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Title:
PHARMACEUTICAL AGENT AND METHOD FOR TREATMENT OR PREVENTION OF ARTICULAR CARTILAGE DEFORMATION
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/078588
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed are a pharmaceutical agent and a method for effectively preventing the apoptosis of an articular cartilage in osteoarthritis or the like. Specifically disclosed are: a pharmaceutical agent for preventing the apoptosis of an articular cartilage, which comprises an osteoclastogenesis inhibitory factor as an active ingredient; and a method for preventing the apoptosis of an articular cartilage, which comprises administering an osteoclastogenesis inhibitory factor to a subject.

Inventors:
ASOU YOSHINORI (JP)
TSUDA EISUKE (JP)
Application Number:
PCT/JP2007/074212
Publication Date:
July 03, 2008
Filing Date:
December 17, 2007
Export Citation:
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Assignee:
NAT UNIV CORP TOKYO MED & DENT (JP)
DAIICHI SANKYO CO LTD (JP)
ASOU YOSHINORI (JP)
TSUDA EISUKE (JP)
International Classes:
A61K38/00; A61P19/02; A61P43/00
Foreign References:
JP2004537980A2004-12-24
JP2004520011A2004-07-08
Other References:
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Attorney, Agent or Firm:
HIROTA, Koichi et al. (NAGARE & ASSOCIATES4th Floor, Shinjuku TR Bldg.,2-2-13, Yoyogi, Shibuya-ku, Tokyo 53, JP)
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Claims:
 関節軟骨における軟骨細胞のアポトーシス抑制剤であって、破骨細胞形成抑制因子を有効成分とすることを特徴とするアポトーシス抑制剤。
 破骨細胞形成抑制因子が被検体の関節内に投与される、請求項1に記載のアポトーシス抑制剤。
 変形性関節症を治療又は予防するための医薬である、請求項1又は2に記載のアポトーシス抑制剤。
 関節軟骨における軟骨細胞のアポトーシスを抑制する方法であって、破骨細胞形成抑制因子を被検体に投与することを特徴とする方法。
 破骨細胞形成抑制因子が被検体の関節内に投与される、請求項4に記載の方法。
 変形性関節症を治療又は予防するための方法である、請求項4又は5に記載の方法。
Description:
関節軟骨の変性を治療又は予防 るための医薬及び方法

 本発明は、変形性関節症等における関節 骨のアポトーシスを抑制するための医薬及 方法に関する。

 変形性関節症(Osteoarthritis:OA)は、例えば、加 齢とともに関節軟骨が変性し、関節の炎症及 び疼痛を惹起する疾患であり、特に高齢者の QOLを低下させている主要な要因の一つである 。その患者数は全国に1000万人を超えること 明らかになっており、また関節形成術以外 根治的な治療法は確立されていない。現在 般的に行われているOAの保存的治療法として は、消炎鎮痛剤の内服・外用、ヒアルロン酸 やステロイドの関節内注射などが挙げられる が、いずれも対症療法であり、特に進行例で は無効であることも多い。そのため、より効 果的なOAの保存的治療法の開発が期待されて るのが現状である。
 また、前記疾患は、メカニカルストレスの 積により軟骨の変性と反応性の骨硬化・骨 形成が進行する病態であるが、その分子レ ルの背景に関しては殆ど解明されていない この要因のひとつとして、遺伝子改変技術 最も進んでいるマウスにおいて適当なOA誘 モデルが存在しなかったことが挙げられる そこで、近年、OAの病態解明及び治療法の確 立を目的として、関節不安定性負荷によるマ ウスOAモデルの確立が亀倉らによって報告さ た(非特許文献1参照)。このモデルの組織学 解析によって、OAの発症・進行過程は、1)関 節軟骨の変性、2)病的肥大軟骨細胞の出現、3 )骨硬化と骨棘の形成、の3段階に大きく分類 れることが明らかとなった。なお、それぞ の段階には独立した分子背景があるものと えられているが、その詳細については未だ 明されていないのが現状である。

 また、破骨細胞形成抑制因子(Osteoclastogene sis Inhibitory Factor:OCIF)は、オステオプロテジ リン(Osteoprotegerin:OPG)とも呼ばれ(従って、本 明細書中、破骨細胞形成抑制因子を「OCIF/OPG と称することがある)、破骨細胞形成促進因 子RANKLのデコイ(おとり)レセプターとして広 知られており、RANKLと結合することによって 破骨細胞分化を強力に阻害することから、骨 粗鬆症などの病的な骨量低下に対して効果が 期待されているタンパク質である(非特許文 2及び非特許文献3参照)。また、前記破骨細 形成抑制因子は、アジュバント関節炎マウ 等に全身投与することにより、間接的に軟 の保護効果を奏することが報告されている( 特許文献4参照)。ここで、軟骨下骨は、関 軟骨を裏打ちし、軟骨細胞を力学的に支持 るのみならず、血液供給などを介して軟骨 胞の代謝に寄与している部位であるが、前 破骨細胞形成抑制因子を全身投与された各 節炎マウスでは、関節の炎症によって惹起 れるこの軟骨下骨における異常な骨吸収が 記破骨細胞形成抑制因子の作用によって抑 されることにより、間接的に関節軟骨が保 されたものと考えられていた。しかしなが 、変形性関節症の症状においては、通常炎 は惹起されないため、この知見は破骨細胞 成抑制因子が実際の変形性関節症における 骨変性を改善することを示唆するものでは い。

