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Title:
PROCESS AND APPARATUS FOR PRODUCING CLATHRATE HYDRATE SLURRY AND METHOD OF OPERATING THE PRODUCTION APPARATUS
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/078590
Kind Code:
A1
Abstract:
A technique by which a clathrate hydrate slurry can be stably produced over long while maintaining a merit that a clathrate hydrate adherent to the heat exchange surface of a heat exchanger has the effect of accelerating the fresh formation of a clathrate hydrate. It is a process for producing a clathrate hydrate slurry which comprises a step in which either an aqueous solution of a guest compound for a clathrate hydrate or a slurry obtained by dispersing or suspending the clathrate hydrate in the aqueous solution or water is caused to flow in a heat exchanger tube to yield the clathrate hydrate in the aqueous solution or the slurry through heat exchange with a refrigerant surrounding the outer periphery of the heat exchanger tube. The process is characterized in that the amount of the clathrate hydrate adhering to the inner wall surface of the heat exchanger tube in the course of heat exchange with the refrigerant is inhibited from increasing by means of the force of flow of the aqueous solution or slurry running in the heat exchanger tube.

Inventors:
OGOSHI HIDEMASA (JP)
FURUMOTO NAOYUKI (JP)
IDA HIROYUKI (JP)
Application Number:
PCT/JP2007/074224
Publication Date:
July 03, 2008
Filing Date:
December 17, 2007
Export Citation:
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Assignee:
JFE ENG CORP (JP)
OGOSHI HIDEMASA (JP)
FURUMOTO NAOYUKI (JP)
IDA HIROYUKI (JP)
International Classes:
F24F5/00; C09K5/06; F25C1/00; F28D20/00
Foreign References:
JP2000234769A2000-08-29
JP2001343139A2001-12-14
Attorney, Agent or Firm:
SUZUYE, Takehiko et al. (1-12-9 Toranomon, Minato-ku, Tokyo 01, JP)
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Claims:
 包接水和物のゲスト化合物の水溶液又は前記包接水和物を前記水溶液若しくは水に分散若しくは懸濁させてなるスラリーを伝熱管の内部に流し、前記伝熱管の外周囲にある冷媒との熱交換を通じて前記水溶液又は前記スラリー中に前記包接水和物を生成する工程を有する包接水和物スラリーの製造方法であって、
 前記冷媒との熱交換の過程で前記伝熱管の内壁面に付着する前記包接水和物の量の増加を、前記伝熱管の内部を流れる前記水溶液又は前記スラリーの流れの力により抑制することを特徴とする包接水和物スラリーの製造方法。
 包接水和物のゲスト化合物の水溶液又は前記包接水和物を前記水溶液若しくは水に分散若しくは懸濁させてなるスラリーを伝熱管の内部に流し、前記伝熱管の外周囲にある冷媒との熱交換を通じて前記水溶液又は前記スラリー中に前記包接水和物を生成する工程とを有する包接水和物スラリーの製造方法であって、
 前記冷媒との熱交換の過程で前記伝熱管の内壁面に付着する包接水和物の一部を前記水溶液又は前記スラリーの流れの力により取り除くとともに、その残部を前記伝熱管の内壁面を覆うように残すことを特徴とする包接水和物スラリーの製造方法。
 前記伝熱管を通過した前記水溶液又は前記スラリーの一部又は全部を、その伝熱管に還流させることを特徴とする請求項1又は2に記載の包接水和物スラリーの製造方法。
 前記冷媒の温度を調整する工程を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の包接水和物スラリーの製造方法。
 前記冷媒の温度を前記包接水和物の凝固点より低温であって、凝固点に近い温度又は伝熱管の内部に流す前記水溶液又は前記スラリーの温度に近い温度に調整することを特徴とする請求項4に記載の包接水和物スラリーの製造方法。
 複数の伝熱管と、各伝熱管の外周囲に冷媒を供給する冷媒供給装置と、各伝熱管の内部に包接水和物のゲスト化合物の水溶液又は前記包接水和物を前記水溶液若しくは水に分散若しくは懸濁させてなるスラリーを供給する原液供給装置と、前記水溶液又は前記スラリーの流速を設定する流速設定装置とを備え、前記冷媒との熱交換を通じて前記水溶液又は前記スラリー中に前記包接水和物が生成される包接水和物スラリーの製造装置であって、
 流速設定装置により、各伝熱管の内壁面に付着する前記包接水和物の量の増加が、各伝熱管の内部を流れる前記水溶液又は前記スラリーの流れの力により抑制されるように前記水溶液又は前記スラリーの流速が設定されることを特徴とする包接水和物スラリーの製造装置。
 複数の伝熱管と、各伝熱管の外周囲に冷媒を供給する冷媒供給装置と、各伝熱管の内部に包接水和物のゲスト化合物の水溶液又は前記包接水和物を前記水溶液若しくは水に分散若しくは懸濁させてなるスラリーを供給する原液供給装置と、前記水溶液又は前記スラリーの流速を設定する流速設定装置とを備え、前記冷媒との熱交換を通じて前記水溶液又は前記スラリー中に前記包接水和物が生成される包接水和物スラリーの製造装置であって、
 流速設定装置により、各伝熱管の内壁面に付着した包接水和物の一部が前記水溶液又は前記スラリーの流れの力により取り除かれ、その残部が各伝熱管の内壁面を覆うように残るように前記水溶液又は前記スラリーの流速が設定されることを特徴とする包接水和物スラリー製造装置。
 各伝熱管の内部に供給される前記水溶液又は前記スラリーの流れに乱れを形成する乱れ形成手段を備えることを特徴とする請求項6又は7に記載の包接水和物スラリー製造装置。
 各伝熱管の内壁面及び外壁面のうち少なくとも一つに、前記水溶液又は前記スラリーが流れる方向に沿って凹凸が形成されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の包接水和物スラリー製造装置。
 前記伝熱管を通過した前記水溶液又は前記スラリーの一部又は全部を、その伝熱管に還流する循環装置を備えることを特徴とする請求項6又は7に記載の包接水和物スラリー製造装置。
 前記冷媒の温度を調整する冷媒温度調整装置を備えることを特徴とする請求項6又は7に記載の包接水和物スラリーの製造装置。
 複数の伝熱管と、各伝熱管の外周囲に冷媒を供給する冷媒供給装置と、各伝熱管の内部に包接水和物のゲスト化合物の水溶液又は前記包接水和物を前記水溶液若しくは水に分散若しくは懸濁させてなるスラリーを供給する原液供給装置と、前記水溶液又は前記スラリーの流速を設定する流速設定装置と、各伝熱管を通過した前記水溶液又は前記スラリーの一部又は全部を常時又は必要に応じてその伝熱管に還流する循環装置を備え、前記冷媒との熱交換を通じて前記水溶液又は前記スラリー中に前記包接水和物が生成される包接水和物スラリーの製造装置の運転方法であって、
 前記製造装置の初回運転時、休止後の再開運転時又は性能確認運転時に、各伝熱管の内壁面に付着した包接水和物の一部を前記水溶液又は前記スラリーの流れの力により取り除くとともに、その残部を各伝熱管の内壁面を覆うように残すことを特徴とする包接水和物スラリーの製造装置の運転方法。
 複数の伝熱管と、各伝熱管の外周囲に冷媒を供給する冷媒供給装置と、前記冷媒の温度を調整する冷媒温度調整装置と、各伝熱管の内部に包接水和物のゲスト化合物の水溶液又は前記包接水和物を前記水溶液若しくは水に分散若しくは懸濁させてなるスラリーを供給する原液供給装置と、前記水溶液又は前記スラリーの流速を設定する流速設定装置と、各伝熱管を通過した前記水溶液又は前記スラリーの一部又は全部を常時又は必要に応じてその伝熱管に還流する循環装置を備え、前記冷媒との熱交換を通じて前記水溶液又は前記スラリー中に前記包接水和物が生成される包接水和物スラリーの製造装置の運転方法であって、
 前記製造装置の初回運転時、休止後の再開運転時又は性能確認運転時に、前記冷媒温度調整装置により前記冷媒の温度を前記包接水和物の凝固点よりも高い温度に設定し、各伝熱管の内壁面に付着した包接水和物の一部を前記水溶液又は前記スラリーの流れの力により取り除くとともに、その残部を各伝熱管の内壁面を覆うように残すことを特徴とする包接水和物スラリーの製造装置の運転方法。
 複数の伝熱管と、各伝熱管の外周囲に冷媒を供給する冷媒供給装置と、前記冷媒の温度を調整する冷媒温度調整装置と、各伝熱管の内部に包接水和物のゲスト化合物の水溶液又は前記包接水和物を前記水溶液若しくは水に分散若しくは懸濁させてなるスラリーを供給する原液供給装置と、前記水溶液又は前記スラリーの流速を設定する流速設定装置と、各伝熱管を通過した前記水溶液又は前記スラリーの一部又は全部を常時又は必要に応じてその伝熱管に還流する循環装置を備え、前記冷媒との熱交換を通じて前記水溶液又は前記スラリー中に前記包接水和物が生成される包接水和物スラリーの製造装置の運転方法であって、
 前記製造装置の通常運転時に、前記冷媒温度調整装置により前記冷媒の温度の変動を抑制し、各伝熱管の内壁面に付着した包接水和物の一部を前記水溶液又は前記スラリーの流れの力により取り除くとともに、その残部を各伝熱管の内壁面を覆うように残すことを特徴とする包接水和物スラリーの製造装置の運転方法。
Description:
包接水和物スラリーの製造方法 び製造装置並びにその製造装置の運転方法

 本発明は、熱交換器として伝熱管を使用 る包接水和物スラリーの製造技術に関し、 しくは、包接水和物のゲスト化合物の水溶 又は包接水和物を水溶液若しくは水に分散 しくは懸濁させてなるスラリーを伝熱管の 部に流し、その伝熱管の外周囲にある冷媒 の熱交換を通じて前記水溶液又は前記スラ ー中に包接水和物を生成する工程を有する 接水和物スラリーの製造方法及びその製造 法を実現する装置並びに、その装置の運転 法に関する。

 本発明において、次に掲げる用語の定義 は解釈は以下のとおりとする。

(1) 「包接水和物」には準包接水和物が含 れる。以下においては、単に「水和物」と 称する場合がある。

(2) 「包接水和物スラリー」又は「水和物 ラリー」とは、包接水和物がそのゲスト化 物の水溶液又は水溶媒に分散又は懸濁して きるスラリー状の物質をいい、当該水溶液 は水溶媒の中に別の組成物(添加物を含む) 存在していても、包接水和物が分散又は懸 している限り、「包接水和物スラリー」又 「水和物スラリー」に該当する。

(3) 「包接水和物のゲスト化合物の水溶液 とは、包接水和物のゲスト化合物を溶質と る水溶液をいい、当該水溶液の中に包接水 物や別の組成物(添加物を含む)が存在して ても、包接水和物のゲスト化合物を溶質と る水溶液である限り、「包接水和物のゲス 化合物の水溶液」に該当する。

(4) 「原料溶液」とは、冷却すると包接水 物を生成する性質を有する、包接水和物の スト化合物の水溶液をいう。

(5) 「原料スラリー」とは、冷却すると包 水和物を生成する性質を有する、包接水和 スラリー又は水和物スラリーをいう。

(6) 「冷媒」及び「熱媒体」とは、用語の 字表現上の違いや、水和物生成用、凝縮用 の用途の違いはあるものの、いずれも熱エ ルギーを蓄積して搬送することができる物 を意味する。

 例えば熱利用の分野において、蓄熱媒体 潜熱輸送媒体等の熱媒体として利用される 接水和物のスラリーは、原料溶液又は原料 ラリーを冷媒との熱交換を通じて冷却する とにより製造することができる(特許文献1) その熱交換を可能にする熱交換器の一例は 伝熱管を用いるものであり、これは更に単 式及び多管式(シェル・アンド・チューブ式 を含む)に細分化することができる。また、 熱管の外周囲に冷媒を、その内部に原料溶 又は原料スラリーをそれぞれ配置すること 熱交換を行うものと、逆に伝熱管の内部に 媒を、その外周囲に原料溶液又は原料スラ ーをそれぞれ配置することで熱交換を行う のとに分けることができる(特許文献2及び3 照)。

 ところで、熱交換器の熱交換面に付着し 包接水和物には、これが生成核となって新 な包接水和物の生成を促進する効果がある とが知られている(特許文献4及び5)。

 他方、熱交換器の熱交換面に包接水和物が 着していると熱交換面が露出せず熱交換に 障を来たす。特に伝熱管の外周囲に冷媒を その内部に原料溶液又は原料スラリーをそ ぞれ配置することで熱交換を行う構成の熱 換器を使用する場合には、伝熱管の内壁面 付着し堆積した包接水和物が原料溶液又は 料スラリーの流通を妨げてしまう。そして 延いては包接水和物スラリーを長時間に亘 安定的に製造することができなくなる。こ ため、原料溶液又は原料スラリーの流速を きくすることによって、付着した包接水和 を当該熱交換面から強制的に剥離させ、そ 剥離が完全に行われたかどうかを適当なパ メータを検出することで判定している(特許 文献6)。

特開2004-93052号公報

特開2002-263470号公報

特開2004-85008号公報

特開2000-234769号公報

特開2002-283223号公報

特許2001-343139号公報

 しかし、熱交換器の熱交換面に付着した 接水和物を完全に剥離させれば、包接水和 スラリーを安定的に製造することができる いう長所を得られるとはいえ、安定的製造 重視する余り、前記熱交換面に付着した包 水和物が生成核となることによる新たな包 水和物の生成促進効果という長所を犠牲に ている事実は否めない。

 本発明は、以上の事情に鑑みてなされた のであり、熱交換器の熱交換面に付着した 接水和物による新たな包接水和物の生成促 効果という長所を維持しつつ、包接水和物 ラリーを長時間に亘り安定的に製造するこ ができる技術を提供することを目的とする

 上記目的を達成するための、本発明の第1 の形態に係る包接水和物の製造方法は、包接 水和物のゲスト化合物の水溶液又は前記包接 水和物を前記水溶液若しくは水に分散若しく は懸濁させてなるスラリーを伝熱管の内部に 流し、前記伝熱管の外周囲にある冷媒との熱 交換を通じて前記水溶液又は前記スラリー中 に前記包接水和物を生成する工程とを有する 包接水和物スラリーの製造方法であって、前 記冷媒との熱交換の過程で前記伝熱管の内壁 面に付着する前記包接水和物の量の増加を、 前記伝熱管の内部を流れる前記水溶液又は前 記スラリーの流れの力により抑制することを 特徴とするものである。

 本発明の第2の形態に係る包接水和物の製 造方法は、包接水和物のゲスト化合物の水溶 液又は前記包接水和物を前記水溶液若しくは 水に分散若しくは懸濁させてなるスラリーを 伝熱管の内部に流し、前記伝熱管の外周囲に ある冷媒との熱交換を通じて前記水溶液又は 前記スラリー中に前記包接水和物を生成する 工程とを有する包接水和物スラリーの製造方 法であって、前記冷媒との熱交換の過程で前 記伝熱管の内壁面に付着する包接水和物の一 部を前記水溶液又は前記スラリーの流れの力 により取り除くとともに、その残部を前記伝 熱管の内壁面を覆うように残すことを特徴と するものである。

 本発明の第3の形態に係る包接水和物スラ リーの製造方法は、第1又は第2の形態に係る 造方法であって、前記伝熱管を通過した前 水溶液又は前記スラリーの一部又は全部を その伝熱管に還流させることを特徴とする のである。

 本発明の第4の形態に係る包接水和物スラ リーの製造方法は、第1又は第2の形態に係る 造方法であって、前記冷媒の温度を調整す 工程を有することを特徴とするものである

 本発明の第5の形態に係る包接水和物スラ リーの製造方法は、第4の形態に係る包接水 物スラリーの製造方法であって、前記冷媒 温度を前記包接水和物の凝固点より低温で って、凝固点に近い温度又は伝熱管の内部 流す前記水溶液又は前記スラリーの温度に い温度に調整することを特徴とするもので る。

 本発明の第6の形態に係る包接水和物の製 造装置は、複数の伝熱管と、各伝熱管の外周 囲に冷媒を供給する冷媒供給装置と、各伝熱 管の内部に包接水和物のゲスト化合物の水溶 液又は前記包接水和物を前記水溶液若しくは 水に分散若しくは懸濁させてなるスラリーを 供給する原液供給装置と、前記水溶液又は前 記スラリーの流速を設定する流速設定装置と を備え、前記冷媒との熱交換を通じて前記水 溶液又は前記スラリー中に前記包接水和物が 生成される包接水和物スラリーの製造装置で あって、流速設定装置により、各伝熱管の内 壁面に付着する前記包接水和物の量の増加が 、各伝熱管の内部を流れる前記水溶液又は前 記スラリーの流れの力により抑制されるよう に前記水溶液又は前記スラリーの流速が設定 されることを特徴とするものである。

 本発明の第7の形態に係る包接水和物の製 造装置は、複数の伝熱管と、各伝熱管の外周 囲に冷媒を供給する冷媒供給装置と、各伝熱 管の内部に包接水和物のゲスト化合物の水溶 液又は前記包接水和物を前記水溶液若しくは 水に分散若しくは懸濁させてなるスラリーを 供給する原液供給装置と、前記水溶液又は前 記スラリーの流速を設定する流速設定装置と を備え、前記冷媒との熱交換を通じて前記水 溶液又は前記スラリー中に前記包接水和物が 生成される包接水和物スラリーの製造装置で あって、流速設定装置により、各伝熱管の内 壁面に付着した包接水和物の一部が前記水溶 液又は前記スラリーの流れの力により取り除 かれ、その残部が各伝熱管の内壁面を覆うよ うに残るように前記水溶液又は前記スラリー の流速が設定されることを特徴とするもので ある。

 本発明の第8の形態に係る包接水和物スラ リーの製造装置は、第6又は第7の形態に係る 造装置であって、各伝熱管の内部に供給さ る前記水溶液又は前記スラリーの流れに乱 を形成する乱れ形成手段を備えることを特 とするものである。

 本発明の第9の形態に係る包接水和物スラ リーの製造装置は、第6又は第7の形態に係る 造装置であって、各伝熱管の内壁面及び外 面のうち少なくとも一つに、前記水溶液又 前記スラリーが流れる方向に沿って凹凸が 成されていることを特徴とするものである

 本発明の第10の形態に係る包接水和物ス リーの製造装置は、第6又は第7の形態に係る 製造装置であって、前記伝熱管を通過した前 記水溶液又は前記スラリーの一部又は全部を 、その伝熱管に還流する循環装置を備えるこ とを特徴とするものである。

 本発明の第11の形態に係る包接水和物ス リーの製造装置は、第6又は第7の形態に係る 製造装置であって、前記冷媒の温度を調整す る冷媒温度調整装置を備えることを特徴とす るものである。

 本発明の第12の形態に係る包接水和物ス リーの製造装置の運転方法は、複数の伝熱 と、各伝熱管の外周囲に冷媒を供給する冷 供給装置と、各伝熱管の内部に包接水和物 ゲスト化合物の水溶液又は前記包接水和物 前記水溶液若しくは水に分散若しくは懸濁 せてなるスラリーを供給する原液供給装置 、前記水溶液又は前記スラリーの流速を設 する流速設定装置と、各伝熱管を通過した 記水溶液又は前記スラリーの一部又は全部 常時又は必要に応じてその伝熱管に還流す 循環装置を備え、前記冷媒との熱交換を通 て前記水溶液又は前記スラリー中に前記包 水和物が生成される包接水和物スラリーの 造装置の運転方法であって、前記製造装置 初回運転時、休止後の再開運転時又は性能 認運転時に、各伝熱管の内壁面に付着した 接水和物の一部を前記水溶液又は前記スラ ーの流れの力により取り除くとともに、そ 残部を各伝熱管の内壁面を覆うように残す とを特徴とするものである。

 本発明の第13の形態に係る包接水和物ス リーの製造装置の運転方法は、複数の伝熱 と、各伝熱管の外周囲に冷媒を供給する冷 供給装置と、前記冷媒の温度を調整する冷 温度調整装置と、各伝熱管の内部に包接水 物のゲスト化合物の水溶液又は前記包接水 物を前記水溶液若しくは水に分散若しくは 濁させてなるスラリーを供給する原液供給 置と、前記水溶液又は前記スラリーの流速 設定する流速設定装置と、各伝熱管を通過 た前記水溶液又は前記スラリーの一部又は 部を常時又は必要に応じてその伝熱管に還 する循環装置を備え、前記冷媒との熱交換 通じて前記水溶液又は前記スラリー中に前 包接水和物が生成される包接水和物スラリ の製造装置の運転方法であって、前記製造 置の初回運転時、休止後の再開運転時又は 能確認運転時に、前記冷媒温度調整装置に り前記冷媒の温度を前記包接水和物の凝固 よりも高い温度に設定し、各伝熱管の内壁 に付着した包接水和物の一部を前記水溶液 は前記スラリーの流れの力により取り除く ともに、その残部を各伝熱管の内壁面を覆 ように残すことを特徴とするものである。

 本発明の第14の形態に係る包接水和物ス リーの製造装置の運転方法は、複数の伝熱 と、各伝熱管の外周囲に冷媒を供給する冷 供給装置と、前記冷媒の温度を調整する冷 温度調整装置と、各伝熱管の内部に包接水 物のゲスト化合物の水溶液又は前記包接水 物を前記水溶液若しくは水に分散若しくは 濁させてなるスラリーを供給する原液供給 置と、前記水溶液又は前記スラリーの流速 設定する流速設定装置と、各伝熱管を通過 た前記水溶液又は前記スラリーの一部又は 部を常時又は必要に応じてその伝熱管に還 する循環装置を備え、前記冷媒との熱交換 通じて前記水溶液又は前記スラリー中に前 包接水和物が生成される包接水和物スラリ の製造装置の運転方法であって、前記製造 置の通常運転時に、前記冷媒温度調整装置 より前記冷媒の温度の変動を抑制し、各伝 管の内壁面に付着した包接水和物の一部を 記水溶液又は前記スラリーの流れの力によ 取り除くとともに、その残部を各伝熱管の 壁面を覆うように残すことを特徴とするも である。

