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Title:
THERAPEUTIC AGENT FOR IRRITABLE BOWEL SYNDROME
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/096777
Kind Code:
A1
Abstract:
It is intended to provide a pharmaceutical composition useful as a therapeutic agent for irritable bowel syndrome (IBS). As a result of intensive studies of a therapeutic agent for IBS, the present inventors confirmed that N-(1H-tetrazol-5-yl)-1-phenoxy-4H-quinolizin-4-one-3-carboxamide shows a favorable activity, and thus the invention was completed. Further, it was found that an excellent therapeutic effect on IBS can be also obtained by the concomitant use of the above compound with any of various serotonin 5-HT3 receptor antagonists.

Inventors:
TAKEZAWA RYUICHI (JP)
DOIHARA HITOSHI (JP)
ITO HIROYUKI (JP)
SUZUKI JOTARO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/051925
Publication Date:
August 14, 2008
Filing Date:
February 06, 2008
Export Citation:
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Assignee:
ASTELLAS PHARMA INC (JP)
TAKEZAWA RYUICHI (JP)
DOIHARA HITOSHI (JP)
ITO HIROYUKI (JP)
SUZUKI JOTARO (JP)
International Classes:
C07D455/02; A61K31/4375; A61K45/00; A61P1/06; A61P1/10; A61P1/12; A61P43/00
Other References:
KOBAYASHI K. ET AL.: "Effects of quinotolast a new orally active antiallergic drug, on experimental alleric models", JPN. J. PHARMACOL., vol. 63, no. 1, 1993, pages 73 - 81, XP000925853
IMAI T. ET AL.: "Effects of the novel orally-active antiallergic drug, quinotolast (FK021), on airway clearance", NIPPON YAKURIGAKU ZASSHI. FOLIA PHARMACOLOGICA JAPONICA, vol. 104, no. 4, 1994, pages 347 - 355, XP002068162
SANTOS J. ET AL.: "Targeting mast cells in the treatment of functional gastrointestinal disorders", CURR. OPIN. PHARMACOL., vol. 6, no. 6, 2006, pages 541 - 546, XP005850035
HADLEY S.K. ET AL.: "Treatment of irritable bowel syndrome", AM. FAM. PHYSICIAN, vol. 72, no. 12, 2005, pages 2501 - 2506
Attorney, Agent or Firm:
MORITA, Hiroshi et al. (Intellectual Property3-11, Nihonbashi-Honcho 2-chome, Chuo-ku Tokyo 11, JP)
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Claims:
N-(1H-テトラゾール-5-イル)-1-フェノキシ-4H-キノリジン-4-オン-3-カルボキサミド又はその製薬学的に許容される塩、或いはその溶媒和物を含有することを特徴とするIBS治療剤。
N-(1H-テトラゾール-5-イル)-1-フェノキシ-4H-キノリジン-4-オン-3-カルボキサミドのナトリウム塩・1水和物を含有することを特徴とするIBS治療剤。
N-(1H-テトラゾール-5-イル)-1-フェノキシ-4H-キノリジン-4-オン-3-カルボキサミド又はその製薬学的に許容される塩、或いはその溶媒和物と、5-HT3受容体拮抗剤とを組合わせることを特徴とするIBS治療剤。
N-(1H-テトラゾール-5-イル)-1-フェノキシ-4H-キノリジン-4-オン-3-カルボキサミドのナトリウム塩・1水和物と、5-HT3受容体拮抗剤とを組合わせることを特徴とするIBS治療剤。
IBSが下痢型である請求の範囲1~4に記載の治療剤。
IBSが便秘型である請求の範囲1~4に記載の治療剤。
IBSが混合型である請求の範囲1~4に記載の治療剤。
N-(1H-テトラゾール-5-イル)-1-フェノキシ-4H-キノリジン-4-オン-3-カルボキサミド又はその製薬学的に許容される塩、或いはその溶媒和物と、5-HT3受容体拮抗剤とからなる医薬組成物。
Description:
過敏性腸症候群治療剤