 また、ラットの変形性関節症モデル(Sodium  iodoacetateの関節内注射或いは前十字靭帯切 により作製)における膝関節軟骨細胞にTRAIL 現が亢進すること、及びin vitroにおいてTRAIL が軟骨細胞のアポトーシスを誘導することが 報告されている(非特許文献5参照)。

 しかしながら、このような関節軟骨のア トーシスを効果的に抑制することができ、 形性関節症等における関節軟骨の変性を効 的に治療又は予防可能な医薬及び方法につ ては、未だ開発がなされておらず、そのた 、このような優れた医薬及び方法の提供が まれているのが現状である。

Kamekuraら(2005)Osteoarthritis Cartilage 13,632-41 Yasudaら(1998)Proc Natl Acad Sci USA95,3597-602 Mizunoら(1998)Biochem Biophys Res Commun 247,610- 5 Campagnuoloら(2002)Arthritis Rheum 46,1926-36 Arthritis Rheum. 2004 Feb;50(2):534-42

 本発明は、前記従来における諸問題を解 し、以下の目的を達成することを課題とす 。即ち、本発明は、変形性関節症等におけ 関節軟骨のアポトーシスを効果的に抑制し る医薬及び方法を提供することを目的とす 。

 前記課題を解決するため、本発明者らは 意検討した結果、以下のような知見を得た 即ち、前記破骨細胞形成抑制因子(OCIF/OPG)を 関節内に直接投与することにより、関節内の 軟骨細胞のアポトーシスを直接的、かつ効果 的に抑制することができ、したがって、変形 性関節症における関節軟骨の変性を効果的に 治療又は予防することができるという知見で ある。

 前記したような軟骨下骨を介した間接的 軟骨細胞の保護(例えば、前記非特許文献4 照)とは異なり、前記破骨細胞形成抑制因子 関節内に直接投与することによれば、変形 関節症等における軟骨細胞のアポトーシス 直接的、かつ効果的に抑制することができ そのため、変形性関節症等における関節軟 の変性を効果的に治療又は予防することが きることは、従来全く知られておらず、本 明者らによる新たな知見である。

 本発明は、本発明者らによる前記知見に基 くものであり、前記課題を解決するための 段は、以下の通りである。即ち、
 <1> 関節軟骨における軟骨細胞のアポ ーシス抑制剤であって、破骨細胞形成抑制 子を有効成分とすることを特徴とするアポ ーシス抑制剤である。
 <2> 破骨細胞形成抑制因子が被検体の 節内に投与される、前記<1>に記載のア トーシス抑制剤である。
 <3> 変形性関節症を治療又は予防する めの医薬である、前記<1>又は<2>に 載のアポトーシス抑制剤である。
 <4> 関節軟骨における軟骨細胞のアポ ーシスを抑制する方法であって、破骨細胞 成抑制因子を被検体に投与することを特徴 する方法である。
 <5> 破骨細胞形成抑制因子が被検体の 節内に投与される、前記<4>に記載の方 である。
 <6> 変形性関節症を治療又は予防する めの方法である、前記<4>又は<5>に 載の方法である。

 本発明によれば、前記従来における諸問 を解決し、前記目的を達成することができ 変形性関節症等における関節軟骨のアポト シスを効果的に抑制しうる医薬及び方法を 供することができる。

図1は、実施例1における各群の変形性 節症(OA)モデルマウスの関節軟骨におけるサ ラニンO染色像である。 図2は、実施例1における各群の変形性 節症(OA)モデルマウスのMankin Scoreを表したグ ラフである。 図3は、実施例1における各群の変形性 節症(OA)モデルマウスのcartilage destruction scor eを表したグラフである。 図4は、実施例1における各群の変形性 節症(OA)モデルマウスの関節軟骨の厚みを表 たグラフである。 図5は、実施例1における各群の変形性 節症(OA)モデルマウスの滑膜及び関節軟骨に ける抗OCIF/OPG抗体を用いた免疫染色像であ 。 図6は、実施例1における各群の変形性 節症(OA)モデルマウスの関節軟骨における抗T RAIL抗体を用いた免疫染色像である。 図7は、実施例1における各群の変形性 節症(OA)モデルマウスの関節軟骨におけるTUNE L染色像である。 図8は、実施例1における各群の変形性 節症(OA)モデルマウスの関節軟骨におけるTUNE L陽性細胞の割合を表したグラフである。 図9は、参考例1における各群の変形性 節症(OA)モデルマウスの関節軟骨におけるサ ラニンO染色像である。 図10は、参考例1における各群の変形性 関節症(OA)モデルマウスのMankin Scoreを表した ラフである。 図11は、参考例1における各群の変形性 関節症(OA)モデルマウスのcartilage destruction sc oreを表したグラフである。 図12は、参考例1における各群の変形性 関節症(OA)モデルマウス大腿骨部のX線写真で る。 図13は、参考例2における、各年齢層のOCIF/OPG 損マウス(OCIF/OPG +/- 、OCIF/OPG -/- )及び野生型マウス(WT)の関節軟骨におけるサ ラニンO染色像である。 図14は、参考例2における、変形性関節症(OA) 誘導した若年のOCIF/OPGへテロ欠損マウス(OCIF/ OPG +/- )及び野生型マウス(WT)の関節軟骨におけるサ ラニンO染色像である。 図15は、参考例2における、変形性関節症(OA) 誘導した若年のOCIF/OPGへテロ欠損マウス(OCIF/ OPG +/- )及び野生型マウス(WT)のMankin Scoreを表したグ ラフである。 図16は、参考例2における、変形性関節症(OA) 誘導した若年のOCIF/OPGへテロ欠損マウス(OCIF/ OPG +/- )及び野生型マウス(WT)のcartilage destruction scor eを表したグラフである。 図17は、参考例2における、変形性関節症(OA) 誘導した若年のOCIF/OPGへテロ欠損マウス(OCIF/ OPG +/- )及び野生型マウス(WT)の関節軟骨の厚みを表 たグラフである。