図1は、本発明の原理を説明するための 、包接水和物生成状況を示した概念説明図で ある。 図2は、図1の管直交方向の断面図であ 。 図3は、図1の丸で囲んだA部の拡大図で る。 図4は、本発明の原理を実証するための 実験装置の説明図である。 図5は、図4に示した実験装置による実 結果を示すグラフである。 図6は、図4に示した実験装置による実 結果を示すグラフである。 図7は、本発明の原理を実証するための 実験装置の説明図である。 図8は、図7に示した実験装置による実 結果を示すグラフである。 図9は、図7に示した実験装置による実 結果を示すグラフである。 図10は、図7に示した実験装置による実 験結果を示すグラフである。 図11は、図7に示した実験装置による実 験結果を示すグラフである。 図12は、図7に示した実験装置による実 験結果を示すグラフである。 図13は、図7に示した実験装置による実 験結果を示すグラフである。 図14は、図7に示した実験装置による実 験結果を示すグラフである。 図15は、図7に示した実験装置による実 験結果を示すグラフである。 図16は、本発明の実施の形態1の機器構 成の説明図である。 図17は、TBAB水溶液の水和物スラリーの 温度と、固相分率の関係を示すグラフである 。 図18は、実施例1の機器構成の説明図で ある。 図19は、実施例2の機器構成の説明図で ある。 図20は、実施例3の機器構成の説明図で ある。 図21は、実施例3の機器構成の説明図で ある。 図22は、実施例4の乱れ形成手段の説明 図である。 図23は、実施例4の他の乱れ形成手段の 説明図である。 図24は、実施例5に係る伝熱管内壁面及 び外壁面に凹凸を設けた管の例としてのコル ゲート管の説明図である。 図25は、実施例5に係る伝熱管内壁面に 凹凸を設けた管の例としての溝付管の説明図 である。 図26は、伝熱管内面形状と熱透過率の 係を示すグラフである。 図27は、伝熱管内面形状と圧力損失の 係を示すグラフである。 図28は、実施例5に係る外壁面に凹凸を 設けた伝熱管の他の例の説明図である。 図29は、本発明の実施例6の基本原理の 説明図である。 図30は、本発明の実施例6の基本原理の 説明図である。 図31は、本発明の実施例7の説明図であ る。 図32は、本発明の実施例8の説明図であ る。 図33は、本発明の実施例8の動作説明図 である。

 本発明の原理について説明する。

 図1~図3は包接水和物の生成状況の概念説 図であり、より詳しくは、包接水和物のゲ ト化合物の水溶液(原料溶液)又は前記包接 和物を前記水溶液若しくは水に分散若しく 懸濁させてなるスラリー(原料スラリー)を伝 熱管の内部に流し、前記伝熱管の外周囲にあ る冷媒との熱交換を通じて原料溶液又は原料 スラリー中に前記包接水和物を生成させ、包 接水和物スラリーにする状況を概念的に示し たものである。

 上記の原料溶液又は原料スラリーを伝熱 内部に流し、冷媒温度を伝熱管の内壁面の 度が包接水和物の凝固点(又は生成開始温度 )以下になるように設定する。すると、内壁 と原料溶液若しくは原料スラリーとの界面 又は内壁面近傍の原料溶液中に水和物が生 し、内壁面に付着又は堆積してゆく(図1参照 )。伝熱管を介した冷媒による冷却の効果は 伝熱管内壁面に付着又は堆積した水和物を して原料溶液にまで及ぶので、当該水和物 面において柱状、針状の水和物結晶が生成 れ、包接水和物の付着厚又は堆積厚(伝熱管 内面から管中心方向の厚みの意。以下、同 とする。)が増加してゆく(図2参照)。

 伝熱管内壁面に付着した水和物のうち、 料溶液又は原料スラリーに露出しているも は、水和物生成の核となるので、包接水和 の付着厚又は堆積厚の増加に拍車を掛ける これらの結果、内壁面に付着した水和物の の厚みは徐々に増加していく。

 他方、包接水和物の付着厚又は堆積厚が 加するにつれて、伝熱管内の流路断面積が 少すると(図2参照)、伝熱管内を流れる原料 液又は原料スラリーの流速が徐々に増加し 原料溶液又は原料スラリーの流れの力(例え ばせん断力)も徐々に増加してゆく。ここで 伝熱管内壁面に付着し堆積する包接水和物 うち、原料溶液又は原料スラリーの側又は 熱管の内面から管中心方向の側にある部分( ち、原料溶液又は原料スラリーに晒されて る部分)は、かなり軟質であり、比較的剥離 し易い。その軟質の程度や剥離容易性は種々 の条件(例えば原料溶液又は原料スラリーと 媒との温度差)により変動するが、氷に比し 明らかに軟質である。それ故、原料溶液又 原料スラリーの流れの力により、伝熱管内 面に付着した水和物の層のうちより軟質な 分、即ち原料溶液又は原料スラリーの側に 出している部分から水和物結晶が剥離して くが、内壁面に付着した水和物の層の厚み 徐々に増加していく(図3参照)。

 そして最終的には、伝熱管内壁面に付着 は堆積してゆく水和物粒子の量と、そこに 着又は堆積した水和物の層から剥離してゆ 水和物粒子の量とが均衡し、伝熱管の内壁 における付着厚又は堆積厚の変動がなくな 又は変動が非常に小さくなる。

 このとき、伝熱管の内壁面に付着又は堆 した水和物の層から剥離した水和物結晶は 通常50~100ミクロン程度の微細粒子であり、 たな水和物の生成核として機能し、故に原 溶液又は原料スラリーの過冷却状態が解除 れてゆく。しかも、この水和物結晶は原料 液又は原料スラリーの中に分散又は懸濁し 取り込まれ、全体として包接水和物スラリ となる。

 また、伝熱管内壁面における水和物の付 厚又は堆積厚が増加して一定以上になると 伝熱管を介した冷媒による冷却効果が原料 液又は原料スラリーに及ばなくなり、その 加はいずれ頭打ちになる。しかし、原料溶 又は原料スラリーの流れの力による上記の 和物の剥離効果により、当該付着厚又は堆 厚が冷媒により冷却効果が原料溶液又は原 スラリーに及ぶ範囲に抑えられるので、新 な水和物結晶の生成と剥離が継続的に起こ 。そして、この新たな水和物結晶は原料溶 又は原料スラリーの中に分散又は懸濁して り込まれ、全体として包接水和物スラリー なる。

 本発明では、上記の本発明の原理に基づ 、包接水和物の原料溶液又は原料スラリー 伝熱管の内部に流し、伝熱管の外周囲にあ 冷媒との熱交換を通じて原料溶液又は原料 ラリー中に包接水和物を生成する際に、伝 管の内壁面に付着する包接水和物の量の増 を、伝熱管の内部を流れる原料溶液又は原 スラリーの流れの力により抑制する。より 体的には、伝熱管の内壁面に付着する包接 和物の一部(原料溶液又は原料スラリーの側 又は伝熱管の管中心方向の側にある、軟質で 剥離し易い部分)を原料溶液又は原料スラリ の流れのせん断力その他の力により剥離さ 又は削ぎ落として、その流れとともに除去 、残部を前記伝熱管の内壁面を覆うように えて残すようにする。

 しかして、本発明によれば、以下の作用 果を奏する。

(a)伝熱管の内壁面に残存する包接水和物の 付着厚又は堆積厚は、原料溶液又は原料スラ リーの流れの強さとのバランスにより定まる 水準を上回らなくなる(頭打ちになる)ので、 交換器による冷却効果は、原料溶液又は原 スラリーから包接水和物を生成させるに足 程度に維持することができる。

(b)原料溶液又は原料スラリーの流れの力に より取り除かれた包接水和物は、原料溶液又 は原料スラリーに分散若しくは懸濁する。そ れ故、当初の原料溶液又は原料スラリーより も包接水和物の存在比率又は固相分率が高い 包接水和物スラリーを製造することができる 。

(c)伝熱管の内壁面に付着したまま残る包接 水和物が生成核として機能するので、新たな 包接水和物を容易に生成させることができる 。

(d)原料スラリーを伝熱管の内部に流す場合 においては、当初の原料スラリー中に存在す る包接水和物が生成核として機能するので、 新たな包接水和物を容易に生成させることが できる。

(e)伝熱管から取り除かれた包接水和物が、 伝熱管を通過する過程で過冷却された原料溶 液又は原料スラリー中に分散若しくは懸濁し て、新たな包接水和物の生成核となり、過冷 却解除剤として機能するので、当該伝熱管を 通過した後においても包接水和物スラリーに おける包接水和物の存在比率又は固相分率の 増加を促進させることができる。

 かくして、包接水和物スラリーを長時間 亘り又は連続して、安定的に製造すること できる。

 なお、上記の説明が示唆するとおり、包 水和物スラリーの製造装置の性能や能力又 包接水和物スラリーの製造能力を調整又は 御する際には、伝熱管の内壁面に残存する 接水和物の付着厚又は堆積厚を調整又は制 することが重要である。

 当該付着厚又は堆積厚については、原料 液又は原料スラリーの流れの力又はこの力 相関関係があるパラメータによりこれを調 又は制御することができる。当該パラメー の典型例としては、流速(即ち、単位時間当 たりの原料溶液又は原料スラリーの流量を伝 熱管の内断面積で割って得られる値)、伝熱 の材質や寸法、熱交換器における交換熱量 原料溶液の濃度、凝固点(生成開始温度)、原 料溶液や原料スラリーの粘性や温度、原料溶 液又は原料スラリーが伝熱管を通過する前後 の圧力損失、伝熱管の外周囲にある冷媒の温 度や流し方などが挙げられる。

 尤も、上記のパラメータの中には、包接 和物スラリーの製造を開始する時点で既に まっているパラメータ(例えば伝熱管の寸法 や材質など)とそうでないパラメータがある 包接水和物スラリーの製造を長時間に亘り 定的に行うことを目指す場合には、包接水 物スラリーの製造装置の稼動中に調整又は 御が容易なパラメータにより調整又は制御 ることが好ましい。そのようなパラメータ しては流速が最適である。包接水和物スラ ーの製造中に流速以外のパラメータが変動 たとしても、その変動に応じて流速を調整 は制御すれば、伝熱管の内壁面に残存する 接水和物の付着厚又は堆積厚、延いては包 水和物スラリーの製造装置の性能や能力又 包接水和物スラリーの製造能力を調整又は 御することができる場合が多いからである

 なお、包接水和物の生成量や伝熱管内壁 への付着量を調整又は制御するためには、 媒の温度及び原料溶液や原料スラリーの温 のうち少なくとも一方の温度をパラメータ して選択し、これを調整又は制御すること 効果的である。この場合、冷媒の温度を調 又は制御する方が、原料溶液や原料スラリ の温度を調整又は制御するよりも、包接水 物の生成量や伝熱管内壁面への付着量への 答性や即効性が高く、また実機装置の複雑 を回避できるという点で、好ましい。

 伝熱管の管軸方向においてその内壁面を 接水和物が覆う範囲は、全範囲であっても 部の範囲であっても構わないが、包接水和 スラリー製造の安定性という観点からは、 該内壁面に付着して残る包接水和物は均一 ある方が好ましい。

 現実問題として、伝熱管の内壁面の広い 囲に包接水和物が厚く堆積している場合に 、その中を流れる原料溶液又は原料スラリ の圧力損失が高くなり、それを流し続ける めのポンプの動力も高くなり、最終的には 器・設備類の高コスト化を招来し兼ねない かかる経済的な側面を念頭に入れつつ包接 和物スラリーの長時間安定製造に好適とな ように上記のパラメータを変動させると上 パラメータの変動許容範囲を、実証的に又 合理的推測をもって評価することができる その確定作業の過程で又は結果として、伝 管の内壁面における包接水和物の付着厚又 堆積厚及びそれが覆う程度の好適な範囲も 証的に又は合理的推測をもって決まってく 。

 以下、本発明の各形態が奏する作用効果 ついて説明する。

 本発明の第1の形態によれば、冷媒との熱 交換の過程で伝熱管の内壁面に付着する包接 水和物の量の増加を、伝熱管の内部を流れる 原料溶液又は原料スラリーの流れの力により 抑制するので、上記(a)乃至(e)の作用効果、延 いては包接水和物スラリーを長時間に亘り又 は連続して、安定的に製造することができる という作用効果を奏する。

 本発明の第2の形態によれば、冷媒との熱 交換の過程で伝熱管の内壁面に付着する包接 水和物の一部を原料溶液又は原料スラリーの 流れの力により取り除くとともに、その残部 を前記伝熱管の内壁面を覆うように残すので 、上記(a)乃至(e)の作用効果、延いては包接水 和物スラリーを長時間に亘り又は連続して、 安定的に製造することができるという作用効 果を奏する。

 なお、本発明の第2の形態では、包接水和 物の生成核が伝熱管の内壁面に広く分布する ことになり、当該伝熱管の内部を包接水和物 が生成し易い環境にすることができるので、 上記(c)の作用効果が顕著に現れる。

 本発明の第3の形態によれば、上記(a)乃至 (e)の作用効果、延いては包接水和物スラリー を長時間に亘り又は連続して、安定的に製造 することができるという作用効果を奏するこ とに加えて、下記(f)及び(g)の作用効果を奏す る。

(f)伝熱管を通過した水溶液又はスラリーの 一部又は全部が原料溶液又は原料スラリーと してその伝熱管に再度流れるので、包接水和 物スラリーにおける包接水和物の存在比率又 は固相分率を、その還流のたびに高めること ができる。

(g)当初は包接水和物が全く又は少量若しく は不均一にしか付着していなかった伝熱管の 内壁面に、その還流のたびに当該包接水和物 を付着させ、伝熱管の内壁面の広い範囲でよ り均一に堆積させることができる。また、伝 熱管の内壁面から、そこに当初付着又は堆積 していた包接水和物が何らかの理由で剥離し てしまっても、その還流のたびに、剥離箇所 に再度包接水和物を付着させ、堆積させ、最 終的にその剥離箇所を包接水和物が均一に付 着した状態にまで修復させることができる。 それ故、包接水和物スラリーを長時間に亘り 又は連続して、安定的に製造することができ る。

 上記(f)及び(g)の作用効果は、包接水和物 ラリーの製造装置の初回運転時、休止後の 転再開時又は性能確認運転時に、当該製造 置をより早期に安定稼動状態にさせるため 活用でき、有益である(本発明の第12乃至14 形態参照)。

 また、原料溶液の流れによる力は、原料 液のみの作用により生じるが、原料スラリ の流れによる力は、原料スラリー中の水溶 と水和物微粒子の両方の作用により生じる このため、下記(h)の作用効果を奏する。

 (h)原料溶液中に水和物が分散又は懸濁す に至った包接水和物スラリー又は原料スラ ーの一部または全部をその伝熱管に原料ス リーとして還流させることにより剥離効果 高めることができる。

 この剥離効果は、原料スラリー中の水和 微粒子の濃度が高いとき、従って原料スラ ーの粘性が高いときほど高くなるが、伝熱 内の流路断面積をより増加させるように、 って伝熱管を通過する時に生じる圧力損失 増加を抑制するように働く。従って、本発 の第3の形態によれば、伝熱管を通過する時 に生じる圧力損失の増加を抑制することがで きるので、包接水和物スラリーの製造装置の 稼動状態が急激に悪化するような事態を回避 することができ、包接水和物スラリーの安定 的製造に資することができる。

 包接水和物スラリーを製造する際、伝熱 の外周囲にある冷媒の温度は、当該冷媒を 却する冷凍機の冷凍能力の変化や、冷凍機 冷凍能力と熱利用側の負荷とのバランスに り変動する。このような冷媒温度の変動は 伝熱管を介した熱交換により生成する包接 和物の量や当該伝熱管の内壁面への付着量 影響し、延いては包接水和物スラリーを長 間に亘り又は連続的して、安定的に製造す ことが難しくなる。

 これに対し、本発明の第4の形態によれば 、冷媒温度の調整を通じて、より具体的には 、冷媒温度の変動を抑制して又はその変動を 積極的に制御して、伝熱管の内部で生成する 包接水和物の量や当該伝熱管の内壁面への付 着量を調節することができるので、上記のよ うな問題は生じることなく、包接水和物スラ リーを長時間に亘り又は連続して、安定的に 製造することができる。

 なお、「冷媒温度の変動を積極的に制御 て、伝熱管の内部で生成する包接水和物の や当該伝熱管の内壁面への付着量を調節す 」ことには、「冷媒の温度を包接水和物の 固点より高温にして伝熱管の内壁面に付着 ている包接水和物の堆積物の少なくとも一 を短時間で融解し、原料溶液又は原料スラ ーの力で剥離除去し、付着量をゼロ又は僅 にする」ことも含まれる。このような操作 、伝熱管の内壁面における包接水和物の付 又は堆積の状態が何らかの事情で望ましい のではなくなった場合において、当該内壁 を初期状態(即ち、全く又は殆ど包接水和物 が付着していない状態)に復帰させる際に必 であり、包接水和物スラリーの製造装置の 期化やリセットに役立つ。

 本発明の第5形態によれば、冷媒の温度を 包接水和物の凝固点より低温であって、凝固 点に近い温度又は伝熱管の内部に流す前記水 溶液又は前記スラリーの温度に近い温度、す なわち包接水和物の凝固点より低温でできる だけ高い温度に調整するので、伝熱管の内壁 面に付着する包接水和物の量の増加を、伝熱 管の内部を流れる原料溶液又は原料スラリー の流れの力により抑制することをより効果的 に行なうことができる。このことについて、 詳しく説明する。

 伝熱管に付着する包接水和物の量の増加 、伝熱管の内部を流れる原料溶液又は原料 ラリーの流れの力のみにより抑制する場合 は、出力が大きい送液ポンプを採用しなけ ばならなくなる。しかし、冷媒の温度を調 することでもその増加を抑制することがで る。即ち、冷媒の温度を包接水和物の凝固 より低温で、凝固点に近い温度又は伝熱管 内部に流す前記水溶液又は前記スラリーの 度に近い温度、すなわち包接水和物の凝固 より低温でできるだけ高い温度にすれば、 熱管の熱交換面に接する原料溶液又は原料 ラリーの冷却の程度(具体的には過冷却度) 小さくなる。そうすると、伝熱管の熱交換 で冷却されて生成する水和物の堆積層内の 間の割合(水溶液の含有率)が多くなり、水和 物の堆積層は柔らかく、原料溶液又は原料ス ラリーの流れの力により剥離され易くなる。

 一方、冷媒の温度を包接水和物の凝固点 り低温でできるだけ高い温度にすると、交 熱量が小さくなり水和物スラリーを製造す 能力が小さくなることが予想されるが、水 物の付着厚さが小さくなるため熱交換にお る熱抵抗が小さくなるので、原料溶液又は 料スラリーを冷却する能力は低下せず水和 スラリーを製造する能力は低下しない。

 以上の結果、伝熱管の内壁面に付着する 接水和物の厚さは、総じて小さくなる。従 て、本発明の第5の形態によれば、原料溶液 又は原料スラリーの流速を低減でき、送液ポ ンプの出力をより小さくできる若しくは小型 のポンプを採用できる又は更にはエネルギー 消費を低減できるという作用効果を奏する。

 さらに、冷媒の温度を包接水和物の凝固 より低温であって、凝固点に近い温度又は 熱管の内部に流す前記水溶液又は前記スラ ーの温度に近い温度にすることにより、冷 を供給する冷凍機の消費電力を低減できる め、水和物スラリー製造システムのCOPを向 できる。

 冷媒の温度を包接水和物の凝固点より低 であって、伝熱管の内部に流す前記水溶液 は前記スラリーの温度に近い温度に調整す ことにより、上記のように伝熱管の内壁面 付着する包接水和物の増加を原料溶液又は 料スラリーの流れの力により抑制すること より効果的に行なうことができる。なお、 媒と原料溶液又は原料スラリーとの温度差 小さくし過ぎると伝熱効率が低くなるため 冷媒の温度を原料溶液又は原料スラリーの 度より1~4℃低い温度とすることが好ましい

 本発明の第6の形態によれば、本発明の第 1の形態に係る製造方法に基づく包接水和物 ラリーの製造装置を実現することができる

 本発明の第7の形態によれば、本発明の第 2の形態に係る製造方法に基づく包接水和物 ラリーの製造装置を実現することができる

 本発明の第8の形態によれば、乱れ形成手 段により、伝熱管の内部に供給される原料溶 液又は原料スラリーの流れに乱れを形成する ことができ、伝熱管の内壁面に付着する包接 水和物の量の増加をその流れの力により抑制 することがより確実にでき、包接水和物スラ リーを長時間に亘り又は連続して、安定的に 製造することができる。

 また、伝熱管の内部を流れる原料溶液又 原料スラリーの流速を、乱れ形成手段を設 ない場合よりも低下させても、伝熱管の内 面に付着する包接水和物の量の増加をその れの力により抑制することができ、伝熱管 熱交換効率を維持できる。これにより原料 液又は原料スラリーを流すためのポンプ装 にかかる負荷を相対的に低減することがで る。

 また、伝熱管の内壁面に付着する包接水 物の付着量を減少できるので、付着した包 水和物に起因する熱抵抗が減少し、冷媒か 原料溶液又は原料スラリーへの伝熱効率が 上し伝熱量が増大する。これは伝熱面積(伝 熱管本数)を減少させることができることに がる。

 また、伝熱管の内部の原料溶液又は原料 ラリーの流れに乱れを生じさせるため、冷 から原料溶液又は原料スラリーへの伝熱効 が向上するため、包接水和物スラリーの製 能力を向上させることができる。

 本発明の第9の形態によれば、伝熱管の伝 熱面積が増加するので、冷媒から原料溶液又 は原料スラリーへの伝熱効率が向上するため 、包接水和物スラリーの製造能力を向上させ ることができる。

 また、伝熱管の内部を流れる原料溶液又 原料スラリーの流速を、伝熱管に凹凸を形 しない場合よりも高めても、伝熱管の熱交 効率を維持できる。これにより伝熱管の内 面に付着する包接水和物の量の増加をその れの力により抑制することがより確実にで 、包接水和物スラリーを長時間に亘り又は 続して、安定的に製造することができる。

 また、伝熱管の内壁面に原料溶液又は原 スラリーが流れる方向に沿って設けられた 部には、生成した包接水和物が付着したま 残り易くなり、残る包接水和物が生成核と て機能するので、新たな包接水和物をより 易に生成させることができる。そのため、 媒の温度を伝熱管に凹凸を形成しない場合 りも高めに設定しても、生成核として機能 る包接水和物が凹部に付着したまま残って るので、確実に包接水和物スラリーを製造 ることができる。それ故、冷媒の温度を高 に設定しても包接水和物スラリーを製造す ことができるので、冷媒の冷凍システムの 荷を相対的に軽減することができ、あるい 冷凍機の成績係数を向上させることができ 。