 本発明は、過敏性腸症候群治療剤に関す 。

 過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome(IBS))は その症状を説明しうる炎症、腫瘍などの器 的疾患を伴わず、大腸を中心とした下部消 管の機能異常により、腹痛・腹部不快感と 痢、便秘などの便通異常を主体とし、これ の消化器症状が長期間持続もしくは再燃・ 解を繰り返す機能性疾患である。2006年に発 表されたRome III(Gastroenterology 2006; 130; 1480-14 91)において、その便性状から下痢型 (IBS-D)、 便秘型 (IBS-C)、下痢と便秘を交互に繰り返す 混合型 (IBS-M) 及び非分類型 (IBS-U) の4つに 類されている。IBSは致死的な疾患ではない 、その症状により患者は行動制限を受ける とで社会的活動に支障をきたすことも明ら になっている。また、海外における調査で 一般人口におけるIBS有病率は10%-15%、1年間 罹患率は1%-2%と概算されている。さらに、IBS 患者は消化器外来を受診する患者の20-50%を占 めるとも言われ、極めて高頻度な慢性の機能 性消化器疾患である。男女比は人種を問わず 1:2と女性に優位であり、若年者に有病率が高 い。
 IBSの病態発症には心理的あるいは身体的ス レスが強く関連するため、代表的なストレ 病とされ、症状改善にはストレスマネージ ントが重要であると言われている。実際に IBS患者に情動ストレスを負荷すると異常な 化管運動が顕著に亢進し、症状が悪化する とが知られている。

 IBSの薬物療法としては、日本国内では腹 には抗コリン薬が、消化管の疼痛閾値低下 改善には三環系抗うつ薬が、便通異常の改 には下痢に対して止寫薬、整腸薬などが、 秘に対しては塩類下剤などが用いられるが 症療法に過ぎず、効果も明白ではない。下 にも便秘にも効果の期待できる薬剤として リカルボフィルカルシウムがあり、腸管内 ゲル状になって便の硬さを調整するが、投 初期に腹部膨満感がある上、効果発現に時 がかかり、非常に限られた効果しか発揮し い。抗不安薬や抗うつ薬はストレスにより 安や緊張が極度に増した場合に使用される 、精神科領域での使用量よりも低用量が投 されるため、精神症状が改善されない場合 、便通異常には効果を示さない場合がある 以上のように、IBSの治療は幾つかの薬剤の 用あるいは薬剤と心理療法の併用などによ 治療がなされているものの、十分に効果的 治療法は確立されていない。

 近年注目されている薬剤として、5-HT3受 体拮抗剤であるアロセトロンおよび5-HT4受容 体作動薬であるテガセロッドがあり、それぞ れ下痢型および便秘型のIBS患者に使用される 。これらの薬剤は腸管の運動を調節すること で便通を改善し、その効果発現は早い。しか し、アロセトロンは腹部症状と下痢に対して も50%程度の改善率しか示さず、さらには30-35% の患者で便秘が出現し、重篤な副作用として 虚血性大腸炎(死亡例含む)を起こすことから の使用に制限が設けられている。また、テ セロッドは女性の短期使用に限局されてい 上に便秘型への効果は十分とはいえず、タ フィラキシーの懸念もある。従って、IBS治 剤のアンメットニーズは非常に大きく、よ 有効な薬剤の開発が急務であると考えられ いる。

 近年、心理的・身体的ストレスに加え、 管内における微小炎症、感染、アレルギー いった背景もIBSのリスクファクターとして 要であることが報告されている。肥満細胞 古典的には抗原刺激によってのみ活性化す とされていたが、現在ではストレス、微小 症及び神経系メディエーターによっても活 化し、その結果放出されたヒスタミン等の 粒メディエーターや脂質メディエーターさ にはサイトカインにより腸管機能が制御さ 、IBS病態である腸管知覚過敏や腸管運動異 といった症状を呈する機序が考えられるよ になってきた。

 このような状況下、肥満細胞脱顆粒抑制剤 関する以下の報告がある。
 非特許文献1~3には、肥満細胞脱顆粒抑制剤 あるクロモグリク酸ナトリウム(クロモリン )が食物アレルギーを有した特定のIBS患者に して、1日当たり1,500~2,000 mgを投与して有効 が認められたことが開示されている。
 非特許文献4には、肥満細胞脱顆粒抑制作用 を有するドキサントラゾールが、ラットの腸 管知覚過敏に有効であることが開示されてい る。
 また、特許文献1において、ヒスタミンH1ア タゴニストであるケトチフェンがラット肥 細胞プロテアーゼII(RMCPII)の分泌阻害に良好 な結果を示したことが開示されている。なお 、特許文献1では、クロモグリク酸ナトリウ はホスファターゼ阻害剤に分類され、肥満 胞脱顆粒抑制活性は有するものの当該文献 発明には含まれないとの記載がある。更に 抗女性ホルモン剤、ヒスタミンH3アンタゴニ スト、ヒスタミンH1アンタゴニストを始めと る多種多様の化合物が肥満細胞脱顆粒抑制 として定義されているものの、その肥満細 脱顆粒抑制活性の有無が不明の化合物が多 、ヒスタミンH1アンタゴニスト以外の肥満 胞脱顆粒抑制剤がIBSの治療に有効であるか かは、明らかにされているとはいえない。
 一方、N-(1H-テトラゾール-5-イル)-1-フェノキ シ-4H-キノリジン-4-オン-3-カルボキサミドは 満細胞脱顆粒抑制作用を有し(非特許文献5) アレルギー、潰瘍(特許文献2)、咳、痰(特許 献3)、鎮痛、結膜炎、関節リウマチ(特許文 4)、間質性肺炎、炎症性腸疾患、血管肥厚( 許文献5)に有効であることが報告されてい が、IBSに関する効果は報告されていない。