(アポトーシス抑制剤)
 本発明のアポトーシス抑制剤は、関節軟骨 おける軟骨細胞のアポトーシスを抑制する めのアポトーシス抑制剤であり、破骨細胞 成抑制因子を有効成分として含み、更に必 に応じて適宜その他の成分を含んでいる。 お、前記アポトーシス抑制剤の好ましい態 は、変形性関節症における関節軟骨の変性 治療又は予防するための医薬であり、その ましい投与態様は、被検体の関節内への直 投与である。

<破骨細胞形成抑制因子>
 本発明において、前記破骨細胞形成抑制因 としては、OCIF/OPGそのものの他、その類縁 若しくはその変異体、又はそれらの修飾体 挙げることができる。

 前記OCIF/OPGは、当初、破骨細胞形成抑制活 を指標として単離されたものであり、破骨 胞の分化/成熟を抑制する活性を有するタン ク質である(国際公開第96/26217号及び米国特 第6,855,808号)。具体的には、OCIF/OPGは、下記 (a)~(d)に記載の物理化学的性質を有し、且つ 、破骨細胞の分化及び/又は成熟抑制活性を するタンパク質を意味する(国際公開第96/2621 7号及び米国特許第6,855,808号)。
(a) 分子量(SDS-PAGEによる):約60kD(還元条件下) 約60kD及び約120kD(非還元条件下)。
(b) 親和性:陽イオン交換体及びヘパリンに親 和性を有する。
(c) 熱安定性:70℃、10分間又は56℃、30分間の 熱処理により、破骨細胞の分化・成熟抑制 性が低下し、90℃、10分間の加熱処理により 破骨細胞の分化・成熟抑制活性が失われる。
(d) 内部アミノ酸配列:配列番号1~3記載のアミ ノ酸配列を内部アミノ酸配列として有する。
 なお、配列番号1~3記載のアミノ酸配列にお て、Xaaは任意のアミノ酸を取りうるが、好 しくは、配列番号1において1位のXaaはThrで り、配列番号2において1位のXaaはArgであり、 5位のXaaはSerであり、13位のXaaはLeuであり、配 列番号3において1位のXaaはThrである。
 ここで、本件実施例(後述)においては、OCIF/ OPGが、関節軟骨のアポトーシスを直接抑制す ることが見出された。従って、本発明におけ るOCIF/OPGは、関節軟骨のアポトーシスを直接 制する活性を有するものである。
 上記(a)の物理化学的性質から判るように、O CIF/OPGは、一量体と二量体の形態をとりうる( 際公開第96/26217号及び米国特許第6,855,808号) OCIF/OPGを発現する細胞(例えば、天然にはヒ 胎児肺線維芽細胞IMR-90(ATCC寄託-受託番号CCL1 86))を含む培養液等には、当該一量体と二量 とが通常混在する。そこで、通常の分離方 によりいずれか一方の形態のOCIF/OPGを精製し 、本発明において使用してもよい。
 ヒトOCIF/OPGは、シグナルペプチドを含む前 体(cDNA:配列番号4及びアミノ酸配列:配列番号 5)として合成され、シグナルペプチドが切断 れ、成熟型タンパク質(配列番号5に示すア ノ酸配列において、シグナルペプチド(第1番 目~第21番目のアミノ酸配列)を除くアミノ酸 列)となる。本発明において、OCIF/OPGは、上 のヒト由来のシグナルペプチドを含む前駆 及び成熟型タンパク質のいずれをも含むが 成熟型タンパク質が好ましい。

 前記OCIF/OPG類縁体とは、OCIF/OPGをコードする 塩基配列と相補的な塩基配列から成るDNAとハ イブリダイズするDNAによりコードされ、且つ 関節軟骨のアポトーシスを抑制するタンパク 質を意味し、その中でも、更に活性物質とし て用いられる場合、関節軟骨の変性改善作用 を有するものが本発明の医薬の活性物質とし て使用される。OCIF/OPG類縁体は、例えば、動 細胞、体液又は組織由来のcDNAライブラリー を鋳型として、ヒトOCIF/OPGのcDNA(配列番号4)と 相補的な塩基配列から成るDNAをプローブとし 、ストリンジェントな条件下でハイブリダイ ズするDNAによりコードされる、関節軟骨のア ポトーシス抑制活性を有するタンパク質であ る。ここで、ストリンジェントな条件とは、 いわゆる特異的なハイブリッドが形成される 条件をいう。このようなストリンジェントな 条件は、当業者には周知であり、例えばCurren t Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,N. Y.(1989),6.3.1-6.3.6に見出すことができる。スト ンジェントなハイブリダイゼーション条件 好ましい非制限的例としては、約45℃の6× 化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)にお るハイブリダイゼーション後、50~65℃の0.2×S SC、0.1%SDSで1回以上洗浄するものが挙げられ 。
 具体的なOCIF/OPG類縁体としては、例えば、 際公開第96/26217号及び米国特許第6,855,808号に 開示のOCIF2(cDNA:配列番号6及びアミノ酸配列: 列番号7)、OCIF3(cDNA:配列番号8及びアミノ酸配 列:配列番号9)、OCIF4(cDNA:配列番号10及びアミ 酸配列:配列番号11)、及びOCIF5(cDNA:配列番号12 及びアミノ酸配列:配列番号13)が挙げられる なお、OCIF2~5におけるシグナルペプチドのア ノ酸配列及び成熟型タンパク質のアミノ酸 列は、以下の表1に示す通りである。