 本発明の第10の形態によれば、本発明の 3の形態に係る製造方法に基づく包接水和物 ラリーの製造装置を実現することができる

 本発明の第11の形態によれば、本発明の 4の形態に係る製造方法に基づく包接水和物 ラリーの製造装置を実現することができる

 第10の形態における循環装置と第11の形態 における冷媒温度調整装置との併用により、 伝熱管の内壁面における包接水和物の付着量 又は堆積厚の微調整が可能になる当該製造装 置の運転制御上の長所もある。

 なお、冷媒温度調整装置によれば、冷媒 温度を包接水和物の凝固点より高温にして 熱管の内壁面に付着している包接水和物の 積物の少なくとも一部を短時間で融解し、 料溶液又は原料スラリーの力で剥離除去し 付着量をゼロ又は僅少にすることもできる このような操作は、伝熱管の内壁面におけ 包接水和物の付着又は堆積の状態が何らか 事情で望ましいものではなくなった場合に いて、当該内壁面を初期状態(即ち、全く又 は殆ど包接水和物が付着していない状態)に 帰させる際に必要であり、包接水和物スラ ーの製造装置の初期化やリセットに役立つ

 包接水和物スラリーの製造装置における 熱管の内壁面の状態は、包接水和物スラリ の製造装置の初回運転時においては、全く 接水和物が付着しておらず、休止後の運転 開時においては、一旦付着していた包接水 物が融解して一部又は全部が剥離して不均 にしか付着又は堆積しておらず、性能確認 転時においては運転条件を変動させている で、包接水和物が付着しているか否か、均 に付着しているか否か等の判断を適確に行 ことができない。

 それ故、本発明の第12の形態によれば、 接水和物スラリーの製造装置の初回運転時 休止後の運転再開時又は性能確認運転時に 各伝熱管の内壁面に付着した包接水和物の 部を前記水溶液又は前記スラリーの流れの により取り除くとともに、その残部を各伝 管の内壁面を覆うように残すように、そし 伝熱管を通過した原料溶液又は原料スラリ の一部又は全部を常時又は必要に応じてそ 伝熱管に還流させる運転することで、前記(f )及び(g)の作用効果により、当該製造装置を り早期に安定稼動状態にさせることができ 。また、前記(h)の作用効果も奏する。

 なお、複数の伝熱管において各伝熱管の 壁面の状態は同一ではなく、むしろ伝熱管 とに異なる。このような場合、より多くの 熱管の内壁面に均一に包接水和物を付着さ 堆積させることで、包接水和物スラリーの 造を安定化させる必要がある。しかして、 発明の第3、第10及び第12の形態は、これら より原料溶液又は原料スラリーを循環させ ことで伝熱管の内壁面に均一に包接水和物 付着させ堆積させることができるので、包 水和物スラリーの製造装置が複数の伝熱管 備える場合に特に有益である。

 本発明の第13の形態によれば、第12の形態 と同様の作用効果を奏する。これに加えて、 第13の形態によれば、包接水和物スラリーの 造装置が備える冷媒温度調整装置により冷 の温度を調節することができ、冷媒温度の 整を通じて、より具体的には、冷媒温度の 動を抑制して又はその変動を積極的に制御 て、伝熱管の内部で生成する包接水和物の や当該伝熱管の内壁面への付着量を調節す ことができるので、第12の形態よりもより 期に又は効率的に通常運転できる条件を見 すことができ、前記装置の初回運転、休止 の再開運転又は性能確認運転を終えること できる。

 なお、本発明において「通常運転」とは 包接水和物スラリーの製造装置の運転開始 継続してこれを運転している場合において 当該製造装置の性能、能力又は包接水和物 ラリーの製造能力が運転継続時間にあまり 存することなく一定値又は一定範囲に収束 ているときの当該運転をいう。

 さらに、本発明の第13の形態によれば、 環装置と冷媒温度調整装置の併用により、 熱管の内壁面における包接水和物の付着厚 は堆積厚を微調整することが可能になり、 接水和物スラリー製造装置の運転制御上の 所も得られる。

 なお、冷媒温度調整装置によれば、冷媒 温度を包接水和物の凝固点より高温にして 熱管の内壁面に付着している包接水和物の 積物の少なくとも一部を短時間で融解し、 料溶液又は原料スラリーの力で剥離除去し 付着量をゼロ又は僅少にすることもできる このような操作は、既述のとおり、包接水 物スラリーの製造装置の初期化やリセット 役立つが、特に当該製造装置の初回運転、 止後の再開運転又は性能確認運転その他通 運転に必要な条件を試行錯誤により早期に 束させ、確定する必要がある局面において いったん設定した条件を見直すために、伝 管の内壁面を初期状態に復帰させる操作と て重要である。

 本発明の第14の形態によれば、包接水和 スラリーの製造装置の初回運転、休止後の 開運転又は性能確認運転を終えた後の通常 転時においても、冷媒温度調整装置により 媒の温度を調節することができるので、第4 第5及び第11の形態と同様に、冷媒温度の調 を通じて、包接水和物スラリーを長時間に り又は連続して、安定的に製造することが きる。

 本発明の原理を実証するために、以下に す実験を行った。

〔二重管単管実験〕
 シェル・アンド・チューブ型熱交換器に相 する二重管式熱交換器を用い、原料溶液又 原料スラリーの流れの力により、伝熱管の 壁面に付着する水和物の量を制御すること ついて、流れの力に関係するパラメータと て原料溶液又は原料スラリーの流速に着目 、この流速を変え、伝熱管内を流れるスラ ー流速によって、水和物付着厚みがどのよ に変化するかを調べる実験を行なった。

<実験装置>
 図4はこの実験装置の説明図である。

 内径φ15mm外径φ18mm、長さ2.5mのSUS304の直管 (一般に市販されているSUS管で管表面の加工 施していない)を、内径φ28mm長さ2mのSUS管内 装入して二重管とした熱交換器を用いる。

 実験装置は、図4に示すように、4組の二 管熱交換器51~54を直列に接続し、その一端側 (後流側)に、長さ1.5mのSUS直管(内径φ15mm外径φ 18mm)を非冷却区間55として接続して構成した

 4組の二重管熱交換器51~54の連結部及び両 部にそれぞれ内管内の温度を測定する温度 を設置した。また、非冷却区間55の端部に 温度計を設置した。

 二重管熱交換器51~54の内管に原料溶液又 原料スラリーを通流するための循環流路56を 設けた。そして、循環流路56に、原料溶液又 原料スラリーを貯留するバッファタンク57 原料溶液又は原料スラリーを循環するイン ータ付の循環ポンプ58、循環流路56を流れる 料溶液又は原料スラリーの流量を検知する 量計59、をそれぞれ設置した。

 また、二重管熱交換器51~54における内管 外管の間隙の環状部に、冷媒として冷水を 給できるようにした。

 原料溶液(包接水和物の水溶液)として、 度23wt%の臭化テトラnブチルアンモニウム(TBAB )水溶液を用いた。このTBAB水溶液の水和物生 開始温度は、約10℃である。また、冷媒と ての冷水の温度は、6~7℃とした。

<実験方法>
 以上のように構成された実験装置において バッファタンク57より、原料溶液を循環ポ プ58によって、二重管熱交換器51~54の内管に 定流量で供給し、一方、冷水(6~7℃)を水溶 と対向する方向に流し、内管内の原料溶液 冷却する。

 原料溶液が冷却されることによって水和 が生成され、出口で約8.6℃の水和物スラリ となる。水和物の生成に伴い、各測定区間( Pd1~Pd3)の差圧は上昇する。

 原料溶液若しくは原料スラリーの流量は ポンプ回転数を変えることで変化させ、そ 時の最大差圧を計測する。

 内管内の流速は、流量を管内断面積で割 て求める。

 管内壁に付着した水和物の厚み(みかけ付 着厚さ)は、計測された測定区間の差圧から 冷却部の差圧PdS(水和物スラリーの圧損に相 する)を差し引き、水和物の付着による内径 変化による差圧上昇から算出する。具体的に は、以下のようにして求めた。

 管内を流体が通過する場合において、管 の圧損は、流速の2乗に比例し、管内径に反 比例することが知られている。そこで、見か け付着厚さをδとして、下式を用いてδを算 した。

  Pd3 1 ’/Pd3 0 ={v 1 2 /(D-2δ)}/(v 0 2 /D)
  ただし、
   添字0:送液開始時(水溶液) 添字1:水和物 成後
   v:流速
   D:内管内径
   δ:みかけ付着厚さ
  Pd3:二重熱交換器54の入口と出口の差圧
  Pd3 1 ’:二重熱交換器54におけるスラリー圧損を除 去した管内圧損
     なお、Pd3 1 ’は、下式によって求める。

     Pd3 1 ’=Pd3 1 -(PdS 1 -PdS 0 )×2.5/1.5
<実験結果>
(1)包接水和物のみかけ付着厚さと流速の関係
 流速を変えて圧損を測定し、上記の式に基 いて水和物のみかけ付着厚さを算定した。 5は算定結果をグラフで示した図である。図 5のグラフにおいては、縦軸が見かけ付着厚 δで、横軸が原料溶液(水溶液時の)流速を示 ている。図5のグラフに示されるように、流 速が速くなるほど付着厚さが低減している。 そして、流速が1.8m/sを超えると付着厚さは急 激に減少し、その後は急激な変化がなくほぼ 同じ厚さを維持していることが分かる。

 このことから、熱交換器の冷却面での原 溶液又は原料スラリーの流速を1.8m/s以上に ることにより、冷却面への水和物の付着量 増加を抑制することができる。

(2)包接水和物のみかけ付着厚さ及び熱通過率 の時間変化
 原料溶液の流速を1.8m/sにしたときの水和物 付着による内径変化による差圧(計測した差 圧からスラリー圧損を除去した差圧)の時間 化と、冷水による入熱が原料溶液に熱伝達 れた熱通過率の時間変化を求めた。

 実験条件は以下の通りである。

  原料溶液流速:1.8m/s
  冷水入口:6.4℃
  冷水出口:6.7℃
  原料溶液入口温度:8.9℃
  水和物スラリー出口温度:8.6℃
  熱密度:16.6Mcal/m 3
 水和物の付着による内径変化による差圧(ス ラリー圧損を除去した1mあたりの差圧)Pおよ 熱通過率K1を下式によって算出した。

  P=
(Pd1+Pd2+Pd3)/(5+2.5+2.5)-(PdS-PdS 0 )/1.5
  K1=Q/Aθ=Cp・ρ・u(To-Ti)/πDLθ
  但し、
   Pdn、PdSの添字0:送液開始時(水溶液) 添字 なし:水和物生成後
   Q:入熱量
   A:伝熱面積
   Cp:水比熱
   ρ:水密度
   u:冷水流量
   To:冷水出口温度
   Ti:冷水入口温度
   D:内管内径
   L:伝熱長さ
   θ:水溶液温度差
 図6は算出結果を示すグラフである。図中左 側の縦軸が水和物の付着による内径変化によ る差圧(スラリー圧損を除去した差圧)を示し 図中右側の縦軸が熱通過率を示し、横軸が 験時間を示している。

 図6のグラフから分かるように、熱交換器 管内の圧力損失の時間変化はほぼ一定となり 、圧力損失の増加を抑制できている。また、 熱通過率もほぼ一定であり、伝熱面への水和 物の付着量の増加を抑制して熱抵抗の増加を 抑制することができている。

 以上のように、熱交換器を通過する原料 液又は原料スラリーの流速を1.8m/s以上にす ことによって、伝熱面への水和物の付着を 制することが実証された。

〔シェル・アンド・チューブ熱交換器による 実験〕
 次に、シェル・アンド・チューブ式熱交換 を用いて、フロン冷媒によって原料溶液又 原料スラリーを冷却して水和物スラリーを 造する製造実験を行なったので、これにつ て述べる。

<実験装置の説明>
 図7はこの実験装置の説明図である。

 シェル・アンド・チューブ式熱交換器は SUS304製呼び径150A鋼管を加工したシェル内に 、外径17.3mm内径14mmのSUS304製のパイプが27本配 置された1パス構成の熱交換器である。チュ ブ内に原料溶液又は原料スラリーが流れ、 ェル側に冷媒が流れる。

 シェル・アンド・チューブ式熱交換器61 チューブ側に原料溶液又は原料スラリーを 環供給する循環流路62は、原料溶液又は原料 スラリーを貯留するタンク63(実験開始時には 原料溶液が貯留されている)と、タンク63の下 流側に設けられた循環ポンプ64と、循環ポン 64の出口側に設けられた模擬負荷用の電気 ータ65と、を備えている。

 タンク63には、冷却コイル(図示せず)が設 けられるか、発核用の水和物スラリー投入を 行い、熱交換器から送られた過冷却状態の原 料溶液の過冷却解除を行なう。

 模擬負荷用の電気ヒータ65により、タン 63から送られた水和物スラリーの冷熱を相殺 するように加熱して熱交換器入口に供給する 原料溶液又は原料スラリーの温度を一定して 実験を行なえるように調整する。

 また、タンク63と、循環流路62における電 気ヒータ65の下流側とを連結する再循環流路6 6が設けられており、この再循環流路66には再 循環ポンプ67が設けられている。

 シェル・アンド・チューブ式熱交換器61 送られる原料溶液又は原料スラリーの流量 、再循環ポンプ67および循環ポンプ64に取り けたインバータによって、ポンプの回転数 調整され所定量に調整される。

 シェル・アンド・チューブ式熱交換器61 シェル側には、冷媒回路68を通じてフロン冷 媒のR134aが供給される。冷媒回路68には、冷 熱交換器69と、気液分離器70と、冷媒ポンプ7 1が設けられている。冷媒熱交換器69には、圧 縮機72、凝縮機73、膨張弁74を備えてなる冷凍 機ユニット75によって冷却されたフロン冷媒R 404aが送られ、冷媒R134aと熱交換を行なう。

 冷媒ポンプ71によって、気液分離器70から 約2℃の冷媒液がシェル内に供給され、シェ 内で冷媒液の一部が蒸発することで、チュ ブ内の原料溶液又は原料スラリーが冷却さ る。蒸発した冷媒ガスと冷媒液は気液分離 70に戻される。気液分離器70で分離されたR134 a冷媒ガスは冷媒熱交換器69に送られ冷却され 凝縮して液冷媒になり気液分離器70に戻る。

<実験方法>
 本実験には、原料溶液として濃度14.4wt%のTBA B水溶液を用いた。このTBAB水溶液の水和物生 開始温度は、約8℃である。

 所定の流量になるように、再循環ポンプ6 7および循環ポンプ64のインバータを調整して 原料溶液又は原料スラリーを循環流路62と再 環流路66に循環させた後、冷凍機ユニット75 および冷媒ポンプ71を起動し冷媒をシェル・ ンド・チューブ式熱交換器61内に送り、チ ーブ内の原料溶液又は原料スラリーを冷却 る。

 冷凍機ユニット75内の圧縮機72を調節して シェル内の冷媒温度を一定に保つ。シェル・ アンド・チューブ式熱交換器61出口の原料溶 温度が7℃以下となり過冷却状態になったら 、別途生成させた水和物スラリーをタンク63 に投入し、過冷却解除させる。

 これ以降、冷媒温度、原料溶液又は原料 ラリー流量を一定にした条件で、シェル・ ンド・チューブ式熱交換器61出口の水和物 ラリー温度、熱交換器チューブ圧力損失(熱 換器出口と入口の差圧)を計測する。

 シェル・アンド・チューブ式熱交換器61 流入する原料溶液又は原料スラリーの温度 一定にするように調整される模擬負荷用の 気ヒータ65の入力電力と各ポンプでの発熱量 の和が、生成された水和物スラリーの保有冷 熱に相当するので、これらを計測して、水和 物スラリーの製造能力として求める。

 シェル・アンド・チューブ式熱交換器61 口の水和物スラリー温度から水和物スラリ の固相分率SPF(水和物スラリー中の水和物の 合)を求める。

<実験結果1>
 シェル・アンド・チューブ式熱交換器61に 料溶液又は原料スラリーを流し、諸データ 経時変化を調べた。図8は、シェル・アンド チューブ式熱交換器61を流れる原料溶液又 原料スラリー流量を450L/min(チューブ内流速 1.8m/s)にした場合の実験結果を示すグラフで る。

 図8においては、横軸に時間を表し、左側 縦軸にシェル・アンド・チューブ式熱交換器 61のチューブ圧力損失、水和物スラリーの固 分率SPF、右側縦軸にシェル・アンド・チュ ブ式熱交換器61出口の水和物スラリー温度 熱交換器入口の冷媒温度、模擬負荷用ヒー の負荷を表している。

 過冷却解除後はシェル・アンド・チュー 式熱交換器61入口の冷媒温度は約2℃に、シ ル・アンド・チューブ式熱交換器61出口の 和物スラリー温度は7℃に維持されており、 定の実験条件で実験が行なえていることを 認できた。

 過冷却解除した後、シェル・アンド・チ ーブ式熱交換器61のチューブ圧力損失は徐 に増加し、チューブ内壁面の水和物付着厚 が増加していることを示しており、運転開 してから4時間後にほぼ一定の26kPaとなり、 和物付着厚さの増大が抑制されていること 確認できた。

 過冷却解除した後、模擬負荷用ヒータの 荷は徐々に低下し、運転開始してから4時間 後にほぼ一定の3.6kWとなり、安定して所定の 熱を保有する水和物スラリーが製造されて ることを示している。

 水和物スラリーの固相分率SPFも運転開始 てから4時間後にほぼ一定の14%となり、安定 して水和物スラリーが製造されていることを 示している。

 以上のように、シェル・アンド・チュー 式熱交換器61を流れる原料溶液又は原料ス リーのチューブ内流速を1.8m/sにした場合に 、チューブ内壁面の水和物付着厚さの増大 抑制でき、安定して水和物スラリーを製造 きることを確認できた。

<実験結果2>
 次に、再循環ポンプ67および循環ポンプ64を 調整してシェル・アンド・チューブ式熱交換 器61のチューブ内を流れる原料溶液又は原料 ラリーの流速を1.5~2.4m/sの範囲で変えて実験 を行い、チューブ圧力損失とチューブ内水溶 液流速との関係を調べた。

 図9は、この実験結果を示すグラフであり 、横軸にチューブ内原料溶液又は原料スラリ ー流速を表し、縦軸にチューブ圧力損失が定 常となったときのチューブ圧力損失を表した ものである。

 図9に示されるように、冷媒温度が2℃の 合、チューブ内原料溶液又は原料スラリー 速がおよそ1.8m/s以上であれば、チューブ圧 損失は低い値となることが分かった。逆に チューブ内原料溶液又は原料スラリー流速 1.8m/sより小さいとチューブ圧力損失が高い となることが分かった。

 この結果から、冷媒温度が2℃の場合、シ ェル・アンド・チューブ式熱交換器61のチュ ブ内の原料溶液又は原料スラリー流速を1.8m /s以上となるようにシェル・アンド・チュー 式熱交換器61のチューブに原料溶液又は原 スラリーを流通させれば、原料溶液又は原 スラリーの流れの力によりチューブ内壁面 付着する水和物の量の増加を抑制すること できることを確認した。これにより、シェ ・アンド・チューブ式熱交換器61のチューブ で熱交換が長時間円滑に行なわれ、水和物ス ラリーを安定して製造することができる。

 また、シェル・アンド・チューブ式熱交 器61のチューブ内の原料溶液又は原料スラ ー流速を1.8m/s以上となるように原料溶液又 原料スラリーを流通させれば、チューブ内 面に付着する水和物量の増加を抑制できる ともに、チューブ内壁面に水和物を一部付 させたまま残存させることができるので、 存する水和物が水和物結晶生成核として機 するため新たに水和物を容易に生成するこ ができ、水和物スラリーの固相分率を適正 範囲にすることができ、円滑に冷熱を蓄熱 たは輸送することができる。

<実験結果3>
 冷媒温度を変えて冷媒温度の影響を調べた 冷媒温度を、14.4wt%TBAB水溶液の水和物生成 始温度(水和物の凝固点)である8℃より低い 度で、0~4.7℃まで変えてシェル・アンド・チ ューブ式熱交換器61による製造試験を実施し シェル・アンド・チューブ式熱交換器61の ューブ部の圧力損失に対する冷媒温度の影 を調べた。なお、熱交換器チューブ内の原 溶液又は原料スラリー流速は、2m/sとした。

 図10に実験結果のグラフを示す。横軸は 媒温度、縦軸はシェル・アンド・チューブ 熱交換器61のチューブ部の圧力損失と、シェ ル・アンド・チューブ式熱交換器61の冷却能 を表す。

 図10に示されるように、シェル・アンド チューブ式熱交換器61のチューブ部圧力損失 は、冷媒温度が実験の温度範囲で高いほど減 少している。この理由は以下のように考えら れる。

 冷媒の温度を包接水和物の凝固点より低 範囲でできるだけ高い温度にすれば(換言す れば包接水和物の凝固点により近くすれば) 伝熱管の熱交換面に接する原料溶液又は原 スラリーの冷却の程度(具体的には過冷却度) が小さくなる。そうすると、伝熱管の熱交換 面で冷却されて生成する水和物の堆積層内の 隙間の割合(水溶液の含有率)が多くなり、水 物の堆積層は柔らかく、水溶液又は水和物 ラリーの流れの力により剥離され易くなる 冷媒温度が高いほど伝熱管内面に付着する 和物の堆積層は柔らかくなり、剥離され易 水和物の量が抑制される。その結果、冷媒 度が高いほど、熱交換器チューブ部圧力損 は小さくなっている。

 また、シェル・アンド・チューブ式熱交 器61の冷却能力は下記のように求めるが、 媒温度が0~4℃の範囲では、チューブ単位長 当たりの冷却能力は0.095~0.097[kW/m/本]で、冷 温度によらずほぼ一定である。冷媒温度が いと、同じ冷却能力を得るために冷媒を供 する冷凍機を高い冷媒温度条件で運転でき ため、冷凍機の消費電力を削減することが きる。

 熱交換器の冷却能力の算出
 冷却能力Q=A・K・δTm
  但し、A:伝熱面積[m 2 ]=π・Do・L・n
     K:熱通過率[W/m 2 k]
    δTm:対数平均温度差(≒Ti―To)
     To:冷媒温度
     Ti:チューブ内原料溶液又は原料スラ ー温度
     Do:チューブ外径
     D:チューブ内水溶液流路径
     t:チューブ管厚
     σ:水和物層厚
     ho:チューブ外熱伝達率
     hi:チューブ内熱伝達率
    λ SUS :SUSチューブ熱伝導率
    λ CHS :水和物熱伝導率
 なお、熱通過率は、下式から求められる。