国際公開WO95/21611号パンフレット

特開昭60-222482

特開平6-256187

国際公開WO94/07491号パンフレット

国際公開WO96/25932号パンフレット Clinical and Experimental Allergy, 1991, 21, 569 -572 The American Journal of Gastroenterology, 1992,  87 (1), 55-57 Scandinavian Journal Gastroenterology, 1995, 30,  535-541 Journal of Veterinary Science, 2004, 5 (4), 319 -324 Japanese Journal of Pharmacology, 63, 73-81 (199 3)

 本発明の課題は、新規なIBS治療剤の提供 ある。

 本発明者等は、IBSの治療剤として有効な化 物について鋭意検討した結果、N-(1H-テトラ ール-5-イル)-1-フェノキシ-4H-キノリジン-4- ン-3-カルボキサミドがIBS治療剤として有効 あることを知見し、更には、当該化合物と 々の5-HT3受容体拮抗剤を併用することで優れ たIBS治療効果が得られることを知見し、本発 明を完成した。
 即ち、本発明は、以下に関する。
(1) N-(1H-テトラゾール-5-イル)-1-フェノキシ-4H -キノリジン-4-オン-3-カルボキサミド又はそ 製薬学的に許容される塩、或いはその溶媒 物を含有することを特徴とするIBS治療剤。
(2) IBS治療剤の製造のための、N-(1H-テトラゾ ル-5-イル)-1-フェノキシ-4H-キノリジン-4-オ -3-カルボキサミド又はその製薬学的に許容 れる塩、或いはその溶媒和物の使用。
(3) N-(1H-テトラゾール-5-イル)-1-フェノキシ-4H -キノリジン-4-オン-3-カルボキサミド又はそ 製薬学的に許容される塩、或いはその溶媒 物のIBS治療のための使用。
(4) (有効量の)N-(1H-テトラゾール-5-イル)-1-フ ノキシ-4H-キノリジン-4-オン-3-カルボキサミ ド又はその製薬学的に許容される塩、或いは その溶媒和物を患者に投与することからなる IBSの治療方法。
(5) N-(1H-テトラゾール-5-イル)-1-フェノキシ-4H -キノリジン-4-オン-3-カルボキサミド又はそ 製薬学的に許容される塩、或いはその溶媒 物と、5-HT3受容体拮抗剤とを組合わせること を特徴とするIBS治療剤。
(6) IBS治療剤の製造のための、N-(1H-テトラゾ ル-5-イル)-1-フェノキシ-4H-キノリジン-4-オ -3-カルボキサミド又はその製薬学的に許容 れる塩、或いはその溶媒和物と、5-HT3受容体 拮抗剤の使用。
(7) N-(1H-テトラゾール-5-イル)-1-フェノキシ-4H -キノリジン-4-オン-3-カルボキサミド又はそ 製薬学的に許容される塩、或いはその溶媒 物と、5-HT3受容体拮抗剤のIBS治療のための使 用。
(8) (有効量の)N-(1H-テトラゾール-5-イル)-1-フ ノキシ-4H-キノリジン-4-オン-3-カルボキサミ ド又はその製薬学的に許容される塩、或いは その溶媒和物と、5-HT3受容体拮抗剤を患者に 与することからなるIBSの治療方法。
(9) 5-HT3受容体拮抗剤が、ラモセトロン及び ロセトロンから選択される薬剤である上記(5 )~(8)の治療剤、使用又は治療方法。
(10) 5-HT3受容体拮抗剤が、ラモセトロンであ 上記(5)~(8)の治療剤、使用又は治療方法。
(11) N-(1H-テトラゾール-5-イル)-1-フェノキシ-4 H-キノリジン-4-オン-3-カルボキサミド又はそ 製薬学的に許容される塩、或いはその溶媒 物が、N-(1H-テトラゾール-5-イル)-1-フェノキ シ-4H-キノリジン-4-オン-3-カルボキサミドの トリウム塩・1水和物である上記(1)~(10)の治 剤、使用又は治療方法。
(12) IBSが下痢型である上記(1)~(11)の治療剤、 用又は治療方法。
(13) IBSが便秘型である上記(1)~(11)の治療剤、 用又は治療方法。
(14) IBSが混合型である上記(1)~(11)の治療剤、 用又は治療方法。
(15) N-(1H-テトラゾール-5-イル)-1-フェノキシ-4 H-キノリジン-4-オン-3-カルボキサミド又はそ 製薬学的に許容される塩、或いはその溶媒 物と、5-HT3受容体拮抗剤とからなる医薬組 物。
(16) 5-HT3受容体拮抗剤が、ラモセトロン及び ロセトロンから選択される薬剤である上記( 15)の医薬組成物。
(17) 5-HT3受容体拮抗剤が、ラモセトロンであ 上記(15)~(16)の医薬組成物。
(18) N-(1H-テトラゾール-5-イル)-1-フェノキシ-4 H-キノリジン-4-オン-3-カルボキサミド又はそ 製薬学的に許容される塩、或いはその溶媒 物が、N-(1H-テトラゾール-5-イル)-1-フェノキ シ-4H-キノリジン-4-オン-3-カルボキサミドの トリウム塩・1水和物である上記(15)~(17)の医 組成物。