 また、前記OCIF/OPG変異体とは、上述のOCIF/OPG 又はOCIF/OPG類縁体において、1又は複数のアミ ノ酸が置換、欠失、挿入及び/又は付加され アミノ酸配列から成り、且つ関節軟骨のア トーシス抑制活性を有するタンパク質を意 し、その中で、更に関節軟骨の変性改善作 を有するものが本発明の医薬の活性物質と て使用される。OCIF/OPG変異体において、上記 複数のアミノ酸は、数個(例えば、1~10個、好 しくは1~5個、特に好ましくは1~3個)であって もよい。なお、ヒトOCIF/OPG(配列番号5記載の ミノ酸配列)においては、C末端から204アミノ 酸までを欠失させたC末端欠失変異体におい も、破骨細胞分化及び/又は成熟抑制活性が 認されており、生物活性は主にN末端側のド メインによるものと考えられている(国際公 第96/26217号、米国特許第6,855,808号及びYamaguchi  K.ら,The Journal of Biological Chemistry(1998),Vol.27 3,No.9,pp.5117-5123)。このようなC末端欠失変異体 も、本発明における関節軟骨のアポトーシス 抑制目的において使用することが考えられる 。
 OCIF/OPG変異体の好適な態様としては、ヒトOC IF/OPG(配列番号5記載のアミノ酸配列)において 数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入及び/又 付加したアミノ酸配列からなり、且つ関節 骨のアポトーシス抑制活性、並びに関節軟 変性改善作用を有するタンパク質、及びヒ OCIF/OPG(配列番号5記載のアミノ酸配列)におい て第22番目のGluをN末端とし、第197番目~第400 目のいずれかのアミノ酸をC末端とするタン ク質であって、関節軟骨のアポトーシス抑 活性並びに関節軟骨変性の改善作用を有す タンパク質が挙げられる。
 更に、OCIF/OPG変異体には、上述のOCIF/OPG又は OCIF/OPG類縁体をコードするヌクレオチド配列 、少なくとも約60~65%、好ましくは約70~75%、 に好ましくは約80~85%、特に好ましくは約90~9 5%以上同一であるヌクレオチド配列によりコ ドされ、且つ関節軟骨のアポトーシス抑制 性並びに関節軟骨変性改善作用を有するタ パク質が含まれる。

 前記OCIF/OPG修飾体とは、例えば、上述したOC IF/OPG、その類縁体又は変異体のペプチドや糖 鎖の酵素的又は化学的修飾体、或いはポリマ ー等の高分子化合物や多糖類の修飾体を意味 する。OCIF/OPG修飾体としては、例えばタンパ 質の翻訳後修飾(例えば、糖の付加、プロテ インキナーゼによるリン酸化やホスファター ゼによる脱リン酸化)、水溶性ポリマー(ポリ チレングリコール、エチレングリコール/プ ロピレングリコール共ポリマー、カルボキシ メチルセルロース、ポリビニルアルコール、 PolyPEG(copolymer of poly(ethyleneglycol)allylmethylether and maleamic acid sodium salt)、ヘパリン、デキ トラン硫酸等)等による化学修飾等の修飾が なされたOCIF/OPG、その類縁体又は変異体が挙 られる。更に、例えば、OCIF/OPG、その類縁 又は変異体とFc(IgG等の免疫グロブリン由来 Fc領域)やアルブミン等のペプチドやタンパ 質との融合タンパク質;OCIF/OPG、その類縁体 は変異体と多糖類(ヘパリン、デキストラン 酸等)との複合体;及びOCIF/OPG、その類縁体又 は変異体とPolyPEGとの複合体も、OCIF/OPG修飾体 に含まれる。
 具体的には、OCIF/OPG、その類縁体又は変異 のポリエチレングリコールによる修飾体は 例えば、国際公開第97/23614号に記載の方法に より製造できる。また、OCIF/OPG、その類縁体 は変異体の多糖類による修飾体において、 糖類としてはデキストラン硫酸、特にデキ トラン硫酸ナトリウム5(DS5)が好ましく、こ ような修飾体は、例えば、特開2003-160601号 米国特許出願公開第2003-0045456号に記載の方 により製造できる。更に、OCIF/OPG、その類縁 体又は変異体のPolyPEGによる修飾体は、例え 、特開2005-206569号や米国特許出願公開第2006-0 062754号に記載の方法により製造できる。