 1/K=Do/Dhi+(Do/2λ CHS )ln(Do-2t)/D+
(Do/2λ SUS )lnDo/(Do-2t)+1/ho
但し、D=Do-2t-2σ
<実験結果4>
 さらに、原料スラリーの種類、流速を変え 場合についても、シェル・アンド・チュー 式熱交換器61のチューブ部の圧力損失に対 る冷媒温度の影響を調べた。

 原料溶液として14.4wt%TBAB水溶液(水和物生 開始温度(水和物の凝固点)8℃)を用いて、あ らかじめ冷却して水和物を生成し、固相分率 SPF15%と20%の水和物スラリーを製造して原料ス ラリーとして供した。

 なお、14.4wt%TBAB水溶液から製造したSPF15% 和物スラリーの温度は7℃、SPF20%水和物スラ ーの温度は6℃である。

 また、11wt%TBAB水溶液(水和物生成開始温度 (水和物の凝固点)7℃)を用いて、あらかじめ 却して水和物を生成し、固相分率SPF15%と20% 水和物スラリーを製造して原料スラリーと て供した。なお、11wt%TBAB水溶液から製造し SPF15%水和物スラリーの温度は5℃、SPF20%水和 スラリーの温度は4℃である。

 つまり、原料スラリーの種類としては、 下の4種類とした。

 (1)14.4wt%TBAB水溶液を冷却してなる固相分率SP F15%の水和物スラリー
 (2)14.4wt%TBAB水溶液を冷却してなる固相分率SP F20%の水和物スラリー
 (3) 11wt%TBAB水溶液を冷却してなる固相分率SP F15%の水和物スラリー
 (4) 11wt%TBAB水溶液を固相分率SPF20%の水和物 ラリー
 上記の4種類の原料スラリーについて、冷媒 温度を、それぞれの水和物生成開始温度(水 物の凝固点)より低い温度で、0~4.7℃まで変 て、また、再循環ポンプ67および循環ポンプ 64を調整してシェル・アンド・チューブ式熱 換器61のチューブ内を流れる原料スラリー 流速を1.6~2.4m/sの範囲で変えて実験を行い、 ューブ部の圧力損失に対する冷媒温度の影 を調べた。そして、チューブ部の圧力損失 測値からチューブ内面に付着した水和物の さを二重管単管実験と同様にして算出した

 図11、図12に実験結果のグラフを示す。図 11及び図12において、横軸は冷媒温度、縦軸 シェル・アンド・チューブ式熱交換器61のチ ューブ部の圧力損失値から算出した水和物の 相当付着厚さを表す。

 図11は14.4wt%TBAB水溶液から製造した原料ス ラリーについて、図12は11wt%TBAB水溶液から製 した原料スラリーについてそれぞれの実験 果を示している。

 図11、図12に示されるように、どの原料ス ラリーについても、またどの流速についても 水和物の相当付着厚さは、冷媒温度が高いほ ど減少している。冷媒温度が高いほど伝熱管 内面に付着する水和物の堆積層は柔らかくな り、水溶液又は水和物スラリーの流れの力に より剥離され易く付着する水和物の量が抑制 されることが、原料スラリーの種類や流速を 変えても確認できる。

 次に、図11、図12に示した実験結果に基づ いて、冷媒と原料スラリーとの温度差と水和 物の相当付着厚さの関係を調べた。図13、図1 4にこの結果のグラフを示す。横軸は冷媒温 と原料スラリーとの温度差、縦軸はシェル アンド・チューブ式熱交換器61のチューブ部 の圧力損失値から算出した水和物の相当付着 厚さを表す。

 図13は14.4wt%TBAB水溶液から製造した原料ス ラリーについて、図14は11wt%TBAB水溶液から製 した原料スラリーについての結果をそれぞ 示している。

 図13、図14に示されるように、どの原料ス ラリーについても、またどの流速についても 水和物の相当付着厚さは、冷媒と原料スラリ ーとの温度差が小さいほど減少している。冷 媒と原料スラリーとの温度差が小さいほど、 すなわち冷媒温度が高いほど伝熱管内面に付 着する水和物の堆積層は柔らかくなり、水溶 液又は水和物スラリーの流れの力により剥離 され易く付着する水和物の量が抑制されるこ とが、原料スラリーの種類や流速を変えても 確認できる。

 次に、シェル・アンド・チューブ式熱交 器61のチューブ内面に付着した水和物の付 厚さと、チューブ部の圧力損失との関係を べた。図15はこの結果を示すグラフであり、 横軸に付着厚さを示し、縦軸に水和物の付着 がない時を100%とした圧力損失増加率を示し いる。チューブ部の圧力損失は流速の2乗に 例しチューブの有効内径に反比例するので 付着厚さが増加するにつれて有効内径が減 し、圧力損失が大きくなる。

 原料溶液又は原料スラリーを流送するポ プ動力の変動許容範囲の点から、シェル・ ンド・チューブ式熱交換器のチューブ部の 損増加率を150%以下とすることが好ましいが 、そのためには水和物の付着厚さは、図15の ラフによると約0.5mm以下とすることが必要 なる。水和物の付着厚さを約0.5mm以下とする ためには、図13、図14から冷媒と原料スラリ との温度差を4℃以下にすることが好ましい

 また、冷媒と原料スラリーとの温度差が さ過ぎると伝熱効率が低下するため、温度 が1℃以上あることが必要である。このよう に冷媒と原料スラリーとの温度差を1℃以上4 以下にすることにより、適切な伝熱効率で 交換でき、チューブ内面の水和物の付着厚 の増加を抑制することができる。

[実施の形態1]
 図16は本発明の一実施の形態に係る包接水 物スラリー製造装置の構成を説明する説明 である。

 本実施の形態に係る包接水和物スラリー 造装置は、原料溶液(水和物を生成するゲス ト化合物の水溶液)又は原料スラリーと冷媒 の間で熱交換を行う熱交換器1と、熱交換器1 に冷媒を供給する冷媒供給装置21と、原料溶 又は原料スラリー及び生成された水和物ス リーを貯留する蓄熱槽5と、一端が蓄熱槽5 連通し、他端が熱交換器1の入側に連通する 側流路8と、一端が熱交換器1の出側に連通 、他端が蓄熱槽5に連通する出側流路9と、出 側流路8と入側流路9を連結する再循環流路12 、を備えている。

 熱交換器1は、シェル・アンド・チューブ 型熱交換器でシェル側にはR134a等のフロン冷 が、チューブ側には原料溶液又は原料スラ ーが流れるように構成されている。

 冷媒供給装置21は、ガス冷媒を圧縮する 縮機2、圧縮されたガス冷媒を凝縮して液冷 とする凝縮器3、冷媒配管4、冷媒流量を制 して熱交換器に供給する冷媒温度を調整す 冷媒温度調整装置としての冷媒流量制御装 (ターボ圧縮機の場合インレットガイドベー )19とを備えている。

 入側流路8における再循環流路12との連結 10よりも上流側(入側流路8において上流側と は蓄熱槽5に近い側をいう)には、蓄熱槽5の水 溶液を送り出すための製造ポンプ6と、水溶 の流量を計測する流量計14B、水溶液の温度 計測する第1温度計17が設置されている。

 また、再循環流路12には、貯留槽13と、水 和物スラリーを送り出す再循環ポンプ7と、 和物スラリーの温度を計測する第2温度計16 、設置されている。

 貯留槽13には供給される過冷却状態の水 液の過冷却を解除する過冷却解除装置(図示 し)が設けられている。

 過冷却解除装置としては、例えば小型冷 機に接続された冷却部からなっており、冷 部が過冷却状態の水溶液が通る配管中に挿 されているようなものがある。冷却部は小 冷凍機により水和物生成温度以下に冷却さ ており、その表面に水和物が付着している 過冷却された水溶液が冷却部に接触すると 冷却部の表面に付着した水和物が生成核と て作用し過冷却が解除され、容易に水和物 生成する。

 また、過冷却解除装置として、過冷却ペル ェ素子などからなる低温突起を過冷却状態 水溶液が通る配管に挿入したものでもよい このような低温突起も、前記した小型冷凍 の冷却部と同様に、水和物生成温度以下に 却されており、その表面に水和物が付着し いる。過冷却された水溶液が低温突起に接 すると、低温突起の表面に付着した水和物 生成核として作用し過冷却が解除され、容 に水和物が生成する
 また、過冷却解除装置として、別に製造し 水和物スラリーを添加するものでもよい。

 入側流路8における再循環流路12との連結 10よりも下流側には、原料溶液又は原料ス リーと再循環流路12から供給される水和物ス ラリーとの混合物の流量を計測する流量計14A と、前記混合物の温度を計測する第3温度計15 が設置されている。

 また、出側流路9における再循環流路12と 連結部11よりも上流側(出側流路9において上 流側とは熱交換器1に近い側をいう)には、熱 換器1から流出する原料溶液又は原料スラリ ーもしくは水和物スラリーの温度を計測する 第4温度計18が設置されている。また、出側流 路9における再循環流路12との連結部11よりも 流側には、開閉弁41が設置されている。

 また、水和物スラリー製造装置は、流量 14、第1温度計17、第2温度計16、第3温度計15 それぞれの計測値を入力して、製造ポンプ6 よび/または再循環ポンプ7の流量を制御す 制御手段30を備えている。

 蓄熱槽5には蓄熱槽5に蓄えた水和物スラ ーの供給を受けて空調を行う空調負荷20が水 和物スラリー配管により接続されている。

 以上のように構成された本実施の形態の 作を説明する。

<水和物製造の概略説明>
 熱交換器1のシェル側にはR134a等のフロン冷 が、チューブ側には、原料溶液又は原料ス リーが流れる。

 蓄熱槽5からは、12~15℃の水溶液が、製造 ンプ6によって取り出され、入側配管8を通 て、熱交換器1に供給される。

 熱交換器1に供給される原料溶液又は原料 スラリーは、圧縮機2で圧縮され、凝縮器3で 化されたフロン液冷媒がシェル内で蒸発す 熱で冷却され、水和物スラリーが製造され 。熱交換器1から水和物スラリーは出側配管 9を通り、蓄熱槽5に送られ貯蔵される。

 蓄熱槽5から原料スラリーが熱交換器1に 給される場合には、水和物がさらに生成さ 、水和物スラリー中の水和物の割合すなわ 固相分率(SPF)の高い水和物スラリーが製造さ れる。

 蓄熱槽5に貯蔵された水和物スラリーは、 空調負荷20に送られ冷熱を供給し、水溶液ま は固相分率が低くなった水和物スラリーが 熱槽5に戻る。

<製造装置の運転方法の説明>
 水和物を生成するゲスト化合物として臭化 トラnブチルアンモニウム(TBAB)を例として用 いて水和物スラリーを製造する製造装置の運 転方法を説明する。初回運転又は休止後の再 開運転である準備運転と、定常的に水和物ス ラリーを製造する通常運転とに分けて説明す る。

 水溶液濃度14.4wt%のとき、水和物生成開始温 度は8℃となる。7℃の水和物スラリーの固相 率(SPF)は14%となり、熱密度は14Mcal/m 3 (14℃基準)である。

<準備運転>
[1]水和物スラリー製造開始時においては、入 側流路8、出側流路9及び熱交換器1内のチュー ブ内には、12℃以上の原料溶液が存在してお 、蓄熱槽5及び貯留槽13には12℃以上の原料 液が貯留されている。

 水和物スラリー製造開始時には、開閉弁4 1を閉にする。再循環ポンプ7を起動し、熱交 器1内のチューブ内の原料溶液流速が所定流 量で一定になるように、流量計14Aで検出して 、再循環ポンプ7のインバータを調節して流 を制御する。このときの原料溶液の流路は13 →7→12→14A→8→1→9→13である。

[2]次に冷凍機の圧縮機2を起動し、熱交換 1に冷媒を供給しチューブ内を流れる原料溶 を冷却する。冷却時の冷凍機の制御は、例 ば、シェル内の冷媒蒸発温度(圧力)が所定 になるように、圧縮機の容量制御装置(イン ータ)または冷媒流量制御装置19(ターボ圧縮 機の場合インレットガイドベーン)を調整す 。熱交換器1のチューブ内で原料溶液を過冷 状態まで冷却する。

[3]原料溶液を13→7→12→14A→8→1→9→13の 路を冷却しながら循環させ、貯留槽13内の原 料溶液の温度が水和物生成温度近くになった ら、過冷却解除装置として内蔵されている冷 却管を冷却し、冷却管表面に水和物を付着さ せる。熱交換器1で過冷却状態まで冷却され 原料溶液がこの冷却管表面に付着した水和 に触れると、付着水和物が水和物生成核と って過冷却が解除され、水和物が生成し水 物スラリーが生成され貯留される。過冷却 解除されると、貯留槽13内の温度が上昇し、 目標とする水和物スラリー温度になる。貯留 槽13内に一定量の水和物スラリーが貯留され と準備運転を終了し、通常運転に移行する

 貯留槽13に流入する水和物スラリーの固 分率が0より大きくなったなら冷却管の冷却 止めても良い。固相分率の算定方法につい は後述する。

<通常運転>
[4]開閉弁41を開にし、製造ポンプ6を起動して 、蓄熱槽5内の原料溶液を入側流路8に流すと に、再循環ポンプ7の運転を継続して貯留槽 13の水和物スラリーを、再循環流路12を介し 入側流路8に供給する。これによって、原料 液に貯留槽13からの水和物スラリーが供給 れて固相分率の低い水和物スラリーとなっ 熱交換器1に供給される。固相分率の低い水 物スラリーが熱交換器1で冷却されて水和物 がさらに生成し所定の固相分率の水和物スラ リーが生成される。

 熱交換器1で製造された水和物スラリーは 出側流路9に送り出され、その一部が再循環 路12側に供給され、残りが蓄熱槽5に供給さ 貯留される。再循環流路12に供給された水和 物スラリーは貯留槽13に貯留され、再び再循 ポンプ7によって入側流路8に供給される。 方、蓄熱槽5に供給された水和物スラリーは 調負荷20に供給されるまで蓄熱槽5内で貯留 れる。また、熱交換器1から送られる水和物 スラリーの温度を第4の温度計18により計測し 、固相分率を求め所望の固相分率となるよう に水和物スラリー製造装置の運転を継続する 。

 蓄熱槽5に貯留された水和物スラリーは、 空調負荷20に供給されて室内の冷房などに供 れる。

 このとき、熱交換器1に供給される固相分 率の低い水和物スラリーの流量を流量計14Aに より計測し、熱交換器1のチューブ内の固相 率の低い水和物スラリーの流速を、流れの によりチューブ内壁面に付着した水和物の 部が取り除かれ残部がチューブ内壁面に残 ような流速、例えば1.8m/s以上となるように 製造ポンプ6と再循環ポンプ7のインバータを 調節して流量を制御し流速を設定する。ここ で、流量計14A、製造ポンプ6と再循環ポンプ7 インバータは流速設定装置として機能して る。

[5]また、蓄熱槽5からの原料溶液と貯留槽13 からの水和物スラリーとが混合したものにお いて水和物粒子が残存するように、すなわち 混合後の固相分率の低い水和物スラリーの固 相分率が0にならないように、蓄熱槽5からの 料溶液および貯留槽13からの水和物スラリ の流量を調整する。このようにすると、熱 換器1には水和物の微小粒子が存在する状態 流入するため、水和物の微小粒子が生成核 して機能して水和物を生成し熱交換器1内は 過冷却状態にはならないので、急激な過冷却 解除がチューブ内で生じて圧力損失が過大と なったり閉塞が生じるなどの支障が生じたり することなく安定した水和物スラリー製造が 可能となる。

 ここで、蓄熱槽5からの原料溶液と貯留槽 13からの水和物スラリーの流量調整方法を説 する。

 水和物を生成するゲスト化合物の水溶液 冷却すると、水和物生成温度以下になると 和物粒子が生成し、水和物粒子は水溶液中 分散もしくは懸濁して水和物スラリーが生 される。冷却を続けると水和物粒子は増加 、固相分率(水和物粒子の水和物スラリーに 対する重量比率をいう)が増加する。水和物 生成するゲスト化合物の水溶液の初期濃度 よって定まるが、水和物スラリーの温度と 相分率との間に一定の関係がある。

 例えば、初期濃度が14wt%の臭化テトラnブ ルアンモニウム(TBAB)水溶液の水和物スラリ の温度と固相分率の関係を図17のグラフに す。この例では、図17に示すように、水和物 スラリー温度が低いと固相分率は高く、水和 物スラリー温度が8.4℃以上になると固相分率 がゼロとなる。

 本実施の形態においては、蓄熱槽5からの 原料溶液と貯留槽13からの水和物スラリーと 混合したものにおいて水和物粒子が残存す ように、すなわち混合後の水和物スラリー 固相分率が0にならないように、送られる原 料溶液および水和物スラリーの流量が調整さ れる。例えば、蓄熱槽5からの原料溶液の温 が12℃以上で、貯留槽13からの水和物スラリ の温度が7℃とした場合に、原料溶液の流量 が貯留槽13からの水和物スラリーの流量に比 て過剰であると、混合後の水和物スラリー 温度が、固相分率が0になる温度よりも高く なり、水和物粒子が存在しなくなる。

 混合後の水和物スラリーの固相分率が0に ならないように、換言すれば、原料溶液に貯 留槽13からの水和物スラリーが供給された混 物の温度を固相分率が0になる温度よりも低 くなるように原料溶液および貯留槽13からの 和物スラリーの流量が調整される。具体的 は以下のように行う。

 図16に示されるように、蓄熱槽5から送ら る原料溶液の流量、温度が流量計14B、第1温 度計17で計測され、計測値が制御手段30に入 される。また、貯留槽13から送られる水和物 スラリーの温度が第2流量計16で計測され、計 測値が制御手段30に入力される。また、熱交 器1に送られる原料溶液と貯留槽13から送ら る水和物スラリーとの混合物の流量、温度 流量計14A、第3温度計15で計測され、計測値 制御手段30に入力される。貯留槽13から送ら れる水和物スラリーの流量は、流量計14Aと流 量計14Bの計測値の差に相当する。

 制御手段30は、入力された各計測値に基 いて、原料溶液に貯留槽13から送られる水和 物スラリーが供給された混合物の固相分率が 0よりも大きくなるように制御して、熱交換 1に送られるようにする。すなわち、原料溶 に貯留槽13から送られる水和物スラリーが 給された混合物の温度を、その固相分率が0 なる温度よりも低い所定の温度になるよう 、製造ポンプ6および/または再循環ポンプ7 流量を制御する。

 ポンプ流量を調整した後は、流量計14A、 3温度計15によって前記混合物の流量、温度 計測し、計測値を制御手段30に入力して、 量、温度が目標値になっているかを確認し なっていない場合には目標流量、温度にな ように製造ポンプ6および/または再循環ポン プ7の流量を制御する。

 上記のように流量調整することによって 原料溶液に貯留槽13から送られる水和物ス リーが供給された混合物中には水和物粒子 残存した状態で熱交換器1に流入する。水和 粒子を含む原料溶液が熱交換器1で冷却され ると、水和物粒子を核として水和物が生成さ れるので、熱交換器1内は過冷却状態にはな ないので、急激な過冷却解除がチューブ内 生じて圧力損失が過大となったり閉塞が生 たりするなどの支障が生じることなく安定 た水和物スラリー製造が可能となる。

 以上のように、本実施の形態においては 熱交換器1に供給される固相分率の低い水和 物スラリーもしくは原料溶液の流量を調整し て、熱交換器1のチューブ内の流速を、流れ 力によりチューブ内壁面に付着した水和物 一部が取り除かれ残部がチューブ内壁面に るような流速、例えば1.8m/s以上となるよう 設定するとともに、熱交換器1に供給される 料溶液中に水和物粒子を含むようにしたの 、熱交換器1内での過冷却解除が生じること なく、水和物スラリーを安定して製造するこ とができる。

 また、再循環流路12を設け、再循環流路12 に過冷却解除装置を設けた貯留槽13を設置し ので、準備運転時においても熱交換器1内で 過冷却解除が生ずることなく水和物スラリー を製造できる。

 なお、上記の実施の形態においては、制 手段30による流量調整を製造ポンプ6および/ または再循環ポンプ7の流量制御によって行 ようにしたが、入側流路8及び再循環流路12 流量制御弁を設け、この流量制御弁を制御 るようにしてもよい。

 なお、製造ポンプ6の運転を調整するイン バータまたは入側流路8に設けた流量制御弁 および/または再循環ポンプ7の運転を調整す るインバータまたは再循環流路12に設けた流 制御弁および流量計15が、本発明の原料溶 又は原料スラリーの流速を設定する流速設 装置に相当する。

 また、上記の実施の形態においては、熱 換器に供給する冷媒温度を調整する冷媒温 調整装置として、熱交換器に供給する冷媒 量を制御する冷媒流量制御装置(ターボ圧縮 機の場合インレットガイドベーン)19または圧 縮機の容量制御装置(インバータ)を備えてい 場合を例に挙げたが、他の方式により冷媒 度を調整するものでもよい。

 また、上記の実施の形態においては、熱 換器が圧縮式冷凍機の蒸発器である場合を に挙げたが、熱交換器が冷凍機で冷却され 冷水と熱交換する形式のものでもよいし、 の冷凍機を用いるものでもよい。

 また、上記の実施の形態においては、再 環流路12を設けた製造装置の構成にした。 かし、このような再循環流路12を設けること なく、蓄熱槽5内の水和物スラリーを払い出 て入側流路8に、上述したように混合物の固 分率が0よりも大きくなるように供給するよ うにしてもよい。

 また、上記の例では固相分率が0よりも大 きくなると述べているが、具体的に固相分率 が何%になるのが最適であるかについては、 和物の種類等によって適宜設定するのが好 しい。

 なお、水和物を形成して高い潜熱量を有す 水和物形成物質としては、テトラnブチルア ンモニウム塩、テトラisoアミルアンモニウム 塩、テトラisoブチルホスホニウム塩、トリiso アミルスルホニウム塩などの各種塩類などで あり、テトラnブチルアンモニウム塩の例と て、臭化テトラnブチルアンモニウム((n-C 4 H 9 ) 4 NBr、TBAB)、フッ化テトラnブチルアンモニウム ((n-C 4 H 9 ) 4 NF)、塩化テトラnブチルアンモニウム((n-C 4 H 9 ) 4 NCl)、などがある。