 本発明医薬の有効成分であるN-(1H-テトラ ール-5-イル)-1-フェノキシ-4H-キノリジン-4- ン-3-カルボキサミドはIBSの治療剤として有 であり、更に当該化合物と5-HT3受容体拮抗剤 と組合わせてもIBSの治療剤として有用である 。

図1は、実施例2における薬剤非投与群 酢酸誘発IBSモデルの拘束ストレス排便を示 グラフである(N=5-10)。グラフの縦軸は1時間 拘束ストレス負荷中の排便個数を示す。##は 正常群に対するストレス群のP値<0.01を、### は正常群に対するストレス群のP値<0.001を *はストレス群における生食処置群に対する4 %酢酸群のP値<0.05を示す(Student's t検定)。 図2は、実施例2における酢酸誘発IBSモ ルの拘束ストレス排便に対する化合物1の作 を示すグラフである(N=6-10)。グラフの縦軸 1時間の拘束ストレス負荷中の排便個数を示 。横軸の投与量単位はすべてmg/kgである。## #は正常群に対するストレス群のP値<0.001を( Student's t検定)、*は非薬剤投与群に対する薬 投与群のP値<0.05を、**は非薬剤投与群に する薬剤投与群のP値<0.01を、***は非薬剤 与群に対する薬剤投与群のP値<0.001を示す( Dunnettの多重比較)。 図3は、実施例2における酢酸誘発IBSモ ルの拘束ストレス排便に対するクロモリン 作用を示すグラフである(N=8-10)。グラフの縦 軸は1時間の拘束ストレス負荷中の排便個数 示す。横軸の投与量単位はすべてmg/kgである 。###は正常群に対するストレス群のP値<0.00 1を(Student's t検定)、*は非薬剤投与群に対す 薬剤投与群のP値<0.05を、***は非薬剤投与 に対する薬剤投与群のP値<0.001を示す(Dunnet tの多重比較)。 図4は、実施例2における酢酸誘発IBSモ ルの拘束ストレス排便に対するケトチフェ の作用を示すグラフである(N=6-10)。グラフの 縦軸は1時間の拘束ストレス負荷中の排便重 を示す。横軸の投与単位はすべてmg/kgである 。###は正常群に対するストレス群のP値<0.00 1を(Student's t検定)、*は非薬剤投与群に対す 薬剤投与群のP値<0.05を示す(Dunnettの多重比 較)。 図5は、実施例3における薬剤非投与群 酢酸誘発IBSモデルの結腸拡張刺激に対する 痛を示すグラフである(N=12、○は生食処置群 、●は4%酢酸処置群を示す)。グラフの縦軸は 5分間のバルーン内圧負荷中の腹部屈曲回数 、横軸はバルーン内圧を示す。*は生食処置 に対する4%酢酸群のP値<0.05を、**は生食処 置群に対する4%酢酸群のP値<0.01を示す(Studen t's t検定)。 図6は、実施例3における酢酸誘発IBSモ ルの腹痛に対する化合物1の作用を示すグラ である(N=6-8)。○は生食処置群、●は4%酢酸 置群、□は4%酢酸+化合物1(0.01 mg/kg, po)処置 群、■は4%酢酸+化合物1(1 mg/kg, po)処置群を す。なお、グラフの縦軸は5分間のバルーン 圧負荷中の腹部屈曲回数を、横軸はバルー 内圧を示す。*は4%酢酸処置の非薬剤投与群 対する薬剤投与群のP値<0.05を、**は4%酢酸 処置の非薬剤投与群に対する薬剤投与群のP <0.01を示す(Dunnettの多重比較)。 図7は、実施例3における酢酸誘発IBSモ ルの腹痛に対する化合物1とラモセトロンの 用効果を示すグラフである(N=6、○は生食処 置群、●は4%酢酸処置群、□は4%酢酸+ラモセ ロン (0.01 mg/kg, po)処置群、■は4%酢酸+化 物1(0.01 mg/kg, po)+ラモセトロン(0.01 mg/kg, po) 処置群を示す)。各グラフの縦軸は5分間のバ ーン内圧負荷中の腹部屈曲回数を、横軸は ルーン内圧を示す。*は4%酢酸処置の非薬剤 与群に対する薬剤投与群のP値<0.05を、*** 4%酢酸処置の非薬剤投与群に対する薬剤投 群のP値<0.001を示す(Student's t検定)。 図8は、実施例3における酢酸誘発IBSモ ルの腹痛に対する化合物1もしくはクロモリ とアロセトロンの併用効果を示すグラフで る(N=6-12、○は生食処置群、●は4%酢酸処置 、□は4%酢酸+アロセトロン(0.1 mg/kg, po)処 群、■は4%酢酸+アロセトロン(0.1 mg/kg, po)+ ロモリン(20 mg/kg, ip)処置群、◆は4%酢酸+ア セトロン(0.1 mg/kg, po)+化合物1(0.01 mg/kg, po) 処置群を示す)。グラフの縦軸は5分間のバル ン内圧負荷中の腹部屈曲回数を、横軸はバ ーン内圧を示す。*は4%酢酸処置のアロセト ン単独処置群に対する化合物1併用処置群の P値<0.05を示す(Student's t検定)。 図9は、実施例4におけるマウス自然排 に対する化合物1並びにドキサントラゾール 作用を示すグラフである。(a)は化合物1の作 用を、(b)はドキサントラゾールの作用を、そ れぞれ示す (N=10)。なお、各グラフの縦軸は 験開始後2時間の自然排便個数を示す。横軸 の投与量単位はすべてmg/kgである。(b)の*は全 例死亡を意味する。