 なお、ヒト以外の動物(例えば、ラット、 マウス、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、 ヒツジ、ヤギ等の哺乳動物、並びにニワトリ 、ガチョウ、シチメンチョウ等の鳥類)由来 OCIF/OPGも、上述の定義の範囲内にあれば、前 記OCIF/OPG、その類縁体若しくは変異体、又は 飾体に含まれる。

 OCIF/OPG、その類縁体若しくは変異体、又は れらの修飾体(以下、「OCIF/OPG物質」という) 、動物の組織や体液等から、又は動物細胞 培養物等からタンパク質として抽出、精製 れた天然型のタンパク質として、或いは、 れらOCIF/OPG物質をコードするDNA断片又は当 DNA断片を含有するベクターで動物細胞や大 菌等の宿主を形質転換し、生産される遺伝 組換え型(以下では、ヒト遺伝子組換えタン ク質について「rh」という場合がある)タン ク質として、更にはこれらの修飾体として 取得することができる。例えば、国際公開 96/26217号(及び米国特許第6,855,808号)に開示の OCIF/OPGの製造方法に準じて、OCIF/OPG物質をOCIF/ OPG物質産生細胞より単離・精製することがで きる。具体的には、OCIF/OPG物質産生細胞を培 し、培養液をヘパリンカラム(ヘパリン-セ ァロースCL-6B、ファルマシア社)に供し、2M N aClを含む10mM Tris-HCl緩衝液(pH7.5)で溶出する。 次いで、得られたヘパリン吸着性OCIF/OPG物質 分をQ・陰イオン交換カラム(HiLoad-Q/FF、ファ ルマシア社)に供し、その非吸着画分を集め 。このようして、ヘパリン吸着性によりヘ リン親和性のOCIF/OPG物質画分を得ることがで きる。得られたOCIF/OPG物質活性画分をS・陽イ オン交換カラム(HiLoad-S/HP、ファルマシア社) ヘパリンカラム(ヘパリン-5PW、トーソー社) シバクロンブルーカラム(ブルー-5PW、トーソ ー社)、逆相カラム(BU-300 C4、パーキンエルマ ー社)に供することにより、OCIF/OPG物質を単離 ・精製することができる。
 また、このように製造されるOCIF/OPG物質の 節軟骨変性改善作用は、例えば、後述する 施例に記載の方法により測定することがで る。
 なお、OCIF/OPG物質中、本発明の医薬の活性 質としては、好適にはOCIF/OPG又はその修飾体 であり、より好適にはOCIF/OPGである。

<その他の成分>
 前記その他の成分としては、特に制限はな 、本発明の効果を損なわない範囲内で目的 応じて適宜選択することができる。例えば 前記破骨細胞形成抑制因子の関節への注入 に、ヒアルロン酸ナトリウムを同時に投与 ることができる。また、前記アポトーシス 制剤中の前記その他の成分の含有量として 、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択 ることができる。

<剤型>
 前記アポトーシス抑制剤の医薬としての剤 には、特に制限はなく、目的に応じて適宜 択することができるが、中でも、前記医薬 被検体の関節内に投与されることを特徴と ることから、前記関節内への直接投与が可 な、注射剤であることが好ましい。前記注 剤としては、例えば、水性注射剤、懸濁性 射剤、用時溶解用固形注射剤などが挙げら る。
 前記注射剤は、例えば、前記破骨細胞形成 制因子に、pH調節剤、緩衝剤、安定化剤、 張化剤、局所麻酔剤等の医薬用の添加剤を 加することにより、製造することができる
 前記pH調節剤及び前記緩衝剤としては、例 ば、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム リン酸ナトリウムなどが挙げられる。前記 定化剤としては、例えば、ピロ亜硫酸ナト ウム、EDTA、チオグリコール酸、チオ乳酸な が挙げられる。前記等張化剤としては、例 ば、塩化ナトリウム、ブドウ糖などが挙げ れる。前記局所麻酔剤としては、例えば、 酸プロカイン、塩酸リドカインなどが挙げ れる。

<適用>
 前記医薬は、例えば、変形性関節症におけ 関節軟骨の変性の治療又は予防に好適であ 。
 ここで、前記「関節軟骨」としては、特に 限はなく、全身の関節における軟骨の中か 目的に応じて適宜選択することができ、例 ば、膝関節、肩関節、股関節、顎関節等の 骨などが挙げられる。これらの中でも、前 「関節軟骨」としては、膝関節、股関節の 骨が好ましい。
 なお、前記関節軟骨の「変性」とは、前記 節軟骨が正常でない無い状態を指すものと 、その状態としては、特に制限はなく、目 に応じて適宜選択することができ、例えば 前記関節軟骨の磨耗、分解、破壊、消失、 形などが挙げられる。