 また、これらBr、F、Clの代わりに酢酸(CH 3 CO 2 )、クロム酸(CrO 4 )、タングステン酸(WO 4 )、シュウ酸(C 2 O 4 )、リン酸(HPO 4 )でもよい。その他の上記塩についても同様 ある。

 次に、本発明の水和物スラリー製造装置 用いた蓄熱空調システムの例を、以下の実 例において示す。

 なお、以下の実施例の説明においては、 和物スラリー製造装置の流量、温度制御に 要な計測・制御機器および過冷却解除用貯 槽は、記載を省略している。

[蓄熱空調システム1]
 実施例1に係る蓄熱空調システム1において 、夜間にスラリー製造用冷凍機を運転して 熱し、昼間に蓄熱を放熱する冷房運転を行 、昼間の冷房負荷が高い時にはスラリー製 用冷凍機を運転して蓄熱しながら放熱冷房 転を行なう。昼間の冷房負荷が高い時にも スラリー製造用冷凍機1台で対応できるとい 特徴がある。

 図18は実施例1の機器構成の説明図であり 最大冷房負荷400RT相当のビルに適用した場 の機器構成を示している。

 実施例1に係る蓄熱空調システム1は、水 物スラリーを製造するスラリー製造用冷凍 81、水和物スラリー製造ラインに設けられて 原料溶液又は原料スラリーを循環させる蓄熱 ポンプ82、再循環流路83に設けられた再循環 ンプ84、原料溶液又は原料スラリー若しくは 水和物スラリーを貯留する蓄熱槽85、水和物 ラリーと水との熱交換により冷水を生成す 冷水/スラリー熱交換器86、蓄熱槽85の水和 スラリーを冷水/スラリー熱交換器86に送る めの放熱ポンプ87、冷水を循環するための冷 水1次ポンプ88、冷水を負荷側に送る冷水2次 ンプ89、空調負荷90と、を備えている。

 実施例1で用いた原料溶液は、臭化テトラn チルアンモニウム(TBAB)水溶液であり、その 度は、12.4wt%で水和物生成開始温度は7.5℃で る。水和物スラリーが5.5℃から12.5℃に変化 する際の供給熱量は約14Mcal/m 3 であり、水和物スラリーが5.5℃のときの固相 分率(SPF)は17%である。

 スラリー製造用冷凍機81は、ターボ冷凍 であり、圧縮機、蒸発器、凝縮器で構成さ る。蒸発器であるシェル・アンド・チュー 式熱交換器のチューブに原料溶液又は原料 ラリーが流れる。また、シェル側には、R134a などのフロン冷媒が流れ、フロン冷媒が蒸発 する潜熱でチューブ内を流れる原料溶液又は 原料スラリーを冷却する。

 再循環ポンプ84は、チューブ内の水和物 付着量の増大を抑制するため、チューブ内 流れる原料溶液又は原料スラリーの流速を 定の流速以上にする作用を有する。

 蓄熱ポンプ82は、前述した製造ポンプと じ役割のポンプである。

 蓄熱槽85は、多槽連結槽で、約2000RThの蓄 量を貯蔵できる。

 蓄熱槽85から水和物スラリーを抜き出し 熱ポンプ87により冷水/スラリー熱交換器86に 送り、冷水/スラリー熱交換器86で冷水に冷熱 を供給する。

 冷水/スラリー熱交換器86で冷却された冷 が冷水1次ポンプ88、冷水2次ポンプ89により 調負荷90に送られ冷熱を供給し冷房に供さ る。

<蓄熱運転>
 夜間に、スラリー製造用冷凍機81、再循環 ンプ84、蓄熱ポンプ82を運転し、蓄熱槽85に 定の水和物スラリー(5.5℃、SPF17%)を貯蔵し蓄 熱する。

 蓄熱開始前の蓄熱槽85には、概ね12.5℃の 料溶液が貯留されており、蓄熱完了時には 概ね5.5℃、SPF17%の水和物スラリーで満たさ ている。

<蓄熱利用冷房運転>
 昼間、ビル内で冷房負荷が発生したとき、 水1次ポンプ88及び放熱ポンプ87を起動し、 水/スラリー熱交換器86にて、蓄熱槽85から放 熱ポンプ87により抜出した5.5℃の水和物スラ ーと冷水の熱交換によって、7℃の冷水を製 造する放熱運転を行なう。また、冷水2次ポ プ89を起動し、室内の空調機からなる空調負 荷90に冷水が供給され冷房に供される。

<追加蓄熱・冷房運転>
 一日の冷房負荷が蓄熱量の2000RTh以上と予想 される場合は、スラリー製造用冷凍機81、再 環ポンプ84、蓄熱ポンプ82を運転し、追加蓄 熱を行なうと同時に放熱運転を行なう。

[蓄熱空調システム2]
 実施例2に係る蓄熱空調システム2は、夜間 スラリー製造用冷凍機を運転し蓄熱し、昼 に蓄熱を放熱する冷房運転を行なうことを 本とし、昼間に冷房負荷が高い場合に別の 凍機により冷水を製造して補完できるよう したものである。

 図19は本実施例2の機器構成の説明図であ 、図18と同一部分には同一の符号を付して る。図19に示されるように、本実施例2にお ては、図18に示した構成に、7℃の冷水を製 する冷水用冷凍機91と、冷水用冷凍機91から 水を送る冷水1次ポンプ92を加えたものであ 。

 夜間の蓄熱運転と昼間の蓄熱利用冷房運 は実施例1と同様に行なう。一日の冷房負荷 が蓄熱量である2000RTh以上の場合、冷水用冷 機91(200RT)が運転され冷水を供給して、蓄熱 85の水和物スラリーの放熱により冷却される 冷水と合わせて空調負荷90に供給される。

[蓄熱空調システム3]
 本実施例は、冷凍機が冷媒をスラリー製造 蒸発器と冷水製造用蒸発器とに切替えて送 ダブル蒸発器型である点に特徴がある。夜 にスラリー製造運転して蓄熱し、昼間に蓄 を放熱して冷房運転を行うことを基本とし 昼間に冷房負荷が高い場合に冷水製造運転 行い補完する。

 図20は本実施例3の機器構成の説明図であ 、図19と同一部分には同一の符号を付して る。

 本実施例3のスラリー/冷水製造用冷凍機93 は、冷水製造用蒸発器94と水和物スラリー製 用蒸発器95を備えている冷凍機であり、フ ン冷媒の流れを切り替えることにより、冷 の製造または水和物スラリーの製造が可能 したものである。

 夜間蓄熱時は、水和物スラリー製造用蒸 器95を使用して、水和物スラリーを製造・ 熱する。

 昼間は、蓄熱槽85の水和物スラリーの蓄 を放熱して冷房運転を行い、冷房負荷が高 場合にはスラリー/冷水製造用冷凍機93を運 し冷水製造用蒸発器94を使用して、冷水を製 造し、蓄熱槽85の水和物スラリーの放熱によ 冷却される冷水と合わせて空調負荷90に供 する。

 図21は、実施例3の蓄熱空調システム3と同 様のダブル蒸発器型の冷凍機を採用した蓄熱 空調システムの説明図である。

 以下、図21に基づいてダブル蒸発器型冷 機を採用した蓄熱空調システムについて詳 に説明する。まず、ダブル蒸発器型の冷凍 (図中、括弧で括った符号100で示す部分)の構 成について説明し、その後全体の構成を説明 する。

<冷凍機の基本構成>
 図中、101は遠心式圧縮機、102は遠心式圧縮 101を駆動する電動機、103は凝縮器、104は冷 製造用満液式蒸発器、105は水和物スラリー 造用蒸発器、106は冷水製造用冷凍サイクル おける膨張弁又はオリフィス、107は水和物 ラリー製造用冷凍サイクルにおける膨張弁 はオリフィス、108は冷媒液遮断弁、109は冷 ガス遮断弁である。108a及び108bはそれぞれ 水製造用冷凍サイクル及び水和物スラリー 造用冷凍サイクルを構成する冷媒液遮断弁10 8、109a及び109bはそれぞれ冷水製造用冷凍サイ クル及び水和物スラリー製造用冷凍サイクル を構成する冷媒ガス遮断弁109である。

 図中の実線矢印は、冷水製造用液満式蒸 器104を使用して冷水を製造しているときの 媒の流れ方向を示し、点線矢印は、水和物 ラリー製造用蒸発器105を使用して水和物ス リーを製造しているときの冷媒の流れ方向 示す。冷媒としてはR134aやR123が好適である

 冷水製造用冷凍サイクルは、遠心式圧縮 101、電動機102、凝縮器103、冷媒液遮断弁108a 、膨張弁又はオリフィス106、冷水製造用満液 式蒸発器104、冷媒ガス遮断弁109a及びこれら 接続する冷媒用配管を用い、遠心式圧縮機10 1、凝縮器103、冷媒液遮断弁108a、膨張弁又は リフィス106、冷水製造用満液式蒸発器104、 媒ガス遮断弁109a、遠心式圧縮機101、・・・ の順に冷媒が循環することによって実現され る。冷水製造用満液式蒸発器104では、送り込 まれてきた水が冷媒との熱交換により冷却さ れ、冷水となって送出される。

 水和物スラリー製造用冷凍サイクルは、 心式圧縮機101、電動機102、凝縮器103、冷媒 遮断弁108b、膨張弁又はオリフィス107、水和 物スラリー製造用蒸発器105、冷媒ガス遮断弁 109b及びこれらを接続する冷媒用配管を用い 遠心式圧縮機101、凝縮器103、冷媒液遮断弁10 8b、膨張弁又はオリフィス107、水和物スラリ 製造用蒸発器105、冷媒ガス遮断弁109b、遠心 式圧縮機101、・・・の順に冷媒が循環するこ とによって実現される。水和物スラリー製造 用蒸発器105では、送り込まれてきた原料水溶 液が冷媒との熱交換により冷却され、水和物 スラリーとなって送出される。

 水和物スラリー製造用蒸発器105の型式は に問わないが、満液式であることが好まし 。水和物生成温度は、原料水溶液の濃度に り変動し、その濃度は原料水溶液から包接 和物が生成するに従って変動するので、水 物スラリー製造用蒸発器は、冷媒の温度(特 に蒸発温度)の制御が容易で、その制御の精 が高いものであることが望まれる。この意 から、伝熱効率が高く、冷媒の温度(特に冷 の蒸発温度)の制御の精度が高い満液式蒸発 器は水和物スラリー製造用蒸発器として好適 といえる。

 両冷凍サイクルの切替手段は、膨張弁又 オリフィス106、107、冷媒液遮断弁108(108a、10 8b)及び冷媒ガス遮断弁109(109a、109b)並びにこ らを駆動する駆動装置(K1~K4)及び該駆動装置 制御する制御装置CTL(図示せず)から構成さ る。この切替手段により、水和物スラリー 造用蒸発器と冷水製造用満液式蒸発器とが 凍サイクルに択一的に接続可能となり、水 物スラリー製造用冷凍サイクルと冷水製造 冷凍サイクルとの切り替えが可能になり、 体として単一の冷凍サイクルが構成される とになる。そして、当該単一の冷凍サイク を構成する少なくとも遠心式圧縮機101及び 縮器103、より詳しくは遠心式圧縮機101、電 機102、凝縮器103及びこれらを接続する冷媒 配管は、水和物スラリー製造用冷凍サイク と冷水製造用冷凍サイクルとの間で兼用さ る。

<冷凍機の動作及び運転方法>
 次に、冷凍機の動作及び運転方法について 明する。冷媒液遮断弁(108a、108b)及び冷媒ガ ス遮断弁(109a、109b)は、冷媒の遮断のみを目 とする場合には、いずれか一方で足りるが 以下の説明においては、両遮断弁があるも とする。

(1)水和物スラリー製造用蒸発器105を使用して 水和物スラリーを製造する場合
 まず、切替手段により、冷媒液遮断弁108a及 び冷媒ガス遮断弁109aの少なくとも一方を閉 し、膨張弁又はオリフィス106を閉(動作不能) の状態にするとともに、冷冷媒液遮断弁108b び冷媒ガス遮断弁109bを開とし、膨張弁又は リフィス107を開(動作可能)の状態にする。 れにより水和物スラリー製造用冷凍サイク における冷媒の流通経路(図中の点線矢印に った経路)が構成される。

 次に、遠心式圧縮機101を電動機102で駆動 せ、冷媒ガスを圧縮する。遠心式圧縮機101 圧縮された冷媒ガスは、凝縮器103に送られ 、そこで冷却水によって冷却される。この 却により冷媒はほぼ飽和液になる。引き続 冷媒液は、膨張弁又はオリフィス107に送ら 、減圧される。減圧された冷媒液は、水和 スラリー製造用満液式蒸発器5に送られ、当 該水和物スラリー製造用蒸発器105内の伝熱管 を流れる原料水溶液を冷却して包接水和物を 生成させ、これが原料水溶液に分散又は顕濁 してなる水和物スラリーにし、自らは蒸発し ガス化する。ガス化した冷媒は、再び遠心式 圧縮機101に送られ、以後、以上の循環が繰り 返される。それ故、冷媒は水和物スラリー製 造用蒸発器105のみを流れる。

 この結果、水和物スラリー製造用蒸発器1 05において原料水溶液が冷却されて水和物ス リーが製造される。

(2)冷水製造用満液式蒸発器104を使用して冷水 を製造する場合
 まず、切替手段により、冷媒液遮断弁108b及 び冷媒ガス遮断弁109bの少なくとも一つを閉 し、膨張弁又はオリフィス107を閉(動作不能) の状態とし、冷媒液遮断弁108a、冷媒ガス遮 弁109aをすべて開とし、膨張弁又はオリフィ 106を開(動作可能)の状態にする。これによ 冷水製造用冷凍サイクルにおける冷媒の流 経路(図中の実線矢印に沿った経路)が構成さ れる。

 次に、遠心式圧縮機101を電動機102で駆動 せ、冷媒ガスを圧縮する。遠心式圧縮機101 圧縮された冷媒ガスは、凝縮器103に送られ 、そこで冷却水によって冷却される。この 却により冷媒はほぼ飽和液になる。引き続 冷媒液は、膨張弁又はオリフィス106に送ら 、減圧される。減圧された冷媒液は、冷水 造用満液式蒸発器104に送られ、当該冷水製 用液満式蒸発器104内の伝熱管を流れる水を 却して冷水にし、自らは蒸発しガス化する ガス化した冷媒は、再び遠心式圧縮機101に られ、以後、以上の循環が繰り返される。 れ故、冷媒は冷水製造用満液式蒸発器104の を流れる。

 この結果、冷水製造用満液式蒸発器104に いて供給された水が冷却されて冷水が製造 れる。

(3)冷水及び水和物スラリーの製造時の温度条 件
 (3-1) 冷水製造用満液式蒸発器104及び水和物 スラリー製造用蒸発器105においてそれぞれ製 造される冷水及び水和物スラリーの各温度( ずれも各蒸発器104、105における出口温度)は 4~8℃程度に設定される。冷水空調設備の場 には、既述の凍結問題を回避する必要上4℃ が下限となり、一方、上限は、冷房負荷側設 備(空調機、AHU、FCUなど)において要求される 度が一般的に7~8℃であることから8℃程度と なる。水和物スラリー空調設備の場合も、同 様である。

 (3-2) 冷水製造用満液式蒸発器104と水和物 スラリー製造用蒸発器105の各冷媒蒸発温度が 同じになるように設計すれば、遠心式圧縮機 101の運転条件は、それが水和物スラリー製造 用冷凍サイクルを構成している場合であれ、 冷水製造用冷凍サイクルを構成している場合 であれ、同じにすることができる。

 例えば、冷水製造用満液式蒸発器104にお る冷媒蒸発温度及び冷水の出口温度をそれ れ2℃及び5℃とし、水和物スラリー製造用 発器105における冷媒蒸発温度及び水和物ス リーの出口温度をそれぞれ2℃及び5℃となる ように設計すれば、両蒸発器104、105における 冷媒蒸発温度はいずれも2℃なので、遠心式 縮機101の運転条件は、それが水和物スラリ 製造用冷凍サイクルを構成している場合で れ、冷水製造用冷凍サイクルを構成してい 場合であれ、同じになる。

 それ故、上記のような設計を行えば、水 物スラリー製造用冷凍サイクルと冷水製造 冷凍サイクルとの間で圧縮機101が兼用され だけでなく、いずれの冷凍サイクルに切り わったとしても、それに応じて圧縮機101の 転条件を変更する必要がなくなる。

<小括>
 従って、本実施例に用いる冷凍機において 、水和物スラリー製造用蒸発器と冷水製造 満液式蒸発器とは切替手段により単一の冷 サイクルに択一的に接続可能となり、冷水 造用冷凍サイクルと水和物スラリー製造用 凍サイクルとが択一的に切り替わる。それ 、水和物スラリー空調設備と冷水空調設備 いずれにも、また、水和物スラリーを製造 る夜間運転と冷水を製造する昼間運転(特に 追掛運転)を行う空調設備にも適用可能な単 の冷凍機となる。そして、両冷凍サイクル おいては、少なくとも遠心式圧縮機101及び 縮器103が、より詳しくは遠心式圧縮機101、 動機102、凝縮器103及びこれらを接続する冷 用配管が兼用される。それ故、相対的に低 設備費用又は高い費用対効果を実現するこ ができる。

 なお、図中の遠心式圧縮機101は単段式で かれているが、多段式でもよい。そして単 式よりも多段式の方が高額になるので、圧 機を兼用することにより奏する設備費用の 対的低減又は費用対効果の相対的増加とい 本発明の効果は単段式よりも多段式の圧縮 の方が顕著となる。

 図21に示す冷凍機100においては、二つの 媒用遮断弁(108a、108b)の機能をP点に配置した 一つの三方弁により置き換えることができる 。また、二つの冷媒ガス用遮断弁(109a、109b) 機能をQ点に配置した一つの三方弁により置 換えることができる。

 なお、膨張弁又はオリフィス106及び107は それぞれ、駆動装置(図示せず)を備え、制 装置CRL(図示せず)により開度を制御可能にな るようにしてもよい。これにより、各冷凍サ イクルにおいてそれぞれ好適な運転条件にな るように膨張弁又はオリフィス106又は107の開 度を各冷凍サイクルに応じて調整することが 可能になる。例えば、蒸発器出口の冷媒ガス の過熱度を検出し、過熱度が一定値になるよ うに膨張弁又はオリフィス106又は107の開度を 調整する。また、蒸発器に液面計を設け液面 位置を検出し、液面位置が一定になるように 膨張弁又はオリフィス106又は107の開度を調整 する。

 <空調設備の基本構成>
 次に図21に示す他の構成機器について説明 る。

 図21中、111は冷却塔、112は三方弁、113は ッファタンク、114は水和物スラリー蓄熱槽 115は冷水/水和物スラリー熱交換器、116は熱 用側負荷(例えば空調機)、117~121はポンプ、 に117は水和物スラリー再循環用ポンプ、118 原料水溶液搬送用ポンプ、119は水和物スラ ー取り出し用ポンプ、120は冷水搬送用ポン 、121は冷却水搬送用ポンプである。122は流 計、123~127及び130~132は温度センサ、128、129 開閉バルブである。

 水和物スラリー蓄熱槽114には水和物スラ ーの収容量を検知するレベル計(図示せず) 設置される。

 図21に示す空調設備は、冷凍機100、冷却 111と凝縮器103との間の冷却水/水の循環経路A 、冷水製造用液満式蒸発器104と熱利用側負荷 116との間の冷水/水の循環経路B、水和物スラ ー製造用熱交換器5と水和物スラリー蓄熱槽 114との間の水和物スラリー/原料水溶液の循 経路C、水和物スラリー製造用蒸発器105とバ ファタンク113との間の水和物スラリーの再 環経路D、水和物スラリー蓄熱槽114と冷水/ 和物スラリー熱交換器115との間の水和物ス リー/原料水溶液の循環経路E、冷水/水和物 ラリー熱交換器115と熱利用側負荷116との間 冷水/水の循環経路Fを備える。

 経路Aは111、112、121、123、103、M点、111、 ・・を、経路Bは104、124、S点、116、120、R点 129、104、・・・をそれぞれ辿り巡る配管の 路である。経路Cは105、113、126、114、118、N点 、122、105、130、113・・・を、経路Dは105、113 117、N点、122、105、・・・をそれぞれ辿り巡 配管の経路である。経路Eは114、119、115、114 、・・・を、経路Fは115、127、S点、116、120、R 点、115、・・・をそれぞれ辿り巡る配管の経 路である。

 経路A、冷凍機及び経路Bにより冷水の製 とその冷水が有する熱エネルギーの熱利用 負荷における熱利用が行われ、経路A、冷凍 、経路C及び経路Dにより水和物スラリーの 造と蓄積が行われ、経路E及び経路Fにより、 蓄積された水和物スラリーが有する熱エネル ギーの熱利用側負荷における熱利用が行われ る。

(1) 経路Aについて
 経路Aにおいて、冷却塔111から送出される冷 却水は、ポンプ121により搬送され、三方弁112 、ポンプ121、温度センサ123を通過して凝縮器 103に供給され、凝縮器103において冷媒ガスを 凝縮させるための熱交換に供され、その後水 温が上がった水として冷却塔111に戻る。以後 この循環が繰り返される。

 冷却水の温度制御は、凝縮器103に供給さ る冷却水の温度を計測する温度センサ123の 力に基づき三方弁112の動作により行う。即 、冷却水の温度が目標値より低い場合には その偏差に相応分の三方弁112の駆動量をTIC おいて演算し、その演算値だけ三方弁112を 動させて、M点から相対的に高温の水を取り 込んで冷却水に混ぜ、冷却水の温度を上昇さ せる。冷却水の温度が目標値より高い場合に は、三方弁112を動作させて、M点から相対的 高温の水を取り込まないようにして、冷却 の温度を低下させる。

(2)経路Bについて
 経路Bは、冷凍機100が冷水製造用冷凍サイク ルを構成している場合の経路である。経路B おいて、冷水製造用液満式蒸発器104から送 される冷水は、ポンプ120により搬送され、 利用側負荷116において熱利用に供され、そ 後水温が上がった水としてポンプ120、R点、 閉バルブ129を通じて冷水製造用液満式蒸発 104に戻る。以後この循環が繰り返される。