 N-(1H-テトラゾール-5-イル)-1-フェノキシ-4H -キノリジン-4-オン-3-カルボキサミドは、特 文献2~5に開示の化合物であり、種々の塩や 媒和物の形態が存在し、更にそれらは結晶 形も存在しうる。例えば、ナトリウム、カ ウム、マグネシウム、カルシウム、アルミ ウム等の無機塩基、メチルアミン、エチル ミン、エタノールアミン、リシン、オルニ ン等の有機塩基との塩等が存在しうる。本 明の薬剤の有効成分としてはいずれの形態 あっても良いが、好ましくは、N-(1H-テトラ ール-5-イル)-1-フェノキシ-4H-キノリジン-4-オ ン-3-カルボキサミドのナトリウム塩・1水和 (本明細書中、「化合物1」と表記することが ある)であり、特に特開平1-104073に開示の結晶 形態が好ましい。製造法は、上記特許文献の 他、特開昭62-77385や特開昭63-284174に開示の方 が適用できる。

 「IBS」とは、Rome IIIにおける下痢型 (IBS-D) 便秘型 (IBS-C)、混合型 (IBS-M)及び非分類型 (IBS-U) を包含する。好ましくは、下痢型 (IB S-D)、便秘型 (IBS-C)及び混合型 (IBS-M)であり より好ましくは下痢型 (IBS-D)及び便秘型 (IB S-C)であり、更に好ましくは下痢型である。
 「IBSの治療」とは、診断によりIBSの罹患或 はその可能性が確認された患者において、 痢、便秘、及び/又は腹部不快感を生じた場 合のそれら症状の軽減もしくは取除く目的、 或いはそれらの症状が予測される場合に発症 前に、抑制する目的での薬剤の投与を包含す る。
 「腹部不快感」とは、腸管知覚過敏や腸管 動異常、或いはその他の要因による、腹部 痛み、違和感などの不快感を包含する。
 「5-HT3受容体拮抗剤」とは、ラモセトロン アロセトロン、グラニセトロン、オンダン トロン、アザセトロン、トロピセトロン、 ラセトロン、シランセトロン等の、一般に5- HT3受容体拮抗剤として報告されている化合物 を包含し、好ましくはラモセトロン又はアロ セトロンであり、より好ましくはラモセトロ ンである。