<投与>
 好ましい投与態様においては、前記医薬は 被検体の関節内に直接投与されることによ 使用される。中でも、前記被検体としては 変形性関節症患者が好適であり、中でも、 期から進行期までの変形性膝関節症患者が に好適である。また、前記被検体としては 炎症を伴わない変形性関節症患者であるこ が好ましい。前記医薬は、関節内に投与さ ることから、経口投与が困難な被検体への 用にも好適である。なお、前記被検体の生 種としては、前記医薬の投与対象となり得 生物であれば特に制限はなく、目的に応じ 適宜選択することができ、例えば、ヒト、 ウス、ラット、ウシ、ウマ、イヌ、ブタ、 ルなどが挙げられる。好適にはヒト、ウマ 又はイヌであり、より好適にはヒトである
 前記医薬の投与方法の好ましい態様は、関 内投与である。前記関節内投与の手法とし は、特に制限はなく、公知の手法の中から 的に応じて適宜選択することができ、例え 、前記注射剤の剤型として製造した前記医 を、目的の関節腔内に注射器等を用いて注 することにより行うことができる。
 前記医薬の投与量としては、特に制限はな 、前記被検体の年齢、体重、所望の効果の 度等に応じて適宜選択することができるが 例えば、成人への1回の投与あたり、有効成 分である前記破骨細胞形成抑制因子の量とし ては、好適には0.1~8000μg、より好適には1~2000 g、更に好ましくは3~600μgである。
 前記医薬の投与時期としては、特に制限は く、目的に応じて適宜選択することができ 前記関節軟骨の変性に対し、予防的に投与 れてもよいし、治療的に投与されてもよい また、前記したように、変形性関節症の発 ・進行過程は、1)関節軟骨の変性、2)病的肥 大軟骨細胞の出現、3)骨硬化と骨棘の形成、 3段階に大きく分類されることが知られてい るが、前記医薬を前記変形性関節症の患者に 適用する場合には、前記医薬は前記変形性関 節症の初期段階、即ち、1)関節軟骨の変性段 で投与されることが好ましい。

(方法)
 本発明の方法は、変形性関節症等における 節軟骨の変性に際し、関節軟骨のアポトー スを抑制するための方法であり、破骨細胞 成抑制因子を投与することを含み、更に必 に応じて適宜その他の工程を含む。好まし 投与態様は、被検体の関節内への直接投与 ある。本方法において、「関節軟骨の変性 、「破骨細胞形成抑制因子」、「被検体」 「関節内に投与」とは、前記した通りであ 。また、「その他の工程」としては、特に 限はなく、目的に応じて適宜選択すること でき、例えば、前記破骨細胞形成抑制因子 関節内投与のため、前記破骨細胞形成抑制 子を含む注射剤を製造する製造工程などが げられる。

[効果]
 前記アポトーシス抑制剤及び方法は、その ましい態様において破骨細胞形成抑制因子 関節内に直接投与することを特徴とするた 、破骨細胞形成抑制因子を関節内の軟骨細 に直接的、かつ効果的に作用させることが き、そのため、関節軟骨のアポトーシスを 果的に抑制し、変形性関節症に伴う関節軟 の変性を効果的に治療又は予防することが きる。

 以下に実施例を挙げて本発明を具体的に 明するが、本発明はこれらの実施例に何ら 定されるものではない。

(実施例1:関節軟骨の変性に対する破骨細胞形 成抑制因子関節内投与の影響)
 本実施例1では、マウスの変形性関節症(OA) デルを用い、破骨細胞形成抑制因子(OCIF/OPG) 関節内投与による関節軟骨の変性に対する 療又は予防効果を調べた。

<方法>
 亀倉らの方法(Kamekuraら(2005)Osteoarthritis Cartil age 13,632-41参照)に準じて、各マウス(C57BL/6;9 令、雄)の右膝関節内側側副靭帯、同内側半 板を切除することにより、変形性関節症(OA) モデルマウスを作製した。左膝関節はシャム 手術側とした。マウスを破骨細胞形成抑制因 子(OCIF/OPG)投与群とコントロール群とに分け(n =5)、手術翌日より、5日/週(1回/1日)、OCIF/OPG投 与群にはOCIF/OPG(100ng/10μl PBS)を、コントロー 群には10μl PBSのみを、右膝関節内にそれぞ れ注射した。手術後4週にて屠殺し、両膝関 を採取し、固定、脱灰、脱水の後にパラフ ン包埋し、薄切標本を作製して、以下の免 組織学的評価に供した。

[免疫組織学的評価]
 作製した各群の薄切標本にサフラニンO染色 を施し、Mankin Score、cartilage destruction scoreに よるOA重症度評価を行った。また、Image-pro pl us4.5(Media Cybernetics,Carlsbad,CA)を用い、サフラ ンOで赤色に染色されたプロテオグリカンを む関節軟骨の厚みを定量した。更に、作製 た各群の薄切標本について、抗マウスOCIF/OP G抗体、抗TRAIL(TNF-Related Apoptosis-Inducing Ligand) 体を用いて免疫染色を行った。また、TUNEL にて各群の関節軟骨のアポトーシスを定量 た。

[Mankin Score 評価基準]
 Henry J. Mankinらの方法(Henry J. Mankinら(1971)Th e Journal of Bone&Joint Surgery 53(3),523-537参照 )に準じ、以下の基準にて点数評価を行った
<Tidemark>
  スコア0:正常
  スコア1:血管の関節軟骨深部への侵入が認 められる。
<Safranin-O>
  スコア0:強い染色性が認められる。
  スコア1:染色性の低下(低度)が認められる
  スコア2:染色性の低下(中度)が認められる
  スコア3:染色性の低下(重度)が認められる
  スコア4:染色されない。
<Cells>
  スコア0:正常
  スコア1:びまん性細胞過形成が認められる 。
  スコア2:軟骨細胞のクローンが認められる 。
  スコア3:低細胞性が認められる。
<Structure>
  スコア0:正常
  スコア1:関節軟骨表層に不整が認められる 。
  スコア2:パンヌス及び関節軟骨表層に不整 が認められる。
  スコア3:関節軟骨中間層への亀裂が認めら れる。
  スコア4:関節軟骨深層への亀裂が認められ る。
  スコア5:関節軟骨石灰化層への亀裂が認め られる。
  スコア6:全体的な組織崩壊が認められる。