 冷水の温度制御は、冷水製造用液満式蒸 器104から送出される冷水の温度を計測する 度センサ124の出力に基づき電動機102のイン ータ制御を行い、圧縮機101の回転数を必要 だけ変化させることにより行う。即ち、冷 の温度が目標値よりも低く、温度センサ124 出力が設定値に満たない場合には、その偏 に相応分の電動機102の出力変更量をTICにお て演算し、その演算値だけ電動機102、従っ 圧縮機101の回転数を下げ、冷水製造用液満 蒸発器104における冷媒蒸発温度を高め、冷 の出口温度が上昇するようにする。他方、 水の温度が目標値よりも高く、温度センサ1 24の出力が設定値を越えている場合には、そ 偏差に相応分の電動機102の出力変更量をTIC おいて演算し、その演算値だけ電動機102、 って圧縮機101の回転数を上げ、冷水製造用 満式蒸発器104における冷媒蒸発温度を下げ 冷水の出口温度が低下するようにする。以 の制御を、温度センサ124の出力と設定値と 偏差がゼロになるように行う。

(3)経路C及び経路Dについて
 経路C及び経路Dはいずれも、冷凍機100が水 物スラリー製造用冷凍サイクルを構成して る場合の経路である。経路Dは、水和物スラ ー製造用蒸発器105に搬送する原料水溶液の 量を制御するために、バッファタンク113か 水和物スラリーを経路Cに合流させる経路で ある。

 (3-1)
 経路Cにおいて、水和物スラリー蓄熱槽114に 予め蓄えられていた原料水溶液は、ポンプ118 により搬送され、N点においてポンプ117によ バッファタンク113から搬送される水和物ス リーと合流した後、水和物スラリー製造用 発器105に到達し、水和物スラリー製造用蒸 器105において冷媒液との熱交換に供される ここで、原料水溶液が冷却され、水和物ス リーが製造される。即ち、冷却された原料 溶液から包接水和物が生成し、生成した水 物が原料水溶液に分散又は懸濁にすること より水和物スラリーとなる。この水和物ス リーは水和物スラリー製造用蒸発器105から 出され、その一部はバッファタンク113に蓄 られ、残部は水和物スラリー蓄熱槽114に送 されて、そこで蓄えられる。このような水 物スラリー製造用蒸発器105と水和物スラリ 蓄熱槽114との間の原料水溶液/水和物スラリ の循環が繰り返されることにより、バッフ タンク113及び水和物スラリー蓄熱槽114に蓄 られている水和物スラリーの固相割合、従 て蓄熱量は徐々に増加してゆく。

 水和物スラリーの温度制御は、次の(i)及 (ii)の手法のうち少なくとも一つにより行う 。

  (i) 水和物スラリー蓄熱槽114に送出され る水和物スラリーの温度を計測する温度セン サ126の出力に基づき電動機102のインバータ制 御を行い、圧縮機101の回転数を必要分だけ変 化させる。即ち、水和物スラリーの温度が目 標値より低く、従って温度センサ126の出力が 設定値に満たない場合には、その偏差に相応 分の電動機102の出力変更量をTICにおいて演算 し、その演算値だけ電動機102、従って圧縮機 101の回転数を下げ、水和物スラリー製造用蒸 発器105における冷媒蒸発温度を高め、水和物 スラリーの出口温度、延いてはバッファタン ク113から水和物スラリー蓄熱槽114に向かう水 和物スラリーの温度が上昇するようにする。 水和物スラリーの温度が目標値よりも高く、 温度センサ126の出力が設定値を越えている場 合には、その偏差に相応分の電動機102の出力 変更量をTICにおいて演算し、その演算値だけ 電動機102、従って圧縮機101の回転数を上げ、 水和物スラリー製造用蒸発器105における冷媒 蒸発温度を下げ、水和物スラリーの出口温度 、延いてはバッファタンク113から水和物スラ リー蓄熱槽114に向かう水和物スラリーの温度 が低下するようにする。以上の制御を、温度 センサ126の出力と設定値との偏差がゼロにな るように行う。

  (ii) 温度センサ126の出力に基づきポン 118のインバータ制御を行い、水和物スラリ 製造用蒸発器105への原料水溶液(原料水溶液 しての水和物スラリーを含む)の供給量を必 要分だけ変化させることにより行う。即ち、 水和物スラリーの温度が目標値よりも低く、 温度センサ126の出力が設定値に満たない場合 には、その偏差に相応分のポンプ118の出力変 更量をTICにおいて演算し、その演算値だけポ ンプ118の出力を上昇させ、水和物スラリー製 造用蒸発器105への原料水溶液の供給量を高め 、水和物スラリーの出口温度が上昇するよう にする。水和物スラリーの温度が目標値より も高く、温度センサ126の出力が設定値を越え ている場合には、その偏差に相応分のポンプ 118の出力変更量をTICにおいて演算し、その演 算値だけポンプ118の出力を低下させ、水和物 スラリー製造用蒸発器105への原料水溶液の供 給量を下げ、水和物スラリーの出口温度が低 下するようにする。以上の制御を、温度セン サ126の出力と設定値との偏差がゼロになるよ うに行う。

 (3-2)
 経路Dにおいて、水和物スラリー製造用蒸発 器105から送出される水和物スラリーのうち、 バッファタンク113に蓄えられるものは、ポン プ117により搬送され、N点においてポンプ118 より搬送される原料水溶液(原料水溶液とし の水和物スラリーを含む)と合流した後、水 和物スラリー製造用蒸発器105に到達し、水和 物スラリー製造用蒸発器105において冷媒液と の熱交換に供される。

 ここで、原料水溶液が冷却され、水和物 ラリーが製造される。即ち、冷却された原 水溶液から包接水和物が生成し、生成した 和物が原料水溶液に分散又は懸濁すること より水和物スラリーとなる。この水和物ス リーは水和物スラリー製造用蒸発器105から 出され、その一部はバッファタンク113に蓄 られ、残部は水和物スラリー蓄熱槽114に送 される。このような水和物スラリー製造用 発器105とバッファタンク113との間の水和物 ラリーの循環が繰り返されることにより、 ッファタンク113及び水和物スラリー蓄熱槽1 14に蓄えられている水和物スラリーの固相分 、従って蓄熱量は徐々に増加してゆく。

 水和物スラリー製造用蒸発器105が満液式 発器である場合には、伝熱管の内壁面に付 する水和物の一部を原料水溶液(又は原料水 溶液としての水和物スラリー)の流れの力に り取り除き、その残部を当該伝熱管の内壁 を覆うように残すようにして水和物スラリ を製造することが望ましい。

 その際には、伝熱管の内部を流れる原料 溶液の流速を所定値以上の一定速度に制御 るために、流量を制御する。水和物スラリ 製造用蒸発器105に供給される原料水溶液(原 料水溶液としての水和物スラリーを含む)の 量制御は、水和物スラリー製造用蒸発器105 供給される原料水溶液の流量を計測する流 計122の出力に基づきポンプ117のインバータ 御を行い、バッファタンク113からN点への水 物スラリーの送出量を必要分だけ変化させ ことにより行う。即ち、原料水溶液の流量 目標値よりも低く、流量計122の出力が設定 に満たない場合には、その偏差に相応分の ンプ117の出力変更量をFICにおいて演算し、 の演算値だけポンプ117の出力を上昇させ、 ッファタンク113からN点への水和物スラリー の送出量を増やし、N点から水和物スラリー 造用蒸発器105に向かう原料水溶液の流量が 加するようにする。他方、原料水溶液の流 が目標値よりも高く、流量計122の出力が設 値を超えている場合には、その偏差に相応 のポンプ117の出力変更量をFICにおいて演算 、その演算値だけポンプ117の出力を低下さ 、バッファタンク113からN点への水和物スラ ーの送出量を減らし、N点から水和物スラリ ー製造用蒸発器105に向かう原料水溶液の流量 が減少するようにする。以上の制御を、流量 計122の出力と設定値との偏差がゼロになるよ うに行う。

 (3-3)
 水和物スラリー製造用蒸発器105における冷 蒸発温度の制御は、その変動幅が小さくな ように行う。

 具体的には、水和物スラリー製造用蒸発 105内の冷媒温度を計測する温度センサ125の 力に基づき電動機102のインバータ制御を行 、圧縮機101の回転数を必要分だけ変化させ 。即ち、冷媒蒸発温度が目標値より低く、 って温度センサ125の出力が設定値に満たな 場合には、その偏差に相応分の電動機102の 力変更量をTICにおいて演算し、その演算値 け電動機102、従って圧縮機101の回転数を下 、水和物スラリー製造用蒸発器105における 媒蒸発温度を高める。

 冷媒蒸発温度が目標値よりも高く、温度 ンサ125の出力が設定値を越えている場合に 、その偏差に相応分の電動機102の出力変更 をTICにおいて演算し、その演算値だけ電動 102、従って圧縮機101の回転数を上げ、水和 スラリー製造用蒸発器105における冷媒蒸発 度を下げる。

 以上の制御を、温度センサ125の出力と設 値との偏差がゼロになるように行う。なお 125は温度センサでなく、冷媒ガスの圧力を 測する圧力センサであってもよい。上記の 標値及び設定値は複数個(例えば、上限値と 下限値)であってもよい。

 (3-4)
 水和物スラリーの製造を行う場合には、ま 、経路Dにおいてこれを開始する。水和物ス ラリーの製造を開始する時、バッファタンク 113内には原料水溶液が貯留されており、ポン プ117を起動して原料水溶液を水和物スラリー 製造用蒸発器105へ送出し冷媒液と熱交換して 冷却する。バッファタンク113内に、別に製造 した水和物スラリーを添加することや冷却手 段など原料水溶液の過冷却を解除する手段を 設けることにより、過冷却解除され水和物が 生成して水和物スラリーが製造される。また 、水和物スラリー製造用蒸発器105における水 和物スラリーの出口温度及びバッファタンク 113内の水和物スラリーの温度をそれぞれ温度 センサ130及び131により計測し、監視する。温 度センサ130又は131の出力が所定値に達したら 、作業員による手動操作により又は制御装置 CTLからの制御信号(g7)によりポンプ118を起動 、経路Cを重畳する。

 水和物スラリー蓄熱槽114に予め蓄えられ いた原料水溶液は、ポンプ118により搬送さ 、N点においてバッファタンク113から搬送さ れる水和物スラリーと合流した後、水和物ス ラリー製造用蒸発器105に到達し、水和物スラ リー製造用蒸発器105において冷媒液との熱交 換に供され、原料水溶液が冷却され水和物ス ラリーが製造される。この水和物スラリーは 水和物スラリー製造用蒸発器105から送出され 、その一部はバッファタンク113に蓄えられ、 残部は水和物スラリー蓄熱槽114に送出されて 、そこで蓄えられる。水和物スラリー製造用 蒸発器105の伝熱管の内部を流れる原料水溶液 の流速を所定値以上の一定速度に制御するた めに、流量計122の出力に基づきポンプ117のイ ンバータ制御を行い、バッファタンク113から 水和物スラリー製造用蒸発器105への水和物ス ラリーの送出流量を制御する。水和物スラリ ーの製造を行う際、経路Dは水和物スラリー 造用蒸発器105へ搬送される原料水溶液の流 を制御するための水和物スラリーの再循環 路となっている。また、水和物スラリー蓄 槽114に送出される水和物スラリーの温度を 測する温度センサ126の出力が設定値になる うにポンプ118が制御される(上記(3-1)(ii)参照) 。

(4)経路E及び経路Fについて
 経路E及び経路Fは、水和物スラリー蓄熱槽11 4に蓄えられている水和物スラリーが有する エネルギー(冷熱)を熱利用に供するための経 路である。

 経路Eにおいて、水和物スラリー蓄熱槽114 に蓄えられている水和物スラリーは、ポンプ 119により搬送され、冷水/水和物スラリー熱 換器115に供給され、冷水/水和物スラリー熱 換器115において水を冷水にするための熱交 に供され、その後水溶液の状態で水和物ス リー蓄熱槽114に戻る。以後この循環が繰り される。経路Fにおいて、冷水/水和物スラ ー熱交換器115における水和物スラリーとの 交換により製造された冷水は、ポンプ120に り搬送され、熱利用側負荷116において熱利 に供され、その後水温が上がった水として ンプ120、R点、開閉バルブ128を通じて冷水/水 和物スラリー熱交換器115に戻る。以後この循 環が繰り返される。それ故、経路E及び経路F 冷水/水和物スラリー熱交換器115を介して互 いに熱伝達的に繋がり、これにより水和物ス ラリーが有する潜熱相当の熱エネルギーが、 冷水が有する顕熱相当の熱エネルギーに変換 され、熱利用側負荷116に供給される。

 冷水/水和物スラリー熱交換器115における 冷水の出口温度の制御は、冷水/水和物スラ ー熱交換器115から送出される冷水の温度を 測する温度センサ127の出力に基づきポンプ11 9のインバータ制御を行い、冷水/水和物スラ ー熱交換器115への水和物スラリーの供給量 必要分だけ変化させることにより行う。即 、冷水の温度が目標値よりも低く、温度セ サ127の出力が設定値に満たない場合には、 の偏差に相応分のポンプ119の出力変更量をT ICにおいて演算し、その演算値だけポンプ119 出力を低下させ、冷水/水和物スラリー熱交 換器115への水和物スラリーの供給量を下げ、 冷水の出口温度が上昇するようにする。他方 、冷水の温度が目標値よりも高く、温度セン サ127の出力が設定値を越えている場合には、 その偏差に相応分のポンプ119の出力変更量を TICにおいて演算し、その演算値だけポンプ119 の出力を上昇させ、冷水/水和物スラリー熱 換器115への水和物スラリーの供給量を高め 冷水の出口温度が低下するようにする。以 の制御を、温度センサ127の出力と設定値と 偏差がゼロになるように行う。

<空調設備の動作及び運転モード>
 図21に示す空調設備の全体動作は、冷凍機 動作を含め、制御装置CTLにより制御される 当該空調設備の運転方式には、少なくとも の(M1)~(M4)に掲げる運転モードがある。

(M1) 熱利用側負荷116に対し、冷水製造用液満 式蒸発器104において製造された冷水を供給す る運転モード(即ち、冷凍機及び経路Bを使用 る運転モード)
 この運転モードにおいては、制御装置CTLが 御信号g1~g4を発信し、冷媒用遮断弁108a、108b 及び冷媒ガス用遮断弁109a、109bの各駆動装置( K1~K4)を作動させ、遮断弁108a、109aを開き、遮 弁108b、109bを閉じ、これにより冷凍機にお て冷水製造用冷凍サイクルを構成する。同 に、制御装置CTLが制御信号g5、g6を発信し、 閉バルブ128、129の各駆動装置(K5、K6)を作動 せ、バルブ128を閉じ、バルブ129を開き、こ により熱利用側負荷116を経路Bに接続し、経 路Fに非接続とする。以上により、冷凍機と 路Bとが冷水製造用液満式蒸発器104を介して 続し、冷水製造用液満式蒸発器104において 造された冷水のみが熱利用側負荷116に供給 れるようになる。

(M2) 水和物スラリー蓄熱槽114に対し、水和物 スラリー製造用蒸発器105において製造された 水和物スラリーを供給する運転モード(即ち 冷凍機、経路C及び経路Dを使用する運転モー ド)
 この運転モードにおいては、制御装置CTLが 御信号g1~g4を発信し、各駆動装置(K1~K4)を作 させ、遮断弁108a、109aを閉じ、遮断弁108b、1 09bを開き、冷凍機において水和物スラリー製 造用冷凍サイクルを構成する。これにより、 冷凍機と経路C及び経路Dとが水和物スラリー 造用蒸発器105を介して接続し、冷水製造用 満式蒸発器104において製造された水和物ス リーが水和物スラリー蓄熱槽114に供給され ようになる。

(M3) 熱利用側負荷116に対し、水和物スラリー 蓄熱槽114に蓄えられている水和物スラリーが 有する熱エネルギーを供給する運転モード( ち、経路E及び経路Fを使用する運転モード)
 この運転モードにおいては、制御装置CTLが 御信号g5、g6を発信し、開閉バルブ128、129の 各駆動装置(K5、K6)を作動させ、バルブ128を開 き、バルブ129を閉じ、これにより熱利用側負 荷116を経路Bに非接続とし、経路Fに接続とす 。これにより、熱利用側負荷116と水和物ス リー蓄熱槽114とが経路E、冷水/水和物スラ ー熱交換器115及び経路Fを介して接続し、水 物スラリー蓄熱槽114に蓄えられた水和物ス リーが有する潜熱相当の熱エネルギーが冷 /水和物スラリー熱交換器115における水和物 スラリーと水との熱交換を通じて冷却された 水が有する顕熱相当の熱エネルギーとして熱 利用側負荷116に供給されるようになる。

(M4) その他の運転モード:水和物スラリー製 用蒸発器105において製造された水和物スラ ーを水和物スラリー蓄熱槽114に十分蓄える に、当該水和物スラリーが有する熱エネル ーを熱利用側負荷116に供給する運転モード( ち、冷凍機、経路C及び経路Dと同時に経路E び経路Fを使用する運転モード)
 この運転モードにおいては、制御装置CTLが 御信号g1~g4を発信し、各駆動装置(K1~K4)を作 させ、遮断弁108a、109aを閉じ、遮断弁108b、1 09bを開き、冷凍機において水和物スラリー製 造用冷凍サイクルを構成する。同時に、制御 装置CTLが制御信号g5、g6を発信し、開閉バル 128、129の各駆動装置(K5、K6)を作動させ、バ ブ128を開き、バルブ129を閉じ、これにより 利用側負荷116を経路Bに非接続とし、経路Fに 接続とする。

 以上により、冷凍機と経路C及び経路Dと 水和物スラリー製造用蒸発器105を介して接 し、冷水製造用液満式蒸発器104において製 された水和物スラリーが水和物スラリー蓄 槽114に供給されるとともに、熱利用側負荷11 6と水和物スラリー蓄熱槽114とが経路E、冷水/ 水和物スラリー熱交換器115及び経路Fを介し 接続し、水和物スラリー蓄熱槽114に蓄えら た水和物スラリーが有する潜熱相当の熱エ ルギーが冷水/水和物スラリー熱交換器115に ける水和物スラリーと水との熱交換を通じ 冷却された水が有する顕熱相当の熱エネル ーとして熱利用側負荷116に供給されるよう なる。

<空調設備の運転方法の具体例>
(1) 夜間の蓄熱運転
 水和物スラリーを製造し、これを蓄熱槽に えておく運転、即ち蓄熱運転を夜間に行う 図21に示す空調設備において蓄熱運転を行 場合には、まず、冷凍機100において冷水製 用液満式蒸発器104ではなく水和物スラリー 造用蒸発器105を冷凍システムに接続し、水 物製造用冷凍システムを構成し、上記(M2)の 転モードで当該空調設備を運転する。この 合、水和物スラリー製造用蒸発器105におけ 冷媒蒸発温度の変動幅が小さくなるように 御する。具体的には、水和物スラリー製造 蒸発器105内の冷媒液温度を計測する温度セ サ125の出力と設定値との偏差がゼロになる うに電動機102のインバータ制御を行い、圧 機101の回転数を必要分だけ変化させる。

 水和物スラリー製造用蒸発器105が満液式 発器である場合には、伝熱管の内壁面に付 する水和物の一部を原料水溶液(又は原料水 溶液としての水和物スラリー)の流れの力に り取り除き、その残部を当該伝熱管の内壁 を覆うように残すようにして水和物スラリ を製造する。その際には、伝熱管の内部を れる原料水溶液の流速を一定に制御すると もに、満液式蒸発器における冷媒蒸発温度 過度に低下させないことが重要である。そ で、N点から水和物スラリー製造用蒸発器105 向かう原料水溶液の流量が目標値になるよ に又は流量計122の出力と設定値との偏差が ロになるように水和物スラリーを再循環さ るポンプ117のインバータ制御を行い、バッ ァタンク113からN点への水和物スラリーの送 出量を必要分だけ変化させる(<空調設備の 本構成>(3-2)(3-4)参照)。同時に、水和物ス リー製造用蒸発器105内の冷媒液温度を計測 る温度センサ125の出力と設定値との偏差を ロになるように電動機102のインバータ制御 行い、圧縮機101の回転数を必要分だけ変化 せる(<空調設備の基本構成>(3-3)参照)。

 なお、上記の設定値の設定の仕方次第で 温度センサ125の出力が所定値以下にならな ように電動機102を制御し、圧縮機101の回転 を必要分だけ変化させることも可能であり 図21に示す空調設備(水和物スラリー製造用 発器105が満液式蒸発器であると否とを問わ い)の蓄熱運転において採用することができ る。

 水和物スラリーの製造を行う場合には、 ず、経路Dにおいてこれを開始し、水和物ス ラリー製造用蒸発器105における水和物スラリ ーの出口温度又はバッファタンク113内の水和 物スラリーの温度が所定値になったとき、ポ ンプ118を起動し、経路Cを重畳し、水和物ス リー蓄熱槽114における水和物スラリーの入 温度が設定値になるようにポンプ118が制御 れる(<空調設備の基本構成>(3-4)参照)。

 水和物スラリー蓄熱槽114が水和物スラリ で満たされたとき又は蓄熱時間が終了した き、遠心式圧縮機101、電動機102を停止し、 ンプ118、ポンプ117の順に作業員の手動操作 より又は制御装置CTLからの制御信号により 止する。

 蓄熱運転中に水和物スラリー製造用蒸発 105の伝熱管の内壁面に付着する水和物量が 大し堆積して、伝熱管内の圧力損失が増加 て水和物スラリーの製造に支障が生じるこ がある場合には、付着した水和物を融解し 除去する融解運転が必要である。

 融解運転のために冷凍機の圧縮機101をバ パスして水和物スラリー製造用蒸発器105と 縮器103とを連通するバイパス経路とバイパ 経路を開閉するバイパス弁を設けてもよい このようなバイパス弁をもうけることによ 、融解運転時には圧縮機101、電動機102を停 し、バイパス弁を開け、水和物スラリー製 用蒸発器105と凝縮器103とを圧縮機101をバイ スして連通する。これにより、凝縮器103内 高温高圧の冷媒がバイパス経路を介して水 物スラリー製造用蒸発器105内に流通し、凝 器103内の高温高圧の冷媒が保有する温熱に り伝熱管内に付着した水和物を融解して除 することができる。