 本発明の「N-(1H-テトラゾール-5-イル)-1-フェ ノキシ-4H-キノリジン-4-オン-3-カルボキサミ 又はその製薬学的に許容される塩、或いは の溶媒和物と5-HT3受容体拮抗剤とを組合わせ ることを特徴とするIBS治療剤」としては、有 効量のN-(1H-テトラゾール-5-イル)-1-フェノキ -4H-キノリジン-4-オン-3-カルボキサミド又は の製薬学的に許容される塩、或いはその溶 和物と有効量の5-HT3受容体拮抗剤を含有し なる、IBS治療用の医薬組成物(合剤)、並びに 、第一製剤としてN-(1H-テトラゾール-5-イル)-1 -フェノキシ-4H-キノリジン-4-オン-3-カルボキ ミド又はその製薬学的に許容される塩、或 はその溶媒和物を有効成分とするIBS治療剤 、第二製剤として5-HT3受容体拮抗剤を有効 分とするIBS治療剤の2種類の製剤を含むキッ を包含する。ここに、2種類の製剤は同一又 は異なる投与ルートで同時に若しくは別々に 投与されるものである。
 「2種類の製剤を含むキット」とは、それぞ れの有効成分を含む2種類の製剤を、これら 有効成分の併用療法に用いることができる うに組み合わせて含むものであり、所望に りプラセボ剤等のそれぞれの投与時期に合 せた投与を容易にする追加的な製剤や表示 材を含んでいてもよい包装品が挙げられる また、「同時に」とは、第一製剤と第二製 を一緒に同じ投与経路で投与することを意 し、「別々に」とは、第一製剤と第二製剤 同一若しくは異なる投与経路で、同一若し は異なる投与頻度若しくは投与間隔で、別 に投与することを意味する。好ましくは、 製剤のバイオアベイラビリティー、安定性 を考慮し、それぞれの製剤に適した製剤処 、投与経路、投与頻度等の投与条件下にて 同時に若しくは別々に投与される。

 本発明のIBS治療剤は、その有効成分であるN -(1H-テトラゾール-5-イル)-1-フェノキシ-4H-キ リジン-4-オン-3-カルボキサミド、又は更に5- HT3受容体拮抗剤を含有する製剤として、当分 野において通常用いられている薬剤用担体、 賦形剤等を用いて通常使用されている方法に よって調製することができる。
 投与は錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、 剤、液剤等による経口投与、又は、関節内 静脈内、筋肉内等の注射剤、坐剤、点眼剤 眼軟膏、経皮用液剤、軟膏剤、経皮用貼付 、経粘膜液剤、経粘膜貼付剤、吸入剤等に る非経口投与のいずれの形態であってもよ 。

 本発明による経口投与のための固体組成物 しては、錠剤、散剤、顆粒剤等が用いられ 。このような固体組成物においては、1種又 は2種以上の有効成分を、少なくとも1種の不 性な賦形剤、例えば乳糖、マンニトール、 ドウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、 結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピ リドン、及び/又はメタケイ酸アルミン酸マ グネシウム等と混合される。組成物は、常法 に従って、不活性な添加剤、例えばステアリ ン酸マグネシウムのような滑沢剤やカルボキ シメチルスターチナトリウム等のような崩壊 剤、安定化剤、溶解補助剤を含有していても よい。錠剤又は丸剤は必要により糖衣又は胃 溶性若しくは腸溶性物質のフィルムで被膜し てもよい。
 経口投与のための液体組成物は、薬剤的に 容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロッ 剤又はエリキシル剤等を含み、一般的に用 られる不活性な希釈剤、例えば精製水又は タノールを含む。当該液体組成物は不活性 希釈剤以外に可溶化剤、湿潤剤、懸濁剤の うな補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防 剤を含有していてもよい。
 非経口投与のための注射剤は、無菌の水性 は非水性の溶液剤、懸濁剤又は乳濁剤を含 する。水性の溶剤としては、例えば注射用 留水又は生理食塩液が含まれる。非水溶性 溶剤としては、例えばプロピレングリコー 、ポリエチレングリコール又はオリーブ油 ような植物油、エタノールのようなアルコ ル類、又はポリソルベート80(局方名)等があ る。このような組成物は、さらに等張化剤、 防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤 、又は溶解補助剤を含んでもよい。これらは 例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過 、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化され る。また、これらは無菌の固体組成物を製造 し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に 溶解又は懸濁して使用することもできる。

 吸入剤や経鼻剤等の経粘膜剤は固体、液 又は半固体状のものが用いられ、従来公知 方法に従って製造することができる。例え 公知の賦形剤や、更に、pH調整剤、防腐剤 界面活性剤、滑沢剤、安定剤や増粘剤等が 宜添加されていてもよい。投与は、適当な 入又は吹送のためのデバイスを使用するこ ができる。例えば、計量投与吸入デバイス の公知のデバイスや噴霧器を使用して、化 物を単独で又は処方された混合物の粉末と て、もしくは医薬的に許容し得る担体と組 合わせて溶液又は懸濁液として投与するこ ができる。乾燥粉末吸入器等は、単回又は 数回の投与用のものであってもよく、乾燥 末又は粉末含有カプセルを利用することが きる。あるいは、適当な駆出剤、例えば、 ロロフルオロアルカン、ヒドロフルオロア カン又は二酸化炭素等の好適な気体を使用 た加圧エアゾールスプレー等の形態であっ もよい。