[cartilage destruction score 評価基準]
 亀倉らの方法(Kamekuraら(2005)Osteoarthritis Cartil age 13,632-41参照)に準じ、以下の基準にて点数 評価を行った。
  スコア0:目立った変化はなし。
  スコア1:関節軟骨表層部が欠損している。
  スコア2:関節軟骨欠損部位がTidemark上部に している。
  スコア3:関節軟骨欠損部位が石灰化層に達 している。
  スコア4:軟骨下骨が露出している。

<結果>
 結果を図1~8に示す。
 サフラニンO染色標本において、コントロー ル(Control)群では変形性関節症の特徴的所見で ある関節軟骨表層の染色性低下、関節軟骨の 菲薄化、軟骨細胞のクローン性増殖、細胞数 の増減が明らかであった。一方、OCIF/OPG投与 ではこれらの所見が軽度であり、サフラニ O染色にて赤色に染色される関節軟骨の厚み が保たれていた(図1)。また、変形性関節症の 重症度の指標であるMankin Score、cartilage destru ction scoreは共に、コントロール群に比べ、OCI F/OPG投与群が有意に低い値を示した(図2、図3) 。また、Image-pro plus4.5(Media Cybernetics,Carlsbad,C A)を用いサフラニンOで染色された関節軟骨の 厚みを定量したところ、関節軟骨の厚みは、 コントロール群に比べ、OCIF/OPG投与群が有意 大きな値を示した(図4)。

 抗OCIF/OPG抗体を用いて免疫染色を行った 果、コントロール群ではOCIF/OPGは関節軟骨の 深層を中心に発現し、滑膜における発現は非 常に弱かった(図5、左欄)。一方、OCIF/OPG投与 では関節軟骨の表層や滑膜細胞においてOCIF /OPGの強い局在が認められた(図5、右欄)。ま 、抗TRAIL抗体を用いて免疫染色を行った結果 、TRAILはコントロール群、OCIF/OPG投与群共に 関節軟骨全層にわたって発現が認められた( 6)。

 TUNEL法によって関節軟骨細胞のアポトー スを定量した結果、コントロール群では関 軟骨のほぼ全層にわたってTUNEL陽性細胞が分 布したが、OCIF/OPG投与群ではTUNEL陽性細胞数 有意に減少していた。即ち、OCIF/OPGの関節内 投与により、変形性関節症における軟骨細胞 のアポトーシスが抑制されることが明らかと なった(図7、図8)。

 以上の結果から、破骨細胞形成抑制因子( OCIF/OPG)の関節内投与は、変形性関節症モデル マウスにおける関節軟骨の変性を効果的に抑 制できることが示された。また、この効果は 、前記破骨細胞形成抑制因子が関節内に投与 されることにより、前記破骨細胞形成抑制因 子が軟骨細胞に直接的に作用し、TRAILによる 骨細胞のアポトーシスを抑制することに起 するものであることが示唆された。

(参考例1:関節軟骨の変性に対する破骨細胞形 成抑制因子全身投与の影響)
 前記実施例1における関節内投与の有用性を 示すため、参考例1として、関節軟骨の変性 対する破骨細胞形成抑制因子(OCIF/OPG)の全身 与の影響を調べた。

<方法>
 亀倉らの方法(Kamekuraら(2005)Osteoarthritis Cartil age 13,632-41参照)に準じて、各マウス(C57BL/6;9 令、雄)の右膝関節十字靭帯、同内側半月板 切除することにより、変形性関節症(OA)モデ ルマウスを作製した。左膝関節はシャム手術 側とした。マウスを破骨細胞形成抑制因子(OC IF/OPG)投与群とコントロール群とに分け(n=5)、 手術翌日より、5日/週(1回/1日)、OCIF/OPG投与群 にはOCIF/OPG(200μg/100μl PBS)を、コントロール には100μl PBSのみを、腹腔内にそれぞれ投与 した。手術後2週にて屠殺し、両膝関節を採 し、固定、脱灰、脱水の後にパラフィン包 し、薄切標本を作製して、以下の免疫組織 的評価に供した。

[組織学的評価]
 作製した各群の薄切標本にサフラニンO染色 を施し、Mankin Score、cartilage destruction scoreに よるOA重症度評価を前記実施例1と同様に行っ た。また、各群の大腿骨のX線写真を撮影し 骨量の変化を確認した。

<結果>
 結果を図9~12に示す。
 全身投与の場合では、サフラニンO染色標本 において、コントロール(Control)群、OCIF/OPG投 群共に、変形性関節症の特徴的所見である 節軟骨表層の染色性低下、関節軟骨の菲薄 、軟骨細胞のクローン性増殖、細胞数の増 が明らかであった(図9)。また、変形性関節 の重症度の指標であるMankin Score、cartilage d estruction scoreでは、コントロール群、OCIF/OPG 与群間に有意差は認められなかった(図10、 11)。一方で大腿骨のX線写真では、コントロ ル群に比べ、OCIF/OPG投与群において大腿骨 綿骨量の増加が認められた(図12)。