(2) 昼間の運転
(2-1)蓄熱利用運転
 熱利用側負荷116側を冷房する運転、即ち空 運転を、水和物スラリー蓄熱槽114内に蓄熱 れている水和物スラリーが有する熱エネル ー(冷熱)を利用して昼間に行う。図21に示す 空調設備において蓄熱利用運転を行う場合に は、上記(M3)の運転モードで当該空調設備を 転する。この場合、冷水/水和物スラリー熱 換器115における冷水の出口温度が目標値に るようにポンプ119を制御する(<空調設備 基本構成>(4)参照)。

(2-2)冷凍機追掛運転
 熱利用側負荷116側を冷房するために必要な 熱を賄うためには、水和物スラリー蓄熱槽1 14内に蓄熱されている水和物スラリーの冷熱 けでは不足分がある場合に、別途製造した 水の冷熱により当該不足分を補填するため 空調運転である。

 例えば、本発明に係る冷凍機において水 物スラリー製造用蒸発器105ではなく冷水製 用液満式蒸発器104を冷凍システムに接続し 冷水製造用冷凍システムを構成し、上記(M1) の運転モードで当該空調設備を運転する。こ のとき冷水製造用液満式蒸発器104の出口側に 設けられた温度センサ124によって、冷水の出 口温度を計測し、その出口温度が一定になる ように遠心式圧縮機101の回転数を制御するよ うにする。そして、開閉弁128を開とし、冷水 /水和物スラリー熱交換器115からの冷水と冷 製造用液満式蒸発器104からの冷水とを熱利 側負荷116に搬送する。これにより両冷水が する冷熱エネルギーを熱利用側負荷116に供 する。

 別の例としては、まず、水和物スラリー 熱槽114に蓄えられた水和物スラリーが有す 冷熱エネルギーを冷水/水和物スラリー熱交 換器115により冷水に熱交換して当該冷水が有 する冷熱エネルギーを熱利用側負荷116に供給 し、できるだけ使い切るようにする(使い切 必要はない)。その後、上記(M1)の運転モード で当該空調設備を運転し、冷水製造用液満式 蒸発器104において製造した冷水が有する冷熱 エネルギーを熱利用側負荷116に供給する。

 上記の2例のいずれによっても追掛運転を 実現できる。

 次に、本発明の水和物スラリー製造装置 備える伝熱管の内部の原料溶液又は原料ス リーの流れに乱れを形成する乱れ形成手段 例を、以下の実施例において示す。

 図22は乱れ形成手段の例として、ねじれ ープを示す図である。伝熱管内にねじれテ プを挿入し、このねじれテープによって、 料溶液又は原料スラリーの流れを旋回させ 乱れを形成して伝熱管内壁面近傍の境界層 攪拌することによって、対流熱伝達を促進 冷媒から原料溶液又は原料スラリーへの伝 効率を向上させることができる。

 ねじれテープを伝熱管入口部など一部に 入しても良いし、伝熱管内部の全てに挿入 ても良い。

 図23は乱れ形成手段の他の例として、伝 管内面に突起物(タービュレンスプロモータ) を配置したものを示す図である。突起物によ り伝熱管の内部の原料溶液又は原料スラリー の流れに乱れを形成して伝熱管内壁面近傍の 境界層に撹乱を与え、対流熱伝達を促進し冷 媒から原料溶液又は原料スラリーへの伝熱効 率を向上させることができる。

 突起物の形状(円筒、矩形、円錐、平板) 寸法(高さ、幅)、取付け形態(直立、傾斜)、 列間隔及び配列形状(碁盤目上、千鳥状等) 問わず、最適なものを選択すればよい。ま 、伝熱管入口部など一部に挿入しても良い 、伝熱管内部の全てに挿入しても良い。

 次に、本発明の水和物スラリー製造装置 おいて、伝熱管の内壁面及び外壁面のうち なくとも一つに、水溶液又は前記スラリー 流れる方向に沿って凹凸が形成される例を 以下の実施例において示す。

 図24は伝熱管内壁面及び外壁面に凹凸を けた管の例として、コルゲート管を示す図 ある。伝熱管内壁面に幅の狭い凸部が螺旋 に成形加工され、原料溶液又は原料スラリ が流れる方向に沿って凸部に挟まれた凹部 形成されている。

 図25は伝熱管内壁面に凹凸を設けた管の として、内面溝付管(フルーテッド管)を示す 図である。伝熱管内壁に深さ0.4mmの溝がねじ 角50度で螺旋状に設けられている。

 伝熱管内壁面の形状によって、伝熱性能 び圧力損失がどのように変わるか二重管単 実験装置を用いて計測した。図26は管内流 と熱通過率の関係を示す図である。図27は管 内流速と圧力損失として計測したスラリー差 圧の関係を示す図である。

 試験に使用した伝熱管は、内面平滑管(内 径16.2mm)、内面溝付管(溝深さ0.4mm、溝数34/inch 日立電線製型番TE-iE)、コルゲート管(内面凸 部高さ0.6mm、凸部ピッチ14mm、日立電線製型番 JISH3300)を用いた。

 図26に示すように、熱通過率は、内面平 管に比べて内面溝付管とコルゲート管では14 ~32%大きくなっている。内面溝付管とコルゲ ト管には伝熱管内壁面に凸部が螺旋状に形 されているため、原料溶液又は原料スラリ の流れに旋回を与えて乱れを生じさせ、伝 管内壁面近傍の境界層を攪拌することによ て、対流熱伝達を促進し冷媒から原料溶液 は原料スラリーへの伝熱効率を向上させる とができる。また、原料溶液又は原料スラ ーの流れに旋回を与えるので、伝熱管内壁 との接触面積すなわち伝熱面積を増大させ ため、さらに伝熱効率を向上させることが きる。

 また、伝熱管の内壁面の凹部に生成した 接水和物が付着したまま残留し、残る包接 和物が生成核として機能するので、新たな 接水和物をより容易に生成させることがで る。

 一方、図27に示すように、圧力損失(スラ ー差圧)は、内面平滑管に比べて内面溝付管 とコルゲート管では30~88%大きくなっている。

 伝熱管の圧力損失の増加は原料溶液又は 料スラリーを流送するポンプの動力増加と る。そのため伝熱管内壁面の形状の選定に たっては、熱交換器としての伝熱性能およ ポンプ動力の両面から適切な形状を選定す ことが必要である。

 図28は外壁面に凹凸を設けた伝熱管の他 例を示す図である。伝熱管の外壁面に短い 隔で低いフィンを付けたローフィン管、外 面に微小なキャビティ、溝、トンネル構造 るいは微小突起を機械加工・成形加工によ 設けた伝熱管などがある。

 キャビティ加工管の例として、日立電線 「サーモエクセル」(型番TE-E)がある。これ 外表面に微細な開口部と外表面下でこれら 連結する螺旋状のトンネルを形成させたも であり、液冷媒が熱交換されて発生する気 が連続的に、かつ効率よく発生するため、 めて高い蒸発伝熱性能が得られる伝熱管で る。キャビティ加工管では熱通過率がロー ィン管に比べて10倍程度高くなり、蒸発伝 性能が極めて向上する。

 これらのような外壁面に凹凸を設けた伝 管を用いることにより、伝熱管の伝熱面積 増加するので、冷媒から原料溶液又は原料 ラリーへの伝熱効率が向上する。また、冷 の温度を高めに設定しても伝熱効率が高い め包接水和物スラリーを製造することがで るので、冷媒の冷凍システムの負荷を相対 に軽減することができ、あるいは冷凍機の 績係数を向上させることができる。

 次に、本発明の包接水和物スラリー製造 置において、原料溶液又は原料スラリーと 媒との間で熱交換を行う熱交換器の伝熱面 付着した包接水和物を融解させ、除去する 転(融解運転という)に関して説明する。図16 に示す本発明の一実施の形態に係る包接水和 物スラリー製造装置において、熱交換器が圧 縮式冷凍機の蒸発器であり、圧縮機、凝縮器 、減圧装置、蒸発器が順次配管により接続さ れて冷凍サイクルが構成されている場合に、 包接水和物スラリー製造装置の融解運転を行 う例を、以下の実施例において示す。

〔包接水和物製造装置の融解運転方法〕
 実施例6は、熱交換器内を流れる冷媒による 冷却によって包接水和物を生成する冷凍サイ クルを運転する際、当該熱交換器の伝熱面に 付着した包接水和物を融解させ、除去する包 接水和物製造装置の融解運転方法を説明する ものである。当該包接水和物は、当該冷凍サ イクルを構成する蒸発器内で生成される場合 もあれば、当該蒸発器とは別に設けた熱交換 器において生成される場合もある。

 この融解運転方法は、熱交換器内を流れ 冷媒によって包接水和物のゲスト化合物の 溶液を冷却し、当該水溶液から包接水和物 安定的に生成させるため又は当該熱交換器 保守するために有益であり、その水溶液に 接水和物が分散又は懸濁してできる包接水 物のスラリーを多量に、安定的に又は連続 に製造するために特に有益である。

 以下の説明において、次に掲げる用語の 義又は解釈は以下のとおりとする。

(1)「冷媒」及び「熱媒体」とは、用語の文 字表現上の違いや、水和物生成用、凝縮用等 の用途の違いはあるものの、いずれも熱エネ ルギーを蓄積して搬送することができる物質 を意味する。

(2)冷凍サイクルが圧縮機、凝縮器、減圧装 置、蒸発器が順次配管によって接続され、そ の配管を流通する冷媒の圧縮、凝縮、減圧及 び蒸発が順次行われるものである場合、その 冷凍サイクルにおける「圧縮機、凝縮器及び これらを接続する配管並びに凝縮器、減圧装 置及びこれらを接続する配管のいずれかの場 所又はその場所の中」のことを「特定領域」 と略称する場合がある。

(3)冷媒を「正流」させるとは、冷凍サイク ル内において圧縮機、凝縮器、減圧装置及び 蒸発器の順の方向(図29乃至31のいずれの場合 反時計回り)に、これらの機器や装置を接続 する配管の少なくとも一部を通じて冷媒を流 すことをいい、冷媒を「逆流」させるとは、 冷凍サイクル内において蒸発器、減圧装置、 凝縮器及び圧縮機の順の方向(図29乃至31のい れの場合も時計回り)に、これらの機器や装 置を接続する配管の少なくとも一部を通じて 冷媒を流すことをいう。

 包接水和物のゲスト化合物の水溶液を冷 との熱交換により冷却し、当該水溶液から 接水和物を生成させる場合、その熱交換を う熱交換器の伝熱面に包接水和物が付着し 伝熱効率を低下させることや、該付着した 接水和物が物理的障害となって配管の閉塞 通流障害を引き起こすことがある。このよ な問題を解決するための典型的手法は、熱 換器と接触する原料溶液又は原料スラリー 温度を上昇させることや、熱交換器を流れ 冷媒の温度を上昇させることにより、包接 和物の付着を未然に防ぐ又は付着したもの 融解させるというものである。

 例えば、原料溶液又は原料スラリーと冷 との熱交換器を介した冷却により当該包接 和物を生成させる際に、冷媒の温度を高め ことで熱交換器の伝熱面に付着した包接水 物を融解させ、除去しているものが知られ いる(特開2004-93052号公報参照)。特開2004-93052 号公報には、冷凍機により低温にされた冷媒 により包接水和物生成用熱交換器(蒸発器)を して原料溶液を冷却して包接水和物のスラ ーを製造する際に、原料溶液の循環系が包 水和物により閉塞したとき、その閉塞を解 する手法として、原料溶液の冷却を停止し 包接水和物生成用熱交換器(蒸発器)に対し 冷凍機中の高温の冷媒を供給することによ 、包接水和物を融解させ、除去する技術が 示されている。

 ここで、包接水和物生成用熱交換器内の 媒の温度を速やかに上昇させる手法やその 交換器の伝熱面に付着した包接水和物を除 する手法は、簡便且つ安価であり、エネル ー消費も低いものであることが望ましい。

 一方、包接水和物を製造するための熱エ ルギーを作り出す冷凍サイクルが圧縮機、 縮器、減圧装置、蒸発器が順次配管によっ 接続され、その配管を流通する冷媒の圧縮 凝縮、減圧及び蒸発が順次行われるという 成であり、蒸発器が包接水和物生成用熱交 器である場合、前記圧縮機、前記凝縮器及 これらを接続する配管並びに前記凝縮器、 記減圧装置及びこれらを接続する配管のい れかの場所に存在する冷媒が蒸発器内の冷 に比して高温・高圧の状態になることや、 縮機を停止したとき又はその出力を低下さ たとき、当該冷媒(特に凝縮器内にある冷媒 及び圧縮機の吐出口から凝縮器に至る配管内 にある冷媒)が蒸発器内の冷媒に比して高温 高圧の状態になることは既によく知られて た。そして、当該冷媒が有する熱エネルギ を包接水和物の融解や除去に利用したのが 特開2004-93052号公報に開示された技術である

 しかし、特開2004-93052号公報に開示された 技術は、圧縮機を停止したりその出力を低下 させることをせずに圧縮機の通常運転を継続 しながら、当該冷媒が有する熱エネルギーを 、冷凍サイクルを構成する配管とは別に設け たバイパス配管を通じて包接水和物の融解や 除去が必要な蒸発器へ輸送することにより、 包接水和物の融解や除去に利用するという手 法を基礎としている。具体的には圧縮機出口 配管から分岐した高温冷媒ガス供給バイパス 配管により高温冷媒ガスを供給したり、凝縮 器出口配管から分岐した高温冷媒液供給バイ パス配管により高温冷媒液を包接水和物の融 解や除去が必要な蒸発器へ供給したりしてい る。それ故、特開2004-93052号公報に開示され 技術を採用した包接水和物の製造装置は高 冷媒ガス供給バイパス配管もしくは高温冷 液供給バイパス配管が必要であり、また包 水和物の融解や除去を行うために常に圧縮 が定格出力以上で運転されるので、装置が 雑化し又は高価なものになってしまい、余 な動力を消費するという問題がある。

 実施例6で説明する包接水和物スラリー製 造装置の融解運転方法は、特開2004-93052号公 に開示された技術の問題に鑑みてなされた のであり、冷凍サイクル内に存在する比較 高温・高圧の冷媒の有する熱エネルギーに 目し、簡便且つ安価であり、エネルギー消 も低い、包接水和物生成用熱交換器の伝熱 に付着した包接水和物を融解させる融解運 方法である。

<実施例6の基本原理>
<蒸発器が包接水和物生成用熱交換器を備 る場合>
 図29は実施例6の基本原理を示す図である。 29には、冷凍サイクルを構成するための機 である、圧縮機、凝縮器、減圧装置、蒸発 が配管によって連結されている状態を示し いる。

 冷凍サイクルにおいて、圧縮機が運転中 しくは停止直後には、圧縮機、凝縮器及び れらを接続する配管並びに凝縮器、減圧装 及びこれらを接続する配管のいずれかの場 に存在する冷媒が蒸発器内の冷媒よりも高 ・高温の熱エネルギーを有している。この うに、圧縮機が運転中もしくは停止直後に 発器内の冷媒よりも高圧・高温の熱エネル ーを有する冷媒が存在する領域を特定領域 称し、図29において灰色部で示す。

 圧縮機を停止した直後又は圧縮機の出力 低減した時に、蒸発器から圧縮機、凝縮器 至る配管にある弁が閉鎖されていなければ 圧縮機、凝縮器及びこれらを接続する配管 存在する冷媒は、蒸発器内の冷媒よりも高 であるので、圧力の低い蒸発器に逆流して 動する。これにより高圧・高温の熱エネル ーを有する冷媒を蒸発器に供給して、蒸発 内の冷媒の温度を上昇させることができる

 また、圧縮機を停止した直後又は圧縮機 出力を低減した時に、凝縮器から減圧装置 蒸発器に至る配管にある弁が閉鎖されてい ければ、凝縮器、減圧装置及びこれらを接 する配管に存在する冷媒は、蒸発器内の冷 よりも高圧であるので、圧力の低い蒸発器 正流して移動する。これにより高圧・高温 熱エネルギーを有する冷媒を蒸発器に供給 て、蒸発器内の冷媒の温度を上昇させるこ ができる。

 また、圧縮機を停止した直後又は圧縮機 出力を低減した時に、蒸発器から圧縮機、 縮器に至る配管にある弁及び凝縮器から減 装置、蒸発器に至る配管にある弁が閉鎖さ ていなければ、圧縮機、凝縮器及びこれら 接続する配管並びに凝縮器、減圧装置及び れらを接続する配管のいずれかの場所(特定 領域)に存在する冷媒は、蒸発器内の冷媒よ も高圧であるので、圧力の低い蒸発器に冷 の一部が逆流し、その残部の少なくとも一 が正流して移動する。これにより高圧・高 の熱エネルギーを有する冷媒を蒸発器に供 して、蒸発器内の冷媒の温度を上昇させる とができる。

 蒸発器が包接水和物生成用熱交換器を備 る場合、包接水和物のゲスト化合物の水溶 を冷媒との熱交換により冷却して包接水和 を生成する。

 この場合において、包接水和物生成用熱 換器の伝熱面に付着した包接水和物を融解 せるために、上記のように冷媒が有する熱 ネルギーを蒸発器に供給して、蒸発器内の 媒の温度を上昇させることができる。

<蒸発器が冷媒/熱媒体熱交換器を備える場 >
 図30は図29に示す実施例6の基本原理に、さ に蒸発器が冷媒/熱媒体熱交換器を備えるこ を付加し、その冷媒/熱媒体熱交換器は包接 水和物生成用熱交換器に熱エネルギーを伝達 する熱媒体と冷媒との熱交換を行う熱交換器 であることを付加した基本原理の説明図であ る。

 蒸発器に備えられた冷媒/熱媒体熱交換器 で冷媒により熱媒体が熱交換されて冷却され 、さらに、包接水和物生成用熱交換器で包接 水和物のゲスト化合物の水溶液を熱媒体との 熱交換により冷却して包接水和物を包接水和 物として生成する。

 包接水和物生成用熱交換器の伝熱面に付 した包接水和物を融解させるために、上記 ように冷媒が有する熱エネルギーを蒸発器 供給して、蒸発器内の冷媒の温度を上昇さ 、さらに冷媒との熱交換により熱媒体の温 を上昇させて、包接水和物生成用熱交換器 の熱媒体の温度を上昇させることができる

 このような包接水和物の融解作用は、冷 サイクル内に元々存在する熱エネルギーと の冷凍サイクルを構成する配管を利用した 果であり、格段の機器、装置、配管等を必 としないので、簡便且つ安価であり、エネ ギー消費も低いという効果がある。

 従って、本発明によれば、特定領域に存 する冷媒が有する熱エネルギーを蒸発器に 給することにより、簡便且つ安価であり、 ネルギー消費も低い、包接水和物生成用熱 換器の伝熱面に付着した包接水和物を融解 せる包接水和物スラリー製造装置の融解運 方法を実現することができる。

 なお、蒸発器又はそれが備える熱交換器 冷媒/熱媒体熱交換器として機能する場合に おいて、熱媒体の有する熱エネルギーを冷凍 サイクル外に設けられた包接水和物生成用熱 交換器に間接的に供給する手法は、本発明の 作用効果を奏する限りにおいて特に制限がな い。この手法の具体例は、(i)当該熱媒体を別 途設けた配管を通じて当該包接水和物生成用 熱交換器に供給し、当該包接水和物生成用熱 交換器内で流通させる、(ii)当該熱媒体との なくとも1回の熱交換を通じて別の熱媒体に 該熱エネルギーを伝達し、当該別の熱媒体 当該包接水和物生成用熱交換器に供給し、 該包接水和物生成用熱交換器内で流通させ 、(iii)当該熱媒体と熱的に接続する伝熱部 を介して、当該熱媒体が有するエネルギー 当該包接水和物生成用熱交換器に伝達する などである。

 また、本発明においては、冷凍サイクル 特定領域に存在する冷媒が有する熱エネル ーを蒸発器に供給する際、当該冷凍サイク を構成する配管を通じて、即ち当該冷凍サ クルの構成をそのまま利用して当該冷媒を 動させてやれば、より簡便で安価になるの 好ましい。当該冷凍サイクルを構成する配 を通じて当該冷媒を移動させる方向は、例 ば冷凍システムの構造(例えば減圧装置の種 類や構造)や操作の仕方などによって変わる 、正流の方向、逆流の方向及び両方向のい れでもよい。このことは、次の場合におい も同様にいえる。

 上記の冷凍サイクルを運転中に圧縮機を 止するか、その出力を低下させると、特定 域において相対的に高温・高圧の状態にあ 冷媒の蒸気が相対的に低温・低圧の状態に る側に移動する。その移動方向は、正流の 向の場合もあれば、逆流の方向の場合もあ 、両方向の場合もあり、いずれであるかは 凍サイクルの構造(例えば減圧装置の種類や 構造)や操作の仕方などによっても変わる。 かし、その移動先である低温・低圧の状態 ある側には、蒸発器が存在するので、結果 に相対的に高温・高圧の状態にある冷媒の 気が蒸発器に移動することになる。これに り、蒸発器又はそれが備える熱交換器が包 水和物生成用熱交換器として機能する場合 あれ、冷媒/熱媒体熱交換器として機能する 合であれ、相対的に高温・高圧の状態にあ 冷媒が有する熱エネルギーが包接水和物生 用熱交換器の伝熱面に伝達され、当該伝熱 に付着した包接水和物を融解させる。

 より詳しくは、蒸発器又はそれが備える 交換器が包接水和物生成用熱交換器として 能する場合には、当該比較的高温・高圧の 媒が有する熱エネルギーを蒸発器に供給し 蒸発器内の冷媒の温度を包接水和物の融点 はそれ以上にまで上昇させ、包接水和物生 用熱交換器の伝熱面の温度を上昇させ、そ 伝熱面に付着していた当該包接水和物を融 させる。

 また、蒸発器又はそれが備える熱交換器 冷媒/熱媒体熱交換器として機能する場合に は、当該熱エネルギーにより蒸発器内の冷媒 の温度を上昇させ、当該冷媒と熱交換してい る熱媒体の温度を上昇させ、冷媒/熱媒体熱 換器の温度、延いては熱媒体の温度を上昇 せる。そして当該熱媒体の有する熱エネル ーを冷凍サイクル外に設けられた包接水和 生成用熱交換器に直接又は間接的に供給す ことにより、包接水和物生成用熱交換器の 熱面の温度を上昇させ、その伝熱面に付着 ていた当該包接水和物を融解させる。