 通常経口投与の場合、1日の投与量はN-(1H-テ トラゾール-5-イル)-1-フェノキシ-4H-キノリジ -4-オン-3-カルボキサミドとして、体重当た 約0.01~10 mg/kg、好ましくは0.1~1 mg/kgが適当 あり、これを1回あるいは2回に分けて投与す る。静脈内投与される場合は、1日の投与量 、体重当たり約0.001~10 mg/kgが適当で、1日1回 乃至複数回に分けて投与する。また、経粘膜 剤としては、体重当たり約0.01~10 mg/kgを1日1 乃至複数回に分けて投与する。投与量は症 、年令、性別等を考慮して個々の場合に応 て適宜決定される。
 5-HT3受容体拮抗剤は、公知の投与経路や投 量が適用できる。例えば、ラモセトロンは WO2005/072730に記載の投与量を適用することが き、経口投与の場合、塩酸ラモセトロン1日 量として好ましくは約0.001~0.05 mg、より好ま くは約0.002~0.02 mgである。

 本発明の治療剤の有効成分であるN-(1H-テ ラゾール-5-イル)-1-フェノキシ-4H-キノリジ -4-オン-3-カルボキサミドは、5-HT3受容体拮抗 剤、或いは他の種々のIBS治療剤と併用するこ とができる。当該併用は、同時投与、或いは 別個に連続してもしくは所望の時間間隔をお いて投与してもよい。同時投与製剤は、配合 剤であっても別個に製剤化されていてもよい 。

 以下、実施例に基づき本発明を具体的に 明する。本発明は下記実施例に記載の範囲 限定されるものではない。

実施例1:酢酸誘発IBSモデルの作成
 Jun-Ho Laらの方法(World J. Gastroenterol., 2003,  9 (12), 2791-2795)を参考に以下の方法でIBSモデ の作成を行った。一晩絶食下の雄性スプラ ・ダウレー (Sprague-Dawley:SD) 系ラット又は ィスター (Wistar) 系ラットを用いた。エー ル軽麻酔下で10 cm長のプラスチックゾンデ ラット肛門より挿入し、ゾンデ先端が肛門 ら8 cmの位置になるように調節した。4%酢酸 含む生理食塩水1 mLをプラスチックゾンデ り注入後30秒間静置し、その後1 mLの生理食 水にて2回直腸内を洗浄した。本処置7日後 ラットを「IBSラット("4%酢酸")」として、実 例2及び3に示す試験を行った。また、同様の 操作により生理食塩水の注入を行ったものを 「対照群("生食")」とした。
 なお、酢酸処置1~2日後は腸内の炎症の指標 あるミエロパーオキシダーゼ(MPO)活性が上 するものの、7日後にはMPO活性は対照群と同 にまで戻り、炎症像も観察されないことを 認した。

実施例2:拘束ストレス排便試験
 クロモリンを生理食塩水に、化合物1及びケ トチフェンを0.5%メチルセルロース水溶液に れぞれ溶解して使用した。4%酢酸処置又は生 理食塩水処置7日後の非絶食下雄性SD系ラット に被験化合物を腹腔内投与(クロモリン)もし は経口投与(化合物1及びケトチフェン)し、 の30分後に動物を拘束ストレスケージ(商品 :KN-468(B)、夏目製作所)内に挿入した。拘束 トレス負荷開始から1時間後までに排泄した の個数及び重量を測定した("ストレス")。一 方、正常群は個別ケージに入れ、同様に1時 で排泄した便の個数及び重量を測定した("正 常")。図1に薬剤非投与群の拘束ストレス排便 の結果を、図2~4に薬剤投与群の結果をそれぞ れ示す。図2及び3より、化合物1及びクロモリ ンは用量依存的に拘束ストレス排便に対して 抑制作用を示し、それぞれ1 mg/kg, po及び100  mg/kg, ipではほぼ完全に抑制した。一方、ケ チフェンは最大で30%程度の抑制作用しか示 なかった(図4)。上記結果より求めた、酢酸 発IBSモデルの拘束ストレス排便に対する化 物1及びクロモリンの50%阻害用量 (ED 50 値) はそれぞれ 0.0071 mg/kg, po 及び 19.9 mg/ kg, ipであった(表1)。
 また、ラット腹腔肥満細胞を用いた抗原抗 反応によるヒスタミン遊離に対する化合物1 及びクロモリンの阻害活性をo-フタルアルデ ドを用いる Shore らの方法(The Journal of Pha rmacology and Experimental Therapeutics, 1959, 127, 18 2-186)を改変した蛍光法により測定した。その 結果、50%阻害濃度 (IC 50 値) はそれぞれ 0.0074 μg/ml 及び 2.2 μg/ml あった(表1)。