 上記の通り、破骨細胞形成抑制因子(OCIF/OPG) の全身投与は、変形性関節症モデルマウスに おける硬骨量を増加させたが、関節軟骨の変 性を抑制することはできなかった。
 前記実施例1及び参考例1の結果から、OCIF/OPG の関節内投与は全身投与より、関節軟骨変性 の抑制作用において、優れた効果を示すこと が明らかになった。

(参考例2:関節軟骨の変性に対する内在性破骨 細胞形成抑制因子の作用)
 本参考例2では、関節軟骨の変性に対する内 在性の破骨細胞形成抑制因子(OCIF/OPG)の作用 調べるため、OCIF/OPG欠損マウス、及び、野生 型マウスにおける関節軟骨の組織学的差異を 検討した。

<方法>
 まず、加齢依存的な関節軟骨の変性に対す 内在性OCIF/OPGの作用を調べるため、実験動 として、若年(8週齢)及び老齢(6ヶ月齢)の、OC IF/OPGホモ欠損マウス(OCIF/OPG -/- )、OCIF/OPGヘテロ欠損マウス(OCIF/OPG +/- )、及び、同腹の野生型マウス(WT)をそれぞれ 備した。各マウスは日本クレア株式会社よ 入手した。各マウスの膝関節の薄切標本に サフラニンO染色を施し、組織学的特徴を比 較した。
 その結果、若年のOCIF/OPG -/- マウスでは、OCIF/OPG +/- マウス及びWTマウスに比べ、関節軟骨層の菲 化、軟骨下骨への血管の浸潤、骨軟骨接合 の不規則性が観察された(図13、A~C)。また、 老齢のOCIF/OPG -/- マウス及びOCIF/OPG +/- マウスでは、WTマウスに比べ、表面の線維化( E、矢尻)やプロテオグリカン欠損(F、矢印)が 察された(図13、D~F)。加齢に従い、OCIF/OPG -/- マウスにおける軟骨変性は亢進され、これは OCIF/OPG +/- マウスにおいても同様であった。これらの結 果から、加齢依存的な関節軟骨の変性を防ぐ ためには、十分な量のOCIF/OPG発現が必要であ 、内在性OCIF/OPGが、関節軟骨変性の抑制に 用していることが示された。

 しかしながら、OCIF/OPG -/- マウスにおいては軟骨下骨の減少も観察され たことから、上記結果からは、内在性OCIF/OPG 関節軟骨変性を抑制するにあたり、軟骨細 の代謝に直接的に作用しているのか、或い 、RANKシグナルを介した軟骨下骨における破 骨細胞性の骨吸収の抑制を通じて、間接的に 作用しているのかが定かではなかった。そこ で本発明者らは、若年(8~12週齢)のOCIF/OPG +/- マウス(n=7)、及び同腹のWTマウス(n=7)を実験動 物として選択し、内在性OCIF/OPGの、関節軟骨 対する直接的な作用を検討した。用いた週 (8~12週齢)において、関節軟骨の構造及び総 量については、OCIF/OPG +/- マウスとWTマウスとの間で差異は見られなか た。亀倉らの方法(Kamekuraら(2005)Osteoarthritis  Cartilage 13,632-41参照)に準じて、各マウスの内 側側副靭帯、内側半月板を切除することによ り、変形性関節症(OA)モデルマウスを作製し 。各マウスを手術後4週にて屠殺し、OAを誘 した膝関節を採取し、固定、脱灰、脱水の にパラフィン包埋し、薄切標本を作製して 以下の組織学的評価に供した。

[組織学的評価]
 作製した各マウスの膝関節の薄切標本にサ ラニンO染色を施し、Mankin Score、cartilage des truction scoreによるOA重症度評価、及び、関節 骨の厚み定量を、前記実施例1と同様に行っ た。

<結果>
 結果を図14~17に示す。
 亀倉らの文献(Kamekuraら(2005)Osteoarthritis Cartil age 13,632-41)で報告されている通り、OAを誘導 たWTマウスで内側脛骨軟骨の変性が観察さ た(図14、a及びc)。OCIF/OPG +/- マウスでは、WTマウスに比べ、軟骨変性の亢 が明らかであった(図14、a~d)。また、変形性 関節症の重症度の指標であるMankin Score、carti lage destruncion scoreは共に、OCIF/OPG +/- マウスで、WTマウスよりも約25%高い値を示し (図15、図16、P<0.05)。また、軟骨下骨の形 については、OCIF/OPG +/- マウスとWTマウスとの間で差異は見られなか た(図14、c及びd)のに対し、軟骨の厚みはOCIF /OPG +/- マウスにおいて有意に減少していた(図17、P&l t;0.05)。なお、図15~17中、各データは平均±SD 表し、「*」はOCIF/OPG +/- とWT間の差異が統計学的に有意であったこと 示す(P<0.05)。

 以上の結果から、内在性破骨細胞形成抑 因子(OCIF/OPG)は、変形性関節症の進行に対す る関節軟骨の維持に重要な役割を果たしてい ることが示された。また、このOCIF/OPGの関節 骨に対する作用は、軟骨下骨を介した間接 な軟骨細胞の保護によるものではなく、軟 細胞に直接的に影響を及ぼすことによるも であることが示された。

 本発明の医薬及び方法は、関節軟骨の変 の治療又は予防に好適であり、中でも、変 性関節症の治療又は予防に特に好適である