 このような包接水和物の融解は、冷凍サ クル内に元々存在する熱エネルギーを利用 た結果であり、格段の機器、装置、配管等 必要としないので、簡便且つ安価であり、 ネルギー消費も低い。しかも、圧縮機の停 又は出力低減という冷凍サイクルにおいて 常行う運転操作により実現でき、また、特 領域及び特定領域と蒸発器をつなぐ配管と う冷凍サイクルの構成をそのまま利用して 現できるので、より簡便で安価である。

 また、特開2004-93052号公報に開示されてい るような包接水和物の融解操作中も圧縮機を 定格出力以上で運転することが必要でなく、 余分な動力を消費しない。

 従って、実施例6によれば、圧縮機を停止 するか、その出力を低下させることにより、 特定領域に存在する冷媒が有する熱エネルギ ーを蒸発器に供給するので、より簡便且つ安 価であり、エネルギー消費も低い、包接水和 物生成用熱交換器の伝熱面に付着した包接水 和物を融解させる包接水和物スラリー製造装 置の融解運転方法を実現することができる。

 なお、実施例6は、冷凍サイクルの特定領 域に存在する冷媒が有する熱エネルギーを蒸 発器に供給することを特徴とするが、当該冷 媒の集まり易さ(従って熱エネルギーの多さ) 着目すると、当該特定領域の中でも圧縮機 凝縮器及びこれらを接続する配管のいずれ の場所に存在する冷媒が有する熱エネルギ を蒸発器に供給するのが効果的であり、特 凝縮器内に存在する冷媒が有する熱エネル ーを蒸発器に供給するのがより効果的であ といえる。

 以下の実施例7及び実施例8によって、実 例6を具体的に説明する。

 本実施例7は、蒸発器209又はそれが備える 熱交換器が包接水和物生成用熱交換器である 場合である。

<装置の説明>
 図31は本発明の実施例7の説明図である。電 機201によって駆動される圧縮機203、凝縮器2 05、減圧装置207(オリフィス又は流量調整弁) び、蒸発器209並びにこれらを接続する配管21 1により冷凍機ユニットが構成され、冷凍機 ニットを起動することで冷凍サイクルが構 される。圧縮機203の吸入側にはインレット イドベーン213が設けられている。

 圧縮機203は、遠心式圧縮機が好適である 、これに限定されない。圧縮機203が遠心式 場合には、減圧装置207はオリフィスの場合 多い。

 また、凝縮器205には冷却水を循環するた の冷却水配管215が接続され、冷却水配管215 は冷却水ポンプ217、冷却塔219が設置されて る。そして、凝縮器205、冷却塔219及び冷却 ポンプ217並びにこれらを接続する冷却水配 215により凝縮用熱媒体(水)の循環サイクル 構成される。

 冷凍サイクルを構成する蒸発器209に相当 る包接水和物生成用熱交換器209はシェル・ ンド・チューブ式熱交換器であり、包接水 物スラリー製造装置の要部をなす。このシ ル・アンド・チューブ式熱交換器のチュー 側に原料溶液又は原料スラリーが供給され シェル側のフロン冷媒(ここではR134a)が蒸発 する際の冷熱によりチューブの伝熱面を介し て原料溶液又は原料スラリーが冷却される。 この冷却により包接水和物が生成する。生成 した包接水和物を原料溶液又は原料スラリー に分散又は懸濁させることにより、包接水和 物スラリーが製造される。

 包接水和物生成用熱交換器209のチューブ に原料溶液又は原料スラリーを供給する原 流路221は、原料溶液又は原料スラリーを貯 するタンク223(製造開始時には原料溶液が貯 留されている)と、タンク223の下流側に設け れた供給ポンプ225とを備えている。包接水 物スラリーを蓄熱式空調システムの蓄熱剤 は冷熱輸送媒体として用いる場合には、タ ク223は蓄熱槽として包接水和物スラリーを 蔵し、空調運転時には熱利用機器に包接水 物スラリーを供給する。

 図示されていないが、凝縮器205、蒸発器2 09には圧力計、温度計が設けられており、蒸 器209の包接水和物スラリー側の入口出口に 温度計、差圧計、流量計などの計測器が設 られている。

 上記のように構成された冷凍サイクルに いては、圧縮機203にて昇圧された高温の冷 ガスが凝縮器205に送られる。凝縮器205のチ ーブ側には、冷却塔219から冷却水ポンプ217 介して冷却水が供給されており、この冷却 によって上記の冷媒ガスが冷却されて凝縮 れ、高圧の冷媒液となる。高圧の冷媒液は 圧装置207(オリフィス又は流量調整弁)にて 圧され、蒸発器209に送られる。蒸発器209で 発した冷媒のガスはインレットガイドベー 213を経て、圧縮機203に供給される。

 一方、包接水和物生成用熱交換器209のチ ーブ側に原料溶液又は原料スラリーが供給 れ、シェル側の冷媒が蒸発する冷熱により ューブの伝熱面を介して原料溶液又は原料 ラリーが冷却され、上記のとおり、包接水 物スラリーが製造される。

<運転方法>
 本実施例においては、原料溶液として臭化 トラnブチルアンモニウム水溶液(以下、「TB AB水溶液」という)であって、濃度14.4wt%のも を用いた。この濃度のTBAB水溶液の水和物生 開始温度は、約8℃である。

〔包接水和物スラリー製造装置の運転〕
 包接水和物スラリー製造装置の運転は、以 のように行う。

 所定の流量になるように、供給ポンプ225 インバータを調整して原料溶液又は原料ス リーを包接水和物生成用熱交換器209内に供 した後、冷凍サイクルと凝縮用熱媒体の循 サイクルとを起動し、包接水和物生成用熱 換器209で冷媒を蒸発させて原料溶液又は原 スラリーを冷却し、包接水和物を生成して 接水和物スラリーを製造する。

 冷凍機ユニットの圧縮機203を調節して包 水和物生成用熱交換器209の冷媒温度を一定 保ち、包接水和物スラリーの製造を連続し 行う。

 フロン冷媒としてR134aを使用すると、蒸 器9内で蒸発する際の冷媒の温度は約2~4℃(飽 和圧力で、0.31~0.34MPa)。また凝縮器5では、冷 水温度を32℃とすると凝縮器5内の冷媒の温 は32~38℃(飽和圧力で、0.82~0.96MPa)となる。

 包接水和物生成用熱交換器209の包接水和 スラリー出口と入口の差圧を計測すると徐 に差圧が増加することが観測されるが、こ はチューブ内壁面に包接水和物が付着し付 厚さが増加して、圧力損失が増加している とを示している。包接水和物の付着厚さが 加して、圧力損失が増加して包接水和物ス リー出口と入口の差圧があらかじめ定めた 定値より高くなったときには、以下の融解 転を行う。

〔融解運転〕
 包接水和物生成用熱交換器209内のチューブ では、包接水和物スラリーの製造を連続し 行っていると、チューブ内壁面に包接水和 が付着し、圧力損失が増加しやがて圧力損 が過大となり原料溶液、原料スラリー及び 接水和物スラリーの流通に支障が生じ、ひ ては閉塞が生じ、安定した包接水和物スラ ー製造が不可能になる。そこで、包接水和 スラリーを安定して製造するために、包接 和物生成用熱交換器209内のチューブ内壁面 付着した水和物を融解・除去する融解運転 行う。

 この融解運転は、以下のようにする。

 圧縮機203の運転を停止する。必要に応じ 冷却水ポンプ217も停止し凝縮用熱媒体の循 サイクルも停止する。インレットガイドベ ン213を全開とし、また、減圧装置である流 調節弁207を開とする。このようにして冷凍 イクル内を冷媒が冷凍サイクル稼動時(圧縮 機運転時)と逆方向(逆流の方向)に循環する経 路を形成する。

 圧縮機203の運転を停止する直前には、凝 器205内の冷媒は高圧で高温であり、一方、 発器209内の冷媒は低圧で低温である。

 この状態で、冷媒が逆方向に循環する経 を形成すると、凝縮器205内の高圧・高温の 媒ガスが圧縮機203を逆流して蒸発器209に入 、蒸発器209内が低温のため凝縮される。凝 器205内の冷媒の圧力・温度は低下していく 、蒸発器209内の冷媒の圧力・温度は上昇し 圧縮機運転時の凝縮器205と蒸発器209との冷 の圧力・温度の中間値でバランスする。そ ぞれの冷媒量にもよるが概ね10~20℃(圧力で0 .4~0.6MPa)となる。蒸発器209内の冷媒の温度が 昇することにより蒸発器内に存在する包接 和物が融解される。より具体的には、蒸発 209、即ち包接水和物生成用熱交換器209に供 される冷媒の温度が上昇し、これによりチ ーブ内壁面に付着した水和物が融解され、 去される。

 包接水和物生成用熱交換器209の包接水和 スラリー出口と入口の差圧を計測して、包 水和物が付着していない製造開始時の差圧 まで低下したことが認められる場合又は別 手段により付着していた包接水和物は全て 解させ除去できていることが確認できれば 圧縮機3を(凝縮用熱媒体の循環サイクルを 止していた場合には当該循環サイクルも)起 して包接水和物スラリー製造運転を再開す 。

(凝縮用熱媒体(冷却水)の温度を調整する操作 )
 上記の圧縮機203の運転を停止し凝縮器5から 高温高圧の冷媒を蒸発器209に逆流させて蒸発 器209内の冷媒温度を上昇させる操作により、 チューブ内壁面に付着した水和物を完全には 融解できない場合や蒸発器209内の冷媒の温度 が包接水和物の融点未満の場合には、その操 作に代えて、または当該操作に加えて、凝縮 器205に供給される凝縮用熱媒体の温度を調整 する操作を行ってもよい。

 凝縮器205に供給される凝縮用熱媒体の温 を調整するには、冷凍機ユニットの圧縮機3 を停止し、凝縮器205に供給される凝縮用熱媒 体の循環サイクルの冷却塔ファンと冷却水ポ ンプ217を稼動して、凝縮用熱媒体の温度を調 整する。外気温が包接水和物の融点以上のと きに冷却塔ファン及び冷却水ポンプ217を稼動 すれば、凝縮用熱媒体(冷却水)は概ね外気温( 正確には外気湿球温度)まで上昇するので、 縮器205内の冷媒の温度を概ね外気温まで上 させ、その結果、包接水和物生成用熱交換 209内の冷媒の温度も概ね外気温まで上昇さ ることができる。これにより包接水和物の 点以上の温度になるので、包接水和物生成 熱交換器209の伝熱面に付着している包接水 物を融解させることができる。

 なお、外気温が包接水和物の融点以下で ったときには、凝縮器205及び蒸発器209内の 度を包接水和物の融点以上に上昇させるこ はできない。しかし、上記の包接水和物生 用熱交換器を備える包接水和物スラリー製 装置の実用上は、その包接水和物スラリー 冷房用蓄熱材として使用される限り、特に 題にはならない。外気温が包接水和物の融 未満であれば、通常は、包接水和物スラリ を蓄熱材として使用する必要がないからで る。

(融解運転開始時期の判定)
 融解運転を開始する時期は、包接水和物ス リー製造装置の稼動状態に関連するパラメ タを計測し、パラメータの計測結果に基づ 、包接水和物生成用熱交換器209の伝熱面へ 包接水和物の付着又はその兆候を示す包接 和物スラリー製造装置の稼動状態の変化を 知したときとすることが有用である。

 本実施例では、包接水和物生成用熱交換 209の包接水和物スラリー出口と入口の差圧 は圧力損失を当該パラメータとしていたが これに限定されない。例えば、包接水和物 成用熱交換器に流通する包接水和物スラリ の流量及び流速、包接水和物生成用熱交換 の入口と出口での原料溶液、原料スラリー は包接水和物スラリーの温度、包接水和物 成用熱交換器における原料溶液、原料スラ ー又は包接水和物スラリーの交換熱量、包 水和物生成用熱交換器から抜出される包接 和物スラリーの固相率(包接水和物スラリー に占める包接水和物の重量割合)、包接水和 生成用熱交換器の入口と出口での冷媒の温 、包接水和物生成用熱交換器における冷媒 交換熱量等を当該パラメータとして採用す こともでき、これを検知し、監視し、所定 を超えたときに、融解運転に移行するよう してもよい。

(補足事項)
 1) 上記においては、凝縮器205内の冷媒の有 する熱エネルギーが蒸発器209に供給されるも のとして説明したが、厳密には、凝縮器5内 含む特定領域に存在する冷媒が有する熱エ ルギーが蒸発器209に供給されると説明すべ である。尤も、熱エネルギーを蒸発器209に 給し得る冷媒の特定領域における量的分布 念頭に入れると、凝縮器9内に存在する冷媒 より多いことから、凝縮器209内の冷媒が有 る熱エネルギーが蒸発器209に供給されると 明しても、正確さは欠くが誤りではない。

 2) 上記においては、インレットガイドベ ーン213を全開とし、流量調節弁207を開とする ことにより、特定領域に存在する冷媒が逆流 する場合について説明したが、当該冷媒のう ち少なくとも一部は蒸発器209に向かって正流 の方向に移動し得る。減圧装置207としてオリ フィスを採用する場合も同様であり、少なく とも一部の冷媒は蒸発器209に向かって正流の 方向に移動し得る。尤も、どの程度の量の冷 媒が正流の方向、逆流の方向又は各方向に移 動するかは、冷凍サイクルの装置構成や構造 、インレットガイドベーン213や減圧装置207の 種類・構造の選択、開の程度などによって異 なる。

 3) 上記においては、圧縮機203の運転を停 止する場合について説明しているが、圧縮機 203の出力を低下させた場合であっても特定領 域に存在する冷媒は相対的に高温・高圧とな るので当該冷媒を有する熱エネルギーを蒸発 器に供給すれば、その中に存在する包接水和 物を融解し、除去することは可能である。こ の場合、出力が低下しているとはいえ圧縮機 203は冷媒を正流の方向に移動させるように動 作していることから、特定領域に存在する冷 媒は逆流しにくい。それ故、当該冷媒が蒸発 器209に到達したとすれば、そのうちの少なか らずのものが正流の方向に移動して蒸発器209 に供給されたと推察できる。

〔蒸発器又はそれが備える熱交換器が冷媒/ 媒体熱交換器である場合〕
 本実施例8は、蒸発器又はそれが備える熱交 換器が、包接水和物生成用熱交換器231で原料 溶液と熱交換される熱媒体と、冷凍サイクル の冷媒とを熱交換する冷媒/熱媒体熱交換器24 1である場合である。

<装置の説明>
 図32は実施例8の説明図である。

 包接水和物生成用熱交換器231は、SUS304製 び径150A鋼管を加工したシェル内に、外径17. 3mm内径14mmのSUS304製のパイプが27本配置された 1パス構成のシェル・アンド・チューブ式熱 換器である。チューブ内に原料溶液又は原 スラリーが流れ、シェル側に熱媒体が流れ 。

 包接水和物生成用熱交換器231のチューブ に原料溶液又は原料スラリーを供給する原 流路233は、原料溶液又は原料スラリーを貯 するタンク235(製造開始時には原料溶液が貯 留されている)と、タンク235の下流側に設け れた供給ポンプ237とを備えている。

 包接水和物生成用熱交換器231に送られる 料溶液又は原料スラリーの流量は、供給ポ プ237に取り付けたインバータによって、ポ プの回転数が調整され所定量に調整される

 包接水和物生成用熱交換器231のシェル側 は、熱媒体回路239を通じてフロン冷媒のR134 aが熱媒体として供給される。熱媒体回路239 は、冷媒/熱媒体熱交換器241と、気液分離器2 43と、熱媒体ポンプ245が設けられている。冷 /熱媒体熱交換器241には、圧縮機247、凝縮器 249、減圧装置251(膨張弁251)を備えてなる冷凍 ユニット253によって冷却されたフロン冷媒R 404aが送られ、熱媒体R134aと熱交換を行う。

 圧縮機247、凝縮器249、減圧装置251(膨張弁 251)及び蒸発器並びにこれらを接続する配管 より冷凍機ユニット253が構成され、蒸発器 冷媒/熱媒体熱交換器41に相当する。

 また、凝縮器249には冷却水を循環するた の冷却水配管255が接続され、冷却水配管255 は冷却水ポンプ257、冷却塔259が設置されて る。そして、凝縮器249、冷却塔259及び冷却 ポンプ257並びにこれらを接続する冷却水配 255により凝縮用熱媒体(水)の循環サイクル 構成される。

 圧縮機247にて昇圧された高温の冷媒ガス( フロン冷媒R404a)は凝縮器249に送られる。凝縮 器249のチューブ側には、冷却塔259から冷却水 ポンプ257を介して冷却水が供給され、この冷 却水によって冷媒ガスが冷却されて凝縮され 、高圧の冷媒液となる。高圧の冷媒液は減圧 装置251(膨張弁251)にて減圧され、蒸発器に送 れる。蒸発器で蒸発したガスは、圧縮機247 吸い込まれる。

 蒸発器である冷媒/熱媒体熱交換器41はシ ル・アンド・チューブ式熱交換器であって チューブ側に熱媒体(R134a)を流し、シェル側 の冷媒(R404a)が蒸発する際に熱媒体を冷却す 。

 冷媒/熱媒体熱交換器241で冷却された約2 の熱媒体は、熱媒体ポンプ245によって、気 分離器243を経て、包接水和物生成用熱交換 231のシェル内に供給され、シェル内で熱媒 液の一部が蒸発することで、チューブ内の 料溶液又は原料スラリーが冷却され、包接 和物を生成し包接水和物スラリーが製造さ る。蒸発した熱媒体ガスと熱媒体液は気液 離器243に戻される。

 気液分離器243で分離された熱媒体ガスは 媒/熱媒体熱交換器241に送られ冷却され凝縮 して液熱媒体になり気液分離器243に戻る。

 なお、図示されていないが、包接水和物 成用熱交換器231に送られる原料溶液又は原 スラリーの包接水和物生成用熱交換器231の 口と入口の差圧を計測する差圧計と、包接 和物生成用熱交換器231から抜出される包接 和物スラリーの温度を計測する温度計と、 媒体の温度を計測する温度計が設けられて る。

<運転方法>
 原料溶液として濃度14.4wt%のTBAB水溶液を用 た。このTBAB水溶液の水和物生成開始温度は 約8℃である。

〔包接水和物スラリー製造運転〕
 所定の流量になるように、循環ポンプのイ バータを調整して原料溶液又は原料スラリ を循環流路に循環させた後、冷凍機ユニッ 253、凝縮用熱媒体の循環サイクルおよび熱 体ポンプ245を起動し、冷媒/熱媒体熱交換器 241で冷媒を蒸発させ熱媒体を冷却し、冷却さ れた熱媒体を包接水和物生成用熱交換器231内 に送り、チューブ内の原料溶液又は原料スラ リーを冷却し包接水和物スラリーを製造する 。

 冷凍機ユニット253の圧縮機247を調節して 媒/熱媒体熱交換器241の冷媒温度を一定に保 ち、包接水和物生成用熱交換器231の熱媒体温 度を一定に保ち、包接水和物スラリーの製造 を連続して行う。

 包接水和物生成用熱交換器231の包接水和 スラリー出口と入口の差圧を計測すると徐 に増加し、チューブ内壁面に包接水和物が 着し付着厚さが増加して、圧力損失が増加 ていることを示している。

〔融解運転〕
 図33は、包接水和物生成用熱交換器231の出 と入口の差圧、包接水和物生成用熱交換器23 1から抜出される包接水和物スラリーの温度 熱媒体の温度の時間変化を示すグラフであ 。

 図33においては、横軸に包接水和物スラ ーの製造開始から数十分経過してからの時 を表し、左側縦軸に包接水和物スラリーの 度と熱媒体の温度、右側縦軸に差圧を表し いる。

 包接水和物スラリーの製造開始から数十 経過すると、包接水和物生成用熱交換器231 出口と入口の差圧は27.5kPaまで上昇しており 、チューブ内壁面に包接水和物が付着して圧 力損失が大きくなっていることがわかる。

 そこで、23分時に、冷凍機を停止し凝縮 249の高温高圧の冷媒を蒸発器すなわち冷媒/ 媒体熱交換器241に逆流させると、熱媒体は 熱され包接水和物生成用熱交換器31内の熱 体は図33のように温度が高くなる。

 包接水和物生成用熱交換器231のシェル内 熱媒体温度が上昇することにより、チュー 内壁面に付着している包接水和物が融解し 去され、差圧が低下する。冷凍機を停止し から24分後には包接水和物スラリーの製造 始時に包接水和物が付着していない時の差 18kPaにまで低下する。

 包接水和物が付着していない包接水和物 ラリー製造開始時の差圧にまで低下するこ から、付着していた包接水和物を全て融解 せ除去できていることが確認できる。

 その後、冷凍機を起動して包接水和物ス リー製造運転を再開する。

(凝縮用熱媒体の温度を調整する操作)
 チューブ内壁面に付着している包接水和物 融解する運転として、冷凍機を停止し凝縮 249の高温高圧の冷媒を蒸発器に逆流させて 媒体温度を上昇させる操作に代えて、また 当該操作に加えて、凝縮器249に供給される 縮用熱媒体の温度を調整する操作を行なっ もよい。

 凝縮器249に供給される凝縮用熱媒体の温 を調整するには、冷凍機の圧縮機247を停止 、凝縮器249に供給される凝縮用熱媒体の循 サイクルの冷却塔ファンと冷却水ポンプ257 稼動して、凝縮用熱媒体の温度を調整する 外気温が包接水和物の融点以上のときに冷 塔ファンおよび冷却水ポンプ257を稼動すれ 、冷却水は概ね外気温(正確には外気湿球温 度)まで上昇するので、凝縮器249内の冷媒の 度を概ね外気温まで上昇させ、その結果包 水和物生成用熱交換器231内の熱媒体の温度 概ね外気温まで上昇させることができる。 のようにすれば、熱媒体の温度を少なくと 包接水和物の融点以上の温度にすることが き、包接水和物生成用熱交換器231の伝熱面 付着している包接水和物を融解させること できる。

 特に、冷凍機を停止し凝縮器249の高温高 の冷媒を蒸発器に逆流させて熱媒体温度を 昇させる操作だけでは、包接水和物生成用 交換器231の伝熱面に付着している包接水和 を融解させることができなかった場合、も くは包接水和物生成用熱交換器231内の熱媒 の温度が包接水和物の融点以下の温度にま しか上昇できないような場合には、凝縮器2 49に供給される凝縮用熱媒体の温度を調整す 操作を行うことが有効である。