 表1に示すように、化合物1はクロモリンと べ、その肥満細胞脱顆粒抑制作用から予測 れるよりもはるかに強力に、IBSの便通異常 対する抑制作用を有することが認められた

実施例3:腹部屈曲回数を指標とした大腸拡張 激による腹痛試験
 クロモリンを生理食塩水に、化合物1、アロ セトロン及びラモセトロンを0.5%メチルセル ース水溶液にそれぞれ溶解して使用した。4% 酢酸処置又は生理食塩水処置7日後の非絶食 雄性Wistar系ラットを用いた。エーテル軽麻 下で5-6 cm長のラテックスバルーンをラット 門より挿入し、バルーン終端が肛門から2 c mの位置になるように調節した。バルーンか 続くカテーテルは尾根部にテープで固定し 三方活栓を介して圧トランスジューサーに 続した。バルーン内圧信号はひずみ圧力用 ンプにて増幅した。ケージ (23.5 x 19 x 19  cm)中でエーテル麻酔から回復させた後、結腸 -直腸拡張 (15, 30, 45, 60 mmHg) を段階的に5 間づつ負荷した際のラットの痛み行動(腹部 縮回数)を測定した。図5に示すように、生 投与群に比較して 4%酢酸処置群において有 な腹痛増強が認められた。なお、被験化合 は拡張刺激負荷の30分前に投与した。
 図6に化合物1に関する結果を示す。図6より 化合物1は結腸拡張刺激による腹部屈曲反応 に対して用量依存的に抑制作用を示し、IBSの 腹痛においても症状改善作用を示すことが確 認できた。
 また、クロモリン(20 mg/kg, ip)、化合物1(0.01 , 1 mg/kg, po)、アロセトロン(0.1 mg/kg, po)及 ラモセトロン(0.01 mg/kg, po)を用い、図7に化 物1とラモセトロンとの併用、図8に化合物1 アロセトロンとの併用及びクロモリンとア セトロンの併用の結果を示す。なお、アロ トロン及びラモセトロンは本用量において 痛に対して最大抑制作用を示すことを確認 た。
 この結果、化合物1はラモセトロンやアロセ トロンと相加的に腹痛に対する抑制作用を示 すのに対し、クロモリンでは効果の増強は認 められなかった。

実施例4:マウス自然便排出モデル
 ドキサントラゾールは5% (w/v) の NaHCO 3  水溶液に、化合物1は0.5%メチルセルロース 溶液に溶解して使用した。非絶食下の雄性dd Y系マウスを実験前日夕方より個別ケージに 飼育した。実験当日に被験化合物を腹腔内 与(ドキサントラゾール)又は経口投与(化合 1)し、その30分後から2時間後までの排泄した 自然便の個数を測定した。
 結果を図9に示す。図9(a) に示すように、化 合物1はマウス自然排便に対して無作用であ たのに対し、図9(b) に示すように、ドキサ トラゾールはマウス自然排便に対して抑制 向を示した。更に、ドキサントラゾールは50 0 mg/kg投与群において全例の死亡が認められ 。

 上記の各試験の結果、N-(1H-テトラゾール-5- ル)-1-フェノキシ-4H-キノリジン-4-オン-3-カ ボキサミドは、IBSにおける便通症状及び腹 症状の改善作用を有することが確認され、 の作用は他の肥満細胞脱顆粒抑制剤から予 されるよりもはるかに強力であり、更に、 常動物の自然排便抑制を引き起こさない、 全なIBS治療剤となりうることが明らかであ 。
 更に、N-(1H-テトラゾール-5-イル)-1-フェノキ シ-4H-キノリジン-4-オン-3-カルボキサミドは 5-HT3受容体拮抗剤と併用することにより、一 方の薬剤のみでは抑制できないIBSの便通症状 及び腹部症状を軽減する作用を有することか ら、その組合せからなる薬剤も、IBS治療剤と して有用である。

 本発明医薬の有効成分であるN-(1H-テトラ ール-5-イル)-1-フェノキシ-4H-キノリジン-4- ン-3-カルボキサミドはIBSの治療剤として有 であり、更に当該化合物と5-HT3受容体拮抗剤 と組合わせてもIBSの治療剤として有用である 。