梢血を試 に比べてATPレベルが低下しているかどうか ついて調べた。被験者の末梢血試料は、イ フォームド・コンセントを書面で行い、徳 大学の倫理審査委員会の承認を得て、採血 行ったものを用いた。被験者は、脳症患者6 名、ミトコンドリア脳筋症の患者5名、そし 、脳症の回復期の患者3名であった。

 上記の測定の結果、脳症(急性期)の患者 ミトコンドリア脳筋症の患者においては、 梢血のATPレベルは低値(1 mM以下)を示したが 脳症の回復期の患者では、末梢血中のATPレ ルが1.2 mM以上であり、ATPレベルが回復して いることが確認された(図13参照)。

(実験例8)各組織のATP抽出量の測定について
 脳症で入院したヒト患者(脳症の回復期の患 者(健常者)5名、脳症(急性期)の患者4名)の末 血を試料とし、実施例2の方法で抽出した。 存の市販品及び実施例4の改良型ATP測定用試 薬を用いたATP測定方法の比較試験を行った。
 実施例2の方法で抽出した希釈試料(1/10,000倍 希釈)10μLを、市販のATP試薬(ENLITEN (R)  rLuciferase/Luciferin Reagent:プロメガ社)90μLで、 1/10倍に希釈し、ルミノメーター(TD-20/2:TURNER  DESIGN社)でルシフェラーゼの発光量を測定し 。同時に、ATP標準溶液(10 -7  M)を1/10倍~1/10,000,000倍まで段階的に希釈した 溶液を調製し、ATP濃度とルシフェラーゼの発 光量との相関関係を表す標準曲線を作成した 。この標準曲線をもとに、ルシフェラーゼの 発光量から試料中に存在するATP濃度を算出し た。

 同様に実施例2の方法で抽出した希釈試料 10μLを、実施例4の改良型ATP測定用試薬90μLで 釈した。他は、上記市販の試薬を用いた方 と同様の方法で試料中に存在するATP濃度を 出した。

 上記の比較試験の結果、市販のATP試薬又 実施例4の改良型ATP試薬で測定した場合では 、ほぼ同様の結果が得られることが確認され た(図14参照)。

 以上の結果から、本発明のフェノール化 物を含む溶液を用いたヌクレオチドの抽出 によると、動物組織中のヌクレオチドを効 良く抽出可能なことが確認され、さらに本 明のATPの測定方法に使用したルシフェラー 発光を指標とする試薬では、ルシフェラー 発光は抽出した核酸のATPのみに反応するこ が再確認された。さらに、改良型ATP測定用 薬(rLuciferase/Luciferin Reagent mod.)を用いるこ で、従来の方法と比較して、より安価に測 試料中のATP量の測定を実現可能なことが明 かになった。

 以上詳述したように、本発明のヌクレオ ドの抽出方法により、効果的にATP、GTP又はU TPを抽出可能なことが確認された。従って、 果的にこれらのヌクレオチドの測定を行う とができる。そのため、本発明のヌクレオ ド抽出方法に使用する抽出用溶液を、ヌク オチド抽出用試薬とすることができ、ATP、G TP又はUTPの測定用試薬キットに含めることが きる。特に、現実に市販されているATP測定 試薬を用いて測定する場合にも、本発明の 出方法は有効に利用できることから、既存 ATP測定用試薬に添付するATP抽出用試薬とし も用いることができ、このような抽出用試 を含むATP測定用試薬キットとして提供する とができる。

 本発明のヌクレオチドの抽出方法は、各 工業分野、特に、バイオ・臨床検査・医学 の現場における標的ATPの測定法として好適 使用できる。なかでも、患者の末梢血のATP ベルを測定する技術は、患者の容態をモニ リングする一つの指標として、医療機関に 及する可能性がある。